複層形成用インクセット、インクジェット記録方法、及び、印刷物
【課題】複層形成時の基材−インク間、及び、インク−インク間の密着性、光沢性に優れた画像を形成しうる複層形成用インクセットを提供する。
【解決手段】マゼンタインク組成物を含む着色インク組成物とホワイトインク組成物とを含み、各インク組成物は(成分A)ラジカル重合性化合物と(成分B)ラジカル重合開始剤とを含有し、前記成分Aは(成分A−1)N−ビニル化合物、及び、(成分A−2)サイクリックトリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレートを含有し、ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴する複層形成用インクセット。
【解決手段】マゼンタインク組成物を含む着色インク組成物とホワイトインク組成物とを含み、各インク組成物は(成分A)ラジカル重合性化合物と(成分B)ラジカル重合開始剤とを含有し、前記成分Aは(成分A−1)N−ビニル化合物、及び、(成分A−2)サイクリックトリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレートを含有し、ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴する複層形成用インクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層形成用インクセット、インクジェット記録方法、及び、印刷物に関する。
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
【0003】
これまでに、種々の放射線硬化性インク組成物が提案されており、特許文献1には、重合性モノマーを含むインキジェット用活性エネルギー線硬化型インキであって、前記重合性モノマーが、モノマー全体に対して、単官能モノマーを80〜99.99重量%、多官能モノマーを20重量%〜0.01重量%含有し、かつ、該インキの硬化膜を該インキに30秒浸漬させたときの重量変化率が30重量%以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが記載されている。
【0004】
現在、インクジェットプリンタにより、普通紙あるいは、プラスチックなど非吸水性の記録媒体にインクを打滴して印字する際の高速化、高画質化及び記録媒体への定着性が重要な課題となっている。
特許文献2には、種々の記録媒体間での画像均一性の向上等を目的として、少なくとも重合性化合物、光重合開始剤及び着色剤を含有する着色液体組成物と、少なくとも重合性化合物及び光重合開始剤を含有する下塗り液体組成物とを少なくとも含み、着色液体組成物に含まれる重合性化合物が、少なくとも1種類の単官能モノマー及び少なくとも1種類の多官能モノマーで構成され、かつ、着色液体組成物全体中の単官能モノマーの量が10〜70重量%であり、多官能モノマーの量が10〜50重量%であることを特徴とする
インクジェット記録用インクセットが開示されている。
【0005】
また、印刷物の耐久性等を向上させることが課題となっている。
特許文献3には、耐候性及び耐久性に優れたインクジェット印刷物を得ることを目的として、表面に透明保護層が形成されたインクジェット印刷物であって、基材と、該基材上にインクジェット式印刷によって形成された絵柄層とを有すると共に、該絵柄層上に前記透明保護層が形成されており、前記絵柄層は、紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂インクからなり、前記透明保護層は、電子線照射により硬化する電子線硬化性樹脂からなることを特徴とするインクジェット印刷物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−131755号公報
【特許文献2】特開2008−100501号公報
【特許文献3】特開2010−000788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複層形成時の基材−インク間、及び、インク−インク間の密着性に優れ、かつ、優れた画質と光沢性とを有する画像を形成しうる複層形成用インクセット、及び、該インクセットを用いて、高い生産性を有するインクジェット記録方法、並びに、該インクジェット記録方法により記録された印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記<1>、<10>又は<15>に記載の手段により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<9>、及び、<11>〜<14>と共に以下に示す。
<1> イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物と、ホワイトインク組成物と、を含み、各インク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物と、(成分B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、前記成分Aとして、(成分A−1)及び(成分A−2)を含有し、
(成分A−1)N−ビニル化合物、
(成分A−2)下記式(a−2)で表される化合物、
前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする複層形成用インクセット、
【0009】
【化1】
(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0010】
【数1】
【0011】
<2> 前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(2)を満たす、<1>に記載の複層形成用インクセット、
【0012】
【数2】
【0013】
<3> 前記成分Aが(成分A−3)トリメチロールプロパントリアクリレートを更に含有する、<1>又は<2>に記載の複層形成用インクセット、
<4> 前記成分A−1がN−ビニルラクタム類である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<5> 前記成分A−1がN−ビニルカプロラクタムである、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<6> 前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が3重量%以上12重量%未満であり、かつ、前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が12重量%以上20重量%以下である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<7> 前記成分Aが単官能ラジカル重合性化合物を、成分Aの総量に対して50重量%以上90重量%以下含有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<8> 前記マゼンタインク組成物は、成分Bとしてビスアシルホスフィンオキサイド及び/又はモノアシルホスフィンオキサイドを含有し、前記ホワイトインク組成物は、成分Bとしてモノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<9> 全てのインク組成物の表面張力が32〜40mN/mである、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<10> <1>〜<9>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセットを用いたインクジェット記録方法において、着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、ホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、を含むインクジェット記録方法、
<11> 記録媒体上に着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、形成された画像上にホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、をこの順で有する、<10>に記載のインクジェット記録方法、
<12> 記録媒体上にホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、ホワイトインク層上に着色インク組成物を付与して画像形成を行う画像形成工程と、をこの順で有する、<10>に記載のインクジェット記録方法、
<13> 着色インク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第1のノズル列と、ホワイトインク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第2のノズル列と、を含む複数のノズル列を有するインクジェットヘッドを、記録媒体に対して第1方向に往復移動させる走査工程と、前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を前記第1方向と平行でない第2方向に相対移動させる相対移動工程と、前記ノズル列を前記第2方向に複数の領域に分割し、前記分割された各分割ノズル領域の単位ごとに前記インクジェットヘッドのインク吐出を制御する吐出制御工程と、前記吐出制御工程によって前記インクジェットヘッドから吐出され、前記記録媒体上に付着したインクに対して活性光線を照射する活性光線照射工程とを有し、前記活性光線照射工程が、前記各分割ノズル領域に対応して前記活性光線の照射範囲が複数の領域に分割され、当該分割された分割照射領域の光量を領域別に制御して前記活性光線の照射を行う工程である、<10>〜<12>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<14> 前記着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積が5pL以上20pL未満であり、前記ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積が20pL以上60pL以下である、<13>に記載のインクジェット記録方法、
<15> <10>〜<14>のいずれか1つに記載の方法により得られた印刷物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複層形成時の基材−インク間、及び、インク−インク間の密着性に優れ、かつ、優れた画質と光沢性とを有する画像を形成しうる複層形成用インクセット、及び、該インクセットを用いて、高い生産性を有するインクジェット記録方法、並びに、該インクジェット記録方法により記録された印刷物を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】記録媒体上に本発明の複層形成用インクセットを用いて画像層及びホワイトインク層を形成した場合の断面図を示す概略図である。
【図2】本発明に好適に使用されるインクジェット記録装置の一例を示す外観斜視図である。
【図3】図2に示すインクジェット記録装置の用紙搬送路を模式的に示す平面透視図である。
【図4】図2に示すインクジェットヘッド及び紫外線照射部の配置構成を示す平面透視図である。
【図5】図4に示す紫外線照射部を移動させる光源移動部の構成例を示す斜視図である。
【図6】図1(B)に示す画像を形成するためのインクジェットヘッド及び紫外線照射部の構成例を示す説明図である。
【図7】本実施形態の仮硬化光源として用いる仮硬化光源ユニットの構成例を示す側面透視図である。
【図8】図7の仮硬化光源ユニットの平面透視図である。
【図9】図1(A)に示す画像を形成するためのインクジェットヘッド及び紫外線照射部の構成例を示す説明図である。
【図10】インクジェット記録装置のインク供給系の構成を示すブロック図である。
【図11】インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の複層形成用インクセット(以下、単に「インクセット」ともいう。)は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物と、ホワイトインク組成物と、を含み各インク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物と、(成分B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、前記成分Aとして、(成分A−1)N−ビニル化合物、及び、(成分A−2)下記式(a−2)で表される化合物を含有し、前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0017】
【化2】
(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0018】
【数3】
【0019】
明細書中、数値範囲を表す「X〜Y」の記載は「X以上Y以下」と同義である。また、前記「(成分A−1)N−ビニル化合物」等を単に「成分A−1」等ともいう。また、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」とも記載する。
また、「ホワイトインク組成物」等を、単に「ホワイトインク」等とも記載する。なお、化学式の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
I.複層形成用インクセット
本発明の複層形成用インクセットは、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物によって画像層を形成し、ホワイトインクによってホワイトインク層を形成する。記録媒体(支持体、又は、基材)上に着色インク組成物によって画像層を形成し、その上にホワイトインク層を形成してもよく、記録媒体上にホワイトインク層を形成し、その上に画像層を形成してもよい。
図1には、記録媒体12上に本発明の複層形成用インクセットを用いて画像層82及びホワイトインク層80を形成した場合の断面図を示す概略図である。また、図中の矢印は、画像の視認方向(観察方向)を示している。
図1(A)では、記録媒体12上に画像層82が形成され、更にその上にホワイトインク層80が形成されている。この場合、記録媒体としては、透明の記録媒体を使用することが好ましく、記録媒体12を通して画像を視認する。
一方、図1(B)では、記録媒体12上にホワイトインク層80が形成され、更にその上に画像層82が形成されている。この場合、記録媒体12は透明であっても、不透明であってもよく、特に限定されない。ホワイトインク層は、下塗り層として機能する。
なお、ホワイトインク層は、少なくとも画像が形成された領域に設けられ、好ましくは画像が形成された領域又はそれよりも広い領域に、一層のベタ層として設けられる。
【0021】
本発明では、上記の二層を形成する態様に限定されるものではなく、例えば、記録媒体の上に下塗り層としてクリアインク層を形成し、更にその上に画像層及びホワイトインク層をこの順で有する三層とする態様や、記録媒体上にホワイトインク層、及び画像層をこの順で設けた後、更に、クリアインク層をオーバーコート層として形成して、三層構造とする態様が例示される。更に、透明の記録媒体に第1の画像層、ホワイトインク層、第2の画像層の順に各層が積層された構造を有していてもよい。この場合、ホワイトインク層が上下の画像層にはさまれた構造を有している。かかる構造を有する画像は、記録媒体の両面からホワイトインク層を背景とした画像層が視認される。
【0022】
少なくとも画像層とホワイトインク層の二層を形成する場合、生産性の観点から、一層目を形成してから、僅かな時間で(例えば数秒後)、二層目を形成する必要がある。このため、一層目の硬化プロファイル及び硬化状態により、二層目の画質や光沢性が影響を受ける。
本発明のインクセットによれば、このような二層形成時において、基材−インク間、及び、インク−インク間の密着性に優れ、また、画質及び光沢性に優れた画像が得られる。詳細は作用機構は不明であるが、以下のように推測される。
すなわち、特定のラジカル重合性化合物を含有することにより、層間の親和性が高く、画像層−ホワイトインク層の密着性が向上するものと考えられる。
更に、開始剤量を最適化することにより、インク膜上での濡れ広がりが向上し、光沢性のある画像が得られるとともに、バンディングが抑制される。なお、バンディングとは、スジ状の印画ムラであり、マルチパス印字によるスワス幅周期に対応して、光沢性が異なる現象をいう。インク液滴を打滴後にドットの広がりが不足すると、印画抜けがドットの広がりによって解消されず、スジ状に印画ムラとなる。
【0023】
図1(A)の態様では、重合開始剤の含有量が少ない画像層が下層となり、記録媒体上で濡れ広がるため、バンディングが抑制される。また、画像層の上に重合開始剤の含有量が多く、硬化性に優れたホワイトインク層(白色層)が形成され、インク−インク間の密着性が向上する。
一方、図1(B)の態様では、重合開始剤の含有量が多いホワイトインク層の硬化性が高いため、画像層のインク組成物の濡れ広がりがよく、光沢が向上すると共に、バンディングも抑制される。
【0024】
(インク組成物)
まず、本発明に使用される(成分A)及び(成分B)を含むインク組成物(以下、「本発明のインク組成物」ともいう。)について詳述する。なお、単にインク組成物という場合には、着色インク組成物及びホワイトインク組成物の総称である。本発明のインク組成物は、活性放射線により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
また、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインク組成物であり、インク組成物を記録媒体上に適用後硬化させるため、高揮発性溶剤を含まず、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に高揮発性溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。
以下、本発明のインクセットを構成する各色インク組成物が含有する成分について説明する。
【0025】
(成分A)ラジカル重合性化合物
本発明のインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物を含有し、成分Aとして、前記成分A−1及び成分A−2を含む。
【0026】
(成分A−1)N−ビニル化合物
本発明のインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物として、(成分A−1)N−ビニル化合物を含有する。
N−ビニル化合物としては、N−ビニルラクタム類が好ましく、式(a−1)で表される化合物がより好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
式(a−1)中、nは1〜5の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは2〜4の整数であることが好ましく、nが2又は4であることがより好ましく、nが4である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
【0029】
本発明のインク組成物における成分A−1の含有量は、インク組成物全体の重量に対して、5〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜35重量%である。含有量が5重量%以上であると、記録媒体への密着性に優れ、また、含有量が60重量%以下であると、保存安定性に優れる。
る。
【0030】
(成分A−2)式(a−2)で表される化合物
本発明のインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物として、(成分A−2)式(a−2)で表される化合物を含有する。成分A−2を含有しない場合、記録媒体(特にポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂)との密着性が低下する。式(a−2)で表される化合物は、低い表面張力を有し、インク組成物の濡れ広がりを向上させるものと推測される。また、適度な極性を有しており、表面硬化不良を生じ難く、密着性に優れる硬化物(画像層及びホワイトインク層)が得られる。
【0031】
【化4】
(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0032】
R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
R2及びR3としては、それぞれ独立に水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましく、R2及びR3が共に水素原子であることが更に好ましい。
X2における二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基であることがより好ましい。また、前記二価の連結基の炭素原子数は、1〜60であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
X2としては、単結合、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素原子数1〜20の二価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子数1〜8の二価の炭化水素基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
【0033】
以下に成分A−2の具体例を挙げるが、これらの化合物に限定されたものではない。なお、下記の具体例中、Rは水素原子、又は、メチル基を表す。
【0034】
【化5】
【0035】
これらの中でも、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレートが好ましく、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレートが特に好ましい。成分A−2は、市販品であってもよく、市販品の具体例としては、SR531(SARTOMER社製)が挙げられる。
【0036】
記録媒体と画像との密着性、インク組成物の硬化性の観点から、成分A−2の含有量は、インク組成物の総重量に対して1〜70重量%が好ましく、3〜65重量%がより好ましく、5〜60重量%が更に好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。
【0037】
(成分A−3)トリメチロールプロパントリアクリレート
本発明において、インク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物として、(成分A−3)トリメチロールプロパントリアクリレートを含有することが好ましい。成分A−3を含有することにより、硬化性及び耐擦過性が向上する。
【0038】
硬化性及び耐擦過性の向上の観点から、成分A−3の含有量は、インク組成物の総重量に対して、0.1〜15重量%であることが好ましく、0.2〜10重量%がより好ましく、0.5〜5重量%が更に好ましい。
【0039】
<その他の単官能(メタ)アクリレート>
本発明のインク組成物は、成分A−2以外のその他の単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。
その他の単官能(メタ)アクリレートとして、(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく例示できる。
【0040】
(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート
本発明のインク組成物は、(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。成分A−4としては、分子量が500以下のものが好ましく、分子量が300以下のものがより好ましい。
成分A−4として、特開2009−096985号公報の段落0048〜0063に記載された、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーが挙げられる。本発明においては、芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、式(a−4)で表される化合物が好ましい。
【0041】
【化6】
(式(a−4)中、R1は水素原子、又は、メチル基を表し、X1は二価の連結基を表し、Arは芳香族炭化水素基を表し、R5は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。)
【0042】
式(a−4)中、R1として好ましくは、水素原子である。
X1は二価の連結基を表し、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NR’−若しくは−NR’C(O)−)、カルボニル基(−C(O)−)、イミノ基(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
R1及びX1を含む部分(H2C=C(R1)−C(O)O−X1−)は、芳香族炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、X1の芳香族炭化水素基と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましい。式(a−4)におけるX1は、*−(LO)q−であることが好ましい。ここで、*は、式(a−4)のカルボン酸エステル結合との結合位置を示し、qは0〜10の整数であり、Lは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。(LO)qは、エチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖であることが好ましい。
【0043】
Arは芳香族炭化水素基を表す。芳香族炭化水素基としては、1〜4つの環を有する単環又は多環芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が挙げられる。
中でも本発明においては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、単環芳香族炭化水素基、すなわちフェニル基がより好ましい。
【0044】
u個存在するR5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、カルボキシ基、炭素数1〜10のアシル基、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、更に置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
uは、0〜5の整数を表し、0であることが好ましい。
【0045】
成分A−4の具体例として[L−1]〜[L−19]、[L−21]〜[L−65]が好ましく挙げられる。
【0046】
【化7】
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
【化10】
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
本発明においては、式(a−4)で表される化合物としては、フェニル基を有する化合物が好ましく、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2−フェノキシエチルアクリレートが特に好ましい。
【0053】
インクジェット吐出性、柔軟性の観点から、成分A−4の含有量は、インク組成物の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、3〜45重量%がより好ましく、5〜40重量%が更に好ましい。
【0054】
本発明のインク組成物は、成分A−2及び成分A−4以外のその他の単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。成分A−2及びA−4以外の単官能(メタ)アクリレートとしては、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソアミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロペンテニルアクリレート、シクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等が挙げられる。
【0055】
なお、本発明において成分A−1及び成分A−2を含む単官能のラジカル重合性化合物の合計含有量が(成分A)ラジカル重合性化合物の総量に対して、50〜90重量%含有することが好ましい。なお、単官能の重合性化合物には、成分A−4、及び、上記その他の単官能(メタ)アクリレート等の単官能の重合性化合物も含まれる。
単官能の重合性化合物の含有量が上記範囲であると、インク−インク間及びインク−記録媒体間の密着性に優れ、また、柔軟性に優れる画像が得られる。
単官能の重合性化合物の含有量は、成分Aの総量に対して55〜90重量%であることがより好ましく、65〜85重量%が更に好ましい。
【0056】
<(成分A−5)多官能(メタ)アクリレート>
本発明のインク組成物は、上記の成分A−3以外に、(成分A−5)その他の多官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。
インク組成物が多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することにより、高い硬化性が得られる。
【0057】
成分A−5の具体例としては、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
本発明のインク組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物として、オリゴマーを含有してもよい。
この「オリゴマー」とは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。オリゴマーの重量平均分子量は400〜10,000が好ましく、500〜5,000がより好ましい。
オリゴマーとしては、官能基として(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
オリゴマーに含まれる官能基数は、柔軟性と硬化性のバランスの観点から、1分子あたり1〜15が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0059】
本発明におけるオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート系、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマー、(メタ)アクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステル(メタ)アクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)、アミン変性ポリエステルオリゴマー等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタンアクリル系、ポリエステル(メタ)アクリレート系が更に好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート系が、硬化性、密着性に優れたインク組成物が得られることから特に好ましい。オリゴマーは、一種単独で用いる以外に、複数種を併用してもよい。
【0060】
ウレタン(メタ)アクリレート系としては、脂肪族系ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族系ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。詳しくは、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、化学工業日報社)を参照することができる。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーとしては、新中村化学工業(株)製のU−2PPA、U−4HA、U−6HA、U−6LPA、U−15HA、U−324A、UA−122P、UA5201、UA−512等;サートマー社製のCN964A85、CN964、CN959、CN962、CN963J85、CN965、CN982B88、CN981、CN983、CN996、CN9002、CN9007、CN9009、CN9010、CN9011、CN9178、CN9788、CN9893、ダイセル・サイテック社製のEB204、EB230、EB244、EB245、EB270、EB284、EB285、EB810、EB4830、EB4835、EB4858、EB1290、EB210、EB215、EB4827、EB4830、EB4849、EB6700、EB204、EB8402、EB8804、EB8800−20R等が挙げられる。
アミン変性ポリエステルオリゴマーとして、ダイセル・サイテック社製のEB524、EB80、EB81、サートマー社製のCN550、CN501、CN551、Rahn A.G.社製のGENOMER5275が挙げられる。
【0062】
オリゴマーの含有量は、硬化性と密着性の両立という観点から、インク組成物の総重量に対して、1〜10重量%が好ましく、2〜8重量%がより好ましく、3〜7重量%が更に好ましい。
【0063】
(成分A−5)その他の多官能(メタ)アクリレートの総含有量は、硬化性の観点から、インク組成物の全重量に対して1〜30重量%であることが好ましく、3〜25重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましく、5〜15重量%重量%であることが特に好ましい。
【0064】
インク組成物中における(成分A)ラジカル重合性化合物全体の総含有量は、65〜99重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。
【0065】
(成分B)重合開始剤
本発明のインク組成物は、ラジカル重合開始剤を含有する。
ホワイトインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量をX(重量%)、マゼンタインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量をY(重量%)としたとき、下記式(1)を満たす。
【0066】
【数4】
【0067】
Y/Xが0.1未満であると、マゼンタインク組成物の十分な硬化性が得られないか、又は、ホワイトインク組成物の硬化性が不均一となる。また、Y/Xが1以上であると、マゼンタインクの濡れ広がり性が不良となる。
Y/Xは、0.3≦(Y/X)<1であることが好ましく、0.4≦(Y/X)<1であることがより好ましく、0.5≦(Y/X)<1であることが更に好ましい。
【0068】
なお、本発明において、少なくともマゼンタインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量と、ホワイトインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量が、上記の範囲であればよく、他色のインク組成物(イエローインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物等のホワイトインク組成物を除く他色のインク組成物)に含まれるラジカル重合開始剤の含有量と、ホワイトインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量との関係は、特に限定されないが、他色のインク組成物についても、上記の(1)の関係式を満たすことが好ましい。
すなわち、ホワイトインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量をX(重量%)、他色のインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量をそれぞれW(重量%)としたとき、0.1≦(W/X)<1であることが好ましく、0.3≦(W/X)≦(W/X)<1であることがより好ましく、0.4≦(W/X)<1であることが更に好ましく、0.5≦(W/X)<1であることが特に好ましい。
【0069】
マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は、3重量%以上12重量%未満であることが好ましく、5〜11重量%であることがより好ましい。
また、ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は、12〜20重量%であることが好ましく、12〜18重量%であることがより好ましい。
マゼンタインク組成物及びホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、光沢性に優れる画像が得られる。
【0070】
また、他色のインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は、それぞれ、3重量%以上12重量%未満であることが好ましく、5〜11重量%であることがより好ましい。
他色のインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、光沢性に優れる画像が得られる。
【0071】
ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。本発明に用いることができるラジカル重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤とを併用してもよい。
本発明に用いることのできるラジカル重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
【0072】
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0073】
本発明において、成分Bとして、(成分B−1)ビスアシルホスフィン化合物、(成分B−2)モノアシルホスフィン化合物が好ましい。
(成分B−1)ビスアシルホスフィン化合物
本発明において、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−1)ビスアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
成分B−1及び後述する成分B−2としては、特開2009−096985号公報の段落0080〜0098に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物及びモノアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
成分B−1としては、化合物の構造中に式(b−1−1)で表される部分構造を有するものが好ましい。
【0074】
【化13】
(式(b−1−1)中、*は結合位置を表す。)
【0075】
成分B−1としては、式(b−1−2)の化学構造を有するものが特に好ましい。
【0076】
【化14】
(式(b−1−2)中、R9、R10、R11はメチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0077】
式(b−1−2)で表されるビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、R9〜R11が、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R11がフェニル基であり、R9及びR10が1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−1−2)で表されるビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE819、チバ・ジャパン社製)が好ましい。
【0078】
(成分B−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物
本発明において、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−2)モノアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
成分B−1としては、化合物の構造中に式(b−2−1)で表される部分構造を有するものが好ましい。
【0079】
【化15】
(式(b−2−1)中、*は結合位置を表す。)
【0080】
成分B−2としては、式(b−2−2)の化学構造を有するものが特に好ましい。
【0081】
【化16】
(式(b−2−3)中、R6、R7、R8はメチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0082】
式(b−2−3)で表されるモノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、R6〜R8が、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R7及びR8がフェニル基であり、R6が1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−2−3)で表されるモノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Darocur TPO:チバ・ジャパン社製、Lucirin TPO:BASF社製)が好ましい。
【0083】
本発明において、マゼンタインク組成物を含む着色インク組成物は、(成分B−1)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又は(成分B−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましい。
また、着色インク組成物は、成分Bとして、少なくとも(成分B−1)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましい。着色インク組成物が成分B−1を含有することにより、硬化性が良好であるので好ましい。
着色インク組成物において、ラジカル重合開始剤の総量を100重量部としたとき、成分B−1及び成分B−2の総量は、20重量部以上であることが好ましく、25重量部以上であることがより好ましく、30重量部以上であることが更に好ましい。
【0084】
また、本発明において、ホワイトインク組成物は、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましい。
ホワイトインク組成物が(成分B)ラジカル重合開始剤として(成分B−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することにより、画像の黄変が抑制されるとともに、優れた硬化性が得られるので好ましい。
ホワイトインク組成物において、ラジカル重合開始剤の総量を100重量部としたとき、モノアシルホスフィンオキサイド化合物を50重量部以上含有することが好ましく、60〜100重量部含有することが好ましく、70〜100重量部含有することがより好ましい。
【0085】
(成分B−3)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物
本発明のインク組成物は、(成分B−3)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物を含有することが好ましい。特に、着色インク組成物は、硬化性の観点から、成分B−3を含有することが好ましい。
【0086】
<チオキサントン化合物>
チオキサントン化合物は、式(b−3−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0087】
【化17】
(式(b−3−1)中、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。)
【0088】
前記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
R1〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0089】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが例示できる。
これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
【0090】
<チオクロマノン化合物>
チオクロマノン化合物としては、式(b−3−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0091】
【化18】
【0092】
式(b−3−2)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。なお、アシルオキシ基は、アリールオキシカルボニル基であってもよく、アシル基はアリールカルボニル基であってもよい。この場合、アリール部分の炭素数は、6〜14であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結、例えば、縮合して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、式(b−2−1)で前述したものが挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
また、チオクロマノン化合物は、チオクロマノンの環構造上に少なくとも1つの置換基(アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基等)を有する化合物であることが好ましい。上記置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基及びアシルオキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基及びハロゲン原子がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基及びハロゲン原子が更に好ましい。
また、チオクロマノン化合物は、芳香環上、及び、シクロヘキサノン環上のそれぞれに、少なくとも1つの置換基を有する化合物であることがより好ましい。
【0093】
チオクロマノン化合物の具体例としては、下記(I−1)〜(I−31)が好ましく例示できる。これらの中でも、(I−14)、(I−17)、及び、(I−19)がより好ましく、(I−14)が特に好ましい。
【0094】
【化19】
【0095】
【化20】
【0096】
<その他の重合開始剤>
本発明のインク組成物は、成分B−1〜成分B−2以外の他の重合開始剤を含有していてもよい。他の重合開始剤としては、(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物が好ましい。
【0097】
(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物
本発明のインク組成物は、(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物を含有してもよい。着色インク組成物は、成分B−4を含有することが好ましい。成分B−4は、式(b−4−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0098】
【化21】
【0099】
式(b−4−1)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立にヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよいアミノ基を表し、Xは、水素原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。なお、R1、R2、R3、及びXがアミノ基である場合の置換基は、互いに結合して複素環基を形成してもよい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0100】
成分B−4としては、式(b−4−2)及び式(b−4−3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0101】
【化22】
【0102】
式(b−4−2)中、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4とR5、及びR6とR7の少なくともいずれかが互いに結合して複素環基を形成してもよい。R1、R2、及び、置換基は、式(b−4−1)におけるR1、R2、及び、置換基とそれぞれ同義である。
【0103】
【化23】
【0104】
式(b−4−3)中、R8は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R1、R2、及び、置換基は、式(b−4−1)におけるR1、R2、及び、置換基と同義であり、R4及びR5は、式(b−4−2)におけるR4及びR5と同義である。
前記複素環基としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、モルホリノ基が好ましい。
【0105】
α−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、市販品として、IRGACURE369(チバ・ジャパン社製)、IRGACURE907(チバ・ジャパン社製)などが好適に挙げられる。
【0106】
硬化性の観点から、(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物の含有量は、インク組成物中0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。
【0107】
その他の重合開始剤としては、更に、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。上記重合開始剤の詳細については、当業者に公知であり、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されている。
【0108】
(成分C)着色剤
本発明のインク組成物は各色に応じて、(成分C)着色剤を含有することが好ましい。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の顔料、染料を適宜選択して用いることができる。中でも、着色剤としては特に耐光性に優れるとの観点から顔料であることが好ましい。
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。更に、市販の顔料分散体や表面処理された顔料、例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0109】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0110】
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G'レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0111】
青あるいはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0112】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0113】
着色剤の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
着色剤の分散を行う際には、界面活性剤等の分散剤を添加することができる。
また、着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。分散助剤は、着色剤100重量部に対し、1〜50重量部添加することが好ましい。
【0114】
着色剤などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、インク組成物は、活性エネルギー線硬化型の液体であることが好ましく、インク組成物を被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク組成物から形成された画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、なかでも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0115】
ここで用いる着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01〜0.4μmであることが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.2μmの範囲である。最大粒径は好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下となるよう、着色剤、分散剤、分散媒の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができる。本発明においては分散性、安定性に優れた前記分散剤を用いることにより、微粒子着色剤を用いた場合でも、均一で安定な分散物が得られる。
着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。本発明においては、レーザー回折・散乱法を用いた測定により得られた値を採用する。
【0116】
着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、画像濃度及び保存安定性の観点から、着色インク組成物全体の重量に対し、0.5〜30重量%であることが好ましく、1.0〜20重量%であることが更に好ましく、2.0〜10重量%であることが特に好ましい。
また、ホワイトインク組成物において、白色の着色剤としては白色顔料が好ましい。白色の着色剤の含有量は、ホワイトインク組成物全体の重量に対し、1〜40重量%であることが好ましく、3〜30重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましい。
【0117】
(その他の成分)
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記各成分以外に、重合禁止剤、増感剤、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を含有することができる。これらは、特開2009−185186号公報に記載されており、本発明においても使用できる。
【0118】
(成分D)重合禁止剤
本発明のインク組成物は、保存性を高める観点から、重合禁止剤を含有することが好ましい。
インク組成物をインクジェット記録用インク組成物として使用する場合には、25〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、ヒンダードアミン等が挙げられ、中でもニトロソ系重合禁止剤、ヒンダードアミン系重合禁止剤が好ましい。
本発明に好ましく使用されるニトロソ系重合禁止剤の具体例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0119】
【化24】
【0120】
ニトロソ系重合禁止剤の市販品として、FIRSTCURE ST−1(Chem First社製)等が挙げられる。ヒンダードアミン系重合禁止剤の市販品としてTINUVIN292、TINUVIN770DF、TINUVIN765、TINUVIN123が挙げられる。
本発明のインク組成物中における重合禁止剤の含有量は0.01〜1.5重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%がより好ましく、0.2〜0.8重量%が更に好ましい。上記の数値の範囲内であると、インク組成物の調製時、保管時の重合を抑制でき、インクジェットノズルの詰まりを防止できる。
【0121】
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0122】
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0123】
(インク物性)
本発明のインク組成物は、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体を用いた場合でも、記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となるので好ましい。更に、インク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
なお、粘度は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行った。但し、60mPa・sより高粘度なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行った。
【0124】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、32〜40mN/mであることが好ましい。より好ましくは35〜38mN/mである。上記の範囲であると光沢性に優れる。
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられている表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で25℃にて測定した値である。
【0125】
本発明において、着色インク組成物は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を少なくとも含有するが、他色のインク組成物を更に含有してもよい。
具体的には、ライトシアン、ライトマゼンタのインク組成物を更に含有することも好ましく、この場合、着色インク組成物は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物、ライトシアンインク組成物、ライトマゼンタインク組成物の計6色で構成される。
なお、本発明における「濃色インク組成物」とは、着色剤の含有量がインク組成物全体の1重量%を超えているインク組成物を意味する。前記着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤を用いることができ、顔料や分散染料が例示できる。
本発明のインクセットが、少なくとも1つの濃色インク組成物、及び、少なくとも1つの淡色インク組成物を含んでおり、濃色インク組成物と淡色インク組成物とが同系色の着色剤を用いている場合、濃色インク組成物と淡色インク組成物との着色剤濃度の比が、濃色インク組成物:淡色インク組成物=15:1〜4:1であることが好ましく、12:1〜4:1であることがより好ましく、10:1〜4.5:1であることが更に好ましい。上記範囲であると、粒状感の少ない、鮮やかなフルカラー画像が得られる。
【0126】
更に、本発明のインクセットは、着色インク組成物及びホワイトインク組成物に加え、クリアインク組成物を有していてもよい。クリアインク組成物は、実質的に着色剤を含有せず、透明なインク組成物である。
クリアインク組成物は、前述したように、図1(A)の下塗り層として使用してもよく、また、図1(B)のオーバーコート層(保護層)として使用してもよい。クリアインク組成物を使用する場合、インクセットによって形成された印刷物は、3層構成とすることが好ましい。
【0127】
II.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、ホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、を含む。なお、ホワイトインク組成物は、インクジェット記録方法にてノズルからの吐出によって付与してもよく、塗布により付与してもよく、特に限定されない。
前記塗布に用いる装置としては特に制限はなく、公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。
【0128】
また、画像形成工程と、ホワイトインク層付与工程との工程順は、所望の画像により適宜選択すればよい。
具体的には、図1(A)に示す印刷物を得るためには、画像形成工程及びホワイトインク層付与工程をこの順で有することが好ましく、図1(B)に示す印刷物を得るためには、ホワイトインク層付与工程及び画像形成工程をこの順で有することが好ましい。
【0129】
本発明において、特に好ましく使用されるインクジェット記録方法は、着色インク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第1のノズル列と、ホワイトインク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第2のノズル列と、を含む複数のノズル列を有するインクジェットヘッドを、記録媒体に対して第1方向に往復移動させる走査工程と、前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を前記第1方向と平行でない第2方向に相対移動させる相対移動工程と、前記ノズル列(第1のノズル列及び第2のノズル列)を前記第2方向に複数の領域に分割し、前記分割された各分割ノズル領域の単位ごとに前記インクジェットヘッドのインク吐出を制御する吐出制御工程と、前記吐出制御工程によって前記インクジェットヘッドから吐出され、前記記録媒体上に付着したインクに対して活性光線を照射する活性光線照射工程とを有し、前記活性光線照射工程が、前記各分割ノズル領域に対応して前記活性光線の照射範囲が複数の領域に分割され、当該分割された分割照射領域の光量を領域別に制御して前記活性光線の照射を行う工程である、インクジェット記録方法である。
以下、図面を参照して詳述する。
【0130】
(インクジェット記録装置の全体構成)
図2は本発明に好適に使用されるインクジェット記録装置の一例を示す外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0131】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(走査手段)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0132】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交しかつプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32Bと、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34Bとが搭載されている。
【0133】
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。詳細は後述するが、本硬化光源34A,34Bのいずれか一方又は両方は、インクジェットヘッド24及び仮硬化光源32A,32BとY方向について並ぶように、X方向へ移動可能に構成されている。
【0134】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)を「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)を「副走査方向」と呼ぶ場合がある。Y方向が「第1方向」に相当し、X方向が「第2方向」に相当する。
【0135】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
【0136】
図2において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0137】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0138】
(記録媒体搬送路の説明)
図3は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図3に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
【0139】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0140】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0141】
(インクジェットヘッドの説明)
図4は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0142】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図4ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0143】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLのノズル列を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
【0144】
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。あるいはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0145】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、1列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
【0146】
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。ただし、紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、紫外線硬化型インクを使用する場合には、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式を採用することが好ましい。
【0147】
(作画モードについて)
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0148】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。一回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では一回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
【0149】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
高画質モードでは、1,200×1,200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1,200dpi×1,200dpiの解像度を得ている。
【0150】
<シングリング走査によるスワス幅について>
ワイドフォーマット機の作画モードでは、解像度設定毎に、それぞれシングリング(インターレス)する作画条件が決定されている。具体的には、インクジェットヘッドの吐出ノズル列の幅Lw(ノズル列の長さ)をパス数(スキャン繰り返し回数)だけ分割してシングリング作画するので、インクジェットヘッドのノズル列幅、並びに、主走査方向及び副走査方向のパス数(インターレースする分割数)によってスワス幅が異なる。なお、マルチパス方式によるシングリング作画の詳細については、例えば、特開2004−306617号公報に説明されている。
【0151】
一例として、FUJIFILM Dimatix社製のQS−10ヘッド(100dpi,256ノズル)を用いた場合のシングリング作画によるパス数とスワス幅の関係は下表(表1)の様になる。作画によって想定されるスワス幅は使用するノズル列幅を主走査方向パス数と副走査方向パス数の積で分割した値となる。
【0152】
【表1】
【0153】
(紫外線照射部の配置)
図4に示すように、インクジェットヘッド24のキャリッジ移動方向(Y方向)の左右両脇に、仮硬化光源32A,32Bが配置される。更に、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)の下流側に本硬化光源34A,34Bが配置されている。本硬化光源34A,34Bは、インクジェットヘッド24からY方向に仮硬化光源32A,32Bよりも外側(更に遠くの位置)に配置される。本硬化光源34A,34Bは、記録媒体搬送方向と反対方向(−X方向)へ移動可能に構成されており、キャリッジ移動方向に沿って、仮硬化光源32A,32B及びインクジェットヘッド24と並ぶように配置を変更することができる。
【0154】
インクジェットヘッド24の着色インク組成物(カラーインク)用のノズル(ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMに含まれるノズル)から吐出されて記録媒体12上に着弾したカラーインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A(又は32B)によって仮硬化のための紫外線が照射される。
また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A,34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。このようにして、インク液滴を一旦仮硬化状態にすることで、着弾干渉を防止しつつ、ドットの展開時間(ドットが所定のサイズに広がる時間)を取ることができ、ドットの高さの均一化が図れると共に、液滴と媒体との相互作用を促進して、密着性を増す事ができる。
【0155】
一方、ホワイトインクにより形成されるホワイトインク層は、カラー画像層の上塗り層及び/又は下塗り層となるので、カラー画像層ほどのドット解像度は要求されない。
ホワイトインク層のバンディング現象を詳細に検証したところ、カラーインクは打滴位置を固定する為にピニング光が必要とされるが、ホワイトインク層は、下地、あるいは表層を作るものであるから、打滴された位置においてピニングされる必要性に乏しい。むしろ、ホワイトインク層の形成時には、ホワイトインクの吐出位置に対応するピニング光量をオフ(0mJ/cm2)にする、あるいは照射光量を低減することによって、着弾滴がピニングされない状態とし、インクが濡れ広がり易い状況を作って、層の平坦化、均一化を図ることが好ましい。
【0156】
したがって、本実施形態では、ホワイトインク用のノズル(ノズル列61Wに含まれるノズル)から吐出されて記録媒体12上に着弾する白インク滴に対しては、仮硬化のための紫外線は照射しない構成とする、あるいは、照射する場合でも、カラーインクの仮硬化時よりも少ない光量の紫外線を照射する構成とする。
これにより、記録媒体上に着弾したホワイトインクのドットの広がり時間を確保することができ、層の平坦性・均一性を向上させることができる。
【0157】
また、本例では、ホワイトインク用のノズル(ノズル列61Wに含まれるノズル)から吐出されて記録媒体に着弾したホワイトインクは、ホワイトインクの吐出位置に対応して紫外線照射が可能な位置に移動させた本硬化光源34Aによって、本硬化処理時とほぼ同量の紫外線が照射される。
【0158】
ホワイトインクにより形成されるホワイトインク層の紫外線透過率が低いことに起因して、ホワイトインクの膜厚が小さい段階で(ホワイトインクの記録媒体への着弾直後から)、本硬化処理時とほぼ同量の活性化エネルギーが付与され、硬化処理が実行されることが好ましい。
【0159】
なお、仮硬化光源32A、32Bは、インクジェットヘッド24による印字動作中、2つ同時に点灯してもよいが、主走査方向のキャリッジ移動において後側となる仮硬化光源のみ点灯させることで光源の寿命を延ばすことを図ってもよい。また、本硬化光源34A、34Bは、インクジェット記録装置10の印刷動作中、2つ同時に点灯される。走査速度の遅い作画モードでは、片方を消灯することも可能であり、仮硬化光源32A、32Bと、本硬化光源34A、34Bの発光開始タイミングは、同時でもよいし、異なっていてもよい。
【0160】
(本硬化光源の移動の説明)
図5は、本硬化光源34Aの移動機構(光源移動部)35の構成例を示す斜視図である。同図に示す光源移動部35は、ラックアンドピニオン方式の直線移動機構が適用される。すなわち、光源移動部35は、本硬化光源34Aの移動方向である記録媒体搬送方向に沿って固定配置されるシャフト35Aと、本硬化光源34Aのケースに取り付けられ、シャフト35Aに沿って歯状の凹凸が形成されたラック35Bと、回転軸にピニオンギア35Cが取り付けられた駆動モータ35Dと、ラックの端部に形成された検出片35Eを検出するための光学式のポジションセンサ35Fと、を備えている。
駆動モータ35Dの回転軸を回転させるとピニオンギア35Cが回転し、ピニオンギア35Cとラック35Bの歯のかみ合いによってラック35Bがシャフト35Aに沿って移動し、ラック35Bとともに本硬化光源34Aがシャフト35Aに沿って移動する。ラック35Bの先端に設けられた検出片35Eがポジションセンサ35Fの検出範囲に入り込むと、駆動モータ35Dの回転が停止され、本硬化光源34Aが所定位置に停止する。
【0161】
なお、インクジェットヘッド24をはさんで本硬化光源34Aの反対側に位置する本硬化光源34Bにも同様の構成を有する移動機構を備えて、移動可能に構成してもよい。また、ポジションセンサ35Fを複数備えて、本硬化光源34Aを複数の位置に移動させるように構成してもよい。
【0162】
(画像形成プロセスの説明)
本例に示すインクジェット記録装置10は、カラーインク(Y、M、C、K、LC、LMなど)により形成されるカラー画像層(図1に符号82を付して図示)と、ホワイトインクにより形成されるホワイトインク層(図1に符号80を付して図示)とを積層させ、層構造の画像を形成するように構成されている。また、層形成の順番とインクの紫外線吸収特性(インクの硬化特性)に応じて、紫外線照射量が制御される。
【0163】
例えば、ホワイトインク組成物は顔料として酸化チタンや酸化亜鉛などを含有しているために、カラーインクやクリアインクに比べて紫外線の透過性が劣り、カラーインクやクリアインクと単位体積あたり同量の紫外線を照射したときには硬化時間が長くなる。ホワイトインクとカラーインクとの紫外線透過特性に起因する硬化特性の違いを解消するために、カラーインクよりもホワイトインクに対する単位時間あたりの紫外線照射量が多くなるように紫外線照射が制御される。かかる画像形成の具体例は後述する。
【0164】
なお、ブラックインク組成物は、紫外線透過性の観点によれば硬化時間が長くなるインクに分類されるが、カラー画像層の形成に用いられ、打滴直後に仮硬化させて打滴干渉を防止する必要があることからカラーインクに分類される。
【0165】
<ホワイトインク層について>
カラーインクによって形成されるカラー層(画像層)に対して、その下塗り層(下地層)及び/又は上塗り層(オーバーコート層)となるホワイトインク層は一般に二酸化チタン、酸化亜鉛などを顔料として用い、カラーインクよりも透過率が低い。ワイドフォーマットプリンターで用いる場合は、下地層、又は表面層として用いるために、打滴された直後のピニング露光(仮硬化)の必要性に乏しい。むしろ、打滴後の滴が積極的に濡れ広がり、平坦化を促進するために、カラー層と違ってピニング光によって露光されない機構、あるいは、ピニング光による硬化の作用を低減する機構とする構成が好ましい。
【0166】
実験によれば、カラー層はピニング光として、単位面積あたり、1mJ/cm2〜20mJ/cm2が打滴直後に照射されることが望ましく、更には2mJ/cm2〜8mJ/cm2が好適である。一方、ホワイトインク層はピニング光量としては0mJ/cm2〜15mJ/cm2が、打滴直後に照射されることが望ましく、更には0mJ/cm2〜8mJ/cm2が好適である。
【0167】
ピニング光は、インクの打滴直後に他のインクとの合一、干渉によって滴形状が崩れること、あるいは滴が移動することを回避するために、キャリッジ走査によって1回から複数回露光される。キュアリング光は画像形成されたインクを完全に硬化させる露光をいう。キュアリング光もキャリッジ走査によって、複数回に渡って照射される。1回から複数回のピニング露光と、複数回のキャリング露光によって、全ての積算の露光量は200mJ/cm2から1,000〜3,000mJ/cm2の光量に達する。紫外線硬化型インクに含まれる開始剤、増感剤の照射波長に対する感度とその含有量よって、インク感度の傾向が決定され、ラジカル重合、カチオン重合によってインクは硬化する。
【0168】
本実施形態では、カラー層、ホワイトインク層など、各層を形成する分割ノズル領域の描画範囲に対応して適切なピニング光を照射できるように、分割ノズル領域に合わせて仮硬化光源の照射領域が分割され、各領域の光量(照度分布)が調整される。詳細については後述する。
【0169】
(画像形成プロセスの詳細な説明)
本例に示すインクジェット記録装置10に適用される画像形成方法は、各ノズル列61が記録媒体搬送方向について複数の領域に分割され、分割されたいずれかの領域を用いてカラーインク、クリアインク又はホワイトインクのそれぞれが吐出され、カラー画像層、透明層、ホワイトインク層が形成される。ノズル列61の分割数は像形成層数Nである。
【0170】
また、記録媒体12はノズル列61の分割された領域の記録媒体搬送方向の長さをマルチパス数で除算した単位((ノズル列の全長Lw/像形成層数N)/マルチパス数で求められる単位)で一方向へ間欠送りされ、ノズル列61の記録媒体搬送方向上流側の領域から吐出されたインクの層の上に、同方向下流側の領域から吐出されたインクの層が積層されるように構成されている。ここで、「マルチパス数」とは、キャリッジ走査方向のパス数と記録媒体搬送方向のパス数の積で定義される。
【0171】
更に、他のインクよりも硬化するまでに時間を要するホワイトインクは、ホワイトインクの吐出位置に移動させた本硬化光源34A,34Bのいずれか一方によって、着弾直後から本硬化処理時とほぼ同じ光量の紫外線が照射される。ホワイトインクの着弾エリアのみに本硬化処理時と同光量の紫外線が照射されるように、本硬化光源34A,34Bの記録媒体搬送方向における照射エリアの長さは、(ノズル列の全長Lw/像形成層数N)以下とされる。
【0172】
なお、以下の説明では、本硬化光源34A,34Bの照射エリアの記録媒体搬送方向の長さと本硬化光源34A,34Bの記録媒体搬送方向の長さとは同一であるものとして説明する。実際の本硬化光源34A,34Bの記録媒体搬送方向の長さは、照射エリアの広がりが考慮され、所定の照射エリアが得られるように決められている。また、「像形成層数N」は「分割数」と記載することがある。
【0173】
(第1具体例)
第1具体例は、図1(B)に示す印刷物を形成するものであり、記録媒体12にホワイトインク層80が形成され、ホワイトインク層80の上に、カラー画像層82が形成(積層)された層構造を有する二層構成である。
【0174】
図6は、図1(B)に示す層構造を有する画像を形成するためのインクジェットヘッド24の構成、及び本硬化光源34A,34Bの配置を模式的に図示した説明図である。なお、記録媒体搬送方向(X方向)は同図に下向き矢印線で図示した上から下向きであり、キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)は左右方向である。
図6に示すように、各ノズル列61は上流側領域61−1と下流側領域61−2に二分割され、ホワイトインクはノズル列61Wの上流側領域61−1のみから吐出され、カラーインクはノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMの下流側領域61−2のみから吐出される。そして、上流側領域61−1から吐出されたホワイトインクによるホワイトインク層80(図5参照)が形成されると、記録媒体12を記録媒体搬送方向に距離((Lw/2)/マルチパス数)だけ移動させて、先に形成されたホワイトインク層80の上に下流側領域61−2から吐出させたカラーインクによるカラー画像層82が形成される。
【0175】
ホワイトインク層80の上にカラー画像層82が形成される間、当該カラーインクの吐出位置に隣接する記録媒体搬送方向上流側のホワイトインクの吐出位置には、ノズル列61Wの上流側領域61−1のみからホワイトインクが吐出される。すなわち、カラー画像層82の形成と同時に、次のカラー画像の形成領域となるホワイトインク層80の形成が進行する。また、ホワイトインク層80を形成するホワイトインクの吐出、及びカラー画像層82を形成するカラーインクの吐出には、先に説明したマルチパス方式が適用される。
【0176】
符号34A−1を付して破線により図示した位置、すなわち、ホワイトインクの吐出位置に対応した位置(ホワイトインクを吐出させるノズル列61Wの上流側領域61−1とキャリッジ移動方向に並ぶ位置)に本硬化光源34Aを移動させて(移動方向を上向き矢印線により図示)、ホワイトインクが記録媒体12に着弾した直後から本硬化光源34Aによって本硬化処理とほぼ同量の紫外線が照射される。一方、カラーインクは、仮硬化光源32A,32Bによる仮硬化処理の後に、本硬化光源34Bによる本硬化処理が施される。
【0177】
すなわち、画像形成プロセスのステップ1はホワイトインク層80の形成工程であり、図6における左側の本硬化光源34Aを、ホワイトインクの吐出位置に対応して移動させ(符号34A−1)、キャリッジ30(図4参照)をキャリッジ移動方向へ走査させる。そして、ノズル列61Wの上流側領域61−1のみからホワイトインクを吐出させる。図6の左から右へキャリッジ30が移動するときにホワイトインクが打滴され、ノズル列61Wに後続して、同キャリッジ移動方向に走査する本硬化光源34Aから、記録媒体12に着弾した直後のホワイトインクに対して紫外線が照射される。一回のキャリッジの走査で本硬化処理と同量(一回のキャリッジの走査あたり10mJ/cm2以上)の紫外線が照射されて、ホワイトインクがほぼ硬化したホワイトインク層80(図1(B)参照)が形成される。
【0178】
なお、本例の場合、図6の右から左へキャリッジ30が移動する走査時にはホワイトインクの打滴は停止されるが、本硬化光源34Aの点灯状態は維持され、本硬化光源34Aからの紫外線の照射は継続される。
【0179】
ホワイトインクは、顔料として酸化チタンや酸化亜鉛を含有しているために、カラーインクやクリアインクと比べて紫外線を吸収しにくい(硬化しにくい)性質を有している。
【0180】
仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの発光源として紫外線発光ダイオード(UV−LED)素子が適用された場合を考えると、UV−LED素子の発光波長帯は365nm〜405nmの長波帯のみであり、インクに含有する開始剤の長波化対応が必須となる。
【0181】
また、ホワイトインク層80は、いわゆるべた画像なのでカラー画像に比べて大きいサイズのドット(液滴)を使用することができる。また、上述したように、ホワイトインク(ホワイトインク層80)の紫外線透過率がカラーインクなどよりも低いため、ホワイトインクの膜厚が小さい段階で本硬化処理時とほぼ同量の活性化エネルギーが付与され、ホワイトインクの硬化処理が実行される。したがって、ホワイトインクは、仮硬化光源32A,32Bによるピニング露光を行わず(あるいは、カラーインクのピニング光量よりも低光量による照射を行い)、着弾滴の濡れ広がり時間をできるだけ確保した後に、本硬化処理と同等の活性化エネルギーを付与して完全に硬化させる。
【0182】
ステップ2はカラー画像層82の形成工程である。記録媒体12のホワイトインクの吐出位置から記録媒体搬送方向へ距離(Lw/2)だけ下流側のカラーインクの吐出位置では、すでにホワイトインク層80が形成されている。カラー画像層形成工程(ステップ2)では、このホワイトインク層80上の位置でキャリッジ30をキャリッジ移動方向へ走査させて、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMの下流側領域61−2からカラーインクを吐出させ、ホワイトインク層80に重ねてカラーインクを打滴する。
【0183】
また、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMに後続する仮硬化光源32A,32Bから、記録媒体12に着弾した直後のカラーインクに対して、紫外線を照射して仮硬化させ、ゲル状態にする。そうすることでカラーインクの着弾干渉が防止される。
【0184】
このとき、着弾直後のカラーインクに対して、仮硬化光源32A,32Bから照射される紫外線は、一回のキャリッジの走査あたり、例えば1〜5mJ/cm2と低光量である。本例に示す画像形成に適用される仮硬化のための低光量は、本硬化のための高光量に対して1/10から1/2程度となっている。
【0185】
また、詳細は後述するが、仮硬化光源32A,32Bは、二分割されたノズル列の各分割ノズル領域(上流側領域61−1、下流側領域61−2)の描画範囲に対応して、照射領域がX方向に二分割されており、図6中符号32A−1、32A−2、32B−1、32B−2で示す分割単位(分割照射領域)ごとに光量の制御が可能となっている。
【0186】
ステップ3はカラー画像層82の形成工程から本硬化処理工程までの期間であり、記録媒体12のカラーインクの吐出位置から更に記録媒体搬送方向へ(Lw/2)だけ下流側のホワイトインク層80にカラー画像層82が積層された部分は、ノズル列61の吐出位置から抜け出し、本硬化光源34Bによる紫外線照射エリアに位置している。仮硬化処理工程から本硬化処理工程までの間に所定時間を取ることで、ホワイトインク層80とカラー画像層82との密着親和性が高くなり、ドットの広がりが促進されるとともにパイルハイトの低減化が促進され、更に、カラー画像の光沢性が向上する。
【0187】
ステップ4は本硬化処理工程であり、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向下流側に配置された本硬化光源34Bを用い、キャリッジ30をキャリッジ移動方向へ走査させて、本硬化光源34Bによる紫外線照射位置に移動したカラー画像層82に本硬化処理が施される。カラー画像層82の本硬化処理における紫外線光量は、一回のキャリッジの走査あたり10mJ/cm2以上である。カラー画像層82を本硬化させることで、カラー画像層82の光沢性がより向上し、ホワイトインク層80とカラー画像層82との密着性の改善とカラー画像層82の膜質硬化とが両立される。
【0188】
(仮硬化光源ユニットの構成例)
図7は本実施形態の仮硬化光源32A,32Bとして用いる仮硬化光源ユニットの構成例を示す側面透視図である。図8はその平面透視図である。図7及び図8に示す構成例に係る仮硬化光源ユニット210は略直方体の箱形状を成す。仮硬化光源ユニット210は、アルミ製のハウジング(囲い)212の中に、複数個の紫外線発光ダイオード素子(以下、「UV−LED素子」と記載する。)214が納められ、該ハウジング212の底面部に透過型の光拡散板216が配置された構造を有する。
【0189】
LED素子214が実装された配線基板220は、LED実装面221を光拡散板216の方に向けた状態で(図7において、UV−LED素子214の発光面を下方に向けた状態)でハウジング212の上部に配置される。
【0190】
配線基板220に実装されるUV−LED素子214の個数については、特に限定はないが、必要なUV照射幅とコストの観点から、なるべく少ない数とすることが好ましい。本例では、配線基板220上に6個のUV−LED素子214が一列に並んで配置されている。図4及び図6で説明したインクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)に沿ったノズル列幅Lwに対して一度にUV照射を行うことができるUV照射幅を得るために、6個のUV−LED素子214は、記録媒体搬送方向に並んで配置されている。図7の横方向が記録媒体搬送方向(X方向)であり、図7の右から左に向かって記録媒体12が搬送されるものとする。
【0191】
配線基板220には放熱性・耐熱性が強化されたメタル基板が用いられている。メタル基板の詳細な構造は図示しないが、アルミや銅などのメタル板の上に絶縁層が形成され、該絶縁層の上にUV−LED素子214及びLED駆動用の配線回路(アノード配線、カソード配線)等が形成されている。なお、ベースメタル上に回路が形成されたメタルベース基板を用いてもよいし、基板内部にメタル板が埋め込まれたメタルコア基板を用いてもよい。
【0192】
また、配線基板220におけるLED実装面221のLED素子214の周囲には、UV耐性のある高反射率の白色レジスト処理が施されている。この白色レジスト層(不図示)により、配線基板220の表面で紫外線を反射・散乱させることができ、UV−LED素子214が発生する光を効率良く仮硬化用のUV照射に利用することができる。
【0193】
光拡散板216は、UV−LED素子214から発せられた光を透過しつつ拡散させる光学材料で形成された乳白色板である。例えば、光拡散板216には、白色顔料(光拡散物質)を分散した白色アクリル板が用いられる。白色アクリル板に限らず、ガラスなど透明な材料中に光拡散用の微粒子を分散混入させて成形した光学部材を使用することもできる。光拡散物質(白色顔料等)の含有量、平均粒径を変えることによって透過率や拡散特性が異なる光拡散板が得られる。
【0194】
なお、透過型の光拡散板として、光を拡散させる手段は、このアクリル樹脂にシリカ粉体を分散させる手段に限らず、溶融石英からなる基板の表面をフロスト処理、曇りガラス処理、スリガラス処理することなどによっても容易に実現することができる。
このような透過型の光拡散板216は、配線基板220のLED実装面221に対向して、ハウジング212の下部に配置される。図7において光拡散板216の下面(符号217)は、記録媒体(不図示)に対面する光出射面である。全てのUV−LED素子214(本例の場合6個)を点灯させた場合に光拡散板216の光出射面217から記録媒体12上に、インクジェットヘッド24のノズル列幅Lw以上の光照射幅で紫外線が照射される。
【0195】
本例の仮硬化光源ユニット210では、6個のUVLED素子214がX方向に並んだLED配列が2つの領域に分割されている。すなわち、X方向に沿って並ぶ複数個のUV−LED素子214は、記録媒体搬送方向(X方向)の上流側の領域224−1と、下流側の領域224−2の二領域に分割されており、各分割領域224−1、224−2にそれぞれ3個ずつのUV−LED素子214が含まれている。
【0196】
ハウジング212の内部には、上記2分割されたLED素子列の領域を区画するための範囲規制部材として、遮光性のある仕切部材226が設けられており、一方の領域のUV−LED素子214の光が、他方の領域に進入しない構造となっている。一般に、UV−LED素子は照射範囲が広く、広がりながら伝搬する性質を持つが、本例のように、仕切部材226によってLED素子の周囲を覆う構造により、照射領域を分けることができる。
【0197】
また、各分割領域224−1、224−2ごとに、それぞれの領域内のUV−LED素子214の発光量を制御することができる。例えば、ホワイトインクによる層形成時には上流側の領域224−1に属する3つのUV−LED素子214がオフされ、下流側の領域224−2に属する3つのUV−LED素子214がオンされる。
【0198】
このような仕切部材226による発光範囲の分割と、各領域224−1,224−2内に属するLED素子の発光制御との組合せによって、紫外線の照射領域を分割することができ、各分割照射領域の光量を個別に制御することが可能である。
【0199】
すなわち、図7及び図8に示した構成例は、光源箱の上部にLED素子列を配置した上方照射型LED光源ユニットであり、LEDの照射点灯領域をインクジェットヘッド24のノズル列の分割領域に対応して分割点灯制御する構成となっている。発光量の制御には、電流値制御、パルス幅変調制御、オンオフ制御などが含まれる。電流値を制御する電流制御手段、パルス幅変調制御を行うパルス幅変調制御手段、オンオフ制御を行うオンオフ制御手段のいずれか、もしくはこれらの適宜の組合せを備える構成とする。
【0200】
図7及び図8に例示した構成に限らず、例えば、ハウジング212の下面に、照射領域を決定する高反射率のアルミ板を設け、当該アルミ板の枠をずらすことで、上流側/下流側の照射領域を変えることも可能である。あるいはまた、高反射率のアルミ板の枠を交換することによって、照射領域を変更する態様も可能である。この場合、高反射率のアルミ板によって照射範囲が規制されるため、このアルミ板が「範囲規制部材」に相当する。その他、光照射範囲を制限するメカシャッターや液晶シャッターなどを設けて、照射領域を規制する態様も可能である。
【0201】
(第2具体例)
図1(A)は、第2具体例に係る画像形成プロセスにより形成された画像の層構造を模式的に図示した説明図であり、図9は、図1(A)に示す層構造を有する画像を形成するためのインクジェットヘッド24の構成、及び本硬化光源34A,34Bの配置を模式的に図示した説明図である。以下の説明では、先に説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0202】
図1(A)に示す画像は、像形成層数が2であり、透明の記録媒体12にカラー画像層82が形成され、カラー画像層82上にホワイトインク層80が形成される。かかる構造を有する画像は、記録媒体12の裏面(画像が形成される面の反対側面)から見たときにホワイトインク層80を背景としてカラー画像層82を視認することができる。
【0203】
ステップ1はカラー画像層82の形成工程であり、図9における左側の本硬化光源34Aを、符号34A−2を付して破線により図示した、ホワイトインクの吐出位置(ノズル列61Wの下流側領域61−2とキャリッジ移動方向に並ぶ位置)に移動させる(移動方向を上向き矢印線により図示)。そして、キャリッジ30をキャリッジ移動方向へ走査させて、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMの上流側領域61−1から記録媒体12上にカラーインクを吐出させる。また、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMに後続する仮硬化光源32A,32Bから、記録媒体12に着弾した直後のカラーインクに対して、一回のキャリッジの走査で低光量(一回のキャリッジの走査あたり1〜5mJ/cm2)の紫外線を照射して仮硬化させ、ゲル状態にする。そうすることでカラーインクの着弾干渉が防止される。
【0204】
ステップ2はカラー画像層82の形成工程からホワイトインク層80の形成工程までの期間であり、仮硬化状態が所定時間維持されることで記録媒体12とカラー画像層82との密着親和性が高くなり、ドットの広がりが促進されるとともにパイルハイトの低減化が促進され、更に、カラー画像の光沢性が向上する。
【0205】
ステップ3はホワイトインク層80の形成工程であり、記録媒体12のカラーインクの吐出位置から記録媒体搬送方向へ(Lw/2)だけ下流側のホワイトインクの吐出位置(すでに形成されたカラー画像層82上)では、キャリッジ30(図4参照)をキャリッジ移動方向へ走査させ、ノズル列61Wの下流側領域61−2のみから仮硬化状態のカラー画像層82の上にホワイトインクを吐出させる。そして、ノズル列61Wに後続してキャリッジ移動方向に走査する本硬化光源34Aから記録媒体12に着弾した直後のホワイトインク、及びホワイトインクの下の仮硬化状態のカラー画像層82に対して、一回のキャリッジの走査で本硬化処理と同等の高い光量(一回のキャリッジの走査あたり10mJ/cm2)以上の紫外線が照射され、ホワイトインク層80(図1(A)参照)が形成されるとともに、カラー画像層82の硬化が促進される。
【0206】
当該ホワイトインク層80に対する仮硬化光源32A,32Bの照射領域の制御については、第1具体例で説明したものと同様である。
【0207】
ステップ4は本硬化処理工程であり、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向下流側に配置された本硬化光源34Bを用いて、ホワイトインク層80及びカラー画像層82に本硬化処理が施される。かかる本硬化処理における紫外線光量は一回のキャリッジの走査あたり10mJ/cm2である。ホワイトインク層80及びカラー画像層82を本硬化させることで、カラー画像層82の光沢性がより向上し、ホワイトインク層80とカラー画像層82との密着性の改善とカラー画像層82の膜質硬化とが両立される。
【0208】
(インク供給系)
図10は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクカートリッジ36に収容されているインクは、供給ポンプ70によって吸引され、サブタンク72を介してインクジェットヘッド24に送られる。サブタンク72には、内部のインクの圧力を調整するための圧力調整部74が設けられている。圧力調整部74は、バルブ76を介してサブタンク72と連通される加減圧用ポンプ77と、バルブ76と加減圧用ポンプ77との間に設けられる圧力計78と、を具備している。
【0209】
通常の印字時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを吸引する方向に動作し、サブタンク72の内部圧力及びインクジェットヘッド24の内部圧力が負圧に維持される。一方、インクジェットヘッド24のメンテナンス時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを加圧する方向に動作し、サブタンク72の内部及びインクジェットヘッド24の内部が強制的に加圧され、インクジェットヘッド24内のインクがノズルを介して排出される。インクジェットヘッド24から強制的に排出されたインクは、上述したキャップ(図示せず)のインク受けに収容される。
【0210】
(インクジェット記録装置の制御系の説明)
図11はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置102が設けられている。制御装置102としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置102は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置102には、記録媒体搬送制御部104、キャリッジ駆動制御部106、光源制御部108、画像処理部110、吐出制御部112が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0211】
記録媒体搬送制御部104は、記録媒体12(図2参照)の搬送を行うための搬送駆動部114を制御する。搬送駆動部114は、図3に示すニップローラ40を駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図2参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、スワス幅単位で副走査方向へ間欠送りされる。
【0212】
図11に示すキャリッジ駆動制御部106は、キャリッジ30(図2参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部116を制御する。主走査駆動部116は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。光源制御部108は、光源駆動回路118を介して仮硬化光源32A,32Bの発光を制御するとともに、光源駆動回路119を介して本硬化光源34A,34Bの発光を制御する制御手段である。仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bとして、UV−LED素子(紫外LED素子)やメタルハライドランプなどのUVランプが適用される。
【0213】
制御装置102は、操作パネル等の入力装置120、表示装置122が接続されている。入力装置120は、手動による外部操作信号を制御装置102へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置122には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置120を操作することにより、作画モードの選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置122の表示を通じて確認することができる。
【0214】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部124と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース126が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0215】
画像入力インターフェース126を介して入力された画像データは、画像処理部110にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
【0216】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般に3以上の階調値を有する階調画像データを元の階調値未満の階調値を有する階調画像データに変換する。最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0217】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、更に、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0218】
吐出制御部112は、画像処理部110において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路128に対して吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部112は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部124に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路128に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0219】
ヘッド駆動回路128を介してインクジェットヘッド24の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される。
【0220】
情報記憶部124は、制御装置102のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部124は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの制御情報などが格納されている。
【0221】
エンコーダ130は、主走査駆動部116の駆動用モータ、及び搬送駆動部114の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置102に送られる。エンコーダ130から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12の位置が把握される。
【0222】
センサ132は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ132から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
【0223】
制御装置102は、本硬化光源34A,34Bの光源移動部35の動作を制御する。例えば、入力装置120から画像形成プロセスの選択情報や本硬化光源34A,34Bの位置情報が入力されると、画像形成プロセスに対応する位置に本硬化光源34A(34B)を移動させる。
【0224】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置及び画像形成方法によれば、ノズル列の分割領域に対応して、ピニング露光領域を分割制御できるため、インク層ごとに適切な硬化処理を実現できる。これにより、ホワイトインク層にバンディング現象が発生することを回避することができる。すなわち、ホワイトインクのインク吐出領域に対するピニング露光をオフ、あるいは低光量化することで、ホワイトインク滴の広がりを促進させることができ、層の平坦化及び均一化を達成できる。これにより、スワス毎の周期的な縞が視認できる状況(バンディングの発生)を回避できる。
【0225】
また、本実施形態によれば、紫外線の透過特性がよく、紫外線に対する感度が高く硬化が速いインク(カラーインク)に対して、吐出直後に仮硬化光源32A,32Bから低光量の紫外線を照射して仮硬化状態とし、本硬化光源34A,34Bのいずれか一方を、紫外線の透過特性が劣り(紫外線に対する感度が低く)、硬化が遅いインク(ホワイトインク)の吐出位置に移動させ、紫外線に対する感度が低く、硬化の遅いインクに対して吐出直後に本硬化光源34A(34B)から高光量の紫外線を照射して硬化させるので、作画する画像に使用されるインクによって紫外線光量(照射エネルギー量)が最適化され、感度の異なる二種類以上のインクを層として重ねる画像形成が可能となる。
【0226】
具体的には、カラーインクは、打滴(記録媒体への着弾)直後に仮硬化光源32A,32Bから低光量の紫外線が照射され仮硬化状態とされ、ドット展開時間経過後、かつ、パイルハイトの均一化後に、本硬化光源34B(34A)から高光量の紫外線が照射され本硬化状態とされる。したがって、仮硬化から本硬化までの間にドット展開時間が取られることでドットのゲインをより大きく取ることが可能となり、更に、パイハイトの均一化の時間が取られることで画像の粒状性が向上する。
【0227】
また、本硬化光源34A,34Bの少なくともいずれ一方を、記録媒体搬送方向に平行移動可能に構成するとともに、紫外線に対する感度が低く硬化の遅いインクの吐出位置に選択的に配置することができ、更に、紫外線に対する感度が低く硬化の遅いインクの吐出範囲(ノズル列の全長Lw/像形成層数(分割数)N)に対応して本硬化光源34A,34Bの照射エリアが決められるので、紫外線に対する感度が低く硬化の遅いインクのみに選択的に高光量の紫外線が照射され、インク間の硬化時間の差に起因する不具合を回避しうる。
【0228】
本発明に使用される記録媒体としては、特に限定されず、公知の記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。本発明における記録媒体としては、非吸収性記録媒体が好ましく、中でもプラスチックフィルム、紙がより好ましい。
【0229】
本発明において、着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積は、5pL以上20pL未満であることが好ましく、ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積は20pL以上60pL以下であることが好ましい。
上述したように、ホワイトインク組成物は、下地層又はオーバーコート層を形成するものであり、高い解像度が要求されない。一方、着色インク組成物は、カラー画像を形成するので、高い解像度が要求される。着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積と比較して、ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積を大きくすることによって、高い生産性が得られる。
着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積は、6〜18pLであることがより好ましく、6〜15pLであることが更に好ましい。また、ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積は、20〜50pLであることがより好ましく、20〜45pLであることが更に好ましい。
【0230】
本発明において、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インク組成物供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる画像形成装置が好ましく使用される。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク組成物供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断又は断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0231】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物として使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。よって、インク組成物の温度の制御幅は、設定温度の±5℃であることが好ましく、設定温度の±2℃であることがより好ましく、設定温度の±1℃であることが更に好ましい。
【0232】
本発明のインク組成物は、このような紫外線に、好ましくは0.01〜2秒、より好ましくは0.1〜1.5秒、更に好ましくは0.3〜1秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
【実施例】
【0233】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示すものとする。
【0234】
(イエローミルベースの調製)
・イエロー顔料:NOVOPERM YELLOW H2G(クラリアント社製)
30重量部
・SR9003(プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、SARTOMER社製) 30重量部
・BYK168(分散剤、BYK Chemie社製) 40重量部
上記の成分を撹拌し、イエローミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散することにより行った。
【0235】
(マゼンタミルベースの調製)
・マゼンタ顔料:CINQUASIA MAGENTA RT−355D(チバ・ジャパン社製) 30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、マゼンタミルベースを得た。
【0236】
(シアンミルベースの調製)
・シアン顔料:IRGALITE BLUE GLVO(チバ・ジャパン社製)
30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、シアンミルベースを得た。
【0237】
(ブラックミルベースの調製)
・ブラック顔料:SPECIAL BLACK 250(チバ・ジャパン社製)
30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、ブラックミルベースを得た。
【0238】
(ホワイトミルベースの調製)
・ホワイト顔料:アルミナ処理酸化チタン(KRONOS社製) 60重量部
・SR9003 36重量部
・ソルスパース36000(アビシア社製) 4重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、ホワイトミルベースを得た。
【0239】
(実施例、及び、比較例)
<インク組成物の作製方法>
表2及び表3に記載の素材を混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。なお、表中の数値は各成分の配合量(重量部)を表す。
【0240】
【表2】
【0241】
【表3】
【0242】
なお、上記表2及び表3に記載された各成分は以下の通りである。
・NVC:N−ビニルカプロラクタム(V−CAP、ISP社製)
・NVF:N−ビニルフォルムアミド(東京化成(株)製)
・SR531:サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート95重量%と、トリメチルロールプロパントリアクリレート5重量%の混合物(SR531、Sartomer社製)
・PEA:フェノキシエチルアクリレート(SR399S、Sartomer社製)
・FA−512:ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製)
・SR351S:トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer社製)
・HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(SR238F、Sartomer社製)
・CN964A85:ウレタンアクリレートオリゴマー(平均官能基数2、サートマー・ジャパン(株)製)
・CN962:ウレタンアクリレートオリゴマー(平均官能基数2、サートマー・ジャパン(株)製)
・Irg369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369、チバ・ジャパン社製)
・Irg819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819、チバ・ジャパン社製)
・TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Darocur TPO、チバ・ジャパン社製)
・ITX:イソプロピルチオキサントン(SPEEDCURE ITX、Lambson社製)
・ST−1:トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩8重量%と、フェノキシエチルアクリレート92重量%との混合物(重合禁止剤、FIRSTCURE ST−1、Chem First社製)
【0243】
<インクジェット記録方法>
図6〜図9に記載の構成のインクジェと記録装置を用いた。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタの各色インク組成物について、インクジェットヘッドは、ピエゾ型インクジェットヘッドQ−class Sapphire QS−256/10(FUJIFILM DIMATIX社製、ノズル数256個、最小液滴量10pL、50kHz)を用いた。
ホワイト、クリアのインク組成物に関しては、インクジェットヘッドとして、ピエゾ型インクジェットヘッドQ−class Sapphire QS−256/30(FUJIFILM DIMATIX社製、ノズル数256個、最小液滴量30pL、33kHz)を用いた。
また、仮光源(ピニング光源)としては、図8に示されるように発光ダイオード(UV−LED、日亜化学工業(株)製NC4U134、波長385nm)を6個配置した光源を、インクジェットヘッドの左右に1つずつ(計2個)具備し、光源1つあたりの照度が780mW/cm2の光源を使用した。
本硬化光源としては、発光ダイオード(UV−LED、日亜化学工業(株)製NC4U134、波長385nm)を10個配置した光源を左右に1つずつ(計2個)具備し、光源1つあたりの照度が1,500mW/cm2の光源を使用した。
インク供給系は、インクパック、供給配管、脱気フィルターSEPAREL EF−G2(DIC株式会社製)、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、脱気フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、脱気フィルター部分では0.5気圧まで減圧した。
上記構成からなる装置を用い、複数パスにより画像を形成した。
【0244】
二層形成の際は、図6又は図9に示すように、本硬化光源の一つをノズル方向ヘッド反対側に移動させ、カラー、ホワイトヘッドのノズルを二分割し、画像形成を行った。この際下地がカラー画像層の場合、図6に示すように、カラーインク組成物のヘッドのノズルは紙送り方向の上流側半分を、ホワイトインク組成物のヘッドのヘッドのノズルは下流側の半分を、下地がホワイトの場合、図9に示すようにカラーインク組成物のヘッドのノズルは紙送り方向の下流側半分を、ホワイトインク組成物のヘッドのノズルは上流側の半分を使用し画像形成を行った。なお、仮硬化光源は、全点灯させた。
【0245】
得られた画像に対して、以下の評価を行った。
<バンディングの評価>
上記印刷方法でビューフルUV MT−188(透明PET、厚さ188μm、(株)きもと製)上にカラー層12μm膜厚、ホワイトインク層25μm膜厚の画像を形成した。このとき、カラー層は、100%ベタ画像を基準に80%、60%、40%、20%の階調画像を印刷した。また、このときの基材表面での最高照度は1,500W/cm2であり、露光量は400mJ/cm2であった。
10名の評価者により、50cmの距離からの印刷物を観察し、バンディングの有無を評価した。3以上であれば実用上問題がない。
5:全員がバンディングは認められないと回答した。
4:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、1〜2名であった。
3:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、3〜5名であった。
2:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、6〜8名であった。
1:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、9名以上であった。
【0246】
<密着性の評価>
密着性評価方法としてクロスハッチテスト(JIS K 5600−5−6、2004年)を行った。上記インクジェットインクジェット画像記録方法に従いビューフルUV MT−188(透明PET、厚さ188μm、(株)きもと製)上にカラー層12μm膜厚、ホワイトインク層25μm膜厚のベタ画像を描画した。その後、各々の印刷物に対して、クロスハッチテストを実施した。なお、評価は、JIS K5600−5−6に従い、0〜5の6段階評価とした。ここで、評価0がカットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがないことを意味し以下の分類で評価した。
格子に切り込みを入れる際インク−基材間評価の時は基材に達する深さまで切り込みをいれ、インク−インク間評価の時はおいては上層と下層の界面まで切り込みをいれ評価を行った。3以上であれば実用上問題がない。
5:JIS K5600−5−6 分類 0
4:JIS K5600−5−6 分類 1
3:JIS K5600−5−6 分類 2
2:JIS K5600−5−6 分類 3
1:JIS K5600−5−6 分類 4、5
【0247】
<硬化性の評価>
上記印刷方法でポリ塩化ビニル製のシート上に上にカラー層12μm膜厚、ホワイトインク層25μm膜厚の100%ベタ画像を印刷した。このときの基材表面での最高照度は1,500W/cm2であり、露光量は400mJ/cm2であった。
−硬化感度評価−
印刷後の表面の色移りとベトツキによって硬化感度を定義した。印刷後の表面のベトツキの有無は触診で、色移りは印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け判断した。色移り、ベトツキがないほど感度が高いと評価し、以下の基準で評価した。
5:色移りなし、ベトツキなし
4:色移りなし、ベトツキもほとんどなし
3:色移りなし、ややベトツキあり
2:若干色移りあり、ややベトツキあり
1:色移りあり、ベトツキあり
【0248】
<光沢性の評価>
記録媒体として、三菱製紙製の特菱アート紙(坪量104g/m2)、を用いた。得られた画像について、JIS Z8741に基づき、Sheen Instruments社製光沢度計を用い、測定角60°で測定を行った。
5:光沢度25以上
4:光沢度20以上25未満
3:光沢度15以上20未満
2:光沢度10以上15未満
1:光沢度10未満
評価3以上は実用上許容できる。
【0249】
なお、以下の表において、3Cは、3カラーグレー(イエロー、マゼンタ、シアンから構成されるグレー)を意味し、4Cは4カラーグレー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから構成されるグレー)を意味する。また、Mは、マゼンタ色の画像を意味し、インクセットがライトマゼンタ色のインク組成物を有する場合には、マゼンタ及びライトマゼンタのインク組成物で画像を形成した。同様に、Cはシアン色の画像を意味し、インクセットがライトシアン色のインク組成物を有する場合には、シアン及びライトシアンのインク組成物で画像を形成した。
「下層W」では、図1(B)に示すように、記録媒体上にホワイトインク層を形成し、その上に、画像層を形成しており、「上層W」では、図1(A)に示すように、被記録媒体上に画像層を形成し、その上にホワイトインク層を形成している。
また、以下の表において、「W」は、カラー画像層を形成せずに、ホワイトインク層のみを形成して硬化性、密着性、バンディング性、光沢性を評価したものである。
なお、以下の比較例1〜4において、Y、M、C、Kでの結果が満足できるものではなかったことから、3C、4Cについては、評価を行わなかった。
結果を以下の表に示す。
【0250】
【表4】
【0251】
【表5】
【0252】
表4に示すように、最適な開始剤比及びラジカル重合性化合物組成を選択することにより、硬化性と密着性の両立が図れた。更に、光沢性に優れ、バンディングの発生が抑制された画像が得られた。
一方、これらの要件を満たさない、比較例のインクセットでは、表5に示すように、上記の効果の全てを奏するインクセットを得ることはできなかった。
【0253】
<画像形成方法>
仮光源を左右に1つずつ(合計2個)から、左右に2つずつ(合計4個)に変更した。なお、本硬化光源は変更しなかった。それぞれの照度は電流値を変更して照度を調整した。
【0254】
【表6】
【0255】
表6に示すように、仮硬化光源を本硬化光源より低照度にすることにより、半硬化状態を保ち、下地との親和性を持たせることにより、二層形成ではよりよい性能が得られたと推測される。
【符号の説明】
【0256】
10 インクジェット記録装置、12 記録媒体、20 装置本体、22 支持脚、24 インクジェットヘッド、26 プラテン、28 ガイド機構、30 キャリッジ、32A,32B 仮硬化光源、34A,34B 本硬化光源、35 移動機構(光源移動部)、35A シャフト、35B ラック、35C ピニオンギア、35D 駆動モータ、35E 検出片、35F ポジションセンサ、36 インクカートリッジ、38 取り付け部、40 ニップローラ、42 供給側のロール、44 巻き取りロール、46 ガイド、50 温調部、52 プレ温調部、54 アフター温調部、61,61C,61M,61Y,61K,61LC,61LM,61CL,61W ノズル列、61−1 上流側領域、61−2 下流側領域、70 供給ポンプ、72 サブタンク、74 圧力調整部、76 バルブ、77 加減圧用ポンプ、78 圧力計、80 ホワイトインク層、82 カラー画像層、102 制御装置、104 記録媒体搬送制御部、106 キャリッジ駆動制御部、108 光源制御部、110 画像処理部、112 吐出制御部、114 搬送駆動部、116 主走査駆動部、120 入力装置、124 情報記憶部、128 ヘッド駆動回路、130 エンコーダ、132 センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層形成用インクセット、インクジェット記録方法、及び、印刷物に関する。
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
【0003】
これまでに、種々の放射線硬化性インク組成物が提案されており、特許文献1には、重合性モノマーを含むインキジェット用活性エネルギー線硬化型インキであって、前記重合性モノマーが、モノマー全体に対して、単官能モノマーを80〜99.99重量%、多官能モノマーを20重量%〜0.01重量%含有し、かつ、該インキの硬化膜を該インキに30秒浸漬させたときの重量変化率が30重量%以下であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインキが記載されている。
【0004】
現在、インクジェットプリンタにより、普通紙あるいは、プラスチックなど非吸水性の記録媒体にインクを打滴して印字する際の高速化、高画質化及び記録媒体への定着性が重要な課題となっている。
特許文献2には、種々の記録媒体間での画像均一性の向上等を目的として、少なくとも重合性化合物、光重合開始剤及び着色剤を含有する着色液体組成物と、少なくとも重合性化合物及び光重合開始剤を含有する下塗り液体組成物とを少なくとも含み、着色液体組成物に含まれる重合性化合物が、少なくとも1種類の単官能モノマー及び少なくとも1種類の多官能モノマーで構成され、かつ、着色液体組成物全体中の単官能モノマーの量が10〜70重量%であり、多官能モノマーの量が10〜50重量%であることを特徴とする
インクジェット記録用インクセットが開示されている。
【0005】
また、印刷物の耐久性等を向上させることが課題となっている。
特許文献3には、耐候性及び耐久性に優れたインクジェット印刷物を得ることを目的として、表面に透明保護層が形成されたインクジェット印刷物であって、基材と、該基材上にインクジェット式印刷によって形成された絵柄層とを有すると共に、該絵柄層上に前記透明保護層が形成されており、前記絵柄層は、紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂インクからなり、前記透明保護層は、電子線照射により硬化する電子線硬化性樹脂からなることを特徴とするインクジェット印刷物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−131755号公報
【特許文献2】特開2008−100501号公報
【特許文献3】特開2010−000788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複層形成時の基材−インク間、及び、インク−インク間の密着性に優れ、かつ、優れた画質と光沢性とを有する画像を形成しうる複層形成用インクセット、及び、該インクセットを用いて、高い生産性を有するインクジェット記録方法、並びに、該インクジェット記録方法により記録された印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記<1>、<10>又は<15>に記載の手段により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<9>、及び、<11>〜<14>と共に以下に示す。
<1> イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物と、ホワイトインク組成物と、を含み、各インク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物と、(成分B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、前記成分Aとして、(成分A−1)及び(成分A−2)を含有し、
(成分A−1)N−ビニル化合物、
(成分A−2)下記式(a−2)で表される化合物、
前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする複層形成用インクセット、
【0009】
【化1】
(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0010】
【数1】
【0011】
<2> 前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(2)を満たす、<1>に記載の複層形成用インクセット、
【0012】
【数2】
【0013】
<3> 前記成分Aが(成分A−3)トリメチロールプロパントリアクリレートを更に含有する、<1>又は<2>に記載の複層形成用インクセット、
<4> 前記成分A−1がN−ビニルラクタム類である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<5> 前記成分A−1がN−ビニルカプロラクタムである、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<6> 前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が3重量%以上12重量%未満であり、かつ、前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が12重量%以上20重量%以下である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<7> 前記成分Aが単官能ラジカル重合性化合物を、成分Aの総量に対して50重量%以上90重量%以下含有する、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<8> 前記マゼンタインク組成物は、成分Bとしてビスアシルホスフィンオキサイド及び/又はモノアシルホスフィンオキサイドを含有し、前記ホワイトインク組成物は、成分Bとしてモノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<9> 全てのインク組成物の表面張力が32〜40mN/mである、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセット、
<10> <1>〜<9>のいずれか1つに記載の複層形成用インクセットを用いたインクジェット記録方法において、着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、ホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、を含むインクジェット記録方法、
<11> 記録媒体上に着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、形成された画像上にホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、をこの順で有する、<10>に記載のインクジェット記録方法、
<12> 記録媒体上にホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、ホワイトインク層上に着色インク組成物を付与して画像形成を行う画像形成工程と、をこの順で有する、<10>に記載のインクジェット記録方法、
<13> 着色インク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第1のノズル列と、ホワイトインク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第2のノズル列と、を含む複数のノズル列を有するインクジェットヘッドを、記録媒体に対して第1方向に往復移動させる走査工程と、前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を前記第1方向と平行でない第2方向に相対移動させる相対移動工程と、前記ノズル列を前記第2方向に複数の領域に分割し、前記分割された各分割ノズル領域の単位ごとに前記インクジェットヘッドのインク吐出を制御する吐出制御工程と、前記吐出制御工程によって前記インクジェットヘッドから吐出され、前記記録媒体上に付着したインクに対して活性光線を照射する活性光線照射工程とを有し、前記活性光線照射工程が、前記各分割ノズル領域に対応して前記活性光線の照射範囲が複数の領域に分割され、当該分割された分割照射領域の光量を領域別に制御して前記活性光線の照射を行う工程である、<10>〜<12>のいずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<14> 前記着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積が5pL以上20pL未満であり、前記ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積が20pL以上60pL以下である、<13>に記載のインクジェット記録方法、
<15> <10>〜<14>のいずれか1つに記載の方法により得られた印刷物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複層形成時の基材−インク間、及び、インク−インク間の密着性に優れ、かつ、優れた画質と光沢性とを有する画像を形成しうる複層形成用インクセット、及び、該インクセットを用いて、高い生産性を有するインクジェット記録方法、並びに、該インクジェット記録方法により記録された印刷物を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】記録媒体上に本発明の複層形成用インクセットを用いて画像層及びホワイトインク層を形成した場合の断面図を示す概略図である。
【図2】本発明に好適に使用されるインクジェット記録装置の一例を示す外観斜視図である。
【図3】図2に示すインクジェット記録装置の用紙搬送路を模式的に示す平面透視図である。
【図4】図2に示すインクジェットヘッド及び紫外線照射部の配置構成を示す平面透視図である。
【図5】図4に示す紫外線照射部を移動させる光源移動部の構成例を示す斜視図である。
【図6】図1(B)に示す画像を形成するためのインクジェットヘッド及び紫外線照射部の構成例を示す説明図である。
【図7】本実施形態の仮硬化光源として用いる仮硬化光源ユニットの構成例を示す側面透視図である。
【図8】図7の仮硬化光源ユニットの平面透視図である。
【図9】図1(A)に示す画像を形成するためのインクジェットヘッド及び紫外線照射部の構成例を示す説明図である。
【図10】インクジェット記録装置のインク供給系の構成を示すブロック図である。
【図11】インクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の複層形成用インクセット(以下、単に「インクセット」ともいう。)は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物と、ホワイトインク組成物と、を含み各インク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物と、(成分B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、前記成分Aとして、(成分A−1)N−ビニル化合物、及び、(成分A−2)下記式(a−2)で表される化合物を含有し、前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0017】
【化2】
(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0018】
【数3】
【0019】
明細書中、数値範囲を表す「X〜Y」の記載は「X以上Y以下」と同義である。また、前記「(成分A−1)N−ビニル化合物」等を単に「成分A−1」等ともいう。また、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」とも記載する。
また、「ホワイトインク組成物」等を、単に「ホワイトインク」等とも記載する。なお、化学式の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
I.複層形成用インクセット
本発明の複層形成用インクセットは、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物によって画像層を形成し、ホワイトインクによってホワイトインク層を形成する。記録媒体(支持体、又は、基材)上に着色インク組成物によって画像層を形成し、その上にホワイトインク層を形成してもよく、記録媒体上にホワイトインク層を形成し、その上に画像層を形成してもよい。
図1には、記録媒体12上に本発明の複層形成用インクセットを用いて画像層82及びホワイトインク層80を形成した場合の断面図を示す概略図である。また、図中の矢印は、画像の視認方向(観察方向)を示している。
図1(A)では、記録媒体12上に画像層82が形成され、更にその上にホワイトインク層80が形成されている。この場合、記録媒体としては、透明の記録媒体を使用することが好ましく、記録媒体12を通して画像を視認する。
一方、図1(B)では、記録媒体12上にホワイトインク層80が形成され、更にその上に画像層82が形成されている。この場合、記録媒体12は透明であっても、不透明であってもよく、特に限定されない。ホワイトインク層は、下塗り層として機能する。
なお、ホワイトインク層は、少なくとも画像が形成された領域に設けられ、好ましくは画像が形成された領域又はそれよりも広い領域に、一層のベタ層として設けられる。
【0021】
本発明では、上記の二層を形成する態様に限定されるものではなく、例えば、記録媒体の上に下塗り層としてクリアインク層を形成し、更にその上に画像層及びホワイトインク層をこの順で有する三層とする態様や、記録媒体上にホワイトインク層、及び画像層をこの順で設けた後、更に、クリアインク層をオーバーコート層として形成して、三層構造とする態様が例示される。更に、透明の記録媒体に第1の画像層、ホワイトインク層、第2の画像層の順に各層が積層された構造を有していてもよい。この場合、ホワイトインク層が上下の画像層にはさまれた構造を有している。かかる構造を有する画像は、記録媒体の両面からホワイトインク層を背景とした画像層が視認される。
【0022】
少なくとも画像層とホワイトインク層の二層を形成する場合、生産性の観点から、一層目を形成してから、僅かな時間で(例えば数秒後)、二層目を形成する必要がある。このため、一層目の硬化プロファイル及び硬化状態により、二層目の画質や光沢性が影響を受ける。
本発明のインクセットによれば、このような二層形成時において、基材−インク間、及び、インク−インク間の密着性に優れ、また、画質及び光沢性に優れた画像が得られる。詳細は作用機構は不明であるが、以下のように推測される。
すなわち、特定のラジカル重合性化合物を含有することにより、層間の親和性が高く、画像層−ホワイトインク層の密着性が向上するものと考えられる。
更に、開始剤量を最適化することにより、インク膜上での濡れ広がりが向上し、光沢性のある画像が得られるとともに、バンディングが抑制される。なお、バンディングとは、スジ状の印画ムラであり、マルチパス印字によるスワス幅周期に対応して、光沢性が異なる現象をいう。インク液滴を打滴後にドットの広がりが不足すると、印画抜けがドットの広がりによって解消されず、スジ状に印画ムラとなる。
【0023】
図1(A)の態様では、重合開始剤の含有量が少ない画像層が下層となり、記録媒体上で濡れ広がるため、バンディングが抑制される。また、画像層の上に重合開始剤の含有量が多く、硬化性に優れたホワイトインク層(白色層)が形成され、インク−インク間の密着性が向上する。
一方、図1(B)の態様では、重合開始剤の含有量が多いホワイトインク層の硬化性が高いため、画像層のインク組成物の濡れ広がりがよく、光沢が向上すると共に、バンディングも抑制される。
【0024】
(インク組成物)
まず、本発明に使用される(成分A)及び(成分B)を含むインク組成物(以下、「本発明のインク組成物」ともいう。)について詳述する。なお、単にインク組成物という場合には、着色インク組成物及びホワイトインク組成物の総称である。本発明のインク組成物は、活性放射線により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
また、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインク組成物であり、インク組成物を記録媒体上に適用後硬化させるため、高揮発性溶剤を含まず、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に高揮発性溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。
以下、本発明のインクセットを構成する各色インク組成物が含有する成分について説明する。
【0025】
(成分A)ラジカル重合性化合物
本発明のインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物を含有し、成分Aとして、前記成分A−1及び成分A−2を含む。
【0026】
(成分A−1)N−ビニル化合物
本発明のインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物として、(成分A−1)N−ビニル化合物を含有する。
N−ビニル化合物としては、N−ビニルラクタム類が好ましく、式(a−1)で表される化合物がより好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
式(a−1)中、nは1〜5の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは2〜4の整数であることが好ましく、nが2又は4であることがより好ましく、nが4である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
【0029】
本発明のインク組成物における成分A−1の含有量は、インク組成物全体の重量に対して、5〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜35重量%である。含有量が5重量%以上であると、記録媒体への密着性に優れ、また、含有量が60重量%以下であると、保存安定性に優れる。
る。
【0030】
(成分A−2)式(a−2)で表される化合物
本発明のインク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物として、(成分A−2)式(a−2)で表される化合物を含有する。成分A−2を含有しない場合、記録媒体(特にポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂)との密着性が低下する。式(a−2)で表される化合物は、低い表面張力を有し、インク組成物の濡れ広がりを向上させるものと推測される。また、適度な極性を有しており、表面硬化不良を生じ難く、密着性に優れる硬化物(画像層及びホワイトインク層)が得られる。
【0031】
【化4】
(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0032】
R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
R2及びR3としては、それぞれ独立に水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましく、R2及びR3が共に水素原子であることが更に好ましい。
X2における二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基であることがより好ましい。また、前記二価の連結基の炭素原子数は、1〜60であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
X2としては、単結合、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素原子数1〜20の二価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子数1〜8の二価の炭化水素基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
【0033】
以下に成分A−2の具体例を挙げるが、これらの化合物に限定されたものではない。なお、下記の具体例中、Rは水素原子、又は、メチル基を表す。
【0034】
【化5】
【0035】
これらの中でも、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレートが好ましく、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレートが特に好ましい。成分A−2は、市販品であってもよく、市販品の具体例としては、SR531(SARTOMER社製)が挙げられる。
【0036】
記録媒体と画像との密着性、インク組成物の硬化性の観点から、成分A−2の含有量は、インク組成物の総重量に対して1〜70重量%が好ましく、3〜65重量%がより好ましく、5〜60重量%が更に好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。
【0037】
(成分A−3)トリメチロールプロパントリアクリレート
本発明において、インク組成物は、(成分A)ラジカル重合性化合物として、(成分A−3)トリメチロールプロパントリアクリレートを含有することが好ましい。成分A−3を含有することにより、硬化性及び耐擦過性が向上する。
【0038】
硬化性及び耐擦過性の向上の観点から、成分A−3の含有量は、インク組成物の総重量に対して、0.1〜15重量%であることが好ましく、0.2〜10重量%がより好ましく、0.5〜5重量%が更に好ましい。
【0039】
<その他の単官能(メタ)アクリレート>
本発明のインク組成物は、成分A−2以外のその他の単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。
その他の単官能(メタ)アクリレートとして、(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく例示できる。
【0040】
(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート
本発明のインク組成物は、(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。成分A−4としては、分子量が500以下のものが好ましく、分子量が300以下のものがより好ましい。
成分A−4として、特開2009−096985号公報の段落0048〜0063に記載された、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーが挙げられる。本発明においては、芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、式(a−4)で表される化合物が好ましい。
【0041】
【化6】
(式(a−4)中、R1は水素原子、又は、メチル基を表し、X1は二価の連結基を表し、Arは芳香族炭化水素基を表し、R5は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。)
【0042】
式(a−4)中、R1として好ましくは、水素原子である。
X1は二価の連結基を表し、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NR’−若しくは−NR’C(O)−)、カルボニル基(−C(O)−)、イミノ基(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
R1及びX1を含む部分(H2C=C(R1)−C(O)O−X1−)は、芳香族炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、X1の芳香族炭化水素基と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましい。式(a−4)におけるX1は、*−(LO)q−であることが好ましい。ここで、*は、式(a−4)のカルボン酸エステル結合との結合位置を示し、qは0〜10の整数であり、Lは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。(LO)qは、エチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖であることが好ましい。
【0043】
Arは芳香族炭化水素基を表す。芳香族炭化水素基としては、1〜4つの環を有する単環又は多環芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が挙げられる。
中でも本発明においては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、単環芳香族炭化水素基、すなわちフェニル基がより好ましい。
【0044】
u個存在するR5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、カルボキシ基、炭素数1〜10のアシル基、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、更に置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
uは、0〜5の整数を表し、0であることが好ましい。
【0045】
成分A−4の具体例として[L−1]〜[L−19]、[L−21]〜[L−65]が好ましく挙げられる。
【0046】
【化7】
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
【化10】
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
本発明においては、式(a−4)で表される化合物としては、フェニル基を有する化合物が好ましく、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2−フェノキシエチルアクリレートが特に好ましい。
【0053】
インクジェット吐出性、柔軟性の観点から、成分A−4の含有量は、インク組成物の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、3〜45重量%がより好ましく、5〜40重量%が更に好ましい。
【0054】
本発明のインク組成物は、成分A−2及び成分A−4以外のその他の単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。成分A−2及びA−4以外の単官能(メタ)アクリレートとしては、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソアミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロペンテニルアクリレート、シクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等が挙げられる。
【0055】
なお、本発明において成分A−1及び成分A−2を含む単官能のラジカル重合性化合物の合計含有量が(成分A)ラジカル重合性化合物の総量に対して、50〜90重量%含有することが好ましい。なお、単官能の重合性化合物には、成分A−4、及び、上記その他の単官能(メタ)アクリレート等の単官能の重合性化合物も含まれる。
単官能の重合性化合物の含有量が上記範囲であると、インク−インク間及びインク−記録媒体間の密着性に優れ、また、柔軟性に優れる画像が得られる。
単官能の重合性化合物の含有量は、成分Aの総量に対して55〜90重量%であることがより好ましく、65〜85重量%が更に好ましい。
【0056】
<(成分A−5)多官能(メタ)アクリレート>
本発明のインク組成物は、上記の成分A−3以外に、(成分A−5)その他の多官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。
インク組成物が多官能(メタ)アクリレート化合物を含有することにより、高い硬化性が得られる。
【0057】
成分A−5の具体例としては、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
本発明のインク組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物として、オリゴマーを含有してもよい。
この「オリゴマー」とは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。オリゴマーの重量平均分子量は400〜10,000が好ましく、500〜5,000がより好ましい。
オリゴマーとしては、官能基として(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
オリゴマーに含まれる官能基数は、柔軟性と硬化性のバランスの観点から、1分子あたり1〜15が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0059】
本発明におけるオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート系、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマー、(メタ)アクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステル(メタ)アクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)、アミン変性ポリエステルオリゴマー等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタンアクリル系、ポリエステル(メタ)アクリレート系が更に好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート系が、硬化性、密着性に優れたインク組成物が得られることから特に好ましい。オリゴマーは、一種単独で用いる以外に、複数種を併用してもよい。
【0060】
ウレタン(メタ)アクリレート系としては、脂肪族系ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族系ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。詳しくは、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、化学工業日報社)を参照することができる。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーとしては、新中村化学工業(株)製のU−2PPA、U−4HA、U−6HA、U−6LPA、U−15HA、U−324A、UA−122P、UA5201、UA−512等;サートマー社製のCN964A85、CN964、CN959、CN962、CN963J85、CN965、CN982B88、CN981、CN983、CN996、CN9002、CN9007、CN9009、CN9010、CN9011、CN9178、CN9788、CN9893、ダイセル・サイテック社製のEB204、EB230、EB244、EB245、EB270、EB284、EB285、EB810、EB4830、EB4835、EB4858、EB1290、EB210、EB215、EB4827、EB4830、EB4849、EB6700、EB204、EB8402、EB8804、EB8800−20R等が挙げられる。
アミン変性ポリエステルオリゴマーとして、ダイセル・サイテック社製のEB524、EB80、EB81、サートマー社製のCN550、CN501、CN551、Rahn A.G.社製のGENOMER5275が挙げられる。
【0062】
オリゴマーの含有量は、硬化性と密着性の両立という観点から、インク組成物の総重量に対して、1〜10重量%が好ましく、2〜8重量%がより好ましく、3〜7重量%が更に好ましい。
【0063】
(成分A−5)その他の多官能(メタ)アクリレートの総含有量は、硬化性の観点から、インク組成物の全重量に対して1〜30重量%であることが好ましく、3〜25重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましく、5〜15重量%重量%であることが特に好ましい。
【0064】
インク組成物中における(成分A)ラジカル重合性化合物全体の総含有量は、65〜99重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。
【0065】
(成分B)重合開始剤
本発明のインク組成物は、ラジカル重合開始剤を含有する。
ホワイトインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量をX(重量%)、マゼンタインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量をY(重量%)としたとき、下記式(1)を満たす。
【0066】
【数4】
【0067】
Y/Xが0.1未満であると、マゼンタインク組成物の十分な硬化性が得られないか、又は、ホワイトインク組成物の硬化性が不均一となる。また、Y/Xが1以上であると、マゼンタインクの濡れ広がり性が不良となる。
Y/Xは、0.3≦(Y/X)<1であることが好ましく、0.4≦(Y/X)<1であることがより好ましく、0.5≦(Y/X)<1であることが更に好ましい。
【0068】
なお、本発明において、少なくともマゼンタインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量と、ホワイトインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量が、上記の範囲であればよく、他色のインク組成物(イエローインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物等のホワイトインク組成物を除く他色のインク組成物)に含まれるラジカル重合開始剤の含有量と、ホワイトインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量との関係は、特に限定されないが、他色のインク組成物についても、上記の(1)の関係式を満たすことが好ましい。
すなわち、ホワイトインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量をX(重量%)、他色のインク組成物に含まれるラジカル重合開始剤の含有量をそれぞれW(重量%)としたとき、0.1≦(W/X)<1であることが好ましく、0.3≦(W/X)≦(W/X)<1であることがより好ましく、0.4≦(W/X)<1であることが更に好ましく、0.5≦(W/X)<1であることが特に好ましい。
【0069】
マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は、3重量%以上12重量%未満であることが好ましく、5〜11重量%であることがより好ましい。
また、ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は、12〜20重量%であることが好ましく、12〜18重量%であることがより好ましい。
マゼンタインク組成物及びホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、光沢性に優れる画像が得られる。
【0070】
また、他色のインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は、それぞれ、3重量%以上12重量%未満であることが好ましく、5〜11重量%であることがより好ましい。
他色のインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、光沢性に優れる画像が得られる。
【0071】
ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。本発明に用いることができるラジカル重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤とを併用してもよい。
本発明に用いることのできるラジカル重合開始剤は、外部エネルギーを吸収して重合開始種を生成する化合物である。重合を開始するために使用される外部エネルギーは、熱及び活性放射線に大別され、それぞれ、熱重合開始剤及び光重合開始剤が使用される。活性放射線としては、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線が例示できる。
【0072】
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記(a)〜(m)の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0073】
本発明において、成分Bとして、(成分B−1)ビスアシルホスフィン化合物、(成分B−2)モノアシルホスフィン化合物が好ましい。
(成分B−1)ビスアシルホスフィン化合物
本発明において、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−1)ビスアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
成分B−1及び後述する成分B−2としては、特開2009−096985号公報の段落0080〜0098に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物及びモノアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
成分B−1としては、化合物の構造中に式(b−1−1)で表される部分構造を有するものが好ましい。
【0074】
【化13】
(式(b−1−1)中、*は結合位置を表す。)
【0075】
成分B−1としては、式(b−1−2)の化学構造を有するものが特に好ましい。
【0076】
【化14】
(式(b−1−2)中、R9、R10、R11はメチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0077】
式(b−1−2)で表されるビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、R9〜R11が、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R11がフェニル基であり、R9及びR10が1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−1−2)で表されるビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE819、チバ・ジャパン社製)が好ましい。
【0078】
(成分B−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物
本発明において、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−2)モノアシルホスフィン化合物が好ましく挙げられる。
成分B−1としては、化合物の構造中に式(b−2−1)で表される部分構造を有するものが好ましい。
【0079】
【化15】
(式(b−2−1)中、*は結合位置を表す。)
【0080】
成分B−2としては、式(b−2−2)の化学構造を有するものが特に好ましい。
【0081】
【化16】
(式(b−2−3)中、R6、R7、R8はメチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0082】
式(b−2−3)で表されるモノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、R6〜R8が、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R7及びR8がフェニル基であり、R6が1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−2−3)で表されるモノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Darocur TPO:チバ・ジャパン社製、Lucirin TPO:BASF社製)が好ましい。
【0083】
本発明において、マゼンタインク組成物を含む着色インク組成物は、(成分B−1)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物及び/又は(成分B−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましい。
また、着色インク組成物は、成分Bとして、少なくとも(成分B−1)ビスアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましい。着色インク組成物が成分B−1を含有することにより、硬化性が良好であるので好ましい。
着色インク組成物において、ラジカル重合開始剤の総量を100重量部としたとき、成分B−1及び成分B−2の総量は、20重量部以上であることが好ましく、25重量部以上であることがより好ましく、30重量部以上であることが更に好ましい。
【0084】
また、本発明において、ホワイトインク組成物は、(成分B)ラジカル重合開始剤として、(成分B−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましい。
ホワイトインク組成物が(成分B)ラジカル重合開始剤として(成分B−2)モノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有することにより、画像の黄変が抑制されるとともに、優れた硬化性が得られるので好ましい。
ホワイトインク組成物において、ラジカル重合開始剤の総量を100重量部としたとき、モノアシルホスフィンオキサイド化合物を50重量部以上含有することが好ましく、60〜100重量部含有することが好ましく、70〜100重量部含有することがより好ましい。
【0085】
(成分B−3)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物
本発明のインク組成物は、(成分B−3)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物を含有することが好ましい。特に、着色インク組成物は、硬化性の観点から、成分B−3を含有することが好ましい。
【0086】
<チオキサントン化合物>
チオキサントン化合物は、式(b−3−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0087】
【化17】
(式(b−3−1)中、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。)
【0088】
前記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
R1〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0089】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが例示できる。
これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
【0090】
<チオクロマノン化合物>
チオクロマノン化合物としては、式(b−3−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0091】
【化18】
【0092】
式(b−3−2)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。なお、アシルオキシ基は、アリールオキシカルボニル基であってもよく、アシル基はアリールカルボニル基であってもよい。この場合、アリール部分の炭素数は、6〜14であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結、例えば、縮合して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、式(b−2−1)で前述したものが挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
また、チオクロマノン化合物は、チオクロマノンの環構造上に少なくとも1つの置換基(アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基等)を有する化合物であることが好ましい。上記置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基及びアシルオキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基及びハロゲン原子がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基及びハロゲン原子が更に好ましい。
また、チオクロマノン化合物は、芳香環上、及び、シクロヘキサノン環上のそれぞれに、少なくとも1つの置換基を有する化合物であることがより好ましい。
【0093】
チオクロマノン化合物の具体例としては、下記(I−1)〜(I−31)が好ましく例示できる。これらの中でも、(I−14)、(I−17)、及び、(I−19)がより好ましく、(I−14)が特に好ましい。
【0094】
【化19】
【0095】
【化20】
【0096】
<その他の重合開始剤>
本発明のインク組成物は、成分B−1〜成分B−2以外の他の重合開始剤を含有していてもよい。他の重合開始剤としては、(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物が好ましい。
【0097】
(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物
本発明のインク組成物は、(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物を含有してもよい。着色インク組成物は、成分B−4を含有することが好ましい。成分B−4は、式(b−4−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0098】
【化21】
【0099】
式(b−4−1)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立にヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよいアミノ基を表し、Xは、水素原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。なお、R1、R2、R3、及びXがアミノ基である場合の置換基は、互いに結合して複素環基を形成してもよい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0100】
成分B−4としては、式(b−4−2)及び式(b−4−3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0101】
【化22】
【0102】
式(b−4−2)中、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4とR5、及びR6とR7の少なくともいずれかが互いに結合して複素環基を形成してもよい。R1、R2、及び、置換基は、式(b−4−1)におけるR1、R2、及び、置換基とそれぞれ同義である。
【0103】
【化23】
【0104】
式(b−4−3)中、R8は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R1、R2、及び、置換基は、式(b−4−1)におけるR1、R2、及び、置換基と同義であり、R4及びR5は、式(b−4−2)におけるR4及びR5と同義である。
前記複素環基としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、モルホリノ基が好ましい。
【0105】
α−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、市販品として、IRGACURE369(チバ・ジャパン社製)、IRGACURE907(チバ・ジャパン社製)などが好適に挙げられる。
【0106】
硬化性の観点から、(成分B−4)α−アミノアルキルフェノン化合物の含有量は、インク組成物中0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。
【0107】
その他の重合開始剤としては、更に、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。上記重合開始剤の詳細については、当業者に公知であり、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されている。
【0108】
(成分C)着色剤
本発明のインク組成物は各色に応じて、(成分C)着色剤を含有することが好ましい。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の顔料、染料を適宜選択して用いることができる。中でも、着色剤としては特に耐光性に優れるとの観点から顔料であることが好ましい。
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。更に、市販の顔料分散体や表面処理された顔料、例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0109】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0110】
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G'レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0111】
青あるいはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0112】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0113】
着色剤の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
着色剤の分散を行う際には、界面活性剤等の分散剤を添加することができる。
また、着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。分散助剤は、着色剤100重量部に対し、1〜50重量部添加することが好ましい。
【0114】
着色剤などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、インク組成物は、活性エネルギー線硬化型の液体であることが好ましく、インク組成物を被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク組成物から形成された画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、なかでも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0115】
ここで用いる着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01〜0.4μmであることが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.2μmの範囲である。最大粒径は好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下となるよう、着色剤、分散剤、分散媒の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができる。本発明においては分散性、安定性に優れた前記分散剤を用いることにより、微粒子着色剤を用いた場合でも、均一で安定な分散物が得られる。
着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。本発明においては、レーザー回折・散乱法を用いた測定により得られた値を採用する。
【0116】
着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、画像濃度及び保存安定性の観点から、着色インク組成物全体の重量に対し、0.5〜30重量%であることが好ましく、1.0〜20重量%であることが更に好ましく、2.0〜10重量%であることが特に好ましい。
また、ホワイトインク組成物において、白色の着色剤としては白色顔料が好ましい。白色の着色剤の含有量は、ホワイトインク組成物全体の重量に対し、1〜40重量%であることが好ましく、3〜30重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましい。
【0117】
(その他の成分)
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記各成分以外に、重合禁止剤、増感剤、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を含有することができる。これらは、特開2009−185186号公報に記載されており、本発明においても使用できる。
【0118】
(成分D)重合禁止剤
本発明のインク組成物は、保存性を高める観点から、重合禁止剤を含有することが好ましい。
インク組成物をインクジェット記録用インク組成物として使用する場合には、25〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、ヒンダードアミン等が挙げられ、中でもニトロソ系重合禁止剤、ヒンダードアミン系重合禁止剤が好ましい。
本発明に好ましく使用されるニトロソ系重合禁止剤の具体例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0119】
【化24】
【0120】
ニトロソ系重合禁止剤の市販品として、FIRSTCURE ST−1(Chem First社製)等が挙げられる。ヒンダードアミン系重合禁止剤の市販品としてTINUVIN292、TINUVIN770DF、TINUVIN765、TINUVIN123が挙げられる。
本発明のインク組成物中における重合禁止剤の含有量は0.01〜1.5重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%がより好ましく、0.2〜0.8重量%が更に好ましい。上記の数値の範囲内であると、インク組成物の調製時、保管時の重合を抑制でき、インクジェットノズルの詰まりを防止できる。
【0121】
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0122】
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0123】
(インク物性)
本発明のインク組成物は、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体を用いた場合でも、記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となるので好ましい。更に、インク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
なお、粘度は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行った。但し、60mPa・sより高粘度なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変化させて測定を行った。
【0124】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、32〜40mN/mであることが好ましい。より好ましくは35〜38mN/mである。上記の範囲であると光沢性に優れる。
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられている表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で25℃にて測定した値である。
【0125】
本発明において、着色インク組成物は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を少なくとも含有するが、他色のインク組成物を更に含有してもよい。
具体的には、ライトシアン、ライトマゼンタのインク組成物を更に含有することも好ましく、この場合、着色インク組成物は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物、ライトシアンインク組成物、ライトマゼンタインク組成物の計6色で構成される。
なお、本発明における「濃色インク組成物」とは、着色剤の含有量がインク組成物全体の1重量%を超えているインク組成物を意味する。前記着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤を用いることができ、顔料や分散染料が例示できる。
本発明のインクセットが、少なくとも1つの濃色インク組成物、及び、少なくとも1つの淡色インク組成物を含んでおり、濃色インク組成物と淡色インク組成物とが同系色の着色剤を用いている場合、濃色インク組成物と淡色インク組成物との着色剤濃度の比が、濃色インク組成物:淡色インク組成物=15:1〜4:1であることが好ましく、12:1〜4:1であることがより好ましく、10:1〜4.5:1であることが更に好ましい。上記範囲であると、粒状感の少ない、鮮やかなフルカラー画像が得られる。
【0126】
更に、本発明のインクセットは、着色インク組成物及びホワイトインク組成物に加え、クリアインク組成物を有していてもよい。クリアインク組成物は、実質的に着色剤を含有せず、透明なインク組成物である。
クリアインク組成物は、前述したように、図1(A)の下塗り層として使用してもよく、また、図1(B)のオーバーコート層(保護層)として使用してもよい。クリアインク組成物を使用する場合、インクセットによって形成された印刷物は、3層構成とすることが好ましい。
【0127】
II.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、ホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、を含む。なお、ホワイトインク組成物は、インクジェット記録方法にてノズルからの吐出によって付与してもよく、塗布により付与してもよく、特に限定されない。
前記塗布に用いる装置としては特に制限はなく、公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。
【0128】
また、画像形成工程と、ホワイトインク層付与工程との工程順は、所望の画像により適宜選択すればよい。
具体的には、図1(A)に示す印刷物を得るためには、画像形成工程及びホワイトインク層付与工程をこの順で有することが好ましく、図1(B)に示す印刷物を得るためには、ホワイトインク層付与工程及び画像形成工程をこの順で有することが好ましい。
【0129】
本発明において、特に好ましく使用されるインクジェット記録方法は、着色インク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第1のノズル列と、ホワイトインク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第2のノズル列と、を含む複数のノズル列を有するインクジェットヘッドを、記録媒体に対して第1方向に往復移動させる走査工程と、前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を前記第1方向と平行でない第2方向に相対移動させる相対移動工程と、前記ノズル列(第1のノズル列及び第2のノズル列)を前記第2方向に複数の領域に分割し、前記分割された各分割ノズル領域の単位ごとに前記インクジェットヘッドのインク吐出を制御する吐出制御工程と、前記吐出制御工程によって前記インクジェットヘッドから吐出され、前記記録媒体上に付着したインクに対して活性光線を照射する活性光線照射工程とを有し、前記活性光線照射工程が、前記各分割ノズル領域に対応して前記活性光線の照射範囲が複数の領域に分割され、当該分割された分割照射領域の光量を領域別に制御して前記活性光線の照射を行う工程である、インクジェット記録方法である。
以下、図面を参照して詳述する。
【0130】
(インクジェット記録装置の全体構成)
図2は本発明に好適に使用されるインクジェット記録装置の一例を示す外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0131】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(走査手段)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0132】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交しかつプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32Bと、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34Bとが搭載されている。
【0133】
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。詳細は後述するが、本硬化光源34A,34Bのいずれか一方又は両方は、インクジェットヘッド24及び仮硬化光源32A,32BとY方向について並ぶように、X方向へ移動可能に構成されている。
【0134】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)を「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)を「副走査方向」と呼ぶ場合がある。Y方向が「第1方向」に相当し、X方向が「第2方向」に相当する。
【0135】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
【0136】
図2において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0137】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0138】
(記録媒体搬送路の説明)
図3は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図3に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
【0139】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0140】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0141】
(インクジェットヘッドの説明)
図4は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0142】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図4ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0143】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLのノズル列を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
【0144】
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。あるいはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0145】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、1列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
【0146】
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。ただし、紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、紫外線硬化型インクを使用する場合には、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式を採用することが好ましい。
【0147】
(作画モードについて)
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0148】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。一回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では一回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
【0149】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
高画質モードでは、1,200×1,200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1,200dpi×1,200dpiの解像度を得ている。
【0150】
<シングリング走査によるスワス幅について>
ワイドフォーマット機の作画モードでは、解像度設定毎に、それぞれシングリング(インターレス)する作画条件が決定されている。具体的には、インクジェットヘッドの吐出ノズル列の幅Lw(ノズル列の長さ)をパス数(スキャン繰り返し回数)だけ分割してシングリング作画するので、インクジェットヘッドのノズル列幅、並びに、主走査方向及び副走査方向のパス数(インターレースする分割数)によってスワス幅が異なる。なお、マルチパス方式によるシングリング作画の詳細については、例えば、特開2004−306617号公報に説明されている。
【0151】
一例として、FUJIFILM Dimatix社製のQS−10ヘッド(100dpi,256ノズル)を用いた場合のシングリング作画によるパス数とスワス幅の関係は下表(表1)の様になる。作画によって想定されるスワス幅は使用するノズル列幅を主走査方向パス数と副走査方向パス数の積で分割した値となる。
【0152】
【表1】
【0153】
(紫外線照射部の配置)
図4に示すように、インクジェットヘッド24のキャリッジ移動方向(Y方向)の左右両脇に、仮硬化光源32A,32Bが配置される。更に、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)の下流側に本硬化光源34A,34Bが配置されている。本硬化光源34A,34Bは、インクジェットヘッド24からY方向に仮硬化光源32A,32Bよりも外側(更に遠くの位置)に配置される。本硬化光源34A,34Bは、記録媒体搬送方向と反対方向(−X方向)へ移動可能に構成されており、キャリッジ移動方向に沿って、仮硬化光源32A,32B及びインクジェットヘッド24と並ぶように配置を変更することができる。
【0154】
インクジェットヘッド24の着色インク組成物(カラーインク)用のノズル(ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMに含まれるノズル)から吐出されて記録媒体12上に着弾したカラーインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A(又は32B)によって仮硬化のための紫外線が照射される。
また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A,34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。このようにして、インク液滴を一旦仮硬化状態にすることで、着弾干渉を防止しつつ、ドットの展開時間(ドットが所定のサイズに広がる時間)を取ることができ、ドットの高さの均一化が図れると共に、液滴と媒体との相互作用を促進して、密着性を増す事ができる。
【0155】
一方、ホワイトインクにより形成されるホワイトインク層は、カラー画像層の上塗り層及び/又は下塗り層となるので、カラー画像層ほどのドット解像度は要求されない。
ホワイトインク層のバンディング現象を詳細に検証したところ、カラーインクは打滴位置を固定する為にピニング光が必要とされるが、ホワイトインク層は、下地、あるいは表層を作るものであるから、打滴された位置においてピニングされる必要性に乏しい。むしろ、ホワイトインク層の形成時には、ホワイトインクの吐出位置に対応するピニング光量をオフ(0mJ/cm2)にする、あるいは照射光量を低減することによって、着弾滴がピニングされない状態とし、インクが濡れ広がり易い状況を作って、層の平坦化、均一化を図ることが好ましい。
【0156】
したがって、本実施形態では、ホワイトインク用のノズル(ノズル列61Wに含まれるノズル)から吐出されて記録媒体12上に着弾する白インク滴に対しては、仮硬化のための紫外線は照射しない構成とする、あるいは、照射する場合でも、カラーインクの仮硬化時よりも少ない光量の紫外線を照射する構成とする。
これにより、記録媒体上に着弾したホワイトインクのドットの広がり時間を確保することができ、層の平坦性・均一性を向上させることができる。
【0157】
また、本例では、ホワイトインク用のノズル(ノズル列61Wに含まれるノズル)から吐出されて記録媒体に着弾したホワイトインクは、ホワイトインクの吐出位置に対応して紫外線照射が可能な位置に移動させた本硬化光源34Aによって、本硬化処理時とほぼ同量の紫外線が照射される。
【0158】
ホワイトインクにより形成されるホワイトインク層の紫外線透過率が低いことに起因して、ホワイトインクの膜厚が小さい段階で(ホワイトインクの記録媒体への着弾直後から)、本硬化処理時とほぼ同量の活性化エネルギーが付与され、硬化処理が実行されることが好ましい。
【0159】
なお、仮硬化光源32A、32Bは、インクジェットヘッド24による印字動作中、2つ同時に点灯してもよいが、主走査方向のキャリッジ移動において後側となる仮硬化光源のみ点灯させることで光源の寿命を延ばすことを図ってもよい。また、本硬化光源34A、34Bは、インクジェット記録装置10の印刷動作中、2つ同時に点灯される。走査速度の遅い作画モードでは、片方を消灯することも可能であり、仮硬化光源32A、32Bと、本硬化光源34A、34Bの発光開始タイミングは、同時でもよいし、異なっていてもよい。
【0160】
(本硬化光源の移動の説明)
図5は、本硬化光源34Aの移動機構(光源移動部)35の構成例を示す斜視図である。同図に示す光源移動部35は、ラックアンドピニオン方式の直線移動機構が適用される。すなわち、光源移動部35は、本硬化光源34Aの移動方向である記録媒体搬送方向に沿って固定配置されるシャフト35Aと、本硬化光源34Aのケースに取り付けられ、シャフト35Aに沿って歯状の凹凸が形成されたラック35Bと、回転軸にピニオンギア35Cが取り付けられた駆動モータ35Dと、ラックの端部に形成された検出片35Eを検出するための光学式のポジションセンサ35Fと、を備えている。
駆動モータ35Dの回転軸を回転させるとピニオンギア35Cが回転し、ピニオンギア35Cとラック35Bの歯のかみ合いによってラック35Bがシャフト35Aに沿って移動し、ラック35Bとともに本硬化光源34Aがシャフト35Aに沿って移動する。ラック35Bの先端に設けられた検出片35Eがポジションセンサ35Fの検出範囲に入り込むと、駆動モータ35Dの回転が停止され、本硬化光源34Aが所定位置に停止する。
【0161】
なお、インクジェットヘッド24をはさんで本硬化光源34Aの反対側に位置する本硬化光源34Bにも同様の構成を有する移動機構を備えて、移動可能に構成してもよい。また、ポジションセンサ35Fを複数備えて、本硬化光源34Aを複数の位置に移動させるように構成してもよい。
【0162】
(画像形成プロセスの説明)
本例に示すインクジェット記録装置10は、カラーインク(Y、M、C、K、LC、LMなど)により形成されるカラー画像層(図1に符号82を付して図示)と、ホワイトインクにより形成されるホワイトインク層(図1に符号80を付して図示)とを積層させ、層構造の画像を形成するように構成されている。また、層形成の順番とインクの紫外線吸収特性(インクの硬化特性)に応じて、紫外線照射量が制御される。
【0163】
例えば、ホワイトインク組成物は顔料として酸化チタンや酸化亜鉛などを含有しているために、カラーインクやクリアインクに比べて紫外線の透過性が劣り、カラーインクやクリアインクと単位体積あたり同量の紫外線を照射したときには硬化時間が長くなる。ホワイトインクとカラーインクとの紫外線透過特性に起因する硬化特性の違いを解消するために、カラーインクよりもホワイトインクに対する単位時間あたりの紫外線照射量が多くなるように紫外線照射が制御される。かかる画像形成の具体例は後述する。
【0164】
なお、ブラックインク組成物は、紫外線透過性の観点によれば硬化時間が長くなるインクに分類されるが、カラー画像層の形成に用いられ、打滴直後に仮硬化させて打滴干渉を防止する必要があることからカラーインクに分類される。
【0165】
<ホワイトインク層について>
カラーインクによって形成されるカラー層(画像層)に対して、その下塗り層(下地層)及び/又は上塗り層(オーバーコート層)となるホワイトインク層は一般に二酸化チタン、酸化亜鉛などを顔料として用い、カラーインクよりも透過率が低い。ワイドフォーマットプリンターで用いる場合は、下地層、又は表面層として用いるために、打滴された直後のピニング露光(仮硬化)の必要性に乏しい。むしろ、打滴後の滴が積極的に濡れ広がり、平坦化を促進するために、カラー層と違ってピニング光によって露光されない機構、あるいは、ピニング光による硬化の作用を低減する機構とする構成が好ましい。
【0166】
実験によれば、カラー層はピニング光として、単位面積あたり、1mJ/cm2〜20mJ/cm2が打滴直後に照射されることが望ましく、更には2mJ/cm2〜8mJ/cm2が好適である。一方、ホワイトインク層はピニング光量としては0mJ/cm2〜15mJ/cm2が、打滴直後に照射されることが望ましく、更には0mJ/cm2〜8mJ/cm2が好適である。
【0167】
ピニング光は、インクの打滴直後に他のインクとの合一、干渉によって滴形状が崩れること、あるいは滴が移動することを回避するために、キャリッジ走査によって1回から複数回露光される。キュアリング光は画像形成されたインクを完全に硬化させる露光をいう。キュアリング光もキャリッジ走査によって、複数回に渡って照射される。1回から複数回のピニング露光と、複数回のキャリング露光によって、全ての積算の露光量は200mJ/cm2から1,000〜3,000mJ/cm2の光量に達する。紫外線硬化型インクに含まれる開始剤、増感剤の照射波長に対する感度とその含有量よって、インク感度の傾向が決定され、ラジカル重合、カチオン重合によってインクは硬化する。
【0168】
本実施形態では、カラー層、ホワイトインク層など、各層を形成する分割ノズル領域の描画範囲に対応して適切なピニング光を照射できるように、分割ノズル領域に合わせて仮硬化光源の照射領域が分割され、各領域の光量(照度分布)が調整される。詳細については後述する。
【0169】
(画像形成プロセスの詳細な説明)
本例に示すインクジェット記録装置10に適用される画像形成方法は、各ノズル列61が記録媒体搬送方向について複数の領域に分割され、分割されたいずれかの領域を用いてカラーインク、クリアインク又はホワイトインクのそれぞれが吐出され、カラー画像層、透明層、ホワイトインク層が形成される。ノズル列61の分割数は像形成層数Nである。
【0170】
また、記録媒体12はノズル列61の分割された領域の記録媒体搬送方向の長さをマルチパス数で除算した単位((ノズル列の全長Lw/像形成層数N)/マルチパス数で求められる単位)で一方向へ間欠送りされ、ノズル列61の記録媒体搬送方向上流側の領域から吐出されたインクの層の上に、同方向下流側の領域から吐出されたインクの層が積層されるように構成されている。ここで、「マルチパス数」とは、キャリッジ走査方向のパス数と記録媒体搬送方向のパス数の積で定義される。
【0171】
更に、他のインクよりも硬化するまでに時間を要するホワイトインクは、ホワイトインクの吐出位置に移動させた本硬化光源34A,34Bのいずれか一方によって、着弾直後から本硬化処理時とほぼ同じ光量の紫外線が照射される。ホワイトインクの着弾エリアのみに本硬化処理時と同光量の紫外線が照射されるように、本硬化光源34A,34Bの記録媒体搬送方向における照射エリアの長さは、(ノズル列の全長Lw/像形成層数N)以下とされる。
【0172】
なお、以下の説明では、本硬化光源34A,34Bの照射エリアの記録媒体搬送方向の長さと本硬化光源34A,34Bの記録媒体搬送方向の長さとは同一であるものとして説明する。実際の本硬化光源34A,34Bの記録媒体搬送方向の長さは、照射エリアの広がりが考慮され、所定の照射エリアが得られるように決められている。また、「像形成層数N」は「分割数」と記載することがある。
【0173】
(第1具体例)
第1具体例は、図1(B)に示す印刷物を形成するものであり、記録媒体12にホワイトインク層80が形成され、ホワイトインク層80の上に、カラー画像層82が形成(積層)された層構造を有する二層構成である。
【0174】
図6は、図1(B)に示す層構造を有する画像を形成するためのインクジェットヘッド24の構成、及び本硬化光源34A,34Bの配置を模式的に図示した説明図である。なお、記録媒体搬送方向(X方向)は同図に下向き矢印線で図示した上から下向きであり、キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)は左右方向である。
図6に示すように、各ノズル列61は上流側領域61−1と下流側領域61−2に二分割され、ホワイトインクはノズル列61Wの上流側領域61−1のみから吐出され、カラーインクはノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMの下流側領域61−2のみから吐出される。そして、上流側領域61−1から吐出されたホワイトインクによるホワイトインク層80(図5参照)が形成されると、記録媒体12を記録媒体搬送方向に距離((Lw/2)/マルチパス数)だけ移動させて、先に形成されたホワイトインク層80の上に下流側領域61−2から吐出させたカラーインクによるカラー画像層82が形成される。
【0175】
ホワイトインク層80の上にカラー画像層82が形成される間、当該カラーインクの吐出位置に隣接する記録媒体搬送方向上流側のホワイトインクの吐出位置には、ノズル列61Wの上流側領域61−1のみからホワイトインクが吐出される。すなわち、カラー画像層82の形成と同時に、次のカラー画像の形成領域となるホワイトインク層80の形成が進行する。また、ホワイトインク層80を形成するホワイトインクの吐出、及びカラー画像層82を形成するカラーインクの吐出には、先に説明したマルチパス方式が適用される。
【0176】
符号34A−1を付して破線により図示した位置、すなわち、ホワイトインクの吐出位置に対応した位置(ホワイトインクを吐出させるノズル列61Wの上流側領域61−1とキャリッジ移動方向に並ぶ位置)に本硬化光源34Aを移動させて(移動方向を上向き矢印線により図示)、ホワイトインクが記録媒体12に着弾した直後から本硬化光源34Aによって本硬化処理とほぼ同量の紫外線が照射される。一方、カラーインクは、仮硬化光源32A,32Bによる仮硬化処理の後に、本硬化光源34Bによる本硬化処理が施される。
【0177】
すなわち、画像形成プロセスのステップ1はホワイトインク層80の形成工程であり、図6における左側の本硬化光源34Aを、ホワイトインクの吐出位置に対応して移動させ(符号34A−1)、キャリッジ30(図4参照)をキャリッジ移動方向へ走査させる。そして、ノズル列61Wの上流側領域61−1のみからホワイトインクを吐出させる。図6の左から右へキャリッジ30が移動するときにホワイトインクが打滴され、ノズル列61Wに後続して、同キャリッジ移動方向に走査する本硬化光源34Aから、記録媒体12に着弾した直後のホワイトインクに対して紫外線が照射される。一回のキャリッジの走査で本硬化処理と同量(一回のキャリッジの走査あたり10mJ/cm2以上)の紫外線が照射されて、ホワイトインクがほぼ硬化したホワイトインク層80(図1(B)参照)が形成される。
【0178】
なお、本例の場合、図6の右から左へキャリッジ30が移動する走査時にはホワイトインクの打滴は停止されるが、本硬化光源34Aの点灯状態は維持され、本硬化光源34Aからの紫外線の照射は継続される。
【0179】
ホワイトインクは、顔料として酸化チタンや酸化亜鉛を含有しているために、カラーインクやクリアインクと比べて紫外線を吸収しにくい(硬化しにくい)性質を有している。
【0180】
仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの発光源として紫外線発光ダイオード(UV−LED)素子が適用された場合を考えると、UV−LED素子の発光波長帯は365nm〜405nmの長波帯のみであり、インクに含有する開始剤の長波化対応が必須となる。
【0181】
また、ホワイトインク層80は、いわゆるべた画像なのでカラー画像に比べて大きいサイズのドット(液滴)を使用することができる。また、上述したように、ホワイトインク(ホワイトインク層80)の紫外線透過率がカラーインクなどよりも低いため、ホワイトインクの膜厚が小さい段階で本硬化処理時とほぼ同量の活性化エネルギーが付与され、ホワイトインクの硬化処理が実行される。したがって、ホワイトインクは、仮硬化光源32A,32Bによるピニング露光を行わず(あるいは、カラーインクのピニング光量よりも低光量による照射を行い)、着弾滴の濡れ広がり時間をできるだけ確保した後に、本硬化処理と同等の活性化エネルギーを付与して完全に硬化させる。
【0182】
ステップ2はカラー画像層82の形成工程である。記録媒体12のホワイトインクの吐出位置から記録媒体搬送方向へ距離(Lw/2)だけ下流側のカラーインクの吐出位置では、すでにホワイトインク層80が形成されている。カラー画像層形成工程(ステップ2)では、このホワイトインク層80上の位置でキャリッジ30をキャリッジ移動方向へ走査させて、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMの下流側領域61−2からカラーインクを吐出させ、ホワイトインク層80に重ねてカラーインクを打滴する。
【0183】
また、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMに後続する仮硬化光源32A,32Bから、記録媒体12に着弾した直後のカラーインクに対して、紫外線を照射して仮硬化させ、ゲル状態にする。そうすることでカラーインクの着弾干渉が防止される。
【0184】
このとき、着弾直後のカラーインクに対して、仮硬化光源32A,32Bから照射される紫外線は、一回のキャリッジの走査あたり、例えば1〜5mJ/cm2と低光量である。本例に示す画像形成に適用される仮硬化のための低光量は、本硬化のための高光量に対して1/10から1/2程度となっている。
【0185】
また、詳細は後述するが、仮硬化光源32A,32Bは、二分割されたノズル列の各分割ノズル領域(上流側領域61−1、下流側領域61−2)の描画範囲に対応して、照射領域がX方向に二分割されており、図6中符号32A−1、32A−2、32B−1、32B−2で示す分割単位(分割照射領域)ごとに光量の制御が可能となっている。
【0186】
ステップ3はカラー画像層82の形成工程から本硬化処理工程までの期間であり、記録媒体12のカラーインクの吐出位置から更に記録媒体搬送方向へ(Lw/2)だけ下流側のホワイトインク層80にカラー画像層82が積層された部分は、ノズル列61の吐出位置から抜け出し、本硬化光源34Bによる紫外線照射エリアに位置している。仮硬化処理工程から本硬化処理工程までの間に所定時間を取ることで、ホワイトインク層80とカラー画像層82との密着親和性が高くなり、ドットの広がりが促進されるとともにパイルハイトの低減化が促進され、更に、カラー画像の光沢性が向上する。
【0187】
ステップ4は本硬化処理工程であり、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向下流側に配置された本硬化光源34Bを用い、キャリッジ30をキャリッジ移動方向へ走査させて、本硬化光源34Bによる紫外線照射位置に移動したカラー画像層82に本硬化処理が施される。カラー画像層82の本硬化処理における紫外線光量は、一回のキャリッジの走査あたり10mJ/cm2以上である。カラー画像層82を本硬化させることで、カラー画像層82の光沢性がより向上し、ホワイトインク層80とカラー画像層82との密着性の改善とカラー画像層82の膜質硬化とが両立される。
【0188】
(仮硬化光源ユニットの構成例)
図7は本実施形態の仮硬化光源32A,32Bとして用いる仮硬化光源ユニットの構成例を示す側面透視図である。図8はその平面透視図である。図7及び図8に示す構成例に係る仮硬化光源ユニット210は略直方体の箱形状を成す。仮硬化光源ユニット210は、アルミ製のハウジング(囲い)212の中に、複数個の紫外線発光ダイオード素子(以下、「UV−LED素子」と記載する。)214が納められ、該ハウジング212の底面部に透過型の光拡散板216が配置された構造を有する。
【0189】
LED素子214が実装された配線基板220は、LED実装面221を光拡散板216の方に向けた状態で(図7において、UV−LED素子214の発光面を下方に向けた状態)でハウジング212の上部に配置される。
【0190】
配線基板220に実装されるUV−LED素子214の個数については、特に限定はないが、必要なUV照射幅とコストの観点から、なるべく少ない数とすることが好ましい。本例では、配線基板220上に6個のUV−LED素子214が一列に並んで配置されている。図4及び図6で説明したインクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)に沿ったノズル列幅Lwに対して一度にUV照射を行うことができるUV照射幅を得るために、6個のUV−LED素子214は、記録媒体搬送方向に並んで配置されている。図7の横方向が記録媒体搬送方向(X方向)であり、図7の右から左に向かって記録媒体12が搬送されるものとする。
【0191】
配線基板220には放熱性・耐熱性が強化されたメタル基板が用いられている。メタル基板の詳細な構造は図示しないが、アルミや銅などのメタル板の上に絶縁層が形成され、該絶縁層の上にUV−LED素子214及びLED駆動用の配線回路(アノード配線、カソード配線)等が形成されている。なお、ベースメタル上に回路が形成されたメタルベース基板を用いてもよいし、基板内部にメタル板が埋め込まれたメタルコア基板を用いてもよい。
【0192】
また、配線基板220におけるLED実装面221のLED素子214の周囲には、UV耐性のある高反射率の白色レジスト処理が施されている。この白色レジスト層(不図示)により、配線基板220の表面で紫外線を反射・散乱させることができ、UV−LED素子214が発生する光を効率良く仮硬化用のUV照射に利用することができる。
【0193】
光拡散板216は、UV−LED素子214から発せられた光を透過しつつ拡散させる光学材料で形成された乳白色板である。例えば、光拡散板216には、白色顔料(光拡散物質)を分散した白色アクリル板が用いられる。白色アクリル板に限らず、ガラスなど透明な材料中に光拡散用の微粒子を分散混入させて成形した光学部材を使用することもできる。光拡散物質(白色顔料等)の含有量、平均粒径を変えることによって透過率や拡散特性が異なる光拡散板が得られる。
【0194】
なお、透過型の光拡散板として、光を拡散させる手段は、このアクリル樹脂にシリカ粉体を分散させる手段に限らず、溶融石英からなる基板の表面をフロスト処理、曇りガラス処理、スリガラス処理することなどによっても容易に実現することができる。
このような透過型の光拡散板216は、配線基板220のLED実装面221に対向して、ハウジング212の下部に配置される。図7において光拡散板216の下面(符号217)は、記録媒体(不図示)に対面する光出射面である。全てのUV−LED素子214(本例の場合6個)を点灯させた場合に光拡散板216の光出射面217から記録媒体12上に、インクジェットヘッド24のノズル列幅Lw以上の光照射幅で紫外線が照射される。
【0195】
本例の仮硬化光源ユニット210では、6個のUVLED素子214がX方向に並んだLED配列が2つの領域に分割されている。すなわち、X方向に沿って並ぶ複数個のUV−LED素子214は、記録媒体搬送方向(X方向)の上流側の領域224−1と、下流側の領域224−2の二領域に分割されており、各分割領域224−1、224−2にそれぞれ3個ずつのUV−LED素子214が含まれている。
【0196】
ハウジング212の内部には、上記2分割されたLED素子列の領域を区画するための範囲規制部材として、遮光性のある仕切部材226が設けられており、一方の領域のUV−LED素子214の光が、他方の領域に進入しない構造となっている。一般に、UV−LED素子は照射範囲が広く、広がりながら伝搬する性質を持つが、本例のように、仕切部材226によってLED素子の周囲を覆う構造により、照射領域を分けることができる。
【0197】
また、各分割領域224−1、224−2ごとに、それぞれの領域内のUV−LED素子214の発光量を制御することができる。例えば、ホワイトインクによる層形成時には上流側の領域224−1に属する3つのUV−LED素子214がオフされ、下流側の領域224−2に属する3つのUV−LED素子214がオンされる。
【0198】
このような仕切部材226による発光範囲の分割と、各領域224−1,224−2内に属するLED素子の発光制御との組合せによって、紫外線の照射領域を分割することができ、各分割照射領域の光量を個別に制御することが可能である。
【0199】
すなわち、図7及び図8に示した構成例は、光源箱の上部にLED素子列を配置した上方照射型LED光源ユニットであり、LEDの照射点灯領域をインクジェットヘッド24のノズル列の分割領域に対応して分割点灯制御する構成となっている。発光量の制御には、電流値制御、パルス幅変調制御、オンオフ制御などが含まれる。電流値を制御する電流制御手段、パルス幅変調制御を行うパルス幅変調制御手段、オンオフ制御を行うオンオフ制御手段のいずれか、もしくはこれらの適宜の組合せを備える構成とする。
【0200】
図7及び図8に例示した構成に限らず、例えば、ハウジング212の下面に、照射領域を決定する高反射率のアルミ板を設け、当該アルミ板の枠をずらすことで、上流側/下流側の照射領域を変えることも可能である。あるいはまた、高反射率のアルミ板の枠を交換することによって、照射領域を変更する態様も可能である。この場合、高反射率のアルミ板によって照射範囲が規制されるため、このアルミ板が「範囲規制部材」に相当する。その他、光照射範囲を制限するメカシャッターや液晶シャッターなどを設けて、照射領域を規制する態様も可能である。
【0201】
(第2具体例)
図1(A)は、第2具体例に係る画像形成プロセスにより形成された画像の層構造を模式的に図示した説明図であり、図9は、図1(A)に示す層構造を有する画像を形成するためのインクジェットヘッド24の構成、及び本硬化光源34A,34Bの配置を模式的に図示した説明図である。以下の説明では、先に説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0202】
図1(A)に示す画像は、像形成層数が2であり、透明の記録媒体12にカラー画像層82が形成され、カラー画像層82上にホワイトインク層80が形成される。かかる構造を有する画像は、記録媒体12の裏面(画像が形成される面の反対側面)から見たときにホワイトインク層80を背景としてカラー画像層82を視認することができる。
【0203】
ステップ1はカラー画像層82の形成工程であり、図9における左側の本硬化光源34Aを、符号34A−2を付して破線により図示した、ホワイトインクの吐出位置(ノズル列61Wの下流側領域61−2とキャリッジ移動方向に並ぶ位置)に移動させる(移動方向を上向き矢印線により図示)。そして、キャリッジ30をキャリッジ移動方向へ走査させて、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMの上流側領域61−1から記録媒体12上にカラーインクを吐出させる。また、ノズル列61Y,61M,61C,61K,61LC,61LMに後続する仮硬化光源32A,32Bから、記録媒体12に着弾した直後のカラーインクに対して、一回のキャリッジの走査で低光量(一回のキャリッジの走査あたり1〜5mJ/cm2)の紫外線を照射して仮硬化させ、ゲル状態にする。そうすることでカラーインクの着弾干渉が防止される。
【0204】
ステップ2はカラー画像層82の形成工程からホワイトインク層80の形成工程までの期間であり、仮硬化状態が所定時間維持されることで記録媒体12とカラー画像層82との密着親和性が高くなり、ドットの広がりが促進されるとともにパイルハイトの低減化が促進され、更に、カラー画像の光沢性が向上する。
【0205】
ステップ3はホワイトインク層80の形成工程であり、記録媒体12のカラーインクの吐出位置から記録媒体搬送方向へ(Lw/2)だけ下流側のホワイトインクの吐出位置(すでに形成されたカラー画像層82上)では、キャリッジ30(図4参照)をキャリッジ移動方向へ走査させ、ノズル列61Wの下流側領域61−2のみから仮硬化状態のカラー画像層82の上にホワイトインクを吐出させる。そして、ノズル列61Wに後続してキャリッジ移動方向に走査する本硬化光源34Aから記録媒体12に着弾した直後のホワイトインク、及びホワイトインクの下の仮硬化状態のカラー画像層82に対して、一回のキャリッジの走査で本硬化処理と同等の高い光量(一回のキャリッジの走査あたり10mJ/cm2)以上の紫外線が照射され、ホワイトインク層80(図1(A)参照)が形成されるとともに、カラー画像層82の硬化が促進される。
【0206】
当該ホワイトインク層80に対する仮硬化光源32A,32Bの照射領域の制御については、第1具体例で説明したものと同様である。
【0207】
ステップ4は本硬化処理工程であり、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向下流側に配置された本硬化光源34Bを用いて、ホワイトインク層80及びカラー画像層82に本硬化処理が施される。かかる本硬化処理における紫外線光量は一回のキャリッジの走査あたり10mJ/cm2である。ホワイトインク層80及びカラー画像層82を本硬化させることで、カラー画像層82の光沢性がより向上し、ホワイトインク層80とカラー画像層82との密着性の改善とカラー画像層82の膜質硬化とが両立される。
【0208】
(インク供給系)
図10は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクカートリッジ36に収容されているインクは、供給ポンプ70によって吸引され、サブタンク72を介してインクジェットヘッド24に送られる。サブタンク72には、内部のインクの圧力を調整するための圧力調整部74が設けられている。圧力調整部74は、バルブ76を介してサブタンク72と連通される加減圧用ポンプ77と、バルブ76と加減圧用ポンプ77との間に設けられる圧力計78と、を具備している。
【0209】
通常の印字時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを吸引する方向に動作し、サブタンク72の内部圧力及びインクジェットヘッド24の内部圧力が負圧に維持される。一方、インクジェットヘッド24のメンテナンス時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを加圧する方向に動作し、サブタンク72の内部及びインクジェットヘッド24の内部が強制的に加圧され、インクジェットヘッド24内のインクがノズルを介して排出される。インクジェットヘッド24から強制的に排出されたインクは、上述したキャップ(図示せず)のインク受けに収容される。
【0210】
(インクジェット記録装置の制御系の説明)
図11はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置102が設けられている。制御装置102としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置102は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置102には、記録媒体搬送制御部104、キャリッジ駆動制御部106、光源制御部108、画像処理部110、吐出制御部112が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0211】
記録媒体搬送制御部104は、記録媒体12(図2参照)の搬送を行うための搬送駆動部114を制御する。搬送駆動部114は、図3に示すニップローラ40を駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図2参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、スワス幅単位で副走査方向へ間欠送りされる。
【0212】
図11に示すキャリッジ駆動制御部106は、キャリッジ30(図2参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部116を制御する。主走査駆動部116は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。光源制御部108は、光源駆動回路118を介して仮硬化光源32A,32Bの発光を制御するとともに、光源駆動回路119を介して本硬化光源34A,34Bの発光を制御する制御手段である。仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bとして、UV−LED素子(紫外LED素子)やメタルハライドランプなどのUVランプが適用される。
【0213】
制御装置102は、操作パネル等の入力装置120、表示装置122が接続されている。入力装置120は、手動による外部操作信号を制御装置102へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置122には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置120を操作することにより、作画モードの選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置122の表示を通じて確認することができる。
【0214】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部124と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース126が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0215】
画像入力インターフェース126を介して入力された画像データは、画像処理部110にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
【0216】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般に3以上の階調値を有する階調画像データを元の階調値未満の階調値を有する階調画像データに変換する。最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0217】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、更に、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0218】
吐出制御部112は、画像処理部110において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路128に対して吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部112は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部124に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路128に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0219】
ヘッド駆動回路128を介してインクジェットヘッド24の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される。
【0220】
情報記憶部124は、制御装置102のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部124は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの制御情報などが格納されている。
【0221】
エンコーダ130は、主走査駆動部116の駆動用モータ、及び搬送駆動部114の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置102に送られる。エンコーダ130から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12の位置が把握される。
【0222】
センサ132は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ132から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
【0223】
制御装置102は、本硬化光源34A,34Bの光源移動部35の動作を制御する。例えば、入力装置120から画像形成プロセスの選択情報や本硬化光源34A,34Bの位置情報が入力されると、画像形成プロセスに対応する位置に本硬化光源34A(34B)を移動させる。
【0224】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置及び画像形成方法によれば、ノズル列の分割領域に対応して、ピニング露光領域を分割制御できるため、インク層ごとに適切な硬化処理を実現できる。これにより、ホワイトインク層にバンディング現象が発生することを回避することができる。すなわち、ホワイトインクのインク吐出領域に対するピニング露光をオフ、あるいは低光量化することで、ホワイトインク滴の広がりを促進させることができ、層の平坦化及び均一化を達成できる。これにより、スワス毎の周期的な縞が視認できる状況(バンディングの発生)を回避できる。
【0225】
また、本実施形態によれば、紫外線の透過特性がよく、紫外線に対する感度が高く硬化が速いインク(カラーインク)に対して、吐出直後に仮硬化光源32A,32Bから低光量の紫外線を照射して仮硬化状態とし、本硬化光源34A,34Bのいずれか一方を、紫外線の透過特性が劣り(紫外線に対する感度が低く)、硬化が遅いインク(ホワイトインク)の吐出位置に移動させ、紫外線に対する感度が低く、硬化の遅いインクに対して吐出直後に本硬化光源34A(34B)から高光量の紫外線を照射して硬化させるので、作画する画像に使用されるインクによって紫外線光量(照射エネルギー量)が最適化され、感度の異なる二種類以上のインクを層として重ねる画像形成が可能となる。
【0226】
具体的には、カラーインクは、打滴(記録媒体への着弾)直後に仮硬化光源32A,32Bから低光量の紫外線が照射され仮硬化状態とされ、ドット展開時間経過後、かつ、パイルハイトの均一化後に、本硬化光源34B(34A)から高光量の紫外線が照射され本硬化状態とされる。したがって、仮硬化から本硬化までの間にドット展開時間が取られることでドットのゲインをより大きく取ることが可能となり、更に、パイハイトの均一化の時間が取られることで画像の粒状性が向上する。
【0227】
また、本硬化光源34A,34Bの少なくともいずれ一方を、記録媒体搬送方向に平行移動可能に構成するとともに、紫外線に対する感度が低く硬化の遅いインクの吐出位置に選択的に配置することができ、更に、紫外線に対する感度が低く硬化の遅いインクの吐出範囲(ノズル列の全長Lw/像形成層数(分割数)N)に対応して本硬化光源34A,34Bの照射エリアが決められるので、紫外線に対する感度が低く硬化の遅いインクのみに選択的に高光量の紫外線が照射され、インク間の硬化時間の差に起因する不具合を回避しうる。
【0228】
本発明に使用される記録媒体としては、特に限定されず、公知の記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。本発明における記録媒体としては、非吸収性記録媒体が好ましく、中でもプラスチックフィルム、紙がより好ましい。
【0229】
本発明において、着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積は、5pL以上20pL未満であることが好ましく、ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積は20pL以上60pL以下であることが好ましい。
上述したように、ホワイトインク組成物は、下地層又はオーバーコート層を形成するものであり、高い解像度が要求されない。一方、着色インク組成物は、カラー画像を形成するので、高い解像度が要求される。着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積と比較して、ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積を大きくすることによって、高い生産性が得られる。
着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積は、6〜18pLであることがより好ましく、6〜15pLであることが更に好ましい。また、ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積は、20〜50pLであることがより好ましく、20〜45pLであることが更に好ましい。
【0230】
本発明において、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インク組成物供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる画像形成装置が好ましく使用される。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク組成物供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断又は断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0231】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物として使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。よって、インク組成物の温度の制御幅は、設定温度の±5℃であることが好ましく、設定温度の±2℃であることがより好ましく、設定温度の±1℃であることが更に好ましい。
【0232】
本発明のインク組成物は、このような紫外線に、好ましくは0.01〜2秒、より好ましくは0.1〜1.5秒、更に好ましくは0.3〜1秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
【実施例】
【0233】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示すものとする。
【0234】
(イエローミルベースの調製)
・イエロー顔料:NOVOPERM YELLOW H2G(クラリアント社製)
30重量部
・SR9003(プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、SARTOMER社製) 30重量部
・BYK168(分散剤、BYK Chemie社製) 40重量部
上記の成分を撹拌し、イエローミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散することにより行った。
【0235】
(マゼンタミルベースの調製)
・マゼンタ顔料:CINQUASIA MAGENTA RT−355D(チバ・ジャパン社製) 30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、マゼンタミルベースを得た。
【0236】
(シアンミルベースの調製)
・シアン顔料:IRGALITE BLUE GLVO(チバ・ジャパン社製)
30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、シアンミルベースを得た。
【0237】
(ブラックミルベースの調製)
・ブラック顔料:SPECIAL BLACK 250(チバ・ジャパン社製)
30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、ブラックミルベースを得た。
【0238】
(ホワイトミルベースの調製)
・ホワイト顔料:アルミナ処理酸化チタン(KRONOS社製) 60重量部
・SR9003 36重量部
・ソルスパース36000(アビシア社製) 4重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、ホワイトミルベースを得た。
【0239】
(実施例、及び、比較例)
<インク組成物の作製方法>
表2及び表3に記載の素材を混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。なお、表中の数値は各成分の配合量(重量部)を表す。
【0240】
【表2】
【0241】
【表3】
【0242】
なお、上記表2及び表3に記載された各成分は以下の通りである。
・NVC:N−ビニルカプロラクタム(V−CAP、ISP社製)
・NVF:N−ビニルフォルムアミド(東京化成(株)製)
・SR531:サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレート95重量%と、トリメチルロールプロパントリアクリレート5重量%の混合物(SR531、Sartomer社製)
・PEA:フェノキシエチルアクリレート(SR399S、Sartomer社製)
・FA−512:ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製)
・SR351S:トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer社製)
・HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(SR238F、Sartomer社製)
・CN964A85:ウレタンアクリレートオリゴマー(平均官能基数2、サートマー・ジャパン(株)製)
・CN962:ウレタンアクリレートオリゴマー(平均官能基数2、サートマー・ジャパン(株)製)
・Irg369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369、チバ・ジャパン社製)
・Irg819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819、チバ・ジャパン社製)
・TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(Darocur TPO、チバ・ジャパン社製)
・ITX:イソプロピルチオキサントン(SPEEDCURE ITX、Lambson社製)
・ST−1:トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミン)アルミニウム塩8重量%と、フェノキシエチルアクリレート92重量%との混合物(重合禁止剤、FIRSTCURE ST−1、Chem First社製)
【0243】
<インクジェット記録方法>
図6〜図9に記載の構成のインクジェと記録装置を用いた。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタの各色インク組成物について、インクジェットヘッドは、ピエゾ型インクジェットヘッドQ−class Sapphire QS−256/10(FUJIFILM DIMATIX社製、ノズル数256個、最小液滴量10pL、50kHz)を用いた。
ホワイト、クリアのインク組成物に関しては、インクジェットヘッドとして、ピエゾ型インクジェットヘッドQ−class Sapphire QS−256/30(FUJIFILM DIMATIX社製、ノズル数256個、最小液滴量30pL、33kHz)を用いた。
また、仮光源(ピニング光源)としては、図8に示されるように発光ダイオード(UV−LED、日亜化学工業(株)製NC4U134、波長385nm)を6個配置した光源を、インクジェットヘッドの左右に1つずつ(計2個)具備し、光源1つあたりの照度が780mW/cm2の光源を使用した。
本硬化光源としては、発光ダイオード(UV−LED、日亜化学工業(株)製NC4U134、波長385nm)を10個配置した光源を左右に1つずつ(計2個)具備し、光源1つあたりの照度が1,500mW/cm2の光源を使用した。
インク供給系は、インクパック、供給配管、脱気フィルターSEPAREL EF−G2(DIC株式会社製)、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、脱気フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、脱気フィルター部分では0.5気圧まで減圧した。
上記構成からなる装置を用い、複数パスにより画像を形成した。
【0244】
二層形成の際は、図6又は図9に示すように、本硬化光源の一つをノズル方向ヘッド反対側に移動させ、カラー、ホワイトヘッドのノズルを二分割し、画像形成を行った。この際下地がカラー画像層の場合、図6に示すように、カラーインク組成物のヘッドのノズルは紙送り方向の上流側半分を、ホワイトインク組成物のヘッドのヘッドのノズルは下流側の半分を、下地がホワイトの場合、図9に示すようにカラーインク組成物のヘッドのノズルは紙送り方向の下流側半分を、ホワイトインク組成物のヘッドのノズルは上流側の半分を使用し画像形成を行った。なお、仮硬化光源は、全点灯させた。
【0245】
得られた画像に対して、以下の評価を行った。
<バンディングの評価>
上記印刷方法でビューフルUV MT−188(透明PET、厚さ188μm、(株)きもと製)上にカラー層12μm膜厚、ホワイトインク層25μm膜厚の画像を形成した。このとき、カラー層は、100%ベタ画像を基準に80%、60%、40%、20%の階調画像を印刷した。また、このときの基材表面での最高照度は1,500W/cm2であり、露光量は400mJ/cm2であった。
10名の評価者により、50cmの距離からの印刷物を観察し、バンディングの有無を評価した。3以上であれば実用上問題がない。
5:全員がバンディングは認められないと回答した。
4:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、1〜2名であった。
3:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、3〜5名であった。
2:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、6〜8名であった。
1:10名中、バンディングが認められると回答した人数は、9名以上であった。
【0246】
<密着性の評価>
密着性評価方法としてクロスハッチテスト(JIS K 5600−5−6、2004年)を行った。上記インクジェットインクジェット画像記録方法に従いビューフルUV MT−188(透明PET、厚さ188μm、(株)きもと製)上にカラー層12μm膜厚、ホワイトインク層25μm膜厚のベタ画像を描画した。その後、各々の印刷物に対して、クロスハッチテストを実施した。なお、評価は、JIS K5600−5−6に従い、0〜5の6段階評価とした。ここで、評価0がカットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがないことを意味し以下の分類で評価した。
格子に切り込みを入れる際インク−基材間評価の時は基材に達する深さまで切り込みをいれ、インク−インク間評価の時はおいては上層と下層の界面まで切り込みをいれ評価を行った。3以上であれば実用上問題がない。
5:JIS K5600−5−6 分類 0
4:JIS K5600−5−6 分類 1
3:JIS K5600−5−6 分類 2
2:JIS K5600−5−6 分類 3
1:JIS K5600−5−6 分類 4、5
【0247】
<硬化性の評価>
上記印刷方法でポリ塩化ビニル製のシート上に上にカラー層12μm膜厚、ホワイトインク層25μm膜厚の100%ベタ画像を印刷した。このときの基材表面での最高照度は1,500W/cm2であり、露光量は400mJ/cm2であった。
−硬化感度評価−
印刷後の表面の色移りとベトツキによって硬化感度を定義した。印刷後の表面のベトツキの有無は触診で、色移りは印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け判断した。色移り、ベトツキがないほど感度が高いと評価し、以下の基準で評価した。
5:色移りなし、ベトツキなし
4:色移りなし、ベトツキもほとんどなし
3:色移りなし、ややベトツキあり
2:若干色移りあり、ややベトツキあり
1:色移りあり、ベトツキあり
【0248】
<光沢性の評価>
記録媒体として、三菱製紙製の特菱アート紙(坪量104g/m2)、を用いた。得られた画像について、JIS Z8741に基づき、Sheen Instruments社製光沢度計を用い、測定角60°で測定を行った。
5:光沢度25以上
4:光沢度20以上25未満
3:光沢度15以上20未満
2:光沢度10以上15未満
1:光沢度10未満
評価3以上は実用上許容できる。
【0249】
なお、以下の表において、3Cは、3カラーグレー(イエロー、マゼンタ、シアンから構成されるグレー)を意味し、4Cは4カラーグレー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックから構成されるグレー)を意味する。また、Mは、マゼンタ色の画像を意味し、インクセットがライトマゼンタ色のインク組成物を有する場合には、マゼンタ及びライトマゼンタのインク組成物で画像を形成した。同様に、Cはシアン色の画像を意味し、インクセットがライトシアン色のインク組成物を有する場合には、シアン及びライトシアンのインク組成物で画像を形成した。
「下層W」では、図1(B)に示すように、記録媒体上にホワイトインク層を形成し、その上に、画像層を形成しており、「上層W」では、図1(A)に示すように、被記録媒体上に画像層を形成し、その上にホワイトインク層を形成している。
また、以下の表において、「W」は、カラー画像層を形成せずに、ホワイトインク層のみを形成して硬化性、密着性、バンディング性、光沢性を評価したものである。
なお、以下の比較例1〜4において、Y、M、C、Kでの結果が満足できるものではなかったことから、3C、4Cについては、評価を行わなかった。
結果を以下の表に示す。
【0250】
【表4】
【0251】
【表5】
【0252】
表4に示すように、最適な開始剤比及びラジカル重合性化合物組成を選択することにより、硬化性と密着性の両立が図れた。更に、光沢性に優れ、バンディングの発生が抑制された画像が得られた。
一方、これらの要件を満たさない、比較例のインクセットでは、表5に示すように、上記の効果の全てを奏するインクセットを得ることはできなかった。
【0253】
<画像形成方法>
仮光源を左右に1つずつ(合計2個)から、左右に2つずつ(合計4個)に変更した。なお、本硬化光源は変更しなかった。それぞれの照度は電流値を変更して照度を調整した。
【0254】
【表6】
【0255】
表6に示すように、仮硬化光源を本硬化光源より低照度にすることにより、半硬化状態を保ち、下地との親和性を持たせることにより、二層形成ではよりよい性能が得られたと推測される。
【符号の説明】
【0256】
10 インクジェット記録装置、12 記録媒体、20 装置本体、22 支持脚、24 インクジェットヘッド、26 プラテン、28 ガイド機構、30 キャリッジ、32A,32B 仮硬化光源、34A,34B 本硬化光源、35 移動機構(光源移動部)、35A シャフト、35B ラック、35C ピニオンギア、35D 駆動モータ、35E 検出片、35F ポジションセンサ、36 インクカートリッジ、38 取り付け部、40 ニップローラ、42 供給側のロール、44 巻き取りロール、46 ガイド、50 温調部、52 プレ温調部、54 アフター温調部、61,61C,61M,61Y,61K,61LC,61LM,61CL,61W ノズル列、61−1 上流側領域、61−2 下流側領域、70 供給ポンプ、72 サブタンク、74 圧力調整部、76 バルブ、77 加減圧用ポンプ、78 圧力計、80 ホワイトインク層、82 カラー画像層、102 制御装置、104 記録媒体搬送制御部、106 キャリッジ駆動制御部、108 光源制御部、110 画像処理部、112 吐出制御部、114 搬送駆動部、116 主走査駆動部、120 入力装置、124 情報記憶部、128 ヘッド駆動回路、130 エンコーダ、132 センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物と、ホワイトインク組成物と、を含み、
各インク組成物は、
(成分A)ラジカル重合性化合物と、
(成分B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、
前記成分Aとして、(成分A−1)及び(成分A−2)を含有し、
(成分A−1)N−ビニル化合物、
(成分A−2)下記式(a−2)で表される化合物、
前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする
複層形成用インクセット。
【化1】
(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【数1】
【請求項2】
前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(2)を満たす、請求項1に記載の複層形成用インクセット。
【数2】
【請求項3】
前記成分Aが(成分A−3)トリメチロールプロパントリアクリレートを更に含有する、請求項1又は2に記載の複層形成用インクセット。
【請求項4】
前記成分A−1がN−ビニルラクタム類である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項5】
前記成分A−1がN−ビニルカプロラクタムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項6】
前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が3重量%以上12重量%未満であり、かつ、前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が12重量%以上20重量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項7】
前記成分Aが単官能ラジカル重合性化合物を、成分Aの総量に対して50重量%以上90重量%以下含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項8】
前記マゼンタインク組成物は、成分Bとしてビスアシルホスフィンオキサイド及び/又はモノアシルホスフィンオキサイドを含有し、前記ホワイトインク組成物は、成分Bとしてモノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項9】
全てのインク組成物の表面張力が32〜40mN/mである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の複層形成用インクセットを用いたインクジェット記録方法において、
着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、
ホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、を含むインクジェット記録方法。
【請求項11】
記録媒体上に着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、
形成された画像上にホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、をこの順で有する、
請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
記録媒体上にホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、
ホワイトインク層上に着色インク組成物を付与して画像形成を行う画像形成工程と、をこの順で有する、
請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
着色インク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第1のノズル列と、ホワイトインク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第2のノズル列と、を含む複数のノズル列を有するインクジェットヘッドを、記録媒体に対して第1方向に往復移動させる走査工程と、
前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を前記第1方向と平行でない第2方向に相対移動させる相対移動工程と、
前記ノズル列を前記第2方向に複数の領域に分割し、前記分割された各分割ノズル領域の単位ごとに前記インクジェットヘッドのインク吐出を制御する吐出制御工程と、
前記吐出制御工程によって前記インクジェットヘッドから吐出され、前記記録媒体上に付着したインクに対して活性光線を照射する活性光線照射工程とを有し、
前記活性光線照射工程が、前記各分割ノズル領域に対応して前記活性光線の照射範囲が複数の領域に分割され、当該分割された分割照射領域の光量を領域別に制御して前記活性光線の照射を行う工程である、
請求項10〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積が5pL以上20pL未満であり、前記ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積が20pL以上60pL以下である、請求項13に記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法により得られた印刷物。
【請求項1】
イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、及びブラックインク組成物を含む着色インク組成物と、ホワイトインク組成物と、を含み、
各インク組成物は、
(成分A)ラジカル重合性化合物と、
(成分B)ラジカル重合開始剤と、を含有し、
前記成分Aとして、(成分A−1)及び(成分A−2)を含有し、
(成分A−1)N−ビニル化合物、
(成分A−2)下記式(a−2)で表される化合物、
前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とする
複層形成用インクセット。
【化1】
(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【数1】
【請求項2】
前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をX、前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量をYとしたとき、下記式(2)を満たす、請求項1に記載の複層形成用インクセット。
【数2】
【請求項3】
前記成分Aが(成分A−3)トリメチロールプロパントリアクリレートを更に含有する、請求項1又は2に記載の複層形成用インクセット。
【請求項4】
前記成分A−1がN−ビニルラクタム類である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項5】
前記成分A−1がN−ビニルカプロラクタムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項6】
前記マゼンタインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が3重量%以上12重量%未満であり、かつ、前記ホワイトインク組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量が12重量%以上20重量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項7】
前記成分Aが単官能ラジカル重合性化合物を、成分Aの総量に対して50重量%以上90重量%以下含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項8】
前記マゼンタインク組成物は、成分Bとしてビスアシルホスフィンオキサイド及び/又はモノアシルホスフィンオキサイドを含有し、前記ホワイトインク組成物は、成分Bとしてモノアシルホスフィンオキサイド化合物を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項9】
全てのインク組成物の表面張力が32〜40mN/mである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複層形成用インクセット。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の複層形成用インクセットを用いたインクジェット記録方法において、
着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、
ホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、を含むインクジェット記録方法。
【請求項11】
記録媒体上に着色インク組成物を吐出して画像形成を行う画像形成工程と、
形成された画像上にホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、をこの順で有する、
請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
記録媒体上にホワイトインク組成物を付与してホワイトインク層を形成するホワイトインク層付与工程と、
ホワイトインク層上に着色インク組成物を付与して画像形成を行う画像形成工程と、をこの順で有する、
請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
着色インク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第1のノズル列と、ホワイトインク組成物を吐出する複数のノズルが並べられた第2のノズル列と、を含む複数のノズル列を有するインクジェットヘッドを、記録媒体に対して第1方向に往復移動させる走査工程と、
前記インクジェットヘッドに対して前記記録媒体を前記第1方向と平行でない第2方向に相対移動させる相対移動工程と、
前記ノズル列を前記第2方向に複数の領域に分割し、前記分割された各分割ノズル領域の単位ごとに前記インクジェットヘッドのインク吐出を制御する吐出制御工程と、
前記吐出制御工程によって前記インクジェットヘッドから吐出され、前記記録媒体上に付着したインクに対して活性光線を照射する活性光線照射工程とを有し、
前記活性光線照射工程が、前記各分割ノズル領域に対応して前記活性光線の照射範囲が複数の領域に分割され、当該分割された分割照射領域の光量を領域別に制御して前記活性光線の照射を行う工程である、
請求項10〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記着色インク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積が5pL以上20pL未満であり、前記ホワイトインク組成物を吐出するノズルの最小液滴体積が20pL以上60pL以下である、請求項13に記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法により得られた印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−57042(P2013−57042A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197565(P2011−197565)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]