説明

複屈折パターンを有する物品の製造方法及び複屈折パターン作製材料

【課題】コレステリック構造を用いた複屈折パターンを有する物品を、配向、パターニングの工程において効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む、複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[1]少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を製造する工程であって、少なくとも2つの反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って、重合固定化した高分子化合物を含んでなる前記光学異方性層を形成する、複屈折パターン作製材料を作製する工程;
[2]前記複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]前記工程[2]の後に得られる積層体を50℃以上400℃以下でベークする工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偽造防止手段や光学素子などとして用いることのできる複屈折パターンを有する物品の製造方法と、これに用いる複屈折パターン作製材料に関する。
【背景技術】
【0002】
光学異方性を用いた特殊画像は真贋識別等のための媒体として、例えば有価証券、クレジットカード類、書類等に用いられている。これらの用途においてはさらなる偽造防止性や意匠性の向上が望まれている。
光学異方性を用いて画像の視認状態や画像そのものの状態に影響を与える技術のひとつとして、コレステリック液晶を識別媒体に用い、その反射光を目視または光学機器により検出するものがある。
コレステリック液晶は、連続的であるが、多層構造として想定した場合、分子長軸方向が互いに平行であり、かつ層面に平行である。各層は少しずつ回転して重なっており、立体的にスパイラル構造をとる。この構造によってコレステリック液晶は、特定の色(波長)を選択的に反射する性質を持つ。すなわち、スパイラル構造の方向因子が360°回転して元に戻るまでの距離であるコレステリックピッチpと、各層内の平均屈折率nとから、λ=n・pとして求められる波長λの円偏光に対して選択的に反射する特徴を有する。
この特徴により、コレステリック液晶は独特の美しい色を呈する。また、コレステリック液晶の選択反射を使って得られた画像は通常状態で知覚される画像が所定の操作(フィルタを重ねる、傾けるなど)で所定の変化を示す。
【0003】
低分子のコレステリック液晶はコレステリックピッチが温度により変化するが、高分子のものは温度にかかわらず特定の波長の円偏光を選択反射する。このため、従来の識別媒体には高分子コレステリック液晶が用いられている。高分子コレステリック液晶を用いた識別媒体として、例えば、特許文献1に記載された偽造防止用カードがあるが、高分子液晶は配向に時間がかかるという問題点があった。また、この偽造防止用カードの製造では、配向したコレステリック材料を急冷して固定化しているため、耐熱性にも課題があった。さらに特許文献1に記載の偽造防止用カードはパターンを有していないため、意匠性等の面で不十分であった。
【0004】
特許文献2に記載の識別媒体では、エッチング、パターン状熱処理、またはレーザー加工で高分子コレステリック液晶をパターニングしている。しかし、エッチングによるパターニングは基材について制約を受ける。パターン状熱処理はパターンの解像度に限界がある。また、レーザー加工は処理速度に限界がある。
これらの点から、高分子コレステリック液晶を用いた識別媒体の製造において、効率よく広い面積のパターンを作れる新しい技術が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−51193号公報
【特許文献2】特開2002−127647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コレステリック構造を用いた複屈折パターンを有する物品を、配向、パターニングの工程において効率よく製造する方法と、それに用いる複屈折パターン作製材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の手段により達成された。
(1)少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む、複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[1]少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を製造する工程であって、少なくとも2つの反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って、重合固定化した高分子化合物を含んでなる前記光学異方性層を形成する、複屈折パターン作製材料を作製する工程;
[2]前記複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]前記工程[2]の後に得られる積層体を50℃以上400℃以下でベークする工程。
(2)前記光学異方性層がコレステリック構造に起因する特性反射を示し、特性反射のピーク波長が50nm以上3000nm以下であり、かつ、ピーク反射率が2%以上100%以下であることを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)前記特性反射のピーク波長が300nm以上1600nm以下であることを特徴とする(2)に記載の製造方法。
(4)前記光学異方性層のコレステリックピッチが100nm以上2000nm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)前記光学異方性層が特性反射消失温度を20℃より高い温度域に有する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
(6)前記工程[3]が前記特性反射消失温度以上で行われる(5)に記載の製造方法。
(7)前記高分子化合物が未反応の反応性基を有する(1)〜(6)のいずれか1項に記載の製造方法。
(8)前記棒状液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する(1)〜(7)のいずれか1項に記載の製造方法。
(9)前記棒状液晶性化合物が少なくともラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基とを有する(8)に記載の製造方法。
(10)前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性の反応基がビニルエーテル基、オキセタン基およびエポキシ基から選ばれる基である(9)に記載の製造方法。
(11)前記カイラル剤の前記組成物中の対固形分濃度が0.5質量%以上20質量%以下である(1)〜(10)のいずれか1項に記載の製造方法。
(12)前記カイラル剤のうちの少なくとも1種が少なくとも1つの反応性基を有する(1)〜(11)のいずれか1項に記載の製造方法。
(13)前記光学異方性層が重合固定化された後に改質されたものである(1)〜(12)のいずれか1項に記載の製造方法。
(14)前記改質が少なくとも1種の追加添加剤を含む溶液の接触または浸透の形で行われる(13)に記載の製造方法。
(15)前記追加添加剤の少なくとも1種が光重合開始剤であることを特徴とする(14)に記載の製造方法。
(16)前記改質が前記光学異方性層の上に別の機能性層を積層する工程に付随して行われる(13)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法。
(17)前記工程[1]が、記工程[1]が、重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って重合固定化した高分子化合物を含んでなる少なくとも1層の光学異方性層を含む転写材料を、被転写材料上に転写することにより行われる(1)〜(16)のいずれか1項に記載の製造方法。
(18)前記転写材料が仮支持体の上に少なくとも[A]光学異方性層と[B]転写接着層を、この順で積層したものである(17)に記載の製造方法。
(19)(1)〜(18)のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、偽造防止手段として用いられる物品。
(20)(1)〜(18)のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、光学素子。
(21)重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って重合固定化した高分子化合物を含んでなる少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料。
なお、本発明における「特性反射消失温度」とは、特性反射のピーク反射率が20℃におけるピーク反射率の30%以下となる温度をいう。
また、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、偽造防止効果や視覚的効果付与などが高い、コレステリック構造を利用した複屈折パターンを有する物品を効率よく製造できる。本発明においては低分子状態の液晶化合物を配向させた後に高分子化するため、コレステリック構造を有する光学異方性層の作製において短時間で秩序良く配向したコレステリック液晶相を形成させることができる。また、パターニングをパターン露光によって行うため、エッチングで用いることのできなかった支持体も用いることができ、解像度、処理速度も優れる。本発明の製造方法により製造される物品は、偽造防止手段や光学素子として有用である。
本発明の複屈折パターン作製材料は、コレステリック液晶相を形成させ重合固定化した高分子化合物を含んでなる光学異方性層を有し、効率よく製造できるうえ、パターン露光によってパターニングが行える。また、重合固定化を熱処理等によって行うため、耐熱性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の複屈折パターン作製材料の層構成の例の概略断面図である。
【図2】転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料の例の概略断面図である。
【図3】本発明の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品の例の概略断面図である。
【図4】実施例5で用いた3枚のフォトマスクのそれぞれの形状を示す図である。
【図5】実施例5で作製されたサンプルにおける、異なる色の特性反射を示す領域を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[複屈折パターン作製材料]
図1は複屈折パターン作製材料のいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製するための材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターンを有する物品を作成することができる材料である。図1(a)に示す複屈折パターン作製材料は支持体(基板)11上に光学異方性層12を有する例である。図1(b)に示す複屈折パターン作製材料は配向層13を有する例である。配向層13は、光学異方性層12として棒状液晶性化合物とカイラル剤を含む組成物(塗布液)を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、熱または放射線照射によって重合固定化したものを用いる場合に、液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
【0011】
図1(c)に示す複屈折パターン作製材料はさらに複屈折パターン作成後に別の物品の上に貼り付けるために支持体の下に後粘着層16と剥離層17を有する例である。図1(d)に示す複屈折パターン作製材料は転写材料を用いて作られたために支持体11と光学異方性層12の間に転写接着層14を有する例である。図1(e)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数(12F、12S)有する例である。図1(f)に示す複屈折パターン作製材料はさらにパターン作成後に別の物品の上に貼り付けるために後粘着層16と剥離層17を有する例である。
【0012】
[転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料]
図2は転写材料として用いられる本発明の複屈折パターン作製材料のいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターン作製材料を転写材料として用いることによって、所望の支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料、複数の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料、または複屈折パターンを有する層を複数有する物品の作製を容易に行うことができる。
【0013】
図2(a)に示す複屈折パターン作製材料は仮支持体21上に光学異方性層12を有する例である。図2(b)に示す複屈折パターン作製材料はさらに光学異方性層12の上に転写接着層14を有する例である。図2(c)に示す複屈折パターン作製用材料はさらに転写接着層14の上に表面保護層18を有する例である。図2(d)に示す複屈折パターン作製材料はさらに仮支持体21と光学異方性層12の間に仮支持体上配向層22を有する例である。図2(e)に示す複屈折パターン作製材料はさらに仮支持体21と仮支持体上配向層22の間に力学特性制御層23を有する例である。図2(f)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数(12F、12S)有する例である。
【0014】
[複屈折パターンを有する物品]
図3は複屈折パターン作製材料を用いた製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品のいくつかの例の概略断面図である。本発明の方法により得られる複屈折パターンを有する物品は少なくとも一層のパターン化光学異方性層112を有する。本明細書において「パターン化光学異方性層」とは「複屈折性が異なる領域を2つ以上有する光学異方性層」を意味する。なお、「複屈折性が異なる」場合として「一方が複屈折性を有し、他方が複屈折性を有していない(光学的に等方な領域である)」場合を含む。複屈折性が同一である領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。また各領域の複屈折性が異なる結果として、各領域の示す特性反射のピーク反射率および/もしくはピーク波長が異なることが好ましい。
【0015】
図3(a)に示す複屈折パターンを有する物品はパターン化光学異方性層112のみからなる例である。本発明の製造方法により作製される複屈折パターンを有する物品は、互いに異なる露光条件で露光された(パターン露光が施された)複数の露光部(図3(a)においては第1露光部112−Aと第2露光部112−B)を有し、かつそれらの“互いに異なる露光条件で露光された複数の露光部”は異なる複屈折性を有する。図3(b)に示す複屈折パターンを有する物品は異なる露光条件で露光された複数の露光部(第1露光部112−Aおよび第2露光部112−B)の他に未露光部112−Nを有する例である。この場合、未露光部112−Nはいずれの露光部とも異なる複屈折性を有する。図3(c)に示す複屈折パターンを有する物品は支持体11上に支持体側から順に反射層35、転写接着層14およびパターン化光学異方性層112を有する例である。
【0016】
複屈折パターンを有する物品はパターン化光学異方性層を複数層有していてもよく、光学異方性層を複数有することによってはさらに多彩な機能を発揮することができる。図3(d)に示す複屈折パターンを有する物品は光学異方性層を複数層積層した後にパターン露光を行った例である。このような例は例えばそれぞれの光学異方性層の有するコレステリック色を混合した色の反射を有するパターンを作製するのに有用である。図3(e)に示す複屈折パターンを有する物品は「光学異方性層形成(転写含む)→パターン露光→ベーク」の工程を複数回繰り返して複数の光学異方性層に互いに独立したパターンを与えた例である。例えば特性反射色の異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えて多種の特性反射色を含む画像を形成する時に有用な例である。
【0017】
以下、複屈折パターン作製材料、それを用いた複屈折パターンを有する物品の製造方法および複屈折パターンを有する物品の材料、作製方法等について、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0018】
[光学異方性層]
本発明の複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、コレステリック構造に由来する複屈折性を有し、その結果としてコレステリックピッチpと、各層内の平均屈折率nとから、λ=n・pとして求められる波長λの円偏光に対して選択的な反射(特性反射)を示す層である。
【0019】
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は高分子化合物を含む。高分子化合物を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。該光学異方性層中の高分子化合物は未反応の反応性基を有することが好ましい。光学異方性層は加熱によりその特性反射のピーク反射率および/もしくはピーク波長が変化する(特に特性反射消失温度を有する場合には顕著なピーク反射率の低下を示す)が、あらかじめ露光を行い未反応の反応性基を反応させることで加熱時の特性反射のピーク反射率および/もしくはピーク波長の変化の程度を制御することが可能になり、さらにこの際にパターン状の露光を行うことで特性反射のピーク反射率および/もしくはピーク波長の変化をパターン状に制御することができる。
このように適宜に露光や加熱の処理を組み合わせることにより、本発明の複屈折パターン作製材料における光学異方性層に効率良く光学異方性のパターンを描くことが可能である。
本発明の複屈折パターン作製材料の光学異方性層における高分子化合物とは、多数の原子が結合してできる巨大分子のことを指し、例えば分子量が3000以上である化合物をいう。具体的にはアクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、あるいはこれらの共重合体などがあげられる。またこれらの高分子中には様々なモノマーが共重合されていても良い。こうしたモノマーの例としては、カルボン酸末端アクリルモノマー、液晶性アクリルモノマーなどがあげられる。(未反応の)反応性基としてはビニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、オキセタニル基などがあげられる。この高分子化合物の光学異方性層における含有量は、好ましくは5〜99質量%、さらに好ましくは10〜95質量%である。
【0020】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
他の機能性層の塗布を行うため、本発明における光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後の特性反射のピーク反射率が浸漬前のピーク反射率の30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルの中から、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンの中から、最も好ましくはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
【0021】
本発明における光学異方性層は、コレステリック構造に起因する特性反射を示し、そのピーク波長が50〜3000nm、かつ、ピーク反射率が2〜100%であることが好ましい。このようなピーク波長及びピーク反射率を有する光学異方性層とすることにより特性反射が赤外光、可視光あるいは紫外光として観測され、認証や装飾、あるいは通信などの用途に利用することができる。ピーク波長は、300〜1600nmであることがより好ましい。
また、光学異方性層のコレステリックピッチが100〜2000nmであることが好ましく、150〜1200nmであることがより好ましい。このようなコレステリックピッチを有することにより300〜1600nm付近にピーク波長を有する光学異方性層とすることができる。
さらに光学異方性層が特性反射消失温度を有し、該特性反射消失温度が20℃以上であることが好ましく、40〜245℃がより好ましく、80〜240℃であることがさらに好ましい。このような温度域に特性反射消失温度を有することで、パターニングの工程の効率を大きく損なうことなく、耐久性あるパターンを製造することができる。
【0022】
本発明における光学異方性層は、少なくとも2つの反応性基を有する棒状液晶性化合物とカイラル剤を含んでなる組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、熱または放射線照射によって重合固定化して形成される。
また、後述するように、本発明における光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.2〜10μmであることがさらに好ましい。
【0023】
[棒状液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、コレステリック液晶相を形成させたのちに重合固定化するため、低分子の棒状液晶性化合物を用いる。温度変化や湿度変化を小さくできることから本発明においては1液晶分子中の反応性基が2以上ある化合物を用いる。棒状液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよい。
【0024】
棒状液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することも好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子化合物を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる照射光の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0025】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。特に好ましく用いられる上記低分子の少なくとも2つの反応性基を有する棒状液晶性化合物は、下記一般式(I)で表される。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。本明細書においてEtはエチル基、Prはプロピル基を表す。
【0026】
【化1】

【0027】
1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、およびNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q1−L1およびQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−およびCH2=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0028】
1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記
一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5n−W2
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、および−O−CH2−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0029】
1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0030】
【化2】

【0031】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定され
るものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号
公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
光学異方性層は、少なくとも2つの反応性基を有する棒状液晶性化合物と後述するカイラル剤を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する支持体の表面に塗布して乾燥させ、コレステリック液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は放射線照射により固定することで作製される。
【0039】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されない。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。例えば、特性反射のピーク波長等が異なる光学異方性層を積層することができる。
【0040】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記のカイラル剤、重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する支持体の上に塗布することで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0041】
[カイラル剤]
棒状液晶性化合物と光学活性化合物(カイラル剤)とを混合することによりコレステリック液晶性組成物が得られる。光学活性化合物としては公知のカイラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)を用いることができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。カイラル剤は、重合性基(反応性基)を有していてもよい。カイラル剤が重合性基を有する場合は、棒状液晶性化合物の重合反応により、棒状液晶性繰り返し単位と光学活性構造とを有するポリマーを形成することができる。カイラル剤の重合性基は、棒状液晶性化合物の重合性基(反応性基)と同様の基であることが好ましい。
カイラル剤の使用量は、液晶性化合物を含む組成物(塗布液)中の対固形分濃度で0.5〜20質量%が好ましく、1.5〜16.0質量%がより好ましい。
【0042】
[棒状液晶性化合物の配向状態の固定化]
配向させた棒状液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、加熱または放射線照射により、棒状液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施する。ここでいう放射線とは電波、光(赤外光、可視光、紫外光)、エックス線、ガンマ線などの電磁波と電子線(ベータ線)、陽子線、中性子線、アルファ線、イオン線などの粒子線の総称である。固定化に当たってはいずれの手段を用いても良いが、加熱、電波照射、光照射もしくは電子線照射を用いるのが好ましく、光照射もしくは電子線照射を用いるのがより好ましく、紫外線照射を用いるのが特に好ましい。なお、特に加熱を用いた重合反応は「熱重合反応」、光照射を用いた重合反応は「光重合反応」と呼ばれる。本明細書でもこの呼称を用いる。
重合反応に際しては、重合反応を促進するために開始剤を用いても良い。重合開始剤としては特に限定されないが例えば熱重合開始剤や光重合開始剤などがあげられる。前者は熱重合反応において、後者は光重合反応において用いられる。
光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などがあげられるが、ラジカル重合もしくはカチオン重合が好ましい。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示することができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0043】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0044】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する棒状液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、棒状液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する棒状液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0045】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0046】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜1J/cm2であることが好ましく、10〜800mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜800mW/cm2であることが好ましく、10〜500mW/cm2であることがより好ましく、20〜350mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0047】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、棒状液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0048】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、棒状液晶性化合物の分子が垂直方向に配向しようとするのを防ぐことができる。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
【0049】
【化9】

【0050】
式中、R1、R2およびR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2およびX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基またはフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2およびX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−およびSO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0051】
【化10】

【0052】
式中、R10は置換基を表し、m1は0〜5の整数を表す。m1が2以上の整数を表す場合、複数個のR10は同一でも異なっていてもよい。R10として好ましい置換基は、R1、R2、およびR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同じである。m1は、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0053】
【化11】

【0054】
式中、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8およびR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(1)におけるR1、R2およびR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−99248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0055】
【化12】

【0056】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、m2は1以上6以下の整数、n2は1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0057】
[光学異方性の後処理(改質)]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上のためのコロナ処理や、柔軟性向上のための可塑剤添加、保存性向上のための熱重合禁止剤添加、反応性向上のためのカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する追加添加剤を含む溶液に接触または浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する追加添加剤を含む溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の機能性層を積層する際にその層の塗布液に追加添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬(拡散)させる方法もあげられる。本発明においては、この際に接触または浸漬させる追加添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域の特性反射のピーク波長やピーク反射率等との関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0058】
[複屈折パターン作製材料]
複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製するための材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターンを得ることができる材料である。複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、反射層、後粘着層、光吸収層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、転写接着層、または力学特性制御層を有していてもよい。
【0059】
[支持体]
複屈折パターン作製材料は力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料に用いられる支持体には特に限定はなく、剛直なものでもフレキシブルなものでもよい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。
【0060】
[配向層]
光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に位置する棒状液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。コレステリック液晶相において配向層の存在は必須ではないが、配向層の存在で面内の配向方向が揃えられることにより配向方向の異なる微小領域(ドメイン)の形成が抑えられ、結果としてヘイズの少ない光学異方性層が得られる。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0061】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0062】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いることがより好ましく、かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(商品名、昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0063】
また、液晶ディスプレイ(LCD)で配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等、いずれも商品名)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0064】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0065】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiO2を代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0066】
[配向層を兼ねる支持体]
配向層を機能させるためには、支持体上に配向層を形成し、その表面をラビング処理する方法が一般的である。しかし、塗布液と支持体の組み合わせによっては、支持体を直接ラビングして利用することも可能である。このような支持体としては、後述の配向層に好ましく用いられる有機化合物、特にポリマーを主成分とする支持体が上げられる。このような支持体としては、PETフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
【0067】
[凹凸配向層]
液晶の配向層としては、ラビングや電離線配向を行った膜だけでなく、小さな凹凸をつけた膜を用いることもできる。
凹部形成領域には、様々な構造を採用することができる。例えば、凹部形成領域には、複数の溝を幅方向に等間隔で平行に並べた構造を採用することができる。
【0068】
これら溝は、互いに平行でなくてもよいが、これらの溝が平行に近いほど、液晶分子又はそれらのメソゲン基の長軸が揃い易くなる。これらの溝が為す角度は、例えば5°以下とし、典型的には3°以下とする。
【0069】
これら溝は、縦横に並べてもよい。また、溝の長さは、互いに等しくてもよく、互いに異なっていてもよい。また、長さ方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。さらに、幅方向に隣り合う溝間の距離は均一であってもよく、不均一であってもよい。また、凹部形成領域の各々には、互いに長さが等しい溝を縦横に並べてもよい。或いは、様々な長さの溝をランダムに並べてもよい。
【0070】
溝を略平行とし且つピッチを適宜設定することなどにより、これら溝で回折格子を構成することができる。
【0071】
凹部形成層(凹凸配向層)は、例えば、感光性樹脂材料に、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法や、電子ビームによってパターンを描画する方法により形成することができる。或いは、表面レリーフ型ホログラムの製造で行われているように、微細な線状の凸部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、凹部形成層は、基材上に形成された熱可塑性樹脂層に、線状の凸部が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。
或いは、凹部形成層は、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0072】
これらの方法によれば、1つの面内に溝の長さ方向が異なる複数の凹部形成領域を形成することができる。また、これらの方法によると、1つの面内に溝の深さ、幅、及び/又は溝などが異なる複数の凹部形成領域を形成することもできる。
【0073】
先の原版は、例えば、二光束干渉法を用いてホログラムパターンを記録する方法、電子ビームによってパターンを描画する方法、又はバイトによって切削する方法により得られた母型の電鋳を行うことにより得られる。凹部形成層に上記のような多様性をもたせない場合は、ラビング加工により溝を形成してもよい。
【0074】
これら溝の深さは、例えば、0.05μm乃至1μmの範囲とする。また、溝の長さは、例えば、0.5μm以上とする。溝のピッチは、例えば0.1μm以上であり、典型的には0.75μm以上である。又、溝のピッチは、例えば10μm以下であり、典型的には2μm以下である。液晶分子又はそのメソゲン基を高い秩序度で配向させるには、溝のピッチは小さいことが有利である。
【0075】
[反射層]
複屈折パターン作製材料は、反射層を有していてもよい。反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。
【0076】
[後粘着層]
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための後粘着層を有していてもよい。後粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製のためのベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。
[光吸収層]
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層による特性反射光がより容易に識別できるように、光学異方性層よりも非視認側(支持体側)に光吸収層を有していてもよい。光吸収層としては特に限定されないが、例えばカーボンブラックを分散したアクリルポリマー層などが挙げられる。
【0077】
[2層以上の光学異方性層]
本発明の複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。この場合、2層以上の光学異方性層のうち少なくとも1層はコレステリック構造を有したものである必要があるが、他の層はコレステリック構造を有したものでも、有さないものでも良い。コレステリック構造を有する光学異方性層を2層以上有する場合、光学異方性層はコレステリックピッチや特性反射のピーク波長、ピーク反射率、あるいは特性反射消失温度において、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0078】
[複屈折パターン作製材料の作製方法]
本発明において複屈折パターン作製材料の作製は、上記の少なくとも2つの反応性基を有する棒状液晶化合物とカイラル剤とを含む組成物(塗布液)を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って、重合固定化された高分子化合物を含んでなる、光学異方性層を少なくとも1層形成することで行われる。この光学異方性層は、前記組成物を支持体上に直接、あるいは他の層を積層した上に塗布して形成することができる。塗布方法は、後述する転写材料における各層の塗布で採用しうる方法と同様である。乾燥に適した条件は使用する棒状液晶化合物、塗布液溶媒等によっても異なるが、膜面温度40〜140℃とし、5〜180秒行うのが好ましい。
あるいは、あらかじめ転写材料中に作成しておいた光学異方性層を転写して形成することもできる。以下に、光学異方性層を転写させるための転写材料について説明する。なお、そのような転写材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という。
転写材料は、仮支持体上に、少なくとも[A]光学異方性層と[B]転写接着層を、この順で積層したものであることが好ましい。転写材料における光学異方性層の形成は、上記と同様の組成物(塗布液)の塗布乾燥後、加熱または放射線照射による重合固定化で行える。
【0079】
[仮支持体]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(商品名、JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、いずれも商品名、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0080】
[転写用接着層]
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板等に用いられる場合に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。
【0081】
粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0082】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0083】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0084】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0085】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、ポジ型でもネガ型でもよく特に限定はなく、市販のレジスト材料を用いることもできる。転写接着層として用いられる場合、光照射によって接着性を発現することが好ましい。また、液晶表示装置用基板等の物品の製造工程における環境上や防爆上の問題から、有機溶剤が5%以下の水系現像であることが好ましく、アルカリ現像であることが特に好ましい。また、感光性樹脂層は少なくとも(1)ポリマーと、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。
【0086】
以下、これら(1)〜(3)の成分について説明する。
(1)ポリマー
ポリマー(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーからなるアルカリ可溶性樹脂が好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報および特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜70質量%が一般的であり、25〜65質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。
【0087】
(2)モノマー又はオリゴマー
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマーおよびオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報および特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報および特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、着色樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0088】
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
【0089】
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0090】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。前記界面活性剤は、感光性樹脂組成物と混ざり合うものであれば使用可能である。本発明に用いる好ましい界面活性剤としては、特開2003−337424号公報[0090]〜[0091]、特開2003−177522号公報[0092]〜[0093]、特開2003−177523号公報[0094]〜[0095]、特開2003−177521号公報[0096]〜[0097]、特開2003−177519号公報[0098]〜[0099]、特開2003−177520号公報[0100]〜[0101]、特開平11−133600号公報の[0102]〜[0103]、特開平6−16684号公報の発明として開示されている界面活性剤が好適なものとして挙げられる。より高い効果を得るためにはフッ素系界面活性剤、および/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤、フッソ原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましく、フッ素系界面活性剤が最も好ましい。フッ素系界面活性剤を用いる場合、該界面活性剤分子中のフッ素含有置換基のフッ素原子数は1〜38が好ましく、5〜25がより好ましく、7〜20が最も好ましい。フッ素原子数が多すぎるとフッ素を含まない通常の溶媒に対する溶解性が落ちる点で好ましくない。フッ素原子数が少なすぎると、ムラの改善効果が得られない点で好ましくない。
特に好ましい界面活性剤として、下記一般式(a)および、一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有するものが挙げられる。
【0091】
【化13】

【0092】
式中、R11、R12およびR13はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R14は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜18の整数、mは2〜14の整数を示す。p、qは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも同時に0になる場合は含まない。
【0093】
特に好ましい界面活性剤の一般式(a)で表されるモノマーをモノマー(a)、一般式(b)で表されるモノマーをモノマー(b)と記す。一般式(a)に示すCm2m+1は、直鎖でも分岐鎖でもよい。mは2〜14の整数を示し、好ましくは4〜12の整数である。Cm2m+1の含有量は、モノマー(a)に対して20〜70質量%が好ましく、特に好ましくは40〜60質量%である。R1は水素原子またはメチル基を示す。またnは1〜18を示し、中でも2〜10が好ましい。一般式(b)に示すR2およびR3は、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。pおよびqは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも0は含まない。pおよびqは好ましくは2〜8である。
【0094】
また、特に好ましい界面活性剤1分子中に含まれるモノマー(a)としては、互いに同じ構造のものでも、上記定義範囲で異なる構造のものを用いてもよい。このことは、モノマー(b)についても同様である。
特に好ましい界面活性剤の質量平均分子量Mwは、1000〜40000が好ましく、更には5000〜20000がより好ましい。界面活性剤は前記一般式(a)および一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有することを特徴とする。特に好ましい界面活性剤100質量部は、モノマー(a)が20〜60質量部、モノマー(b)が80〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましく、更には、モノマー(a)が25〜60質量部、モノマー(b)が60〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましい。
【0095】
モノマー(a)および(b)以外の共重合可能なモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、アミノスチレン等のスチレンおよびその誘導体、置換体、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、スチレンスルホン酸無水マレイン酸、ケイ皮酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体等が挙げられる。
特に好ましい界面活性剤は、モノマー(a)、モノマー(b)等の共重合体であるが、そのモノマー配列は特に制限はなくランダムでも規則的、例えば、ブロックでもグラフトでもよい。更に、特に好ましい界面活性剤は、分子構造および/又はモノマー組成の異なるものを2以上混合して用いることができる。
前記界面活性剤の含有量としては、感光性樹脂層の層全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、特に0.1〜7質量%が好ましい。界面活性剤は、特定構造の界面活性剤とエチレンオキサイド基、およびポリプロピレンオキサイド基とを所定量含有するもので、感光性樹脂層に特定範囲で含有することにより該感光性樹脂層を備えた液晶表示装置の表示ムラが改善される。全固形分に対して0.01質量%未満であると、表示ムラが改善されず、10質量%を超えると、表示ムラ改善の効果があまり現れない。上記の特に好ましい界面活性剤を前記感光性樹脂層中に含有させカラーフィルタを作製すると、表示ムラが改良される点で好ましい。
【0096】
好ましいフッ素系界面活性剤の具体例としては、特開2004−163610号公報の段落番号[0054]〜[0063]に記載の化合物が挙げられる。また、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(商品名、新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(商品名、住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(商品名、大日本インキ(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(商品名、旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(商品名、信越化学工業(株)製)、トロイゾルS−366(商品名、トロイケミカル(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。本発明においては、一般式(a)で表されるモノマーを含まないフッ素系界面活性剤である、特開2004−331812号公報の段落番号[0046]〜[0052]に記載の化合物を用いることも好ましい。
【0097】
[力学特性制御層]
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0098】
[剥離層]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層や力学特性制御層などが剥離層としての機能を有してもよい。
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0099】
[表面保護層]
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために薄い表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず、仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、隣接する層(例えば転写接着層)から容易に分離されねばならない。表面保護層の材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0100】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0101】
[転写材料を被転写材料上に転写する方法]
転写材料を支持体(基板)等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、被転写材料上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は(多層)複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0102】
[転写に伴う工程]
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0103】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層と新たに転写する転写材料の光学異方性層との配向状態が同じであっても異なっていてもよい。複数層の光学異方性層を転写することは特殊な複屈折パターン(例えば多種の反射色を有するパターンなど)の作製などに有用である。
【0104】
[複屈折パターンを有する物品の製造]
上記のようにして複屈折パターン作製材料を作製(工程[1])した後、少なくとも、以下の工程[2]、[3]をこの順に行うことにより、複屈折パターンを有する物品を製造することができる。
[2]前記複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]前記工程[2]の後に得られる積層体を50℃以上400℃以下でベークする工程。
この方法は、複屈折パターン作製材料の一部あるいは全部の領域にパターン露光を行って該当領域を硬化させて耐熱性を高め、その後に加熱(ベーク)を行うことで各領域の露光量の有無もしくは大小に応じて複屈折性を低下させ(露光量が少なかった領域ほど低下巾が大きい)、複屈折性の差を生じさせて複屈折パターンを有する物品を作製するものである。
【0105】
[パターン露光]
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光を意味する。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。
前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。
【0106】
[パターン露光時の露光条件]
本発明の製造方法において、複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光(パターン露光)を行ってもよい。2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行うことにより、最終的に得られるパターンにおいてそれぞれの領域の複屈折性に細かい差異をつけることが可能となる。このときの「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。
【0107】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なる特性反射を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望の特性反射を示す複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0108】
[マスク露光]
露光条件の異なる露光領域を生じる手段として、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の元で同一時間の露光を行うことで異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
またレーザーなどを用いた走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能である。
【0109】
また、複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行う手法を併用してもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常特性反射を示さない)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域(通常1層目の光学異方性層の特性反射の色を示す)、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常2層の光学異方性層のそれぞれの特性反射を混合した色を示す)でベーク後の特性反射の色を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、多種の反射色を持たせたい時に有用である。
【0110】
[加熱(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。
また、本発明においてベークは、未露光部分の光学異方性層の特性反射消失温度以上の温度で行うことが好ましい。これにより未露光部分の特性反射のピーク反射率が著しく低下し、露光部との間で容易に識別できる。
【0111】
[後処理(有機色素の漂白)]
光学異方性層に有機色素を用いた場合、有機色素の色が残ることがあり、必要に応じ、これを後処理で漂白することができる。例えば、あらかじめホウ素化合物を過剰に添加しておき、全面露光によってホウ素化合物からラジカルを発生させ、これによって色素を分解させて漂白することができる。この方法は加温しながら行うと、より効果的である。また、漂白に用いる波長とパターン露光波長に用いる波長が近い場合はこの処理はベーク後に行うことが好ましい。
【0112】
[仕上げ熱処理]
前節までの工程で作製された複屈折パターンの安定性をさらに高めたい場合、固定化された後にまだ残存している未反応の反応性基をさらに反応させて耐久性を増したり、材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除いたりする目的のために仕上げ熱処理を行ってもよい。仕上げ熱処理の温度としては180〜300℃程度の加熱を行えばよく、190〜260℃がより好ましく、200〜240℃がさらに好ましい。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0113】
[複屈折パターンに積層される機能性層]
複屈折パターン作製材料に、上述のようにパターン露光及びベークを行って複屈折性パターンを作製した後に、さらに様々な機能を持った機能性層を積層し、複屈折パターンを有する物品としてもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば表面の傷つきを防止するハードコート層や、複屈折パターンの視認を容易にする光吸収層などがあげられる。
【0114】
[複屈折パターンを有する物品の利用法]
複屈折パターンを有する物品が示す反射は独特のもので、電子コピーや印刷で作製したパターンで模倣する事は困難である。一方で、このようなコレステリックパターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊である。従って、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は極めて模造されにくい性質を有しており、例えば偽造防止手段として利用することができる。より具体的には、例えば、特定のマーク(社名や商標など)状の複屈折パターンを有するラベルや転写箔として利用可能である。
また一方で、特性反射のもたらす視覚上あるいは光学上の効果を利用して情報媒体として用いる事も可能である。より具体的には、番号列、文字列、一次元あるいは二次元のバーコード(QRコード)、記号、画像などをパターンとして書き込み、情報を織り込む事が可能である。またその際、用途に応じて適した特性反射の波長を選ぶ事も可能である。例えば認識性を重視し目視でも容易に識別できるパターンとしたいならば可視光領域の特性反射光を有する複屈折パターンが適しているし、逆に隠匿性のパターンとしたいならば紫外光領域や赤外光領域の特性反射を有するパターンを用いる事で目視では不可視のパターンとすることができる。不可視のパターンは下地のデザインに外観に影響を与えないで情報を与える(例えば、グラビア写真上に不可視のパターンで通し番号を打つ)という方面での利用も考えられる。
さらに一方で、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は、可視光領域の特性反射が有する美しい色としての特徴を利用して装飾用途に用いても良い。この場合、見る角度を変える事で特性反射の波長が変化し色が変わる事も魅力となる。
【0115】
[円偏光フィルタを用いた特性反射の識別]
また、複屈折パターンを有する物品が有している光学異方性層が示す特性反射は右円偏光か左円偏光のいずれかになる(どちらになるかは材料や製造方法に応じて異なる)。円偏光は対応する円偏光フィルタ(右円偏光なら右円偏光フィルタ、左円偏光なら左円偏光フィルタ)はそのまま通過するが逆巻きの円偏光フィルタ(右円偏光なら左円偏光フィルタ、左円偏光なら右円偏光フィルタ)は通過できずに吸収される。この性質を利用し、複屈折パターンを有する物品に対して逆巻きの円偏光フィルタをかざした際にその特性反射が観察されなくなることを確認することで、正しく作られたパターンかどうかを判定することが可能である。(特性反射に由来しない通常の反射光の場合には、円偏光フィルタをかざすとその強度が半減するのみで、観察されなくなることは無い)
【0116】
[光学素子]
また、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は光学素子への利用も可能である。例えば上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品を構造的な光学素子として用いた場合、特定の偏光にのみ効果を与える特殊な光学素子の作製が可能である。一例として、本発明の屈折率のパターンによって作製された回折格子は特定の偏光を強く回折する偏光分離素子として機能し、プロジェクターや光通信分野への応用が可能である。
【実施例】
【0117】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
また、以下の実施例において、コレステリック構造を用いた複屈折パターンを「コレステリックパターン」という。
【0118】
(実施例1:緑色の特性反射を示すコレステリックパターン作製材料、及びコレステリックパターンを有する物品の作製)
(力学特性制御層用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、力学特性制御層用塗布液CU−1として用いた。
──────────────────────────────────―
力学特性制御層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、質量平均分子量=10万、
Tg≒70℃) 5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、
質量平均分子量=1万、Tg≒100℃) 13.74
エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート
(BPE−500、商品名、新中村化学(株)製) 9.20
フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780−F、商品名、大日本インキ化学工業(株)社製)
0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
──────────────────────────────────―
【0119】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
【0120】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
カイラル剤(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)は、反応性基としてアクリル基を有する光学活性化合物である。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶(LC−1−1) 30.87
カイラル剤
(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)
1.63
水平配向剤(LC−1−2) 0.10
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、商品名、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤
(IRGANOX1076、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―
【0121】
【化14】

【0122】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
──────────────────────────────────―
転写接着層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(質量平均分子量3.8万) 8.05
アクリレート系多官能モノマー
(KAYARAD DPHA、商品名、日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
フッ素系界面活性剤
(メガファックF−176PF、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────―
【0123】
(コレステリックパターン作製用転写材料TR−1の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートロールフィルム仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ16.0μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度80℃で2分間乾燥してコレステリック液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ1.5μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において270mW/cm、照射量はUV−A領域において180mJ/cmであった。TRC−1の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
最後に、光学異方性層塗布サンプルTRC−1の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.2μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着し、コレステリックパターン作製用転写材料TR−1を作製した。なお、AD−1の塗布により光学異方性層の改質が行われた。
【0124】
(コレステリックパターン作製材料CPM―1の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記コレステリックパターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(商品名:LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離してコレステリックパターン作製材料CPM―1を作製した。コレステリックパターン作製材料CPM―1は緑色の特性反射を示し、そのピーク波長は525nm、ピーク反射率は10%であった。また、CPM―1は昇温時に特性反射が著しく弱くなる(20℃におけるピーク反射率の30%以下のピーク反射率となる)温度を有し、その温度(特性反射消失温度)はおよそ140℃であった。
【0125】
(コレステリックパターンCP−1の作製)
コレステリックパターン作製材料CPM−1に対して、ミカサ社製、商品名:M−3Lマスクアライナーとフォトマスクを用いて露光量30mJ/cmでパターン露光を行った。
次に、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、ノニオン界面活性剤含有、ポリプロピレン系消泡剤含有、商品名:T−PD2、富士フイルム(株)製)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し力学特性制御層と配向層を除去した
その後230℃のクリーンオーブンで15分のベークを行い、コレステリックパターンCP−1を作製した。
コレステリックパターンCP−1においては前述の露光時に露光された部分のみが緑色の特性反射を示し、そのピーク波長は520nm、ピーク反射率は13%であった。一方で、未露光であった部分は特性反射を示さなくなっていた。従って、本発明の手法により、露光時に任意のパターンの露光を行うことで所望のパターンを有するコレステリックパターンを得ることが可能である。
【0126】
(実施例2:青色の特性反射を示すコレステリックパターン作製材料、及びコレステリックパターンを有する物品の作製)
(光学異方性層用塗布液LC−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−2として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶(LC−1−1) 30.67
カイラル剤
(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)
1.83
水平配向剤(LC−1−2) 0.10
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、商品名、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤
(IRGANOX1076、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―
【0127】
(コレステリックパターン作製材料CPM―2の作製)
光学異方性層用塗布液としてLC−2を用いた以外はコレステリックパターン作製用転写材料TR−1と同様にしてコレステリックパターン作製用転写材料TR−2を作製し、さらにTR−2を用いた以外はCPM―1と同様にしてコレステリックパターン作製材料CPM―2を作製した。コレステリックパターン作製材料CPM―2は青色の特性反射を示し、そのピーク波長は470nm、ピーク反射率は10%であった。特性反射消失温度はおよそ140℃であった。
【0128】
(コレステリックパターンCP−2の作製)
コレステリックパターン作製材料としてCPM−2を用いた以外はCP−1と同様にして、コレステリックパターンCP−2を作製した。コレステリックパターンCP−2においては前述の露光時に露光された部分のみが青色の特性反射を示し、そのピーク波長は460nm、ピーク反射率は14%であった。一方で、未露光であった部分は特性反射を示さなくなっていた。従って、本実施例においても、露光時に任意のパターンの露光を行うことで所望のパターンを有するコレステリックパターンを得ることが可能である。
【0129】
(実施例3:赤色の特性反射を示すコレステリックパターン作製材料、及びコレステリックパターンを有する物品の作製)
(光学異方性層用塗布液LC−3の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−3として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶(LC−1−1) 31.13
カイラル剤
(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)
1.37
水平配向剤(LC−1−2) 0.10
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、商品名、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤
(IRGANOX1076、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―
【0130】
(コレステリックパターン作製材料CPM―3の作製)
光学異方性層用塗布液としてLC−3を用いた以外はコレステリックパターン作製用転写材料TR−1と同様にしてコレステリックパターン作製用転写材料TR−3を作製し、さらにTR−3を用いた以外はCPM―1と同様にして、コレステリックパターン作製材料CPM―3を作製した。コレステリックパターン作製材料CPM―3は赤色の特性反射を示し、そのピーク波長は680nm、ピーク反射率は8%であった。特性反射消失温度はおよそ145℃であった。
【0131】
(コレステリックパターンCP−3の作製)
コレステリックパターン作製材料としてCPM−3を用いた以外はCP−1と同様にして、コレステリックパターンCP−3を作製した。コレステリックパターンCP−3においては前述の露光時に露光された部分のみが赤色の特性反射を示し、そのピーク波長は625nm、ピーク反射率は8%であった。一方で、未露光であった部分は特性反射を示さなくなっていた。従って、本実施例においても、露光時に任意のパターンの露光を行うことで所望のパターンを有するコレステリックパターンを得ることが可能である。
【0132】
(実施例4:赤外領域において特性反射を示すコレステリックパターン作製材料、及びコレステリックパターンを有する物品の作製)
(光学異方性層用塗布液LC−4の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−4として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶(LC−1−1) 31.33
カイラル剤
(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)
1.17
水平配向剤(LC−1−2) 0.10
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、商品名、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤
(IRGANOX1076、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―
【0133】
(コレステリックパターン作製材料CPM―4の作製)
光学異方性層用塗布液としてLC−4を用いた以外はコレステリックパターン作製用転写材料TR−1と同様にしてコレステリックパターン作製用転写材料TR−4を作製し、さらにTR−4を用いた以外はCPM―1と同様にして、コレステリックパターン作製材料CPM―4を作製した。コレステリックパターン作製材料CPM―4は赤色から赤外領域にかけて特性反射を示し、そのピーク波長は770nm、ピーク反射率は5%であった。特性反射消失温度はおよそ145℃であった。
【0134】
(コレステリックパターンCP−4の作製)
コレステリックパターン作製材料としてCPM−4を用いた以外はCP−1と同様にして、コレステリックパターンCP−4を作製した。コレステリックパターンCP−4においては前述の露光時に露光された部分のみが赤色から赤外領域にかけて特性反射を示し、そのピーク波長は760nm、ピーク反射率は7%であった。一方で、未露光であった部分は特性反射を示さなくなっていた。従って、本実施例においても、露光時に任意のパターンの露光を行うことで所望のパターンを有するコレステリックパターンを得ることが可能である。赤外領域に特性反射を有するコレステリックパターンは通常は目視できないことから、隠匿情報の印刷や、背景に影響を与えたくない場合の印刷に適している。
【0135】
(実施例5:転写・露光・ベークを複数回繰り返すことによる多層コレステリックパターンの作製)
(多層コレステリックパターンCP―5の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記コレステリックパターン作製用転写材料TR−2の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(商品名:LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製、商品名:M−3LマスクアライナーとフォトマスクI(図4(a))を用いて露光量50mJ/cmでパターン露光を行った。次いで、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行った。
ベーク後の基板に対し、先程と同様の手法でコレステリックパターン作製用転写材料TR−1をラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製、商品名:M−3LマスクアライナーとフォトマスクII(図4(b))を用いて露光量50mJ/cmで二度目のパターン露光を行った。さらに、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行った。
ベーク後の基板に対し、先程と同様の手法でコレステリックパターン作製用転写材料TR−3をラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製、商品名:M−3LマスクアライナーとフォトマスクIII(図4(c))を用いて露光量50mJ/cmで三度目のパターン露光を行った。さらに、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、本発明の多層コレステリックパターンCP―5を作製した。CP−5の概観を図5に示す。図5において、領域A〜Gはそれぞれ相異なる色の特性反射を示した。各々の領域の特性反射の色を、用いたコレステリックパターン作製用転写材料への露光の有無と関連付けて表1に示す。
【0136】
表1
────────────――――――――――─――――──――――──
用いた転写材料と露光の有無
領域 ――――――――――――――――――――――― 特性反射の色
TR−2(青) TR−1(緑) TR−3(赤)
─────────────────────―――――――――――――─
領域A 有り 無し 無し 青
領域B 無し 有り 無し 緑
領域C 無し 無し 有り 赤
領域D 有り 有り 無し 青緑
領域E 有り 無し 有り 赤紫
領域F 無し 有り 有り 黄色
領域G 有り 有り 有り 白
領域N 無し 無し 無し 反射示さず
──────────────────────――――─――――――――
【0137】
表1より、複数の転写材料に対して露光が行われた領域の特性反射の色は各々の転写材料の特性反射の色の中間色となっていることが分かる。すなわち、複数のコレステリックパターン作製用転写材料を用いて積層することにより、より多彩な特性反射の色を示すパターンの作製が可能である。
【符号の説明】
【0138】
11 支持体または基板
12 光学異方性層
12F 第一光学異方性層
12S 第二光学異方性層
13 配向層(支持体上)
14 転写用接着層
14A 第一転写接着層
14B 第二転写接着層
14C 第三転写接着層
15 感光性樹脂層
16 後粘着層
17 剥離層
18 表面保護層
21 仮支持体
22 配向層(仮支持体上)
22F 仮支持体上第一配向層
22S 仮支持体上第一配向層
23 力学特性制御層
112 パターン化光学異方性層
112−A パターン化光学異方性層(第一露光部)
112−B パターン化光学異方性層(第二露光部)
112−N パターン化光学異方性層(未露光部)
112F―A パターン化第一光学異方性層(第一層第一露光部)
112F―B パターン化第一光学異方性層(第一層第二露光部)
112F―N パターン化第一光学異方性層(第一層未露光部)
112S―A パターン化第二光学異方性層(第二層第一露光部)
112S―B パターン化第二光学異方性層(第二層第二露光部)
112S―N パターン化第二光学異方性層(第二層未露光部)
112T―A パターン化第三光学異方性層(第三層露光部)
112T―N パターン化第三光学異方性層(第三層未露光部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む、複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[1]少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を製造する工程であって、少なくとも2つの反応性基を有する少なくとも1種の棒状
液晶性化合物と少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って、重合固定化した高分子化合物を含んでなる前記光学異方性層を形成する、複屈折パターン作製材料を作製する工程;
[2]前記複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]前記工程[2]の後に得られる積層体を50℃以上400℃以下でベークする工程。
【請求項2】
前記光学異方性層がコレステリック構造に起因する特性反射を示し、特性反射のピーク波長が50nm以上3000nm以下であり、かつ、ピーク反射率が2%以上100%以下であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記特性反射のピーク波長が300nm以上1600nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記光学異方性層のコレステリックピッチが100nm以上2000nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記光学異方性層が特性反射消失温度を20℃より高い温度域に有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程[3]が前記特性反射消失温度以上で行われる請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記高分子化合物が未反応の反応性基を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記棒状液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記棒状液晶性化合物が少なくともラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基とを有する請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性の反応基がビニルエーテル基、オキセタン基およびエポキシ基から選ばれる基である請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記カイラル剤の前記組成物中の対固形分濃度が0.5質量%以上20質量%以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記カイラル剤のうちの少なくとも1種が少なくとも1つの反応性基を有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記光学異方性層が重合固定化された後に改質されたものである請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記改質が少なくとも1種の追加添加剤を含む溶液の接触または浸透の形で行われる請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記追加添加剤の少なくとも1種が光重合開始剤であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記改質が前記光学異方性層の上に別の機能性層を積層する工程に付随して行われる請求項13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記工程[1]が、重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って重合固定化した高分子化合物を含んでなる少なくとも1層の光学異方性層を含む転写材料を、被転写材料上に転写することにより行われる請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記転写材料が仮支持体の上に少なくとも[A]前記光学異方性層と[B]転写接着層を、この順で積層したものである請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、偽造防止手段として用いられる物品。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、光学素子。
【請求項21】
重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って重合固定化した高分子化合物を含んでなる少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33791(P2011−33791A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179278(P2009−179278)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】