説明

複合試料中のステロイド化合物の質量分析

本発明は、質量分析によるステロイド化合物の定量的測定に関する。特定の態様において、本発明は、質量分析による複数の試料からのステロイド化合物の定量的測定の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、質量分析によるステロイド化合物の定量的測定に関する。特定の態様において、本発明は、質量分析による複数の試料からのステロイド化合物の定量的測定の方法に関する。
【0002】
発明の背景
ステロイド化合物は、4つの環に配置された17個の炭素原子を基本として有し、ステロール及び胆汁酸、副腎及び性ホルモン、ジギタリス化合物などの特定の天然薬物、並びに特定のビタミン及び関連化合物(ビタミンD、ビタミンD類似体及びビタミンD代謝物など)を含む多数の天然に存在する又は合成脂溶性有機化合物のいずれかである。
【0003】
多くのステロイド化合物は、生物学的に重要である。例えば、ビタミンDは、カルシウム(Ca2+)恒常性の正の制御に重要な生理学的役割を有する必須栄養素である。ビタミンDは、日光への曝露により皮膚で新たに産生され得る。或いはビタミンDは、食事から吸収され得る。2つの形態のビタミンD、すなわち、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)とビタミンD(コレカルシフェロール)が存在する。ビタミンDは、動物により新規に合成される形である。これは、米国で製造される乳製品及び特定の食品に添加される一般的な栄養補助食品でもある。食事性及び内因的に合成されたビタミンDは、生物活性代謝物を生ずるために代謝活性化を受けなければならない。ヒトにおいて、ビタミンDの活性化の最初の段階は、主として肝臓で起こり、中間代謝物25−ヒドロキシコレカルシフェロール(カルシフェジオール;25OHD)を生成するヒドロキシル化を伴う。カルシフェジオールは、循環におけるビタミンDの主な形である。循環25OHDは、次に腎臓により変換されて、最も高い生物学的活性を有するビタミンDの代謝物であると一般的に考えられている1,25−ジヒドロキシビタミンD(カルシトリオール;1,25(OH))を生ずる。
【0004】
ビタミンDは、真菌及び植物源に由来する。多くの市販の栄養補助食品は、コレカルシフェロール(ビタミンD)ではなくエルゴカルシフェロール(ビタミンD)を含む。米国において入手できる唯一の高い効力の処方箋薬の形のビタミンDであるドリスドル(Drisdol)は、エルゴカルシフェロールを用いて製剤化されている。ビタミンDは、ヒトにおいてビタミンDと同様の経路の代謝活性化を受けて、代謝物25OHD及び1,25(OH)を生ずる。ビタミンDとビタミンDは、ヒトにおいて生物学的に同等であると長年にわたり推測されていたが、最近の報告で、これらの2つの形態のビタミンDの生物学的活性及び生物学的利用能の差異があり得ることが示唆されている(Armasら、(2004年)、J. Clin. Endocrinol. Metab.、89巻、5387〜5391頁)。
【0005】
ビタミンD、不活性ビタミンD前駆体の測定は、臨床の場ではまれである。むしろ、25−ヒドロキシビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD及び総25−ヒドロキシビタミンD(「25OHD」)の血清レベルは、ビタミンD栄養状態及び特定のビタミンD類似体の有効性の有用な指標である。25OHDの測定は、カルシウム代謝の障害の診断及び管理に一般的に用いられている。この点に関して、25OHDの低いレベルは、低カルシウム血症、低リン酸血症、二次性副甲状腺機能亢進症、アルカリホスファターゼの上昇、成人における骨軟化症及び小児におけるくる病などの疾患に関連するビタミンDの欠乏を示す。ビタミンD中毒の疑いのある患者において、25OHDのレベルの上昇により、この障害を高カルシウム血症を引き起こす他の障害と区別することができる。
【0006】
1,25(OH)Dの測定も臨床の場で用いられる。特定の疾患状態は、1,25(OH)Dの循環レベルに反映され、例えば、腎疾患及び腎不全は、1,25(OH)Dの低いレベルをしばしばもたらし得る。1,25(OH)Dのレベルの上昇は、過剰な副甲状腺ホルモンを示し得るものであり、或いはサルコイドーシス又はある種のリンパ腫など特定の疾患を示し得る。
【0007】
ビタミンD代謝物の検出は、25OHD及び25OHDに対して共特異的な抗体を用いた放射免疫測定法により実施されている。現在の免疫学に基づくアッセイは、25OHD及び25OHDを別々に分析しないため、他の試験を用いずにビタミンDの栄養欠乏の原因を確定することができない。質量分析を用いて特定のビタミンD代謝物を検出する方法を開示する報告が公表された。一部の報告において、質量分析の前にビタミンD代謝物が誘導体化されたが、他の報告では、それらが誘導体化されなかった。例えば、2007年12月28日に出願されたHolmquistら、米国特許出願第11/946765号;Yeung Bら、J Chromatogr.、1993年、645巻(1号)、115〜23頁;Higashi Tら、Steroids.、2000年、65巻(5号)、281〜94頁;Higashi Tら、Biol Pharm Bull、2001年、24巻(7号)、738〜43頁;Higashi Tら、J Pharm Biomed Anal.、2002年、29巻(5号)、947〜55頁;Higashi Tら、Anal. Bioanal Chem、2008年、391巻、229〜38頁;及びAronovら、Anal Bioanal Chem、2008年、391巻、1917〜30頁は、質量分析の前に代謝物を誘導体化することにより種々のビタミンD代謝物を検出する方法を開示している。非誘導体化ビタミンD代謝物を検出する方法は、2005年4月6日に出願された米国特許出願第11/101,166号及び2006年3月21日に出願された第11/386,215号においてClarkeら並びに2004年10月24日に出願された米国特許出願第10/977,121号においてSinghらにより報告されている。クックソン型試薬、具体的には4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)及び4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQ−TAD)によるビタミンDの誘導体化を開示している報告も公表された。Aberhart Jら、J. Org. Chem.、1976年、41巻(12号)、2098〜2102頁及びKamao Mら、J Chromatogr.、B 2007、859巻、192〜200頁を参照のこと。
【0008】
発明の概要
本発明は、単一の質量分析により複数の試験試料のそれぞれにおけるステロイド化合物の量を検出する方法を提供する。該方法は、各試験試料を別々に処理して複数の処理済み試料を調製するステップであって、処理の結果として、各処理済み試料中のステロイド化合物が他の処理済み試料中のステロイド化合物と質量分析により区別できる、ステップと;処理済み試料を合せて複合試料を調製するステップと;質量分析により検出できる1つ又は複数のイオンを発生させるのに適する条件下で複合試料をイオン化源にさらすステップであって、各処理済み試料からのステロイド化合物から発生する1つ又は複数のイオンが他の処理済み試料からのステロイド化合物からの1つ又は複数のイオンと異なっている、ステップと;質量分析により各処理済み試料からのステロイド化合物からの1つ又は複数のイオンの量を検出するステップと;各処理済み試料からのステロイド化合物からの1つ又は複数のイオンの量を各試験試料中のステロイド化合物の量と関連づけるステップとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、試験試料を処理するステップは、各試験試料を、誘導体化ステロイド化合物を得るのに適する条件下で異なる誘導体化剤にさらすステップを含む。いくつかの実施形態において、1つの試験試料は、試料を誘導体化剤にさらすことなく処理してもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、複数の試験試料の処理に用いる異なる誘導体化剤は、互いの同位体バリアントである。いくつかの実施形態において、異なる誘導体化剤は、クックソン型誘導体化剤であり、例えば、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)、4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQTAD)、4−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(NPTAD)、4−フェロセニルメチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(FMTAD)及びそれらの同位体バリアントからなる群から選択されるクックソン型誘導体化剤などである。1つの関連実施形態において、クックソン型誘導体化剤は、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の同位体バリアントである。特定の実施形態において、複数の試料は、2つの試料を含み、第1のクックソン型誘導化試薬は、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)であり、第2のクックソン型誘導化試薬は、13−4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(13−PTAD)である。
【0011】
いくつかの実施形態において、ステロイド化合物は、ビタミンD又はビタミンD関連化合物である。関連実施形態において、ステロイド化合物は、ビタミンD、ビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25OHD)及び1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25OHD)からなる群から選択される。特定の実施形態において、ステロイド化合物は、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)又は25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)である。
【0012】
上述の方法は、複数の試験試料のそれぞれにおける2つ又はそれ以上のステロイド化合物の分析のために実施することができる。これらの実施形態の一部において、各試験試料中の2つ又はそれ以上のステロイド化合物は、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)からなる群から選択される少なくとも1つのステロイド化合物を含み得る。いくつかの実施形態において、各試験試料中の2つ又はそれ以上のステロイド化合物は、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)である。
【0013】
特定の実施形態において、2つの試験試料のそれぞれにおける1つ若しくは複数のビタミンD又はビタミンD関連化合物の量を単一の質量分析により測定する。この実施形態において、1つ若しくは複数のビタミンD又はビタミンD関連誘導体を得るのに適する条件下で4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の第1の同位体バリアントに第1の試験試料をさらすことによって第1の処理済み試料を調製し;1つ若しくは複数のビタミンD又はビタミンD関連誘導体を得るのに適する条件下で4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の第2の同位体バリアントに第2の試験試料をさらすことによって第2の処理済み試料を調製し、ここでPTADの第1及び第2の同位体バリアントが質量分析により区別できるものであり;第1の処理済み試料を第2の処理済み試料と合せて複合試料を調製し;質量分析により検出できる1つ又は複数のイオンを得るのに適する条件下で複合試料中の各処理済み試料からの1つ若しくは複数のビタミンD又はビタミンD関連誘導体をイオン化源にさらし、ここで第1の処理済み試料からの各ビタミンD又はビタミンD関連誘導体からの1つ又は複数のイオンが第2の処理済み試料からのビタミンD又はビタミンD関連誘導体からの1つ又は複数のイオンと異なっており;各処理済み試料からの1つ若しくは複数のビタミンD又はビタミンD関連誘導体の量を質量分析により測定し;測定されたイオンの量を第1又は第2の試験試料中のビタミンD又はビタミンD関連誘導体の量と関連づける。
【0014】
いくつかの特定の実施形態において、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の第1の同位体バリアントは、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)であり、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の第2の同位体バリアントは、13−4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(13−PTAD)である。
【0015】
いくつかの特定の実施形態において、1つ若しくは複数のビタミンD又はビタミンD関連化合物は、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)からなる群から選択される。いくつかの関連する特定の実施形態において、1つ若しくは複数のビタミンD又はビタミンD関連化合物は、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)を含む。いくつかの関連する特定の実施形態において、1つ若しくは複数のビタミンD又はビタミンD関連化合物は、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)である。
【0016】
いくつかの実施形態において、複合試料を、イオン化源にさらす前に抽出カラム及び分析カラムにかける。いくつかの関連する実施形態において、抽出カラムは、固相抽出(SPE)カラムである。他の関連する実施形態において、抽出カラムは、乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)カラムである。いくつかの実施形態において、分析カラムは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムである。
【0017】
2つ又はそれ以上の抽出カラム、分析カラム及びイオン化源を用いる実施形態において、2つ又はそれ以上のこれらの構成要素は、自動試料処理及び分析を可能にするためにオンライン式で接続することができる。
【0018】
本明細書で述べた方法において、質量分析は、タンデム質量分析であってよい。タンデム質量分析を用いる実施形態において、タンデム質量分析は、例えば、多重反応モニタリング、前駆体イオンスキャン又は生成物イオンスキャンを含む当技術分野で公知のいずれかの方法により実施することができる。
【0019】
本明細書で述べた方法において、ステロイド化合物は、当技術分野で公知のいずれかの適切なイオン化法によりイオン化することができる。いくつかの実施形態において、イオン化源は、レーザーダイオード熱脱離(LDTD)イオン化源である。
【0020】
好ましい実施形態において、試験試料は、血漿又は血清などの生物学的試料を含む。
【0021】
本明細書で用いているように、「複合試料」という用語は、2つ又はそれ以上の試料をプールして単一「複合」試料を調製することにより調製し、次に質量分析にかける試料を意味する。本明細書で述べた方法において、2つ又はそれ以上の試験試料をそれぞれ別々に処理して、複数の別々に処理された試料を調製する。これらの複数の別々に処理された試料を次にプールして、単一「複合」試料を調製し、これを次に質量分析にかける。
【0022】
本明細書で用いているように、「ステロイド化合物」という用語は、4つの環に配置された17個の炭素原子を基本として有し、ステロール及び胆汁酸、副腎及び性ホルモン、ジギタリス化合物などの特定の天然薬物、並びに特定のビタミン及び関連化合物(ビタミンD、ビタミンD類似体及びビタミンD代謝物など)を含む多数の天然に存在する又は合成脂溶性有機化合物のいずれかを意味する。
【0023】
本明細書で用いているように、「ビタミンD又はビタミンD関連化合物」という用語は、天然若しくは合成形のビタミンD又はビタミンD代謝の中間体及び生成物などのビタミンDの変換により生成したビタミンDに関連するいずれかの化学種を意味する。例えば、ビタミンDは、ビタミンD及びビタミンDの1つ又は複数を意味し得る。ビタミンDは、ビタミンDの変換により生成した化学種と区別するために「栄養」ビタミンDとも呼ばれる。ビタミンD関連化合物は、ビタミンD若しくはビタミンDの類似体の生体内変化により生成した化学種、又はビタミンD若しくはビタミンDに関連する化学種を含み得る。ビタミンD関連化合物、具体的にはビタミンD代謝物は、動物の循環に見いだすことができ、且つ/又は動物などの生物有機体により生成される可能性がある。ビタミンD代謝物は、天然に存在する形のビタミンDの代謝物であり得又は合成ビタミンD類似体の代謝物であり得る。特定の実施形態において、ビタミンD関連化合物は、25−ヒドロキシビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD、1α,25−ジヒドロキシビタミンD及び1α,25−ジヒドロキシビタミンDからなる群から選択される1つ又は複数のビタミンD代謝物を含み得る。
【0024】
本明細書で用いているように、「誘導体化」は、2つの分子を反応させて、新しい分子を生成することを意味する。したがって、誘導体化剤は、他の物質と反応して該物質を誘導体化する作用剤である。例えば、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)は、ビタミンD代謝物と反応させて、PTAD誘導体化ビタミンD代謝物を生成させることができる誘導体化試薬である。
【0025】
本明細書で用いているように、「異なる誘導体化剤」は、質量分析により区別することができる誘導体化剤である。1例として、同じ誘導体化剤の2つの同位体バリアントは、質量分析により区別することができる。他の例として、同じ誘導体化剤のハロゲン化変異型も質量分析により区別することができる。例えば、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)などの同じクックソン型作用剤のハロゲン化及び非ハロゲン化異形を用いることができる。さらに、異なるハロゲンで、又は異なる数のハロゲンでハロゲン化されたこと以外は同じクックソン型作用剤の2つのハロゲン化バリアントを用いることができる。他の例として、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)、4−メチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(MTAD)及び4−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(NPTAD)などの2つの異なる同じクックソン型作用剤を用いることができる。上の例は、質量分析により区別することができる誘導体化剤の原則を例示するものである。上のいずれかの組合せを含む他の例は、当業者により理解されるように可能であり得る。
【0026】
本明細書で用いているように、ステロイド化合物の誘導体化形の名称は、誘導体化の性質に関する表示を含む。例えば、25−ヒドロキシビタミンDのPTAD誘導体は、PTAD−25−ヒドロキシビタミンD(又はPTAD−25OHD)と示す。
【0027】
本明細書で用いているように、「クックソン型誘導体化剤」は、4−置換1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン化合物である。具体例としてのクックソン型誘導体化剤は、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)、4−メチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(MTAD)、4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQTAD)、4−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(NPTAD)及び4−フェロセニルメチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(FMTAD)などである。さらに、クックソン型誘導体化剤の同位体標識変体をいくつかの実施形態で用いることができる。例えば、13−PTAD同位体バリアントは、通常のPTADより6質量単位重く、いくつかの実施形態で用いることができる。クックソン型試薬によるビタミンD及びビタミンD関連化合物を含むステロイド化合物の誘導体化は、いずれかの適切な方法により実施することができる。例えば、2007年12月28日に出願されたHolmquistら、米国特許出願第11/946765号;Yeung Bら、J Chromatogr.、1993年、645巻(1号)、115〜23頁;Higashi Tら、Steroids.、2000年、65巻(5号)、281〜94頁;Higashi Tら、Biol Pharm Bull.、2001年、24巻(7号)、738〜43頁;Higashi Tら、J Pharm Biomed Anal.、2002年、29巻(5号)、947〜55頁;Higashi Tら、Anal. Biochanal Chem、2008年、391巻、229〜38頁;及びAronovら、Anal Bioanal Chem、2008年、391巻、1917〜30頁を参照のこと。
【0028】
本明細書で開示した方法の特定の好ましい実施形態において、質量分析を陽イオンモードで実施する。或いは、質量分析を陰イオンモードで実施する。例えば、大気圧化学イオン化(APCI)又はエレクトロスプレーイオン化(ESI)などの様々なイオン化源を本発明の実施形態において用いることができる。特定の実施形態において、ビタミンD及びビタミンD関連化合物を含むステロイド化合物をAPCIを用いて陽イオンモードで測定する。
【0029】
好ましい実施形態において、1つ又は複数の別々に検出できる内部標準を試料に供給し、その量も試料中で測定する。これらの実施形態において、試料中に存在する対象の分析物(単数又は複数)及び内部標準(単数又は複数)の両方のすべて又は一部をイオン化して、質量分析計で検出できる複数のイオンを発生させ、それぞれから発生した1つ又は複数のイオンを質量分析により検出する。具体例としての内部標準(単数又は複数)は、ビタミンD−[6,19,19]−、ビタミンD−[24,24,24,25,25,25]−、ビタミンD−[6,19,19]−、ビタミンD−[24,24,24,25,25,25]−、25OHD−[6,19,19]−、25OHD−[24,24,24,25,25,25]−、25OHD−[6,19,19]−、25OHD−[24,24,24,25,25,25]−、1α,25OHD−[6,19,19]−、1α,25OHD−[24,24,24,25,25,25]−、1α,25OHD−[6,19,19]−、1α,25OHD−[24,24,24,25,25,25]−などである。
【0030】
1つ又は複数の別々に検出できる内部標準は、クックソン型誘導体化試薬による試料の処理の前に試料に供給することができる。これらの実施形態において、1つ又は複数の内部標準は、内在性ステロイド化合物とともに誘導体化を受けることができ、その場合、誘導体化内部標準のイオンは、質量分析により検出される。これらの実施形態において、対象の分析物から発生したイオンの存在又は量は、試料中の対象の分析物の量の存在と関連づけることができる。いくつかの実施形態において、内部標準は、検討中のステロイド化合物の同位体標識異形であってよい。例えば、ビタミンD代謝物が対象の分析物であるアッセイにおいて、25OHD−[6,19,19]−又は25OHD−[6,19,19]−を内部標準として用いることができる。25OHD−[6,19,19]−を内部標準として用いる実施形態において、質量分析計で検出できるPTAD−25OHD−[6,19,19]−イオンは、573.30±0.50及び301.10±0.50の質量/電荷比(m/z)を有する陽イオンからなる群から選択される。関連する実施形態において、PTAD−25OHD−[6,19,19]−前駆体イオンは、573.30±0.50のm/zを有し、フラグメントイオンは、301.10±0.50のm/zを有する。25OHD−[6,19,19]−を内部標準として用いる実施形態において、質量分析計で検出できるPTAD−25OHD−[6,19,19]イオンは、561.30±0.50及び301.10±0.50の質量/電荷比(m/z)を有する陽イオンからなる群から選択される。関連する実施形態において、PTAD−25OHD−[6,19,19]前駆体イオンは、561.30±0.50のm/zを有し、フラグメントイオンは、301.10±0.50のm/zを有する。
【0031】
本明細書で用いているように、「同位体標識」は、質量分析法により分析するとき、非標識分子と比較して標識分子の質量シフトをもたらす。適切な標識の例としては、重水素(H)、13C及び15Nなどがある。例えば、25OHD−[6,19,19]及び25OHD−[6,19,19]は、25OHD及び25OHDより約3質量単位高い質量を有する。同位体標識は、分子における1つ又は複数の位置に組み込むことができ、1つ又は複数の種類の同位体標識を同じ同位体標識分子に用いることができる。
【0032】
他の実施形態において、ビタミンD代謝物イオン又は複数イオンの量は、1つ又は複数の外部参照標準との比較により測定することができる。具体例としての外部参照標準は、25OHD、25OHD−[6,19,19]、25OHD及び25OHD−[6,19,19]の1つ又は複数のものをスパイクしたブランク血漿又は血清などである。外部標準は一般的に、質量分析の前の1つ又は複数のクックソン型試薬による処理を含む、分析すべきいずれかの他の試料と同じ処理及び分析を受ける。
【0033】
特定の好ましい実施形態において、25OHDの定量限界(LOQ)は、1.9ng/mL〜10ng/mLの範囲内(1.9と10を含む)にあり、好ましくは1.9ng/mL〜5ng/mLの範囲内(1.9と5を含む)にあり、好ましくは約1.9ng/mLである。特定の好ましい実施形態において、25OHDの定量限界(LOQ)は、3.3ng/mL〜10ng/mLの範囲内(3.3と10を含む)にあり、好ましくは3.3ng/mL〜5ng/mLの範囲内(3.3と5を含む)にあり、好ましくは約3.3ng/mLである。
【0034】
本明細書で用いているように、特に断らない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数のものを含む。したがって、例えば、「a protein」への言及は、複数のタンパク質分子を含む。
【0035】
本明細書で用いているように、「精製」又は「精製する」という用語は、対象の分析物(単数又は複数)以外のすべての物質を試料から除去することを意味しない。それよりもむしろ、精製は、対象の分析物の検出を妨害する可能性がある試料中の他の成分と比較して1つ又は複数の対象の分析物の量を高める処置を意味する。様々な手段による試料の精製は、1つ又は複数の妨害物質、例えば、質量分析による選択される親又は娘イオンの検出を妨害する可能性がある又は可能性がない1つ又は複数の物質の相対的減少を可能にし得る。この用語を用いるときの相対的減少は、精製すべき物質中の対象の分析物とともに存在するいずれかの物質が精製により完全に除去されることを必要としない。
【0036】
本明細書で用いているように、「固相抽出」又は「SPE」という用語は、溶液が通過又は周りを通る固体(すなわち、固相)に対する溶液(すなわち、移動相)に溶解又は懸濁した成分の親和性の結果として化学混合物が成分に分離される方法を意味する。ある場合に、移動相が固相を通過又はその周りを通るとき、移動相の望ましくない成分が固相に保持されて、移動相中の分析物の精製がもたらされる可能性がある。他の場合に、分析物が固相に保持されて、移動相の望ましくない成分を固相を通過又はその周りを通らせる可能性がある。これらの場合に、第2の移動相を用いて、さらなる処理又は分析のために保持された分析物を固相から溶出させる。TFLCを含むSPEは、単一又は混合モードメカニズムにより動作し得る。混合モードメカニズムは、同じカラムにおけるイオン交換及び疎水性保持を利用するものであり、例えば、混合モードSPEカラムの固相は、強い陰イオン交換及び疎水性保持を示し、或いは強い陽イオン交換及び疎水性保持を示し得る。
【0037】
本明細書で用いているように、「クロマトグラフィー」という用語は、液体又はガスにより運ばれる化学混合物が、液体又は固体の固定相の周り又はその上を流れるときに化学物質の差別的分布の結果として成分に分離される方法を意味する。
【0038】
本明細書で用いているように、「液体クロマトグラフィー」又は「LC」という用語は、流体が微細に分割された物質のカラム又は毛細管通路に均一に浸透するときに流体溶液の1つ又は複数の成分の選択的遅延の方法を意味する。遅延は、この流体が固定相(単数又は複数)に対して移動するときの1つ又は複数の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間の混合物の成分の分配に起因する。「液体クロマトグラフィー」の例としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)(高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)又は高処理液体クロマトグラフィーとして時として公知)などがある。
【0039】
本明細書で用いているように、「高速液体クロマトグラフィー」又は「HPLC」(「高圧液体クロマトグラフィー」として時として公知)という用語は、加圧下で移動相を固定相、一般的に密に充填されたカラムに強制的に通すことにより分離の程度を増加させる液体クロマトグラフィーを意味する。
【0040】
本明細書で用いているように、「乱流液体クロマトグラフィー」又は「TFLC」(高乱流液体クロマトグラフィー又は高処理液体クロマトグラフィーとして時として公知)という用語は、分離を行うための基礎としてカラム充填剤を通る被分析物質の乱流を利用するクロマトグラフィーの形を意味する。TFLCは、質量分析による分析の前の2つの不特定の薬物を含む試料の調製に適用されている。Zimmerら、J Chromatogr、A854、23〜35頁(1999年)を参照のこと。さらにTFLCを説明している米国特許第5,968,367号、第5,919,368号、第5,795,469号及び第5,772,874号も参照のこと。当業者は、「乱流」を理解している。流体がゆっくりと且つ滑らかに流れるとき、その流れは「層流」と呼ばれる。例えば、低い流速でHPLCカラムを通って移動する流体は、層流である。層流においては、流体の粒子の運動は整然としており、粒子は一般的に直線的に移動する。より速い速度では、水の慣性が流体摩擦力に打ち勝ち、乱流が生ずる。不規則な境界と接触しない流体は、摩擦により遅くなる又は平坦でない表面により偏る流体を「追い越す」。流体が乱れて流れているとき、流体は渦をなし、回転して(又は渦流で)流れ、流れが層流であるときより「抵抗」が大きい。流体の流れが層流又は乱流である場合を判断することに資するための多くの参考文献が入手可能である(例えば、Turbulent Flow Analysis: Measurement and Prediction、P.S. Bernard & J.M. Wallace、John Wiley & Sons, Inc.、(2000年); An Introduction to Turbulent Flow、Jean Mathieu & Julian Scott、Cambridge University Press(2001年))。
【0041】
本明細書で用いているように、「ガスクロマトグラフィー」又は「GC」という用語は、試料混合物が蒸発し、液体又は粒子状固体で構成されている固定相を含むカラム中を移動するキャリアガス(窒素又はヘリウムとして)の流れに注入され、固定相に対する化合物の親和力に従ってその成分化合物に分離されるクロマトグラフィーを意味する。
【0042】
本明細書で用いているように、「大粒子カラム」又は「抽出カラム」という用語は、約50μmより大きい平均粒子直径を含むクロマトグラフィーカラムを意味する。
【0043】
本明細書で用いているように、「分析カラム」という用語は、分析物の存在又は量の測定を可能にするのに十分なカラムから流出する試料中の物質の分離を行うのに十分なクロマトグラフィー段を有するクロマトグラフィーカラムを意味する。好ましい実施形態において、分析カラムは、直径が約5μmの粒子を含む。そのようなカラムは、さらなる分析のための精製試料を得るために非保持物質から保持物質を分離又は抽出するという一般的目的を持つ「抽出カラム」としばしば区別される。
【0044】
本明細書で用いているように、例えば、「オンライン自動式」又は「オンライン抽出」に用いられているような「オンライン」又は「インライン」という用語は、操作者の介入の必要なしに実施される処置を意味する。これと対照的に、本明細書で用いている「オフライン」という用語は、操作者の手作業での介入を必要とする処置を意味する。したがって、試料を沈澱にかけ、上清を次に手作業でオートサンプラーに装填する場合、沈澱及び装填ステップは、後のステップからオフラインである。方法の種々の実施形態において、1つ又は複数のステップは、オンライン自動式で実施することができる。
【0045】
本明細書で用いているように、「質量分析」又は「MS」という用語は、化合物をそれらの質量により同定するための分析法を意味する。MSは、イオンを、それらの質量対電荷比、すなわち「m/z」に基づいてフィルターし、検出し、測定する方法を意味する。MS技術は、一般的に(1)化合物をイオン化して荷電化合物を生成するステップ;及び(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量対電荷比を計算するステップを含む。化合物は、適切な手段によりイオン化し、検出することができる。「質量分析計」は、一般的にイオン化装置及びイオン検出器を含む。一般的に、対象の1つ又は複数の分子がイオン化され、その後イオンが質量分析機器に導入され、そこで磁界と電界の組合せにより、イオンが質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存する空間内の経路をたどる。例えば、「Mass Spectrometry From Surfaces」と題する米国特許第6,204,500号、「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」と題する第6,107,623号、「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」と題する第6,268,144号、「Surface-Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes」と題する第6,124,137号、Wrightら、Prostate Cancer and Prostatic Diseases、1999年、2号、264〜76頁並びにMerchant及びWeinberger、Electrophoresis、2000年、21巻、1164〜67頁を参照のこと。
【0046】
本明細書で用いているように、「陰イオンモードで操作する」という用語は、陰イオンを発生させ、検出する質量分析法を意味する。「陽イオンモードで操作する」という用語は、本明細書で用いているように、陽イオンを発生させ、検出する質量分析法を意味する。
【0047】
本明細書で用いているように、「イオン化」又は「イオン化する」という用語は、1又は複数電子単位に等しい正味電荷を有する分析物イオンを発生させる方法を意味する。陰イオンは、1又は複数電子単位の正味負電荷を有するものであり、一方、陽イオンは、1又は複数電子単位の正味正電荷を有するものである。
【0048】
本明細書で用いているように、「電子イオン化」又は「EI」という用語は、気相又は蒸気相中の対象の分析物が電子の流れと相互作用する方法を意味する。電子と分析物との衝突が、次に質量分析法にかけることができる分析物イオンを発生させる。
【0049】
本明細書で用いているように、「化学イオン化」又は「CI」という用語は、試薬ガス(例えば、アンモニア)に電子衝撃を受けさせ、試薬ガスイオンと分析物分子との相互作用により分析物イオンを生じさせる方法を意味する。
【0050】
本明細書で用いているように、「高速原子衝撃」又は「FAB」という用語は、高エネルギー原子(しばしばXe又はAr)のビームが不揮発性試料に衝突して、試料に含まれている分子を脱離させ、イオン化する方法を意味する。試験試料は、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどの粘性液体マトリックスに溶解する。化合物又は試料に対して適切なマトリックスの選択は、経験的過程である。
【0051】
本明細書で用いているように、「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」又は「MALDI」という用語は、不揮発性試料をレーザー照射に曝露し、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化及びクラスタ崩壊などの様々なイオン化経路により試料中の分析物を脱離させ、イオン化する方法を意味する。MALDIのために、試料を、分析物分子の脱離を促進するエネルギー吸収性マトリックスと混合する。
【0052】
本明細書で用いているように、「表面エンハンス型レーザー脱離イオン化」又は「SELDI」という用語は、不揮発性試料をレーザー照射に曝露し、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化及びクラスタ崩壊などの様々なイオン化経路により試料中の分析物を脱離させ、イオン化する他の方法を意味する。SELDIのために、試料を一般的に、対象の1つ又は複数の分析物を優先的に保持する表面に結合させる。MALDIと同様に、この方法もイオン化を促進するためのエネルギー吸収性物質を用いる。
【0053】
本明細書で用いているように、「エレクトロスプレーイオン化」又は「ESI」という用語は、末端に高い正又は負電位が印加されている短い長さの毛細管に沿って溶液を通す方法を意味する。管の末端に到達した溶液が蒸発して(噴霧されて)溶媒蒸気中溶液の非常に小さい液滴のジェット又は噴霧になる。この液滴のミストが、凝縮を防ぎ、溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱されている蒸発チャンバー中に流れる。液滴がより小さくなると、中性分子が放出されると同時に同符号間の自然反発がイオンを生じさせるような時まで表面電荷密度が増加する。
【0054】
本明細書で用いているように、「大気圧化学イオン化」又は「APCI」という用語は、ESIと同様な質量分析法を意味するが、APCIは、大気圧のプラズマ内で起こるイオン−分子反応によりイオンを発生させる。プラズマは、噴霧毛細管と対極との間の放電により維持される。次にイオンは、一般的に一連の差動ポンプ式スキマーステージ(differentially pumped skimmer stages)を用いて質量分析装置内に抽出される。向流の乾燥予熱Nガスを用いて溶媒の除去を改善することができる。APCIにおける気相イオン化は、極性がより低い種を分析するのにESIより有効であり得る。
【0055】
「大気圧光イオン化」又は「APPI」という用語は、本明細書で用いているように、分子Mの光イオン化のメカニズムが分子イオンM+を生成する光子の吸収と電子の放出である質量分析の形態を意味する。光子のエネルギーが一般的にイオン化ポテンシャルのすぐ上であるため、分子イオンは、脱離をより受けにくい。多くの場合、クロマトグラフィーの必要なしに試料を分析することが可能であり、したがって、かなりの時間と費用の節約となり得る。水蒸気又はプロトン性溶媒が存在する場合、分子イオンは、Hを抽出してMH+を生成し得る。これは、Mが高いプロトン親和性を有する場合に起こる傾向がある。M+とMH+の合計は一定であるため、定量の正確度に影響しない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は通常MH+として観測されるが、ナフタレン又はテストステロンなどの非極性化合物は通常M+を生成する。例えば、Robbら、Anal. Chem.、2000年、72巻(15号)、3653〜3659頁を参照のこと。
【0056】
本明細書で用いているように、「誘導結合プラズマ」又は「ICP」という用語は、ほとんどの元素が原子にされ、イオン化されるような十分に高い温度で試料が部分的にイオン化したガスと相互作用する方法を意味する。
【0057】
本明細書で用いているように、「電界脱離」という用語は、不揮発性試験試料をイオン化表面上にのせ、強い電界を用いて分析物イオンを発生させる方法を意味する。
【0058】
本明細書で用いているように、「脱離」という用語は、表面から分析物が除去されること及び/又は分析物が気相に入ることを意味する。レーザーダイオード熱脱離(LDTD)は、分析物を含む試料をレーザーパルスにより気相中に熱的に脱離させる技術である。レーザーは、金属の底を有する特別製の96ウエルプレートの裏面に当たる。レーザーパルスが底を加熱し、熱が試料を気相に移行させる。気相試料が次にイオン化源内に引き込まれ、そこで、気相試料が質量分析計における分析に備えてイオン化される。LDTDを用いる場合、気相試料のイオン化は、コロナ放電(例えば、APCIによる)によるイオン化によるなどの当技術分野で公知の適切な技術により達成することができる。
【0059】
本明細書で用いているように、「選択的イオンモニタリング」という用語は、比較的狭い質量範囲内、一般的に約1質量単位内のイオンのみが検出される質量分析機器の検出モードである。
【0060】
本明細書で用いているように、「選択反応モニタリング」として時として公知の「多重反応モード」は、前駆体イオン及び1つ又は複数のフラグメントイオンが選択的に検出される質量分析機器の検出モードである。
【0061】
本明細書で用いているように、「定量化下限」、「定量下限」又は「LLOQ」という用語は、測定が定量的に意味があるようになる点を意味する。このLOQにおける分析物の応答は、特定可能であり、個別的であり、20%未満の相対標準偏差(RSD%)及び80%〜120%の正確度で再現性がある。
【0062】
本明細書で用いているように、「検出限界」又は「LOD」という用語は、測定値がそれに伴う不確かさより大きい点である。LODは、値がその測定に伴う不確かさを超える点であり、ゼロ濃度における平均値のRSDの3倍と定義される。
【0063】
本明細書で用いているように、体液試料中の分析物の「量」は、一般的に試料の容積中の検出できる分析物の質量を反映する絶対値を意味する。しかし、量は、他の分析物の量と比較した相対量も意図する。例えば、試料中の分析物の量は、試料中に通常存在する分析物の対照又は正常レベルより大きい量であり得る。
【0064】
「約」という用語は、イオンの質量の測定を含まない定量的測定に関して本明細書で用いているように、表示された値プラス又はマイナス10%を意味する。質量分析機器は、所定の分析物の質量の測定がわずかに変化し得る。イオンの質量又はイオンの質量/電荷比に関連する「約」という用語は、+/−0.5原子質量単位を意味する。
【0065】
上述の発明の概要は、非限定的なものであり、本発明の他の特徴及び利点は、以下の本発明の詳細な説明から、また特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1A〜Dは、それぞれ、PTAD−25OHD3、PTAD−25OHD−[6,19,19]−(内部標準)、PTAD−25OHD、およびPTAD−25OHD−[6,19,19]−(内部標準)の具体例としてのクロマトグラムである。詳細は実施例3で述べる。
【図2A】図2Aおよび2Bは、実施例3で述べる方法により測定した血清試料中の25OHDおよび25OHDの具体例としての較正曲線を示す図である。
【図2B】(上述の通り。)
【図3A】図3Aは、25OHD及び25OHDの変動係数対濃度のプロットを示す図である。図3Bは、LLOQ近くの拡大した同じプロットを示す図である。詳細は実施例4で述べる。
【図3B】(上述の通り。)
【図4A】図4A〜Bは、PTAD誘導体化した場合としない場合の25OHDの質量分析測定の比較の線形回帰分析を示す図である。詳細は実施例10で述べる。
【図4B】(上述の通り。)
【図5A】図5A〜Bは、PTAD誘導体化した場合としない場合の25OHDの質量分析測定の比較の線形回帰分析及びデミング回帰分析を示す図である。詳細は実施例10で述べる。
【図5B】(上述の通り。)
【図6A】図6A〜Dは、複合試料及び非混合試料(同じ誘導体化剤を用いた)の分析の結果を比較したプロットを示す図である。詳細は実施例14で述べる。
【図6B】(上述の通り。)
【図6C】(上述の通り。)
【図6D】(上述の通り。)
【図7A】図7A〜Dは、異なる誘導体化剤で処理した同じ検体の分析の結果を比較した(ただし混合対混合又は非混合対非混合を比較した)プロットを示す図である。詳細は実施例14で述べる。
【図7B】(上述の通り。)
【図7C】(上述の通り。)
【図7D】(上述の通り。)
【図8A】図8A〜Dは、1つの分析は混合試料のものであり、もう1つの分析は非混合試料のものである、異なる誘導体化剤で処理した同じ検体の分析の結果を比較したプロットを示す図である。詳細は実施例14で述べる。
【図8B】(上述の通り。)
【図8C】(上述の通り。)
【図8D】(上述の通り。)
【図9A】図9Aは、25−ヒドロキシビタミンDイオンの具体例としてのQ1スキャンスペクトル(約350〜450のm/z範囲にわたる)を示す図である。図9Bは、約395.2のm/zを有する25−ヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約100〜396のm/z範囲にわたる)を示す図である。詳細は実施例15で述べる。
【図9B】(上述の通り。)
【図10A】図10Aは、25−ヒドロキシビタミンDイオンの具体例としてのQ1スキャンスペクトル(約350〜450のm/z範囲にわたる)を示す図である。図10Bは、約383.2のm/zを有する25−ヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約100〜396のm/z範囲にわたる)を示す図である。詳細は実施例15で述べる。
【図10B】(上述の通り。)
【図11A】図11Aは、PTAD−25−ヒドロキシビタミンDイオンの具体例としてのQ1スキャンスペクトル(約520〜620のm/z範囲にわたる)を示す図である。図11Bは、約570.3のm/zを有するPTAD−25−ヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約200〜400のm/z範囲にわたる)を示す図である。詳細は実施例15で述べる。
【図11B】(上述の通り。)
【図12A】図12Aは、PTAD−25−ヒドロキシビタミンDイオンの具体例としてのQ1スキャンスペクトル(約520〜620のm/z範囲にわたる)を示す図である。図12Bは、約558.3のm/zを有するPTAD−25−ヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約200〜400のm/z範囲にわたる)を示す図である。詳細は実施例15で述べる。
【図12B】(上述の通り。)
【図13A】図13Aは、PTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンDイオンの具体例としてのQ1スキャンスペクトル(約520〜620のm/z範囲にわたる)を示す図である。図13Bは、約550.4のm/zを有するPTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約250〜350のm/z範囲にわたる)を示す図である。図13Cは、約568.4のm/zを有するPTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約250〜350のm/z範囲にわたる)を示す図である。図13Dは、約586.4のm/zを有するPTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約250〜350のm/z範囲にわたる)を示す図である。詳細は実施例16で述べる。
【図13B】(上述の通り。)
【図13C】(上述の通り。)
【図13D】(上述の通り。)
【図14A】図14Aは、PTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンDイオンの具体例としてのQ1スキャンスペクトル(約520〜620のm/z範囲にわたる)を示す図である。図14Bは、約538.4のm/zを有するPTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD−PTAD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約250〜350のm/z範囲にわたる)を示す図である。図14Cは、約556.4のm/zを有するPTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約250〜350のm/z範囲にわたる)を示す図である。図14Dは、約574.4のm/zを有するPTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約250〜350のm/z範囲にわたる)を示す図である。詳細は実施例16で述べる。
【図14B】(上述の通り。)
【図14C】(上述の通り。)
【図14D】(上述の通り。)
【図15A】図15Aは、PTAD−ビタミンDイオンの具体例としてのQ1スキャンスペクトル(約500〜620のm/z範囲にわたる)を示す図である。図15Bは、約572.2のm/zを有するPTAD−ビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約250〜350のm/z範囲にわたる)を示す図である。詳細は実施例17で述べる。
【図15B】(上述の通り。)
【図16A】図16Aは、PTAD−ビタミンDイオンの具体例としてのQ1スキャンスペクトル(約500〜620のm/z範囲にわたる)を示す図である。図16Bは、約560.2のm/zを有するPTAD−ビタミンD前駆体イオンのフラグメント化の具体例としての生成物イオンスペクトル(約250〜350のm/z範囲にわたる)を示す図である。詳細は実施例17で述べる。
【図16B】(上述の通り。)
【0067】
発明の詳細な説明
試料中のビタミンD及びビタミンD関連化合物などのステロイド化合物を測定する方法を述べる。より具体的には、単一の質量分析アッセイで複数の試験試料中のステロイド化合物を検出し、定量する方法を述べる。該方法は、誘導体化ステロイド化合物を得るためのPTADなどのクックソン型試薬を質量分析(MS)と併用し、それにより、複数の試験試料中のステロイド化合物を検出し、定量するための高処理アッセイシステムを提供することができる。好ましい実施形態は、大規模臨床施設における自動ステロイド化合物定量への適用に特に十分に適している。
【0068】
本発明の方法に用いる適切な試験試料は、対象の分析物を含み得るいずれかの試験試料などである。いくつかの好ましい実施形態において、試料は、生物学的試料、すなわち、動物、細胞培養、器官培養等のいずれかの生物学的源から得られた試料である。特定の好ましい実施形態において、試料は、イヌ、ネコ、ウマ等の哺乳動物から得られる。特に好ましい哺乳動物は、霊長類、最も好ましくはヒト男性又は女性である。好ましい試料は、血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液又は組織試料などの体液、好ましくは血漿(EDTA及びヘパリン血漿を含む)及び血清、最も好ましくは血清を含む。そのような試料は、例えば、患者、すなわち、疾患又は状態の診断、予後診断又は治療のために臨床の場に出頭する男性又は女性生存者から得ることができる。
【0069】
本発明はまた、1つ又は複数のステロイド化合物の定量のためのキットを意図する。ステロイド化合物の定量アッセイ用のキットは、本明細書で述べた組成物を含むキットを含み得る。例えば、キットは、少なくとも1回のアッセイに十分な量の包装材料及び測定された量の同位体標識内部標準を含み得る。一般的に、キットは、ステロイド化合物の定量アッセイに用いる包装済み試薬を使用することに関する有形の形式(例えば、紙又は電子媒体上に含まれた)で記録された指示も含まれる。
【0070】
本発明の実施形態に用いる較正及びQCプールは、対象とする試料マトリックスと同様のマトリックスを用いて調製することが好ましい。
【0071】
質量分析のための試料の調製
質量分析の準備において、例えば、液体クロマトグラフィー、ろ過、遠心分離、薄層クロマトグラフィー(TLC)、キャピラリー電気泳動を含む電気泳動、イムノアフィニティー分離を含むアフィニティー分離、酢酸エチル若しくはメタノール抽出を含む抽出法及びカオトロピック剤の使用又は上記のもののいずれかの組合せなどを含む当技術分野で公知の様々な方法により、1つ又は複数のステロイド化合物を試料中の1つ又は複数の他の化合物(例えば、タンパク質)と比較して濃縮することができる。これらの濃縮ステップは、処理前の個々の試験試料、誘導体化後の個々の処理済み試料、又は処理済み試料を混合した後の複合試料に適用することができる。
【0072】
タンパク質沈澱は、試料、特に、血清又は血漿などの生物学的試料を調製する1つの方法である。タンパク質精製法は、当技術分野で周知であり、例えば、Polsonら、Journal of Chromatography、B 2003、785巻、263〜275頁は、本発明の方法に用いるのに適するタンパク質沈澱法を記載している。タンパク質沈澱は、試料からタンパク質の大部分を除去して上清中に1つ又は複数のステロイド化合物を残すために用いることができる。試料を遠心分離して沈澱タンパク質から液体上清を分離することができ、或いは試料をろ過して沈澱タンパク質を除去することができる。得られた上清又はろ液は、次に質量分析に直接、又は別法として液体クロマトグラフィーに、そしてその後に質量分析にかけることができる。特定の実施形態において、血漿又は血清などの個々の試験試料は、ハイブリッドタンパク質沈澱/液−液抽出法により精製することができる。これらの実施形態において、未処理試験試料をメタノール、酢酸エチル及び水と混合し、得られる混合物をボルテックスし、遠心分離する。1つ又は複数の精製ステロイド化合物を含む得られた上清を除去し、完全に乾燥し、アセトニトリルで再構成する。アセトニトリル溶液中の1つ又は複数の精製ステロイド化合物は、次にクックソン型試薬、好ましくはPTAD又はその同位体標識変体で誘導体化することができる。
【0073】
質量分析の前に用いることができる試料の精製の他の方法は、液体クロマトグラフィー(LC)である。HPLCを含む液体クロマトグラフィーの特定の方法は、比較的遅い層流技術に依拠している。伝統的なHPLC分析は、カラム中の試料の層流が試料からの対象の分析物の分離の基礎であるカラム充填剤に依拠している。当業者は、そのようなカラム中の分離が拡散過程であることを理解し、誘導体化ステロイド化合物とともに用いるのに適するHPLCを含むLC、機器及びカラムを選択することができる。クロマトグラフィーカラムは、一般的に化学構成成分の分離(すなわち、分別)を促進するための媒体(すなわち、充填剤)を含む。該媒体は、微細粒子を含み得る、或いは多孔性通路を有するモノリス材料を含み得る。媒体の表面は、一般的に化学構成成分の分離を促進するための様々な化学構成成分と相互作用する結合面(bonded surface)を含む。1つの適切な結合面は、アルキル結合面、シアノ結合面又は高度に純粋なシリカ表面などの疎水性結合面である。アルキル結合面は、C−4、C−8、C−12又はC−18結合アルキル基を含み得る。好ましい実施形態において、カラムは、高度に純粋なシリカカラム(Thermo Hypersil Gold Aqカラムなど)である。クロマトグラフィーカラムは、試料を受け入れるための入口及び分別試料を含む流出液を排出するための出口を含む。試料は、直接、又はオンラインSPEカートリッジ若しくはTFLC抽出カラムなどの抽出カラムから入口に供給することができる。好ましい実施形態において、複合試料は、質量分析の前に液体クロマトグラフィーにより精製することができる。
【0074】
1つの実施形態において、複合試料は、LCカラムの入口に加え、溶媒又は溶媒混合物で溶出させ、出口で排出させることができる。対象の分析物(単数又は複数)を溶出するための各種溶媒モードを選択することができる。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、無勾配モード又はポリティプティック(polytyptic)(すなわち混合)モードを用いて実施することができる。クロマトグラフィーの実施中、物質の分離は、溶離剤(「移動相」としても公知である)、溶出モード、勾配条件、温度等の選択などの変数による影響を受ける。
【0075】
特定の実施形態において、対象の分析物がカラム充填剤により可逆的に保持されるが、1つ又は複数の他の物質は保持されない条件下で複合試料をカラムに加えることにより、分析物を精製することができる。これらの実施形態において、対象の分析物がカラムにより保持される第1の移動相条件を用いることができ、保持されない物質が洗い流された時点で保持された物質を除去するための第2の移動相条件をその後に用いることができる。或いは、対象の分析物が1つ又は複数の他の物質と比較して異なる速度で溶出する移動相条件下で複合試料をカラムに加えることにより、分析物を精製することができる。そのような処置は、試料の1つ又は複数の他の成分と比較して特定の時点(すなわち、特性保持時間)の溶出液中の対象の分析物の量を高くし得る。
【0076】
1つの好ましい実施形態において、HPLCをアルキル結合分析カラムクロマトグラフィーシステムを用いて実施する。特定の好ましい実施形態において、高度に純粋なシリカカラム(Thermo Hypersil Gold Aqカラムなど)を用いる。特定の好ましい実施形態において、HPLC及び/又はTFLCを、HPLC用水を移動相Aとして、HPLC用エタノールを移動相Bとして用いて実施する。
【0077】
バルブ及びコネクタ配管の注意深い選択により、手作業のステップの必要なしに物質が1つのクロマトグラフィーカラムから次のカラムに送られるように、2つ又はそれ以上のクロマトグラフィーカラムを必要に応じて接続することができる。好ましい実施形態において、バルブ及び配管の選択は、必要なステップを実施するように事前にプログラムされたコンピュータにより制御される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムはまた、そのようなオンライン式で検出器システム、例えば、MSシステムに接続されている。したがって、操作者が試料のトレーをオートサンプラーに入れることができ、残りの操作がコンピュータ制御下で実施され、選択されるすべての試料の精製及び分析が得られる。
【0078】
いくつかの実施形態において、抽出カラムは、質量分析の前のステロイド化合物の精製に用いることができる。そのような実施形態において、分析物を捕捉する抽出カラムを用いて試料を抽出し、次に溶出させ、イオン化の前に第2の抽出カラム又は分析HPLCカラム上でクロマトグラフィーにかけることができる。例えば、TFLC抽出カラムによる試料の抽出は、大粒径(50μm)充填カラムを用いて達成することができる。このカラムから溶出した試料は、次に質量分析の前のさらなる精製のためにHPLC分析カラムに移すことができる。これらのクロマトグラフィー法に関係するステップは自動式で連結させることができるので、分析物の精製時の操作者の関与の必要を最小限にすることができる。この特徴により、時間と費用が節約され、操作者の誤りの機会がなくなる可能性がある。
【0079】
いくつかの実施形態において、タンパク質沈澱は、血清試験試料からのメタノールタンパク質沈澱及び酢酸エチル/水抽出を含むハイブリッドタンパク質沈澱/液−液抽出法により達成される。得られたステロイド化合物は、抽出カラムにかける前に誘導体化することができる。好ましくは、ハイブリッドタンパク質沈澱/液−液抽出法と抽出カラムをオンライン式で接続する。ステロイド化合物がビタミンD及びビタミンD関連化合物からなる群から選択される好ましい実施形態において、抽出カラムは、好ましくは、Cohesive Technologies C8XLオンライン抽出カラム(粒径50μm、0.5x50mm)又は同等物などのC−8抽出カラムである。抽出カラムからの溶出液は、次に、質量分析の前にオンライン式のHPLCカラムなどの分析LCカラムに加えることができる。これらのクロマトグラフィー法に関係するステップは自動式で連結させることができるので、分析物の精製時の操作者の関与の必要を最小限にすることができる。この特徴により、時間と費用が節約され、操作者の誤りの機会がなくなる可能性がある。
【0080】
質量分析による検出及び定量
様々な実施形態において、誘導体化ステロイド化合物は、当業者に公知のいずれかの方法によりイオン化させることができる。質量分析は、分別試料をイオン化し、さらなる分析のための荷電分子を生成するためのイオン源を含む質量分析計を用いて実施される。例えば、試料のイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面エンハンス型レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)、粒子ビームイオン化及びLDTDにより行うことができる。当業者は、イオン化法の選択は、測定する分析物、試料の種類、検出器の種類、ポジティブモード対ネガティブモードの選択等に基づいて決定することができる。
【0081】
誘導体化ステロイド化合物は、ポジティブ又はネガティブモードでイオン化させることができる。好ましい実施形態において、誘導体化ステロイド化合物をAPCIによりポジティブモードでイオン化させる。関連する好ましい実施形態において、誘導体化ステロイド化合物イオンは、気体状態であり、不活性衝突ガスは、アルゴン又は窒素、好ましくはアルゴンである。
【0082】
一般的に質量分析法において、試料がイオン化された後、それにより生成した正又は負に荷電したイオンを分析して質量対電荷比を測定することができる。質量対電荷比を測定するための適切な分析計は、四重極分析計、イオントラップ型分析計及び飛行時間型分析計などである。具体例としてのイオントラップ法は、Bartolucciら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2000年、14巻、967〜73頁に記載されている。
【0083】
イオンは、いくつかの検出モードを用いて検出することができる。例えば、選択されたイオンは、選択的イオンモニタリングモード(SIM)を用いて検出することができ、又は別法として、衝突誘発解離に起因する質量遷移又は中性損失は、例えば、多重反応モニタリング(MRM)又は選択反応モニタリング(SRM)を用いてモニターすることができる。好ましくは、質量対電荷比は、四重極分析計を用いて測定する。例えば、「四重極」又は「四重極イオントラップ」装置において、振動高周波電界内のイオンは、電極間に印加されたDC電位、RFシグナルの振幅並びに質量/電荷比に比例した力を受ける。電圧及び振幅は、特定の質量/電荷比を有するイオンのみが四重極の長さを移動するが、他のすべてのイオンは偏向させられるように選択することができる。したがって、「四重極」装置は、装置に注入されたイオンに対して「質量フィルター」及び「質量検出器」の両方として働き得る。
【0084】
「タンデム質量分析」又は「MS/MS」を用いることにより、MS法の分解能を高めることができる。この技術において、対象の分子から発生した前駆体イオン(親イオンとも呼ばれる)をMS装置でフィルターにかけることができ、前駆体イオンをその後フラグメント化して、第2のMS法で分析される1つ又は複数のフラグメントイオン(娘イオン又は生成物イオンとも呼ばれる)を生成させる。前駆体イオンを注意深く選択することにより、特定の分析物により生成されたイオンのみがフラグメント化チャンバーに通され、不活性ガスの原子との衝突によりフラグメントイオンが生ずる。前駆及びフラグメントイオンは、所定の組のイオン化/フラグメント化条件のもとで再現性のある形で生成するため、MS/MS法は、極めて強力な分析ツールとなり得る。例えば、フィルトレーション/フラグメンテーションの組合せは、妨害物質の除去に用いることができ、生物学的試料のような複雑な試料に特に有用であり得る。
【0085】
タンデム質量分析装置を運転する別のモードは、生成物イオンスキャン及び前駆体イオンスキャンなどである。これらの運転モードの説明については、例えば、E. Michael Thurmanら、Chromatographic-Mass Spectrometric Food Analysis for Trace Determination of Pesticide Residues、Chapter 8 (Amadeo R. Fernandez-Alba編、Elsevier、2005年)(387)を参照のこと。
【0086】
分析物の分析の結果は、当技術分野で公知の多くの方法により最初の試料中の分析物の量と関連づけることができる。例えば、サンプリング及び分析パラメーターが注意深く管理されていることを前提として、所定のイオンの相対量は、当相対量を最初の分子の絶対量に換算する表と比較することができる。或いは、外部標準の分析を試料とともに実施し、それらの標準から発生したイオンに基づいて標準曲線を作成することができる。そのような標準曲線を用いて、所定のイオンの相対量を最初の分子の絶対量に換算することができる。特定の好ましい実施形態において、内部標準を用いて、ステロイド化合物の量を計算するための標準曲線を作成することができる。そのような標準曲線を作成し、用いる方法は、当技術分野で周知であり、当業者は、適切な内部標準を選択することができる。例えば、いくつかの実施形態において、1つ又は複数の同位体標識ビタミンD代謝物(例えば、25OHD−[6,19,19]−及び25OHD−[6,19,19]−)を内部標準として用いることができる。イオンの量を最初の分子の量と関連づける多くの他の方法は、当業者には周知であろう。
【0087】
方法の1つ又は複数のステップは、自動装置を用いて実施することができる。特定の実施形態において、1つ又は複数の精製ステップをオンラインで実施し、より好ましくは、精製及び質量分析ステップのすべてをオンライン式で実施することができる。
【0088】
MS/MSなどの特定の質量分析法において、衝突活性化解離(CAD)によるさらなるフラグメント化のために前駆体イオンを単離する。CADにおいて、前駆体イオンは、不活性ガスとの衝突によりエネルギーを獲得し、その後、「単分子分解」と呼ばれる過程により分解する。振動エネルギーの増加によりイオン内の特定の結合を切断することができるように十分なエネルギーが前駆体イオンに蓄積されなければならない。
【0089】
試料中のステロイド化合物は、次のようにMS/MSを用いて検出し、且つ/又は定量することができる。試料を最初にタンパク質沈澱又はハイブリッドタンパク質沈澱/液−液抽出法により精製することができる。次に、精製試料中の1つ又は複数のステロイド化合物をPTAD又はその同位体バリアントのようなクックソン型試薬で誘導体化する。次に精製試料を好ましくは抽出カラム(TFLCカラムなど)とそれに続く分析カラム(HPLCカラムなど)上の液体クロマトグラフィーにかけることができる;クロマトグラフィーカラムからの液体溶媒の流れは、MS/MS分析計の噴霧器インターフェースに入り;溶媒/分析物混合物は、インターフェースの加熱荷電チューブ中で蒸気に転換される。溶媒中に含まれている分析物(単数又は複数)(例えば、誘導体化ビタミンD代謝物などの誘導体化ステロイド化合物)は、溶媒/分析物混合物に大電圧を印加することによりイオン化される。分析物がインターフェースの荷電チューブを出るとき、溶媒/分析物混合物が霧状になり、溶媒が蒸発し、分析物イオンが残る。或いは、精製試料中の誘導体化ステロイド化合物をイオン化の前に液体クロマトグラフィーにかけなくてよい。むしろ、試料を96ウエルプレート上にスポットし、LDTDにより蒸発させ、イオン化させることができる。
【0090】
イオン、例えば、前駆体イオンは、タンデム質量分析(MS/MS)装置の開口を通過し、第1の四重極に入る。タンデム質量分析装置において、四重極1及び3(Q1及びQ3)は、イオンの質量対電荷比(m/z)に基づいてイオンの選択(すなわち、それぞれQ1及びQ3における「前駆」及び「フラグメント」イオンの選択)を可能にするマスフィルターである。四重極2(Q2)は、イオンがフラグメント化される衝突セルである。質量分析計の第1の四重極(Q1)は、対象の誘導体化ステロイド化合物の質量対電荷(m/z)比を有する分子を選択する。正しい質量/電荷比を有する前駆体イオンは、衝突チャンバー(Q2)に入るが、他の質量/電荷比を有する望ましくないイオンは、四重極の側面と衝突し、除去される。Q2に入った前駆体イオンは、中性アルゴンガス分子およびフラグメントと衝突し、分解する。発生したフラグメントイオンは、四重極3(Q3)に入り、そこで、対象の誘導体化ステロイド化合物のフラグメントイオンは選択されるが、他のイオンは除去される。
【0091】
方法は、陽又は陰イオンモード、好ましくは陽イオンモードで実施されるMS/MSを含み得る。当技術分野で周知の標準的方法を用いて、当業者は、四重極3(Q3)における選択に用いることができる誘導体化ステロイド化合物の特定の前駆体イオンの1つ又は複数のフラグメントイオンを特定することができる。
【0092】
イオンが検出器と衝突するとき、それらは、デジタルシグナルに変換される電子のパルスを発生させる。取得データは、収集されたイオンの計数対時間をプロットするコンピュータに伝送される。得られる質量クロマトグラムは、伝統的HPLC−MS法で得られるクロマトグラムと類似している。特定のイオンに対応するピーク下面積又はそのようなピークの振幅は、測定し、対象の分析物の量と相関させることができる。特定の実施形態において、フラグメントイオン(単数又は複数)及び/又は前駆体イオンのピークの曲線下面積又は振幅を測定して、特定のステロイド化合物の量を決定する。上述のように、所定のイオンの相対量は、内部分子標準の1つ又は複数のイオンのピークに基づく較正標準曲線を用いて最初の分析物の絶対量に換算することができる。
【0093】
複合患者試料の分析のための患者試料の処理
上に略述した処置の後に、各患者試料を別々に処理する場合、複数の患者試料を複合とすることができる(すなわち、混合し、一緒に分析することができる)。「別々に処理する」という語句は、複合試料に含める各患者試料を、最初は質量分析により区別できない2つ又はそれ以上の患者試料中のステロイド化合物が処理の後に区別できるようになるような方法で処理することを意味する。これは、ステロイド化合物を誘導体化する異なる作用剤を用いて各患者試料を処理することにより達成することができる。使用するために選択される誘導体化剤は、質量分析により区別できる誘導体化ステロイド化合物を生成しなければならない。質量分析により誘導体化ステロイド化合物を区別するための基礎となるものは、誘導体化ステロイド化合物のイオンの質量の差である。質量の差は、PTAD及びDMEQTADなどの2つ又はそれ以上の異なる誘導体化剤を用いることにより生じ得る。質量の差は、PTAD及び13−PTADなどの同じ誘導体化剤の2つ又はそれ以上の同位体バリアントを用いることによっても生じ得る。これらの2つのアプローチは、相互に排他的でなく、分析する複数の患者試料中の各患者試料中のステロイド化合物を一意的に標識するために異なる誘導体化剤と同じ誘導体化剤の同位体バリアントの任意の組合せを用いることができる。場合によって、複数の患者試料の1つの試料は、誘導体化剤を用いずに処理してもよい。
【0094】
複数の患者試料を処理した後、1つの患者試料の特定のステロイド化合物は、他の患者試料中の同じステロイド化合物とは異なる質量分析プロファイルを有するであろう。処理済み患者試料を混合して、処理ステロイド化合物のレベルを測定するために次に分析する複合試料を作る場合、検出される処理ステロイド化合物の質量分析プロファイルの差により、各処理ステロイド化合物を元の患者試料に帰属させることができる。したがって、2つ又はそれ以上の患者試料中のステロイド化合物の量は、複合試料の単一の質量分析により測定される。
【0095】
上で示したように、異なるクックソン型試薬を異なる患者試料の誘導体化剤として用いることができ、例えば、1つの患者試料をPTADで誘導体化し、第2の患者試料をDMEQTADで誘導体化することができる。異なるクックソン型試薬を用いることにより、誘導体化分析物の間に一般的に大きい質量の差が生ずる。例えば、PTADで誘導体化されたステロイド化合物とDMEQTADで誘導体化された同じ化合物との質量の差は、約200質量単位(PTADとDMEQTADとの質量の差)である。
【0096】
同じクックソン型試薬の同位体バリアントも複数の患者試料中の区別できる誘導体を作るのに用いることができる。例えば、1つの患者試料をPTADで誘導体化し、第2の患者試料を13−PTADで誘導体化することができる。この例において、PTADと13−PTADとの質量の差は、約6質量単位である。
【0097】
以下の実施例は、PTADの同位体バリアントによる複数の患者試料を処理することによる本発明を例示する役割を果たす。これらの実施例は、方法の範囲を限定するものではない。特に、以下の実施例では、25OHD−[6,19,19]−又は25OHD−[6,19,19]−を内部標準として用いた質量分析によるビタミンD代謝物の定量を示す。ビタミンD代謝物に適用した本発明の方法を示すことは、ビタミンD及びビタミンD関連化合物への方法の適用可能性を制限するものではない。同様に、内部標準としての25OHD−[6,19,19]−又は25OHD−[6,19,19]−の使用は、限定的であることを意味するものでない。当業者により容易に決定される適切な化学種をステロイド化合物の定量のための内部標準として用いることができる。
実施例
【実施例1】
【0098】
ハイブリッドタンパク質沈澱/液−液抽出及びクックソン型誘導体化
以下の自動化ハイブリッドタンパク質沈澱/液−液抽出法は、患者血清試料において実施した。ゲルバリア血清(すなわち、血清分離管に採取された血清)並びにEDTA血漿及びヘパリン血漿もこのアッセイに許容できるものと立証された。
【0099】
Perkin−Elmer Janusロボット及びTomTec Quadra Towerロボットを用いて以下の処置を自動化した。各試料について、50μLの血清を96ウエルプレートのウエルに加えた。次いで、25μLの内部標準カクテル(同位体標識25OHD−[6,19,19]−及び25OHD−[6,19,19]−を含む)を各ウエルに加え、プレートをボルテックスした。次いで、75μLのメタノールを加え、その後さらにボルテックスした。次いで、300μLの酢酸エチル及び75μLの水を加え、その後さらにボルテックスし、遠心分離し、得られた上清を新しい96ウエルプレートに移した。
【0100】
実施例1からの第2の96ウエルプレートにおける移された液体を流動窒素ガスマニホールド下で完全に乾燥した。誘導体化は、クックソン型誘導体化剤PTADのアセトニトリル中0.1mg/mL溶液100μLを各ウエルに加えることにより遂行した。誘導体化反応は、約1時間進行させ、反応混合物に100μLの水を加えて停止させた。
【実施例2】
【0101】
液体クロマトグラフィーによるビタミンD代謝物の抽出
試料の注入は、Aria OS V1.5.1又はより新しいソフトウエアを用いたCohesive Technologies Aria TX−4 TFLCシステムにより行った。
【0102】
TFLCシステムは、上の調製済み試料の一定量を、大粒子を充填したCohesive Technologies C8XLオンライン抽出カラム(粒径50μm、005x50mm、Cohesive Technologies,Inc.製)に自動的に注入した。試料は、抽出カラム内の乱流を形成するために高流速で負荷された。この乱流により、カラム中の大粒子への誘導体化ビタミンD代謝物の最適化結合並びに過剰な誘導体化試薬の通過及びデブリの排出が保証される。
【0103】
負荷の後、試料を、水/エタノール溶出勾配を用いて分析カラム、すなわちThermo Hypersil Gold Aq分析カラム(粒子径5μm、50x2.1mm)に溶出させた。HPLC勾配を分析カラムに適用して、試料中の他の分析物からビタミンD代謝物を分離した。移動相Aは水であり、移動相Bはエタノールであった。HPLC勾配は、35%有機物勾配で開始し、約65秒で99%に上昇させた。
【実施例3】
【0104】
MS/MSによる誘導体化ビタミンD代謝物の検出及び定量
MS/MSは、Finningan TSQ Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation)を用いて実施した。すべてがThermo Electronから入手した以下のソフトウエアプログラムを本明細書で述べる実施例に用いた:Quantum Tune Master V1.5又はより新しいもの、Xcalibur V2.07又はより新しいもの、LCQuan V2.56(Thermo Finnigan)又はより新しいもの及びARIA OS v1.5.1(Cohesive Technologies)又はより新しいもの。分析カラムから出た液体溶媒/分析物をMS/MS分析計の噴霧器インターフェースに流した。溶媒/分析物混合物がインターフェースのチューブ中で蒸気に変換された。霧化溶媒中の分析物をESIによりイオン化した。
【0105】
イオンは、誘導体化ビタミンD代謝物のイオンを選択した第1の四重極(Q1)に入った。PTAD−25OHDについては570.32±0.50のm/zを有するイオンが選択され、PTAD−25OHDについては558.32±0.50のm/zを有するイオンが選択された。四重極2(Q2)に入ったイオンは、アルゴンガスと衝突してイオンフラグメントを発生し、これが、さらなる選択のために四重極3(Q3)に通された。質量分析計の設定を表1に示す。同時に、内部標準PTAD−25OHD−[6,19,19]−及びPTAD−25OHD−[6,19,19]−を用いて同位体希釈質量分析を用いる同じ処理を実施した。以下の質量遷移を正極性についてのバリデーション時の検出及び定量のために用いた。示した質量遷移は、限定的であることを意味しない。以下の実施例でわかるように、定量的データを得るために各分析物について他の質量遷移を選択することができた。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
PTAD−25OHD、PTAD−25OHD−[6,19,19]−(IS)、PTAD−25OHD及びPTAD−25OHD−[6,19,19]−(IS)の具体例としてのクロマトグラムをそれぞれ1A、1B、1C及び1Dに示す。
【0109】
血清検体中の25OHD及び25OHDの測定のための具体例としての較正曲線をそれぞれ図2A及び2Bに示す。
【実施例4】
【0110】
分析感度:定量下限(LLOQ)及び検出限界(LOD)
LLOQは、測定が定量的に意味があるようになる点である。このLLOQにおける分析物の応答は、特定可能であり、個別的であり、20%より大きい精度(すなわち、変動係数(CV))及び80%〜120%の正確度で再現性がある。LLOQは、予測されたLLOQに近いレベルのPTAD−25OHD及びPTAD−25OHDをスパイクした5種のヒト血清試料を分析し、再現性を評価することにより決定した。収集データの解析から、約4ng/mLの濃度を有する試料が約20%のCVをもたらしたことがわかる。PTAD−25OHD及びPTAD−25OHDに関するこの分析のLLOQは、約4ng/mLと確定された。両分析物についてのCV対濃度のグラフ表示を図3A〜Bに示す(図3Aは広範な濃度範囲にわたるプロットを示すが、図3BはLOQ近くの拡大した同じプロットを示す)。
【0111】
LODは、値がその測定に伴う不確かさを超える点であり、ゼロ濃度からの3標準偏差と定義される。LODを決定するために、一般的に、適切なマトリックスのブランク試料を得て、妨害の有無を試験する。しかし、25OHDの内在性濃度が0である適切な生物学的マトリックスを得ることができず、したがって、リン酸緩衝生理食塩水中5%ウシ血清アルブミンの溶液(推定1.5ng/mL 25OHDを含む)をLOD試験に用いた。標準をそれぞれ20回の反復で行い、統計的に解析して、25OHD及び25OHDのLODがそれぞれ約1.9及び3.3ng/mLであると決定した。これらの試験の生データを下の表3に示す。
【0112】
【表3】

【実施例5】
【0113】
報告できる範囲(reportable range)及び線型性
分析における誘導体化ビタミンD代謝物の検出の線型性は、4つのプール血清を高内在性濃度の25OHD又は25OHDで希釈し、未希釈検体及び1:2、1:4及び1:8の希釈検体を4回ずつ分析することにより判断した。データの二次回帰を行ったところ、R=0.97の試験した濃度範囲にわたる相関係数が得られた。これらの試験により、平均回収率が101%で、約4〜約512ng/mLの報告できる範囲を可能にする、1:4で希釈することができることが示された。検体希釈レベルのそれぞれについての平均測定値及び線形回帰分析からの相関値を下の表4Aに示す。検体希釈レベルのそれぞれについての回収率を下の表4Bに示す。
【0114】
【表4A】

【0115】
【表4B】

【実施例6】
【0116】
分析物特異性
類似分析物に対する分析の特異性は、分析において25OHDと同様に挙動する3−エピ−25OHDを除いて、試験したいずれのビタミンD代謝物についても交差反応性を有さないと判断された。25OHD及び25OHDの側鎖標識安定同位体もイオン源において起こる水素交換による交差反応性を示した。したがって、25OHD及び25OHDの側鎖標識安定同位体は、内部標準として用いるべきでない。下の表5に試験した化合物及び交差反応性試験の結果を示す。
【0117】
【表5】

【実施例7】
【0118】
再現性
各分析物ごとの5、15、30、60、90及び120ng/mLの6つの標準を定量の再現性の手段としてすべてのアッセイにおいて測定した。日間再現性は、19回のアッセイからの較正曲線を用いて決定した。これらの19回のアッセイからの結果を表6A(25OHDについて)及び表6B(25OHDについて)に示す。
【0119】
【表6A】

【0120】
【表6B】

【実施例8】
【0121】
アッセイ内及びアッセイ間変動試験
アッセイ内変動は、単一アッセイ内の試料についての結果の再現性と定義される。アッセイ内変動を評価するために、各分析物ごとの任意の超低、低、中及び高濃度の25OHD及び25OHDを含むプールした血清からのアッセイの報告できる範囲にわたる4つの品質管理(QC)プールのそれぞれ20個の複製品を調製し、測定した。変動係数(CV)の許容できるレベルは、3つの高濃度については15%未満であり、最低濃度(アッセイのLOQ又はそれに近い)については20%未満である。
【0122】
アッセイ内変動試験の結果から、4つのQCプールのCVは、PTAD−25OHDについては13.7ng/mL、30.0ng/mL、52.4ng/mL及び106.9ng/mLの平均濃度でそれぞれ9.1%、6.4%、5.0%及び5.9%であり、PTAD−25OHDについては32.8ng/mL、15.0ng/mL、75.4ng/mL及び102.3ng/mLの平均濃度でそれぞれ3.5%、4.9%、5.1%及び3.3%であることがわかる。これらの複製品の解析の結果を表7A及び7Bに示す。
【0123】
【表7A】

【0124】
【表7B】

【0125】
同じ4つのQCプールのそれぞれの5つの分割検体を6日にわたってアッセイして、アッセイ間の変動係数(CV)を測定した。アッセイ内変動試験の結果から、4つのQCプールのアッセイ間CVは、PTAD−25OHDについては約13.1ng/mL、29.8ng/mL、51.9ng/mL及び107.8ng/mLの平均濃度でそれぞれ約8.3%、6.2%、8.1%及び6.4%であり、PTAD−25OHDについては約31.1ng/mL、14.5ng/mL、75.1ng/mL及び108.4ng/mLの平均濃度でそれぞれ約4.8%、6.7%、4.7%及び6.7%であることがわかる。これらの複製品の解析の結果を表8A及び8Bに示す。
【0126】
【表8A】

【0127】
【表8B】

【実施例9】
【0128】
回収試験
2つの回収試験を実施した。第1のものは、それぞれ2種の濃度の25OHD及び25OHDをスパイクした6つの検体を用いて実施した。これらのスパイクした検体を、実施例1で述べたハイブリッドタンパク質沈澱/液液抽出処置にかけた。次いで、スパイク検体の抽出物の分割検体を、上述の手順に従って通常のPTADにより誘導体化し、4回ずつ分析した。スパイク濃度は、アッセイの実行できる範囲内にあった。6つのプールは、約44ng/mLより大きいスパイクレベルで約89%、約73ng/mLより大きいスパイクレベルで約92%の平均正確度を示した。24実験的回収率のうちの2つのみが85%未満であり、残りの22アッセイが85〜115%の許容できる正確度範囲内にあった。スパイク検体回収試験の結果を下の表9に示す。
【0129】
【表9】

【0130】
第2の回収試験は、6つの検体を用いて再び実施した。これらの6つの検体のうち、3つは25OHDの高い内在性濃度を有し、3つは25OHDの高い内在性濃度を有していた。検体を対にし、4:1、1:1及び1:4の比率で混合した。得られた混合物を、実施例1で述べたハイブリッドタンパク質沈澱/液−液抽出処置にかけた。次いで、混合検体の抽出物の分割検体を、上述の手順に従って通常のPTADにより誘導体化し、4回ずつ分析した。これらの実験で、25OHDについては約98%、25OHDについては約93%の平均正確度が得られた。すべての個別結果は、85〜115%の許容できる正確度範囲内にあった。混合検体回収試験の結果を下の表10に示す。
【0131】
【表10】

【実施例10】
【0132】
方法相関試験
PTAD誘導体化後のビタミンD代謝物を検出する方法を、分析の前にビタミンD代謝物を誘導体化しない質量分析法と比較した。そのような方法は、公開米国特許出願第2006/0228808号(Caulfieldら)に記載されている。8つの検体を分割し、両方法により分析した。2つの方法の間の相関は、完全なデータセット(較正試料、QCプール及び未知など)並びに未知のみについて線形回帰、デミング回帰及びブランド−アルトマン分析により評価した。
【0133】
線形回帰分析及びデミング回帰分析のプロットを図4A〜B(25OHDについて)及び図5A〜B(25OHDについて)に示す。
【実施例11】
【0134】
溶血、脂血症及び黄疸試験
アッセイに対する溶血、脂血症及び黄疸の影響も検討した。
【0135】
溶血。溶血の影響は、既知の内在性濃度の25OHD及び25OHDを含む患者試料をプールして、アッセイのダイナミックレンジにわたる濃度を有する5種のプールを調製することにより評価した。次いで、溶解全血をプールにスパイクして、軽度及び中等度に溶血した試料を調製した。
【0136】
軽度及び中等度に溶血した試料を4回ずつ分析し、結果を全血スパイクを用いなかった試料のレベルと比較した。比較の結果は、25OHD及び25OHDについて15%未満の差(%)を示すものであった。したがって、軽度から中等度に溶血した試料は、分析に許容できる。
【0137】
脂血症。脂血症の影響は、既知の内在性濃度の25OHD及び25OHDを含む患者試料をプールして、アッセイのダイナミックレンジにわたる濃度を有する5種のプールを調製することにより評価した。次いで、粉末状脂質抽出物をプールに加えて、軽度及び著しい脂血症検体を調製した。検体を4回ずつ測定し、結果を非脂血症プールの結果と比較し、正確度を計算した。データは、25OHDの測定は脂血症による影響を受けない(すべての値が85〜115%の許容できる正確度の範囲内にあった)が、25OHDは脂血症の影響を受け、予測された値より低い測定がもたらされることを示すものである。不一致の程度は、脂血症の程度とともに増大した。したがって、軽度であるが、著しくない脂血症検体は、許容できる。
【0138】
黄疸。黄疸の影響は、既知の内在性濃度の25OHD及び25OHDを含む患者試料をプールして、アッセイのダイナミックレンジにわたる濃度を有する5種のプールを調製することにより評価した。次いで、ビリルビンの濃縮溶液をプールにスパイクして、軽度及び著しい黄疸検体を調製した。検体を4回ずつ測定し、結果を非黄疸プールの結果と比較し、正確度を計算した。データは、25OHD及び25OHDが黄疸による影響を受けない(すべての値が85〜115%の許容できる正確度の範囲内にある)ことを示すものであった。したがって、黄疸検体は許容できる。
【実施例12】
【0139】
インジェクターキャリーオーバー試験
試料間のキャリーオーバーを評価するために高濃度の25OHD及び25OHDを含む検体の直後にブランクマトリックスを測定した。これらの試験により、分析物又は内部標準の保持時間における応答は、アッセイの完全性を損なうのに十分に大きくなかったことがわかった。これらの試験のデータを下の表11に示す。
【0140】
【表11】

【実施例13】
【0141】
適切な検体の種類
種々の検体の種類についてアッセイを行った。ヒト血清及びゲルバリア血清(すなわち、血清分離管からの血清)並びにEDTA血漿及びヘパリンは、許容できる試料の種類と確認された。これらの試験において、同じ患者から同時に採取したヒト血清(血清)、ゲルバリア血清(SST)、EDTA血漿(EDTA)及びヘパリン(Na Hep)の組を25OHD(40検体の組)及び25OHD(6検体の組)について試験した。既存の自動ピペッティングシステムの凝血検出/検知に関する制限のため、自動化された処置について血漿を試験しなかった。
【0142】
検体の種類に関する試験の結果を25OHD及び25OHDについてそれぞれ表12A及びBに示す。
【0143】
【表12A】

【0144】
【表12B】

【実施例14】
【0145】
複数の誘導体化剤を含む複合患者試料
異なる誘導体化剤による誘導体化の後の患者試料の複合化を以下のクロスオーバー実験で示した。
【0146】
最初に、2つの患者試料(すなわち、試料A及び試料B)を実施例1で述べたハイブリッドタンパク質沈澱/液−液抽出処置にかけた。次いで、試料A及び試料Bの抽出物の分割試料を上述の手順に従って通常のPTADにより誘導体化した。試料A及び試料Bの第2の分割検体の抽出物も上述の手順に従って13−PTADで誘導体化した。
【0147】
4つの誘導体化反応を停止させた後、PTAD誘導体化試料Aの一部を13−PTAD誘導体化試料Bと混合し、13−PTAD誘導体化試料Aの一部をPTAD誘導体化試料Bと混合した。
【0148】
これらの混合物を96ウエルプレート上に加え、実施例2及び3で述べた液体クロマトグラフィー−質量分析法により分析した。再び、25OHD−[6,19,19]−及び25OHD−[6,19,19]−を内部標準として用いた(下の表13で25OHD−IS及び25OHD−ISと示した)。質量分析計は、表13に示すPTAD−及び13−PTAD誘導体化ビタミンD代謝物複合体をモニターするようにプログラムした。表示された質量遷移は、限定的であることを意味しない。続く実施例でわかるように、定量的なデータを得るために各分析物について他の質量遷移を選択することができた。
【0149】
【表13】

【0150】
誘導体化試料A及びB並びに上述の2つの混合物の入れ替えを分析し、プロットして、データの適合度を評価した。これらの結果を図6A〜D、7A〜D及び8A〜Dに示す。
【0151】
図6A〜Dは、複合試料及び非混合試料(同じ誘導体化剤を用いた)の分析の結果を比較するプロットである。これらのプロットは、極めてよく一致したR値を示している(すなわち、4つすべての変体のR値が0.98を超える)。これにより、誘導体化剤が不変であるという前提で、混合試料の分析が非混合試料の分析と同じ結果を示すことがわかる。
【0152】
図7A〜Dは、異なる誘導体化剤で処理した同じ検体の分析の結果を比較するプロットである(ただし、混合試料対混合試料又は非混合試料対非混合試料を比較)。これらのプロットも極めてよく一致したR値を示している(すなわち、4つすべての変体のR値が0.98を超える)。これにより、少なくとも比較した試料が両方とも混合又は非混合である場合にPTADと13−PTADとの間の同位体変化がアッセイの成績の差の原因でないことがわかる。
【0153】
図8A〜Dは、1つの分析は混合試料についてのものであり、1つの分析は非混合試料についてのものである、異なる誘導体化剤で処理した同じ検体の分析の結果を比較するプロットである。これらのプロットも極めてよく一致したR値を示している(すなわち、4つすべての変体のR値が0.99を超える)。これにより、混合試料と非混合試料との間の変化と組合されたPTADと13−PTADとの間の同位体変化がアッセイの成績の差の原因でないことがわかる。
【0154】
したがって、試料をともに混合し、1回の注入として質量分析計に導入した場合、PTAD誘導体化剤の同位体変化は意味のある差をもたらさなかった。患者試料の複合化の立証に成功した。
【実施例15】
【0155】
天然及びPTAD誘導体化25−ヒドロキシビタミンD及び25−ヒドロキシビタミンDのLDTD−MS/MS分析による具体例としてのスペクトル
非誘導体化及びPTAD誘導体化25−ヒドロキシビタミンD及び25−ヒドロキシビタミンDをLDTD−MS/MSにより分析した。これらの分析の結果を下に示す。
【0156】
25−ヒドロキシビタミンD及び25−ヒドロキシビタミンDの分析からの具体例としてのQ1スキャンスペクトルをそれぞれ図9A及び10Aに示す。これらのスペクトルは、約350〜450のm/z範囲にわたりQ1をスキャンすることにより収集した。
【0157】
これらの種のそれぞれからの具体例としての生成物イオンをそれぞれ図9B及び10Bに示す。Q1で選択された前駆体イオン及び前駆体をフラグメント化するのに用いられた衝突エネルギーを表14に示す。
【0158】
25−ヒドロキシビタミンDの定量のための好ましいMRM遷移は、約395.2のm/zを有する前駆体イオンを約208.8又は251.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することである。25−ヒドロキシビタミンDの定量のための好ましいMRM遷移は、約383.2のm/zを有する前駆体イオンを約186.9又は257.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することである。しかし、図9B及び10Bにおける生成物イオンスキャンにおいてわかるように、好ましいフラグメントイオンを切替え又は増補するために追加の生成物イオンを選択することができる。
【0159】
【表14】

【0160】
PTAD−25−ヒドロキシビタミンD及びPTAD−25−ヒドロキシビタミンDの分析からの具体例としてのQ1スキャンスペクトルをそれぞれ図11A及び12Aに示す。これらのスペクトルは、約520〜620のm/z範囲にわたりQ1をスキャンすることにより収集した。
【0161】
これらの種のそれぞれからの具体例としての生成物イオンをそれぞれ図11B及び12Bに示す。Q1で選択された前駆体イオン及び前駆体をフラグメント化するのに用いられた衝突エネルギーを表15に示す。
【0162】
PTAD−25−ヒドロキシビタミンDの定量のための好ましいMRM遷移は、約570.3のm/zを有する前駆体イオンを約298.1のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することである。PTAD−25−ヒドロキシビタミンDの定量のための好ましいMRM遷移は、約558.3のm/zを有する前駆体イオンを約298.1のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することである。しかし、図11B及び12Bにおける生成物イオンスキャンにおいてわかるように、好ましいフラグメントイオンを切替え又は増補するために追加の生成物イオンを選択することができる。
【0163】
【表15】

【実施例16】
【0164】
PTAD誘導体化1α,25−ジヒドロキシビタミンD及び1α,25−ジヒドロキシビタミンDのLDTD−MS/MS分析による具体例としてのスペクトル
1α,25−ジヒドロキシビタミンD及び1α,25−ジヒドロキシビタミンDのPTAD誘導体は、各分析物の保存溶液の分割試料をアセトニトリル中でPTADにより処理することにより調製した。誘導体化反応は、約1時間進行させ、反応混合物に水を加えることにより停止させた。次いで、上に略述したLDTD−MS/MSの手順に従って誘導体化分析物を分析した。
【0165】
PTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD及びPTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンDを含む試料の分析からの具体例としてのQ1スキャンスペクトルをそれぞれ図13A及び14Aに示す。これらのスペクトルは、約520〜620のm/z範囲にわたりQ1をスキャンすることによりLDTD−MS/MSにより収集した。
【0166】
PTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD及びPTAD−1α,25−ヒドロキシビタミンDのそれぞれの3種の前駆体イオンから発生した具体例としての生成物イオンスキャンをそれぞれ図13B〜D及び14B〜Dに示す。Q1で選択された前駆体イオン及びこれらの生成物イオンスペクトルを得るのに用いた衝突エネルギーを表16に示す。
【0167】
PTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンDの定量のための具体例としてのMRM遷移は、約550.4のm/zを有する前駆体イオンを約277.9のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;約568.4のm/zを有する前駆体イオンを約298.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;及び約586.4のm/zを有する前駆体イオンを約314.2のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。PTAD−1α,25−ヒドロキシビタミンDの定量のための具体例としてのMRM遷移は、約538.4のm/zを有する前駆体イオンを約278.1のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;約556.4のm/zを有する前駆体イオンを約298.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;及び約574.4のm/zを有する前駆体イオンを約313.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。しかし、図6B〜D及び7B〜Dにおける生成物イオンスキャンにおいてわかるように、前駆体イオンのフラグメント化により他のいくつかの生成物イオンが発生する。典型的なフラグメントイオンを切替え又は増補するために追加の生成物イオンを図13B〜D及び14B〜Dに示したものから選択することができる。
【0168】
【表16】

【0169】
ジヒドロキシビタミンD代謝物の各種重水素化形のPTAD誘導体も検討した。1α,25−ジヒドロキシビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−、1α,25−ジヒドロキシビタミンD−[6,19,19]−及び1α,25−ジヒドロキシビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−のPTAD誘導体を調製し、上のように分析した。
【0170】
PTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の定量のための具体例としてのMRM遷移は、約556.4のm/zを有する前駆体イオンを約278.1のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;約574.4のm/zを有する前駆体イオンを約298.1のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;及び約592.4のm/zを有する前駆体イオンを約313.9のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。
【0171】
PTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD−[6,19,19]−の定量のための具体例としてのMRM遷移は、約541.4のm/zを有する前駆体イオンを約280.9のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;約559.4のm/zを有する前駆体イオンを約301.1のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;及び約577.4のm/zを有する前駆体イオンを約317.3のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。PTAD−1α,25−ジヒドロキシビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の定量のための具体例としてのMRM遷移は、約544.4のm/zを有する前駆体イオンを約278.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;約562.4のm/zを有する前駆体イオンを約298.2のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化すること;及び約580.4のm/zを有する前駆体イオンを約314.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。
【実施例17】
【0172】
PTAD誘導体化ビタミンD及びビタミンDのMS/MS分析からの具体例としてのスペクトル
ビタミンD及びビタミンDのPTAD誘導体は、各分析物の保存溶液の分割試料をアセトニトリル中でPTADにより処理することにより調製した。誘導体化反応は、約1時間進行させ、反応混合物に水を加えることにより停止させた。次いで、誘導体化分析物をMS/MSにより分析した。
【0173】
PTAD−ビタミンD及びPTAD−ビタミンDを含む試料の分析からの具体例としてのQ1スキャンスペクトルをそれぞれ図15A及び16Aに示す。これらの分析は、対象の分析物を含む標準溶液をFinnigan TSQ Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation)に直接注入することにより実施した。分析物の導入の上流のHPLCカラムに800μL/分の80%アセトニトリル、0.1%ギ酸を含む20%水を通すことにより液体クロマトグラフィー移動相をシミュレートした。スペクトルは、約500〜620のm/z範囲にわたりQ1をスキャンすることにより収集した。
【0174】
PTAD−ビタミンD及びPTAD−ビタミンDのそれぞれの前駆体イオンから発生した具体例としての生成物イオンスキャンをそれぞれ図15B及び16Bに示す。Q1で選択された前駆体イオン及びこれらの生成物イオンスペクトルを得るのに用いた衝突エネルギーを表17に示す。
【0175】
PTAD−ビタミンDの定量のための具体例としてのMRM遷移は、約572.2のm/zを有する前駆体イオンを約297.9のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。PTAD−ビタミンDの定量のための具体例としてのMRM遷移は、約560.2のm/zを有する前駆体イオンを約298.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。しかし、図15B及び16Bにおける生成物イオンスキャンにおいてわかるように、前駆体イオンのフラグメント化により他のいくつかの生成物イオンが発生する。典型的なフラグメントイオンを切替え又は増補するために追加の生成物イオンを図15B及び16Bに示したものから選択することができる。
【0176】
【表17】

【0177】
ビタミンDの各種重水素化形のPTAD誘導体も検討した。ビタミンD−[6,19,19]−、ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−のPTAD誘導体を調製し、上のように分析した。
【0178】
PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−の定量のための具体例としてのMRM遷移は、約572.2のm/zを有する前駆体イオンを約301.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。PTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の定量のための具体例としてのMRM遷移は、約578.2のm/zを有する前駆体イオンを約297.9のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。
【0179】
PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−の定量のための具体例としてのMRM遷移は、約563.2のm/zを有する前駆体イオンを約301.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。PTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の定量のための具体例としてのMRM遷移は、約566.2のm/zを有する前駆体イオンを約298.0のm/zを有する生成物イオンにフラグメント化することを含む。
【0180】
本明細書で言及又は引用した論文、特許及び特許出願並びに他のすべての文書及び電子的に入手できる情報は、それぞれの個々の刊行物が参照により組み込まれると具体的且つ別々に示されたかのようなことと同じ程度にそれらの全体として参照により組み込まれている。出願者は、そのような論文、特許及び特許出願又は他の物理的及び電子的文書からのいずれか及びすべての資料及び情報を本出願に物理的に組み込む権利を留保する。
【0181】
本明細書に例示的に記載した方法は、本明細書に具体的に開示しなかった要素又は複数の要素、制限又は複数の制限がない場合に適切に実施することができる。したがって、例えば、「を含む(comprising)」、「を含む(including)」、「を含有する(containing)」等は、拡張的且つ制限なく読むものとする。さらに、本明細書で用いた用語及び表現は、記述の用語として用い、制限の用語として用いず、示し、記述した特徴又はその一部の同等物を除くそのような用語及び表現を用いないものとする。請求した本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。したがって、本発明を好ましい実施形態及び任意選択の特徴により具体的に開示したが、開示した本明細書で具体化された本発明の変更形態及び変形形態は当業者が用いることができること、またそのような変更形態及び変形形態は本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0182】
本発明を本明細書に広く且つ一般的に記述した。全般的開示の範囲内に入るより狭い種概念及び下位概念分類のそれぞれも方法の一部をなす。これは、削除された事柄が本明細書で具体的に列挙されているか否かにかかわりなく、但し書又は類概念から主題を除外する消否定的限定による方法の一般的記述を含む。
【0183】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。さらに、方法の特徴又は態様がマーカッシュグループにより記述されている場合、当業者は、本発明もそれによりマーカッシュグループの個々のメンバー又はメンバーのサブグループにより記述されていることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理前のステロイド化合物が各試験試料中で同じである、複数の試験試料のそれぞれにおけるステロイド化合物の量を単一の質量分析により測定する方法であって、
各試験試料を別々に処理して複数の処理済み試料を調製するステップであって、前記処理の結果として、各処理済み試料中のステロイド化合物が他の処理済み試料中のステロイド化合物と質量分析により区別できる、ステップと、
処理済み試料を合せて複合試料を調製するステップと、
質量分析により検出できる1つ又は複数のイオンを発生させるのに適する条件下で複合試料をイオン化源にさらすステップであって、各処理済み試料からのステロイド化合物から発生する1つ又は複数のイオンが他の処理済み試料からのステロイド化合物からの1つ又は複数のイオンと異なっている、ステップと、
質量分析により各処理済み試料からのステロイド化合物からの1つ又は複数のイオンの量を検出するステップと、
各処理済み試料からのステロイド化合物からの1つ又は複数のイオンの量を各試験試料中のステロイド化合物の量と関連づけるステップと
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記複数の処理済み試料が非誘導体化ステロイド化合物を含む1つの処理済み試料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理が、各試験試料を、誘導体化ステロイド化合物を得るのに適する条件下で異なる誘導体化剤にさらすステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記異なる誘導体化剤が互いの同位体バリアントである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記異なる誘導体化剤がクックソン型誘導体化剤である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記クックソン型誘導体化剤が、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)、4−メチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(MTAD)、4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQTAD)、4−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(NPTAD)、4−フェロセニルメチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(FMTAD)及びそれらの同位体バリアントからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クックソン型誘導体化剤が4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の同位体バリアントである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
複数の試料が2つの試料を含み、第1の誘導化試薬が4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)であり、第2の誘導化試薬が13−4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(13−PTAD)である、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステロイド化合物がビタミンD又はビタミンD関連化合物である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステロイド化合物が、ビタミンD、ビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25OHD)及び1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25OHD)からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステロイド化合物が、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)又は25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複合試料をイオン化源にさらす前に抽出カラム及び分析カラムにかけるステップをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抽出カラムが固相抽出(SPE)カラムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抽出カラムが乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)カラムである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
分析カラムが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムである、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
質量分析がタンデム質量分析である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記タンデム質量分析が、多重反応モニタリング、前駆体イオンスキャン又は生成物イオンスキャンとして実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抽出カラム、分析カラム及びイオン化源がオンライン式で接続されている、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン化源がレーザーダイオード熱脱離(LDTD)を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記イオン化源が、エレクトロスプレーイオン化源(ESI)又は大気圧化学イオン化源(APCI)を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記試験試料が生物学的試料を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記試験試料が血漿又は血清を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数の試験試料のそれぞれにおける2つ又はそれ以上のステロイド化合物の量を単一の質量分析により測定する方法であって、
各試験試料を別々に処理して、複数の処理済み試料を調製するステップであって、前記処理の結果として、各処理済み試料中の2つ又はそれ以上のステロイド化合物が他の処理済み試料中の同じ2つ又はそれ以上のステロイド化合物と質量分析により区別できる、ステップと、
処理済み試料を合せて複合試料を調製するステップと、
質量分析により検出できる1つ又は複数のイオンを発生させるのに適する条件下で複合試料をイオン化源にさらすステップであって、各処理済み試料からのステロイド化合物のそれぞれについて発生する1つ又は複数のイオンが他の処理済み試料からのステロイド化合物からの1つ又は複数のイオンと異なっている、ステップと、
質量分析により各処理済み試料からの2つ又はそれ以上のステロイド化合物のそれぞれからの1つ又は複数のイオンの量を検出するステップと、
各処理済み試料からの2つ又はそれ以上のステロイド化合物のそれぞれからの1つ又は複数のイオンの量を各試験試料中のステロイド化合物のそれぞれの量と関連づけるステップと
を含む、上記方法。
【請求項24】
前記複数の処理済み試料が非誘導体化ステロイド化合物を含む1つの処理済み試料を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記処理が、各試験試料を、誘導体化ステロイド化合物を得るのに適する条件下で異なる誘導体化剤にさらすステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記異なる誘導体化剤が互いの同位体バリアントである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記異なる誘導体化剤がクックソン型誘導体化剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記クックソン型誘導体化剤が、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)、4−メチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(MTAD)、4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQTAD)、4−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(NPTAD)、4−フェロセニルメチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(FMTAD)及びそれらの同位体バリアントからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記クックソン型誘導体化剤が、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の同位体バリアントである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
複数の試料が2つの試料を含み、第1の誘導体化試薬が4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)であり、第2の誘導体化試薬が13−4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(13−PTAD)である、請求項23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
各試験試料中の2つ又はそれ以上のステロイド化合物がビタミンD又はビタミンD関連化合物である、請求項23から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
各試験試料中の2つ又はそれ以上のステロイド化合物が、ビタミンD、ビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25OHD)及び1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1α,25OHD)からなる群から選択される、請求項23から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
各試験試料中の2つ又はそれ以上のステロイド化合物が25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)からなる群から選択される少なくとも1つのステロイド化合物を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
各試験試料中の2つ又はそれ以上のステロイド化合物が、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
複合試料をイオン化源にさらす前に抽出カラム及び分析カラムにかけるステップをさらに含む、請求項23から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
抽出カラムが固相抽出(SPE)カラムである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抽出カラムが乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)カラムである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
分析カラムが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムである、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
質量分析がタンデム質量分析である、請求項23から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記タンデム質量分析が、多重反応モニタリング、前駆体イオンスキャン又は生成物イオンスキャンとして実施される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
抽出カラム、分析カラム及びイオン化源がオンライン式で接続されている、請求項23から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記イオン化源がレーザーダイオード熱脱離(LDTD)を含む、請求項23から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記イオン化源が、エレクトロスプレーイオン化源(ESI)又は大気圧化学イオン化源(APCI)を含む、請求項23から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記試験試料が生物学的試料を含む、請求項23から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記試験試料が血漿又は血清を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
処理前のビタミンD又はビタミンD関連化合物がすべての試験試料中で同じである、2つの試験試料のそれぞれにおけるビタミンD又はビタミンD関連化合物の量を単一の質量分析により測定する方法であって、
ビタミンD又はビタミンD関連誘導体を得るのに適する条件下で4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の第1の同位体バリアントに第1の試験試料をさらすことによって第1の処理済み試料を調製するステップと、
ビタミンD又はビタミンD関連誘導体を得るのに適する条件下で4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の第2の同位体バリアントに第2の試験試料をさらすことによって第2の処理済み試料を調製するステップであって、PTADの第1及び第2の同位体バリアントが質量分析により区別できる、ステップと、
第1の処理済み試料を第2の処理済み試料と合せて複合試料を調製するステップと、
質量分析により検出できる1つ又は複数のイオンを得るのに適する条件下で複合試料中の各処理済み試料からのビタミンD又はビタミンD関連誘導体をイオン化源にさらすステップであって、第1の処理済み試料からのビタミンD又はビタミンD関連誘導体からの1つ又は複数のイオンが第2の処理済み試料からのビタミンD又はビタミンD関連誘導体からの1つ又は複数のイオンと異なっている、ステップと、
各処理済み試料からのビタミンD又はビタミンD関連誘導体からの1つ又は複数のイオンの量を質量分析により測定するステップと、
測定されたイオンの量を第1及び第2の試験試料中のビタミンD又はビタミンD関連化合物の量と関連づけるステップと
を含む、上記方法。
【請求項47】
4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の第1の同位体バリアントが4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)であり、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)の第2の同位体バリアントが13−4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(13−PTAD)である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ビタミンD又はビタミンD関連化合物が、25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)からなる群から選択される、請求項46又は47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
試験試料が2つ又はそれ以上のビタミンD又はビタミンD関連化合物をさらに含み、各試験試料中の2つ又はそれ以上のビタミンD又はビタミンD関連化合物の量が測定される、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
2つ又はそれ以上のビタミンD又はビタミンD関連化合物が25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
2つ又はそれ以上のビタミンD又はビタミンD関連化合物が25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)及び25−ヒドロキシビタミンD(25OHD)である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
複合試料をイオン化源にさらす前に抽出カラム及び分析カラムにかけるステップをさらに含む、請求項46から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
抽出カラムが固相抽出(SPE)カラムである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
抽出カラムが乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)カラムである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
分析カラムが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムである、請求項52から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
質量分析がタンデム質量分析である、請求項52から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記タンデム質量分析が、多重反応モニタリング、前駆体イオンスキャン又は生成物イオンスキャンとして実施される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
抽出カラム、分析カラム及びイオン化源がオンライン式で接続されている、請求項52から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記イオン化源がレーザーダイオード熱脱離(LDTD)を含む、請求項46から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記イオン化源がエレクトロスプレーイオン化源(ESI)又は大気圧化学イオン化源(APCI)を含む、請求項46から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記試験試料が生物学的試料を含む、請求項46から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記試験試料が血漿又は血清を含む、請求項61に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【公表番号】特表2013−513800(P2013−513800A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543287(P2012−543287)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/059746
【国際公開番号】WO2011/072152
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】