複層塗膜形成方法

【課題】金色(ゴールド)の色相を有し、光輝感があり、かつ彩度および明度が何れも高い複層塗膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】被塗物上に、着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(C)を含む光輝性ベース塗膜を形成し、更にクリヤー塗膜を形成して、マンセル表色系の色相(H)が7.5YR〜5Yである複層塗膜を形成する、複層塗膜形成方法であって;上記着色アルミニウム顔料(A)は、基材であるアルミニウムフレーク100質量部に対して、少なくとも酸化鉄を含む被覆成分を蒸着法により10〜25質量部被覆して得られた、平均粒径5〜25μmである鱗片状光輝性顔料であり;上記着色顔料(C)は、上記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相をマンセル色相環100の基準(0位置)とした場合、左回り−50および右回り+50で表示した色相の、−3〜−15の色相範囲を奏でる着色顔料(c1)、および+3〜+15の色相範囲を奏でる着色顔料(c2)の2種類を少なくとも含む着色顔料である;複層塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体などの塗装に適用することのできる、彩度および明度が何れも高く、かつ光輝感を有する、複層塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体などの被塗物の表面には、種々の役割を持つ複数の塗膜を順次形成して、被塗物を保護すると同時に美しい外観および優れた意匠を付与している。複層塗膜の形成方法としては、導電性に優れた被塗物上に電着塗膜などの下塗り塗膜を形成し、その上に、中塗り塗膜、上塗り塗膜を順次形成する方法が一般的である。これらの塗膜において、特に塗膜の外観および意匠を大きく左右するのは、ベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる上塗り塗膜である。特に自動車において、車体上に形成されるベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる上塗り塗膜の外観および意匠は、極めて重要である。
【0003】
また最近では、消費者は、いわゆるソリッドカラーよりも、光輝感のある塗色を好む傾向がある。この光輝感は、自動車などの複雑な形状の意匠そのものを強調する効果がある。特に、光がよく当たり、そして外観の印象を大きく左右するフェンダー部やドア部のプレスラインを強く強調する効果がある。このような効果は、光輝性塗膜に含まれる光輝性顔料によるものである。自動車のこのような複雑な形状の部分では、光の反射角度が複雑に変化するので、塗膜における光輝感の役割は非常に重要となる。また最近では、塗膜に対する消費者の嗜好も高まり、単に光輝感があることだけではなく、塗膜の色自体が鮮やか、つまり明度および彩度が何れも高く、かつ光輝感もあるといった、より鮮やかな意匠が求められつつある。
【0004】
特開2002−121488号公報(特許文献1)には、着色顔料成分として、着色アルミニウム顔料及び補助着色顔料を含む塗料組成物であって、前記着色アルミニウム顔料及び前記補助着色顔料は、マンセル表示の10色相環の色相が同系色であり、マンセル表示の彩度の差が5以下、明度の差が3以下であることを特徴とする塗料組成物が記載されている(請求項1)。そしてこの塗料組成物を用いることによって、屋外で長期間使用しても色飛びが見られず、彩度の高い塗膜を得ることができると記載されている。一方でこの塗料組成物によって得られる塗膜の色相は、マンセル表示の色相(H)2.5R〜10R(請求項5)のいわゆる赤色であり、本発明における複層塗膜の色相(ゴールド)とは異なるものである。
【0005】
特開2001−232282号公報(特許文献2)には、基材に、着色性を有する光輝性顔料および着色顔料を含有する光輝性ベース塗膜を形成した後、着色顔料を含有するカラークリヤー塗膜を形成する光輝性塗膜形成方法が記載されている。この方法においては、光輝性ベース塗膜中の着色顔料色の色相、光輝性顔料の色相、およびカラークリヤー塗膜中の着色顔料色の色相が特定条件を満たすことにより、光輝性ベース塗膜とカラークリヤー塗膜との複合塗膜の彩度が向上すると記載されている。上記の通りこの方法においては色相範囲が限定されたカラークリヤー塗膜を用いており、本発明とは手法が異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−121488号公報
【特許文献2】特開2001−232282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、いわゆる金色(ゴールド)の色相を有する複層塗膜であって、彩度および明度が何れも高く、かつ光輝感を有する、複層塗膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
被塗物上に、着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(C)を含む光輝性ベース塗膜を形成し、更にクリヤー塗膜を形成して、マンセル表色系の色相(H)が7.5YR〜5Yである複層塗膜を形成する、複層塗膜形成方法であって、
上記着色アルミニウム顔料(A)は、基材であるアルミニウムフレーク100質量部に対して、少なくとも酸化鉄を含む被覆成分を蒸着法により10〜25質量部被覆して得られた、平均粒径5〜25μmである鱗片状光輝性顔料であり、
上記着色顔料(C)は、上記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相をマンセル色相環100の基準(0位置)とした場合、左回り−50および右回り+50で表示した色相の、−3〜−15の色相範囲を奏でる着色顔料(c1)、および+3〜+15の色相範囲を奏でる着色顔料(c2)の2種類を少なくとも含む着色顔料である、
複層塗膜形成方法、
を提供するものであり、これにより上記課題が解決される。
【0009】
上記光輝性ベース塗膜を形成する光輝性ベース塗料組成物中における上記着色アルミニウム顔料(A)の顔料濃度(PWC)は1〜10質量%であり、および上記着色アルミニウム顔料(A)および上記アルミニウム顔料(B)の質量比は、(A)/(B)=1/5〜10/5であるのが好ましい。
【0010】
上記光輝性ベース塗膜を形成する光輝性ベース塗料組成物中における上記着色顔料(c1)および上記着色顔料(c2)の質量比は、(c1)/(c2)=9/1〜3/7であるのが好ましい。
【0011】
上記着色アルミニウム顔料(A)は、アルミニウムフレークを被覆する被覆成分中における酸化鉄の割合が90〜100質量%であり、および上記被覆成分の厚さが10〜30nmであるのが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記複層塗膜形成方法により得られた複層塗膜も提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複層塗膜形成方法によって得られる複層塗膜は、光輝感がありかつ色相(H)が7.5YR〜5Yである、いわゆる金色(ゴールド)の色相を有する塗膜である。そしてこの複層塗膜は、光輝感がある塗膜であっても、明度が高いため色が明るく、かつ、彩度が高いため色が鮮やかであるという特徴を有している。本発明においては、特定の着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(C)を含み、この着色顔料(C)が、上記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相に対して特定範囲の色相を奏でる着色顔料(c1)および着色顔料(c2)を少なくとも含む着色顔料である、光輝性ベース塗料組成物が用いられている。そしてこれにより、金色(ゴールド)の色相を有し、彩度および明度が何れも高く、かつ光輝感がある塗膜が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マンセル表色系のマンセル色相環を示す図である。(DICカラーデザイン株式会社ウェブサイトより引用。)
【図2】実施例および比較例における明度(L*)および彩度(C*)の測定位置を示す概略説明図である。
【図3】実施例および比較例により得られた複層塗膜のハイライト部の明度(15L*)およびハイライト部の彩度(15C*)の数値を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における、着色アルミニウム顔料(A)、着色顔料(c1)、着色顔料(c2)および複層塗膜の色相は、マンセル表色系で示される。マンセル表色系は、「三属性による色の表示方法」(JIS Z 8721)として当業者によく知られているものであり、色の三属性である、色相(H)、そして明度および彩度によって色を分類する。
【0016】
マンセル表色系において、色相(H)は、マンセル色相環の記号(R、Y、G、BおよびP)と番号(5および10など)との組み合わせで示される。マンセル色相環において、「R」はレッドを示し、「Y」はイエローを示し、「G」はグリーンを示し、「B」はブルーを示し、「P」はパープルを示す。また、これらの中間の色相である、「YR」はイエローレッドを示し、「GY」はグリーンイエローを示し、「BG」はブルーグリーンを示し、「PB」はパープルブルーを示し、「RP」はレッドパープルを示す。上記の10色がマンセル色相環の10色相となる。そしてこれらの10色相を、それぞれ10等分することにより、マンセル色相環の100色相環(マンセル色相環100)となる。図1は、このマンセル色相環100について説明する概略説明図である。本発明において、マンセル表色系の色相(H)は、例えば、X−Lite社製多角度分光光度計「MA−68 II」によって測定することができる。
【0017】
本発明の複層塗膜の形成方法は、下塗り塗膜および中塗り塗膜を形成した被塗物上に、光輝性ベース塗膜およびクリヤー塗膜を順次形成する方法である。以下、光輝性ベース塗膜の形成に用いられる光輝性ベース塗料組成物、およびクリヤー塗膜の形成に用いられるクリヤー塗料組成物について順次記載する。
【0018】
光輝性ベース塗料組成物
本発明の方法において、光輝性ベース塗膜は、被塗物上に形成される塗膜であって、金色(ゴールド)の色相を有し、彩度および明度が何れも高く、かつ光輝感がある塗膜である。このような光輝性ベース塗膜は、着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(C)を含み、この着色顔料(C)が、上記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相に対して特定範囲の色相を奏でる着色顔料(c1)および着色顔料(c2)を少なくとも含む着色顔料である、光輝性ベース塗料組成物を用いることによって形成される。この光輝性ベース塗料組成物は上記顔料(A)〜(C)に加えて、塗膜形成性樹脂、そして必要に応じた硬化剤そして他の成分を含有する。
【0019】
着色アルミニウム顔料(A)
本発明の方法において用いられる光輝性ベース塗料組成物は、着色アルミニウム顔料(A)を含む。この着色アルミニウム顔料(A)は、アルミニウムフレークを基材とする顔料である。そして着色アルミニウム顔料(A)は、基材であるアルミニウムフレーク100質量部に対して、少なくとも酸化鉄を含む被覆成分を蒸着法により10〜25質量部被覆することによって得られた顔料である。そしてこの着色アルミニウム顔料(A)は、平均粒径5〜25μmである鱗片状光輝性顔料である。この着色アルミニウム顔料(A)が上記構成を有することによって、金色(ゴールド)の色相が視認される光輝性顔料となる。
【0020】
着色アルミニウム顔料(A)を構成する基材であるアルミニウムフレークは、平均厚みが100〜600nmであるのが好ましい。
なお平均厚み(tとする)は、測定により得られたアルミニウム金属成分1g当たりの水面拡散面積WCA(m/g)を用いて下記式により算出した値である。
t=0.4/WCA
上記した平均厚みの算出方法は、例えば、Aluminium Paint and Powder,J.D.Edwards & R.I.Wray著、第3版、Reinhold Publishing Corp.New York(1955)の第16から22頁に記載されている。水面拡散面積は、一定の予備処理を行ったのち、JIS K 5906:1998に従って求めることができる。
【0021】
基材であるアルミニウムフレークを被覆する被覆成分は、酸化鉄が少なくとも含まれることを条件とする。この被覆成分は、酸化鉄以外にも、例えばチタン、クロム、モリブデン、ジルコニウムまたはアルミニウムなどの金属の酸化物、これらの水和物および塩など、および二酸化ケイ素、リン酸塩など、が含まれてもよい。この被覆成分中における酸化鉄の割合は90質量%以上であるのが好ましく、95〜100質量%であるのがより好ましい。このように被覆成分に酸化鉄が高含有量で含まれることによって、彩度の高い金色の色相が呈されることとなる。
【0022】
上記被覆成分は、蒸着法によって、基材であるアルミニウムフレーク上に被覆される。被覆方法として、例えば、アルミニウムフレークを気相中で流動化させ、この上に、鉄カルボニル(ペンタカルボニル鉄など)を酸化分解させて蒸着(析出)させる、化学蒸着法(CVD法)などが挙げられる。
【0023】
上記被覆成分が、蒸着法によって基材であるアルミニウムフレーク上に被覆されることによって、アルミニウムフレーク100質量部に対して、上記被覆成分を10〜25質量部という量で被覆することができる。被覆成分の量は15〜20質量部であるのがより好ましい。被覆成分の量が10質量部未満である場合は、着色アルミニウム顔料(A)が呈する色相の彩度が低下する。また被覆成分の量が25質量部を超える場合は、呈される色相が赤色化し、本発明において意図する複層塗膜の色相(7.5YR〜5Y)を得ることが困難となる。
【0024】
このように、被覆成分が、蒸着法によってアルミニウムフレーク上に被覆されることにより、被覆成分の厚みを好ましくは10〜30nm程、より好ましくは15〜25nmと、非常に薄い厚さに調節することができる。これにより、得られる着色アルミニウム顔料(A)は、酸化鉄を含む被覆成分の層による光の干渉効果と、基材であるアルミニウムフレークの光の反射効果の両方を呈することとなり、彩度の高い金色(ゴールド)の色相、より具体的にはマンセル色相環(100色相)の7.5YR〜5Yの色相(H)を呈することとなる。なお被覆成分の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡などの電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0025】
本発明においては、着色アルミニウム顔料(A)として平均粒径5〜25μmである鱗片状光輝性顔料を用いる。平均粒径が5μm未満である場合は、輝度感が低くなり、得られる塗膜のハイライト部の明度が低くなる。また平均粒径が25μmを超える場合は、得られる塗膜の平滑性が低下し、外観不良を起こすおそれがある。なお本明細書における平均粒径は、レーザー回折法によって粒度分布を測定し、メジアン値(D50)で示したものである。
【0026】
着色アルミニウム顔料(A)は、光輝性ベース塗料組成物中において顔料濃度(PWC)1〜10質量%となる量で含まれるのが好ましい。着色アルミニウム顔料(A)の量が1質量%未満である場合は発色性が低下する恐れがあり、10質量%を超える場合は仕上がり外観が低下する恐れがある。この顔料濃度(PWC)は、光輝性ベース塗料組成物の全固形分の質量に対して、着色アルミニウム顔料(A)の質量を百分率(質量%)で表したものである。なお、光輝性ベース塗料組成物の全固形分には、着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)、着色顔料(C)、光輝性ベース塗料組成物の樹脂固形分、必要に応じたその他の顔料およびその他の成分(固形分)が全て含まれる。
【0027】
上記着色アルミニウム顔料(A)として市販品を用いてもよい。好ましく用いることができる市販品として、例えば、BASF社製のパリオクロムゴールドL2025(D50=16μm)、パリオクロムゴールドL2000(D50=20μm)、パリオクロムゴールドL2020(D50=16μm)などが挙げられる。
【0028】
アルミニウム顔料(B)
本発明の方法において用いられる光輝性ベース塗料組成物は、上記着色アルミニウム顔料(A)と併せてアルミニウム顔料(B)が用いられる。このアルミニウム顔料(B)は、例えば、平均粒径(D50)が2〜50μmであり、かつ厚さが0.1〜5μmであるものが好ましい。また、平均粒径が10〜35μmの範囲のものが光輝感に優れ、さらに好適に用いられる。このアルミニウム顔料(B)の平均粒径は、レーザー回折法によって粒度分布を測定し、メジアン値(D50)で示したものである。
【0029】
アルミニウム顔料(B)として、有機物被膜または無機物被膜でコーティングされたアルミニウム顔料を用いてもよい。有機物被膜としては、ダイマー酸等のモノマーまたはポリマー(オリゴマー)形の脂肪酸、有機リン酸塩、りん酸エステル化合物、有機ホスホン酸化合物(エステル)、アミノシラン化合物、シランカップリング剤等の有機ケイ酸化合物(エステル)等が挙げられ、無機物被膜としては、ホウ酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、ケイ酸塩、モリブデン酸塩、バナジン酸塩、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。但し、上記着色アルミニウム顔料(A)を構成する、酸化鉄を含む被覆成分は、ここでいう無機物被膜には含まれないものとする。このような有機物被膜または無機物被膜でコーティングされたアルミニウム顔料は、金属顔料の表面が被覆により安定化されている。そしてこのような有機物被膜または無機物被膜でコーティングされたアルムニウム顔料を用いることにより、光輝性ベース塗料組成物が水性ベース塗料である場合における塗料内での水素ガスの発生を抑制することができるという利点がある。
【0030】
上記アルミニウム顔料(B)として市販の顔料を用いてもよい。例えば、旭化成工業社製のアルミニウム顔料ペースト「MH−8801」、「MH−9901」、および、東洋アルミニウム社製の「アルペースト 60−600」などが挙げられる。
【0031】
上記アルミニウム顔料(B)は、顔料濃度(PWC)1〜10質量%であるのが好ましい。また、上記着色アルミニウム顔料(A)と上記アルミニウム顔料(B)とは、1/5〜10/5の質量比で含有するのが好ましい。アルミニウム顔料(B)が上記割合で含まれることによって、ハイライト部およびシェード部両方における明度を高く設定でき、かつ隠蔽性を付与することができるという利点がある。
【0032】
着色顔料(C)
本発明において、光輝性ベース塗料組成物に含まれる着色顔料(C)は、着色顔料(c1)および着色顔料(c2)の、少なくとも2種類の着色顔料を含む。そしてこれらの着色顔料(c1)および着色顔料(c2)は、上記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相をマンセル色相環100の基準(0位置)とした場合、左回り−50および右回り+50で表示した色相の、−3〜−15の色相範囲を奏でる着色顔料(c1)、および+3〜+15の色相範囲を奏でる着色顔料(c2)である。
【0033】
本発明において用いられる着色アルミニウム顔料(A)は、上記構造を有することによって、マンセル色相環(100色相)の7.5YR〜5Yの色相(H)を発色する。そしてこのような上記着色アルミニウム顔料(A)、上記アルミニウム顔料(B)と併せて、さらに上記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相をマンセル色相環100の基準(0位置)とした場合、左回り−50および右回り+50で表示した色相の、−3〜−15の色相範囲を奏でる着色顔料(c1)および+3〜+15の色相範囲を奏でる着色顔料(c2)という2種類の着色顔料(c1)および(c2)を用いることによって、彩度が高く、かつ明度も高い複層塗膜を形成することが可能となる。
【0034】
着色顔料(c1)の色相範囲が−3を超えて−2〜0の範囲であり、また着色顔料(c2)の色相範囲が+3未満であり0〜+2の範囲である場合は、着色アルミニウム顔料(A)の色相範囲と、着色顔料(c1)および(c2)の色相範囲とがそれぞれ近似することにより、塗膜にする場合の色相調整ができなくなるおそれがあり、更に、比重の大きい酸化鉄系顔料が増えることにより塗料安定性が低下するおそれがある。また、着色顔料(c1)の色相範囲が−15より小さく−16〜−50の範囲であり、着色顔料(c2)の色相範囲が+15より大きく+16〜+50の範囲である場合は、着色アルミニウム顔料(A)の色相範囲と、着色顔料(c1)および(c2)の色相範囲とが大きく異なることにより、得られる複層塗膜の彩度および明度が低くなるおそれがある。なお、着色顔料(c1)および(c2)は、任意の顔料を2つ選択し、それをc1とc2とに設定したものである。
【0035】
このような着色顔料(c1)、(c2)として、有機系の着色顔料および無機系の着色顔料を用いることができる。有機系の着色顔料としては、例えば、アゾ系顔料(例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料)、キナクリドン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、金属錯体有機顔料などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
無機系の着色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛華、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、黄色酸化鉄、ベンガラなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記着色顔料(c1)および着色顔料(c2)の質量比は、(c1)/(c2)=9/1〜3/7であるのが好ましく、(c1)/(c2)=7/1〜3/5であるのがより好ましい。着色顔料(c1)、(c2)の質量比が上記範囲から逸脱する場合は、得られる複層塗膜の彩度および明度が低下するおそれがある。
【0038】
本発明においては、光輝性ベース塗料組成物中に、上記着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)、および上記着色顔料(c1)、(c2)を少なくとも含む着色顔料(C)が含まれることによって、得られる複層塗膜において、彩度および明度が何れも高く、かつ光輝感を有するものとなる。一般に、彩度が高い鮮やかな塗膜を形成するためには、多量の着色顔料が用いられる。しかしながら着色顔料を多量用いることによって、彩度が上がる一方で明度が下がり、色が濃く鮮やかであるものの暗い色となってしまう。一方で、例えば、黄色〜オレンジ色の色相が呈されるように着色顔料を選択し、これに一般的な光輝性顔料であるアルミニウム顔料を加えることによって、金色(ゴールド)を呈する、光輝感のある塗膜が得られると考えられる。しかしながらこのような塗膜は、着色顔料による色相発色と光輝性顔料による光輝性発色との組み合わせによる発色のため、ハイライト部では色飛びし白色化し、そしてシェード部では黒ずむことにより、何れも彩度が低くなるという不具合がある。これに対して、上記着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および、特定の着色顔料(c1)、(c2)を含む着色顔料(C)が含まれる光輝性ベース塗料組成物を用いることによって、光輝感があり、かつ彩度および明度が何れも高い複層塗膜が得られることとなった。
【0039】
本発明の方法においてはさらに、上記着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および、着色顔料(c1)、(c2)を含む着色顔料(C)が含まれる光輝性ベース塗料組成物を用いることによって、下地が白色であっても黒色であっても色相(H)が7YR〜5Yの範囲である複層塗膜が得られるという利点がある。これは、本発明において用いられる着色アルミニウム顔料(A)自体が、酸化鉄を含む被覆成分の層による反射効果を呈することに由来している。
【0040】
本発明においては、必要に応じて、上記着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(C)に加えて、その他の光輝性顔料、有機系の着色顔料、無機系の着色顔料、体質顔料などの顔料を、光輝性ベース塗料組成物に適宜配合してもよい。
【0041】
その他の光輝性顔料としては、例えば、天然または合成のアルミナ(Al)フレーク、天然または合成のシリカ(SiO)フレーク、天然または合成のマイカ(雲母)フレークまたはガラスフレークに、例えば、チタン、鉄、クロム、コバルト、スズ、ジルコニウムなどの金属の酸化物を被覆したもの、金属チタンフレーク、ステンレスフレーク、ガラスフレーク、マイカフレークなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
但しこれらのその他の顔料を用いる場合は、本発明における着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(C)によって呈される色相に悪影響を及ぼさない量であることを条件とする。
【0044】
光輝性ベース塗料組成物において、全顔料の濃度(PWC)は、5〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。5質量%未満では塗膜にした場合の下地隠蔽性が低下する恐れがあり、50質量%を超えると、仕上り外観が低下する恐れがある。
【0045】
塗膜形成性樹脂および硬化剤
光輝性ベース塗料組成物に含まれる上記塗膜形成性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂などが挙げられ、特に、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂が好ましく用いられる。これらは、2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記塗膜形成性樹脂には、硬化性を有するタイプとラッカータイプとがあるが、通常は硬化性を有するタイプのものが使用される。硬化性を有するタイプの場合には、アミノ樹脂および/またはブロックイソシアネート化合物、アミン系、ポリアミド系、多価カルボン酸などの硬化剤(または架橋剤)と混合して使用に供され、加熱または常温で硬化反応を進行させることができる。また、硬化性を有しないタイプの塗膜形成性樹脂を、硬化性を有するタイプと併用することも可能である。
【0046】
アクリル樹脂
アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーの共重合体、あるいは、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。上記共重合に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピルなどのエステル化物、アクリル酸またはメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミドなどが挙げられる。これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン(またはダイマー)、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどが挙げられる。また、当業者に公知の方法である、例えば特開2007−39615号公報に開示の方法に従って、アクリル樹脂を水性エマルション化して水性塗料とすることが好ましい。
【0047】
ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物が挙げられる。多塩基酸としては、例えば、飽和多塩基酸、不飽和多塩基酸などが挙げられ、飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸などが挙げられ、不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、二価アルコール、三価アルコールなどが挙げられ、二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられ、三価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0048】
アルキド樹脂
アルキド樹脂としては、上記多塩基酸と多価アルコールにさらに油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸など)、天然樹脂(ロジン、コハクなど)などの変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂を用いることができる。
【0049】
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂などを挙げることができる。ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールA、Fなどが挙げられる。上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも、シェルケミカル社製)などが挙げられ、またこれらを適当な鎖延長剤を用いて鎖延長したものも用いることができる。
【0050】
ポリウレタン樹脂
ポリウレタン樹脂としては、アクリル、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートなどの各種ポリオール成分とポリイソシアネート化合物とによって得られるウレタン結合を有する樹脂を挙げることができる。上記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、およびその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(2,4’−MDI)、およびその混合物(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロへキシルメタン・ジイソシアネート(水素化HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)などを挙げることができる。
【0051】
ポリエーテル樹脂
ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体または共重合体であり、ポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、ポリオキシブチレン系ポリエーテルもしくはビスフェノールAあるいはビスフェノールFなどの芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテルなどの1分子当たりに少なくとも2個の水酸基を有するポリエーテル樹脂を、または上記ポリエーテル樹脂とコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの多価カルボン酸類、あるいは、これらの酸無水物などの反応性誘導体とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエーテル樹脂を挙げることができる。
【0052】
上記塗膜形成性樹脂と硬化剤の割合としては、固形分換算で塗膜形成性樹脂が90〜50質量%、硬化剤が10〜50質量%であるのが好ましく、塗膜形成性樹脂が85〜60質量%であり、硬化剤が15〜40質量%であるのがより好ましい。硬化剤が10質量%未満では(塗膜形成性樹脂が90質量%を超えると)、塗膜中の架橋が十分でない場合がある。一方、硬化剤が50質量%を超えると(塗膜形成性樹脂が50質量%未満では)、塗料組成物の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなるため、塗膜外観が低下するおそれがある。
【0053】
その他の成分など
本発明で使用することのできる光輝性ベース塗料組成物には、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体であるポリエチレンワックスなどの沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコンや有機高分子などの表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤、有機アマイド、架橋樹脂粒子などを適宜添加することができる。これらの添加剤は、通常、塗膜形成性樹脂および硬化剤の総量100質量部(固形分基準)に対して、一般に15質量部以下の割合で配合することにより、塗料や塗膜の性能を改善することができる。
【0054】
本発明の光輝性ベース塗料組成物は、上記構成成分を、通常、溶媒に溶解または分散した態様で提供される。溶媒としては、塗膜形成性樹脂および硬化剤を溶解または分散するものであればよく、有機溶媒および/または水を使用することができる。有機溶媒としては、塗料分野において通常用いられるものを挙げることができる。例えば、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、アセトン、メチルエテルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブなどのエステル類、アルコール類などを例示できる。環境面の観点から、有機溶媒の使用が規制されている場合には、水を用いることが好ましい。この場合、適量の親水性有機溶媒を配合してもよい。
【0055】
本発明において使用することのできる光輝性ベース塗料組成物は、特に好ましい態様では、アクリル樹脂エマルションを含む塗膜形成性樹脂、アクリル樹脂と疎水性メラミン樹脂とを反応させた反応生成物を水分散することによって得られる粒径20〜140nmの疎水性メラミン樹脂水分散体を含む硬化剤を含有するものであってもよく、これによって、優れた発色性を有する塗膜を得ることができる。また、自動車塗装における複層塗膜形成方法において、上記の光輝性ベース塗料組成物を水性塗料として用いた場合、優れたリコート密着性、チッピング性、耐水付着性を有する塗膜を得ることができる。従って、上記の光輝性ベース塗料組成物は、水性光輝性ベース塗料組成物として好適に用いることができる。
【0056】
クリヤー塗料組成物
本発明の方法において、上記クリヤー塗膜は、クリヤー塗料組成物を用いて形成される。本発明の方法で使用することのできるクリヤー塗料組成物としては、特に限定はなく、上塗り塗装用として一般に使用されているクリヤー塗料組成物を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂およびこれらの変性樹脂などから選ばれた少なくとも1種の熱硬化性樹脂そして必要に応じた上記硬化剤を含むものなどを用いることができる。
【0057】
クリヤー塗料組成物は、必要に応じて、その透明性を損なわない範囲で、あるいは下地の意匠性を妨げない程度であれば、着色顔料、体質顔料、改質剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。また、特公平8−19315号公報に記載されたカルボキシル基含有ポリマーとエポキシ基含有ポリマーとを含有するクリヤー塗料組成物が、酸性雨対策という観点およびW/W法で上記光輝性ベース塗膜層を形成した際に、光輝性顔料および着色顔料の配向を乱さないという観点から、好ましく用いられる。また、クリヤー塗料組成物は、溶剤型、水性型、粉体型などの種々の形態をとることができる。溶剤型塗料または水性塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料などのような二液型塗料を用いてもよい。
【0058】
溶剤型クリヤー塗料組成物の好ましい例としては、透明性あるいは耐酸エッチング性などの点から、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂と、アミノ樹脂および/またはイソシアネートとの組み合わせ、あるいはカルボン酸/エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂などを挙げることができる。
【0059】
また、水性型クリヤー塗料組成物の例としては、上記溶剤型クリヤー塗料組成物の例として挙げたものに含有される塗膜形成性樹脂を、塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものを挙げることができる。この中和は重合の前または後に、ジメチルエタノールアミンおよびトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
【0060】
さらに、上記クリヤー塗料組成物には、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤が添加されていることが好ましい。粘性制御剤は、一般にチクソトロピー性を示すものを使用できる。例えば、このようなものとして、従来から公知のものを使用することができる。また、必要により、硬化触媒、表面調整剤などを含むことができる。
【0061】
なお、上記複層塗膜形成方法において用いられるクリヤー塗料組成物としては、有機溶媒の含有量による環境に与える影響の観点から、20℃におけるフォードカップNo.4で20〜50秒の粘度となるように希釈した時のクリヤー塗料組成物の固形分が50質量%以上である溶剤型クリヤー塗料組成物または水性型クリヤー塗料組成物、あるいは、粉体型クリヤー塗料組成物であることが好ましい。
【0062】
複層塗膜形成方法
本発明の方法は、被塗物上に、光輝性ベース塗膜およびクリヤー塗膜を順次形成する、複層塗膜形成方法である。
【0063】
被塗物
本発明の複層塗膜の形成方法において用いられる被塗物としては、特に限定されるものでなく、鉄、アルミニウム、マグネシウム、銅、スズ、亜鉛またはこれらの合金などの金属類およびその成形品;ガラス、セメント、コンクリートなどの無機材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂などの樹脂類や各種のFRPなどのプラスチック材料およびその成形品または発泡体;木材、繊維材料(紙、布など)などの天然または合成材料などが挙げられる。被塗物は、本発明によって得られる鮮やかな意匠を効果的に発現するため、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体および部品(自動車のボディ、ドアなど)のように、曲面を有しているものであることが好ましい。また、プラスチック成形品としては、具体的には、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブなどの自動車部品などを挙げることができる。さらに、これらのプラスチック成形品は、トリクロロエタンで蒸気洗浄または中性洗剤で洗浄されたものが好ましい。また、さらに、静電塗装を可能にするためのプライマー塗装が施されていてもよい。
【0064】
本発明の複層塗膜の形成方法においては、被塗物が自動車車体およびその部品などの場合には、導電性の被塗物を予め脱脂処理や化成処理(リン酸塩またはジルコニウム塩などによる化成処理など)を施した後、被塗物に電着塗装、中塗り塗装などの下地塗装を施しておくことが好ましい。
【0065】
電着塗装は、鋼板などの導電性の被塗物に電着塗膜を形成して防錆性を付与することを目的として行われるものである。このような電着塗膜を形成することのできる電着塗料組成物としては、特に限定はなく、当業者によく知られているカチオン型電着塗料組成物およびアニオン型電着塗料組成物をいずれも使用することができる。防錆性の観点からカチオン型電着塗料組成物が好ましく、なかでも、エポキシ系のカチオン型電着塗料組成物が特に好ましい。
【0066】
本発明において、被塗物が自動車車体または鋼板である場合、電着塗膜形成前に、脱脂、水洗、化成皮膜形成、水洗、純水洗、乾燥までの前処理を従来公知の方法で行うことが好ましい。電着塗膜形成方法は、従来公知の方法の中から、適当な方法を任意に選択すればよい。また、電着塗膜形成条件、焼き付け硬化条件、電着塗膜の厚さなどに関しても、被塗物の種類および使用する電着塗料組成物の種類などに応じて、適宜決定することができる。
【0067】
中塗り塗装は、必要に応じて形成された電着塗膜の上に中塗り塗膜層を形成して、下地隠蔽性、耐チッピング性、上塗り塗膜層との密着性などの性能の向上を目的として行われる。また中塗り塗膜層は、最終の光輝性複層塗膜を平滑にし、外観の良好な塗膜とするための下地としても機能する。中塗り塗膜層はさらに、電着塗膜層と上塗り塗膜層との間のバインダーとなり、かつ、塗膜表面を通じて到達する紫外線や水などによる塗膜の劣化に対する耐候性が要求される。
【0068】
中塗り塗膜層を形成することができる中塗り塗料組成物としては、特に制限はなく、当業者によく知られている溶剤型塗料のほか、水性塗料、粉体塗料またはハイソリッド型塗料なども用いることができる。具体的には、エポキシエステル/メラミン系樹脂、アルキッド/メラミン系樹脂またはオイルフリーポリエステル/メラミン系樹脂塗料、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂および/またはイソシアネート硬化剤とを組み合わせた中塗り塗料組成物など、従来公知の中塗り塗料組成物の中から適宜選択して用いることができる。
【0069】
中塗り塗膜層の形成方法は、従来公知の方法の中から適当な方法を任意に選択することができる。また、本発明では、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料としたグレー系中塗り塗料組成物や、上塗り塗膜層との明度および色相を合わせたセットグレーや各種の着色顔料を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料組成物を用いることができる。これらのカラー中塗り塗料組成物は、中塗り塗膜層と上塗り塗膜層との複合色を発現させ、意匠性をさらに高めることができる。また、これらの中塗り塗料組成物に、アルミニウム粉、マイカ粉などの扁平顔料を添加してもよい。さらに、中塗り塗料組成物には、塗料に通常添加することのできる添加剤、例えば、表面調整剤、酸化防止剤、消泡剤などを配合してもよい。中塗り塗膜層の乾燥膜厚は、20〜100μmが好ましく、より好ましくは30〜50μmである。
【0070】
中塗り塗膜層は、被塗物または電着塗膜の上に塗装された後、未硬化の状態でも用いることができ、また硬化させた状態で用いることもできる。上記中塗り塗膜を硬化させる場合には、硬化温度は100〜180℃、好ましくは120〜160℃に設定することで高い架橋度の硬化塗膜が得られる。上限を超えると、塗膜が固く脆くなり、下限以下では硬化が充分でない。硬化時間は硬化温度により変化するが、120℃〜160℃で10〜30分が適当である。
【0071】
光輝性ベース塗料組成物およびクリヤー塗料組成物の塗装
本発明の方法においては、上記被塗物上に、光輝性ベース塗料組成物およびクリヤー塗料組成物をこの順でウェットオンウェットで塗装し、次いでこれらの塗膜を同時に硬化させる、2コート1ベークの方法で塗膜形成を行うことが好ましい。また、上記被塗物上に、上記光輝性ベース塗料組成物を塗装して硬化させた後にクリヤー塗料組成物を塗装して硬化させる、2コート2ベーク塗装方法にも適用できる。
【0072】
上記光輝性ベース塗料組成物の塗装方法は、例えば、自動車車体などに塗装する場合には、意匠性を高めるためにエアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装、好ましくは2ステージで塗装する方法、あるいは、エアー静電スプレー塗装と、通称「μμ(マイクロマイクロ)ベル」、「μ(マイクロ)ベル」または「メタベル」などと言われる回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法であることが好ましい。
【0073】
上記光輝性ベース塗料組成物の塗布により形成される光輝性ベース塗膜の乾燥膜厚は所望の用途により変化するが、多くの場合、下限5μm、上限30μmであることが好ましい。5μm未満であると、下地が隠蔽できず膜切れが発生するおそれがある。30μmを超えると、塗装時に流れなどの不具合が生じるおそれがある。
【0074】
上記2コート1ベークにより複層塗膜を形成する場合においては、上記光輝性ベース塗料組成物を塗装した後、加熱硬化させることなく、クリヤー塗料組成物を塗装する工程に移る。この場合において、必要に応じて、クリヤー塗料組成物を塗装する前に、加熱硬化(焼付け)処理で用いられる温度より低い温度、例えば40〜100℃で1〜10分間加熱して水分などの溶媒を揮散させる、プレヒート工程を行ってもよい。
【0075】
上記クリヤー塗料組成物の塗装方法としては、上記光輝性ベース塗料組成物と同様に、上述の回転霧化式の静電塗装機により塗装する方法が好ましい。上記クリヤー塗料組成物により形成されるクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、一般に、下限20μm、上限70μmが好ましい。20μm未満であると、下地の凹凸の隠蔽が不充分であるおそれがある。70μmを超えると、塗装時にワキあるいはタレなどの不具合が生じるおそれがある。上記下限は25μmであることがより好ましく、上記上限は60μmであることがより好ましい。
【0076】
2コート1ベーク法においては上記光輝性ベース塗料組成物およびクリヤー塗料組成物を塗装した後、これらの未硬化の塗膜を硬化させる。硬化温度は、下限100℃、上限180℃であることが好ましい。100℃未満であると、硬化が不充分となるおそれがある。180℃を超えると、塗膜が固く脆くなるおそれがある。高い架橋度の硬化塗膜を得られる点で、下限は120℃であることがより好ましく、上限は160℃であることがより好ましい。硬化時間は硬化温度により変化するが、120〜160℃の場合、10〜30分が好ましい。
【0077】
また2コート2ベークにより複層塗膜を形成する場合は、上記光輝性ベース塗料組成物を塗装した後、例えば120〜160℃で10〜30分間加熱して硬化させ、次いでクリヤー塗料組成物を上記と同様に塗装した後に、例えば120〜160℃で10〜30分間加熱して、硬化させるのが好ましい。
【0078】
本発明の複層塗膜形成方法により形成される積層塗膜の膜厚は、下限30μm、上限300μmであることが好ましい。30μm未満であると、膜自体の強度が低下するおそれがあり、300μmを超えると、冷熱サイクルなどの膜物性が低下するおそれがある。上記下限は50μmであることがより好ましく、上記上限は250μmであることがより好ましい。
【実施例】
【0079】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0080】
製造例1:アクリル樹脂エマルション(Em−1)の調製
反応容器にイオン交換水135.4部、アクアロンHS−10(ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル、第一工業製薬社製)1.1部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、アクリル酸メチル35.73部、メタクリル酸ブチル8.57部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5.7部、スチレン20部、アクアロンHS−10が0.5部、アデカリアソープNE−20(α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−2−ノニルフェノキシ]エチル)−ω−ヒドロキシオキシエチレン、旭電化社製、80%水溶液)0.5部およびイオン交換水49.7部からなる第1段目のエチレン性不飽和モノマー混合物と、過硫酸アンモニウム0.21部およびイオン交換水8.6部からなる開始剤溶液とを、2時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。
【0081】
さらに、この反応容器に、メタクリル酸ブチル25.3部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2.4部、メタクリル酸2.3部、アクアロンHS−10が0.1部およびイオン交換水24.7部からなる第2段目のエチレン性不飽和モノマー混合物と、過硫酸アンモニウム0.08部およびイオン交換水7.4部からなる開始剤溶液とを、80℃で0.5時間にわたり並行して滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
【0082】
次いで、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した後、イオン交換水2.14部およびジメチルアミノエタノール0.24部を加えてpH6.5に調整し、平均粒子径80nm、不揮発分30%、固形分酸価15mgKOH/g、水酸基価35mgKOH/gのアクリル樹脂エマルション(Em−1)を得た。
【0083】
製造例2:水溶性アクリル樹脂の調製
反応容器にジプロピレングリコールメチルエーテル23.89部およびプロピレングリコールメチルエーテル16.11部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら105℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル13.1部、アクリル酸エチル68.4部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル11.6部、メタクリル酸6.9部と、ジプロピレングリコールメチルエーテル10.0部およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート1部からなる開始剤溶液とを、3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。
【0084】
次に、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
【0085】
さらに、脱溶剤装置を用いて、減圧下(70torr)110℃で溶剤を16.11部留去した後、イオン交換水204部およびジメチルエタノールアミン7.1部を加えて水溶性アクリル樹脂を得た。得られたアクリル樹脂溶液の不揮発分は30%、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/gであった。
【0086】
製造例3:疎水性メラミン樹脂水分散体(MFD−1)の調製
反応容器にMFDG(メチルプロピレンジグリコール、日本乳化剤社製)50部を添加し、窒素気流中で撹拌しながら130℃に昇温した。次いで、アクリル酸14.77部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル32.48部、アクリル酸ブチル47.75部、MSD−100(α−メチルスチレンダイマー、三井化学社製)5部からなるエチレン性不飽和モノマー混合物と、カヤエステルO(tert−ブチルパーオクタノエート、化薬アクゾ社製)13部およびMFDG10部からなる開始剤溶液とを3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後に0.5時間置いて、更にカヤエステルOが0.5部およびMFDGが5部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。次いで、50℃まで冷却し、不揮発分60%、固形分酸価110mgKOH/g、水酸基価140mgKOH/g、数平均分子量(Mn)=3000のアクリル樹脂(Ac1)を得た。
【0087】
得られたアクリル樹脂(Ac1)の178.5部を、ユーバン20SB(完全ブチル化メラミン樹脂、日本サイテック社製、不揮発分75%、Sp=9.6)800部と混合し、80℃で4時間撹拌した。その後、ジメチルエタノールアミンを18.3部加えて均一に分散し、40℃まで冷却した後、イオン交換水1003.2部を1時間で滴下することにより疎水性メラミン樹脂水分散体(MFD−1)を得た。この水分散体中の樹脂粒子の粒径は80nmであった。
【0088】
実施例1
光輝性ベース塗料組成物の調製
塗膜形成性樹脂として製造例1のアクリル樹脂エマルション(Em−1)を153.3部、10質量%ジメチルエタノールアミン水溶液5部、製造例2の水溶性アクリル樹脂を16.7部、プライムポールPX−1000(三洋化成工業社製、2官能ポリエーテルポリオール、数平均分子量1000、水酸基価278mgKOH/g、水トレランス無限大)10部、製造例3の疎水性メラミン樹脂水分散体(MFD−1)を100部、そして
着色アルミニウム顔料(A)として、BASF社製、パリオクロムゴールドL2025を5部、
アルミニウム顔料(B)として、旭化成工業社製、アルミニウム顔料ペースト「MH−8801」を固形分質量で5部、
着色顔料(c1)として、BASF社製、SICOTRANS RED L2818(酸化鉄レッド)を7部、
着色顔料(c2)として、LANXESS社製、BAYFAST YELLOW Y5688(アゾキレート系エロー顔料)を1部、
を配合した。さらに、エチレングリコールモノヘキシルエーテル30部を混合撹拌し、10質量%ジメチルアミノエタノール水溶液を加えてpH=8.5に調整し、均一に分散し、水性光輝性ベース塗料組成物を得た。得られた水性光輝性ベース塗料組成物の塗料粘度が20℃、No.4フォードカップで60秒となるようにイオン交換水を加えて希釈し、光輝性ベース塗料組成物を得た。
なお、着色アルミニウム顔料(A)であるパリオクロムゴールドL2025は、基材であるアルミニウムフレーク100質量部に対して、酸化鉄を蒸着法により17.5質量部被覆して得られた、平均粒径16μmである鱗片状光輝性顔料であった。また被覆成分である酸化鉄層の厚さは20nmであった。また着色アルミニウム顔料(A)のマンセル色相環に基づく色相は10YRであった。
また、上記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相をマンセル色相環100の基準(0位置)とした場合における左回り−50および右回り+50で表示した着色顔料(c1)の色相は−4.1であり、着色顔料(c2)の色相は3.5であった。
【0089】
複層塗膜の形成
ダル鋼板(長さ300mm、幅100mmおよび厚さ0.8mm)をリン酸亜鉛処理剤(「サーフダインSD2000」、日本ペイント社製)を使用して化成処理した後、カチオン電着塗料(「パワーニクス PN 310」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が25μmとなるように電着塗装した。次いで、160℃で30分間焼き付けた後、中塗り塗料として、ポリエステル/メラミン系グレー中塗り塗料(「オルガ P−30」、日本ペイント社製)を酢酸エチル/ソルベッソ100/ブチルジグリコールアセテート=1/1/1(質量比)を用いて、フォードカップNo.4による粘度が30秒となるように調整し、回転式静電塗装機を用いて中塗り塗装を行い、140℃で30分間の条件で焼き付け乾燥し、平均乾燥膜厚30μmの中塗り塗膜層を形成した。
【0090】
さらに、中塗り塗膜層の上に、上記光輝性ベース塗料組成物を平均乾燥膜厚が15μmになるようにスプレー塗装した。塗装は静電塗装機(「Auto REA」、ABBインダストリー社製)を用い、霧化圧2.0kg/cmで行った。塗装中のブースの雰囲気は温度25℃、湿度75%に保持した。塗装後3分間セッティングし、80℃で5分間プレヒートした後、その上にウェットオンウェットで、アクリル/メラミン樹脂系クリヤー塗料組成物(酸エポキシ硬化型アクリル樹脂系クリヤー塗料組成物、「マックフローO−1810」、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が35μmになるようにスプレー塗装し、室温で7分間セッティングし、140℃の温度で30分間焼き付けて、2コート1ベーク(2C1B)により複層塗膜を形成した。
【0091】
実施例2〜8および比較例1〜5
着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(C)を表1または2に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様に光輝性ベース塗料組成物を調製した。次いで、得られた光輝性ベース塗料組成物を用いて、実施例1と同様に複層塗膜を形成した。
表1、2中における、着色顔料(C)の「色相範囲」は、上記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相をマンセル色相環100の基準(0位置)とした場合における、左回り−50および右回り+50で表示した色相を意味する。
【0092】
上記実施例および比較例により得られた複層塗膜を用いて、下記評価を行った。
【0093】
複層塗膜の色相評価
実施例および比較例で得られた複層塗膜のマンセル表色系(JIS Z 8721)における色相(H)を、X−Lite社製多角度分光光度計「MA−68 II」によって測定した。結果を下記表に示す。
【0094】
複層塗膜の明度(L*)および彩度(C*)の測定
実施例および比較例で得られた複層塗膜について、明度(L*)および彩度(C*)を、以下に従い測定した。結果を下記表に示す。

明度(L*)
得られた複層塗膜に対して垂直位置から45°における角度から光源を照射し、その正反射位置から15°の角度で受光したL*値を、X−Lite社製多角度分光光度計「MA−68 II」を用いて測定した。こうして得られた測定値の平均値を算出することにより、受光角15度における明度(L*)を求めた。下記表中において「15L*」として示す。

彩度(C*)
得られた複層塗膜に対して垂直位置から45°における角度から光源を照射し、その正反射位置から15°の角度で受光したC*値を、X−Lite社製多角度分光光度計「MA−68 II」を用いて測定した。こうして得られた測定値の平均値を算出することにより、受光角15度における彩度(C*)を求めた。下記表中において「15C*」として示す。

なお図2は、上記明度(L*)および彩度(C*)の測定位置を示す概略説明図である。
【0095】
上記L*およびC*は、L*C*h表色系におけるパラメータであり、JIS Z8729に準拠して求めることができる。このL*C*h表色系は、国際照明委員会により定められた表色系であり、Section 4.2 of CIE Publication 15.2(1986)に記載されている。L*C*h表色系において、L*は明度を表し、C*は彩度を表し、hは色相角度を表す。明度L*は、その数値が増加するにしたがい被測定物質の色相が白色度が、その数値が低下するにしたがい黒色度が増すことを意味する。彩度C*は、この値が大きいほど被測定物の色が鮮やかであることを示す。一方、C*の値が小さい場合は、色味がない無彩色に近いことを示す。
【0096】
【表1】


【0097】
【表2】

【0098】
上記表1、2に示されるとおり、実施例における、着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)、そして着色顔料(c1)、(c2)の両方を含む着色顔料(C)を含む光輝性ベース塗料組成物を用いて得られた複層塗膜は、何れも明度(L*)100以上(特に102以上)、彩度(C*)85以上であり、高い明度および彩度を有していることが確認できた。またこれらの複層塗膜の色相(H)は何れも、7.5YR〜5Yの範囲にあり、目視において金色(ゴールド)の色相を呈していると認識できるものであった。
【0099】
比較例1は、着色アルミニウム顔料(A)が含まれない塗料組成物を用いた実験例である。この実験例においては、アルミニウム顔料(B)が含まれることによってハイライト部の明度(15L*)は101と、ある程度高いものの、ハイライト部の彩度(15C*)は85未満と低かった。
【0100】
比較例2は、着色アルミニウム顔料(A)が含まれず、かつ本発明における着色顔料(c2)に該当する着色顔料が含まれない塗料組成物を用いた実験例である。この実験例においてもまた、アルミニウム顔料(B)が含まれることによってハイライト部の明度(15L*)は101.3と、ある程度高いものの、ハイライト部の彩度(15C*)は85未満と低かった。また得られた複層塗膜の色相(H)は5YRであり、オレンジがかった塗膜となった。
【0101】
比較例3は、着色アルミニウム顔料(A)およびアルミニウム顔料(B)は含まれるものの、着色顔料(C)として着色顔料(c1)のみを含む塗料組成物を用いた実験例である。この実験例においてもまた、ハイライト部の明度(15L*)は101.5とある程度高いものの、ハイライト部の彩度(15C*)は85未満と低かった。また得られた複層塗膜の色相(H)は5YRであり、オレンジがかった塗膜となった。なおこの比較例3から、着色顔料(C)として着色顔料(c1)、(c2)の両方を含むものを用いる必要があることが確認できる。
【0102】
比較例4は、着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(c2)は含まれるものの、着色顔料(c1)に相当する顔料の色相範囲が−15よりも低い着色顔料を含む塗料組成物を用いた実験例である。この実験例においては、ハイライト部の明度(15L*)およびハイライト部の彩度(15C*)が共に大きく低下することとなった。
【0103】
比較例5は、着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(c1)は含まれるものの、着色顔料(c2)に相当する顔料の色相範囲が+15よりも大きい着色顔料を含む塗料組成物を用いた実験例である。この実験例においてもまた、ハイライト部の明度(15L*)およびハイライト部の彩度(15C*)が共に大きく低下することとなった。
【0104】
図3は、上記実施例および比較例により得られた複層塗膜のハイライト部の明度(15L*)およびハイライト部の彩度(15C*)の数値を示すグラフ図である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の複層塗膜形成方法によって得られる複層塗膜は、金色(ゴールド)の色相であって光輝感があり、そして彩度および明度が何れも高いという特徴を有している。本発明の方法を、自動車車体および部品などの塗装に適用することにより、鮮やかな塗膜を形成することができ、独自の意匠を付与することができるという利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に、着色アルミニウム顔料(A)、アルミニウム顔料(B)および着色顔料(C)を含む光輝性ベース塗膜を形成し、更にクリヤー塗膜を形成して、マンセル表色系の色相(H)が7.5YR〜5Yである複層塗膜を形成する、複層塗膜形成方法であって、
前記着色アルミニウム顔料(A)は、基材であるアルミニウムフレーク100質量部に対して、少なくとも酸化鉄を含む被覆成分を蒸着法により10〜25質量部被覆して得られた、平均粒径5〜25μmである鱗片状光輝性顔料であり、
前記着色顔料(C)は、前記着色アルミニウム顔料(A)が奏でる色相をマンセル色相環100の基準(0位置)とした場合、左回り−50および右回り+50で表示した色相の、−3〜−15の色相範囲を奏でる着色顔料(c1)、および+3〜+15の色相範囲を奏でる着色顔料(c2)の2種類を少なくとも含む着色顔料である、
複層塗膜形成方法。
【請求項2】
前記光輝性ベース塗膜を形成する光輝性ベース塗料組成物中における前記着色アルミニウム顔料(A)の顔料濃度(PWC)は1〜10質量%であり、および前記着色アルミニウム顔料(A)および前記アルミニウム顔料(B)の質量比は、(A)/(B)=1/5〜10/5である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
前記光輝性ベース塗膜を形成する光輝性ベース塗料組成物中における前記着色顔料(c1)および前記着色顔料(c2)の質量比は、(c1)/(c2)=9/1〜3/7である、請求項1または2記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
前記着色アルミニウム顔料(A)は、アルミニウムフレークを被覆する被覆成分中における酸化鉄の割合が90〜100質量%であり、および前記被覆成分の厚さが10〜30nmである、請求項1〜3いずれかに記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の複層塗膜形成方法により得られた複層塗膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−251252(P2011−251252A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126822(P2010−126822)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】