説明

複層塗膜形成方法

【課題】ハイライト(正反射光近傍)においては高明度で、ハイライトとシェード(斜め方向)の明度差が大きな塗色を形成可能であって且つ、大面積に適用した場合においても色ムラを生じることなく、仕上がりが均一な塗膜が得られる複層塗膜形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、被塗物に着色顔料及び/又は鱗片状光輝性顔料を含む第1ベース塗膜、クリヤー塗膜、鱗片状光輝性顔料を含む第2ベース塗膜及びクリヤー塗膜を順次形成せしめた複層塗膜形成方法であって、第1ベース塗膜と、さらに第2ベース塗膜を積層した複層塗膜との、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときの明度差ΔL45と、正反射光に対して75度で受光したときの明度差ΔL75の少なくとも一方が10以下である複層塗膜形成方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイライト(正反射光近傍)においては高明度で、ハイライトとシェード(斜め方向)の明度差が大きな塗色を形成可能であって且つ、大面積に適用した場合においても色ムラを生じることなく、仕上がりが均一な塗膜が得られる複層塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の工業製品の外装色においては、観察角度によって色の見え方が変化するメタリック塗色が主流を占めている。メタリック塗色の中でも、ハイライト(正反射光近傍)で高明度であり、ハイライトからシェード(斜め方向)への色変化が大きな塗色は、適用される工業製品の造形を際立たせる効果があり、人気の塗色となっている。このようなメタリック塗色は、通常、鱗片状光輝性顔料を含有する塗料を塗装して得ることができる。メタリック塗色を大面積に適用した場合、鱗片状光輝性顔料の塗膜内における偏在や塗装膜厚のばらつき等の理由により、明度や色相、光輝感が不均一になる場合があり、仕上がりが不十分になってしまう問題点があった。
【0003】
特許文献1は、アルミニウム調メタリック塗膜の外観ムラを防止することができる光輝性塗膜形成方法に関するものであり、被塗基材上に、アルミニウムフレーク顔料を含有する光輝性ベース塗膜およびクリヤートップ塗膜によるアルミニウム調メタリック塗膜を形成する際に、被塗基材の表面のL値を特定の範囲とすることや、二酸化珪素被覆したアルミニウムフレーク顔料を使用することが開示されている。特許文献1に開示された塗膜形成方法によって得られた塗膜は、外観ムラが少ないものではあるが、鱗片状光輝性顔料として二酸化珪素被覆したアルミニウムフレーク顔料を用いるため、ハイライト(正反射光近傍)の明度やハイライトからシェード(斜め方向)への色変化が不足する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−270896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ハイライト(正反射光近傍)においては高明度で、ハイライトとシェード(斜め方向)の明度差が大きな塗色を形成可能であって且つ、大面積に適用した場合においても色ムラが生じることなく、仕上がりが均一な塗膜が得られる複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
1.被塗物に着色顔料及び/又は鱗片状光輝性顔料を含む第1ベース塗料を塗装して得られる第1ベース塗膜、クリヤー塗膜、鱗片状光輝性顔料を含む第2ベース塗料を塗装して得られる第2ベース塗膜及びクリヤー塗膜を順次形成して得られる複層塗膜形成方法であって、第1ベース塗膜と、さらに第2ベース塗膜を積層した複層塗膜との、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における明度差ΔL45と、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して75度で受光したときの明度差ΔL75の少なくとも一方が10以下である複層塗膜形成方法、
2.複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのXYZ表色系におけるY15と、45度で受光したときのY45とから次式FF=2×(Y15−Y45)/(Y15+Y45)によって計算されるFF値が1.10〜1.80の範囲内である1項に記載の複層塗膜形成方法、
3.複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して25度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L25が60〜110の範囲内である1項又は2項に記載の複層塗膜形成方法、
4.第1ベース塗料に含まれる鱗片状光輝性顔料が、鱗片状アルミニウム顔料である1〜3項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
5.第2ベース塗料に含まれる鱗片状光輝性顔料が、鱗片状アルミニウム顔料、鱗片状光干渉性顔料から選ばれるものである1〜4項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
6.第2ベース塗料に含まれる鱗片状光干渉性顔料が、金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆合成マイカ顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料から選ばれる1種以上である5項に記載の複層塗膜形成方法、
7.第1ベース塗料による塗膜上に第2ベース塗料を硬化塗膜とし10μmとなるように塗装して乾燥せしめて得られた塗膜と、第1ベース塗料による塗膜上に第2ベース塗料を硬化塗膜として20μmとなるように塗装して乾燥せしめて得られた塗膜との、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における色差Δeが5以下である1〜6項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハイライト(正反射光近傍)においては高明度で、ハイライトとシェード(斜め方向)の明度差が大きな塗色を形成可能であって且つ、大面積に適用した場合においても色や仕上がりが均一な塗膜が得られる複層塗膜形成方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の複層塗膜形成方法は、後述する被塗物に第1ベース塗料を塗装し、塗装して得られた未硬化又は硬化した塗膜上にクリヤー塗料を塗装し、乾燥させて得られた第1ベース塗膜とクリヤー塗膜との複層塗膜上に後述する第2ベース塗料を塗装し、塗装して得られた未硬化又は硬化した塗膜上にさらにクリヤー塗料を塗装する。
【0009】
本発明の第1ベース塗料は、着色顔料及び/又は鱗片状光輝性顔料を含有する。着色顔料は、複層塗膜の色相及び明度を決定する顔料であり、第1ベース塗料における着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、酸化チタン顔料、酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化物顔料等の無機顔料やアゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料、カーボンブラック顔料等の中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0010】
本発明の第1ベース塗料には、複層塗膜の明度の点から着色顔料として、酸化チタン顔料を配合することが好ましい。酸化チタン顔料は、屈折率が高いことから白色顔料として広く使用されているものであり、結晶形によってルチル型とアナターゼ型があり、本発明においてはいずれを使用しても良いが、耐候性の点からルチル型を使用することができる。また、分散性や耐候性を向上させることを目的として、表面をシリカ、ジルコニウム、アルミニウム等の無機化合物で処理したものを使用しても良い。塗膜の隠蔽力の点から、一次粒子径が100〜400nmの範囲内のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは、200〜300nmの範囲内のものである。
【0011】
第1ベース塗料に酸化チタン顔料を配合せしめる場合、その含有量は、複層塗膜のハイライトにおける白さの点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.01〜200質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.03〜150質量部、特に好ましくは0.05〜100質量部の範囲内であることが好ましい。
【0012】
第1ベース塗料には、酸化チタン顔料の他にも、複層塗膜の色相や明度を微調整することを目的として、前記例示した着色顔料の中から酸化チタン顔料以外の着色顔料を配合することができる。
【0013】
本発明において、第1ベース塗料に酸化チタン顔料以外の着色顔料を配合せしめる場合その含有量は、複層塗膜のハイライトにおける白さの点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.01〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.03〜25質量部、特に好ましくは0.05〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0014】
着色顔料や必要に応じて配合される体質顔料などの配合は、粉体として配合することができるが、後述する樹脂成分の一部を使用して顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分に他の成分と共に添加することにより行なうこともできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤などの慣用の添加剤を使用することができる。
【0015】
本発明の第1ベース塗料には、複層塗膜のハイライトにおいては明度を高くせしめ、ハイライトとシェードとの明度差を大きくせしめることを目的として、鱗片状光輝性顔料を配合することができる。
【0016】
鱗片状光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料、表面に酸化還元反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料、アルミニウム固溶板状酸化鉄顔料、ガラスフレーク顔料、表面を金属酸化物で被覆したガラスフレーク顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたガラスフレーク顔料、表面を金属で被覆したガラスフレーク顔料、表面を二酸化チタンで被覆した干渉マイカ顔料、干渉マイカ顔料を還元した還元マイカ顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたり、表面を酸化鉄で被覆した着色マイカ顔料、表面を二酸化チタンで被覆したグラファイト顔料、表面を二酸化チタンで被覆したシリカフレークやアルミナフレーク顔料、板状酸化鉄顔料、ホログラム顔料、合成マイカ顔料、らせん構造を持つコレステリック液晶ポリマー顔料、オキシ塩化ビスマス顔料などが挙げられる。これらのうち、鱗片状金属顔料が、被塗物を隠蔽する点や複層塗膜のハイライトとシェードの明度差の点から好ましく、特に鱗片状アルミニウム顔料が好ましいが、特に限定されるものではなく、複層塗膜に求める色に応じて適宜使用することができる。
【0017】
上記鱗片状光輝性顔料の大きさは、平均粒径が5〜30μmの範囲内のものを使用することが、塗装された塗膜の仕上がり性やハイライトの明度の点から好ましく、より好ましくは平均粒子径が7〜25μmの範囲内もの、特に好ましくは8〜23μmの範囲内ものである。厚さは0.05〜0.5μmの範囲内のものを使用することが好ましい。ここでいう粒子径及び厚さは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡で該鱗片状光輝性顔料を観察して得られた数値又はレーザー回折法等のレーザーを用いた粒度分布測定装置で測定された数値を意味する。
【0018】
本発明の第1ベース塗料に鱗片状光輝性顔料を配合せしめる場合その含有量は、第1ベース塗膜と、さらに第2ベース塗膜を積層した複層塗膜との、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における明度差ΔL45と、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して75度で受光したときの明度差ΔL75の少なくともいずれか一方を10以下にせしめる点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.01〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.03〜25質量部、特に好ましくは0.05〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0019】
本発明の第1ベース塗料は、通常、ビヒクルとして、樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、具体的には、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤とを併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散して使用される。
【0020】
さらに、本発明の第1ベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0021】
本発明の第1ベース塗料は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗装時の固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、12〜60質量%、好ましくは15〜50質量%に調整しておくことが好ましい。
【0022】
本発明方法において、前記第1ベース塗料は、後述する被塗物に静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜30μmの範囲内とするのが、塗膜の平滑性の点から好ましい。通常、所定の膜厚となるように塗装した後に、加熱し、乾燥硬化せしめることができるが、未硬化の状態で後述するクリヤー塗料を塗装することができる。本発明の第1ベース塗料の塗膜それ自体は、焼き付け乾燥型の場合、通常、約50〜約180℃の温度で架橋硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で硬化させることができる。
【0023】
本発明方法におけるクリヤー塗料は、樹脂成分および溶剤を主成分とし、さらに必要に応じてその他の塗料用添加剤などを配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状塗料である。
【0024】
本発明方法におけるクリヤー塗料としては、従来公知のものが制限なく使用できる。例
えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が適用できる。基
体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの架橋性
官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレ
タン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基
と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシ
アネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水
物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や
有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、酸化
防止剤、表面調整剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0025】
本発明方法におけるクリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料
を適時配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔
料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決
定されて良いが、クリヤー塗膜中の樹脂固形分100質量部に対して、固形分として30
質量部以下、好ましくは0.01〜15質量部、特に好ましくは0.01〜10質量部の範囲内である。
【0026】
本発明方法におけるクリヤー塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて15〜70μmの範囲内とするのが好ましい。クリヤー塗料の塗膜それ自体は、焼き付け乾燥型の場合、通常、約50〜約180℃の温度で架橋硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0027】
本発明の塗膜形成方法においては、上記クリヤー塗料を塗装後、硬化せしめて得られた塗膜上に第2ベース塗料を塗装する。
【0028】
本発明の塗膜形成方法における第2ベース塗料は、鱗片状光輝性顔料を含む。第2ベース塗料における鱗片状光輝性顔料としても第1ベース塗料における鱗片状光輝性顔料として例示したものを同様に使用することができるが、第2ベース塗料においては特に、鱗片状アルミニウム顔料や透明な基材を二酸化チタンで被覆した干渉性光輝性顔料を使用することが、複層塗膜の質感の点から好ましい。
【0029】
第2ベース塗料に鱗片状アルミニウム顔料を含有せしめた場合、複層塗膜のハイライトの明度を高くすることができ、ハイライトとシェードの明度差を大きくすることができる。
鱗片状アルミニウム顔料の量は適宜決定させることができるが、複層塗膜のハイライトの明度や仕上がり性の点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.01〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.03〜25質量部、特に好ましくは0.05〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0030】
第2ベース塗料に透明な基材を二酸化チタンで被覆した干渉性光輝性顔料を含有せしめた場合、複層塗膜に粒子感を付与したり、ハイライトで干渉色を発現させることができる。干渉性光輝性顔料としては、マイカ、合成マイカ、シリカフレーク、アルミナフレークやガラスフレーク等の透明な鱗片状基材を二酸化チタンで被覆せしめたものを使用することができる。干渉性光輝性顔料の量は適宜決定させることができるが、上記粒子感や干渉色の発現を効果的に行うこと及び複層塗膜の仕上がり性の点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.01〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.03〜25質量部、特に好ましくは0.05〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0031】
本発明の第2ベース塗料は、着色顔料を含んでいてもよい。第2ベース塗料における着色顔料としても、上記第1ベース塗料における着色顔料として例示したものの中から適宜選択して用いることができるが、第2ベース塗料における着色顔料としては、複層塗膜の彩度を高くする点から、特に透明性着色顔料を使用することができる。透明性着色顔料とは、平均一次粒子径が小さく、塗膜中に分散された場合において透明な塗膜が得られる顔料を意味し、具体的には、平均一次粒子径が200nm以下である顔料を意味する。透明性着色顔料としては、具体的には、透明性酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等の中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明の第2ベース塗料に着色顔料を配合せしめる場合その含有量は、複層塗膜の彩度を高くする点から、塗料中の樹脂固形分100質量部に対し0.01〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.03〜25質量部、特に好ましくは0.05〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0033】
本発明の第2ベース塗料は、通常、ビヒクルとして、樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、具体的には、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤とを併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散して使用される。
【0034】
さらに、本発明の第2ベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0035】
本発明の第2ベース塗料は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗装時の固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、12〜60質量%、好ましくは15〜50質量%に調整しておくことが好ましい。
【0036】
本発明方法において、前記第2ベース塗料は、前記クリヤー塗膜上に静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜30μmの範囲内とするのが、塗膜の平滑性の点から好ましい。通常、所定の膜厚となるように塗装した後に、加熱し、乾燥硬化せしめることができるが、未硬化の状態で後述するクリヤー塗料を塗装することができる。本発明の第2ベース塗料の塗膜それ自体は、焼き付け乾燥型の場合、通常、約50〜約180℃の温度で架橋硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で硬化させることができる。
【0037】
本発明の塗膜形成方法においては、被塗物に第1ベース塗料を塗装して得られる第1ベース塗膜と、さらに第2ベース塗料を塗装して得られる第2ベース塗膜を積層した複層塗膜の、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における明度差ΔL45と、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して75度で受光したときの明度差ΔL75の少なくともいずれか一方を10以下になるように、前記第1ベース塗料及び第2ベース塗料に配合する着色顔料及び鱗片状光輝性顔料の種類や量を調整する。
【0038】
本明細書において、上記明度差は、次に示す測定方法で得られた数値として定義するものとする。
【0039】
第1ベース塗料を、塗装に適正な粘度となるように、有機溶剤又は水で希釈及び/又はレオロジーコントロール剤を添加し、予めN−6の中塗塗膜が形成された平滑な試験板にエアスプレーを用いて、乾燥塗膜として15μmとなるように塗装し、室温にて15分間放置した後に乾燥し、第1ベース塗膜を形成せしめる。得られた塗膜を、MA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−Rite社製)を使用して、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して45度の角度で受光した場合の分光反射率及び75度で受光した場合の分光反射率を測定し、得られた分光反射率からL*a*b*表色系における明度を計算する。
【0040】
さらに、第1ベース塗膜上に第2ベース塗料を、塗装に適正な粘度となるように、有機溶剤又は水で希釈及び/又はレオロジーコントロール剤を添加し、エアスプレーを用いて、乾燥塗膜として15μmとなるように塗装し、室温にて15分間放置した後に乾燥し、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜との複層塗膜を形成せしめる。
得られた複層塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度の角度で受光したときの明度及び75度で受光したときの明度を第1ベース塗膜における測定方法と同様にして求める。このようにして得られたおのおのの明度の差分をΔLとする。
【0041】
本発明の塗膜形成方法においては、複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのXYZ表色系におけるY15と、45度で受光したときのY45とから次式FF=2×(Y15−Y45)/(Y15+Y45)によって計算されるFF値が1.10〜1.80の範囲内、好ましくは1.15〜1.80の範囲内、さらに好ましくは1.20〜1.80の範囲内となるように、前記第1ベース塗料及び第2ベース塗料に配合する着色顔料及び鱗片状光輝性顔料の種類や量を調整する。
【0042】
本発明の複層塗膜形成方法においては、複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して25度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L25が60〜110の範囲内となるように、前記第1ベース塗料及び第2ベース塗料に配合する着色顔料及び鱗片状光輝性顔料の種類や量を調整する。
【0043】
本明細書において上記FF値並びに明度L25は、次に示す測定方法で得られた数値として定義するものとする。
【0044】
前記ΔLを計算する場合と同様にして、FF値は、第1ベース塗膜及びさらに第2ベース塗膜が積層された複層塗膜を形成し、複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのXYZ表色系におけるY15と、45度で受光したときのY45とから次式FF=2×(Y15−Y45)/(Y15+Y45)によって計算され、また、L25は、複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して25度で受光したときの分光反射率から、L*a*b*表色系における明度L25を計算によって求める。なお、該分光反射率は、MA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−Rite社製)を使用して得られた測定値とする。
【0045】
本発明の複層塗膜形成方法において、第1ベース塗料による塗膜上に第2ベース塗料を硬化塗膜とし10μmとなるように塗装して乾燥せしめて得られた塗膜と、第1ベース塗料による塗膜上に第2ベース塗料を硬化塗膜として20μmとなるように塗装して乾燥せしめて得られた塗膜との、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における色差ΔEが5以下、好ましくはΔEが4.5以下、さらに好ましくはΔEが4以下となるように、前記第2ベース塗料に配合する着色顔料及び鱗片状光輝性顔料の種類や量を調整する。
【0046】
本明細書において上記色差ΔEは、次に示す測定方法で得られた数値として定義するものとする。
【0047】
前記ΔLを計算する場合と同様にして、第1ベース塗膜及び、さらに第2ベース塗膜が積層した複層塗膜を形成せしめる。得られた第1ベース塗膜と、複層塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における色差ΔEをMA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−Rite社製)を使用して得られた分光反射率から計算によって求める。
【0048】
本発明の塗膜形成方法においては、上記第2ベース塗料を塗装後、第2ベース塗料が硬化又は未硬化で第2ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装する。
【0049】
第2ベース塗膜上に塗装するクリヤー塗料は、上記第1ベース塗膜上に塗装するクリヤー塗料と同様のものを使用することができる。
【0050】
第2ベース塗膜上に塗装するクリヤー塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて15〜70μmの範囲内とするのが好ましい。クリヤー塗料の塗膜それ自体は、焼き付け乾燥型の場合、通常、約50〜約180℃の温度で架橋硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0051】
本発明方法における被塗物(基材)について説明する。被塗物(基材)としては、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属やこれらを含む合金、及びこれらの金属によるメッキまたは蒸着が施された成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。さらにこれらの素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理を行なったものを被塗物(基材)としてもよい。さらに、上記金属や成形物に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させたものを被塗物(基材)とすることもできる。
【0052】
上記下塗り塗膜とは、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与するために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。この下塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー等を挙げることができる。
【0053】
また、上記中塗り塗膜とは、素材表面や下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与したり、複層塗膜における明度を調整するために形成されるものであり、素材表面や下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。中塗り塗料種は、特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を必須成分とする有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用できる。
【0054】
特に被塗物として、各種素材や成形物に下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を形成させたものを用いる場合には、下塗り塗膜及び中塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に前述の第1ベース塗料を塗装することができる。あるいは、下塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に中塗り塗膜を形成せしめ、中塗り塗膜が未硬化の状態で、前述の第1ベース塗料を塗装することもできる。又は、下塗り塗膜及び中塗り塗膜が未硬化の状態で前述の第1ベース塗料を塗装してもよい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
実施例,比較例
(製造例1)水酸基含有アクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート50部を仕込み、撹拌混合し、135℃に昇温した。次いで下記のモノマー/重合開始剤の混合物を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート10部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.6部からなる混合物を同温度に保持した1時間30分かけて滴下し、さらに2時間熟成した。次にエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを減圧下で留去し、水酸基価54mgKOH/g、数平均分子量20,000、樹脂固形分65%の水酸基含有アクリル樹脂を得た。ここで数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものを意味する。
モノマー/重合開始剤の混合物:
メチルメタクリレート38部、エチルアクリレート17部、n−ブチルアクリレート17部、ヒドロキシエチルメタクリレート7部、ラウリルメタクリレート20部及びアクリル酸1部及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)2部からなる混合物。
【0056】
(塗料組成物の調製)
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂75部、ユーバン28−60(商品名、ブチルエーテル化メラミン樹脂、三井化学社製)25部からなる樹脂成分100部(固形分)あたり、光輝性顔料及び着色顔料を表1に示す比率で配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調製し、実施例及び比較例に使用する塗料組成物を調製した。
【0057】
【表1】

【0058】
(試験板の作成)
基材の調整
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0059】
得られた電着塗面に、中塗り塗料「ルーガベーク中塗りグレー」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗り塗膜を形成した塗板を基材とした。
塗装
(実施例1)上記基材に第1ベース塗料として、塗料組成物1をエアスプレーを用いて、硬化塗膜として15μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置し、クリヤー塗料(ルーガベーククリヤー、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて第1ベース塗料による塗膜上にクリヤー塗料による塗膜が積層した複層塗膜を得た。その後に第2ベース塗料として、塗料組成物5をエアスプレーを用いて、硬化塗膜として15μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置し、クリヤー塗料(ルーガベーククリヤー、関西ペイント製、商品名、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を硬化塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板を得た。
(実施例2〜4,比較例1〜52)表2に示した構成で、実施例と同様にして試験板を作成した。
【0060】
【表2】

【0061】
1)第1ベース塗膜と、さらに第2ベース塗膜が積層した塗膜との明度差
上記試験板作成時に第1ベース塗料を塗装する際に、別途、予め溶剤脱脂した平滑なブリキ板(150mm×70mm×0.3mm)を上記試験板と併せて塗装し、室温約20℃の実験室に15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し乾燥硬化せしめて、各実施例及び比較例に使用する第1ベース塗膜を得た。
【0062】
得られた第1ベース塗膜の半分の面積に対して、車両用マスキングテープを貼り付けた後に、上記実施例及び比較例に適用した第2ベース塗料を、エアスプレーを用いて、硬化塗膜として15μmとなるように塗装し、室温約20℃の実験室に約15分静置し、140℃で30分間加熱し乾燥硬化せしめて、各実施例及び比較例に使用する第1ベース塗膜上に第2ベース塗膜が積層した複層塗膜を得た。
【0063】
得られた各々の複層塗膜を、MA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−Rite社製)を使用して、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して45度の角度で受光した場合の分光反射率及び75度で受光した場合の分光反射率を測定し、得られた分光反射率からL*a*b*表色系における明度を計算する。
【0064】
得られた第1ベース塗膜の受光角度45度の明度と複層塗膜の受光角度45度の明度との差分である明度差ΔL45、第1ベース塗膜の受光角度75度の明度と複層塗膜の受光角度75度の明度との差分である明度差ΔL75を表2に示した。
2)FF(フリップフロップ)値
複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのXYZ表色系におけるY15と、45度で受光したときのY45をMA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−Rite社製)を使用して得られた分光反射率から計算によって求め、得られたY15及びY45から、式:FF=2×(Y15−Y45)/(Y15+Y45)によって計算して得られたFF値を表2に示した。
3)複層塗膜の明度
複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して25度で受光したときの分光反射率をMA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−Rite社製)を使用して測定し、L*a*b*表色系における明度L25を計算によって求め、結果を表2に示した。
4)△E(色差)
前記ΔLを計算する場合と同様にして、第1ベース塗膜を形成し、得られた第1ベース塗膜に、前記ΔLを計算する場合と同様に調製した第2ベース塗料を、硬化塗膜として10μmの膜厚となるように塗装し、室温約20℃の実験室に約15分静置し、140℃で30分間加熱し乾燥硬化せしめて、第1ベース塗膜と膜厚10μmの第2ベース塗膜が積層した第1の複層塗膜を形成せしめた。また、第1ベース塗膜に、前記ΔLを計算する場合と同様に調製した第2ベース塗料を、硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装し、室温約20℃の実験室に約15分静置し、140℃で30分間加熱し乾燥硬化せしめて、第1ベース塗膜と膜厚20μmの第2ベース塗膜が積層した第2の複層塗膜を形成せしめる。得られた第1の複層塗膜と第2の複層塗膜の塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における色差ΔeをMA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−Rite社製)を使用して得られた分光反射率から計算によって求めて表2に示した。
5)色ムラの評価
自動車外板用塗料の開発に5年以上の経験を有する技術者及びデザイナー5名が、直射日光が当たらない屋外において、試験板の角度を変えながら観察し、色ムラの程度を以下に示す基準で評価した。
【0065】
4:色ムラがない。
【0066】
3:色ムラがわずかにある。
【0067】
2:色ムラがある。
【0068】
1:色ムラが著しい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車外板に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に着色顔料及び/又は鱗片状光輝性顔料を含む第1ベース塗料を塗装して得られる第1ベース塗膜、クリヤー塗膜、鱗片状光輝性顔料を含む第2ベース塗料を塗装して得られる第2ベース塗膜及びクリヤー塗膜を順次形成して得られる複層塗膜形成方法であって、第1ベース塗膜と、さらに第2ベース塗膜を積層した複層塗膜との、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における明度差ΔL45と、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して75度で受光したときの明度差ΔL75の少なくとも一方が10以下である複層塗膜形成方法。
【請求項2】
複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのXYZ表色系におけるY15と、45度で受光したときのY45とから次式FF=2×(Y15−Y45)/(Y15+Y45)によって計算されるFF値が1.10〜1.80の範囲内である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
複層塗膜に45度から照射した光を正反射光に対して25度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L25が60〜110の範囲内である請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
第1ベース塗料に含まれる鱗片状光輝性顔料が、鱗片状アルミニウム顔料である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
第2ベース塗料に含まれる鱗片状光輝性顔料が、鱗片状アルミニウム顔料、鱗片状光干渉性顔料から選ばれるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
第2ベース塗料に含まれる鱗片状光干渉性顔料が、金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆合成マイカ顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料から選ばれる1種以上である5項に記載の複層塗膜形成方法、
【請求項7】
第1ベース塗料による塗膜上に第2ベース塗料を硬化塗膜とし10μmとなるように塗装して乾燥せしめて得られた塗膜と、第1ベース塗料による塗膜上に第2ベース塗料を硬化塗膜として20μmとなるように塗装して乾燥せしめて得られた塗膜との、塗膜に対して45度から照射した光を正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における色差Δeが5以下である請求項1〜6項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。

【公開番号】特開2012−170909(P2012−170909A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36392(P2011−36392)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】