複屈折性を有する物品の製造方法
【課題】複屈折性を有する物品の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層が転写された物品を製造する方法であって、仮支持体と、前記複屈折性層含む転写部とを含む複屈折性転写箔の前記転写部を前記物品に接着させる工程、および前記仮支持体から前記転写部を剥離速度20m/min以下、剥離温度を80℃以下で剥離する工程を含む方法。
【解決手段】少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層が転写された物品を製造する方法であって、仮支持体と、前記複屈折性層含む転写部とを含む複屈折性転写箔の前記転写部を前記物品に接着させる工程、および前記仮支持体から前記転写部を剥離速度20m/min以下、剥離温度を80℃以下で剥離する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性を有する物品の製造方法に関する。本発明は特に、仮支持体と、複屈折性層を含む転写部とを含む複屈折性転写箔を用いて複屈折性層を有する物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複屈折性を呈するフィルムは近年、高級ブランド品や金券、商品券、紙幣、クレジットカード、工業用部品などに特殊な表面加工を付するためにも応用され、特に複屈折パターンを用いた画像はセキュリティラベルに応用することが提案されている(特許文献1、2)。複屈折パターンは偏光性を有しない通常の光源ではほぼ不可視な一方で偏光フィルタをかざすことで潜像が可視化される特殊な性質を有しており、複製は容易でない。このような複屈折パターンをラベル化して偽造が懸念される物品に貼付しておき必要に応じて偏光フィルタ等で確認することにより、真正品と偽造品を識別することが可能となる。
【0003】
しかしながら、ラベル自体の複製が困難であっても真正品から剥がすことが可能であった場合、真正品から剥がして偽造品に転用される恐れがある。その対策として複屈折パターンを転写箔上に形成し、対象となる物品に転写して使用することが提案されている(特許文献3)。しかし、通常、転写箔は複数の層が積層した構造を有するため、被転写体に転写部を転写する際、仮支持体と転写部との剥離が不良で所望の剥離界面で剥離できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−63300号公報
【特許文献2】特開2009−175208号公報
【特許文献3】特開2010−113249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は複屈折性を有する物品の製造方法の提供を課題とする。本発明の課題は特に、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層が転写された物品を製造する方法であって、該複屈折性層を含む転写部を複屈折性転写箔から物品に転写する際に、複屈折性転写箔から転写部を安定的に剥離するための剥離方法の最適化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般的に積層構造を有するフィルムの剥離工程における剥離力は剥離速度および温度上昇にともなって増大するが、所望の剥離界面での安定剥離は困難になる傾向がある。特に少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成される層を複屈折性層として用いる場合、転写工程で必要とされる転写条件は一般の転写材料の転写条件と比較して厳しい領域にある。本発明者らは、上記課題の解決のため、鋭意研究を重ね、剥離速度と温度の範囲を規定することで、故障無く、所望の剥離界面で安定して剥離できるようになることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の[1]〜[15]を提供するものである。
【0007】
[1]少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層が転写された物品を製造する方法であって、
仮支持体と前記複屈折性層を含む転写部とを含む複屈折性転写箔の前記転写部を前記物品に接着させる工程、および
前記仮支持体から前記転写部を剥離速度20m/min以下、剥離温度80℃以下で剥離する工程を含む方法。
[2]前記接着が60℃〜200℃の範囲の熱圧転写により行われる[1]に記載の方法。
【0008】
[3]前記複屈折性層が、複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターン化光学異方性層である[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記パターン化光学異方性層を下記工程を含む方法で形成する工程をさらに含む[3]に記載の方法:
前記液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
前記光照射後の層にパターン露光を行う工程;
パターン露光後の層を50℃以上かつ220℃以下に加熱する工程。
【0009】
[5]パターン露光後の層が190℃以下で加熱される[4]に記載の方法。
[6]前記転写部が、前記仮支持体側から剥離層、前記複屈折性層、および接着層を、この順に含む[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]前記剥離層が膜厚0.5〜2μmのアクリル樹脂である[6]に記載の方法。
[8]前記剥離層がさらにワックスを含む[7]に記載の方法。
【0010】
[9]前記仮支持体が膜厚25〜50μmのポリイミドフィルムもしくはポリエチレンナフタレートフィルムである[6]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]前記接着層が膜厚0.5〜2.0μmのポリエステル樹脂もしくは変性塩化ビニル樹脂である[6]〜[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]前記物品が金属箔、もしくはポリマーコートされた金属箔である[6]〜[10]のいずれか一項に記載の方法。
【0011】
[12]前記転写部が、前記仮支持体側から剥離層、配向層、前記複屈折性層、および接着層を、この順に含む[6]〜[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]前記配向層がポリビニルアルコールを含む[12]に記載の方法。
[14]前記剥離速度が15m/min以下である[1]〜[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15]前記剥離温度が60℃以下である[1]〜[14]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層を含む転写部を含む複屈折性転写箔を用いて複屈折性を有する物品を製造する際に、複屈折性転写箔から転写部を安定的に剥離することができ、意図する層間以外での剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】仮支持体とパターン化光学異方性層と接着層を有する基本的な複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図2】剥離層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図3】離型層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図4】配向層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図5】印刷層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図6】添加剤層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図7】パターン化光学異方性層を複数有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図8】基本的な複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図9】仮支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図10】剥離層および/もしくは離型層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図11】配向層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図12】印刷層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図13】反射層を有する転写型複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図14】添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図15】光学異方性層を複数有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図16】複屈折性転写箔を用いて転写された複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。
【図17】実施例で行ったパターン露光のパターンを示す図である。
【図18】実施例で作製した複屈折パターンを転写された物品上に観察される複屈折パターンの概観を示す図である。
【図19】実施例1〜3の複屈折性パターンから作製した複屈折性転写箔について、剥離工程における剥離速度と温度に対する剥離力、故障の有無を示す図である。
【図20】実施例1〜3の複屈折性パターンから作製した複屈折性転写箔について、剥離工程における剥離速度と温度に対する剥離力、故障の有無を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0015】
本明細書において、Reはレターデーションを表す。Reは透過または反射の分光スペクトルから、Journal of Optical Society of America,vol.39,p.791−794(1949)や特開2008−256590号公報に記載の方法を用いて位相差に換算する、スペクトル位相差法を用いて測定することができる。前記文献は透過スペクトルを用いた測定法であるが、特に反射の場合は、光が光学異方性層を2回通過するため、反射スペクトルより換算された位相差の半分を光学異方性層の位相差とすることができる。Reは特に指定がなければ正面レタ−デーションを指す。Re(λ)は測定光として波長λnmの光を用いたものである。本明細書におけるReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0016】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、レターデーションが実質的に0とは、レターデーションが5nm以下であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0017】
[複屈折性転写箔]
本明細書において、「複屈折性転写箔」とは、少なくとも仮支持体と複屈折性層を有し、所定のプロセスを経ることにより該層を物品に転写させることができる材料を意味する。「複屈折性転写箔」は、転写により被転写体上に転写される転写部と、仮支持体とともに転写時に剥離される部分からなる。すなわち、本明細書において「転写部」というときは、複屈折性転写箔の「仮支持体」を剥離したものを意味するが、例えば、離型層を含む複屈折性転写箔の場合、離型層は転写部には含まれない。
【0018】
[パターン化光学異方性層]
本明細書において「パターン化光学異方性層」とは複屈折パターンを有する光学異方性層のことである。さらに言い換えると複屈折性の異なる領域を2つ以上有する光学異方性層を意味する。パターン化光学異方性層は複屈折性の異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。パターン化光学異方性層は例えば後述の複屈折パターン作製材料を用いて容易に作製することができるが、複屈折性が異なる領域を有する層であれば作製方法は特に限定されない。本明細書においては、複屈折性層としてパターン化光学異方性層を有する複屈折性転写箔を中心に説明する。複屈折性層として非パターン化光学異方性層を有する複屈折性転写箔については、以下の説明において、パターン形成のための作業を行わない(例えばパターン露光の代わりに全面露光を行う)ことによって、同様に作製することが可能である。または、以下で説明する複屈折パターン作製材料中の光学異方性層につき、そのまま加熱処理等を行って非パターン化光学異方性層を作製し、複屈折性転写箔とすることも可能である。
【0019】
[複屈折パターンの定義]
複屈折パターンとは、広義には複屈折性の異なる2つ以上の領域が2次元の面内または3次元的に配置されて描かれたパターンを差す。なお特に2次元の面内においては、複屈折性は屈折率が最大となる遅相軸の方向と領域内のレターデーションの大きさの2つのパラメータにより定義される。例えば液晶性化合物による位相差フィルムなどにおける面内の配向欠陥や厚み方向の液晶の傾斜分布も広義には複屈折パターンと言えるが、狭義にはあらかじめ決めたデザインなどを基に、意図して複屈折性を制御してパターン化したものを複屈折パターンと定義することが望ましい。複屈折パターンは特に記載しない限り、複数層に渡っていてもよく、複数層のパターンの境界は一致していても異なっていてもよい。
【0020】
図1〜7は、複屈折性転写箔としてパターン化光学異方性層を有する転写箔の例を示す。複屈折性転写箔は少なくとも、仮支持体11と複屈折性層(図ではパターン化光学異方性層101)を有する。
パターン化光学異方性層101につき、図では複屈折性が異なる領域を101A、101B、101Cとして例示する。
【0021】
図1に示す複屈折性転写箔は仮支持体11上にパターン化光学異方性層101と接着層12を有する複屈折性転写箔の構成である。
【0022】
図2に示す複屈折性転写箔は仮支持体11とパターン化光学異方性層101の間に剥離層13を有する例である。剥離層13は仮支持体との間で剥離の容易な界面を形成し、仮支持体11の剥離を滑らかにする働きがある。
【0023】
図3(a)、(b)に示す複屈折性転写箔は仮支持体11とパターン化光学異方性層101の間に離型層14を有する例である。離型層14もまた仮支持体11の剥離を助ける働きを有するが、剥離層13が仮支持体11との間で剥離界面を形成するのに対し離型層14はその上の層(例えばパターン化光学異方性層)との間で剥離界面を形成する。また、図3(b)に示すように剥離層13と離型層14の両方を有する場合もあり、この場合は剥離層13と離型層14の間が剥離界面となる。
【0024】
図4に示す複屈折性転写箔は配向層15を有する例である。パターン化光学異方性層101として、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化した光学異方性層から形成された層を用いる場合、配向層15は液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
【0025】
図5は印刷層16を有する複屈折性転写箔の例である。印刷層は不可視な複屈折パターンに重ねて可視の画像を与えるものが一般的だが、たとえばUV蛍光染料やIR染料などによる不可視なセキュリティ印刷と組み合わせることもできる。印刷層は光学異方性層の上でも下でもよく、印刷層に透過性があれば複屈折パターンによる潜像をフィルタで可視化した際、印刷と潜像が重なって見えるようになる。
【0026】
図6(a)、(b)に示す複屈折性転写箔は、パターン化光学異方性層の上に添加剤層17を有するものである。添加剤層は後述のように複屈折パターン作製材料において光学異方性層に可塑剤や光重合開始剤を後添加するための層であるが、それに加え、必要に応じて複屈折性転写箔において層間の密着を強化する下塗り層、製造途中の表面保護のためのハードコート層、赤外線を透過させないことにより赤外線カメラで見えなくする遮蔽層、水没した際に変色するなどして水没を検知する水没検知層、温度により色の変わるサーモトロピック層、潜像の色を制御する着色フィルタ層、磁気記録性を付与する磁性層、マット層、散乱層、潤滑層などとしての機能を付与することも可能である。
【0027】
図7(a)〜(c)に示す複屈折性転写箔は、パターン化光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。複数の光学異方性層の複屈折性が異なる領域は互いに同一でも異なっていてもよい。図には示さないが、パターン化光学異方性層は3つ以上あってもよい。レターデーションあるいは遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えることにより、さらに多彩な機能を有する潜像を形成することができる。
【0028】
[複屈折パターン作製材料]
前記パターン化光学異方性層を作製する方法は特に限定されないが、例えば以下に示す複屈折パターン作製材料を用いる方法が挙げられる。以下の本明細書の説明において、複屈折パターン作製材料は、パターン化光学異方性層を作製するための材料であって、所定の工程を経ることでパターン化光学異方性層を作製することができる材料を意味しているが、同様の複屈折パターン作製材料は、露光などの条件を変更することにより、非パターン化光学異方性層を作製するための材料としても使用できる。複屈折パターン作製材料はパターン化光学異方性層を作製するための材料であり、所定の工程を経ることでパターン化光学異方性層を作成することができる材料を指す。複屈折パターン作製材料に所定の工程を行ってパターン化光学異方性層を作製した上で、さらに必要に応じて追加の層を形成することにより複屈折性転写箔を作製することができる。
【0029】
例えば特開2009−175208号公報に記載のような感光性を有する複屈折パターン作製材料を用いた場合、露光量により照射部のレターデーションを制御することができ、未露光部のレターデーションを実質的に0にすることもできる。このような複屈折パターン作製材料を用いることで所望の複屈折パターンを与えられたパターン化光学異方性層を有する複屈折性転写箔を容易に作製することが可能となる
【0030】
複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は、光学異方性層又は、光学異方性層のみからなるもののほか、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有しているものであってもよい。機能性層としては、支持体、配向層、反射層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、力学特性制御層を有していてもよい。また後に複屈折性転写箔に用いる材料であることから、複屈折性転写箔において機能する剥離層、離型層、接着層などを有していてもよい。
【0031】
図8に示す複屈折パターン作製材料は、自己支持性を有する光学異方性層20のみからなる複屈折パターン作製材料の例である。
光学異方性層は複屈折性を有する層であり、一軸または二軸延伸されたポリマー層や配向した液晶性化合物を固定化した層、配向が揃った有機または無機単結晶層などにより形成されていればよい。光学異方性層としては、フォトマスクによる露光あるいはデジタル露光などのパターン露光や、ホットスタンプやサーマルヘッド、赤外線レーザ露光などのパターン加熱、針やペンによって機械的に加圧またはせん断を加える触針描画、反応性化合物の印刷などにより、光学異方性を任意に制御する機能を有することができる層が好ましい。そのような機能を有する光学異方性層は、後述の方法などにより、パターン化光学異方性層を得ることが容易であるからである。パターン形成のためには、フォトマスクによる露光あるいは走査露光などのパターン露光を用いることが好ましい。該パターニング工程に加えて必要に応じて熱や薬液による漂白、現像などと組み合わせてパターンを形成することもできる。この場合支持体の制約が少ないことから熱による漂白、現像が好ましい。
【0032】
図9は後に複屈折性転写箔として用いるための仮支持体11上に光学異方性層20を有する例である。
図10(a)〜(c)は後に複屈折性転写箔として用いるための剥離層13および/もしくは離型層14をあらかじめ有する複屈折パターン作製材料の例である。剥離層13と離型層14は複屈折性転写箔において機能を発揮する機能性層であるが、必要に応じて複屈折パターン作製材料の途中に形成しておいてもよい。
【0033】
図11(a)〜(c)に示す複屈折パターン作製材料は配向層15を有する例である。光学異方性層20として、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化した光学異方性層から形成された層を用いる場合、配向層15は液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
図12(a)〜(c)は印刷層16を有する複屈折パターン作製材料の例である。印刷層16もまた複屈折性転写箔において機能を発揮する機能性層であるが、必要に応じて複屈折パターン作製材料の途中に形成しておいてもよい。
図13(a)〜(c)は反射層21を有する複屈折パターン作製材料の例である。複屈折パターン作製材料における反射層21は、製造プロセス中の露光の効率化や製造途中での光学異方性層の光学特性評価の簡便化に効果がある。また複屈折性転写箔において視認性の調整のために利用する反射層あるいは半透明反射層を複屈折パターン作製材料の段階から設けておいてもよい。
【0034】
図14(a)〜(d)は光学異方性層の上に添加剤層17を有する複屈折パターン作製材料の例である。添加剤層は光学異方性層に可塑剤、熱重合禁止剤および光重合開始剤等の添加剤を後添加するための層であるが、必要に応じて複屈折パターン作製材料中においてもしくは複屈折性転写箔中において発揮する別の機能を付与されていてもよい。
【0035】
図15(a)〜(d)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。図には示さないが、光学異方性層は3つ以上あってもよい。また液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成する場合には配向層があることが好ましいが、図15(c)のように光学異方性層自体が配向層を兼ねることで配向層が省略されていてもよい。
【0036】
[複屈折パターンを転写された物品]
図16は複屈折性転写箔を用いて転写された複屈折パターンを有する物品の例である。
図16(a)、(b)に示す複屈折パターンを有する物品はそれぞれ、複屈折パターンを有する透過性物品および複屈折パターンを有する反射性物品の構成である。
透過性物品の場合、透過性物品本体22上に転写されたパターン化光学異方性層101を挟んで光源および観測点は反対側にある。この場合、偏光フィルタなどを用いて作製された偏光光源から出た光は複屈折パターンを有する物品を通過して面内で異なる偏光状態となり、観測点側でさらに偏光フィルタを通過して情報を可視化される。ここで偏光フィルタは直線偏光フィルタでも円偏光フィルタでも楕円偏光フィルタでもよく、偏光フィルタ自身が複屈折パターンまたは二色性パターンを有していてもよい。
【0037】
反射性物品の場合、光源および観測点はいずれも、反射性物品本体23上に転写されたパターン化光学異方性層101から見て片側にあり、またそれらと反対側には反射面(この場合には反射性物品本体23の表面)がある。この場合、偏光フィルタなどを用いて作製された偏光光源から出た光は複屈折パターンを有する物品を通過して面内で異なる偏光状態となり、反射面で反射して再び複屈折パターンを有する物品を通過する際に再度影響され、最後に観測点側で偏光フィルタを通過して情報を可視化される。ここで偏光フィルタは直線偏光フィルタでも円偏光フィルタでも楕円偏光フィルタでもよく、偏光フィルタ自身が複屈折パターンまたは二色性パターンを有していてもよい。また、光源と観測で同一の偏光フィルタを用いてもよい。反射面は反射性の高いホログラム層や電極層などが兼ねてもよい。
【0038】
さらに反射面は部分的に光を反射し、部分的に光を透過する半透過半反射層でもよく、その場合複屈折パターンを有する物品は透過、反射の両方の画像を可視化させることができるだけでなく、複屈折パターンを有する物品の半透過半反射層の下側にある文字や画像などの一般的な情報をパターン化光学異方性層の上側からフィルタなしに視認することができる。
【0039】
以下、複屈折性転写箔とその材料の一種である複屈折パターン作製材料、それを用いた複屈折性転写箔の作製方法およびそれらを構成する材料、作製方法等について詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0040】
[光学異方性層]
複屈折パターン作製材料における光学異方性層はパターン化光学異方性層の元となる層であり、レターデーションを測定したときにレターデーションが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。
【0041】
複屈折パターン作製材料における光学異方性層としては、少なくとも1つのモノマーおよび/またはオリゴマーを含む層、少なくとも1つのポリマーを含む層、少なくとも1つの有機または無機単結晶を含む層などがあげられる。また該ポリマーは少なくとも1つのモノマーおよび/またはオリゴマーを硬化させたものであってもよい。
【0042】
ポリマーを含む前記光学異方性層は、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる点で好ましい。該光学異方性層中のポリマーは未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応してポリマー鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によってポリマー鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレターデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなると考えられるためである。
【0043】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であることが好ましい。これは20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や(パターン形成前の)別支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
【0044】
光学異方性層上に他の機能性層の塗布を行う場合には、光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後のレターデーションが浸漬前のレターデーションの30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒は行いたい機能性層の塗布に用いる溶媒によるが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
【0045】
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であることが好ましく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
【0046】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;側鎖に反応性基を有するポリマーからなる層を延伸する方法;またはポリマーからなる層を延伸した後にカップリング剤等を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。後述するように、光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0047】
[液晶性化合物を含有する組成物を配向固定化してなる光学異方性層]
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述するポリマーを延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易であり、好ましい。
【0048】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物を用いることが好ましい。
【0049】
なお、本明細書において、液晶性化合物を含む組成物から形成された層について記載されるとき、この形成された層において液晶性を有する化合物が含まれる必要はない。例えば、前記低分子液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものが含まれる層であってもよい。また、液晶性化合物としては、2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。2種以上の液晶性化合物の混合物の場合、少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0050】
好ましくは、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用い、条件を選択して2種類以上の反応性基の一部の種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製するとよい。架橋機構としては縮合反応、水素結合、重合など特に限定はないが、2種以上のうち少なくとも一方は重合が好ましく、2種類以上の異なる重合を用いることがさらに好ましい。一般に架橋反応は、重合に用いられるビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基だけでなく、水酸基、カルボン酸基、アミノ基なども用いることができる。
【0051】
本明細書において、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する化合物とは、段階的に異なる架橋反応工程を用いて架橋させる化合物であり、各段階の架橋反応工程では、それぞれの架橋機構に応じた反応性基が官能基として反応する。また、例えば側鎖に水酸基を有するポリビニルアルコールのようなポリマーの場合で、ポリマーを重合する重合反応を行った後、側鎖の水酸基をアルデヒドなどで架橋させた場合は2種類以上の異なる架橋機構を用いたことになるが、本明細書において2種類以上の異なる反応性基を有する化合物というときは、好ましくは、支持体等の上に層を形成した時点において該層中で2種類以上の異なる反応性基を有する化合物であって、その後にその反応性基を段階的に架橋させることができる化合物であればよい。特に好ましい態様として2種以上の重合性基を有する液晶性化合物を用いることが好ましい。段階的に架橋させる反応条件として、温度の違い、光(照射線)の波長の違い、重合機構の違いのいずれでもよいが、反応を分離しやすい点から重合機構の違いを用いることが好ましく、用いる開始剤の種類によって制御することがさらに好ましい。重合機構としては、ラジカル重合性基とカチオン重合性基の組み合わせが好ましい。前記ラジカル重合性基がビニル基、(メタ)アクリル基であり、かつ前記カチオン重合性基がエポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0052】
【化1】
【0053】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく 用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。棒状液晶性化合物の例としては特開2008−281989号公報、特表平11−513019号公報(WO97/00600)および特表2006−526165号公報に記載のものが挙げられる。
【0054】
以下に、棒状液晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0055】
【化2】
【0056】
【化3】
【0057】
【化4】
【0058】
【化5】
【0059】
【化6】
【0060】
他の態様として、前記光学異方性層に円盤状液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の円盤状液晶性化合物の層または重合性の円盤状液晶性化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であることが好ましい。前記円盤状液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記円盤状液晶性化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的に円盤状液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。円盤状液晶性化合物の例としては特開2008−281989号公報の段落[0061]〜[0075]に記載のものが挙げられる。
【0061】
液晶性化合物は、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。光学異方性層としては、棒状液晶化合物を水平配向させた状態で固定化されたものを含むことが好ましい。
【0062】
液晶性化合物を含有する組成物を配向固定化してなる光学異方性層においては、液晶性化合物の架橋を促進するため重合性モノマーを添加してもよい。
たとえばエチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーを用いることができる。
そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0063】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
【0064】
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0065】
また、カチオン重合性モノマーを用いることもできる。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号の各公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0066】
エポキシ化合物としては、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。芳香族エポキシドとしては、例えば、ビスフェノールA、あるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0067】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0068】
また、カチオン重合性モノマーとして、単官能または2官能のオキセタンモノマーを用いることもできる。たとえば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルなどの化合物や、特開2001−220526号公報、同2001−310937号公報に記載されている公知のあらゆる官能または2官能オキセタン化合物を使用できる。
【0069】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体、又は全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体のいずれであってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0070】
[溶媒]
液晶性化合物を含有する組成物を、塗布液として、例えば支持体又は後述する配向層等の表面に塗布する場合の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例としては、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が挙げられる。また、二種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。上記の中で、アルキルハライド、エステル、ケトンおよびそれらの混合溶媒が好ましい。
【0071】
[配向固定化]
液晶性化合物の配向の固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の架橋反応により実施することが好ましく、反応性基の重合反応により実施することがさらに好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示することができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0072】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜1000mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜2000mW/cm2であることが好ましく、20〜1500mW/cm2であることがより好ましく、40〜1000mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0073】
[偏光照射による光配向]
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。偏光照射は、特開2009−69793号公報の段落「0091」〜「0092」の記載、特表2005−513241号公報(国際公開WO2003/054111)の記載などを参照して行うことができる。
【0074】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−8〜I−15)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0075】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0076】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜1000mJ/cm2であることが好ましく、10〜800mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜600mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜1500mW/cm2であることが好ましく、10〜1000mW/cm2であることがより好ましく、20〜800mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0077】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。ただし、カチオン重合開始剤を用いた反応は、水によって阻害される。従って、重合雰囲気の湿度を低くすることが好ましく、60%以下にすることが好ましく、40%以下にすることがさらに好ましい。また、カチオン重合開始剤を用いた反応は、高温ほど反応性が高くなる特性を有する。従って、液晶化合物が液晶性を示す温度範囲内で、反応時の温度は高いほうが好ましい。
【0078】
また、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合において、その片方を選択的に重合させる手段として他方の重合性基に対応する重合禁止剤を用いることも好ましい。例えば、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてそのカチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル性重合に対する重合禁止剤を少量加えることでその選択性を向上させることが可能である。このような重合禁止剤の使用量は、塗布液の固形分の0.001〜10質量%であることが好ましく、0.005〜5質量%であることがより好ましく、0.02〜1質量%であることが特に好ましい。例えばラジカル性重合に対する重合禁止剤としてはニトロベンゼン、フェノチアジン、ハイドロキノン等が挙げられる。また、一般に酸化防止剤として用いられるヒンダートフェノール類もラジカル性重合に対する重合禁止剤として有効である。
【0079】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の、一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。液晶性化合物を水平配向させる場合、その傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0080】
[延伸によって作製される光学異方性層]
光学異方性層はポリマーの延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つことが好ましいが、このようなポリマーを作製する際にはあらかじめ反応性基を有するポリマーを延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0081】
[2層以上の光学異方性層]
上記のように複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いている2層以上の光学異方性層を用いることによって、大きなレターデーションを有するパターンを作製することができる。
【0082】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に重ねて新たな光学異方性層を形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に新たな光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0083】
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上のためのコロナ処理や、柔軟性向上のための可塑剤添加、保存性向上のための熱重合禁止剤添加、反応性向上のためのカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中のポリマーが未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて配向固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる添加剤層を用いる方法もあげられる。この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0084】
[添加剤層]
前記光学異方性層上に形成する添加剤層は、フォトレジストのような感光性樹脂層の他、透過光の散乱を制御する散乱層、下層の傷つきを防止するハードコート層、帯電によるごみつきを防止する帯電防止層、印刷の下地となる印刷塗工層を共用してもよい。感光性樹脂層としては、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の光重合開始剤を含んでいることが好ましい。前記光学異方性層中の未反応の反応性基による重合反応を開始させる機能を有する重合開始剤を少なくとも一種以上含む層が設けられていることが好ましい。光学異方性層と重合開始剤を含む添加剤層は隣接していることが好ましい。このような構成とすることによって、別に重合開始剤を添加することなくパターン状の熱処理又は電離放射線照射により複屈折パターンの形成が可能な複屈折パターン作製材料とすることができる。重合開始剤を含む添加剤層の構成としては特に限定は無いが、重合開始剤以外に少なくとも1種のポリマーを含むことが好ましい。
【0085】
ポリマー(本発明においては別名として「バインダ」と呼ぶことがある。)としては、特に限定は無いがポリメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とその各種エステルの共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸あるいは各種(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸あるいは各種(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、ポリエステル、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等を挙げることができる。好ましい例としてはメチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体、アリル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の共重合体、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜99質量%が一般的であり、40〜99質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましい。
重合開始剤としては熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられ、手法に合わせて適宜用いられる。光重合開始剤としてはラジカル性光重合開始剤、カチオン性光重合開始剤のいずれでも構わない。
【0086】
ラジカル性光重合開始剤としては米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
【0087】
カチオン光重合開始剤としては、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示することができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0088】
また重合開始剤の量は、添加剤層の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.2〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0089】
[散乱性を有する添加剤層]
添加剤層に散乱性を付与することにより、複屈折パターン物品のギラツキを制御したり、コバート性を制御したりすることができる。散乱層としては、エンボスによる表面凹凸層、粒子などのマット剤を含むマット層が好ましい。また、コバート性を向上させる粒子に関して、粒径は、0.01μm〜50μmが好ましく、0.05μm〜30μmがより好ましい。含有濃度は、0.01%〜5%が好ましく、0.02%〜1%がより好ましい。
【0090】
[ハードコート性を有する添加剤層]
ハードコート性を持たせるために、添加剤層中のポリマーとしてTgの高いポリマー用いることが好ましく、そのTgは50℃以上が好ましく、80℃以上であればより好ましく、100℃以上であればさらに好ましい。ポリマーのTgを上げるために、水酸基、カルボン酸基、アミノ基といった極性基を導入するとよい。高Tgポリマーの一例として、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートの反応物。アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物。アルキル(メタ)アクリレートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物との反応物であるハーフエステルの共重合体等が挙げられる。
【0091】
また、ハードコート性を付与するために、少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーおよび重合性ポリマーを含む層を光照射または熱により重合した層を用いてもよい。反応性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。重合性ポリマーの一例として、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジ(メタ)アクリレート等の重合性基含有アクリレートの反応物。重合性基含有アクリレートの反応物(メタ)アクリル酸との共重合体、および他のモノマーとの多元共重合体が挙げられる。
【0092】
[印刷塗工層としての添加剤層]
可視または紫外線や赤外線などで視認できるパターンを形成するために、添加剤層上に印刷インクが塗工できることが好ましい。インクの濡れ性向上を目的としてポリマーの側鎖にカルボン酸基やヒドロキシル基などの極性基を導入することも好ましい。次に、濡れ性を向上させること手法として、表面改質処理を併用してもよい。表面改質処理として、低圧水銀灯やエキシマ処理等のUV処理、コロナ放電、グロー放電等の放電処理が挙げられる。UV処理の中では、より高エネルギーで改質効率の高いエキシマ処理が好ましい。
【0093】
印刷インクとして、UV蛍光インクやIRインクはそれ自体もセキュリティ印刷であるため、セキュリティ性が向上するので好ましい。印刷方法は特に限定はないが、一般的に知られているフレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷の他、インクジェットやゼログラフィなどを用いることができる。また、解像度を1200dpi以上のマイクロ印刷にすることによっても、セキュリティ性を高めることができるので好ましい。
【0094】
[支持体]
複屈折パターン作製材料はそれぞれ、力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料における支持体がそのまま複屈折性転写箔における仮支持体となっていてもよく、複屈折性転写箔における仮支持体が複屈折パターン作製材料における支持体とは別に(複屈折パターン形成時または形成後に、複屈折パターン作製材料における支持体と代わって又は追加で)設けられてもよい。支持体としては特に限定はなく剛直なものでもフレキシブルなものでもよいが、フレキシブルなものが好ましい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。後述する反射層の代わりに、支持体自体が反射機能を有していてもよい。
【0095】
[配向層]
既に説明したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、アゾベンゼンポリマーやポリビニルシンナメートに代表される偏光照射により液晶の配向性を発現する光配向層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。配向層としてはラビングの態様ではポリビニルアルコールを含むことが好ましく、配向層の上または下の少なくともいずれか1層と架橋できることが特に好ましい。配向方向を制御する方法としては、光配向層およびマイクログルーブが好ましい。光配向層としては、ポリビニルシンナメートのように二量化によって配向性を発現するものが特に好ましく、マイクログルーブとしてはあらかじめ機械加工またはレーザ加工により作製したマスターロールのエンボス処理が特に好ましい。
【0096】
[反射層]
複屈折パターン作製材料は、製造プロセス中の露光を効率的に行うため、あるいは製造途中での光学特性の評価を容易にするために反射層を有していてもよい。反射層としては特に限定されないが、偏光解消性のないものが好ましく、例えばアルミや銀などの金属層、誘電体多層膜による反射層、光沢を有する印刷層が挙げられる。また、透過率が8〜92%、反射率が8〜92%の半透過半反射層を用いることもできる。半透過半反射層は金属層の厚みを薄くする方法が安価で製造できるので好ましい。一方、金属による半透過半反射層は吸収を有しているため、吸収なしに透過率と反射率を制御できる誘電体多層膜は光利用効率の観点から好ましい。
【0097】
[複屈折性転写箔に必要な層の先形成]
後に述べる複屈折性転写箔を構成する層、例えば剥離層、離型層、接着層などについては必要に応じて複屈折パターンを形成する前、あるいは光学異方性層を形成する前に形成してもよい。特に複屈折パターン作製材料の支持体がそのまま複屈折性転写箔の仮支持体となる場合、光学異方性層よりも仮支持体側に存在するべきである離型層と剥離層については光学異方性層を形成する前に形成しておくことが好ましい。これらの層の詳細については後に述べる。
【0098】
[塗布方法]
光学異方性層、所望により形成される配向層、などの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0099】
[パターン化光学異方性層の作製および複屈折性転写箔の作製]
複屈折パターン作製材料に所定の工程を行ってパターン化光学異方性層を作製し、さらに必要に応じて追加の層を形成することにより複屈折性転写箔を作製することができる。パターン化光学異方性層の作製に際して行う工程は特に限定されないが、例えば、パターン露光、加熱、熱書き込みなどが挙げられる。好ましくは複屈折パターン作製材料にパターン露光と加熱をこの順で行うことにより、効率的にパターン化光学異方性層を作製することができる。
【0100】
[パターン露光]
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光又は2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を意味する。互いに露光条件の異なる露光には、未露光(露光しないこと)が含まれていてもよい。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画する走査露光を用いてもよい。また、複屈折パターン作製材料の形態が枚葉であればバッチ式露光、ロール形態であればRtoR式露光でもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザ等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。パターン露光の解像度を1200dpi以上にすることにより、マイクロ印刷潜像が形成でき、好ましい。解像度を高めるためには、パターン露光時にパターン化光学異方性層が固体であり、尚且つ厚みが10μm以下であることが必要であり、好ましい。厚み10μm以下で実現するためにはパターン化光学異方性層が重合性液晶化合物を含む層を配向固定化したものであることが好ましく、重合性液晶化合物が架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有することが特に好ましい。また、RtoR式露光を使用する場合に用いる巻き芯としては、特に制限は無いが、外径10mm〜3000mm程度のものが好ましく、より好ましくは20mm〜2000mm程度のもの、さらに好ましくは30mm〜1000mm程度のものである。巻き芯に巻きつける際のテンションとしては、特に制限は無いが、1N〜2000N程度が好ましく、より好ましくは3N〜1500N程度であり、さらに好ましくは5N〜1000N程度である。
【0101】
[パターン露光時の露光条件]
複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行う際、「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。すなわち、パターン露光時に、異なる露光条件で露光された2つ以上の領域を生ずるような形で露光が行われていればよい。走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、露光領域の照射スポットを変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能であり、好ましい。
【0102】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレターデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレターデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0103】
[マスク露光]
露光条件の異なる露光領域を生じる手段の一つとして、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の下で同一時間の露光を行うことで異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
【0104】
[走査露光]
走査露光は、例えば、光により所望の2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を応用して行うことができる。
このような描画装置の代表的な例として、光ビーム発生手段から導出された光ビームを、光ビーム偏向走査手段を介して被走査体上に走査させることにより、所定の画像等を記録するように構成された画像記録装置がある。この種の画像記録装置では、画像等の記録に際して、光ビーム発生手段から導出される光ビームを画像信号に対応して変調させる(特開平7−52453号公報)。
【0105】
また主走査方向に回転するドラムの外周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを副走査方向に走査することで記録を行うタイプ、および、ドラムの円筒内周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを回転走査させることで記録を行うタイプ(特許2783481号)の装置も使用できる。
【0106】
さらに、描画ヘッドにより2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を用いることもできる。例えば、半導体基板や印刷版の作製で用いられている、露光ヘッドにより所望の2次元パターンを感光材料等の露光面上に形成する露光装置が使用できる。このような露光ヘッドとして代表的なものは、多数の画素を有し所望の2次元パターンを構成する光点群を発生させる画素アレイを備えている。この露光ヘッドを、露光面に対して相対移動させながら動作させることにより、所望の2次元パターンを露光面上に形成することができる。
【0107】
上記のような露光装置としては、たとえば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を露光面に対して所定の走査方向に相対的に移動させるとともに、その走査方向への移動に応じてDMDのメモリセルに多数のマイクロミラーに対応した多数の描画点データからなるフレームデータを入力し、DMDのマイクロミラーに対応した描画点群を時系列に順次形成することにより所望の画像を露光面に形成する露光装置が提案されている(特開2006−327084号公報)。
【0108】
露光ヘッドが備える空間光変調素子としては、上記のDMDの以外の、空間光変調素子を使用することもできる。なお、空間光変調素子は、反射型および透過型のいずれでもよい。そのほかの空間光変調素子の例としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの空間光変調素子(SLM;Special Light Modulator)、電気光学効果により透過光を変調する光学素子(PLZT素子)、液晶光シャッタ(FLC)等の液晶シャッターアレイなどが挙げられる。なお、MEMSとは、IC製造プロセスを基盤としたマイクロマシニング技術によるマイクロサイズのセンサ、アクチュエータ、そして制御回路を集積化した微細システムの総称であり、MEMSタイプの空間光変調素子とは、静電気力を利用した電気機械動作により駆動される空間光変調素子を意味している。
【0109】
さらに、回折格子ライトバルブ(GLV;Grating Light Valve)を複数ならべて二次元状に構成したものを用いることもできる。
露光ヘッドの光源としては、上記したレーザ光源の他に、ランプ等も使用可能である。
【0110】
[2つ以上の光学異方性層のパターン露光]
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0111】
[加熱(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上220℃以下、に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。加熱温度は80℃以上であることがより好ましい。また加熱温度は190℃以下であることがより好ましい。ここで、加熱温度は、複屈折パターン作製材料の表面(膜面)の温度で示される。膜面温度は通常、熱伝対を用いて測定すればよい。加熱に使用する機器としては、温風炉、マッフル炉、IRヒーター、セラミックヒーター、電気炉等が使用できる。また、複屈折パターン作製材料の形態が枚葉であればバッチ式加熱、ロール形態であればRtoR式加熱でもよい。RtoR式加熱を使用する場合に用いる巻き芯としては、特に制限は無いが、外径10mm〜3000mm程度のものが好ましく、より好ましくは20mm〜2000mm程度のもの、さらに好ましくは30mm〜1000mm程度のものである。巻き芯に巻きつける際のテンションとしては、特に制限は無いが、1N〜2000N程度が好ましく、より好ましくは3N〜1500N程度であり、さらに好ましくは5N〜1000N程度である。
なお、複屈折パターンはレターデーションが実質的に0である領域を含んでいてもよい。例えば、2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成した場合において、パターン露光で未露光であると上記ベークによってレターデーションが消失し、実質的に0となる場合がある。
【0112】
ベークを行った複屈折パターン材料の上には、新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベークを行ってもよい。この場合、一度目及び二度目の露光条件で組み合わせて、二度目のベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0113】
[熱書き込み]
上記のように、未露光領域にベークを行うことによってレターデーションを実質的に0にすることが可能であるため、複屈折パターンを有する物品には、パターン露光に基づく潜像に加えて、熱書き込みによる潜像が含まれていてもよい。熱書き込みはサーマルヘッド又は、赤外線やYAGなどのレーザ描画を用いて行うことができる。例えば、サーマルヘッドを有する小型のプリンタとの組み合わせで、秘匿を必要とする情報(個人情報、暗証番号、意匠性を損なう商品管理コードなど)を簡便に潜像化することができ、ダンボール箱などに熱書き込みする赤外線やYAGレーザをそのまま用いることもできる。
【0114】
[複屈折性転写箔の機能性層]
複屈折性転写箔を構成する機能性層としてはパターン化光学異方性層の他に仮支持体、接着層、さらに必要に応じて剥離層、離型層、印刷層、反射層などが挙げられる。これらの機能性層はあらかじめ複屈折パターン作製材料に含まれていてもよいし、パターン化光学異方性層が作製された後に形成されてもよい。なお、複屈折パターン作製材料の支持体がそのまま複屈折性転写箔の仮支持体となる場合には、離型層と剥離層については光学異方性層を形成する前に形成しておくことが好ましい。
【0115】
機能性層はディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)による塗布により形成することができる。またこの場合、二層以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。また機能性層の性質に応じて、上記の他の形成法が用いられてもよい。
【0116】
[仮支持体]
複屈折性転写箔を構成する仮支持体としてはRtoRでの取り扱いが可能なものであれば特に限定はなく、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。特に耐熱性を備えたものが好ましく、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート、セルロースアセテートフィルムなどがあげられる。仮支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。
【0117】
[接着層]
複屈折パターン転写箔を構成する接着層としては、用いられる被転写体との十分な接着性を発揮できれば特に制限はなく感圧性樹脂層、感光性樹脂層および感熱性樹脂層などが挙げられるが、感熱性樹脂層が望ましい。また、半透明の反射層を用いる半透明な複屈折パターン転写箔や反射層を有しない透明な複屈折パターン転写箔に用いる場合には透過率、ヘイズ、レターデーションなどの光学特性が適切な範囲に収められていることが好ましい。また、RtoRでの製造の際に背面との接着を防ぐために、シリカ等のフィラーが入っていてもよい。
【0118】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、合成ゴム等の粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。感圧性樹脂層の粘着特性の制御は、例えば、感圧性樹脂層を形成する素材の組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0119】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、市販の材料を用いることもできる。接着層として用いられる場合、感光性樹脂層は少なくともポリマーと、モノマー又はオリゴマーと、光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。ポリマー、モノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤又は光重合開始剤系については、特開2007−121986号公報の[0082]〜[0085]の記載を参照することができる。
【0120】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、特開2007−121986号公報の[0095]〜[0105]の記載を参照することができる。
【0121】
感熱性樹脂層としては加熱によって接着性を発現すれば特に限定はなく、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。熱可塑性樹脂の場合は加熱によって軟化もしくは溶融した後に冷却されることで接着性を発揮し、熱硬化性樹脂の場合は当初は流動性を有したものが加熱により反応して硬化することにより接着性を発揮できる。両者にはそれぞれ異なる利点があり用途に応じて使い分けられる。
【0122】
熱可塑性樹脂は様々な形で感熱性樹脂層として利用可能だが、ここでは便宜的に有機溶媒に溶解もしくは分散して用いる有機溶剤系熱可塑性樹脂と水系溶媒に溶解もしくは分散して用いる水系熱可塑性樹脂に分類して説明する。
【0123】
有機溶剤系熱可塑性樹脂としては、加熱等により被転写体との接着性を発現するものであれば特に限定されるものではなく、例えば溶剤系エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性エラストマー、または、反応系ホットメルト樹脂等を挙げることができる。より具体的な例としては、東洋モートン社製の「AD1790−15」、DIC社製の「M−720AH」、大日本インキ社製の「A−928」、大日本インキ社製の「A−450」、大日本インキ社製の「A−100Z−4」、東亞合成社製の「アロンメルトPES360」、「アロンメルトPES375」、東洋紡績社製の「バイロン550」、「バイロンBX1001」、「バイロンUR8700」、和信化学工業製の「VH EF28クリヤー」等が挙げられる。
【0124】
水分散系熱可塑性樹脂としては加熱等により被転写体との接着性を発現するものであれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸ビニル共重合ポリオレフィン、水分散系エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)共重合樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、水分散系ポリエステル樹脂等が挙げられる。より具体的な例としては、三井化学社製「V−100」、「V−200」、中央理化工業社製の「EC−1700」、「MC−3800」、「MC−4400」、「HA−1100」、中央理化工業社製の「AC−3100」、大日本インキ社製「AP−60LM」、東洋紡績社製の「バイロナールMD−1985」、「バイロナールMD−1930」、「バイロナールMD−1335」等が挙げられる。
【0125】
感熱性樹脂層を形成する際には、上に挙げたような樹脂を溶媒に溶解もしくは分散させた感熱性樹脂層用塗布液を対象となる層(パターン化光学異方性層やパターン化光学異方性層上に形成された添加剤層等)の上に直接塗布し乾燥することにより感熱性樹脂層を形成してもよく、また上記感熱性樹脂層用塗布液を一時支持体上に塗布して感熱性樹脂層を形成し、対象となる層に転写した後、一時支持体を剥離して積層してもよい。
【0126】
感熱性樹脂層用塗布液の溶媒としては水、アルコール、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)等が挙げられる。また、二種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。溶剤系熱可塑性樹脂の溶媒としてはトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびその混合溶媒が好ましく、水分散系熱可塑性樹脂の溶媒としては水、メタノール、エタノール、プロパノールおよびそれらの混合溶媒が好ましい。感熱性樹脂層用塗布液はバーコーター、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等により乾燥膜厚1〜20μmに塗布形成されるとよい。
【0127】
また感熱性樹脂層の形成する際に溶媒を用いず、熱可塑性樹脂自体を溶融して対象となる層上に塗布してもよい。この場合には加熱溶融設備を備えた専用のコーター(ホットメルトコーターやホットロールコーターと呼ばれる)が必要となるが、無溶媒での塗布となるため環境負荷が抑えられる、難溶性の熱可塑性樹脂が使用可能になるなどの利点がある。難溶性の熱可塑性樹脂としては例えば、結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステルに限らず結晶性の熱可塑性樹脂は融点以上の温度では俊敏に溶融する特性を有するものであり、融点以下での保存性に優れる一方で被転写体への熱圧転写に際して融点以上の温度では容易に融解し、転写性に優れるものとできる。
【0128】
また前記熱可塑性樹脂の代わりに、より低分子量の熱溶融性化合物を用いることも可能である。熱溶融性化合物としては前記熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、などを挙げることができる。
【0129】
これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。あるいは前記熱可塑性樹脂に対する添加剤として用いてもよい。
【0130】
[接着層の光学特性]
接着層のReは低く抑えられていることが好ましい。複屈折性転写箔を転写した物品において複屈折パターンは接着層を通して観察されるため、接着層がReを有していると、そのReが複屈折パターン全体に上乗せされることとなり、複屈折パターンの視認性を損なうこととなる場合があるからである。具体的には接着層のReは40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましい。接着層は、加熱(及び冷却)、加圧、光照射などの接着性を発現させる工程を経たあと、すなわち、通常、複屈折性転写箔を物品に転写したあとにおいても、上記のReを維持していることが好ましい。または、上記工程を経たあと、すなわち、通常、複屈折性転写箔を物品に転写したあとにおいて、上記のReであることが好ましい。
【0131】
[剥離層]
転写時の剥離性を向上させるために、剥離層を設けてもよい。剥離層の利用により、剥離層と仮支持体との間の剥離が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。また剥離層は転写後に最表面となることから、表面保護性を有することが好ましい。
【0132】
剥離層としては仮支持体との剥離性、および剥離層から見て仮支持体と反対側に形成される隣接層(配向層、パターン化光学異方性層等)との密着性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、金属酸化物等を用いることができる。これらは2種以上を混合して用いることもできる。またこれらに対しては弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤や各種界面活性剤等が添加または共重合されていてもよい。
【0133】
上記の中でも、分子量が20,000〜100,000程度のアクリル系樹脂単独、あるいは、アクリル系樹脂と分子量が8,000〜20,000程度の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とを含有し、さらに添加剤として分子量1,000〜5,000程度のポリエステル樹脂を1〜5質量%で含有する樹脂が好ましく用いられる。剥離層は上記組成を有機溶剤でインキ化し、仮支持体上に塗布等の方法によって形成されるとよく、その厚みは表面保護性を考慮すると0.1μm〜3μmが好ましい。また、剥離層は、仮支持体との間の剥離力が1〜5g/インチ(90°剥離)であることが好ましい。
【0134】
剥離層は電離放射線硬化型樹脂を用いて形成してもよい。電離放射線硬化型樹脂には、電子線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂があり、後者の紫外線硬化型樹脂は光重合開始剤および増感剤を含有することを除いて、前者の電子線硬化型樹脂と成分的には同様である。電離放射線硬化型樹脂は、一般的には皮膜形成成分としてその構造中にラジカル重合性の活性基を有するモノマー、オリゴマー、またはポリマーを主成分とするもので、モノマーとしては(メタ)アクリル酸エステル等の誘導体等、また、オリゴマー、ポリマーとしてはウレタンアクリレートやポリエステルアクリレート等が例示される。紫外線硬化型樹脂とするには、上記のラジカル重合性の活性基を有するモノマー等に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミノキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、また光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を添加した組成物とするとよい。硬化方法としては、例えば電子線照射の場合にはコックロフトワルトン型等の電子線加速機を使用し50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVの電子線を0.1〜100Mrad.、好ましくは1〜10Mrad.照射することにより行われ、また、紫外線照射の場合には、超高圧水銀灯等の光源から発せられる紫外線を0.1〜10000mJ/cm2、好ましくは10〜1000mJ/cm2照射することにより行うとよい。
【0135】
[離型層]
転写時の剥離性を向上させるために、離型層を設けてもよい。離型層の利用により、離型層と離型層から見て仮支持体と反対側に形成される隣接層(剥離層、配向層、パターン化光学異方性層等)との間の剥離が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。また必要に応じて離型層と剥離層の両方を設けてもよく、両方を設けた場合には離型層(および仮支持体)の転写時の転写性をさらに向上させることができる。
【0136】
離型層としては、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などが適用できる。離型性樹脂としては、例えば弗素系樹脂、シリコーン、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、繊維素系樹脂などが挙げられ、好ましくはメラミン系樹脂が挙げられる。離型剤を含んだ樹脂としては例えば、弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤を、添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂などが挙げられる。
【0137】
離型層の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥すればよい。また必要に応じて、温度30℃〜120℃で加熱乾燥、あるいはエージング、または電離放射線を照射して架橋させてもよい。離型層の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0138】
[印刷層]
複屈折性転写箔は必要とする視覚効果を得るために印刷層を有していてもよい。印刷層とは、可視または紫外線や赤外線などで視認できるパターンを形成した層などが挙げられる。UV蛍光インクやIRインクはそれ自体もセキュリティ印刷であるため、セキュリティ性が向上するので好ましい。印刷層を形成する方法は特に限定はないが、一般的に知られている凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷の他、インクジェットやゼログラフィなどを用いることができる。インクとしては、各種インクを用いることができるが、耐久性の観点から、UVインクを用いることが好ましい。また、解像度を1200dpi以上のマイクロ印刷にすることによっても、セキュリティ性を高めることができるので好ましい。
【0139】
[反射層]
複屈折性転写箔は必要とする視覚効果を得るために反射層を有していてもよい。特に反射観察により複屈折パターンを視認する場合であって、被転写体たる物品が非反射性である場合には複屈折パターンの視認性を向上させるために反射層を設けることが好ましい。また透過観察により複屈折パターンを視認する場合や被転写体たる物品が反射性である場合においても、透過光と反射光の見え具合の調整のために反射率を調整した半透明の反射層を設けることは有用である。反射層としては特に限定されないが偏光解消性のないものが好ましく、金属薄膜層、金属粒子含有層、誘電体薄膜層等が挙げられる。
【0140】
金属薄膜層に用いられる金属としては特に限定されないがアルミ、クロム、ニッケル、銀、金等が挙げられる。金属薄膜層は、単層膜であっても、多層膜であってもよく、例えば、真空製膜法、物理気相成長法および化学気相成長法等によって製造することができる。反射性の金属粒子を含有する層としては、例えばゴールドやシルバー等のインキで印刷された層が挙げられる。
【0141】
誘電体薄膜層は単層膜であっても、多層膜であってもよい。用いる材料としては隣接する層との屈折率差が大きい材料を用いて作製された薄膜が好ましい。高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられる。低屈折率材料としては、二酸化珪素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等が挙げられる。
複屈折性転写箔が反射層を有する場合、反射層はパターン化光学異方性層と接着層の間に位置することが好ましい。また、接着層が反射層を兼ねることも好ましい。
【0142】
複屈折性転写箔が反パターン化光学異方性層と接着層の間のどこかに反射層を有する場合もしくは接着層が反射層を兼ねる場合、転写後の複屈折性転写箔は偏光フィルタをかざすことで被転写体の光学特性によらず良好な視認性を発揮できる。すなわち、被転写体が反射性であっても透明であっても、あるいは不透明でかつ非反射性であっても、反射層の作用により転写後の複屈折性転写箔は良好な視認性を発揮できる。この場合、反射層の反射率は偏光フィルタをかざさない状態でかつ可視光領域の平均で60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。一方で、被転写体上のデザインをそのまま生かしたい場合には、極端に反射率の高い反射層の存在は適していないことがある。
【0143】
[透明性を有する複屈折性転写箔]
用途によっては、複屈折性転写箔の転写部が透明性を有することもまた好ましい。転写部が透明性を有する場合、転写部を通して被転写体のデザインを観察することが可能となる。また転写部が特に高い透明性を有する場合には、複屈折パターンの存在を意識させないままに被転写体上に転写することも可能となる。これは被転写体の意匠性を損ないたくない場合や偽造者に真偽判明手段たる複屈折パターンの存在を知られたくない場合に有用である。
【0144】
転写部が透明性を有する場合、複屈折パターンの視認性は被転写体の光学特性の影響を受ける。被転写体が反射性である場合には、複屈折パターンを転写した被転写体上に偏光フィルタをかざし、被転写体の反射を生かすことで視認できる。被転写体が透明である場合には、複屈折パターンを転写した被転写体を挟む形で上下(視認者側および視認者の反対側)に偏光フィルタを重ねることで視認できる。被転写体が不透明で、かつ反射性も不十分である場合(かつ被転写体のデザインを生かしたい場合)には、上記のような透明性を有する複屈折性転写箔がさらに半透過反射層を有していることが好ましい。
【0145】
転写部の透過率を測定する手段としては、例えば、透過率の高い被転写体に転写した後に透過率を測定し、別途測定した被転写体のみの透過率と比較すればよい。これはヘイズなどの他の光学特性についても同様である。測定用の被転写体としては、例えばガラスが挙げられる。転写部の透過率は可視光領域の平均で20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。転写後の複屈折性転写箔のヘイズは20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。複屈折性転写箔が半透過反射層を有する場合、半透過反射層の可視光平均射率は可視光領域の平均で20%〜70%が好ましく、30%〜60%がより好ましく、35%〜55%がさらに好ましい。
【0146】
[転写]
複屈折性転写箔を転写部において物品に接着させて、例えば接着層に対応した接着方法により複屈折性転写箔を物品に圧着させて、その後、仮支持体を剥離することによって転写部を物品に転写させることができる。
本発明の製造方法においては、仮支持体から転写部を剥離する工程を剥離速度20m/min以下、剥離温度を80℃以下で行う。剥離速度は15m/min以下であることが好ましい。しかし、剥離速度が遅くなると生産効率が落ちるため、剥離速度は5m/min以上であることが好ましく、10m/min以上であることが好ましい。剥離温度は60℃以下であることが好ましい。低すぎると圧着後に冷却過程が必要となる場合があるため、剥離温度は40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。なお、剥離温度は、転写部の表面(膜面)の温度で示される。膜面温度は通常、熱伝対を用いて測定すればよい。
剥離方法としては手で剥離することも出来るが、生産効率と剥離速度安定化のため、機械的に剥離することが望ましい。機械的に剥離する方法としてはオートピーラーや、後述するラミネート装置において仮支持体の剥離機構を備えたものを使用することができる。
【0147】
転写部を物品に接着させる手段としては特に限定しないが、例えばホットスタンピング、インラインスタンピングおよび各種ラミネーションが挙げられる。
接着層に対応した接着法として、感圧性樹脂層に対しては単純な加圧転写が、感光性樹脂層に対しては露光と組み合わせた加圧転写が、感熱性樹脂層に対しては加温下での熱圧転写(ホットスタンプ、ホットラミネート等)が好ましい。
熱圧転写を用いる場合の加熱温度としては、被転写体の種類によって異なるものではあるが、60℃〜200℃程度であることが好ましく、80℃〜180℃程度であることがより好ましく、さらには100℃〜160℃の範囲内が好ましい。また熱圧転写の際の圧力としては、被転写体の種類によって異なるが、0.5Mpa〜15Mpaの範囲とすることが好ましい。
また、複屈折性転写箔を転写する場合にはホットスタンプやコールドスタンプなどの手段を用いて複屈折性転写箔の一部のみを転写してもよいし、ホットラミネートなどの手段を用いて転写箔の全体を転写してもよい。
特に転写部の物品への接着を60℃以上、特に120℃以上の熱圧転写により行った場合、転写部を何度以下に冷却すれば安定的な剥離が可能であるかは、製造効率の観点から重要な指標となる。本願発明においては、80℃以下、好ましくは60℃以下に冷却することで、所望の剥離界面での剥離が可能であることを見出した。
【0148】
[転写部を転写される物品]
複屈折性転写箔の被転写体として用いられる物品は特に限定されるものではなく、例えばガラス、金属、プラスチック、セラミックス、木材、紙、布等が挙げられる。プラスチックとしては特に限定は無いが、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)等が挙げられる。物品は剛直なものでもフレキシブルなものでもよく、透明であっても不透明であってもよいが、その表面もしくは内部に金属反射面を有していることは利用上好ましい。
【0149】
具体的な物品の例としては特に限定されないが、チケット、プリペイドカードやIDカードなどに用いられるプラスチックカード、各種証明書、有価証券、商品券、高級ブランド品、化粧品、薬品、タバコ等の商品パッケージ等が挙げられる。また金属反射面を有する物品をより好ましく用いることができる。このような物品の例としてはデジタルカメラ表面、腕時計裏面、懐中時計裏面、パソコン筐体表面、携帯電話表面および裏面、携帯音楽プレーヤー表面および裏面、化粧品や飲料の蓋、菓子や医薬品に用いられるPTP包装の表面および裏面、薬品包装用の金属缶表面、貴金属表面、宝飾品表面等を挙げることができる。あるいは上に挙げた金属反射面を有する物品を包む透明包装上に転写して用いることも好ましい。
【0150】
[複屈折パターンを転写された物品の応用]
複屈折パターンを転写された物品が有する複屈折パターンは通常はほぼ無色透明であるか、印刷層などに基づく像が視認できるのみである一方で、二枚の偏光板で挟まれた場合、あるいは反射層又は半透過反射層を有する物品につき、偏光板を介した場合においては、追加の特徴的な明暗、あるいは色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを転写された物品は、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち、複屈折パターンを転写された物品は、偏光板を用いることで通常の目視ではほぼ不可視である多色の画像が識別することができる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
特に半透過半反射層を含む複屈折パターンを転写された物品は、転写前に物品上に印刷された印字や写真などの上から、転写された複屈折パターンを観察することができる。
【0151】
複屈折パターンを転写された物品は、潜像によるセキュリティ効果だけでなく、例えばパターンをバーコード、QRコードのようにコード化することによって、デジタル情報との連携を図ることができ、さらにはデジタル暗号化も可能となる。また、前述のように高解像度潜像を形成することで偏光板を介しても肉眼では見分けがつかないマイクロ潜像印刷にでき、さらにセキュリティを高めることができる。
他にもUV蛍光インク、IRインクなどの不可視インクによる印刷との組み合わせでもセキュリティを高めることができる。
【0152】
複屈折パターンを転写された物品には、セキュリティだけでなく他の機能の付与、例えば値札や賞味期限などの製品情報表示機能、水につけると色が変色するインクを印刷することによる水没検知機能と組み合わせることも可能である。
【0153】
[光学素子]
また、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを転写された物品は光学素子への利用も可能である。例えば上記の製造方法により得られる複屈折パターンをガラス等の光学基材に転写して用いた場合、特定の偏光にのみ効果を与える特殊な光学素子の作製が可能である。一例として、複屈折パターンを有する回折格子を転写されたガラス基板は特定の偏光を強く回折する偏光分離素子として機能し、プロジェクターや光通信分野への応用が可能である。
【実施例】
【0154】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0155】
[偽造防止転写箔の作製]
(剥離層用塗布液FL−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、剥離層用塗布液FL−1として用いた。
────────────────────────────────────────
剥離層用塗布液(質量%)
────────────────────────────────────────
バインダ(MH−101−5、藤倉化成(株)製) 16.00
変性ワックス (プラスコート A-1クリヤー、和信化学工業(株)製)
2.52
キシレン 37.80
エチルベンゼン 31.08
メチルエチルケトン 4.20
トルエン 4.20
ブタノール 4.20
────────────────────────────────────────
【0156】
(剥離層用塗布液FL−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、剥離層用塗布液FL−2として用いた。
────────────────────────────────────────
剥離層用塗布液(質量%)
────────────────────────────────────────
バインダ(MH−101−5、藤倉化成(株)製) 16.00
メチルエチルケトン 76.00
シクロヘキサノン 8.00
────────────────────────────────────────
【0157】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
────────────────────────────────────────
配向層用塗布液組成(質量%)
────────────────────────────────────────
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
────────────────────────────────────────
【0158】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
────────────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
────────────────────────────────────────
重合性液晶化合物(LC−1−1) 32.88
水平配向剤(LC−1−2) 0.05
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 46.34
シクロヘキサノン 20.00
────────────────────────────────────────
【0159】
【化7】
【0160】
(添加剤層OC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、添加剤層用塗布液OC−1として用いた。ラジカル光重合開始剤RPI−1としては2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾールを用いた。下記組成はその溶液としての使用量である。
【0161】
────────────────────────────────────────
添加剤層用塗布液組成(質量%)
────────────────────────────────────────
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 7.63
ラジカル光重合開始剤(RPI−1) 0.49
界面活性剤 0.03
(メガファックF−176PF、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 91.85
────────────────────────────────────────
【0162】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
────────────────────────────────────────
転写接着層用塗布液組成(質量%)
────────────────────────────────────────
PES―375S40(ムロマチテクノス(株)社製) 37.50
メチルエチルケトン 62.50
────────────────────────────────────────
【0163】
(複屈折パターン作製材料P−1の作製)
厚さ50μmのポリイミドフィルム(カプトン200H、東レデュポン(株)製)の上にアルミニウムを60nm蒸着し、反射層つき仮支持体を作製した。そのアルミニウムを蒸着した面上にワイヤーバーを用いて剥離層用塗布液FL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は2.3μmであった。次いで配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.6μmであった。配向層をラビング処理した後、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度90℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ4.5μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において500mW/cm2、照射量はUV−A領域において500mJ/cm2であった。光学異方性層のレターデーションは400nmであり、20℃で固体のポリマーであった。次に、光学異方性層の上に添加剤層用塗布液OC−1を塗布、乾燥して0.9μmの添加剤層を形成し形成し、複屈折パターン作製材料P−1を作製した。
【0164】
(複屈折パターン作製材料P−2の作製)
剥離層用塗布液FL−1の代わりに剥離層用塗布液FL−2を用いる以外は複屈折パターン作製材料P−1と同様に複屈折パターン作製材料P−2を作製した。
【0165】
(実施例1:複屈折性パターンPP−1の作製)
複屈折パターン作製材料P−1をレーザ走査露光によるデジタル露光機(INPREX IP−3600H、富士フイルム(株)製)にて図17に示すように、0mJ/cm2、8mJ/cm2、25mJ/cm2の露光量を用いてRtoR(ロールツーロール)でパターン露光した。図中、無地で示した領域の露光量が0mJ/cm2、横線で示した領域の露光量が8mJ/cm2、縦線で示した領域の露光量が25mJ/cm2となるように露光した。その後、遠赤外線ヒータ連続炉を用い、RtoRにて、膜面温度が190℃となるように17分間加熱して、複屈折性パターンPP−1を作製した。複屈折性パターンPP−1の上に偏光板(HLC−5618、サンリッツ(株)製)をかざしたところ、所定の方向でかざしたときに、物品P−2に施した複屈折パターンを確認することができた。物品P−2の上に偏光板を介して観察されるパターンの拡大図を図18に示す。図中、地のアルミ箔が銀色を呈するのに対し、格子部は紺色ないし水色、斜線部は黄色ないし橙色を呈する二色のパターンが観察される。
【0166】
(実施例2:複屈折性パターンPP−2の作製)
複屈折パターン作製材料P−1の代わりに複屈折パターン作製材料P−2を用いる以外は実施例1と同様に、実施例2の複屈折性パターンPP−2を作製した。
【0167】
(実施例3:複屈折性パターンPP−3の作製)
膜面温度を210℃とする以外は実施例1と同様に実施例3の複屈折性パターンPP−3を作製した。
【0168】
(複屈折性転写箔の反射性基材への転写)
作製された複屈折性パターンに転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して、2.8μmの転写接着層を形成し、複屈折性転写箔を作製した。この複屈折性転写箔をポリマーコートアルミ箔からなる反射性基材にラミネーターを用いて膜面温度120℃、速度1m/minで熱圧着した後、テンシロン試験機を用いて仮支持体を剥離した。実施例1〜3の複屈折性パターンから作製した複屈折性転写箔について、剥離工程における剥離速度と温度に対する剥離力、故障の有無を図19、図20に示す。実施例1において、剥離速度::20 m/min以下, 剥離温度:80℃以下の領域で良好な剥離性が確認された。剥離速度::15 m/min以下, 剥離温度:60℃以下の領域では実施例1および実施例2で良好な剥離性が確認された。剥離速度::0.3 m/min, 剥離温度:20℃では実施例1、実施例2および実施例3で良好な剥離性が確認された。なお、210℃の焼成で、仮支持体/剥離層密着が増大し、剥離性が低下していることがわかる。(一般的に焼成温度の上昇とともに、仮支持体/剥離層密着が増大し、220℃より高い温度では剥離条件に関わらず剥離不良が発生する。)
剥離力は剥離速度の増大にともなって上昇し、10 gf/cm以上となると、配向層/剥離層の界面で剥離するとともにスティックスリップが発生する。また、剥離力は剥離温度の上昇にともなって上昇し、10 gf/cm以上となると、配向層/剥離層の界面で剥離するとともにスティックスリップが発生する。加えて剥離温度が80℃以上となると熱接着層の軟化が起こり、接着層/供給層の界面で剥離する。剥離層にワックスを加えない場合、剥離性が大幅に低下し、配向層/剥離層の界面で剥離するとともにスティックスリップが発生する。
【0169】
(熱圧着)
熱圧着はラミネーター(VAII-700S型ラミネーター、大成ラミネーター(株)製)を用いて行った。
【0170】
(剥離力の測定)
剥離力の測定はテンシロン試験機もしくはUV露光搬送装置(GTH、ハマノ精機(株)製)での剥離とデジタルフォースゲージ(FGP-5、日本電産進歩(株)社製)での測定を用いて測定した。
【符号の説明】
【0171】
101 パターン化光学異方性層(複屈折性層)
11 仮支持体または支持体
12 接着層
13 剥離層
14 離型層
15 配向層
16 印刷層
17 添加剤層
20 光学異方性層
21 反射層
22 透過性物品本体
23 反射性物品本体
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性を有する物品の製造方法に関する。本発明は特に、仮支持体と、複屈折性層を含む転写部とを含む複屈折性転写箔を用いて複屈折性層を有する物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複屈折性を呈するフィルムは近年、高級ブランド品や金券、商品券、紙幣、クレジットカード、工業用部品などに特殊な表面加工を付するためにも応用され、特に複屈折パターンを用いた画像はセキュリティラベルに応用することが提案されている(特許文献1、2)。複屈折パターンは偏光性を有しない通常の光源ではほぼ不可視な一方で偏光フィルタをかざすことで潜像が可視化される特殊な性質を有しており、複製は容易でない。このような複屈折パターンをラベル化して偽造が懸念される物品に貼付しておき必要に応じて偏光フィルタ等で確認することにより、真正品と偽造品を識別することが可能となる。
【0003】
しかしながら、ラベル自体の複製が困難であっても真正品から剥がすことが可能であった場合、真正品から剥がして偽造品に転用される恐れがある。その対策として複屈折パターンを転写箔上に形成し、対象となる物品に転写して使用することが提案されている(特許文献3)。しかし、通常、転写箔は複数の層が積層した構造を有するため、被転写体に転写部を転写する際、仮支持体と転写部との剥離が不良で所望の剥離界面で剥離できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−63300号公報
【特許文献2】特開2009−175208号公報
【特許文献3】特開2010−113249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は複屈折性を有する物品の製造方法の提供を課題とする。本発明の課題は特に、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層が転写された物品を製造する方法であって、該複屈折性層を含む転写部を複屈折性転写箔から物品に転写する際に、複屈折性転写箔から転写部を安定的に剥離するための剥離方法の最適化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般的に積層構造を有するフィルムの剥離工程における剥離力は剥離速度および温度上昇にともなって増大するが、所望の剥離界面での安定剥離は困難になる傾向がある。特に少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成される層を複屈折性層として用いる場合、転写工程で必要とされる転写条件は一般の転写材料の転写条件と比較して厳しい領域にある。本発明者らは、上記課題の解決のため、鋭意研究を重ね、剥離速度と温度の範囲を規定することで、故障無く、所望の剥離界面で安定して剥離できるようになることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の[1]〜[15]を提供するものである。
【0007】
[1]少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層が転写された物品を製造する方法であって、
仮支持体と前記複屈折性層を含む転写部とを含む複屈折性転写箔の前記転写部を前記物品に接着させる工程、および
前記仮支持体から前記転写部を剥離速度20m/min以下、剥離温度80℃以下で剥離する工程を含む方法。
[2]前記接着が60℃〜200℃の範囲の熱圧転写により行われる[1]に記載の方法。
【0008】
[3]前記複屈折性層が、複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターン化光学異方性層である[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記パターン化光学異方性層を下記工程を含む方法で形成する工程をさらに含む[3]に記載の方法:
前記液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
前記光照射後の層にパターン露光を行う工程;
パターン露光後の層を50℃以上かつ220℃以下に加熱する工程。
【0009】
[5]パターン露光後の層が190℃以下で加熱される[4]に記載の方法。
[6]前記転写部が、前記仮支持体側から剥離層、前記複屈折性層、および接着層を、この順に含む[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]前記剥離層が膜厚0.5〜2μmのアクリル樹脂である[6]に記載の方法。
[8]前記剥離層がさらにワックスを含む[7]に記載の方法。
【0010】
[9]前記仮支持体が膜厚25〜50μmのポリイミドフィルムもしくはポリエチレンナフタレートフィルムである[6]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]前記接着層が膜厚0.5〜2.0μmのポリエステル樹脂もしくは変性塩化ビニル樹脂である[6]〜[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]前記物品が金属箔、もしくはポリマーコートされた金属箔である[6]〜[10]のいずれか一項に記載の方法。
【0011】
[12]前記転写部が、前記仮支持体側から剥離層、配向層、前記複屈折性層、および接着層を、この順に含む[6]〜[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]前記配向層がポリビニルアルコールを含む[12]に記載の方法。
[14]前記剥離速度が15m/min以下である[1]〜[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15]前記剥離温度が60℃以下である[1]〜[14]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層を含む転写部を含む複屈折性転写箔を用いて複屈折性を有する物品を製造する際に、複屈折性転写箔から転写部を安定的に剥離することができ、意図する層間以外での剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】仮支持体とパターン化光学異方性層と接着層を有する基本的な複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図2】剥離層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図3】離型層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図4】配向層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図5】印刷層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図6】添加剤層を有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図7】パターン化光学異方性層を複数有する複屈折性転写箔の構成を模式的に示す図である。
【図8】基本的な複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図9】仮支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図10】剥離層および/もしくは離型層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図11】配向層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図12】印刷層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図13】反射層を有する転写型複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図14】添加剤層を有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図15】光学異方性層を複数有する複屈折パターン作製材料の構成を模式的に示す図である。
【図16】複屈折性転写箔を用いて転写された複屈折パターンを有する物品の構成を模式的に示す図である。
【図17】実施例で行ったパターン露光のパターンを示す図である。
【図18】実施例で作製した複屈折パターンを転写された物品上に観察される複屈折パターンの概観を示す図である。
【図19】実施例1〜3の複屈折性パターンから作製した複屈折性転写箔について、剥離工程における剥離速度と温度に対する剥離力、故障の有無を示す図である。
【図20】実施例1〜3の複屈折性パターンから作製した複屈折性転写箔について、剥離工程における剥離速度と温度に対する剥離力、故障の有無を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0015】
本明細書において、Reはレターデーションを表す。Reは透過または反射の分光スペクトルから、Journal of Optical Society of America,vol.39,p.791−794(1949)や特開2008−256590号公報に記載の方法を用いて位相差に換算する、スペクトル位相差法を用いて測定することができる。前記文献は透過スペクトルを用いた測定法であるが、特に反射の場合は、光が光学異方性層を2回通過するため、反射スペクトルより換算された位相差の半分を光学異方性層の位相差とすることができる。Reは特に指定がなければ正面レタ−デーションを指す。Re(λ)は測定光として波長λnmの光を用いたものである。本明細書におけるReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0016】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、レターデーションが実質的に0とは、レターデーションが5nm以下であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0017】
[複屈折性転写箔]
本明細書において、「複屈折性転写箔」とは、少なくとも仮支持体と複屈折性層を有し、所定のプロセスを経ることにより該層を物品に転写させることができる材料を意味する。「複屈折性転写箔」は、転写により被転写体上に転写される転写部と、仮支持体とともに転写時に剥離される部分からなる。すなわち、本明細書において「転写部」というときは、複屈折性転写箔の「仮支持体」を剥離したものを意味するが、例えば、離型層を含む複屈折性転写箔の場合、離型層は転写部には含まれない。
【0018】
[パターン化光学異方性層]
本明細書において「パターン化光学異方性層」とは複屈折パターンを有する光学異方性層のことである。さらに言い換えると複屈折性の異なる領域を2つ以上有する光学異方性層を意味する。パターン化光学異方性層は複屈折性の異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。パターン化光学異方性層は例えば後述の複屈折パターン作製材料を用いて容易に作製することができるが、複屈折性が異なる領域を有する層であれば作製方法は特に限定されない。本明細書においては、複屈折性層としてパターン化光学異方性層を有する複屈折性転写箔を中心に説明する。複屈折性層として非パターン化光学異方性層を有する複屈折性転写箔については、以下の説明において、パターン形成のための作業を行わない(例えばパターン露光の代わりに全面露光を行う)ことによって、同様に作製することが可能である。または、以下で説明する複屈折パターン作製材料中の光学異方性層につき、そのまま加熱処理等を行って非パターン化光学異方性層を作製し、複屈折性転写箔とすることも可能である。
【0019】
[複屈折パターンの定義]
複屈折パターンとは、広義には複屈折性の異なる2つ以上の領域が2次元の面内または3次元的に配置されて描かれたパターンを差す。なお特に2次元の面内においては、複屈折性は屈折率が最大となる遅相軸の方向と領域内のレターデーションの大きさの2つのパラメータにより定義される。例えば液晶性化合物による位相差フィルムなどにおける面内の配向欠陥や厚み方向の液晶の傾斜分布も広義には複屈折パターンと言えるが、狭義にはあらかじめ決めたデザインなどを基に、意図して複屈折性を制御してパターン化したものを複屈折パターンと定義することが望ましい。複屈折パターンは特に記載しない限り、複数層に渡っていてもよく、複数層のパターンの境界は一致していても異なっていてもよい。
【0020】
図1〜7は、複屈折性転写箔としてパターン化光学異方性層を有する転写箔の例を示す。複屈折性転写箔は少なくとも、仮支持体11と複屈折性層(図ではパターン化光学異方性層101)を有する。
パターン化光学異方性層101につき、図では複屈折性が異なる領域を101A、101B、101Cとして例示する。
【0021】
図1に示す複屈折性転写箔は仮支持体11上にパターン化光学異方性層101と接着層12を有する複屈折性転写箔の構成である。
【0022】
図2に示す複屈折性転写箔は仮支持体11とパターン化光学異方性層101の間に剥離層13を有する例である。剥離層13は仮支持体との間で剥離の容易な界面を形成し、仮支持体11の剥離を滑らかにする働きがある。
【0023】
図3(a)、(b)に示す複屈折性転写箔は仮支持体11とパターン化光学異方性層101の間に離型層14を有する例である。離型層14もまた仮支持体11の剥離を助ける働きを有するが、剥離層13が仮支持体11との間で剥離界面を形成するのに対し離型層14はその上の層(例えばパターン化光学異方性層)との間で剥離界面を形成する。また、図3(b)に示すように剥離層13と離型層14の両方を有する場合もあり、この場合は剥離層13と離型層14の間が剥離界面となる。
【0024】
図4に示す複屈折性転写箔は配向層15を有する例である。パターン化光学異方性層101として、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化した光学異方性層から形成された層を用いる場合、配向層15は液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
【0025】
図5は印刷層16を有する複屈折性転写箔の例である。印刷層は不可視な複屈折パターンに重ねて可視の画像を与えるものが一般的だが、たとえばUV蛍光染料やIR染料などによる不可視なセキュリティ印刷と組み合わせることもできる。印刷層は光学異方性層の上でも下でもよく、印刷層に透過性があれば複屈折パターンによる潜像をフィルタで可視化した際、印刷と潜像が重なって見えるようになる。
【0026】
図6(a)、(b)に示す複屈折性転写箔は、パターン化光学異方性層の上に添加剤層17を有するものである。添加剤層は後述のように複屈折パターン作製材料において光学異方性層に可塑剤や光重合開始剤を後添加するための層であるが、それに加え、必要に応じて複屈折性転写箔において層間の密着を強化する下塗り層、製造途中の表面保護のためのハードコート層、赤外線を透過させないことにより赤外線カメラで見えなくする遮蔽層、水没した際に変色するなどして水没を検知する水没検知層、温度により色の変わるサーモトロピック層、潜像の色を制御する着色フィルタ層、磁気記録性を付与する磁性層、マット層、散乱層、潤滑層などとしての機能を付与することも可能である。
【0027】
図7(a)〜(c)に示す複屈折性転写箔は、パターン化光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。複数の光学異方性層の複屈折性が異なる領域は互いに同一でも異なっていてもよい。図には示さないが、パターン化光学異方性層は3つ以上あってもよい。レターデーションあるいは遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えることにより、さらに多彩な機能を有する潜像を形成することができる。
【0028】
[複屈折パターン作製材料]
前記パターン化光学異方性層を作製する方法は特に限定されないが、例えば以下に示す複屈折パターン作製材料を用いる方法が挙げられる。以下の本明細書の説明において、複屈折パターン作製材料は、パターン化光学異方性層を作製するための材料であって、所定の工程を経ることでパターン化光学異方性層を作製することができる材料を意味しているが、同様の複屈折パターン作製材料は、露光などの条件を変更することにより、非パターン化光学異方性層を作製するための材料としても使用できる。複屈折パターン作製材料はパターン化光学異方性層を作製するための材料であり、所定の工程を経ることでパターン化光学異方性層を作成することができる材料を指す。複屈折パターン作製材料に所定の工程を行ってパターン化光学異方性層を作製した上で、さらに必要に応じて追加の層を形成することにより複屈折性転写箔を作製することができる。
【0029】
例えば特開2009−175208号公報に記載のような感光性を有する複屈折パターン作製材料を用いた場合、露光量により照射部のレターデーションを制御することができ、未露光部のレターデーションを実質的に0にすることもできる。このような複屈折パターン作製材料を用いることで所望の複屈折パターンを与えられたパターン化光学異方性層を有する複屈折性転写箔を容易に作製することが可能となる
【0030】
複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は、光学異方性層又は、光学異方性層のみからなるもののほか、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有しているものであってもよい。機能性層としては、支持体、配向層、反射層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、力学特性制御層を有していてもよい。また後に複屈折性転写箔に用いる材料であることから、複屈折性転写箔において機能する剥離層、離型層、接着層などを有していてもよい。
【0031】
図8に示す複屈折パターン作製材料は、自己支持性を有する光学異方性層20のみからなる複屈折パターン作製材料の例である。
光学異方性層は複屈折性を有する層であり、一軸または二軸延伸されたポリマー層や配向した液晶性化合物を固定化した層、配向が揃った有機または無機単結晶層などにより形成されていればよい。光学異方性層としては、フォトマスクによる露光あるいはデジタル露光などのパターン露光や、ホットスタンプやサーマルヘッド、赤外線レーザ露光などのパターン加熱、針やペンによって機械的に加圧またはせん断を加える触針描画、反応性化合物の印刷などにより、光学異方性を任意に制御する機能を有することができる層が好ましい。そのような機能を有する光学異方性層は、後述の方法などにより、パターン化光学異方性層を得ることが容易であるからである。パターン形成のためには、フォトマスクによる露光あるいは走査露光などのパターン露光を用いることが好ましい。該パターニング工程に加えて必要に応じて熱や薬液による漂白、現像などと組み合わせてパターンを形成することもできる。この場合支持体の制約が少ないことから熱による漂白、現像が好ましい。
【0032】
図9は後に複屈折性転写箔として用いるための仮支持体11上に光学異方性層20を有する例である。
図10(a)〜(c)は後に複屈折性転写箔として用いるための剥離層13および/もしくは離型層14をあらかじめ有する複屈折パターン作製材料の例である。剥離層13と離型層14は複屈折性転写箔において機能を発揮する機能性層であるが、必要に応じて複屈折パターン作製材料の途中に形成しておいてもよい。
【0033】
図11(a)〜(c)に示す複屈折パターン作製材料は配向層15を有する例である。光学異方性層20として、液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化した光学異方性層から形成された層を用いる場合、配向層15は液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
図12(a)〜(c)は印刷層16を有する複屈折パターン作製材料の例である。印刷層16もまた複屈折性転写箔において機能を発揮する機能性層であるが、必要に応じて複屈折パターン作製材料の途中に形成しておいてもよい。
図13(a)〜(c)は反射層21を有する複屈折パターン作製材料の例である。複屈折パターン作製材料における反射層21は、製造プロセス中の露光の効率化や製造途中での光学異方性層の光学特性評価の簡便化に効果がある。また複屈折性転写箔において視認性の調整のために利用する反射層あるいは半透明反射層を複屈折パターン作製材料の段階から設けておいてもよい。
【0034】
図14(a)〜(d)は光学異方性層の上に添加剤層17を有する複屈折パターン作製材料の例である。添加剤層は光学異方性層に可塑剤、熱重合禁止剤および光重合開始剤等の添加剤を後添加するための層であるが、必要に応じて複屈折パターン作製材料中においてもしくは複屈折性転写箔中において発揮する別の機能を付与されていてもよい。
【0035】
図15(a)〜(d)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数有するものである。複数の光学異方性層の面内遅相軸は同一でも異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。図には示さないが、光学異方性層は3つ以上あってもよい。また液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成する場合には配向層があることが好ましいが、図15(c)のように光学異方性層自体が配向層を兼ねることで配向層が省略されていてもよい。
【0036】
[複屈折パターンを転写された物品]
図16は複屈折性転写箔を用いて転写された複屈折パターンを有する物品の例である。
図16(a)、(b)に示す複屈折パターンを有する物品はそれぞれ、複屈折パターンを有する透過性物品および複屈折パターンを有する反射性物品の構成である。
透過性物品の場合、透過性物品本体22上に転写されたパターン化光学異方性層101を挟んで光源および観測点は反対側にある。この場合、偏光フィルタなどを用いて作製された偏光光源から出た光は複屈折パターンを有する物品を通過して面内で異なる偏光状態となり、観測点側でさらに偏光フィルタを通過して情報を可視化される。ここで偏光フィルタは直線偏光フィルタでも円偏光フィルタでも楕円偏光フィルタでもよく、偏光フィルタ自身が複屈折パターンまたは二色性パターンを有していてもよい。
【0037】
反射性物品の場合、光源および観測点はいずれも、反射性物品本体23上に転写されたパターン化光学異方性層101から見て片側にあり、またそれらと反対側には反射面(この場合には反射性物品本体23の表面)がある。この場合、偏光フィルタなどを用いて作製された偏光光源から出た光は複屈折パターンを有する物品を通過して面内で異なる偏光状態となり、反射面で反射して再び複屈折パターンを有する物品を通過する際に再度影響され、最後に観測点側で偏光フィルタを通過して情報を可視化される。ここで偏光フィルタは直線偏光フィルタでも円偏光フィルタでも楕円偏光フィルタでもよく、偏光フィルタ自身が複屈折パターンまたは二色性パターンを有していてもよい。また、光源と観測で同一の偏光フィルタを用いてもよい。反射面は反射性の高いホログラム層や電極層などが兼ねてもよい。
【0038】
さらに反射面は部分的に光を反射し、部分的に光を透過する半透過半反射層でもよく、その場合複屈折パターンを有する物品は透過、反射の両方の画像を可視化させることができるだけでなく、複屈折パターンを有する物品の半透過半反射層の下側にある文字や画像などの一般的な情報をパターン化光学異方性層の上側からフィルタなしに視認することができる。
【0039】
以下、複屈折性転写箔とその材料の一種である複屈折パターン作製材料、それを用いた複屈折性転写箔の作製方法およびそれらを構成する材料、作製方法等について詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0040】
[光学異方性層]
複屈折パターン作製材料における光学異方性層はパターン化光学異方性層の元となる層であり、レターデーションを測定したときにレターデーションが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。
【0041】
複屈折パターン作製材料における光学異方性層としては、少なくとも1つのモノマーおよび/またはオリゴマーを含む層、少なくとも1つのポリマーを含む層、少なくとも1つの有機または無機単結晶を含む層などがあげられる。また該ポリマーは少なくとも1つのモノマーおよび/またはオリゴマーを硬化させたものであってもよい。
【0042】
ポリマーを含む前記光学異方性層は、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる点で好ましい。該光学異方性層中のポリマーは未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応してポリマー鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によってポリマー鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレターデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなると考えられるためである。
【0043】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であることが好ましい。これは20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や(パターン形成前の)別支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
【0044】
光学異方性層上に他の機能性層の塗布を行う場合には、光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後のレターデーションが浸漬前のレターデーションの30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒は行いたい機能性層の塗布に用いる溶媒によるが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
【0045】
光学異方性層は20℃においてレターデーションが5nm以上であることが好ましく、10nm以上10000nm以下であることが好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが5nm以下では複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが10000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
【0046】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;側鎖に反応性基を有するポリマーからなる層を延伸する方法;またはポリマーからなる層を延伸した後にカップリング剤等を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。後述するように、光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0047】
[液晶性化合物を含有する組成物を配向固定化してなる光学異方性層]
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、加熱または光照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述するポリマーを延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易であり、好ましい。
【0048】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物を用いることが好ましい。
【0049】
なお、本明細書において、液晶性化合物を含む組成物から形成された層について記載されるとき、この形成された層において液晶性を有する化合物が含まれる必要はない。例えば、前記低分子液晶性化合物が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものが含まれる層であってもよい。また、液晶性化合物としては、2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。2種以上の液晶性化合物の混合物の場合、少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0050】
好ましくは、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用い、条件を選択して2種類以上の反応性基の一部の種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製するとよい。架橋機構としては縮合反応、水素結合、重合など特に限定はないが、2種以上のうち少なくとも一方は重合が好ましく、2種類以上の異なる重合を用いることがさらに好ましい。一般に架橋反応は、重合に用いられるビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基だけでなく、水酸基、カルボン酸基、アミノ基なども用いることができる。
【0051】
本明細書において、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する化合物とは、段階的に異なる架橋反応工程を用いて架橋させる化合物であり、各段階の架橋反応工程では、それぞれの架橋機構に応じた反応性基が官能基として反応する。また、例えば側鎖に水酸基を有するポリビニルアルコールのようなポリマーの場合で、ポリマーを重合する重合反応を行った後、側鎖の水酸基をアルデヒドなどで架橋させた場合は2種類以上の異なる架橋機構を用いたことになるが、本明細書において2種類以上の異なる反応性基を有する化合物というときは、好ましくは、支持体等の上に層を形成した時点において該層中で2種類以上の異なる反応性基を有する化合物であって、その後にその反応性基を段階的に架橋させることができる化合物であればよい。特に好ましい態様として2種以上の重合性基を有する液晶性化合物を用いることが好ましい。段階的に架橋させる反応条件として、温度の違い、光(照射線)の波長の違い、重合機構の違いのいずれでもよいが、反応を分離しやすい点から重合機構の違いを用いることが好ましく、用いる開始剤の種類によって制御することがさらに好ましい。重合機構としては、ラジカル重合性基とカチオン重合性基の組み合わせが好ましい。前記ラジカル重合性基がビニル基、(メタ)アクリル基であり、かつ前記カチオン重合性基がエポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0052】
【化1】
【0053】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく 用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。棒状液晶性化合物の例としては特開2008−281989号公報、特表平11−513019号公報(WO97/00600)および特表2006−526165号公報に記載のものが挙げられる。
【0054】
以下に、棒状液晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0055】
【化2】
【0056】
【化3】
【0057】
【化4】
【0058】
【化5】
【0059】
【化6】
【0060】
他の態様として、前記光学異方性層に円盤状液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の円盤状液晶性化合物の層または重合性の円盤状液晶性化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であることが好ましい。前記円盤状液晶性化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記円盤状液晶性化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的に円盤状液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。円盤状液晶性化合物の例としては特開2008−281989号公報の段落[0061]〜[0075]に記載のものが挙げられる。
【0061】
液晶性化合物は、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。光学異方性層としては、棒状液晶化合物を水平配向させた状態で固定化されたものを含むことが好ましい。
【0062】
液晶性化合物を含有する組成物を配向固定化してなる光学異方性層においては、液晶性化合物の架橋を促進するため重合性モノマーを添加してもよい。
たとえばエチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーを用いることができる。
そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0063】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
【0064】
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0065】
また、カチオン重合性モノマーを用いることもできる。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号の各公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0066】
エポキシ化合物としては、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。芳香族エポキシドとしては、例えば、ビスフェノールA、あるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0067】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0068】
また、カチオン重合性モノマーとして、単官能または2官能のオキセタンモノマーを用いることもできる。たとえば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルなどの化合物や、特開2001−220526号公報、同2001−310937号公報に記載されている公知のあらゆる官能または2官能オキセタン化合物を使用できる。
【0069】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体、又は全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体のいずれであってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0070】
[溶媒]
液晶性化合物を含有する組成物を、塗布液として、例えば支持体又は後述する配向層等の表面に塗布する場合の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例としては、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が挙げられる。また、二種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。上記の中で、アルキルハライド、エステル、ケトンおよびそれらの混合溶媒が好ましい。
【0071】
[配向固定化]
液晶性化合物の配向の固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の架橋反応により実施することが好ましく、反応性基の重合反応により実施することがさらに好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示することができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0072】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜1000mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜2000mW/cm2であることが好ましく、20〜1500mW/cm2であることがより好ましく、40〜1000mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0073】
[偏光照射による光配向]
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。偏光照射は、特開2009−69793号公報の段落「0091」〜「0092」の記載、特表2005−513241号公報(国際公開WO2003/054111)の記載などを参照して行うことができる。
【0074】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−8〜I−15)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0075】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0076】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜1000mJ/cm2であることが好ましく、10〜800mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜600mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜1500mW/cm2であることが好ましく、10〜1000mW/cm2であることがより好ましく、20〜800mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0077】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。ただし、カチオン重合開始剤を用いた反応は、水によって阻害される。従って、重合雰囲気の湿度を低くすることが好ましく、60%以下にすることが好ましく、40%以下にすることがさらに好ましい。また、カチオン重合開始剤を用いた反応は、高温ほど反応性が高くなる特性を有する。従って、液晶化合物が液晶性を示す温度範囲内で、反応時の温度は高いほうが好ましい。
【0078】
また、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合において、その片方を選択的に重合させる手段として他方の重合性基に対応する重合禁止剤を用いることも好ましい。例えば、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてそのカチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル性重合に対する重合禁止剤を少量加えることでその選択性を向上させることが可能である。このような重合禁止剤の使用量は、塗布液の固形分の0.001〜10質量%であることが好ましく、0.005〜5質量%であることがより好ましく、0.02〜1質量%であることが特に好ましい。例えばラジカル性重合に対する重合禁止剤としてはニトロベンゼン、フェノチアジン、ハイドロキノン等が挙げられる。また、一般に酸化防止剤として用いられるヒンダートフェノール類もラジカル性重合に対する重合禁止剤として有効である。
【0079】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の、一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。液晶性化合物を水平配向させる場合、その傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、特開2009−69793号公報の段落「0098」〜「0105」に記載の一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0080】
[延伸によって作製される光学異方性層]
光学異方性層はポリマーの延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つことが好ましいが、このようなポリマーを作製する際にはあらかじめ反応性基を有するポリマーを延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0081】
[2層以上の光学異方性層]
上記のように複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いている2層以上の光学異方性層を用いることによって、大きなレターデーションを有するパターンを作製することができる。
【0082】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に重ねて新たな光学異方性層を形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に新たな光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0083】
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上のためのコロナ処理や、柔軟性向上のための可塑剤添加、保存性向上のための熱重合禁止剤添加、反応性向上のためのカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中のポリマーが未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて配向固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる添加剤層を用いる方法もあげられる。この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0084】
[添加剤層]
前記光学異方性層上に形成する添加剤層は、フォトレジストのような感光性樹脂層の他、透過光の散乱を制御する散乱層、下層の傷つきを防止するハードコート層、帯電によるごみつきを防止する帯電防止層、印刷の下地となる印刷塗工層を共用してもよい。感光性樹脂層としては、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の光重合開始剤を含んでいることが好ましい。前記光学異方性層中の未反応の反応性基による重合反応を開始させる機能を有する重合開始剤を少なくとも一種以上含む層が設けられていることが好ましい。光学異方性層と重合開始剤を含む添加剤層は隣接していることが好ましい。このような構成とすることによって、別に重合開始剤を添加することなくパターン状の熱処理又は電離放射線照射により複屈折パターンの形成が可能な複屈折パターン作製材料とすることができる。重合開始剤を含む添加剤層の構成としては特に限定は無いが、重合開始剤以外に少なくとも1種のポリマーを含むことが好ましい。
【0085】
ポリマー(本発明においては別名として「バインダ」と呼ぶことがある。)としては、特に限定は無いがポリメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とその各種エステルの共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸あるいは各種(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸あるいは各種(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、ポリエステル、ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等を挙げることができる。好ましい例としてはメチル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体、アリル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の共重合体、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜99質量%が一般的であり、40〜99質量%が好ましく、60〜98質量%がより好ましい。
重合開始剤としては熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられ、手法に合わせて適宜用いられる。光重合開始剤としてはラジカル性光重合開始剤、カチオン性光重合開始剤のいずれでも構わない。
【0086】
ラジカル性光重合開始剤としては米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
【0087】
カチオン光重合開始剤としては、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示することができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0088】
また重合開始剤の量は、添加剤層の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.2〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0089】
[散乱性を有する添加剤層]
添加剤層に散乱性を付与することにより、複屈折パターン物品のギラツキを制御したり、コバート性を制御したりすることができる。散乱層としては、エンボスによる表面凹凸層、粒子などのマット剤を含むマット層が好ましい。また、コバート性を向上させる粒子に関して、粒径は、0.01μm〜50μmが好ましく、0.05μm〜30μmがより好ましい。含有濃度は、0.01%〜5%が好ましく、0.02%〜1%がより好ましい。
【0090】
[ハードコート性を有する添加剤層]
ハードコート性を持たせるために、添加剤層中のポリマーとしてTgの高いポリマー用いることが好ましく、そのTgは50℃以上が好ましく、80℃以上であればより好ましく、100℃以上であればさらに好ましい。ポリマーのTgを上げるために、水酸基、カルボン酸基、アミノ基といった極性基を導入するとよい。高Tgポリマーの一例として、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートの反応物。アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物。アルキル(メタ)アクリレートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物との反応物であるハーフエステルの共重合体等が挙げられる。
【0091】
また、ハードコート性を付与するために、少なくとも1種類の二官能以上の重合性モノマーおよび重合性ポリマーを含む層を光照射または熱により重合した層を用いてもよい。反応性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。重合性ポリマーの一例として、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジ(メタ)アクリレート等の重合性基含有アクリレートの反応物。重合性基含有アクリレートの反応物(メタ)アクリル酸との共重合体、および他のモノマーとの多元共重合体が挙げられる。
【0092】
[印刷塗工層としての添加剤層]
可視または紫外線や赤外線などで視認できるパターンを形成するために、添加剤層上に印刷インクが塗工できることが好ましい。インクの濡れ性向上を目的としてポリマーの側鎖にカルボン酸基やヒドロキシル基などの極性基を導入することも好ましい。次に、濡れ性を向上させること手法として、表面改質処理を併用してもよい。表面改質処理として、低圧水銀灯やエキシマ処理等のUV処理、コロナ放電、グロー放電等の放電処理が挙げられる。UV処理の中では、より高エネルギーで改質効率の高いエキシマ処理が好ましい。
【0093】
印刷インクとして、UV蛍光インクやIRインクはそれ自体もセキュリティ印刷であるため、セキュリティ性が向上するので好ましい。印刷方法は特に限定はないが、一般的に知られているフレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷の他、インクジェットやゼログラフィなどを用いることができる。また、解像度を1200dpi以上のマイクロ印刷にすることによっても、セキュリティ性を高めることができるので好ましい。
【0094】
[支持体]
複屈折パターン作製材料はそれぞれ、力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料における支持体がそのまま複屈折性転写箔における仮支持体となっていてもよく、複屈折性転写箔における仮支持体が複屈折パターン作製材料における支持体とは別に(複屈折パターン形成時または形成後に、複屈折パターン作製材料における支持体と代わって又は追加で)設けられてもよい。支持体としては特に限定はなく剛直なものでもフレキシブルなものでもよいが、フレキシブルなものが好ましい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。後述する反射層の代わりに、支持体自体が反射機能を有していてもよい。
【0095】
[配向層]
既に説明したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、アゾベンゼンポリマーやポリビニルシンナメートに代表される偏光照射により液晶の配向性を発現する光配向層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。配向層としてはラビングの態様ではポリビニルアルコールを含むことが好ましく、配向層の上または下の少なくともいずれか1層と架橋できることが特に好ましい。配向方向を制御する方法としては、光配向層およびマイクログルーブが好ましい。光配向層としては、ポリビニルシンナメートのように二量化によって配向性を発現するものが特に好ましく、マイクログルーブとしてはあらかじめ機械加工またはレーザ加工により作製したマスターロールのエンボス処理が特に好ましい。
【0096】
[反射層]
複屈折パターン作製材料は、製造プロセス中の露光を効率的に行うため、あるいは製造途中での光学特性の評価を容易にするために反射層を有していてもよい。反射層としては特に限定されないが、偏光解消性のないものが好ましく、例えばアルミや銀などの金属層、誘電体多層膜による反射層、光沢を有する印刷層が挙げられる。また、透過率が8〜92%、反射率が8〜92%の半透過半反射層を用いることもできる。半透過半反射層は金属層の厚みを薄くする方法が安価で製造できるので好ましい。一方、金属による半透過半反射層は吸収を有しているため、吸収なしに透過率と反射率を制御できる誘電体多層膜は光利用効率の観点から好ましい。
【0097】
[複屈折性転写箔に必要な層の先形成]
後に述べる複屈折性転写箔を構成する層、例えば剥離層、離型層、接着層などについては必要に応じて複屈折パターンを形成する前、あるいは光学異方性層を形成する前に形成してもよい。特に複屈折パターン作製材料の支持体がそのまま複屈折性転写箔の仮支持体となる場合、光学異方性層よりも仮支持体側に存在するべきである離型層と剥離層については光学異方性層を形成する前に形成しておくことが好ましい。これらの層の詳細については後に述べる。
【0098】
[塗布方法]
光学異方性層、所望により形成される配向層、などの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0099】
[パターン化光学異方性層の作製および複屈折性転写箔の作製]
複屈折パターン作製材料に所定の工程を行ってパターン化光学異方性層を作製し、さらに必要に応じて追加の層を形成することにより複屈折性転写箔を作製することができる。パターン化光学異方性層の作製に際して行う工程は特に限定されないが、例えば、パターン露光、加熱、熱書き込みなどが挙げられる。好ましくは複屈折パターン作製材料にパターン露光と加熱をこの順で行うことにより、効率的にパターン化光学異方性層を作製することができる。
【0100】
[パターン露光]
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光又は2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を意味する。互いに露光条件の異なる露光には、未露光(露光しないこと)が含まれていてもよい。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画する走査露光を用いてもよい。また、複屈折パターン作製材料の形態が枚葉であればバッチ式露光、ロール形態であればRtoR式露光でもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザ等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。パターン露光の解像度を1200dpi以上にすることにより、マイクロ印刷潜像が形成でき、好ましい。解像度を高めるためには、パターン露光時にパターン化光学異方性層が固体であり、尚且つ厚みが10μm以下であることが必要であり、好ましい。厚み10μm以下で実現するためにはパターン化光学異方性層が重合性液晶化合物を含む層を配向固定化したものであることが好ましく、重合性液晶化合物が架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有することが特に好ましい。また、RtoR式露光を使用する場合に用いる巻き芯としては、特に制限は無いが、外径10mm〜3000mm程度のものが好ましく、より好ましくは20mm〜2000mm程度のもの、さらに好ましくは30mm〜1000mm程度のものである。巻き芯に巻きつける際のテンションとしては、特に制限は無いが、1N〜2000N程度が好ましく、より好ましくは3N〜1500N程度であり、さらに好ましくは5N〜1000N程度である。
【0101】
[パターン露光時の露光条件]
複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行う際、「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。すなわち、パターン露光時に、異なる露光条件で露光された2つ以上の領域を生ずるような形で露光が行われていればよい。走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、露光領域の照射スポットを変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能であり、好ましい。
【0102】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレターデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレターデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0103】
[マスク露光]
露光条件の異なる露光領域を生じる手段の一つとして、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の下で同一時間の露光を行うことで異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
【0104】
[走査露光]
走査露光は、例えば、光により所望の2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を応用して行うことができる。
このような描画装置の代表的な例として、光ビーム発生手段から導出された光ビームを、光ビーム偏向走査手段を介して被走査体上に走査させることにより、所定の画像等を記録するように構成された画像記録装置がある。この種の画像記録装置では、画像等の記録に際して、光ビーム発生手段から導出される光ビームを画像信号に対応して変調させる(特開平7−52453号公報)。
【0105】
また主走査方向に回転するドラムの外周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを副走査方向に走査することで記録を行うタイプ、および、ドラムの円筒内周面に貼着された被走査体上に対してレーザビームを回転走査させることで記録を行うタイプ(特許2783481号)の装置も使用できる。
【0106】
さらに、描画ヘッドにより2次元パターンを描画面上に形成する描画装置を用いることもできる。例えば、半導体基板や印刷版の作製で用いられている、露光ヘッドにより所望の2次元パターンを感光材料等の露光面上に形成する露光装置が使用できる。このような露光ヘッドとして代表的なものは、多数の画素を有し所望の2次元パターンを構成する光点群を発生させる画素アレイを備えている。この露光ヘッドを、露光面に対して相対移動させながら動作させることにより、所望の2次元パターンを露光面上に形成することができる。
【0107】
上記のような露光装置としては、たとえば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を露光面に対して所定の走査方向に相対的に移動させるとともに、その走査方向への移動に応じてDMDのメモリセルに多数のマイクロミラーに対応した多数の描画点データからなるフレームデータを入力し、DMDのマイクロミラーに対応した描画点群を時系列に順次形成することにより所望の画像を露光面に形成する露光装置が提案されている(特開2006−327084号公報)。
【0108】
露光ヘッドが備える空間光変調素子としては、上記のDMDの以外の、空間光変調素子を使用することもできる。なお、空間光変調素子は、反射型および透過型のいずれでもよい。そのほかの空間光変調素子の例としては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの空間光変調素子(SLM;Special Light Modulator)、電気光学効果により透過光を変調する光学素子(PLZT素子)、液晶光シャッタ(FLC)等の液晶シャッターアレイなどが挙げられる。なお、MEMSとは、IC製造プロセスを基盤としたマイクロマシニング技術によるマイクロサイズのセンサ、アクチュエータ、そして制御回路を集積化した微細システムの総称であり、MEMSタイプの空間光変調素子とは、静電気力を利用した電気機械動作により駆動される空間光変調素子を意味している。
【0109】
さらに、回折格子ライトバルブ(GLV;Grating Light Valve)を複数ならべて二次元状に構成したものを用いることもできる。
露光ヘッドの光源としては、上記したレーザ光源の他に、ランプ等も使用可能である。
【0110】
[2つ以上の光学異方性層のパターン露光]
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0111】
[加熱(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上220℃以下、に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。加熱温度は80℃以上であることがより好ましい。また加熱温度は190℃以下であることがより好ましい。ここで、加熱温度は、複屈折パターン作製材料の表面(膜面)の温度で示される。膜面温度は通常、熱伝対を用いて測定すればよい。加熱に使用する機器としては、温風炉、マッフル炉、IRヒーター、セラミックヒーター、電気炉等が使用できる。また、複屈折パターン作製材料の形態が枚葉であればバッチ式加熱、ロール形態であればRtoR式加熱でもよい。RtoR式加熱を使用する場合に用いる巻き芯としては、特に制限は無いが、外径10mm〜3000mm程度のものが好ましく、より好ましくは20mm〜2000mm程度のもの、さらに好ましくは30mm〜1000mm程度のものである。巻き芯に巻きつける際のテンションとしては、特に制限は無いが、1N〜2000N程度が好ましく、より好ましくは3N〜1500N程度であり、さらに好ましくは5N〜1000N程度である。
なお、複屈折パターンはレターデーションが実質的に0である領域を含んでいてもよい。例えば、2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成した場合において、パターン露光で未露光であると上記ベークによってレターデーションが消失し、実質的に0となる場合がある。
【0112】
ベークを行った複屈折パターン材料の上には、新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベークを行ってもよい。この場合、一度目及び二度目の露光条件で組み合わせて、二度目のベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0113】
[熱書き込み]
上記のように、未露光領域にベークを行うことによってレターデーションを実質的に0にすることが可能であるため、複屈折パターンを有する物品には、パターン露光に基づく潜像に加えて、熱書き込みによる潜像が含まれていてもよい。熱書き込みはサーマルヘッド又は、赤外線やYAGなどのレーザ描画を用いて行うことができる。例えば、サーマルヘッドを有する小型のプリンタとの組み合わせで、秘匿を必要とする情報(個人情報、暗証番号、意匠性を損なう商品管理コードなど)を簡便に潜像化することができ、ダンボール箱などに熱書き込みする赤外線やYAGレーザをそのまま用いることもできる。
【0114】
[複屈折性転写箔の機能性層]
複屈折性転写箔を構成する機能性層としてはパターン化光学異方性層の他に仮支持体、接着層、さらに必要に応じて剥離層、離型層、印刷層、反射層などが挙げられる。これらの機能性層はあらかじめ複屈折パターン作製材料に含まれていてもよいし、パターン化光学異方性層が作製された後に形成されてもよい。なお、複屈折パターン作製材料の支持体がそのまま複屈折性転写箔の仮支持体となる場合には、離型層と剥離層については光学異方性層を形成する前に形成しておくことが好ましい。
【0115】
機能性層はディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)による塗布により形成することができる。またこの場合、二層以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。また機能性層の性質に応じて、上記の他の形成法が用いられてもよい。
【0116】
[仮支持体]
複屈折性転写箔を構成する仮支持体としてはRtoRでの取り扱いが可能なものであれば特に限定はなく、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。特に耐熱性を備えたものが好ましく、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート、セルロースアセテートフィルムなどがあげられる。仮支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。
【0117】
[接着層]
複屈折パターン転写箔を構成する接着層としては、用いられる被転写体との十分な接着性を発揮できれば特に制限はなく感圧性樹脂層、感光性樹脂層および感熱性樹脂層などが挙げられるが、感熱性樹脂層が望ましい。また、半透明の反射層を用いる半透明な複屈折パターン転写箔や反射層を有しない透明な複屈折パターン転写箔に用いる場合には透過率、ヘイズ、レターデーションなどの光学特性が適切な範囲に収められていることが好ましい。また、RtoRでの製造の際に背面との接着を防ぐために、シリカ等のフィラーが入っていてもよい。
【0118】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、合成ゴム等の粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。感圧性樹脂層の粘着特性の制御は、例えば、感圧性樹脂層を形成する素材の組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0119】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、市販の材料を用いることもできる。接着層として用いられる場合、感光性樹脂層は少なくともポリマーと、モノマー又はオリゴマーと、光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。ポリマー、モノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤又は光重合開始剤系については、特開2007−121986号公報の[0082]〜[0085]の記載を参照することができる。
【0120】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、特開2007−121986号公報の[0095]〜[0105]の記載を参照することができる。
【0121】
感熱性樹脂層としては加熱によって接着性を発現すれば特に限定はなく、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。熱可塑性樹脂の場合は加熱によって軟化もしくは溶融した後に冷却されることで接着性を発揮し、熱硬化性樹脂の場合は当初は流動性を有したものが加熱により反応して硬化することにより接着性を発揮できる。両者にはそれぞれ異なる利点があり用途に応じて使い分けられる。
【0122】
熱可塑性樹脂は様々な形で感熱性樹脂層として利用可能だが、ここでは便宜的に有機溶媒に溶解もしくは分散して用いる有機溶剤系熱可塑性樹脂と水系溶媒に溶解もしくは分散して用いる水系熱可塑性樹脂に分類して説明する。
【0123】
有機溶剤系熱可塑性樹脂としては、加熱等により被転写体との接着性を発現するものであれば特に限定されるものではなく、例えば溶剤系エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性エラストマー、または、反応系ホットメルト樹脂等を挙げることができる。より具体的な例としては、東洋モートン社製の「AD1790−15」、DIC社製の「M−720AH」、大日本インキ社製の「A−928」、大日本インキ社製の「A−450」、大日本インキ社製の「A−100Z−4」、東亞合成社製の「アロンメルトPES360」、「アロンメルトPES375」、東洋紡績社製の「バイロン550」、「バイロンBX1001」、「バイロンUR8700」、和信化学工業製の「VH EF28クリヤー」等が挙げられる。
【0124】
水分散系熱可塑性樹脂としては加熱等により被転写体との接着性を発現するものであれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸ビニル共重合ポリオレフィン、水分散系エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)共重合樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、水分散系ポリエステル樹脂等が挙げられる。より具体的な例としては、三井化学社製「V−100」、「V−200」、中央理化工業社製の「EC−1700」、「MC−3800」、「MC−4400」、「HA−1100」、中央理化工業社製の「AC−3100」、大日本インキ社製「AP−60LM」、東洋紡績社製の「バイロナールMD−1985」、「バイロナールMD−1930」、「バイロナールMD−1335」等が挙げられる。
【0125】
感熱性樹脂層を形成する際には、上に挙げたような樹脂を溶媒に溶解もしくは分散させた感熱性樹脂層用塗布液を対象となる層(パターン化光学異方性層やパターン化光学異方性層上に形成された添加剤層等)の上に直接塗布し乾燥することにより感熱性樹脂層を形成してもよく、また上記感熱性樹脂層用塗布液を一時支持体上に塗布して感熱性樹脂層を形成し、対象となる層に転写した後、一時支持体を剥離して積層してもよい。
【0126】
感熱性樹脂層用塗布液の溶媒としては水、アルコール、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)等が挙げられる。また、二種類以上の溶媒を混合して使用してもよい。溶剤系熱可塑性樹脂の溶媒としてはトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびその混合溶媒が好ましく、水分散系熱可塑性樹脂の溶媒としては水、メタノール、エタノール、プロパノールおよびそれらの混合溶媒が好ましい。感熱性樹脂層用塗布液はバーコーター、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等により乾燥膜厚1〜20μmに塗布形成されるとよい。
【0127】
また感熱性樹脂層の形成する際に溶媒を用いず、熱可塑性樹脂自体を溶融して対象となる層上に塗布してもよい。この場合には加熱溶融設備を備えた専用のコーター(ホットメルトコーターやホットロールコーターと呼ばれる)が必要となるが、無溶媒での塗布となるため環境負荷が抑えられる、難溶性の熱可塑性樹脂が使用可能になるなどの利点がある。難溶性の熱可塑性樹脂としては例えば、結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステルに限らず結晶性の熱可塑性樹脂は融点以上の温度では俊敏に溶融する特性を有するものであり、融点以下での保存性に優れる一方で被転写体への熱圧転写に際して融点以上の温度では容易に融解し、転写性に優れるものとできる。
【0128】
また前記熱可塑性樹脂の代わりに、より低分子量の熱溶融性化合物を用いることも可能である。熱溶融性化合物としては前記熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、などを挙げることができる。
【0129】
これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。あるいは前記熱可塑性樹脂に対する添加剤として用いてもよい。
【0130】
[接着層の光学特性]
接着層のReは低く抑えられていることが好ましい。複屈折性転写箔を転写した物品において複屈折パターンは接着層を通して観察されるため、接着層がReを有していると、そのReが複屈折パターン全体に上乗せされることとなり、複屈折パターンの視認性を損なうこととなる場合があるからである。具体的には接着層のReは40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、20nm以下がさらに好ましい。接着層は、加熱(及び冷却)、加圧、光照射などの接着性を発現させる工程を経たあと、すなわち、通常、複屈折性転写箔を物品に転写したあとにおいても、上記のReを維持していることが好ましい。または、上記工程を経たあと、すなわち、通常、複屈折性転写箔を物品に転写したあとにおいて、上記のReであることが好ましい。
【0131】
[剥離層]
転写時の剥離性を向上させるために、剥離層を設けてもよい。剥離層の利用により、剥離層と仮支持体との間の剥離が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。また剥離層は転写後に最表面となることから、表面保護性を有することが好ましい。
【0132】
剥離層としては仮支持体との剥離性、および剥離層から見て仮支持体と反対側に形成される隣接層(配向層、パターン化光学異方性層等)との密着性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、金属酸化物等を用いることができる。これらは2種以上を混合して用いることもできる。またこれらに対しては弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤や各種界面活性剤等が添加または共重合されていてもよい。
【0133】
上記の中でも、分子量が20,000〜100,000程度のアクリル系樹脂単独、あるいは、アクリル系樹脂と分子量が8,000〜20,000程度の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とを含有し、さらに添加剤として分子量1,000〜5,000程度のポリエステル樹脂を1〜5質量%で含有する樹脂が好ましく用いられる。剥離層は上記組成を有機溶剤でインキ化し、仮支持体上に塗布等の方法によって形成されるとよく、その厚みは表面保護性を考慮すると0.1μm〜3μmが好ましい。また、剥離層は、仮支持体との間の剥離力が1〜5g/インチ(90°剥離)であることが好ましい。
【0134】
剥離層は電離放射線硬化型樹脂を用いて形成してもよい。電離放射線硬化型樹脂には、電子線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂があり、後者の紫外線硬化型樹脂は光重合開始剤および増感剤を含有することを除いて、前者の電子線硬化型樹脂と成分的には同様である。電離放射線硬化型樹脂は、一般的には皮膜形成成分としてその構造中にラジカル重合性の活性基を有するモノマー、オリゴマー、またはポリマーを主成分とするもので、モノマーとしては(メタ)アクリル酸エステル等の誘導体等、また、オリゴマー、ポリマーとしてはウレタンアクリレートやポリエステルアクリレート等が例示される。紫外線硬化型樹脂とするには、上記のラジカル重合性の活性基を有するモノマー等に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミノキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、また光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を添加した組成物とするとよい。硬化方法としては、例えば電子線照射の場合にはコックロフトワルトン型等の電子線加速機を使用し50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVの電子線を0.1〜100Mrad.、好ましくは1〜10Mrad.照射することにより行われ、また、紫外線照射の場合には、超高圧水銀灯等の光源から発せられる紫外線を0.1〜10000mJ/cm2、好ましくは10〜1000mJ/cm2照射することにより行うとよい。
【0135】
[離型層]
転写時の剥離性を向上させるために、離型層を設けてもよい。離型層の利用により、離型層と離型層から見て仮支持体と反対側に形成される隣接層(剥離層、配向層、パターン化光学異方性層等)との間の剥離が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。また必要に応じて離型層と剥離層の両方を設けてもよく、両方を設けた場合には離型層(および仮支持体)の転写時の転写性をさらに向上させることができる。
【0136】
離型層としては、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などが適用できる。離型性樹脂としては、例えば弗素系樹脂、シリコーン、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、繊維素系樹脂などが挙げられ、好ましくはメラミン系樹脂が挙げられる。離型剤を含んだ樹脂としては例えば、弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤を、添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂などが挙げられる。
【0137】
離型層の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥すればよい。また必要に応じて、温度30℃〜120℃で加熱乾燥、あるいはエージング、または電離放射線を照射して架橋させてもよい。離型層の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0138】
[印刷層]
複屈折性転写箔は必要とする視覚効果を得るために印刷層を有していてもよい。印刷層とは、可視または紫外線や赤外線などで視認できるパターンを形成した層などが挙げられる。UV蛍光インクやIRインクはそれ自体もセキュリティ印刷であるため、セキュリティ性が向上するので好ましい。印刷層を形成する方法は特に限定はないが、一般的に知られている凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷の他、インクジェットやゼログラフィなどを用いることができる。インクとしては、各種インクを用いることができるが、耐久性の観点から、UVインクを用いることが好ましい。また、解像度を1200dpi以上のマイクロ印刷にすることによっても、セキュリティ性を高めることができるので好ましい。
【0139】
[反射層]
複屈折性転写箔は必要とする視覚効果を得るために反射層を有していてもよい。特に反射観察により複屈折パターンを視認する場合であって、被転写体たる物品が非反射性である場合には複屈折パターンの視認性を向上させるために反射層を設けることが好ましい。また透過観察により複屈折パターンを視認する場合や被転写体たる物品が反射性である場合においても、透過光と反射光の見え具合の調整のために反射率を調整した半透明の反射層を設けることは有用である。反射層としては特に限定されないが偏光解消性のないものが好ましく、金属薄膜層、金属粒子含有層、誘電体薄膜層等が挙げられる。
【0140】
金属薄膜層に用いられる金属としては特に限定されないがアルミ、クロム、ニッケル、銀、金等が挙げられる。金属薄膜層は、単層膜であっても、多層膜であってもよく、例えば、真空製膜法、物理気相成長法および化学気相成長法等によって製造することができる。反射性の金属粒子を含有する層としては、例えばゴールドやシルバー等のインキで印刷された層が挙げられる。
【0141】
誘電体薄膜層は単層膜であっても、多層膜であってもよい。用いる材料としては隣接する層との屈折率差が大きい材料を用いて作製された薄膜が好ましい。高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられる。低屈折率材料としては、二酸化珪素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等が挙げられる。
複屈折性転写箔が反射層を有する場合、反射層はパターン化光学異方性層と接着層の間に位置することが好ましい。また、接着層が反射層を兼ねることも好ましい。
【0142】
複屈折性転写箔が反パターン化光学異方性層と接着層の間のどこかに反射層を有する場合もしくは接着層が反射層を兼ねる場合、転写後の複屈折性転写箔は偏光フィルタをかざすことで被転写体の光学特性によらず良好な視認性を発揮できる。すなわち、被転写体が反射性であっても透明であっても、あるいは不透明でかつ非反射性であっても、反射層の作用により転写後の複屈折性転写箔は良好な視認性を発揮できる。この場合、反射層の反射率は偏光フィルタをかざさない状態でかつ可視光領域の平均で60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。一方で、被転写体上のデザインをそのまま生かしたい場合には、極端に反射率の高い反射層の存在は適していないことがある。
【0143】
[透明性を有する複屈折性転写箔]
用途によっては、複屈折性転写箔の転写部が透明性を有することもまた好ましい。転写部が透明性を有する場合、転写部を通して被転写体のデザインを観察することが可能となる。また転写部が特に高い透明性を有する場合には、複屈折パターンの存在を意識させないままに被転写体上に転写することも可能となる。これは被転写体の意匠性を損ないたくない場合や偽造者に真偽判明手段たる複屈折パターンの存在を知られたくない場合に有用である。
【0144】
転写部が透明性を有する場合、複屈折パターンの視認性は被転写体の光学特性の影響を受ける。被転写体が反射性である場合には、複屈折パターンを転写した被転写体上に偏光フィルタをかざし、被転写体の反射を生かすことで視認できる。被転写体が透明である場合には、複屈折パターンを転写した被転写体を挟む形で上下(視認者側および視認者の反対側)に偏光フィルタを重ねることで視認できる。被転写体が不透明で、かつ反射性も不十分である場合(かつ被転写体のデザインを生かしたい場合)には、上記のような透明性を有する複屈折性転写箔がさらに半透過反射層を有していることが好ましい。
【0145】
転写部の透過率を測定する手段としては、例えば、透過率の高い被転写体に転写した後に透過率を測定し、別途測定した被転写体のみの透過率と比較すればよい。これはヘイズなどの他の光学特性についても同様である。測定用の被転写体としては、例えばガラスが挙げられる。転写部の透過率は可視光領域の平均で20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。転写後の複屈折性転写箔のヘイズは20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。複屈折性転写箔が半透過反射層を有する場合、半透過反射層の可視光平均射率は可視光領域の平均で20%〜70%が好ましく、30%〜60%がより好ましく、35%〜55%がさらに好ましい。
【0146】
[転写]
複屈折性転写箔を転写部において物品に接着させて、例えば接着層に対応した接着方法により複屈折性転写箔を物品に圧着させて、その後、仮支持体を剥離することによって転写部を物品に転写させることができる。
本発明の製造方法においては、仮支持体から転写部を剥離する工程を剥離速度20m/min以下、剥離温度を80℃以下で行う。剥離速度は15m/min以下であることが好ましい。しかし、剥離速度が遅くなると生産効率が落ちるため、剥離速度は5m/min以上であることが好ましく、10m/min以上であることが好ましい。剥離温度は60℃以下であることが好ましい。低すぎると圧着後に冷却過程が必要となる場合があるため、剥離温度は40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。なお、剥離温度は、転写部の表面(膜面)の温度で示される。膜面温度は通常、熱伝対を用いて測定すればよい。
剥離方法としては手で剥離することも出来るが、生産効率と剥離速度安定化のため、機械的に剥離することが望ましい。機械的に剥離する方法としてはオートピーラーや、後述するラミネート装置において仮支持体の剥離機構を備えたものを使用することができる。
【0147】
転写部を物品に接着させる手段としては特に限定しないが、例えばホットスタンピング、インラインスタンピングおよび各種ラミネーションが挙げられる。
接着層に対応した接着法として、感圧性樹脂層に対しては単純な加圧転写が、感光性樹脂層に対しては露光と組み合わせた加圧転写が、感熱性樹脂層に対しては加温下での熱圧転写(ホットスタンプ、ホットラミネート等)が好ましい。
熱圧転写を用いる場合の加熱温度としては、被転写体の種類によって異なるものではあるが、60℃〜200℃程度であることが好ましく、80℃〜180℃程度であることがより好ましく、さらには100℃〜160℃の範囲内が好ましい。また熱圧転写の際の圧力としては、被転写体の種類によって異なるが、0.5Mpa〜15Mpaの範囲とすることが好ましい。
また、複屈折性転写箔を転写する場合にはホットスタンプやコールドスタンプなどの手段を用いて複屈折性転写箔の一部のみを転写してもよいし、ホットラミネートなどの手段を用いて転写箔の全体を転写してもよい。
特に転写部の物品への接着を60℃以上、特に120℃以上の熱圧転写により行った場合、転写部を何度以下に冷却すれば安定的な剥離が可能であるかは、製造効率の観点から重要な指標となる。本願発明においては、80℃以下、好ましくは60℃以下に冷却することで、所望の剥離界面での剥離が可能であることを見出した。
【0148】
[転写部を転写される物品]
複屈折性転写箔の被転写体として用いられる物品は特に限定されるものではなく、例えばガラス、金属、プラスチック、セラミックス、木材、紙、布等が挙げられる。プラスチックとしては特に限定は無いが、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)等が挙げられる。物品は剛直なものでもフレキシブルなものでもよく、透明であっても不透明であってもよいが、その表面もしくは内部に金属反射面を有していることは利用上好ましい。
【0149】
具体的な物品の例としては特に限定されないが、チケット、プリペイドカードやIDカードなどに用いられるプラスチックカード、各種証明書、有価証券、商品券、高級ブランド品、化粧品、薬品、タバコ等の商品パッケージ等が挙げられる。また金属反射面を有する物品をより好ましく用いることができる。このような物品の例としてはデジタルカメラ表面、腕時計裏面、懐中時計裏面、パソコン筐体表面、携帯電話表面および裏面、携帯音楽プレーヤー表面および裏面、化粧品や飲料の蓋、菓子や医薬品に用いられるPTP包装の表面および裏面、薬品包装用の金属缶表面、貴金属表面、宝飾品表面等を挙げることができる。あるいは上に挙げた金属反射面を有する物品を包む透明包装上に転写して用いることも好ましい。
【0150】
[複屈折パターンを転写された物品の応用]
複屈折パターンを転写された物品が有する複屈折パターンは通常はほぼ無色透明であるか、印刷層などに基づく像が視認できるのみである一方で、二枚の偏光板で挟まれた場合、あるいは反射層又は半透過反射層を有する物品につき、偏光板を介した場合においては、追加の特徴的な明暗、あるいは色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを転写された物品は、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち、複屈折パターンを転写された物品は、偏光板を用いることで通常の目視ではほぼ不可視である多色の画像が識別することができる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
特に半透過半反射層を含む複屈折パターンを転写された物品は、転写前に物品上に印刷された印字や写真などの上から、転写された複屈折パターンを観察することができる。
【0151】
複屈折パターンを転写された物品は、潜像によるセキュリティ効果だけでなく、例えばパターンをバーコード、QRコードのようにコード化することによって、デジタル情報との連携を図ることができ、さらにはデジタル暗号化も可能となる。また、前述のように高解像度潜像を形成することで偏光板を介しても肉眼では見分けがつかないマイクロ潜像印刷にでき、さらにセキュリティを高めることができる。
他にもUV蛍光インク、IRインクなどの不可視インクによる印刷との組み合わせでもセキュリティを高めることができる。
【0152】
複屈折パターンを転写された物品には、セキュリティだけでなく他の機能の付与、例えば値札や賞味期限などの製品情報表示機能、水につけると色が変色するインクを印刷することによる水没検知機能と組み合わせることも可能である。
【0153】
[光学素子]
また、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを転写された物品は光学素子への利用も可能である。例えば上記の製造方法により得られる複屈折パターンをガラス等の光学基材に転写して用いた場合、特定の偏光にのみ効果を与える特殊な光学素子の作製が可能である。一例として、複屈折パターンを有する回折格子を転写されたガラス基板は特定の偏光を強く回折する偏光分離素子として機能し、プロジェクターや光通信分野への応用が可能である。
【実施例】
【0154】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0155】
[偽造防止転写箔の作製]
(剥離層用塗布液FL−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、剥離層用塗布液FL−1として用いた。
────────────────────────────────────────
剥離層用塗布液(質量%)
────────────────────────────────────────
バインダ(MH−101−5、藤倉化成(株)製) 16.00
変性ワックス (プラスコート A-1クリヤー、和信化学工業(株)製)
2.52
キシレン 37.80
エチルベンゼン 31.08
メチルエチルケトン 4.20
トルエン 4.20
ブタノール 4.20
────────────────────────────────────────
【0156】
(剥離層用塗布液FL−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、剥離層用塗布液FL−2として用いた。
────────────────────────────────────────
剥離層用塗布液(質量%)
────────────────────────────────────────
バインダ(MH−101−5、藤倉化成(株)製) 16.00
メチルエチルケトン 76.00
シクロヘキサノン 8.00
────────────────────────────────────────
【0157】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
────────────────────────────────────────
配向層用塗布液組成(質量%)
────────────────────────────────────────
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
────────────────────────────────────────
【0158】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
────────────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
────────────────────────────────────────
重合性液晶化合物(LC−1−1) 32.88
水平配向剤(LC−1−2) 0.05
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 46.34
シクロヘキサノン 20.00
────────────────────────────────────────
【0159】
【化7】
【0160】
(添加剤層OC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、添加剤層用塗布液OC−1として用いた。ラジカル光重合開始剤RPI−1としては2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾールを用いた。下記組成はその溶液としての使用量である。
【0161】
────────────────────────────────────────
添加剤層用塗布液組成(質量%)
────────────────────────────────────────
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 7.63
ラジカル光重合開始剤(RPI−1) 0.49
界面活性剤 0.03
(メガファックF−176PF、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 91.85
────────────────────────────────────────
【0162】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
────────────────────────────────────────
転写接着層用塗布液組成(質量%)
────────────────────────────────────────
PES―375S40(ムロマチテクノス(株)社製) 37.50
メチルエチルケトン 62.50
────────────────────────────────────────
【0163】
(複屈折パターン作製材料P−1の作製)
厚さ50μmのポリイミドフィルム(カプトン200H、東レデュポン(株)製)の上にアルミニウムを60nm蒸着し、反射層つき仮支持体を作製した。そのアルミニウムを蒸着した面上にワイヤーバーを用いて剥離層用塗布液FL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は2.3μmであった。次いで配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.6μmであった。配向層をラビング処理した後、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度90℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ4.5μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において500mW/cm2、照射量はUV−A領域において500mJ/cm2であった。光学異方性層のレターデーションは400nmであり、20℃で固体のポリマーであった。次に、光学異方性層の上に添加剤層用塗布液OC−1を塗布、乾燥して0.9μmの添加剤層を形成し形成し、複屈折パターン作製材料P−1を作製した。
【0164】
(複屈折パターン作製材料P−2の作製)
剥離層用塗布液FL−1の代わりに剥離層用塗布液FL−2を用いる以外は複屈折パターン作製材料P−1と同様に複屈折パターン作製材料P−2を作製した。
【0165】
(実施例1:複屈折性パターンPP−1の作製)
複屈折パターン作製材料P−1をレーザ走査露光によるデジタル露光機(INPREX IP−3600H、富士フイルム(株)製)にて図17に示すように、0mJ/cm2、8mJ/cm2、25mJ/cm2の露光量を用いてRtoR(ロールツーロール)でパターン露光した。図中、無地で示した領域の露光量が0mJ/cm2、横線で示した領域の露光量が8mJ/cm2、縦線で示した領域の露光量が25mJ/cm2となるように露光した。その後、遠赤外線ヒータ連続炉を用い、RtoRにて、膜面温度が190℃となるように17分間加熱して、複屈折性パターンPP−1を作製した。複屈折性パターンPP−1の上に偏光板(HLC−5618、サンリッツ(株)製)をかざしたところ、所定の方向でかざしたときに、物品P−2に施した複屈折パターンを確認することができた。物品P−2の上に偏光板を介して観察されるパターンの拡大図を図18に示す。図中、地のアルミ箔が銀色を呈するのに対し、格子部は紺色ないし水色、斜線部は黄色ないし橙色を呈する二色のパターンが観察される。
【0166】
(実施例2:複屈折性パターンPP−2の作製)
複屈折パターン作製材料P−1の代わりに複屈折パターン作製材料P−2を用いる以外は実施例1と同様に、実施例2の複屈折性パターンPP−2を作製した。
【0167】
(実施例3:複屈折性パターンPP−3の作製)
膜面温度を210℃とする以外は実施例1と同様に実施例3の複屈折性パターンPP−3を作製した。
【0168】
(複屈折性転写箔の反射性基材への転写)
作製された複屈折性パターンに転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して、2.8μmの転写接着層を形成し、複屈折性転写箔を作製した。この複屈折性転写箔をポリマーコートアルミ箔からなる反射性基材にラミネーターを用いて膜面温度120℃、速度1m/minで熱圧着した後、テンシロン試験機を用いて仮支持体を剥離した。実施例1〜3の複屈折性パターンから作製した複屈折性転写箔について、剥離工程における剥離速度と温度に対する剥離力、故障の有無を図19、図20に示す。実施例1において、剥離速度::20 m/min以下, 剥離温度:80℃以下の領域で良好な剥離性が確認された。剥離速度::15 m/min以下, 剥離温度:60℃以下の領域では実施例1および実施例2で良好な剥離性が確認された。剥離速度::0.3 m/min, 剥離温度:20℃では実施例1、実施例2および実施例3で良好な剥離性が確認された。なお、210℃の焼成で、仮支持体/剥離層密着が増大し、剥離性が低下していることがわかる。(一般的に焼成温度の上昇とともに、仮支持体/剥離層密着が増大し、220℃より高い温度では剥離条件に関わらず剥離不良が発生する。)
剥離力は剥離速度の増大にともなって上昇し、10 gf/cm以上となると、配向層/剥離層の界面で剥離するとともにスティックスリップが発生する。また、剥離力は剥離温度の上昇にともなって上昇し、10 gf/cm以上となると、配向層/剥離層の界面で剥離するとともにスティックスリップが発生する。加えて剥離温度が80℃以上となると熱接着層の軟化が起こり、接着層/供給層の界面で剥離する。剥離層にワックスを加えない場合、剥離性が大幅に低下し、配向層/剥離層の界面で剥離するとともにスティックスリップが発生する。
【0169】
(熱圧着)
熱圧着はラミネーター(VAII-700S型ラミネーター、大成ラミネーター(株)製)を用いて行った。
【0170】
(剥離力の測定)
剥離力の測定はテンシロン試験機もしくはUV露光搬送装置(GTH、ハマノ精機(株)製)での剥離とデジタルフォースゲージ(FGP-5、日本電産進歩(株)社製)での測定を用いて測定した。
【符号の説明】
【0171】
101 パターン化光学異方性層(複屈折性層)
11 仮支持体または支持体
12 接着層
13 剥離層
14 離型層
15 配向層
16 印刷層
17 添加剤層
20 光学異方性層
21 反射層
22 透過性物品本体
23 反射性物品本体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層が転写された物品を製造する方法であって、
仮支持体と前記複屈折性層を含む転写部とを含む複屈折性転写箔の前記転写部を前記物品に接着させる工程、および
前記仮支持体から前記転写部を剥離速度20m/min以下、剥離温度80℃以下で剥離する工程を含む方法。
【請求項2】
前記接着が60℃〜200℃の範囲の熱圧転写により行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複屈折性層が、複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターン化光学異方性層である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パターン化光学異方性層を下記工程を含む方法で形成する工程をさらに含む請求項3に記載の方法:
前記液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
前記光照射後の層にパターン露光を行う工程;
パターン露光後の層を50℃以上かつ220℃以下に加熱する工程。
【請求項5】
パターン露光後の層が190℃以下で加熱される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記転写部が、前記仮支持体側から剥離層、前記複屈折性層、および接着層を、この順に含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記剥離層が膜厚0.5〜2μmのアクリル樹脂である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記剥離層がさらにワックスを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記仮支持体が膜厚25〜50μmのポリイミドフィルムもしくはポリエチレンナフタレートフィルムである請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着層が膜厚0.5〜2.0μmのポリエステル樹脂もしくは変性塩化ビニル樹脂である請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記物品が金属箔、もしくはポリマーコートされた金属箔である請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記転写部が、前記仮支持体側から剥離層、配向層、前記複屈折性層、および接着層を、この順に含む請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記配向層がポリビニルアルコールを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記剥離速度が15m/min以下である請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記剥離温度が60℃以下である請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含む組成物から形成された複屈折性層が転写された物品を製造する方法であって、
仮支持体と前記複屈折性層を含む転写部とを含む複屈折性転写箔の前記転写部を前記物品に接着させる工程、および
前記仮支持体から前記転写部を剥離速度20m/min以下、剥離温度80℃以下で剥離する工程を含む方法。
【請求項2】
前記接着が60℃〜200℃の範囲の熱圧転写により行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複屈折性層が、複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターン化光学異方性層である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パターン化光学異方性層を下記工程を含む方法で形成する工程をさらに含む請求項3に記載の方法:
前記液晶性化合物を含む組成物からなる層を加熱または光照射する工程;
前記光照射後の層にパターン露光を行う工程;
パターン露光後の層を50℃以上かつ220℃以下に加熱する工程。
【請求項5】
パターン露光後の層が190℃以下で加熱される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記転写部が、前記仮支持体側から剥離層、前記複屈折性層、および接着層を、この順に含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記剥離層が膜厚0.5〜2μmのアクリル樹脂である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記剥離層がさらにワックスを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記仮支持体が膜厚25〜50μmのポリイミドフィルムもしくはポリエチレンナフタレートフィルムである請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着層が膜厚0.5〜2.0μmのポリエステル樹脂もしくは変性塩化ビニル樹脂である請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記物品が金属箔、もしくはポリマーコートされた金属箔である請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記転写部が、前記仮支持体側から剥離層、配向層、前記複屈折性層、および接着層を、この順に含む請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記配向層がポリビニルアルコールを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記剥離速度が15m/min以下である請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記剥離温度が60℃以下である請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−7887(P2013−7887A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140339(P2011−140339)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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