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複合誘電体
説明

複合誘電体

【課題】強誘電率粒子の高充填化による高誘電率化が図られた複合誘電体を提供する。
【解決手段】下記の無機質誘電体セラミックス粒子(A)が、マトリックス樹脂中に分散された樹脂組成物を用いて形成されてなる複合誘電体である。
(A)芯物質である無機質誘電体セラミックス粒子と、この芯物質表面を被覆する、下記の一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物から得られる被膜により形成された第1の被覆層と、上記第1の被覆層の外周面を被覆する、下記の一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物から得られる被膜により形成された第2の被覆層とからなる無機質誘電体セラミックス粒子。
【化1】


【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線基板に用いられる複合誘電体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型軽量化が進み、電子部品の高密度実装が進展するにつれ、それに使用される配線基板としては多層板の使用割合が大きくなってきている。従来、半導体素子以外にも電子回路を構成するコンデンサ(C)やインダクタ(L)、抵抗(R)等の電子部品は外層板の外層に設置搭載されることが多かったが、近年、電子機器の高機能化とともにこれら電子部品を基板外層のみならず内層にも形成することが検討され進行している。例えば、チタン酸バリウム等の強誘電率粒子を充填剤とするエポキシ樹脂組成物を導体回路上に設置してなる高誘電体薄膜コンデンサがあげられる。そして、このような用途に用いることができる特殊な複合誘電体が各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−52716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、C=εr ・ε0 ・S/d(数式において、εr は比誘電率、ε0 は真空中の誘電率、Sは面積、dは厚みである)で表される誘電体薄膜の容量(C)は、形状因子であるSとdがそれぞれ一定であれば薄膜誘電体材料自体の比誘電率で決定されることになるが、従来から開発されている高誘電体薄膜の比誘電率は充分ではなく、より比誘電率の大きな樹脂複合誘電体が望まれていた。このような比誘電率が充分に上がらない理由としては、チタン酸バリウム等の強誘電体粒子の樹脂に対する濡れ性の低さに起因した充填率の低いことがあげられ、より高充填率化するための技術開発が望まれていた。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、強誘電率粒子の高充填化による高誘電率化が図られた複合誘電体の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の複合誘電体は、下記の無機質誘電体セラミックス粒子(A)が、マトリックス樹脂中に分散された樹脂組成物を用いて形成されてなるという構成をとる。
(A)芯物質である無機質誘電体セラミックス粒子と、この芯物質表面を被覆する、下記の一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物から得られる被膜により形成された第1の被覆層と、上記第1の被覆層の外周面を被覆する、下記の一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物から得られる被膜により形成された第2の被覆層とからなる無機質誘電体セラミックス粒子。
【化1】

【化2】

【0006】
すなわち、本発明者らは、高誘電率化を図るために強誘電率粒子の充填率を高める手段について鋭意検討を重ねた。その結果、充填する強誘電率粒子となる無機質誘電体セラミックス粒子の表面に、特定のケイ素エステル化合物によって形成される第1の被覆層と、さらにこの第1の被覆層の外周面に、特定の有機ハロゲン化シラン化合物によって形成される第2の被覆層の2層構造からなる被覆層を形成することにより上記粒子表面に対して適度な疎水化表面処理を行うと、マトリックス樹脂成分との濡れ性が著しく向上して充填率を高くすることが可能となることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明は、各特定の化合物により第1の被覆層および第2の被覆層の2層構造からなる被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子が、マトリックス樹脂中に分散された樹脂組成物を用いて形成されてなる複合誘電体である。このように、上記粒子表面に2層構造の被覆層を形成することにより、上記無機質誘電体セラミックス粒子表面が疎水化処理されるため、マトリックス成分である樹脂成分との濡れ性が向上して高充填化が実現する。その結果、複合誘電体全体の高誘電率化が図られ、所望の誘電率を有する複合誘電体が得られるようになる。したがって、本発明の複合誘電体は、例えば、高誘電体薄膜コンデンサ等として用いられる。
【0008】
そして、上記一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物としてテトラエトキシシランを用いると、一般に加水分解して、シリカ(酸化ケイ素)からなる第1の被覆層を容易に形成することとなる。
【0009】
また、上記一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物としてトリメチルクロロシランを用いると、第1の被覆層表層に存在する活性水素と脱HCl反応を生起して親油性の第2の被覆層を形成することとなる。
【0010】
さらに、上記芯物質である無機質誘電体セラミックス粒子として、最大粒子径100μm以下のチタン酸金属塩を用いると、高い誘電率を有する芯物質コア粒子となり好ましい。
【0011】
また、上記第1の被覆層の厚みが、1〜10nmであると、粒子間の凝集を防止することができ、マトリックス樹脂に対する高充填化が可能となり好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の複合誘電体は、特殊な無機質誘電体セラミックス粒子がマトリックス樹脂成分に分散された樹脂組成物を用いて形成されてなる。
【0013】
上記分散される特殊な無機質誘電体セラミックス粒子は、その粒子表面が下記の一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物によって第1の被覆層が形成され、さらに上記第1の被覆層の外周面に、下記の一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物によって第2の被覆層が形成された2層構造の被覆層が形成された特殊な無機質誘電体セラミックス粒子(A)である。このように、本発明は、上記2層構造の被覆層が形成された特殊な無機質誘電体セラミックス粒子(A)を用いることが最大の特徴である。
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
そして、上記一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、炭素数1〜6、さらに好ましくは炭素数1〜3の低級アルキル基を有するテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく用いられ、特に低コストという点から、テトラエトキシシランが好ましく用いられる。
【0017】
また、上記一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、炭素数1のアルキル基(メチル基)を有する低級有機ハロゲン化シラン化合物である、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランが好ましく用いられ、特に親油性表面に改質するという点から、トリメチルクロロシランが好ましく用いられる。
【0018】
そして、上記第1の被覆層および第2の被覆層の2層構造の被覆層がその表面に形成される、芯物質となる無機質誘電体セラミックス粒子としては、例えば、チタン酸金属塩粒子があげられる。上記チタン酸金属塩粒子としては、Ba,Sr,Ca,Mg,Co,Pd,Zn,Be,Cd,La,Zr等の金属元素を少なくとも一つ含有するチタン酸金属塩粒子があげられる。具体的には、BaTiO3 粒子、SrTiO3 粒子、CaTiO3 粒子、Ba0.085 La0.15Ti0.9 Zr0.1 3 粒子等のチタン酸金属塩粒子があげられる。なかでも、誘電率が最も高いという点から、BaTiO3 粒子を用いることが特に好適である。そして、上記無機質誘電体セラミックス粒子としては、最大粒子径100μm以下のものが好ましく用いられる。なお、通常、上記粒子の粒子径の下限は、0.01μmである。さらに、平均粒子径0.05〜1.0μmの範囲のものが好ましく、特に好ましくは平均粒子径0.03〜0.6μmである。このような粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0019】
つぎに、上記2層構造の被覆層がその表面に形成された無機質誘電体セラミックス粒子が分散されてなるマトリックス樹脂成分としては、特に限定するものではなくその用途,特性に応じて適宜選択されるが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等があげられる。
【0020】
上記マトリックス樹脂成分としてエポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物としては、例えば、液状エポキシ樹脂と、液状フェノール樹脂系硬化剤と、固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子等の硬化促進剤とを配合した液状エポキシ樹脂組成物が好適に用いられる。なお、本発明において、上記液状エポキシ樹脂組成物における液状とは、25℃で流動性を示す状態のことをいい、具体的には、25℃で粘度が0.01mPa・s〜10000Pa・sの範囲のものをいう。上記粘度の測定は、例えば、EMD型回転粘度計を用いて行うことができる。
【0021】
上記液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する液状エポキシ樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、フェノールノボラック型等の各種液状エポキシ樹脂およびその誘導体、多価アルコールとエピクロルヒドリンから誘導される液状エポキシ樹脂およびその誘導体、グリシジルアミン型、ヒダントイン型、アミノフェノール型、アニリン型、トルイジン型等の各種グリシジル型液状エポキシ樹脂およびその誘導体(実用プラスチック辞典編集委員会編、「実用プラスチック辞典材料編」、初版第3刷、1996年4月20日発行、第211ページ〜第225ページにかけて記載)およびこれら上記液状エポキシ樹脂と各種グリシジル型固形エポキシ樹脂の液状混合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0022】
上記液状フェノール樹脂系硬化剤としては、1分子中に水酸基を2個以上有する液状フェノールノボラックであれば特に限定するものではなく、例えば、下記の一般式(3)で表される液状フェノール樹脂が好適に用いられる。
【0023】
【化5】

【0024】
なかでも、本発明においては、25℃で液状を呈する式(3)で表されるアリルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とフェノール・ホルムアルデヒド樹脂との共重合低分子量化合物が好適に用いられる。そして、25℃での粘度が500dPa・s以下、特に100dPa・s以下の液状フェノール樹脂を用いることが液状エポキシ樹脂組成物の粘度を低減できる観点から好ましく用いられる。具体的には、下記の構造式(α)および(β)で表される液状フェノール樹脂の混合物が好ましく用いられる。
【0025】
【化6】

【0026】
本発明に用いられる液状エポキシ樹脂組成物における、液状エポキシ樹脂と液状フェノール樹脂系硬化剤との配合割合は、上記液状エポキシ樹脂のエポキシ基1個に対して、上記液状フェノール樹脂系硬化剤の活性水素の個数を0.4〜1.6個の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは0.6〜1.4個の範囲である。すなわち、エポキシ基1個に対して活性水素の個数が0.4未満でも、また1.6を超えても液状エポキシ樹脂組成物硬化体のガラス転移温度が低下する傾向がみられ好ましくないからである。
【0027】
上記液状エポキシ樹脂および液状フェノール樹脂系硬化剤とともに用いられる固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子としては、例えば、特開平7−196776号公報等に記載された公知の方法に従って製造されるものがあげられる。そして、上記固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子は、室温においては上記液状エポキシ樹脂に対して不溶性を示す硬化促進剤であり、加熱することにより可溶化し硬化促進剤として機能するものである。例えば、アミン化合物とエポキシ化合物の反応生成物(アミン−エポキシアダクト)や、アミン化合物とイソシアネート化合物または尿素化合物との反応生成物(尿素アダクト)等、さらにはこれらの固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子の表面をイソシアネート化合物や酸性化合物を用いて処理したものがあげられる。なお、本発明において、室温とは、通常、10〜40℃程度の範囲をいう。
【0028】
上記アミン化合物とエポキシ化合物の反応生成物(アミン−エポキシアダクト)を得る際に用いられるエポキシ化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する液状エポキシ樹脂であれば特に限定するものではなく、先の液状エポキシ樹脂で述べたと同様、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、フェノールノボラック型等の各種液状エポキシ樹脂およびその誘導体、多価アルコールとエピクロルヒドリンから誘導される液状エポキシ樹脂およびその誘導体、グリシジルアミン型、ヒダントイン型、アミノフェノール型、アニリン型、トルイジン型等の各種グリシジル型液状エポキシ樹脂およびその誘導体(実用プラスチック辞典編集委員会編、「実用プラスチック辞典材料編」、初版第3刷、1996年4月20日発行、第211ページ〜第225ページにかけて記載)およびこれら上記液状エポキシ樹脂と各種グリシジル型固形エポキシ樹脂の液状混合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0029】
上記固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子の製造に用いられるアミン化合物としては、エポキシ基またはイソシアネート基と付加反応しうる活性水素を1分子中に1個以上有し、かつ、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のなかから選ばれた置換基を少なくとも1分子中に1個以上有するものであれば特に限定するものではない。例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n−プロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルピペラジン等のアミン化合物、イミダゾール化合物等のような分子内に3級アミノ基を有する1級または2級アミン類、2−ジメチルアミノエタノール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−ジメチルアミノエタンチオール、ニコチン酸、ピコリン酸、ヒドラジド類等の分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類、ヒドラジド類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0030】
さらに、上記固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子の製造に用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、n−ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート等の単官能イソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0031】
そして、本発明の固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子は、例えば、上記エポキシ化合物またはイソシアネート化合物と、上記アミン化合物の各成分を混合し、室温〜200℃で反応させた後、冷却固化したものを粉砕することにより作製することができる。または、上記各成分を、メチルエチルケトン,ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させ、溶媒除去した後、同様に固形物を粉砕することにより作製することができる。なお、粉砕後の粒子の粒径等は特に限定するものではないが、例えば、平均粒子径10〜20μmであることが好ましい。
【0032】
上記固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子の含有量は、特に限定するものではないが、液状フェノール樹脂系硬化剤に対して所望の硬化速度が得られる割合となるように適宜設定することが好ましい。例えば、硬化速度の指標として、熱盤でゲル化時間を計測しながら容易に使用量を決定することができる。その一例として、液状フェノール樹脂系硬化剤100重量部(以下「部」と略す)に対して10〜50部の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは15〜30部、特に好ましくは20〜25部に設定することが、80〜100℃程度における速硬化反応性を得られる点で好適である。
【0033】
さらに、液状エポキシ樹脂組成物には、上記液状エポキシ樹脂,液状フェノール樹脂系硬化剤および固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子以外に、アミン系シランカップリング剤を用いることができる。
【0034】
上記アミン系シランカップリング剤としては、1級アミノ基または2級アミノ基を有するシランカップリング剤であれば特に限定されるものではなく、例えば、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0035】
なかでも、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いることが、低ズリ速度依存性(低チクソトロピー性)の効果が大きく好ましい。
【0036】
上記アミン系シランカップリング剤を配合する場合の含有量は、上記固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子100部に対して0.1〜10部の割合に設定することが好ましい。
【0037】
上記マトリックス樹脂成分としては、上記エポキシ樹脂組成物以外に、例えば、不飽和ポリエステル樹脂組成物や、ポリイミド樹脂組成物等があげられる。
【0038】
上記不飽和ポリエステル樹脂を用いてなる樹脂組成物としては、例えば、マレイン酸,フマル酸等の不飽和カルボン酸類と、エチレングリコール,ジエチレングリコール等のグリコール類との重縮合樹脂と、スチレンのようなビニル化合物類を混合したものがあげられる。
【0039】
上記ポリイミド樹脂を用いてなる樹脂組成物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重付加反応で生成したポリアミック酸ポリマーがあげられる。
【0040】
本発明の複合誘電体に用いられる2層構造の被覆層で被覆された無機質誘電体セラミックス粒子は、例えば、つぎのようにして作製される。すなわち、まず、前記一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物を用いた第1の被覆層の形成は、特開平11−246227号公報,特開2003−253246号公報に記載の、芯物質を包接したコアシェル型ナノ粒子創製のためのマイクロエマルジョン法を用いて形成することができる。このマイクロエマルジョン法は、界面活性剤を含む非水溶性溶媒に、無機質誘電体セラミックス粒子としての最大粒子径100μm以下のチタン酸金属塩粒子を含む水性懸濁液を投入し、高速攪拌する。この場合、界面活性剤、有機溶媒の選択が重要であり、上記無機質誘電体セラミックス粒子が上記ケイ素エステル化合物によって被覆された包接型構造の粒子を安定的に得るためには、上記界面活性剤としてポリオキシエチレンセチルエーテルを使用することが好ましい。上記ポリオキシエチレン基において、そのオキシエチレンの平均付加モル数は5〜25、好ましくは15〜20である。また、上記有機溶媒としては、非水溶性の溶媒、特にシクロヘキセン、シクロヘキサンを使用することが好ましい。また、攪拌温度は、室温〜70℃、好ましくは40〜60℃に設定することが好ましい。そして、上記無機質誘電体セラミックス粒子を含む水性懸濁液の濃度は、5〜30重量%に設定することが好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。さらに、上記有機溶媒(非水溶性溶媒)に添加する無機質誘電体セラミックス粒子を含む水性懸濁液の量は、非水溶性溶媒1リットルあたり1〜400mlに設定することが好ましく、より好ましくは100〜300mlに設定することである。また、上記有機溶媒(非水溶性溶媒)と無機質誘電体セラミックス粒子を含む水性懸濁液との混合温度は、一般に、室温(20℃)〜70℃、好ましくは40〜60℃の範囲である。
【0041】
つぎに、攪拌とともに超音波振動処理を加え上記マイクロエマルジョンの分散を安定化した後、包接物質である前記一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物を加え、マイクロエマルジョン中で加水分解させる。ついで、これに、前記一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物を好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%含有する非水溶性溶媒を加えることにより、無機質誘電体セラミックス粒子表面に、前記一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物から得られる被膜により形成された第1の被膜層と、この第1の被膜層の外周面を被覆する、前記一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物から得られる被膜により形成された第2の被膜層の2層構造の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子を作製する。その後、遠心分離操作により上記被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子を分離し、低級アルコールによる複数回の洗浄の後、真空乾燥を行う。このようにして、目的の、高誘電率を有する強誘電性の無機質誘電体セラミックス粒子を芯物質とし、その表面に上記一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物を用いて形成される第1の被覆層と、さらに第1の被覆層の表面に上記一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物を用いて形成される第2の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子が得られる。
【0042】
そして、上記2層構造の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子を、マトリックス樹脂成分中に分散し、例えば、薄膜化して熱硬化等することにより本発明の複合誘電体を作製することができる。上記2層構造の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子のマトリックス樹脂成分への分散は、ボールミル、アトライター、TKフィルミックス等のメディアミルや3本ロールを用いることにより行われる。また、上記マトリックス樹脂成分が固形を示すエポキシ樹脂組成物等であれば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等の溶媒に溶解することにより上記2層構造の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子の分散に供することができる。
【0043】
上記マトリックス樹脂成分として上記エポキシ樹脂組成物を用い、これと2層構造の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子との混合割合は、上記2層構造の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子が全体の合計量の50重量%以上を占めるように設定することが好ましい。より好ましくは60重量%以上であり、通常、その上限は、95重量%である。
【0044】
上記2層構造の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子においては、粒子の最大粒子径が100μm以下であることが好ましい。通常、粒子径の下限は0.01μmである。また、上記粒子の平均粒子径は、好ましくは0.03〜1.1μmであり、特に好ましくは0.05〜0.6μmである。このような粒子径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、上記2層構造の被覆層が形成された無機質誘電体セラミックス粒子の、第1の被覆層の厚みは、1〜10nmであることが好ましく、特に好ましくは1〜5nmである。この第1の被覆層の厚みの測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて計測することができる。
【0045】
このようにして得られる複合誘電体としては、比誘電率が20〜200の範囲内であることがその用途等の点から好ましい。特に好ましくは50〜200である。上記比誘電率は、例えば、つぎのようにして測定される。すなわち、インピーダンスアナライザ法や、空胴共振器法等を用いて測定することができる。
【0046】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0047】
内容積200mlのビーカーに、0.5mol/リットルの界面活性剤ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル(オキシエチレンの平均付加モル数15)のシクロヘキサン溶液10mlを準備し、これに最大粒子径0.1μmで平均粒子径50nmのBaTiO3 粉末を3.8g、蒸留水3.7ml、28%アンモニア水17mlを加えて、50〜60℃下にマグネチックスターラーで30分間攪拌し、さらに30分間超音波振動処理を行いマイクロエマルジョンを調製した。
【0048】
その後、上記マイクロエマルジョンに、テトラエトキシシラン1gを添加し攪拌しながら2時間加水分解を行い、BaTiO3 粒子表面に第1の被覆層を形成した。加水分解後、トリメチルクロロシラン5mlをシクロヘキサン50mlに溶解した溶液を攪拌しながら加え、第1の被覆層表面をメチル化処理して第2の被覆層を形成することより、2層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子分散液を作製した。なお、上記第1の被覆層の厚みは3nmであった。
【0049】
得られた分散液の沈殿を遠心分離機にかけて粒子を回収し、2−プロパノールを用いて粒子洗浄を3回行い、ついで80℃で12時間真空乾燥した。このような操作を数度繰り返し行うことにより、第1の被覆層と第2の被覆層が形成された包接型構造を有するBaTiO3 コアの強誘電性セラミック粒子を合計58.7g得た。
【0050】
続いて、下記の式(a)で表されるビスフェノールF型エポキシ樹脂16.5g、下記の式(b)で表されるトリメチロールプロパン型エポキシ化合物12.5g、下記の式(c)で表される液状フェノール樹脂と下記の式(d)で表される液状フェノール樹脂の混合物〔式(c)表される液状フェノール樹脂の重量割合が85重量%、下記の式(d)で表される液状フェノール樹脂の重量割合が15重量%、25℃における粘度が60dPa・s、混合物の平均水酸基当量135g/eq〕27g、固体分散型アミンアダクト系硬化促進剤粉末粒子〔味の素ファインテクノ社製のアミキュアPN−40(軟化温度110℃、平均粒子径10〜12μmの淡黄色粉体)〕2.7gを乳鉢にとりよく混合した後、前記2層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子58.7gを加え、その後3本ロール(ロールギャップ0.1mm)で10回パスし、分散を行ったペースト組成物を真空脱泡することにより、複合誘電体作製用ペースト組成物を作製した。
【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
上記ペースト組成物を厚み35μmの銅箔上にバーコートし、120℃で2時間硬化することにより厚み25μmの複合誘電体層を形成した。この複合誘電体層上に、ガードリング付きの直径50mmの銀電極を形成して、誘電率をインピーダンスアナライザ(HP社製、4194A)を用いて測定(1MHz)した。
【実施例2】
【0055】
実施例1において、2層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子を作製する際に用いたテトラエトキシシランの使用量を1.78gに変えた。なお、形成された第1の被覆層の厚みは4nmであった。それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【実施例3】
【0056】
実施例1において、2層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子を作製する際に用いたテトラエトキシシランの使用量を0.72gに変えた。なお、形成された第1の被覆層の厚みは2nmであった。それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【実施例4】
【0057】
実施例1において、2層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子を作製する際に用いたテトラエトキシシランの使用量を3.8gに変えた。なお、形成された第1の被覆層の厚みは5nmであった。それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【実施例5】
【0058】
最大粒子径2μmで平均粒子径1μmのBaTiO3 粉末3.8gを用いた。それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【実施例6】
【0059】
BaTiO3 粉末に代えて、最大粒子径0.1μmで平均粒子径50nmのSrTiO3 粉末を用いた。それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【0060】
〔比較例1〕
実施例1において、2層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子を作製する際に、トリメチルクロロシラン5mlをシクロヘキサン50mlに溶解した溶液(第2の被覆層形成材料)を用いなかった。それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【0061】
〔比較例2〕
実施例1において、2層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子を作製する際に用いたテトラエトキシシランの使用量を1.0gとするとともに、ヒドラジンを5g添加し攪拌しながら2時間加水分解を行った。得られた粒子には、シリカ単体粒子の生成がみられた。これは、ヒドラジンによる加水分解反応が速過ぎたため、BaTiO3 粒子表面での反応と同時に生起したためと推測される。そして、それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【0062】
〔比較例3〕
2層構造の被覆層形成処理を行わず、最大粒子径0.1μmで平均粒子径50nmのBaTiO3 粒子をそのまま用いた。それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【0063】
〔比較例4〕
実施例1において、2層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子を作製する際に、テトラエトキシシラン(第1の被覆層形成材料)を用いなかった。それ以外は実施例1と同様にして複合誘電体作製用ペースト組成物を作製し、複合誘電体層を形成した。
【0064】
得られた各複合誘電体作製用ペースト組成物の25℃における粘度をEH型回転粘度計(HP社製、4194A)を用いて測定した。また、複合誘電体層の誘電率を実施例1と同様にして測定した。その結果を下記の表1〜表2に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
上記結果から、実施例品は、ペースト組成物の粘度が低く、高誘電率を備えたものであった。
【0068】
これに対して、第2の被覆層が形成されず単層構造の被覆層が形成されたBaTiO3 粒子が分散されたペースト組成物である比較例1は、エポキシ樹脂組成物に対する親和性に劣るため粘度が高かった。また、シリカ単独粒子の混在がみられたBaTiO3 粒子が分散されたペースト組成物である比較例2は、低粘度であったが、誘電率が低かった。そして、被覆層を形成せずBaTiO3 粒子をそのまま用いた比較例3は、高誘電率を示したが、親和性に劣るため、粘度が高かった。
【実施例7】
【0069】
実施例1において、テトラエトキシシランに代えてテトラメトキシシランを、かつトリメチルクロロシランに代えてジメチルジクロロシランを用いた。それ以外は実施例1と同様にしてペースト組成物を作製して25℃における粘度を、また上記と同様にして複合誘電体層の誘電率を測定した。その結果、実施例1とほぼ同等の評価結果が得られた。
【実施例8】
【0070】
実施例1において、テトラエトキシシランに代えてフェニルトリエトキシシランを、かつトリメチルクロロシランに代えてジメチルジクロロシランを用いた。それ以外は実施例1と同様にしてペースト組成物を作製して25℃における粘度を、また上記と同様にして複合誘電体層の誘電率を測定した。その結果、実施例1とほぼ同等の評価結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の複合誘電体は、例えば、電子回路素子である薄膜コンデンサ等に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の無機質誘電体セラミックス粒子(A)が、マトリックス樹脂中に分散された樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする複合誘電体。
(A)芯物質である無機質誘電体セラミックス粒子と、この芯物質表面を被覆する、下記の一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物から得られる被膜により形成された第1の被覆層と、上記第1の被覆層の外周面を被覆する、下記の一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物から得られる被膜により形成された第2の被覆層とからなる無機質誘電体セラミックス粒子。
【化1】

【化2】

【請求項2】
上記一般式(1)で表されるケイ素エステル化合物が、テトラエトキシシランである請求項1記載の複合誘電体。
【請求項3】
上記一般式(2)で表される有機ハロゲン化シラン化合物が、トリメチルクロロシランである請求項1または2記載の複合誘電体。
【請求項4】
上記芯物質である無機質誘電体セラミックス粒子が、最大粒子径100μm以下のチタン酸金属塩の粒子である請求項1〜3のいずれか一項記載の複合誘電体。
【請求項5】
上記チタン酸金属塩が、Ba,Sr,Ca,Mg,Co,Pd,Zn,Be,Cd,LaおよびZrからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属元素を含有するものである請求項4記載の複合誘電体。
【請求項6】
上記第1の被覆層の厚みが、1〜10nmである請求項1〜5のいずれか一項記載の複合誘電体。
【請求項7】
上記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂組成物,不飽和ポリエステル樹脂組成物またはポリイミド樹脂組成物である請求項1〜6のいずれか一項記載の複合誘電体。
【請求項8】
複合誘電体の比誘電率が20〜200である請求項1〜7のいずれか一項記載の複合誘電体。

【公開番号】特開2006−164851(P2006−164851A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357094(P2004−357094)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】