説明

複合膜及び製造法

【課題】イオン交換材料と相溶性の材料を有する改良された複合膜を提供する。
【解決手段】複合膜20は相溶化多孔質ベース膜及びイオン交換材料48を含み、このイオン交換材料48は相溶化多孔質ベース膜の膜内に含浸している。複合膜20は、相溶化多孔質ベース膜の外面及び内面にプライマーをコートし、プライマーを架橋することにより相溶化されている。この複合膜20は耐久性があり、相溶性で、高度に導電性があり、かつ機械的にも安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に複合多孔質膜に関し、より具体的にはイオン交換材料と相溶性の複合多孔質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子電解質(PEM)燃料電池は、特に輸送及び携帯式装置用の信頼できるクリーンなエネルギー源として大きな注目を集めている。水素PEM燃料電池は水素と酸素の電気化学的結合により電気(これは動力に変換することができる)を発生させる。水と熱が唯一の副生物である。燃料電池技術はこの50年にわたって大いに進歩して来たが、広範囲の用途を有する最新型の燃料電池装置を開発するには改良された高性能の膜材料が未だに必要とされている。
【0003】
燃料電池膜は過酷な燃料電池状況下で長期にわたる熱的、機械的及び化学的安定性をもたなければならない。長い寿命は膜の物理的性質と正比例するので、研究努力は丈夫な膜をもたらすポリマー系を目標としている。高い性能と機械的に安定なポリマー電解質膜(PEM)を実現するのに主要な障害は有効な水管理である。より良好な水管理の1つの方法は、より機械的に安定な多孔質支持体で膜を調節すること(すなわち、複合膜)である。これにより、過度の収縮と膨潤が防がれ、より耐久性の高い膜が提供される。
【0004】
疎水性材料は水性媒質中で最小の膨潤を示し、増大した機械的及び化学的安定性に寄与するので、疎水性で不活性な材料を多孔質ベース膜に使用するのが望ましい。残念なことに、不活性な疎水性ベース膜は、親水性であるイオン交換材料(すなわち、スルホン酸含有ポリマー)とは相溶性でないのが通例である。ベース膜の材料とイオン交換材料との非相溶性は、ベース膜とイオン交換材料との界面の相互作用が悪いので、膜内に穴のような膜欠陥を生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要とされているのは、イオン交換材料と相溶性の材料を有する改良された複合膜である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、複合膜が提供される。この複合膜は相溶化多孔質ベース膜及びイオン交換材料を含んでおり、前記イオン交換材料は相溶化多孔質ベース膜に含浸しており、この多孔質ベース膜は、プライマーを多孔質ベース膜の外面及び内面にコートし、プライマーを架橋することにより相溶化されている。
【0007】
別の実施形態では、イオン交換特性を有する複合膜を製造する方法が提供される。この方法は、多孔質ベース膜を相溶化し、相溶化多孔質ベース膜にイオン交換材料を含浸させることを含んでおり、多孔質ベース膜はプライマーを多孔質ベース膜の外面及び内面にコートし、プライマーを架橋することによって相溶化される。
【0008】
別の実施形態では、燃料電池用のプロトン交換膜が提供される。このプロトン交換膜は相溶化多孔質ベース膜及びイオン交換材料を含んでおり、前記イオン交換材料は相溶化多孔質ベース膜に含浸しており、多孔質ベース膜は、プライマーを多孔質ベース膜の外面及び内面にコートし、プライマーを架橋することによって相溶化されている。
【0009】
別の実施形態では、燃料電池用のプロトン交換膜を製造する方法が提供される。この方法は、多孔質ベース膜を相溶化し、相溶化多孔質ベース膜にイオン交換材料を含浸させることを含んでおり、多孔質ベース膜はプライマーを多孔質ベース膜の外面及び内面にコートし、プライマーを架橋することによって相溶化される。
【発明の効果】
【0010】
様々な実施形態によって、増大した性能を有し、極めて導電性で機械的に安定である、より相溶性でより耐久性の膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ベース膜の概略平面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従った複合膜の概略図である。
【図3】図3は、図1の複合膜を含むプロトン交換膜の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
単数形態は、前後関係から明らかに他の意味を示さない限り複数の対象も含む。同じ特性に関する全ての範囲の上下限は独立に組合せ可能であり、記載された上下限を包含する。文献は全て引用によりその内容が本明細書の一部をなす。
【0013】
ある量に関連して使用する修飾語「約」は明記された値を包含し、状況によって認識される意味を有する(例えば、その特定の量の測定に伴う許容範囲を含む)。
【0014】
「任意の」又は「場合により」とは、続いて記載されている事象若しくは状況が起こってもよいし若しくは起こらなくてもよく、又はその後に続いて特定されている物質若しくは材料が存在していてもいなくてもよいことを意味し、またその記載はその事象若しくは状況が起こるか又はその物質若しくは材料が存在する場合と、その事象若しくは状況が起こらないか又はその物質若しくは材料が存在しない場合とを包含して意味する。
【0015】
以下、複合膜及び複合膜を製造する方法について詳細に説明する。この複合膜はろ過装置に、又は燃料電池内のプロトン交換膜材料として使用することができる。
【0016】
一実施形態では、複合膜は相溶化多孔質ベース膜とイオン交換材料とを含んでおり、前記イオン交換材料は相溶化多孔質ベース膜に含浸しており、多孔質ベース膜はプライマーを多孔質ベース膜の外面と内面にコートし、プライマーを架橋することにより相溶化されている。
【0017】
イオン交換材料はイオン交換特性を膜に付与し、いかなるタイプの従来のイオン交換材料でもよい。一実施形態では、イオン交換材料はアイオノマーである。アイオノマーはプロトンを効果的に伝導することができるいかなるタイプの材料でもよい。一実施形態では、アイオノマーには、フルオロカーボン系アイオノマー及び非フルオロカーボン系アイオノマーが包含される。適当なフルオロカーボン系アイオノマーとしては、特に限定されないが、ペルフルオロスルホン酸アイオノマー、フルオロアルキルスルホン酸基を含む芳香族ポリマー、部分的にフッ素化されたスルホン化アイオノマー及びペルフルオロアルキル系アイオノマーがある。フルオロアルキルスルホン酸基を有する芳香族ポリマーには、スルホン酸基に共有結合したフルオロアルキル基を有するポリアリーレンがある。このフルオロアルキル基中のアルキル基はC1〜C30アルキル基である。一実施形態では、ポリアリーレンとしては、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン及びポリエーテルケトンがある。ポリスルホンとしては、特に限定されないが、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン及びポリフェニレンスルホンがある。ポリイミドとしては、特に限定されないが、ポリエーテルイミド及びフッ素化ポリイミドがある。ポリエーテルケトンとしては、特に限定されないが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン−ケトン、ポリエーテルエーテルケトン−ケトン及びポリエーテルケトンエーテルケトン−ケトンがある。
【0018】
ペルフルオロアルキル系アイオノマーには、ポリテトラフルオロエチレンスルホン酸のように、スルホン基又はカルボキシル基のイオン性官能基を有する高度フッ素化アイオノマーが含まれる。ペルフルオロアルキル系アイオノマーとしては、E.I.DuPont de Nemours社からNAFION(登録商標)として市販されているポリペルフルオロスルホン酸アイオノマー、旭化成(株)から市販されているAciplex(登録商標)、旭硝子(株)から市販されているFlemion(登録商標)、及びDow Chemical社の他のフルオロカーボンアイオノマーがある。
【0019】
一実施形態では、アイオノマーは、次式の構造を有するNAFION(登録商標)ポリペルフルオロスルホン酸アイオノマーである。
【0020】
【化1】

【0021】
式中、kは約0〜約0.99の範囲であり、mは約0〜約10の範囲であり、nは約1〜約5の範囲である。
【0022】
別の実施形態では、kは約0.5〜約0.95の範囲である。別の実施形態では、mは約0〜約2の範囲である。別の実施形態では、nは約1〜約5の範囲である。
【0023】
別の実施形態では、アイオノマーは次式の構造を有するフッ化スルホニル型のNafion(登録商標)である。
【0024】
【化2】

【0025】
式中、kは約0〜約0.99の範囲であり、mは約0〜約10の範囲であり、nは約1〜約5の範囲である。
【0026】
別の実施形態では、kは約0.5〜約0.95の範囲である。別の実施形態では、mは約0〜約2の範囲である。別の実施形態では、nは約1〜約5の範囲である。
【0027】
部分的にフッ素化されたスルホン化アイオノマーとしては、特に限定されないが、スルホン化スチレンポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)系コポリマー、ポリ(α,β,β−トリフルオロメチルスチレンスルホン酸)、及び次式の構造を有するモノマーから誘導される(援用により本明細書の内容の一部をなす、2006年11月14日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/598948号に記載されているような)有機フルオロスルホン酸基又はその誘導体を含有する芳香族ポリマーがある。
【0028】
【化3】

【0029】
式中、EはC5〜C50芳香族基であり、Zは結合、O、S、SO、SO2、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、又はC4〜C20環式脂肪族基であり、Aはスルホン酸部分、式SO3M(式中、Mは無機陽イオン、又は有機陽イオンである)を有するスルホン酸部分の塩、及び式SO31(式中、R1はC1〜C20脂肪族基、C3〜C20芳香族基、又はC4〜C20環式脂肪族基である)を有するスルホン酸エステル部分からなる群から選択されるスルホネート部分であり、Tはヒドロキシル、アミン、カルボン酸、カルボン酸エステル、及びチオールからなる群から選択される官能基であり、rは1〜20の範囲の整数である。
【0030】
一実施形態では、部分的にフッ素化されたスルホン化アイオノマーは次式の構造を有する。
【0031】
【化4】

【0032】
式中、a、b、x及びyは各々独立に1〜1000の範囲の整数であるが、ただしa+b=xである。
【0033】
イオン交換材料として使用する非フルオロカーボン系アイオノマーとしては、特に限定されないが、スルホン化ポリスチレン、リン酸を有するポリイミダゾール、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、スルホン化ポリプロピレンオキシド、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリエーテルイミド、スルホン化ポリエステル、クロロスルホン化ポリエチレン及びスルホン化ポリ(フェニレンスルフィド)のようなスルホン化芳香族ポリマーがある。
【0034】
複合膜は、複数の細孔を有する多孔質ベース膜を備える。一実施形態では、ベース膜は、複数のフィブリルで相互に連結された複数のノードを含む三次元マトリックス又は格子型の構造を有する。ノードとフィブリルとの相互連結によってベース膜内に細孔が画成されるが、これらは空隙又はボイドである。ノード及びフィブリルの表面は、膜を完全に貫通する多数の相互連絡細孔を画成している。
【0035】
ベース膜内の細孔の大きさはいかなる大きさであってもよい。一実施形態では、ベース膜内の細孔の平均細孔径はミクロ孔である。別の実施形態では平均細孔径は約0.01〜約10μmの範囲であり、別の実施形態では平均細孔径は約0.1〜約5.0μmの範囲である。
【0036】
図1は、複合膜20の平面図である。ベース膜22は多孔質であり、一実施形態では、複数のフィブリル44で相互に連結された複数のノード42を含む三次元マトリックス又は格子型の構造を有するミクロ多孔質である。ノード42及びフィブリル44の表面は、膜22の両面の間を曲がりくねった経路で貫通する多数の連続細孔46を画成する。一実施形態では、ベース膜22内の細孔46の平均細孔径Dは約0.01〜約10μmの範囲であり、別の実施形態では約0.1〜約5.0μmの範囲である。
【0037】
ベース膜は、開放細孔構造を有するベース膜を形成するのに適したいかなる材料又は材料のブレンドでもよい。一実施形態では、ベース膜として、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリル及びメタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルホン、セルロース系ポリマー並びにこれらの組合せがある。代表的な実施形態では、多孔質ベース膜は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)からなる。
【0038】
ある代表的な実施形態では、ベース膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉粒子と滑剤との混合物の押出によって製造し得る。押出物は、次いでカレンダリングに付す。カレンダリングした押出物を少なくとも一方向、好ましくは二方向(MD及びXD)に「延伸」つまりストレッチングすることによって、フィブリルと連結ノードを形成して三次元マトリックス又は格子型の構造を画成す。「延伸」とは、材料の弾性限界を超えて延伸することによってフィブリルに永久歪み又は伸びを導入することをいう。
【0039】
ベース膜を加熱つまり「焼結」することによって、材料の一部を結晶質から非晶質に変え、膜材料の残留応力を低減又は最小化することができる。一実施形態では、ベース膜は全く焼結しないか或いは部分的に焼結する。別の実施形態では、多孔質ベース膜は、少なくとも部分的に焼結した延伸ポリテトラフルオロエチレンからなる。一般に、少なくとも部分的に焼結したフィブリルの大きさは、フィブリルの長手方向に垂直な直径として約0.05〜約0.5μmの範囲である。多孔質ベース膜の比表面積は膜材料1グラム当たり約9〜約110平方メートルの範囲である。
【0040】
ベース膜を製造するための他の好適な方法には、任意の好適な材料のフォーミング、スカイビング又はキャスティングがある。別の実施形態では、ベース膜はePTFEのような上述の材料の製織又は不織繊維から形成される。
【0041】
一実施形態では、ベース膜は約0.06〜約10ミルの厚さを有する。別の実施形態では、ベース膜は約0.50〜約5ミルの厚さを有する。別の実施形態では、ベース膜は約0.8〜約3ミルの厚さを有する。
【0042】
多くのイオン交換材料は、多孔質ベース膜と非相溶性であり、この膜との表面相互作用が不充分であり、そのため複合膜に穴又は空隙が生じるおそれがある。多孔質ベース膜は、ベース膜とイオン交換材料との間の界面整合性を改良し、内側の境膜抵抗を低下させ、膜全体の欠陥を緩和するように相溶化することができる。一実施形態では、多孔質ベース膜をプライマーでコート(塗布)し、プライマーを架橋する。架橋プライマーは、疎水性の多孔質ベース膜と親水性のイオン交換材料との界面を安定化することによって多孔質ベース膜を相溶化する役目を果たす。
【0043】
プライマーをベース膜に塗布すると、膜の外面をコートすると共にベース膜の細孔内に浸透して膜の内面をコートする。図2は、代表的な実施形態における複合膜20の概略図である。プライマー24は、ベース膜22を貫通して延びる相互に連結した細孔46を画成しているノード42とフィブリル44の表面上及びその周辺に配置される。こうして付着したプライマー24は、ベース膜22の外面と内面を画成するノード42とフィブリル44の表面に接着する。ある代表的な実施形態では、プライマー24は析出によりノード42とフィブリル44の表面上に付着する。一実施形態では、プライマーは一様に均一な厚さCを有する薄い層である。
【0044】
プライマーはいかなる公知の方法によってベース膜にコートしてもよい。一実施形態では、プライマーは溶液付着、高圧溶液付着、真空ろ過、塗装、グラビアコーティング及びエアブラシによりコートすることができる。一実施形態では、プライマーを、溶媒として緻密化した流体、例えば超臨界流体又は近臨界流体を用いてベース膜にコートする。
【0045】
別の実施形態では、プライマーは、超臨界二酸化炭素付着によりコートする。プライマーは、周囲より高い圧力、通例は少なくとも約20バールの高圧で気体状二酸化炭素を含有する流体中に溶解又は分散させる。一実施形態では、この圧力は約20〜約500バールである。一実施形態では、二酸化炭素が臨界密度より高い密度、通例約0.5/ccより高い密度を有する高密度又は超臨界相で二酸化炭素を利用する。二酸化炭素溶液はベース膜と接触し、これを濡らす。プライマーは溶液から析出し得、そのプライマーがベース膜表面と接着し、そのベース膜をコートする。超臨界二酸化炭素付着については、米国特許第6030663号(援用により本明細書の内容の一部をなす)に記載されている。
【0046】
プライマーは様々な量でベース膜に塗布することができる。一実施形態では、プライマーは約1.0〜約500nmの範囲、例えば約1.0〜約100nmの範囲の均一な厚さを有する。別の実施形態では、プライマーは、ベース膜の重量を基準にして約1〜約5重量%の量でベース膜に塗布される。
【0047】
プライマーはベース膜とイオン交換材料との間の界面整合性を改良するのに適した任意の材料からなる。一実施形態では、プライマーは、スルホニル官能性を有するフッ素化ビニル系コポリマー、例えば、次式の構造を有する二フッ化ビニリデン(VF2)とスルホン化ペルフルオロアルキルビニルエーテルのコポリマーである。
【0048】
【化5】

【0049】
式中、kは約0〜約0.99である。別の実施形態では、kは約0.5〜約0.9である。フッ化スルホニル及びスルホン酸類似体もプライマーとして使用することができる。
【0050】
別の実施形態では、プライマーは、ランダムなスルホン化を含有する炭化水素系ポリマー、例えば、スルホン化ビス(ハロフェニル)スルホン、ジヒドロキシターフェニル及び/又はビス(ヒドロキシフェニル)ピリジンから誘導された単位を含有するポリエーテルスルホン(援用により本明細書の内容の一部をなす米国特許出願公開第2006/0030683号に記載)、ベンズイミダゾールを含有するスルホン化ポリエーテルスルホン(援用により本明細書の内容の一部をなす米国特許出願公開第2007/0100131号に記載)、トリフルオロビニルオキシ基を含有するポリエーテルスルホン(援用により本明細書の内容の一部をなす、2006年4月5日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/397109号に記載)、及び有機フルオロスルホン酸基又はその誘導体を含有するポリマー(援用により本明細書の内容の一部をなす、2006年11月14日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/598948号に記載)である。
【0051】
別の実施形態では、プライマーはブロック状の混合又は傾斜したスルホン化を含有する炭化水素系ポリマー、例えばスルホン化ポリアリールエーテルケトン−ポリエーテルスルホンブロックコポリマーである。これは、いずれも援用により本明細書の内容の一部をなす、2006年7月3日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/479202号、米国特許出願公開第2007/0142614号、米国特許出願公開第2007/0142613号、及び2006年11月14日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/598948号に記載されている。
【0052】
別の実施形態では、プライマーは、スルホン化された親水性セグメントと疎水性フッ素化セグメントとを含有する部分的にフッ素化されたブロックコポリマーである。一実施形態では、これらのペルフルオロスルホン基をもつ材料はペルフルオロスルホン酸、ナトリウムスルホン化された−ペルフルオロスルホン酸、フッ化スルホニル−ペルフルオロスルホン酸及びペルフルオロスルホン酸ナトリウムポリマーである。
【0053】
別の実施形態では、プライマーはビニル系、アクリル系又はスチレン系ポリマー及びコポリマーである。この場合、代表的なポリマーは、部分的にフッ素化されていて重量で約20〜約75%のフッ素を有することができ、化学的又は熱的に変換してヒドロキシル(−OH)基、酸基(−COOH)、スルホニル基(SO2X)[ここでXはハロゲンである]、又はスルホン酸基(SO3H)のような高極性の水素結合性官能基を形成することができる利用可能な官能基を有し得る。その他の代表的なポリマーとしては、熱的又は化学的に変換して、ベース膜に付着したポリ(ビニルアルコール)ポリマー(例えば、Celanese社から入手可能なCelvol(登録商標)165)を形成することができるポリ(酢酸ビニル)系ポリマーがある。
【0054】
一実施形態では、プライマーはアミン官能基を有する。このアミン官能基はイオン交換材料中のスルホン酸と反応してイオン性の塩を形成し、このため物理的架橋が得られ、プライマーとイオン交換材料との間のより良好な永久性が改良される。物理的架橋はまた、アミン官能基を有するプライマー材料で、イオン交換材料中のスルホン酸部分との酸−塩基結合によっても実現することができる。
【0055】
一実施形態では、アミン官能基を有するポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリビニルアミン、又は米国特許出願公開第2006/0030683号又は米国特許出願公開第2007/0100131号(援用により本明細書の内容の一部をなす)に記載されているもののような他のポリ芳香族材料である。別の実施形態では、プライマーはアミン官能基を有するポリマーとポリ(ビニルアルコール)との混合物、例えば、Celanese社から市販されているポリ(ビニルアルコール)−ポリビニルアミンコポリマーであってもよい。ポリ(ビニルアルコール)−ポリビニルアミンコポリマーの例は、Celanese社から市販されているPVOH/PVAm M12、PVOH/PVAm L12及びPVOH/PVAm M6である。一実施形態では、ポリビニルアミンはスルホン化又はカルボキシル化されていてもよい。別の実施形態では、プライマーは、Celanese社のCelvol(登録商標)165のようなポリビニルアルコール、Celanese社のVytek(登録商標)2000のようなスルホン化ポリビニルアルコール、及びCelanese社のVytek(登録商標)4000のようなカルボキシル化ポリビニルアルコールであってもよい。
【0056】
一実施形態では、プライマーは二フッ化ビニリデンコポリマーであり、これはフッ化スルホニルの形態でベース膜にコートした後ベース膜上でスルホン酸形態に変換することができる。ある代表的な実施形態では、極性溶媒中のトリメチルシラン酸(silanoate)ナトリウム塩を用いてフッ化スルホニルを化学的に変換する。一旦スルホン酸誘導体に変換されると、プライマーは硫酸などの中で酸性化してスルホン酸官能性コーティングを形成することができる。この酸性化されたプライマーにより、ベース膜とイオン交換材料との間の相互作用が得られる。フッ化スルホニル又はスルホネート部分は、イオン交換材料による含浸の前、又は、イオン交換材料の含浸後にスルホン酸基に変換することができる。
【0057】
付着させたプライマーは、必要であれば、加熱により、又は酸若しくは塩基触媒の脱保護、酸、塩基、若しくは熱で誘発される加水分解若しくは鹸化、又はその他適当な加工処理法などの化学変換などにより、さらに加工処理することができる。一実施形態では、プライマーは予め変換された状態でコートされる。一旦ベース膜上にコートされたら、プライマーを極性の水素結合性状態に変換することができる。コートされたプライマーを架橋して多孔質ベース膜と相溶化させることができる。架橋プライマーは、不可逆性の相互貫入網目構造又は架橋ポリマー構造を形成し、この構造がベース膜のポリマーと相互に連結することによりプライマーをベース膜に機械的に結合する。架橋は、プライマーが膜に接着し、プライマーがその後の加工処理の間に洗い落とされたり磨り減らされたりするのを防ぐ補助をする。プライマーは、熱により、UV、電子線、コロナ、プラズマにより、及び化学的にといったような従来の任意の方法で架橋される。プライマーは自身と、多孔質ベース膜と、イオン交換材料と、又は以上の任意の組合せと共に架橋し得る。一実施形態では、プライマーは、膜をプライマー処理し、イオン交換材料を塗布した後に架橋する。架橋に先立って、膜を2つの加熱されたカレンダーロール間に通して、複合膜を調製する間に形成された空隙又はピンホールを除去することができる。
【0058】
一実施形態では、プライマーは架橋剤を用いて架橋する。この架橋剤は架橋するのに適したあらゆる従来の物質でよい。架橋剤はポリマーマトリックスの一部となってもよいし、又はポリマーマトリックスとは別の二−、三−若しくは多官能化架橋剤であってもよいし、又は両方のタイプの組合せであってもよい。別の実施形態では、架橋剤は、反応性又は官能性の基の架橋を促進するが、マトリックス中に化学的に結合されることはない触媒として機能する。一実施形態では、架橋剤はイソシアヌレート、ブロックイソシアヌレート、ウレタン、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、ビニルエーテル、ペルフルオロビニルエーテル、ビス−ベンゾシクロブテン、ビニルケトン、アセチレン、シアノエステル、又はベンジル及びベンジルエーテルである。別の実施形態では、架橋剤はトリアリルイソシアヌレートである。
【0059】
別の実施形態では、架橋剤は1種以上のウレタン又はブロックイソシアネートを含み得る。適当なブロックイソシアネートはブロッキング剤、並びに1種以上の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び/又は環式脂肪族ポリイソシアネートを含み得る。一実施形態では、ポリイソシアネートには、1種以上のトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、メタテトラメチルキシリレンジイソシアネート、又はジメチルメタ−イソプロペニルベンジルイソシアネートが包含される。一実施形態では、架橋剤はヘキサメチレンジイソシアネート又はメチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)からなる。
【0060】
トルエンジイソシアネート(TDI)は室温で液体であり、2,4及び2,6異性体の混合物として市販されている。1つの商業グレードで、TDIは80%の2,4−TDI/20%の2,6−TDI及び65%の2,4−TDI/35%の2,6−TDIとして入手可能である。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)は室温で固体である。変性MDIは幾らかのイソシアネート基を、過剰のイソシアネートと反応し得るカルボジイミド基に変換することによって製造することができる。液体MDIはジイソシアネートと小量のグリコールとの反応によって製造し得る。
【0061】
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(1,6−ジイソシアネートヘキサン)は室温で液体である。少なくとも2種類のポリイソシアネートがHDIから製造され得る。すなわち、HDI−ビウレットタイプ、及びイソシアヌレートタイプHDIである。HDI−ビウレットタイプはHDI(又は高分子HDI)のホモポリマーであり、HDIを水で処理することによって得ることができる。HDI−ビウレットは約0.7%未満のHDIを含有し得る。HDI−イソシアヌレートは最初に製造されたとき0.3%未満のHDIを含有し得る。HDI及びそのポリマーはキシレン及びトルエンのような非極性溶媒に可溶性である。HDIは次式の構造で表すことができる。
【0062】
【化6】

【0063】
メチレンビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)及びそのポリマーはキシレン及びトルエンのような非極性溶媒に可溶性である。HMDIは次式の構造で表すことができる。
【0064】
【化7】

【0065】
ナフタレンジイソシアネート(NDI)及びメチルイソシアネート(MIC)は室温で固体である。ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(PMPPI)は室温で液体であり、約40〜約60重量%の4,4’−MDIを含み得、残りはMDIの他の異性体(例えば、2,4’及び2’)三量体種及びより高分子量のオリゴマーである。
【0066】
別の適当なイソシアネートは次式の構造を有する物質を含み得る。
【0067】
【化8】

【0068】
適当なブロックイソシアネートは市販されているか、及び/又は例えばイソシアネートとマロン酸エステルのようなブロッキング剤との反応により形成し得る。他の適当なブロッキング剤としては、ジイソプロピルアミン(DIPA)又はt−ブチルベンジルアミン(BEBA)のような1種以上のアミンが挙げられる。さらにその他の適当なブロッキング剤としては、1種以上の3,5−ジメチルピラゾール、メチルエチルケトキシム、カプロラクタム、又はアルキル化フェノールが挙げられる。
【0069】
ある種のブロッキング剤は熱を加えるとそれに応答して脱ブロック化し得る。例えば、3,5−ジメチルピラゾールは110℃で脱ブロック化し得、メチルエチルケトキシムは150℃で脱ブロック化し得、マロン酸エステルは90℃で脱ブロック化し得、カプロラクタムは160℃で脱ブロック化し得、アルキル化フェノールは約110℃超で脱ブロック化し得る。促進剤が存在する場合、脱ブロック化温度はほぼ室温程度まで低下し得る。
【0070】
一実施形態では、ウレタンとして、次式の構造を有する物質が挙げられる。
【0071】
【化9】

【0072】
式中、Rは各々独立に60/40の比のC1〜C4アルキル(例えば、メチル又はブチル)である。
【0073】
適当なウレタンの例としては、Cytec Engineered Materials社から市販されているCYMEL(登録商標)1158又はCYLINK(登録商標)2000がある。
【0074】
一実施形態では、架橋剤はアクリレートである。別の実施形態では、アクリレートはアリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、2,2−ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]プロポキシフェニルプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート並びに平均分子量200〜500g/molのポリエチレングリコールのビス−アクリレート及びビス−メタクリレートである。
【0075】
一実施形態では、架橋剤はペルフルオロビニルエーテルである。一実施形態では、ペルフルオロビニルエーテルは次式の構造を有する。
【0076】
【化10】

【0077】
式中、Yは原子価uの二価有機又は無機基であり、uは2〜8の範囲及び2〜4の範囲を含む1〜1000の整数である。
【0078】
ペルフルオロビニルエーテルは通例、フェノールとテトラブロモテトラフルオロエタンから合成された後、亜鉛に触媒される還元性脱離により、ZnFBrと目的とするペルフルオロビニルエーテルが生成する。この経路により、ビス、トリス及びその他のポリフェノールからビス−、トリス−及び他のポリ(ペルフルオロビニルエーテル)を生成することができる。一実施形態では、フェノール性化合物としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2−(ジフェニルホスホリル)ヒドロキノン、ビス(2,6−ジメチルフェノール) 2,2’−ビフェノール、4,4−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノール、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサメチルビフェノール、3,3’,5,5’−テトラブロモ−2,2’6,6’−テトラメチルビフェノール、3,3’−ジブロモ−2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−3,3’5−ジブロモビフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフェノール)(テトラブロモビスフェノールA)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)(テトラメチルビスフェノールA)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−アリルフェノール)、4,4’(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’−イソプロピリデンビス(3−フェニルフェノール) 4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールP)、4,4’−エチリデンジフェノール(ビスフェノールE)、4,4’オキシジフェノール、4,4’チオジフェノール、4,4’チオビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−スルホニルビス(2,6−ジメチルフェノール) 4,4’スルフィニルジフェノール、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAF)、4,4’(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジクロロエチレン(ビスフェノールC)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール−F)、ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−(シクロペンチリデン)ジフェノール、4,4’−(シクロヘキシリデン)ジフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−(シクロドデシリデン)ジフェノール 4,4’−(ビシクロ[2.2.1]ヘプチリデン)ジフェノール、4,4’−(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ジフェノール、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−オール、1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,3,3,4,6−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−オール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビ[インデン]−5,6’−ジオール(スピロビインダン)、ジヒドロキシベンゾフェノン(ビスフェノールK)、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ジシクロペンタジエニルビス(2,6−ジメチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビス(2−メチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビスフェノールなどがある。
【0079】
シアノエステルとしては、特に限定されないが、ジシアナトベンゼン、2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン、2,5−ジ−t−ブチル−1,3−ジシアナトベンゼン、4−クロロ−1,3−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、4,4’−シアナトビフェニル 2,2’−ジシアナトビフェニル、2,4−ジメチル−1,3−ジシアナトベンゼン、テトラメチルジシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,5−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン 1,3,6−トリシアナトナフタレン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−シアナトフェニル)メタン ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,3−ビス[4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]ベンゼン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、1,4−ビス[4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]−ベンゼン、及びこれらの混合物、並びに2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,3−ビス[4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]ベンゼン、1,4−ビス[4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]ベンゼン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(p− シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン、ジ(4−シアナトフェニル)ケトン、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、及びトリス(4−シアナトフェニル)ホスフェートのプレポリマーからなる群から選択されるシアネートエステルプレポリマーがある。
【0080】
一実施形態では、架橋剤はプライマーの重量を基準にして約0.1重量%超でよい。一実施形態では、架橋剤の存在量はプライマーの総重量を基準にして約0.5〜約75重量%の範囲である。別の実施形態では、架橋剤はプライマーの総重量を基準にして約5〜約60重量%で存在する。別の実施形態では、架橋剤はプライマーの総重量を基準にして約10〜約50重量%で存在する。別の実施形態では、架橋剤はプライマーの総重量を基準にして約20〜約40重量%で存在する。
【0081】
別の実施形態では、プライマーが超臨界二酸化炭素付着により塗布されているとき、架橋剤は気体状二酸化炭素を含有する流体に溶解又は分散させることができる。架橋剤は二酸化炭素の体積を基準にして約0.1〜約10体積%の量で二酸化炭素溶液に加えることができる。別の実施形態では、架橋剤は二酸化炭素の体積を基準にして約1〜約7体積%の量である。別の実施形態では、架橋剤は二酸化炭素の体積を基準にして約1〜約5体積%の量である。
【0082】
プライマーは周囲温度又は高温で架橋することができる。一実施形態では、プライマーは約室温〜約250℃の温度で架橋する。別の実施形態では、プライマーは約40〜約200℃の温度で架橋する。
【0083】
ラジカル開始剤を用いて架橋反応を促進することができる。一実施形態では、ラジカル開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロリド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸水素カリウム又は過酸化物である。一実施形態では、過酸化物としては、特に限定されないが、過酸化水素、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、α,αジメチルベンジルヒドロペルオキシド、α−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどがある。ラジカル開始剤の量は通例触媒量である。一実施形態では、ラジカル開始剤の量は約0.1〜20モル%である。別の実施形態では、この量は約1〜約5モル%である。
【0084】
一実施形態では、プライマーは二フッ化ビニリデンコポリマーであり、これはフッ化スルホニルとしてベース膜上にコートした後ラジカル開始剤と架橋剤を用いて架橋することができる。好ましい実施形態では、架橋は高温で過酸化物とトリアリルイソシアヌレートを用いることによって行われる。ある代表的な実施形態では、極性溶媒中のトリメチルシラン酸ナトリウム塩を用いてフッ化スルホニルを化学的に変換する。一旦スルホン酸誘導体に変換したら、このプライマーを酸性化してスルホン酸官能性コーティングを形成することができる。
【0085】
求核置換化学により架橋プライマーを得ることができる。一実施形態では、求核置換化学架橋反応用の架橋剤として、二−、三、及び多官能化フェノール、アミン、及びチオールを使用する。
【0086】
一実施形態では、フェノール性化合物としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2−(ジフェニルホスホリル)ヒドロキノン、ビス(2,6−ジメチルフェノール) 2,2’−ビフェノール、4,4−ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノール、2,2’,3,3’,6,6’−ヘキサメチルビフェノール、3,3’,5,5’−テトラブロモ−2,2’6,6’−テトラメチルビフェノール、3,3’−ジブロモ−2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−3,3’5−ジブロモビフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフェノール)(テトラブロモビスフェノールA)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)(テトラメチルビスフェノールA)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−アリルフェノール)、4,4’(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’−イソプロピリデンビス(3−フェニルフェノール) 4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールP)、4,4’−エチリデンジフェノール(ビスフェノールE)、4,4’オキシジフェノール、4,4’チオジフェノール、4,4’チオビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−スルホニルビス(2,6−ジメチルフェノール) 4,4’スルフィニルジフェノール、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAF)、4,4’(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジクロロエチレン(ビスフェノールC)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノール−F)、ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−(シクロペンチリデン)ジフェノール、4,4’−(シクロヘキシリデン)ジフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−(シクロドデシリデン)ジフェノール 4,4’−(ビシクロ[2.2.1]ヘプチリデン)ジフェノール、4,4’−(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ジフェノール、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−オール、1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,3,3,4,6−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−5−オール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビ[インデン]−5,6’−ジオール(スピロビインダン)、ジヒドロキシベンゾフェノン(ビスフェノールK)、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ジシクロペンタジエニルビス(2,6−ジメチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビス(2−メチルフェノール)、ジシクロペンタジエニルビスフェノールなどがある。
【0087】
アミン化合物の例としては、特に限定されないが、脂肪族アミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、メチレンジアミン、N−アミノエチルピラジン(AEP)、m−キシリレンジアミン(MXDA)など、芳香族アミン化合物、例えば、m−フェニレンジアミン(MPDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DADPS)、ジアミノジフェニルエーテルなど、第二又は第三アミン化合物、例えば、フェニルメチルジメチルアミン(BDMA)、ジメチルアミノメチルフェノール(DMP−10)、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、ピペリジン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、2,6−ジアミノピリジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ベンジジン、4,4’−ジアミノフェニルオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスホンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、6,6’−ジアミン−2,2’−ピリジル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,5−ビス(m−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(m−アミノフェニル)チアゾ(4,5−d)チアゾール、5,5’−ジ(m−アミノフェニル)−(2,2’)−ビス−(1,3,4−オキサジアゾリル)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(p−アミノフェニル)−2,2’−ジチアゾール、m−ビス(4−p−アミノフェニル−2−チアゾリル)ベンゼン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、N,N’−ビス(4−アミノベンジル)−p−フェニレンジアミン、及び4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、メラミン、2−アミノ−s−トリアジン、2−アミノ−4−フェニル−s−トリアジン、2−アミノ−4−フェニル−s−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジエチル−s−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−アミノ−4,6−ビス(p−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−アミノ−4−アニリノ−s−トリアジン、2−アミノ−4−フェノキシ−s−トリアジン、2−アミノ−4−クロロ−s−トリアジン、2−アミノ−4−アミノメチル−6−クロロ−s−トリアジン、2−(p−アミノフェニル)−4,6−ジクロロ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(p−アミノフェニル)−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(m−アミノフェニル)−s−トリアジン、4−アミノ−6−フェニル−s−トリアジン−2−オール及び6−アミノ−s−トリアジン−2,4−ジオールがある。
【0088】
一実施形態では、チオレート化合物としては、脂肪族チオール化合物、例えば、1,2−エタンチオール、1,3−プロパンチオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,14−テトラデカンジチオール、2,2−ジデシル−1,3−プロパンジチオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジチオール、など、芳香族チオール化合物、例えば、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、4−メチル−1,2−ベンゼンジチオール、3,4−ジメルカプト−フェノール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、4−クロロ−1,3−ベンゼンジチオール、9,10−アントラセンジチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジチオール、4,4’−オキシビス[ベンゼンチオール]、4,4’−チオビス[ベンゼンチオール]、4,4’−メチレンビス[ベンゼンチオール]、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[ベンゼンチオール]、1,4−フェニレンビス[(4−メルカプトフェニル)メタノン、4,4’−スルホニルビス[ベンゼンチオール]、ビス(4−メルカプトフェニル)メタノン、3,7−ジベンゾフランジチオール、4,4’−スルホニルビス[2−クロロ−ベンゼンチオール、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[ベンゼンチオール]、などがある。
【0089】
イオン交換材料は相溶化膜中コートされた内面と外面まで浸透する。任意の適当な方法で、ベース膜にイオン交換材料を含浸させる。一実施形態では、イオン交換材料は真空付着又は溶液付着により膜中に含浸させられる。溶液付着の場合、イオン交換材料、溶媒、及び場合により界面活性剤を含む溶液を調製する。溶媒は、イオン交換材料を溶解して溶液を形成するがベース膜上のプライマーを溶解しない任意のタイプの溶媒である。溶液は、前転ロールコーティング、逆転ロールコーティング、グラビアコーティング、ドクターコーティング、キスコーティング、浸漬、ブラシ塗り、塗装及び噴霧のような任意の慣用のコーティング技術により膜に塗布してベース膜の細孔中に浸透させることができる。溶液付着は米国再発行特許第RE37307号(援用により本明細書の内容の一部をなす)に記載されている。過剰の溶液はベース膜の表面から除去することができる。複合膜は、例えば膜をオーブン中に入れて乾燥することによって加熱して乾燥することができ、これによりイオン交換材料をコーティングに固く接着させる。加熱温度範囲は約60〜約300℃の範囲である。所望により、溶液塗布段階及び乾燥段階を繰り返してもよい。
【0090】
真空付着は、ベース膜の細孔中にイオン交換材料を含浸させてノードとフィブリルの表面を均一にコートするのに有効なである。真空付着において、イオン交換材料は、真空精密ろ過アセンブリを用いた真空吸引により、コートされたベース膜中に引き込まれる。
【0091】
イオン交換材料の量は、ベース膜内の細孔を完全に塞ぐか又は実質的に塞ぐのに適した量である。これにより、膜の厚さを通ってプロトンを伝導する連続的な通路を確立することができる。ある代表的な実施形態では、図2の複合膜20はベース膜22上のプライマーコーティング24に適用されたイオン交換材料48を含んでいる。この代表的な実施形態では、イオン交換材料48は実質的に細孔46を満たしてプライマー24に接着する。
【0092】
一実施形態では、イオン交換材料とベース膜の重量比は約1:10〜約10:1である。別の実施形態では、イオン交換材料とベース膜の重量比は約1:1〜約10:1である。
【0093】
複合膜は約0.25〜約10ミルの厚さを有することができる。別の実施形態では、複合膜は約0.5〜約5ミルの範囲の厚さを有し得る。別の実施形態では、複合膜は約0.75〜約3ミルの厚さを有し得る。
【0094】
別の実施形態では、イオン交換特性を有する複合膜を製造する方法が提供される。この方法は、多孔質ベース膜を相溶化させ、相溶化多孔質ベース膜にイオン交換材料を含浸させることを含んでおり、多孔質ベース膜は、プライマーを多孔質ベース膜の外面及び内面にコートし、プライマーを架橋することによって相溶化される。
【0095】
多孔質ベース膜、プライマー、イオン交換材料並びにプライマーを多孔質ベース膜の外面と内面にコートしプライマーを架橋する段階は上に記載した通りである。
【0096】
別の実施形態では、燃料電池用のプロトン交換膜が提供される。このプロトン交換膜は、相溶化多孔質ベース膜とイオン交換材料を含んでおり、前記イオン交換材料は相溶化多孔質ベース膜に含浸しており、多孔質ベース膜はプライマーを多孔質ベース膜の外面と内面にコートし、プライマーを架橋することにより相溶化されている。多孔質ベース膜、プライマー、イオン交換材料並びにプライマーを多孔質ベース膜の外面と内面にコートしプライマーを架橋する段階は上述した通りである。
【0097】
図3は、複合膜20を含むプロトン交換膜50の代表的な実施形態の概略図である。
【0098】
別の実施形態では、燃料電池用のプロトン交換膜を製造する方法が提供される。この方法は、多孔質ベース膜を相溶化し、その相溶化多孔質ベース膜をイオン交換材料で含浸することを含んでおり、多孔質ベース膜はプライマーを多孔質ベース膜の外面と内面にコートし、そのプライマーを架橋することにより相溶化される。
【0099】
多孔質ベース膜、プライマー、イオン交換材料、及びプライマーを多孔質ベース膜の外面と内面にコートしプライマーを架橋する段階は上記した通りである。
【0100】
変化又は変性させた性質又は特性を有する多孔質膜には多数の用途がある。例えば、複合膜は燃料電池にプロトン交換膜(PEM)として使用することもできるし、又は、特に限定されないが、液体ろ過、浄水、極性に基づく化学的選別、陽イオン−交換樹脂、化学的選別、ガス分離、電気分解、SO2電気分解、バッテリー、浸透気化、ガス分離、透析分離、クロロアルカリ生産及び電気化学的用途のような工業用電気化学、超酸触媒、又は酵素固定化用媒質としての用途を始めとする他の用途に使用することもできる。
【実施例】
【0101】
当業者が本開示をより良く実施することができるように、例示としてであって限定の意味はない以下の実施例を挙げる。
【実施例1】
【0102】
寸法約12インチ×12インチ、厚さ0.003インチのePTFE膜に、容器中で超臨界二酸化炭素付着により変性VF2−プライマーを一様にコートした。次に、このコーティングをラジカル的に架橋するために、1体積%のトリアリルイソシアヌレート、0.4体積%のトルエンジイソシアネート及び0.1体積%の2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン(Akzo Nobel Chemicals社からTRIGONOX(登録商標)101として市販されている)の溶液を超臨界二酸化炭素中40℃、1900psiで膜に付けた。過酸化物は架橋用組成物のほぼ3モル%であった。圧力を容器中でゆっくり250psiまで下げ、容器を200℃に加熱した。10分の期間の後、容器を冷却し通気し、膜を取り出した。
【0103】
このプライマーを、トリメチルシロネートナトリウム塩での後処理によりナトリウムスルホン化塩に変換した。この膜を浅い処理鍋に入れ、20mLのクロロホルム中0.15Mトリメチルシロネートナトリウム塩を膜上に注入した。約10分の期間後、膜を別の浅い処理鍋に移し、約150mLのクロロホルムで濯いだ。処理後、膜は、VF2−プライマー含有量が約20重量%と評価され、スルホネート含有量が700当量と評価された。
【0104】
VF2−ePTFEを、真空精密ろ過アセンブリを用いて、イオン交換材料、すなわち溶媒(イソプロパノール/水混合物中PFSAの20%溶液)中の5%PFSA(スルホネートレベルが1100当量でイオン交換能が0.91meq/gであるDupont社のNafion(登録商標)117)溶液で完全に濡らした。ePTFEを取り付け、PFSA溶液を真空吸引(27インチHg)により付着させた。ePTFEをひっくり返し、その裏面上に真空付着を繰り返した。ベース膜に2:1の割合でPFSAを含浸させた。濡らしたePTFEを130℃で1分乾燥させ、この全手順を、ろ液が装置を通り抜けなくなるまで繰り返した。
【0105】
この乾燥した膜を2つの半透明のPFSA−SO2F(Dupont社のNafイオン(登録商標)EW 920)フィルム(厚さ0.5〜1ミル)の間に挟み、非粘着性のエアゾールスプレー(Teflon(登録商標)その他のフッ素化溶媒)で被覆された2つのクロムメッキしたアルミニウムプレート間に入れ、240℃のTetrahedron Hot Pressの中央に置いた。プレートを、240℃、接触圧力で5分、次に4000psiで1分、そして8000psiで1分ホットプレスした。これらのプレートを取り出し、8000psiで室温まで冷却した。半透明の膜を酸性化した。これらの半透明の膜を35mlの2M KOH及び10mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に室温で1日浸した。半透明の膜を水に2時間浸し、1M H2SO4中で1日酸性化した。次に、半透明の膜を水に2時間浸し、空気乾燥した。この膜は10%ePTFE、1%プライマー及び89%イオン交換材料の最終組成を有していた。
【0106】
例示の目的で典型的な実施形態を説明して来たが、以上の説明は本発明を限定するものではない。従って、当業者は本発明の思想と範囲を逸脱することなく様々な修正、変更及び代替をなし得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相溶化多孔質ベース膜及びイオン交換材料を含み、前記イオン交換材料は相溶化多孔質ベース膜に含浸しており、多孔質ベース膜はプライマーを多孔質ベース膜の外面及び内面にコートし、プライマーを架橋することにより相溶化されている、複合膜。
【請求項2】
イオン交換材料が、ペルフルオロスルホン酸アイオノマー、フルオロアルキルスルホン酸基を有する芳香族ポリマー、部分的にフッ素化されたスルホン化アイオノマー、ペルフルオロアルキル系アイオノマー、スルホン化芳香族ポリマー、リン酸を有するポリイミダゾール、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリプロピレンオキシド、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリエーテルイミド、スルホン化ポリエステル、クロロスルホン化ポリエチレン又はスルホン化ポリ(フェニレンスルフィド)からなるアイオノマーである、請求項1記載の複合膜。
【請求項3】
ペルフルオロアルキル系アイオノマーが、ポリテトラフルオロエチレンスルホン酸又はポリペルフルオロスルホン酸アイオノマーからなる、請求項2記載の複合膜。
【請求項4】
部分的にフッ素化されたスルホン化アイオノマーが、スルホン化スチレンポリ二フッ化ビニリデン系コポリマー、ポリ(α,β,β−トリフルオロメチルスチレンスルホン酸)又は有機フルオロスルホン酸基若しくはその誘導体を有する芳香族ポリマーからなる、請求項2記載の複合膜。
【請求項5】
多孔質ベース膜が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリル及びメタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルホン、セルロース系ポリマー又はこれらの組合せからなる、請求項1記載の複合膜。
【請求項6】
多孔質ベース膜が延伸ポリテトラフルオロエチレンからなる、請求項5記載の複合膜。
【請求項7】
コートされたプライマーが約1.0〜約500nmの範囲の均一な厚さを有する、請求項1記載の複合膜。
【請求項8】
プライマーが、スルホニル官能基を有するフッ素化ビニル系コポリマー、ランダムなスルホン化を含有する炭化水素系ポリマー、ブロック状の混合又は傾斜したスルホン化を含有する炭化水素系ポリマー、スルホン化された親水性セグメント、疎水性のフッ素化セグメント、ビニル系、アクリル系又はスチレン系ポリマー及びコポリマーを含有する部分的にフッ素化されたブロックコポリマー及びポリ(酢酸ビニル)ポリマーを含む、請求項1記載の複合膜。
【請求項9】
プライマーが二フッ化ビニリデンコポリマーである、請求項8記載の複合膜。
【請求項10】
プライマーが、次式の構造を有する二フッ化ビニリデン及びスルホン化ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマーである、請求項9記載の複合膜。
【化1】

式中、kは約0〜約0.99である。
【請求項11】
プライマーが、ペルフルオロスルホン酸、スルホン化ペルフルオロスルホン酸ナトリウム、フッ化スルホニル−ペルフルオロスルホン酸又はペルフルオロスルホン酸ナトリウムポリマーからなる、請求項8記載の複合膜。
【請求項12】
イオン交換材料がベース膜内の細孔を少なくとも実質的に塞いでいる、請求項1記載の複合膜。
【請求項13】
イオン交換材料とベース膜との重量比が約1:10〜約10:1である、請求項1記載の複合膜。
【請求項14】
多孔質ベース膜を相溶化し、相溶化多孔質ベース膜にイオン交換材料を含浸させることを含み、多孔質ベース膜の外面及び内面にプライマーをコートし、プライマーを架橋することにより、多孔質ベース膜を相溶化する、複合膜を製造する方法。
【請求項15】
イオン交換材料が、ペルフルオロスルホン酸アイオノマー、フルオロアルキルスルホン酸基を有する芳香族ポリマー、部分的にフッ素化されたスルホン化アイオノマー、ペルフルオロアルキル系アイオノマー、スルホン化芳香族ポリマー、リン酸を有するポリイミダゾール、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、スルホン化ポリプロピレンオキシド、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリエーテルイミド、スルホン化ポリエステル、クロロスルホン化ポリエチレン又はスルホン化ポリ(フェニレンスルフィド)からなるアイオノマーである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ペルフルオロアルキル系アイオノマーがポリテトラフルオロエチレンスルホン酸又はポリペルフルオロスルホン酸アイオノマーからなる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
部分的にフッ素化されたスルホン化アイオノマーが、スルホン化スチレンポリ二フッ化ビニリデン系コポリマー、ポリ(α,β,β−トリフルオロメチルスチレンスルホン酸)又は有機フルオロスルホン酸基若しくはその誘導体を有する芳香族ポリマーからなる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
ベース膜が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリル及びメタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルホン、セルロース系ポリマー又はこれらの組合せからなる、請求項14記載の方法。
【請求項19】
多孔質ベース膜が延伸ポリテトラフルオロエチレンからなる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
溶液付着、高圧溶液付着、真空ろ過、塗装、グラビアコーティング、エアブラシ又は超臨界二酸化炭素付着によってベース膜にプライマーを塗布する、請求項14記載の方法。
【請求項21】
コートされたプライマーが約1.0〜約500nmの範囲の均一な厚さを有する、請求項14記載の方法。
【請求項22】
プライマーが、スルホニル官能基を有するフッ素化ビニル系コポリマー、ランダムなスルホン化を含有する炭化水素系ポリマー、ブロック状の混合された若しくは傾斜したスルホン化を含有する炭化水素系ポリマー、スルホン化された親水性セグメント、疎水性のフッ素化セグメント、ビニル系、アクリル系若しくはスチレン系ポリマー及びコポリマーを含有する部分的にフッ素化されたブロックコポリマー又はポリ(酢酸ビニル)系ポリマーからなる、請求項14記載の方法。
【請求項23】
プライマーが二フッ化ビニリデンコポリマーである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
プライマーが、ペルフルオロスルホン酸、スルホン化された−ペルフルオロスルホン酸ナトリウム、フッ化スルホニル−ペルフルオロスルホン酸又はペルフルオロスルホン酸ナトリウムポリマーからなる、請求項22記載の方法。
【請求項25】
プライマーを熱、UV、電子線、コロナ、プラズマ又は化学的に架橋する、請求項14記載の方法。
【請求項26】
プライマーを架橋剤によって架橋する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
架橋剤が、イソシアヌレート、ブロックイソシアヌレート、ウレタン、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、ビニルエーテル、ペルフルオロビニルエーテル、ビス−ベンゾシクロブテン、ビニルケトン、アセチレン、シアノエステル又はベンジル及びベンジルエーテルからなる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
架橋剤がトリアリルイソシアヌレートである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
溶液付着、真空付着、前転ロールコーティング、逆転ロールコーティング、グラビアコーティング、ドクターコーティング、キスコーティング、浸漬、ブラシ塗り、塗装及び噴霧によりイオン交換材料を含浸させる、請求項14記載の方法。
【請求項30】
真空付着又は溶液付着によりイオン交換材料を膜中に含浸させる、請求項14記載の方法。
【請求項31】
イオン交換材料がベース膜内の細孔を少なくとも実質的に塞ぐ、請求項14記載の方法。
【請求項32】
イオン交換材料とベース膜との重量比が約1:10〜約10:1である、請求項14記載の方法。
【請求項33】
相溶化多孔質ベース膜及びイオン交換材料を含み、前記イオン交換材料が相溶化多孔質ベース膜に含浸しており、多孔質ベース膜はプライマーを多孔質ベース膜の外面及び内面にコートし、プライマーを架橋することにより相溶化されている、プロトン交換膜。
【請求項34】
多孔質ベース膜を相溶化し、相溶化多孔質ベース膜にイオン交換材料を含浸させることを含み、多孔質ベース膜の外面及び内面をプライマーでコートし、プライマーを架橋することによって多孔質ベース膜を相溶化する、燃料電池用のプロトン交換膜を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−155233(P2010−155233A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289977(P2009−289977)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】