説明

複合酸化物

【課題】優れた触媒活性を備えた複合酸化物を提供すること。
【解決手段】本発明の複合酸化物は、酸化チタン表面に、第5族から第11族より選ばれた少なくとも1種の遷移金属の酸化物が担持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンが示す光触媒作用は、防臭、抗菌、防汚等さまざまな環境浄化技術に応用されている。近年、この酸化チタンの光触媒作用をさらに向上させる開発が多数なされている。例えば、金、遷移金属、希土類元素等を酸化チタン表面に担持させて、アンモニア処理および焼成することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、さらなる触媒活性の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−182205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、優れた触媒活性を備えた複合酸化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複合酸化物は、酸化チタン表面に、第5族から第11族より選ばれた少なくとも1種の遷移金属の酸化物が担持されている。
好ましい実施形態においては、上記酸化チタンの単位表面積当たりに存在する遷移金属イオン数Γ(ions nm−2)が0.01〜1.00である。
好ましい実施形態においては、上記遷移金属が、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、MoおよびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の遷移金属である。
好ましい実施形態においては、酸化チタンを遷移金属錯体の溶液に浸漬させた後、該酸化チタンを焼成することにより得られる。
好ましい実施形態においては、上記遷移金属錯体溶液に浸漬させた酸化チタンを洗浄した後に焼成する。
好ましい実施形態においては、上記遷移金属錯体がアセチルアセトナト錯体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、酸化チタン表面に遷移金属酸化物を担持させることにより、優れた触媒活性を得ることができる。例えば、紫外光活性をさらに向上させたり、可視光応答性を付与したりすることができる。具体的には、酸化チタンのバンドギャップが狭まって可視光でも電子が励起され得る。また、発生したホールと励起電子とが速やかに分離して異なる場所に集積し、効率よくホールと励起電子とを利用し得る。すなわち、酸化チタン表面の遷移金属酸化物上にホールが高密度に集積する一方、励起電子は酸化チタン側に移動し得る。さらに、酸化チタンから表面の遷移金属酸化物の空のd軌道に移動した励起電子は、酸素の還元を促進し得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の複合酸化物は、任意の適切な形態とされている。1つの実施形態においては、粉末状とされている。この場合、平均1次粒子径は、好ましくは5nm〜10μmである。比表面積は、好ましくは20m/g〜500m/gである。別の実施形態においては、薄膜状とされている。この場合、膜厚は、代表的には1μm〜20μmである。薄膜状の具体例としては、ガラス基板上にFTO(フッ素ドープ酸化錫)層を介して形成された複合酸化物層が挙げられる。また、本発明の複合酸化物は、多孔質体とされていてもよい。
【0008】
本発明の複合酸化物は、酸化チタン表面に遷移金属酸化物が担持されている。酸化チタンの結晶構造としては、任意の適切な結晶構造が採用され得る。酸化チタンの結晶構造としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型が挙げられる。
【0009】
1つの実施形態においては、好ましくは、アナターゼ型結晶構造を含む酸化チタンが用いられる。酸化チタン表面に遷移金属酸化物を担持させることで、例えば、アナターゼ型結晶構造の酸化チタンが本来有する優れた紫外光活性をさらに向上させることができる。
【0010】
遷移金属酸化物を構成する遷移金属としては、好ましくは、第5族から第11族より選ばれた少なくとも1種の遷移金属が用いられる。これらの中でも、実用性等の観点から、好ましくは、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、MoおよびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の遷移金属が用いられる。
【0011】
酸化チタンの単位表面積当たりに存在する遷移金属イオン数Γ(ions nm−2)は、好ましくは1.00以下であり、より好ましくは0.01から1.00である。このような範囲とすることにより、極めて優れた触媒活性が得られ得る。なお、2種以上の遷移金属の酸化物を担持させる場合、当該遷移金属イオン数Γは、各遷移金属イオン数の合計である。
【0012】
本発明の複合酸化物は、任意の適切な方法で製造され得る。好ましい実施形態においては、酸化チタンを上記遷移金属錯体の溶液に浸漬させた後、酸化チタンを焼成することにより製造される。
【0013】
酸化チタンを遷移金属錯体の溶液に浸漬させることで、酸化チタン表面に遷移金属錯体を吸着させ得る。遷移金属錯体としては、任意の適切な遷移金属錯体が採用され得る。例えば、アセチルアセトナト(ペンタンジオナト)錯体、ジアミン錯体、ベンゼン錯体、シクロペンタジエニル錯体、ペンタメチルシクロペンタジエニル錯体、インデニル錯体等が挙げられる。好ましくは、アセチルアセトナト錯体が用いられる。アセチルアセトナト錯体を用いることにより、例えば、上記イオン数Γを良好に達成することができる。
【0014】
上記遷移金属錯体溶液の溶媒としては、用いる遷移金属錯体に応じて、任意の適切な溶媒が用いられる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。例えば、遷移金属錯体としてアセチルアセトナト錯体が用いられる場合、エタノールとn−ヘキサンとの混合溶媒が好ましく用いられる。遷移金属錯体溶液の濃度は、好ましくは、1.0×10−5mol dm−3〜1.0×10−2mol dm−3である。
【0015】
遷移金属錯体溶液の液温は、好ましくは10℃〜50℃である。遷移金属錯体溶液への酸化チタンの添加量は、酸化チタンが粉末状である場合、遷移金属錯体溶液100mlに対して、酸化チタンを100mg〜10g添加することが好ましい。遷移金属錯体溶液への酸化チタンの浸漬時間は、好ましくは1時間〜72時間である。酸化チタンを遷移金属錯体溶液に浸漬させる際、超音波処理を施したり、攪拌したりするのが好ましい。このような処理を施すことで、より速やかに、また、より均一に、酸化チタン表面に遷移金属錯体を吸着させることができる。
【0016】
上記焼成により、酸化チタンに化学吸着した遷移金属錯体を酸化物とすることができる。焼成は、代表的には、空気雰囲気下で熱処理することにより行う。熱処理の温度は、好ましくは300℃〜600℃である。熱処理の時間は、好ましくは10分〜3時間である。
【0017】
好ましくは、遷移金属錯体溶液に浸漬させた酸化チタンを洗浄した後に焼成する。洗浄することにより、例えば、酸化チタン表面に存在する余分な錯体(例えば、物理吸着した錯体)を除去して、上記イオン数Γを良好に達成することができる。洗浄は、代表的には、任意の適切な洗浄溶媒を用いて酸化チタンを洗浄する。洗浄溶媒としては、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等が用いられる。中でも、メタノール、エタノール、アセトンが好ましく用いられる。洗浄方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。1つの実施形態においては、遠心分離を用いる。具体的には、洗浄溶媒に酸化チタンを分散させた分散体を遠心分離により分離して上澄み液を除去するという操作を繰り返すことにより行う。別の実施形態においては、ろ過を用いる。
【0018】
遷移金属酸化物の担持量は、例えば、上記浸漬の条件を調整することにより制御することができる。具体的には、上記遷移金属錯体溶液の濃度、遷移金属錯体溶液への酸化チタンの添加量等を調整することにより制御することができる。また、上記浸漬・(洗浄)・焼成を1サイクルとし、これを繰り返すことにより制御してもよい。繰り返し回数は、浸漬の条件等に応じて異なるが、好ましくは1回〜10回である。これ以外にも、遷移金属酸化物の担持量は、例えば、酸化チタンの粒子径を調整することにより制御することができる。
【0019】
なお、酸化チタン表面に遷移金属酸化物が担持されているか否かは、例えば、遷移金属酸化物のみを溶解し得る溶液(例えば、濃塩酸)と、遷移金属酸化物および酸化チタンを溶解し得る溶液(例えば、濃硫酸)に、それぞれ試料を溶解させて、各溶液の遷移金属量を測定することにより判断することができる。具体的には、各溶液の遷移金属量が一致すれば、酸化チタン表面に遷移金属酸化物が担持されていると判断することができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、酸化チタン表面に存在する金属イオン数(Γ/ions nm−2)の測定方法は以下の通りである。
【0021】
得られた複合酸化物0.04gを35%のHCl水溶液10mlに分散させ、室温で1時間撹拌し、担持されている金属を溶解させた。その後、20mlの蒸留水を入れて1時間放置し、溶液をろ過した。こうして得られた溶液の対象金属の含有量をICP発光分析法により測定し、以下の式から金属イオン数を算出した。
金属イオン数(Γ/ions nm−2)=(複合酸化物1g当たりの対象金属含有量[g])/(対象金属の原子量)×(アボガドロ定数(6.022×1023))/(酸化チタンの比表面積[nm/g])
<ICP測定の測定条件>
装置:ICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPS−7500)
【0022】
[実施例1−1]
エタノールとn−ヘキサンとの混合溶媒(体積比3:17)にトリスペンタジオナト鉄Fe(acac)を溶解させて溶液を調製した。得られた溶液100mlに、酸化チタン(日本アエロジル株式会社製、AEROXIDE TiO P−25、平均一次粒子径21nm、比表面積50m−1)1.0gを加え、暗所にて室温で24時間攪拌し、分散液を得た。ここで、Fe(acac)の濃度は6.5×10−4mol dm−3であった。
上記分散液を2つの遠心管(50ml)に分けて入れ、遠心分離(7500rpm)し、上澄み液を除去した。その後、酸化チタンをエタノールに分散させた後、再度、遠心分離を行い、上澄み液を除去して洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返し行った後、酸化チタンを室温で24時間真空乾燥した。
次いで、酸化チタンを、空気雰囲気下、500℃で1時間熱処理を行った(焼成)。
このようにして、Γ=0.2の複合酸化物を得た。
【0023】
[実施例1−2]
トリスペンタジオナト鉄溶液の濃度を5.0×10−3mol dm−3としたこと以外は、実施例1−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.5)を得た。
【0024】
[実施例1−3]
実施例1−2の操作を2回繰り返して複合酸化物(Γ=0.9)を得た。
【0025】
[実施例1−4]
実施例1−2の操作を10回繰り返して複合酸化物(Γ=5.4)を得た。
【0026】
[実施例2−1]
エタノールとn−ヘキサンとの混合溶媒(体積比3:17)にビスペンタンジオナトニッケル(II)二水和物Ni(acac)(HO)を溶解させて溶液を調製した。得られた溶液100mlに、酸化チタン(日本アエロジル株式会社製、AEROXIDE TiO P−25、平均一次粒子径21nm、比表面積50m−1)2.0gを加え、暗所にて室温で24時間攪拌し、分散液を得た。ここで、Ni(acac)の濃度は1.0×10−5mol dm−3であった。
上記分散液を2つの遠心管(50ml)に分けて入れ、遠心分離(7500rpm)し、上澄み液を除去した。その後、酸化チタンをエタノールに分散させた後、再度、遠心分離を行い、上澄み液を除去して洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返し行った後、酸化チタンを室温で24時間真空乾燥した。
次いで、酸化チタンを、空気雰囲気下、500℃で1時間熱処理を行った(焼成)。
このようにして、Γ=0.0018の複合酸化物を得た。
【0027】
[実施例2−2]
ビスペンタンジオナトニッケル(II)溶液の濃度を1.0×10−4mol dm−3としたこと以外は、実施例2−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.014)を得た。
【0028】
[実施例2−3]
ビスペンタンジオナトニッケル(II)溶液の濃度を1.0×10−3mol dm−3としたこと以外は、実施例2−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.16)を得た。
【0029】
[実施例2−4]
ビスペンタンジオナトニッケル(II)溶液の濃度を2.0×10−3mol dm−3としたこと以外は、実施例2−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.32)を得た。
【0030】
[実施例2−5]
ビスペンタンジオナトニッケル(II)溶液の濃度を2.5×10−3mol dm−3としたこと以外は、実施例2−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.39)を得た。
【0031】
[実施例2−6]
ビスペンタンジオナトニッケル(II)溶液の濃度を5.0×10−3mol dm−3としたこと以外は、実施例2−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.47)を得た。
【0032】
[実施例2−7]
実施例2−6の操作を2回繰り返して複合酸化物(Γ=0.70)を得た。
【0033】
[実施例2−8]
実施例2−6の操作を3回繰り返して複合酸化物(Γ=0.83)を得た。
【0034】
[実施例3−1]
エタノールとn−ヘキサンとの混合溶媒(体積比3:17)にビスペンタンジオナトコバルト(II)Co(acac)を溶解させて溶液を調製した。得られた溶液100mlに、酸化チタン(石原産業株式会社製、ST−01、平均一次粒子径7nm、比表面積300m−1)1.0gを加え、暗所にて室温で24時間攪拌し、分散液を得た。ここで、Co(acac)の濃度は1.0×10−5mol dm−3であった。
上記分散液を2つの遠心管(50ml)に分けて入れ、遠心分離(7500rpm)し、上澄み液を除去した。その後、酸化チタンをエタノールに分散させた後、再度、遠心分離を行い、上澄み液を除去して洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返し行った後、酸化チタンを室温で24時間真空乾燥した。
次いで、酸化チタンを、空気雰囲気下、500℃で1時間熱処理を行った(焼成)。
このようにして、Γ=0.0005の複合酸化物を得た。
【0035】
[実施例3−2]
ビスペンタンジオナトコバルト(II)溶液の濃度を1.0×10−4mol dm−3としたこと以外は、実施例3−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.0010)を得た。
【0036】
[実施例3−3]
ビスペンタンジオナトコバルト(II)溶液の濃度を5.0×10−4mol dm−3としたこと以外は、実施例3−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.017)を得た。
【0037】
[実施例3−4]
ビスペンタンジオナトコバルト(II)溶液の濃度を1.0×10−3mol dm−3としたこと以外は、実施例3−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.048)を得た。
【0038】
[実施例4−1]
エタノールとn−ヘキサンとの混合溶媒(体積比3:17)にトリスペンタンジオナトマンガン(III)Mn(acac)を溶解させて溶液を調製した。得られた溶液100mlに、酸化チタン(石原産業株式会社製、ST−01、平均一次粒子径7nm、比表面積300m−1)1.0gを加え、暗所にて室温で24時間攪拌し、分散液を得た。ここで、Mn(acac)の濃度は1.0×10−5mol dm−3であった。
上記分散液を2つの遠心管(50ml)に分けて入れ、遠心分離(7500rpm)し、上澄み液を除去した。その後、酸化チタンをエタノールに分散させた後、再度、遠心分離を行い、上澄み液を除去して洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返し行った後、酸化チタンを室温で24時間真空乾燥した。
次いで、酸化チタンを、空気雰囲気下、500℃で1時間熱処理を行った(焼成)。
このようにして、Γ=0.0005の複合酸化物を得た。
【0039】
[実施例4−2]
トリスペンタンジオナトマンガン(III)溶液の濃度を1.0×10−4mol dm−3としたこと以外は、実施例4−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.0037)を得た。
【0040】
[実施例4−3]
トリスペンタンジオナトマンガン(III)溶液の濃度を1.0×10−3mol dm−3としたこと以外は、実施例4−1と同様にして、複合酸化物(Γ=0.11)を得た。
【0041】
[実施例4−4]
実施例4−3の操作を2回繰り返して複合酸化物(Γ=0.26)を得た。
【0042】
得られた複合酸化物の触媒活性を、2−ナフトール(2−NAP)の酸化分解度合いを測定することにより評価した。以下、具体的に説明する。
【0043】
(紫外光活性)
得られた複合酸化物0.1gをホウケイ酸ガラス容器に入れ、濃度1.0×10−5mol dm−3の2−NAP溶液(溶媒:アセトニトリルと水との混合溶媒(体積比1:99))を50ml加えた。これに対し、可視光カットフィルター(東芝社製、UV−D33S)を介して、キセノンランプ(Wacom製、HX500)により光を照射した。光強度I320−400nmは、0.5mWcm−2(λ>330nm)であった。なお、実施例3−1から実施例3−4で得られた複合酸化物の評価においては、光強度I320−400nmは、0.3mWcm−2(λ>330nm)とした。
光照射開始から3分ごとに、未分解の2−NAPを定量した。定量方法は、容器内の液体を2ml採取し、可視紫外分光光度計(島津製作所社製、UV−1800)で波長224nm吸収ピークを測定することにより、2−NAPの濃度を求めた。
初期の2−NAP濃度を[2−NAP]、t時間照射後の2−NAPの濃度を[2−NAP]とし、縦軸をln([2−NAP]/[2−NAP])、横軸を反応時間tとしてプロットすると、ほぼ一次に比例した。得られた直線の傾きから反応速度定数(kUV/h−1)を求め、触媒活性を評価した。
【0044】
(可視光活性)
カットフィルターとして、UV光カットフィルター(東芝社製、L−42)を用いたこと以外は上記と同様の方法で、可視光での触媒活性を評価した。光強度I420−485nmは、1.0mWcm−2(λ>400nm)であった。
初期の2−NAP濃度を[2−NAP]、t時間照射後の2−NAPの濃度を[2−NAP]とし、縦軸をln([2−NAP]/[2−NAP])、横軸を反応時間tとしてプロットすると、ほぼ一次に比例した。得られた直線の傾きから反応速度定数(kvis/h−1)を求め、触媒活性を評価した。
【0045】
実施例4−1から実施例4−4で得られた複合酸化物について、光を照射せず、暗所(温度:25℃)における触媒活性を評価した。
【0046】
触媒活性の評価結果を表1〜表4にまとめる。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
各実施例において、触媒活性の向上が確認された。実施例4−3,4−4においては、暗所においても触媒活性が確認された。したがって、熱触媒としても機能し得、暗所および光照射時の両方で触媒活性を示す高機能な光触媒として期待される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の複合酸化物は、光触媒として好適に用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン表面に、第5族から第11族より選ばれた少なくとも1種の遷移金属の酸化物が担持された、複合酸化物。
【請求項2】
前記酸化チタンの単位表面積当たりに存在する遷移金属イオン数Γ(ions nm−2)が0.01〜1.00である、請求項1に記載の複合酸化物。
【請求項3】
前記遷移金属が、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、MoおよびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の遷移金属である、請求項1または2に記載の複合酸化物。
【請求項4】
酸化チタンを遷移金属錯体の溶液に浸漬させた後、該酸化チタンを焼成することにより得られた、請求項1から3のいずれかに記載の複合酸化物。
【請求項5】
前記遷移金属錯体溶液に浸漬させた酸化チタンを洗浄した後に焼成する、請求項4に記載の複合酸化物。
【請求項6】
前記遷移金属錯体がアセチルアセトナト錯体である、請求項4または5に記載の複合酸化物。

【公開番号】特開2012−162405(P2012−162405A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21608(P2011−21608)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】