説明

複合顔料及びその調製方法

本発明は、少なくとも2つの板状基材と、当該板状基材間に少なくとも一部が配置されている少なくとも1種のUV遮蔽剤とからなる積層体を含む複合顔料に関する。複合顔料は、複数の基材と、少なくとも1種のUV遮蔽剤と、場合により着色顔料とをハイブリダイザー法にかけるステップを含む方法によって調製することができる。複合顔料は、化粧品組成物用の成分として有利に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが板の形態である複数の基材と、UV遮蔽剤と、場合により着色顔料とを含む複合顔料、並びに、その複合顔料の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの化粧品は、紫外線をシールドするために1種若しくはそれ以上のUV遮蔽剤を含有する。特に、肌用化粧品は、皮膚を紫外線から保護するTiO2の微粒子等のUV遮蔽剤を、体質顔料等の他の成分、例えば、タルク、マイカ、カオリンと共に含有するのが一般的である。
【0003】
しかし、TiO2の微粒子は、皮膚上で容易に広がらないような高い摩擦係数を有するので、皮膚に好ましくない使用感が与えられる。
【0004】
さらに、TiO2微粒子等の固体の微粒子は、容易に凝集することがあり、分散性が弱い。したがって、そうした粒子を化粧品中に一次粒子の形態で一様に分散させるのは、多くの場合困難である。したがって、UV遮蔽性微粒子を含有する化粧品のUV遮蔽特性を高めるのは難しい。
【0005】
化粧品におけるニーズの多様性に応じて、様々な研究開発が行われている。特に、化粧品に良好なUV遮蔽特性を付与するために、UV遮蔽剤の表面処理剤又は複合顔料が多種類提案されている。
【0006】
例えば、特開平05-214257、特開平05-230394及び特開平09-99246は、単一の板芯粒子と、単一の板芯粒子を覆うUV遮蔽剤の微粒子とを含む複合顔料を開示している。
【0007】
しかし、これらの複合顔料は使用感が思わしくなく、また、UV遮蔽剤の微粒子が複合顔料から分離して皮膚上の毛穴から皮膚に浸透する場合があり、、毛穴では皮膚のバリア特性が強くないために、皮膚に有害な作用を及ぼしかねない。、またUV遮蔽剤は皮膚と容易に接触することがあるので、UV遮蔽剤が刺激性であるとき、この接触も皮膚に有害な作用を及ぼしかねないというリスクがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05-214257
【特許文献2】特開平05-230394
【特許文献3】特開平09-99246
【特許文献4】米国特許第6,225,467号
【特許文献5】WO 2004/085412
【特許文献6】WO 06/035000
【特許文献7】WO 06/034982
【特許文献8】WO 06/034991
【特許文献9】WO 06/035007
【特許文献10】WO 2006/034992
【特許文献11】WO 2006/034985
【特許文献12】EP-669,323
【特許文献13】米国特許第2,463,264号
【特許文献14】米国特許第5,237,071号
【特許文献15】米国特許第5,166,355号
【特許文献16】GB-2,303,549
【特許文献17】DE-197,26,184
【特許文献18】EP-893,119
【特許文献19】WO 93/04665
【特許文献20】DE-19855649
【特許文献21】欧州特許第0 293 795号
【特許文献22】特開平02-295912
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Symmetrical Triazine Derivatives」、IP.COM Journal、IP.COM INC、WEST HENRIETTA, NY, US (2004年9月20日)
【非特許文献2】Cosmetics & Toiletries、1990年2月、105巻、53〜64頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、より良好な使用感及びより良好なUV遮蔽効果をもたらすことができ、UV遮蔽剤の微粒子が皮膚上の毛穴から皮膚に浸透するリスク、及びUV遮蔽剤が、刺激するものであるとき、皮膚と容易に接触して皮膚に影響を及ぼすリスクが軽減されている、新規な複合顔料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的は、少なくとも2つの板状基材と、少なくとも2つの板状基材間に少なくとも一部が配置されている少なくとも1種のUV遮蔽剤とからなる積層体を含む複合顔料によって実現することができる。
【0012】
板状基材は、アスペクト比が少なくとも5であり、また板状基材は、長さが0.3μm〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0013】
少なくとも1種のUV遮蔽剤は、厚さ0.03μm〜10μmの層の形態であることが好ましい。
【0014】
本発明による複合顔料は、厚さ0.2μm〜25μmでよい。
【0015】
板状基材は、少なくとも1種の無機材料及び/又は少なくとも1種の有機材料を含んでよい。無機材料は、天然マイカ、合成マイカ、セリサイト、カオリン、タルク、粘土鉱物、ハイドロタルサイト、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、シリカ、ケイ酸塩、酸化亜鉛、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、オキシ塩化ビスマス、ガラスフレーク、及び、これらの混合物からなる群から選択されるものでよい。一方、有機材料は、(メタ)アクリレート、ポリアミド、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクタム、ポリ(ブチレン)スクシネート、多糖、ポリペプチド、ポリビニルアルコール、ポリビニル樹脂、フルオロポリマー、蝋、アミドスルホン酸多価金属塩、アシル化アミノ酸、及び、これらの混合物からなる群から選択されるものでよい。
【0016】
UV遮蔽剤は、有機でも無機でもよい。UV遮蔽剤は、アントラニル酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、ベンゾフェノン誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロン酸誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ビス-ベンゾアゾリル誘導体、p-アミノ安息香酸(PABA)及びその誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、遮蔽ポリマー及び遮蔽シリコーン、α-アルキルスチレンから得られるダイマー、4,4-ジアリールブタジエン、オクトクリレン及びその誘導体、グアイアズレン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、フラボノイド、ビフラボノイド、オリザノール及びその誘導体、キナ酸及びその誘導体、フェノール、レチノール、システイン、芳香族アミノ酸、芳香族アミノ酸残基を有するペプチド、並びにこれらの混合物からなる群から選択される有機遮蔽剤を含んでよい。一方、UV遮蔽剤は、炭化ケイ素、被覆又は非被覆金属酸化物、及び、これらの混合物からなる群から選択される無機UV遮蔽剤を含んでもよい。前記基材対少なくとも1種のUV遮蔽剤の重量比は、100:1〜100:500でよい。
【0017】
本発明による複合顔料は、少なくとも1種の着色顔料をさらに含んでもよい。
【0018】
本発明による複合顔料は、複数の板状基材と、少なくとも1種のUV遮蔽剤と、場合により着色顔料とをハイブリダイザー法にかけるステップを含む方法によって調製することができる。
【0019】
本発明による複合顔料は、化粧品組成物中に含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】複数の板状芯基材を含んでいる複合顔料のSEM画像を示す図である。図1(a)は複合顔料の外観を示し、図1(b)は複合顔料の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
鋭意検討の結果、本発明者らは、より良好な使用感及びより良好なUV遮蔽効果をもたらし、UV遮蔽剤の微粒子が皮膚上の毛穴から皮膚に浸透するリスク、及びUV遮蔽剤の微粒子が皮膚に容易に接触して皮膚に影響を及ぼすリスクが軽減されている新しい複合顔料を得ることは可能であることを発見した。
【0022】
本発明による新しい複合顔料は、少なくとも2つの板状基材と、少なくとも2つの板状基材間に少なくとも一部が配置されている少なくとも1種のUV遮蔽剤とからなる積層体を含む。
【0023】
UV遮蔽剤の一部は、基材の積層体の外表面上に存在してもよい。この場合では、基材の積層体は、複合顔料の芯として機能し得る。
【0024】
本発明による複合顔料は、厚さが0.2μm〜25μm、好ましくは0.4μm〜20μm、より好ましくは0.4μm〜15μmでよい。
【0025】
本発明による複合顔料は、板状基材の積層体を含むので、複合顔料は、厳密な板形態ではなく、膨張部や紡錘形等の丸みを帯びた形状を有する。したがって、単一の芯板がUV遮蔽剤によって覆われた板の形態であり、サンドペーパーのように機能して皮膚に不快な使用感を与えることになる複合顔料と比べて、使用感が向上する。
【0026】
さらに、UV遮蔽剤の一部が板状基材積層体の外表面状に存在する場合、本発明による複合顔料のより良好な使用感の一端は、UV遮蔽剤が積層体上にしっかりと固定されることによる。したがって、皮膚上で容易に広がらないような高い摩擦係数を有するために皮膚に好ましくない使用感が与えられる、フリーのUV遮蔽剤を減らすことが可能である。加えて、UV遮蔽剤を板状基材積層体の表面上に広げ、固定することができるので、UV遮蔽剤は、凝集することがなく、その表面上に一次粒子の形態で分散する。したがって、UV遮蔽剤のUV遮蔽効果を高めることができる。
【0027】
さらに、少なくとも1種のUV遮蔽剤の少なくとも一部が基材の間に配置されるので、間に挟まれたUV遮蔽剤は、皮膚と直接接触することがない。したがって、基材の間にあるUV遮蔽剤は、皮膚上の毛穴から皮膚に浸透することがない。特に、UV遮蔽剤が刺激するものである場合、UV遮蔽剤の一部が基材の間に捕捉されるので、多量のUV遮蔽剤が皮膚と直接接触することがない。したがって、本発明による複合顔料は、単一の板芯がUV遮蔽剤によって覆われている従来の複合顔料より安全である。
【0028】
以下では、本発明による複合顔料を構成する要素のそれぞれについて詳述する。
【0029】
(基材)
本発明に使用すべき基材は、板の形状を有する。基材が板の形態である限り、いかなる基材を使用してもよい。基材は、アスペクト比が少なくとも5であり、好ましくは10より大きく、より好ましくは20より大きく、より好ましくは50より大きいことが好ましい。アスペクト比は、アスペクト比=長さ/厚さの式に従って、平均厚さ及び平均長さから求めることができる。
【0030】
板状基材は、長さが0.3μm〜30μm、好ましくは0.5μm〜20μm、より好ましくは1μm〜10μm、より好ましくは2μm〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0031】
上述の寸法は、走査型電子顕微鏡で得た画像において選択した100個の基材の寸法の平均を算出することにより得られる。
【0032】
基材の積層体は、ランダムに配向している複数の板状基材が凝集して生成することもある。しかし、板状基材は、規則的に配向し、少なくとも一部、好ましくは全部が、UV遮蔽剤を間に挟みながら、層をなし、又は、積み重なっていることが好ましい。
【0033】
基材の材料は限定されない。材料は、少なくとも1種の無機材料及び/又は少なくとも1種の有機材料でよい。
【0034】
好ましくは、無機材料は、天然マイカ、合成マイカ、セリサイト、カオリン、タルク、粘土鉱物、ハイドロタルサイト、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、シリカ、ケイ酸塩、酸化亜鉛、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、オキシ塩化ビスマス、ガラスフレーク、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものでよい。特に、天然マイカ、合成マイカ、セリサイト、カオリン、タルク、及び、これらの混合物が好ましい。
【0035】
好ましくは、有機材料は、(メタ)アクリレート、ポリアミド、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクタム、ポリ(ブチレン)スクシネート、多糖類、ポリペプチド、ポリビニルアルコール、ポリビニル樹脂、フルオロポリマー、蝋、アミドスルホン酸多価金属塩、アシル化アミノ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものでよい。フルオロポリマーとして、例えば、PTFEを使用することができる。アミドスルホン酸多価金属塩として、例えば、N-ラウロイルタウリンカルシウムを使用することができる。アシル化アミノ酸として、ラウロイルリシンを使用することができる。特に、Nylon(登録商標)等のポリアミド、ポリ乳酸等のポリヒドロキシアルカノエート、及びこれらの混合物が好ましい。
【0036】
基材は、被覆又は非被覆のいずれであってもよい。基材は、被覆されていることがより好ましい。基材の被覆剤の材料は、限定されないが、アミノ酸、N-アシルアミノ酸、アミド、シリコーン、変性シリコーン等の有機材料が好ましい。有機材料として、ラウロイルリシン及びアクリル変性シリコーンを挙げることもできる。
【0037】
(基材上の層)
板状基材の積層体は、少なくとも1種のUV遮蔽剤を含む少なくとも1つの層によって少なくとも部分的に覆うことができる。存在する場合、その層をコーティング層と呼ぶ。本発明による複合顔料を膨張部や紡錘形等の丸みを帯びた形状にするには、板状基材積層体の外表面を、1重若しくはそれ以上のコーティング層で覆うことが好ましい。外表面の10%以上をコーティング層によって覆うことが好ましい。外表面の50%以上をコーティング層によって覆うことがより好ましい。外表面の80%以上をコーティング層によって覆うことがより好ましい。板状基材積層体の外表面全体をコーティング層によって覆うことが最も好ましい。
【0038】
コーティング層の厚さは、板状基材の大きさ等のいくつかの要素に応じて様々でよい。通常、コーティング層の厚さは、0.001μm〜20μm、好ましくは0.01μm〜15μm、より好ましくは0.03μm〜10μm、最も好ましくは0.1μm〜5μmの範囲でよい。
【0039】
板状基材の積層体上に2重以上のコーティング層が存在する場合、コーティング層の厚さ及び組成は、互いに同じものでもよいし、又は異なってもよい。
【0040】
コーティング層は、UV遮蔽剤以外に、着色顔料や、結合剤、好ましくは非液体結合剤等の任意の追加の材料を含んでもよい。追加の材料は、UV遮蔽剤と追加の材料の合計重量に対して1〜50wt%の範囲の量で存在してよい。しかし、コーティング層は、UV遮蔽剤からなることが好ましい。
【0041】
(UV遮蔽剤)
本発明による複合顔料は、少なくとも1種のUV遮蔽剤を、少なくとも一部、板状基材間に含んでいる。さらに、上述のように、本発明による複合顔料は、板状基材の積層体を覆う少なくとも1種のUV遮蔽剤を含んでいてもよい、少なくとも1重のコーティング層を備えていてもよい。板状基材間にあるUV遮蔽剤と、コーティング層中にあるUV遮蔽剤は、同じものでも異なってもよく、同じものであることが好ましい。
【0042】
本発明に使用するUV遮蔽剤は、UV-A及び/又はUV-B領域において活性を有するものでよい。UV遮蔽剤は、親水性かつ/又は親油性かつ/又は化粧品中に一般に使用される溶媒に相応に不溶性でよい。
【0043】
UV遮蔽剤は、液体、又は粒子等の固体の形態でよい。UV遮蔽剤が固体粒子の形態である場合、UV遮蔽剤は、その一次粒径が1nm〜5μm、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは10nm〜100nm、より好ましくは10nm〜20nmの範囲をとるような微細な粒子であることが好ましい。
【0044】
微粒子の形態のUV遮蔽剤を使用する場合、本発明による複合顔料は、微粒子が凝集せず、基材中及び基材上に広がるので、複合顔料が白色の外観でなく、透明又はクリアな外観を示し得るという効果を有する。UV遮蔽剤の単体微粒子は、容易に凝集して、皮膚に白色の外観を与えることに留意すべきである。
【0045】
UV遮蔽剤の材料は限定されない。UV遮蔽剤は、有機でも無機でもよい。2種以上のUV遮蔽剤を使用する場合、UV遮蔽剤の材料は、互いに同じものでもよいし、又は異なってもよい。
【0046】
有機UV遮蔽剤は、アントラニル酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、ベンゾフェノン誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロン酸誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ビス-ベンゾアゾリル誘導体、p-アミノ安息香酸(PABA)及びその誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、遮蔽ポリマー及び遮蔽シリコーン、α-アルキルスチレン由来ダイマー、4,4-ジアリールブタジエン、オクトクリレン及びその誘導体、グアイアズレン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、フラボノイド、ビフラボノイド、オリザノール及びその誘導体、キナ酸及びその誘導体、フェノール、レチノール、システイン、芳香族アミノ酸、芳香族アミノ酸残基含有ペプチド、及び、これらの混合物からなる群から選択されるものでよい。
【0047】
有機UV遮蔽剤の例として、以下にそのINCI名で示すもの及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0048】
アントラニル酸誘導体:Haarmann and Reimerにより「Neo Heliopan MA」の商標で市販されているアントラニル酸メンチル。
【0049】
ジベンゾイルメタン誘導体:特にHoffmann-LaRocheにより「Parsol 1789」の商標で市販されているブチルメトキシジベンゾイルメタン;及びイソプロピルジベンゾイルメタン。
【0050】
ケイ皮酸誘導体:特にHoffmann-LaRocheにより「Parsol MCX」の商標で市販されているメトキシケイ皮酸エチルヘキシル;メトキシケイ皮酸イソプロピル;メトキシケイ皮酸イソプロポキシ;Haarmann and Reimerにより「Neo Heliopan E 1000」の商標で市販されているメトキシケイ皮酸イソアミル;シノキサート(2-エトキシエチル-4-メトキシシンナメート);DEAメトキシシンナメート;メチルケイ皮酸ジイソプロピル;及びジメトキシケイヒ酸エチルヘキサン酸グリセリル。
【0051】
サリチル酸誘導体:Rona/EM Industriesにより「Eusolex HMS」の商標で市販されているホモサレート(サリチル酸ホモメンチル);Haarmann and Reimerにより「Neo Heliopan OS」の商標で市販されているサリチル酸エチルヘキシル;グリコールサリチレート;サリチル酸ブチルオクチル;サリチル酸フェニル;Scherにより「Dipsal」の商標で市販されているジプロピレングリコールサリチレート;及びHaarmann and Reimerにより「Neo Heliopan TS」の商標で市販されているTEAサリチレート。
【0052】
ショウノウ誘導体、特にベンジリデンショウノウ誘導体:Chimexにより「Mexoryl SD」の商標で製造されている3-ベンジリデンショウノウ;Merckにより「Eusolex 6300」の商標で市販されている4-メチルベンジリデンショウノウ;Chimexにより「Mexoryl SL」の商標で製造されているベンジリデンショウノウスルホン酸;Chimexにより「Mexoryl SO」の商標で製造されているメト硫酸ショウノウベンザルコニウム;Chimexにより「Mexoryl SX」の商標で製造されているテレフタリリデンジショウノウスルホン酸;及びChimexにより「Mexoryl SW」の商標で製造されているポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ。
【0053】
ベンゾフェノン誘導体:BASFにより「Uvinul 400」の商標で市販されているベンゾフェノン-1(2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン);BASFにより「Uvinul D50」の商標で市販されているベンゾフェノン-2(テトラヒドロキシベンゾフェノン);BASFにより「Uvinul M40」の商標で市販されているベンゾフェノン-3(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)又はオキシベンゾン;BASFにより「Uvinul MS40」の商標で市販されているベンゾフェノン-4(ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸);ベンゾフェノン-5(ナトリウムヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホネート);Norquayにより「Helisorb 11」の商標で市販されているベンゾフェノン-6(ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン);American Cyanamidにより「Spectra-Sorb UV-24」の商標で市販されているベンゾフェノン-8;BASFにより「Uvinul DS-49」の商標で市販されているベンゾフェノン-9(二ナトリウムジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホネート);ベンゾフェノン-12、及びn-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート。
【0054】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体:特にBASFにより「Uvinul N539」の商標で市販されているオクトクリレン;及び特にBASFにより「Uvinul N35」の商標で市販されているエトクリレン。
【0055】
トリアジン誘導体:Ciba-Geigyにより「Tinosorb S」の商標で市販されているビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン;BASFにより「Uvinul T150」の商標で特に市販されているエチルヘキシルトリアゾン;Sigma 3Vにより「Uvasorb HEB」の商標で市販されているジエチルヘキシルブタミドトリアゾン;2,4,6-トリス(ジネオペンチル4’-アミノベンンザルマロネート)-s-トリアジン;及び米国特許第6,225,467号、WO 2004/085412(化合物6及び9を参照されたい)、又は文書「Symmetrical Triazine Derivatives」、IP.COM Journal、IP.COM INC、WEST HENRIETTA, NY, US (2004年9月20日)に記載の対称トリアジン遮断剤、特に、2,4,6-トリス(ビフェニル)-1,3,5-トリアジン(特に、2,4,6-トリス(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン)、及びWO 06/035000、WO 06/034982、WO 06/034991、WO 06/035007、WO 2006/034992及びWO 2006/034985でも取り上げられている2,4,6-トリス(ターフェニル)-1,3,5-トリアジン。
【0056】
ベンゾトリアゾール誘導体、特にフェニルベンゾトリアゾール誘導体:Rhodia Chimieにより「Silatrizole」の商標で、又はL’Orealにより「Mexoryl XL」の商標で市販されているドロメトリゾールトリシロキサン;2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール;2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール。
【0057】
ベンザルマロン酸誘導体:4’-メトキシベンザルマロン酸ジネオペンチル、及びベンザルマロン酸官能基を含むポリオルガノシロキサン、例えば、Hoffmann-LaRocheにより「Parsol SLX」の商標で市販されているポリシリコーン-15。
【0058】
ベンゾイミダゾール誘導体、特にフェニルベンゾイミダゾール誘導体:特にMerckにより「Eusolex 232」の商標で市販されているフェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、及びHaarmann and Reimerにより「Neo Heliopan AP」の商標で市販されているフェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム。
【0059】
イミダゾリン誘導体:エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオネート。
【0060】
ビス-ベンゾアゾリル誘導体:EP-669,323及び米国特許第2,463,264号に記載されているような誘導体。
【0061】
パラ-アミノ安息香酸及びその誘導体:PABA(p-アミノ安息香酸)、エチルPABA、エチルジヒドロキシプロピルPABA、ペンチルジメチルPABA、特にISPにより「Escalol 507」の商標で市販されているエチルヘキシルジメチルPABA、グリセリルPABA、及びBASFにより「Uvinul P25」の商標で市販されているPEG-25 PABA。
【0062】
メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体:固体形態がFairmount Chemicalにより「Mixxim BB/100」の商標で、又は水性分散液中の微粉化形態がCiba Specialty Chemicalsにより「Tinosorb M」の商標で市販されているメチルレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、並びに米国特許第5,237,071号、同第5,166,355号、GB-2,303,549、DE-197,26,184及びEP-893,119に記載されているような誘導体。
【0063】
ベンゾオキサゾール誘導体:Sigma 3VによりUvasorb K2Aの商標で市販されている2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン。
【0064】
遮蔽ポリマー及び遮蔽シリコーン:WO 93/04665に記載のシリコーン。
【0065】
α-アルキルスチレン由来ダイマー:DE-19855649に記載のダイマー。
【0066】
4,4-ジアリールブタジエン誘導体:1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン。
【0067】
オクトクリレン及びその誘導体:オクトクリレン。
【0068】
グアイアズレン及びその誘導体:グアイアズレン及びグアイアズレンスルホン酸ナトリウム。
【0069】
ルチン及びその誘導体:ルチン及びグルコシルルチン。
【0070】
フラボノイド:ロブスチン(イソフラボノイド)、ゲニステイン(フラボノイド)、テクトクリシン(フラボノイド)及びヒスピドン(フラボノイド)。
【0071】
ビフラボノイド:ランセオラチンA、ランセオラチンB及びヒプナンビフラボノイドA。
【0072】
オリザノール及びその誘導体:Γ-オリザノール。
【0073】
キナ酸及びその誘導体:キナ酸。
【0074】
フェノール:フェノール。
【0075】
レチノール:レチノール。
【0076】
システイン:L-システイン。
【0077】
芳香族アミノ酸残基含有ペプチド:トリプトファン、チロシン又はフェニルアラニンを有するペプチド。
【0078】
好ましい有機UV遮断剤は、以下のものから選択される。
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ホモサレート、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、n-ヘキシル2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、4-メチルベンジリデンショウノウ、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム、エチルヘキシルトリアゾン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジネオペンチル4’-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジイソブチル4’-アミノベンザルマロネート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(ターフェニル)-1,3,5-トリアジン、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ドロメトリゾールトリシロキサン、ポリシリコーン-15、4’-メトキシベンザルマロン酸ジネオペンチル、1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン、2,4-ビス[5-1(ジメチルプロピル)ベンゾオキサゾール-2-イル-(4-フェニル)イミノ]-6-(2-エチルヘキシル)イミノ-1,3,5-トリアジン、及び、これらの混合物。
【0079】
より好ましい有機UV遮蔽剤は、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ドロメトリゾールトリシロキサン、及び、これらの混合物である。
【0080】
無機UV遮蔽剤は、炭化ケイ素、被覆又は非被覆金属酸化物、及び、これらの混合物からなる群から選択されるものでよい。
【0081】
無機UV遮蔽剤は、被覆又は非被覆金属酸化物で構成された顔料(平均一次粒径:一般に5nm〜100nm、好ましくは10nm〜50nm)、例えば、すべてそれ自体がよく知られたUV光防護剤である、酸化チタン(非晶質又はルチル型及び/若しくはアナターゼ型の結晶質)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムで構成された顔料から選択されることが好ましい。
【0082】
顔料は、被覆又は非被覆でもよい。被覆顔料とは、例えば、Cosmetics & Toiletries、1990年2月、105巻、53〜64頁に記載のもの等の化合物、例えば、アミノ酸、蜜蝋、脂肪酸、脂肪族アルコール、アニオン性界面活性剤、レシチン、脂肪酸のナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、若しくはアルミニウム塩、金属アルコキシド(チタン若しくはアルミニウムアルコキシド)、ポリエチレン、シリコーン、タンパク質(コラーゲン、エラスチン)、アルカノールアミン、酸化ケイ素、金属酸化物、又はヘキサメタリン酸ナトリウムを用いた、化学的、電子的、機械化学的、及び/又は機械的性質の1種若しくはそれ以上の表面処理にかけられている顔料である。
【0083】
知られているように、シリコーンは、分子量が変化し得る、線状又は環状で、分枝又は架橋した構造を含む有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーであり、適切な官能性シランを重合及び/又は重縮合させて得られ、本質的に、ケイ素原子が酸素原子によって相互に結合(シロキサン結合)しており、場合により、置換炭化水素基が前記ケイ素原子に炭素原子によって直接結合している主単位の繰返しから構成される。
【0084】
用語「シリコーン」は、その調製に必要なシラン、特にアルキルシランも包含する。
【0085】
本発明に適する顔料の被覆に使用するシリコーンは、アルキルシラン、ポリジアルキルシロキサン、及びポリアルキルヒドロシロキサンからなる群から選択されることが好ましい。シリコーンは、オクチルトリメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、及びポリメチルヒドロシロキサンからなる群から選択されることがさらにより好ましい。
【0086】
金属酸化物で構成された顔料は、当然、シリコーンで処理される前に、他の表面剤(surfacing agent)、特に、酸化セリウム、アルミナ、シリカ、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、又はこれらの混合物で処理されていてもよい。
【0087】
被覆顔料は、より詳細には、以下の酸化チタンである。
池田物産からの製品「Sunveil」等、シリカで被覆されているもの、
池田物産からの製品「Sunveil F」等、シリカ及び酸化鉄で被覆されているもの、
テイカの製品「Microtitanium Dioxide MT 500 SA」及び「Microtitanium Dioxide MT 100 SA」、Tioxideの製品「Tioveil」、Rhodiaの製品「Mirasun TiW 60」等、シリカ及びアルミナで被覆されているもの、
石原産業の製品「Tipaque TTO-55 (B)」及び「Tipaque TTO-55 (A)」、Kemiraの製品「UVT 14/4」等、アルミナで被覆されているもの、
テイカの製品「Microtitanium Dioxide MT 100 T、MT 100 TX、MT 100 Z又はMT-01」、Uniqemaの製品「Solaveil CT-10 W」及び「Solaveil CT 100」、Merckの製品「Eusolex T-AVO」等、アルミナ及びステアリン酸アルミニウムで被覆されているもの、
テイカの製品「MT-100 AQ」等、シリカ、アルミナ及びアルギン酸で被覆されているもの、
テイカの製品「MT-100 TV」等、ステアリン酸アルミニウムで被覆されているもの、一次粒径は15nm、
テイカの製品「Microtitanium Dioxide MT 100 S」等、アルミナ及びラウリン酸アルミニウムで被覆されているもの、
テイカの製品「Microtitanium Dioxide MT 100 F」等、酸化鉄及びステアリン酸鉄で被覆されているもの、
テイカの製品「BR351」等、酸化亜鉛及びステアリン酸亜鉛で被覆されているもの、
テイカの製品「Microtitanium Dioxide MT 600 SAS」、「Microtitanium Dioxide MT 500 SAS」、及び「Microtitanium Dioxide MT 100 SAS」等、シリカ及びアルミナで被覆され、シリコーンで処理されたもの、
チタン工業の製品「STT-30-DS」等、シリカ、アルミナ、及びステアリン酸アルミニウムで被覆され、シリコーンで処理されたもの、
Kemiraの製品「UV-Titan X 195」等、シリカで被覆され、シリコーンで処理されたもの、
石原産業の製品「Tipaque TTO-55 (S)」又はKemiraの製品「UV Titan M 262」等、アルミナで被覆され、シリコーンで処理されたもの、
チタン工業の製品「STT-65-S」等、トリエタノールアミンで被覆されているもの、
石原産業の製品「Tipaque TTO-55 (C)」等、ステアリン酸で被覆されているもの、又は
テイカの製品「Microtitanium Dioxide MT 150 W」等、ヘキサメタリン酸ナトリウムで被覆されているもの。
【0088】
シリコーンで処理された他の酸化チタン顔料は、オクチルトリメチルシランで処理され、その個々の粒子の平均サイズが25〜40nmであるTiO2、例えば、Degussa Silicesにより「T 805」の商標で市販されているもの、ポリジメチルシロキサンで処理され、その個々の粒子の平均サイズが21nmであるTiO2、例えば、Cardreにより「70250 Cardre UF TiO2SI3」の商標で市販されているもの、ポリジメチルヒドロシロキサンで処理され、その個々の粒子の平均サイズが25nmであるアナターゼ/ルチルTiO2、例えば、Color Techniquesにより「Microtitanium Dioxide USP Grade Hydrophobic」の商標で市販されているものであることが好ましい。
【0089】
非被覆酸化チタン顔料は、例えば、テイカにより「Microtitanium Dioxide MT500B」又は「Microtitanium Dioxide MT600B」の商標で、Degussaにより「P 25」の商標で、Wackerにより「Oxyde de titane transparent PW」の商標で、三好化成により「UFTR」の商標で、Tomenにより「ITS」の商標で、またTioxideにより「Tioveil AQ」の商標で市販されている。
【0090】
非被覆酸化亜鉛顔料は、例えば、
Sunsmartにより「Z-cote」の商標で市販されているもの、
Elementisにより「Nanox」の商標で市販されているもの、
Nanophase Technologiesにより「Nanogard WCD 2025」の商標で市販されているもの
である。
【0091】
被覆酸化亜鉛顔料は、例えば、
東芝により「Oxide Zinc CS-5」の商標で市販されているもの(ポリメチルヒドロシロキサンで被覆されているZnO)、
Nanophase Technologiesにより「Nanogard Zinc Oxide FN」の商標で(C12〜C15アルキルベンゾエートであるFinsolv TN中40%分散液として)市販されているもの、
大東化成により「Daitopersion Zn-30」及び「Daitopersion Zn-50」の商標で市販されているもの(シリカ及びポリメチルヒドロシロキサンで被覆されている亜鉛ナノオキシドを30%又は50%含む、オキシエチレン化ポリジメチルシロキサン/シクロポリメチルシロキサン分散液)、
ダイキン工業により「NFD Ultrafine ZnO」の商標で市販されているもの(ペルフルオロアルキルのリン酸エステル及びペルフルオロアルキルエチルを主体としたコポリマーで被覆されている、シクロペンタシロキサン分散液としてのZnO)、
信越化学工業により「SPD-Z1」の商標で市販されているもの(シリコーングラフトアクリルポリマーで被覆されているZnOをシクロジメチルシロキサンに分散させたもの)、
ISPにより「Escalol Z100」の商標で市販されているもの(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル/PVP-ヘキサデセンコポリマー/メチコン混合物に分散させたアルミナ処理ZnO)、及び
冨士色素により「Fuji ZnO-SMS-10」の商標で市販されているもの(シリカ及びポリメチルシルセスキオキサンで被覆されているZnO)、
Elementisにより「Nanox Gel TN」の商標で市販されているもの(ヒドロキシステアリン酸重縮合物を含有するC12〜C15アルキルベンゾエートに55%で分散させたZnO)である。
【0092】
非被覆酸化セリウム顔料は、例えば、Rhone-Poulencにより「Colloidal Cerium Oxide」の商標で市販されている。
【0093】
非被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaudにより「Nanogard WCD 2002 (FE 45B)」、「Nanogard Iron FE 45 BL AQ」、「Nanogard FE 45R AQ」、若しくは「Nanogard WCD 2006 (FE 45R)」の商標で、又はMitsubishiにより「TY-220」の商標で市販されている。
【0094】
被覆酸化鉄顔料は、例えば、Arnaudにより「Nanogard WCD 2008 (FE 45B FN)」、「Nanogard WCD 2009 (FE 45B 556)」、「Nanogard FE 45 BL 345」、若しくは「Nanogard FE 45 BL」の商標で、又はBASFにより「Oxyde de fer transparent」の商標で市販されている。
【0095】
金属酸化物の混合物、特に、池田物産により「Sunveil A」の商標で市販されている、シリカで被覆されている二酸化チタンとシリカで被覆されている二酸化セリウムの等重量混合物を含めて、二酸化チタンと二酸化セリウムの混合物、また二酸化チタンの、アルミナ、シリカ及びシリコーンで被覆されている二酸化亜鉛との混合物、例えば、Kemiraにより市販されている製品「M 261」、又はアルミナ、シリカ、及びグリセロールで被覆されている二酸化亜鉛との混合物、例えば、Kemiraにより市販されている製品「M 211」も挙げることができる。
【0096】
被覆物は、顔料を基材上又は基材中に固定する結合剤として機能することがあるので、被覆顔料が好ましい。特に、テイカの製品「MT-100 TV」等、ステアリン酸アルミニウムで被覆酸化チタンが好ましい。
【0097】
UV遮蔽剤は、本発明による複合顔料中に、基材対UV遮蔽剤の重量比が100:1〜100:500、好ましくは100:5〜100:400、より好ましくは100:10〜100:200、より好ましくは100:10〜100:100、より好ましくは100:10〜100:50、より好ましくは100:10〜100:30になるような割合で使用することができる。
【0098】
(着色顔料)
上述のように、本発明による複合顔料は、好ましくは板状基材の積層体を覆うコーティング層中に、少なくとも1種の着色顔料を含んでよい。
【0099】
用語「着色顔料」は、不溶性であり、組成物を着色するものである、白色又は有色の任意の形状の無機又は有機の粒子を意味すると理解すべきである。
【0100】
着色顔料を使用する場合、本発明の複合顔料は、着色顔料が凝集せず、基材中及び/又は基材上に広がるので、彩度の高いよりクリアな外観をもたらし得るという効果を有する。フリーの着色顔料は、容易に凝集して、彩度の低いくすんだ外観を肌に与えることを留意すべきである。
【0101】
顔料は、白色又は有色の無機及び/又は有機顔料でよい。
【0102】
使用することのできる無機顔料の中でも、限定はしないが、場合により表面処理されている二酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム、並びに亜鉛、(黒色、黄色、若しくは赤色)酸化鉄又は酸化クロム、マンガン紫、ウルトラマリンブルー、水酸化クロム水和物、及び第二鉄青(ferric blue)、又はアルミニウム粉末や銅粉末等の金属粉末を挙げることができる。顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及びこれらの組合せ等の金属酸化物で構成されたナノ顔料から選択することもできる。用語「ナノ顔料」とは、1nm〜500nmの範囲の平均粒径、例えば10nm〜100nmの範囲の粒径を有する顔料を意味すると理解される。
【0103】
使用することのできる有機顔料の中でも、限定はしないが、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料及びレーキ、例えば、コチニールカルミン系及びバリウム、ストロンチウム、カルシウム、又はアルミニウム系のレーキを挙げることができる。例えば、Red 202 (カルシウムビス[2-(3-カルボキシ-2-ヒドロキシナフチルアゾ)-5-メチルベンゼンスルホネート)は、D&Cタイプの顔料として使用することができる。
【0104】
着色顔料は、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、マンガン紫、ウルトラマリンブルー、水酸化クロム水和物、第二鉄青、アルミニウム粉末、銅粉末、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、レーキ、真珠箔顔料、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0105】
用語「真珠箔顔料」は、特定の貝によってその貝殻の中で産出され、又はそうでなく合成された粒子等、任意の形状の虹色に輝く粒子を意味すると理解すべきである。
【0106】
真珠光沢剤(pearlescent agent)は、二酸化チタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆されているマイカ等の白色真珠光沢剤;酸化チタンで被覆されているマイカを酸化鉄で被覆したもの、酸化チタンで被覆されているマイカを第二鉄青又は酸化クロムで被覆したもの、酸化チタンで被覆されているマイカを上述の種類の有機顔料で被覆したもの等の有色真珠光沢剤;及びオキシ塩化ビスマスを主体とした真珠光沢剤から選択することができる。
【0107】
着色顔料は、本発明による複合顔料中に、基材対着色顔料の重量比が100:1〜100:500、好ましくは100:5〜100:400、より好ましくは100:10〜100:200、より好ましくは100:10〜100:100、より好ましくは100:10〜100:50、より好ましくは100:10〜100:30になるような割合で使用することができる。
【0108】
(複合顔料の調製方法)
本発明による複合顔料は、そのそれぞれが板の形態である複数の基材と、UV遮蔽剤と、場合により着色顔料等の追加の材料とを、ハイブリダイザー法にかけることにより調製できる。
【0109】
ハイブリダイザー法は、1980年代に開発された。ハイブリダイザー法は、多数の粒子に機械的な強い力をかけて、機械化学的反応を引き起こし、複合粒子を生成する機械化学的融合法の一部類である。
【0110】
ハイブリダイザー法によれば、機械的力は、10cm〜1mの直径を有することができ、かつ1,000rpm〜100,000rpmの速度で回転することができる高速ローターによって付与する。したがって、ハイブリダイザー法は、そのような高速ローターを使用する機械化学的融合法であると定義することができる。ハイブリダイザー法は、空気中又は乾燥条件下で実施する。したがって、ローターの回転が高速であるために、ローター付近に高速空気流を発生させることができる。しかし、いくつかの液体材料は、固体材料と共にハイブリダイザー法にかけることができる。用語「ハイブリダイザー法」は、技術用語として使用されている。
【0111】
ハイブリダイザー法は、例えば日本の奈良機械製作所により市販されているハイブリダイゼーションシステムを使用して実施することができ、このシステムでは、少なくとも2種の粒子、通常は芯粒子と微粒子を、乾燥条件下にある室中に複数の刃を有する高速ローターを備えたハイブリダイザーに供給し、粒子を室に分散させ、粒子に機械及び熱エネルギー(例えば、圧縮、摩擦、及び剪断応力)を、1〜10分、好ましくは1〜5分等の比較的短い時間付与する。結果として、一方の種類の粒子(例えば、微粒子)が他方の種類の粒子(例えば、芯粒子)上に包埋又は固定されて、複合粒子が形成される。粒子は、振盪等の静電処理にかけて、一方の種類の粒子が広がって他方の種類の粒子を覆っている「オーダード ミクスチャー」を生成させておくことが好ましい。ハイブリダイザー法は、日本の徳寿工作所により市販されているシータ・コンポーザを使用して実施することもできる。
【0112】
本発明によれば、複数の板状基材と、UV遮蔽剤と、場合により必要に応じて着色顔料等の追加の材料とを、そのようなハイブリダイザーに供給して、複合顔料を生成することができる。ハイブリダイザー法は、約8,000rpm(100m/秒)で回転するローターを使用して約5分間実施することができる。
【0113】
本発明による複合顔料にUV遮蔽剤と着色顔料の両方を使用する場合、これら材料は、基材対UV遮蔽剤及び着色顔料の重量比が100:1〜100:500、好ましくは100:5〜100:400、より好ましくは100:10〜100:200、より好ましくは100:10〜100:100、より好ましくは100:10〜100:50、より好ましくは100:10〜100:30になるような割合で使用することができる。
【0114】
ハイブリダイザー法では、少なくとも1種のUV遮蔽剤、及び場合により少なくとも1種の着色顔料が、複数の板状基材の間に挟まれている複合顔料を得ることが可能になる。言い換えれば、UV遮蔽剤は、少なくとも一部が板状基材の間に配置されている。
【0115】
さらに、ハイブリダイザー法では、板状基材の大きさを縮小することができ、ハイブリダイザー法によって調製された複合顔料により、より滑らかな使用感を提供することができる。
【0116】
さらに、ハイブリダイザー法では、板状基材の積層体上にUV遮蔽剤、及び場合により着色顔料を規則正しく並べ(例えば、均質に覆い)、積層体と、UV遮蔽剤及び場合により着色顔料を含む層との間の外表面における接着を強くすることができる。
【0117】
ハイブリダイザー法は、例えばビーズミルやジェットミルを使用する他の方法とはまったく異なることに留意すべきである。実際に、ビーズミルは、芯粒子の微粉砕又は凝集を引き起こし、ジェットミルでは、芯粒子が微粉砕され、芯粒子の微粒子によるコーティングが一様でなくなる。
【0118】
必要に応じて、追加のUV遮蔽剤及び/又は着色材料によって複合顔料をさらにコーティングする追加の方法を実施してもよい。この追加の方法の結果として、本発明による複合顔料は、UV遮蔽剤及び/又は着色材料を含む、好ましくはUV遮蔽剤及び/又は着色材料からなる別の層でコーティングされていてもよい。
【0119】
(化粧品組成物)
上述のような複合顔料は、本発明による組成物中に、組成物の総重量の0.01重量%〜99重量%、好ましくは0.1重量%〜50重量%、より好ましくは1重量%〜30重量%の量で存在してよい。
【0120】
好ましいことに、本発明による複合顔料は、良好な使用感に加えて、場合によりより透明又はクリアな着色等の良好な着色効果と共に透明又はクリアな外観を伴う可能性のある良好なUV遮蔽効果を、ケラチン物質に影響を及ぼすリスクなしに示し得るので、皮膚、毛髪、爪等のケラチン物質に適用される化粧品組成物中に使用して、UV遮断効果、及び場合により着色効果を提供することができる。
【0121】
本発明による化粧品組成物は、フィラー及び油をさらに含んでもよい。
【0122】
本明細書では、用語「フィラー」とは、いかなる温度で組成物が製造されても組成物の媒質に不溶性である、任意の形状の無色の天然又は合成粒子を意味すると理解すべきである。したがって、フィラーは、上述のような着色顔料とは異なる。
【0123】
フィラーは、無機でも有機でもよく、任意の結晶学的形態(例えば、シート状晶、立方晶、六方晶、斜方晶等)のどんな形状でもよい(例えば、小板状、球状、及び長円状)。適切な追加のフィラーの例としては、その限りでないが、タルク;マイカ;シリカ;カオリン;Nylon(登録商標)等のポリアミドの粉末;ポリ-β-3-アラニン粉末;ポリエチレン粉末;ポリウレタン粉末、例えば、東色によりPlastic Powder D-400の名称で販売されている、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチロールヘキシルラクトンコポリマーで構成された粉末;テトラフルオロエチレンポリマー(Teflon(登録商標))で構成された粉末;ラウロイルリシン;デンプン;窒化ホウ素;高分子中空微小球、例えば、ポリ(塩化ビニリデン)/アクリロニトリルの微小球、例えばExpancel(登録商標) (Nobel Industrie)、及びアクリル酸コポリマーの微小球;シリコーン樹脂粉末、例えば、シルセスキオキサン粉末(例えば、欧州特許第0 293 795号で開示されているシリコーン樹脂粉末、及び東芝のTospearls(登録商標));ポリ(メタクリル酸メチル)粒子;沈降炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;塩基性炭酸マグネシウム;ヒドロキシアパタイト;中空シリカ微小球;ガラスミクロカプセル;セラミックミクロカプセル;8〜22個の炭素原子、例えば12〜18個の炭素原子を含む有機カルボン酸から得られる金属石けん、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、及びミリスチン酸マグネシウム;硫酸バリウム;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0124】
フィラーは、組成物中に、組成物の総重量の0.1重量%〜80重量%、例えば、1重量%〜25重量%、又は3重量%〜15重量%の範囲の量で存在してよい。
【0125】
用語「油」は、周囲温度(25℃)で液体である脂肪物質を意味すると理解される。
【0126】
本発明の組成物中に使用することのできる油として、例えば、ペルヒドロスクアレン(又はスクアラン)等の動物由来の炭化水素油;植物由来の炭化水素油、例えば、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、例えば、Stearineries Duboisにより市販されているものやDynamit NobelによりMiglyol 810、812及び818の商標で市販されているもの、又は植物由来の油、例えば、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、キュウリ油、ブドウ種子油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アンズ油、マカダミアナッツ油、アララ油(arara oil)、コリアンダー油、ヒマシ油、アボカド油、ホホバ油、シアバター油;合成油;シリコーン油、例えば、周囲温度で液体又はペーストである、線状又は環状シリコーン鎖を含む揮発性又は不揮発性のポリメチルシロキサン(PDMS);フッ素化油、例えば、一部が炭化水素及び/又はシリコーンであるもの、例えば、特開平02-295912に記載のもの;ジカプリリルエーテル(CTFA名)等のエーテル;C12〜C15脂肪族アルコール安息香酸エステル(FinetexのFinsolv TN)等のエステル;安息香酸2-フェニルエチル(ISPのX-Tend 226)等の安息香酸アリールアルキル誘導体;N-ラウロイルサルコシンイソプロピル(味の素のエルデュウSL-205)等のアミド化油、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0127】
油性相は、例えば、脂肪族アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール)、脂肪酸(ステアリン酸)、又は蝋(パラフィン蝋、ポリエチレン蝋、カルナウバ蝋、蜜蝋)から選択される1種若しくはそれ以上の脂肪物質も含んでよい。油性相は、親油性ゲル化剤、界面活性剤、又はここでも有機若しくは無機粒子を含んでよい。
【0128】
油性相は、組成物の総重量の1〜70重量%の油に相当し得ることが好ましい。
【0129】
本発明による組成物は、少なくとも1種の追加の従来の化粧品成分をさらに含んでもよく、追加化粧品成分は、例えば、親水性又は親油性のゲル化剤及び/又は増粘剤、界面活性剤、抗酸化剤、香料、保存剤、中和剤、日焼け止め剤、ビタミン、保湿剤、セルフタンニング化合物、しわ抑制活性剤、緩和剤、親水性又は親油性活性剤、汚染及び/又はフリーラジカル除去剤、金属イオン封鎖剤、皮膜形成剤、皮膚収縮解消活性剤(dermo-decontracting active agent)、皮膚鎮静剤(soothing agent)、真皮又は表皮高分子の合成を刺激し、かつ/又はその分解を防止する薬剤、抗糖化剤(antiglycation agent)、刺激を除去する薬剤、鱗状化解消剤(desquamating agent)、色素沈着解消剤(depigmenting agent)、色素沈着抑制剤(antipigmenting agent)、色素沈着促進剤(propigmenting agent)、NO合成酵素阻害剤、線維芽細胞及び/若しくはケラチノサイトの増殖及び/又はケラチノサイトの分化を刺激する薬剤、微小循環に作用する薬剤、細胞のエネルギー代謝に作用する薬剤、ヒーリング剤(healing agent)、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0130】
本発明による組成物は、様々な形態、例えば、懸濁液、分散液、溶液、ゲル、水中油(O/W)、油中水(W/O)、及び多重(例えば、W/O/W、ポリオール/O/W、O/W/O)乳濁液等の乳濁液、クリーム、フォーム、スティック、小胞分散液、例えばイオン性及び/又は非イオン性脂質の分散液、二相及び多相ローション、スプレー、粉末、ペーストにすることができる。組成物は無水でもよく、例えば、無水のペースト又はスティックにすることができる。組成物は、洗い流さない組成物にしてもよい。
【0131】
一実施形態によれば、本発明による組成物は、液体又は固体の油性組成物や粉末状組成物等の無水組成物の形態でもよい。
【0132】
別の実施形態によれば、本発明による組成物は、例えば、コンパクトパウダー、ローション、セラム、乳液、クリーム、ベースファンデーション、化粧下地(undercoat)、メーキャップベースコート、ファンデーション、粉おしろい、頬紅、リップスティック、リップクリーム、アイシャドウ、アイライナー、ルースパウダー、コンシーラー、ネイルコート、マスカラ、日焼け止め等の形態にすることができる。
【0133】
当業者は、使用する成分の性質、例えば、成分の媒体への溶解性、及び組成物について構想される用途を考慮に入れながら、自身の一般知識に基づき、適切な処方並びにその調製方法を選択することができる。
【0134】
(実施例)
本発明について、実施例としてより詳細に述べるつもりであるが、しかし、本発明の範囲を限定しないものと解釈すべきである。
【0135】
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
日本の株式会社奈良機械製作所により市販されている、乾燥条件にある室中に複数の刃を有する高速ローターを備えたハイブリダイザーを使用して、表1に示す成分をハイブリダイザー法にかけて、複合顔料を得た。
【0136】
詳細には、製造例1〜4 (表1のP1〜P4)それぞれについて、表1に示す成分を、プラスチック製袋に入れて短時間手で振盪することにより、表1に示す混合比(表1の数字は重量部による)で混合した。製造例1〜4に従って手で振盪した後に得られた混合物を、それぞれ比較例1〜4と称する。得られた混合物をハイブリダイザーに投入し、ローターを8,000rpm (線速度100m/s)で5分間回転させた。ハイブリダイザー法にかけた後にこうして得られた複合顔料を、それぞれ実施例1〜4と称する。
【0137】
【表1】

マイカ1*: 合成マイカ
マイカ2*: ラウロイルリシンで被覆されている合成マイカ
マイカ3*: アクリルシリコーンで被覆されている合成マイカ
TiO2: 日本のテイカ株式会社により市販されているMT-100 TV
OMC: メトキシケイ皮酸エチルヘキシル
Mexoryl: ドロメトリゾールトリシロキサン
【0138】
[粒径変化の測定]
ハイブリダイザー法にかける前後の粒径の変化をMASTERSIZER 2000 (Malvern Industries Ltd.英国)によって測定した。ハイブリダイザー法にかける前の粒径は、手による振盪後にUV遮蔽剤が広がって芯粒子を覆っている「混合物」の粒径に相当する。
【0139】
結果を表2に示す。ハイブリダイザー法にかける前及び後の粒径は、それぞれ比較例1〜4及び実施例1〜4の粒径に相当する。
【0140】
【表2】

比率(%):(粒径[実施例])/(粒径[比較例])×100
【0141】
表2から、ハイブリダイザー法によって芯粒子が崩壊したために、各芯粒子の粒径が24〜36%縮小したことは明白である。
【0142】
実施例1〜4の粒径は、比較例1〜4の粒径より小さいので、実施例1〜4では、より滑らかな質感を得ることができる。
【0143】
TWCファンデーション
表3に示す成分を混合することにより、実施例1〜4のいずれか又は比較例1〜4のいずれかを含有する2ウェイケーキ(TWC)ファンデーションを調製した。
【0144】
【表3】

【0145】
[摩擦係数の決定]
トライボマスター type TL201Sa (株式会社トリニティーラボ、日本)を使用して、TWCファンデーションの摩擦係数(MIU)を測定した。
【0146】
トライボマスターの試験台上に両面テープで固定した合成革シートに、TWCファンデーション30mg〜50mgを置いた。先端が1cm×1cmの正方形である立方体型アルミニウムプローブも合成革シートで覆い、プローブを使用して、TWCファンデーションを1cm/秒の速度でまっすぐに2.0cmの距離に広げた。戻り行程を5回繰り返し、MIUは、往路及び復路それぞれで10セットのMIUデータからの平均とした。測定を3回繰り返し、得られた結果を平均した。
【0147】
結果を表4に示す。
【0148】
【表4】

比率(%):(摩擦係数[実施例])/(摩擦係数[比較例])×100
【0149】
表4から、実施例1〜4の複合顔料を含む化粧品は、比較例1〜4の混合物を含む化粧品より摩擦係数が低いことは明白である。
【0150】
したがって、本発明による複合顔料を含む化粧品では、当該複合顔料に対応する成分の単純な混合物を含む従来の化粧品より滑らかな使用感を得ることができる。
【0151】
[UVA及びUVB吸光度の決定]
V-550紫外可視分光光度計(日本分光、日本)を使用して、TWCファンデーションのUV波吸光度を以下のとおりに測定した。
【0152】
透明なプラスチックシート上に貼り付けた両面テープの10cm2の粘着性表面範囲上に、TWCファンデーション6.0mgを指で均等に広げた。TWCファンデーションを別の透明プラスチックシートで覆って、この粉末サンプルを間に挟んだ。この試験シートをV-550シートセルホルダーにセットし、吸光度を260nm〜400nmで測定した。0.6mg/cm2の粉末サンプルによる、260nm〜320nm及び320nm〜400nmの範囲での吸光度を平均したものを、それぞれUVB及びUVAの吸光度の値に使用した。
【0153】
結果を表5及び表6に示す。
【0154】
【表5】

比率(%):(UV吸光度[実施例])/(UV吸光度[比較例])×100
【0155】
【表6】

比率(%):(UV吸光度[実施例])/(UV吸光度[比較例])×100
【0156】
表5及び表6から、実施例1〜4の複合顔料を含む化粧品は、比較例1〜4の混合物を含む化粧品と比べて、特にUVB領域で、UV遮蔽効果がより良好又は同等(98%)であることは明白である。
【0157】
したがって、本発明による複合顔料を含む化粧品では、当該複合顔料に対応する成分の単純な混合物を含む従来の化粧品と同等又はそれより良好なUV遮蔽効果を得ることができる。これは、本発明による複合顔料上及び複合顔料中にUV遮蔽剤が程よく分散しているためであるといえる。
【0158】
(実施例5)
カオリンをラウロイルリシン板で置き換えるという条件で、実施例1による複合顔料の調製を繰り返した。
【0159】
得られた複合顔料を、Gaイオンビームで切断する前後に、FIB(集束イオンビーム)-SEMによって観察した。切断前後の複合顔料のSEM画像を、図1に、それぞれ図1(a)及び図1(b)として示す。
【0160】
実施例5による複合顔料は、UV遮蔽剤(TiO2)の一部を間に挟んでいる、芯としての複数のラウロイルリシン板を含むことが確認された。
【0161】
本発明による複合顔料は、図1に示すように、もはや厳密には板の形態ではないので、従来の板状複合顔料と比べて、肌への使用感をより良好にすることができる。
【0162】
(実施例6及び比較例6)
表7に示す成分を使用したことを除き、実施例1による複合顔料及び比較例1による混合物の調製を繰り返した。表7において、P6は、製造例6を意味する。得られた複合顔料及び混合物を、それぞれ実施例6及び比較例6と称した。
【0163】
【表7】

Ca(b): 塊形態のCaCO3、オーストラリアのOmyaにより市販されているOmyapure 35LM-OG
Red: レッド202
Mexoryl: ドロメトリゾールトリシロキサン
【0164】
リップスティック
表8にその成分を示す基剤を、三シリンダーローラーによって、着色顔料(レッド202)がリップスティックの0.1wt%となるような実施例6による複合顔料又は比較例6の混合物と90℃で混合することにより、リップスティックを調製した。
【0165】
【表8】

【0166】
[UVA及びUVB吸光度の決定]
V-550紫外可視分光光度計(日本分光、日本)を使用して、リップスティックについて各リップスティックのUV波吸光度を以下のとおりに測定した。
【0167】
透明プラスチックシートに貼り付けた両面テープによって囲まれた透明プラスチックシート上の4cm2の正方形範囲上に、リップスティック150mgを流し込んだ。リップスティックを別の透明プラスチックシートで覆ってこのペーストサンプルを間に挟み、試験シートを準備した。150mg/4cm2のペーストサンプルによる、260nm〜320nm及び320nm〜400nmの範囲での吸光度を平均したものを、それぞれUVB及びUVAの吸光度の値に使用した。結果を表9及び表10に示す。
【0168】
【表9】

比率(%):(UV吸光度[実施例6])/(UV吸光度[比較例6])×100
【0169】
【表10】

比率(%):(UV吸光度[実施例6])/(UV吸光度[比較例6])×100
【0170】
表9〜10から、実施例6の複合顔料を含む化粧品が、比較例6の混合物を含む化粧品と比べて、より高いUV吸光度を有することは明白である。
【0171】
したがって、本発明による複合顔料を含む化粧品では、当該複合顔料に対応する成分の単純な混合物を含む従来の化粧品と比べて、着色顔料からでさえも得られる、より良好なUV遮蔽効果を実現することができる。
【0172】
[色の測定]
DATACOLOR 600 (Applied Color Systems Inc.、米国)を使用して、実施例6及び比較例6によるリップスティックそれぞれの色(L*,a*,b*)を以下のとおりに測定した。
【0173】
アルミ皿(25mm(L)×23mm(W)×4mm(D))にリップスティック2.5gを流し込み、冷却してペーストを固めた。試験サンプルのL*、a*及びb*をペーストの上部から測定した。
【0174】
結果を表11〜13に示す。
【0175】
【表11】

【0176】
【表12】

【0177】
【表13】

【0178】
表11〜13から、実施例6の複合顔料を含む化粧品が、比較例6の混合物を含む化粧品と比べて有意に高いa*及びb*値を有することは明白である。
【0179】
したがって、本発明による複合顔料を含む化粧品では、当該複合顔料に対応する成分の単純な混合物を含む従来の化粧品と比べて、彩度のより高いより良質な色を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの板状基材と、当該板状基材間に少なくとも一部が配置されている少なくとも1種のUV遮蔽剤とからなる積層体を含む複合顔料。
【請求項2】
板状基材が少なくとも5のアスペクト比を有する、請求項1に記載の複合顔料。
【請求項3】
板状基材が0.3μm〜30μmの範囲の長さである、請求項1又は2に記載の複合顔料。
【請求項4】
少なくとも1種のUV遮蔽剤が、厚さ0.03μm〜10μmの層の形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合顔料。
【請求項5】
複合顔料が0.2μm〜25μmの厚さである、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合顔料。
【請求項6】
板状基材が少なくとも1種の無機材料及び/又は少なくとも1種の有機材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合顔料。
【請求項7】
無機材料が、天然マイカ、合成マイカ、セリサイト、カオリン、タルク、粘土鉱物、ハイドロタルサイト、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、シリカ、ケイ酸塩、酸化亜鉛、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、オキシ塩化ビスマス、ガラスフレーク、及び、これらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項6に記載の複合顔料。
【請求項8】
有機材料が、(メタ)アクリレート、ポリアミド、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクタム、ポリ(ブチレン)スクシネート、多糖類、ポリペプチド、ポリビニルアルコール、ポリビニル樹脂、フルオロポリマー、蝋、アミドスルホン酸多価金属塩、アシル化アミノ酸、及び、これらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項6又は7に記載の複合顔料。
【請求項9】
少なくとも1種のUV遮蔽剤が有機又は無機である、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合顔料。
【請求項10】
少なくとも1種のUV遮蔽剤が、アントラニル酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、ベンゾフェノン誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロン酸誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾリン誘導体、ビス-ベンゾアゾリル誘導体、p-アミノ安息香酸(PABA)及びその誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、遮蔽ポリマー及び遮蔽シリコーン、α-アルキルスチレン由来ダイマー、4,4-ジアリールブタジエン、オクトクリレン及びその誘導体、グアイアズレン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、フラボノイド、ビフラボノイド、オリザノール及びその誘導体、キナ酸及びその誘導体、フェノール、レチノール、システイン、芳香族アミノ酸、芳香族アミノ酸残基含有ペプチド、並びに、これらの混合物からなる群から選択される有機遮蔽剤を含む、請求項9に記載の複合顔料。
【請求項11】
少なくとも1種のUV遮蔽剤が、炭化ケイ素、被覆又は非被覆金属酸化物、及び、これらの混合物からなる群から選択される無機UV遮蔽剤を含む、請求項9又は10に記載の複合顔料。
【請求項12】
前記基材対少なくとも1種のUV遮蔽剤の重量比が100:1〜100:500である、請求項1から11のいずれか一項に記載の複合顔料。
【請求項13】
少なくとも1種の着色顔料をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の複合顔料。
【請求項14】
複数の板状基材と、少なくとも1種のUV遮蔽剤と、場合により着色顔料とをハイブリダイザー法にかけるステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の複合顔料の調製方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の複合顔料又は請求項14に記載の方法によって調製した複合顔料を含む化粧品組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−501079(P2013−501079A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506023(P2012−506023)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【国際出願番号】PCT/JP2009/064088
【国際公開番号】WO2011/016140
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】