説明

複層塗膜の形成方法

【課題】従来の塗装装置を用いて、水性塗料によって外観に優れた真珠調光沢複層塗膜を得ることができる複層塗膜の形成方法を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン素材からなる成型品の複層塗膜形成方法であって、基材上に、白色導電プライマーを塗布する工程(1)、水性カラーベース塗料組成物を塗布する工程(2)、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)、クリヤー塗料組成物を塗布する工程(4)、及び、焼き付け工程(5)からなり、上記工程(1)及び工程(2)の間、並びに、上記工程(3)及び(4)の間にプレヒート工程を含み、上記水性カラーベース塗料組成物は、塗装直後の塗膜粘度Aが80000〜165000であり、上記工程(3)を行う直前の塗膜粘度Bが100000以上である複層塗膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層塗膜の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、真珠調の光沢を有する塗膜として、マイカ顔料を使用した塗料による塗膜が使用されている。このような真珠調光沢塗膜をプラスチック素材上に形成する試みが多く行われている。
【0003】
マイカ顔料による真珠調光沢を得るためには、カラーベース塗膜上にマイカベース塗膜を形成し、更にその上にクリヤー塗膜を形成することが必要とされている。すなわち、ベース塗膜を2層形成することが必要であり、この点で通常のメタリック塗装に比べて塗装工程が相違している。
【0004】
このような塗膜構成にあわせて、プライマー塗装−カラーベース塗装−マイカベース塗装−クリヤー塗装を順次行うこととなれば、従来のメタリックベース塗料の塗膜形成とは異なる新たな塗装設備を設けることが必要になる。このため、工場の改善に高いコストが必要とされるという問題がある。
【0005】
従来のメタリック塗装用の設備を用いてプライマー塗装−カラーベース塗装−マイカベース塗装−クリヤー塗装という塗装工程を行うには、2ステージで行っていたマイカベース塗装工程のそれぞれのステージを1ステージでのカラーベース塗装及びマイカベース塗装に割り当てる方法が考えられる。しかし、このような塗装を行うと、カラーベース塗装後マイカベース塗装の間の時間が短くなるため、マイカベース塗膜の間に界面のなじみが生じやすいという問題がある。更に、1ステージで塗装を行う場合には、下地隠蔽性を確保するために一回の吐出量を多くすることが必要となる。しかし、吐出量を多くすると塗料の乾燥が遅くなるために、上述した界面のなじみという問題が更に大きくなってしまう。
【0006】
近年は、有機溶剤の使用量を低減することによって環境への負荷を抑制するために、塗料の水性化が要求されている。よって、上述したようなマイカ顔料を使用した塗料の塗装についても、水性化が要求されている。しかし、水性塗料は、有機溶剤塗料に比べて水が揮発しにくいという問題があるため、これらの問題がなお一層顕著なものとなってしまう。
【0007】
導電性プライマー塗装−カラーベース塗装−マイカベース塗装−クリヤー塗装を順次行う方法としては、特許文献1記載の複層塗膜形成方法が挙げられる。しかしながら、特許文献1は、主として溶剤系の塗料による塗装を行うものであり、上述したような水性塗料による塗装を行うことについて実質的に記載されていない。
【0008】
特許文献2には、白色導電プライマー塗装―カラーベース塗装−干渉色ベース塗装−クリヤー塗装を順次行う方法が開示されている。しかしながら、特許文献2は、主として溶剤系の塗料による塗装を行うものであり、具体的に水性のカラーベース塗料、干渉色ベース塗料を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−88025号公報
【特許文献2】特開2004−262988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑み、従来の塗装装置を用いて、水性塗料によって外観に優れた真珠調光沢複層塗膜を得ることができる複層塗膜の形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリプロピレン素材からなる成型品の複層塗膜形成方法であって、基材上に、白色導電プライマーを塗布する工程(1)、水性カラーベース塗料組成物を塗布する工程(2)、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)、クリヤー塗料組成物を塗布する工程(4)、及び、焼き付け工程(5)からなり、上記工程(1)及び工程(2)の間、並びに、上記工程(3)及び(4)の間にプレヒート工程を含み、上記水性カラーベース塗料組成物は、塗装直後の塗膜粘度Aが80000〜165000であり、上記工程(3)を行う直前の塗膜粘度Bが100000以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法である。
【0012】
上記複層塗膜形成方法は、工程(2)及び工程(3)の間にプレヒート工程を含まず、上記工程(2)及び上記工程(3)が1ステージで行われることが好ましい。
上記プライマー塗膜は、L、a、b色相空間でのL値が、80以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複層塗膜の形成方法は、従来の塗装装置を用いて、外観に優れた真珠調光沢複層塗膜を得ることができるものである。すなわち、本発明により、従来の塗装装置を用いて水性塗料によって上記複層塗膜を形成することができるため、経済的にも優れた方法である。さらに、本発明は、水性カラーベース塗料組成物、及び、水性マイカベース塗料組成物を用いるため、環境保護の観点からも優れた方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】塗着NV測定時に使用する試験板(ブリキ板上にアルミ箔をのせた状態)
【図2】塗着NV測定時に使用する試験板(抜き打ち台紙を置いた状態)
【図3】塗着NV測定時に使用する試験板(マスキングテープで固定した状態)
【符号の説明】
【0015】
1 ブリキ板
2 アルミ箔
3 打ち抜き台紙
4 マスキングテープ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、上述したものであり、水性カラーベース塗料について、塗装時の粘度と塗膜形成後の粘度をコントロールすること、及び、プライマー塗料として白色導電プライマーを使用することによって、既存のメタリック塗料用の塗装設備によって、外観が良好な真珠調光沢を有する塗膜を形成するものである。
【0017】
本発明においては、水性カラーベース塗料組成物を塗装した直後の塗膜粘度Aを80000〜165000の範囲に確保することが重要となる。80000未満になるとタレ等の不具合が発生し、165000を超えると肌荒れ等が生じ塗膜外観が低下する。
【0018】
更に、本発明においては工程(3)を行う直前の塗膜粘度Bを100000以上とする。すなわち、工程(3)を行うまでに、マイカベースを塗装しても界面のなじみを生じることがない粘度となる程度に上昇させることが必要である。これらによって、プレヒート上記工程(1)及び(2)の間並びに工程(3)及び工程(4)の間のみに行うことによって、水性塗料によって真珠調光沢塗膜を形成することができる。
【0019】
更に、プライマーとして白色導電プライマーを用いることにより、水性カラーベース塗料組成物の吐出量を少なくすることができるため、塗装時の微粒化が向上し、塗装直後の粘度の調整が容易となる。
【0020】
以下に、本発明の工程(1)〜工程(4)において塗装される白色導電プライマー、水性カラーベース塗料組成物、水性メタリックベース塗料組成物、クリヤー塗料組成物について、それぞれ詳述する。
【0021】
(白色導電プライマー)
上記白色導電プライマーとしては特に限定されず、ポリプロピレン素材に導電性を付与することができるものであればよい。なかでも、環境に配慮した水性白色導電プライマーであることが好ましく、例えば、プライマー用樹脂及び導電剤、さらに必要に応じて白色顔料や、その他の原料を含んだものを挙げることができる。
【0022】
上記白色導電プライマーは、溶剤系であってもよいが、環境への影響を考慮して水性であることが好ましい。上記白色導電プライマー中の水の配合割合は、白色導電プライマー全体に対して、好ましくは45〜90質量%、さらに好ましくは50〜80質量%である。水の配合割合が45質量%未満であると、粘度が高くなり、貯蔵安定性や、塗装作業性が低下する。他方、水の配合割合が90質量%を超えると、不揮発分量の割合が低下し、塗装効率が悪くなり、タレ、ワキなどの外観異常が生じやすくなる。なお、上記白色導電プライマーが水性の場合、有機溶剤をさらに含んでもよく、その配合割合は、通常、含まれる水に対して40質量%以下である。
【0023】
上記白色導電プライマーのプライマー用樹脂成分としては、酸変性塩素化ポリオレフィン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂;アルキッド樹脂、水溶性アクリル樹脂等の顔料分散樹脂などを用いることが好ましい。これらのすべてを含有するものであってもよい。
【0024】
上記酸変性塩素化ポリオレフィンは、例えば、プラスチック基材、特に、ポリオレフィン基材に対する密着性を向上させるものである。配合量としては、白色導電プライマーに対して、樹脂固形分基準で、20〜35質量%の割合であることが好ましい。20質量%未満ではポリオレフィン素材への密着性が不良となる傾向がある。
【0025】
上記エポキシ樹脂は、塗膜の耐水性を向上させる成分である。その配合量としては、白色導電プライマーに対して、樹脂固形分基準で5〜30質量%の割合であることが好ましい。5質量未満では、充分な耐水性が得られず、30質量%を超えると他のプライマー用樹脂の配合が制限されるので密着性不良などを招く場合がある。
【0026】
上記ポリウレタン樹脂は、塗膜の柔軟性を高める成分であり、配合量としては、白色導電プライマーに対して、樹脂固形分基準で、15〜35質量%の割合であることが好ましい。15質量%未満では十分な柔軟性を与えることができないおそれがある。
【0027】
上記酸変性塩素化ポリオレフィンは、塩素化ポリオレフィン部分と、この塩素化ポリオレフィン部分に結合した酸無水物部分とを含むポリオレフィン誘導体である。
塩素化ポリオレフィン部分は、塩素原子が置換したポリオレフィンからなる部分である。
【0028】
また、酸無水物部分は、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などの酸無水物に由来する基を含有し、グラフトして得られる変性された部分である。酸無水物部分は、1種または2種以上の酸無水物に由来する基からなる部分であってもよい。酸変性塩素化ポリオレフィンは、ポリオレフィンを酸無水物および塩素と反応させて内部変性したものであり、例えば、ポリオレフィンに対して塩素および酸無水物を反応させて製造される。ここで、塩素および酸無水物はどちらを先に反応させてもよい。塩素との反応は、例えば、ポリオレフィンを含む溶液に塩素ガスを導入することによって行われる。また、酸無水物との反応は、例えば、過酸化物の存在下、ポリオレフィン(または塩素化ポリオレフィン)に酸無水物を反応させることによって行われる。
【0029】
上記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンや、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体などの共重合体や、エチレン、プロピレンおよび炭素数8以下のアルケンから選ばれた少なくとも1種の単量体を重合して得られる重合体などを挙げることができ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリプロピレンを用いることが、入手のし易さ、密着性が高くなる点で好ましい。また、上記変性に用いられる酸無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0030】
酸変性塩素化ポリオレフィンの塩素含有率は、好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは18〜22質量%である。塩素含有率が10質量%未満であると、溶剤溶解性が低下し、その乳化が困難になる傾向がある。他方、塩素含有率が30質量%超であると、ポリプロピレンなどのプラスチック素材に対する密着性が低下し、不十分となるおそれがある。
【0031】
酸変性塩素化ポリオレフィンの酸無水物含有率は、1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、1.2〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。酸無水物含有率が1質量%未満であると、乳化しにくくなるとともに白色導電プライマーの安定性が悪くなるおそれがある。他方、酸無水物含有率が、10質量%を超えると、酸無水物基が多くなりすぎ、耐水性が低下する傾向がある。
【0032】
酸変性塩素化ポリオレフィンは、その質量平均分子量が20000〜200000の範囲にあることが好ましく、30000〜120000の範囲にあることがより好ましい。質量平均分子量が20000未満であると、この白色導電プライマーから得られるプライマー塗膜の強度が低下し、密着性も低くなる傾向がある。他方、質量平均分子量が200000を超えると、粘度が高くなり、乳化しにくい傾向がある。
【0033】
上記酸変性塩素化ポリオレフィンは、疎水性が高く、水に安定的に分散させることが困難であるので、通常、乳化剤や中和剤を使用してエマルション化させ、エマルション樹脂として用いる。
【0034】
乳化剤の配合割合は、酸変性塩素化ポリオレフィン、中和剤や水の配合割合によって適宜設定されるが、例えば、酸変性塩素化ポリオレフィン100質量%に対して2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。乳化剤が2質量%未満であると、エマルションの貯蔵安定性が低下するとともに、後述のエマルションの製造工程において、重合途中に凝集や沈降がおこり易くなる傾向がある。他方、50質量%を超えると、乳化剤が塗膜中に多量に残り、塗膜の耐水性や耐候性が低下する傾向がある。
【0035】
乳化剤としては、特に限定はないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルや、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪族エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、アルキロールアミドなどのノニオン型乳化剤;アルキル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩などのアニオン型乳化剤;ステアリルベタインやラウリルベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性乳化剤;ポリオキシエチレン基含有ウレタン樹脂、カルボン酸塩基含有ウレタン樹脂などの樹脂型乳化剤、イミダゾリンラウレート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルベタイン、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン型乳化剤などを挙げることができ、これらは1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも、ノニオン型乳化剤は、親水性の高いイオン性極性基を有しないため塗膜の耐水性を良好とさせ、好ましい。
【0036】
中和剤の配合割合も、酸変性塩素化ポリオレフィン、乳化剤や水の配合割合によって設定され、特に、酸変性塩素化ポリオレフィンや乳化剤などに含まれる酸性官能基(例えば、酸無水物基やカルボキシル基)を十分に中和することを考慮して配合されるが、例えば、酸変性塩素化ポリオレフィンに含まれる酸性官能基1当量に対し、好ましくは0.2〜10当量、より好ましくは0.5〜4当量である。0.2当量未満では乳化が不十分となり、10当量を超えると残存した中和剤などが耐水性を低下させたり、脱塩素化を促進する傾向がある。
【0037】
中和剤の配合によって定まるエマルションのpHは、好ましくは7〜11、さらに好ましくは7.5〜10.5、最も好ましくは8〜10である。エマルションのpHが7未満であると、中和が十分ではなく、エマルションの貯蔵安定性が低下する傾向がある。他方、エマルションのpHが11を超えると、遊離の中和剤がエマルション中に過剰に存在することとなり、中和剤臭が強くなり、使用しにくくなる傾向がある。
【0038】
中和剤は、塩素化ポリオレフィン樹脂が有する酸無水物基および/またはカルボキシル基に付加するか、および/または、これらの基を中和して、変性塩素化ポリオレフィンの親水性を高め、エマルションの貯蔵安定性を向上させる働きをする。
【0039】
中和剤としては、後述の有機系強塩基が必須であり、必要に応じて通常の有機系アミンやアンモニアを併用しても良い。
【0040】
通常の有機系アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、N−メチルモルホリンなどのモノアミン類;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどのアルカノールアミン類などを挙げることができる。
【0041】
エマルション中の酸変性塩素化ポリオレフィンを主成分とするポリマー粒子の平均粒径については、特に限定はないが、0.01〜1μmが好ましく、0.05〜0.5μmがより好ましく、0.1〜0.5μmが最も好ましい。ポリマー粒子の平均粒径が0.01μm未満であると、乳化剤が多量に必要となり、塗膜の耐水性や耐候性が低下する傾向がある。他方、ポリマー粒子の平均粒径が1μmを超えると、エマルションの貯蔵安定性が低下するとともに、ポリマー粒子の体積が大きすぎて、塗膜化するための溶融熱量や時間が多く必要となる。さらに、得られる塗膜の外観や耐水性、耐溶剤性などが低下する傾向がある。
【0042】
酸変性塩素化ポリオレフィンの乳化方法は、公知の方法でよく、例えば、酸変性塩素化ポリオレフィンと、乳化剤、中和剤、必要により溶剤を用いて加熱またはそのまま溶解し、市販の乳化機にて水中に乳化させたり、あるいは、酸変性塩素化ポリオレフィンと、乳化剤、必要により溶剤を用いて加熱またはそのまま溶解し、市販の乳化機にて中和剤を添加した水中に乳化させたりする。また、逆に、酸変性塩素化ポリオレフィンと、乳化剤、中和剤、必要により溶剤を用いて加熱またはそのまま溶解した有機相に、水を攪拌下ゆっくりと添加して転相乳化させたり、あるいは、酸変性塩素化ポリオレフィンと、乳化剤、必要により溶剤を用いて加熱またはそのまま溶解した有機相に、中和剤を添加した水を攪拌下ゆっくりと添加して転相乳化させたりしてもよい。
【0043】
上述の乳化方法に用いられる溶剤としては、例えば、キシレンおよびトルエン、ソルベッソ−100(エクソン社製)などの芳香族系溶剤や、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコール−n−プロピルエーテルなどのエチレングリコール系またはプロピレングリコール系溶剤などが挙げられる。
【0044】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、なかでも、グリシジル(メタ)アクリレートを35〜60質量%含有する重合性不飽和基含有モノマー成分を重合して得られるエポキシ基含有アクリル樹脂であることが好ましい。上記グリシジル(メタ)アクリレートが35質量%未満では十分な耐水性が得られず、60質量%を超えると製造時の変動が大きく、安定して量産することに懸念がある。
【0045】
上記グリシジル(メタ)アクリレート以外の重合性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物などの官能基含有モノマー、さらには、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
【0046】
上記ポリウレタン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート基とポリオールを反応させて鎖延長されたポリウレタン樹脂が好ましい。
上記ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。ポリオールの市販品としては、ユリアーノシリーズ(荒川化学社製)、オレスターシリーズ(三井化学社製)、アロタンシリーズ(日本触媒社製)などがある。
【0047】
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリオール変性物をエマルション化したものやディスパージョン化したものが良い。例えば、乳化剤の存在下、あらかじめジオールとジイソシアネートを反応させて得られるプレポリマーを水中に分散させながら、強制または自己乳化して得られるディスパージョンが挙げられる。上記ディスパージョンにおいては、分散性を高めるために、カルボキシル基を有するジメチロールブタン酸などを含んでいても良い。
【0048】
上記アルキッド樹脂は、多価アルコールと、酸成分の一部が植物油の長鎖脂肪酸であってもよい多官能カルボン酸とのポリエステル化反応生成物である。
【0049】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−オレフィングリコール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジオレフィングリコール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。上記多官能カルボン酸としては、例えば、フタル酸無水物、アジピン酸、マレイン酸無水物、イソフタル酸、セバチン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、トリメリット酸無水物、リノール酸、リノレイン酸、安息香酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0050】
上記水溶性アクリル樹脂としては、例えば、親水性(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を含む水溶性のアクリル樹脂を挙げることができる。上記親水性(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートやこれら(メタ)アクリレートとカプロラクトンやエチレンオキサイドなどが反応した開環付加物などの水酸基含有(メタ)アクリルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリルモノマー;アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミドモノマーなどを挙げることができ、1種のみ、または、2種以上を併用しても良い。
【0051】
水溶性アクリル樹脂は、親水性(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位のほかに、適宜、他の(メタ)アクリルモノマーやスチレン系モノマーに由来する構造単位を含むものであっても良い。
【0052】
水溶性アクリル樹脂は、親水性(メタ)アクリルモノマーを重合して得ることができるが、必要に応じて、上記他の(メタ)アクリルモノマーやスチレン系モノマーとともに共重合したり、酸やアルカリで水溶性化して得られるものでもよい。水溶性化については、例えば、親水性(メタ)アクリルモノマーがカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーである場合にはアミンやアンモニアを用いて中和することにより行うことができ、アミノ基含有(メタ)アクリルモノマーである場合には有機酸などを用いて中和することにより行うことができる。
【0053】
導電剤としては、塗膜に導電性を与えるものであれば特に制限はなく従来公知のものを用いることができ、金属系、金属酸化物系、炭素系、有機高分子系等、いずれも使用できる。また、その形状も粒子状、フレーク状などを用いることができる。これらの市販品としては、具体的には、例えばET−500W(石原産業社製)が挙げられる。上記電導剤は、塗料中の固形分全量に対して55〜75質量%の割合で配合することが好ましい。
【0054】
上記白色導電プライマーは、必要に応じて白色顔料を配合したものであってもよい。
白色顔料としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛などが挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。
上記白色顔料の平均粒径は、特に制限はないが、分散性、塗膜の平滑性、密着性確保などの観点から、0.2〜0.3μmであることが好ましい。
【0055】
本発明で用いられる白色導電プライマーには、必要に応じて、例えば、有機溶剤、無機充填剤、有機改質剤、安定剤、可塑剤、添加剤などの公知の補助配合剤を含有させることができる。
【0056】
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどのエステル類;n−ブチルエーテル、イソブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−プロピレングリコール、イソプロピレングリコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのセロソルブ類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのカービトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアセトンアルコールなどのその他の溶剤類などを挙げることができる。
【0057】
本発明において、上記工程(1)は、上記白色導電プライマーを基材表面に塗布する工程である。上記白色導電プライマーは、例えば、スプレー塗装やベル塗装などの手法で塗ることができる。上記基材は、必要に応じて、洗浄、脱脂しておいてもよい。
【0058】
更に、プライマー塗膜は、L,a,b色相空間でのL値が、80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましい。上記L値が80未満であると、塗膜外観の明度低下の原因となるおそれがある。なお、L値は、使用する導電剤の種類や配合量、必要に応じて使用する白色顔料の種類や量によって適宜調整すれば良い。上記L,a,bの値は、塗膜の45°L値を「MA68II」(X−Rite社製)で測定することができる
【0059】
本発明の複層塗膜の形成方法は、上記工程(1)の後、上記工程(2)の前にプレヒート工程を含むものである。なお、プレヒートの際の加熱温度は、適宜設定すればよいが、40〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。プレヒートの方法については、特に制限はなく、例えば、熱風乾燥法、赤外線乾燥法など公知の方法を採用すればよい。
【0060】
プライマー塗膜は、乾燥膜厚で10〜30μmであることが好ましい。10μm未満では隠ぺい性不足となり、30μmを超えるとワキやタレが発生し易くなる。好ましくは15〜20μmである。上記乾燥膜厚は、SANKO社製SDM−miniRを用いて測定することができる。
【0061】
(カラーベース塗料組成物)
水性カラーベース塗料組成物を塗布する工程(2)は、上記工程(1)及びプレヒートを行った基材上に対して塗装を行う工程である。上記水性カラーベース塗料は、上述したように塗装直後の塗膜粘度Aを80000〜165000、上記工程(3)を行う直前の塗膜粘度Bを100000以上としたものである。
【0062】
なお、本発明において、塗膜粘度は、以下の方法で測定することができる。
第1ステップ:塗装工程における塗装後の時間(t)分と塗着NV(%)の関係を求める。
A5サイズのブリキ板1(図1)上に、90mm×140mmの大きさのアルミ箔2(図1)をのせ、その上に打ち抜き台紙(外側10.4mm×14.8cm、内側5.4cm×9.8cm)3(図2)を置き、マスキングテープ(図3)にて、アルミ箔と抜き打ち台紙をブリキ板上に固定し、試験板とする。初期アルミ箔の重量をW1とする。
【0063】
上記の如く作成した試験板上に、所定の塗料を塗装し、測定したい塗装後の時間(分)で溶媒が揮発しないようにアルミ箔を折りたたみ、その重さを0.1mg単位まで精秤する(W2)。この後、アルミ箔を広げ、105〜110℃×3H乾燥後、その重さを0.1mg単位まで精秤する(W3)。次式にて、小数第1位まで算出された値を塗着NV(%)とする。
塗着NV(質量%)=(W3−W1)/(W2−W1)×100 (1)
【0064】
更に複数の塗装後の時間について、上記塗着NVを測定し、その結果をプロットすることによって、時間(t)と塗着NVとの関係を得る。
【0065】
第2ステップ:塗着NV(%)と塗膜粘度(η)の関係を求める。
所定の塗料をブリキ板上にスプレー塗装し、適当にエアーブローにより、塗料中の揮発成分を揮散させて塗料をスパチュラにてかきとり、スクリュー管に採取し、密閉して試料とする。
Haake粘度・粘弾性測定装置レオトレス600(英弘精機株式会社製)を用いて、測定温度20℃での粘度(単位:mPa.s、ズリ速度:10−1sec−1)
を測定する。更に、同サンプルについて塗着NVを測定する。
【0066】
複数の揮散状態のサンプルについて、上記測定を行い、得られた結果に基づいて塗着NVと塗膜粘度(η)との関係をプロットして関係式を得る。
【0067】
第3ステップ:第1及び第2ステップにより、塗装後の時間(t)分と塗膜粘度(η)との関係を求める。
塗装直後の塗膜粘度Aは、塗装後の時間(t)=0分を外挿した時の粘度である。水性マイカベース塗料組成物の塗装直前の塗膜粘度Bは、直接読み取ることにより求めることができる。
【0068】
本発明において、塗膜粘度Aは、80000〜165000であるが、90000〜150000であることがより好ましい。
上記塗膜粘度Bは、100000以上であるが、より高いほうが好ましい。
【0069】
上記水性カラーベース塗料組成物の塗装は、工程(2)における塗装直後と次の工程(3)を行う際の粘性が特定の値を有するものとなるように行う必要がある。このような塗装を行うには、塗料組成物自体の粘性制御及び塗装条件の選定が必要となる。
【0070】
本発明において、水性カラーベース塗料は、ベース用樹脂、着色顔料等を含む公知の水性塗料組成物を用いることができる。上記ベース用樹脂の分子量、組成物中における固形物の割合、増粘剤の種類、配合量等を調整することによって、上述したような粘性挙動を有する塗料を得ることができる。
【0071】
上記ベース用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、繊維素樹脂などが挙げられ、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。また、硬化剤をさらに含むものであってもよい。なかでも、アクリル−メラミン系の塗料であることが好ましい。
【0072】
上記着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、金属錯体顔料などの有機顔料などが挙げられ、また、上記体質顔料としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、シリカなどが挙げられる。これらを、1種のみ、または、2種以上を併用してもよい。
【0073】
更に、水性カラーベース塗料組成物は、必要に応じて、公知の補助配合剤を含有させることができる。補助配合剤としては、例えば、粘度調整剤、無機充填剤、有機改質剤、安定剤、可塑剤、添加剤などが挙げられる。なかでも、粘度調整剤は、粘性を制御するために、添加することが好ましい。
【0074】
上記粘度調整剤としては特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ウレタン会合型増粘剤を挙げることができる。ウレタン会合型増粘剤は、より効果的な構造粘性を付与するという特徴を有するものであることから、これを含有する塗料は本発明の目的に特に適した性質を有する。
【0075】
上記ウレタン会合型増粘剤としては、例えば分子中にウレタン結合とポリエーテル鎖を有する化合物を挙げることができ、一般に水性媒体中において、該ウレタン結合同士が会合することにより、効果的に増粘作用を示すものであると知られている化合物であり、市販品としては「UH−814N」、「UH−462」、「UH−420」、「UH−472」、「UH−540」(以上、旭電化社製)、「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」(以上、サンノプコ社製)等を挙げることができる。
上記粘度調整剤の配合量は特に限定されないが、樹脂固形分に対して0.1〜0.5質量%であることが好ましい。
【0076】
上記水性カラーベース塗料組成物は、水を主溶媒とするものであるが、含まれる水に対して40質量%以下であれば、有機溶剤を含有するものであってもよい。有機溶剤としては上述のものを挙げることができる。
【0077】
上記工程(2)は、上記水性カラーベース塗料組成物を、プライマー塗膜上に塗布する工程である。塗布方法については、静電塗装によって行うことが好ましい。静電塗装を行うことによって、効率よく塗装を行うことができ、1ステージ塗装によって十分な膜厚を得ることができる点で好ましい。また、基本的に工程(2)の後には実質的にプレヒートを行わない。
【0078】
カラーベース塗膜は、乾燥膜厚が10〜30μmであることが好ましく、15〜25μmであることがより好ましい。乾燥膜厚が10μm以上であることにより、成形品表面に、色鮮やかな外観を与えることができる。30μmを超えると、タレ、ワキ等の不具合が発生するため好ましくない。
【0079】
(マイカベース塗料組成物)
本発明は、次に、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)を行うものである。本発明の複層塗膜の形成方法は、上記工程(2)の後、プレヒート工程を含まず、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)を行ってもよい。上記工程(2)と上記工程(3)とを1ステージで行うことができるため、従来の2ステージ塗装装置を使用することができる。
【0080】
本発明において、水性マイカベース塗料組成物は、ベース用樹脂及びマイカ顔料を含有するものであれば特に限定されない。上記ベース用樹脂としては特に限定されず、上述したカラーベース塗料と同様のものを挙げることができる。特に、アクリル−メラミン系の塗料であることが好ましい。
【0081】
上記マイカ顔料を配合することにより、より意匠性・デザイン性に優れた真珠調光沢塗膜を得ることが可能となる。マイカ顔料としては、特に制限はなく、市販品では例えばメルク社製「イリオジン」等が挙げられる。その含有量は、塗料中の全固形分(樹脂固形分及び顔料などその他の固形分)中1〜20質量%であることが好ましい。
【0082】
上記水性マイカベース塗料組成物の塗布方法としては、上記水性カラーベース塗料組成物の塗布方法として挙げた方法と同様、静電塗装を用いることが好ましい。上記工程(3)の塗装においては、乾燥膜厚を5〜20μmとすることが好ましい。
【0083】
マイカベース塗膜は、7〜15μmであることがより好ましい。乾燥膜厚が5μm未満であると目的の色が発現しないおそれがある。また、20μmを超えると、タレ、ワキ等の不具合が発生する場合がある。
【0084】
(クリヤー塗料)
本発明の複層塗膜の形成方法は、上記工程(3)の後にプレヒート工程を行い、さらに、クリヤー塗料組成物を塗布する工程(4)を有するものである。プレヒート工程は、上述した工程(1)後のプレヒートと同様の条件により行うことができる。
【0085】
上記クリヤー塗料組成物は、水性マイカベース未硬化膜上に塗り重ねて、4層塗膜のトップ層(最上層)を形成させるのに用いられる塗料であり、優れた耐候性や耐溶剤性などの物性を硬化塗膜に付与する。
【0086】
上記クリヤー塗料組成物としては特に限定されず、従来公知のものを用いればよいが、例えば、主剤として水酸基を含有するポリオール樹脂を使用し、硬化剤がイソシアネートである2液クリアー塗料(例えば、2液硬化型ウレタン塗料)が好ましい。得られるクリヤー塗膜の外観が良好で、耐酸性にも優れたものとなるからである。前記主剤として使用されるポリオール樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等を使用することができる。
【0087】
上記硬化剤として用いるイソシアネートとしては、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する無黄変タイプの化合物(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどのアダクト体、ヌレート体、ビューレット体など)などを挙げることができる。市販の硬化剤としては、例えば、住化バイエル社製のディスモジュール3600やスミジュール3300、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、三井武田ケミカル社製のタケネートD−140NL、D−170N、旭化成社製のデュラネート24A−90PX、THA−100などを挙げることができる。
市販のクリヤー塗料としては、例えば、2液硬化型ウレタン塗料である日本ビー・ケミカル社製のR2500−1などを挙げることができる。
【0088】
さらに硬化促進剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤、潤滑剤、UV吸収剤等従来公知の添加剤や有機溶剤を必要に応じて使用される。
【0089】
上記クリヤー塗料組成物の塗布方法としては特に限定されず、たとえば、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装やベル塗装等を採用することができる。
【0090】
以上のようにして、基材の表面に、白色導電プライマー、水性カラーベース塗料組成物、水性マイカベース塗料組成物及びクリヤー塗料組成物をこの順番に塗り重ねて、各塗料成分からなる4層の未硬化膜を形成し、次の焼き付け工程(5)が行われる。
各塗料組成物の選択に当たっては、焼き付け工程で十分に硬化乾燥できる塗料を選択する必要がある。乾燥が不充分で水または溶剤が硬化塗膜内部に残存すると、硬化塗膜において、耐水性及び耐溶剤性などの性能が低下し易くなる。
【0091】
クリヤー塗膜の乾燥膜厚は、20〜50μmであることが好ましい。上記範囲外であると、肌荒れなどの外観低下やタレ、ワキなどの作業性不良が発生するおそれがある。
【0092】
焼き付け工程(5)は、上記4層の未硬化膜を同時に焼き付けて、プライマー塗膜、水性カラーベース塗膜、水性マイカベース塗膜及びクリヤー塗膜の4層から構成される硬化塗膜を形成する工程である。
【0093】
焼き付け温度は、迅速な硬化とポリプロピレン成型品の変形防止との兼ね合いから、例えば、110〜130℃とすることが好ましい。好ましくは、120〜130℃である。焼き付け時間は、通常10〜60分間であり、好ましくは15〜50分間、さらに好ましくは20〜40分間である。焼き付け時間が10分間未満であると、塗膜の硬化が不充分であり、硬化塗膜の耐水性及び耐溶剤性などの性能が低下する。他方、焼き付け時間が60分間を超えると、硬化しすぎでリコートにおける密着性などが低下し、塗装工程の全時間が長くなり、エネルギーコストが大きくなる。なお、この焼付け時間は、基材表面が実際に目的の焼き付け温度を保持しつづけている時間を意味し、より具体的には、目的の焼き付け温度に達するまでの時間は考慮せず、目的の温度に達してから該温度を保持しつづけているときの時間を意味する。
【0094】
塗料の未硬化膜を同時に焼き付けるのに用いる加熱装置としては、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線などの加熱源を利用した乾燥炉などが挙げられ、また、これら加熱源を2種以上併用した乾燥炉を用いると、乾燥時間が短縮されるため好ましい。
【0095】
本発明の塗膜形成方法を適用することができるプラスチック成形体のプラスチック基材はポリプロピレンである。このようなポリプロピレン性の被塗装物としては、バンパー等の自動車部品等を挙げることができる。
【実施例】
【0096】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0097】
製造例1 アクリル樹脂粒子水分散体aの製造
脱イオン水118部とPVA218EE(クラレ社製のポリビニルアルコール)6部とニューコール714(日本乳化剤社製のアニオン性界面活性剤)3部との混合物に、アクリル系単量体成分としてのメタクリル酸グリシジル30部、メタクリル酸ラウリル13部、アクリル酸n−ブチル1部およびスチレン56部、ならびに、ラジカル重合開始剤としてのラウリルパーオキサイド2部を混合したものを加えた。これをホモジナイザーを用いて8000rpmで30分間攪拌して、原料分散液を得た。SALD−2200(島津製作所性レーザ回折式粒度分布測定装置)を用いて測定した原料分散液中の樹脂粒子の平均粒径は0.5μmであった。この原料分散液を、80℃に加熱した脱イオン水137部に、攪拌しながら2時間かけて滴下し、滴下終了後、そのまま4時間攪拌を継続した。冷却後、400メッシュの篩でろ過してアクリル樹脂粒子水分散体aを得た。この水分散体中のアクリル樹脂粒子の平均粒径をSALD−2200を用いて測定したところ、0.8μmであった。
【0098】
製造例2 酸無水物変性塩素化ポリオレフィンの製造
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた反応容器に、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン「スーパークロン892LS」(日本製紙社製、塩素含有率22%、重量平均分子量7万〜8万)288部、界面活性剤「エマルゲン920」(花王社製)62部、芳香族炭化水素溶剤「ソルベッソ100」(エクソン社製)74部、酢酸カービトール32部を仕込み、110℃まで昇温し、この温度で1時間加熱して樹脂などを溶解させたのち、100℃以下に冷却した。次いで、ジメチルエタノールアミン6部を溶解させたイオン交換水710部を冷却しながら1時間かけて滴下し、転相乳化した。その後、室温(25℃)まで冷却し、400メッシュの金網でろ過して、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンエマルションを得た。このエマルションの不揮発分は30重量%であった。
【0099】
製造例3 ポリウレタンディスパージョンの製造
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管、サンプル採取管及び冷却管付き還流装置を備えた耐圧反応容器に、窒素ガスを通じながらアジピン酸1100部と3−メチルー1,5−ペンタンジオール900部と、テトラブチルチタネート0.5部とを仕込み、容器内液の反応温度を170℃に設定し、脱水によるエステル化反応を行い、酸価が0.3mgKOH/g以下になるまで継続した。次いで、180℃、5kPa以下の減圧条件下で2時間反応を行い、水酸基過112mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/gのポリエステルを得た。次いで、上記反応容器と同じ装置のついた別の反応容器に、このポリエステルポリオール500部と、5−スルホソジウムイソフタル酸ジメチル134部及びテトラブチルチタネート2部を仕込み、上記と同じようにして、窒素ガスを通じながら、反応容器を180℃に設定してエステル化を行い、最終的に重量平均分子量2117、水酸基価53mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/gのスルホン酸基含有ポリエステルを得た。
【0100】
上記スルホン酸基含有ポリエステル280部、ポリブチレンアジペート200部、1,4―ブタンジオール35部、ヘキサメチレンジイソシアネート118部及びメチルエチルケトン400部を、攪拌羽根、温度計、温度制御装置、滴下装置、サンプル採取口及び冷却管付き反応容器に窒素ガスを通じながら仕込み、攪拌しながら液温を75℃に保持してウレタン化反応を行い、NCO含有率が1%であるウレタンポリマーを得た。続いて、上記反応容器中の液温を40℃に下げて、十分攪拌しながらイオン交換水955部を均一に滴下して転相乳化を行った。次いで、内部温度を下げて、アジピン酸ヒドラジド13部とイオン交換水110部とを混合したアジピン酸ヒドラジド水溶液を添加してアミン伸張を行った。次いで、若干の減圧状態で60℃に温度をあげて脱溶剤を行い、終了した時点で、ポリウレタンディスパージョンの固形分が35%になるようにイオン交換水を追加して、スルホン酸基含有ポリウレタンディスパージョンを得た。ディスパージョン中のポリウレタン樹脂の酸価は、11mgKOH/gであった。
【0101】
製造例4 顔料分散ペーストの製造
製造例4−1 顔料分散樹脂の製造
攪拌羽根、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル55部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下120℃まで昇温した。つぎに、2−ヒドロキシメチルメタクリレート12部、メタクリル酸9部、イソブチルメタクリレート35部、n−ブチルアクリレート44部からなる重合性モノマー混合物と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート1部をプロピレングリコール8部に溶解した溶液とを、内部攪拌にてそれぞれ3時間かけて滴下した。次いで、滴下終了後、120℃の状態で1時間熟成反応を行ったのち、さらに、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート0.1部をプロピレングリコール4部に溶解した溶液を、1時間かけて反応容器に滴下した。いずれの場合も内部攪拌状態と液温120℃を維持していた。その後、攪拌しながら、120℃で2時間熟成し、ついで、内部温度を70℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノール9.5部を滴下して30分攪拌した。さらに内部温度を70℃に保持して攪拌しながら、イオン交換水167部をゆっくりと滴下し、室温(25℃)まで冷却し、水溶性アクリル樹脂溶液を得た。イオン交換水を用いて、不揮発分を30%に調整し、これを、以下の顔料分散ペーストにおけるプライマー用顔料分散樹脂として用いた。得られた顔料分散樹脂(水溶性アクリル樹脂溶液)のpHは8.2で、アクリル樹脂の重量平均分子量は42000であった。
【0102】
製造例4−2 顔料分散ペーストの製造
攪拌機のついたステンレス製の円筒攪拌槽に、上記のようにして得たプライマー用顔料分散樹脂13.0部を仕込み、攪拌しながら、イオン交換水20部を添加した。次いで、顔料分散剤「SURFYNOL GA」(エアープロダクツ社製、不揮発分78%)2.0部を攪拌しながら添加した。十分攪拌しながら、消泡剤「ノプコ8034−L」(サンノプコ社製、不揮発分100%)0.4部を添加した。ついで、攪拌を続けながら、白色導電剤としての酸化チタン「ET−500W」(石原産業社製、平均1次粒子径0.2〜0.3μm)59部、イオン交換水2.6部、メラミン樹脂「サイメル701」(日本サイテック社製、不揮発分82%)3部を順次添加し、十分攪拌しながら、全体に均一になるまで15分間攪拌を続け、顔料ミルベースを作製した。このものの不揮発分は、67.4%であり、顔料濃度(PWC)87.6%であった。
【0103】
製造例5 白色導電プライマーの製造
攪拌装置のついたステンレス製容器に、表1に示した各成分を順次投入し、混合することで白色導電プライマーを得た。
【0104】
【表1】

(単位:質量部)
【0105】
製造例6 水性アクリル樹脂の製造
製造例6−1 水性アクリル樹脂Bの調製
攪拌機、温度計、還流管、滴下ロート、窒素導入管及びサーモスタット付き加熱装置を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルグリコールエーテル(EHG)27部を仕込み、攪拌しながら内部液温を徐々に昇温して、110℃まであげた。窒素を反応容器内に流しながら、窒素気流下でメタクリル酸(MAA)5部、2−ヒドロキシアクリレート(HEA)8部、メチルメタクリレート(MMA)30部、エチルアクリレート(EA)57部からなるモノマー混合溶液と、ラジカル重合触媒ターシャリーブチルパーオキシヘキサナート(TBPH)1.5部及びEHG10部からなる溶液をそれぞれ2つの滴下ロートに別々にいれ、3時間かけて滴下した。滴下の間、反応容器内の液温を110℃近辺に保持した。滴下終了後さらに110℃に維持しながら、TBPH0.5部及びEHG5部からなる重合触媒液を1時間かけて滴下した。
【0106】
その後、さらに反応液を110℃に維持しながら1時間熟成した後、液温を70℃まで下げて、EHG2部、メトキシプロパノール(MP)30部を添加して希釈した。続いて、減圧下で液温を70℃に保持しながら脱溶剤を行い、主にMPを留出させて約2時間かけて留分が25部の時点で脱溶剤を終了した。
【0107】
反応容器内の溶剤樹脂の不揮発分は67.5%であった。このものの酸価は30、ヒドロキシル価は39であった。またGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)にて、スチレン換算法により測定した結果、重量平均分子量は40,000であった。ついで内部温度を70℃にして、ジメチルエタノールアミン5部を反応容器樹脂に加えた後、攪拌しながら純水370部を徐々に反応容器内に加えていき、強制攪拌により水性アクリル樹脂Bを得た。この水性アクリル樹脂Bの不揮発分は19%であった。
【0108】
製造例6−2 水性アクリル樹脂Aの調製
モノマー混合溶液として、MAA8部、HEA15部、MMA15部、EA52部、スチレン10部(計100部)からなるものを用いること、モノマー混合溶液と同時に滴下する混合液の組成がEHG10部、TBPH3部であること以外は、水性アクリル樹脂Bと同じ手法・順序でもって水性アクリル樹脂Aを得た。
【0109】
脱溶剤後における不揮発分は68%であった。このものの酸価は53、ヒドロキシル価は67であった。またGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)にて、スチレン換算法により測定した結果、重量平均分子量は27,000であった。
【0110】
水性アクリル樹脂Aを調製するにあたり、水性化は、内部温度を70℃にして、ジメチルエタノールアミン9部を反応容器樹脂に加えた後、攪拌しながら純水182部を徐々に反応容器内に加えていき、強制攪拌を行うことにより行った。この水性アクリル樹脂Aの不揮発分は30%であった。
【0111】
製造例6−3 水性アクリルエマルションの製造
イオン交換水127部を仕込んだ反応容器に、アデカリアソープNE−20(旭電化社製α−{1−[(アリルオキシ)メチル]−2−(ノニルフェノキシ)エチル}−ω−ヒドロキシオキシエチレン、商品名、固形分80重量%水溶液)0.2部と、アクアロンHS−10(第一工業製薬社製ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル、商品名)0.2部とを加え、窒素気流中で混合攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、第1段目のα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物として、アクリル酸メチル18.5部、アクリル酸エチル31.7部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5.8部、スチレン10.0部、アクリルアミド4.0部、アデカリアソープNE−20を0.3部、アクアロンHS−10を0.2部、及びイオン交換水70部からなるモノマー混合物と、過硫酸アンモニウム0.2部、及びイオン交換水7部からなる開始剤溶液とを2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。
【0112】
更に、80℃で第2段目のα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物として、アクリル酸エチル24.5部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル2.5部、メタクリル酸3.1部、アクアロンHS−10を0.3部、及びイオン交換水30部からなるモノマー混合物と、過硫酸アンモニウム0.1部、及びイオン交換水3部からなる開始剤溶液とを0.5時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
【0113】
次いで、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した。更に10重量%ジメチルアミノエタノール水溶液を加えpH7に調整し、平均粒子径110nm、不揮発性分30%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価40、Tg0℃のアクリルエマルションを得た。
【0114】
製造例7 水性カラーベース塗料組成物の調製
表2及び3に示した組成に基づき、攪拌機を備えた容器に、水性アクリル樹脂A、水性アクリル樹脂B、水性アクリルエマルション、メラミン樹脂(XM2677、日本サイテック社製)、10%DMEAのアミン水液(4部)を攪拌しながら仕込んだ。更に、攪拌を続けながら、EHG、ウレタンディスパージョン(ネオレッツR972、アビシア製)、増粘剤(アデカノールUH752、ADEKA社製)、白顔料ペースト、脱イオン水とを加えることにより、水性カラーベース塗料組成物を得た。表2中の数値は、質量部である。なお、上記白顔料ペーストは、水性アクリル樹脂A15.2部、脱イオン水17.3部、及び、タイペークCR―97(石原産業社製二酸化チタン)67.5部を順次添加し、充分攪拌しながら全体に均一になるまで15分間攪拌を続けて得られたものを使用した。
【0115】
得られた水性カラーベース塗料組成物の初期NV、塗装直後の塗膜粘度A及びNV、並びに、マイカベース塗料組成物の塗装直前の塗膜粘度B及びNVを測定し、結果を表2及び3に示した。なお、塗膜粘度A及び塗膜粘度Bは、上述のカラーベース塗装後の時間(t)分と塗膜粘度(η)の関係より算出した。なお、塗装後2分における塗膜粘度を読み取り、塗膜粘度Bとした。
【0116】
実施例1〜4、比較例1、2(静電塗装)
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン素材(70mm×150mm×3mm)の表面に、25℃/70%RHの環境下で、「ワイダ―71」(アネスト磐田社製)により上記白色導電プライマーをスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、80℃で5分間乾燥した。その後、上記水性カラーベース塗料組成物を同じ環境下で、新カートリッジベルを使用して静電塗装(ガン距離:200mm、ガン速度:900mm/s、印加電圧:−60kV、回転数:35000rpm、シェーピングエアー圧:0.15MPa)条件下でスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、2分後プレヒート工程を行うことなく、水性マイカベース塗料組成物(日本ペイント社製AR2000♯7A21)をカラーベース塗料組成物と同様の条件下でスプレー塗装(乾燥膜厚13μm)した。80℃で5分間乾燥した後、その上に、クリヤー塗料「R2500−1」(日本ビー・ケミカル社製のアクリル系クリヤー主剤と日本ビー・ケミカル社製のイソシアネート硬化剤「H−2500硬化剤」からなるもの)を、ロボベル951を使用して静電塗装(ガン距離:200mm、ガン速度:700mm/s、印加電圧:−60kV、回転数:25000rpm、シェーピングエアー圧:0.07MPa)条件下でスプレー塗装(乾燥膜厚25μm)した。その後、10分間セッティングした後、120℃で35分間乾燥し、複層塗膜を形成した。
【0117】
実施例5〜7、比較例3〜5(非静電塗装)
水性カラーベース塗料組成物及び水性マイカベース塗料組成物の塗装方法を印加電圧を0にし、吐出量を1.4倍に増やしたこと以外は、実施例1と同様にして複層塗膜を形成した。
【0118】
[仕上がり評価]
得られた複層塗膜の表面を目視にて以下の基準に基づき評価した。結果を表2及び3に示す。
○:良好
△:やや良好
×:不良
【0119】
【表2】

【0120】
【表3】

【0121】
表2及び3より、本発明の複層塗膜の形成方法により得られた複層塗膜は、仕上がり外観に優れたものであることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明にかかる複層塗膜の形成方法は、例えば、バンパー等のポリプロピレン素材からなる基材表面に複層塗膜を形成する方法として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン素材からなる成型品の複層塗膜形成方法であって、
基材上に、白色導電プライマーを塗布する工程(1)、水性カラーベース塗料組成物を塗布する工程(2)、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)、クリヤー塗料組成物を塗布する工程(4)、及び、焼き付け工程(5)からなり、
前記工程(1)及び工程(2)の間、並びに、前記工程(3)及び(4)の間にプレヒート工程を含み、
前記水性カラーベース塗料組成物は、塗装直後の塗膜粘度Aが80000〜165000であり、前記工程(3)を行う直前の塗膜粘度Bが100000以上である
ことを特徴とする複層塗膜の形成方法。
【請求項2】
工程(2)及び工程(3)の間にプレヒート工程を含まず、前記工程(2)及び前記工程(3)が1ステージで行われる請求項1記載の複層塗膜の形成方法。
【請求項3】
プライマー塗膜は、L、a、b色相空間でのL値が80以上である請求項1又は2記載の複層塗膜の形成方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−240266(P2011−240266A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115212(P2010−115212)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(593135125)日本ビー・ケミカル株式会社 (52)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】