説明

複数のバッテリパックを電源とする電動工具

【課題】 複数のバッテリパックを電源とする電動工具において、ユーザへバッテリパックの異常を確実に報知する。
【解決手段】 電動工具は、工具が取り付けられる本体102と、本体102に収容されているモータと、各々に第1バッテリパック10が着脱可能であるとともに、取り付けられた複数の第1バッテリパック10がモータへ直列に接続される複数の第1パック取付部130と、第1パック取付部130に取り付けられた複数の第1バッテリパック10の状態をそれぞれ表示する複数の表示器160を備えている。その複数の表示器160は、ユーザが全ての表示器を同時に視認できるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリパックを電源とする電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、二つのバッテリパックを電源とする電動工具が開示されている。この電動工具では、二つのバッテリパックが直列に接続されており、高電圧でモータが駆動される構成となっている。それにより、一つのバッテリパックを電源とするものに比べて、重作業に使用可能な高い出力を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,028,858号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリパックを直列に接続すると、バッテリパックに大きな負担をかけることがある。例えば、二つのバッテリパックの間で充電レベルが異なると、一方のバッテリパックが過放電され、さらには、他方のバッテリパックによって逆方向に充電(逆充電)されてしまう。この場合、一方のバッテリパックは、大きなダメージを受けることになり、その劣化が大きく進行するか、あるいは使用不能になってしまう。
【0005】
上記の問題に関して、特許文献1の電動工具では、二つのバッテリパックの充電レベルをそれぞれ表示する二つの発光ダイオードが設けられている。しかしながら、このような表示器を設けたとしても、ユーザによって表示器が正しく視認されなければ、バッテリパックの過放電や過熱が起こり得る。特に、複数の表示器が設けられている場合、ユーザは全ての表示器を看視しなければならないが、ユーザが一部の表示器のみを見て異常が無いと判断し、一部のバッテリパックの過放電や過熱を引き起こすといった問題が起きている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術では、上記の問題を回避するために、複数のバッテリパックの状態をそれぞれ表示する複数の表示器を、ユーザが全ての表示器を同時に視認できるように配置する。それにより、全てのバッテリパックの状態をユーザへ確実に報知することができ、一部のバッテリパックの異常が見過ごされるといった事態を防止することができる。
【0007】
本技術の一実施形態として、電動工具は、工具が取り付けられる本体と、本体に収容されているモータと、各々に第1バッテリパックが着脱可能であるとともに、取り付けられた複数の第1バッテリパックがモータへ直列に接続される複数の第1パック取付部と、第1パック取付部に取り付けられた複数の第1バッテリパックの状態をそれぞれ表示する複数の表示器を備えることが好ましい。そして、その複数の表示器は、ユーザが全ての表示器を同時に視認できるように配置されることが好ましい。
【0008】
この電動工具では、ユーザが複数の表示器を同時に視認することができ、ユーザは複数のバッテリパックの状態を同時に把握することができる。ユーザは、一部のバッテリパックに異常が生じた時点で、電動工具の使用を直ちに中止することができ、バッテリパックに無用なダメージが与えられることを避けることができる。
【0009】
本技術の一実施形態である電動工具は、金工用の電動工具であってもよいし、木工用の電動工具であってもよいし、石工用の電動工具であってもよいし、園芸用の電動工具であってもよい。具体的には、電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ、電動マルノコ、電動レシプロソー、電動ジグソー、電動ハンマ、電動カッター、電動チェーンソー、電動カンナ、電動釘打ち機(鋲打ち機を含む)、電動ヘッジトリマ、電動芝生バリカン、電動芝刈機、電動刈払機、電動ブロワー、電動クリーナ等が挙げられる。
【0010】
本発明の一実施形態では、各々のバッテリパックが複数のリチウムイオン電池セルを有し、その公称電圧が7.0ボルト以上であることが好ましい。リチウムイオン電池セルは、過放電や過熱によって受けるダメージが大きい。この点において、本技術によれば、リチウムイオン電池セルの過放電や過熱を防止することができ、各々のバッテリパックを長期に亘って使用することが可能となる。
【0011】
現在、複数のリチウムイオン電池セルを内蔵し、公称電圧が18ボルトのバッテリパックと、そのバッテリパックを利用する定格電圧が18ボルトの電動工具が多く利用されている。本発明の一実施形態では、そのような公称電圧が18ボルトのバッテリパックを複数利用し、定格電圧が36ボルト以上の電動工具を駆動することが好ましい。それにより、ユーザは、既に保有するバッテリパックによって、より高出力の電動工具を使用することが可能となる。即ち、ユーザは、公称電圧が36ボルト以上のバッテリパックを新たに用意する必要がない。既に保有する公称電圧が18ボルトのバッテリパックを、定格電圧が18ボルトの電動工具だけでなく、定格電圧が36ボルト以上の電動工具にも、有効に利用することができる。
【0012】
リチウムイオン電池セルの公称電圧は3.6ボルトであることから、公称電圧が18ボルトのバッテリパックは、少なくとも、直列に接続された五本のリチウムイオン電池セルを有している。ここで、公称電圧が18ボルトのバッテリパックは、五本のリチウムイオン電池セルだけでなく、例えば十本のリチウムイオン電池セルを有することもできる。この場合、十本のリチウムイオン電池セルは、二本ずつが並列に接続されて五組のセル群を形成し、その五組のセル群が直列に接続されることで、18ボルトの電圧を出力する。同様にして、公称電圧が18ボルトのバッテリパックは、15又はそれ以上の本数のリチウムイオン電池セルを有することもできる。リチウムイオン電池セルの本数を多くするほど、バッテリパックの容量を大きくすることができるとともに、各々のリチウムイオン電池セルに流れる電流を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本技術の一実施形態に係る製品群を示す図。
【図2】二つの第1バッテリパック(低電圧バッテリパック)を電源とする高電圧電動工具を示す図。
【図3】高電圧電動工具の本体から二つの低電圧バッテリパックを取り外した状態を上方から示す図。
【図4】高電圧電動工具の本体から二つの低電圧バッテリパックを取り外した状態を下方から示す図。
【図5】高電圧電動工具の電気的な構成を示す回路ブロック図。
【図6】高電圧電動工具の電気的な構成の一変形例であって、バイパス回路を付加したものを示す回路ブロック図。
【図7】高電圧電動工具の電気的な構成の一変形例であって、電源回路の接続位置を変更したものを示す回路ブロック図。
【図8】高電圧電動工具の電気的な構成の一変形例であって、電源回路の接続位置を変更するとともに、バイパス回路を付加したものを示す回路ブロック図。
【図9】二つの第1バッテリパック(低電圧バッテリパック)を、コード接続タイプのアダプタを介して、高電圧電動工具の本体に接続した状態を示す図。
【図10】コード接続タイプのアダプタの本体側ユニットを示す図。
【図11】コード接続タイプのアダプタのパック側ユニットを示す図。
【図12】アダプタの電気的な構成を示す回路ブロック図。
【図13】アダプタの電気的な構成の一変形例であって、バイパス回路を付加したものを示す回路ブロック図。
【図14】二つの第1バッテリパック(低電圧バッテリパック)を、一体タイプのアダプタを介して、高電圧電動工具の本体に接続した状態を示す図。
【図15】一体タイプのアダプタの上部を示す図。
【図16】一体タイプのアダプタの下部を示す図。
【図17】一つの第1バッテリパック(低電圧バッテリパック)を電源とする低電圧電動工具を示す図。
【図18】低電圧電動工具の本体から第1バッテリパック(低電圧バッテリパック)を取り外した状態を下方から示す図。
【図19】第1バッテリパック(低電圧バッテリパック)を示す図。
【図20】一つの第2バッテリパック(高電圧バッテリパック)を電源とする高電圧電動工具を示す図。
【図21】高電圧電動工具の本体から第2バッテリパック(高電圧バッテリパック)を取り外した状態を上方から示す図。
【図22】高電圧電動工具の本体から第2バッテリパック(高電圧バッテリパック)を取り外した状態を下方から示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本技術の一実施形態に係る製品群を示している。図1に示すように、この製品群には、二種類のバッテリパック10、30と、三種類の電動工具50、70、100と、二種類のアダプタ200、300が含まれている。ここで、アダプタ200、300は、単一のバッテリパック30を電源とする電動工具70の本体72に、複数のバッテリパック10を電気的に接続するための装置である。
【0015】
二種類のバッテリパック10、30のうち、一種類のバッテリパック10は、公称電圧が18ボルトのバッテリパックであり、他の一種類のバッテリパック30は、公称電圧が36ボルトのバッテリパックである。以下では、便宜上、公称電圧が18ボルトのバッテリパック10を低電圧バッテリパック10と称し、公称電圧が36ボルトのバッテリパック30を高電圧バッテリパック30と称する。
【0016】
低電圧バッテリパック10は、直列に接続された五本のリチウムイオン電池セルを有している。一方、高電圧バッテリパック30は、直列に接続された十本のリチウムイオン電池セルを内蔵している。二種類のバッテリパック10、30は、再充電可能なバッテリパックであり、電動工具50、70、100の電源として用いられた後に、充電器(図示省略)によって再充電することができる。また、二種類のバッテリパック10、30は、いわゆるスライド式のバッテリパックであり、電動工具50、70、100や充電器にスライドしながら取り付けられる。なお、これら二種類のバッテリパック10、30は、既に実用化されており、特に、公称電圧が18ボルトである低電圧バッテリパック10は、一般的に広く普及している。
【0017】
ここで、低電圧バッテリパック10は、五本のリチウムイオン電池セルだけでなく、例えば十本のリチウムイオン電池セルを内蔵することもできる。この場合、十本のリチウムイオン電池セルは、二本ずつが並列に接続されて五組のセル群を形成し、その五組のセル群が直列に接続されることで、18ボルトの電圧を出力する。同様に、高電圧バッテリパック30は、十本のリチウムイオン電池セルだけでなく、例えば二十本のリチウムイオン電池セルを内蔵することもできる。この場合、二十本のリチウムイオン電池セルは、二本ずつが並列に接続されて十組のセル群を形成し、その十組のセル群が直列に接続されることで、36ボルトの電圧を出力する。
【0018】
三種類の電動工具50、70、100のうち、一種類の電動工具50は、定格電圧が18ボルトの電動工具であり、他の二種類の電動工具70、100は、定格電圧が36ボルトの電動工具である。以下では、便宜上、定格電圧が18ボルトの電動工具50を低電圧電動工具50と称し、定格電圧が36ボルトの電動工具70、100を高電圧電動工具70、100と称する。
【0019】
図17、図18に示すように、低電圧電動工具50は、一つの低電圧バッテリパック10を電源とする電動工具である。この低電圧電動工具50は、一例ではあるが、電動インパクトドライバであり、メインスイッチ58の操作に応じて工具チャック54を駆動する。工具チャック54には、工具であるドライバビットを取り付けることができる。一つの低電圧バッテリパック10を電源とする低電圧電動工具50は、既に実用化されており、公称電圧が18ボルトの低電圧バッテリパック10とともに広く普及している。
【0020】
低電圧電動工具50の本体52には、一つのパック取付部60が設けられている。パック取付部60は、低電圧バッテリパック10が着脱可能であり、低電圧バッテリパック10をスライド可能に受け入れる。パック取付部60は、一対のレール62、正極入力端子64a、負極入力端子64b、ロック受入穴68を有している。
【0021】
一方、図19に示すように、低電圧バッテリパック10には、パック取付部60にスライド挿入されるコネクタ部20が設けられている。コネクタ部20には、一対のレール22、正極出力端子24a、負極出力端子24b、オートストップ端子26が設けられている。低電圧バッテリパック10をパック取付部60に取り付けると、低電圧バッテリパック10の正極出力端子24aが本体52の正極入力端子64aに接続され、低電圧バッテリパック10の負極出力端子24bが本体52の負極入力端子64bに接続される。それにより、低電圧バッテリパック10は、低電圧電動工具50の本体52へ電気的に接続される。また、低電圧バッテリパック10は、パック取付部60のロック受入穴68に係合し、低電圧バッテリパック10をパック取付部60に固定するロック部材12を有している。このロック部材12による固定は、ロック解除ボタン14によって解除することができる。
【0022】
次に、二種類の高電圧電動工具70、100について説明する。二種類の高電圧電動工具70、100のうち、一方の高電圧電動工具70は、一つの高電圧バッテリパック30を電源とする電動工具である。図20、図21、図22を参照し、この高電圧電動工具70について説明する。この高電圧電動工具70は、一例ではあるが、電動ブロワーであり、メインスイッチ78への操作に応じて、本体72に内蔵された送風ファンを駆動する。電動ブロワー70は、園芸用の電動工具の一種であり、ノズル73の先端73aから吹き出す空気によって、例えば落葉を吹き集めることができる。定格電圧が36ボルトの高電圧電動工具70は、公称電圧が36ボルトの高電圧バッテリパック30とともに、既に実用化されている。
【0023】
高電圧電動工具70の本体72には、一つのパック取付部80が設けられている。パック取付部80は、高電圧バッテリパック30が着脱可能であり、高電圧バッテリパック30をスライド可能に受け入れる。パック取付部80は、一対のレール82、正極入力端子84a、負極入力端子84b、ロック受入穴88を有している。
【0024】
一方、高電圧バッテリパック30には、パック取付部80にスライド挿入されるコネクタ部40が設けられている。コネクタ部40には、一対のレール42、正極出力端子44a、負極出力端子44b、オートストップ端子46が設けられている。高電圧バッテリパック30をパック取付部80に取り付けると、高電圧バッテリパック30の正極出力端子44aが、パック取付部80の正極入力端子84aに接続され、高電圧バッテリパック30の負極出力端子44bが、パック取付部80の負極入力端子84bに接続される。それにより、高電圧バッテリパック30は、高電圧電動工具70の本体72へ電気的に接続される。また、高電圧バッテリパック30は、パック取付部80のロック受入穴88に係合し、高電圧バッテリパック30をパック取付部80に固定するロック部材32を有している。このロック部材32による固定は、ロック解除ボタン34によって解除することができる。
【0025】
ここで、低電圧バッテリパック10と高電圧バッテリパック30との間で、コネクタ部20、40の構造は基本的に類似している。しかしながら、両者の間でコネクタ部20、40の大きさが互いに異なるため、低電圧バッテリパック10を高電圧電動工具70のパック取付部80に取り付けることはできず、高電圧バッテリパック30を低電圧電動工具50のパック取付部60に取り付けることもできない。
【0026】
二種類の高電圧電動工具70、100のうち、他方の高電圧電動工具100は、二つの低電圧バッテリパック10を電源とする電動工具である。図2、図3、図4を参照し、この高電圧電動工具100について説明する。この高電圧電動工具100は、一例ではあるが、電動ブロワーであり、メインスイッチ108への操作に応じて、本体102に内蔵された送風ファンを駆動する。この電動ブロワー100は、その機能や用途において、先に説明した電動ブロワー70と基本的に同じものである。
【0027】
高電圧電動工具100の本体102には、二つのパック取付部130が設けられている。各々のパック取付部130は、一つの低電圧バッテリパック10が着脱可能であり、低電圧バッテリパック10をスライド可能に受け入れる。パック取付部130は、一対のレール132、正極入力端子134a、負極入力端子134b、ロック受入穴138を有している。このパック取付部130は、その構造において、先に説明した低電圧電動工具50のパック取付部60と実質的に等しい。二つのパック取付部130は、本体102の後部に並んで配置されており、低電圧バッテリパック10が同一方向からそれぞれ挿入される。二つのパック取付部130に取り付けられた二つの低電圧バッテリパック10は、直列に接続され、略36ボルトの電圧で本体102へ電力を供給する。
【0028】
高電圧電動工具100の本体102には、二つの表示器160が設けられている。二つの表示器160は、二つのパック取付部130の上部にそれぞれ位置している。各々の表示器160は、一例ではあるが、発光ダイオードである。一方の表示器160は、一方のパック取付部130に取り付けられた低電圧バッテリパック10の充電レベルを表示し、他方の表示器160は、他方のパック取付部130に取り付けられた低電圧バッテリパック10の状態を表示する。各々の表示器160は、対応する低電圧バッテリパック10の充電レベルを表示することができ、特に、その充電レベルが再充電を必要とするレベルに達した時に、発光ダイオードを点灯させることができる。なお、表示器160は、対応する低電圧バッテリパック10の充電レベルを、少なくとも二段階に表示することも好ましい。あるいは、表示器160が、対応する低電圧バッテリパック10の充電レベルに代えて、あるいは、充電レベルとともに、対応する低電圧バッテリパック10の温度異常を表示することも好ましい。
【0029】
図2に示すように、二つの表示器160は、高電圧電動工具100の後面102aに並んで配置されており、その表示方向(即ち、発光ダイオードの発光方向)は同じ方向を向いている。従って、ユーザは、二つの表示器160を同時に視認し、二つの低電圧バッテリパック10の充電レベルを同時に把握することができる。また、それぞれの表示器160は、対応するパック取付部130の上方に配置されている。従って、例えば高電圧電動工具100が突然に停止した場合に、どちらの低電圧バッテリパック10に問題があるのかを、ユーザは直ちに判断することができる。なお、二つの表示器160は、後面102aに限られず、ユーザが同時に視認可能な他の位置へ配置することもできる。この場合、二つの表示器160が同一平面に配置されていると、ユーザは二つの表示器160を様々な方向から同時に視認することができる。
【0030】
ここで、表示器160は、各々の低電圧バッテリパック10に設けることもできる。先に説明したように、二つのパック取付部130は、並んで配置されているとともに、低電圧バッテリパック10を同一方向から受け入れる。従って、二つの低電圧バッテリパック10を本体102に取り付けた時に、それらの二つの表示器160は、同一平面内に並んで位置するとともに、その表示方向も同じ方向を向くことになる。その結果、ユーザは、二つの表示器160を様々な方向から同時に視認することができる。
【0031】
次に、図5を参照し、二つの低電圧バッテリパック10を電源とする高電圧電動工具100の電気的な構成について説明する。低電圧バッテリパック10は、直列に接続された五本の電池セル16と、バッテリコントローラ18を備えている。各々の電池セル16は、リチウムイオン電池セルであり、その公称電圧は3.6ボルトである。直列に接続された五本の電池セル16は、正極出力端子24aと負極出力端子24bに接続されており、両端子24a、24bから略18ボルトの電圧で電力を放電することができる。図5に示すように、上段に位置する低電圧バッテリパック10の負極出力端子24bは、その下段に位置する低電圧バッテリパック10の正極出力端子24aと電気的に接続される。それにより、二つの低電圧バッテリパック10は、直列に接続され、略36ボルトの電圧で本体102へ電力を供給する。
【0032】
バッテリコントローラ18は、CPUを搭載した集積回路であり、記憶している各種のプログラムを実行することができる。また、バッテリコントローラ18は、各々の電池セル16と電気的に接続されており、各々の電池セル16の電圧を測定することができる。バッテリコントローラ18は、測定された各々の電池セル16の電圧に基づいて、各々の電池セル16の充電レベルを判定し、電池セル16の再充電が必要であると判断した時に、放電保護信号(オートストップ信号とも称される)をオートストップ端子26へ出力する。ここで、放電保護信号はハイインピーダンスを示す信号である。
【0033】
一方、本体102は、工具(ここでは送風ファン)を駆動するモータ176を備えている。モータ176には、メインスイッチ178を介して、二つの低電圧バッテリパック10が直列に接続される。また、本体102は、速度調節回路190、パワーFET194、ゲート制御トランジスタ192、分圧回路196を備えている。パワーFET194は、モータ176に対して直列に接続されており、モータ176に流れる電流を遮断することができる。速度調節回路190は、パワーFET194に対してパルス幅変調制御を行い、モータ176の回転速度を調節することができる。ゲート制御トランジスタ192は、パワーFET194のゲートに接続されており、分圧回路196とともに、パワーFET194のゲート電圧を制御することができる。
【0034】
本体102は、メインコントローラ152、メインコントローラ152の電源回路142、モータ176に直列に接続されたシャント抵抗150、シャント抵抗150の電圧に基づいてモータ176の電流を検出する電流検出回路148と、ゲート制御トランジスタ192との間で放電保護信号を入出力する放電保護信号入出力回路144を備えている。
【0035】
メインコントローラ152は、CPUを搭載した集積回路であり、記憶している各種のプログラムを実行することができる。例えば、メインコントローラ152は、電流検出回路148が出力する電圧信号を入力し、モータ176の電流が許容値を超えるときに、放電保護信号入出力回路144を通じて、ゲート制御トランジスタ192へ放電保護信号を出力する。この場合、ゲート制御トランジスタ192は、パワーFET194のゲート電圧を接地電圧まで低下させ、パワーFET194をターンオフさせる。その結果、モータ176と低電圧バッテリパック10が電気的に遮断され、モータ176や低電圧バッテリパック10の過電流が防止される。なお、モータ176と低電圧バッテリパック10の間には、それらの過電流を防止するためのヒューズ162が設けられている。
【0036】
メインコントローラ152は、パック取付部130のオートストップ端子136に電気的に接続されており、バッテリコントローラ18からの信号電圧(例えば放電保護信号)を入力し、また、バッテリコントローラ18へ信号電圧(例えば放電保護解除信号)を出力することができる。ここで、二つの低電圧バッテリパック10は直列に接続されているので、二つの低電圧バッテリパック10の間で、その基準電圧(接地電圧)は互いに相違する。具体的には、低圧側(図5において下側)に位置する低電圧バッテリパック10の基準電圧がゼロボルトとすると、高圧側(図5において上側)に位置する低電圧バッテリパック10の基準電圧が18ボルトとなる。一方、本体102の基準電圧は、低電圧側の低電圧バッテリパック10の基準電圧と等しく、ゼロボルトとなる。その結果、本体102のメインコントローラ152と、高圧側に位置する低電圧バッテリパック10のバッテリコントローラ18では、入出力する信号電圧のレベルが大きく相違することになり、そのままでは両者の間で信号電圧を入出力することができない。
【0037】
上記の問題に関して、本実施例の高電圧電動工具100では、高圧側に位置する低電圧バッテリパック10のバッテリコントローラ18と、本体102のメインコントローラ152との間に、レベルシフタ154b、156bが設けられている。一方のレベルシフタ154bは、メインコントローラ152からバッテリコントローラ18へ信号電圧を伝送する導電線路154上に設けられており、メインコントローラ152が出力する信号電圧のレベルを、バッテリコントローラ18が許容するレベルまで昇圧する。他方のレベルシフタ156bは、バッテリコントローラ18からメインコントローラ152へ信号電圧を伝送する導電線路156上に設けられており、バッテリコントローラ18が出力する信号電圧のレベルを、メインコントローラ152が許容するレベルまで降圧する。それにより、バッテリコントローラ18とメインコントローラ152の間で、信号電圧の入出力を問題なく行うことができる。
【0038】
また、各々のバッテリコントローラ18とメインコントローラ152の間には、カットオフスイッチ154a、156aが設けられている。一方のカットオフスイッチ154aは、メインコントローラ152からバッテリコントローラ18へ信号電圧を伝送する導電線路154上に設けられており、他方のカットオフスイッチ156aは、バッテリコントローラ18からメインコントローラ152へ信号電圧を伝送する導電線路156上に設けられている。カットオフスイッチ154a、156aは、メインコントローラ152によって制御される。メインコントローラ152は、高電圧電動工具100が所定時間に亘って使用されていないと判断した時に、カットオフスイッチ154a、156aをオフさせて、各々のバッテリコントローラ18とメインコントローラ152を電気的に切断する。それにより、バッテリコントローラ18とメインコントローラ152の間で漏れ電流が長期間に亘って流れ、低電圧バッテリパック10が過放電されてしまうといった事態を未然に防止する。
【0039】
先に説明したように、バッテリコントローラ18は、電池セル16の充電レベルが低下した時に、オートストップ端子26へ放電保護信号を出力する。バッテリコントローラ18から出力された放電保護信号は、導電線路156を通じて、メインコントローラ152に入力される。メインコントローラ152は、バッテリコントローラ18からの放電保護信号を受けて、ゲート制御トランジスタ192へ放電保護信号を出力する。ここで、メインコントローラ152が出力する放電保護信号は、放電保護信号入出力回路144を通じて、ゲート制御トランジスタ192のゲートに入力される。その結果、ゲート制御トランジスタ192がターンオンされ、パワーFET194がターンオフされて、モータ176への電力供給が停止される。それにより、低電圧バッテリパック10の過放電が未然に防止される。
【0040】
加えて、メインコントローラ152は、バッテリコントローラ18から放電保護信号を受けると、表示器(表示回路のLED)160を点灯させる。このとき、メインコントローラ152は、放電保護信号を出力した低電圧バッテリパック10に対応する表示器160のみを、選択的に点灯する。それにより、ユーザは、どちらの低電圧バッテリパック10が充電を必要とするのかを、直ちに知ることができる。
【0041】
以上のように、高電圧電動工具100は、各々に低電圧バッテリパック10が着脱可能な二つのパック取付部130を備え、二つの低電圧バッテリパック10を電源とすることができる。二つの低電圧バッテリパック10は、モータ176へ直列に接続され、モータ176へ36ボルトの電圧を印加する。即ち、定格電圧が36ボルトの高電圧電動工具100が、公称電圧が18ボルトの低電圧バッテリパック10によって駆動される。ユーザは、高電圧バッテリパック30やその充電器を新たに購入することなく、既に保有する低電圧バッテリパック10を用いて、高電圧電動工具100を使用することができる。低電圧バッテリパック10は、単独で低電圧電動工具50の電源としても使用できるので、ユーザは、既に保有する低電圧バッテリパック10やその充電器を、有効に活用することができる。
【0042】
図6は、高電圧電動工具100の電気的な構成を変更した一例を示している。この変形例は、図5に示す回路構成に、二つのバイパス回路158を付加したものである。バイパス回路158は、それぞれの低電圧バッテリパック10に対して設けられている。バイパス回路158は、本体102内で、正極入力端子134aと負極入力端子134bを接続している。バイパス回路158には、ダイオード158aが設けられている。即ち、バイパス回路158は、低電圧バッテリパック10の正極出力端子24aと、負極出力端子24bを、ダイオード158aを介して互いに接続している。
【0043】
ダイオード158aのアノードは負極入力端子134bに接続されており、ダイオード158aのカソードは正極入力端子134aに接続されている。従って、通常は、ダイオード158aに電流が流れることはなく、低電圧バッテリパック10の正極出力端子24aと負極出力端子24bは、電気的に切断された状態となっている。その一方で、低電圧バッテリパック10が過放電され、低電圧バッテリパック10の出力端子24a、24b間に逆電圧が発生すると、ダイオード158aに電流が流れる。即ち、バッテリパック10の出力端子24a、24b間が、バイパス回路158を通じて電気的に接続される。それにより、仮に一方の低電圧バッテリパック10のみが過放電されたとしても、その低電圧バッテリパック10が受けるダメージを抑制することができる。なお、バイパス回路158には、ヒューズ158bがさらに設けられており、バイパス回路158に大電流が流れた場合には、バイパス回路158が物理的に切断される。それにより、例えばダイオード158aがツェナー降伏を起こした場合でも、低電圧バッテリパック10の受けるダメージを抑制することができる。
【0044】
図7は、高電圧電動工具100の電気的な構成を変更した他の一例を示している。この変形例は、図5に示す回路構成において、メインコントローラ152の電源を取り出す位置が変更されている。図7に示すように、メインスイッチ178が、低電圧バッテリパック10と電源回路142との間に介在すると、メインスイッチ178がオフされると同時に、メインコントローラ152がシャットダウンされる。それにより、高電圧電動工具100の非作動時において、メインコントローラ152が電力を無用に消費することを禁止することができる。
【0045】
図8は、高電圧電動工具100の電気的な構成を変更した他の一例を示している。この変形例は、図7に示す上記の回路構成に、二つのバイパス回路158を付加したものである。バイパス回路158の構造、機能、及び効果は、先の図6に示す変形例の説明で述べた通りである。
【0046】
次に、図9、図10、図11を参照し、二種類のアダプタ200、300のうち、一方のアダプタ200について説明する。図9に示すように、アダプタ200は、複数の低電圧バッテリパック10を、高電圧電動工具70に接続するための装置である。アダプタ200は、高電圧電動工具70の本体72に着脱可能な本体側ユニット202と、複数の低電圧バッテリパック10が着脱可能なパック側ユニット206と、本体側ユニット202とパック側ユニット206を互いに接続している電気コード204を備えている。パック側ユニット206には、装着用フック206aが設けられており、ユーザの衣服やベルトに装着できるようになっている。
【0047】
図10に示すように、本体側ユニット202は、概して、高電圧バッテリパック30に近似する外形形状を有している。本体側ユニット202には、高電圧バッテリパック30と同じように、コネクタ部220が設けられている。コネクタ部220は、高電圧電動工具70の本体72に設けられたパック取付部80に、スライド挿入することができる。コネクタ部220には、一対のレール222、正極出力端子224a、負極出力端子224b、オートストップ端子226が設けられている。本体側ユニット202をパック取付部80に取り付けると、本体側ユニット202の正極出力端子224aが、パック取付部80の正極入力端子84aに接続され、本体側ユニット202の負極出力端子224bが、パック取付部80の負極入力端子84bに接続される。それにより、本体側ユニット202は、高電圧電動工具70の本体72へ電気的に接続される。また、本体側ユニット202は、パック取付部80のロック受入穴88(図22参照)に係合し、本体側ユニット202をパック取付部80に固定するロック部材212を有している。このロック部材212による固定は、ロック解除ボタン214によって解除することができる。
【0048】
図11に示すように、パック側ユニット206には、二つのパック取付部230が設けられている。各々のパック取付部230は、一つの低電圧バッテリパック10が着脱可能であり、低電圧バッテリパック10をスライド可能に受け入れる。パック取付部230は、一対のレール232、正極入力端子234a、負極入力端子234b、ロック受入穴238を有している。このパック取付部230は、その構造において、先に説明した低電圧電動工具50のパック取付部60と実質的に等しい。二つのパック取付部230は、パック側ユニット206の下面に並んで配置されており、低電圧バッテリパック10が同一方向からそれぞれ挿入される。パック側ユニット206に取り付けられた二つの低電圧バッテリパック10は、コネクタ部220の正極出力端子224a及び負極出力端子224bに対して直列に接続される。それにより、二つの低電圧バッテリパック10は、略36ボルトの電圧によって、高電圧電動工具70の本体72へ電力を供給する。
【0049】
図11に示すように、パック側ユニット206には、二つの表示器260が設けられている。二つの表示器260は、二つのパック取付部230の上部にそれぞれ位置している。各々の表示器260は、一例ではあるが、発光ダイオードである。一方の表示器260は、一方のパック取付部230に取り付けられた低電圧バッテリパック10の充電レベルを表示し、他方の表示器260は、他方のパック取付部230に取り付けられた低電圧バッテリパック10の状態を表示する。各々の表示器260は、対応する低電圧バッテリパック10の充電レベルを表示することができ、特に、その充電レベルが再充電を必要とするレベルに達した時に、発光ダイオードを点灯させることができる。なお、表示器260は、対応する低電圧バッテリパック10の充電レベルを、少なくとも二段階に表示することも好ましい。あるいは、表示器160が、対応する低電圧バッテリパック10の充電レベルに代えて、あるいは、充電レベルに加えて、対応する低電圧バッテリパック10の温度異常を表示することも好ましい。
【0050】
二つの表示器260は、パック側ユニット206の一つの面に、並んで配置されており、その表示方向(即ち、発光ダイオードの発光方向)は同じ方向を向いている。従って、ユーザは、二つの表示器260を同時に視認し、二つの低電圧バッテリパック10の充電レベルを同時に把握することができる。また、それぞれの表示器260は、対応するパック取付部230の上方に配置されている。従って、例えば高電圧電動工具70が突然に停止した場合に、どちらの低電圧バッテリパック10に問題があるのかを、ユーザは直ちに判断することができる。なお、二つの表示器260は、パック側ユニット206に限られず、例えば本体側ユニット202に設けてもよい。二つの表示器260は、ユーザが同時に視認可能な他の位置へ配置することもできる。この場合、二つの表示器260が同一平面に配置されていると、ユーザは二つの表示器260を様々な方向から同時に視認することができる。
【0051】
ここで、表示器260は、各々の低電圧バッテリパック10に設けることもできる。先に説明したように、二つのパック取付部230は、並んで配置されているとともに、低電圧バッテリパック10を同一方向から受け入れる。従って、二つの低電圧バッテリパック10をパック側ユニット206に取り付けた時に、二つの表示器260は、同一平面内に並んで位置するとともに、その表示方向も同じ方向を向くことになる。ユーザは、二つの表示器260を様々な方向から同時に視認することができる。
【0052】
次に、図12を参照し、アダプタ200の電気的な構成について説明する。図12と図5を比較して明らかなように、アダプタ200の回路構成は、先に説明した高電圧電動工具100の本体102の回路構成の一部と実質的に同じである。詳しくは、アダプタ200の回路構成に、高電圧電動工具70の本体72の回路構成を併せたものが、図5に示す高電圧電動工具100の本体102の回路構成と実質的に等しくなる(ただし、パワーFET246を除く)。
【0053】
先ず、高電圧電動工具70の本体72の回路構成について説明する。高電圧電動工具70の本体72は、モータ76、メインスイッチ78、速度調節回路90、パワーFET94、ゲート制御トランジスタ92、及び分圧回路96を備えている。これらに係る構成については、高電圧電動工具100の本体102におけるモータ176、メインスイッチ178、速度調節回路190、パワーFET194、ゲート制御トランジスタ192、及び分圧回路196に係る構成と同じであるので、ここでは説明は省略する。だだし、モータ76には、アダプタ200を介して、二つの低電圧バッテリパック10が直列に接続されている。
【0054】
アダプタ200は、メインコントローラ252、電源回路242、シャント抵抗250、電流検出回路248、放電保護信号入出力回路244、ヒューズ262を備えている。また、メインコントローラ252は、二つの表示器260へ電気的に接続されている。これらに係る構成については、高電圧電動工具100の本体102におけるメインコントローラ152、電源回路142、シャント抵抗150、電流検出回路148、放電保護信号入出力回路144、表示器160、ヒューズ162に係る構成と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0055】
アダプタ200には、パワーFET246がさらに設けられている。パワーFET246は、低電圧バッテリパック10に接続される負極入力端子234bと、高電圧電動工具70に接続される負極出力端子224bとの間に設けられている。即ち、二つの低電圧バッテリパック10をモータ76に接続する回路であって、二つの低電圧バッテリパック10による放電電流が流れる回路上に位置している。メインコントローラ252は、パワーFET246のゲートに接続されており、パワーFET246を制御することができる。例えば、メインコントローラ252は、電流検出回路248からの出力電圧が所定値を超えた時に、パワーFET246をターンオフする。
【0056】
ここで、パワーFET246の機能について説明を補足する。アダプタ200が高電圧電動工具70から取り外されると、アダプタ200のコネクタ部220は外部に露出する状態となる。このとき、アダプタ200に二つの低電圧バッテリパック10が取り付けられていると、コネクタ部220では、正極出力端子224aと負極出力端子224bの間に略36ボルトの電圧が発生する。正極出力端子224aと負極出力端子224bはスリット内に配設されているので、通常、両出力端子224a、224bに異物が接触することはない。しかしながら、両出力端子224a、224bに異物が接触する可能性を完全に否定することはできず、仮に、両出力端子224a、224bが異物によって短絡されたとすれば、低電圧バッテリパック10やアダプタ200の内部で過大な電流が流れてしまう。そこで、本実施形態では、アダプタ200の内部にパワーFET246が設けられおり、アダプタ200が高電圧電動工具70から取り外された状態でも、過大な電流が検出された時には、パワーFET246によって回路を遮断できるように構成されている。
【0057】
メインコントローラ252は、パック取付部230のオートストップ端子236に電気的に接続されており、バッテリコントローラ18からの信号電圧(例えば放電保護信号)を入力し、また、バッテリコントローラ18へ信号電圧(例えば放電保護解除信号)を出力することができる。メインコントローラ252からバッテリコントローラ18へ信号電圧を伝送する導電線路254、及び、バッテリコントローラ18からメインコントローラ252へ信号電圧を伝送する導電線路256には、カットオフスイッチ254a、256aがそれぞれ設けられている。また、高圧側に位置する低電圧バッテリパック10のバッテリコントローラ18については、導電線路254、256にレベルシフタ254b、256bがそれぞれ設けられている。これらの構成については、高電圧電動工具100の本体102におけるカットオフスイッチ254a、256a、レベルシフタ254b、256bに係る構成と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0058】
以上のように、アダプタ200を用いることにより、ユーザは、高電圧電動工具70を、二つの低電圧バッテリパック10によって駆動することが可能となる。二つの低電圧バッテリパック10は、モータ76に対して直列に接続されることで、モータ76へ略36ボルトの電圧を印加する。それにより、定格電圧が36ボルトの高電圧電動工具70を、公称電圧が18ボルトの低電圧バッテリパック10によって駆動することが可能となる。ユーザは、公称電圧が36ボルトの高電圧バッテリパック30やその充電器を新たに購入することなく、既に保有する低電圧バッテリパック10を用いて、高電圧電動工具70を利用することが可能となる。低電圧バッテリパック10は、単独で低電圧電動工具50の電源としても使用できるので、ユーザは、既に保有する低電圧バッテリパック10やその充電器を、有効に活用することができる。
【0059】
図13は、アダプタ200の電気的な構成を変更した一例を示している。この変形例は、図12に示す回路構成に、二つのバイパス回路258を付加したものである。バイパス回路258は、それぞれの低電圧バッテリパック10に対して設けられている。バイパス回路158には、ダイオード158aとヒューズ258bが設けられている。これらのバイパス回路258に係る構成については、図6及び図8に示す高電圧電動工具100の本体102におけるバイパス回路158に係る構成と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0060】
次に、図14、図15、図16を参照し、他方のアダプタ300について説明する。図14に示すように、アダプタ300もまた、複数の低電圧バッテリパック10を、高電圧電動工具70に接続するための装置である。このアダプタ300は、先に説明したアダプタ200とは異なり、一つのハウジングによって構成されている。このアダプタ300は、先に説明したアダプタ200の本体側ユニット202とパック側ユニット206を、一つのハウジングに一体化したものである。なお、このアダプタ300の電気的な構成は、上述したコード接続タイプのアダプタ200のものと同じであり、図12又は図13に示す通りである。
【0061】
図15に示すように、アダプタ300の上面には、コード接続タイプのアダプタ200の本体側ユニット202と同じく、コネクタ部220が設けられている。コネクタ部220は、高電圧電動工具70の本体72に設けられたパック取付部80に、スライド挿入することができる。コネクタ部220には、一対のレール222、正極出力端子224a、負極出力端子224b、オートストップ端子226が設けられている。二種類のアダプタ200、300の間で、コネクタ部220の構造は実質的に同一である。アダプタ300のコネクタ部220をパック取付部80に取り付けると、アダプタ300の正極出力端子224aは、パック取付部80の正極入力端子84aに接続され、アダプタ300の負極出力端子224bは、パック取付部80の負極入力端子84bに接続される。それにより、アダプタ300は、高電圧電動工具70の本体72へ電気的に接続される。
【0062】
図16に示すように、アダプタ300の下面には、コード接続タイプのアダプタ200のパック側ユニット206と同じく、二つのパック取付部230が設けられている。各々のパック取付部230は、一つの低電圧バッテリパック10が着脱可能であり、低電圧バッテリパック10をスライド可能に受け入れる。パック取付部230は、一対のレール232、正極入力端子234a、負極入力端子234b、ロック受入穴238を有している。二種類のアダプタ200、300の間で、パック取付部230の構造は実質的に同一である。二つのパック取付部230は、パック側ユニット206の下面に並んで配置されており、低電圧バッテリパック10が同一方向からそれぞれ挿入される。アダプタ300に取り付けられた二つの低電圧バッテリパック10は、コネクタ部220の正極出力端子224a及び負極出力端子224bに対して直列に接続される。それにより、二つの低電圧バッテリパック10は、略36ボルトの電圧によって、高電圧電動工具70の本体72へ電力を供給することができる。
【0063】
図15に示すように、アダプタ300にも、二つの表示器260が設けられている。二つの表示器260は、アダプタ300の後面300aに配置されている。二つの表示器260は、二つのパック取付部230の上部にそれぞれ位置している。各々の表示器260は、一例ではあるが、発光ダイオードである。一方の表示器260は、一方のパック取付部230に取り付けられた低電圧バッテリパック10の充電レベルを表示し、他方の表示器260は、他方のパック取付部230に取り付けられた低電圧バッテリパック10の状態を表示する。二つの表示器260は、アダプタ300の後面300aに、並んで配置されている。従って、ユーザは、二つの表示器260を同時に視認し、二つの低電圧バッテリパック10の充電レベルを同時に把握することができる。また、それぞれの表示器260は、対応するパック取付部230の上方に配置されている。従って、例えば高電圧電動工具70が突然に停止した場合に、どちらの低電圧バッテリパック10に問題があるのかを、ユーザは直ちに判断することができる。
【0064】
以上のように、アダプタ300を用いることによっても、ユーザは、高電圧電動工具70を、二つの低電圧バッテリパック10によって駆動することが可能となる。二つの低電圧バッテリパック10は、モータ76に対して直列に接続されることで、モータ76へ略36ボルトの電圧を印加する。それにより、定格電圧が36ボルトの高電圧電動工具70を、公称電圧が18ボルトの低電圧バッテリパック10によって駆動することが可能となる。ユーザは、公称電圧が36ボルトの高電圧バッテリパック30やその充電器を新たに購入することなく、既に保有する低電圧バッテリパック10を用いて、高電圧電動工具70を利用することが可能となる。低電圧バッテリパック10は、単独で低電圧電動工具50の電源としても使用できるので、ユーザは、既に保有する低電圧バッテリパック10やその充電器を、有効に活用することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0066】
本明細書では、低電圧電動工具50の一例として電動ドリルを説明し、高電圧電動工具70、100の一例として電動ブロワーを説明したが、本願明細書に開示された技術は、この種の電動工具に限られず、他の種類の電動工具にも広く適用することができる。
【0067】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0068】
10:低電圧バッテリパック
18:バッテリコントローラ
100:高電圧電動工具
102:高電圧電動工具の本体
130:高電圧電動工具のパック取付部
152:高電圧電動工具のメインコントローラ
154a、156a、254a、256a:カットオフスイッチ
154b、156b、254b、256b:レベルシフタ
158:バイパス回路
158a:バイパス回路のダイオード
158b:バイパス回路のヒューズ
160:表示器
176:モータ
200、300:アダプタ
202:アダプタの本体側ユニット
204:アダプタの電気コード
206:アダプタのパック側ユニット
220:アダプタのコネクタ部
230:アダプタのパック取付部
252:アダプタのメインコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が取り付けられる本体と、
本体に収容されているとともに工具を駆動するモータと、
各々に第1バッテリパックが着脱可能であるとともに、取り付けられた複数の第1バッテリパックがモータへ直列に接続される複数の第1パック取付部と、
複数の第1パック取付部に取り付けられた複数の第1バッテリパックの状態をそれぞれ表示する複数の表示器を備え、
複数の表示器は、ユーザが全ての表示器を同時に視認できるように配置されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
表示器は、少なくとも、第1バッテリパックの充電レベルを表示することを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項3】
表示器は、少なくとも、第1バッテリパックの充電レベルが再充電を必要とするレベルに達したことを表示することを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
表示器は、第1バッテリパックの充電レベルを少なくとも二段階に表示することを特徴とする請求項2又は3に記載の電動工具。
【請求項5】
第1バッテリパックは、単独で他の電動工具の電源として使用可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
第1バッテリパックは、第1パック取付部に係合するロック部材を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項7】
第1バッテリパックは、スライド式のバッテリパックであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
複数の第1パック取付部は、複数の第1バッテリパックをそれぞれ同一方向から受け入れることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項9】
複数の第1パック取付部は、前記本体に一体に形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項10】
複数の第1パック取付部が設けられたアダプタをさらに備え、
本体は、第2バッテリパックが着脱可能であるとともに、取り付けられた第2バッテリパックがモータへ接続される第2パック取付部を有し、
アダプタは、第2パック取付部に着脱可能なコネクタ部を有し、複数の第1パック取付部に取り付けられた複数の第1バッテリパックが、コネクタ部へ直列に接続されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項11】
アダプタは、複数の第1パック取付部が設けられたパック側ユニットと、コネクタ部が設けられた本体側ユニットと、パック側ユニットと本体側ユニットを互い接続している電気コードと、を有することを特徴とする請求項10に記載の電動工具。
【請求項12】
第2バッテリパックの公称電圧は、複数の第1バッテリパックの公称電圧の和に等しいことを特徴とする請求項10又は11に記載の電動工具。
【請求項13】
第1パック取付部には第2バッテリパックが取付不能であり、第2パック取付部には第1バッテリパックが取付不能であることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項14】
第1バッテリパックの公称電圧は7ボルト以上であり、電動工具の定格電圧が14ボルト以上であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項15】
第1バッテリパックの公称電圧は18ボルト以上であり、電動工具の定格電圧が36ボルト以上であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項16】
第1バッテリパックの公称電圧は18ボルトであり、電動工具の定格電圧が36ボルトであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項17】
第1バッテリパックは、直列に接続された複数のリチウムイオン電池セルを有することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項18】
第1バッテリパックは、直列に接続された少なくとも五本のリチウムイオン電池セルを有することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項19】
工具が取り付けられる本体と、
本体に収容されているとともに工具を駆動するモータと、
各々に第1バッテリパックが着脱可能であるとともに、取り付けられた複数の第1バッテリパックがモータへ直列に接続される複数の第1パック取付部を備え、
第1バッテリパックの公称電圧は18ボルト以上であり、定格電圧が36ボルト以上であることを特徴とする電動工具。
【請求項20】
第1バッテリパックは、少なくとも、直列に接続された五本のリチウムイオン電池セルを有することを特徴とする請求項19に記載の電動工具。
【請求項21】
第1バッテリパックは、十本のリチウムイオン電池セルを有し、その十本のリチウムイオン電池セルは、二本ずつが並列に接続されて五組のセル群を形成し、その五組のセル群が直列に接続されていることを特徴とする請求項20に記載の電動工具。
【請求項22】
第1バッテリパックは、単独で他の電動工具の電源として使用可能であることを特徴とする請求項19から21のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項23】
複数の第1パック取付部は、前記本体に一体に形成されていることを特徴とする請求項19から22のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項24】
複数の第1パック取付部が設けられたアダプタをさらに備え、
本体は、第2バッテリパックが着脱可能であるとともに、取り付けられた第2バッテリパックがモータへ接続される第2パック取付部を有し、
アダプタは、第2パック取付部に着脱可能なコネクタ部を有し、複数の第1パック取付部に取り付けられた複数の第1バッテリパックが、コネクタ部へ直列に接続されることを特徴とする請求項19から23のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項25】
アダプタは、複数の第1パック取付部が設けられたパック側ユニットと、コネクタ部が設けられた本体側ユニットと、パック側ユニットと本体側ユニットを互い接続している電気コードと、を有することを特徴とする請求項24に記載の電動工具。
【請求項26】
第2バッテリパックの公称電圧は、複数の第1バッテリパックの公称電圧の和に等しいことを特徴とする請求項24又は25に記載の電動工具。
【請求項27】
第1パック取付部には第2バッテリパックが取付不能であり、第2パック取付部には第1バッテリパックが取付不能であることを特徴とする請求項24から26のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項28】
電動工具は、園芸用の電動工具であることを特徴とする請求項19から27のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項29】
電動工具の本体と複数の第1バッテリパックを接続するアダプタであって、ここで、電動工具の本体は、第2バッテリパックが着脱可能であるとともに、取り付けられた第2バッテリパックがモータへ接続される第2パック取付部を有しており、
そのアダプタは、
各々に第1バッテリパックが着脱可能な複数の第1パック取付部と、
第2パック取付部に着脱可能なコネクタ部を備え、
複数の第1パック取付部に取り付けられた複数の第1バッテリパックが、コネクタ部へ直列に接続されることを特徴とするアダプタ。
【請求項30】
複数の第1パック取付部が設けられたパック側ユニットと、コネクタ部が設けられた本体側ユニットと、パック側ユニットと本体側ユニットを互い接続している電気コードと、を有することを特徴とする請求項29に記載のアダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−161602(P2011−161602A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29505(P2010−29505)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】