説明

複合荷電粒子加工観察装置

【課題】それぞれ直交に配置された集束イオンビーム鏡筒と電子ビーム鏡筒を有する複合荷電粒子加工観察装置において、試料ステージを、誤操作なく操作性の良い動作をさせる。
【解決手段】観察像を見て観察位置を動かす際、集束イオンビームと電子ビームの像表示部のそれぞれの座標系で指定した試料ステージ2の移動方向に対して、一つの試料ステージ2をそれぞれの座標系に対応した方向に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビームで加工した試料を荷電粒子顕微鏡で観察する複合荷電粒子顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集束イオンビーム装置は、試料の断面加工観察や電子顕微鏡観察用試料の作製などに使用されている。特に電子ビーム装置を兼ね備えた複合荷電粒子加工観察装置は、集束イオンビームで、加工中もしくは加工後の断面をその場で電子ビームにより観察することが可能であるため、連続断面観察や試料作製に広く使用されている。
【0003】
一般的な複合荷電粒子加工観察装置では、集束イオンビームと電子ビームの入射方向は90°以下で配置されており、加工した断面を斜め方向から電子ビームで覗き込む形態をとっている。近年では、複合荷電粒子複合装置を用いて、断面加工とその連続断面観察画像を用いて得られた画像を3次元画像に再構築した3次元解析技術が幅広い分野で使用されている。しかし、従来の複合荷電粒子加工観察装置では、加工した断面を90°以下の方向から観察を行っているため、斜め方向からの観察像を平面画像に補正する必要がある。また、観察部位の微細化に伴い、加工中の試料を走査透過電子顕微鏡により観察する要求も高まっている。
【0004】
このようなニーズに応えるものの1つとして、電子ビーム・集束イオンビームを直交に配置した複合荷電粒子加工観察装置を用いた技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
このように構成された装置によれば、試料ステージを動かすことなく、加工した断面を垂直方向により観察を行うことが可能となった。また、電子ビームの入射方向に透過電子検出器を配置して電子顕微鏡用薄膜試料の膜厚モニタリングや走査透過電子顕微鏡像のリアルタイム取得が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−231720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の複合荷電粒子加工観察装置の場合、イオンビームと電子ビームは同じ面(例えば、試料表面)内を観察しているため、各々のビームで得られる観察像の方向とステージ駆動方向は一致している。一方、二つのビームを直交に配置した複合荷電粒子加工観察装置においては、各々のビームから得られる観察像は、直交する異なる面(例えば、試料表面と側面)を表示しているため、各々の画像の縦横の方向とステージの軸の動作方向は一致していない。そのため、二つのビームを直交に配置した複合荷電粒子加工観察装置作業者が集束イオンビームもしくは電子ビームの観察像を見て試料の加工観察位置の調整を行う際、誤動作を招きやすいことが課題であった。
【0008】
本発明は、直交に配置された2つの荷電粒子ビームを有する装置の試料ステージを、操作性良く操作可能な複合荷電粒子加工観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る複合荷電粒子加工観察装置は、2つの荷電粒子ビームが直交に配置されたFIB/SEM複合荷電粒子加工観察装置において、FIB/SEMそれぞれの表示部に合わせた方向のステージ軸をステージ制御部がそれぞれ選択して動作させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る複合荷電粒子加工観察装置は、試料室と、直交する3つの軸方向に駆動可能な試料ステージと、試料ステージを駆動するためのステージ制御部と、試料ステージ上に保持された試料に集束イオンビームを照射するための集束イオンビーム鏡筒と、集束イオンビームに対して略直交する方向から試料に電子ビームを照射するための電子ビーム鏡筒と、集束イオンビームもしくは電子ビームを照射することにより試料から発生する信号を検出する信号検出器と、集束イオンビームを走査照射し、信号検出器により得られた信号を像表示する集束イオンビーム像表示部と、電子ビームを走査照射し、信号検出器により得られた信号を像表示する電子ビーム像表示部を備えた複合荷電粒子加工観察装置において、ステージ制御部は、集束イオンビーム像表示部で入力した試料ステージを移動させる軸方向に対応する試料ステージの軸方向に試料ステージを移動可能であり、かつ、電子ビーム像表示部で入力した試料ステージを移動させる軸方向に対応する試料ステージの軸方向に試料ステージを移動可能である。これにより、複数の像表示部のそれぞれの座標系で指定した試料ステージの移動方向に対して、一つの試料ステージをそれぞれの座標系に対応した方向に移動させることが可能である。
【0011】
また、本発明に係る複合荷電粒子加工観察装置は、ステージ制御部が集束イオンビーム像表示部で集束イオンビーム像上の位置を指定し、位置が集束イオンビーム像の中央に来るように試料ステージを駆動可能であり、電子ビーム像表示部で電子ビーム像上の位置を指定し、位置が電子ビーム像の中央に来るように試料ステージを駆動可能である。
【0012】
また、本発明に係る複合荷電粒子加工観察装置は、試料ステージは、集束イオンビームもしくは電子ビームのいずれか一方の照射軸に対して略平行な回転駆動軸を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る複合荷電粒子加工観察装置によれば、直交に配置された2つの荷電粒子ビームを有する複合荷電粒子加工観察装置において、作業者が集束イオンビームもしくは電子ビームの観察像を見て試料の加工観察位置の調整を行う際に、各々の観察像の座標系にあわせてステージ駆動をおこなうことができるため、誤操作による不具合を招くことなく、試料の位置調整を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る複合荷電粒子加工観察装置の構成図である。
【図2】本発明で集束イオンビーム観察像からステージを動作する際のステージ動作の概略図である。
【図3】本発明で電子ビーム観察像からステージを動作する際のステージ動作の概略図である。
【図4】本発明で集束イオンビームに対して略平行な回転軸を有する場合のステージ動作の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る複合荷電粒子加工観察装置の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の複合荷電粒子加工観察装置は、集束イオンビーム像表示部9および電子ビーム像表示部10に接続したステージ制御部3を備えている。集束イオンビーム像表示部9および電子ビーム像表示部10は、集束イオンビームもしくは電子ビームを照射することにより試料11から発生する信号を信号検出器により検出し、得られた信号を時系列に表示することで観察像を表示する。なお、試料から発生する信号とは、荷電粒子を照射したことにより試料から発生する電子・イオン、X線などの二次信号、または、照射したビーム自身が試料11により散乱や吸収を受けた一次信号などがあげられる。
【0016】
集束イオンビーム像表示部9および電子ビーム像表示部10で表示する像は、ビーム照射方向に対して略垂直な面の横方向をX、縦方向をY軸方向、また、ビーム照射方向と平行な方向をZ軸として表示する。
【0017】
このとき、集束イオンビーム像のX、Y、Z方向(それぞれ、集束イオンビーム像のX軸方向9X、Y軸方向9Y、Z軸方向:図示せず)は、それぞれ試料ステージの横方向駆動軸(X軸)2X、試料ステージの高さ方向駆動軸(Z軸)2Z、試料ステージの縦方向駆動軸(Y軸)2Yに相当している。例えば、図2に示すように、左図の集束イオンビーム像で、集束イオンビーム像のX軸方向9X、Y軸方向9Yに試料ステージ2を移動させる場合、集束イオンビーム表示部9からステージ制御部3に、集束イオンビーム像のX軸方向9X、Y軸方向9Yへの動作指示を出すと、その指示を受けたステージ制御部3は、右図の試料ステージ2に試料ステージの横方向駆動軸(X軸)2X、試料ステージの高さ方向駆動軸(Z軸)2Zの駆動命令を出し、試料ステージの横方向駆動軸(X軸)2X、試料ステージの高さ方向駆動軸(Z軸)2Zの方向に試料ステージ2を移動させる。これにより、集束イオンビーム観察像では、集束イオンビーム像のX軸方向9X、Y軸方向9Yへ試料11が移動する。
【0018】
一方、電子ビーム像のX、Y、Z方向(それぞれ、電子ビーム像のX軸方向10X、Y軸方向10Y、Z軸方向:図示せず)は、それぞれ試料ステージの横方向駆動軸(X軸)2X、試料ステージの縦方向駆動軸(Y軸)2Y、試料ステージの高さ方向駆動軸(Z軸)2Zに相当する。図3に示すように、上図の電子ビーム像で、電子ビーム像のX軸方向10X、Y軸方向10Yに試料ステージ2を移動させる場合、電子ビーム表示部10からステージ制御部3に、電子ビーム像のX軸方向10X、Y軸方向10Yへの動作指示を出すと、その指示を受けたステージ制御部3は、下図の試料ステージ2に試料ステージの横方向駆動軸(X軸)2X、試料ステージの縦方向駆動軸(Y軸)2Yの駆動命令を出す。これにより、試料ステージ2は試料ステージの横方向駆動軸(X軸)2X、試料ステージの縦方向駆動軸(Y軸)2Y方向に駆動し、電子ビーム観察像では、電子ビーム像のX軸方向10X、Y軸方向10Yへ試料11が移動する。
【0019】
これは、Z方向への移動を指定するときも同様であり、集束イオンビーム画像で集束イオンビーム像のZ軸方向9Zの移動指示をした場合には、試料ステージ2の試料ステージの縦方向駆動軸(Y軸)2Yを駆動し、電子ビーム像で電子ビーム像のZ軸方向10Zの移動指示を行った場合には、試料ステージの高さ方向駆動軸(Z軸)2Zを駆動させる。
【0020】
観察位置の移動は、上記のように移動方向の指定だけではなく、観察像内の特定の位置を指定して、指定位置が、指定を行った観察像の中央に来るように、試料ステージ2を移動させる場合にも、ステージ制御部3は各々の観察像の座標系に合わせてステージ軸を駆動させる。
【0021】
また、試料ステージ2が、一方のビーム照射方向に対して略平行な方向に回転軸(R軸)を有する場合、一方のビームに対しては試料ステージ2が回転動作を行うのに対して、もう一方のビームに対しては、試料ステージ2は傾斜動作を行うことになる。図4に示すように、本実施形態の複合荷電粒子加工観察装置において、イオンビーム照射方向に対して、略平行な方向に回転駆動軸を有する場合の動作を示す。ここで、図4の左下図は集束イオンビーム像、右上図は電子ビーム像、右下図は試料ステージ2を示している。
【0022】
試料ステージの集束イオンビーム照射方向に平行な回転方向駆動軸2Rは、集束イオンビーム像表示部9で集束イオンビームに平行な回転軸を中心に時計回りの回転方向9Rに回転移動の指示がなされた際に駆動する。一方、電子ビーム像表示部10では、電子ビームに略垂直な回転軸を中心に時計回りの回転方向10Tに傾斜移動の指示がなされた際に試料ステージの集束イオンビーム照射方向に平行な回転方向駆動軸2Rは、駆動する。
【符号の説明】
【0023】
1・・・試料室
2・・・試料ステージ
3・・・ステージ制御部
4・・・集束イオンビーム鏡筒
5・・・電子ビーム鏡筒
6・・・信号検出器
7・・・集束イオンビーム走査部
8・・・電子ビーム走査部
9・・・集束イオンビーム像表示部
10・・・電子ビーム像表示部
11・・・試料
2X・・・試料ステージの横方向駆動軸(X軸)
2Y・・・試料ステージの縦方向駆動軸(Y軸)
2Z・・・試料ステージの高さ方向駆動軸(Z軸)
9X・・・集束イオンビーム像のX軸方向
9Y・・・集束イオンビーム像のY軸方向
10X・・・電子ビーム像のX軸方向
10Y・・・電子ビーム像のY軸方向
2R・・・試料ステージの集束イオンビーム照射方向に平行な回転方向駆動軸
9R・・・集束イオンビームに平行な回転軸を中心に時計回りの回転方向
10T・・・電子ビームに略垂直な回転軸を中心に時計回りの回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料室と、
直交する3つの軸方向に駆動可能な試料ステージと、
前記試料ステージを駆動するためのステージ制御部と、
前記試料ステージ上に保持された試料に集束イオンビームを照射するための集束イオンビーム鏡筒と、
前記集束イオンビームに対して略直交する方向から前記試料に電子ビームを照射するための電子ビーム鏡筒と、
前記集束イオンビームもしくは前記電子ビームを照射することにより前記試料から発生する信号を検出する信号検出器と、
前記集束イオンビームを走査照射し、前記信号検出器により得られた信号を像表示する集束イオンビーム像表示部と、
前記電子ビームを走査照射し、前記信号検出器により得られた信号を像表示する電子ビーム像表示部を備えた複合荷電粒子加工観察装置において、
前記ステージ制御部は、前記集束イオンビーム像表示部で入力した前記試料ステージを移動させる軸方向に対応する前記試料ステージの軸方向に前記試料ステージを移動可能であり、かつ、前記電子ビーム像表示部で入力した前記試料ステージを移動させる軸方向に対応する前記試料ステージの軸方向に前記試料ステージを移動可能である複合荷電粒子加工観察装置。
【請求項2】
前記ステージ制御部は、前記集束イオンビーム像表示部で集束イオンビーム像上の位置を指定し、前記位置が前記集束イオンビーム像の中央に来るように前記試料ステージを駆動可能であり、
電子ビーム像表示部で電子ビーム像上の位置を指定し、前記位置が前記電子ビーム像の中央に来るように前記試料ステージを駆動可能である請求項1に記載の複合荷電粒子加工観察装置。
【請求項3】
前記試料ステージは、集束イオンビームもしくは電子ビームのいずれか一方の照射軸に対して略平行な回転駆動軸を有する請求項1または2に記載の複合荷電粒子加工観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−198581(P2011−198581A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63338(P2010−63338)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】