説明

複層塗膜の形成方法

【課題】塗料選択の制約が少なく、プラスチック素材に適した充分な耐屈曲性を有する複層塗膜を得ることができる複層塗膜の形成方法を提供する。
【解決手段】プラスチック素材からなる成型品の複層塗膜形成方法であって、基材上に、水性プライマーを塗布する工程(1)、水性カラーベース塗料組成物を塗布する工程(2)、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)及びクリヤー塗料組成物を塗布する工程(4)からなり、上記水性プライマーの塗膜伸び率が10〜120%上記水性カラーベース塗料組成物の塗膜伸び率が2〜8%、上記水性マイカベース塗料組成物の塗膜伸び率が10〜20%、上記クリヤー塗料組成物の塗膜伸び率が10〜50%、であり、上記水性カラーベース塗料は、カルボジイミド化合物を含有するものであることを特徴とする複層塗膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層塗膜の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられる部材としては、ボディー等を構成する鋼板と、バンパー等を構成するプラスチック素材が挙げられる。これら二つの部材には、熱に対する強度や膨張率において大きな差があるため、それぞれの部材に適した塗料組成物を用いて塗装を行うのが現状である。プラスチック素材においては、柔軟性を有する素材であるため、プラスチック素材に追従しうる耐屈曲性に優れた塗膜を形成する必要があり、耐屈曲性が塗膜の重要な要求品質となっている。また、環境を保護するという意味で水性塗料を用いることが多くなっている。特に、プライマー、カラーベース、及びマイカベースでは水性塗料を用いることが行われている。
【0003】
プラスチック素材の塗装系としては、プライマー塗装―ベース塗装―クリヤー塗装の3層からなる塗装系や、プライマー塗装―カラーベース塗装―マイカベース塗装―クリヤー塗装の4層からなる塗装系等が挙げられる。
従来のプラスチック素材の塗装系では、耐屈曲性に優れた複層塗膜を形成するために、すべての塗装段階で伸び率が高い塗膜を形成する方法が行われていた。このため、塗料選択が制約されるという問題があり、特に上述のような4層からなる塗装系では、使用する塗料が多いために、塗料選択の幅が更に狭められることに留意する必要があった。
【0004】
プライマー塗装−カラーベース塗装−マイカベース塗装−クリヤー塗装を順次行う方法としては、特許文献1に白色導電プライマー塗装―カラーベース塗装−干渉色ベース塗装−クリヤー塗装を順次行う方法が開示されている。しかしながら、特許文献1は、塗膜の伸び率については検討されていない。
【0005】
自動車ボディの塗装用の複層塗膜において、カルボジイミドを含有する塗料組成物を使用することが特許文献2に記載されている。このような塗料組成物を使用すると、複層塗膜間の混層を防止することができるという利点を有する。しかしながら、プラスチック製品の塗装においては、上述したような耐屈曲性が必要とされる。カルボジイミドを含有する塗料組成物によって形成された塗膜は、耐屈曲性が充分に高いものではない場合があり、自動車ボディ用のものをそのままプラスチック製品の塗装に使用することは難しい場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−262988号公報
【特許文献2】特開2009−262002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑み、塗料選択の制約が少なく、カルボジイミドを含有する塗料組成物をカラーベース塗料として使用しつつ、プラスチック素材に適した充分な耐屈曲性を有する複層塗膜を得ることができる複層塗膜の形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
プラスチック素材からなる成型品の複層塗膜形成方法であって、
基材上に、水性プライマーを塗布する工程(1)、水性カラーベース塗料組成物を塗布する工程(2)、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)及びクリヤー塗料組成物を塗布する工程(4)からなり、
上記水性プライマーの塗膜伸び率が10〜120%
上記水性カラーベース塗料組成物の塗膜伸び率が2〜8%、
上記水性マイカベース塗料組成物の塗膜伸び率が10〜20%、
上記クリヤー塗料組成物の塗膜伸び率が10〜50%、
であり、上記水性カラーベース塗料は、カルボジイミド化合物を含有するものであることを特徴とする複層塗膜の形成方法である。
【0009】
上記カルボジイミド化合物は、下記一般式(1);
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、nは1〜5を表し、Rは、同一又は異なって、脂肪族、芳香族、脂環族のアルキレン基を表し、Rは、一般式R−(−O−CH−CH−)−OH(式中、pは6〜20の整数を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表されるポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、及び/又は、下記一般式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、qは15〜60の整数を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルとの混合物の残基を表す。)で表わされる化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複層塗膜の形成方法は、4層塗装系において、水性プライマー、水性カラーベース塗料組成物、水性マイカベース塗料組成物、及び、クリヤー塗料組成物の塗膜伸び率を一定の範囲のものとし、更に、水性カラーベース塗料組成物として、カルボジイミド化合物を含有するものを使用することによって、充分な耐屈曲性、平滑性、耐チッピング性等の各種物性において優れた性能を有する複層塗膜を形成することができるものである。すなわち、本発明により、必ずしもすべての工程で塗膜伸び率の高い塗料を使用する必要がなくなり、塗料選択の制約を緩和しつつ、プラスチック素材に適した要求品質を満たすことができる優れた方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】塗膜伸び率を測定する際の試料の作成方法
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、水性プライマー、水性カラーベース塗料組成物、水性マイカベース塗料組成物、及び、クリヤー塗料組成物の塗膜伸び率を一定の範囲にし、かつ、水性カラーベース塗料組成物としてカルボジイミド化合物を含有するものを使用することで、カラーベース塗膜選択の自由度を高め、かつ、充分な耐屈曲性を有し、チッピング性能においても優れた性能を有する複層塗膜を得ることができるものである。
【0017】
本発明においては、各塗料組成物の塗膜伸び率が重要な特性となる。ここで、本明細書における塗膜伸び率は、下記の方法により測定したものである。
水性プライマー塗料組成物については剥離可能なポリテトラフルオロエチレンシート板上に、水性カラーベース塗料組成物、水性マイカベース塗料組成物、クリヤー塗料組成物については剥離可能なPP板上に、スプレー塗装により乾燥膜厚30μmとなるように塗布した後、120℃で35分間乾燥し、塗膜を得る。なお、ゴミ、ブツ、ハジキ、ワキ、キズ等の不良があるものは評価しないこととする。
得られた塗膜を室温で24時間放置した後、図1に示したような幅10mmの棒状に切り取り、両端にマスキングテープ(幅30mm)を貼付後、マスキングテープの半分で裏面へ折り返したものを試料とした。作成した試料を島津製作所社製 AUTO GRAPH AG−ISを用いて、20℃、65%RH、引っ張りスピード5mm・minで一試料につき5サンプル測定して、その平均値を算出した。
【0018】
本発明においては、水性プライマー及びクリヤー塗料組成物によって伸び率が高い柔軟な塗膜を形成し、水性カラーベース塗料において、伸び率が低い硬い塗膜とするものである。このようにすることで、耐チッピング性良好な複層塗膜を得ることができる。これによって、一部に伸び率が低い硬い塗膜層を有するものでありながら、耐屈曲性に優れ、かつ、耐チッピング性能を向上することができ、バランスのよい物性を有する複層塗膜を形成することができるものと推測される。また、カルボジイミド化合物を使用することで、塗膜間の混層を防止することができ、外観においても優れた性能を得ることができる。
【0019】
また、これによって塗料選択の幅が広くなり、既存の塗料を従来よりも自由に組み合わせることができるようになる。
【0020】
更に、水性カラーベース塗料組成物としてカルボジイミドを含有するものを使用することも特徴である。カルボジイミドは、硬化速度が速いため、これをカラーベース塗料において使用することで、下層が早く硬化することとなり、これによって外観特性を向上させることができるものである。また、界面制御によりカラーベースとマイカベースの混層を抑制し作業性の巾が広がるという利点も有する。
【0021】
本発明の複層塗膜の形成方法によって形成された複層塗膜は、上記プライマーの塗膜伸び率が10〜120%のものである。上記プライマーの伸び率が10%未満であると、屈曲性が悪化するおそれがあるという点で好ましくない。上記プライマーの伸び率が120%を超えると、密着性が悪化するおそれがあるという点で好ましくない。
上記下限は、15%であることがより好ましく、20%であることが更に好ましい。上記上限は、100%であることがより好ましく、90%であることが更に好ましい。
【0022】
本発明の複層塗膜の形成方法によって形成された複層塗膜は、上記水性カラーベース塗料の塗膜伸び率が2〜8%のものである。上記水性カラーベース塗料の伸び率が2%未満であると、屈曲性が悪化するおそれがあるという点で好ましくない。上記水性カラーベース塗料の伸び率が8%を超えると、仕上がり外観が低下するおそれがあるという点で好ましくない。
上記下限は、3%であることがより好ましく、4%であることが更に好ましい。
上記上限は、7%であることがより好ましく、6%であることが更に好ましい。
【0023】
本発明の複層塗膜の形成方法によって形成された複層塗膜は、上記水性マイカベース塗料の塗膜伸び率が10〜20%のものである。上記水性マイカベース塗料の伸び率が10%未満であると、屈曲性が悪化するおそれがあるという点で好ましくない。上記水性マイカベース塗料の伸び率が20%を超えると、耐チッピング性が悪化するおそれがあるという点で好ましくない。
上記下限は、11%であることがより好ましく、12%であることが更に好ましい。
上記上限は、19%であることがより好ましく、18%であることが更に好ましい。
【0024】
本発明の複層塗膜の形成方法によって形成された複層塗膜は、上記クリヤー塗料の塗膜伸び率が10〜50%のものである。上記クリヤー塗料の伸び率が10%未満であると、屈曲性が悪化するおそれがあるという点で好ましくない。上記クリヤー塗料の伸び率が50%を超えると、耐溶剤性が劣るものになるおそれがあるという点で好ましくない。
上記下限は、15%であることがより好ましく、20%であることが更に好ましい。
上記上限は、45%であることがより好ましく、40%であることが更に好ましい。
【0025】
これによって、例えば、自動車のボディとバンパーの一体塗装を行う場合、水性カラーベース塗料の塗装以降の工程において、鋼板上とバンパー上の両方に適応した好適な塗装を行うことも可能となる。また、硬度が高い塗料組成物を使用することもできるため、複層塗膜の抗張力が増大し、耐チッピングを高めることもできる。
【0026】
本発明において、各塗料組成物の塗膜伸び率は、塗料組成物の組成の調整、使用する樹脂の組成を当業者に周知の方法で調整することによって、所定の範囲に調整することができる。また、塗料用アルキド樹脂、塗料用ポリエステル樹脂、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールやその混合物等のソフトナーを使用して調整することもできる。
【0027】
以下に、本発明の工程(1)〜工程(4)において塗装される水性プライマー、水性カラーベース塗料組成物、水性マイカベース塗料組成物、クリヤー塗料組成物について、それぞれ詳述する。
【0028】
(水性プライマー)
上記水性プライマーとしては特に限定されないが、プラスチック素材に導電性を付与することができるものが好ましい。なかでも、水性白色導電プライマーであることが好ましく、例えば、プライマー用樹脂及び導電剤(アンチモンドープ酸化スズ処理酸化チタン)、さらに必要に応じて白色顔料や、その他の原料を含んだものを挙げることができる。
【0029】
上記水性白色導電プライマー中の水の配合割合は、白色導電プライマー全体に対して、好ましくは45〜90質量%、さらに好ましくは50〜80質量%である。水の配合割合が45質量%未満であると、粘度が高くなり、貯蔵安定性や、塗装作業性が低下する。他方、水の配合割合が90質量%を超えると、不揮発分量の割合が低下し、塗装効率が悪くなり、タレ、ワキなどの外観異常が生じやすくなる。上記水性白色導電プライマーは、有機溶剤をさらに含んでもよく、その配合割合は、通常、含まれる水に対して40質量%以下である。
【0030】
上記水性白色導電プライマーのプライマー用樹脂成分としては、酸変性塩素化ポリオレフィン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂;水性アルキッド樹脂、水溶性アクリル樹脂等の顔料分散樹脂などを用いることが好ましい。これらのすべてを含有するものであってもよい。
【0031】
本発明において、上記工程(1)は、上記水性プライマーを基材表面に塗布する工程である。上記プライマーは、例えば、スプレー塗装やベル塗装などの手法で塗ることができる。上記基材は、必要に応じて、洗浄、脱脂しておいてもよい。
【0032】
本発明の複層塗膜の形成方法は、上記工程(1)の後、上記工程(2)の前にプレヒート工程を含むものであることが好ましい。なお、プレヒートの際の加熱温度は、適宜設定すればよいが、40〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。プレヒートの方法については、特に制限はなく、例えば、熱風乾燥法、赤外線乾燥法など公知の方法を採用すればよい。
【0033】
プライマー塗膜は、乾燥膜厚で5〜30μmであることが好ましい。5μm未満では隠ぺい性不足となり、30μmを超えるとワキやタレが発生し易くなる。好ましくは10〜20μmである。上記乾燥膜厚は、SANKO社製SDM−miniRを用いて測定することができる。
【0034】
(水性カラーベース塗料組成物)
本発明において、水性カラーベース塗料としてはカルボジイミド化合物を含む塗料組成物を使用する。
カルボジイミド化合物は、−N=C=N−の構造式で示される構造を分子中に1又は2以上有する化合物である。
【0035】
本発明のカルボジイミド化合物は、下記の一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
【0036】
【化3】

【0037】
(式中、nは1〜5を表し、Rは、同一又は異なって、脂肪族、芳香族、脂環族のアルキレン基を表し、Rは、一般式R−(−O−CH−CH−)−OH(式中、pは6〜20の整数を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表されるポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、及び/又は、下記一般式(2):
【0038】
【化4】

【0039】
(式中、qは15〜60の整数を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルとの混合物の残基を表す。)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0040】
式中、Rは、同一又は異なって、脂肪族、芳香族、脂環族のアルキレン基を表わすものであるが、通常、上記カルボジイミド化合物の製造の原料となるポリイソシアネート化合物のアルキル基となる。よって、汎用されるジイソシアネート化合物である、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネートなどの芳香族のもの;イソホロンジイソシアネートなどの脂環族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族のもののうち、イソシアネート基を除いた残基の構造を挙げることができる。
なかでも、下記一般式(3)
【0041】
【化5】

【0042】
で表わされる4、4’−ジシクロヘキシルメタン基であることが物性発現という点で好ましい。
【0043】
また、上記水性カラーベース塗料は、水性塗料における配合が容易である点から、上述したようなポリエチレングリコール基やポリプロピレングリコール基を分子中に有するカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。
【0044】
上記カルボジイミド化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、有機ジイソシアネートの脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネート末端ポリカルボジイミドの合成を行い、次いで、末端基となるR基を有する化合物を当該イソシアネート末端ポリカルボジイミドと反応させる合成方法を挙げることができる。
【0045】
上記イソシアネート末端カルボジイミドの製造は、基本的には従来のポリカルボジイミドの製造方法(米国特許第2,941,956号明細書や特公昭47−33279号公報、J. Org. Chem., 28, 2069〜2076(1963)、 Chemical Review 1981、 vol. 81、 No. 4,619〜4,621参照)によって行うことができる。
【0046】
上記ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応は、カルボジイミド化触媒の存在下に進行するが、この触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1ーフェニル−2−ホスホレン−1−オキシド或はこれらの3−ホスホレン異性体等の、ホスホレンオキシドを使用することができ、反応性の面からは3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好適である。
【0047】
上記縮合反応における反応温度としては、80℃〜180℃の範囲内とすることが好ましく、反応温度がこの範囲を下回ると反応時間が極めて長くなり、反応温度が上記範囲を上回ると、副反応が起こって良質のカルボジイミドは得られなくなり、いずれの場合も好ましくない。
【0048】
更に、縮合度は1〜5が好ましく、縮合度が5を超える場合は、上記一般式(1)で示されるカルボジイミドを水性塗料へ添加するときの分散性が低下し、又、一般式(1)で示されるカルボジイミドを予め水溶液或いは水分散液とする場合、分散性が低いために良好な水溶液或いは水分散液が得られない。なお、反応を速やかに完結させるためには、上記般式(1)で示されるカルボジイミドの反応は窒素等の不活性ガスの気流下で行うことが好ましい。
【0049】
上記一般式(1)で示されるカルボジイミド化合物は、上述した方法によって合成されたイソシアネート末端ポリカルボジイミドに一般式R−(−O−CH−CH−)−OH(式中、pは6〜20の整数を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表されるポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、一般式:
【0050】
【化6】

【0051】
(式中、qは15〜60の整数を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、又は、これらの混合物と反応させることによって得られるものである。尚、上記式(1)中、nは1〜5の整数を表す。
【0052】
一般式R−(−O−CH−CH−)−OH(式中、pは6〜20の整数を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表されるポリエチレングリコールモノアルキルエーテルは、具体的にはポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル、ポリ(エチレンオキサイド)モノエチルエーテル、ポリ(エチレンオキサイド)モノプロピルエーテル等を挙げることができ、特にポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテルが好適である。
【0053】
一般式:
【化7】

【0054】
(式中、qは15〜60の整数を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルは、具体的にはポリ(プロピレンオキサイド)モノメチルエーテル、ポリ(プロピレンオキサイド)モノエチルエーテル、ポリ(プロピレンオキサイド)モノフェニルエーテル等を挙げることができ、特にポリ(プロピレンオキサイド)モノメチルエーテルが好適である。
【0055】
本発明において、上記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルとの混合モル比率が、60:40〜40:60の割合で混合して使用することが好ましく、50:50の割合で使用するのがより好ましい。上記範囲外の場合、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの割合が少なくなる(ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルの割合が多くなる)と、親水性が低下して、水に分散しないか、分散したとして貯蔵安定性が十分でないおそれがある。一方、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの割合が多くなる(ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルの割合少なくなる)と、親水性が増加して、水と親和しやすくなり、カルボジイミド基が失活してしまうおそれがある。
【0056】
上記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルを併用して使用する場合には、これらを同時にイソシアネート末端ポリカルボジイミドと反応させるものであってもよいし、順次反応させるものであってもよい。
【0057】
上記イソシアネート末端カルボジイミドと、上記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルとの混合物との付加反応には、一般的に触媒が使用される。
【0058】
上記反応の反応温度としては、60℃〜160℃の範囲内、好ましくは100℃〜150℃の範囲内であり、反応温度がこの範囲を下回ると反応時間が極めて長くなり、逆に反応温度が上記範囲を上回ると、副反応が起こって良質のカルボジイミド組成物が得られなくなり、いずれの場合も好ましくない。
【0059】
上述したようなカルボジイミド化合物は、反応系から通常の方法に従って単離することができ、その構造が一般式(1)で表されることは、赤外線吸収(IR)スペクトル及び核磁気共鳴吸収(NMR)スペクトルによって支持される。
【0060】
上記水性カラーベース塗料は、上述したカルボジイミド化合物に加えて、更に、水酸基およびカルボキシル基含有アクリル樹脂並びに硬化剤を含有するものであることが好ましい。
【0061】
水酸基およびカルボキシル基含有アクリル樹脂は、水溶性樹脂、水分散性樹脂、樹脂エマルション等の形態とすることができるが、なかでも、樹脂エマルションであることが好ましい。
【0062】
水酸基およびカルボキシル基含有アクリル樹脂エマルションは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(ii)、及び水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(iii)を含むモノマー混合物を乳化重合して得ることができる。尚、モノマー混合物の成分として以下に例示される化合物は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用してよい。尚、本明細書中において、「メタ(アクリル)」とは、アクリルまたはメタクリルの両方を表す。
【0063】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)はアクリル樹脂エマルションの主骨格を構成するために使用する。
【0064】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(i)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0065】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー(ii)は、得られるアクリル樹脂エマルションの保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性を向上させ、塗膜形成時におけるメラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応を促進するために使用する。
【0066】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸及びフマル酸等が挙げられる。
【0067】
水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(iii)は、水酸基に基づく親水性をアクリル樹脂エマルションに付与し、これを塗料として用いた場合における作業性や凍結に対する安定性を増すと共に、メラミン樹脂やイソシアネート系硬化剤との硬化反応性を付与するために使用する。
【0068】
水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(iii)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、ε−カプロラクトン変性(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。
【0069】
ε−カプロラクトン変性アクリルモノマーの具体例としては、ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」及び「プラクセルFM−5」等が挙げられる。
【0070】
モノマー混合物は、任意成分として、スチレン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含んでよい。スチレン系モノマーとしては、スチレンのほかにα−メチルスチレン等が挙げられる。
【0071】
乳化重合は、上記モノマー混合物を水性液中で、ラジカル重合開始剤及び乳化剤の存在下で、攪拌下加熱することによって実施することができる。反応温度は例えば30〜100℃程度として、反応時間は例えば1〜10時間程度が好ましく、水と乳化剤を仕込んだ反応容器にモノマー混合物又はモノマープレ乳化液の一括添加又は暫時滴下によって反応温度の調節を行うとよい。
【0072】
ラジカル重合開始剤としては、通常アクリル樹脂の乳化重合で使用される公知の開始剤が使用できる。具体的には、水溶性のフリーラジカル重合開始剤として、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩が水溶液の形で使用される。また、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの酸化剤と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤が水溶液の形で使用される。
【0073】
乳化剤としては、炭素数が6以上の炭素原子を有する炭化水素基と、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩部分エステルなどの親水性部分とを同一分子中に有するミセル化合物から選ばれるアニオン系又は非イオン系(ノニオン系)の乳化剤が用いられる。このうちアニオン系の乳化剤としては、アルキルフェノール類又は高級アルコール類の硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;アルキル又はアリルスルホナートのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルの硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。また非イオン系の乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルなどが挙げられる。またこれら一般汎用のアニオン系、ノニオン系乳化剤の他に、分子内にラジカル重合性の不飽和二重結合を有する、すなわちアクリル系、メタクリル系、プロペニル系、アリル系、アリルエーテル系、マレイン酸系などの基を有する各種アニオン系、ノニオン系反応性乳化剤なども適宜、単独又は2種以上の組み合わせで使用される。
【0074】
また乳化重合の際、メルカプタン系化合物や低級アルコールなどの分子量調節のための助剤(連鎖移動剤)の併用は、乳化重合を進める観点から、また塗膜の円滑かつ均一な形成を促進し基材への接着性を向上させる観点から、好ましい場合も多く、適宜状況に応じて行われる。
【0075】
また乳化重合としては、通常の一段連続モノマー均一滴下法、多段モノマーフィード法であるコア・シェル重合法や、重合中にフィードするモノマー組成を連続的に変化させるパワーフィード重合法など、いずれの重合法もとることができる。
【0076】
このようにして水酸基およびカルボキシル基含有アクリル樹脂エマルションが調製される。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、一般的に5万〜100万程度であり、例えば10万〜80万程度である。なお、本明細書中の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィによるスチレン標準換算値である。
【0077】
上記水酸基およびカルボキシル基含有アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−50℃〜20℃であることが好ましい。より好ましくは−40℃〜10℃、さらに好ましくは−30℃〜0℃の範囲とする。この範囲の樹脂のTgとすることにより、アクリル樹脂エマルションを含む水性カラーベース塗料をウェットオンウェット方式において用いた場合に、水性マイカベース塗料及びクリヤー塗料との親和性や密着性が良好となり、ウェット状態の上側塗膜との界面でのなじみを抑制し反転を防ぐことができる点で好ましい。また、最終的に得られる塗膜の適度な柔軟性が得られ、耐チッピング性が高められる。これらの結果、非常に高外観を有する複層塗膜が形成できる。樹脂のTgが−50℃未満では塗膜の機械的強度が不足し、耐チッピング性が弱い。一方、樹脂のTgが20℃を超えると、塗膜が硬くて脆くなるため、耐衝撃性に欠け、耐チッピング性が弱くなる。上記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂のTgが上記範囲となるように選択する。
【0078】
上記水酸基およびカルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価は2〜60mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは5〜50mgKOH/gの範囲である。この範囲の樹脂の酸価とすることにより、樹脂エマルションやそれを用いたベースコート塗料の保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性が向上し、また、塗膜形成時におけるメラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応が十分起こり、塗膜の諸強度、耐チッピング性、耐水性が向上する。樹脂の酸価が2mgKOH/g未満では、上記諸安定性が劣り、また、メラミン樹脂等の硬化剤との硬化反応の促進が十分行われず、塗膜の諸強度、耐チッピング性、耐水性が劣る。一方、樹脂の酸価が60mgKOH/gを超えると、樹脂の重合安定性が悪くなったり、上記諸安定性が逆に悪くなったり、得られた塗膜の耐水性が劣るものとなる。上記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂の酸価が上記範囲となるように選択する。前述したように、酸基含有エチレン性不飽和モノマー(b)の内でもカルボキシル基含有モノマーを用いることが重要であり、モノマー(b)の内、カルボキシル基含有モノマーが好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上含まれる。
【0079】
アクリル樹脂の水酸基価は10〜120mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは20〜100mgKOH/gの範囲である。この範囲の樹脂の水酸基価とすることにより、樹脂が適度な親水性を有し、樹脂エマルションを含む塗料組成物として用いた場合における作業性や凍結に対する安定性が増すと共に、メラミン樹脂やイソシアネート系硬化剤との硬化反応性も十分である。水酸基価が10mgKOH/g未満では、上記硬化剤との硬化反応が不十分で、塗膜の機械的性質が弱く、耐チッピング性に欠け、耐水性及び耐溶剤性にも劣る。一方、水酸基価が120mgKOH/gを超えると、逆に得られた塗膜の耐水性が低下したり、上記硬化剤との相溶性が悪く、塗膜にひずみが生じ硬化反応が不均一に起こり、その結果、塗膜の諸強度、特に耐チッピング性、耐溶剤性及び耐水性が劣る。上記各モノマー成分の種類や配合量を、樹脂の水酸基価が上記範囲となるように選択する。
【0080】
得られたアクリル樹脂エマルションに対し、カルボン酸の一部又は全量を中和してアクリル樹脂エマルションの安定性を保つため、塩基性化合物を添加してもよい。これら塩基性化合物としては、アンモニア、各種アミン類、アルカリ金属などを適宜使用することができる。
【0081】
上記水性カラーベース塗料には、必要に応じて、水酸基含有ポリエステル樹脂を配合しても良い。この水酸基含有ポリエステル樹脂は、塗膜のフロー性および物性の調整のために添加される。
【0082】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、多価アルコール成分と多塩基酸成分とを縮合してなるオイルフリーポリエステル樹脂、または多価アルコール成分および多塩基酸成分に加えてヒマシ油、脱水ヒマシ油、桐油、サフラワー油、大豆油、アマニ油、トール油、ヤシ油など、およびそれらの脂肪酸のうち1種、または2種以上の混合物である油成分を、上記酸成分およびアルコール成分に加えて、三者を反応させて得られる油変性ポリエステル樹脂などを挙げることができる。また、アクリル樹脂やビニル樹脂をグラフト化したポリエステル樹脂も使用できる。更に、多価アルコール成分と多塩基酸成分とを反応させてなるポリエステル樹脂に、ポリイソシアネート化合物を反応させて得るウレタン変性ポリエステル樹脂も使用することができる。
【0083】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、800〜10000であることが好ましい。より好ましくは1000〜8000である。Mnが800未満であるとポリエステル樹脂を水分散させた時の安定性が低下するおそれがあり、また10000を超えると樹脂の粘度が上がるため、塗料にした場合の固形分濃度が下がり、塗装作業性が低下するおそれがある。
【0084】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は、35〜170、好ましくは50〜150である。水酸基価が35未満であると得られる塗膜の硬化性が低下し、また170を超えると塗膜の耐チッピング性が低下する。
【0085】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂は15〜100mgKOH/gの酸価を有することが好ましい。好ましくは20〜80である。酸価が15未満であるとポリエステル樹脂の水分散安定性が低下し、また100を超えると塗膜にした時の耐水性が低下する。
【0086】
また、上記水酸基含有ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、−40〜50℃であることが好ましい。上記ガラス転移温度が−40℃未満である場合、得られる塗膜の硬度が低下する恐れがあり、50℃を超える場合、下地隠蔽性が低下する恐れがある。さらに好ましくは、−40〜10℃である。なお、ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)等によって実測することができる。
【0087】
上記多価アルコール成分の例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、およびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール成分、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸成分を挙げることができる。
【0088】
上記多塩基酸成分の例としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸および酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、1,4−及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸および無水物;無水マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の脂肪族多価カルボン酸および無水物等の多塩基酸成分およびそれらの無水物等を挙げることができる。必要に応じて安息香酸やt−ブチル安息香酸などの一塩基酸を併用してもよい。
【0089】
ポリエステル樹脂を調製する際には、反応成分として、更に、カージュラE(商品名:シエル化学製)などのモノエポキサイド化合物、およびラクトン類(β−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、クロトラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトンなど)を併用してもよい。特にラクトン類は、多価カルボン酸および多価アルコールのポリエステル鎖へ開環付加してそれ自身ポリエステル鎖を形成し、さらにはカラーベース塗料組成物の耐チッピング性を向上するのに役立つ。これらは、全反応成分の合計質量の3〜30%、好ましくは5〜20%、特に7〜15%で含有されてよい。
【0090】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、その酸価を調整し、カルボキシル基を塩基性物質で中和(例えば、50%以上)することで容易に水性化可能である。ここで用いられる塩基性物質としては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがあり、このうち、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが好適である。また、上記中和の際の中和率は特に限定されず、例えば、80〜120%である。
【0091】
上記水性カラーベース塗料に配合することができる硬化剤は、上記アクリル樹脂や水酸基含有ポリエステル樹脂と硬化反応を生じるものであれば特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。これらの1種又は2種以上が適宜組み合わされ使用される。塗膜性能上、メラミン樹脂を含有することが好ましい。
【0092】
メラミン樹脂としては、アクリル樹脂や水酸基含有ポリエステル樹脂と硬化反応を生じ、ベースコート塗料中に配合することができるものであれば特に限定されないが、具体的にはイミノ型メラミン樹脂が好ましく、例えば、サイメル211(三井サイテック社製イミノ型メラミン樹脂、商品名)、サイメル327(三井サイテック社製イミノ型メラミン樹脂、商品名)などが挙げられる。
【0093】
また、アルキルエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましく、メトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂がより好ましい。このようなメラミン樹脂としては、メトキシ基を単独で有するものとして、サイメル325、サイメル327、サイメル370、マイコート723;メトキシ基とブトキシ基との両方を有するものとして、サイメル202、サイメル204、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267(何れも商品名、三井サイテック社製);ブトキシ基を単独で有するものとして、マイコート506(商品名、三井サイテック社製)、ユーバン20N60、ユーバン20SE(何れも商品名、三井化学社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
上記水性カラーベース塗料は、さらに、追加の樹脂成分、顔料分散ペースト、増粘剤、その他の添加剤成分等を含有するものであってもよい。
【0095】
上記追加の樹脂成分としては特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂エマルション、アクリル樹脂、カーボネート樹脂及びエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0096】
顔料分散ペーストは、顔料と顔料分散剤とを少量の水性媒体に予め分散して得られる。顔料分散剤の固形分中には、揮発性の塩基性物質が全く含まれていないか、又は3質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。本発明で用いる水性カラーベース塗料においては、このような顔料分散剤を用いることによって、水性カラーベース塗料から形成される塗膜中の揮発性塩基性物質の量が少なくなり、得られる複層塗膜の黄変を抑えることができる。従って、顔料分散剤の固形分中に揮発性の塩基性物質が3質量%を超えて含まれていると、得られる複層塗膜が黄変し、仕上がり外観が悪くなる傾向にあるため好ましくない。
【0097】
揮発性の塩基性物質とは、沸点が300℃以下の塩基性物質を意味するものであり、無機及び有機の窒素含有塩基性物質を挙げることができる。無機の塩基性物質としては、例えば、アンモニア等が挙げられる。有機の塩基性物質としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジメチルドデシルアミン等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基含有1〜3級アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状ヒドロキシアルキル基含有1〜3級アミン;ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基及び炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のヒドロキシアルキル基を含有する1〜3級アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の炭素数1〜20の置換又は非置換鎖状ポリアミン;モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の炭素数1〜20の置換又は非置換環状モノアミン;ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N,N−ジメチルピペラジン等の炭素数1〜20の置換又は非置換環状ポリアミン等のアミン類を挙げることができる。
【0098】
上記顔料分散剤は、顔料親和部分及び親水性部分を含む構造を有する樹脂である。顔料親和部分及び親水性部分としては、例えば、ノニオン性、カチオン性及びアニオン性の官能基を挙げることができる。顔料分散剤は、1分子中に上記官能基を2種類以上有していてもよい。
【0099】
上記ノニオン性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基等が挙げられる。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基等が挙げられる。また、アニオン性官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。このような顔料分散剤は、当業者にとってよく知られた方法によって製造することができる。
【0100】
上記顔料分散剤としては、その固形分中に揮発性の塩基性物質を含まないか、又は3質量%以下の含有量であるものであれば特に限定されないが、少量の顔料分散剤によって効率的に顔料を分散することができるものが好ましい。例えば、市販されているもの(以下いずれも商品名)を使用することもでき、具体的には、ビックケミー社製のアニオン・ノニオン系分散剤であるDisperbyk
190、Disperbyk 181、Disperbyk 182(高分子共重合物)、Disperbyk 184(高分子共重合物)、EFKA社製のアニオン・ノニオン系分散剤であるEFKAPOLYMER4550、アビシア社製のノニオン系分散剤であるソルスパース27000、アニオン系分散剤であるソルスパース41000、ソルスパース53095等を挙げることができる。
【0101】
顔料分散剤の数平均分子量は、下限1000、上限10万であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではない場合があり、10万を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となる場合がある。より好ましくは、下限2000、上限5万であり、更に好ましくは、下限4000、上限5万である。
【0102】
上記顔料分散ペーストは、顔料分散剤と顔料とを公知の方法に従って混合分散することにより得られる。顔料分散ペースト製造時の顔料分散剤の割合は、顔料分散ペーストの固形分に対して、下限1質量%、上限20質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、顔料を安定に分散しにくく、20質量%を超えると、塗膜の物性に劣る場合がある。好ましくは、下限5質量%、上限15質量%である。
【0103】
顔料としては、通常の塗料に使用される顔料であれば特に限定されないが、高外観の塗膜を得る点、及び、耐候性を向上させ、かつ隠蔽性を確保する点から、着色顔料であることが好ましい。上記着色顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;酸化チタン、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック等の無機系着色顔料等が挙げられる。これら顔料に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料を併用しても良い。
【0104】
増粘剤としては特に限定されないが、例えば、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、市販されているものとしては、チローゼMH及びチローゼH(いずれもヘキスト社製、商品名)等のセルロース系のもの;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、プライマルASE−60、プライマルTT−615、プライマルRM−5(いずれもローム&ハース社製)、ユーカーポリフォーブ(ユニオンカーバイト社製)等のアルカリ増粘型のもの;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、市販されているもの(以下いずれも商品名)としては、アデカノールUH−420、アデカノールUH−462、アデカノールUH−472、UH−540、アデカノールUH−814N(旭電化工業社製)、プライマルRH−1020(ローム&ハース社製)、クラレポバール(クラレ社製)等の会合型のものを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
増粘剤を含有することにより、水性カラーベース塗料の粘度を高くすることができ、水性カラーベース塗料を塗装する際に、タレが発生することを抑制することができる。また、カラーベース塗膜とマイカベース塗膜との間での混層をより抑制することができる。その結果、増粘剤を含まない場合に比べて、塗装時の塗装作業性が向上し、得られる塗膜の仕上がり外観を優れたものとすることができる。
【0106】
その他の添加剤としては、上記成分の他に通常添加される添加剤、例えば、紫外線吸収剤;酸化防止剤;消泡剤;表面調整剤;ピンホール防止剤等が挙げられる。これらの配合量は当業者の公知の範囲である。
【0107】
上記水性カラーベース塗料は、カルボジイミド化合物、アクリル樹脂エマルション、硬化剤、及び顔料分散ペースト等を混合して調製されたものであることが好ましい。
【0108】
上記硬化剤は、硬化剤およびアクリル樹脂エマルションの固形分に対して下限2質量%、上限50質量%、好ましくは下限4質量%、上限40質量%、より好ましくは下限5質量%、上限30質量%となるように使用する。2質量%より少ないと、得られる塗膜の耐水性が低下する傾向がある。また、50質量%を超えると、得られる塗膜のピーリング性が低下する傾向がある。
【0109】
追加の樹脂成分、顔料分散ペーストやその他の添加剤は、適量混合すれば良い。但し、追加の樹脂成分は、カラーベース塗料用組成物中に含まれる全ての樹脂の固形分を基準として、50質量%以下の割合で配合することが好ましい。50質量%を越えて配合した場合は、塗料中の固形分濃度を高くすることが困難になるため、好ましくない。
【0110】
顔料は、水性カラーベース塗料中に含まれる全ての樹脂の固形分及び顔料の合計質量に対する顔料濃度(PWC;pigment weight content)が、10〜60質量%であることが好ましい。10質量%未満では、隠蔽性が低下するおそれがある。60質量%を超えると、硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して塗膜外観が低下することがある。
【0111】
上記カルボジイミド化合物の含有量は、上記水性カラーベース塗料の樹脂固形分(カラーベース塗料に含まれる全ての樹脂の固形分)100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。1質量部未満であるとマイカベース塗料がウェット・オン・ウェットで塗装されたときに、界面が乱れるおそれがある。30質量部を超えると、外観及び得られる塗膜の諸性能が低下するおそれがある。
【0112】
これら成分を加える順番は、水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂に硬化剤を加える前でもよいし、後でも良い。本発明の水性カラーベース塗料は、水性であれば形態は特に限定されず、例えば、水溶性、水分散型、水性エマルション等の形態であればよい。
【0113】
上記水性カラーベース塗料組成物の塗布方法については、静電塗装によって行うことが好ましい。静電塗装を行うことによって、効率よく塗装を行うことができ、1ステージ塗装によって十分な膜厚を得ることができる点で好ましい。
【0114】
カラーベース塗膜は、乾燥膜厚が10〜30μmであることが好ましく、15〜25μmであることがより好ましい。乾燥膜厚が10μm以上であることにより、成形品表面に、色鮮やかな外観を与えることができる。30μmを超えると、タレ、ワキ等の不具合が発生するため好ましくない。
【0115】
(水性マイカベース塗料組成物)
本発明は、次に、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)を行うものである。上記水性マイカベース塗料組成物としては、ベース用樹脂及びマイカ顔料を含有するものであれば特に限定されない。
【0116】
上記ベース用樹脂としては特に限定されず、水溶性アクリル樹脂、水分散性アクリル樹脂、エマルションアクリル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水分散性ポリエステル樹脂等を挙げることができる。また、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物等の硬化剤を併用することが好ましい。
【0117】
上記マイカ顔料を配合することにより、より意匠性・デザイン性に優れた真珠調光沢塗膜を得ることが可能となる。マイカ顔料としては、特に制限はなく、市販品では例えばメルク社製「イリオジン」、「シラリック」が挙げられる。その含有量は、塗料中の全固形分(樹脂固形分及び顔料などその他の固形分)中、1〜20質量%であることが好ましい。
【0118】
上記水性マイカベース塗料組成物の塗布方法としては、上記水性カラーベース塗料組成物の塗布方法として挙げた方法と同様、静電塗装を用いることが好ましい。マイカベース塗膜は、乾燥膜厚を5〜20μmとすることが好ましく、7〜15μmであることがより好ましい。乾燥膜厚が5μm未満であると目的の色が発現しないおそれがある。また、20μmを超えると、タレ、ワキ等の不具合が発生する場合がある。
【0119】
上記工程(3)の後で、プレヒート工程を行うことが好ましい。上記プレヒート工程は、上述した工程(1)後のプレヒート工程と同様の条件により行うことができる。
【0120】
(クリヤー塗料組成物)
本発明の複層塗膜の形成方法は、さらに、クリヤー塗料組成物を塗布する工程(4)を有するものである。上記クリヤー塗料組成物は、4層塗膜のトップ層(最上層)を形成させるのに用いられる塗料であり、優れた耐候性や耐溶剤性などの物性を硬化塗膜に付与する。
【0121】
上記クリヤー塗料組成物としては特に限定されず、従来公知のものを用いればよいが、例えば、主剤として水酸基を含有するポリオール樹脂を使用し、硬化剤がイソシアネートである2液クリアー塗料(例えば、2液硬化型ウレタン塗料)が好ましい。得られるクリヤー塗膜の外観が良好で、耐酸性にも優れたものとなるからである。上記主剤として使用されるポリオール樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等を使用することができる。
【0122】
上記硬化剤として用いるイソシアネートとしては、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する無黄変タイプの化合物(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどのアダクト体、ヌレート体、ビューレット体など)などを挙げることができる。市販の硬化剤としては、例えば、住化バイエル社製のディスモジュール3600やスミジュール3300、日本ポリウレタン社製のコロネートHX、三井武田ケミカル社製のタケネートD−140NL、D−170N、旭化成社製のデュラネート24A−90PX、THA−100などを挙げることができる。
市販のクリヤー塗料としては、例えば、2液硬化型ウレタン塗料である日本ビー・ケミカル社製のR2500−1などを挙げることができる。
また、市販のものに対して、引張伸び率を高めるために、塗料用アルキド樹脂、塗料用ポリエステル樹脂、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールやその混合物等のソフトナーを添加して使用することもできる。
【0123】
さらに硬化促進剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤、潤滑剤、UV吸収剤等従来公知の添加剤や有機溶剤を必要に応じて使用される。
【0124】
上記クリヤー塗料組成物の塗布方法としては特に限定されず、たとえば、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装やベル塗装等を採用することができる。
【0125】
クリヤー塗膜の乾燥膜厚は、20〜50μmであることが好ましい。上記範囲外であると、肌荒れなどの外観低下やタレ、ワキなどの作業性不良が発生するおそれがある。
【0126】
本発明の複層塗膜の形成方法は、基材の表面に、水性プライマー、水性カラーベース塗料組成物、水性マイカベース塗料組成物及びクリヤー塗料組成物をこの順番に塗り重ねて、複層の未硬化膜を形成し、焼き付け工程(5)を行うものであってもよい。
各塗料組成物の選択に当たっては、焼き付け工程で十分に硬化乾燥できる塗料を選択する必要がある。乾燥が不充分で水または溶剤が硬化塗膜内部に残存すると、硬化塗膜において、耐水性及び耐溶剤性などの性能が低下し易くなる。
【0127】
上記焼き付け工程(5)は、上記4層の未硬化膜を同時に焼き付けて、水性プライマー塗膜、水性カラーベース塗膜、水性マイカベース塗膜及びクリヤー塗膜の4層から構成される硬化塗膜を形成する工程である。
【0128】
焼き付け温度は、迅速な硬化とプラスチック成型品の変形防止との兼ね合いから、例えば、110〜130℃とすることが好ましい。好ましくは、120〜130℃である。焼き付け時間は、通常10〜60分間であり、好ましくは15〜50分間、さらに好ましくは20〜40分間である。焼き付け時間が10分間未満であると、塗膜の硬化が不充分であり、硬化塗膜の耐水性及び耐溶剤性などの性能が低下する。他方、焼き付け時間が60分間を超えると、硬化しすぎでリコートにおける密着性などが低下し、塗装工程の全時間が長くなり、エネルギーコストが大きくなる。なお、この焼付け時間は、基材表面が実際に目的の焼き付け温度を保持しつづけている時間を意味し、より具体的には、目的の焼き付け温度に達するまでの時間は考慮せず、目的の温度に達してから該温度を保持しつづけているときの時間を意味する。
【0129】
塗料の未硬化膜を同時に焼き付けるのに用いる加熱装置としては、例えば、熱風、電気、ガス、赤外線などの加熱源を利用した乾燥炉などが挙げられ、また、これら加熱源を2種以上併用した乾燥炉を用いると、乾燥時間が短縮されるため好ましい。
【0130】
本発明により得られた複層塗膜は、プラスチック成型品にも適用できる充分な耐屈曲性を有するものである。ここで、充分な耐屈曲性とは、以下に示す性質をいう。
【0131】
(屈曲強度)
ポリプロピレン素材上に、複層塗膜を形成した後、120℃で35分間乾燥し、複層塗膜を剥離した。得られた複層塗膜を室温25±5℃で試験片の塗面が外側になるようにして、φ20mmのマンドレルの周りに1秒間で均一速度、均一圧力にて90°折り曲げた際に、塗膜にワレを生じない程度のものであることを本明細書中では「耐屈曲強度を有する」とする。
【0132】
本発明の複層塗膜形成方法を適用することができるプラスチック成型品としては特に限定されず、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車部品を挙げることができる。また、プラスチック素材としても特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ABS、塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、PPO、ポリメチルメタクリレート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0133】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0134】
製造例1 アクリル樹脂粒子水分散体の製造(水性プライマー用)
脱イオン水118部とPVA218EE(クラレ社製のポリビニルアルコール)6部とニューコール714(日本乳化剤社製のアニオン性界面活性剤)3部との混合物に、アクリル系単量体成分としてのメタクリル酸グリシジル30部、メタクリル酸ラウリル13部、アクリル酸n−ブチル1部およびスチレン56部、ならびに、ラジカル重合開始剤としてのラウリルパーオキサイド2部を混合したものを加えた。これをホモジナイザーを用いて8000rpmで30分間攪拌して、原料分散液を得た。SALD−2200(島津製作所性レーザ回折式粒度分布測定装置)を用いて測定した原料分散液中の樹脂粒子の平均粒径は0.5μmであった。この原料分散液を、80℃に加熱した脱イオン水137部に、攪拌しながら2時間かけて滴下し、滴下終了後、そのまま4時間攪拌を継続した。冷却後、400メッシュの篩でろ過してアクリル樹脂粒子水分散体aを得た。この水分散体中のアクリル樹脂粒子の平均粒径をSALD−2200を用いて測定したところ、0.8μmであった。
【0135】
製造例2 酸無水物変性塩素化ポリオレフィンの製造(水性プライマー用)
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた反応容器に、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィン「スーパークロン892LS」(日本製紙社製、塩素含有率22%、重量平均分子量7万〜8万)288部、界面活性剤「エマルゲン920」(花王社製)62部、芳香族炭化水素溶剤「ソルベッソ100」(エクソン社製)74部、酢酸カービトール32部を仕込み、110℃まで昇温し、この温度で1時間加熱して樹脂などを溶解させたのち、100℃以下に冷却した。次いで、ジメチルエタノールアミン6部を溶解させたイオン交換水710部を冷却しながら1時間かけて滴下し、転相乳化した。その後、室温(25℃)まで冷却し、400メッシュの金網でろ過して、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンエマルションを得た。このエマルションの不揮発分は30重量%であった。
【0136】
製造例3 ポリウレタンディスパージョンの製造(水性プライマー用)
攪拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管、サンプル採取管及び冷却管付き還流装置を備えた耐圧反応容器に、窒素ガスを通じながらアジピン酸1100部と3−メチルー1,5−ペンタンジオール900部と、テトラブチルチタネート0.5部とを仕込み、容器内液の反応温度を170℃に設定し、脱水によるエステル化反応を行い、酸価が0.3mgKOH/g以下になるまで継続した。次いで、180℃、5kPa以下の減圧条件下で2時間反応を行い、水酸基過112mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/gのポリエステルを得た。次いで、上記反応容器と同じ装置のついた別の反応容器に、このポリエステルポリオール500部と、5−スルホソジウムイソフタル酸ジメチル134部及びテトラブチルチタネート2部を仕込み、上記と同じようにして、窒素ガスを通じながら、反応容器を180℃に設定してエステル化を行い、最終的に重量平均分子量2117、水酸基価53mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/gのスルホン酸基含有ポリエステルを得た。
【0137】
上記スルホン酸基含有ポリエステル280部、ポリブチレンアジペート200部、1,4―ブタンジオール35部、ヘキサメチレンジイソシアネート118部及びメチルエチルケトン400部を、攪拌羽根、温度計、温度制御装置、滴下装置、サンプル採取口及び冷却管付き反応容器に窒素ガスを通じながら仕込み、攪拌しながら液温を75℃に保持してウレタン化反応を行い、NCO含有率が1%であるウレタンポリマーを得た。続いて、上記反応容器中の液温を40℃に下げて、十分攪拌しながらイオン交換水955部を均一に滴下して転相乳化を行った。次いで、内部温度を下げて、アジピン酸ヒドラジド13部とイオン交換水110部とを混合したアジピン酸ヒドラジド水溶液を添加してアミン伸張を行った。次いで、若干の減圧状態で60℃に温度をあげて脱溶剤を行い、終了した時点で、ポリウレタンディスパージョンの固形分が35%になるようにイオン交換水を追加して、スルホン酸基含有ポリウレタンディスパージョンを得た。ディスパージョン中のポリウレタン樹脂の酸価は、11mgKOH/gであった。
【0138】
製造例4 顔料分散ペーストの製造
製造例4−1 水性プライマー用顔料分散樹脂の製造
攪拌羽根、滴下装置、温度制御装置、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル55部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌下120℃まで昇温した。つぎに、2−ヒドロキシメチルメタクリレート12部、メタクリル酸9部、イソブチルメタクリレート35部、n−ブチルアクリレート44部からなる重合性モノマー混合物と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート1部をプロピレングリコール8部に溶解した溶液とを、内部攪拌にてそれぞれ3時間かけて滴下した。次いで、滴下終了後、120℃の状態で1時間熟成反応を行ったのち、さらに、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサナート0.1部をプロピレングリコール4部に溶解した溶液を、1時間かけて反応容器に滴下した。いずれの場合も内部攪拌状態と液温120℃を維持していた。その後、攪拌しながら、120℃で2時間熟成し、ついで、内部温度を70℃まで冷却し、ジメチルアミノエタノール9.5部を滴下して30分攪拌した。さらに内部温度を70℃に保持して攪拌しながら、イオン交換水167部をゆっくりと滴下し、室温(25℃)まで冷却し、水溶性アクリル樹脂溶液を得た。イオン交換水を用いて、不揮発分を30%に調整し、これを、以下の顔料分散ペーストにおけるプライマー用顔料分散樹脂として用いた。得られた顔料分散樹脂(水溶性アクリル樹脂溶液)のpHは8.2で、アクリル樹脂の重量平均分子量は42000であった。
【0139】
製造例4−2 顔料分散ペースト1の製造
攪拌機のついたステンレス製の円筒攪拌槽に、上記のようにして得たプライマー用顔料分散樹脂8.4部を仕込み、攪拌しながら、イオン交換水20部を添加した。次いで、顔料分散剤「SURFYNOL GA」(エアープロダクツ社製、不揮発分78%)1.2部を攪拌しながら添加した。十分攪拌しながら、消泡剤「ノプコ8034−L」(サンノプコ社製、不揮発分100%)0.3部を添加した。ついで、攪拌を続けながら、白色導電剤としての酸化チタン「ET−500W」(石原産業社製、平均1次粒子径0.2〜0.3μm)64.7部、イオン交換水2.6部、メラミン樹脂「サイメル701」(日本サイテック社製、不揮発分82%)2.4部を順次添加し、十分攪拌しながら、全体に均一になるまで15分間攪拌を続け、顔料分散ペースト1を作製した。このものの不揮発分は、70.4%であり、顔料濃度(PWC)91.9%であった。
【0140】
製造例4−3 顔料分散ペースト2の製造方法
各成分の配合量を表1のように変更したこと以外は、製造例4−2と同様にして顔料分散ペースト2を調製した。このものの不揮発分は、61.6%であり、顔料濃度(PWC)87.9%であった。
【0141】
【表1】

【0142】
製造例5 水性白色導電プライマーの製造
攪拌装置のついたステンレス製容器に、表2に示した各成分を順次投入し、混合することで白色導電プライマーを得た。得られた白色導電プライマーの塗膜伸び率を上述した方法によって形成した塗膜について、島津製作所社製AUTOGRAPH AG−ISにより測定し、結果を表2に示した。
【0143】

【表2】

(単位:質量部)
【0144】
製造例4 水性アクリル樹脂エマルションAの製造(水性カラーベース用)
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管などを備えた通常のアクリル系樹脂エマルション製造用の反応容器に、水445部及びニューコール293(日本乳化剤(株)製)5部を仕込み、攪拌しながら75℃に昇温した。MAA0.38部、HEA2.04部、St11.07部、NBA5.35部、EA5.77部、水240部及びニューコール293 30部の混合物をホモジナイザーを用いて乳化し、そのプレポリマー乳化液を上記反応容器中に3時間にわたって攪拌しながら滴下した。モノマープレ乳化液の滴下と並行して、重合開始剤としてAPS(過硫酸アンモニウム)1部を水50部に溶解した水溶液を、上記反応容器中に上記モノマープレ乳化液の滴下終了時まで均等に滴下した。モノマープレ乳化液の滴下終了後、さらに80℃で1時間反応を継続し、その後、冷却した。冷却後ジメチルアミノエタノール2部を水20部に溶解した水溶液を投入し、不揮発分40.6重量%の水酸基含有アクリル樹脂エマルションAを得た。30%ジメチルアミノエタノール水溶液を用いてアクリル樹脂エマルションAのpHを7.2に調整した。
【0145】
製造例5 ポリエステル樹脂の製造
反応機にイソフタル酸25.6部、無水フタル酸22.8部、アジピン酸5.6部、トリメチロールプロパン19.3部、ネオペンチルグリコール26.7部、ε−カプロラクトン17.5部、ジブチルスズジオキサイド0.1部を加え、混合攪拌しながら170℃まで昇温した。その後3時間かけ220℃まで昇温しつつ、酸価8となるまで縮合反応により生成する水を除去した。次いで、無水トリメリット酸7.9部を加え、150℃で1時間反応させ、酸価が40のポリエステル樹脂を得た。さらに、100℃まで冷却後ブチルセロソルブ11.2部を加え均一になるまで攪拌し、60℃まで冷却後、イオン交換水98.8部、ジメチルエタノールアミン5.9部を加え、固形分50重量%、固形分酸価40、水酸基価110、数平均分子量2870のポリエステル樹脂を得た。
【0146】
製造例6 カルボジイミド化合物の調製
4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート250部に、カルボジイミド化触媒である3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド2.5部を加え、170℃でNCO当量が300になるまで反応させた。反応生成物は1分子あたりカルボジイミド基を平均2.8個有していた。ここに繰り返し数が平均9のポリエチレングリコールモノメチルエーテル106部、繰り返し数が19のポリプロピレングリコールモノブチルエーテル295部およびジブチル錫ジラウレート0.18部を加え、IRでNCOの吸収がなくなるまで90℃で反応を行った。ここに脱イオン水1525部を加えて攪拌し、樹脂固形分30質量%のカルボジイミド化合物の水分散体を得た。
【0147】
製造例7 顔料分散ペーストの調製
Disperbyk190(ビックケミー社製)4.5部、BYK−011(ビックケミー社製)0.5部、イオン交換水22.9部、タイペークCR−97(石原産業社製二酸化チタン)72.1部を予備混合した後、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、混合分散し、顔料分散ペーストを得た。
【0148】
製造例8 水性カラーベース塗料用白顔料ペーストの製造
水性アクリル樹脂A15.2部、脱イオン水17.3部、及び、タイペークCR―97(石原産業社製二酸化チタン)67.5部を順次添加し、充分攪拌しながら全体に均一になるまで15分間攪拌を続けることによって、白顔料ペーストを得た。
【0149】
製造例9 水性カラーベース塗料組成物の調製
表3に示した各成分を混合攪拌し水性カラーベース塗料を得た。
【0150】
【表3】

【0151】
製造例10 水性マイカベース塗料組成物の調製
水性マイカベース塗料としては、水性ベースコートAR2000 7A21(日本ペイント社製)を使用した。
【0152】
製造例11−1 クリヤー塗料組成物1の調製
「R2500−1」(日本ビー・ケミカル社製のアクリル系クリヤー主剤)100.0部及びバイエル社製イソシアネート硬化剤「デスモジュールZ4470」44.0部を混合してクリヤー塗料組成物1を調製した。
【0153】
製造例11−2〜4 クリヤー塗料組成物2〜4の製造
表4に示した組成で各成分を混合攪拌し、クリヤー塗料組成物2〜4を得た。
【0154】
【表4】

【0155】
(実施例1)
イソプロピルアルコールでワイピングしたポリプロピレン素材(70mm×150mm×3mm)の表面に、25℃/70%RHの環境下で、「ワイダ―71」(アネスト磐田社製)により上記水性白色導電プライマーをスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)し、80℃で5分間乾燥した。その後、上記水性カラーベース塗料組成物を同じ環境下で、新カートリッジベル(ABB社製 商品名 新カートリッジベル)を使用して静電塗装(ガン距離:200mm、ガン速度:900mm/s、印加電圧:−60kV、回転数:35000rpm、シェーピングエアー圧:0.15MPa)条件下でスプレー塗装(乾燥膜厚15μm)した。次に、水性マイカベース塗料組成物(日本ペイント社製AR2000♯7A21)を水性カラーベース塗料組成物と同様の条件下でスプレー塗装(乾燥膜厚13μm)した。80℃で5分間乾燥した後、その上に、クリヤー塗料組成物をロボベル951を使用して静電塗装(ガン距離:200mm、ガン速度:700mm/s、印加電圧:−60kV、回転数:25000rpm、シェーピングエアー圧:0.07MPa)条件下でスプレー塗装(乾燥膜厚25μm)した。その後、10分間セッティングした後、120℃で35分間乾燥し、複層塗膜を形成した。
なお、上記水性マイカベース塗料組成物の塗膜伸び率は、15%であった。
【0156】
(実施例2〜7、比較例1〜6)
実施例1と同様の方法で、表5に示した塗料を使用して複層塗膜を形成した。
【0157】
各実施例及び比較例の複層塗膜について、以下の評価を行った。結果を表5に示す。
[耐屈曲性]
得られた複層塗膜の耐屈曲性を、以下の基準に基づき評価した。
○:塗膜ワレが起こらず良好
×:塗膜ワレが発生
【0158】
[耐キシレンラビング性]
最終塗板に対しキシレンを含んだガーゼで500gの荷重を加え、8往復ラビング試験を行い、粘着性、しわ、フクレ、ハガレ等の異常の有無を評価した。異常が認められない場合は○、少しでも異常が認められた場合は×とした。
【0159】
[初期密着性]
JIS−K−5600−5−6に準拠して評価する。具体的には、カッターナイフで塗膜上に、2mmの碁盤目100個を作り、その上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がす。この剥離動作を同一箇所で3回実施し、1桝目内で塗膜が面積比50%以上剥がれた正方桝目の個数で示す。0個を合格(○)とし、1個以上を不合格(×)とした。
【0160】
[仕上がり]
Wave-scan
T(BYK社性)を用いて測定し、W3(光沢感)が30以下となる場合を○、30より大きくなる場合を×とした。
【0161】
[耐チッピング]
総合塗膜の耐チッピング性評価は、得られた塗板を−30℃に冷却した後、これを飛石試験機(スガ試験機社製)の試料ホルダーに石の侵入角度が90°になるように取り付け、100gの7号砕石を3kg/cm2の空気圧で噴射し、砕石を塗板に衝突させた。その時のハガレ傷の程度(数、大きさ、破壊場所)評価した。一部に小さなハガレ傷があるが素地からの剥離がない場合を合格(○)とし、全面に大きなハガレ傷があり素地からの剥離が有る場合を不合格(×)とした。
【0162】
【表5】

【0163】
表5より、本発明の複層塗膜の形成方法により得られた複層塗膜は、塗膜の混層による意匠性の低下を生じることがなく、耐屈曲性に優れ、しかも耐チッピング性に優れたものであることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明にかかる複層塗膜の形成方法は、例えば、バンパー等のプラスチック素材からなる基材表面に複層塗膜を形成する方法として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック素材からなる成型品の複層塗膜形成方法であって、
基材上に、水性プライマーを塗布する工程(1)、水性カラーベース塗料組成物を塗布する工程(2)、水性マイカベース塗料組成物を塗布する工程(3)及びクリヤー塗料組成物を塗布する工程(4)からなり、
前記水性プライマーの塗膜伸び率が10〜120%
前記水性カラーベース塗料組成物の塗膜伸び率が2〜8%、
前記水性マイカベース塗料組成物の塗膜伸び率が10〜20%、
前記クリヤー塗料組成物の塗膜伸び率が10〜50%、
であり、前記水性カラーベース塗料は、カルボジイミド化合物を含有するものであることを特徴とする複層塗膜の形成方法。
【請求項2】
前記カルボジイミド化合物は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、nは1〜5を表し、Rは、同一又は異なって、脂肪族、芳香族、脂環族のアルキレン基を表し、Rは、一般式R−(−O−CH−CH−)−OH(式中、pは6〜20の整数を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表されるポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、及び/又は、下記一般式(2):
【化2】

(式中、qは15〜60の整数を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す。)で表されるポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルとの混合物の残基を表す。)で表わされる化合物である請求項1記載の複層塗膜の形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−10248(P2013−10248A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144340(P2011−144340)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(593135125)日本ビー・ケミカル株式会社 (52)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】