説明

複合酸化物の作製方法及び蓄電装置の作製方法

【課題】作製される結晶の形状のばらつきを小さくする。
【解決手段】大気より酸素濃度の低い環境下で各原料を含む溶液を生成し、大気より酸素濃度の低い環境下で各原料を含む溶液を混合し、混合溶液を生成し、該混合溶液を用いて水熱法により複合酸化物を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合酸化物に関する。また、本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置の開発が進められている。
【0003】
上記蓄電装置としては、例えば複合酸化物であるLiFePO(リン酸鉄リチウム)を活物質に用いた電極を有する蓄電装置が挙げられる。LiFePOを用いた電極を有する蓄電装置は、熱安定性が高く、またサイクル特性が良好である。
【0004】
LiFePOなどの複合酸化物の生成方法としては、例えば水熱法が挙げられる(例えば特許文献1)。水熱法とは、熱水の存在下で行われる化合物の合成法又は結晶成長法のことである。
【0005】
水熱法を用いることにより、常温常圧では水に溶けにくい材料であっても溶解させることができるため、常温常圧による生産方法では得られないような物質の合成、又は結晶成長を行うことができる。また、水熱法を用いることにより、容易に目的物質における単結晶の微粒子を合成することもできる。
【0006】
水熱法では、例えば原料を含む溶液を耐圧容器に入れて加圧及び加熱による処理を行い、その後加圧及び加熱による処理を行った溶液を濾過することにより、所望の化合物を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−95385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の水熱法によりLiFePOを生成すると、LiFePOの結晶形状のばらつきが大きいといった問題があった。
【0009】
結晶形状のばらつきが大きいと、例えば電極の活物質における結晶の充填密度が低くなり、蓄電装置の充放電特性が低下してしまう。このため、蓄電装置の充放電特性の低下を抑制するためには、結晶形状を制御し、電極の活物質における結晶形状を均一にすることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様では、水熱法により作製する結晶形状のばらつきを小さくすることを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様では、大気より酸素濃度の低い環境下で原料を含む混合溶液を生成し、該混合溶液を用いて水熱法により複合酸化物を生成することにより、生成される複合酸化物における結晶形状のばらつきの抑制を図る。
【0012】
本発明の一態様は、大気より酸素濃度の低い雰囲気下でLi(リチウム)を含む化合物を用いてLiを含む溶液を生成することと、大気より酸素濃度の低い雰囲気下でP(リン)を含む化合物を用いてPを含む溶液を形成することと、大気より酸素濃度の低い雰囲気下でFe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、及びMn(マンガン)のいずれかの遷移金属を含む化合物を一つ又は複数用いて、Fe、Co、Ni、及びMnの一つ又は複数の遷移金属を含む溶液を生成することと、を含み、Liを含む溶液と、Pを含む溶液と、を大気より酸素濃度の低い雰囲気下で混合してLi及びPを含む溶液を形成し、Li及びPを含む溶液と、上記遷移金属を含む溶液と、を大気より酸素濃度の低い雰囲気下で混合して混合溶液を形成し、大気より酸素濃度の低い雰囲気下で水熱法により、混合溶液を用いて一般式LiMPO(Mは、Fe,Co、Ni、及びMnの一つ又は複数)で表される複合酸化物を作製する複合酸化物の生産方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様により、作製される結晶の形状を制御することができる。よって、結晶形状のばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】複合酸化物の生産方法例を説明するためのフローチャート。
【図2】複合酸化物の結晶構造例を示す模式図。
【図3】蓄電装置の例を説明するための図。
【図4】蓄電装置における電極の構造例を説明するための図。
【図5】蓄電装置の例を説明するための図。
【図6】電気機器の例を説明するための図。
【図7】電気機器の例を説明するための図及びそのブロック図。
【図8】走査型電子顕微鏡によるLiFePOの観察結果を示す図。
【図9】走査型電子顕微鏡による比較例のLiFePOの観察結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を説明するための実施形態の例について、図面を用いて以下に説明する。なお、本発明の趣旨及び本発明の範囲から逸脱することなく実施形態の内容を変更することは、当業者であれば容易である。よって、本発明は、以下に示す実施形態の記載内容に限定されない。
【0016】
なお、各実施形態の内容を互いに適宜組み合わせることができる。また、各実施形態の内容を互いに適宜置き換えることができる。
【0017】
また、第1、第2などの序数は、構成要素の混同を避けるために付している。よって、各構成要素の数は、序数の数に限定されない。
【0018】
(実施形態1)
本実施形態では、結晶を有する複合酸化物の例について説明する。
【0019】
本実施形態における複合酸化物の生産方法例について、図1のフローチャートを用いて説明する。
【0020】
本実施形態における複合酸化物の生産方法例では、図1(A)に示すように、ステップS11として、複合酸化物を合成する際に用いられる混合溶液を、大気より酸素濃度の低い雰囲気(低酸素雰囲気ともいう)下で生成する。さらに、ステップS12として、生成した混合溶液から水熱法により複合酸化物を生成する。
【0021】
さらに、複合酸化物の生産方法例の詳細について、図1(B)のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
本実施形態における複合酸化物の生産方法の一例では、図1(B)に示すように、ステップS11_1として、Li(リチウム)を含む化合物(リチウム化合物ともいう)を秤量する。また、ステップS11_2として、P(リン)を含む化合物(リン化合物ともいう)を秤量する。また、ステップS11_3、として遷移金属を含む化合物(遷移金属化合物ともいう)を秤量する。
【0023】
リチウム化合物としては、例えば水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)、無水水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)、酸化リチウム(LiO)、硝酸リチウム(LiNO)、又は酢酸リチウム(CHCOOLi)などを用いることができる。
【0024】
リン化合物としては、例えばリン酸(例えばオルトリン酸(HPO)など)又はリン酸水素アンモニウム(例えばリン酸二水素アンモニウム(NHPO)など)などを用いることができる。
【0025】
遷移金属化合物としては、例えばFe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Mn(マンガン)のいずれかを含む化合物を一つ又は複数用いることができる。例えば、塩化鉄四水和物(FeCl・4HO)、硫酸鉄七水和物(FeSO・7HO)、酢酸鉄(Fe(CHCOO))、塩化マンガン四水和物(MnCl・4HO)、硫酸マンガン−水和物(MnSO・HO)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)、塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)、硫酸コバルト(CoSO)、酢酸コバルト四水和物(Co(CHCOO)・4HO)、塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO)、硫酸ニッケル六水和物(NiSO・6HO)、又は酢酸ニッケル四水和物(Ni(CHCOO)・4HO)などを用いることができる。
【0026】
次に、ステップS12_1として大気より酸素濃度が低い雰囲気下でリチウム化合物を溶媒に溶解して、Liを含む溶液(リチウム含有溶液ともいう)を生成する。また、ステップS12_2として大気より酸素濃度が低い雰囲気下でリン化合物を溶媒に溶解してPを含む溶液(リン含有溶液ともいう)を生成する。また、ステップS12_3として大気より酸素濃度が低い雰囲気下で遷移金属化合物を溶媒に溶解して遷移金属を含む溶液(遷移金属含有溶液ともいう)を生成する。
【0027】
リチウム化合物、リン化合物、又は遷移金属化合物を溶解する溶媒としては、例えば水などを用いることができる。また、溶媒中の酸素濃度は、4.5ppm以下であることが好ましい。例えば、溶媒に窒素バブリングを行うことにより、溶媒中の酸素濃度を低減することができる。溶媒中の酸素濃度を低減することにより、生成される物質の酸化を抑制することができる。
【0028】
また、大気より酸素濃度が低い雰囲気としては、例えば窒素雰囲気、又は窒素と水素の混合雰囲気などを用いることができる。
【0029】
次に、ステップS13として、Liを含む溶液と、Pを含む溶液と、を大気より酸素濃度が低い雰囲気下で混合してLi及びPを含む溶液(リチウム−リン含有溶液ともいう)を生成する。このとき、Li及びPを含む溶液は、弱アルカリ性になる。
【0030】
次に、ステップS14として、Li及びPを含む溶液と、遷移金属を含む溶液と、を大気より酸素濃度が低い雰囲気下で混合して混合溶液を生成する。
【0031】
このとき、例えば遷移金属を含む溶液を撹拌しながらLi及びPを含む溶液を少量ずつ滴下することが好ましい。これにより、遷移金属イオンと水酸化物イオンとの反応より遷移金属を含む溶液に含まれる水素イオンとLi及びPを含む溶液に含まれる水酸化物イオンとの中和反応が優先的に行われる。よって、不要な遷移金属水酸化物の生成を抑制することができる。
【0032】
次に、ステップS15として、混合溶液を用いて水熱法により複合酸化物を生成する。
【0033】
例えば、混合溶液を耐圧容器に入れて加圧及び加熱による処理を行い、その後冷却し、冷却した溶液を濾過することにより複合酸化物を生成することができる。
【0034】
耐圧容器としては、例えばオートクレーブなどを用いることができる。
【0035】
また、加圧及び加熱による処理を行う際の温度は、例えば100℃以上水の臨界温度以下であることが好ましい。また、加圧及び加熱による処理を行う際の圧力は、例えば0.1MPa以上水の臨界圧力以下であることが好ましい。また、加圧及び加熱による処理を行う時間は、例えば0.5時間以上であることが好ましい。また、耐圧容器中を大気より酸素濃度の低い雰囲気にすることにより、大気より酸素濃度の低い雰囲気下で水熱法による処理を行うことができる。例えば、耐圧容器中を窒素雰囲気又は窒素と水素の混合雰囲気にすることが好ましい。これにより、耐圧容器中の不要な酸素を除去することができ、また、工程中に溶液が酸化してしまったとしても該溶液を還元することができるため、酸化による影響を抑制することができる。
【0036】
また、還元剤を加えて加圧及び加熱による処理を行ってもよい。例えば、混合溶液に還元剤を加えてから加圧及び加熱による処理を行うこともできる。また、これに限定されず、例えば遷移金属を含む溶液に還元剤を加え、その後混合溶液を生成してもよい。
【0037】
還元剤としては、例えばアスコルビン酸、二酸化硫黄、亜硫酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、又は亜リン酸などを用いることができる。還元剤を用いることにより、工程中に溶液が酸化してしまったとしても還元することができるため、酸化による影響を低減することができる。
【0038】
水熱法により得られた複合酸化物は、複数の結晶を有する。さらに、上記複合酸化物の結晶形状は、例えば図2に示すように、直方体161である。また、直方体である複数の結晶のそれぞれにおける結晶形状のばらつきが小さい。これは酸化を抑制することにより、作製された複合酸化物における不純物が低減されたためである。なお、複合酸化物の結晶構造は、オリビン型であることが好ましい。
【0039】
以上が本実施形態における複合酸化物の生産方法の例の説明である。
【0040】
図1及び図2を用いて説明したように、本実施形態における複合酸化物の生産方法の一例では、大気より酸素濃度の低い雰囲気下でLi(リチウム)を含む溶液及びP(リン)を含む溶液を混合することによりLi及びPを含む溶液を生成し、その後、大気より酸素濃度の低い雰囲気下で該Li及びPを含む溶液と、遷移金属を含む溶液と、を混合して混合溶液を生成することにより、酸化による副産物の生成を抑制することができる。よって、水熱法を用いて生成される複合酸化物の結晶形状のばらつきを小さくすることができる。
【0041】
(実施形態2)
本実施形態では、上記実施形態1に示す複合酸化物を活物質に用いた電極を含む蓄電装置の例について説明する。
【0042】
本実施形態における蓄電装置の構造例について図3を用いて説明する。
【0043】
図3に示す蓄電装置は、正極201と、負極202と、電解質203と、セパレータ204と、を含む。
【0044】
正極201は、正極集電体211と、正極活物質層212と、を有する。
【0045】
正極集電体211としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、又はチタンなどを用いることができる。また、正極集電体211に適用可能な材料の複数を用いた合金を正極集電体211として用いてもよい。
【0046】
正極活物質層212には、例えば実施形態1における複合酸化物を用いることができる。このとき、例えば実施形態1に示す生産方法を用いて複合酸化物を生成することができる。また、このとき、複合酸化物は、活物質として機能する。
【0047】
例えば、上記実施形態1における複合酸化物に導電助剤、バインダ、及び溶媒を加えることにより、ペーストを生成する。さらに、上記ペーストを正極集電体211に塗布し、焼成することにより、正極活物質層212を作製することができる。
【0048】
負極202は、負極集電体221と、負極活物質層222と、を有する。
【0049】
負極集電体221としては、例えば鉄、銅、又はニッケルなどを用いることができる。また、負極集電体221に適用可能な材料の複数を用いた合金を負極集電体221に用いてもよい。
【0050】
負極活物質層222には、例えばシリコン又は黒鉛などを用いることができる。このとき、シリコン又は黒鉛は、活物質として機能する。
【0051】
また、負極活物質層222は、例えば複数のウィスカーを有する構造であってもよい。
【0052】
また、負極活物質層222としては、例えばグラフェンを用いることもできる。
【0053】
グラフェンとは、イオンを通過させる空隙を有し、sp結合を有する1原子層の炭素分子で構成された1枚のシート、又は該1枚のシートが2枚乃至100枚積層された積層体(多層グラフェンともいう)のことをいう。また、網目状のグラフェンをグラフェンネットともいう。なお、グラフェンには、30原子%以下の炭素以外の元素、又は15原子%以下の炭素と水素以外の元素が含まれていてもよい。このため、グラフェン類似体もグラフェンに含まれる。
【0054】
グラフェンは、導電率が高い、柔軟性が高い、機械的強度が高い、及び耐熱性が高い特徴を有する。また、グラフェンは、イオンを貯蔵することができる容量を有する。
【0055】
例えば、活物質にシリコン又は黒鉛などを用いる場合、シリコン又は黒鉛をグラフェンにより被覆してもよい。また、例えば多層グラフェンの場合、複数のグラフェン層の間にシリコン又は黒鉛などの微粒子を有していてもよい。
【0056】
グラフェンを用いることにより電極の導電性を高めることができる。よって、グラフェンがバインダとしての機能を有することもできる。また、グラフェンを用いることにより、従来の導電助剤又はバインダを用いずに電極を構成することもできる。
【0057】
また、グラフェンを用いることにより、電極の変形及び破壊を抑制することができる。
【0058】
なお、負極活物質層222に限定されず、正極活物質層212にグラフェンを用いてもよい。例えば、上記実施形態1における複合酸化物における複数の結晶をグラフェンにより被覆してもよい。また、例えば多層グラフェンの場合、複数のグラフェン層の間に複合酸化物の微粒子を有していてもよい。
【0059】
ここで、負極活物質層222の一例として、複数のウィスカーを有する構造の負極活物質層222を含む負極202の構造例について図4(A)に示す。
【0060】
図4(A)に示す電極は、負極集電体221と、負極活物質層222と、を有し、負極活物質層222は、ウィスカーを有する層251を含む。
【0061】
ウィスカーを有する層251としては、例えばシリコンなどを用いることができる。
【0062】
また、ウィスカーを有する層251において、ウィスカーの芯部が結晶性を有し、芯部の周縁部が非晶質であることが好ましい。例えば、非晶質である部分は、イオンの貯蔵及び放出に伴う体積変化が少ない。また、結晶性を有する部分は、導電性及びイオン導電性が高いため、イオンを貯蔵する速度及びイオンを放出する速度を速くすることができる。
【0063】
また、例えば、LPCVD(Low Pressure CVD)法を用いてウィスカーを有する層251を形成することができる。
【0064】
例えば、ウィスカーを有する層251がシリコンの場合、LPCVD(Low Pressure CVD)法を用いてウィスカーを有する層251を形成する際の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性ガスを用いることができる。シリコンを含む堆積性ガスとしては、例えば水素化シリコン、フッ化シリコン、又は塩化シリコンなどを用いることができる。
【0065】
また、圧力を、10Pa以上1000Pa以下、好ましくは20Pa以上200Pa以下とすることが好ましい。また、圧力を調整することにより、結晶性を有する部分及び非晶質の部分を作り分けることができる。
【0066】
また、ウィスカーを有する層251を被覆するようにグラフェンを有する層を設けて負極活物質層222を構成することもできる。ウィスカーを有する層を被覆するようにグラフェンを有する層が設けられた構造の負極活物質層222を含む負極202の構造例について図4(B)に示す。
【0067】
図4(B)に示す電極は、図4(A)に示す構造に加え、グラフェンを有する層252を含む。
【0068】
グラフェンを有する層252は、ウィスカーを有する層251に接して設けられる。
【0069】
例えば、ウィスカーを有する層251の上に酸化グラフェン層を形成し、加熱処理を行い、酸化グラフェン層を還元することによりグラフェンを有する層252を形成することができる。
【0070】
図4(B)に一例として示すように、ウィスカーを有する層に接するようにグラフェンを有する層を設けて負極活物質層を構成することにより、例えばイオンの貯蔵及び放出に伴ってウィスカーを有する層の体積が変化しても、グラフェンを有する層が該体積の変化による応力の影響を緩和するため、ウィスカーを有する層におけるウィスカー構造の破壊を防止することができる。よって、蓄電装置のサイクル特性を向上させることができる。
【0071】
また、図3に示すセパレータ204としては、例えば紙、不織布、ガラス繊維、又は合成繊維などを用いることができ、合成繊維としては、例えばナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ビナロンともいう)(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、又はポリウレタンなどを用いることができる。また、セパレータ204としては、フッ素系ポリマ、ポリエーテル(例えばポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシドなど)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン又はポリプロピレンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン、及びポリウレタンなどの高分子材料、該高分子材料の誘導体、紙や膜などのセルロース系材料、並びに不織布から選ばれる一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、セパレータ204を構成する材料としては、電解質203に溶解しない材料を用いることが好ましい。
【0072】
電解質203としては、例えばキャリアとなるイオンを含む材料又はキャリアとなるイオンの移動が可能な材料を用いることができ、例えば、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、及び硼弗化リチウム(LiBF)の一つ又は複数などを用いることができる。また、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、六フッ化砒酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCF)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiN(SO)などのフッ素を含むリチウム塩材料を電解質203として用いることもできる。
【0073】
また、上記材料を溶媒に混合して電解質203を構成することもできる。溶媒としては、例えば環状カーボネート類(例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、又はビニレンカーボネート(VC)など)、非環状カーボネート類(例えばジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(以下、EMCと略す)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、イソブチルメチルカーボネート、又はジプロピルカーボネート(DPC)など)、脂肪族カルボン酸エステル類(例えばギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、又はプロピオン酸エチルなど)、γ−ラクトン類(例えばγ−ブチロラクトンなど)、非環状エーテル類(例えば1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、又はエトキシメトキシエタン(EME)など)、環状エーテル類(例えばテトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランなど)、又はアルキルリン酸エステル(例えばジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、又はリン酸トリオクチルなど)若しくはそのフッ化物を挙げることができ、これらの一種又は二種以上を混合して使用する。
【0074】
さらに、本実施形態における蓄電装置の一例として、コイン型の二次電池の構造例について図5を用いて説明する。
【0075】
図5に示す蓄電装置は、正極301と、負極302と、セパレータ304、筐体305と、筐体306と、リング状絶縁体307と、スペーサー308と、ワッシャー309と、を有する。
【0076】
正極301は、例えば図3における正極201に相当する。このとき、正極集電体311は、正極集電体211に相当し、正極活物質層312は、正極活物質層212に相当する。
【0077】
負極302は、例えば図3における負極202に相当する。このとき、負極集電体321は、負極集電体221に相当し、負極活物質層322は、負極活物質層222に相当する。
【0078】
セパレータ304は、例えば図3におけるセパレータ204に相当する。
【0079】
筐体305、筐体306、スペーサー308、及びワッシャー309は、例えば金属(例えば、ステンレス)製であることが好ましい。筐体305及び筐体306は、正極301及び負極302のそれぞれを外部と電気的に接続する機能を有する。
【0080】
図5に示す蓄電装置は、正極301、負極302、及びセパレータ304を電解液に含浸させ、筐体306の底部を下にして負極302、セパレータ304、リング状絶縁体307、正極301、スペーサー308、ワッシャー309、筐体305を順に積層し、筐体305と筐体306とを圧着してコイン型の二次電池を作製する。
【0081】
以上が本実施形態における蓄電装置の例の説明である。
【0082】
なお、上記コイン型二次電池に限定されず、例えば角型又は円筒型の二次電池にも上記実施形態1における複合酸化物を適用することができる。
【0083】
図3乃至図5を用いて説明したように、本実施形態における蓄電装置の一例では、上記実施形態における複合酸化物を用いて蓄電装置の正極を作製することにより、活物質の充填密度を高めることができるため、蓄電装置のエネルギー密度を高めることができる。
【0084】
(実施形態3)
本実施形態では、蓄電装置を用いた電気機器の例について説明する。
【0085】
蓄電装置を用いた電気機器の例としては、例えば表示装置、照明装置、デスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータ、画像再生装置(例えばDVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する装置など)、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯型情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、高周波加熱装置(例えば電子レンジなど)、電気炊飯器、電気洗濯機、空調設備(例えばエアコンディショナーなど)、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、透析装置などが挙げられる。また、蓄電装置から供給される電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれる。上記移動体としては、例えば電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持つ複合型自動車(ハイブリッドカーともいう)、原動機付自転車(電動アシスト自転車を含む)などが挙げられる。
【0086】
本実施形態における電気機器の例について図6及び図7を用いて説明する。
【0087】
図6に示す表示装置5000は、筐体5001、表示部5002、スピーカー部5003、蓄電装置5004などを有する。表示装置5000は、TV放送受信用の表示装置に相当する。
【0088】
なお、例えばTV放送受信用表示装置、パーソナルコンピュータ用表示装置、広告表示用表示装置など、全ての情報表示用表示装置が本明細書における表示装置に含まれる。
【0089】
表示部5002としては、例えば液晶表示装置、発光装置(例えば、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置)、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの表示装置を用いることができる。
【0090】
蓄電装置5004は、筐体5001の内部に設けられている。蓄電装置5004としては、例えば上記実施形態2における蓄電装置を用いることができる。
【0091】
また、表示装置5000は、商用電源から電力の供給を受けることもでき、また蓄電装置5004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、例えば停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない場合であっても、蓄電装置5004を電源として用いることにより、表示装置5000を駆動させることができる。
【0092】
図6に示す照明装置5100は、据え置き型の照明装置である。照明装置5100は、筐体5101と、光源5102と、蓄電装置5103と、を備える。
【0093】
光源5102としては、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。上記人工光源としては、例えば放電ランプ(例えば白熱電球又は蛍光灯など)又は発光素子(例えば発光ダイオード又は有機EL素子など)などが挙げられる。
【0094】
蓄電装置5103は、筐体5101及び光源5102が据え付けられた天井5104の内部に設けられる。なお、これに限定されず、例えば筐体5101の内部に蓄電装置5103を設けてもよい。
【0095】
また、照明装置5100は、商用電源から電力の供給を受けることができ、また蓄電装置5103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、例えば停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない場合であっても、蓄電装置5103を電源として用いることで、照明装置5100を駆動させることができる。
【0096】
なお、図6では天井5104に設けられた据え付け型の照明装置5100を示しているが、これに限定されず、天井5104以外、例えば側壁5105、床5106、窓5107などに設けられた据え付け型の照明装置に蓄電装置を用いることができる。また、卓上型の照明装置などに蓄電装置を用いることもできる。
【0097】
図6に示すエアコンディショナーは、室内機5200及び室外機5204により構成される。
【0098】
室内機5200は、筐体5201と、送風口5202と、蓄電装置5203と、を備える。なお、図6では、室内機5200に蓄電装置5203が設けられている場合を示しているが、これに限定されず、例えば室外機5204に蓄電装置5203を設けてもよい。また、室内機5200と室外機5204の両方に、蓄電装置5203を設けてもよい。
【0099】
エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることができ、また、蓄電装置5203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機5200と室外機5204の両方に蓄電装置5203が設けられているとき、例えば停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない場合であっても、蓄電装置5203を電源として用いることにより、エアコンディショナーを駆動させることができる。
【0100】
なお、図6では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有するエアコンディショナーに、蓄電装置を設けてもよい。
【0101】
図6に示す電気冷凍冷蔵庫5300は、筐体5301と、冷蔵室用扉5302と、冷凍室用扉5303と、蓄電装置5304と、を備える。
【0102】
蓄電装置5304は、筐体5301の内部に設けられる。
【0103】
また、電気冷凍冷蔵庫5300は、商用電源から電力の供給を受けることができ、また蓄電装置5304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、例えば停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない場合であっても、蓄電装置5304を電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫5300を駆動させることができる。
【0104】
また、他の電気機器として、電子レンジなどの高周波加熱装置、又は電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、蓄電装置を用いることにより電気機器の使用時に商用電源の停止を防止することができる。
【0105】
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率ともいう)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率の増加を抑制することができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫5300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置5304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置5304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0106】
さらに、図7に示す電気機器は、折り畳み式の携帯型情報端末の例であり、図7(A)は外観模式図であり、図7(B)は、ブロック図である。
【0107】
図7に示す電気機器は、図7(A)に示すように、筐体6000aと、筐体6000bと、パネル6001aと、パネル6001bと、軸部6002と、ボタン6003と、接続端子6004と、記録媒体挿入部6005と、を備える。また、図7に示す電気機器は、図7(B)に示すように、電源部6101と、無線通信部6102と、演算部6103と、音声部6104と、パネル部6105と、を有する。
【0108】
パネル6001aは、筐体6000aに設けられる。
【0109】
パネル6001bは、筐体6000bに設けられる。また、筐体6000bは、軸部6002により筐体6000aに接続される。
【0110】
パネル6001a及びパネル6001bは、表示パネルとしての機能を有する。例えば、パネル6001a及びパネル6001bに、互いに異なる画像又は一続きの画像を表示させてもよい。
【0111】
また、パネル6001a及びパネル6001bの一方又は両方がタッチパネルとしての機能を有してもよい。このとき、例えばパネル6001a及びパネル6001bの一方又は両方にキーボードの画像を表示させ、キーボードの画像に指6010などが触れることにより入力動作を行ってもよい。また、表示パネル及びタッチパネルを積層してパネル6001a及びパネル6001bの一方又は両方を構成してもよい。また、表示回路及び光検出回路を備える入出力パネルを用いてパネル6001a及びパネル6001bの一方又は両方を構成してもよい。
【0112】
図7に示す電気機器では、軸部6002があるため、例えば筐体6000a又は筐体6000bを動かして筐体6000aを筐体6000bに重畳させ、電気機器を折り畳むことができる。
【0113】
ボタン6003は、筐体6000bに設けられる。なお、筐体6000aにボタン6003を設けてもよい。また、複数のボタン6003を筐体6000a及び筐体6000bの一方又は両方に設けてもよい。例えば、電源ボタンであるボタン6003を設けることにより、ボタン6003を押すことで電気機器をオン状態にするか否かを制御することができる。
【0114】
接続端子6004は、筐体6000aに設けられる。なお、筐体6000bに接続端子6004を設けてもよい。また、複数の接続端子6004を筐体6000a及び筐体6000bの一方又は両方に設けてもよい。例えば、接続端子6004を介してパーソナルコンピュータと電気機器を接続することにより、パーソナルコンピュータにより、電気機器に記憶されたデータの内容を書き換えてもよい。
【0115】
記録媒体挿入部6005は、筐体6000aに設けられる。なお、筐体6000bに記録媒体挿入部6005を設けてもよい。また、複数の記録媒体挿入部6005を筐体6000a及び筐体6000bの一方又は両方に設けてもよい。例えば記録媒体挿入部にカード型記録媒体を挿入することにより、カード型記録媒体から電気機器へのデータの読み出し、又は電気機器内データのカード型記録媒体への書き込みを行うことができる。
【0116】
また、電源部6101は、電気機器を動作するための電力の供給を制御する機能を有する。例えば、電源部6101から無線通信部6102、演算部6103、音声部6104、及びパネル部6105に電力が供給される。電源部6101は、蓄電装置6111を備える。蓄電装置6111は、筐体6000a及び筐体6000bの一方又は両方の内部に設けられる。蓄電装置6111としては、上記実施形態2に示す蓄電装置を適用することができる。なお、電気機器を動作するための電源電圧を生成する電源回路を電源部6101に設けてもよい。このとき、蓄電装置6111により供給される電力を用いて電源回路において電源電圧が生成される。また、電源部6101を商用電源に接続してもよい。
【0117】
無線通信部6102は、電波の送受信を行う機能を有する。例えば、無線通信部6102は、アンテナ、復調回路、変調回路などを備える。このとき、例えばアンテナによる電波の送受信を用いて外部とのデータのやりとりを行う。なお、無線通信部6102に複数のアンテナを設けてもよい。
【0118】
演算部6103は、例えば無線通信部6102、音声部6104、及びパネル部6105から入力される命令信号に従って演算処理を行う機能を有する。例えば、演算部6103には、CPU、論理回路、及び記憶回路などが設けられる。
【0119】
音声部6104は、音声データである音の入出力を制御する機能を有する。例えば、音声部6104は、スピーカー、及びマイクを備える。
【0120】
電源部6101、無線通信部6102、演算部6103、及び音声部6104は、例えば筐体6000a及び筐体6000bの一方又は両方の内部に設けられる。
【0121】
パネル部6105は、パネル6001a(パネルAともいう)及びパネル6001b(パネルBともいう)の動作を制御する機能を有する。なお、パネル部6105にパネル6001a及びパネル6001bの駆動を制御する駆動回路を設け、パネル6001a及びパネル6001bにおける動作を制御してもよい。
【0122】
なお、電源部6101、無線通信部6102、演算部6103、音声部6104、及びパネル部6105の一つ又は複数に制御回路を設け、制御回路により動作を制御してもよい。また、演算部6103に制御回路を設け、演算部6103の制御回路により、電源部6101、無線通信部6102、音声部6104、及びパネル部6105の一つ又は複数の動作を制御してもよい。
【0123】
また、電源部6101、無線通信部6102、音声部6104、及びパネル部6105の一つ又は複数に記憶回路を設け、記憶回路により動作させる際に必要なデータを記憶させてもよい。これにより、動作速度を速くすることができる。
【0124】
また、図7に示す電気機器は、商用電源から電力の供給を受けることができ、また蓄電装置6111に蓄積された電力を用いることもできる。よって、例えば停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない場合であっても、蓄電装置6111を電源として用いることで、電気機器を駆動させることができる。
【0125】
図7に示す構成にすることにより、図7に示す電気機器は、例えば電話機、電子書籍、パーソナルコンピュータ、及び遊技機の一つ又は複数としての機能を有することができる。
【0126】
以上が本実施形態における電気機器の例の説明である。
【0127】
図6及び図7を用いて説明したように、本実施形態における電気機器の一例では、蓄電装置を設けることにより、蓄電装置から供給される電力により電気機器を駆動することができる。よって、例えば外部からの電力の供給が無い状態であっても電気機器を駆動することができる。
【実施例1】
【0128】
本実施例では、実施形態1に示す作製方法例を用いて作製したLiFePO(リン酸鉄リチウム)について説明する。
【0129】
まず、LiFePOの作製方法について説明する。
【0130】
本実施例におけるLiFePOの作製方法では、LiOH・HO:FeCl・4HO:NHPO=2:1:1のモル比となるように原料を秤量した。このとき、Feが100mlの水に対し、0.2Mの濃度になるように秤量した。
【0131】
次に、秤量したLiOH・HO、FeCl・4HO、及びNHPOのそれぞれを窒素雰囲気下で、窒素バブリングを行った30mlの水に溶解させ、Liを含む溶液、Pを含む溶液、及びFeを含む溶液を生成した。
【0132】
次に、窒素雰囲気下でPを含む溶液にLiを含む溶液を滴下し、Li及びPを含む溶液を生成した。このとき、混合溶液にはLiPOが沈殿していた。
【0133】
次に、窒素雰囲気下でFeを含む溶液を、Li及びPを含む溶液に滴下し、Li、P、及びFeを含む混合溶液を生成した。このとき、混合溶液にはLiFePO前駆体が沈殿していた。
【0134】
次に、混合溶液に窒素バブリングを行った10mlの水を加え、混合溶液の量を100mlとした。このとき、混合溶液中の酸素濃度を測定したところ4.5ppmであった。
【0135】
次に、混合溶液をオートクレーブに移し、窒素雰囲気下で撹拌を行いながら150℃の温度で15時間反応させた。なお、このときの圧力は0.4MPaとした。
【0136】
次に、オートクレーブで反応させた溶液を大気雰囲気下で濾過し、残った化合物を純水で10回洗浄した。洗浄後、化合物を真空中で50℃の温度で乾燥させた。
【0137】
以上の工程によりLiFePOを生成した。
【0138】
さらに、生成したLiFePOを走査型電子顕微鏡(SEMともいう)により観察した。観察結果を図8に示す。
【0139】
さらに、比較例のLiFePOを生成した。なお、比較例のLiFePOの生成では、上記LiFePOの作製工程のうち、窒素雰囲気下で行う処理の全てを大気雰囲気下で行った。その他の生成工程については、上記LiFePOの生成方法と同じである。さらに、作製した比較例のLiFePOをSEMにより観察した。観察結果を図9に示す。
【0140】
図8に示すLiFePOは、直方体である複数の結晶を有することがわかる。さらに、図9と比較して図8に示すLiFePOは、結晶形状のばらつきが小さいことがわかる。このことから、大気雰囲気下の処理によりLiFePOを生成するよりも窒素雰囲気下の処理によりLiFePOを生成する場合の方が結晶形状のばらつきを小さくできることがわかる。
【符号の説明】
【0141】
161 直方体
201 正極
202 負極
203 電解質
204 セパレータ
211 正極集電体
212 正極活物質層
221 負極集電体
222 負極活物質層
301 正極
302 負極
304 セパレータ
305 筐体
306 筐体
307 リング状絶縁体
308 スペーサー
309 ワッシャー
311 正極集電体
312 正極活物質層
321 負極集電体
322 負極活物質層
5000 表示装置
5001 筐体
5002 表示部
5003 スピーカー部
5004 蓄電装置
5100 照明装置
5101 筐体
5102 光源
5103 蓄電装置
5104 天井
5105 側壁
5106 床
5107 窓
5200 室内機
5201 筐体
5202 送風口
5203 蓄電装置
5204 室外機
5300 電気冷凍冷蔵庫
5301 筐体
5302 冷蔵室用扉
5303 冷凍室用扉
5304 蓄電装置
6000a 筐体
6000b 筐体
6001a パネル
6001b パネル
6002 軸部
6003 ボタン
6004 接続端子
6005 記録媒体挿入部
6010 指
6101 電源部
6102 無線通信部
6103 演算部
6104 音声部
6105 パネル部
6111 蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気より酸素濃度の低い雰囲気下でLi(リチウム)を含む化合物を用いてLiを含む溶液を生成することと、
大気より酸素濃度の低い雰囲気下でP(リン)を含む化合物を用いてPを含む溶液を形成することと、
大気より酸素濃度の低い雰囲気下でFe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、及びMn(マンガン)の一つ又は複数の遷移金属を含む化合物を用いて、Fe、Co、Ni、及びMnの一つ又は複数の遷移金属を含む溶液を生成することと、を含み、
前記Liを含む溶液と、前記Pを含む溶液と、を大気より酸素濃度の低い雰囲気下で混合してLi及びPを含む溶液を形成し、
前記Li及びPを含む溶液と、前記遷移金属を含む溶液と、を大気より酸素濃度の低い雰囲気下で混合して混合溶液を形成し、
大気より酸素濃度の低い雰囲気下で水熱法により、前記混合溶液を用いて一般式LiMPO(Mは、Fe,Co、Ni、及びMnの一つ又は複数)で表される複合酸化物を作製する複合酸化物の作製方法。
【請求項2】
前記混合溶液中の酸素濃度が4.5ppm以下である請求項1に記載の複合酸化物の作製方法。
【請求項3】
前記大気より酸素濃度の低い雰囲気が窒素雰囲気である請求項1又は請求項2に記載の複合酸化物の作製方法。
【請求項4】
前記大気より酸素濃度の低い雰囲気が窒素及び水素の混合雰囲気である請求項1又は請求項2に記載の複合酸化物の作製方法。
【請求項5】
前記水熱法により複合酸化物を作製する前に前記混合液に還元剤を入れる請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の複合酸化物の作製方法。
【請求項6】
耐圧容器に還元剤を入れ、前記耐圧容器に前記混合溶液を入れ、前記混合溶液を入れた前記耐圧容器を用いて前記水熱法により前記複合酸化物を作製する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の複合酸化物の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の複合酸化物の作製方法を用いて作製した複合酸化物を用いて蓄電装置の正極を作製する蓄電装置の作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−63898(P2013−63898A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188157(P2012−188157)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】