説明

複合酸化物及び同複合酸化物を含有した排気ガス浄化用触媒

【課題】排気ガス浄化性能が高い複合酸化物を提供する。
【解決手段】一般式Sr2−x7−δで表されるRuddlesden-Popper型結晶相と、一般式SrT1−y3−δで表されるペロブスカイト型結晶相とが混在し、式中のxは0≦x<0.1を満たす数であり、yは0≦y<0.1を満たす数であり、δは酸素欠陥分であり、TはFe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種であり、MはPd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種である複合酸化物を触媒に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合酸化物及び同複合酸化物を含有した排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン用の三元触媒では、エンジン始動直後の温度が低いときから排気ガスを浄化することができるように、従来よりPd担持アルミナ系の触媒成分が広く利用されている。しかし、Pd担持アルミナの場合、高温の排気ガスに晒されると、該排気ガスの熱によってPdの凝集(シンタリング)を生じて劣化し易い。
【0003】
これに対して、Pdの凝集を抑制すべく、該Pdをペロブスカイト型複合酸化物の結晶内に固溶させた触媒材が知られている。例えば、特許文献1には、ABPdOの一般式(式中、Aは、3価以外に価数変動しない希土類元素を必ず含み、かつ、3価より小さい価数をとり得る希土類元素を含まない希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは、Co、Pd、希土類元素以外の遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で表されるペロブスカイト型構造の複合酸化物を含む排ガス浄化用触媒が開示されている。これに関連して、LaFe0.98Pd0.023+δのペロブスカイト型複合酸化物を含有する触媒も実用化されており、排気ガス雰囲気がリーンの状態ではPdが結晶粒子内に固溶し、リッチの状態では結晶粒子表面に析出するため、Pdの粒成長が抑制される、と謳われている。
【特許文献1】特開2004−41866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記LaFe0.98Pd0.023+δのペロブスカイト型複合酸化物について調べたところ、その耐熱性は比較的高いものの、触媒としての使用開始初期(長期に亘る熱履歴を受けていない状態)であっても、HC(炭化水素)浄化に関するライトオフ性能や高温でのNOx浄化性能はそれほど高くはなく、排気ガス浄化性能を高めるには、触媒金属としてRhやPtを比較的多量に使用しなければならないことがわかった。
【0005】
すなわち、本発明の課題は、少ない触媒金属量でも高い排気ガス浄化性能が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために、Ruddlesden-Popper型結晶相とペロブスカイト型結晶相とが混在した複合酸化物に触媒金属を組み合わせるようにした。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、一般式Sr2−x7−δで表されるRuddlesden-Popper型結晶相と、一般式SrT1−y3−δで表されるペロブスカイト型結晶相とが混在し、
上記各一般式において、xは0≦x<0.1を満たす数であり、yは0≦y<0.1を満たす数であり、δは酸素欠陥分であり、TはFe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種であり、MはPd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする複合酸化物である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された複合酸化物を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒である。
【0009】
請求項3に係る発明は、一般式Sr7−δで表されるRuddlesden-Popper型結晶相と、一般式SrTO3−δで表されるペロブスカイト型結晶相とが混在した複合酸化物(式中、TはFe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種であり、δは酸素欠陥分である。)に、Pd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種の触媒金属Mが担持されてなる触媒成分を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒である。
【0010】
以上の各発明の複合酸化物は、Srと、Fe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種の金属Tとを成分として有する酸素欠陥型のRuddlesden-Popper型結晶相と、同じく、Srと、Fe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種の金属Tとを成分として有する酸素欠陥型のペロブスカイト型結晶相とが混在したものである点で共通する。
【0011】
そうして、このような複合酸化物を構成要素とすることにより、本発明によれば、排気ガス中のHCやCOの酸化浄化及びNOxの還元浄化が効率良く進む。遷移金属Tの価数変化によって生ずる酸素欠陥が排気ガスを浄化する活性点となり、優れた排気ガス浄化性能が得られると考えられる。特に、遷移金属TがFeである場合、Fe4+の異常原子価をとり、上記Ruddlesden-Popper型結晶相及びペロブスカイト型結晶相各々において、その価数変化によって生ずる酸素欠陥が活性点となることから、高い触媒活性が得られる。Coの場合も、Co4+の異常原子価をとり得ることから、Feの場合と同様の効果が得られる。
【0012】
また、請求項1,2に係る発明の場合、上記Ruddlesden-Popper型結晶相及びペロブスカイト型結晶相各々において、Pd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種の金属Mが上記金属Tの一部に置換して配置されると、上記酸素欠陥による活性点と、当該金属M(触媒金属)との働きにより、さらに優れた排気ガス浄化性能が得られる。
【0013】
また、請求項3に係る発明の場合、遷移金属Tの価数変化によって当該複合酸化物の結晶に生ずる酸素欠陥(活性点)と、該複合酸化物に担持されたPd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種の触媒金属Mとの働きにより、優れた排気ガス浄化性能が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、Srと、Fe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種の金属Tとを成分として有する酸素欠陥型のRuddlesden-Popper型結晶相と、同じく、Srと、Fe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種の金属Tとを成分として有する酸素欠陥型のペロブスカイト型結晶相とが混在した複合酸化物を構成要素としており、かかる複合酸化物と、Pd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種の金属Mとを組み合わせたことにより、排気ガス中のHCやCOの酸化浄化及びNOxの還元浄化を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
<実施形態1>
本実施形態に係る複合酸化物は、一般式Sr2−x7−δで表されるRuddlesden-Popper型結晶相と、一般式SrT1−y3−δで表されるペロブスカイト型結晶相とが混在する。
【0017】
上記Ruddlesden-Popper型結晶相の一般式Sr2−x7−δにおいて、xは0≦x<0.1を満たす数であり、δは酸素欠陥分である。TはFe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種であり、MはPd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
x=0、すなわち、金属Mを含有しないSr7−δのRuddlesden-Popper型結晶相であってもよいが、金属Mは触媒活性を高める働きをすることから、金属Mの原子割合xは0.01以上とすることが好ましい。但し、原子割合xが0.1以上になると、金属Mは当該複合酸化物に固溶し難くなり、また、コスト的にも不利になる。
【0019】
上記ペロブスカイト型結晶相の一般式SrT1−y3−δにおいて、yは0≦y<0.1を満たす数であり、δは酸素欠陥分である。TはFe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種であり、MはPd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種である。
【0020】
y=0、すなわち、金属Mを含有しないSrTO3−δのペロブスカイト型結晶相であってもよいが、金属Mは触媒活性を高める働きをすることから、金属Mの原子割合xは0.01以上とすることが好ましい。但し、原子割合xが0.1以上になると、金属Mは当該複合酸化物に固溶し難くなり、また、コスト的にも不利になる。
【0021】
上記Ruddlesden-Popper型結晶相とペロブスカイト型結晶相とが混在する複合酸化物は、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法など、公知の方法によって製造することができる。また、当該複合酸化物を排気ガス浄化用触媒に用いる場合、ハニカム担体に当該複合酸化物を含有する触媒層を形成すればよい。この複合酸化物には、さらにPd、Pt、Rh等の触媒金属を含浸法や蒸発乾固法等によって担持させることができる。また、この複合酸化物と他の触媒成分(例えば、Pt担持アルミナ)とを混合して触媒層に配置することができる。
【0022】
<実施形態2>
本実施形態に係る複合酸化物は、一般式Sr7−δで表されるRuddlesden-Popper型結晶相と、一般式SrTO3−δで表されるペロブスカイト型結晶相とが混在する。両一般式中、TはFe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種であり、δは酸素欠陥分である。そして、本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒は、上記混相の複合酸化物に、Pd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種の触媒金属Mが担持されてなる触媒成分を含有することを特徴とする。
【0023】
上記Ruddlesden-Popper型結晶相とペロブスカイト型結晶相とが混在する複合酸化物は、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法など、公知の方法によって製造することができる。触媒金属Mは、含浸法や蒸発乾固法等によって上記複合酸化物に担持させることができる。この複合酸化物を排気ガス浄化用触媒に用いる場合、ハニカム担体に当該複合酸化物を含有する触媒層を形成すればよい。この複合酸化物と他の触媒成分(例えば、Pt担持アルミナ)とを混合して触媒層に配置することができる。
【0024】
<実施例及び比較例>
以下、自動車の排気ガス浄化用触媒に関する実施例及び比較例について説明する。
【0025】
[触媒の調製]
−実施例1−
硝酸ストロンチウム(無水)31.7g、硝酸鉄(III)九水和物39.6g、硝酸Pd溶液(Pd=4.362質量%)4.9g、クエン酸(無水)96.1gを蒸留水に入れて攪拌した後、加熱して溶媒を除去することにより、Sr、Fe及びPdのクエン酸錯体の混合物を得た。このクエン酸錯体混合物を、大気中において、400℃の温度に2時間加熱保持する仮焼成を行なった後、1000℃の温度に6時間加熱保持する本焼成を行なった。得られた焼成品を粉砕して触媒粉末を得た。この触媒粉末の組成式は、SrFe1.96Pd0.047−δである。
【0026】
上記触媒粉末について、XRD(X線回折)分析装置による構造解析を行なった。図1はそのXRDチャートである。図1の白丸を付した各回折角度のピーク、特に回折角度42度のピークはRuddlesden-Popper型結晶のSrFeで現れ、黒塗り三角を付した各回折角度のピーク、特に回折角度40.5度のピークはペロブスカイト型結晶のSrFeOで現れることが知られている。一方、図1のXRDチャートには、Pd及びその酸化物を示すピークは現れていない。そうして、上記触媒粉末の場合は、微量のPdを含有するところ、そのPdは、そのイオン半径がFeのイオン半径に近いことから、Feの一部に置換して当該複合酸化物に固溶していると考えられる。
【0027】
従って、図1の白丸を付けた各ピークは、微量のPdが固溶したRuddlesden-Popper型結晶のSrFe2−xPd7−δによるものであるということでき、黒塗り三角を付けた各ピークは、微量のPdが固溶したペロブスカイト型結晶のSrFe1−yPd3−δによるものであるということができる。すなわち、上記触媒粉末は、SrFe2−xPd7−δのRuddlesden-Popper型結晶相と、SrFe1−yPd3−δのペロブスカイト型結晶相とが混在した混相の複合酸化物粉末である。
【0028】
この実施例1では、Pd溶液を複合酸化物の原料に添加することにより、Pdを該複合酸化物の結晶に固溶させており、このようなPd担持法を以下ではドープ法と呼ぶ。
【0029】
上記触媒粉末及びZrOバインダー各々を所定量秤量し、蒸留水を加えてスラリーを調製した。これに、コージェライト製ハニカム担体(セル壁厚4mil(101.6×10−3mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数400)を浸漬し、Pd担持量が担体1L当たり0.98gとなるように余分なスラリーを加圧エアーで吹き飛ばした後、大気中において500℃の温度に2時間加熱保持する焼成を行なった。以上により、ハニカム担体上に上記触媒粉末を含有する触媒層が形成された排気ガス浄化用触媒を得た。
【0030】
−実施例2−
硝酸ストロンチウム(無水)31.7g、硝酸鉄(III)九水和物40.4g、クエン酸(無水)96.1gを蒸留水に入れて攪拌した後、加熱して溶媒を除去することにより、Sr及びFeのクエン酸錯体の混合物を得た。このクエン酸錯体混合物を、大気中において、400℃の温度に2時間加熱保持する仮焼成を行なった後、1000℃の温度に6時間加熱保持する本焼成を行なった。得られた焼成品(複合酸化物)を粉砕し、これにPd量が実施例1と同量になるよう硝酸Pd溶液を加え、蒸発乾固法でPdを当該粉末に担持し、大気中で500℃の温度に2時間保持する焼成を行なうことにより、本実施例に係る触媒粉末を得た。この触媒粉末は、SrFe7−δのRuddlesden-Popper型結晶相と、SrFeO3−δのペロブスカイト型結晶相とが混在した混相の複合酸化物にPdが担持されたものである。
【0031】
この実施例では、複合酸化物を調製した後に、これにPdを担持させたから、このようなPd担持法を以下では後担持法と呼ぶ。
【0032】
そうして、上記触媒粉末及びZrOバインダー各々を所定量秤量し、実施例1と同じ条件及び方法で、ハニカム担体上に上記触媒粉末を含有する触媒層が形成された排気ガス浄化用触媒を得た。Pd担持量は実施例1と同じく0.98g/Lである。
【0033】
−比較例1−
酸化ストロンチウム15.5g、酸化鉄(III)8.0g、硝酸Pd溶液(Pd=4.362質量%)4.9gを蒸留水に入れて攪拌した後、加熱して溶媒を除去した(蒸発乾固)。次いで、大気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なった。得られた焼成品を粉砕して触媒粉末を得た。この触媒粉末は、Pdを担持したSrOと、Pdを担持したFeとの混合物であり、SrO:Fe=3:1(モル比)である。この比較例1では、酸化ストロンチウム及び酸化鉄の各粉末にPdを担持させたから、そのPd担持法は後担持法ということができる。
【0034】
そうして、上記触媒粉末及びZrOバインダー各々を所定量秤量し、実施例1と同じ条件及び方法で、ハニカム担体上に上記触媒粉末を含有する触媒層が形成された排気ガス浄化用触媒を得た。Pd担持量は実施例1と同じく0.98g/Lである。
【0035】
−比較例2−
実施例1の硝酸ストロンチウムに代えて、硝酸ランタンを43.3gとし、他は実施例1と同じ条件で触媒粉末の調製及び排気ガス浄化用触媒の調製を行なった。比較例2の触媒粉末は、LaFe0.98Pd0.02のペロブスカイト型結晶構造の複合酸化物粉末である。Pd担持量は実施例1と同じく0.98g/Lである。この比較例2のPd担持法はドープ法である。
【0036】
上記実施例1,2及び比較例1,2の各触媒粉末の構成を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
[触媒の評価]
上記実施例1,2及び比較例1,2の各排気ガス浄化用触媒について、大気中において1000℃の温度に24時間保持するエージングを行なったエージングサンプルと、このエージングを行なっていないフレッシュサンプルとを準備した。この実施例及び比較例の各サンプルをモデル排気ガス流通反応装置にセットし、排気ガス浄化性能(ライトオフ温度T50及び高温浄化率C400)を評価した。モデル排気ガスはA/F=14.7±0.9とした。すなわち、A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、所定量の変動用ガスを1Hzでパルス状に添加することにより、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。A/F=14.7、A/F=13.8及びA/F=15.6のときのガス組成を表2に示す。また、空間速度SVは60000/h、昇温速度は30℃/分とした。
【0039】
【表2】

【0040】
T50は、モデル排気ガス温度の上昇により、触媒下流で検出されるガスの各成分(HC、CO及びNOx)濃度が、触媒に流入するガスの各成分(HC、CO及びNOx)濃度の半分になった時点(すなわち浄化率が50%になった時点)の触媒入口ガス温度(ライトオフ温度)であって、触媒の低温浄化性能を表すものである。C400は、触媒入口でのモデル排気ガス温度が400℃であるときのガスの各成分(HC、CO及びNOx)の浄化率であって、触媒の高温浄化性能を表すものである。
【0041】
図2は上記実施例及び比較例のフレッシュサンプルのライトオフ温度T50を示し、図3は同サンプルの高温浄化率C400を示す。T50及びC400共に、実施例1,2は比較例1,2よりも良くなっている。実施例1,2及び比較例1は、触媒粉末の構成元素の量は実質的に同じであるが、実施例1,2の排気ガス浄化性能の方が良いことから、複合酸化物にRuddlesden-Popper型結晶相とペロブスカイト型結晶相とが混在する複合酸化物を採用することが好ましいことがわかる。また、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1の方が良いが、これはドープによってPdを酸素欠陥に近接させたことで、NOの解離吸着が促進された効果であると推察する。
【0042】
図4は上記実施例及び比較例のエージングサンプルのライトオフ温度T50を示し、図5は同サンプルの高温浄化率C400を示す。このエージング後のサンプルにおいては、CO及びNOxの高温浄化率C400(図5)に関して、実施例2と比較例1との差が殆ど見られなくなっているものの、HCの高温浄化率C400及びライトオフ温度T50(図4)に関しては、実施例1,2は比較例1,2よりも良い結果を示しており、実施例1,2に係る排気ガス浄化用触媒は耐熱性も高いということができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1の触媒粉末のXRDチャート図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例のフレッシュ時のライトオフ温度T50を示すグラフ図である。
【図3】本発明の実施例及び比較例のフレッシュ時の高温浄化率C400を示すグラフ図である。
【図4】本発明の実施例及び比較例のエージング後のライトオフ温度T50を示すグラフ図である。
【図5】本発明の実施例及び比較例のエージング後の高温浄化率C400を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0044】
なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Sr2−x7−δで表されるRuddlesden-Popper型結晶相と、一般式SrT1−y3−δで表されるペロブスカイト型結晶相とが混在し、
上記各一般式において、xは0≦x<0.1を満たす数であり、yは0≦y<0.1を満たす数であり、δは酸素欠陥分であり、TはFe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種であり、MはPd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする複合酸化物。
【請求項2】
請求項1に記載された複合酸化物を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
一般式Sr7−δで表されるRuddlesden-Popper型結晶相と、一般式SrTO3−δで表されるペロブスカイト型結晶相とが混在した複合酸化物(式中、TはFe、Mo、Zr、Ti、V、Cr、Mn及びCoのうちから選ばれる少なくとも1種であり、δは酸素欠陥分である。)に、Pd、Ru、Rh、Pt及びIrのうちから選ばれる少なくとも1種の触媒金属Mが担持されてなる触媒成分を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−30823(P2010−30823A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193791(P2008−193791)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】