説明

複合透明材

【課題】複合透明材およびそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】この着色複合透明材は、ポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される表面を含む。他の観点において、本発明は、複数の色相を示す複合透明材を対象とする。これらの複合透明材は、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜であって、複数の厚さを有する被覆で少なくとも部分的に被覆される表面を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2006年1月20日に出願された、米国特許出願番号第11/337,062号(発明の名称「Aqueous Dispersions Of Polymer−Enclosed Particles,Related Coating Compositions And Coated Substrates」)の一部継続出願であり、この米国特許出願番号第11/337,062号は、米国特許出願番号第10/876,031号(発明の名称「Aqueous Dispersions Of Microparticles Having a Nanoparticulate Phase and Coating Compositions Containing The Same」)の一部継続出願であり、この米国特許出願番号第10/876,031号は、2003年6月24日に出願された、米国仮特許出願番号第60/482,167号の利益を主張し、これらの各々を本明細書中で参考として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、所望の色を呈する着色複合透明材とその製造方法とに関する。本発明はまた、色の様々な所望の濃淡を呈する透明材とその製造方法とにも関する。
【背景技術】
【0003】
所望の色、すなわち色調を呈する透明物品(例えば、建築用窓、自動車用窓、アイウェアレンズ)を提供することは、美的などの観点から望ましいとされることが多い。このような色は、ガラスや透明塑性材料の製造に使用される組成物に含まれる染料を使用することにより得られる場合もあれば、あるいは染料を含有する着色被膜を材料に堆積させる(deposited)場合もある。顔料は透明度の低いくすんだまたは不透明な材料を一般的に生じることから、一般的には使用が避けられる。
【0004】
しかし、染料は着色透明物品の調製での使用に適切であることが多いものの、いくつかの欠点も有する。染料は可視光線および/または紫外線によって分解されやすく、そのため、染料で着色された材料は、一般的に、顔料で着色された同等の材料よりも耐久性が低くかつ耐光性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、顔料で着色した材料に特有の色耐久性および耐光性を示しながらも染料含有材料に特有の透明度も示す着色複合透明材を提供することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特定の観点において、本発明は、ポリマー封入色付与粒子(polymer−enclosed color−imparting particle)を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される表面を含む複合透明材を対象とする。これらの複合透明材において、ポリマー封入色付与粒子は、(A)(i)色付与ナノ粒子(color−imparting nanoparticle)、(ii)1つ以上の重合性エチレン性不飽和モノマー、および/または(iii)1つ以上の重合性不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物、および/または(iv)1つ以上のポリマーの、水性媒質中の混合物を用意して、その混合物を水性媒質の存在下で高応力剪断条件に供して、混合物をポリマー封入色付与粒子にする手順、あるいは(B)(i)色付与粒子、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマー、および(iii)水分散性の重合性分散剤の、水性媒質中の混合物を用意し、色付与粒子をナノ粒子に形成し、エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤を重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を形成する手順、を含む方法によって調製される水性分散物から得られる。
【0007】
他の観点において、本発明は、複数の色相を示す複合透明材を対象とする。これらの複合透明材は、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜であって、複数の厚さを有する被覆で少なくとも部分的に被覆される表面を含む。水性分散物は、(A)(i)色付与ナノ粒子、(ii)1つ以上の重合性エチレン性不飽和モノマー、および/または(iii)1つ以上の重合性不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物、および/または(iv)1つ以上のポリマーの、水性媒質中の混合物を用意して、その混合物を水性媒質の存在下で高応力剪断条件に供して、混合物をポリマー封入色付与粒子にする手順、あるいは(B)(i)色付与粒子、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマー、および(iii)水分散性の重合性分散剤の、水性媒質中の混合物を用意し、色付与粒子をナノ粒子に形成し、エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤を重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を形成する手順、を含む方法によって調製される。
【0008】
さらに他の観点において、本発明は、第1の色相を有し、かつポリマー封入色付与粒子の第1の水性分散物から得られるポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される第1の表面と、第1の表面に対向する第2の表面であって、第2の色相を有し、かつポリマー封入色付与粒子の第2の水性分散物から得られるポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される第2の表面と、を含む、複合透明材を対象とする。第1および/または第2の水性分散物は、(A)(i)色付与ナノ粒子、(ii)1つ以上の重合性エチレン性不飽和モノマー、および/または(iii)1つ以上の重合性不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物、および/または(iv)1つ以上のポリマーの、水性媒質中の混合物を用意して、その混合物を水性媒質の存在下で高応力剪断条件に供して、混合物をポリマー封入色付与粒子にする手順、あるいは(B)(i)色付与粒子、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマー、および(iii)水分散性の重合性分散剤の、水性媒質中の混合物を用意し、色付与粒子をナノ粒子に形成し、エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤を重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を形成する手順、を含む方法によって調製される。
【0009】
なおさらに他の観点において、本発明は、多層被膜で少なくとも部分的に被覆される複合透明材であって、(a)ポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される第1の薄色被膜と、(b)第1の層の少なくとも一部にわたって堆積され、かつ一般式RM(OR’)Z−X(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択され、R’は低分子量のアルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数であり、0である場合もある)のアルコキシドを含む組成物から堆積されるハードコートを含む第2の層と、を含む、複合透明材を対象とする。
【0010】
本発明はまた、例えば、薄色ガラスユニット(例えば、建築用ユニットや自動車用ガラスユニット)ならびにこれに関連する方法に関する。
例えば、本発明は以下を提供する:
(項目1)
ポリマー封入色付与粒子の水性分散物を含む被膜組成物から堆積される透明着色被膜で少なくとも部分的に被覆される表面を含む着色複合透明材であって、該水性分散物が、
(A)(i)色付与ナノ粒子、(ii)1つ以上の重合性エチレン性不飽和モノマー、および/または(iii)1つ以上の重合性不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物、および/または(iv)1つ以上のポリマーの、水性媒質中の混合物を用意して、該混合物を水性媒質の存在下で高応力剪断条件に供して、該混合物をポリマー封入色付与粒子にする手順;または
(B)(i)色付与粒子、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマー、および(iii)水分散性の重合性分散剤の、水性媒質中の混合物を用意し、該色付与粒子をナノ粒子に形成し、該エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤を重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を形成する手順、
を含む方法によって調製される、着色複合透明材。
(項目2)
前記透明材がガラスを含む、項目1に記載の着色複合透明材。
(項目3)
前記透明材が、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとの混合物、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリスルホン、アクリル、これらのコポリマー、またはこれらの混合物から選択されるポリマー材料を含む、項目1に記載の着色複合透明材。
(項目4)
前記透明材がポリカーボネートを含む、項目1に記載の着色複合透明材。
(項目5)
前記透明材が模様を付けた表面または粗い表面を含む、項目1に記載の着色複合透明材。
(項目6)
前記ナノ粒子が無機ナノ粒子を含む、項目1に記載の着色複合透明材。
(項目7)
前記ナノ粒子が有機ナノ粒子を含む、項目1に記載の着色複合透明材。
(項目8)
前記透明着色被膜の少なくとも一部にわたって堆積されるハードコートもさらに含む、項目1に記載の着色複合透明材。
(項目9)
前記ハードコートが、一般式RM(OR’)Z−X(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択され、R’は低分子量のアルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数であり、0である場合もある)のアルコキシドを含む組成物から堆積される、項目8に記載の着色複合透明材。
(項目10)
前記ハードコートが、ポリマー封入色付与粒子もさらに含む組成物から堆積され、該組成物の総固体重量に基づく重量パーセントで、該ポリマー封入色付与粒子が1〜25重量パーセントの量で該組成物中に存在し、前記アルコキシドが50〜99重量パーセントの量で該組成物中に存在する、項目9に記載の着色複合透明材。
(項目11)
複数の色相を示す着色複合透明材であって、該複合透明材が、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物を含む被膜組成物から堆積される透明着色被膜で少なくとも部分的に被覆される表面を含み、該被膜が複数の厚さを有し、該水性分散物が、
(A)(i)色付与ナノ粒子、(ii)1つ以上の重合性エチレン性不飽和モノマー、および/または(iii)1つ以上の重合性不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物、および/または(iv)1つ以上のポリマーの、水性媒質中の混合物を用意して、該混合物を水性媒質の存在下で高応力剪断条件に供して、該混合物をポリマー封入色付与粒子にする手順;または
(B)(i)色付与粒子、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマー、および(iii)水分散性の重合性分散剤の、水性媒質中の混合物を用意し、該色付与粒子をナノ粒子に形成し、該エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤を重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を形成する手順、
を含む方法によって調製される、着色複合透明材。
(項目12)
第1の色相を有し、かつポリマー封入色付与粒子の第1の水性分散物を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される第1の表面と、該第1の表面に対向する第2の表面とを含む複合透明材であって、該第2の表面が、第2の色相を有し、かつポリマー封入色付与粒子の第2の水性分散物を含む被膜組成物から堆積される透明被膜で少なくとも部分的に被覆され、該第1および/または第2の水性分散物が、
(A)(i)色付与ナノ粒子、(ii)1つ以上の重合性エチレン性不飽和モノマー、および/または(iii)1つ以上の重合性不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物、および/または(iv)1つ以上のポリマーの、水性媒質中の混合物を用意して、該混合物を水性媒質の存在下で高応力剪断条件に供して、該混合物をポリマー封入色付与粒子にする手順;または
(B)(i)色付与粒子、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマー、および(iii)水分散性の重合性分散剤の、水性媒質中の混合物を用意し、該色付与粒子をナノ粒子に形成し、該エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤を重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を形成する手順、
を含む方法によって調製される、複合透明材。
(項目13)
多層被膜で少なくとも部分的に被覆される複合透明材であって、(a)ポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される第1の薄色被膜と、(b)該第1の層の少なくとも一部にわたって堆積され、かつ一般式RM(OR’)Z−X(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択され、R’は低分子量のアルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数であり、0である場合もある)のアルコキシドを含む組成物から堆積されるハードコートを含む、第2の層と、を含む、複合透明材。
(項目14)
前記アルコキシドが、グリシドキシ[(C−C)アルキル]トリ(C−C)アルコキシシランモノマーとテトラ(C−C)アルコキシシランモノマーとの組み合わせを含む、項目13に記載の複合透明材。
(項目15)
前記グリシドキシ[(C−C)アルキル]トリ(C−C)アルコキシシランモノマーが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む、項目14に記載の複合透明材。
(項目16)
前記テトラ(C−C)アルコキシシランが、テトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを含む、項目14に記載の複合透明材。
(項目17)
前記薄色被膜が、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物を含む被膜組成物から堆積され、該水性分散物が、
(A)(i)色付与ナノ粒子、(ii)1つ以上の重合性エチレン性不飽和モノマー、および/または(iii)1つ以上の重合性不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物、および/または(iv)1つ以上のポリマーの、水性媒質中の混合物を用意して、該混合物を水性媒質の存在下で高応力剪断条件に供して、該混合物をポリマー封入色付与粒子にする手順;または
(B)(i)色付与粒子、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマー、および(iii)水分散性の重合性分散剤の、水性媒質中の混合物を用意し、該色付与粒子をナノ粒子に形成し、該エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤を重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を形成する手順、
を含む方法によって調製される、項目13に記載の複合透明材。
(項目18)
前記ハードコートが、ポリマー封入色付与粒子を含む組成物から堆積される、項目13に記載の複合透明材。
(項目19)
前記薄色被膜が複数の厚さを有する、項目13に記載の複合透明材。
(項目20)
前記透明材が模様を付けた表面または粗い表面を有する、項目19に記載の複合透明材。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例17で調製したコースタの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
使用例または別途記載がある場合を除き、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分量や反応条件などを表す数字はすべて、いずれの場合も「約」という用語で修飾されるものと理解されたい。従って、特に断りがない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明により得られる所望の性質に応じて変動する場合がある近似値である。最低でも、均等論の適用を特許請求の範囲に制限しようとすることなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数に照らし、通常の丸め法を適用して少なくとも解釈されなければならない。
【0013】
本発明の広範な適用範囲を記載する数値の範囲およびパラメータは近似値であるものの、具体例に記載される数値はできるだけ正確に報告する。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0014】
また、本明細書に列挙されるいずれの数値範囲も、その範囲内に包含されるすべての部分範囲を含むものとして意図されることも理解しなければならない。例えば、「1〜10」の範囲は、列挙された最小値1から列挙された最大値10までの間の(これらの数値も含む)、すなわち1以上の最小値と10以下の最大値とを有する、すべての部分範囲を含むものとして意図される。
【0015】
前述の通り、本発明の特定の実施形態は、ポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される表面を含む複合透明材を対象とする。本明細書で使用される「複合透明材」という用語は、第2の要素(例えば、被膜)が適用されている透明物品を指す。本明細書で使用される、例えば物品や被膜について言及した「薄色」という用語は、一定の波長の可視光(400〜700nm)を、可視領域内の他の波長よりも多く吸収する物品または被膜を指す。本明細書で使用される、例えば物品または被覆物品について言及した「透明」という用語は、その物品を通して見た際に、物品の向こう側の表面が肉眼で見えることを意味する。所望の用途に応じて、このような透明物品は、比較的低い透過率、すなわち50%以下、場合によっては10%以下、あるいはさらに他の場合には5%以下の分光透過率を有する可能性がある一方で、他の場合には、透明物品は、比較的高い透過率、すなわち50%超、場合によっては少なくとも60%、あるいはさらに他の場合には少なくとも80%の分光透過率を有する可能性もある。上記の分光透過率の値は、Hunter Associates Laboratory,Inc.(米国バージニア州レストン)のHunter Lab COLORQUEST(登録商標)II Sphere分光光度計を使用して、ASTM規格D−1003に基づき、410ナノメートル〜700ナノメートルの波長で測定される。本明細書に報告する透明度の値は、約410ナノメートル〜約700ナノメートルの波長を有する可視光を使用して得られる。すべての透過百分率およびすべての曇り度百分率は、実施例に記載するような乾燥膜厚を有する試料を基にしている。
【0016】
本発明の複合透明材の透明物品は、種々の材料から形成することができる。本発明の特定の実施形態において、前記物品は、硬質材料(例えば、フロートガラスなどのガラス)を含む。本発明の特定の実施形態において、前記物品は、軟質材料(例えば、ポリマー材料)を含む。このような物品に適切なポリマー材料の例には、熱可塑性材料(例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとの混合物、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリスルホン、アクリル、コポリマー、および/またはこれらのいずれかの混合物)が含まれるが、これらに限定されない。以下に詳述する通り、これらの物品のいくつかは、模様付きの表面または粗い表面(roughened)を有することができる。このような表面は、当業者に既知のいずれかのサンドブラストプロセスやエッチングプロセスなどのいずれかの適切な方法によって調製することができる。
【0017】
本発明の複合透明材は、ポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される表面を含む。本明細書で使用される「ポリマー封入粒子」という用語は、粒子の著しい凝集が阻止されるように、生成された被膜内で粒子を互いに分離させるのに十分な程度にポリマーで少なくとも部分的に封入される(すなわち、ポリマー内に限定される)粒子を指す。当然ながら、このような「ポリマー封入粒子」を含む被膜組成物はまた、ポリマー封入粒子ではない粒子を含む場合もあることが理解されるであろう。本明細書で使用される「色付与粒子」という用語は、可視光のいくつかの波長、すなわち400〜700ナノメートルの波長を、可視領域内の他の波長よりも著しく多く吸収する粒子を指す。
【0018】
特定の実施形態において、ポリマーに封入される粒子は、ナノ粒子を含む。本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、1ミクロン未満の粒径を有する粒子を指す。特定の実施形態において、本発明で使用されるナノ粒子は、平均粒径が300ナノメートル以下、例えば200ナノメートル以下、あるいは場合によっては100ナノメートル以下である。
【0019】
本発明において、平均粒径は、既知のレーザー散乱法に従って測定することができる。例えば、粒子の大きさを測定するために633ナノメートルの波長のヘリウム−ネオンレーザーを使用し、かつ粒子が球状形態を有すること、すなわち「粒径」とは粒子が完全に封入される最小の球体を指すことを仮定する、Horiba Model LA 900レーザー回折粒径測定装置を使用して、測定することができる。平均粒径はまた、粒子の代表的な試料を撮影した透過電子顕微鏡(「TEM」)画像の電子顕微鏡写真を視覚的に検討し、画像内の粒子の直径を測定し、TEM画像の拡大倍率を基に測定粒子の平均一次粒子径を算出することによって、測定することもできる。当業者であれば、このようなTEM画像を作成して、拡大倍率を基に一次粒子径を測定する方法を理解するであろう。粒子の一次粒子径とは、粒子を完全に封入する最小直径の球体を指す。本明細書で使用される「一次粒子径」という用語は、複数の個々の粒子の凝集ではなく、個々の粒子の大きさを指す。
【0020】
ポリマー封入色付与粒子の形状(または形態)は変化する可能性がある。例えば、略球状の形態(例えば、固体ビーズ、ミクロビーズ、または中空球)、ならびに立方体、板状、または針状(細長または線維状)の粒子を使用することができる。さらに、前記粒子は、中空、多孔性またはボイドレス、あるいは上記のいずれかの組み合わせ(例えば、多孔性または固体の壁を有する中空部)の内部構造を有することができる。
【0021】
生成された被膜組成物の所望の性質や特性(例えば、被膜硬さ、耐引掻性、安定性、または色)に応じて、異なる平均粒径を有する1つ以上のポリマー封入色付与粒子の混合物を使用できることを、当業者であれば認識するであろう。
【0022】
ポリマー封入色付与粒子は、ポリマー無機材料および/または非ポリマー無機材料、ポリマー有機材料および/または非ポリマー有機材料、複合材料、ならびに上記のいずれかの混合物から形成することができる。本明細書で使用される「から形成」とは、オープンクレーム方式の用語(例えば、「含む(comprising)」)を示す。従って、列挙され成分の一覧「から形成される」組成物または物質は、少なくともこれらの列挙された成分を含む組成物であり、組成物の形成時に他の列挙されていない成分もさらに含み得ることが意図される。さらに、本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、オリゴマーを包含するものとして意図されており、ホモポリマーおよびコポリマーの両方を含むが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用される「ポリマー無機材料」という用語は、炭素以外の1つ以上の元素に基づく主鎖の繰り返し単位を有するポリマー材料を意味する。なおまた、本明細書で使用される「ポリマー有機材料」という用語は、すべてが炭素に基づく主鎖の繰り返し単位を有する、合成ポリマー材料、半合成ポリマー材料および天然ポリマー材料を意味する。
【0024】
本明細書で使用される「有機材料」という用語は、通常炭素がそれ自体と水素とに結合し、また他の元素にも結合することが多い炭素含有化合物を意味するが、二元化合物(例えば、酸化炭素、炭化物、二硫化炭素など)、三元化合物(例えば、金属シアン化物、金属カルボニル、ホスゲン、硫化カルボニルなど)、および炭素含有イオン化合物(例えば、炭酸カルシウムや炭酸ナトリウムなどの金属炭酸塩)は含まない。
【0025】
本明細書で使用される「無機材料」という用語は、有機材料でないいずれかの材料を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「複合材料」という用語は、複数の異なる材料を組み合わせたものを意味する。一般的に、複合材料から形成される粒子は、表面の硬度が表面下の粒子内部の硬度と異なっている。さらに具体的には、粒子の表面は、当該技術分野で周知のいずれかの方法で修飾することが可能であり、その方法としては、当該技術分野で既知の技法を使用してその表面特性を化学的または物理的に変更する方法が含まれるが、これに限定されない。
【0027】
例えば、粒子は、より柔らかい表面を有する複合粒子を形成するために1つ以上の2次材料で被覆、クラッディング(clad)または被包された1次材料から形成することができる。特定の実施形態において、複合材料から形成される粒子は、異なる形態の1次材料で被覆、クラッディングまたは被包された1次材料から形成することができる。本発明で有用な粒子の詳細については、G.Wypych,Handbook of Fillers,2nd Ed.(1999)15−202ページを参照されたい。
【0028】
上述の通り、本発明で有用な粒子には、当該技術分野で既知のいずれの無機材料も含まれてよい。適切な粒子は、セラミック材料、金属材料および上記のいずれかの混合物から形成することができる。このようなセラミック材料の非限定的な例は、金属酸化物、混合金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属珪酸塩、金属ホウ化物、金属炭酸塩、および上記のいずれかの混合物を含んでよい。金属窒化物の特定の非限定的な例には窒化ホウ素があり、金属酸化物の特定の非限定的な例には酸化亜鉛があり、適切な混合金属酸化物の非限定的な例にはケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウムがあり、適切な金属硫化物の非限定的な例には、二硫化モリブデンや、二硫化タンタル、二硫化タングステン、および硫化亜鉛があり、金属珪酸塩の非限定的な例にはケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム(例えば、バーミキュライト)がある。
【0029】
本発明の特定の実施形態において、前記粒子は、アルミニウム、バリウム、ビスマス、硼素、カドミウム、カルシウム、セリウム、コバルト、銅、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、モリブデン、窒素、酸素、リン、セレン、ケイ素、銀、硫黄、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛、およびジルコニウム(これらの酸化物、これらの窒化物、これらのリン化物、これらの燐酸塩、これらのセレン化物、これらの硫化物、これらの硫酸塩、およびこれらの混合物を含む)から選択される無機材料を含む。前述の無機粒子の適切な非限定的な例には、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、炭化硼素、窒素ドープチタニア、およびセレン化カドミウムがある。
【0030】
前記粒子は、例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、もしくは非晶質シリカ、アルミナもしくはコロイダルアルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイダルイットリア、ジルコニア(例えば、コロイダルジルコニアもしくは非晶質ジルコニア)、上記のいずれかの混合物などの本質的に1つの無機酸化物からなるコア、あるいは別の種類の有機酸化物が堆積するある種類の無機酸化物からなるコアを含むことができる。
【0031】
本発明で使用される粒子の形成に有用な非ポリマー無機材料は、グラファイト、金属、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩および水酸化物から選択される無機材料を含むことができる。有用な無機酸化物の非限定的な例には、酸化亜鉛がある。適切な無機硫化物の非限定的な例には、二硫化モリブデンや、二硫化タンタル、二硫化タングステン、および硫化亜鉛が含まれる。有用な無機珪酸塩の非限定的な例には、ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム(例えば、バーミキュライト)が含まれる。適切な金属の非限定的な例には、モリブデン、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、銅、金、鉄、銀、合金、および上記のいずれかの混合物が含まれる。
【0032】
特定の実施形態において、前記粒子は、ヒュームドシリカ、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイダルイットリア、ジルコニア、コロイダルジルコニア、および上記のいずれかの混合物から選択される。特定の実施形態において、前記粒子はコロイダルシリカを含む。上で開示する通り、これらの材料は表面処理されていてもよければ、未処理であってもよい。他の有用な粒子には、例えば、参考として本明細書で援用される、米国特許第5,853,809号の第6欄第51行目〜段落番号8第43行目に記載のような表面改質シリカが含まれる。
【0033】
別の代替例として、粒子は、より硬い表面を有する複合材料を形成するために1つ以上の2次材料で被覆、クラッディングまたは被包された1次材料から形成することもできる。あるいは、粒子は、より硬い表面を有する複合材料を形成するために異なる形態の1次材料で被覆、クラッディングまたは被包された1次材料から形成することもできる。
【0034】
一例として、本発明を限定することなく、炭化ケイ素や窒化アルミニウムなどの無機材料から形成される無機粒子には、シリカ被膜、炭酸塩被膜またはナノクレイ被膜を施して、有用な複合粒子を形成することができる。別の非限定的な例において、アルキル側鎖を有するシランカップリング剤は、無機酸化物から形成される無機粒子の表面と相互作用を起こして、「より柔らかい」表面を有する有用な複合粒子を得ることができる。その他の例には、非ポリマー材料またはポリマー材料から形成される粒子に異なる非ポリマー材料またはポリマー材料をクラッディング、被包または被膜する例が含まれる。このような複合粒子の特定の非限定的な例には、米国ニューヨーク州バッファローのPierce and Stevens Corporationから市販される炭酸カルシウムで被覆される合成ポリマー粒子であるDUALITE(登録商標)がある。
【0035】
特定の実施形態において、本発明で使用される粒子は層状構造を有する。層状構造を有する粒子は、六方晶系の原子のシートまたはプレートから構成され、そのシート内の結合は強く、そのシート間のファンデルワールス結合は弱く、それによりシート間の剪断強度は低くなる。層状構造の非限定的な例には六方晶構造がある。層状のフラーレン構造を有する無機固体微粒子(すなわち、バッキーボール(buckyball))もまた、本発明で有用である。
【0036】
層状構造を有する適切な材料の非限定的な例には、窒化ホウ素、グラファイト、金属ジカルコゲニド、マイカ、タルク、石膏、カオリナイト、カルサイト、ヨウ化カドミウム、硫化銀、およびこれらの混合物が含まれる。適切な金属ジカルコゲニドには、二硫化モリブデン、二セレン化モリブデン、二硫化タンタル、二セレン化タンタル、二硫化タングステン、二セレン化タングステン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0037】
前記粒子は、非ポリマー有機材料から形成することができる。本発明で有用な非ポリマー有機材料の非限定的な例には、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸アルミニウム)、ダイヤモンド、カーボンブラック、およびステアルアミド(stearamide)が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明で使用される粒子は、無機ポリマー材料から形成することができる。有用な無機ポリマー材料の非限定的な例には、ポリホスファゼン、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリゲルマン、硫黄ポリマー、セレンポリマー、シリコーン、および上記のいずれかの混合物が含まれる。本発明での使用に適した無機ポリマー材料から形成される粒子の特定の非限定的な例には、架橋シロキサンから形成される粒子であって、日本のToshiba Silicones Company,Ltd.から市販されるTospearlがある。
【0039】
前記粒子は、合成有機ポリマー材料から形成することができる。適切な有機ポリマー材料の非限定的な例には、熱硬化性材料や熱可塑性材料が含まれるが、これらに限定されない。適切な熱可塑性材料の非限定的な例には、熱可塑性ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリイソブテン)、アクリルポリマー(例えば、スチレンとアクリル酸モノマーとのコポリマーやメタクリレートを含有するアクリル酸ポリマー)、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ビニルポリマー、ならびに上記のいずれかの混合物が含まれる。
【0040】
適切な熱硬化性材料の非限定的な例には、熱硬化性ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ材料、フェノール樹脂、アミノプラスト、熱硬化性ポリウレタン、および上記のいずれかの混合物が含まれる。エポキシ材料から形成される合成ポリマー粒子の特定の非限定的な例には、エポキシミクロゲル粒子がある。
【0041】
前記粒子はまた、ポリマー無機材料および非ポリマー無機材料、ポリマー有機材料および非ポリマー有機材料、複合材料、ならびに上記のいずれかの混合物から選択される材料から形成される中空粒子であってもよい。中空粒子を形成することができる適切な材料の非限定的な例については、上に記載している。
【0042】
特定の実施形態において、本発明で使用される粒子は、有機顔料、例えば、アゾ化合物(モノアゾ、ジアゾ、β−ナフトール、ナフトールAS、含金属アゾ有機顔料、ベンズイミダゾロン、ジアゾ縮合物、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン)、および多環式化合物(フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンサンスロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン)顔料、ならびにこれらの混合物を含む。
【0043】
本発明の実施において使用されるペリレン顔料は、非置換である場合もあれば、置換される場合もある。置換ペリレンは、例えばイミド窒素原子において置換される場合があり、置換基には、1〜10個の炭素原子からなるアルキル基、1〜10個の炭素原子からなるアルコキシ基、およびハロゲン(例えば塩素)、あるいはこれらの組み合わせが含まれる場合がある。置換ペリレンは、いずれか1種の置換基の複数を含む場合がある。ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸のジイミドおよびジアンヒドリドが使用される場合がある。粗ペリレンは、当該技術分野で既知の方法により調製することができる。
【0044】
フタロシアニン顔料、特に金属フタロシアニンが使用される場合がある。銅フタロシアニンの方がより容易に利用できるが、他の含金属フタロシアニン顔料(例えば、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケルおよびその他のこのような金属に基づく顔料)も使用される場合がある。無金属フタロシアニンも適切である。フタロシアニン顔料は、非置換である場合もあれば、あるいは例えば1つ以上のアルキル基(1〜10個の炭素原子を有する)、アルコキシ基(1〜10個の炭素原子を有する)、ハロゲン(例えば塩素)、またはフタロシアニン顔料に特有の他の置換基で部分的に置換される場合もある。フタロシアニンは、当該技術分野で既知のいくつかの方法のいずれかにより調製される場合がある。フタロシアニンは、通常、無水フタル酸、フタロニトリルまたはこれらの誘導体を金属供与体、窒素供与体(例えば、尿素またはフタロニトリル自体)および任意の触媒と、多くの場合有機溶剤中で反応させることにより調製される。
【0045】
本明細書で使用されるキナクリドン顔料は、非置換または置換キナクリドン(例えば、1つ以上のアルキル、アルコキシ、ハロゲン(例えば塩素)、またはキナクリドン顔料に特有のその他の置換基による)を含み、かつ本発明での使用に適切である。キナクリドン顔料は、当該技術分野で既知のいくつかの方法のいずれか(例えば、ポリリン酸の存在下で各種の2,5−ジアニリノテレフタル酸前駆体を熱閉環する方法)によって調製される場合がある。
【0046】
場合により対称置換または非対称置換することができるイソインドリン顔料はまた、本発明の実施に適切であり、当該技術分野で既知の方法により調製することができる。適切なイソインドリン顔料であるPigment Yellow 139は、イミノイソインドリン前駆体およびバルビツール酸前駆体の対称付加物である。ジオキサジン顔料(すなわち、トリフェンジオキサジン)はまた、適切な有機顔料であり、当該技術分野で既知の方法によって調製することができる。
【0047】
既述の無機粒子および/または有機粒子のいずれかの混合物も使用することができる。
【0048】
所望により、上記の粒子をナノ粒子に形成することができる。特定の実施形態において、ナノ粒子は、以下で詳述する通り、ポリマー封入粒子の水性分散物の形成時にin situにて形成される。しかし、他の実施形態において、ナノ粒子は、このような水性分散物に組み込む前に形成される。これらの実施形態において、ナノ粒子は、当該技術分野で既知の種々の方法のいずれかによって形成することができる。例えば、ナノ粒子は、乾燥粒子材料を粉砕し、類別することによって調製することができる。例えば、上で考察した無機顔料または有機顔料のいずれかをはじめとするバルク顔料は、粒径0.5ミリメートル(mm)未満または0.3mm未満または0.1mm未満の粉砕媒体を使用して粉砕することができる。通常、顔料粒子は、場合によりポリマー粉砕賦形剤の存在下において、1つ以上の溶媒(水または有機溶媒のいずれか、あるいはこれら2つの混合物)中で高エネルギーミルによりナノ粒子に粉砕される。必要に応じて、例えば、(有機溶媒による場合)Lubrizol Corporation製のSOLSPERSE(登録商標)32000または32500、あるいは(水による場合)Lubrizol Corporation製のSOLSPERSE(登録商標)27000などの分散物が含まれてもよい。ナノ粒子を製造する他の適切な方法には、晶出、析出、気相凝縮、および化学的損耗(すなわち部分溶解)が含まれる。
【0049】
特定の実施形態において、被膜組成物は、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物から形成されるポリマー封入色付与粒子を含む。本明細書で使用される「分散物」という用語は、一方の相が、連続相である第2の相にわたって分布する微粒子を含んでいる2相系を指す。分散物は、水性媒質によって、ポリマー封入粒子が有機相として懸濁される分散物の連続相が生成される、水中油型乳剤である場合が多い。
【0050】
本明細書で使用される「水性」、「水相」、「水性媒質」などの用語は、例えば不活性有機溶媒などの別の材料と組み合わせた、水のみから構成されるか、主として水を含む媒質を指す。特定の実施形態において、水性分散物中に存在する有機溶媒の量は、分散物の全重量に基づく重量パーセントで、20重量パーセント未満、例えば10重量パーセント未満であり、または場合によっては5重量パーセント未満であり、またはさらに他の場合には2重量パーセント未満である。適切な有機溶媒の非限定的な例には、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、n−ブタノール、ベンジルアルコール、およびミネラルスピリットがある。
【0051】
本発明で使用されるポリマー封入色付与粒子は、例えば、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ケイ素ポリマー、これらのコポリマー、およびこれらの混合物から選択されるポリマーを含む場合がある。このようなポリマーは、本発明が関係する当業者に既知のいずれの適切な方法によっても製造することができる。適切なポリマーについては、それぞれの引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許出願第10/876,031号の[0061]〜[0076]、米国特許出願公開第2005/0287348(A1)号の[0042]〜[0044]、および米国特許出願第11/337,062号の[0054]〜[0079]に開示されている。
【0052】
ポリマー封入色付与粒子の前記水性分散物は、種々の方法の内のいずれかによって調製することができる。例えば、特定の実施形態において、水性分散物は、(A)(i)色付与ナノ粒子、(ii)1つ以上の重合性エチレン性不飽和モノマー、および/または(iii)1つ以上の重合性不飽和モノマーと1つ以上のポリマーとの混合物、および/または(iv)1つ以上のポリマーの、水性媒質中の混合物を用意して、その混合物を水性媒質の存在下で高応力剪断条件に供して、混合物をポリマー封入色付与粒子にする手順を含む方法によって調製される。このような方法については、引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許出願第10/876,031号の[0054]〜[0090]に詳述されている。
【0053】
しかし、特定の実施形態において、水性分散物は、(1)(i)色付与粒子、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマー、および(iii)水分散性の重合性分散剤の、水性媒質中の混合物を用意する手順、ならびに(2)エチレン性不飽和モノマーおよび重合性分散剤を重合して、水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を形成する手順、を含む方法によって作製される。これらの実施形態において、重合性分散剤は、水分散性を有しかつエチレン性不飽和のモノマーとの重合時に水分散性ポリマーを含むポリマー封入色付与粒子を産生する、いずれかの重合性材料を含む場合がある。特定の実施形態において、重合性分散剤は、末端エチレン性不飽和を有する水分散性の重合性ポリエステルウレタンを含む。
【0054】
これらの実施形態において、水分散性の重合性分散剤は、それ自体と、エチレン性不飽和モノマーを含めたその他の材料とを、界面活性剤および/または高剪断条件を必要することなく水性媒質中で分散させることが可能である。その結果、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物を作製する上記方法は、米国特許出願第10/876,031号に記載のような高応力剪断条件の使用が望まれずかつ可能でない状況において特に適切である。そのため、特定の実施形態において、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物は、色付与粒子と、重合性エチレン性不飽和モノマーと、水分散性の重合性分散剤との混合物を高応力剪断条件に供する手順を含まない方法によって調製される。
【0055】
特定の実施形態において、水性媒質中でエチレン性不飽和モノマーと水分散性の重合性分散剤とを混合した後の色付与粒子は、色付与ナノ粒子に形成される(すなわち、in situにてナノ粒子が形成される)。特定の実施形態において、色付与ナノ粒子は、水性媒質を微粉砕条件に供することにより形成される。例えば、前記粒子は、粒径が0.5ミリメートル(mm)未満または0.3mm未満または場合によっては0.1mm未満の粉砕媒体により粉砕することができる。これらの実施形態において、色付与粒子は、水性媒質、重合性エチレン性不飽和モノマーおよび水分散性の重合性分散剤の存在下において、高エネルギーミルによりナノ粒子径に粉砕することができる。所望により、Avecia,Inc.製のSOLSPBRSE 27000などの他の分散物を使用することもできる。
【0056】
上述の通り、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物を作製する上記方法は、エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤とを重合して、ポリマー封入色付与粒子を形成する手順を含む。特定の実施形態において、少なくとも一部の重合は、該当する場合、ナノ粒子の形成時に生じる。ラジカル開始剤が使用される場合が多い。水溶性および油溶性の両開始剤を使用することができる。
【0057】
適切な水溶性開始剤の非限定的な例には、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、および過酸化水素が含まれる。油溶性開始剤の非限定的な例には、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ジラウリル、および2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が含まれる。多くの場合、反応は20℃〜80℃の温度にて行われる。重合は、バッチプロセスまたは連続プロセスのいずれかで行うことができる。重合を行うのに必要な期間は、例えば10分〜6時間の範囲であってよいが、但し、その時間が1つ以上のエチレン性不飽和モノマーからポリマーをin situにて形成するのに十分であることを条件とする。
【0058】
重合プロセスが完全であれば、得られる生成物は、何らかの有機溶媒を含有し得る、水性媒質中のポリマー封入色付与粒子の安定分散物である。有機溶媒の一部またはすべては、例えば40℃未満の温度にて減圧蒸留により除去することができる。本明細書で使用される「安定分散物」または「安定して分散」という用語は、ポリマー封入色付与粒子が、静置時に水性媒質から沈殿も凝固も凝集もしないことを意味する。
【0059】
特定の実施形態において、ポリマー封入粒子は、分散物中に存在する全固形分の重量に基づく重量パーセントで、少なくとも10重量パーセントの量、または10〜80重量パーセントの量、または25〜50重量パーセントの量、または25〜40重量パーセントの量で、水性分散物中に存在する。
【0060】
上述の通り、本発明において、ポリマー封入色付与粒子は、被膜組成物に組み込まれる。適切な被膜組成物には、熱可塑性組成物、または熱硬化性の、(すなわち)硬化性の組成物が含まれる。本明細書で使用される「熱硬化性材料」または「熱硬化性組成物」とは、硬化または架橋時に不可逆的に「凝固」するものであって、ポリマー成分のポリマー鎖が共有結合により共に結合するものを意味する。通常、この性質は、例えば熱または放射線により誘導される場合が多い組成物成分の架橋反応と関連している。Hawley,Gessner G.,The Condensed Chemical Dictionary,Ninth Edition.,page 856;Surface Coatings,vol.2,Oil and Colour Chemists’ Association,Australia,TAFE Educational Books(1974)。硬化または架橋された熱硬化性材料または熱硬化性組成物は、加熱時に融解せず、溶媒に不溶である。対照的に、「熱可塑性材料」または「熱可塑性組成物」は、共有結合により結合せず、それによって加熱時に液流が生じ、溶媒に可溶であるポリマー成分を含む。Saunders,K.J.,Organic Polymer Chemistry,pp.41−42,Chapman and Hall,London(1973)。
【0061】
特定の実施形態において、ポリマー封入色付与粒子を含む水性分散物は、このような被膜組成物の1次皮膜形成成分を示すことが可能であるか、あるいは場合により前記水性分散物は、被膜組成物中の成分の1つのみを示す。例えば、水性分散物に加えて、このような被膜組成物はまた、反応性官能基、および/または適切な場合には皮膜形成ポリマーの官能基と反応する官能基を有する架橋剤を含む場合もあれば含まない場合もある1つ以上の皮膜形成ポリマーを含む樹脂バインダー系も含む場合がある。適切な皮膜形成ポリマーには、例えば、ポリマー封入色付与粒子の水性分散物に関して上で考察したポリマーのいずれかが含まれる。
【0062】
特定の実施形態において、このような皮膜形成ポリマーは反応性官能基を含む。このようなポリマーは、通常硬化剤とともに使用され、これには例えば、硬化被膜の硬化速度、外観および他の物性を高めることができる、ヒドロキシル含有、エポキシ含有、カルバメート塩含有、アミノ含有またはカルボン酸含有アクリルコポリマー;ヒドロキシ含有またはカルボン酸含有ポリエステルポリマーおよびオリゴマー;ならびにイソシアネート含有またはヒドロキシル含有ウレタンポリマー、あるいはアミン含有またはイソシアネート含有ポリ尿素が含まれてよい。
【0063】
本発明の硬化性被膜組成物での使用に適した硬化剤には、例えば引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許第3,919,351号の第5欄第22行目〜第6欄第25行目に記載のような、ヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基、アミド官能基およびカルバメート塩官能基含有材料の硬化剤としての、アミノプラスト樹脂およびフェノプラスト樹脂、ならびにこれらの混合物が含まれてよい。また、例えば引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許第4,546,045号の第5欄第16〜38行目、および米国特許第5,468,802号の第3欄第48〜60行目に記載のような、ヒドロキシル基含有ならびに1次および/または2次アミノ基含有材料の硬化剤としての、ポリイソシアネートおよびブロックポリイソシアネートも適切である。ヒドロキシル基含有ならびに1次および/または2次アミノ基含有材料の硬化剤としての無水物は適切であり、例えば引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許第4,798,746号の第10欄第16〜50行目、および米国特許第4,732,790号の第3欄第41〜57行目に記載されている。カルボキシル官能基含有材料の硬化剤としてのポリエポキシドは適切であり、例えば引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許第4,681,811号の第5欄第33〜58行目に記載されている。エポキシ官能基含有材料の硬化剤としてのポリ酸は適切であり、例えば引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許第4,681,811号の第6欄第45行目〜第9欄第54行目に記載されている。イソシアネート官能基含有材料および無水物およびエステルの硬化剤としてのポリオールは適切であり、例えば引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許第4,046,729号の第7欄第52行目〜第8欄第9行目、第8欄第29行目〜第9欄第66行目、および米国特許第3,919,315号の第2欄第64行目〜第3欄第33行目に記載されている。イソシアネート官能基含有材料および炭酸塩およびアンヒンダード(unhindered)エステルの硬化剤としてのポリアミンは適切であり、引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許第4,046,729号の第6欄第61行目〜第7欄第26行目に記載されている。
【0064】
所望により、硬化剤の適切な混合物が使用される場合がある。特定の実施形態において、本明細書に記載の被膜組成物は、硬化剤(例えば、アミノプラスト樹脂および/またはブロックイソシアネート化合物)が他の組成物成分と混合される場合に、一成分組成物として配合される。一成分組成物は、配合した場合に保存安定性を有してよい。あるいは、組成物は、例えばポリイソシアネート硬化剤が使用直前に他の組成物成分の予形成混合物に添加される場合に、二成分組成物として配合することができる。予形成混合物は、硬化剤、例えば上記のものなどのアミノプラスト樹脂および/またはブロックイソシアネート化合物を含むことができる。
【0065】
被膜組成物はまた、生成される被膜が薄色や透明である限り、表面被覆の配合に関する技術分野で周知のものなどの任意の成分を含む場合がある。このような任意の成分は、例えば、着色剤(顔料および/または染料)、界面活性剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、充填剤、抗ガス発生剤(anti−gassing agents)、有機共溶媒、触媒、およびその他の一般的な助剤を含むことができる。これらの材料の非限定的な例および適切な量については、米国特許第4,220,679号、第4,403,003号、第4,147,769号および第5,071,904号に記載されている。
【0066】
特定の実施形態において、本発明の被膜組成物はまた、シランカップリング剤も含む。有用なシランカップリング剤には、グリシジル、イソシアネート、アミノまたはカルバミル官能性シランカップリング剤が含まれる。本発明者等は、このようなカップリング剤が本発明の被膜組成物に含まれることにより、上に薄色被膜が堆積したガラス物品であって、食器洗浄機内のような湿潤状態下であっても被膜がガラス物品に堆積する、物品が製造できることを発見した。
【0067】
被膜組成物は、いずれかの適切な技法(例えば、吹付け、ブラッシング、スピン被覆、浸漬被覆、およびドローダウンブレードまたはワイヤバーの使用)によって物品に塗布することができる。特定の実施形態において、特にスピン被覆法が使用される場合、被膜組成物は、極薄被膜の形態の透明物品に塗布され、すなわち0.05〜0.3ミル(2〜5ミクロン)の乾燥膜厚が達成される。本発明の1つの特定の利点は、例えば着色染料を利用する透明被膜とは異なり、比較的低い透過率(わずか10%の場合もあれば、わずか5%の場合もある分光透過率)を示す透明被膜が、このような極薄被膜を使用して実現できることである。そのため、より薄い膜を使用することにより、このような被膜の光学特性を改善することができる。
【0068】
前述の通り、本発明の特定の実施形態において、複合透明材はガラス物品を含む。例えば、特定の実施形態において、ガラス物品は、建築用ガラスユニット、すなわち、例えば窓などの建築用途で使用されるガラスを含む。そのため、特定の実施形態において、本発明はまた、透明の建築用ガラスユニットを通過する太陽エネルギーの透過率を低下させる方法であって、前記ユニットの表面の少なくとも一部に本発明の被膜組成物を塗布することを含む、方法も対象とする。他の実施形態において、ガラス物品は自動車用ガラスを含む。そのため、本発明はまた、薄色の自動車用ガラスユニットを提供する方法であって、例えば、曲げ加工の後に、前記ユニットの表面の少なくとも一部に本発明の被膜組成物を塗布することを含む、方法も対象とする。
【0069】
上記の被膜組成物は、透明物品の上に単一の被膜層(このような層を本明細書では透明薄色被膜と称する)を形成するのに使用される場合がある。しかし、特定の実施形態において、ハードコートなどの別の被膜層は、透明着色剤層の少なくとも一部にわたって堆積させる場合がある。そのため、本発明はまた、多層被膜で少なくとも部分的に被覆される複合透明材であって、(a)ポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される第1の薄色被膜、および(b)ハードコートを含む第2の層を含む、透明材も対象とする。
【0070】
本明細書で使用される「ハードコート」という用語は、耐衝撃性、衝撃抵抗性、耐摩耗性、紫外線劣化抵抗性、耐湿性および/または耐薬品性の内の1つ以上を示す被膜層を指す。特定の実施形態において、ハードコートは、一般式RM(OR’)Z−X(式中、Rは有機基であり、Mはケイ素、アルミニウム、チタンおよび/またはジルコニウムであり、各R’は独立してアルキル基であり、zはMの原子価であり、xはz未満の数であり、0である場合もある)のアルコキシドを含む組成物から堆積される。適切な有機基の例には、アルキル、ビニル、メトキシアルキル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリルオキシプロピルが含まれるが、これらに限定されない。アルコキシドはさらに、当該技術分野で既知の他の化合物および/またはポリマーと混合および/または反応させることもできる。例えば上記式内のものなど、オルガノアルコキシシランを少なくとも部分的に加水分解することから形成されるシロキサンを含む組成物が特に適切である。適切なアルコキシド含有化合物、およびそれらを作製する方法の例については、参考として本明細書で援用される、米国特許第6,355,189号、第6,264,859号、第6,469,119号、第6,180,248号、第5,916,686号、第5,401,579号、第4,799,963号、第5,344,712号、第4,731,264号、第4,753,827号、第4,754,012号、第4,814,017号、第5,115,023号、第5,035,745号、第5,231,156号、第5,199,979号、および第6,106,605号に記載されている。
【0071】
特定の実施形態において、アルコキシドは、グリシドキシ[(C−C)アルキル]トリ(C−C)アルコキシシランモノマーと、テトラ(C−C)アルコキシシランモノマーとの組み合わせを含む。本発明の被膜組成物での使用に適切なグリシドキシ[(C−C)アルキル]トリ(C−C)アルコキシシランモノマーには、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピル−トリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、それらの加水分解物、および/またはこのようなシランモノマーの混合物が含まれる。
【0072】
本発明の被膜組成物においてグリシドキシ[(C−C)アルキル]トリ(C−C)アルコキシシランとの結合で使用される場合がある適切なテトラ(C−C)アルコキシシランには、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラヘキシルオキシシラン、およびこれらの混合物などの材料が含まれる。
【0073】
特定の実施形態において、本発明の被膜組成物で使用されるグリシドキシ[(C−C)アルキル]トリ(C−C)アルコキシシランモノマーおよびテトラ(C−C)アルコキシシランモノマーは、テトラ(C−C)アルコキシシランに対するグリシドキシ[(C−C)アルキル]トリ(C−C)アルコキシシランの重量比が0.5:1〜100:1(例えば0.75:1〜50:1、場合によっては1:1〜5:1)で存在する。
【0074】
特定の実施形態において、アルコキシドは、ポリマー封入色付与粒子などの被膜組成物の他の成分と結合する前に、少なくとも部分的に加水分解される。このような加水分解反応については、引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許第6,355,189号の第3欄第7〜28行目に記載されている。
【0075】
特定の実施形態においては、加水分解性アルコキシドの加水分解に必要な量の水が提供される。例えば、特定の実施形態において、水は、加水分解性アルコキシド1モル当たり少なくとも1.5モルの量で存在する。特定の実施形態において、大気水分で十分であれば適切としてもよい。
【0076】
特定の実施形態において、触媒は、加水分解および縮合反応を触媒するために提供される。特定の実施形態において、触媒は、酸性物質であるか、および/または化学線に曝露されると酸を生成する酸性物質とは異なる材料である。特定の実施形態において、酸性物質は、有機酸、無機酸またはそれらの混合物から選択される。このような材料の非限定的な例には、酢酸、蟻酸、グルタル酸、マレイン酸、硝酸、塩酸、リン酸、フッ化水素酸、硫酸、またはこれらの混合物が含まれる。
【0077】
ルイス酸および/またはブレンステッド酸など、化学線に曝露されると酸を生成するいずれの材料も、本発明の被膜組成物における加水分解触媒および縮合触媒として使用することができる。酸生成化合物の非限定的な例には、オニウム塩およびヨードシル塩、芳香族ジアゾニウム塩、メタロセニウム塩、o−ニトロベンズアルデヒド、米国特許第3,991,033号に記載のポリオキシメチレンポリマー、米国特許第3,849,137号に記載のo−ニトロカルビノールエステル、米国特許第4,086,210号に記載のo−ニトロフェニルアセタール、それらのポリエステルおよびエンドキャップ処理した誘導体、スルホン酸エステル基のα位またはβ位にカルボニル基を含有するスルホン酸エステルまたは芳香族アルコール、芳香族アミドまたはイミドのN−スルホニルオキシ誘導体、芳香族オキシムスルホナート、キノンジアジド、および鎖にベンゾイン基を含む樹脂(例えば、米国特許第4,368,253号に記載のもの)が含まれる。これらの放射線活性化酸触媒の例についてはまた、米国特許第5,451,345号にも開示される。
【0078】
特定の実施形態において、酸生成化合物は、オニウム塩などのカチオン性光重合開始剤である。このような材料の非限定的な例には、Sartomer CompanyのSarCat(登録商標)CD−1012およびCD−1011として市販される、ジアリールヨードニウム塩およびトリアリールスルホニウム塩が含まれる。その他の適切なオニウム塩については、米国特許第5,639,802号の第8欄第59行目〜第10欄第46行目に記載される。このようなオニウム塩の例には、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ドデシルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、[4−[(2−テトラデカノール)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、およびこれらの混合物が含まれる。
【0079】
本発明の被膜組成物で使用される触媒の量は、広範に変動する可能性があり、使用される特定の材料により異なる。例えば触媒量など、加水分解および縮合反応の触媒および/または開始に必要な量だけが必要とされる。特定の実施形態において、酸性物質および/または酸生成材料は、組成物の全重量に基づいて0.01〜5重量パーセントの量で使用することができる。
【0080】
特定の実施形態において、ハードコートは、本明細書に記載のポリマー封入色付与粒子も含む被膜組成物から堆積される。特定の実施形態において、ポリマー封入色付与粒子は、組成物の総固体重量に基づく重量パーセントで1〜25重量パーセント、例えば5〜15重量パーセントの量でハードコート組成物中に存在する。特定の実施形態において、アルコキシドは、総固体重量に基づき50〜99重量パーセントが含まれる。
【0081】
ハードコート組成物はまた、その他の材料を含む場合もある。例えば、このような組成物はまた、流動添加剤、レオロジー改変剤、定着剤、紫外線吸収剤などの1つ以上の標準的添加剤を含んでもよい。
【0082】
特定の実施形態において、ハードコート組成物は、引用部分が参考として本明細書で援用される、米国特許出願第11/116,552号の[0004]〜[0007]に記載される有機シロキサンポリオールを含む。このような材料は、使用する場合、被膜組成物の総固体重量に基づいて、1〜25重量パーセント(例えば2〜15または5〜10重量パーセント)の量が被膜組成物中に存在する場合が多い。
【0083】
特定の実施形態において、ハードコート組成物は、シリカナノ粒子および重合性(メタ)アクリレート結合剤を含むシリカゾルを含む。本明細書で使用される「シリカゾル」という用語は、重合性(メタ)アクリレートを含む、結合剤中に分散したシリカ微粒子のコロイド分散体を指す。本明細書で使用される「シリカ」という用語は、SiOを指す。特定の実施形態において、シリカゾルに存在するナノ粒子は、平均1次粒子径が300ナノメートル以下(例えば200ナノメートル以下、または場合によっては100ナノメートル以下、またはさらに他の場合は50ナノメートル以下、または場合によっては20ナノメートル以下)である。
【0084】
上述の通り、シリカゾルは、重合性(メタ)アクリレート結合剤を含む。本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含むものとして意図される。結合剤としての使用に適した重合性(メタ)アクリレートには、不飽和(メタ)アクリレートモノマーおよび不飽和(メタ)アクリレートオリゴマー(例えば、モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、およびペンタ(メタ)アクリレート)が含まれる。このような材料の非限定的な具体例には、とりわけ、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリントリアクリレート、および/またはペンタエリスリトールテトラアクリレートが含まれる。
【0085】
本発明での使用に適したシリカゾルは市販されている。例としては、Hanse Chemie AG(ドイツ ゲーストアハト)のNanocryl(登録商標)シリーズの製品が含まれる。これらの製品は、最高50重量パーセントのケイ酸含量を有する低粘度ゾルである。
【0086】
特定の実施形態において、シリカゾルはさらに有機溶媒も含む。適切な有機溶媒は、被膜組成物中のシリカゾルを安定させるものである。被膜組成物に存在する溶媒の最低量は、溶媒和量、すなわち被膜組成物中へのシリカゾルの可溶化または分散に十分な量である。例えば、存在する溶媒の量は、被膜組成物の全重量に基づき20〜90重量パーセントの範囲である場合がある。適切な溶媒には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピルアルコール、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリジノン、N−ビニルピロリジノン、N−アセチルピロリジノン、N−ヒドロキシメチルピロリジノン、N−ブチル−ピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−(N−オクチル)−ピロリジノン、N−(n−ドデシル)ピロリジノン、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサノン、エチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、メタノール、プロピオン酸アミル、プロピオン酸メチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、Union CarbideによりCELLOSOLVEという工業用溶媒として販売されるエチレングリコールのモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルならびにそれらの誘導体、Dow ChemicalによりDOWANOL(登録商標)PMおよびPMAという溶媒としてそれぞれ販売されるプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ならびにこのような列挙された溶媒の混合物。
【0087】
そのため、特定の実施形態において、例えばシリカゾルが上記の市販されるNanocryl(登録商標)シリカゾルの内の1つである場合、シリカゾルは、シリカゾルを本明細書に記載される種類の少なくとも部分的に加水分解したアルコキシドと結合させる前に、最初に有機溶媒で希釈される。
【0088】
特定の実施形態において、シリカゾルは、組成物の全重量に基づく重量パーセントで1〜25重量パーセント(例えば2〜15重量パーセント)の量がハードコート組成物中に存在する。
【0089】
特定の実施形態において、このようなハードコート組成物は、シリカゾルの一部として被膜組成物に導入される材料を除いて、遊離基重合性材料を実質的にまたは場合によっては完全に含まない。このような材料の例には、単官能性、二官能性、三官能性、四官能性または五官能性のモノマーまたはオリゴマーの脂肪族、脂環式または芳香族(メタ)アクリレートがある。本明細書で使用される「実質的に含まない」という用語は、考察中の材料が、仮に存在するとしても偶発的な不純物として組成物中に存在することを意味する。換言すれば、前記材料は、組成物の性質に影響を及ぼすことはない。本明細書で使用される「完全に含まない」という用語は、材料が組成物中に全く存在しないことを意味する。
【0090】
特定の実施形態において、このようなハードコート組成物は、遊離基重合開始剤を実質的にまたは場合によっては完全に含まない。このような材料には、化学線に曝露されると遊離基を形成する任意の化合物が含まれる。特定の実施形態において本発明の被膜組成物に実質的にまたは完全に存在しないこのような材料の具体例には、ベンゾイン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、チオキサントン、キサントン、アクリジン誘導体、フェノールアゼン誘導体、キノキサリン誘導体、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−アミノフェニルケトン、1−ヒドロキシフェニルケトン、およびトリアジン化合物がある。特定の実施形態において本明細書に記載されるハードコート組成物に実質的にまたは完全に存在しない他の遊離基重合開始剤には、アセトフェノン、ベンジルケタール、およびベンゾイルホスフィンオキシドがある。特定の実施形態においてこのようなハードコート組成物に実質的にまたは完全に存在しない遊離基重合開始剤の別の種類には、欧州特許出願公開(EP)第223587号ならびに米国特許第4,751,102号、第4,772,530号および第4,772,541号に記載される材料など、化学線の吸収および遊離基の生成が可能なイオン性染料対イオン化合物がある。
【0091】
ハードコート組成物は、例えば、フロー被覆、浸漬被覆、スピン被覆、ロール被覆、カーテン被覆、スプレー被覆を含めた従来のいずれかの被覆法を使用して、透明薄色被膜に塗布される場合がある。被膜組成物の塗布は、所望により、塵や汚染物が実質的に存在しない環境(例えばクリーンルーム)において行われる場合がある。ハードコートは、厚さが0.1〜50ミクロン(μm)、例えば2〜20μm、場合によっては2〜10μm(例えば、5μm)の範囲である場合がある。
【0092】
透明薄色被膜へのハードコート組成物の塗布後、ハードコート組成物は、例えば、最高1時間にわたり周囲温度にて被膜をフラッシングした後、使用している特定の被膜および/または物品に基づいて当業者が決定できる適切な温度および時間にて被膜を焼成することによって硬化される。
【0093】
特定の実施形態において、上述の通り、化学線に曝露させると酸を生成する材料がハードコート組成物中に存在する場合、前記組成物は、前記被膜を熱硬化させた後に、熱硬化プロセスと同時に、もしくは熱硬化プロセスの代わりに、硬化量の紫外線を前記組成物に照射することによって少なくとも部分的に硬化させる場合がある。照射手順時に、被覆物品は、室温(例えば22℃)に維持される場合もあれば、前記物品の損傷が生じる温度を超えない高温に加熱される場合もある。
【0094】
特定の実施形態において、上述の通り、重合性(メタ)アクリレート結合剤を含むシリカゾルがハードコート組成物に使用される場合、シリカゾルに存在する重合性(メタ)アクリレートは、被膜組成物が硬化した後、すなわちハードコート樹脂マトリックスを硬化させる上記の硬化手順の後に、実質的に架橋していない状態を維持する。本明細書で使用される「実質的に架橋していない」という用語は、被膜組成物を硬化してハードコートを形成する際に、重合性(メタ)アクリレートが、透明薄色被膜に対する生成されたハードコートの堆積性が負の影響を受ける程度、すなわち、本明細書の実施例に記載の通り測定した場合にハードコートが示す堆積性等級が低下する程度にまで、それ自体または他の組成物成分と反応しないことを意味する。
【0095】
前述の通り、本発明はまた、複数の色相を示す着色複合透明材であって、前記複合透明材が、ポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される表面を含み、前記被膜が複数の厚さを有する、透明材も対象とする。本明細書で使用される「色相」という用語は、その主波長により決定される色の品質を指す。本明細書で使用される「複数」という用語は、2以上を意味する。
【0096】
上述の通り、本発明のこれらの実施形態において、透明被膜は複数の厚さを有する。これは、種々の方法のいずれによっても実現することができる。例えば、特定の実施形態において、これは、被膜の厚さが粗い表面または模様を付けた表面に沿って変化するように、粗くされているか、模様を付けている表面を含む透明物品に被膜を塗布することにより実現される。あるいは、これは、被膜堆積手順時に、前記物品の表面の選択部分にわたって被膜を様々に堆積させることによって実現することもできる。これはまた、前記物品に被膜を堆積させた後、例えば任意の所望のパターン形態で、特定の位置で被膜の一部を除去することにより実現することもできる。そのため、所望により、パターン形成された外観を有する物品が製造される場合もある。
【0097】
本発明はまた、第1の色相を有し、かつポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される第1の表面と、第1の表面に対向する第2の表面であって、第2の色相を有し、かつポリマー封入色付与粒子を含む被膜組成物から堆積される透明薄色被膜で少なくとも部分的に被覆される第2の表面と、を含む、複合透明材も対象とする。特定の実施形態において、第1の色相は、第2の色相と異なる。理解されるとおり、異なる色相の透明被膜で透明材の対向する両面を被覆することによって所望の色相を示す複合透明材を製造することができる。例えば、限定されることなく、第1の表面は透明のシアン色の被膜で被覆される場合があり、第2の表面は透明の黄色の被膜で着色される場合がある。これにより、生成された複合透明材は、各透明被膜の相対厚さに応じて緑色または青緑色を示す。
【0098】
そのため、本発明はまた、所望の色を示す複合透明材を提供する方法も対象とする。これらの方法は、(i)透明材の第1の表面の少なくとも一部に第1の透明薄色被膜を堆積させる手順と、(ii)透明材の第2の表面の少なくとも一部に第2の透明薄色被膜を施す手順とを含むものであって、第2の表面が第1の表面と対向するものである。本発明のこれらの方法において、第1の被膜組成物および第2の被膜組成物の内の少なくとも1つは、ポリマー封入色付与粒子を含む。
【0099】
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、本発明をこれらの実施例の詳細に限定するものとは見なされない。実施例ならびに本明細書全体に記載されるすべての部およびパーセントは、特に明記しない限り重量に基づく。
【実施例】
【0100】
(実施例1) ポリウレタン分散物の調製
本実施例では、実施例2〜5のそれぞれのポリウレタン/ナノ顔料分散物を形成するために後で使用されたポリウレタン分散物の調製について記載する。本ポリウレタン分散物は、以下に記載する量の成分の以下の混合物から調製した。
【0101】
【表1】

数平均分子量が1000のポリ(ブチレンオキシド)。
【0102】
ポリウレタン分散物は、電子温度プローブ、機械式撹拌器、凝縮器および加熱マントルを備えた四口丸底フラスコで調製した。このフラスコで充填材料Iを125℃の温度にて5分間撹拌した。充填材料IIを添加し、混合物を70℃に冷却した。充填材料IIIを10分間かけて添加した。充填材料IVを添加し、得られた混合物を90分間かけて90℃に徐々に加熱した後、90℃に1時間維持した。充填材料Vを個別のフラスコ内で撹拌した後、60℃に加熱した。充填材料I、II、IIIおよびIVの反応生成物1387.8gを10分間かけて充填材料Vに添加した。充填材料VIを添加し、得られた混合物を室温に冷却した。最終生成物は、酸価が12.5、ブルックフィールド粘度が3710センチポアズ(60rpm、スピンドル番号5)、pHが7.6、および110℃にて1時間測定した場合の加熱残分が29.4%の半透明の乳剤であった。
【0103】
(実施例2) PB15:3のポリウレタン/ナノ顔料分散物
本実施例では、被膜を形成するために後で使用されたナノサイズのPB15:3のフタロシアニンブルー顔料分散物の調製について記載する。本分散物は、以下に記載する量の成分の以下の混合物から調製した。
【0104】
【表2】

これらの成分を、Rossローター/スターターミキサー(型番:HSM−100L)を使用して2.5時間混合した後、1リットルの粉砕チャンバー内で500mlの0.3mmのYTZ粉砕媒体を含むAdvantis V15 Draisミルで再利用した。この混合物を、1400rpmにて合計19.0時間粉砕した。粉砕の進捗は、白黒のLeneta用紙の上に塗り付けた試料の薄膜の透明度の変化を視覚的に観察することによって監視した。充填材料IIを添加し、得られた混合物を11℃にて5分間撹拌した。充填材料IIIを、5分間かけて2つのアリコートに添加した。混合物の温度は13℃に上昇した。最終生成物は、ブルックフィールド粘度が26センチポアズ(60rpm、スピンドル番号1)、pHが7.2、110℃にて1時間測定した場合の加熱残分が30.0%の青色の液体であった。
【0105】
(実施例3) PR122のポリウレタン/ナノ顔料分散物
本実施例では、被膜を形成するために後に使用したナノサイズのPR122のキナクリドンマゼンタ顔料分散物の調製について記載する。本分散物は、以下に記載する量の成分の以下の混合物から調製した。
【0106】
【表3】

これらの成分を、Rossローター/スターターミキサー(型番:HSM−100L)を使用して4時間混合した後、1リットルの粉砕チャンバー内で500mlの0.3mmのYTZ粉砕媒体を含むAdvantis V15 Draisミルで再利用した。この混合物を、1400rpmにて合計23時間粉砕した。粉砕の進捗は、白黒のLeneta用紙の上に塗り付けた試料の薄膜の透明度の変化を視覚的に観察することによって監視した。充填材料IIを添加し、得られた混合物を24℃にて5分間撹拌した。充填材料IIIを、5分間かけて2つのアリコートに添加した。混合物の温度は26℃に上昇した。最終生成物は、ブルックフィールド粘度が27センチポアズ(60rpm、スピンドル番号1)、pHが7.4、110℃にて1時間測定した場合の加熱残分が29.3%のマゼンタ色の液体であった。
【0107】
(実施例4) PY128のポリウレタン/ナノ顔料分散物
本実施例では、被膜を形成するために後に使用したナノサイズのPY128のジアゾ黄色顔料分散物の調製について記載する。本分散物は、以下に記載する量の成分の以下の混合物から調製した。
【0108】
【表4】

これらの成分を、Rossローター/スターターミキサー(型番:HSM−100L)を使用して5.5時間混合した後、1リットルの粉砕チャンバー内で500mlの0.3mmのYTZ粉砕媒体を含むAdvantis V15 Draisミルで再利用した。この混合物を、1400rpmにて合計23時間粉砕した。粉砕の進捗は、白黒のLeneta用紙の上に塗り付けた試料の薄膜の透明度の変化を視覚的に観察することによって監視した。充填材料IIを添加し、得られた混合物を5分間撹拌した。充填材料IIIを、5分間かけて2つのアリコートに添加した。最終生成物は、ブルックフィールド粘度が53センチポアズ(60rpm、スピンドル番号1)、pHが7.3、110℃にて1時間測定した場合の加熱残分が28.8%の黄色の液体であった。
【0109】
(実施例5) カーボンブラックのポリウレタン/ナノ顔料分散物
本実施例では、被膜を形成するために後に使用したナノサイズのカーボンブラック分散物の調製について記載する。本分散物は、以下に記載する量の成分の以下の混合物から調製した。
【0110】
【表5】

これらの成分を、1リットルの粉砕チャンバー内で500mLの0.3mmのYTZ粉砕媒体を含むAdvantis V15 Draisミルで再利用した。この混合物を、1400rpmにて合計46時間粉砕した。生成物は、110℃にて1時間測定した場合の加熱残分が29.5%の黒色の液体であった。このカーボンブラック分散物の一部を中間物として使用し、以下に記載する量の成分の以下の混合物から調製した最終的分散物を作製した。
【0111】
【表6】

充填材料Iをビーカーで混合した後、Microfluidizer(登録商標)M110Tにより8000psiにて10分間再利用し、オーバーヘッド撹拌器、凝縮器、温度計を備えた窒素雰囲気の四口丸底フラスコに移した。充填材料IIを使用してMicrofluidizer(登録商標)をすすいだ後、フラスコに添加した。混合物の温度を28℃に調整した。充填材料IIIを添加した後、充填材料IVを30分間添加することによって、重合を開始した。混合物の温度は33℃に上昇した。分散物の最終的なpHは7.1であり、加熱残分は26.3%であり、ブルックフィールド粘度は23センチポアズ(60rpm、スピンドル番号1)であった。
【0112】
(実施例6〜13) 被膜組成物および被覆レンズ
これらの実施例では、薄色ポリカーボネートレンズの被膜組成物の調製について記載する。以下に記載するグラム量の成分の以下の混合物から被膜を調製した。
【0113】
【表7】

被膜ごとに、最初の3つの成分をプラスチックビーカーで10分間撹拌した。水を添加し、得られた混合物を10分間撹拌した。最後の成分を添加した後、全体の混合物をさらに30分間撹拌した。
【0114】
実施例11〜13は、実施例6、7および8の被膜を以下に記載するグラム量で混合することにより行った。
【0115】
【表8】

直径76ミリメートルのPDQ(登録商標)被覆Gentex(登録商標)ポリカーボネートプラノレンズを、皿洗い洗剤と水で洗浄し、脱イオン水ですすいだ後、乾燥させた。これらのレンズを、100ワットの電力で5分間、毎分酸素100ミリリットル(mL)の流速にて酸素プラズマ処理した。
【0116】
これらのレンズにスピン被覆プロセスを介して実施例6〜13の溶液を被覆した。各実施例の溶液約1〜2mLをレンズに分配し、これらのレンズを700〜1100rpmの速度で7秒間回転させた。次いで各レンズを、HiGard(登録商標)1080被覆溶液(PPG Industries,Inc.から市販されるゾルゲルハードコート作製被覆溶液)によりスピン被覆した。
【0117】
被覆レンズは、以下の硬化サイクル(60℃にて20分間の後、120℃まで5分間かけて逓増させ、120℃に3時間維持した後、室温に冷却)を介して強制空気循環式オーブンで硬化させた。被膜厚は、着色被覆の場合2〜5ミクロンの範囲であり、ハードコートの場合3〜4ミクロンの範囲であった。L、a、b、透過率(%)、および曇り度百分率は、Hunter Lab UltraScan XE分光光度計で測定し、結果を以下に報告する。
【0118】
【表9】

(実施例14〜16) 被膜組成物および被覆レンズ
これらの実施例では、薄色ガラス物品の被膜組成物の調製について記載する。以下に記載するグラム量の成分の以下の混合物から被膜を調製した。
【0119】
【表10】

被膜ごとに、すべての成分を4オンスのガラスジャーに添加し、混合するまで手で振盪させた。3種のすべての被膜を、ドローダウンバーを使用してガラスパネルに塗布した。被膜を周囲温度にて20分間空気に曝露させた状態にした後、154℃にて45分間焼成した。
【0120】
硬化させた被膜を、「湿潤」条件下でガラスパネルへの堆積について評価した。以下の2種類の試験を行った。(1)浸漬試験:パネルの側面をラックで固定し、周囲温度(約21℃)にて24時間水の入った皿の中に浸水させた。次いでパネルを水から取り出し、拭いて乾燥させた後、直ちにクロスハッチ接着により試験した。Elcometerから入手可能な単一のブレードスクライブとテンプレートを使用して、3mm間隔で線を刻み、25の正方形からなるグリッドを形成した。次いで、3MTM 232マスキングテープをグリッドに貼り、そして剥がした。剥がしたグリッドの面積の割合(%)を、堆積喪失率(%)として記録した。(2)温水洗浄試験:パネルをラックに垂直に固定した後、被膜の表面に一定に流した水道の温水(約105°F)をかけた状態に15分間配置した。乾燥させた後、前の試験で説明したように直ちにパネルにクロスハッチを施して、評価を行った。試験結果を以下の表に示す。
【0121】
【表11】

(実施例17) 透明コースタ
実施例15および16のマゼンタ色および黄色の被膜を使用して、定型のオレンジ色および赤色の太陽を装飾した透明黄色ガラスコースタを作製した。このコースタは、4つの部分(8つの光線からなる1つの部分で囲まれた3つの同心円)からなる太陽の像がエッチングされたStarphireTMガラス(PPG Industries)の102mm×127mm×5mm(4インチ×5インチ×3/16インチ)の切片から作製された。各部分は、約1mmの深さでガラスにエッチングされた。絵画用の絵筆を使用して、実施例15のマゼンタ被膜の層をガラスのエッチングされた4つの部分に塗布した。被膜を2時間乾燥させた後、実施例15のマゼンタ被膜の第2層を、ガラスのエッチングされた4つの部分の内の2つに塗布した。像がエッチングされたのとは反対側のガラス面に、ドローダウンバーに塗布された実施例16の黄色の被膜を均一に被覆した。周囲温度にて1時間乾燥させた後、ガラスコースタを154℃にて45分間焼成した。結果を図1に示す。実施例15のマゼンタ被膜の1層からなる部分はオレンジ色に見え、2層からなる部分は赤色に見えた。
【0122】
上記の実施形態は、それらの広範な発明の概念から逸脱することなく変更が可能であることを、当業者であれば理解するであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨および適用範囲に含まれる改変を網羅するものとして意図されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
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【公開番号】特開2012−46767(P2012−46767A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−258995(P2011−258995)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【分割の表示】特願2009−504211(P2009−504211)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】