説明

複層塗膜形成方法

【課題】 各種工業製品、特に自動車の外板に適用可能な白色度が高く、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成し得る複層塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、基材に、白色ベース塗膜、蛍光顔料含有ベース塗膜及びクリヤー塗膜を順次積層せしめることからなる複層塗膜の形成方法であって、白色ベース塗膜及び蛍光顔料含有ベース塗膜がビヒクル形成成分として水酸基含有樹脂及びイソシアネート化合物を含有するウレタン化反応により架橋硬化し得る樹脂組成物を含んでなり且つ蛍光顔料含有ベース塗膜が化学式(Ba1−x―yCaEu)MgAl1017(式中、xは0≦x≦0.33であり、yは0.07≦y≦0.35であり、かつ0.1≦x+y≦0.4である)で示される蛍光顔料を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色度が高く、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成し得る複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の工業製品の外装色においては、高級感及び清潔感を併せ持つ白色系の塗色は、従来から継続して人気が高い塗色となっている。白色系の塗色は、着色顔料として白色酸化チタン顔料を含む塗料を基材に塗装することによって得られるが、着色顔料として白色酸化チタン顔料のみを含む塗料による塗色は、黄味や赤味が感じられることがあり、高級感が十分でないという問題点がある。
【0003】
これまで、赤味や黄味を感じさせない塗色を得るために、着色顔料として、黒色顔料や青色顔料を少量併用する手法がとられてきた。この手法によれば、黄味や赤味を低減することができるが、白色酸化チタン顔料以外の着色顔料を併用することによって、明度が低下するという問題点がある。
【0004】
また、白色度を高くする手法として、塗料中に蛍光増白剤を配合する方法がある。特許文献1には、黄色味のない純白を呈する白色塗膜を形成し得る塗料組成物として、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂を塗膜形成成分とし、チタン白顔料及び蛍光増白剤を所定量含有する塗料組成物が開示されている。しかし、蛍光増白剤として、具体的には、スチルベン系、ベンズイミダゾール系等の有機系材料を1種又は複数種使用することができるという記載があるのみである。これら有機系の蛍光増白剤は耐候性が不十分であることは広く知られており、白色度を高める効果を長期間継続させることができないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−327150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、白色度が高く、耐水性及び耐候性に優れた塗膜を形成し得る複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記の目的は、基材に、白色ベース塗膜、蛍光顔料含有ベース塗膜及びクリヤー塗膜を順次積層せしめることからなる複層塗膜の形成方法であって、白色ベース塗膜及び蛍光顔料含有ベース塗膜がビヒクル形成成分として水酸基含有樹脂及びイソシアネート化合物を含有するウレタン化反応により架橋硬化し得る樹脂組成物を含んでなり且つ蛍光顔料含有ベース塗膜が化学式(Ba1−x―yCaEu)MgAl1017(式中、xは0≦x≦0.33であり、yは0.07≦y≦0.35であり、かつ0.1≦x+y≦0.4である)で示される蛍光顔料を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、白色度が高く、耐水性及び耐候性に優れた、高級感及び清潔感を併せ持つ白色系の塗色を有する複層塗膜を簡単に形成せしめることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
基材
本発明の方法に従い複層塗膜を形成せしめることができる基材としては、例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらの金属を含む合金、これらの金属や合金によるメッキまたは蒸着が施された成型物;ガラス、さらにはポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等のプラスチック素材やプラスチック素材の発泡体、プラスチック素材にガラス繊維やカーボン繊維を混入せしめた繊維強化プラスチック等からなる成型物等を挙げることができる。これら基材には、その種類に応じて適宜、脱脂処理や表面処理を施すことができ、また、上記基材には、予め下塗り塗膜や中塗り塗膜を設けることもでき、これらのものが特に好ましい。
【0010】
上記下塗り塗膜は、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性、防錆性等を付与することを目的として形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって形成することができる。該下塗り塗料としては、特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー等を挙げることができる。
【0011】
また、上記中塗り塗膜は、下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性、耐チッピング性等を付与することを目的として形成されるものであり、乾燥硬化した下塗り塗膜又は未硬化の下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって形成することができる。中塗り塗料としては、特に限定されるものではなく、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び着色顔料を含有する有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を好ましく使用することができる。
【0012】
また、基材に予め下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を設ける場合、これらの下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に本発明に従い複層塗膜を形成せしめることができ、あるいは、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の状態で本発明の方法に従い複層塗膜を形成せしめることもできる。
【0013】
白色ベース塗膜
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記の如き基材上に、まず、白色ベース塗膜が形成せしめられる。
【0014】
白色ベース塗膜は、最終的に形成される複層塗膜の白さの観点から、明度、例えば、L*a*b*表色系における明度L*が80以上、特に85以上となるように、後述する白色ベース塗料における着色剤の量や組成を決定することが好ましい。L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8729にも採用されている表色系であり、L*は明度を表わす数値である。本明細書において、白色ベース塗膜のL*a*b*表色系における明度L*は、乾燥硬化した白色ベース塗膜をMA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−rite社製)を使用して、塗膜に対して45度の角度から照射した光を正反射光から45度の角度で受光したときの分光反射率から計算して得られる数値である。
【0015】
白色ベース塗膜は、白色ベース塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。
【0016】
該白色ベース塗料としては、着色顔料として酸化チタン顔料を含むものが好適に使用される。酸化チタン顔料は、屈折率が高いことから白色顔料として広く使用されているものであり、結晶形によってルチル型とアナターゼ型があり、本発明においてはこれらのいずれを使用してもよいが、耐候性等の観点から、ルチル型を使用することが好ましい。また
、分散性や耐候性を向上させることを目的として、表面をシリカ、ジルコニウム、アルミニウム等の無機化合物で処理したものを使用することもできる。酸化チタン顔料は、白色ベース塗膜の隠蔽力の観点から、一般に100〜400nm、特に200〜300nmの範囲内の一次粒子径を有するものが好適である。なお、本明細書において、一次粒子径は、粒度分布測定装置(島津製作所社製、粒度分布測定装置「SALD−2100」)にて体積粒度分布を測定した際の、累積体積50%通過径(D50)を用いた値である。
【0017】
白色ベース塗料における酸化チタン顔料の含有量は、隠蔽性や仕上がり性等の観点から、後述するビヒクル形成成分である樹脂組成物(固形分)100質量部に対して、一般に30〜200質量部、特に50〜150質量部、さらに特に80〜120質量部の範囲内が好適である。
【0018】
白色ベース塗料には、酸化チタン顔料の他に、複層塗膜の色相や明度を微調整することを目的として、他の着色顔料を配合することができる。該他の着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、例えば、透明性酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化物顔料等の無機顔料;アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料;カーボンブラック顔料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
該着色顔料は、粉体として配合することができるが、後述する樹脂組成物の一部を使用して顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分に他の成分と共に添加することにより塗料化することもできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。
【0020】
本発明において、白色ベース塗料に酸化チタン顔料以外の着色顔料を配合せしめる場合、その配合量は、複層塗膜の明度等の観点から、有機顔料やカーボンブラック顔料の場合には、樹脂組成物(固形分)100質量部に対し通常0.1質量部以下とすることが好ましく、無機顔料の場合には、通常0.01〜5質量部、特に0.05〜3質量部の範囲内であることが好ましい。
【0021】
白色ベース塗料は、ビヒクル形成成分として、水酸基含有樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含んでなるウレタン化反応により架橋硬化し得る樹脂組成物を含有することができる。
【0022】
上記水酸基含有樹脂としては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの水酸基含有樹脂は、通常、有機溶剤及び/又は水等の溶媒に溶解または分散して使用される。
【0023】
上記水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有重合性単量体を必須成分とし、さらに必要に応じてカルボキシル基含有重合性単量体及びアクリル系単量体を含んでなる重合性単量体成分を常法により(共)重合することによって製造されるものを使用することができる。水酸基含有アクリル樹脂としては、一般に1000〜100000、特に5000〜80000の範囲内の数平均分子量、一般に20〜200mgKOH/g、特に50〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に0〜100mgKOH/g、特に0〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有するものが好適である。
【0024】
上記水酸基含有重合性単量体は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜20のグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物等を挙げることができる。
【0025】
上記カルボキシル基含有重合性単量体は、1分子中にカルボキシル基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、メサコン酸等及びこれらの酸の無水物やハーフエステル化物等を挙げることができる。
【0026】
上記アクリル系単量体には、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜22の1価アルコールとのモノエステル化物が包含され、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)クリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタアクリレートを、そして「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0028】
水酸基含有アクリル樹脂の製造にあたり、上記の水酸基含有重合性単量体、カルボキシル基含有重合性単量体及びアクリル系単量体に加えて、その他の重合性単量体を併用することもできる。
【0029】
その他の重合性単量体としては、例えば、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜18のアルコキシエステル;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアクリル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等を挙げることができる。
【0030】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、通常、多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させることによって製造されるものを使用することができる。
【0031】
上記多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等を挙げることができ、また、上記多価アルコールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0032】
また、ポリエステル樹脂として、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸
、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸等の(半)乾性油脂肪酸等で変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂を使用することもできる。これらの脂肪酸による変性量は、油長で一般に30質量%以下であることが好ましい。また、安息香酸等の一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。
【0033】
ポリエステル樹脂としては、一般に1000〜50000、特に2000〜20000の範囲内の数平均分子量、一般に20〜200mgKOH/g、特に50〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に0〜100mgKOH/g、特に0〜70mgKOH/gの範囲内の酸価を有するものが好適である。
【0034】
上記イソシアネート化合物には、1分子中に少なくとも2個の遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が包含され、該ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(もしくは−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(もしくは1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、1,3−シクロペンタンジイソシアネ−ト、1,2−シクロヘキサンジイソシアネ−ト等の脂環族ジイソシアネート類、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレ−ト環付加物;キシリレンジイソシアネ−ト、テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレート環付加物;水添MDI及び水添MDIの誘導体;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の1分子中に少なくとも3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びイソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン 、ヘキサントリオール等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物、これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物及びソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0035】
本発明の白色ベース塗料における上記水酸基含有樹脂及びイソシアネート化合物の配合割合は、水酸基含有樹脂中の水酸基1当量に対し、イソシアネート化合物中のイソシアネート基が一般に0.5〜2当量、特に0.8〜1.2当量の範囲内となるようにすることが好ましい。イソシアネート化合物中のイソシアネート基の割合が0.5当量未満であると、形成される塗膜の架橋密度が低く塗膜物性が不十分となり、反対に2当量を越えると、形成される塗膜の性能は良好であるが、塗膜の乾燥性が低下し、実用性に問題がある。
【0036】
さらに、白色ベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種塗料添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。上記体質顔料は、前記着色顔料と同様に、粉体と
して配合することができるが、前記樹脂成分の一部を使用して顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分に他の成分と共に添加することにより塗料化を行なうこともできる。
【0037】
本発明の白色ベース塗料は、以上に述べた酸化チタン顔料やその他の着色顔料、ビヒクル形成成分である樹脂組成物や水又は有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料等を同一容器に梱包せしめた1液型塗料であってもよいが、イソシアネート化合物及び必要に応じて配合される水や有機溶媒等を別の容器に梱包し、塗装前に混合する2液型塗料であってもよい。
【0038】
白色ベース塗料は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の公知の方法で塗装することができ、その膜厚は、基材の隠蔽性、塗膜の平滑性等の観点から、硬化塗膜に基づいて通常10〜150μm、好ましくは20〜100μmの範囲内とすることができる。本発明の白色ベース塗料による塗膜は、用いるイソシアネート化合物の種類等に応じて、通常、常温〜約150℃の範囲内の温度で架橋硬化させることができ、それによって白色ベース塗膜を形成せしめることができる。
【0039】
蛍光顔料含有ベース塗膜
本発明の複層塗膜形成方法においては、前述の如くして形成される白色ベース塗膜上に、蛍光顔料含有ベース塗膜が形成される。蛍光顔料含有ベース塗膜は、蛍光顔料を含有するベース塗料を塗装し、硬化せしめることによって形成せしめることができる。
【0040】
蛍光顔料は、紫外線(波長380nm付近)を吸収し、それを青色の可視光(波長420nm付近;蛍光という)に変換して放出する蛍光増白効果を奏する顔料である。この効果により、得られる塗膜は色相が青みを帯びて白色度が高くなり、赤味や黄味を感じさせない塗膜が得られる。
【0041】
蛍光顔料としては、化学的に安定で耐水性や耐候性に優れる無機系の蛍光体であるアルミン酸塩バリウムマグネシウム蛍光体が好適であり、具体的には、特開2006−143894号公報に開示されている化学式(Ba1−x−yCaEu)MgAl1017(式中、xは0≦x≦0.33、好ましくは0.01≦x≦0.15、yは0.07≦y≦0.35、好ましくは0.10≦y≦0.30且つ0.1≦x+y≦0.4、好ましくは0.1≦x+y≦0.3)で示される蛍光増白体を使用することができる。
【0042】
上記蛍光顔料としては、一次平均粒子径が、D50で一般に2μm〜4.5μm、特に3μm〜4μmの範囲内にあり、且つ90%メジアン径で一般に10μm以下、特に5μm〜7μmの範囲内にあるものが好ましい。また、分散性や耐候性を向上させることを目的として、表面をシリカ、ジルコニウム、アルミニウム等の無機化合物で処理したものを使用することもできる。
【0043】
蛍光顔料含有ベース塗料における蛍光顔料の含有量は、塗膜の仕上がり性や複層塗膜において黄味を消す効果がある等の観点から、後述する樹脂組成物(固形分)100質量部に対して一般に10〜200質量部、特に20〜100質量部、さらに特に30〜80質量部の範囲内であることが好ましい。
【0044】
蛍光顔料含有ベース塗料には、ビヒクル形成成分として、上記白色ベース塗料と同様に、水酸基含有樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含んでなるウレタン化反応により架橋硬化し得る樹脂組成物を含有することができる。具体的には、上記白色ベース塗料の説明において樹脂成分として記載したものを同様に用いることができる。
【0045】
さらに、蛍光顔料含有ベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種塗料添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。
【0046】
蛍光顔料含有ベース塗料は、白色ベース塗料と同様に、1液型であってもよいし、2液型であってもよい。
【0047】
蛍光顔料含有ベース塗料は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性等の観点から、硬化塗膜に基づいて通常5〜100μm、好ましくは15〜50μmの範囲内であることができる。蛍光顔料含有ベース塗膜は、用いるイソシアネート化合物の種類等に応じて、通常、常温〜約150℃の範囲内の温度で架橋硬化させることができ、それによって蛍光顔料含有ベース塗膜を形成せしめることができる。
【0048】
クリヤー塗膜
本発明の複層塗膜形成方法においては、以上に述べた硬化又は未硬化の蛍光顔料含有ベース塗膜上に、クリヤー塗料を塗装して、クリヤー塗膜が形成せしめられる。
【0049】
クリヤー塗膜は、クリヤー塗料を1回塗装して乾燥、硬化してなる1層の塗膜であることができ、あるいはクリヤー塗料の塗装から乾燥、硬化の工程を複数回繰り返すことによって形成される2層以上の塗膜であってもよい。クリヤー塗膜を2層以上の塗膜として形成せしめることによって、複層塗膜の仕上がり性や鮮映性を向上させることができる。
【0050】
クリヤー塗膜を2層以上の塗膜とする場合、1層目のクリヤー塗膜と、2層目以降のクリヤー塗膜とは、同一の材質のものであってもよく、あるいは異なる材質であってもよい。
【0051】
本発明の複層塗膜形成方法において使用されるクリヤー塗料は、樹脂成分および溶剤を含有し、さらにその他の塗料用添加剤等を適宜配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状塗料であることができ、該クリヤー塗料としては、それ自体既知のものを制限なく使用することができ、例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状もしくは粉体状の塗料組成物が挙げられる。該基体樹脂の例としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基等の架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等が挙げられる。上記架橋剤としては、上記基体樹脂の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、表面調整剤等の塗料添加剤を適宜配合することができる。
【0052】
上記クリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用としてそれ自体既知の顔料をそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。その添加量は、塗膜の透明性を実質的に害さない範囲において適宜決定することができ、具体的には、クリヤー塗料中の基体樹脂と架橋剤の合計固形分100質量部に対して、通常30質量部以下、好ましくは0.01〜5質量部の範囲内とすることができる。
【0053】
本発明の複層塗膜形成方法において、クリヤー塗膜を2層以上の複層塗膜とする場合に
は、1層目のクリヤー塗膜を形成せしめるためのクリヤー塗料として、ビヒクル形成成分が、上記白色ベース塗料においてビヒクル形成成分として用いられる樹脂組成物と同様に、水酸基含有樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含んでなるウレタン化反応により架橋硬化し得る樹脂組成物を含有するものを使用することができる。具体的には、白色ベース塗料におけるビヒクル形成成分として前記で説明した樹脂組成物を同様に用いることができる。
【0054】
上記クリヤー塗料は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適した粘度に調整した後、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の公知の方法で塗装することができ、その膜厚は、硬化塗膜に基づいて通常5〜40μm、特に20〜35μmの範囲内とするのが好ましい。クリヤー塗料の塗膜それ自体は常温〜約150℃の範囲内の温度で架橋硬化させることができる。
【0055】
クリヤー塗膜を2層以上の塗膜として形成せしめる場合、1層目のクリヤー塗膜を乾燥、硬化せしめた塗膜上に2層目以降のクリヤー塗膜を形成せしめることができるが、1層目のクリヤー塗料を塗装後、その未硬化の塗膜上に2層目のクリヤー塗膜を形成せしめてもよい。
【0056】
本発明の複層塗膜形成方法において、白色ベース塗膜、蛍光顔料含有ベース塗膜及びクリヤー塗膜の各塗膜は、各々加熱して乾燥硬化後に、順次塗り重ねて複層塗膜を形成する、3C3B方式により形成することができ、あるいは少なくとも一部の塗膜が未硬化の状態で塗り重ね、形成される複層塗膜を加熱して同時に硬化せしめる3C2B方式又は3C1B方式により形成せしめることもできる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0058】
実施例1〜7、比較例1〜5
製造例1:水酸基含有アクリル樹脂(1)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にキシレン50部及び酢酸ブチル22部を仕込み、撹拌混合し、120℃に昇温した。次いで同温度に保持した反応容器内に、下記のモノマー/重合開始剤の混合物(1)を3時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、キシレン10部及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.6部からなる混合物を同温度に保持しつつ1時間30分かけて滴下し、さらに2時間熟成して、水酸基価82mgKOH/g、数平均分子量20,000、樹脂固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂(1)を得た。
モノマー/重合開始剤の混合物(1):
メチルメタクリレ−ト27部、n−ブチルアクリレート23部、ヒドロキシエチルメタクリレート19部、スチレン30部、アクリル酸1部及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)2.5部からなる混合物。
【0059】
製造例2:水酸基含有アクリル樹脂(2)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にキシレン50部及び酢酸ブチル22部を仕込み、撹拌混合し、120℃に昇温した。次いで同温度に保持した反応容器内に、下記のモノマー/重合開始剤の混合物(2)を3時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、キシレン10部及び2,2’−アゾ
ビス(2−メチルプロピオニトリル)0.6部からなる混合物を同温度に保持しつつ1時間30分かけて滴下し、さらに2時間熟成して、水酸基価82mgKOH/g、数平均分子量20,000、樹脂固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂(2)を得た。
モノマー/重合開始剤の混合物(2):
スチレン35部、メチルメタクリレ−ト5部、i−ブチルメタクリレート32部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、ヒドロキシエチルアクリレート17部、アクリル酸1部及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)2.5部からなる混合物。
【0060】
ベース塗料1〜4、10の調製
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂(1)100部(固形分)あたり、着色顔料及び蛍光顔料を下記表1に示す比率で配合して攪拌混合し、スミジュールN3300(商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート、住化バイエルウレタン社製)28部を加え、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約50%の有機溶剤型塗料を調製し、実施例及び比較例に使用するベース塗料1〜4及び10を調製した(水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基1当量に対するイソシアネート化合物中のイソシアネート基の割合は1当量である)。
【0061】
ベース塗料5、6の調製
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂(1)136部及びユーバン28−60(商品名、ブチルエーテル化メラミン樹脂、三井化学社製)42部からなる樹脂成分100部(固形分)あたり、着色顔料及び蛍光顔料を下記表1に示す比率で配合して攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約50%の有機溶剤型塗料を調製し、比較例として使用するベース塗料5、6を調製した。
【0062】
ベース塗料7の調製
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂(1)100部(固形分)あたり、着色顔料及び蛍光顔料を下記表1に示す比率で配合して攪拌混合し、スミジュールN3300(商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート、住化バイエルウレタン社製)22.4部を加え、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約50%の有機溶剤型塗料を調製し、実施例に使用するベース塗料7を調製した(水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基1当量に対するイソシアネート化合物中のイソシアネート基の割合は0.8当量である)。
【0063】
ベース塗料8の調製
製造例2で得られた水酸基含有アクリル樹脂(2)100部(固形分)あたり、着色顔料及び蛍光顔料を下記表1に示す比率で配合して攪拌混合し、スミジュールN3300(商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート、住化バイエルウレタン社製)28部を加え、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約50%の有機溶剤型塗料を調製し、実施例に使用するベース塗料8を調製した。
【0064】
ベース塗料9の調製
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂(1)100部(固形分)あたり、着色顔料及び蛍光顔料を下記表1に示す比率で配合して攪拌混合し、デスモジュールZ4470(商品名、イソホロンジイソシアネート、住化バイエルウレタン社製)36部を加え、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約50%の有機溶剤型塗料を調製し、実施例に使用するベース塗料9を調製した。
【0065】
【表1】

【0066】
クリヤー塗料1の調製
ステンレス製ビーカーにカルボキシル基含有アクリル樹脂(注1)50部、エポキシ基含有アクリル樹脂(注2)50部、Tinuvin400(商品名、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、チバスペシャリティケミカルズ社製)3部、テトラブチルアンモニウムブロマイドとモノブチルりん酸との当量配合物2部及びBYK300(商品名、表面調整剤、ビッグケミー社製)0.1部を配合して攪拌混合し、塗装に適した粘度に希釈してクリヤー塗料1を調製した。
(注1)カルボキシル基含有アクリル樹脂: 無水マレイン酸のメタノールハーフエステル化物20部、アクリル酸4ーヒドロキシnーブチル20部、nーブチルアクリレート40部及びスチレン20部からなる単量体成分の共重合体。数平均分子量3500、水酸基価78mgKOH/g、酸価86mgKOH/g。
(注2)エポキシ基含有アクリル樹脂: グリシジルメタクリレート30部、アクリル酸4ーヒドロキシnーブチル20部、nーブチルアクリレート30部及びスチレン20部からなる単量体成分の共重合体。数平均分子量3000、エポキシ基含有量2.12ミリモル/g、水酸基価78mgKOH/g。
【0067】
クリヤー塗料2の調製
製造例1で得られた水酸基含有アクリル樹脂(1)100部(固形分)、Tinuvin400(商品名、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、チバスペシャリティケミカルズ社製)3部、Tinuvin292(商品名、光安定剤吸収剤、チバスペシャリティケミカルズ社製)1部及びモダフロー(商品名、表面調整剤、モンサント社製)0.1部を攪拌混合した後、スミジュールN3300(商品名、HDIイソシアヌレート3量体、住化バイエルウレタン社製)27部を配合して攪拌混合し、塗装に適した粘度に希釈してクリヤー塗料2を調製した。
【0068】
試験板の作製
中塗り塗膜が形成された塗板
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂・ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0069】
得られた電着塗面に、中塗り塗料「ルーガベーク中塗りグレー」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗り塗膜が形成された塗板を作製した。
【0070】
ベース塗料及びクリヤー塗料の塗装
実施例1
上記中塗り塗膜を形成した塗板にベース塗料1を、エアスプレーを用いて、硬化塗膜として40μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置した後、ベース塗料2をエアスプレーを用いて、硬化塗膜として40μmとなるように塗装した。塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置し、熱風循環式乾燥炉を使用して、140℃で30分間加熱して乾燥硬化せしめ、さらにクリヤ塗料1を硬化塗膜として30μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置した後、140℃で30分間加熱して試験板を得た。
【0071】
実施例2
上記中塗り塗膜を形成した塗板にベース塗料1を、エアスプレーを用いて、硬化塗膜として40μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置した。次いでベース塗料2をエアスプレーを用いて、硬化塗膜として40μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分放置し、熱風循環式乾燥炉を使用して、140℃で30分間加熱し、乾燥硬化せしめ、その後にクリヤー塗料2を硬化塗膜として30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間静置した後に、さらにクリヤ塗料1を硬化塗膜として30μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置し、140℃で30分間加熱して試験板を得た。
【0072】
実施例3〜7及び比較例3,4
下記表2に示す塗膜構成となるようにして、ベース塗料及びクリヤー塗料を実施例1と同様にして塗装し試験板を得た。
【0073】
比較例1
上記中塗り塗膜を形成した塗板にベース塗料1をエアスプレーを用いて、硬化塗膜として40μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置した後、熱風循環式乾燥炉を使用して、140℃で30分間加熱し、乾燥硬化せしめ、さらにクリヤ塗料1を硬化塗膜として30μmとなるように塗装し、塗装後、室温約20℃の実験室に約15分静置し、140℃で30分間加熱して試験板を得た。
【0074】
比較例2、5
表2に示す構成となるようにようにして、ベース塗料及びクリヤー塗料を比較例1と同様にして塗装し試験板を得た。
【0075】
評価
上記で得た試験板の意匠性を以下の要領にて評価し、その結果を下記表2に示す。
【0076】
測色による白さ(明度L*)と黄味(b*)の評価
試験板をMA68II(商品名、多角度分光光度計、x−rite社製)を使用して測定した正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率から計算して得られた白さ(明度L*)と黄味(b*)を表2に示す。
【0077】
目視による白さの評価
晴れた日の午後に、直射日光が当たらない屋外において、自動車外板向け塗料の塗色設計に3年以上従事している熟練した技術者及びデザイナーが、塗板を観察して、白さを目視にて次の基準で評価する。
5:青味白さを非常に感じる。
4:青味白さを感じる。
3:青味白さを多少感じる。
2:青味を余り感じないが通常の黄味帯びた白さとは違うと感じる。
1:通常の黄味帯びた白さとして感じる。
【0078】
鮮映性
蛍光灯照明にて、作業可能な明るさに調整された実験室内で、試験板に蛍光灯を映し出して映り込みを次の基準で評価する。
3:蛍光灯の形状がはっきりと認識できる。
2:蛍光灯の形状が認識できる。
1:蛍光灯が認識できない。
【0079】
耐候性
Superxenonウェザーメーター(商品名、促進耐候性試験機、スガ試験機社製)を使用して、JIS K5600−7−7(方法1)に記載された試験条件にて照射と降雨条件を組み合わせたサイクル試験を行った。サイクル試験時間の合計が1200時間後に塗板の塗膜の劣化状態を目視で評価する。
【0080】
耐水性
試験板を40℃の温水に7日間浸漬した後、室内にて試験板を観察して次の基準で評価する。
3:塗膜に異常がみられない。
2:引き上げ直後にチヂミが見られたが、乾燥後に回復した。
1:回復しないチヂミ、ふくれが見られた。
【0081】
付着性
上記促進耐候性試験に供した試験板について、JIS K5600に準拠した碁盤目試験を行った。具体的には、塗膜上に縦横に2mmの間隔で碁盤目状に素材に達する100個の切れ目を入れ、密着力(120gf/10mm)の接着テープを貼りつける。そしてこの接着テープを剥ぎ取り、剥離して接着テープに付着した塗膜片の数量を調べて下記の基準にて評価する。
4:剥離なし
3:剥離数10%未満
2:剥離数10%以上70%未満
1:剥離数70%以上
【0082】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の複層塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車外板の塗装に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に、白色ベース塗膜、蛍光顔料含有ベース塗膜及びクリヤー塗膜を順次積層せしめることからなる複層塗膜の形成方法であって、白色ベース塗膜及び蛍光顔料含有ベース塗膜がビヒクル形成成分として水酸基含有樹脂及びイソシアネート化合物を含有するウレタン化反応により架橋硬化し得る樹脂組成物を含んでなり且つ蛍光顔料含有ベース塗膜が化学式(Ba1−x―yCaEu)MgAl1017(式中、xは0≦x≦0.33であり、yは0.07≦y≦0.35であり、かつ0.1≦x+y≦0.4である)で示される蛍光顔料を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
クリヤー塗料を2層以上塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
クリヤー塗膜の1層目のビヒクル形成成分が水酸基含有樹脂およびイソシアネート化合物を含有するウレタン化反応により架橋硬化する樹脂組成物である請求項2に記載の複層塗膜形成方法。

【公開番号】特開2012−96213(P2012−96213A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248767(P2010−248767)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】