説明

複数のコーティング材料を共通のプラズマコーティングゾーンに付着させる装置および方法

装置を通る移動経路に沿って移動する基板(20)をコーティングする装置および方法。プラズマ源(30)はプラズマジェット(32)を放出し、そこにジェットの上流に配置された吐出オリフィス(144,146)から第1の試薬が注入される。第2の試薬は、ジェットの下流に配置された吐出オリフィス(244,246)からジェット内に注入される。制御装置(166)は、第1の組のパラメータに従って第1の試薬の流れを調整し、第2の組のパラメータに従って第2の試薬の流れを調整するように構成される。その結果、第1および第2の試薬が基板に塗布されて、基板上に少なくとも1つのコーティング層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2007年5月17日出願の仮特許出願第60/938,559号に基づく優先権を主張する。その全文は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、概して、基板をコーティングするシステムに関する。より詳細には、本発明は、試薬の導入を制御して基板上に形成されるコーティングを向上させるためのプラズマコーティングシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、本発明が適用可能であるプラズマコーティングシステムは、順に接続され、基板が連続的に通過する様々なステーションまたはゾーンを含む。これらのゾーンはロードロック、加熱ゾーン、1つまたは複数のコーティングゾーンおよび出口ロックを含むことができる。1つまたは複数のコーティングゾーン内には、膨張熱プラズマ(ETP)源などの1つまたは複数のプラズマ源、およびコーティング試薬を注入するための関連手段がある。コーティングプロセス中に、プラズマ源から出るプラズマジェットにコーティング試薬が注入されるときに、基板が1つまたは複数のプラズマ源を通過する。その結果のプラズマプルームを通って基板が移動するときに、基板の表面にコーティングが付着する。
【0004】
このような先行技術のシステムでは、複数のコーティングサブ層を基板の片側に同時に塗布することができない。複数のコーティングサブ層を塗布する場合は、以前にコーティングした基板が追加のコーティングゾーンを通過し、ここで追加のコーティングサブ層が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仮特許出願第60/938,559号
【発明の概要】
【0006】
一般的に、本発明は、異なる試薬組成物を各プラズマ源から出るプラズマジェットの上流側および下流側のそれぞれに注入することによって、プラズマ源を同時に2通りの方法で使用する装置および方法に関する。別の方法としては、ジェットの両側に供給される試薬組成物は同じであるが、上流側と下流側への流量が異なる。上流と下流の異なる試薬の「処方」は、注入パラメータ、および基板に付着する前に試薬がプラズマジェット内に浸透できる時間に応じて、材料の混合物として、または2つの材料間の段階的変化として、基板への複合コーティング内に反映することができる。
【0007】
一般的に、本発明による装置は、基板をコーティングするインライン型連続プラズマコーティングシステムである。このようなシステムでは、一連の基板が順に(一列に)コーティングゾーンを連続的に通過する。プラズマコーティングシステムは、1つのプラズマ源またはアレイ状のプラズマ源(プラズマアレイ)を含むことができる。システムは、第1のコーティング試薬をプラズマ源から出るプラズマジェットへと、プラズマ源の上流の位置から注入する手段、および第2のコーティング試薬をプラズマ源の下流の位置からプラズマジェットに注入する手段も含む。試薬を注入する手段は、当技術分野で周知のように、マニホールド、個々のインジェクタまたはオリフィスを含むことができる。制御装置は、注入中にコーティング試薬の流れを調整する。試薬を注入する第2の組の手段を使用して、基板の第2の側または反対表面にコーティングを付着させるように制御することもできる。
【0008】
他の特徴および利点は、以下の説明および特許請求の範囲から容易に理解することができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の原理に従って基板をコーティングするシステムの概略平面図である。
【図2】図1のシステムのコーティングゾーンを通る概略端面図である。
【図3】ほぼ線3−3に沿って切り取った状態の図2に見られるコーティングゾーンの概略側面図である。
【図4】基板が図1のシステムを通って前進するときに、任意選択で使用することができる関連空間充填パネルを有する基板を示す。
【図5A】本発明の1つの実施形態に従って基板をコーティングする1対のインジェクタを示す。
【図5B】図5Aに示したインジェクタで生成される、基板上の配合したコーティングを示す。
【図6A】本発明の別の実施形態に従って基板をコーティングする1対のインジェクタを示す。
【図6B】図6Aに示したインジェクタで生成される、基板上の多層コーティングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に図面を参照すると、本発明の原理による基板コーティングシステム10が、図1に概略的に示されている。基板コーティングシステム10は、プラスチック光沢仕上げパネルを形成する際に複数の基板20のコーティングに使用することが好ましい。当業者であれば、その結果のプラスチック光沢仕上げパネルは、光学的に透明性を必要とする多くの用途に使用することができることを理解することができるだろう。その用途としては、コンピュータのディスプレイまたはモニタ、手持ち式デバイス(例えば携帯電話、MP3プレーヤなど)のディスプレイ、レンズ、自動車の構成要素(ウインド、サンルーフおよびヘッドランプなど)、自動二輪車用風防装置、ヘルメットのバイザ、およびボート、列車、飛行機および建物などの自動車以外の用途に使用される窓が挙げられるが、これらに限定されない。基板20(2つの基板が図示されている)は、様々なステーションまたはゾーンを含むシステム10を通って連続的に移動する。このようなゾーンはロードロック12、基板加熱ゾーン14、1つまたは複数の基板コーティングゾーン16および出口ロック18を含むことができ、全て直列に気密状態で接続されている。様々なゾーンは、コーティングプロセスに資する適切な真空圧を維持するために、1つまたは複数の真空ポンプ(図示せず)によって排気することができる。
【0011】
当業者なら理解されるように、基板自体は多種多様な材料から形成することができる。例示的実施形態では、基板20は熱可塑性材料で作成される。このような材料には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドおよびポリ塩化ビニルがあるが、これらに限定されない。基板20に適切な他の材料はポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタンなどを含む。基板20を作成することができる材料の他の例はセラミック、ガラス、金属または半導体を含む。基板20は、それを構成する材料に応じて種々の技術で形成することができる。このような技術には、射出成形、冷間成形、真空成形、押出成形、ブロー成形、トランスファ成形、圧縮成形、および熱成形があるが、これらに限定されない。形成されると、基板20は、湾曲した形状または平坦な形状とすることができ、剛性または可撓性の性質であってよい。
【0012】
システム10を使用する際に、基板20は基板搬送装置24上に配置され、基板搬送装置は、ラック、ハンガーまたは他のデバイスであってよい。このようなデバイスはこの業界で周知であり、従って本明細書ではこれ以上の説明は省略する。基板搬送装置24は、ロードロック12に入り、ロードロック12内でまたはその前でコンベヤと係合する。これは全体を矢印25で示し、搬送装置24および基板20をコーティングシステム10を通して搬送する。コーティングシステム10を通して搬送装置24および基板20を搬送するのに適切な任意の手段を使用できることは明らかである。
【0013】
基板加熱ゾーン14内に移送されると、基板20は、基板20のコーティングに適切な温度まで加熱される。これを達成するために、基板加熱ゾーン14は加熱ユニット26を含み、2つが図示されている。加熱ユニット26は基板加熱ゾーン14の内部または外側に、その側壁にまたは側壁に沿って配置されるか、またはシステム10の全体的設計によって規定されている場所に配置される。様々なタイプの加熱ユニット26を使用することができ、これは、赤外線加熱器、抵抗加熱器、非反応性プラズマジェットなどを含むが、これらに限定されない。
【0014】
基板加熱ゾーン14を通って移動した後、基板搬送装置24は基板コーティングゾーン16に入り、ここで基板20上にコーティングを付着させる。基板20がコーティングされると、次にこれを出口ロック18へと移送し、ここでコーティングシステム10から放出する。
【0015】
本発明では様々なコーティング方法および手順を使用することができるが、図示のように、基板コーティングゾーン16は膨張熱プラズマ(ETP)源アレイなどの1つまたは複数のプラズマアレイ28を含む。プラズマアレイ28は、コーティングゾーン16内に相互に対向する対として配置することができる。図3に示すように、各プラズマ源38を、図3に見られるようにそれ自身のポートに装着するか、プラズマアレイ28を基板コーティングゾーン16の側壁に配置されたマニホールド30に装着することができる。
【0016】
各アレイ28には不活性ガスを供給することが好ましく、この不活性ガスは加熱されて、部分的にイオン化し、次に一連のプラズマジェット32としてアレイ28から放出される。これは、一般的に、対向するアレイ28から基板コーティングゾーン16内に入る複合プラズマジェットとして、図1に示されている。コーティングシステム10で使用できる不活性ガスの例としては、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどがあるが、これらに限定されない。
【0017】
第1のコーティング試薬および第2のコーティング試薬は、その一方が酸化ガスでよく、それぞれ試薬注入マニホールドセグメント34、36から注入される。制御された比率で蒸気の形態で注入されるコーティング試薬は、プラズマジェット32内に拡散し、基板コーティングゾーン16内に膨張し、自身を通って搬送されている基板20に向かって誘導される。コーティング試薬の例としては、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ビニルトリメチルシラン(VTMS)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン(V−D4)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)などの有機珪素が挙げられるが、これらに限定されない。酸化ガスの例としては、酸素および亜酸化窒素、またはその任意の組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0018】
次に図2および図3を参照すると、システム10の様々な構成は、基板20がコーティングゾーン16を通って前進するときに、活性試薬を、または幾つかの実施態様では、単一の試薬を基板20の片側または両側に付着させることを含む。基板20は、基板20がコーティングゾーン16に入る前に確実に適切な温度にするために、加熱ユニット26によって加熱される。必要に応じて、追加の加熱器をコーティングゾーン16自体の中で使用して、加熱ゾーン14からコーティングゾーン16へと通過する間に生じるいかなる熱損失も補償することができる。
【0019】
コーティングゾーン16は真空室であり、コーティングゾーン16の片側または両側に1つまたは複数のプラズマ源38を含む(非限定的な例として6つが図示されている)。マニホールドセグメント34、36は、上流マニホールドセグメント(134、136)または下流マニホールドセグメント(234、236)としてさらに描写することができ、各上流セグメント134、136は下流セグメント234、236と対になる。本明細書では、上流および下流という用語は、プラズマ源38に対するマニホールドセグメントの位置、および基板20の移動方向(図3の矢印40の方向)を意味するものである。各マニホールドセグメント34、36を、1つまたは複数のプラズマ源38に関連付ける。例えば、図3に示されたコーティングゾーン16の片側または両側は、上流マニホールドセグメント134、136および下流マニホールドセグメント234、236を備える。図示の実施形態に示すように、コーティングゾーンの各側は6つの上流マニホールドセグメントおよび6つの下流マニホールドセグメントを含むが、各側はこれより多いか、または少ない数のマニホールドセグメントを含んでもよい。マニホールドをセグメント化すると、所望のプロトコルに従って個々の流れを切り換えることができる。コーティングゾーン16の様々なマニホールドセグメント34、36は、相互に対して独立に自身を通してコーティング試薬を注入する。
【0020】
図3に示すように、前進する基板20の前端42は、最初、上流マニホールドセグメント134、136を、次にプラズマアレイ28およびその個々のプラズマ源38、および最後に下流マニホールドセグメント234、236を通過する。従って、後端部44は、下流マニホールドセグメント234、236を通過する基板20の最後の部分である。
【0021】
連続する基板20間にギャップまたは空間がある場合、システム10は、余分なコーティング材料がコーティングゾーン16の真空室の壁に付着するのを最小限に抑える特徴を含むことができる。特定の実施態様では、図4に見られるように、この特徴は、空間充填パネル46であり、このパネル46は、基板20の縁部の延長部であるように、一組のタブ48によって搬送装置24および/またはコンベヤ25に取り付けられ、基板20に近接離間されている。このような空間充填パネル46は、図4に全体が示されている。
【0022】
図5Aおよび図6Aに示す他の実施態様では、基板20のコーティングにマニホールドセグメントを使用するのではなく、1つまたは複数の上流試薬インジェクタ144、146および1つまたは複数の下流試薬インジェクタ244、246を、基板20にコーティングを付着させる各プラズマ源38に関連付けることができる。様々なインジェクタへの気化した試薬の流れの制御は、様々なマニホールドに関して上述したものと同じ方法で遂行される。
【0023】
上記実施態様を、以降では1つのコーティングゾーン16内で基板上に配合コーティングまたは段階的に変化するコーティングを生成するために使用するものとして説明する。これらのコーティングを生成するためにどの実施態様を使用することもできるが、この説明は図5Aおよび図6Aに関するプロセスを説明するだけであり、上記の図に見られるようなマニホールドセグメント134、136を代替的に使用することができることを理解されたい。
【0024】
便宜上、プラズマジェット32に関するコーティングプロセスを説明するために、2つの時間特性を使用する。すなわち、a)横混合時間l、およびb)通過時間tである。横混合時間lは、試薬がプラズマジェット32に十分浸透するために必要な時間の長さの特性である。通過時間tは、プラズマジェット32の経路に沿って測定され、プラズマジェット(および試薬)がインジェクタ面(インジェクタ49によって画定された面)から基板20までの距離を横断するのにかかる時間の長さの特性である。
【0025】
2つの機能性コーティング材料(例えば紫外線遮断用の材料と耐摩耗性の材料)を配合することが望ましい場合は、各材料の試薬をそれぞれ別個に上流および下流インジェクタ144、244それぞれに供給する。インジェクタ144、244のパラメータ(位置、数、分布、方向、およびサイズなど)および他のプロセスパラメータは、試薬を有するジェット32の基板への通過時間に対して、試薬が各プラズマ源38のプラズマジェット32の軸50に向かって迅速に浸透するのを促進するように選択される。すなわち、インジェクタ144、244のパラメータおよび他のプロセスパラメータは、l≪tであるように選択される。上流の試薬と下流の試薬が各インジェクタ144、244に供給されると、試薬がプラズマジェット32内で配合され、上流と下流で提供された試薬を組み合わせたコーティングの寄与を反映する、実質的に均質な層を特徴とする配合コーティング52を生成する。使用される特定の試薬に応じて、個々のコーティング材料の機能性は、配合時に維持されることも維持されないこともある。このようなコーティングは、図5Aに示すインジェクタ144、244の構成によって生成することができ、ここではインジェクタ144、244の先端がプラズマジェット32に、またはその付近に挿入される。
【0026】
一方、1つの機能コーティング材料から他の機能コーティング材料へと移行することが望ましい場合は、各材料の試薬を再びそれぞれ別個に上流および下流マニホールドの一方に供給する。しかし、インジェクタ144、244のパラメータおよび他のプロセスパラメータは、試薬を有するジェットの基板への通過時間に対して、試薬がプラズマジェット32内にゆっくり浸透させるように選択される。すなわち、l>>tである。ジェット32の上流の半分と下流の半分によって付着したコーティングサブ層は、上流および下流インジェクタ144、244を介して供給された個々の試薬を反映する傾向がある。ジェット32を越えて走査される、または移動する基板上に結果として生じた複合コーティング54は、上流の試薬によって形成されたコーティングサブ層から下流の試薬によって形成されたコーティングサブ層への移行を反映する。このような多層コーティング54は、図6Aに示すインジェクタ144、244の構成によって生成することができ、ここではインジェクタの先端がプラズマジェット32から離れていてプラズマジェット32に挿入されない。すなわち、上流および下流インジェクタ144、244のパラメータおよび他のプロセスパラメータは、プラズマジェット32内での上流試薬と下流試薬の不完全な混合および分離を促進するように選択される。多層コーティング54(図6B)は、2つのサブ層56、58および介在する移行ゾーン60を特徴とする。基板20に最も近いサブ層56および基板20から最も遠いサブ層58は、それぞれ上流および下流試薬の個々のコーティングの寄与が優勢である。
【0027】
図6Aに示す構成を使用して、様々なタイプの多層コーティング54を生成することができる。幾つかの実施態様では、上流および下流インジェクタ144、244が同じ試薬源を共有することができるが、上流および下流インジェクタへの流量は異なってもよい。例えば、一組のインジェクタに1つの流量でD4を供給し、他の組のインジェクタに別の流量でD4を供給することができる。他の実施態様では、異なる試薬を異なる源62、64から上流および下流インジェクタ144、244に供給することができる。
【0028】
特定の実施態様では、耐摩耗性コーティングの第1のサブ層56と第2のサブ層58の間の移行は、その結果、サブ層の厚さが実質的に不均衡になるような移行にすることができる。例えば、第2のサブ層58の厚さを厚くする一方で、第1のサブ層56の厚さを薄くすることができ、これは水浸性能を損なわず、システム10のスループットを低減させずに、耐摩耗性を改善する。
【0029】
別の実施態様では、上流インジェクタ144を使用して、第1のサブ層56として界面層(IL)を付着させて、次の耐摩耗性層(第2のサブ層58)を特定の基板20(例えばポリカーボネート基板)に確実に接着させる。1つのケースでは、ILが耐摩耗性層に使用されたものと同じ有機珪素試薬から形成されるが、それに関連付けられた酸化試薬の流れが比較的少ないか、またはない。
【0030】
別の実施態様では、上流インジェクタ144を使用して、ILの第1のサブ層56を付着させるが、試薬は第2のサブ層58の耐摩耗性層に使用されたものとは異なる。その場合は、上流インジェクタ144と下流インジェクタ244に別個の源(62,64)を使用する。
【0031】
他の実施態様では、インジェクタ144、244の一方を使用して、紫外線遮断サブ層(例えば、TiO)を付着させることができる。特に、上流および下流インジェクタ144、244は、それぞれIL層およびUV層を付着させる。追加のコーティングゾーン16を使用して、1つの層または2つのサブ層として耐摩耗性層を付着させることができる。別の方法としては、第1のコーティングゾーン16内の上流および下流インジェクタ144、244が、第1のサブ層56としてUV層を、第2のサブ層58として耐摩耗性層を付着させ、次に第2のコーティングゾーン16を使用して、他のサブ層により耐摩耗性層の付着を完成させる。
【0032】
さらに別の実施態様では、上流インジェクタ144が耐摩耗性層のサブ層を付着させる一方、下流インジェクタ244がそのサブ層の変形版を付着させ、これは耐摩耗性を保持しながら、撥水性または自己洗浄性挙動などの所望の表面特性を提供するように調整される。
【0033】
どの実施態様においても、図5Aに示すインジェクタ144、244を使用して、サブ層を段階的に変化させるのではなく、混合物としてコーティングを生成することができる。さらに、複数の試薬を各インジェクタ144、244を供給することができる。別の組の1つまたは複数のインジェクタを各プラズマ源38に関連付けることができる。これらの追加のインジェクタは、インジェクタ144、244に供給される試薬とは異なる別の試薬を受けることができる。別の方法としては、追加のインジェクタは、一方または両方のインジェクタ144、244に供給されるものと同じ試薬を受けることができる。
【0034】
図5Aおよび図6Aに見られるように、システム10は、さらに、インジェクタが相互とは別個に動作することができるように、上流および下流インジェクタ144、244に指示する制御装置66を含む。源62、64はコーティング試薬を蒸気の形態で提供し、その際に加圧されたコーティング試薬容器および質量流量制御装置を使用することができる。制御装置66は、質量流量制御装置を介して個々のインジェクタへのコーティング試薬の流れを調整する。
【0035】
当業者であれば容易に理解されるように、以上の説明は本発明の原理を実現することの例示となるよう意図されている。この説明は、特許請求の範囲で規定されるような本発明の精神から逸脱することなく、本発明が修正、変形および変更することができるので、本発明の範囲または適用を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身を通る移動経路に沿って移動する基板をコーティングする装置であって、
前記基板が前記経路に沿って移動するときに、前記基板に向かってプラズマジェットを放出するように構成された少なくとも1つのプラズマ源と、
第1の試薬源と、
前記基板の前記移動経路に対して前記プラズマ源の上流に配置された少なくとも1つの上流吐出オリフィスであって、前記第1の試薬源が結合されて、前記第1の試薬源からの第1の試薬を、前記プラズマ源から放出された前記プラズマジェット内に注入するように配置された少なくとも1つの上流吐出オリフィスと、
第2の試薬源と、
前記基板の前記移動経路に対して前記プラズマ源の下流に配置された少なくとも1つの下流吐出オリフィスであって、前記第2の試薬源が結合されて、前記第2の試薬源からの第2の試薬を、前記プラズマ源から放出された前記プラズマジェット内に注入するように配置された少なくとも1つの下流吐出オリフィスと、
第1および第2の試薬が前記基板に塗布されて、前記基板上に少なくとも1つのコーティング層を形成するように、第1の組のパラメータに従って前記上流吐出オリフィスへの前記第1の試薬の流れを調整するように構成され、第2の組のパラメータに従って前記下流吐出オリフィスへの前記第2の試薬の流れを調整するように構成された制御装置と、
を備える装置。
【請求項2】
前記第1および前記第2の試薬源が同じであり、前記第1および第2の組のパラメータが異なる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の試薬源と前記第2の試薬源が相互に異なる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の試薬と前記第2の試薬が前記プラズマジェット内で混合して、前記基板上に配合コーティングを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1および第2の試薬が、前記基板に塗布されて、前記コーティングの少なくとも2つのサブ層を形成し、前記各サブ層が、前記上流および下流試薬源の一方からの寄与に関連する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記上流吐出オリフィスおよび前記下流吐出オリフィスが、それぞれ上流マニホールドおよび下流マニホールドに関連する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記上流マニホールドおよび前記下流マニホールドが、それぞれ複数の上流および下流オリフィスを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記上流吐出オリフィスおよび前記下流吐出オリフィスが、それぞれ上流インジェクタおよび下流インジェクタに関連する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記プラズマ源が、プラズマアレイの複数のプラズマ源のうち1つであり、上流吐出オリフィスおよび前記下流吐出オリフィスが、前記プラズマアレイの前記プラズマ源のそれぞれに関連する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記上流および下流吐出オリフィスの少なくとも1つが、前記プラズマジェットを含むような領域内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記上流および下流吐出オリフィスの少なくとも1つが、前記プラズマジェットを含むような領域の外側に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
基板をコーティングする方法であって、
コーティングゾーンを通る経路に沿って基板を移動させるステップと、
前記基板の一方の側に向かって誘導されるプラズマジェットを生成するステップと、
前記プラズマジェットの上流の位置から第1の試薬を前記プラズマジェット内に注入するステップと、
前記プラズマジェットの下流の位置から第2の試薬を前記プラズマジェット内に注入するステップと、
第1の組のパラメータに従って、前記第1の試薬の流れを調整するステップと、
第1および第2の試薬が前記基板に塗布されて、前記基板上に少なくとも1つのコーティング層を形成するように、第2の組のパラメータに従って、前記第2の試薬の流れを調整するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記注入するステップが同じ試薬を注入し、前記第2の組のパラメータが前記第1の組のパラメータとは異なる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記注入するステップが、前記第1および第2の試薬として異なる試薬を注入する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記調整するステップが、前記上流および下流吐出オリフィスに結合された少なくとも1つの試薬源の動作を制御することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記基板上に配合コーティングを付着させるために、前記第1の試薬を前記第2の試薬と実質的に混合することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
主に前記第1の試薬から形成された前記コーティングの第1のサブ層を前記基板上に付着させ、主に前記第2の試薬から形成された前記コーティングの第2のサブ層を前記基板上に付着させるように、前記プラズマジェット内で前記第1の試薬を前記第2の試薬と実質的には混合しないことをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の試薬が、前記プラズマジェットの上流部分内の位置から注入される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の試薬が、前記プラズマジェットの下流部分内の位置から注入される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記注入された第1および第2の各試薬が、前記基板に塗布される前に、前記プラズマジェット内に部分的にしか浸透しない、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記注入された第1および第2の各試薬が、前記基板に塗布される前に、前記プラズマジェット内に十分浸透することができる、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2010−527411(P2010−527411A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508632(P2010−508632)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/064137
【国際公開番号】WO2008/144658
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】