複屈折パターン認証装置、及び物品認証システム
【課題】信頼性の高い真偽判定が可能である物品認証システムの提供。
【解決手段】光源、偏光子、試料台、および受光部を含み、該偏光子の試料台側に複屈折性が異なる領域を複数含む層を有する複屈折パターン認証装置、ならびに前記試料台に配置され前記受光部において潜像を可視化する複屈折パターンを有する物品であって支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む物品認証システム。
【解決手段】光源、偏光子、試料台、および受光部を含み、該偏光子の試料台側に複屈折性が異なる領域を複数含む層を有する複屈折パターン認証装置、ならびに前記試料台に配置され前記受光部において潜像を可視化する複屈折パターンを有する物品であって支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む物品認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複屈折パターン認証装置及び物品認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板を介した観察においてパターンが視認される複屈折パターンは、偽造又は変造がしにくく、真偽判定の手段として有用である。特に真偽判定のために、特定の複屈折パターンに対し専用の認証装置を用いて、両者の組み合わせにより、識別可能な画像が表示されるシステムを暗号として用い、より信頼性の高い真偽判定が実現できる。
複屈折パターンの潜像がマルチカラー潜像であると、偽造又は変造がさらに困難となり好ましいが、従来の複屈折パターン認証装置は、特にマルチカラー潜像への対応が考慮されていなかった。
【0003】
例えば、特許文献1には、レターデーションがパターニングされた層を用いて視覚暗号化を行う認証システムについての開示があるが、視覚化される画像は白黒の表示であり、潜像の精密化には限界がある。特許文献2には、光軸がパターニングされた層を用いた光学保安デバイスについての開示があるが、暗号自体はモノクロである。
【特許文献1】特表2006-510051号公報
【特許文献2】特表2003-521074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は信頼性の高い真偽判定が可能である物品認証システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意研究を行った結果、パターニング光学異方性層、すなわち、複屈折性が異なる領域を複数含む層を有する複屈折パターンを組み合わせて用いることにより、マルチカラー潜像による認証システムの構築が可能であることを見出した。そしてこの知見を基に本発明を完成した。すなわち、本発明は下記[1]〜[15]を提供するものである。
【0006】
[1]偏光子、試料台、該偏光子を介して試料台に光を照射する光源、および、試料台側から反射される光を該偏光子を介して受光する受光部を含み、かつ、該偏光子の試料台側に、パターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を含む物品認証システム。
[2]前記試料台に配置され前記受光部において潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって反射支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む[1]に記載の物品認証システム。
[3]前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上の層内において、遅相軸の向きが均一であり、かつ、前記潜像が互いに異なる色を示す3種類以上の領域を有する[2]に記載の物品認証システム。
【0007】
[4]光源、第一の偏光子、試料台、第二の偏光子、および受光部をこの順に含み、
第一の偏光子および第二の偏光子からなる群から選択される少なくとも1つの偏光子の試料台側にパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を含む物品認証システム。
[5]前記試料台に配置され前記受光部において潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって透明支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む[4]に記載の物品認証システム。
[6]前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上の層内において遅相軸の向きが均一であり、かつ、前記潜像が互いに異なる色を示す3種類以上の領域を有する[5]に記載の物品認証システム。
【0008】
[7]前記のパターニング光学異方性層のいずれか1つ以上が、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して重合固定化して形成した層である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の物品認証システム。
[8]前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上が液晶パネルである[1]〜[7]のいずれか一項に記載の物品認証システム。
[9]偽造・変造防止システムとして用いられる[1]〜[8]のいずれか一項に記載の物品認証システム。
【0009】
[10]偏光子、試料台、該偏光子を介して試料台に光を照射する光源、および、試料台側から反射される光を該偏光子を介して受光する受光部を含み、かつ、該偏光子の試料台側に、パターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置。
[11][10]に記載の装置により潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって、反射支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品。
[12][10]に記載の装置に用いるための、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する偏光板。
【0010】
[13]光源、第一の偏光子、試料台、第二の偏光子、および受光部をこの順に含み、
第一の偏光子および第二の偏光子からなる群から選択される少なくとも1つの偏光子の試料台側にパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置。
[14][13]に記載の装置により潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって、透明支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品。
[15][13]に記載の装置に用いるための、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する偏光板。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、信頼性の高い真偽判定が可能である物品認証システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本明細書において、レターデーション又はReは面内のレターデーションを表す。面内のレターデーション(Re(λ))はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるレターデーション又はReは、545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0014】
本明細書において、複屈折パターンとは、複屈折性が異なる領域を複数含むパターンを意味する。複屈折パターンを有する物品は、通常シールなどシート状のものであればよく、又は、複屈折性が異なる領域を複数含むパターンをその一部に有する如何なる物品であってもよい。複屈折パターンを有する物品は、通常、パターニング光学異方性層、すなわち、複屈折性が異なる領域を複数含む層を有する。複屈折性が異なる領域はレターデーション及び/又は光軸方向が互いに異なる領域であればよい。なお、本明細書において「光軸」というとき、「遅相軸」又は「透過軸」を意味する。本明細書において「レターデーション及び/又は光軸方向が互いに異なる領域を2つ以上有する」ことを「レターデーション及び/又は光軸方向をパターン状に有する」又は「レターデーション及び/又は光軸方向がパターニングされている」という場合がある。複屈折パターンは複屈折性が異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。上記の複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。また、パターニング光学異方性層は、単層であっても、複数の層が積層されていてもよい。複屈折パターンを有する物品は通常平面(膜又はシート)状の形状を有していればよい。また、上記領域は平面の法線方向から複屈折パターンを観察した場合に認識されるものであるため、この平面の法線と平行な面により分割された領域となっていればよい。
【0015】
本明細書において「潜像」とは、偏光子等を介しない通常の視認では像が認識されないが、偏光子を介することにより、より好ましくは、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を用いることにより、可視化される像を意味する。可視化される像は互いに異なる色を示す領域を2つ以上含む限り特に限定されないが、黒以外の2種の色を示す領域を含むことが好ましい。互いに異なる色を示す領域は3つ以上であることも、好ましい。互いに異なる色を示す領域を3つ以上有するためには、反射、または、透過スペクトルの異なる領域を3つ以上有していればよい。すなわち、入射偏光が各光学異方性層を通過した後、つまり、出射側の偏光板に入射する直前において、光の偏光状態の異なる領域が3種類以上あればよい。従って、必ずしも、各光学異方性層が、3種類以上の異なるレターデーションを有している必要はない。すなわち、例えば、互いに等しい光軸を有する2層の光学異方性が積層されている場合を考える。A、B、C、Dの4つの領域において、第一の光学異方性層のレターデーションが、0nm、0nm、100nm、100nm、第二の光学異方性層においては、0nm、200nm、0nm、200nmである場合を考えると、各領域におけるレターデーションの合計値は、0nm、200nm、100nm、300nmとなり、4色の互いに異なる色を表現することができる。
可視化される像は、文字又は絵を示す像であることが好ましい。
【0016】
本明細書において、「認証」は、「識別」、「有無の確認」または「真偽判定」の意味を含む。複屈折パターンは、医薬品、家電製品、衣料品といった、各種商品のタグなどに設けられればよく、本発明のシステムを利用して複屈折パターンを元に物品を認証することでブランドプロテクションに用いることができる。あるいは、クレジットカード、入退室管理カードといったIDカード、紙幣、小切手、商品券等の有価証券に用いることで、偽造防止効果が期待される。複屈折パターンは、反射支持体上にパターニング光学異方性層を有するものであってもよく、透明支持体上にパターニング光学異方性層を有するものであってもよい。
【0017】
複屈折パターンの例としてはレターデーション及び/又は光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層を含む物品が挙げられる。複屈折パターンの例を図1に示す。図1(a)はレターデーションがパターニングされている例である。図1(a)に示す例においてはa nm, b nm, c nm, 及びd nmで示されるレターデーションは互いに異なるものとする。図1(b)は光軸方向がパターニングされている例である。図1(b)において矢印は光軸方向を示す
光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、特表2001−525080号公報に記載の方法で得ることができる。
また、レターデーションが面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、以下に詳細に説明するような複屈折パターン作製材料を用いた方法で作製することができる。
【0018】
[複屈折パターン作製材料]
(光学異方性層)
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は高分子を含む。なお、複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。高分子を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。該光学異方性層中の高分子は未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応して高分子鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によって高分子鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレターデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなると考えられるためである。
【0019】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
【0020】
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であればよく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
【0021】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。
また、後述するように、本発明の光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0022】
(液晶性化合物を含有する組成物を重合固定化してなる光学異方性層)
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易である。
【0023】
(液晶性化合物)
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0024】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0025】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0026】
【化1】
【0027】
L1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、およびNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q1−L1およびQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−およびCH2=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0028】
A1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5)n−W2−
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、および−O−CH2−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0029】
W1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0030】
【化2】
【0031】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。前記ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0039】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
上記ディスコティック化合物の好ましい例を下記に示す。
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
【0047】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0048】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する所定の配向層の上に塗布することで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0049】
(液晶性化合物の配向状態の固定化)
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0050】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0051】
(偏光照射による光配向)
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。この偏光照射は上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねてもよいし、先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行ってもよいし、非偏光照射で先に固定化してから偏光照射によって光配向を行ってもよいが、偏光照射のみを行うか先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行うことが望ましい。偏光照射が上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねる場合であってかつ重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合、偏光照射は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。偏光照射によって硬化する液晶性化合物の種類については特に制限はないが、反応性基としてエチレン不飽和基を有する液晶性化合物が好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0052】
(偏光照射後の紫外線照射による後硬化)
前記光学異方性層は、最初の偏光照射(光配向のための照射)の後に、偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射してもよい。最初の偏光照射の後に偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射することで反応性基の反応率を高め(後硬化)、密着性等を改良し、大きな搬送速度で生産できるようになる。後硬化は偏光でも非偏光でも構わないが、偏光であることが好ましい。また、2回以上の後硬化をすることが好ましく、偏光のみでも、非偏光のみでも、偏光と非偏光を組み合わせてもよいが、組み合わせる場合は非偏光より先に偏光を照射することが好ましい。紫外線照射は不活性ガス置換してもしなくてもよいが、特に重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。非偏光照射の場合は200〜450nmにピークを有することが好ましく、250〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0053】
(ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化)
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0054】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0055】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0056】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0057】
(水平配向剤)
前記光学異方性層の形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
【0058】
【化15】
【0059】
式中、R1、R2およびR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2およびX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基またはフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2およびX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−およびSO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい
【0060】
【化16】
【0061】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、およびR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0062】
【化17】
【0063】
式中、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8およびR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(1)におけるR1、R2およびR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−99248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0064】
【化18】
【0065】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0066】
(延伸によって作製される光学異方性層)
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0067】
(光学異方性の後処理)
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。本発明においては、この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0068】
(複屈折パターン作製材料)
複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経る事で複屈折パターンを得る事ができる材料である。複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、後粘着層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、転写接着層、または力学特性制御層を有していてもよい。
【0069】
(配向層)
上記した様に、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0070】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0071】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いてもよい。かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0072】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0073】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0074】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiO2を代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0075】
(後粘着層)
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための後粘着層を有していてもよい。後粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製の為のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。
【0076】
(2層以上の光学異方性層)
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0077】
遅相軸が同じ向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、大きなレターデーションを有するパターンを作製する場合が挙げられる。手持ちの光学異方性層では一層では必要とするレターデーションに足りない場合でも、二層三層と積層してからパターン露光することで大きなレターデーションを有する領域を含むパターン化光学異方性層を容易に得ることができる。
【0078】
(複屈折パターン作製材料の作製方法)
複屈折パターン作製材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、支持体上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて支持体上に光学異方性層を転写する、自己支持性の光学異方性層として形成する、自己支持性の光学異方性層上に他の機能性層を形成する、自己支持性の光学異方性層に支持体に貼合する、などの方法が挙げられる。このうち光学異方性層の物性に制約を加えないという点からは支持体上に光学異方性層を直接形成する方法と転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法が好ましく、さらに支持体に対する制約が少ない点から転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0079】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
以下に、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料について説明する。なお、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という場合がある。
【0080】
(仮支持体)
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0081】
(転写用接着層)
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板等に用いられる場合に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。
【0082】
粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0083】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0084】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0085】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0086】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、ポジ型でもネガ型でもよく特に限定はなく、市販のレジスト材料を用いることもできる。転写接着層として用いられる場合、光照射によって接着性を発現することが好ましい。また、液晶表示装置用基板等の物品の製造工程における環境上や防爆上の問題から、有機溶剤が5%以下の水系現像であることが好ましく、アルカリ現像であることが特に好ましい。また、感光性樹脂層は少なくとも(1)ポリマーと、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。
【0087】
以下、これら(1)〜(3)の成分について説明する。
(1)ポリマー
ポリマー(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーからなるアルカリ可溶性樹脂が好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報および特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜70質量%が一般的であり、25〜65質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。
【0088】
(2)モノマー又はオリゴマー
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマーおよびオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報および特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報および特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、着色樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0089】
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
【0090】
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0091】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。前記界面活性剤は、感光性樹脂組成物と混ざり合うものであれば使用可能である。本発明に用いる好ましい界面活性剤としては、特開2003−337424号公報[0090]〜[0091]、特開2003−177522号公報[0092]〜[0093]、特開2003−177523号公報[0094]〜[0095]、特開2003−177521号公報[0096]〜[0097]、特開2003−177519号公報[0098]〜[0099]、特開2003−177520号公報[0100]〜[0101]、特開平11−133600号公報の[0102]〜[0103]、特開平6−16684号公報の発明として開示されている界面活性剤が好適なものとして挙げられる。より高い効果を得る為にはフッ素系界面活性剤、および/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤、フッソ原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましく、フッ素系界面活性剤が最も好ましい。フッ素系界面活性剤を用いる場合、該界面活性剤分子中のフッ素含有置換基のフッ素原子数は1〜38が好ましく、5〜25がより好ましく、7〜20が最も好ましい。フッ素原子数が多すぎるとフッ素を含まない通常の溶媒に対する溶解性が落ちる点で好ましくない。フッ素原子数が少なすぎると、ムラの改善効果が得られない点で好ましくない。
特に好ましい界面活性剤として、下記一般式(a)および、一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有するものが挙げられる。
【0092】
【化19】
【0093】
式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜18の整数、mは2〜14の整数を示す。p、qは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも同時に0になる場合は含まない。
【0094】
特に好ましい界面活性剤の一般式(a)で表されるモノマーをモノマー(a)、一般式(b)で表されるモノマーをモノマー(b)と記す。一般式(a)に示すCmF2m+1は、直鎖でも分岐鎖でもよい。mは2〜14の整数を示し、好ましくは4〜12の整数である。CmF2m+1の含有量は、モノマー(a)に対して20〜70質量%が好ましく、特に好ましくは40〜60質量%である。R1は水素原子またはメチル基を示す。またnは1〜18を示し、中でも2〜10が好ましい。一般式(b)に示すR2およびR3は、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。pおよびqは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも0は含まない。pおよびqは好ましくは2〜8である。
【0095】
また、特に好ましい界面活性剤1分子中に含まれるモノマー(a)としては、互いに同じ構造のものでも、上記定義範囲で異なる構造のものを用いてもよい。このことは、モノマー(b)についても同様である。
特に好ましい界面活性剤の重量平均分子量Mwは、1000〜40000が好ましく、更には5000〜20000がより好ましい。界面活性剤は前記一般式(a)および一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有することを特徴とする。特に好ましい界面活性剤100質量部は、モノマー(a)が20〜60質量部、モノマー(b)が80〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましく、更には、モノマー(a)が25〜60質量部、モノマー(b)が60〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましい。
【0096】
モノマー(a)および(b)以外の共重合可能なモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、アミノスチレン等のスチレンおよびその誘導体、置換体、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、スチレンスルホン酸無水マレイン酸、ケイ皮酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体等が挙げられる。
特に好ましい界面活性剤は、モノマー(a)、モノマー(b)等の共重合体であるが、そのモノマー配列は特に制限はなくランダムでも規則的、例えば、ブロックでもグラフトでもよい。更に、特に好ましい界面活性剤は、分子構造および/又はモノマー組成の異なるものを2以上混合して用いることができる。
前記界面活性剤の含有量としては、感光性樹脂層の層全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、特に0.1〜7質量%が好ましい。界面活性剤は、特定構造の界面活性剤とエチレンオキサイド基、およびポリプロピレンオキサイド基とを所定量含有するもので、感光性樹脂層に特定範囲で含有することにより該感光性樹脂層を備えた液晶表示装置の表示ムラが改善される。全固形分に対して0.01質量%未満であると、表示ムラが改善されず、10質量%を超えると、表示ムラ改善の効果があまり現れない。上記の特に好ましい界面活性剤を前記感光性樹脂層中に含有させカラーフィルタを作製すると、表示ムラが改良される点で好ましい。
【0097】
好ましいフッ素系界面活性剤の具体例としては、特開2004−163610号公報の段落番号[0054]〜[0063]に記載の化合物が挙げられる。また、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。本発明においては、一般式(a)で表されるモノマーを含まないフッ素系界面活性剤である、特開2004−331812号公報の段落番号[0046]〜[0052]に記載の化合物を用いることも好ましい。
【0098】
(力学特性制御層)
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0099】
(剥離層)
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層や力学特性制御層などが剥離層としての機能を有してもよい。
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0100】
(表面保護層)
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず、仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、隣接する層(例えば転写接着層)から容易に分離されねばならない。表面保護層の材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0101】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0102】
(転写材料を被転写材料上に転写する方法)
転写材料を支持体等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、被転写材料上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0103】
(転写に伴う工程)
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0104】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層の遅相軸と新たに転写する転写材料の光学異方性層と遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写する事は遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレターデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0105】
(複屈折パターンを有する物品の作製)
複屈折パターン作製材料に少なくとも、パターン露光及び加熱(ベーク)をこの順に行うことにより、複屈折パターンを有する物品を作製することができる。
【0106】
(パターン露光)
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光を意味する。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。
前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。
【0107】
(パターン露光時の露光条件)
本発明の製造方法は、複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光(パターン露光)を行うことを特徴とする。このときの「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。本発明の製造方法はすなわち、パターン露光時に、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域を生ずるような形で露光が行われていることを特徴とする。
【0108】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレターデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレターデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0109】
(マスク露光)
露光条件の異なる露光領域を生じる手段として、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の元で同一時間の露光を行う事で異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
またレーザーなどを用いた走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能である。
【0110】
また、複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行う手法を併用してもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0111】
(加熱(ベーク))
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。
【0112】
[支持体]
複屈折パターンを有する物品は透明支持体又は反射支持体を有していることが好ましい。支持体には特に限定はないが、図2に示す反射システムの場合には後述する反射層を有する支持体または、反射機能を有する支持体を用いればよく、図3に示す透過システムの場合には透明支持体を用いればよい。反射機能を有する支持体の例としてはアルミホイル、ステンレス、のほか、光沢のある印刷を任意の支持体に設けることによって反射機能を付与してもよい。またホログラム加工を施した支持体を用いることもできる。支持体のそのほかの例としてはセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、布などが挙げられる。支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。複屈折パターンを有する物品は着色支持体を含むものであってもよい。すなわち、複屈折パターンを有する物品は認証装置を用いない目視でも視認可能なパターンが描かれていてもよい。特定の色で複屈折パターンを読み込む場合は、それ以外の色の影響を受けないのでそれ以外の色で着色支持体を用いることができる。
【0113】
なお、本発明のシステムで用いられる複屈折パターン認証装置において、パターニング光学異方性層として、レターデーションが面内でパターニングされた光学異方性層を設ける場合は、偏光子を支持体として、上記と同様の手順を用いて作製してもよい。このように作製された偏光子とパターニング光学異方性層を含む偏光板は、本発明の装置の構成部品として用いることができる。
【0114】
[反射層]
本発明の光学素子において反射層又は上記のような反射機能を有する支持体を用いることによって、2層以上のパターニング光学異方性層から見て反射層又は支持体の反対側面から偏光板を介して観察することによって、複屈折パターンによる潜像を可視化することができる。
反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。このような金属層を蒸着した支持体でもよいし、金属箔を箔押しした支持体でもよい。あるいはゴールドやシルバー等のインキで印刷した支持体を用いることもできる。完全鏡面である必要はなく、表面にマット加工が施されていてもよい。
【0115】
[複屈折パターン認証装置]
本発明の認証システムで用いられる複屈折パターン認証装置は、光源と、該光源の光を透過させて偏光とする第一の偏光子と、試料台と、該偏光を被認証物に照射して生じる反射光または透過光を透過させて検出光とする第二の偏光子と、該検出光を観察する手段とを有し、少なくとも一枚の偏光子の被認証物側の面に複屈折パターンを有している。また、後述の反射型の認証システムにおける装置においては、第一の偏光子と第二の偏光子とは同じであってよい。本発明の認証システムにおける装置は、少なくとも一枚の偏光子の試料台(被認証物)側にパターニング光学異方性層を有する。例えば、少なくとも一枚の偏光子の試料台(被認証物)側の表面に、パターニング光学異方性層が形成されていればよい。
【0116】
[認証システム]
本発明の認証システムにおいては、被検体における複屈折パターンと、認証装置に設けられたパターニング光学異方性層における複屈折性が異なる領域のパターンとを組み合わせることによって、潜像を与える、すなわち潜像を可視化するパターンとすればよい。このようにすることによって、本装置を被認証物である複屈折パターンに付された暗号を解読するためのキーとして用いることができる。
【0117】
暗号を更新することで、セキュリティレベルを向上させることも可能である。更新は好ましくは定期的に行われればよい。異なる複屈折パターンの施された偏光子と交換することで暗号を更新することもできるが、複屈折パターンを電気的に制御できるようにしておけば、データを入力するだけで暗号を更新することができ、好ましい。この場合、暗号データはインターネットや電子メールなどによって配信されてもよい。このような複屈折パターンとして、液晶パネルを挙げることができ、その片面にシート状の偏光子を粘着剤等で貼り付けて使用することができる。
【0118】
液晶パネルとは二枚の透明基板間に液晶組成物が封入されたものである。透明基板の内面には、液晶に電圧を印加するための透明電極が格子状に配置されており、画素ごとに液晶に電圧を加えることで、液晶分子の配向、すなわちレターデーションを制御することができる。透明電極としては、ITOが好ましく用いられる。アクティブマトリクス駆動、あるいは、単純マトリクス駆動によって、ドットマトリクス表示が可能となる。
表示方式としては、TN、IPS、VA等の方式が知られているが、各種モードを用いることができる。
【0119】
偏光子の光軸と、偏光子上のパターニング光学異方性層1及び被認証体のパターニング光学異方性層2におけるレターデーション及び光軸が決まると、観察される反射光、あるいは、透過光の色が決まる。例えば、反射モードにおいて、上記の層1と層2の光軸方向が同じであって、この光軸と偏光子の光軸とのなす角が45°である場合、偏光子に施された複屈折パターンのレターデーションと、被認証体に施された複屈折パターンのレターデーションの和が350〜370nm、あるいは、600〜700nmである場合、反射色は赤色を呈する。440〜560nmである場合には緑色、160〜220nmである場合には青色を呈する。
【0120】
上記の層1と層2の光軸とが垂直である場合には、そのレターデーションの差が上記値となるようにすれば、反射色を制御することができる。
また、それ以外の角度で配置された場合については、その反射色、あるいは、透過色を光学シミュレーションによって予測することができる。
【0121】
[受光部]
検出光を観察するための手段は、目視により観察するための光の表示部位(単なる窓)であってもよい。また、検出光を観察するための手段として撮像素子を用いてもよい。
撮像素子としては、CMOSイメージセンサ、CCD等を好適に用いることができる。二次元アレイを用いる他、ラインセンサや単独の受光素子を走査することで、撮像素子として、二次元画像を取得してもよい。受光素子としては、フォトダイオードなどを利用することができる。
また、カラーフィルタが設けられた撮像素子を用いてもよい。
【0122】
撮像素子の入射側には、適宜、レンズを配置することが好ましい。
被認証体の全面をスキャンするためには、被認証物に対し、光源と撮像素子とを含む撮像系を相対的に移動させることが好ましい。被認証物、または撮像系の、どちらを移動させてもよい。被認証物を固定し、光源・撮像素子を走査するフラットベッド型、あるいは、光源と撮像素子とを一体化させた小型ボディを手でスキャンさせるハンディスキャン型でもよい。ハンディスキャン型の場合、被認証物はシート状でなくてもよい。被認証物が紙やプラスチックフィルムのようなものである場合には、光源・撮像素子を固定して、自動原稿送り装置、あるいはドラムスキャナにより被認証物を搬送させることもできる。
【0123】
本認証システムにおいては、外光の映り込みを防止する目的で、観察部以外は、遮光されていることが好ましい。また、本認証システムには、サンプル挿入口が設けられていてもよい。
【0124】
3種類以上の色から構成される潜像を撮像素子により取得し、それによって真偽判断する場合には、カラーフィルタが設けられた撮像素子を用いるか、あるいは、光源を多色化することが好ましい。前者の例として、後者の例としては、例えば、蛍光灯等の白色光を、偏光板を介して被検体に照射して、カラーCCDで潜像を取得する方法が挙げられる。例えば、RGBに発光するLEDを、偏光板を介して被検体に照射して、CMOSイメージセンサで潜像を取得する方法が挙げられる。
【0125】
[光源]
光源としては各種白色光源又は単色光源を用いることができる。
白色光源としては、蛍光灯、冷陰極管、白色LEDなどが挙げられる。
潜像のSN比を向上させるために、潜像の複数の領域からの反射スペクトル、あるいは透過スペクトルを比較して、その反射率、あるいは透過率の差の大きい波長にピーク波長を有する単波長光源を用いてもよい。この場合、ピークの半値幅は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。このような光源としては、白色光源にフィルタを設けたものを用いてもよいが、発光ダイオード、あるいは、半導体レーザを好ましく用いることもできる。着色した光源を用いる場合、光源は互いにピーク波長の異なる2つ以上の単波長光を発してもよい。一度に異なる単波長光を発することができるようにアレイ構造の光源(LEDアレイなど)を用いてもよい。例えば、R、G、Bに発色するLEDをアレイ状に配列することもできる。色ごとに、独立にオン、オフを切り替えられるようにしてもよい。
【0126】
光源の発する光の波長又は撮像素子において選択される波長は、潜像の色によって選択することが好ましい。例えば、白背景上に描かれた赤いパターンを読み取るには、反射率差の大きい青色、あるいは緑色の単波長光を用いると、読み取りやすい。逆に黒背景上に描かれた赤いパターンを読み取るには、赤色の単波長光を用いると読み取りやすい。このように、潜像に応じて、光源に用いる波長を選択することで、読み取り易さが向上する。潜像が黒及び白以外の色を2色以上含むマルチカラー潜像である場合には、光の三原色である赤色、緑色、青色を光源の光の波長、または、撮像素子に用いられるフィルタが選択する波長として用いられることが好ましい。例えば、赤色、緑色、青色に発色する三種類の手段を含む光源を用いることができる。この場合、光源として、赤色、緑色、青色の発光ダイオードを配列したものを用いる方法や、赤色、緑色、青色に発色する面光源を3箇所から被認証物に照射する方法などが挙げられる。
【0127】
あるいは、全面に着色した反射支持体を用いてもよい。例えば、赤い反射支持体を用いた場合、読み取り光は赤色である必要がある。この場合、潜像の各領域における赤色の光に対する反射率の違いによって、潜像にオン・オフをつけることができる。
【0128】
光源に単色光を用いる利点として、潜像画像のSN比を向上させられることが挙げられる。また、真偽判定の手段として用いる複屈折パターンの潜像に使用する色(反射色、あるいは透過色)の選択肢を広げることができる、という利点がある。また、上記のように着色した支持体を用いたりすることも可能となる。
【0129】
目視により認証を行う(撮像素子等を用いない)場合等においては、被認証物の複屈折パターンに均一に照明できるよう、拡散面光源であることが好ましい。拡散面光源としては、蛍光灯面光源、ディスプレイ用途の冷陰極間バックライト、あるいは、LEDバックライト等を用いることができる。撮像素子を用いて認証を行う場合には、ライン光源を走査してもよい。LEDライン光源、レーザライン光源の他、蛍光灯、ハロゲン、キセノン、メタルハライドのライン照明を好適に用いることができる。光ファイバをライン光源としてもよい。あるいは、点光源にガルバノミラーやポリゴンミラーを組み合わせてサンプル全面をスキャンする走査光学系を用いることも好ましい。光源と被検体の間には、適宜、集光レンズ、あるいは結像レンズを配置することが好ましい。
【0130】
[偏光子]
光源の光を透過させて偏光とする偏光子と反射光または透過光を透過させて検出光とする偏光子は同一であっても別個(種類としては同一であるものを含む)のものであってもよい。後述のように透過型の場合は別個のものを用いる。後述のように反射型の場合は同一とすることができるが、別個のものを用いてもよい。同一のものを用いた場合は装置が簡素な構造になるという利点があり、別個のものを用いると個々に最適の透過軸方向の調整が可能であるとの利点がある。
偏光子としては、市販されているシート状の偏光子を好ましく用いることができる。
本発明の認証装置は偏光子の光軸と被認証物の光軸のなす角を調整できるように、それぞれの偏光子を回転させる機構を備えていてもよい。
【0131】
[複屈折パターン認証装置の例]
本発明の反射型の認証システムの構成例の概略図を図2及び図3に示す。図2は、光源と、該光源の光を透過させて偏光とするとともに該偏光を被認証物に照射して生じた反射光を透過させて検出光とする偏光子からなる反射型の複屈折パターン認証装置の例の概略図である。偏光子の被認証物側の面には、パターニング光学異方性層が形成されている。このような装置は図に示すように被認証物が反射支持体を有する場合に用いることができる。光源は、発する光が被認証物に効率的に照射されて検出光を観察する手段に反射するように配置される。偏光子は被認証物と光源との間に配置され、偏光子及び被認証物は光源からの光を複屈折パターンの識別に望ましい方向に偏光させるように配置される。通常複屈折パターン(被認証物)の各領域の光軸方向と偏光子の光軸方向が45°となるように配置することが好ましい。被認証物は、試料台に設置される。試料台は、被認証物を挿入する形態となっていることが好ましい。被認証物と予め決定された位置に正確に配置されることが好ましい。また、被認証物は偏光子上のパターニング光学異方性層に対して10cm以内、好ましくは5cm以内、より好ましくは1cm以内 程度の距離で配置されることが好ましく、接するように配置されることが最も好ましい。解読された暗号情報は、受光部(窓)から目視観察してもよいし、受光素子で得られた情報を出力させてもよい。目視観察する場合においては、被認証物の複屈折パターンに均一に照明できるよう、拡散面光源であることが好ましい。
【0132】
図3に、光源と、該光源の光を透過させて偏光とする偏光子と、該偏光子とは別の該偏光を被認証物に照射して生じた透過光を透過させて検出光とする偏光子からなる透過型の複屈折パターン認証装置の概略図を示す。少なくとも一方の偏光子の被認証体側の面には、パターニング光学異方性層が形成され、図3は双方に形成されている例である。このような装置は図に示すように被認証物が透明支持体を有する場合に用いることができる。光源は、発する光が偏光子、被認証物、偏光子に効率的に照射されて検出光を観察する手段に到達するように配置される。2つの偏光子は被認証物がその間になるように配置され、偏光子及び被認証物は光源からの光を複屈折パターンの識別に望ましい方向に偏光させるように配置される。通常複屈折パターン(被認証物)の各領域の光軸方向と偏光板の光軸方向とが45°となるように配置することが好ましく、2つの偏光子はクロスニコル又はパラニコルの配置となっていることが好ましい。被認証物は、試料台に設置される。試料台は、被認証物を挿入する形態となっていることが好ましい。潜像(解読された暗号情報)は、受光部(窓)から目視観察してもよいし、受光素子で得られた情報を、装置に画像表示部(図4参照)を設けて出力させてもよい。目視観察する場合においては、被認証物の複屈折パターンに均一に照明できるよう、拡散面光源であることが好ましい。
【0133】
被認証物がパターニング光学異方性層のほか、一層の偏光層が積層されている場合、認証装置は、被認証物のパターニング光学異方性層の面側に偏光子を一枚有していればよい。偏光子が設けられていない場合には、複屈折パターンを挟むように、二枚の偏光子を配置する必要がある。一般的には、二枚の偏光子は、クロスニコルとなるように設置することがコントラストの観点から好ましいが、複屈折パターンに応じて、偏光子の光軸角度を選択することができる。このため、偏光子の光軸角度を可変にしておくことが好ましい。また、偏光子は二枚配置できるようにしておいて、少なくとも一枚を着脱可能なようにしておくことが好ましい。
【0134】
真偽判定を行うためには、まず、撮像素子を通して、認証したい真の複屈折パターンから得られた画像信号をデジタル化する必要がある。その後、必要に応じて、ノイズを除去したり、あるいは、拡大、縮小、回転などの補正を行ったりすることが好ましい。取得画像は、ディスプレイ等に表示してもよい。このようにして真の複屈折パターンの画像はシステムに記憶される。
その後、被認証物を同様に認証して得られた画像が、記憶された真の複屈折パターンの画像と一致するかが判定される。この判定はシステムのパターンマッチング機能により行われる。
【0135】
パターンマッチングの方法としては、被認証物の画像と真の画像(テンプレート)の、各画素における輝度データの相関から真偽判定を行うテンプレートマッチングが好適に用いられる。
このようにして、画像が一致する場合には真、画像が一致しない場合には、偽として得られた真偽判定ができる。この結果の表示を可能とするために、システムはディスプレイ又はランプやブザー等の表示手段(認証結果表示部)を有することが好ましい。(図4)
【0136】
複屈折パターン潜像が文字データを含む場合には、システムは光学文字認識(OCR)機能を有していてもよい。この場合には、認識された文字をそのままディスプレイ等に表示してもよい。あるいは、認識された文字が予め入力しておいた真の文字と一致したかの真偽判定結果のみを、前記の方法で表示してもよい。
【0137】
複屈折パターンによっては、偏光板の光軸と複屈折パターン(光学異方性層)の光軸とのなす角を調整する必要がある。幅寄せローラー等を用いて、これらの光軸が適切な関係となるように調整してもよいが、被認証物の形状によっては、それが困難な場合もある。あるいは、複屈折パターンを更新した場合、偏光板の光軸を変更したい場合もある。
この観点からも上記のように偏光板は回転機構を有していることが好ましい。更に、偏光板の固定機構を有していてもよい。これらの機構は手動でも自動でもよい。自動で行う場合には、前述のパターンマッチングとの組み合わせにより、偏光子の光軸を検出し、適切な角度となるように調整することが好ましい。
【実施例】
【0138】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0139】
[サンプル作製]
(力学特性制御層用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、力学特性制御層用塗布液CU−1として用いた。
──────────────────────────────────―─────
力学特性制御層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、質量平均分子量=10万、Tg≒70℃)
5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、質量平均分子量=1万、Tg≒100℃)
13.74
BPE−500(新中村化学(株)製) 9.20
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製) 0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
──────────────────────────────────―─────
【0140】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
【0141】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
──────────────────────────────────―――――
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―――――
棒状液晶(LC−1−1) 32.59
水平配向剤(LC−1−2) 0.02
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―――――
【0142】
【化20】
【0143】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
──────────────────────────────────―
転写接着層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────―
【0144】
(複屈折パターンBP−1の作成)
(光学異方性層塗布サンプルTRC−1および複屈折パターン作製用転写材料TR−1の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ4.3μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。TRC−1の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
最後に、光学異方性層塗布サンプルTRC−1の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.2μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−1を作製した。
【0145】
(複屈折パターン作製材料BPM―1の作製:反射型測定被認証物作製用)
アルミニウムを蒸着したガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記複屈折パターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離した。この上に、再度同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−1をラミネートした。この際、先にラミネートした光学異方性層と後にラミネートした光学異方性層の両者の遅相軸の向きが概ね一致するように注意した。ラミネート後、仮支持体を剥離して複屈折パターン作製材料BPM−1を作製した。
【0146】
(複屈折パターン作製材料BPM―2の作製:透過型測定被認証物作製用)
被転写支持体を、洗浄したアルミニウム蒸着ガラスから、正面レターデーションが310nmの延伸フィルムに変更した以外は複屈折パターン作製材料BPM−1と同様にして、複屈折パターン作製材料BPM−1を作製した。このとき、延伸フィルムの遅相軸と各光学異方性層の遅相軸が一致するようにラミネートした。
【0147】
(複屈折パターン作製材料BPM―3の作製:偏光子用)
被転写支持体を、洗浄したアルミニウム蒸着ガラスから、サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板に変更した以外は複屈折パターン作製材料BPM−1と同様にして、複屈折パターン作製材料BPM−3Aを作製した。このとき、各光学異方性層の遅相軸の向きが偏光子の透過軸に対し時計まわりに45°となるようにラミネートした。
【0148】
(被認証体1の作製:実施例1の被認証物)
BPM−1に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる4つの領域を有するフォトマスクIを用いて露光照度6.25mW/cm2で13秒間の露光を行った。フォトマスクIは4つの領域1―A、1―B、1―C、1―Dからなる。そのパターンを図5に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの長辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表1に示す。
【0149】
【表1】
露光後のBPM−1に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、被認証体1を作製した。
【0150】
(被認証体2の作製:実施例2の被認証物)
BPM−2に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる3つの領域を有するフォトマスクIIを用いて露光照度6.25mW/cm2で1.5秒間の露光を行った。フォトマスクIIは3つの領域2―A、2―B、2―Cからなる。そのパターンを図6に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表2に示す。
【0151】
【表2】
露光後のBPM−2に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、被認証体2を作製した。
【0152】
(被認証体3の作製:実施例3の被認証物)
BPM−2に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる4つの領域を有するフォトマスクIIIを用いて露光照度6.25mW/cm2で1.5秒間の露光を行った。フォトマスクIIIは3つの領域BP―3A、BP―3B、BP―3Cからなる。そのパターンを図7に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表3に示す。
【0153】
【表3】
露光後のBPM−2に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、被認証体3を作製した。
【0154】
(偏光子1の作製:実施例1の偏光子)
BPM−3に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる4つの領域を有するフォトマスクIVを用いて露光照度6.25mW/cm2で5秒間の露光を行った。フォトマスクIVは4つの領域1P−A、1P―B、1P―C、1P―Dからなる。そのパターンを図8に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表4に示す。
【0155】
【表4】
露光後のBPM−1に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、偏光子1を作製した。
【0156】
(偏光子2−1の作製:実施例2の下側偏光子)
BPM−3に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる3つの領域を有するフォトマスクVを用いて露光照度6.25mW/cm2で1.5秒間の露光を行った。フォトマスクVは4つの領域2P1−A、2P1―B、2P1―Cからなる。そのパターンを図9に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表5に示す。
【0157】
【表5】
露光後のBPM−3に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、偏光子2−1を作製した。
【0158】
(偏光子2−2の作製:実施例2の上側偏光子)
BPM−3に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる3つの領域を有するフォトマスクVIを用いて露光照度6.25mW/cm2で1.5秒間の露光を行った。フォトマスクVIは3つの領域2P2−A、2P2―B、2P2―Cからなる。そのパターンを図10に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表6に示す。
【0159】
【表6】
【0160】
露光後のBPM−3に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、偏光子2−2を作製した。
(偏光子3の作製:実施例3の下側偏光子)
セルギャップ490nmの垂直配向液晶パネルを用意した。このパネルは、画素毎に電圧を印加できるようになっており、電圧を印加することによって、液晶はy軸方向にチルトするように設計されている。この液晶パネルの下面に、その透過軸が、y軸方向から時計まわりに45°となるように偏光板を用いて貼り付けた。この液晶パネルに、図11に示すようなパターンで各画素に電圧を印加した。各領域に印加した電圧、及び、発現したレターデーションを表7に示す。
【0161】
【表7】
【0162】
実施例1
被認証物1の光学異方性層側の面の上に、偏光子1を光学異方性層側の面を下向きにして重ねた。このとき、被認証体1の光学異方性層の遅相軸と、偏光子1の光学異方性層の遅相軸とが直交するようにした。すると、図12に示すように、グレーの背景上に、赤色の文字で数字の「1」、緑色の文字で数字の「2」、青色の文字で数字の「3」が観察された。この場合には、遅相軸が直交しているので、被認証体1の光学異方性層のレターデーションと、偏光子1の光学異方性層のレターデーションの差に応じて発色する色が決まる。この値が、0nm付近であれば、グレーに発色し、175〜200nm付近であれば、青色に発色し、350nm付近であれば赤色に発色し、500〜530nm付近であれば、緑色に発色する。
【0163】
実施例2
拡散面光源の上に偏光子2−1を光学異方性層が上になるように置いた。その上に被認証体2の光学異方性層側の面が上になるように重ね、さらに、偏光子2−2を光学異方性層の面が下向きになるように重ねた。このとき、偏光子2−1、被認証体2、偏光子2−2の光学異方性層の遅相軸が全て平行になるようにした。すると、図13に示すように、青色の背景上に、赤色の文字で英文字の「O」、緑色の文字で英文字の「K」が観察された。この場合には、遅相軸が全て同一の方向を向いているので、被認証体2の支持体、及び光学異方性層のレターデーションと、偏光子2−1の光学異方性層のレターデーション、及び偏光子2−2の光学異方性層のレターデーションとの和に応じて発色する色が決まる。この値が、457nm付近であれば、赤色に発色し、604nm付近であれば青色に発色し、752nm付近であれば、緑色に発色する。
【0164】
実施例3
拡散面光源の上に偏光子3−1をパネル面が上になるように置いた。その上に被認証体3を、その遅相軸がy軸方向となるように配置した。さらに、その上に、市販の偏光板を、その透過軸がy軸方向から、時計回りに45°となるように配置した。すると、図14に示すように、青色の背景上に、赤色の文字で英文字の「O」、緑色の文字で英文字の「K」が観察された。実施例2と同様に、この場合にも、遅相軸が同一の方向を向いているので、被認証体3の支持体、及び光学異方性層のレターデーションと、偏光子3の光学異方性層のレターデーションとの和に応じて発色する色が決まる。この値が、457nm付近であれば、赤色に発色し、604nm付近であれば青色に発色し、752nm付近であれば、緑色に発色する。
本発明においては、暗号にあたる偏光板3に与える情報は、容易に変更することが可能であり、情報の秘匿性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】複屈折パターンの例を示す図である。
【図2】本発明の認証システムで用いられる反射型の複屈折パターン認証装置例の概略側面図である。
【図3】本発明の認証システムで用いられる透過型の複屈折パターン認証装置例の概略側面図である。
【図4】撮像画像と認証結果とを表示する複屈折パターン認証装置の例を示す図である。
【図5】実施例で用いたフォトマスクIのパターンを示す図である。
【図6】実施例で用いたフォトマスクIIのパターンを示す図である。
【図7】実施例で用いたフォトマスクIIIのパターンを示す図である。
【図8】実施例で用いたフォトマスクIVのパターンを示す図である。
【図9】実施例で用いたフォトマスクVのパターンを示す図である。
【図10】実施例で用いたフォトマスクVIのパターンを示す図である。
【図11】偏光子3の作製における各画素への電圧印加のパターンを示す図である。
【図12】実施例1で得られた潜像のパターンを示す図である。
【図13】実施例2で得られた潜像のパターンを示す図である。
【図14】実施例3で得られた潜像のパターンを示す図である。
【符号の説明】
【0166】
1 複屈折パターン
2 光源
3 偏光子
4 試料台又は被認証物
5 受光部(観察部)
6 受光部 (受光素子)
7 レンズ
10 認証結果表示部
11 画像表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は複屈折パターン認証装置及び物品認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板を介した観察においてパターンが視認される複屈折パターンは、偽造又は変造がしにくく、真偽判定の手段として有用である。特に真偽判定のために、特定の複屈折パターンに対し専用の認証装置を用いて、両者の組み合わせにより、識別可能な画像が表示されるシステムを暗号として用い、より信頼性の高い真偽判定が実現できる。
複屈折パターンの潜像がマルチカラー潜像であると、偽造又は変造がさらに困難となり好ましいが、従来の複屈折パターン認証装置は、特にマルチカラー潜像への対応が考慮されていなかった。
【0003】
例えば、特許文献1には、レターデーションがパターニングされた層を用いて視覚暗号化を行う認証システムについての開示があるが、視覚化される画像は白黒の表示であり、潜像の精密化には限界がある。特許文献2には、光軸がパターニングされた層を用いた光学保安デバイスについての開示があるが、暗号自体はモノクロである。
【特許文献1】特表2006-510051号公報
【特許文献2】特表2003-521074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は信頼性の高い真偽判定が可能である物品認証システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意研究を行った結果、パターニング光学異方性層、すなわち、複屈折性が異なる領域を複数含む層を有する複屈折パターンを組み合わせて用いることにより、マルチカラー潜像による認証システムの構築が可能であることを見出した。そしてこの知見を基に本発明を完成した。すなわち、本発明は下記[1]〜[15]を提供するものである。
【0006】
[1]偏光子、試料台、該偏光子を介して試料台に光を照射する光源、および、試料台側から反射される光を該偏光子を介して受光する受光部を含み、かつ、該偏光子の試料台側に、パターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を含む物品認証システム。
[2]前記試料台に配置され前記受光部において潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって反射支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む[1]に記載の物品認証システム。
[3]前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上の層内において、遅相軸の向きが均一であり、かつ、前記潜像が互いに異なる色を示す3種類以上の領域を有する[2]に記載の物品認証システム。
【0007】
[4]光源、第一の偏光子、試料台、第二の偏光子、および受光部をこの順に含み、
第一の偏光子および第二の偏光子からなる群から選択される少なくとも1つの偏光子の試料台側にパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を含む物品認証システム。
[5]前記試料台に配置され前記受光部において潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって透明支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む[4]に記載の物品認証システム。
[6]前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上の層内において遅相軸の向きが均一であり、かつ、前記潜像が互いに異なる色を示す3種類以上の領域を有する[5]に記載の物品認証システム。
【0008】
[7]前記のパターニング光学異方性層のいずれか1つ以上が、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して重合固定化して形成した層である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の物品認証システム。
[8]前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上が液晶パネルである[1]〜[7]のいずれか一項に記載の物品認証システム。
[9]偽造・変造防止システムとして用いられる[1]〜[8]のいずれか一項に記載の物品認証システム。
【0009】
[10]偏光子、試料台、該偏光子を介して試料台に光を照射する光源、および、試料台側から反射される光を該偏光子を介して受光する受光部を含み、かつ、該偏光子の試料台側に、パターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置。
[11][10]に記載の装置により潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって、反射支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品。
[12][10]に記載の装置に用いるための、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する偏光板。
【0010】
[13]光源、第一の偏光子、試料台、第二の偏光子、および受光部をこの順に含み、
第一の偏光子および第二の偏光子からなる群から選択される少なくとも1つの偏光子の試料台側にパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置。
[14][13]に記載の装置により潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって、透明支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品。
[15][13]に記載の装置に用いるための、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する偏光板。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、信頼性の高い真偽判定が可能である物品認証システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本明細書において、レターデーション又はReは面内のレターデーションを表す。面内のレターデーション(Re(λ))はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるレターデーション又はReは、545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0014】
本明細書において、複屈折パターンとは、複屈折性が異なる領域を複数含むパターンを意味する。複屈折パターンを有する物品は、通常シールなどシート状のものであればよく、又は、複屈折性が異なる領域を複数含むパターンをその一部に有する如何なる物品であってもよい。複屈折パターンを有する物品は、通常、パターニング光学異方性層、すなわち、複屈折性が異なる領域を複数含む層を有する。複屈折性が異なる領域はレターデーション及び/又は光軸方向が互いに異なる領域であればよい。なお、本明細書において「光軸」というとき、「遅相軸」又は「透過軸」を意味する。本明細書において「レターデーション及び/又は光軸方向が互いに異なる領域を2つ以上有する」ことを「レターデーション及び/又は光軸方向をパターン状に有する」又は「レターデーション及び/又は光軸方向がパターニングされている」という場合がある。複屈折パターンは複屈折性が異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。上記の複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。また、パターニング光学異方性層は、単層であっても、複数の層が積層されていてもよい。複屈折パターンを有する物品は通常平面(膜又はシート)状の形状を有していればよい。また、上記領域は平面の法線方向から複屈折パターンを観察した場合に認識されるものであるため、この平面の法線と平行な面により分割された領域となっていればよい。
【0015】
本明細書において「潜像」とは、偏光子等を介しない通常の視認では像が認識されないが、偏光子を介することにより、より好ましくは、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を用いることにより、可視化される像を意味する。可視化される像は互いに異なる色を示す領域を2つ以上含む限り特に限定されないが、黒以外の2種の色を示す領域を含むことが好ましい。互いに異なる色を示す領域は3つ以上であることも、好ましい。互いに異なる色を示す領域を3つ以上有するためには、反射、または、透過スペクトルの異なる領域を3つ以上有していればよい。すなわち、入射偏光が各光学異方性層を通過した後、つまり、出射側の偏光板に入射する直前において、光の偏光状態の異なる領域が3種類以上あればよい。従って、必ずしも、各光学異方性層が、3種類以上の異なるレターデーションを有している必要はない。すなわち、例えば、互いに等しい光軸を有する2層の光学異方性が積層されている場合を考える。A、B、C、Dの4つの領域において、第一の光学異方性層のレターデーションが、0nm、0nm、100nm、100nm、第二の光学異方性層においては、0nm、200nm、0nm、200nmである場合を考えると、各領域におけるレターデーションの合計値は、0nm、200nm、100nm、300nmとなり、4色の互いに異なる色を表現することができる。
可視化される像は、文字又は絵を示す像であることが好ましい。
【0016】
本明細書において、「認証」は、「識別」、「有無の確認」または「真偽判定」の意味を含む。複屈折パターンは、医薬品、家電製品、衣料品といった、各種商品のタグなどに設けられればよく、本発明のシステムを利用して複屈折パターンを元に物品を認証することでブランドプロテクションに用いることができる。あるいは、クレジットカード、入退室管理カードといったIDカード、紙幣、小切手、商品券等の有価証券に用いることで、偽造防止効果が期待される。複屈折パターンは、反射支持体上にパターニング光学異方性層を有するものであってもよく、透明支持体上にパターニング光学異方性層を有するものであってもよい。
【0017】
複屈折パターンの例としてはレターデーション及び/又は光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層を含む物品が挙げられる。複屈折パターンの例を図1に示す。図1(a)はレターデーションがパターニングされている例である。図1(a)に示す例においてはa nm, b nm, c nm, 及びd nmで示されるレターデーションは互いに異なるものとする。図1(b)は光軸方向がパターニングされている例である。図1(b)において矢印は光軸方向を示す
光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、特表2001−525080号公報に記載の方法で得ることができる。
また、レターデーションが面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、以下に詳細に説明するような複屈折パターン作製材料を用いた方法で作製することができる。
【0018】
[複屈折パターン作製材料]
(光学異方性層)
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は高分子を含む。なお、複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。高分子を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。該光学異方性層中の高分子は未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応して高分子鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によって高分子鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレターデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなると考えられるためである。
【0019】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
【0020】
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であればよく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
【0021】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。
また、後述するように、本発明の光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0022】
(液晶性化合物を含有する組成物を重合固定化してなる光学異方性層)
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易である。
【0023】
(液晶性化合物)
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0024】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0025】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0026】
【化1】
【0027】
L1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、およびNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q1−L1およびQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−およびCH2=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0028】
A1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5)n−W2−
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、および−O−CH2−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0029】
W1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0030】
【化2】
【0031】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。前記ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0039】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
上記ディスコティック化合物の好ましい例を下記に示す。
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
【0046】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
【0047】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0048】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する所定の配向層の上に塗布することで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0049】
(液晶性化合物の配向状態の固定化)
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0050】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0051】
(偏光照射による光配向)
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。この偏光照射は上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねてもよいし、先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行ってもよいし、非偏光照射で先に固定化してから偏光照射によって光配向を行ってもよいが、偏光照射のみを行うか先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行うことが望ましい。偏光照射が上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねる場合であってかつ重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合、偏光照射は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。偏光照射によって硬化する液晶性化合物の種類については特に制限はないが、反応性基としてエチレン不飽和基を有する液晶性化合物が好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0052】
(偏光照射後の紫外線照射による後硬化)
前記光学異方性層は、最初の偏光照射(光配向のための照射)の後に、偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射してもよい。最初の偏光照射の後に偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射することで反応性基の反応率を高め(後硬化)、密着性等を改良し、大きな搬送速度で生産できるようになる。後硬化は偏光でも非偏光でも構わないが、偏光であることが好ましい。また、2回以上の後硬化をすることが好ましく、偏光のみでも、非偏光のみでも、偏光と非偏光を組み合わせてもよいが、組み合わせる場合は非偏光より先に偏光を照射することが好ましい。紫外線照射は不活性ガス置換してもしなくてもよいが、特に重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。非偏光照射の場合は200〜450nmにピークを有することが好ましく、250〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0053】
(ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化)
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0054】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0055】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0056】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0057】
(水平配向剤)
前記光学異方性層の形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
【0058】
【化15】
【0059】
式中、R1、R2およびR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2およびX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基またはフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2およびX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−およびSO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい
【0060】
【化16】
【0061】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、およびR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0062】
【化17】
【0063】
式中、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8およびR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(1)におけるR1、R2およびR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−99248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0064】
【化18】
【0065】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0066】
(延伸によって作製される光学異方性層)
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0067】
(光学異方性の後処理)
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。本発明においては、この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0068】
(複屈折パターン作製材料)
複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経る事で複屈折パターンを得る事ができる材料である。複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、後粘着層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、転写接着層、または力学特性制御層を有していてもよい。
【0069】
(配向層)
上記した様に、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0070】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0071】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いてもよい。かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0072】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0073】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0074】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiO2を代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0075】
(後粘着層)
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための後粘着層を有していてもよい。後粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製の為のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。
【0076】
(2層以上の光学異方性層)
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0077】
遅相軸が同じ向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、大きなレターデーションを有するパターンを作製する場合が挙げられる。手持ちの光学異方性層では一層では必要とするレターデーションに足りない場合でも、二層三層と積層してからパターン露光することで大きなレターデーションを有する領域を含むパターン化光学異方性層を容易に得ることができる。
【0078】
(複屈折パターン作製材料の作製方法)
複屈折パターン作製材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、支持体上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて支持体上に光学異方性層を転写する、自己支持性の光学異方性層として形成する、自己支持性の光学異方性層上に他の機能性層を形成する、自己支持性の光学異方性層に支持体に貼合する、などの方法が挙げられる。このうち光学異方性層の物性に制約を加えないという点からは支持体上に光学異方性層を直接形成する方法と転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法が好ましく、さらに支持体に対する制約が少ない点から転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0079】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
以下に、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料について説明する。なお、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という場合がある。
【0080】
(仮支持体)
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0081】
(転写用接着層)
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板等に用いられる場合に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。
【0082】
粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0083】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0084】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0085】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0086】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、ポジ型でもネガ型でもよく特に限定はなく、市販のレジスト材料を用いることもできる。転写接着層として用いられる場合、光照射によって接着性を発現することが好ましい。また、液晶表示装置用基板等の物品の製造工程における環境上や防爆上の問題から、有機溶剤が5%以下の水系現像であることが好ましく、アルカリ現像であることが特に好ましい。また、感光性樹脂層は少なくとも(1)ポリマーと、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。
【0087】
以下、これら(1)〜(3)の成分について説明する。
(1)ポリマー
ポリマー(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーからなるアルカリ可溶性樹脂が好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報および特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜70質量%が一般的であり、25〜65質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。
【0088】
(2)モノマー又はオリゴマー
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマーおよびオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報および特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報および特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、着色樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0089】
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
【0090】
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0091】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。前記界面活性剤は、感光性樹脂組成物と混ざり合うものであれば使用可能である。本発明に用いる好ましい界面活性剤としては、特開2003−337424号公報[0090]〜[0091]、特開2003−177522号公報[0092]〜[0093]、特開2003−177523号公報[0094]〜[0095]、特開2003−177521号公報[0096]〜[0097]、特開2003−177519号公報[0098]〜[0099]、特開2003−177520号公報[0100]〜[0101]、特開平11−133600号公報の[0102]〜[0103]、特開平6−16684号公報の発明として開示されている界面活性剤が好適なものとして挙げられる。より高い効果を得る為にはフッ素系界面活性剤、および/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤、フッソ原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましく、フッ素系界面活性剤が最も好ましい。フッ素系界面活性剤を用いる場合、該界面活性剤分子中のフッ素含有置換基のフッ素原子数は1〜38が好ましく、5〜25がより好ましく、7〜20が最も好ましい。フッ素原子数が多すぎるとフッ素を含まない通常の溶媒に対する溶解性が落ちる点で好ましくない。フッ素原子数が少なすぎると、ムラの改善効果が得られない点で好ましくない。
特に好ましい界面活性剤として、下記一般式(a)および、一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有するものが挙げられる。
【0092】
【化19】
【0093】
式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜18の整数、mは2〜14の整数を示す。p、qは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも同時に0になる場合は含まない。
【0094】
特に好ましい界面活性剤の一般式(a)で表されるモノマーをモノマー(a)、一般式(b)で表されるモノマーをモノマー(b)と記す。一般式(a)に示すCmF2m+1は、直鎖でも分岐鎖でもよい。mは2〜14の整数を示し、好ましくは4〜12の整数である。CmF2m+1の含有量は、モノマー(a)に対して20〜70質量%が好ましく、特に好ましくは40〜60質量%である。R1は水素原子またはメチル基を示す。またnは1〜18を示し、中でも2〜10が好ましい。一般式(b)に示すR2およびR3は、各々独立に水素原子またはメチル基を示し、R4は水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基を示す。pおよびqは0〜18の整数を示すが、p、qがいずれも0は含まない。pおよびqは好ましくは2〜8である。
【0095】
また、特に好ましい界面活性剤1分子中に含まれるモノマー(a)としては、互いに同じ構造のものでも、上記定義範囲で異なる構造のものを用いてもよい。このことは、モノマー(b)についても同様である。
特に好ましい界面活性剤の重量平均分子量Mwは、1000〜40000が好ましく、更には5000〜20000がより好ましい。界面活性剤は前記一般式(a)および一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有することを特徴とする。特に好ましい界面活性剤100質量部は、モノマー(a)が20〜60質量部、モノマー(b)が80〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましく、更には、モノマー(a)が25〜60質量部、モノマー(b)が60〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましい。
【0096】
モノマー(a)および(b)以外の共重合可能なモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンゼンスルホン酸ソーダ、アミノスチレン等のスチレンおよびその誘導体、置換体、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、スチレンスルホン酸無水マレイン酸、ケイ皮酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体等が挙げられる。
特に好ましい界面活性剤は、モノマー(a)、モノマー(b)等の共重合体であるが、そのモノマー配列は特に制限はなくランダムでも規則的、例えば、ブロックでもグラフトでもよい。更に、特に好ましい界面活性剤は、分子構造および/又はモノマー組成の異なるものを2以上混合して用いることができる。
前記界面活性剤の含有量としては、感光性樹脂層の層全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、特に0.1〜7質量%が好ましい。界面活性剤は、特定構造の界面活性剤とエチレンオキサイド基、およびポリプロピレンオキサイド基とを所定量含有するもので、感光性樹脂層に特定範囲で含有することにより該感光性樹脂層を備えた液晶表示装置の表示ムラが改善される。全固形分に対して0.01質量%未満であると、表示ムラが改善されず、10質量%を超えると、表示ムラ改善の効果があまり現れない。上記の特に好ましい界面活性剤を前記感光性樹脂層中に含有させカラーフィルタを作製すると、表示ムラが改良される点で好ましい。
【0097】
好ましいフッ素系界面活性剤の具体例としては、特開2004−163610号公報の段落番号[0054]〜[0063]に記載の化合物が挙げられる。また、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、又は、シリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。本発明においては、一般式(a)で表されるモノマーを含まないフッ素系界面活性剤である、特開2004−331812号公報の段落番号[0046]〜[0052]に記載の化合物を用いることも好ましい。
【0098】
(力学特性制御層)
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0099】
(剥離層)
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層や力学特性制御層などが剥離層としての機能を有してもよい。
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0100】
(表面保護層)
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず、仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、隣接する層(例えば転写接着層)から容易に分離されねばならない。表面保護層の材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0101】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0102】
(転写材料を被転写材料上に転写する方法)
転写材料を支持体等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、被転写材料上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0103】
(転写に伴う工程)
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0104】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層の遅相軸と新たに転写する転写材料の光学異方性層と遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写する事は遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレターデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0105】
(複屈折パターンを有する物品の作製)
複屈折パターン作製材料に少なくとも、パターン露光及び加熱(ベーク)をこの順に行うことにより、複屈折パターンを有する物品を作製することができる。
【0106】
(パターン露光)
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光を意味する。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。
前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。
【0107】
(パターン露光時の露光条件)
本発明の製造方法は、複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光(パターン露光)を行うことを特徴とする。このときの「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。本発明の製造方法はすなわち、パターン露光時に、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域を生ずるような形で露光が行われていることを特徴とする。
【0108】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレターデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレターデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0109】
(マスク露光)
露光条件の異なる露光領域を生じる手段として、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の元で同一時間の露光を行う事で異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
またレーザーなどを用いた走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能である。
【0110】
また、複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行う手法を併用してもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0111】
(加熱(ベーク))
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。
【0112】
[支持体]
複屈折パターンを有する物品は透明支持体又は反射支持体を有していることが好ましい。支持体には特に限定はないが、図2に示す反射システムの場合には後述する反射層を有する支持体または、反射機能を有する支持体を用いればよく、図3に示す透過システムの場合には透明支持体を用いればよい。反射機能を有する支持体の例としてはアルミホイル、ステンレス、のほか、光沢のある印刷を任意の支持体に設けることによって反射機能を付与してもよい。またホログラム加工を施した支持体を用いることもできる。支持体のそのほかの例としてはセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、布などが挙げられる。支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。複屈折パターンを有する物品は着色支持体を含むものであってもよい。すなわち、複屈折パターンを有する物品は認証装置を用いない目視でも視認可能なパターンが描かれていてもよい。特定の色で複屈折パターンを読み込む場合は、それ以外の色の影響を受けないのでそれ以外の色で着色支持体を用いることができる。
【0113】
なお、本発明のシステムで用いられる複屈折パターン認証装置において、パターニング光学異方性層として、レターデーションが面内でパターニングされた光学異方性層を設ける場合は、偏光子を支持体として、上記と同様の手順を用いて作製してもよい。このように作製された偏光子とパターニング光学異方性層を含む偏光板は、本発明の装置の構成部品として用いることができる。
【0114】
[反射層]
本発明の光学素子において反射層又は上記のような反射機能を有する支持体を用いることによって、2層以上のパターニング光学異方性層から見て反射層又は支持体の反対側面から偏光板を介して観察することによって、複屈折パターンによる潜像を可視化することができる。
反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。このような金属層を蒸着した支持体でもよいし、金属箔を箔押しした支持体でもよい。あるいはゴールドやシルバー等のインキで印刷した支持体を用いることもできる。完全鏡面である必要はなく、表面にマット加工が施されていてもよい。
【0115】
[複屈折パターン認証装置]
本発明の認証システムで用いられる複屈折パターン認証装置は、光源と、該光源の光を透過させて偏光とする第一の偏光子と、試料台と、該偏光を被認証物に照射して生じる反射光または透過光を透過させて検出光とする第二の偏光子と、該検出光を観察する手段とを有し、少なくとも一枚の偏光子の被認証物側の面に複屈折パターンを有している。また、後述の反射型の認証システムにおける装置においては、第一の偏光子と第二の偏光子とは同じであってよい。本発明の認証システムにおける装置は、少なくとも一枚の偏光子の試料台(被認証物)側にパターニング光学異方性層を有する。例えば、少なくとも一枚の偏光子の試料台(被認証物)側の表面に、パターニング光学異方性層が形成されていればよい。
【0116】
[認証システム]
本発明の認証システムにおいては、被検体における複屈折パターンと、認証装置に設けられたパターニング光学異方性層における複屈折性が異なる領域のパターンとを組み合わせることによって、潜像を与える、すなわち潜像を可視化するパターンとすればよい。このようにすることによって、本装置を被認証物である複屈折パターンに付された暗号を解読するためのキーとして用いることができる。
【0117】
暗号を更新することで、セキュリティレベルを向上させることも可能である。更新は好ましくは定期的に行われればよい。異なる複屈折パターンの施された偏光子と交換することで暗号を更新することもできるが、複屈折パターンを電気的に制御できるようにしておけば、データを入力するだけで暗号を更新することができ、好ましい。この場合、暗号データはインターネットや電子メールなどによって配信されてもよい。このような複屈折パターンとして、液晶パネルを挙げることができ、その片面にシート状の偏光子を粘着剤等で貼り付けて使用することができる。
【0118】
液晶パネルとは二枚の透明基板間に液晶組成物が封入されたものである。透明基板の内面には、液晶に電圧を印加するための透明電極が格子状に配置されており、画素ごとに液晶に電圧を加えることで、液晶分子の配向、すなわちレターデーションを制御することができる。透明電極としては、ITOが好ましく用いられる。アクティブマトリクス駆動、あるいは、単純マトリクス駆動によって、ドットマトリクス表示が可能となる。
表示方式としては、TN、IPS、VA等の方式が知られているが、各種モードを用いることができる。
【0119】
偏光子の光軸と、偏光子上のパターニング光学異方性層1及び被認証体のパターニング光学異方性層2におけるレターデーション及び光軸が決まると、観察される反射光、あるいは、透過光の色が決まる。例えば、反射モードにおいて、上記の層1と層2の光軸方向が同じであって、この光軸と偏光子の光軸とのなす角が45°である場合、偏光子に施された複屈折パターンのレターデーションと、被認証体に施された複屈折パターンのレターデーションの和が350〜370nm、あるいは、600〜700nmである場合、反射色は赤色を呈する。440〜560nmである場合には緑色、160〜220nmである場合には青色を呈する。
【0120】
上記の層1と層2の光軸とが垂直である場合には、そのレターデーションの差が上記値となるようにすれば、反射色を制御することができる。
また、それ以外の角度で配置された場合については、その反射色、あるいは、透過色を光学シミュレーションによって予測することができる。
【0121】
[受光部]
検出光を観察するための手段は、目視により観察するための光の表示部位(単なる窓)であってもよい。また、検出光を観察するための手段として撮像素子を用いてもよい。
撮像素子としては、CMOSイメージセンサ、CCD等を好適に用いることができる。二次元アレイを用いる他、ラインセンサや単独の受光素子を走査することで、撮像素子として、二次元画像を取得してもよい。受光素子としては、フォトダイオードなどを利用することができる。
また、カラーフィルタが設けられた撮像素子を用いてもよい。
【0122】
撮像素子の入射側には、適宜、レンズを配置することが好ましい。
被認証体の全面をスキャンするためには、被認証物に対し、光源と撮像素子とを含む撮像系を相対的に移動させることが好ましい。被認証物、または撮像系の、どちらを移動させてもよい。被認証物を固定し、光源・撮像素子を走査するフラットベッド型、あるいは、光源と撮像素子とを一体化させた小型ボディを手でスキャンさせるハンディスキャン型でもよい。ハンディスキャン型の場合、被認証物はシート状でなくてもよい。被認証物が紙やプラスチックフィルムのようなものである場合には、光源・撮像素子を固定して、自動原稿送り装置、あるいはドラムスキャナにより被認証物を搬送させることもできる。
【0123】
本認証システムにおいては、外光の映り込みを防止する目的で、観察部以外は、遮光されていることが好ましい。また、本認証システムには、サンプル挿入口が設けられていてもよい。
【0124】
3種類以上の色から構成される潜像を撮像素子により取得し、それによって真偽判断する場合には、カラーフィルタが設けられた撮像素子を用いるか、あるいは、光源を多色化することが好ましい。前者の例として、後者の例としては、例えば、蛍光灯等の白色光を、偏光板を介して被検体に照射して、カラーCCDで潜像を取得する方法が挙げられる。例えば、RGBに発光するLEDを、偏光板を介して被検体に照射して、CMOSイメージセンサで潜像を取得する方法が挙げられる。
【0125】
[光源]
光源としては各種白色光源又は単色光源を用いることができる。
白色光源としては、蛍光灯、冷陰極管、白色LEDなどが挙げられる。
潜像のSN比を向上させるために、潜像の複数の領域からの反射スペクトル、あるいは透過スペクトルを比較して、その反射率、あるいは透過率の差の大きい波長にピーク波長を有する単波長光源を用いてもよい。この場合、ピークの半値幅は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。このような光源としては、白色光源にフィルタを設けたものを用いてもよいが、発光ダイオード、あるいは、半導体レーザを好ましく用いることもできる。着色した光源を用いる場合、光源は互いにピーク波長の異なる2つ以上の単波長光を発してもよい。一度に異なる単波長光を発することができるようにアレイ構造の光源(LEDアレイなど)を用いてもよい。例えば、R、G、Bに発色するLEDをアレイ状に配列することもできる。色ごとに、独立にオン、オフを切り替えられるようにしてもよい。
【0126】
光源の発する光の波長又は撮像素子において選択される波長は、潜像の色によって選択することが好ましい。例えば、白背景上に描かれた赤いパターンを読み取るには、反射率差の大きい青色、あるいは緑色の単波長光を用いると、読み取りやすい。逆に黒背景上に描かれた赤いパターンを読み取るには、赤色の単波長光を用いると読み取りやすい。このように、潜像に応じて、光源に用いる波長を選択することで、読み取り易さが向上する。潜像が黒及び白以外の色を2色以上含むマルチカラー潜像である場合には、光の三原色である赤色、緑色、青色を光源の光の波長、または、撮像素子に用いられるフィルタが選択する波長として用いられることが好ましい。例えば、赤色、緑色、青色に発色する三種類の手段を含む光源を用いることができる。この場合、光源として、赤色、緑色、青色の発光ダイオードを配列したものを用いる方法や、赤色、緑色、青色に発色する面光源を3箇所から被認証物に照射する方法などが挙げられる。
【0127】
あるいは、全面に着色した反射支持体を用いてもよい。例えば、赤い反射支持体を用いた場合、読み取り光は赤色である必要がある。この場合、潜像の各領域における赤色の光に対する反射率の違いによって、潜像にオン・オフをつけることができる。
【0128】
光源に単色光を用いる利点として、潜像画像のSN比を向上させられることが挙げられる。また、真偽判定の手段として用いる複屈折パターンの潜像に使用する色(反射色、あるいは透過色)の選択肢を広げることができる、という利点がある。また、上記のように着色した支持体を用いたりすることも可能となる。
【0129】
目視により認証を行う(撮像素子等を用いない)場合等においては、被認証物の複屈折パターンに均一に照明できるよう、拡散面光源であることが好ましい。拡散面光源としては、蛍光灯面光源、ディスプレイ用途の冷陰極間バックライト、あるいは、LEDバックライト等を用いることができる。撮像素子を用いて認証を行う場合には、ライン光源を走査してもよい。LEDライン光源、レーザライン光源の他、蛍光灯、ハロゲン、キセノン、メタルハライドのライン照明を好適に用いることができる。光ファイバをライン光源としてもよい。あるいは、点光源にガルバノミラーやポリゴンミラーを組み合わせてサンプル全面をスキャンする走査光学系を用いることも好ましい。光源と被検体の間には、適宜、集光レンズ、あるいは結像レンズを配置することが好ましい。
【0130】
[偏光子]
光源の光を透過させて偏光とする偏光子と反射光または透過光を透過させて検出光とする偏光子は同一であっても別個(種類としては同一であるものを含む)のものであってもよい。後述のように透過型の場合は別個のものを用いる。後述のように反射型の場合は同一とすることができるが、別個のものを用いてもよい。同一のものを用いた場合は装置が簡素な構造になるという利点があり、別個のものを用いると個々に最適の透過軸方向の調整が可能であるとの利点がある。
偏光子としては、市販されているシート状の偏光子を好ましく用いることができる。
本発明の認証装置は偏光子の光軸と被認証物の光軸のなす角を調整できるように、それぞれの偏光子を回転させる機構を備えていてもよい。
【0131】
[複屈折パターン認証装置の例]
本発明の反射型の認証システムの構成例の概略図を図2及び図3に示す。図2は、光源と、該光源の光を透過させて偏光とするとともに該偏光を被認証物に照射して生じた反射光を透過させて検出光とする偏光子からなる反射型の複屈折パターン認証装置の例の概略図である。偏光子の被認証物側の面には、パターニング光学異方性層が形成されている。このような装置は図に示すように被認証物が反射支持体を有する場合に用いることができる。光源は、発する光が被認証物に効率的に照射されて検出光を観察する手段に反射するように配置される。偏光子は被認証物と光源との間に配置され、偏光子及び被認証物は光源からの光を複屈折パターンの識別に望ましい方向に偏光させるように配置される。通常複屈折パターン(被認証物)の各領域の光軸方向と偏光子の光軸方向が45°となるように配置することが好ましい。被認証物は、試料台に設置される。試料台は、被認証物を挿入する形態となっていることが好ましい。被認証物と予め決定された位置に正確に配置されることが好ましい。また、被認証物は偏光子上のパターニング光学異方性層に対して10cm以内、好ましくは5cm以内、より好ましくは1cm以内 程度の距離で配置されることが好ましく、接するように配置されることが最も好ましい。解読された暗号情報は、受光部(窓)から目視観察してもよいし、受光素子で得られた情報を出力させてもよい。目視観察する場合においては、被認証物の複屈折パターンに均一に照明できるよう、拡散面光源であることが好ましい。
【0132】
図3に、光源と、該光源の光を透過させて偏光とする偏光子と、該偏光子とは別の該偏光を被認証物に照射して生じた透過光を透過させて検出光とする偏光子からなる透過型の複屈折パターン認証装置の概略図を示す。少なくとも一方の偏光子の被認証体側の面には、パターニング光学異方性層が形成され、図3は双方に形成されている例である。このような装置は図に示すように被認証物が透明支持体を有する場合に用いることができる。光源は、発する光が偏光子、被認証物、偏光子に効率的に照射されて検出光を観察する手段に到達するように配置される。2つの偏光子は被認証物がその間になるように配置され、偏光子及び被認証物は光源からの光を複屈折パターンの識別に望ましい方向に偏光させるように配置される。通常複屈折パターン(被認証物)の各領域の光軸方向と偏光板の光軸方向とが45°となるように配置することが好ましく、2つの偏光子はクロスニコル又はパラニコルの配置となっていることが好ましい。被認証物は、試料台に設置される。試料台は、被認証物を挿入する形態となっていることが好ましい。潜像(解読された暗号情報)は、受光部(窓)から目視観察してもよいし、受光素子で得られた情報を、装置に画像表示部(図4参照)を設けて出力させてもよい。目視観察する場合においては、被認証物の複屈折パターンに均一に照明できるよう、拡散面光源であることが好ましい。
【0133】
被認証物がパターニング光学異方性層のほか、一層の偏光層が積層されている場合、認証装置は、被認証物のパターニング光学異方性層の面側に偏光子を一枚有していればよい。偏光子が設けられていない場合には、複屈折パターンを挟むように、二枚の偏光子を配置する必要がある。一般的には、二枚の偏光子は、クロスニコルとなるように設置することがコントラストの観点から好ましいが、複屈折パターンに応じて、偏光子の光軸角度を選択することができる。このため、偏光子の光軸角度を可変にしておくことが好ましい。また、偏光子は二枚配置できるようにしておいて、少なくとも一枚を着脱可能なようにしておくことが好ましい。
【0134】
真偽判定を行うためには、まず、撮像素子を通して、認証したい真の複屈折パターンから得られた画像信号をデジタル化する必要がある。その後、必要に応じて、ノイズを除去したり、あるいは、拡大、縮小、回転などの補正を行ったりすることが好ましい。取得画像は、ディスプレイ等に表示してもよい。このようにして真の複屈折パターンの画像はシステムに記憶される。
その後、被認証物を同様に認証して得られた画像が、記憶された真の複屈折パターンの画像と一致するかが判定される。この判定はシステムのパターンマッチング機能により行われる。
【0135】
パターンマッチングの方法としては、被認証物の画像と真の画像(テンプレート)の、各画素における輝度データの相関から真偽判定を行うテンプレートマッチングが好適に用いられる。
このようにして、画像が一致する場合には真、画像が一致しない場合には、偽として得られた真偽判定ができる。この結果の表示を可能とするために、システムはディスプレイ又はランプやブザー等の表示手段(認証結果表示部)を有することが好ましい。(図4)
【0136】
複屈折パターン潜像が文字データを含む場合には、システムは光学文字認識(OCR)機能を有していてもよい。この場合には、認識された文字をそのままディスプレイ等に表示してもよい。あるいは、認識された文字が予め入力しておいた真の文字と一致したかの真偽判定結果のみを、前記の方法で表示してもよい。
【0137】
複屈折パターンによっては、偏光板の光軸と複屈折パターン(光学異方性層)の光軸とのなす角を調整する必要がある。幅寄せローラー等を用いて、これらの光軸が適切な関係となるように調整してもよいが、被認証物の形状によっては、それが困難な場合もある。あるいは、複屈折パターンを更新した場合、偏光板の光軸を変更したい場合もある。
この観点からも上記のように偏光板は回転機構を有していることが好ましい。更に、偏光板の固定機構を有していてもよい。これらの機構は手動でも自動でもよい。自動で行う場合には、前述のパターンマッチングとの組み合わせにより、偏光子の光軸を検出し、適切な角度となるように調整することが好ましい。
【実施例】
【0138】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0139】
[サンプル作製]
(力学特性制御層用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、力学特性制御層用塗布液CU−1として用いた。
──────────────────────────────────―─────
力学特性制御層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―─────
メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、質量平均分子量=10万、Tg≒70℃)
5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、質量平均分子量=1万、Tg≒100℃)
13.74
BPE−500(新中村化学(株)製) 9.20
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製) 0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
──────────────────────────────────―─────
【0140】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
【0141】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
──────────────────────────────────―――――
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―――――
棒状液晶(LC−1−1) 32.59
水平配向剤(LC−1−2) 0.02
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―――――
【0142】
【化20】
【0143】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
──────────────────────────────────―
転写接着層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────―
【0144】
(複屈折パターンBP−1の作成)
(光学異方性層塗布サンプルTRC−1および複屈折パターン作製用転写材料TR−1の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ4.3μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。TRC−1の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
最後に、光学異方性層塗布サンプルTRC−1の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.2μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−1を作製した。
【0145】
(複屈折パターン作製材料BPM―1の作製:反射型測定被認証物作製用)
アルミニウムを蒸着したガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記複屈折パターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離した。この上に、再度同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−1をラミネートした。この際、先にラミネートした光学異方性層と後にラミネートした光学異方性層の両者の遅相軸の向きが概ね一致するように注意した。ラミネート後、仮支持体を剥離して複屈折パターン作製材料BPM−1を作製した。
【0146】
(複屈折パターン作製材料BPM―2の作製:透過型測定被認証物作製用)
被転写支持体を、洗浄したアルミニウム蒸着ガラスから、正面レターデーションが310nmの延伸フィルムに変更した以外は複屈折パターン作製材料BPM−1と同様にして、複屈折パターン作製材料BPM−1を作製した。このとき、延伸フィルムの遅相軸と各光学異方性層の遅相軸が一致するようにラミネートした。
【0147】
(複屈折パターン作製材料BPM―3の作製:偏光子用)
被転写支持体を、洗浄したアルミニウム蒸着ガラスから、サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板に変更した以外は複屈折パターン作製材料BPM−1と同様にして、複屈折パターン作製材料BPM−3Aを作製した。このとき、各光学異方性層の遅相軸の向きが偏光子の透過軸に対し時計まわりに45°となるようにラミネートした。
【0148】
(被認証体1の作製:実施例1の被認証物)
BPM−1に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる4つの領域を有するフォトマスクIを用いて露光照度6.25mW/cm2で13秒間の露光を行った。フォトマスクIは4つの領域1―A、1―B、1―C、1―Dからなる。そのパターンを図5に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの長辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表1に示す。
【0149】
【表1】
露光後のBPM−1に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、被認証体1を作製した。
【0150】
(被認証体2の作製:実施例2の被認証物)
BPM−2に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる3つの領域を有するフォトマスクIIを用いて露光照度6.25mW/cm2で1.5秒間の露光を行った。フォトマスクIIは3つの領域2―A、2―B、2―Cからなる。そのパターンを図6に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表2に示す。
【0151】
【表2】
露光後のBPM−2に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、被認証体2を作製した。
【0152】
(被認証体3の作製:実施例3の被認証物)
BPM−2に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる4つの領域を有するフォトマスクIIIを用いて露光照度6.25mW/cm2で1.5秒間の露光を行った。フォトマスクIIIは3つの領域BP―3A、BP―3B、BP―3Cからなる。そのパターンを図7に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表3に示す。
【0153】
【表3】
露光後のBPM−2に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、被認証体3を作製した。
【0154】
(偏光子1の作製:実施例1の偏光子)
BPM−3に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる4つの領域を有するフォトマスクIVを用いて露光照度6.25mW/cm2で5秒間の露光を行った。フォトマスクIVは4つの領域1P−A、1P―B、1P―C、1P―Dからなる。そのパターンを図8に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表4に示す。
【0155】
【表4】
露光後のBPM−1に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、偏光子1を作製した。
【0156】
(偏光子2−1の作製:実施例2の下側偏光子)
BPM−3に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる3つの領域を有するフォトマスクVを用いて露光照度6.25mW/cm2で1.5秒間の露光を行った。フォトマスクVは4つの領域2P1−A、2P1―B、2P1―Cからなる。そのパターンを図9に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表5に示す。
【0157】
【表5】
露光後のBPM−3に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、偏光子2−1を作製した。
【0158】
(偏光子2−2の作製:実施例2の上側偏光子)
BPM−3に対してミカサ社製M−3Lマスクアライナーと濃度の異なる3つの領域を有するフォトマスクVIを用いて露光照度6.25mW/cm2で1.5秒間の露光を行った。フォトマスクVIは3つの領域2P2−A、2P2―B、2P2―Cからなる。そのパターンを図10に示す。光学異方性層の遅相軸がパターンの短辺方向となるようにフォトマスクを配置して露光した。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率、及び各々の領域に発現したレターデーションを表6に示す。
【0159】
【表6】
【0160】
露光後のBPM−3に対して230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、偏光子2−2を作製した。
(偏光子3の作製:実施例3の下側偏光子)
セルギャップ490nmの垂直配向液晶パネルを用意した。このパネルは、画素毎に電圧を印加できるようになっており、電圧を印加することによって、液晶はy軸方向にチルトするように設計されている。この液晶パネルの下面に、その透過軸が、y軸方向から時計まわりに45°となるように偏光板を用いて貼り付けた。この液晶パネルに、図11に示すようなパターンで各画素に電圧を印加した。各領域に印加した電圧、及び、発現したレターデーションを表7に示す。
【0161】
【表7】
【0162】
実施例1
被認証物1の光学異方性層側の面の上に、偏光子1を光学異方性層側の面を下向きにして重ねた。このとき、被認証体1の光学異方性層の遅相軸と、偏光子1の光学異方性層の遅相軸とが直交するようにした。すると、図12に示すように、グレーの背景上に、赤色の文字で数字の「1」、緑色の文字で数字の「2」、青色の文字で数字の「3」が観察された。この場合には、遅相軸が直交しているので、被認証体1の光学異方性層のレターデーションと、偏光子1の光学異方性層のレターデーションの差に応じて発色する色が決まる。この値が、0nm付近であれば、グレーに発色し、175〜200nm付近であれば、青色に発色し、350nm付近であれば赤色に発色し、500〜530nm付近であれば、緑色に発色する。
【0163】
実施例2
拡散面光源の上に偏光子2−1を光学異方性層が上になるように置いた。その上に被認証体2の光学異方性層側の面が上になるように重ね、さらに、偏光子2−2を光学異方性層の面が下向きになるように重ねた。このとき、偏光子2−1、被認証体2、偏光子2−2の光学異方性層の遅相軸が全て平行になるようにした。すると、図13に示すように、青色の背景上に、赤色の文字で英文字の「O」、緑色の文字で英文字の「K」が観察された。この場合には、遅相軸が全て同一の方向を向いているので、被認証体2の支持体、及び光学異方性層のレターデーションと、偏光子2−1の光学異方性層のレターデーション、及び偏光子2−2の光学異方性層のレターデーションとの和に応じて発色する色が決まる。この値が、457nm付近であれば、赤色に発色し、604nm付近であれば青色に発色し、752nm付近であれば、緑色に発色する。
【0164】
実施例3
拡散面光源の上に偏光子3−1をパネル面が上になるように置いた。その上に被認証体3を、その遅相軸がy軸方向となるように配置した。さらに、その上に、市販の偏光板を、その透過軸がy軸方向から、時計回りに45°となるように配置した。すると、図14に示すように、青色の背景上に、赤色の文字で英文字の「O」、緑色の文字で英文字の「K」が観察された。実施例2と同様に、この場合にも、遅相軸が同一の方向を向いているので、被認証体3の支持体、及び光学異方性層のレターデーションと、偏光子3の光学異方性層のレターデーションとの和に応じて発色する色が決まる。この値が、457nm付近であれば、赤色に発色し、604nm付近であれば青色に発色し、752nm付近であれば、緑色に発色する。
本発明においては、暗号にあたる偏光板3に与える情報は、容易に変更することが可能であり、情報の秘匿性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】複屈折パターンの例を示す図である。
【図2】本発明の認証システムで用いられる反射型の複屈折パターン認証装置例の概略側面図である。
【図3】本発明の認証システムで用いられる透過型の複屈折パターン認証装置例の概略側面図である。
【図4】撮像画像と認証結果とを表示する複屈折パターン認証装置の例を示す図である。
【図5】実施例で用いたフォトマスクIのパターンを示す図である。
【図6】実施例で用いたフォトマスクIIのパターンを示す図である。
【図7】実施例で用いたフォトマスクIIIのパターンを示す図である。
【図8】実施例で用いたフォトマスクIVのパターンを示す図である。
【図9】実施例で用いたフォトマスクVのパターンを示す図である。
【図10】実施例で用いたフォトマスクVIのパターンを示す図である。
【図11】偏光子3の作製における各画素への電圧印加のパターンを示す図である。
【図12】実施例1で得られた潜像のパターンを示す図である。
【図13】実施例2で得られた潜像のパターンを示す図である。
【図14】実施例3で得られた潜像のパターンを示す図である。
【符号の説明】
【0166】
1 複屈折パターン
2 光源
3 偏光子
4 試料台又は被認証物
5 受光部(観察部)
6 受光部 (受光素子)
7 レンズ
10 認証結果表示部
11 画像表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子、試料台、該偏光子を介して試料台に光を照射する光源、および、試料台側から反射される光を該偏光子を介して受光する受光部を含み、かつ、該偏光子の試料台側に、パターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を含む物品認証システム。
【請求項2】
前記試料台に配置され前記受光部において潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって反射支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む請求項1に記載の物品認証システム。
【請求項3】
前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上の層内において、遅相軸の向きが均一であり、かつ、前記潜像が互いに異なる色を示す3種類以上の領域を有する請求項2に記載の物品認証システム。
【請求項4】
光源、第一の偏光子、試料台、第二の偏光子、および受光部をこの順に含み、
第一の偏光子および第二の偏光子からなる群から選択される少なくとも1つの偏光子の試料台側にパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を含む物品認証システム。
【請求項5】
前記試料台に配置され前記受光部において潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって透明支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む請求項4に記載の物品認証システム。
【請求項6】
前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上の層内において遅相軸の向きが均一であり、かつ、前記潜像が互いに異なる色を示す3種類以上の領域を有する請求項5に記載の物品認証システム。
【請求項7】
前記のパターニング光学異方性層のいずれか1つ以上が、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して重合固定化して形成した層である請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品認証システム。
【請求項8】
前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上が液晶パネルである請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品認証システム。
【請求項9】
偽造・変造防止システムとして用いられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の物品認証システム。
【請求項10】
偏光子、試料台、該偏光子を介して試料台に光を照射する光源、および、試料台側から反射される光を該偏光子を介して受光する受光部を含み、かつ、該偏光子の試料台側に、パターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置により潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって、反射支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品。
【請求項12】
請求項10に記載の装置に用いるための、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する偏光板。
【請求項13】
光源、第一の偏光子、試料台、第二の偏光子、および受光部をこの順に含み、
第一の偏光子および第二の偏光子からなる群から選択される少なくとも1つの偏光子の試料台側にパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置により潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって、透明支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品。
【請求項15】
請求項13に記載の装置に用いるための、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する偏光板。
【請求項1】
偏光子、試料台、該偏光子を介して試料台に光を照射する光源、および、試料台側から反射される光を該偏光子を介して受光する受光部を含み、かつ、該偏光子の試料台側に、パターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を含む物品認証システム。
【請求項2】
前記試料台に配置され前記受光部において潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって反射支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む請求項1に記載の物品認証システム。
【請求項3】
前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上の層内において、遅相軸の向きが均一であり、かつ、前記潜像が互いに異なる色を示す3種類以上の領域を有する請求項2に記載の物品認証システム。
【請求項4】
光源、第一の偏光子、試料台、第二の偏光子、および受光部をこの順に含み、
第一の偏光子および第二の偏光子からなる群から選択される少なくとも1つの偏光子の試料台側にパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を含む物品認証システム。
【請求項5】
前記試料台に配置され前記受光部において潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって透明支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品を含む請求項4に記載の物品認証システム。
【請求項6】
前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上の層内において遅相軸の向きが均一であり、かつ、前記潜像が互いに異なる色を示す3種類以上の領域を有する請求項5に記載の物品認証システム。
【請求項7】
前記のパターニング光学異方性層のいずれか1つ以上が、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、該液晶相を熱または電離放射線照射して重合固定化して形成した層である請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品認証システム。
【請求項8】
前記のパターニング光学異方性層のいずれか一つ以上が液晶パネルである請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品認証システム。
【請求項9】
偽造・変造防止システムとして用いられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の物品認証システム。
【請求項10】
偏光子、試料台、該偏光子を介して試料台に光を照射する光源、および、試料台側から反射される光を該偏光子を介して受光する受光部を含み、かつ、該偏光子の試料台側に、パターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置により潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって、反射支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品。
【請求項12】
請求項10に記載の装置に用いるための、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する偏光板。
【請求項13】
光源、第一の偏光子、試料台、第二の偏光子、および受光部をこの順に含み、
第一の偏光子および第二の偏光子からなる群から選択される少なくとも1つの偏光子の試料台側にパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置により潜像が可視化される複屈折パターンを有する物品であって、透明支持体上にパターニング光学異方性層を有する物品。
【請求項15】
請求項13に記載の装置に用いるための、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する偏光板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−265964(P2009−265964A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115156(P2008−115156)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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