複数のワクチンを経皮送達するための装置及び方法
角質層を通ってその下にある表皮層、又は表皮層及び真皮層中に穿孔するように適合された多数の微小突起を含む微小突起アレイを有する送達システムを含む免疫学的に活性な物質を経皮送達するための装置及び方法であって、微小突起アレイは多数のアレイ領域を有し、各アレイ領域はその上に曝されている異なる生体適合性のコーティングを有し、少なくとも1つのアレイ領域のコーティングは免疫学的に活性な物質を含む。一実施形態では、アレイ領域上の各コーティングは、異なる免疫学的に活性な物質を含む。別の一実施形態では、第1のアレイ領域上の生体適合性のコーティングは免疫学的に活性な物質を含み、第2のアレイ領域上の生体適合性のコーティングは免疫反応増強アジュバントを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年4月13日に出願された米国仮出願第60/561953号の権利を主張するものである。
【0002】
本発明は、概ね、経皮の物質の送達システム及び方法に関する。より詳しくは、本発明は、複数のワクチンを経皮送達するための装置、方法、及び製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
有効物質(又は薬物)は、最も慣例的には、経口的又は注射のいずれかにより投与される。残念なことに、有効物質を経口投与した場合は、吸収されず、又は血流に入る前に有害な影響を受け、したがって望ましい活性を有しないので、多くの有効物質は完全に無効であり、又は根本的に有効性は減少する。一方、投与の間に物質が変更されないことを確実にする一方で物質を血流中に直接注射することは、困難で、不便で、苦痛があり、不快な手順であり、時として患者のコンプライアンスが低下する結果となる。
【0004】
したがって、原則として、経皮送達は、他の方法では皮下注射又は静脈内注入により送達する必要がある有効物質を投与する方法を提供する。本明細書で用いる「経皮」は、手術用ナイフによる切断又は皮下注射針での皮膚の穿孔など、実質的に皮膚を切断又は貫通せずに、皮膚を通して有効物質(例えば、薬物などの治療用物質、又はワクチンなどの免疫学的に活性な物質)を局所の組織又は全身の循環系へ送達することを意味する一般的な語である。経皮の物質の送達は、受動拡散による送達、並びに、電気(例えば、イオン泳動)及び超音波(例えば、音波泳動法)など外部のエネルギー源に基づく送達を含む。
【0005】
受動的な経皮の物質の送達システムはより一般的であり、典型的には高濃度の有効物質を含む薬物貯蔵槽(リザバー、reservoir)を含む。貯蔵槽は皮膚に接触するように適合され、物質が皮膚を通して患者の身体組織中又は血流中に拡散することを可能にする。
【0006】
当技術分野ではよく知られているが、経皮の薬物の流れは皮膚の状態、薬物分子の大きさ及び物理学的/化学的特性、並びに皮膚を横切る濃度勾配に依存している。多くの薬物に対する皮膚の浸透性は低いので、経皮送達の応用は限られていた。このように浸透性が低いのは、主に、脂質2重層に取り囲まれたケラチン繊維(即ち、ケラチン細胞)で満たされた、扁平な死細胞からなる最も外側の皮膚の層である角質層のためとされている。この、高度に整った脂質2重層の構造により、角質層に比較的不浸透性の特徴が付与される。
【0007】
当技術分野ではよく知られているが、皮膚は、身体を外部の危険から保護する物理的なバリアであるだけではなく、免疫系の不可欠の部分でもある。皮膚の免疫機能は、皮膚免疫系として集合的に知られている、生得の及び獲得の免疫機能の両者を有する在住の細胞の及び上腕の生存能力のある表皮及び真皮の成分の集合から生じるものである。
【0008】
皮膚の免疫系の最も重要な構成成分の1つは、ランゲルハンス細胞(LC)であり、生存能力のある表皮に見られる特殊化した抗原提示細胞である。LCは、周囲の細胞の間に樹状突起の分枝を拡張することより、生存能力のある表皮に半連続的な網状組織を形成する。LCの正常の機能は、侵略する病原体への免疫反応を喚起するために、抗原を検出し、捕らえ、提示することである。LCは、皮膚上の抗原を内側に取り込み、局所の皮膚排出性のリンパ節に輸送し、加工処理した抗原をT細胞に提示することにより、その機能を行う。
【0009】
皮膚の免疫系の有効性が一因となって、皮膚を標的とするワクチン戦略が成功し安全となっている。皮膚を傷つけて生の弱毒化した天然痘ワクチンを種痘することにより、致死的な天然痘の疾患の世界的な根絶がもたらされ成功している。様々なワクチンの標準のIM投与量の1/5から1/10を用いた皮内注射は、数々のワクチンで免疫反応を誘発するのに有効であり、低投与量の狂犬病ワクチンが、皮内適用のために商業的にライセンスされている。
【0010】
しかし、物理化学的な観点から、多くのワクチン製剤が配合禁忌であることはよく知られている。これらのワクチンを投与するためには、これらを注射時に混合し、又は皮下注射により送達しなければならない。
【0011】
代替として、経皮送達は、その他の方法では皮下注射、静脈内注入、又は経口的に送達する必要のある生物学的に活性な物質、特にワクチンを投与する方法を提供する。経皮送達は、これらの領域の両方に改善をもたらしている。経皮送達は、経口送達に比べると、消化管の厳しい環境を避け、胃腸管の薬物代謝を回避し、初回通過効果を低減し、消化酵素及び肝臓の酵素による不活性化の可能を避けるものである。消化管はまた、経皮投与の間はワクチンに曝されない。しかし、多くの場合、多くの生物学的に活性な物質の、伝統的な受動的な経皮の経路による送達又は流れの速度は大変制限されているため、免疫学的に有効であることはできない。
【0012】
受動的な経皮の拡散の物質の流れを増大させる一般的な方法の1つは、皮膚浸透増強剤である物質で皮膚を前処理し、又は皮膚浸透増強剤と同時送達することに関する。浸透増強剤を、そこを通して物質が送達される身体の表面に施用すると、そこを通過する物質の流れを向上させる。しかし、経皮のタンパク質の流れを向上させるこれらの方法の有効性は、少なくとも、その大きさにより、より大型のタンパク質に限られている。
【0013】
経皮送達をする物質の量を増大するために、最も外側の皮膚の層を機械的に貫通し又は破壊し、それによって、皮膚中への経路を作り出すための多くの技術及びシステムも開発されている。初期のワクチン装置は、スカルファイア(scarfier)で知られており、皮膚に施用し、施用した領域に掻き傷をつけ、又は小さな傷口を作る多数の歯又は針を一般的に含むものである。米国特許第5487726号に開示されているように、ワクチンを皮膚上に局所的に施用し、又は米国特許第4453926号、第4109655号、及び第3136314号に開示されているように湿潤した液体をスカルファイアの歯に施用する。
【0014】
スカルファイアが経皮のワクチンの送達に提案されているのは、一部には、患者を免疫化するのに有効であるように皮膚中に送達する必要があるワクチンが大変少量にすぎないからである。さらに、過剰な量でも十分な免疫化を達成するので、送達されるワクチンの量は特に決定的ではない。
【0015】
しかし、ワクチンなどの有効物質を送達するためにスカルファイアを使用する重大な欠点は、経皮の物質の流れ、及び結果として生じる送達される投与量を決定することが困難なことである。また、皮膚には、弾力性があり、変形し、弾力のある性質があって穿刺をそらせ抵抗するため、小さな穿孔性の要素は、しばしば、皮膚を均一に貫通せず、且つ/又は皮膚の貫通に際し物質の液体コーティングは拭われてなくなる。
【0016】
さらに、皮膚の自己治癒の過程により、皮膚に作られた穿刺又は切れ目は、角質層から穿孔性の物質を除去した後に閉じる傾向がある。したがって、皮膚の弾力性の性質は、これらの要素を皮膚中に貫通する際に小さな穿孔性の要素に施用されていた有効物質の液体コーティングを除去するように働く。さらに、穿孔性の要素により形成された小さな切り口は装置を除去した後速やかに治癒し、したがって液体物質の溶液が、穿孔性の要素により作られた通路を通って通過することを制限し、次にこのような装置の経皮の流れを制限する。
【0017】
経皮の物質の送達を向上させるための、小さな皮膚穿孔性の要素を使用している、他のシステム及び器具は、米国特許第5879326号、第3814097号、第527954号、第5250023号、第3964482号、再発行第25637号、並びにPCT公開番号WO第96/37155号、WO第96/37256号、WO第96/17648号、WO第97/03718号、WO第98/11937号、WO第98/00193号、WO第97/48440号、WO第97/48441号、WO第97/48442号、WO第98/00193号、WO第99/64580号、WO第98/28037号、WO第98/29298号、及びWO第98/29365号に開示されており、全てその全文が本明細書に参照として組み入れられる。
【0018】
開示されているシステム及び器具は、皮膚の最も外側の層(即ち、角質層)を穿孔するために様々な形状及び大きさの穿孔性要素を使用している。これらの参照に開示されている穿孔性要素は、一般的に、パッド又はシートなどの薄型の平らな部材から垂直に延びている。いくつかのこれらの装置の穿孔性要素は非常に小さく、微小突起の長さは約25〜400ミクロンにすぎず、微小突起の厚さは約5〜50ミクロンにすぎないものもある。これらの小さな穿孔性/切断性の要素が、そこを通った経皮の物質の送達を向上させるために角質層に相応に小さい微小の切れ目/微小の切り口を作る。
【0019】
開示するシステムは、物質を保持するための貯蔵槽、及び物質を貯蔵槽から角質層を通して輸送するための送達システム、例えば、装置自身の中空の歯によるものなどをさらに典型的に含む。このような装置の一例は、液体物質の貯蔵槽を有するWO第93/17754号に開示されている。しかし、この貯蔵槽は、小さい管状の要素を通し皮膚中に液体物質を無理に入れるように加圧しなければならない。このような装置の欠点には、圧力で動かす送達システムが存在することにより、加圧可能な液体の貯蔵槽及び複雑化を加えるためのさらなる面倒な問題及び費用が含まれる。
【0020】
その全文が本明細書に参照として組み込まれる米国特許出願第10/045842号に開示されているように、送達すべき有効物質を、物理的な貯蔵槽に含む代わりに微小突起上にコーティングすることも可能である。これにより、別の物理的な貯蔵槽の必要性、及び物質の製剤又は組成物を貯蔵槽用に特に開発する必要性が排除される。
【0021】
しかし、コーティングされた微小突起システムの欠点は、コーティングの厚さが増大すると共に、角質層を貫通する微小突起(及びそのアレイ)の能力が低下するので、送達される有効物質、特に免疫学的に活性な物質の最大量が制限されることである。さらなる欠点は、現在入手できるコーティングされた微小突起システムは、1つの有効物質の送達に制限されるということである。
【0022】
したがって、複数の生物学的に活性な物質、特に免疫学的に活性な物質を、コーティングされた微小突起により経皮送達するための器具及び方法を提供することが望ましい。
【0023】
物理化学的観点から配合禁忌であることがあるいくつかのワクチンを、同時に投与するための便利な方法を提供することも好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の目的のひとつは、先行技術の免疫学的に活性な物質の送達方法及びシステムに付随する欠点及び不利な点を実質的に低減し又は取り除く、複数の免疫学的に活性な物質の同時の経皮送達のための器具及び方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、様々な生体適合性のコーティングでコーティングされ、各コーティングが異なるワクチンを含む多数のアレイ領域を有する微小突起アレイを含む、複数のワクチンを実質的に同時に経皮送達するための器具及び方法を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、多数の微小突起を有する微小突起アレイを含み、多数の微小突起の少なくとも2つが、その上に配置された異なるワクチン、又はワクチンとアジュバントとを有する、異なる生体適合性のコーティングでコーティングされている、複数のワクチンを実質的に同時に経皮送達するための器具及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的、及びこれから言及し以下で明らかになるように、本発明の一実施形態の複数の免疫学的に活性な物質を経皮送達するための器具及び方法は、概ね、角質層を通って、下にある表皮層、又は表皮層及び真皮中に穿孔するように適合された多数の微小突起を含む微小突起アレイを有する送達システムを含み、微小突起アレイは多数のアレイ領域を有し、少なくとも2つのアレイ領域はその上に配置されている異なる生体適合性のコーティングを有し、少なくとも1つのアレイ領域のコーティングは少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含む。
【0028】
一実施形態では、各アレイ領域上の生体適合性のコーティングは、免疫学的に活性な異なる物質を含む。
【0029】
別の一実施形態では、第1のアレイ領域の生体適合性のコーティングは、免疫学的に活性な物質を含み、第2のアレイ領域の生体適合性のコーティングはアジュバントを含む。
【0030】
好ましくは、免疫学的に活性な物質は、ウイルス及び細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、核酸ベースのワクチン、及び免疫反応増強性のアジュバントからなる群から選択される抗原物質又はワクチンを含む。
【0031】
適切な抗原物質には、限定することなく、タンパク質、多糖類複合体、オリゴ糖、及びリポタンパク質の形態の抗原が含まれる。これらのサブユニットワクチンには、百日咳菌(Bordetella pertussis)(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(Clostridium tetani)(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(Group A Streptcoccus)(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(合成ペプチド)、風疹(Rubella)ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella zoster)(サブユニット、糖タンパク質)、及びコレラ菌(Vibrio cholerae)(複合体リポ多糖)が含まれる。
【0032】
全てのウイルス又は細菌には、限定することなく、弱体化、又は死滅ウイルス、例えば、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、及び水痘帯状疱疹、弱体化、又は死滅細菌、例えば、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、及びコレラ菌、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0033】
抗原物質を含む、さらなる市販のワクチンには、限定することなく、インフルエンザワクチンを含むインフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風ワクチン、チフスワクチン、ライノウイルスワクチン、B型インフルエンザ菌ワクチン、ポリオワクチン、肺炎連鎖球菌ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、RSUワクチン、ヘルペスワクチン、HIVワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン(A、B、及びD型を含む)、及びジフテリアワクチンが含まれる。
【0034】
核酸を含むワクチンには、限定することなく、1本鎖及び2本鎖の核酸、例えば、スーパーコイルプラスミドDNA;線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC);酵母菌人工染色体(YAC);哺乳動物人工染色体;並びにRNA分子、例えばmRNAが含まれる。核酸は、タンパク質性の物質と結合していることもあり、又は、例えばホスホロチオエート部分などの1つ又は複数の化学修飾を含むこともある。
【0035】
ワクチンの抗原と共にワクチンを含むことができる、適切な免疫反応増強アジュバントには、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、藻類のグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、β−グルカン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、及びスレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2、IL−12、IL−15が含まれる。アジュバントは、例えば、CpG含有オリゴヌクレオチドなどのDNAオリゴヌクレオチドも含む。さらに、IL−18、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質などの免疫調節リンホカインをコードする核酸配列を用いることができる。
【0036】
免疫反応増強アジュバントは、ワクチンの抗原と別に、又は一緒に配合することができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、微小突起アレイは、少なくとも約10微小突起/cm2の、好ましくは少なくとも約100微小突起/cm2の、より好ましくは少なくとも約200〜3000微小突起/cm2の範囲の微小突起密度を有する。
【0038】
好ましくは、微小突起は、145ミクロン未満の、より好ましくは約50〜145ミクロンの範囲の、さらにより好ましくは約70〜140ミクロンの範囲の突起の長さを有する。
【0039】
一実施形態では、微小突起アレイは、ステンレススチール、チタン、ニッケルチタン合金、又は同様の生体適合性の材料から構築される。
【0040】
代替の一実施形態では、微小突起アレイは、非導電性の材料、例えばポリマーから構築される。或いは、微小突起アレイを、非伝導性の材料、例えば、Parylene(登録商標)でコーティングすることができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、各々の生体適合性のコーティングは、厚さが100ミクロン未満であることが好ましい。好ましい実施形態では、各々の生体適合性のコーティングは、厚さが約2〜50ミクロンの範囲である。
【0042】
本発明の固体の生体適合性のコーティングを形成するために微小突起アレイ領域に施用するコーティング製剤は、少なくとも1つの実施形態で、少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含む水性又は非水性の製剤を含むことができる。好ましい一実施形態では、コーティング製剤は水性の製剤を含む。
【0043】
本発明の一実施形態では、各コーティング製剤は、双性、両性、陽イオン性、陰イオン性、又は非イオン性であることができる少なくとも1つの界面活性剤を含む。適切な界面活性剤には、限定することなく、ラウリルアムホアセテートナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(TMAC)、塩化ベンザルコニウム、Tween20及びTween80などのポリソルベート、ラウリン酸ソルビタンなどの他のソルビタン誘導体、並びにラウレス−4などのアルコキシル化アルコールが含まれる。
【0044】
本発明のさらなる一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、両親媒性の特性を有する少なくとも1つのポリマー材料又はポリマーを含む。両親媒性の特性を有する適切なポリマーには、限定することなく、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、又はエチルヒドロキシ−エチルセルロース(EHEC)、並びにプルロニックが含まれる。
【0045】
本発明の一実施形態では、コーティング製剤における両親媒性の特性を表すポリマーの濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.001〜70重量%の範囲、より好ましくは約0.01〜50重量%の範囲、さらにより好ましくは約0.03〜30重量%の範囲である。
【0046】
別の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、以下の群から選択される少なくとも1つの親水性ポリマーを含む:ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物、などのポリマー。
【0047】
好ましい一実施形態では、コーティング製剤における親水性ポリマーの濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.001〜90重量%の範囲、より好ましくは約0.01〜20重量%の範囲、さらにより好ましくは約0.03〜10重量%の範囲である。
【0048】
本発明の別の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、生体適合性の担体を含み、生体適合性の担体は、限定することなく、ヒトアルブミン、バイオ操作したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、ショ糖、トレハロース、メレチトース、ラフィノース、及びスタキオースを含む。
【0049】
好ましくは、コーティング製剤における生体適合性の担体の濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.001〜90%の範囲、より好ましくは約2〜70重量%の範囲、さらにより好ましくは約5〜50重量%の範囲である。
【0050】
さらなる一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は安定化剤を含み、安定化剤には、限定することなく、非還元糖、多糖類、還元糖、又はDNase阻害薬が含まれ得る。
【0051】
別の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤には、限定することなく、アミデフリン、カファミノール(cafaminol)、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン(nordefrin)、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノラミン、フェニルプロパノラミン、プロピルヘキセドリン、シュードエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン(tymazoline)、バソプレシン、キシロメタゾリン、及びこれらの混合物を含むことができる血管収縮薬が含まれる。最も好ましい血管収縮薬には、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリン、及びキシロメタゾリンが含まれる。
【0052】
血管収縮薬を使用する場合の濃度は、コーティング製剤の約0.1重量%から10重量%の範囲であることが好ましい。
【0053】
本発明のまた別の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、少なくとも1つの「通路開放性モジュレーター」を含み、「通路開放性モジュレーター」は、限定することなく、浸透圧剤(例えば、塩化ナトリウム)、双性イオン化合物(例えば、アミノ酸)、並びに、抗炎症薬、例えば、ベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−リン酸二ナトリウム、塩酸ヒドロコルメート、ヒドロコルチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾンリン酸二ナトリウム、及びプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩;並びに抗凝固薬、例えば、クエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、硫酸デキストリンナトリウム、アスピリン、及びEDTAが含まれ得る。
【0054】
好ましくは、本発明の各コーティング製剤の粘度は約5ポアズ未満であり、より好ましくは約0.3〜2.0ポアズの範囲である。
【0055】
本発明の一実施形態によると、複数の免疫学的に活性な物質を同時に送達するための方法には以下:(i)多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、微小突起アレイは多数のアレイ領域を有するステップと、(ii)第1のアレイ領域における少なくとも第1の微小突起を、第1の免疫学的に活性な物質を有する第1の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、(iii)第2のアレイ領域における少なくとも第2の微小突起を、第2の免疫学的に活性な物質を有する第2の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、(iv)コーティングされた微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップとが含まれる。
【0056】
本発明のさらなる一実施形態によると、複数の免疫学的に活性な物質を送達するための方法には以下:(i)多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、微小突起アレイは少なくとも第1及び第2のアレイ領域を有するステップと、(ii)第1のアレイ領域を第1の生体適合性のコーティングでコーティングし、第1の生体適合性のコーティングは免疫学的に活性な物質を含むステップと、(iii)第2のアレイ領域を第2の生体適合性のコーティングでコーティングし、第2の生体適合性のコーティングは免疫反応増強アジュバント含むステップと、(iv)コーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップとが含まれる。
【0057】
添付の図面で説明するように、本発明の好ましい実施形態の以下の、及びより詳しい記載から、さらなる特徴及び利点が明らかになるであろう。添付の図面では、参照符号は、図の全体にわたり、同じ部分又は要素を一般的に指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明を詳しく記載する前に、本発明は、特に例示した材料、製剤、方法、又は構造に限定されず、当然変わることがあることを理解されたい。したがって、好ましい材料及び方法を本明細書に記載するが本明細書に記載されているものと同様又は同等の数々の材料及び方法を、本発明を実行するのに用いることができる。
【0059】
本明細書で用いられる用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的のためにすぎず、限定的であることを意図しないことも理解されたい。
【0060】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0061】
さらに、本明細書に引用する全ての出版物、特許、及び特許出願は、上記のものも下記のものも、その全文が参照として本明細書に組み入れられる。
【0062】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられる単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、他の方法で内容が明らかに述べられていない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「1つの免疫学的に活性な物質」に対する対照物は、2つ以上のそのような物質を含み、「1つの微小突起」に対する対照物は、2つ以上のそのような微小突起などを含む。
【0063】
定義
本明細書で用いられる「経皮の」は、局所の又は全身の治療のために、皮膚中への、且つ/又は皮膚を通した物質の送達を意味する。
【0064】
本明細書で用いられる「経皮の流れ」は、経皮の送達の速度を意味する。
【0065】
本明細書で用いられる「同時送達」は、物質が送達される前に、物質の経皮の流れの前及び間中に、物質の経皮の流れの間中に、物質の経皮の流れの間中及び後に、且つ/又は物質の経皮の流れの後に、追加の物質を経皮的に送達することを意味する。さらに、2つ以上の免疫学的に活性な物質を、本発明の1つの生体適合性のコーティングに配合することができ、様々な免疫学的に活性な物質の1つのアレイ領域からの同時送達をもたらす。
【0066】
本明細書で用いられる「生物学的に有効な物質」は、治療上有効な量を投与した場合に薬理学的に有効である有効物質又は有効薬物を含む物質又は混合物の組成物を意味する。そのような有効物質の例には、限定することなく、小分子量の化合物、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸、及び多糖類が含まれる。
【0067】
本明細書で用いられる「免疫学的に活性な物質」は、抗原物質を含む物質若しくは混合物の組成物、及び/又は、免疫学的に有効な量で投与した場合に有益な免疫反応を誘発することができるあらゆる供給源に由来する「ワクチン」を意味する。免疫学的に有効な物質の例には、限定することなく、ウイルス及び細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、及び核酸ベースのワクチンが含まれる。
【0068】
適切な免疫学的に活性な物質には、限定することなく、タンパク質、多糖類複合体、オリゴ糖、及びリポタンパク質の形態の抗原が含まれる。これらのサブユニットワクチンには、百日咳菌(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、及びコレラ菌(複合体リポ多糖)が含まれる。
【0069】
全てのウイルス又は細菌には、限定することなく、弱体化又は死滅ウイルス、例えば、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹、弱体化又は死滅細菌、例えば、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、及びコレラ菌、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0070】
本発明に有用性も有する抗原物質を含む数々の市販のワクチンには、限定することなく、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、及びジフテリアワクチンが含まれる。
【0071】
本発明の方法により送達することもできる核酸を含むワクチンには、限定することなく、例えばスーパーコイルプラスミドDNAなどの1本鎖核酸及び2本鎖核酸、線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、及び、例えば、mRNAなどのRNA分子が含まれる。核酸の大きさは、数千キロベースまでであることができる。核酸は、また、タンパク質性の物質と結合していてもよく、又は、例えば、ホスホロチオエート部分などの1つ又は複数の化学修飾を含んでいてもよい。
【0072】
適切な免疫反応増強アジュバントは、ワクチンの抗原と共に、限定することなく、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、藻類のグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、β−グルカン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、及びスレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2、IL−12、IL−15含むワクチンを含むことができる。アジュバントは、例えばCpG含有オリゴ糖などのDNAオリゴヌクレオチドも含む。さらに、IL−18、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質などの免疫調節リンホカインをコードする核酸配列を用いることができる。
【0073】
本明細書で用いられる「生物学的に有効な量」又は「生物学的に有効な速度」は、望ましい免疫学的な、しばしば有益な結果を刺激し又は開始するのに必要とされる免疫学的に活性な物質の量又は速度を意味する。本発明のコーティングに使用される免疫学的に活性な物質の量は、望ましい免疫学的な結果を達成するのに必要とされる免疫学的に活性な物質の量を送達するのに必要な量である。実際には、これは、送達される特定の免疫学的に活性な物質、送達部位、並びに免疫学的に活性な物質の皮膚組織中への送達の解離及び遊離の動力学に応じて幅広く変わる。
【0074】
当業者であれば理解するであろうが、各アレイ領域から送達される免疫学的に活性な物質の投与量は、微小突起アレイ(又はパッチ)の大きさ、密度などを変更することにより、変化し、又は操作することもできる。
【0075】
本明細書で用いられる「コーティング製剤」は、微小突起及び/又はアレイ領域をコーティングするために使用される、自由に流動する組成物又は混合物を意味し含むものとされる。
【0076】
本明細書で用いられる「生体適合性のコーティング」及び「固体コーティング」は、実質的に固体の状態の「コーティング製剤」を意味し含むものとされる。
【0077】
本明細書で用いられる「微小突起」は、生存する動物、詳しくは哺乳動物、より詳しくはヒトの皮膚の角質層を通してその下にある、表皮層、又は表皮層及び真皮層注に穿孔し、又は貫通するように適合された穿孔性の要素を意味する。
【0078】
本発明の一実施形態では、穿孔性の要素の突起の長さは1000ミクロン未満である。さらなる一実施形態では、穿孔性の要素の突起の長さは500ミクロン未満であり、より好ましくは250ミクロン未満である。微小突起は、さらに約25〜500ミクロンの範囲の幅(図1で「W」と示した)、及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有する。微小突起は、針、刃、ピン、パンチ、及びそれらの組合せなどの様々な形状で形成することができる。
【0079】
出血及び刺激を最小にするために適合されたさらなる一実施形態では、微小突起の突起の長さは、好ましくは145ミクロン未満であり、より好ましくは約50〜145ミクロンの範囲であり、さらにより好ましくは約70〜140ミクロンの範囲である。
【0080】
本明細書で用いられる「微小突起アレイ」及び「微小突起部材」は、角質層を穿孔するためのアレイに配置されている多数の微小突起を一般に意味する。微小突起アレイは、薄いシートから多数の微小突起をエッチングし、又は穴開けし、1枚のシートから図1に示すような形状を形成するように微小突起を折り、又は曲げることにより形成することができる。微小突起アレイは、他の周知のやり方で、例えば、その全文が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6050988号に開示されているように、それぞれのストリップの縁に沿って微小突起を有する1つ又は複数のストリップを形成することにより、形成することもできる。
【0081】
上記に記載したように、本発明は、角質層を通してその下にある表皮層、又は表皮層及び真皮層中に穿孔するように適合された多数の微小突起を含む微小突起アレイを有する送達システムを含む、複数の免疫学的に活性な物質を経皮送達するための器具及び方法を含み、微小突起アレイは多数のアレイ領域を有し、少なくとも2つのアレイ領域はそこに配置されている異なる生体適合性のコーティングを有し、少なくとも1つのコーティングは、少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含む。
【0082】
本発明の一実施形態では、少なくとも第1のアレイ領域コーティングは第1の免疫学的に活性な物質を含み、少なくとも第2のアレイ領域コーティングは免疫反応増強アジュバントを含む。
【0083】
別の一実施形態では、第1のアレイ領域コーティングは第1の免疫学的に活性な物質を含み、第2のアレイ領域コーティングは第2の免疫学的に活性な物質を含む。
【0084】
好ましい一実施形態では、第1及び第2の免疫学的に活性な物質は異なる。
【0085】
本発明によると、皮膚の角質層を穿孔する際、各アレイ領域の生体適合性のコーティングは体液(細胞内液、及び組織液などの細胞外液)により溶解され、免疫学的に活性な物質又は物質類は全身の治療のために皮膚中に遊離される(即ち、ボーラス(bolus)送達)。
【0086】
当業者であれば理解するであろうが、本発明は、このように、物理化学的観点から相容性でも配合禁忌でも、複数のワクチンを投与するための便利且つ高度に効率のよい方法を提供する。
【0087】
本発明によると、各コーティングの解離及び遊離の動力学は、免疫学的に活性な物質の性質、コーティングプロセス、コーティングの厚さ、及びコーティング組成物(例えば、コーティング製剤添加物の存在)を含めた多くの要因に依存している。遊離の動力学プロファイルに応じて、皮膚と穿孔性の関係にコーティングした微小突起を長時間維持することが必要であり得る。これは、接着性のもの(即ち、接着性の層)を用いて微小突起部材を皮膚に固定することにより、又は、図4に示したような、及びその全文が参照として本明細書に組み入れられるWO第97/48440号に記載されているような固定された微小突起を用いることにより実現することができる。
【0088】
次に図1及び図2を参照すると、本発明で使用するための微小突起部材(又はパッチ)30の一実施形態が示されている。図1で説明するように、微小突起部材30は、多数の微小突起34を有する微小突起アレイ32を含む。微小突起34は、好ましくはシート36から実質的に90°の角度で延びており、記されている実施形態では開口部38を含む(図2を参照されたい)。
【0089】
本発明によると、シート36を、シート36に対する裏当て40を含む送達パッチ中に組み入れることができ、パッチを皮膚に付着させるための付着ストリップ(図示せず)をさらに含むことができる(図3を参照されたい)。この実施形態では、微小突起34は、薄い金属シート36からの多数の微小突起34をエッチングし、又は穴開けすることにより、また、1枚のシート36から微小突起34を曲げることにより形成される。
【0090】
本発明の別の一実施形態では、微小突起アレイ32の微小突起密度は、少なくとも約10微小突起/cm2であり、好ましくは少なくとも約100微小突起/cm2であり、より好ましくは少なくとも約200〜3000微小突起/cm2の範囲である。また好ましくは、それを通して物質が通過する単位面積あたりの開口部の数は、少なくとも約10開口部/cm2、及び約3000開口部/cm2未満である。
【0091】
示したように、微小突起34の突起の長さは、1000ミクロン未満であることが好ましい。一実施形態では、微小突起34の突起の長さは500ミクロン未満であり、より好ましくは250ミクロン未満である。また、微小突起34の幅は、約25〜500ミクロンの範囲であり、厚さは約10〜100ミクロンの範囲であることが好ましい。現在好ましい位置実施形態では、微小突起の長さは約50〜145ミクロンの範囲であり、より好ましくは約70〜140ミクロンの範囲である。
【0092】
次に図4を参照すると、本発明の範囲内で使用することができる微小突起部材50の別の一実施形態が示してある。微小突起部材50は、同様に多数の微小突起54を有する微小突起アレイ52を含む。微小突起54は、好ましくはシート51から実質的に90°の角度で延びており、シート51は同様に開口部56を含む。
【0093】
図4で説明するように、微小突起54のいくつかは、主要な縁部に近接して配置されている保持部材又はアンカー58を含む。上記に記載したように、保持部材58は微小突起部材50が対象の皮膚に付着するのを容易にする。
【0094】
微小突起部材(例えば、30、50)及び/又はアレイは、ステンレススチール、チタン、ニッケルチタン合金、又は同様の生体適合性の材料などの様々な金属から製造することができる。微小突起部材をチタンから製造することが好ましい。
【0095】
本発明によると、微小突起部材及びアレイを、ポリマーなどの非伝導性の材料から構築することもできる。或いは、微小突起部材及び/又はアレイを、Parylene(登録商標)などの非伝導性の材料、又はTeflon(登録商標)、シリコン、若しくは他の低エネルギー材料などの疎水性材料でコーティングすることができる。記されている疎水性材料及び関連するベースの(例えば、光レジスト)層は、本明細書に参照として組み入れられる米国仮特許出願第60/484142号に述べてある。
【0096】
本発明で使用することができる微小突起部材及びアレイには、それだけには限定されないが、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、米国特許第6083196号、第6050988号、及び第6091975号、並びに米国特許公開第2002/0016562号に開示されている部材が含まれる。
【0097】
本発明で使用することができる他の微小突起部材及びアレイには、シリコンチップエッチング技術を用いてシリコンをエッチングすることにより、又はその全文が本明細書に参照として組み入れられる米国特許第5879326号に開示されている部材など、エッチングしたマイクロモールドを用いてプラスチックを成型することにより形成された部材が含まれる。
【0098】
次に図5〜7を参照すると、様々なアレイ領域パターンを有する様々な微小突起アレイ60a、60b、60cが示されている。アレイ60a、60b、60c及びそれらに関連するアレイのパターンは、例示のパターンにすぎず、したがって、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。事実、当業者であれば理解するであろうが、微小突起アレイ及びパターンは、様々な形状、大きさ、及び配置を含むことができる。アレイ領域は、また、結合していても(即ち、物理的に結合していても)、間が離れていてもよい。さらに、ワクチン含有の生体適合性のコーティングの数及び場所も、様々な相容性の、及び/又は配合禁忌のワクチン、並びにそれらの望ましい投与量の送達を促進するために変化することもできる。
【0099】
次に図5を参照すると、記されている微小突起アレイ60aは、3つの実質的に円形で別々のアレイ領域61、62、63を含んでいる。記載したように、各アレイ領域61、62、63は、実質的に同様の、又は異なる大きさ、及びその故に面積を有することができる。
【0100】
本発明によると、各アレイ領域61、62、63は、その中に配置されている少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を有する生体適合性のコーティング64、65、66を含んでいる。記されている実施形態では、各アレイ領域61、62、63における各生体適合性のコーティング64、65、66は、異なる免疫学的に活性な物質を含んでいる。
【0101】
代替の一実施形態では、1つの免疫学的に活性な物質が2つのアレイ領域、例えば領域61及び63に含まれており、異なる免疫学的に活性な物質が残りのアレイ領域、例えば領域62に含まれている。
【0102】
次に図6を参照すると、好ましくは70から75の6つのアレイ領域に分けられている6角形方のパターンを有する、さらなる微小突起アレイ60bが示されている。本発明によると、アレイ領域70〜75は、同様に、実質的に同様の、又は異なる形状及び大きさを有する。
【0103】
記されている実施形態では、アレイ領域71、73、及び75は、第1の免疫学的に活性な物質を含む第1の生体適合性のコーティング76を含み、アレイ領域72及び74は、第2の免疫学的に活性な物質を含む第2の生体適合性のコーティング77を含み、アレイ領域70は、第3の免疫学的に活性な物質を含む第3の生体適合性のコーティング78を含む。
【0104】
記載したように、様々なコーティングの、及びそれゆえにそこに配置されているワクチンの数及び位置は、望ましい数のワクチン及び/又はその投与量の送達に対応するために変化することができる。例示により、代替の一実施形態では、各アレイ領域70〜75は、そこに配置されている異なる免疫学的な物質を有する異なるコーティングを含んでいる。
【0105】
次に図7を参照すると、微小突起アレイ60cのさらに別の一実施形態が示してある。図7で説明するように、微小突起アレイ60cは、実質的に長方形の形状をしており、実質的に長方形のアレイパターンを含む。
【0106】
図示した実施形態では、アレイパターンは、3つの線状のアレイ領域80、81、82を含んでいる。本発明によると、アレイ領域80、81、82は、同様に、形状が実質的に同様でも異なってもよい。
【0107】
図7で説明するように、各アレイ領域80、81、82は、そこに配置されている少なくとも1つの異なる免疫学的に活性な物質を有する異なる生体適合性のコーティング83、84、85を含む。
【0108】
同様に、線状の領域の数、並びに様々なコーティングの数及び位置、並びにしたがってそこに配置されるワクチンは、望ましい数のワクチン及び/又はその投与量の送達に適合させるために変化することができる。例示により、代替の一実施形態では、アレイは5つの線状の領域を含み、各領域は、そこに配置されている異なる免疫学的に活性な物質を有する異なるコーティングを含んでいる。
【0109】
次に図2を参照すると、生体適合性のコーティング35でコーティングされた微小突起34を有する微小突起アレイ30の部分が示されている。本発明によると、コーティング35は、各微小突起34を部分的に又は完全に被覆することができる。例えば、コーティング35は、微小突起34における乾燥パターンのコーティング中であることができる。コーティング35は、微小突起34を形成する前又は後に施すこともできる。
【0110】
本発明によると、各アレイ領域におけるコーティング35を、様々な周知の方法により微小突起34に施すことができる。好ましくは、コーティングは、皮膚を穿孔する微小突起部材30又は微小突起34のこれらの部分(例えば、チップ39)に施されているにすぎない。
【0111】
このようなコーティング方法の1つに、ディップコーティングが含まれている。ディップコーティングは、微小突起34をコーティング溶液中に部分的に又は全体的に浸すことにより微小突起をコーティングする手段として記載することができる。部分的な浸漬技術を用いることにより、コーティング35を微小突起34のチップ39だけに限定することが可能である。
【0112】
さらなるコーティング方法は、コーティング35を微小突起34のチップ39に同様に限定するローラーコーティングメカニズムを使用する、ローラーコーティングを含む。ローラーコーティング方法は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、米国特許出願第10/099604号(公開番号第2002/0132054号)に開示されている。記されている出願に詳しく論じられているが、開示されているローラーコーティング法は、皮膚に穿孔する間微小突起34から容易に除去されない滑らかなコーティングを提供する。
【0113】
本発明によると、微小突起34は、アパチャー(apertures)(図示せず)、溝(図示せず)、表面の凸凹(図示せず)、又は同様の修飾など、コーティング35を受け、且つ/又はその体積を増大させるように適合された手段をさらに含むことができ、この手段は、大量のコーティングを配置することができる表面積の増大をもたらす。
【0114】
本発明の範囲内で使用することができるさらなるコーティング方法に、スプレーコーティングが含まれる。本発明によると、スプレーコーティングは、コーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を含むことができる。一実施形態では、液滴が約10から200ピコリットルの大きさであるエアロゾル懸濁液を微小突起10の上に噴霧し、次いで乾燥する。
【0115】
パターンコーティングを使用して微小突起34をコーティングすることもできる。パターンコーティングは、堆積した液体を微小突起表面上に配置するための分配システムを用いて施すことができる。沈殿した液体の量は、0.1から20ナノリットル/微小突起の範囲であることが好ましい。適切な精密に計量した液体ディスペンサーの例は、本明細書に参照として全文が組み入れられる米国特許第5916524号、第5743960号、第5741554号、及び第5738728号に開示されている。
【0116】
微小突起コーティング製剤又は溶液を、周知のソレノイドバルブディスペンサー、任意選択の液体運動方法、及び電場を使用することにより一般的に制御される位置決め方法を用いてインクジェット技術を用いて施すこともできる。印刷業界からの他の液体分配技術、又は当技術分野で周知の同様の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを施すために用いることができる。
【0117】
次に図8及び9を参照すると、その全文が本明細書に参照として組み入れられる同時係属中の米国特許出願第09/976762号(公開番号第2002/0091352号)に詳しく記載されているように、貯蔵及び適用のために、微小突起アレイ30が、好ましくは付着性タブ6により保持リング40に懸垂されている。
【0118】
微小突起部材30を保持リング40に配置した後、微小突起部材30を患者の皮膚に施す。好ましくは、微小突起部材30を、図10に示し、その全文が本明細書に参照として組み入れられる同時係属中の米国出願第09/976798号に開示されているような、衝撃アプリケーター45を用いて皮膚に施す。
【0119】
記載したように、本発明の好ましい一実施形態では、固体のコーティングを形成するために微小突起アレイ32に施すコーティング製剤は、水性の製剤を含む。代替の一実施形態では、コーティング製剤は非水性の製剤を含む。本発明によると、各々の免疫学的に活性な物質は、生体適合性の担体内に溶解し、又は担体内に懸濁することができる。
【0120】
記載したように、本発明の好ましい一実施形態では、免疫学的に活性な物質は、ウイルス及び細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、及び核酸ベースのワクチンからなる群から選択されるワクチン(又は、抗原物質)を含む。
【0121】
適切な抗原物質には、限定することなく、タンパク質の形態の抗原、多糖類複合体、オリゴ等、及びリポタンパク質が含まれる。これらのサブユニットワクチンは、百日咳菌(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、コレラ菌(複合体リポ多糖)が含まれる。
【0122】
全てのウイルス又は細菌には、限定することなく、弱体化又は死滅ウイルス、例えば、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、及び水痘帯状疱疹、弱体化又は死滅細菌、例えば、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、及びコレラ菌、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0123】
抗原物質を含むさらなる市販のワクチンには、限定することなく、インフルエンザワクチンを含むインフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風ワクチン、チフスワクチン、ライノウイルスワクチン、B型インフルエンザ菌ワクチン、ポリオワクチン、肺炎連鎖球菌ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、RSUワクチン、ヘルペスワクチン、HIVワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン(A、B、及びD型を含む)、及びジフテリアワクチンが含まれる。
【0124】
核酸を含むワクチンには、限定することなく、例えば、スーパーコイルプラスミドDNAなどの1本鎖、及び2本鎖の核酸;線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、並びに、例えばmRNAなどのRNA分子が含まれる。核酸の大きさは、数千キロベースまでであることができる。さらに、本発明のある実施形態では、核酸はタンパク質性の物質と結合していてもよく、又は、例えば、ホスホロチオエート部分などの化学的修飾を1つ又は複数含んでいてもよい。コードする核酸配列は、それに対する免疫反応が望ましい抗原の配列を含む。さらに、DNAの場合は、プロモーター及びポリアデニレーション配列も、ワクチン構築物に組み入れられる。コードすることができる抗原は、感染性疾患の全ての抗原の構成成分、病原体、及び癌抗原を含むことができる。したがって、核酸は、例えば、感染性疾患、癌、アレルギー、自己免疫疾患、及び炎症性疾患の分野に応用が見出される。
【0125】
ワクチン抗原と共にワクチンを含むことができる、適切な免疫反応増強アジュバントは、限定することなく、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、藻類のグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、β−グルカン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、及びスレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2、IL−12、IL−15を含む。アジュバントは、例えば、CpG含有オリゴヌクレオチドなどのDNAオリゴヌクレオチドも含む。さらに、IL−18、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質などの免疫調節リンホカインをコードする核酸配列を用いることができる。
【0126】
本発明によると、各コーティング製剤は、少なくとも1つの湿潤剤を含むことができる。適切な湿潤剤には、両親媒性の特性を表す界面活性剤及びポリマーが含まれる。
【0127】
このように、本発明の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤が、少なくとも1つの界面活性剤を含む。本発明によると、界面活性剤は、双性、両性、陽イオン性、陰イオン性、又は非イオン性であることができる。適切な界面活性剤の例には、ラウリルアムホアセテートナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(TMAC)、塩化ベンザルコニウム、Tween20及びTween80などのポリソルベート、ラウリン酸ソルビタンなどの他のソルビタン誘導体、並びにラウレス−4などのアルコキシル化アルコールが含まれる。最も好ましい界面活性剤には、Tween20、Tween80、及びSDSが含まれる。
【0128】
本発明のさらなる一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、両親媒性の特性を有する少なくとも1つのポリマー材料又はポリマーを含む。記されているポリマーには、限定することなく、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、又はエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などのセルロース誘導体、並びにプルロニックが含まれる。
【0129】
本発明の一実施形態では、両親媒性の特性を表すポリマーの濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.01〜20重量%の範囲、より好ましくは約0.03〜10重量%の範囲である。さらにより好ましくは、ポリマーの濃度は、コーティング製剤の約0.1〜5重量%の範囲である。
【0130】
当業者であれば理解するであろうが、記されている湿潤剤は、別々に、又は組み合わせて用いることができる。
【0131】
本発明によると、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、親水性ポリマーをさらに含むことができる。親水性ポリマーを以下の群から選択することが好ましい:デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物などのポリマー。当技術分野ではよく知られているように、記されているポリマーは粘度を上昇させる。
【0132】
コーティング製剤における親水性ポリマーの濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.01〜50重量%の範囲、より好ましくは約0.03〜30重量%の範囲である。さらにより好ましくは、親水性ポリマーの濃度は、コーティング製剤の約0.1〜20重量%の範囲である。
【0133】
本発明によると、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、同時係属中の米国特許出願第10/127108号に開示されているものなどの生体適合性の担体を含む。生体適合性の担体の例には、ヒトアルブミン、バイオ操作したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、ショ糖、トレハロース、メレチトース、ラフィノース、及びスタキオースが含まれる。
【0134】
コーティング製剤における生体適合性の担体の濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約2〜70重量%の範囲、より好ましくは約5〜50重量%の範囲である。さらにより好ましくは、担体の濃度は、コーティング製剤の、約10〜40重量%の範囲である。
【0135】
本発明によると、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、同時係属中の米国特許出願第10/674626号に開示されているものなどの血管収縮薬をさらに含むことができる。記されている同時係属中の出願に記載されているように、血管収縮薬は、微小突起部材上に適用する間及び後に出血を制御するために用いられる。好ましい血管収縮薬には、それだけには限定されないが、アミデフリン、カファミノール、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノラミン、フェニルプロパノラミン、プロピルヘキセドリン、シュードエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、バソプレシン、キシロメタゾリン、及びこれらの混合物が含まれる。最も好ましい血管収縮薬には、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリン、及びキシロメタゾリンが含まれる。
【0136】
血管収縮薬を使用する場合、その濃度は、コーティング製剤の約0.1重量%から10重量%の範囲であることが好ましい。
【0137】
本発明のさらに別の一態様では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる同時係属中の米国特許出願第09/950436号に開示されているものなど、少なくとも1つの「通路開放性モジュレーター」を含む。記されている同時係属中の出願に述べてあるように、通路開放性モジュレーターは、皮膚の自然治癒の過程を防ぎ又は低減させ、それにより、微小突起部材アレイにより角質層に形成された経路又は微小の切れ目の閉鎖を防ぐ。通路開放性モジュレーターの例には、限定することなく、浸透圧剤(例えば、塩化ナトリウム)、及び双性イオン化合物(例えば、アミノ酸)が含まれる。
【0138】
同時係属中の出願で定義される「通路開放性モジュレーター」は、抗炎症薬、例えば、ベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−リン酸二ナトリウム塩、塩酸ヒドロコルメート、ヒドロコルチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾンリン酸二ナトリウム、及びプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、並びに抗凝固薬、例えば、クエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、硫酸デキストリンナトリウム、アスピリン、及びEDTAをさらに含む。
【0139】
本発明によると、各コーティング製剤は、エタノール、クロロホルム、エーテル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの非水性の溶剤;染料、色素、不活性の充填剤、浸透増強剤、賦形剤、及び当技術分野で周知の薬剤製品又は経皮の装置の他の従来の構成成分も含むことができる。
【0140】
他の周知の製剤のアジュバントも、コーティング製剤の必要な溶解性及び粘性の特徴、並びに乾燥したコーティングの物理的な統合性に悪影響を与えなければ、コーティング製剤に加えることもできる。
【0141】
好ましくは、各コーティング製剤の粘度は、各微小突起10を効果的にコーティングするために、約5ポアズ未満である。より好ましくは、各コーティング製剤の粘度は、約0.3〜2.0ポアズの範囲である。
【0142】
本発明によると、各アレイ領域のコーティングの厚さの中央値は、好ましくは100ミクロン未満であり、より好ましくは50ミクロン未満である。さらにより好ましくは、コーティングの厚さは、約2〜30ミクロンの範囲である。
【0143】
望ましいコーティングの厚さは、必要とされる投与量、及びそれゆえに投与量を送達するのに必要なコーティングの厚さ、シートの単位面積あたりの微小突起の密度、並びに各アレイ領域及び選択されたコーティング方法で使用されるコーティング製剤の粘度及び濃度を含めたいくつかの要因に依存する。
【0144】
全ての場合において、コーティング製剤を施用した後、各コーティング製剤を様々な手段により微小突起上で乾燥することができる。本発明の一実施形態では、コーティングした微小突起アレイを、周囲の室温で空気乾燥する。別の一実施形態では、コーティングした微小突起アレイを真空乾燥する。さらに別の一実施形態では、コーティングした微小突起アレイを空気乾燥し、その後真空乾燥する。
【0145】
微小突起上のコーティング製剤を乾燥するために、様々な温度及び湿度のレベルを用いることもできる。コーティングした微小突起アレイを、このように加熱し、凍結乾燥し、フリーズドライし、又は同様の技術に曝して、コーティングから水分を除く。
【0146】
本発明の一実施形態によると、複数の免疫学的に活性な物質を同時に送達するための方法は、以下:(i)多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、微小突起アレイが多数のアレイ領域を有するステップと、(ii)第1のアレイ領域における少なくとも第1の微小突起を、第1の免疫学的に活性な物質を有する第1の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、(iii)第2のアレイ領域における少なくとも第2の微小突起を、第2の免疫学的に活性な物質を有する第2の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、(iv)コーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップとを含む。
【0147】
当業者であれば理解するであろうが、本発明は、単に、複数のワクチンを送達することに制限されない。事実、本発明は、アレルギー試験の脱感作手順のために複数のアレルゲンの送達を促進するために容易に使用することができる。
【0148】
さらに、ある病原体に対するワクチン接種は、相容性ではないことがあるイソ型、例えば23のイソ型を有するシュードモナス菌(Pseudomonas)での免疫化を必要とする。したがって、本発明は、このような予防接種を促進するのに容易に使用することができる。
【0149】
また、免疫増強アジュバントの同時送達は、セロプロペクション(seropropection)を確実にするために、ワクチンの免疫原性を増大するのに必要であることがある。したがって、本発明の代替の実施形態では、微小突起アレイは、(i)ワクチンを含む第1の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第1のアレイ領域、及びアジュバントを含む第2の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第2のアレイ領域、又は(ii)第1のワクチンを含む第1の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第1のアレイ領域、第2のワクチンを含む第2の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第2のアレイ領域、及びアジュバントを含む第3の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第3のアレイ領域、又は(iii)多数のワクチンを含む第1の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第1のアレイ領域、及びアジュバントを含む第2の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第2のアレイ領域、を含むことができる。
【0150】
したがって、本発明のさらなる一実施形態によると、複数の免疫学的に活性な物質を送達するための方法は以下:(i)多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、微小突起アレイは第1及び第2のアレイ領域を有するステップと、(ii)第1の生体適合性のコーティングで第1のアレイ領域をコーティングし、第1の生体適合性のコーティングは、免疫学的に活性な物質を含むステップと、(iii)第2の生体適合性のコーティングで第2のアレイ領域をコーティングし、第2の生体適合性のコーティングは免疫反応増強アジュバントを含むステップと、(iv)コーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップとを含む。
【0151】
当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、本発明を様々な使用及び条件に応用するために、本発明に対する様々な変更及び修正を行うことができる。そのようなものとして、これらの変更及び修正は、上記に記載した実施形態の同等物の全範囲内に、適切にあり、公正にあり、且つあるものとされる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明による微小突起アレイの一実施形態の部分の斜視図である。
【図2】微小突起上に堆積している生体適合性のコーティングを有する、図1に示した微小突起アレイの斜視図である。
【図3】本発明による、接着性の裏当てを有する微小突起アレイの横断面図である。
【図4】本発明による、微小突起アレイの別の一実施形態の部分の斜視図である。
【図5】本発明による、微小突起アレイの領域及びそのパターンを有する微小突起アレイの実施形態の概略図である。
【図6】本発明による、微小突起アレイの領域及びそのパターンを有する微小突起アレイの実施形態の概略図である。
【図7】本発明による、微小突起アレイの領域及びそのパターンを有する微小突起アレイの実施形態の概略図である。
【図8】本発明による、そこに配置されている微小突起部材を有する保持物の横断面図である。
【図9】図8に示した保持物の斜視図である。
【図10】図8に示したアプリケーター及び保持物の斜視図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年4月13日に出願された米国仮出願第60/561953号の権利を主張するものである。
【0002】
本発明は、概ね、経皮の物質の送達システム及び方法に関する。より詳しくは、本発明は、複数のワクチンを経皮送達するための装置、方法、及び製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
有効物質(又は薬物)は、最も慣例的には、経口的又は注射のいずれかにより投与される。残念なことに、有効物質を経口投与した場合は、吸収されず、又は血流に入る前に有害な影響を受け、したがって望ましい活性を有しないので、多くの有効物質は完全に無効であり、又は根本的に有効性は減少する。一方、投与の間に物質が変更されないことを確実にする一方で物質を血流中に直接注射することは、困難で、不便で、苦痛があり、不快な手順であり、時として患者のコンプライアンスが低下する結果となる。
【0004】
したがって、原則として、経皮送達は、他の方法では皮下注射又は静脈内注入により送達する必要がある有効物質を投与する方法を提供する。本明細書で用いる「経皮」は、手術用ナイフによる切断又は皮下注射針での皮膚の穿孔など、実質的に皮膚を切断又は貫通せずに、皮膚を通して有効物質(例えば、薬物などの治療用物質、又はワクチンなどの免疫学的に活性な物質)を局所の組織又は全身の循環系へ送達することを意味する一般的な語である。経皮の物質の送達は、受動拡散による送達、並びに、電気(例えば、イオン泳動)及び超音波(例えば、音波泳動法)など外部のエネルギー源に基づく送達を含む。
【0005】
受動的な経皮の物質の送達システムはより一般的であり、典型的には高濃度の有効物質を含む薬物貯蔵槽(リザバー、reservoir)を含む。貯蔵槽は皮膚に接触するように適合され、物質が皮膚を通して患者の身体組織中又は血流中に拡散することを可能にする。
【0006】
当技術分野ではよく知られているが、経皮の薬物の流れは皮膚の状態、薬物分子の大きさ及び物理学的/化学的特性、並びに皮膚を横切る濃度勾配に依存している。多くの薬物に対する皮膚の浸透性は低いので、経皮送達の応用は限られていた。このように浸透性が低いのは、主に、脂質2重層に取り囲まれたケラチン繊維(即ち、ケラチン細胞)で満たされた、扁平な死細胞からなる最も外側の皮膚の層である角質層のためとされている。この、高度に整った脂質2重層の構造により、角質層に比較的不浸透性の特徴が付与される。
【0007】
当技術分野ではよく知られているが、皮膚は、身体を外部の危険から保護する物理的なバリアであるだけではなく、免疫系の不可欠の部分でもある。皮膚の免疫機能は、皮膚免疫系として集合的に知られている、生得の及び獲得の免疫機能の両者を有する在住の細胞の及び上腕の生存能力のある表皮及び真皮の成分の集合から生じるものである。
【0008】
皮膚の免疫系の最も重要な構成成分の1つは、ランゲルハンス細胞(LC)であり、生存能力のある表皮に見られる特殊化した抗原提示細胞である。LCは、周囲の細胞の間に樹状突起の分枝を拡張することより、生存能力のある表皮に半連続的な網状組織を形成する。LCの正常の機能は、侵略する病原体への免疫反応を喚起するために、抗原を検出し、捕らえ、提示することである。LCは、皮膚上の抗原を内側に取り込み、局所の皮膚排出性のリンパ節に輸送し、加工処理した抗原をT細胞に提示することにより、その機能を行う。
【0009】
皮膚の免疫系の有効性が一因となって、皮膚を標的とするワクチン戦略が成功し安全となっている。皮膚を傷つけて生の弱毒化した天然痘ワクチンを種痘することにより、致死的な天然痘の疾患の世界的な根絶がもたらされ成功している。様々なワクチンの標準のIM投与量の1/5から1/10を用いた皮内注射は、数々のワクチンで免疫反応を誘発するのに有効であり、低投与量の狂犬病ワクチンが、皮内適用のために商業的にライセンスされている。
【0010】
しかし、物理化学的な観点から、多くのワクチン製剤が配合禁忌であることはよく知られている。これらのワクチンを投与するためには、これらを注射時に混合し、又は皮下注射により送達しなければならない。
【0011】
代替として、経皮送達は、その他の方法では皮下注射、静脈内注入、又は経口的に送達する必要のある生物学的に活性な物質、特にワクチンを投与する方法を提供する。経皮送達は、これらの領域の両方に改善をもたらしている。経皮送達は、経口送達に比べると、消化管の厳しい環境を避け、胃腸管の薬物代謝を回避し、初回通過効果を低減し、消化酵素及び肝臓の酵素による不活性化の可能を避けるものである。消化管はまた、経皮投与の間はワクチンに曝されない。しかし、多くの場合、多くの生物学的に活性な物質の、伝統的な受動的な経皮の経路による送達又は流れの速度は大変制限されているため、免疫学的に有効であることはできない。
【0012】
受動的な経皮の拡散の物質の流れを増大させる一般的な方法の1つは、皮膚浸透増強剤である物質で皮膚を前処理し、又は皮膚浸透増強剤と同時送達することに関する。浸透増強剤を、そこを通して物質が送達される身体の表面に施用すると、そこを通過する物質の流れを向上させる。しかし、経皮のタンパク質の流れを向上させるこれらの方法の有効性は、少なくとも、その大きさにより、より大型のタンパク質に限られている。
【0013】
経皮送達をする物質の量を増大するために、最も外側の皮膚の層を機械的に貫通し又は破壊し、それによって、皮膚中への経路を作り出すための多くの技術及びシステムも開発されている。初期のワクチン装置は、スカルファイア(scarfier)で知られており、皮膚に施用し、施用した領域に掻き傷をつけ、又は小さな傷口を作る多数の歯又は針を一般的に含むものである。米国特許第5487726号に開示されているように、ワクチンを皮膚上に局所的に施用し、又は米国特許第4453926号、第4109655号、及び第3136314号に開示されているように湿潤した液体をスカルファイアの歯に施用する。
【0014】
スカルファイアが経皮のワクチンの送達に提案されているのは、一部には、患者を免疫化するのに有効であるように皮膚中に送達する必要があるワクチンが大変少量にすぎないからである。さらに、過剰な量でも十分な免疫化を達成するので、送達されるワクチンの量は特に決定的ではない。
【0015】
しかし、ワクチンなどの有効物質を送達するためにスカルファイアを使用する重大な欠点は、経皮の物質の流れ、及び結果として生じる送達される投与量を決定することが困難なことである。また、皮膚には、弾力性があり、変形し、弾力のある性質があって穿刺をそらせ抵抗するため、小さな穿孔性の要素は、しばしば、皮膚を均一に貫通せず、且つ/又は皮膚の貫通に際し物質の液体コーティングは拭われてなくなる。
【0016】
さらに、皮膚の自己治癒の過程により、皮膚に作られた穿刺又は切れ目は、角質層から穿孔性の物質を除去した後に閉じる傾向がある。したがって、皮膚の弾力性の性質は、これらの要素を皮膚中に貫通する際に小さな穿孔性の要素に施用されていた有効物質の液体コーティングを除去するように働く。さらに、穿孔性の要素により形成された小さな切り口は装置を除去した後速やかに治癒し、したがって液体物質の溶液が、穿孔性の要素により作られた通路を通って通過することを制限し、次にこのような装置の経皮の流れを制限する。
【0017】
経皮の物質の送達を向上させるための、小さな皮膚穿孔性の要素を使用している、他のシステム及び器具は、米国特許第5879326号、第3814097号、第527954号、第5250023号、第3964482号、再発行第25637号、並びにPCT公開番号WO第96/37155号、WO第96/37256号、WO第96/17648号、WO第97/03718号、WO第98/11937号、WO第98/00193号、WO第97/48440号、WO第97/48441号、WO第97/48442号、WO第98/00193号、WO第99/64580号、WO第98/28037号、WO第98/29298号、及びWO第98/29365号に開示されており、全てその全文が本明細書に参照として組み入れられる。
【0018】
開示されているシステム及び器具は、皮膚の最も外側の層(即ち、角質層)を穿孔するために様々な形状及び大きさの穿孔性要素を使用している。これらの参照に開示されている穿孔性要素は、一般的に、パッド又はシートなどの薄型の平らな部材から垂直に延びている。いくつかのこれらの装置の穿孔性要素は非常に小さく、微小突起の長さは約25〜400ミクロンにすぎず、微小突起の厚さは約5〜50ミクロンにすぎないものもある。これらの小さな穿孔性/切断性の要素が、そこを通った経皮の物質の送達を向上させるために角質層に相応に小さい微小の切れ目/微小の切り口を作る。
【0019】
開示するシステムは、物質を保持するための貯蔵槽、及び物質を貯蔵槽から角質層を通して輸送するための送達システム、例えば、装置自身の中空の歯によるものなどをさらに典型的に含む。このような装置の一例は、液体物質の貯蔵槽を有するWO第93/17754号に開示されている。しかし、この貯蔵槽は、小さい管状の要素を通し皮膚中に液体物質を無理に入れるように加圧しなければならない。このような装置の欠点には、圧力で動かす送達システムが存在することにより、加圧可能な液体の貯蔵槽及び複雑化を加えるためのさらなる面倒な問題及び費用が含まれる。
【0020】
その全文が本明細書に参照として組み込まれる米国特許出願第10/045842号に開示されているように、送達すべき有効物質を、物理的な貯蔵槽に含む代わりに微小突起上にコーティングすることも可能である。これにより、別の物理的な貯蔵槽の必要性、及び物質の製剤又は組成物を貯蔵槽用に特に開発する必要性が排除される。
【0021】
しかし、コーティングされた微小突起システムの欠点は、コーティングの厚さが増大すると共に、角質層を貫通する微小突起(及びそのアレイ)の能力が低下するので、送達される有効物質、特に免疫学的に活性な物質の最大量が制限されることである。さらなる欠点は、現在入手できるコーティングされた微小突起システムは、1つの有効物質の送達に制限されるということである。
【0022】
したがって、複数の生物学的に活性な物質、特に免疫学的に活性な物質を、コーティングされた微小突起により経皮送達するための器具及び方法を提供することが望ましい。
【0023】
物理化学的観点から配合禁忌であることがあるいくつかのワクチンを、同時に投与するための便利な方法を提供することも好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の目的のひとつは、先行技術の免疫学的に活性な物質の送達方法及びシステムに付随する欠点及び不利な点を実質的に低減し又は取り除く、複数の免疫学的に活性な物質の同時の経皮送達のための器具及び方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、様々な生体適合性のコーティングでコーティングされ、各コーティングが異なるワクチンを含む多数のアレイ領域を有する微小突起アレイを含む、複数のワクチンを実質的に同時に経皮送達するための器具及び方法を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、多数の微小突起を有する微小突起アレイを含み、多数の微小突起の少なくとも2つが、その上に配置された異なるワクチン、又はワクチンとアジュバントとを有する、異なる生体適合性のコーティングでコーティングされている、複数のワクチンを実質的に同時に経皮送達するための器具及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的、及びこれから言及し以下で明らかになるように、本発明の一実施形態の複数の免疫学的に活性な物質を経皮送達するための器具及び方法は、概ね、角質層を通って、下にある表皮層、又は表皮層及び真皮中に穿孔するように適合された多数の微小突起を含む微小突起アレイを有する送達システムを含み、微小突起アレイは多数のアレイ領域を有し、少なくとも2つのアレイ領域はその上に配置されている異なる生体適合性のコーティングを有し、少なくとも1つのアレイ領域のコーティングは少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含む。
【0028】
一実施形態では、各アレイ領域上の生体適合性のコーティングは、免疫学的に活性な異なる物質を含む。
【0029】
別の一実施形態では、第1のアレイ領域の生体適合性のコーティングは、免疫学的に活性な物質を含み、第2のアレイ領域の生体適合性のコーティングはアジュバントを含む。
【0030】
好ましくは、免疫学的に活性な物質は、ウイルス及び細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、核酸ベースのワクチン、及び免疫反応増強性のアジュバントからなる群から選択される抗原物質又はワクチンを含む。
【0031】
適切な抗原物質には、限定することなく、タンパク質、多糖類複合体、オリゴ糖、及びリポタンパク質の形態の抗原が含まれる。これらのサブユニットワクチンには、百日咳菌(Bordetella pertussis)(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(Clostridium tetani)(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(Group A Streptcoccus)(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(合成ペプチド)、風疹(Rubella)ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella zoster)(サブユニット、糖タンパク質)、及びコレラ菌(Vibrio cholerae)(複合体リポ多糖)が含まれる。
【0032】
全てのウイルス又は細菌には、限定することなく、弱体化、又は死滅ウイルス、例えば、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、及び水痘帯状疱疹、弱体化、又は死滅細菌、例えば、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、及びコレラ菌、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0033】
抗原物質を含む、さらなる市販のワクチンには、限定することなく、インフルエンザワクチンを含むインフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風ワクチン、チフスワクチン、ライノウイルスワクチン、B型インフルエンザ菌ワクチン、ポリオワクチン、肺炎連鎖球菌ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、RSUワクチン、ヘルペスワクチン、HIVワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン(A、B、及びD型を含む)、及びジフテリアワクチンが含まれる。
【0034】
核酸を含むワクチンには、限定することなく、1本鎖及び2本鎖の核酸、例えば、スーパーコイルプラスミドDNA;線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC);酵母菌人工染色体(YAC);哺乳動物人工染色体;並びにRNA分子、例えばmRNAが含まれる。核酸は、タンパク質性の物質と結合していることもあり、又は、例えばホスホロチオエート部分などの1つ又は複数の化学修飾を含むこともある。
【0035】
ワクチンの抗原と共にワクチンを含むことができる、適切な免疫反応増強アジュバントには、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、藻類のグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、β−グルカン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、及びスレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2、IL−12、IL−15が含まれる。アジュバントは、例えば、CpG含有オリゴヌクレオチドなどのDNAオリゴヌクレオチドも含む。さらに、IL−18、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質などの免疫調節リンホカインをコードする核酸配列を用いることができる。
【0036】
免疫反応増強アジュバントは、ワクチンの抗原と別に、又は一緒に配合することができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、微小突起アレイは、少なくとも約10微小突起/cm2の、好ましくは少なくとも約100微小突起/cm2の、より好ましくは少なくとも約200〜3000微小突起/cm2の範囲の微小突起密度を有する。
【0038】
好ましくは、微小突起は、145ミクロン未満の、より好ましくは約50〜145ミクロンの範囲の、さらにより好ましくは約70〜140ミクロンの範囲の突起の長さを有する。
【0039】
一実施形態では、微小突起アレイは、ステンレススチール、チタン、ニッケルチタン合金、又は同様の生体適合性の材料から構築される。
【0040】
代替の一実施形態では、微小突起アレイは、非導電性の材料、例えばポリマーから構築される。或いは、微小突起アレイを、非伝導性の材料、例えば、Parylene(登録商標)でコーティングすることができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、各々の生体適合性のコーティングは、厚さが100ミクロン未満であることが好ましい。好ましい実施形態では、各々の生体適合性のコーティングは、厚さが約2〜50ミクロンの範囲である。
【0042】
本発明の固体の生体適合性のコーティングを形成するために微小突起アレイ領域に施用するコーティング製剤は、少なくとも1つの実施形態で、少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含む水性又は非水性の製剤を含むことができる。好ましい一実施形態では、コーティング製剤は水性の製剤を含む。
【0043】
本発明の一実施形態では、各コーティング製剤は、双性、両性、陽イオン性、陰イオン性、又は非イオン性であることができる少なくとも1つの界面活性剤を含む。適切な界面活性剤には、限定することなく、ラウリルアムホアセテートナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(TMAC)、塩化ベンザルコニウム、Tween20及びTween80などのポリソルベート、ラウリン酸ソルビタンなどの他のソルビタン誘導体、並びにラウレス−4などのアルコキシル化アルコールが含まれる。
【0044】
本発明のさらなる一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、両親媒性の特性を有する少なくとも1つのポリマー材料又はポリマーを含む。両親媒性の特性を有する適切なポリマーには、限定することなく、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、又はエチルヒドロキシ−エチルセルロース(EHEC)、並びにプルロニックが含まれる。
【0045】
本発明の一実施形態では、コーティング製剤における両親媒性の特性を表すポリマーの濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.001〜70重量%の範囲、より好ましくは約0.01〜50重量%の範囲、さらにより好ましくは約0.03〜30重量%の範囲である。
【0046】
別の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、以下の群から選択される少なくとも1つの親水性ポリマーを含む:ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物、などのポリマー。
【0047】
好ましい一実施形態では、コーティング製剤における親水性ポリマーの濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.001〜90重量%の範囲、より好ましくは約0.01〜20重量%の範囲、さらにより好ましくは約0.03〜10重量%の範囲である。
【0048】
本発明の別の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、生体適合性の担体を含み、生体適合性の担体は、限定することなく、ヒトアルブミン、バイオ操作したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、ショ糖、トレハロース、メレチトース、ラフィノース、及びスタキオースを含む。
【0049】
好ましくは、コーティング製剤における生体適合性の担体の濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.001〜90%の範囲、より好ましくは約2〜70重量%の範囲、さらにより好ましくは約5〜50重量%の範囲である。
【0050】
さらなる一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は安定化剤を含み、安定化剤には、限定することなく、非還元糖、多糖類、還元糖、又はDNase阻害薬が含まれ得る。
【0051】
別の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤には、限定することなく、アミデフリン、カファミノール(cafaminol)、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン(nordefrin)、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノラミン、フェニルプロパノラミン、プロピルヘキセドリン、シュードエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン(tymazoline)、バソプレシン、キシロメタゾリン、及びこれらの混合物を含むことができる血管収縮薬が含まれる。最も好ましい血管収縮薬には、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリン、及びキシロメタゾリンが含まれる。
【0052】
血管収縮薬を使用する場合の濃度は、コーティング製剤の約0.1重量%から10重量%の範囲であることが好ましい。
【0053】
本発明のまた別の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、少なくとも1つの「通路開放性モジュレーター」を含み、「通路開放性モジュレーター」は、限定することなく、浸透圧剤(例えば、塩化ナトリウム)、双性イオン化合物(例えば、アミノ酸)、並びに、抗炎症薬、例えば、ベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−リン酸二ナトリウム、塩酸ヒドロコルメート、ヒドロコルチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾンリン酸二ナトリウム、及びプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩;並びに抗凝固薬、例えば、クエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、硫酸デキストリンナトリウム、アスピリン、及びEDTAが含まれ得る。
【0054】
好ましくは、本発明の各コーティング製剤の粘度は約5ポアズ未満であり、より好ましくは約0.3〜2.0ポアズの範囲である。
【0055】
本発明の一実施形態によると、複数の免疫学的に活性な物質を同時に送達するための方法には以下:(i)多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、微小突起アレイは多数のアレイ領域を有するステップと、(ii)第1のアレイ領域における少なくとも第1の微小突起を、第1の免疫学的に活性な物質を有する第1の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、(iii)第2のアレイ領域における少なくとも第2の微小突起を、第2の免疫学的に活性な物質を有する第2の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、(iv)コーティングされた微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップとが含まれる。
【0056】
本発明のさらなる一実施形態によると、複数の免疫学的に活性な物質を送達するための方法には以下:(i)多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、微小突起アレイは少なくとも第1及び第2のアレイ領域を有するステップと、(ii)第1のアレイ領域を第1の生体適合性のコーティングでコーティングし、第1の生体適合性のコーティングは免疫学的に活性な物質を含むステップと、(iii)第2のアレイ領域を第2の生体適合性のコーティングでコーティングし、第2の生体適合性のコーティングは免疫反応増強アジュバント含むステップと、(iv)コーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップとが含まれる。
【0057】
添付の図面で説明するように、本発明の好ましい実施形態の以下の、及びより詳しい記載から、さらなる特徴及び利点が明らかになるであろう。添付の図面では、参照符号は、図の全体にわたり、同じ部分又は要素を一般的に指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明を詳しく記載する前に、本発明は、特に例示した材料、製剤、方法、又は構造に限定されず、当然変わることがあることを理解されたい。したがって、好ましい材料及び方法を本明細書に記載するが本明細書に記載されているものと同様又は同等の数々の材料及び方法を、本発明を実行するのに用いることができる。
【0059】
本明細書で用いられる用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的のためにすぎず、限定的であることを意図しないことも理解されたい。
【0060】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0061】
さらに、本明細書に引用する全ての出版物、特許、及び特許出願は、上記のものも下記のものも、その全文が参照として本明細書に組み入れられる。
【0062】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられる単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、他の方法で内容が明らかに述べられていない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「1つの免疫学的に活性な物質」に対する対照物は、2つ以上のそのような物質を含み、「1つの微小突起」に対する対照物は、2つ以上のそのような微小突起などを含む。
【0063】
定義
本明細書で用いられる「経皮の」は、局所の又は全身の治療のために、皮膚中への、且つ/又は皮膚を通した物質の送達を意味する。
【0064】
本明細書で用いられる「経皮の流れ」は、経皮の送達の速度を意味する。
【0065】
本明細書で用いられる「同時送達」は、物質が送達される前に、物質の経皮の流れの前及び間中に、物質の経皮の流れの間中に、物質の経皮の流れの間中及び後に、且つ/又は物質の経皮の流れの後に、追加の物質を経皮的に送達することを意味する。さらに、2つ以上の免疫学的に活性な物質を、本発明の1つの生体適合性のコーティングに配合することができ、様々な免疫学的に活性な物質の1つのアレイ領域からの同時送達をもたらす。
【0066】
本明細書で用いられる「生物学的に有効な物質」は、治療上有効な量を投与した場合に薬理学的に有効である有効物質又は有効薬物を含む物質又は混合物の組成物を意味する。そのような有効物質の例には、限定することなく、小分子量の化合物、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸、及び多糖類が含まれる。
【0067】
本明細書で用いられる「免疫学的に活性な物質」は、抗原物質を含む物質若しくは混合物の組成物、及び/又は、免疫学的に有効な量で投与した場合に有益な免疫反応を誘発することができるあらゆる供給源に由来する「ワクチン」を意味する。免疫学的に有効な物質の例には、限定することなく、ウイルス及び細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、及び核酸ベースのワクチンが含まれる。
【0068】
適切な免疫学的に活性な物質には、限定することなく、タンパク質、多糖類複合体、オリゴ糖、及びリポタンパク質の形態の抗原が含まれる。これらのサブユニットワクチンには、百日咳菌(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、及びコレラ菌(複合体リポ多糖)が含まれる。
【0069】
全てのウイルス又は細菌には、限定することなく、弱体化又は死滅ウイルス、例えば、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹、弱体化又は死滅細菌、例えば、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、及びコレラ菌、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0070】
本発明に有用性も有する抗原物質を含む数々の市販のワクチンには、限定することなく、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、及びジフテリアワクチンが含まれる。
【0071】
本発明の方法により送達することもできる核酸を含むワクチンには、限定することなく、例えばスーパーコイルプラスミドDNAなどの1本鎖核酸及び2本鎖核酸、線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、及び、例えば、mRNAなどのRNA分子が含まれる。核酸の大きさは、数千キロベースまでであることができる。核酸は、また、タンパク質性の物質と結合していてもよく、又は、例えば、ホスホロチオエート部分などの1つ又は複数の化学修飾を含んでいてもよい。
【0072】
適切な免疫反応増強アジュバントは、ワクチンの抗原と共に、限定することなく、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、藻類のグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、β−グルカン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、及びスレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2、IL−12、IL−15含むワクチンを含むことができる。アジュバントは、例えばCpG含有オリゴ糖などのDNAオリゴヌクレオチドも含む。さらに、IL−18、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質などの免疫調節リンホカインをコードする核酸配列を用いることができる。
【0073】
本明細書で用いられる「生物学的に有効な量」又は「生物学的に有効な速度」は、望ましい免疫学的な、しばしば有益な結果を刺激し又は開始するのに必要とされる免疫学的に活性な物質の量又は速度を意味する。本発明のコーティングに使用される免疫学的に活性な物質の量は、望ましい免疫学的な結果を達成するのに必要とされる免疫学的に活性な物質の量を送達するのに必要な量である。実際には、これは、送達される特定の免疫学的に活性な物質、送達部位、並びに免疫学的に活性な物質の皮膚組織中への送達の解離及び遊離の動力学に応じて幅広く変わる。
【0074】
当業者であれば理解するであろうが、各アレイ領域から送達される免疫学的に活性な物質の投与量は、微小突起アレイ(又はパッチ)の大きさ、密度などを変更することにより、変化し、又は操作することもできる。
【0075】
本明細書で用いられる「コーティング製剤」は、微小突起及び/又はアレイ領域をコーティングするために使用される、自由に流動する組成物又は混合物を意味し含むものとされる。
【0076】
本明細書で用いられる「生体適合性のコーティング」及び「固体コーティング」は、実質的に固体の状態の「コーティング製剤」を意味し含むものとされる。
【0077】
本明細書で用いられる「微小突起」は、生存する動物、詳しくは哺乳動物、より詳しくはヒトの皮膚の角質層を通してその下にある、表皮層、又は表皮層及び真皮層注に穿孔し、又は貫通するように適合された穿孔性の要素を意味する。
【0078】
本発明の一実施形態では、穿孔性の要素の突起の長さは1000ミクロン未満である。さらなる一実施形態では、穿孔性の要素の突起の長さは500ミクロン未満であり、より好ましくは250ミクロン未満である。微小突起は、さらに約25〜500ミクロンの範囲の幅(図1で「W」と示した)、及び約10〜100ミクロンの範囲の厚さを有する。微小突起は、針、刃、ピン、パンチ、及びそれらの組合せなどの様々な形状で形成することができる。
【0079】
出血及び刺激を最小にするために適合されたさらなる一実施形態では、微小突起の突起の長さは、好ましくは145ミクロン未満であり、より好ましくは約50〜145ミクロンの範囲であり、さらにより好ましくは約70〜140ミクロンの範囲である。
【0080】
本明細書で用いられる「微小突起アレイ」及び「微小突起部材」は、角質層を穿孔するためのアレイに配置されている多数の微小突起を一般に意味する。微小突起アレイは、薄いシートから多数の微小突起をエッチングし、又は穴開けし、1枚のシートから図1に示すような形状を形成するように微小突起を折り、又は曲げることにより形成することができる。微小突起アレイは、他の周知のやり方で、例えば、その全文が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6050988号に開示されているように、それぞれのストリップの縁に沿って微小突起を有する1つ又は複数のストリップを形成することにより、形成することもできる。
【0081】
上記に記載したように、本発明は、角質層を通してその下にある表皮層、又は表皮層及び真皮層中に穿孔するように適合された多数の微小突起を含む微小突起アレイを有する送達システムを含む、複数の免疫学的に活性な物質を経皮送達するための器具及び方法を含み、微小突起アレイは多数のアレイ領域を有し、少なくとも2つのアレイ領域はそこに配置されている異なる生体適合性のコーティングを有し、少なくとも1つのコーティングは、少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含む。
【0082】
本発明の一実施形態では、少なくとも第1のアレイ領域コーティングは第1の免疫学的に活性な物質を含み、少なくとも第2のアレイ領域コーティングは免疫反応増強アジュバントを含む。
【0083】
別の一実施形態では、第1のアレイ領域コーティングは第1の免疫学的に活性な物質を含み、第2のアレイ領域コーティングは第2の免疫学的に活性な物質を含む。
【0084】
好ましい一実施形態では、第1及び第2の免疫学的に活性な物質は異なる。
【0085】
本発明によると、皮膚の角質層を穿孔する際、各アレイ領域の生体適合性のコーティングは体液(細胞内液、及び組織液などの細胞外液)により溶解され、免疫学的に活性な物質又は物質類は全身の治療のために皮膚中に遊離される(即ち、ボーラス(bolus)送達)。
【0086】
当業者であれば理解するであろうが、本発明は、このように、物理化学的観点から相容性でも配合禁忌でも、複数のワクチンを投与するための便利且つ高度に効率のよい方法を提供する。
【0087】
本発明によると、各コーティングの解離及び遊離の動力学は、免疫学的に活性な物質の性質、コーティングプロセス、コーティングの厚さ、及びコーティング組成物(例えば、コーティング製剤添加物の存在)を含めた多くの要因に依存している。遊離の動力学プロファイルに応じて、皮膚と穿孔性の関係にコーティングした微小突起を長時間維持することが必要であり得る。これは、接着性のもの(即ち、接着性の層)を用いて微小突起部材を皮膚に固定することにより、又は、図4に示したような、及びその全文が参照として本明細書に組み入れられるWO第97/48440号に記載されているような固定された微小突起を用いることにより実現することができる。
【0088】
次に図1及び図2を参照すると、本発明で使用するための微小突起部材(又はパッチ)30の一実施形態が示されている。図1で説明するように、微小突起部材30は、多数の微小突起34を有する微小突起アレイ32を含む。微小突起34は、好ましくはシート36から実質的に90°の角度で延びており、記されている実施形態では開口部38を含む(図2を参照されたい)。
【0089】
本発明によると、シート36を、シート36に対する裏当て40を含む送達パッチ中に組み入れることができ、パッチを皮膚に付着させるための付着ストリップ(図示せず)をさらに含むことができる(図3を参照されたい)。この実施形態では、微小突起34は、薄い金属シート36からの多数の微小突起34をエッチングし、又は穴開けすることにより、また、1枚のシート36から微小突起34を曲げることにより形成される。
【0090】
本発明の別の一実施形態では、微小突起アレイ32の微小突起密度は、少なくとも約10微小突起/cm2であり、好ましくは少なくとも約100微小突起/cm2であり、より好ましくは少なくとも約200〜3000微小突起/cm2の範囲である。また好ましくは、それを通して物質が通過する単位面積あたりの開口部の数は、少なくとも約10開口部/cm2、及び約3000開口部/cm2未満である。
【0091】
示したように、微小突起34の突起の長さは、1000ミクロン未満であることが好ましい。一実施形態では、微小突起34の突起の長さは500ミクロン未満であり、より好ましくは250ミクロン未満である。また、微小突起34の幅は、約25〜500ミクロンの範囲であり、厚さは約10〜100ミクロンの範囲であることが好ましい。現在好ましい位置実施形態では、微小突起の長さは約50〜145ミクロンの範囲であり、より好ましくは約70〜140ミクロンの範囲である。
【0092】
次に図4を参照すると、本発明の範囲内で使用することができる微小突起部材50の別の一実施形態が示してある。微小突起部材50は、同様に多数の微小突起54を有する微小突起アレイ52を含む。微小突起54は、好ましくはシート51から実質的に90°の角度で延びており、シート51は同様に開口部56を含む。
【0093】
図4で説明するように、微小突起54のいくつかは、主要な縁部に近接して配置されている保持部材又はアンカー58を含む。上記に記載したように、保持部材58は微小突起部材50が対象の皮膚に付着するのを容易にする。
【0094】
微小突起部材(例えば、30、50)及び/又はアレイは、ステンレススチール、チタン、ニッケルチタン合金、又は同様の生体適合性の材料などの様々な金属から製造することができる。微小突起部材をチタンから製造することが好ましい。
【0095】
本発明によると、微小突起部材及びアレイを、ポリマーなどの非伝導性の材料から構築することもできる。或いは、微小突起部材及び/又はアレイを、Parylene(登録商標)などの非伝導性の材料、又はTeflon(登録商標)、シリコン、若しくは他の低エネルギー材料などの疎水性材料でコーティングすることができる。記されている疎水性材料及び関連するベースの(例えば、光レジスト)層は、本明細書に参照として組み入れられる米国仮特許出願第60/484142号に述べてある。
【0096】
本発明で使用することができる微小突起部材及びアレイには、それだけには限定されないが、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、米国特許第6083196号、第6050988号、及び第6091975号、並びに米国特許公開第2002/0016562号に開示されている部材が含まれる。
【0097】
本発明で使用することができる他の微小突起部材及びアレイには、シリコンチップエッチング技術を用いてシリコンをエッチングすることにより、又はその全文が本明細書に参照として組み入れられる米国特許第5879326号に開示されている部材など、エッチングしたマイクロモールドを用いてプラスチックを成型することにより形成された部材が含まれる。
【0098】
次に図5〜7を参照すると、様々なアレイ領域パターンを有する様々な微小突起アレイ60a、60b、60cが示されている。アレイ60a、60b、60c及びそれらに関連するアレイのパターンは、例示のパターンにすぎず、したがって、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。事実、当業者であれば理解するであろうが、微小突起アレイ及びパターンは、様々な形状、大きさ、及び配置を含むことができる。アレイ領域は、また、結合していても(即ち、物理的に結合していても)、間が離れていてもよい。さらに、ワクチン含有の生体適合性のコーティングの数及び場所も、様々な相容性の、及び/又は配合禁忌のワクチン、並びにそれらの望ましい投与量の送達を促進するために変化することもできる。
【0099】
次に図5を参照すると、記されている微小突起アレイ60aは、3つの実質的に円形で別々のアレイ領域61、62、63を含んでいる。記載したように、各アレイ領域61、62、63は、実質的に同様の、又は異なる大きさ、及びその故に面積を有することができる。
【0100】
本発明によると、各アレイ領域61、62、63は、その中に配置されている少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を有する生体適合性のコーティング64、65、66を含んでいる。記されている実施形態では、各アレイ領域61、62、63における各生体適合性のコーティング64、65、66は、異なる免疫学的に活性な物質を含んでいる。
【0101】
代替の一実施形態では、1つの免疫学的に活性な物質が2つのアレイ領域、例えば領域61及び63に含まれており、異なる免疫学的に活性な物質が残りのアレイ領域、例えば領域62に含まれている。
【0102】
次に図6を参照すると、好ましくは70から75の6つのアレイ領域に分けられている6角形方のパターンを有する、さらなる微小突起アレイ60bが示されている。本発明によると、アレイ領域70〜75は、同様に、実質的に同様の、又は異なる形状及び大きさを有する。
【0103】
記されている実施形態では、アレイ領域71、73、及び75は、第1の免疫学的に活性な物質を含む第1の生体適合性のコーティング76を含み、アレイ領域72及び74は、第2の免疫学的に活性な物質を含む第2の生体適合性のコーティング77を含み、アレイ領域70は、第3の免疫学的に活性な物質を含む第3の生体適合性のコーティング78を含む。
【0104】
記載したように、様々なコーティングの、及びそれゆえにそこに配置されているワクチンの数及び位置は、望ましい数のワクチン及び/又はその投与量の送達に対応するために変化することができる。例示により、代替の一実施形態では、各アレイ領域70〜75は、そこに配置されている異なる免疫学的な物質を有する異なるコーティングを含んでいる。
【0105】
次に図7を参照すると、微小突起アレイ60cのさらに別の一実施形態が示してある。図7で説明するように、微小突起アレイ60cは、実質的に長方形の形状をしており、実質的に長方形のアレイパターンを含む。
【0106】
図示した実施形態では、アレイパターンは、3つの線状のアレイ領域80、81、82を含んでいる。本発明によると、アレイ領域80、81、82は、同様に、形状が実質的に同様でも異なってもよい。
【0107】
図7で説明するように、各アレイ領域80、81、82は、そこに配置されている少なくとも1つの異なる免疫学的に活性な物質を有する異なる生体適合性のコーティング83、84、85を含む。
【0108】
同様に、線状の領域の数、並びに様々なコーティングの数及び位置、並びにしたがってそこに配置されるワクチンは、望ましい数のワクチン及び/又はその投与量の送達に適合させるために変化することができる。例示により、代替の一実施形態では、アレイは5つの線状の領域を含み、各領域は、そこに配置されている異なる免疫学的に活性な物質を有する異なるコーティングを含んでいる。
【0109】
次に図2を参照すると、生体適合性のコーティング35でコーティングされた微小突起34を有する微小突起アレイ30の部分が示されている。本発明によると、コーティング35は、各微小突起34を部分的に又は完全に被覆することができる。例えば、コーティング35は、微小突起34における乾燥パターンのコーティング中であることができる。コーティング35は、微小突起34を形成する前又は後に施すこともできる。
【0110】
本発明によると、各アレイ領域におけるコーティング35を、様々な周知の方法により微小突起34に施すことができる。好ましくは、コーティングは、皮膚を穿孔する微小突起部材30又は微小突起34のこれらの部分(例えば、チップ39)に施されているにすぎない。
【0111】
このようなコーティング方法の1つに、ディップコーティングが含まれている。ディップコーティングは、微小突起34をコーティング溶液中に部分的に又は全体的に浸すことにより微小突起をコーティングする手段として記載することができる。部分的な浸漬技術を用いることにより、コーティング35を微小突起34のチップ39だけに限定することが可能である。
【0112】
さらなるコーティング方法は、コーティング35を微小突起34のチップ39に同様に限定するローラーコーティングメカニズムを使用する、ローラーコーティングを含む。ローラーコーティング方法は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、米国特許出願第10/099604号(公開番号第2002/0132054号)に開示されている。記されている出願に詳しく論じられているが、開示されているローラーコーティング法は、皮膚に穿孔する間微小突起34から容易に除去されない滑らかなコーティングを提供する。
【0113】
本発明によると、微小突起34は、アパチャー(apertures)(図示せず)、溝(図示せず)、表面の凸凹(図示せず)、又は同様の修飾など、コーティング35を受け、且つ/又はその体積を増大させるように適合された手段をさらに含むことができ、この手段は、大量のコーティングを配置することができる表面積の増大をもたらす。
【0114】
本発明の範囲内で使用することができるさらなるコーティング方法に、スプレーコーティングが含まれる。本発明によると、スプレーコーティングは、コーティング組成物のエアロゾル懸濁液の形成を含むことができる。一実施形態では、液滴が約10から200ピコリットルの大きさであるエアロゾル懸濁液を微小突起10の上に噴霧し、次いで乾燥する。
【0115】
パターンコーティングを使用して微小突起34をコーティングすることもできる。パターンコーティングは、堆積した液体を微小突起表面上に配置するための分配システムを用いて施すことができる。沈殿した液体の量は、0.1から20ナノリットル/微小突起の範囲であることが好ましい。適切な精密に計量した液体ディスペンサーの例は、本明細書に参照として全文が組み入れられる米国特許第5916524号、第5743960号、第5741554号、及び第5738728号に開示されている。
【0116】
微小突起コーティング製剤又は溶液を、周知のソレノイドバルブディスペンサー、任意選択の液体運動方法、及び電場を使用することにより一般的に制御される位置決め方法を用いてインクジェット技術を用いて施すこともできる。印刷業界からの他の液体分配技術、又は当技術分野で周知の同様の液体分配技術を、本発明のパターンコーティングを施すために用いることができる。
【0117】
次に図8及び9を参照すると、その全文が本明細書に参照として組み入れられる同時係属中の米国特許出願第09/976762号(公開番号第2002/0091352号)に詳しく記載されているように、貯蔵及び適用のために、微小突起アレイ30が、好ましくは付着性タブ6により保持リング40に懸垂されている。
【0118】
微小突起部材30を保持リング40に配置した後、微小突起部材30を患者の皮膚に施す。好ましくは、微小突起部材30を、図10に示し、その全文が本明細書に参照として組み入れられる同時係属中の米国出願第09/976798号に開示されているような、衝撃アプリケーター45を用いて皮膚に施す。
【0119】
記載したように、本発明の好ましい一実施形態では、固体のコーティングを形成するために微小突起アレイ32に施すコーティング製剤は、水性の製剤を含む。代替の一実施形態では、コーティング製剤は非水性の製剤を含む。本発明によると、各々の免疫学的に活性な物質は、生体適合性の担体内に溶解し、又は担体内に懸濁することができる。
【0120】
記載したように、本発明の好ましい一実施形態では、免疫学的に活性な物質は、ウイルス及び細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、及び核酸ベースのワクチンからなる群から選択されるワクチン(又は、抗原物質)を含む。
【0121】
適切な抗原物質には、限定することなく、タンパク質の形態の抗原、多糖類複合体、オリゴ等、及びリポタンパク質が含まれる。これらのサブユニットワクチンは、百日咳菌(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、コレラ菌(複合体リポ多糖)が含まれる。
【0122】
全てのウイルス又は細菌には、限定することなく、弱体化又は死滅ウイルス、例えば、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、及び水痘帯状疱疹、弱体化又は死滅細菌、例えば、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、及びコレラ菌、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0123】
抗原物質を含むさらなる市販のワクチンには、限定することなく、インフルエンザワクチンを含むインフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風ワクチン、チフスワクチン、ライノウイルスワクチン、B型インフルエンザ菌ワクチン、ポリオワクチン、肺炎連鎖球菌ワクチン、髄膜炎菌ワクチン、RSUワクチン、ヘルペスワクチン、HIVワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン(A、B、及びD型を含む)、及びジフテリアワクチンが含まれる。
【0124】
核酸を含むワクチンには、限定することなく、例えば、スーパーコイルプラスミドDNAなどの1本鎖、及び2本鎖の核酸;線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、並びに、例えばmRNAなどのRNA分子が含まれる。核酸の大きさは、数千キロベースまでであることができる。さらに、本発明のある実施形態では、核酸はタンパク質性の物質と結合していてもよく、又は、例えば、ホスホロチオエート部分などの化学的修飾を1つ又は複数含んでいてもよい。コードする核酸配列は、それに対する免疫反応が望ましい抗原の配列を含む。さらに、DNAの場合は、プロモーター及びポリアデニレーション配列も、ワクチン構築物に組み入れられる。コードすることができる抗原は、感染性疾患の全ての抗原の構成成分、病原体、及び癌抗原を含むことができる。したがって、核酸は、例えば、感染性疾患、癌、アレルギー、自己免疫疾患、及び炎症性疾患の分野に応用が見出される。
【0125】
ワクチン抗原と共にワクチンを含むことができる、適切な免疫反応増強アジュバントは、限定することなく、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、藻類のグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、β−グルカン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、及びスレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、及びインターロイキン18、IL−2、IL−12、IL−15を含む。アジュバントは、例えば、CpG含有オリゴヌクレオチドなどのDNAオリゴヌクレオチドも含む。さらに、IL−18、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質などの免疫調節リンホカインをコードする核酸配列を用いることができる。
【0126】
本発明によると、各コーティング製剤は、少なくとも1つの湿潤剤を含むことができる。適切な湿潤剤には、両親媒性の特性を表す界面活性剤及びポリマーが含まれる。
【0127】
このように、本発明の一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤が、少なくとも1つの界面活性剤を含む。本発明によると、界面活性剤は、双性、両性、陽イオン性、陰イオン性、又は非イオン性であることができる。適切な界面活性剤の例には、ラウリルアムホアセテートナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(TMAC)、塩化ベンザルコニウム、Tween20及びTween80などのポリソルベート、ラウリン酸ソルビタンなどの他のソルビタン誘導体、並びにラウレス−4などのアルコキシル化アルコールが含まれる。最も好ましい界面活性剤には、Tween20、Tween80、及びSDSが含まれる。
【0128】
本発明のさらなる一実施形態では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、両親媒性の特性を有する少なくとも1つのポリマー材料又はポリマーを含む。記されているポリマーには、限定することなく、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、又はエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などのセルロース誘導体、並びにプルロニックが含まれる。
【0129】
本発明の一実施形態では、両親媒性の特性を表すポリマーの濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.01〜20重量%の範囲、より好ましくは約0.03〜10重量%の範囲である。さらにより好ましくは、ポリマーの濃度は、コーティング製剤の約0.1〜5重量%の範囲である。
【0130】
当業者であれば理解するであろうが、記されている湿潤剤は、別々に、又は組み合わせて用いることができる。
【0131】
本発明によると、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、親水性ポリマーをさらに含むことができる。親水性ポリマーを以下の群から選択することが好ましい:デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物などのポリマー。当技術分野ではよく知られているように、記されているポリマーは粘度を上昇させる。
【0132】
コーティング製剤における親水性ポリマーの濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約0.01〜50重量%の範囲、より好ましくは約0.03〜30重量%の範囲である。さらにより好ましくは、親水性ポリマーの濃度は、コーティング製剤の約0.1〜20重量%の範囲である。
【0133】
本発明によると、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、同時係属中の米国特許出願第10/127108号に開示されているものなどの生体適合性の担体を含む。生体適合性の担体の例には、ヒトアルブミン、バイオ操作したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、ショ糖、トレハロース、メレチトース、ラフィノース、及びスタキオースが含まれる。
【0134】
コーティング製剤における生体適合性の担体の濃度は、コーティング製剤の、好ましくは約2〜70重量%の範囲、より好ましくは約5〜50重量%の範囲である。さらにより好ましくは、担体の濃度は、コーティング製剤の、約10〜40重量%の範囲である。
【0135】
本発明によると、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、同時係属中の米国特許出願第10/674626号に開示されているものなどの血管収縮薬をさらに含むことができる。記されている同時係属中の出願に記載されているように、血管収縮薬は、微小突起部材上に適用する間及び後に出血を制御するために用いられる。好ましい血管収縮薬には、それだけには限定されないが、アミデフリン、カファミノール、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノラミン、フェニルプロパノラミン、プロピルヘキセドリン、シュードエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、バソプレシン、キシロメタゾリン、及びこれらの混合物が含まれる。最も好ましい血管収縮薬には、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリン、及びキシロメタゾリンが含まれる。
【0136】
血管収縮薬を使用する場合、その濃度は、コーティング製剤の約0.1重量%から10重量%の範囲であることが好ましい。
【0137】
本発明のさらに別の一態様では、少なくとも1つのコーティング製剤、好ましくは各コーティング製剤は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる同時係属中の米国特許出願第09/950436号に開示されているものなど、少なくとも1つの「通路開放性モジュレーター」を含む。記されている同時係属中の出願に述べてあるように、通路開放性モジュレーターは、皮膚の自然治癒の過程を防ぎ又は低減させ、それにより、微小突起部材アレイにより角質層に形成された経路又は微小の切れ目の閉鎖を防ぐ。通路開放性モジュレーターの例には、限定することなく、浸透圧剤(例えば、塩化ナトリウム)、及び双性イオン化合物(例えば、アミノ酸)が含まれる。
【0138】
同時係属中の出願で定義される「通路開放性モジュレーター」は、抗炎症薬、例えば、ベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−リン酸二ナトリウム塩、塩酸ヒドロコルメート、ヒドロコルチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾンリン酸二ナトリウム、及びプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、並びに抗凝固薬、例えば、クエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、硫酸デキストリンナトリウム、アスピリン、及びEDTAをさらに含む。
【0139】
本発明によると、各コーティング製剤は、エタノール、クロロホルム、エーテル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの非水性の溶剤;染料、色素、不活性の充填剤、浸透増強剤、賦形剤、及び当技術分野で周知の薬剤製品又は経皮の装置の他の従来の構成成分も含むことができる。
【0140】
他の周知の製剤のアジュバントも、コーティング製剤の必要な溶解性及び粘性の特徴、並びに乾燥したコーティングの物理的な統合性に悪影響を与えなければ、コーティング製剤に加えることもできる。
【0141】
好ましくは、各コーティング製剤の粘度は、各微小突起10を効果的にコーティングするために、約5ポアズ未満である。より好ましくは、各コーティング製剤の粘度は、約0.3〜2.0ポアズの範囲である。
【0142】
本発明によると、各アレイ領域のコーティングの厚さの中央値は、好ましくは100ミクロン未満であり、より好ましくは50ミクロン未満である。さらにより好ましくは、コーティングの厚さは、約2〜30ミクロンの範囲である。
【0143】
望ましいコーティングの厚さは、必要とされる投与量、及びそれゆえに投与量を送達するのに必要なコーティングの厚さ、シートの単位面積あたりの微小突起の密度、並びに各アレイ領域及び選択されたコーティング方法で使用されるコーティング製剤の粘度及び濃度を含めたいくつかの要因に依存する。
【0144】
全ての場合において、コーティング製剤を施用した後、各コーティング製剤を様々な手段により微小突起上で乾燥することができる。本発明の一実施形態では、コーティングした微小突起アレイを、周囲の室温で空気乾燥する。別の一実施形態では、コーティングした微小突起アレイを真空乾燥する。さらに別の一実施形態では、コーティングした微小突起アレイを空気乾燥し、その後真空乾燥する。
【0145】
微小突起上のコーティング製剤を乾燥するために、様々な温度及び湿度のレベルを用いることもできる。コーティングした微小突起アレイを、このように加熱し、凍結乾燥し、フリーズドライし、又は同様の技術に曝して、コーティングから水分を除く。
【0146】
本発明の一実施形態によると、複数の免疫学的に活性な物質を同時に送達するための方法は、以下:(i)多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、微小突起アレイが多数のアレイ領域を有するステップと、(ii)第1のアレイ領域における少なくとも第1の微小突起を、第1の免疫学的に活性な物質を有する第1の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、(iii)第2のアレイ領域における少なくとも第2の微小突起を、第2の免疫学的に活性な物質を有する第2の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、(iv)コーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップとを含む。
【0147】
当業者であれば理解するであろうが、本発明は、単に、複数のワクチンを送達することに制限されない。事実、本発明は、アレルギー試験の脱感作手順のために複数のアレルゲンの送達を促進するために容易に使用することができる。
【0148】
さらに、ある病原体に対するワクチン接種は、相容性ではないことがあるイソ型、例えば23のイソ型を有するシュードモナス菌(Pseudomonas)での免疫化を必要とする。したがって、本発明は、このような予防接種を促進するのに容易に使用することができる。
【0149】
また、免疫増強アジュバントの同時送達は、セロプロペクション(seropropection)を確実にするために、ワクチンの免疫原性を増大するのに必要であることがある。したがって、本発明の代替の実施形態では、微小突起アレイは、(i)ワクチンを含む第1の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第1のアレイ領域、及びアジュバントを含む第2の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第2のアレイ領域、又は(ii)第1のワクチンを含む第1の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第1のアレイ領域、第2のワクチンを含む第2の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第2のアレイ領域、及びアジュバントを含む第3の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第3のアレイ領域、又は(iii)多数のワクチンを含む第1の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第1のアレイ領域、及びアジュバントを含む第2の生体適合性のコーティングでコーティングされている少なくとも第2のアレイ領域、を含むことができる。
【0150】
したがって、本発明のさらなる一実施形態によると、複数の免疫学的に活性な物質を送達するための方法は以下:(i)多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、微小突起アレイは第1及び第2のアレイ領域を有するステップと、(ii)第1の生体適合性のコーティングで第1のアレイ領域をコーティングし、第1の生体適合性のコーティングは、免疫学的に活性な物質を含むステップと、(iii)第2の生体適合性のコーティングで第2のアレイ領域をコーティングし、第2の生体適合性のコーティングは免疫反応増強アジュバントを含むステップと、(iv)コーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップとを含む。
【0151】
当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、本発明を様々な使用及び条件に応用するために、本発明に対する様々な変更及び修正を行うことができる。そのようなものとして、これらの変更及び修正は、上記に記載した実施形態の同等物の全範囲内に、適切にあり、公正にあり、且つあるものとされる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明による微小突起アレイの一実施形態の部分の斜視図である。
【図2】微小突起上に堆積している生体適合性のコーティングを有する、図1に示した微小突起アレイの斜視図である。
【図3】本発明による、接着性の裏当てを有する微小突起アレイの横断面図である。
【図4】本発明による、微小突起アレイの別の一実施形態の部分の斜視図である。
【図5】本発明による、微小突起アレイの領域及びそのパターンを有する微小突起アレイの実施形態の概略図である。
【図6】本発明による、微小突起アレイの領域及びそのパターンを有する微小突起アレイの実施形態の概略図である。
【図7】本発明による、微小突起アレイの領域及びそのパターンを有する微小突起アレイの実施形態の概略図である。
【図8】本発明による、そこに配置されている微小突起部材を有する保持物の横断面図である。
【図9】図8に示した保持物の斜視図である。
【図10】図8に示したアプリケーター及び保持物の斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角質層に穿孔する多数の微小突起を有する微小突起アレイを含み、前記微小突起アレイは、少なくとも第1及び第2のアレイ領域を有し、前記第1のアレイ領域は、その上に配置された第1の生体適合性のコーティングを有し、前記第2のアレイ領域は、その上に配置された第2の生体適合性のコーティングを有し、前記第1の生体適合性のコーティングは少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含む、複数の免疫学的に活性な物質を経皮送達するためのシステム。
【請求項2】
前記第2の生体適合性のコーティングが、免疫反応増強アジュバントを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記免疫学的に活性な物質が、ウイルス、細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、及び核酸ベースのワクチンからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記免疫学的に活性な物質が、ウイルス、弱体化ウイルス、死滅ウイルス、細菌、弱体化細菌、死滅細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、核酸ベースのワクチン、タンパク質、多糖類複合体、オリゴ糖、リポタンパク質、百日咳菌(Bordetella pertussis)(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(Clostridium tetani)(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(Group A Streptcoccus)(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(合成ペプチド)、風疹(Rubella)ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹(Varicella zoster)ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、コレラ菌(Vibrio cholerae)(複合体リポ多糖)、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、コレラ菌、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、ジフテリアワクチン、核酸、1本鎖核酸、2本鎖核酸、スーパーコイルプラスミドDNA、線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、RNA分子、及びmRNAからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記免疫学的に活性な物質が、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、藻類のグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド(Murametide)、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン(Pleuran)、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、スクラボ(sclavo)ペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、スレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、インターロイキン18(IL−18)、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、DNAオリゴヌクレオチド、CpG含有オリゴヌクレオチド、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質からなる群から選択される免疫反応増強アジュバントを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記免疫反応増強アジュバントが、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、αグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、スレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、インターロイキン18(IL−18)、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、DNAオリゴヌクレオチド、CpG含有オリゴヌクレオチド、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質からなる群から選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記微小突起の部材が、少なくとも約100微小突起/cm2の微小突起密度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記微小突起の部材が、約200〜3000微小突起/cm2の範囲の微小突起密度を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記微小突起の各々が1000ミクロン未満の長さである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記微小突起の各々が約50〜145ミクロンの範囲の長さである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1及び第2の生体適合性のコーティングの厚さが、約2〜50ミクロンの範囲の厚さである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1及び第2の生体適合性のコーティングがコーティング製剤から形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記コーティング製剤が水性の製剤を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コーティング製剤が界面活性剤を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記界面活性剤が、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(TMAC)、塩化ベンザルコニウム、Tween20及びTween80などのポリソルベート、ソルビタン誘導体、ラウリン酸ソルビタン、アルコキシル化アルコール、並びにラウレス−4からなる群から選択される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コーティング製剤が両親媒性のポリマーを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記両親媒性のポリマーが、セルロース誘導体、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、及びプルロニック(pluronics)からなる群から選択される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コーティング製剤が親水性ポリマーを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記コーティング製剤が生体適合性の担体を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記生体適合性のポリマーが、ヒトアルブミン、バイオ操作したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、ショ糖、トレハロース、メレチトース、ラフィノース、及びスタキオースからなる群から選択される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記コーティング製剤が、非還元糖、多糖類、還元糖、及びDNase阻害物質からなる群から選択される安定化剤を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項23】
前記コーティング製剤が血管収縮薬を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項24】
前記血管収縮薬が、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン(tymazoline)、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、アミデフリン、カファミノール(cafaminol)、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン(nordefrin)、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノラミン、フェニルプロパノラミン、プロピルヘキセドリン、シュードエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、バソプレシン、及びキシロメタゾリンからなる群から選択される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記コーティング製剤が通路開放性モジュレーターを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項26】
前記通路開放性モジュレーターが、浸透圧剤、塩化ナトリウム、双性イオン化合物、アミノ酸、抗炎症薬、ベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−リン酸二ナトリウム塩、塩酸ヒドロコルメート、ヒドロコルチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾンリン酸二ナトリウム、プレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、抗凝固薬、クエン酸、クエン酸塩、クエン酸ナトリウム、硫酸デキストランナトリウム、及びEDTAからなる群から選択される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記コーティング製剤の粘度が、約5ポアズ未満の、且つ約0.3ポアズを超える、請求項12に記載のシステム。
【請求項28】
角質層に穿孔する多数の微小突起を有する微小突起アレイを含み、前記微小突起アレイは、少なくとも第1及び第2のアレイ領域を有し、前記第1のアレイ領域は、その上に配置された第1の生体適合性のコーティングを有し、前記第1の生体適合性のコーティングは第1の免疫学的に活性な物質を含み、前記第2のアレイ領域は、その上に配置された第2の生体適合性のコーティングを有し、前記第2の生体適合性のコーティングは第2の免疫学的に活性な物質を含む、複数の免疫学的に活性な物質を経皮送達するためのシステム。
【請求項29】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が異なる、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が、ウイルス、細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、及び核酸ベースのワクチンからなる群から選択される、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が、ウイルス、弱体化ウイルス、死滅ウイルス、細菌、弱体化細菌、死滅細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、核酸ベースのワクチン、タンパク質、多糖類複合体、オリゴ糖、リポタンパク質、百日咳菌(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、コレラ菌(複合体リポ多糖)、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、コレラ菌、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、ジフテリアワクチン、核酸、1本鎖核酸、2本鎖核酸、スーパーコイルプラスミドDNA、線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、RNA分子、及びmRNAからなる群から選択される、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、αグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、スレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、インターロイキン18(IL−18)、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、DNAオリゴヌクレオチド、CpG含有オリゴヌクレオチド、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質からなる群から選択される免疫反応増強アジュバントを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記微小突起の部材が、少なくとも約100微小突起/cm2の微小突起密度を有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項34】
前記微小突起の部材が、約200〜3000微小突起/cm2の範囲の微小突起密度を有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記微小突起の各々が約50〜145ミクロンの範囲の長さである、請求項28に記載のシステム。
【請求項36】
多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、前記微小突起アレイが少なくとも第1及び第2のアレイ領域を有するステップと、
前記第1のアレイ領域を第1の生体適合性のコーティングでコーティングし、前記第1の生体適合性のコーティングは少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含むステップと、
前記第2のアレイ領域を第2の生体適合性のコーティングでコーティングし、前記第2の生体適合性のコーティングは免疫反応増強アジュバント含むステップと、
前記のコーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップと、
を含む、複数の免疫学的に活性な物質を対象に経皮送達するための方法。
【請求項37】
多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、前記微小突起アレイが多数のアレイ領域を有するステップと、
第1のアレイ領域における少なくとも第1の微小突起を、第1の免疫学的に活性な物質を有する第1の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、
第2のアレイ領域における少なくとも第2の微小突起を、第2の免疫学的に活性な物質を有する第2の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、
前記のコーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップと
を含む、複数の免疫学的に活性な物質を対象に経皮送達するための方法。
【請求項38】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が異なる、請求項37に記載の方法。
【請求項1】
角質層に穿孔する多数の微小突起を有する微小突起アレイを含み、前記微小突起アレイは、少なくとも第1及び第2のアレイ領域を有し、前記第1のアレイ領域は、その上に配置された第1の生体適合性のコーティングを有し、前記第2のアレイ領域は、その上に配置された第2の生体適合性のコーティングを有し、前記第1の生体適合性のコーティングは少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含む、複数の免疫学的に活性な物質を経皮送達するためのシステム。
【請求項2】
前記第2の生体適合性のコーティングが、免疫反応増強アジュバントを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記免疫学的に活性な物質が、ウイルス、細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、及び核酸ベースのワクチンからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記免疫学的に活性な物質が、ウイルス、弱体化ウイルス、死滅ウイルス、細菌、弱体化細菌、死滅細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、核酸ベースのワクチン、タンパク質、多糖類複合体、オリゴ糖、リポタンパク質、百日咳菌(Bordetella pertussis)(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(Clostridium tetani)(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(Group A Streptcoccus)(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(合成ペプチド)、風疹(Rubella)ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹(Varicella zoster)ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、コレラ菌(Vibrio cholerae)(複合体リポ多糖)、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、コレラ菌、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、ジフテリアワクチン、核酸、1本鎖核酸、2本鎖核酸、スーパーコイルプラスミドDNA、線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、RNA分子、及びmRNAからなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記免疫学的に活性な物質が、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、藻類のグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド(Murametide)、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン(Pleuran)、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、スクラボ(sclavo)ペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、スレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、インターロイキン18(IL−18)、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、DNAオリゴヌクレオチド、CpG含有オリゴヌクレオチド、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質からなる群から選択される免疫反応増強アジュバントを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記免疫反応増強アジュバントが、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、αグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、スレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、インターロイキン18(IL−18)、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、DNAオリゴヌクレオチド、CpG含有オリゴヌクレオチド、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質からなる群から選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記微小突起の部材が、少なくとも約100微小突起/cm2の微小突起密度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記微小突起の部材が、約200〜3000微小突起/cm2の範囲の微小突起密度を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記微小突起の各々が1000ミクロン未満の長さである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記微小突起の各々が約50〜145ミクロンの範囲の長さである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1及び第2の生体適合性のコーティングの厚さが、約2〜50ミクロンの範囲の厚さである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1及び第2の生体適合性のコーティングがコーティング製剤から形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記コーティング製剤が水性の製剤を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コーティング製剤が界面活性剤を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記界面活性剤が、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(TMAC)、塩化ベンザルコニウム、Tween20及びTween80などのポリソルベート、ソルビタン誘導体、ラウリン酸ソルビタン、アルコキシル化アルコール、並びにラウレス−4からなる群から選択される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コーティング製剤が両親媒性のポリマーを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記両親媒性のポリマーが、セルロース誘導体、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、及びプルロニック(pluronics)からなる群から選択される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コーティング製剤が親水性ポリマーを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記コーティング製剤が生体適合性の担体を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記生体適合性のポリマーが、ヒトアルブミン、バイオ操作したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、ショ糖、トレハロース、メレチトース、ラフィノース、及びスタキオースからなる群から選択される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記コーティング製剤が、非還元糖、多糖類、還元糖、及びDNase阻害物質からなる群から選択される安定化剤を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項23】
前記コーティング製剤が血管収縮薬を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項24】
前記血管収縮薬が、エピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、インダナゾリン、メチゾリン、トラマゾリン、チマゾリン(tymazoline)、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、アミデフリン、カファミノール(cafaminol)、シクロペンタミン、デオキシエピネフリン、エピネフリン、フェリプレシン、インダナゾリン、メチゾリン、ミドドリン、ナファゾリン、ノルデフリン(nordefrin)、オクトドリン、オルニプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルエタノラミン、フェニルプロパノラミン、プロピルヘキセドリン、シュードエフェドリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、ツアミノヘプタン、チマゾリン、バソプレシン、及びキシロメタゾリンからなる群から選択される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記コーティング製剤が通路開放性モジュレーターを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項26】
前記通路開放性モジュレーターが、浸透圧剤、塩化ナトリウム、双性イオン化合物、アミノ酸、抗炎症薬、ベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−リン酸二ナトリウム塩、塩酸ヒドロコルメート、ヒドロコルチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾンリン酸二ナトリウム、プレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、抗凝固薬、クエン酸、クエン酸塩、クエン酸ナトリウム、硫酸デキストランナトリウム、及びEDTAからなる群から選択される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記コーティング製剤の粘度が、約5ポアズ未満の、且つ約0.3ポアズを超える、請求項12に記載のシステム。
【請求項28】
角質層に穿孔する多数の微小突起を有する微小突起アレイを含み、前記微小突起アレイは、少なくとも第1及び第2のアレイ領域を有し、前記第1のアレイ領域は、その上に配置された第1の生体適合性のコーティングを有し、前記第1の生体適合性のコーティングは第1の免疫学的に活性な物質を含み、前記第2のアレイ領域は、その上に配置された第2の生体適合性のコーティングを有し、前記第2の生体適合性のコーティングは第2の免疫学的に活性な物質を含む、複数の免疫学的に活性な物質を経皮送達するためのシステム。
【請求項29】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が異なる、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が、ウイルス、細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、及び核酸ベースのワクチンからなる群から選択される、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が、ウイルス、弱体化ウイルス、死滅ウイルス、細菌、弱体化細菌、死滅細菌、タンパク質ベースのワクチン、多糖類ベースのワクチン、核酸ベースのワクチン、タンパク質、多糖類複合体、オリゴ糖、リポタンパク質、百日咳菌(リコンビナントPTワクチン−無細胞)、破傷風菌(精製、リコンビナント)、ジフテリア菌(精製、リコンビナント)、サイトメガロウイルス(糖タンパク質サブユニット)、A型連鎖球菌(糖タンパク質サブユニット、破傷風毒素を有する複合多糖A型多糖類、毒性サブユニットの担体に結合しているMタンパク質/ペプチド、Mタンパク質、多価タイプ特異的エピトープ、システインプロテアーゼ、C5aペプチダーゼ)、B型肝炎ウイルス(リコンビナントPreS1、Pre−S2、S、リコンビナントコアタンパク質)、C型肝炎ウイルス(リコンビナント−発現された表面タンパク質及びエピトープ)、ヒトパピローマウイルス(カプシドタンパク質、TA−GNリコンビナントタンパク質L2及びE7)[HPV−6由来]、HPV−11由来のMEDI−501リコンビナントVLP L1、4価リコンビナントBLP L1[HPV−6由来]、HPV−11、HPV−16、及びHPV−18、LAMP−E7[HPV−16由来])、レジオネラ・ニューモフィラ菌(精製した細菌表面タンパク質)、髄膜炎菌(破傷風毒素との複合多糖)、緑膿菌(合成ペプチド)、風疹ウイルス(合成ペプチド)、肺炎連鎖球菌(B群髄膜炎菌 OMPに複合している複合多糖[1,4,5,6B,9N,14,18C,19V,23F]、CRM197に複合している複合多糖[4,6B,9V,14,18C,19F,23F]、CRM1970に複合している複合多糖[1,4,5,6B,9V,14,18C,19F,23F]、梅毒トレポネーマ(表面リポタンパク質)、水痘帯状疱疹ウイルス(サブユニット、糖タンパク質)、コレラ菌(複合体リポ多糖)、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、A型連鎖球菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマ、コレラ菌、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチン、ジフテリアワクチン、核酸、1本鎖核酸、2本鎖核酸、スーパーコイルプラスミドDNA、線状プラスミドDNA、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母菌人工染色体(YAC)、哺乳動物人工染色体、RNA分子、及びmRNAからなる群から選択される、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が、リン酸アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、αグルカン、β−グルカン、コレラ毒素Bサブユニット、CRL1005、平均値がx=8及びy=205のABAブロック重合体、γイヌリン、線状(非分枝)β−D(2−>1)ポリフルクトフラノキシル−α−D−グルコース、ゲルブアジュバント、N−アセチルグルコサミン−(β1−4)−N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−グルタミン(GMDP)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDA)、亜鉛L−プロリン塩複合体(Zn−Pro−8)、イミキモド(1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、ImmTher(登録商標)、二パルミチン酸N−アセチルグルコアミニル−N−アセチルムラミル−L−Ala−D−isoGlu−L−Ala−グリセロール、MTP−PEリポソーム、C59H108N6O19PNa−3H2O(MTP)、ムラメチド、Nac−Mur−L−Ala−D−Gln−OCH3、プルーラン、QS−21、S−28463、4−アミノ−a,a−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5c]キノリン−1−エタノール、サルボペプチド、VQGEESNDK・HCl(IL−1β 163−171ペプチド)、スレオニル−MDP(Termurtide(登録商標))、N−アセチルムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン、インターロイキン18(IL−18)、IL−2、IL−12、IL−15、IL−4、IL−10、DNAオリゴヌクレオチド、CpG含有オリゴヌクレオチド、γインターフェロン、及びNFκB調節シグナル伝達タンパク質からなる群から選択される免疫反応増強アジュバントを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記微小突起の部材が、少なくとも約100微小突起/cm2の微小突起密度を有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項34】
前記微小突起の部材が、約200〜3000微小突起/cm2の範囲の微小突起密度を有する、請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記微小突起の各々が約50〜145ミクロンの範囲の長さである、請求項28に記載のシステム。
【請求項36】
多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、前記微小突起アレイが少なくとも第1及び第2のアレイ領域を有するステップと、
前記第1のアレイ領域を第1の生体適合性のコーティングでコーティングし、前記第1の生体適合性のコーティングは少なくとも1つの免疫学的に活性な物質を含むステップと、
前記第2のアレイ領域を第2の生体適合性のコーティングでコーティングし、前記第2の生体適合性のコーティングは免疫反応増強アジュバント含むステップと、
前記のコーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップと、
を含む、複数の免疫学的に活性な物質を対象に経皮送達するための方法。
【請求項37】
多数の微小突起を有する微小突起アレイを提供し、前記微小突起アレイが多数のアレイ領域を有するステップと、
第1のアレイ領域における少なくとも第1の微小突起を、第1の免疫学的に活性な物質を有する第1の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、
第2のアレイ領域における少なくとも第2の微小突起を、第2の免疫学的に活性な物質を有する第2の生体適合性のコーティングでコーティングするステップと、
前記のコーティングした微小突起アレイを対象の皮膚に施すステップと
を含む、複数の免疫学的に活性な物質を対象に経皮送達するための方法。
【請求項38】
前記第1及び第2の免疫学的に活性な物質が異なる、請求項37に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−537783(P2007−537783A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508359(P2007−508359)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/009152
【国際公開番号】WO2005/103303
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501411662)アルザ コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/009152
【国際公開番号】WO2005/103303
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501411662)アルザ コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]