説明

複屈折性ポリビニルアセタールの製法、及び、複屈折性ポリビニルアセタール、及び位相差板、及び光学フィルム、及び画像表示装置

【課題】 フィルムに形成した際に耐湿性及び透明性に優れ、好ましい波長分散性を示すポリビニルアセタールの簡易に製造する。
【解決手段】下記式(I)(式中、R、R及びRは水素原子、C1〜4のアルキル基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示し、Rは水素原子又はC1〜12のアルキル基を示す。lは10〜30モル%、mは60〜75モル%、nは15モル%以下)で表される複屈折性を示すポリビニルアセタールの製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性ポリビニルアセタールの製法、該製法によって得られる複屈折性ポリビニルアセタール、及びこのポリマーを配向させたフィルムからなる位相差板、及び該位相差板を備える光学フィルム及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直線偏光、円偏光、楕円偏光といった偏光を得るための位相差板は、その位相差が波長λの1/4に相当するλ/4板と、位相差が波長λの1/2に相当するλ/2板が知られている。かかる位相差板として、例えば酢酸セルロース、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコールなどの複屈折性を示すフィルムが用いられている。
これらポリマーフィルムは、一般に、特定波長の光に対して所定の位相差を生じるが、これと異なる波長の光に対しては所定の位相差を生じないことが知られている。例えば、波長550nmの光に対してλ/4板として機能するように設計された位相差板は、波長450nmや650nmの光に対してはλ/4板として機能しない。このように位相差板は、その位相差が波長に依存している波長分散性を示し、例えばポリマーフィルムに於ける波長分散性は、短波長側ほど大きく、長波長側ほど小さいことが一般に知られている。しかしながら、このような波長分散性を示す位相差板は、それ自体では全ての可視光線に対して所定の位相差が生じず、変色を起こすなどの問題がある。
【0003】
この点、本発明者らは、ポリビニルアルコールに芳香族基と脂肪族基が導入された特定のポリビニルアセタール(後述する一般式(I)の構造を有するポリマー)を製膜したフィルムは、短波長側ほど小さく且つ長波長側ほど大きいという優れた波長分散性を示すと共に、透明性に優れていることを見出している。
【0004】
ところで、一般にポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアセタール化やケタール化することにより得ることができる。
例えば、特公昭48−32779号公報には、水相系で酸触媒の存在下に、酸素含有気体を導入しながらポリビニルアルコールとアルデヒドとを反応させることにより、分子間架橋結合が極めて少なく、溶剤に対する溶解性やフィルム成形性が改善された粒子状のアセタール化ポリビニルアルコールを製造する方法が開示されている。
また、特開2000−297117公報には、水と共沸し得る有機溶媒中で酸触媒の存在下に、反応系内に存在する水を該有機溶媒と共沸させて反応系外に除去しながら、ポリビニルアルコールと芳香族アルデヒドを含むアルデヒド類とをアセタール化反応させることにより、特に芳香族アルデヒドのアセタール反応転化率が高いポリビニルアセタールを製造する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特定のポリビニルアセタールのように、芳香族由来の官能基とは別の、例えば脂肪族系の異なる官能基を同時に所望量導入したポリマーを製造する場合には、従来のアセタール化やケタール化する製法では次のような問題がある。
すなわち、ポリビニルアルコールと、芳香族アルデヒド及びこれとは別の脂肪族アルデヒドやケトンとの一括全量反応では、各官能基を有するポリビニルアルコール誘導体を得ることはできるものの、芳香族アルデヒドと脂肪族アルデヒドでは、アセタール化の反応性が異なり、更にアセタール化反応は可逆反応であるため、各官能基の導入量及びポリビニルアルコールの残存水酸基量を調整することが困難である。
このように各基が所望量に調整導入できないと、特に残存水酸基量の影響を受ける吸水率を予定以下に抑えることができない。従って、かかるポリビニルアセタールを製膜したフィルムは、耐湿性に劣り、吸湿白濁するという大きな問題点を有する。そして、吸湿白濁したフィルムでは、たとえ所望する波長分散性を示すことが期待できたとしても、優れた透明性が要求される用途、例えば位相差板として利用することはできない。
このように従来から提案されているポリビニルアセタールの一般的な製法では、本来位相差板として有用である特定のポリビニルアセタールを簡易に製造できず、位相差板の材料の選択枝を狭める結果となる。
【0006】
【特許文献1】特公昭48−32779号公報
【特許文献2】特開2000−297117公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、耐湿性及び透明性に優れ、好ましい波長分散性を示すポリビニルアセタールの製法、及びこのポリマーを製膜して得られる位相差板、及び該位相差板を備える光学フィルム及び画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の下、ポリビニルアルコールに芳香族アルデヒド由来の官能基を含む2種以上の官能基を導入させる方法について鋭意研究を重ねた結果、まず芳香族アルデヒドと別の異なる官能基を与えるアセタールとを同時に一括して反応させたのち、さらにアセタールのみを反応させることにより、芳香族アルデヒド由来の基及びアセタール由来の基がいずれも所望量導入され、耐湿性に優れて吸湿白濁し難く、透明性に優れたフィルムを構成できる複屈折性ポリビニルアセタールが得られることをようやく見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の第1の手段は、
【化4】

(一般式(I)中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示し(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)、Rは水素原子又は炭素数1〜12の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を示す。lは10〜30モル%、mは60〜75モル%、nは15モル%以下)で表される複屈折性を示すポリビニルアセタールの製法であって、
溶媒に溶解させたポリビニルアルコールに、酸性条件下で、
【化5】

(一般式(II)中、R、R及びRは、一般式(I)と同じ)で表される芳香族アルデヒド、及び一般式(III):RCH(OC(一般式(III)中、Rは一般式(I)と同じ)で表されるアセタールを反応させる工程(1)と、工程(1)で得られた中間体に、酸性条件下で、上記一般式(III)で示すアセタールを更に反応させる工程(2)と、反応溶液を中和してポリマーを析出させる工程と、を有する複屈折性ポリビニルアセタールの製法を提供する。
【0010】
本発明の好ましい態様では、上記工程(1)で得られる中間体が、
【化6】

(一般式(I')中、R、R、R及びRは、一般式(I)と同じ。l’は10〜30モル%で、l’+m’+n’=100モル%)で表される構造を有するポリマーである上記製法を提供する。
【0011】
また、本発明の好ましい態様では、芳香族アルデヒドとしてメシトアルデヒドを用い、アセタールとして1,1−ジエトキシエタンを用いる上記製法を提供する。さらに、本発明の好ましい態様では、工程(1)において、芳香族アルデヒド及びアセタールの合計量が、ポリビニルアルコールの水酸基1当量に対して0.2〜3.0当量であり、又、芳香族アルデヒドとアセタールのモル比が1:5〜2:1である上記製法を提供する。また、本発明の好ましい態様では、工程(1)において、溶媒として少なくともジメチルスルホキシドを用い、又、p−トルエンスルホン酸1水和物を用いて酸性条件下とする上記製法を提供する。さらに、本発明の好ましい態様では、工程(1)において、20〜50℃下で反応させ、又、中間体を得た後、反応溶液を中和する上記製法を提供する。
【0012】
また、本発明の好ましい態様では、工程(2)において、アセタールの量が中間体の水酸基1当量に対して0.3〜6当量である上記製法を提供する。さらに、本発明の好ましい態様では、工程(2)において、中間体とアセタールを10〜50℃下で反応させる上記製法を提供する。
【0013】
本発明の第2の手段は、上記各製法によって得ることができ、好ましくは吸水率が2〜7%の複屈折性ポリビニルアセタールを提供する。
また、本発明の第3の手段は、上記複屈折性ポリビニルアセタールを配向させたフィルムからなり、少なくとも波長450〜650nmにおける面内位相差が、短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きい位相差板を提供する。
さらに、本発明の第4の手段は、上記位相差板を備える光学フィルムを提供する。
また、本発明の第5の手段は、上記位相差板又は上記光学フィルムを備える画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製法によれば、芳香族アルデヒド由来の基及びアセタール由来の基を煩雑な操作をすることなく所望量導入された特定のポリビニルアセタールを簡易に製造することができる。
また、本発明の製法によって得られるポリビニルアセタールは、耐湿性に優れ、吸湿白濁し難いフィルムを構成できる。かかるフィルムは、短波長側ほど小さく且つ長波長側ほど大きいという優れた波長分散性を示すので位相差板として好適に使用できる。従って、本発明によれば、機能性に優れた位相差板を簡易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、下記一般式(I)で表される構造を有する複屈折性ポリビニルアセタール(以下、「ポリマー(I)」という場合がある」の製法について、大きく2つの工程(1)(2)を有する。
【化7】

(一般式(I)中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示し(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)、Rは水素原子又は炭素数1〜12の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を示す。lは10〜30モル%、mは60〜75モル%、nは15モル%以下である)。
以下、かかる工程(1)(2)について順に説明する。
尚、本明細書における「フィルム」という用語は、一般に「シート」と言われるものも含む意味である。
【0016】
<工程(1)>
工程(1)は、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」という)に、下記一般式(II)で表される芳香族アルデヒド(以下、単に「芳香族アルデヒド」という)と、下記一般式(III)で表されるアセタール(以下、単に「アセタール」という)とを反応させ、所望の官能基が導入された中間体(中間ポリマー)を含む反応溶液を調製する工程である。
PVAとしては本発明の目的を阻害しない限り特に限定がなく、例えば位相差板用フィルムに用いられる通常のPVAを適宜使用することができるが、その耐熱性を考慮すると、高ケン化度であり、高重合度のものが好ましい。好適に使用し得るPVAとしては、例えばケン化度が95%以上、さらには98%以上のもので、重合度が1000以上、更には1500〜3000程度のものなどがあげられる。
【0017】
PVAを溶媒に溶解させ、これに芳香族アルデヒド及びアセタールを添加して溶解させ、酸性条件下で反応させる。
上記溶媒としては、PVAを溶解でき且つ芳香族アルデヒド及びアセタールとの反応を進行させ得るものであれば特に限定されず、例えばジメチルスルホキシド、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミドや、これらと例えばトルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アルコール類などとの混合溶媒などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、PVAの溶解度が高く、芳香族アルデヒド及びアセタールとの反応が進行し易いという点から、少なくともジメチルスルホキシドを含む溶媒を用いることが好ましい。
尚、PVAを溶媒に溶解させる際には、通常PVAの濃度が2〜15重量%程度となるように調整することが好ましい。また、PVAの溶解性を向上させるために、溶解時には通常60〜90℃程度に加温することが好ましい。
【0018】
次に、PVA溶液に芳香族アルデヒド及びアセタールを添加して溶解させる。尚、PVAを溶媒に溶解させる際に加温した場合には、溶液を冷却(例えば後述するPVAと芳香族アルデヒド及びアセタールとの反応温度程度)した後、芳香族アルデヒド及びアセタールを添加することが好ましい。また、芳香族アルデヒド及びアセタールは、同時に溶液に溶解させても良いし、両者を前後してそれぞれ溶解させてもよい。
【0019】
本発明に用いられる芳香族アルデヒドは、
【化8】

(一般式(II)中、R、R及びRは、一般式(I)と同じ)で表される。
【0020】
上記芳香族アルデヒドがPVA中の水酸基と反応することにより、PVA主鎖に該芳香族アルデヒド由来の芳香族基が導入され、
【化9】

(一般式(V)中、R、R及びRは、一般式(I)と同じ)で表される単位を生じる。
ここで、一般式(II)においては、ベンゼン環のオルト位R及びRは同時に水素原子ではなく、少なくともいずれか一方がアルキル基、アルコキシル基などの置換基で置換されている。このようにベンゼン環のオルト位に少なくとも1つの置換基が導入されていることにより、一般式(V)で表される単位が構成された際に、オルト位の置換基と、PVAの水酸基に由来した2つの酸素原子との間の立体障害が増加することとなる。
【0021】
その結果、該置換基は2つの酸素原子の間に配座し、
【化10】

(一般式(VI)中、R、R及びRは、一般式(V)と同じ)で表される芳香族基の平面構造がこれら2つの酸素原子を結ぶ仮想線に略直交する方向に配置するものと考えられる。
尚、一般式(V)で表される単位内に於ける2つの酸素原子の結合状態と一般式(VI)で表される芳香族基の略直交方向での配置との関係については、本明細書の後半にて、更に詳述する。
【0022】
一般式(II)で表される芳香族アルデヒドのなかでも、ベンゼン環のオルト位の置換基と2つの酸素原子との間の立体障害によって、芳香族基の平面構造が略直交方向により配置し易いという点から、R及びRがいずれも水素原子ではないものが好ましい。更に、R及びRがいずれも炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基又はハロゲンであるものがより好ましい。また、一般式(II)のRは、芳香族アルデヒドとPVA中の水酸基との反応性の点から、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基又はハロゲンであることが好ましい。なかでも、導入された芳香族基が略直交方向により配置し易いという理由に加えて、芳香族基の導入の容易さや安定性の点から、本発明では、一般式(II)のR、R及びRがいずれもメチル基である構造式(IV)で表されるメシトアルデヒド(2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド)が特に好適に用いられる。
【化11】

【0023】
次に、本発明に用いられるアセタールは、一般式(III):RCH(OC (一般式(III)中、Rは一般式(I)と同じ)で表されるものである。
このアセタールがPVA中の水酸基と反応することにより、PVA主鎖に該アセタール由来の基が導入され、
【化12】

(一般式(VII)中、Rは、一般式(III)と同じ)で表される単位を生じる。
【0024】
一般式(III)に於いて、Rは水素原子又は炭素数1〜12の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基であるが、得られるポリマー(I)のフィルムの透明性がより向上するという点から、一般式(III)のRが水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、更に炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であることがより好ましい。なかでも、ポリマー(I)からなるフィルムの透明性がさらに向上するという理由に加えて、該フィルムの位相差特性を低下させず、良好な耐熱性を保持できる点から、アセタールとしては、一般式(III)のRがメチル基である、1,1−ジエトキシエタンが特に好適に用いられる。
【0025】
PVAと反応させる芳香族アルデヒド及びアセタールの合計量は、芳香族アルデヒドを所定量導入して面内位相差が短波長側ほど小さく長波長側ほど大きいポリマー(I)を得るために、工程(1)において中間体として後述する中間ポリマー(I')が得られるように適宜調整することが好ましい。
具体的には、一般式(V)で表される単位、一般式(VII)で表される単位及びPVAの残存水酸基単位をそれぞれ所望量有する中間ポリマー(I')となるように、反応させる芳香族アルデヒド及びアセタールの合計量は、PVAの水酸基1当量に対して0.2当量以上、好ましくは0.3当量以上であることが望ましく、また3当量以下、好ましくは2当量以下であることが望ましい。
PVAと反応させる芳香族アルデヒド及びアセタールの割合は、中間ポリマー(I')における一般式(V)で表される単位及び一般式(VII)で表される単位の割合、後述する工程(2)でのアセタールの添加量、PVAに対する芳香族アルデヒド及びアセタール両者の反応性などを考慮して適宜調整することが好ましい。したがって、例えば芳香族アルデヒドとアセタールとの割合(芳香族アルデヒド/アセタール(モル比))が1/5以上、好ましくは1/3以上であることが望ましく、また2/1以下、好ましくは1/1以下であることが望ましい。
【0026】
それぞれ適宜調整した芳香族アルデヒド及びアセタールをPVA溶液に添加して溶解させ、この溶液を酸性条件とするには、例えば酸触媒などを添加すればよい。酸性条件としては、pKaが6以下、好ましくは5以下、更には4以下がより好ましい。かかる酸触媒には特に限定がなく、例えばp−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸や、これらの水和物などがあげられる。これらのなかでは、PVAと芳香族アルデヒド及びアセタールとの反応が進行し易いという点から、p−トルエンスルホン酸1水和物が特に好ましい。
酸触媒を用いる場合、その量は通常の反応触媒量であればよく、例えばPVA1モルに対して0.001〜0.02モル程度とすることが好ましい。
PVAと芳香族アルデヒド及びアセタールとの反応を進行させる際の反応温度は、充分に反応が進行して中間ポリマー(I')が得られる限り特に限定がないが、あまりにも低い場合には、芳香族アルデヒド及びアセタールがPVAと充分に反応せず、残存水酸基の量が多くなり過ぎる恐れがあるので、20℃以上が好ましく、更には25℃以上とすることがより好ましい。一方、あまりにも高い場合には、PVAに対する芳香族アルデヒド及びアセタールの反応系が可逆反応であるため、一度導入された官能基が離脱してしまい、一般式(V)で表される単位の量が不充分となる恐れがあるので、50℃以下で反応を行うことが好ましく、更には45℃以下とすることがより好ましい。
またPVAに対して芳香族アルデヒド及びアセタールを反応させる際の反応時間は、反応温度などを考慮し、例えば1時間以上、好ましくは1.5時間以上、また6時間以下、好ましくは5時間以下とすることが好ましい。
【0027】
以上のように各化合物を反応させることにより、工程(1)で中間体として、
【化13】

(一般式(I')中、R、R、R及びRは、一般式(I)と同じ。l’は10〜30モル%、l’+m’+n’=100モル%を示す)で表される中間ポリマー(I')を含む反応溶液(1)が得られる。
尚、工程(2)において中間ポリマー(I')とアセタールのみを反応させ、最終目的とするポリマー(I)を好適に製造することを考慮すると、一般式(I')において、l’、m’及びn’は、10≦l’≦30モル%、0<m’≦60モル%、20≦n’≦60モル%であるものが好ましい。
【0028】
<工程(2)>
工程(2)では、中間ポリマー(I')を含む反応溶液(1)を得たのち、酸性条件下で、該ポリマー(I')と工程(1)で用いたものと同一のアセタールとを反応させる。
ここで、工程(2)においては、中間ポリマー(I')とアセタールとが反応する限りその状態には特に限定がない。例えば中間ポリマー(I')は、反応溶液(1)に含まれたままの状態であってもよく、或いは、工程(1)に於いて反応溶液(1)を中和、析出、精製などした後、再度溶媒に溶解させた状態であってもよい。
反応溶液(1)に含まれたままの状態で中間ポリマー(I')とアセタールとを反応させる場合には、例えば、上記工程(1)にてPVAと芳香族アルデヒド及びアセタールとの反応が終了し、中間ポリマー(I')が生成していることを確認した後に行えばよい。この確認方法としては、例えば、PVAと芳香族アルデヒド及びアセタールとの反応時間程度が経過した時点で、生成物のNMR、IR、あるいは残存アルデヒドやアセタールの量を液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどで確認したのち、引き続きこの反応系に工程(2)としてアセタールを添加する方法などを採用することができる。
工程(1)に於いて中間ポリマー(I')を含む反応溶液(1)を一度中和、析出、精製などしたのち、再度溶媒に溶解させる場合には、例えば、反応溶液(1)を中和剤が溶解した溶液中に添加して中間ポリマー(I')を析出させたのち、この析出させた中間ポリマー(I')を良溶媒に溶解させ、更に貧溶媒にて再沈殿させて精製、乾燥して得られた精製ポリマーを再度溶媒に溶解させる方法などを採用することができる。
中和剤は、PVAと芳香族アルデヒド及びアセタールとの反応を停止させることができる限り特に限定がなく、芳香族アルデヒドやアセタール、酸触媒の種類などに応じて適宜選択すればよいが、例えば炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどがあげられる。中和剤の量は、酸触媒の量などを考慮して適宜調整すればよいが、例えば酸触媒の水素イオン1モルに対して1〜5モル程度であればよい。また中和剤を溶解させる溶液はその種類に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
良溶媒及び貧溶媒は、反応溶液(1)に含まれる中間ポリマー(I')の種類(R〜Rの種類など)によって異なるので一概には決定することができず、中間ポリマー(I')の具体的構造に応じて適宜良溶媒及び貧溶媒を組み合わせて選択することが好ましい。例えば工程(1)において、芳香族アルデヒドとしてメシトアルデヒドを用い、アセタールとして1,1−ジエトキシエタンを用いて中間ポリマー(I')を含む反応溶液(1)を得た場合には、良溶媒としてはテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトンなどがあげられる。貧溶媒としてはジエチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0030】
貧溶媒にて再沈殿させた中間ポリマー(I')は、例えば20〜80℃程度で10〜20時間程度真空乾燥などすればよい。
乾燥した精製ポリマーを、アセタールとの反応のために再度溶解させる溶媒は、該精製ポリマーの種類によって異なり、これを溶解し、アセタールとの反応を進行させ得るものを適宜選択することが好ましい。かかる溶媒としては、例えば上記PVAを溶解させる溶媒として例示したもの(例えばジメチルスルホキシドを含む溶媒)などを用いることができ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。尚、精製ポリマーを再度溶解させる溶媒は、上記PVAを溶解させた溶媒と同一であっても異なっていてもよい。また、精製ポリマーを溶媒に溶解させる際には、通常精製ポリマーの濃度が2〜15重量%程度となるように調整することが好ましい。
かくして中間ポリマー(I')を含む反応溶液(1)に、又は精製ポリマーを溶解させた溶液に、工程(1)で用いたものと同一のアセタールを添加することにより、中間ポリマー(I')とアセタールとを反応させる。
中間ポリマー(I')とアセタールとの反応は酸性条件下で行うが、酸性条件とするには、例えば工程(1)と同様に酸触媒などを反応系に添加すればよい。かかる酸触媒には特に限定がなく、例えば工程(1)にて例示したものなどがあげられる。これら例示したなかでは、中間ポリマー(I')とアセタールとの反応が進行し易いという点から、p−トルエンスルホン酸1水和物が特に好ましい。尚、この工程(2)で用いる酸触媒は、工程(1)で用いた酸触媒と同一であっても異なっていてもよい。酸触媒の添加量は通常の反応触媒量であればよく、例えばポリマー(I')1モルに対して0.001〜0.02モル程度とすることが好ましい。
尚、反応溶液(1)に含まれたままの状態で中間ポリマー(I')とアセタールとを反応させる場合には、これらの反応系は特に中和などの操作が行われていないので、改めて酸触媒を添加しなくとも酸性条件下で反応を進行させることができる。
【0031】
中間ポリマー(I')と反応させるアセタールの量は、目的とするポリマー(I)を得るために適宜調整される。すなわち、前記一般式(V)で表される単位、一般式(VII)で表される単位及びPVAの残存水酸基単位をそれぞれ所望量有するポリマー(I)となるように、アセタールの量は、中間ポリマー(I')の水酸基1当量に対して0.3当量以上、好ましくは0.5当量以上であることが望ましく、また6当量以下、好ましくは5当量以下であることが望ましい。
なお、本発明の製法における工程(1)及び(2)で使用する芳香族アルデヒド及びアセタールの総量は、前記工程(1)における芳香族アルデヒド及びアセタールの合計量と、工程(2)におけるアセタールの量とを適宜調整し、目的とするポリマー(I)が得られるように、PVA及び中間ポリマー(I')の水酸基1当量に対して0.5当量以上、好ましくは0.8当量以上であることが好ましく、また9当量以下、好ましくは7当量以下であることがより好ましい。
【0032】
上記のように適宜量を調整したアセタールを、中間ポリマー(I')を含む反応溶液(1)に、又は精製ポリマーを溶解させた溶液に酸性条件下で添加して反応を進行させる。この際の反応温度は、充分に反応が進行して目的とするポリマー(I)が得られる限り特に限定がないが、あまりにも低い場合には、アセタールがポリマー(I')と充分に反応せずに一般式(VII)で表される単位の量が不充分となり、また残存水酸基の量が多くなり過ぎる恐れがあるので、10℃以上が好ましく、更には20℃以上とすることがより好ましい。一方、あまりにも高い場合には、工程(1)で導入された芳香族アルデヒド由来の官能基が離脱してしまい、一般式(V)で表される単位の量が不充分となる恐れがあるので、50℃以下が好ましく、更には45℃以下とすることがより好ましい。
また、中間ポリマー(I')に対してアセタールを反応させる際の反応時間は、上記反応温度などを考慮し、例えば5時間以上、好ましくは8時間以上であり、また20時間以下、好ましくは18時間以下である。
【0033】
そして、中間ポリマー(I')とアセタールとを反応させて得られる反応溶液(2)を中和し、析出させる工程を経ることにより、目的とするポリマー(I)を得ることができる。
反応溶液(2)を中和してポリマー(I)を析出させるには、反応溶液(2)を中和剤が溶解した溶液中に添加すればよい。かかる中和剤は、ポリマー(I')とアセタールとの反応を停止させることができる限り特に限定がなく、ポリマー(I')の構造やアセタール、酸触媒の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば上記例示したものなどがあげられる。尚、反応溶液(2)の中和の際に用いる中和剤は、工程(1)で用いた中和剤と同一であっても異なっていてもよい。中和剤の量は、酸触媒の量などを考慮して適宜調整すればよいが、例えば酸触媒の水素イオン1モルに対して1〜5モル程度であればよい。また、中和剤を溶解させる溶液はその種類に応じて適宜選択すればよい。
反応溶液(2)を中和して析出させたポリマー(I)は、通常、良溶媒に溶解させ、貧溶媒にて再沈殿させて精製することが好ましい。
この良溶媒、貧溶媒は、ポリマー(I)の種類によって異なるので一概には決定することができず、ポリマー(I)の構造に応じて適宜良溶媒及び貧溶媒を組み合わせて選択することが好ましい。例えば工程(1)において、芳香族アルデヒドとしてメシトアルデヒドを用い、工程(1)及び(2)において、アセタールとして1,1−ジエトキシエタンを用いてポリマー(I)を得た場合には、良溶媒、貧溶媒共に上記工程(1)にて例示したものを好適に用いることができる。
かくして得られる本発明のポリマー(I)は、一般式(I)で表されるように、一般式(V)の芳香族系アルデヒド由来の単位、一般式(VI)のアセタール由来の単位及びPVAの残存水酸基単位をバランスよく有する構造である。
かかるポリマー(I)からなるフィルムを例えば位相差板として利用することを考慮すると、一般式(I)において、一般式(V)で表される単位、一般式(VII)で表される単位及びPVAの残存水酸基単位の割合を示すl、m及びn(モル%)は、10≦l≦30、60≦m≦75、0<n≦15であることが好ましい。
【0034】
尚、一般式(I)におけるl、m、n、及び一般式(I')におけるl’、m’、n’、すなわち一般式(V)で表される単位の量、一般式(VII)で表される単位の量及びPVAの残存水酸基単位の量は、下記[実施例]欄に於いて述べる条件にて測定したポリマー(I)又は中間ポリマー(I')の13C−NMRデータの中から、128〜137ppmのピークを一般式(V)中のベンゼン環の炭素、99ppmのピークを一般式(V)中のベンゼン環に直結したジオキサン環の3級炭素、97ppm及び91ppmのピークを一般式(VII)中のメチル基に直結したジオキサン環の3級炭素、62〜73ppmのピークを主鎖中の3級炭素として算出したものである。
【0035】
本発明のポリマー(I)は主鎖が直鎖状のポリマーであり、一部短い分枝鎖を有しているものも含まれる。ポリマー(I)の重合度は、例えばそのフィルムを位相差板として好適に使用し得る程度であれば特に限定されず、延伸に耐え得る充分なフィルム強度という点から、例えば100〜20000程度、好ましくは500〜10000程度が望ましく、一般式(V)で表される単位の種類や量、一般式(VII)で表される単位の種類や量及びPVAの残存水酸基単位の量を適宜変更して調整することができる。
【0036】
また、ポリマー(I)のガラス転位温度(以下、「Tg」という)は、一般式(V)で表される単位の種類や量、一般式(VII)で表される単位の種類や量及びPVAの残存水酸基単位の量によって異なるが、概ね80〜180℃程度であり、そのフィルムを位相差板として好適に使用し得る充分な耐熱性を有するものである。
さらに、ポリマー(I)の吸水率もやはり、一般式(V)で表される単位の種類や量、一般式(VII)で表される単位の種類や量、中でもPVAの残存水酸基単位の量によって異なるが、概ね2〜7%程度と低いものである。このようにポリマー(I)はその吸水率が低いことが大きな特徴の1つであり、従来の製法にて得られる一般的なPVA誘導体とは比較にならないほど耐湿性に優れ、例えば温度60℃、相対湿度90%といった条件下であっても吸湿白濁することがない。したがって本発明のポリマー(I)から、透明性に優れ、しかも延伸可能なフィルムを容易に成形することが可能なのである。またこのように吸湿率が低いポリマー(I)からなる延伸フィルムは、位相差変化が殆どなく、目視にて収縮が認められることもないといった利点も有する。
【0037】
次に、本発明の位相差板について以下に説明する。
本発明の位相差板は、上記ポリマー(I)を配向させた単層フィルムからなり、少なくとも波長450〜650nmにおける面内位相差が、短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きいことを特徴とするものである。本発明の位相差板がこのような短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きい、通常の一般的な位相差板とは逆の波長分散特性を示すのは、主にポリマー(I)中の一般式(V)で表される単位の構造に起因していると考えられる。
ここで、一般にポリマーの配向はフィルムの延伸によってもたらされるので、かかるポリマー(I)も、その配向方向は、後述する一軸延伸の場合にはその延伸方向と等しいと言え、二軸延伸の場合には主たる延伸方向と等しいと言える。
また、ポリマー(I)中の一般式(V)で表される単位内において、2つの酸素原子は主鎖を構成する原子にそれぞれ結合しており、一般式(VI)で表される芳香族基は、その平面構造がこれら2つの酸素原子を結んだ仮想線と略直交する方向に配置している(この芳香族基の平面構造が2つの酸素原子を結んだ仮想線と略直交する方向に配置しているとは、2つの酸素原子を結ぶ線を仮想した場合、その仮想線に平行な線が該芳香族基の平面構造に対して略直角に交わるように芳香族基が配置していることを意味しており、酸素原子を結んだ仮想線自体が芳香族基の平面構造と交わっているという意味ではない)。
したがって、ポリマー(I)を配向させた際には、ポリマー(I)中の一般式(V)で表される単位内の2つの酸素原子は主鎖の配向方向に沿って並び、一般式(VI)で表される芳香族基の平面構造が主鎖の配向方向と略直交する方向に向くことになる(但し、該芳香族基の平面構造が主鎖の配向方向に対して厳密に90度に配置しているものではなく、実際上、75〜105度程度となっているものと考えられる)。そして、このように芳香族基の平面構造が主鎖の配向方向と略直交する方向に向くことにより、該芳香族基を含む一般式(V)で表される単位が負の大分散成分として作用し、位相差板全体の面内位相差を特徴付けるのである。
【0038】
このように、前記のごとき特別な配置をとる一般式(V)で表される単位の存在により、本発明の位相差板は、通常のポリマーからなる位相差板とは逆の波長分散特性、すなわち、面内位相差が可視光領域において短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きい性質を示すものと考えられる。したがって、かかる逆波長分散特性の向上効果がより大きいという点を考慮すると、本発明の位相差板には、ポリマー(I)のなかでも、
【化15】

(一般式(VIII)中、l、m及びnは、一般式(I)のl、m、nと同様の数値である)で表される構造を有するポリマーや、
【化16】

(一般式(IX)中、l、m及びnは、一般式(I)のl、m、nと同様の数値である)で表される構造を有するポリマーや、
【化17】

(一般式(X)中、l、m及びnは、一般式(I)のl、m、nと同様の数値である)で表される構造を有するポリビニルアセタールが好適であり、一般式(IX)で表される構造を有するポリマーが特に好適に使用される。
【0039】
本発明の位相差板を構成する単層フィルムは、先ずポリマー(I)を製膜することにより得られる。かかるポリマー(I)の製膜法には特に限定がなく、例えばキャスト法、溶融押出法、カレンダー法などによってフィルム状に成形する方法が採用される。なかでも、より厚み精度に優れ、光学的に均質なフィルムを得ることができる点から、キャスト法で成形することが好ましい。キャスト法では、通常ポリマーを溶解させるために溶媒が用いられるが、PVAの残存水酸基単位を有するポリマー(I)は、従来のポリマーフィルムをキャスト成形する際に用いることができなかった溶媒に対しても、良好な溶解性を示す場合がある。ポリマー(I)をキャスト成形する際の溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、トルエンなどが例示される。尚、ポリマー(I)を溶媒に溶解させる際には、必要に応じて加温してもよい。
【0040】
次に得られたフィルムを延伸し、ポリマー(I)を配向させることにより、本発明の位相差板を得ることができる。かかる延伸方法には特に限定がなく、例えばテンター延伸法、ロール間延伸法、ロール間圧縮延伸法といった通常の一軸延伸法や、全テンター法による同時二軸延伸処理方式、ロール・テンター法による逐次二軸延伸処理方式といった通常の二軸延伸法などを採用することができる。
尚、フィルム中には、その延伸性を向上させる目的で、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸エステル、トリメチルリン酸エステル、トリエチルリン酸エステル、トリフェニルリン酸エステルなどのリン酸エステル、ジエチルアジペート、ジブチルフマレートなどの脂肪酸などの可塑剤を1種以上添加してもよい。該可塑剤の添加量は、延伸性の向上効果及び得られる位相差板の波長分散特性への影響を考慮すると、ポリマー(I)100重量部に対して1〜20重量部程度であることが好ましい。また可塑剤のほかにも、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤といった添加剤を、それぞれの目的に応じて適宜添加してもよい。
フィルムを延伸する際の温度、倍率といった延伸条件は、ポリマー(I)の構造、すなわち一般式(V)で表される単位の種類や量、一般式(VII)で表される単位の種類や量及びPVAの残存水酸基単位の量によって異なるため、これらに応じて適宜設定されるものであるが、例えば延伸温度が50〜200℃程度、更には70〜180℃程度、延伸倍率が1.0〜4.0倍程度、更には1.1〜3.8倍程度であることが好ましい。
かくして得られる本発明の位相差板は透明性に優れており、JIS K 7105に準拠した測定での全光線透過率が80〜95%程度、更には85〜95%程度、ヘイズが0.1〜3%程度、更には0.1〜2%程度と好ましいものである。またその厚みは、通常20〜200μm程度、さらには40〜100μm程度と充分に小さいものである。
【0041】
本発明の位相差板は特定構造を有するポリマー(I)の単層フィルムからなり、少なくとも波長450〜650nmにおける面内位相差が短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きい、逆波長分散特性を示すものである。したがってかかる位相差板は、可視光領域全体のほぼ全ての波長λの光に対して、それ自身1枚で位相差が例えばほぼλ/2又はほぼλ/4の波長分散性を示すため、無色偏光への変換が可能となる。
本発明の位相差板は前記のごとき逆波長分散特性を有し、後述する条件にて測定した波長分散は、ポリマー(I)の構造、すなわち一般式(V)で表される単位の種類や量、一般式(VII)で表される単位の種類や量及びPVAの残存水酸基単位の量によって異なるものの、概ね、Re(450)/Re(550)≦0.95、Re(650)/Re(550)≧1.01、の関係を満たしている。ここで、Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、それぞれ波長450nm、550nm及び650nmで測定した面内位相差を表すものである。
また本発明の位相差板に、ある波長の光が入射した際、その異常光に対する屈折率(以下、「n」という)と常光に対する屈折率(以下、「n」という)との屈折率差:n−n(以下、「Δn」という)は、後述する条件にて測定すると、550nmの波長で約0.004以下である。
このように、本発明の位相差板は、少なくとも450〜650nmの可視光領域全体のほぼ全ての波長λの光に対して各波長での偏光がほぼ同じ形であり、白色光が入射した際に有色偏光への変換がなく、それ自身1枚で無色偏光を得ることができる。よって、本発明の位相差板は、λ/2板やλ/4板として好適に使用可能なものである。
【0042】
さらに、本発明の位相差板は、他の光学材料などと積層することにより、光学フィルムの態様で使用することができる。例えば、偏光板に本発明の位相差板を積層することにより、楕円偏光板や円偏光板などの光学フィルムとして利用することができる。また、位相差がλ/4に調整された本発明の位相差板と、位相差がλ/2に調整された本発明の位相差板を、偏光板に積層して光学フィルムを構成することもできる。また、液晶セルなどの他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。尚、粘着層が表面に露出する場合には、離型紙にてカバーすることが好ましい。その他、偏光板/本発明の位相差板/バンドパスフィルターの順で積層した光学フィルムや、更に、表面に保護フィルムを添付した光学フィルムなど、本発明の位相差板は、機能の異なる光学材料と積層することにより、各種の光学フィルムの態様で使用できる。
【0043】
また、本発明の位相差板又は該位相差板が積層された光学フィルムは、液晶表示装置などの各種画像表示装置などの構成部品として好ましく用いることができる。例えば、液晶表示装置は、上記光学フィルムなどを液晶セルの片側または両側に配置してなる透過型や反射型、あるいは透過・反射両用型等の従来に準じた適宜な構造とすることができる。したがって、液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであっても良い。また、液晶セルの両側に本発明の光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、拡散板やバックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0044】
さらに、ポリマー(I)からなるフィルムは、上記のような波長分散性、透明性、耐水性を有するので位相差板として好適なフィルムであるが、本発明の製法によって得られたポリマー(I)の用途は、位相差板に限定されるものではない。
また、フィルムを製膜する際には、必要に応じて、ポリマー(I)に、他のポリマーや液晶性化合物などのその他の成分を混合することも可能である。
【実施例】
【0045】
次に本発明の複屈折性ポリビニルアセタールの製法、及びこれを配向させたフィルムからなる位相差板について、実施例に基づいてさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
実施例及び比較例に於ける各特性の測定条件は、それぞれ以下に示すとおりである。
13C−NMR)
FT NMR装置(日本電子(株)製、ラムダシリーズLA400)を用い、300mgの試料を3mlの溶媒に溶解し、以下の条件にて測定した。
観測核:13C。
観測周波数:100MHz。
測定モード:NNE。
パルスの繰り返し時間:10秒。
ケミカルシフトの基準:39.5ppm。
測定溶媒:重ジメチルスルホキシド。
測定温度:70℃。
(重合度)
ポリマー粉末を0.1%ジメチルホルムアミド溶液に調製し、東ソー製HLC−8120GPCを用いて測定した。溶離液はジメチルホルムアミドを使用し、ポリスチレン標準換算により分子量を測定した。
(Tg)
ポリマーについて、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200)を用いて、チッ素ガス中、室温から10℃/分で200℃まで昇温して2回測定し、2回目のデータを採用した。
(吸水率及び白濁)
JIS K 7209に記載のA法(23±2℃に保った水を入れた容器に浸し、24時間放置する)に準拠して吸水率を測定した。また、吸水率試験を行った直後の各フィルムについて、白濁変化したかどうかを目視によって観察した。
(全光線透過率及びヘイズ値)
JIS K 7105に準拠したヘイズメーター(村上色彩(株)製、HR−100型)を使用して測定した。
(厚み)
マイクロメータ((株)ミツトヨ製、M300)を用いて測定した。
(面内位相差:Re(450)、Re(550)、Re(650))
スペクトロエリプソメータ(日本分光(株)製、M−220)を用い、各波長で室温にて測定した。
(Δn)
上記スペクトロエリプソメータにより求めた面内位相差をフィルムの厚さで除することにより算出した。尚、表2中、波長550nmでの値をΔn(550)と示す。
【0047】
(製造例1)
工程(1):PVA(ケン化度:98%、重合度:1800、日本合成化学工業(株)製、NH−18)19.07g(0.43molユニット)を80℃でジメチルスルホキシド362.3gに溶解させた。溶解後40℃に冷却し、これに式(IV)で表されるメシトアルデヒド11.55g(77.9mmol)及び1,1−ジエトキシエタン16.37g(138.5mmol)を滴下し(メシトアルデヒド及び1,1−ジエトキシエタンの総量:PVAの水酸基1当量に対して0.5当量)、溶解させた。さらにp−トルエンスルホン酸1水和物6.75g(35.5mmol)を加え、40℃で4時間攪拌して反応溶液を得た。
水とメタノールとの混合溶液(水:メタノール(容量比)=1:2)3000mlに炭酸水素ナトリウム11.28g(106.5mmol)を溶解させた溶液中に、前記反応溶液を攪拌しながら投入し、白色ポリマーを析出させた。この白色ポリマーを濾過して集め、テトラヒドロフラン600gに溶解させ、ジエチルエーテル3000mlにて再沈殿を行った。この再沈殿で析出したポリマーを濾過して集め、50℃で15時間真空乾燥し、ポリマー25.0gを得た。このポリマーの重合度は約1800、Tgは115℃であった。
得られたポリマーについて13C−NMRを測定して、メシトアルデヒド及び1,1−ジエトキシエタンがアセタール形でPVAに導入されたポリマー(A)であることを確認し、これらの導入量を上記[0035]に記載の方法にて算出した。13C−NMRデータ及びポリマー(A)の組成を下記に示す。
さらに、このポリマー(A)を実施例1と同様の方法で製膜し、乾燥して厚み60μmのフィルムを得、このフィルムの吸水率を測定した。また、フィルムの白濁の有無を目視にて調べた。これらの結果を表1に示す。
【0048】
〔ポリマー(A)の13C−NMRデータ〕
20.849ppm:アセタール由来のメチルカーボン。
30〜46ppm:主鎖のメチレンカーボン。
19.771、20.117ppm:メシタルデヒド由来のメチルカーボン。
60〜75ppm:主鎖のメチンカーボン。
90.656、91.010、97.361ppm:アセタール由来のジオキサン環の3級カーボン。
98.996ppm:メシタルデヒド由来のジオキサン環の3級カーボン。
128.921、131.693、135.922、136.638ppm:ベンゼン環のカーボン。
〔ポリマー(A)の組成〕
【化18】

但し、各単位の整数はモル比で示す(以下、同様)。
【0049】
工程(2):工程(1)で得られたポリマー(A)3.00gを90℃でジメチルスルホキシド57.0gに溶解させた。これに1,1−ジエトキシエタン8.05g(68.1mmol)を滴下し(1,1−ジエトキシエタンの量:ポリマー(A)の水酸基1当量に対して4.9当量)、溶解させた。さらにp−トルエンスルホン酸1水和物0.13g(0.68mmol)を加え、25℃で16時間攪拌して反応溶液を得た。
水とメタノールとの混合溶液(水:メタノール(容量比)=1:2)3000mlに炭酸水素ナトリウム11.28g(106.5mmol)を溶解させた溶液中に、前記反応溶液を攪拌しながら投入し、ポリマーを析出させた。このポリマーを濾過して集め、テトラヒドロフラン600gに溶解させ、ジエチルエーテル3000mlにて再沈殿を行った。この再沈殿で析出したポリマーを濾過して集め、50℃で15時間真空乾燥し、ポリマー2.7gを得た。このポリマーの重合度は約1800、Tgは109℃であった。
得られたポリマーについて13C−NMRを測定して、メシトアルデヒド及び1,1−ジエトキシエタンがアセタール形でPVAに導入されたポリマー(B)であることを確認し、これらの導入量を同様の方法にて算出した。ポリマー(B)の組成を下記に示す。尚、ポリマー(B)の13C−NMRデータの帰属はポリマー(A)と同様である。
さらに、このポリマー(B)を実施例1と同様の方法で製膜し、乾燥して厚み60μmのフィルムを得、このフィルムの吸水率及び白濁の有無を調べた。これらの結果を表1に示す。
【0050】
〔ポリマー(B)の組成〕
【化19】

【0051】
【表1】

【0052】
(製造比較例1)
製造例1の工程(1)で得られたポリマー(A)3.00gを90℃でジメチルスルホキシド57.0gに溶解させた。これにメシトアルデヒド0.12g(0.84mmol)、1,1−ジエトキシエタン0.17g(1.48mmol)を滴下し(メシトアルデヒドと1,1−ジエトキシエタンの総量:ポリマー(A)の水酸基1当量に対して0.5当量)、溶解させた。さらにp−トルエンスルホン酸1水和物0.13g(0.68mmol)を加え、25℃で16時間攪拌して反応溶液を得た。その後、製造例1の工程2と同様にして反応−中和−精製−乾燥を行った。このポリマーの重合度は約1800、Tgは113℃であった。
得られたポリマーについて13C−NMRを測定して、メシトアルデヒド及び1,1−ジエトキシエタンがアセタール形でPVAに導入されたポリマー(C)であることを確認し、これらの導入量を同様にして算出した。ポリマー(C)の組成を下記に示す。
さらに、このポリマー(C)を実施例1と同様の方法で製膜し、乾燥して厚み60μmのフィルムを得、このフィルムの吸水率及び白濁の有無を調べた。これらの結果を表1に示す。
〔ポリマー(C)の組成〕
【化20】

【0053】
(製造比較例2)
実施例1と同じPVA19.07gを80℃でジメチルスルホキシド362.3gに溶解させた。溶解後40℃に冷却し、これにメシトアルデヒド11.55g及び1,1−ジエトキシエタン763.37g(6.46mol、PVAの水酸基1当量に対して15当量)を滴下し、溶解させた。さらにp−トルエンスルホン酸1水和物6.75g(35.5mmol)を加え、40℃で4時間攪拌して反応溶液を得た。
水とメタノールとの混合溶液(水:メタノール(容量比)=1:2)3000mlに炭酸水素ナトリウム11.28g(106.5mmol)を溶解させた溶液中に、前記反応溶液を攪拌しながら投入し、白色ポリマーを析出させた。この白色ポリマーを濾過して集め、テトラヒドロフラン600gに溶解させ、ジエチルエーテル3000mlにて再沈殿を行った。この再沈殿で析出したポリマーを濾過して集め、50℃で15時間真空乾燥し、ポリマー25.0gを得た。 このポリマーの重合度は約1800、Tgは105℃であった。
得られたポリマーについて同様にして組成を算出した。そのポリマー(D)の組成を下記に示す。
さらに、このポリマー(B)を実施例1と同様の方法で製膜し、乾燥して厚み60μmのフィルムを得、このフィルムの吸水率及び白濁の有無を調べた。これらの結果を表1に示す。
〔ポリマー(D)の組成〕
【化21】

【0054】
(実施例1)
製造例1で得られたポリマー(B)をN,N−ジメチルスルホキシドに溶解させ、アプリケータを用いてキャスト法にて製膜した。80℃×20分及び150℃×20分にて乾燥して得られたフィルムを、表2に示す延伸条件にて一軸延伸機を用いて延伸し、厚み43μmの一軸延伸フィルムを得た。
得られた一軸延伸フィルムについて、全光線透過率、ヘイズ及び面内位相差を測定し、Δnを算出した。これらの結果を表2に示す。
また、このフィルムの波長分散として、各波長に対するΔn/Δn(550)の値を図1のグラフに示す。
【0055】
【表2】

【0056】
(比較例1)
ポリマー(B)のかわりに製造例1の工程(1)で得られたポリマー(A)を用いたほかは実施例1と同様にして、表2に示す延伸条件にて、厚み46μmの一軸延伸フィルムを得た。
得られた一軸延伸フィルムについて、全光線透過率、ヘイズ及び面内位相差を測定し、Δnを算出した。これらの結果を表2に示す。
また、このフィルムの波長分散として、各波長に対するΔn/Δn(550)の値を図2のグラフに示す。
【0057】
(比較例2)
ポリマー(B)のかわりに比較製造例1で得られたポリマー(C)を用いたほかは実施例1と同様にして、表2に示す延伸条件にて、厚み43μmの一軸延伸フィルムを得た。
得られた一軸延伸フィルムについて、全光線透過率、ヘイズ及び面内位相差を測定し、Δnを算出した。これらの結果を表2に示す。
(比較例3)
ポリマー(B)のかわりに比較製造例2で得られたポリマー(D)を用いたほかは実施例1と同様にして、表2に示す延伸条件にて、厚み43μmの一軸延伸フィルムを得た。
得られた一軸延伸フィルムについて、全光線透過率、ヘイズ及び面内位相差を測定し、Δnを算出した。これらの結果を表2に示す。
【0058】
実施例1及び比較例1〜3のフィルムは、表2に示す通り、何れも面内位相差が短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きい波長分散を示した。この特性は、何れのフィルムも、配向した主鎖に対して略直角に向く芳香族基が導入されていることに起因していると考えられる。しかしながら、表1に示す通り、ポリマー(B)は、吸水率が低く且つ白濁せず、ポリマー(A)、(C)及び(D)は、何れも吸水率が高かった。これは、主として水酸基の量に起因するものと考えられる。
かかる波長分散及び透明性に優れるポリマー(B)は、芳香族アルデヒド及びアセタールをPVAに反応させた後、更にアセタールのみを反応させる上記製造例1の工程(1)及び(2)を経ることにより製造することができた。
一方、芳香族アルデヒド及びアセタールを一括全量反応させる製法(製造例1の工程(1))では、吸水率の良いポリマーは得られなかった。さらに、製造例(1)の工程(1)よりもアセタールの量を多くした製法(製造比較例2)でも、吸水率が良いポリマーは得られなかった。また、芳香族アルデヒド及びアセタールを2工程に分割して反応させる製法(比較製造例1)でも同様であった。
これは、芳香族アルデヒドの方がPVAと反応しやすく、アセタールと芳香族アルデヒドが共存していると、アセタールの反応が抑えられることにより、アセタール由来の基のPVA導入量が相対的に減る結果、残存水酸基の多いポリマーとなものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1で得られた一軸延伸フィルムの波長分散を示すグラフである。
【図2】比較例1で得られた一軸延伸フィルムの波長分散を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

(一般式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示し(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)、Rは水素原子又は炭素数1〜12の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を示す。lは10〜30モル%、mは60〜75モル%、nは15モル%以下である)で表される複屈折性を示すポリビニルアセタールの製法であって、
溶媒に溶解させたポリビニルアルコールに、酸性条件下で、
【化2】

(一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示す(但し、R及びRは同時に水素原子ではない))で表される芳香族アルデヒド、及び
一般式(III):RCH(OC
(一般式(III)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜12の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を示す)で表されるアセタールを反応させる工程(1)と、
前記工程(1)で得られた中間体に、酸性条件下で、上記一般式(III)で表されるアセタールを更に反応させる工程(2)と、
反応溶液を中和してポリマーを析出させる工程と、
を有することを特徴とする複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項2】
前記工程(1)で得られる中間体が、
【化3】

(一般式(I')中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシル基、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝状のチオアルコキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、水酸基又はチオール基を示し(但し、R及びRは同時に水素原子ではない)、Rは水素原子又は炭素数1〜12の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキル基を示す。l’は10〜30モル%で、l’+m’+n’=100モル%である)で表されるポリマーである請求項1記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項3】
前記芳香族アルデヒドが、メシトアルデヒドである請求項1又は2記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項4】
前記アセタールが、1,1−ジエトキシエタンである請求項1〜3の何れかに記載の複屈折性ポリニルアセタールの製法。
【請求項5】
前記工程(1)において、芳香族アルデヒド及びアセタールの合計量が、ポリビニルアルコールの水酸基1当量に対して0.2〜3.0当量である請求項1〜4の何れかに記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項6】
前記工程(1)において、芳香族アルデヒドとアセタールのモル比が1:5〜2:1である請求項1〜5の何れかに記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項7】
前記工程(1)において、溶媒として少なくともジメチルスルホキシドを用いる請求項1〜6の何れかに記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項8】
前記工程(1)において、p−トルエンスルホン酸1水和物を用いて酸性条件下とする請求項1〜7の何れかに記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項9】
前記工程(1)において、反応温度を20〜50℃下で行う請求項1〜8の何れかに記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項10】
前記工程(1)において、中間体を得た後、反応溶液を中和する請求項1〜9の何れかに記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項11】
前記工程(2)において、アセタールの量が中間体の水酸基1当量に対して0.3〜6当量である請求項1〜10の何れかに記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項12】
前記工程(2)において、前記中間体とアセタールの反応を10〜50℃下で行う請求項1〜11の何れかに記載の複屈折性ポリビニルアセタールの製法。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかに記載の製法によって得ることができる複屈折性ポリビニルアセタール。
【請求項14】
吸水率が2〜7%である請求項13記載の複屈折性ポリビニルアセタール。
【請求項15】
請求項13又は14記載の複屈折性ポリビニルアセタールを配向させたフィルムからなり、少なくとも波長450〜650nmにおける面内位相差が、短波長側ほど小さく、長波長側ほど大きいことを特徴とする位相差板。
【請求項16】
請求項15記載の位相差板を備える光学フィルム。
【請求項17】
請求項15記載の位相差板又は請求項16記載の光学フィルムを備える画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−89696(P2006−89696A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280103(P2004−280103)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】