説明

複数の分散電源と連携した電力ネットワークシステム及び電力料金管理方法

【課題】分散電源による電力供給を行うローカルネットワークにおいてエネルギーの無駄をなくし、コスト削減を図る。
【解決手段】複数の分散電源1が第二の共有線20に接続されており、分散電源1で発電した電力を複数の需要家6に供給するローカルネットワークを形成する。分散電源1は需要家6に設置されているもの、共有スペースに設置されているものなど様々であるが、いずれも特定の需要家6に配電するのではなく、第二の共有線20を通じて接続されているすべての需要家6に供給される。また、外部系統につながる外部系統配線7が、第一の共有線4を介して各需要家6に接続する。第二の共有線20は、第一の共有線4が各需要家6へと分岐する各配線4aに接続しており、これら接続部8で電力を計測すれば、各需要家6で使用する外部系統からの電力、第二の共有線20からの電力の各々が明瞭である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の需要家と複数の分散電源が存在するときのそれぞれの需要家、分散電源及び外部系統との接続形態や運用事業形態に利用して好適な電力ネットワークシステム及び電力料金課金方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電、小型風力発電、燃料電池などの一般家庭で使用できる分散電源が年々普及しつつある。太陽光発電や小型風力発電などは自然エネルギーを利用するため、発電量の変動幅が大きく電力供給が不安定である。この不安定を解消する手段としてリチウムイオン電池やニッケル水素電池などに代表される二次電池のように蓄電機能を有する設備の導入も進んでいる。燃料電池の発電量は安定しており、制御も可能である。制御幅は10%程度である。
【0003】
発電コストはメガインフラで23円/kWhである。これに対し、太陽光発電は47〜63円/kWh、小型風力発電や燃料電池もメガインフラに比べて割高であることが知られている。さらに、電力供給安定化のための蓄電設備も低コスト化が求められている。
【0004】
太陽光発電、燃料電池は直流で出力する。風力発電は交流で出力するものの直流に変換し、再び交流にして供給される。すなわち、多くの分散電源は需要家で使用するまでに直流を経由し、その後交流に変換し需要家に供給される。直流/交流を変換する場合、エネルギーが損失し、設備コストも多くなる。少しでもエネルギー効率を高め、コストを削減するには変換する回数を少なくしたいところである。
【0005】
通常、太陽光発電、燃料電池などの分散電源は、一需要家が一台所有し、発電電力はその需要家が使用する利用方法が一般的である。また、こうした利用方法を想定して、一需要家内での分散電源を有効に使用するためのシステムや方法が、例えば特許文献1における分散電源とインバータなどを情報ネットワークで接続し、監視、制御を行いつつ、系統連携や省エネルギー化を図るシステム、さらには、特許文献2における余剰電力を二次電池などの蓄電機能を有する設備を配置しEMSで制御する方法、などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−207225号公報
【特許文献2】特開2011−120323号公報
【特許文献3】特開2006−191748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、一需要家だけでは電力消費量の変動が大きい。また、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーを利用した分散電源は、その発電量は制御不能であり、また、日々の発電量のバラツキも大きい。よって、エネルギーのロスも大きく、コスト高の原因にもなっている。
【0008】
本発明は、一需要家による消費量の変動を少なくする方法として複数の需要家を共有線で接続し、需要家単位の変動幅を小さくし、省エネルギーや低コスト化を達成するものである。
【0009】
同様の従来方式として特許文献3では、図3に示すように、分散電源51を所有する複数の需要家52と、所有しない複数の需要家53を共有線54で接続する構成を提案している。共有線54は、外部系統につながる外部系統配線55に接続する。外部系統に接続する需要家が複数になる効果として、一需要家での変動幅(最高値/最低値)が10倍であるのに対して、集合住宅では3.8倍になることを紹介している。この特許文献3では、共有線54と外部系統配線55はポイントJを通じて連携し、不足する電力は外部系統から補う。
【0010】
しかしながら、従来方式では、J点のみで外部系統と接続していることから各需要家が使用した共有、外部系統それぞれの電力量の割合が不明瞭であり、実施する際の課金方法が曖昧にならざるを得ない。さらに、共有線54ではJ点と分散電源51の間でDC/AC変換をすることになり、それによるエネルギーロス、コストが生じることになる。
【0011】
本発明は、分散電源による電力供給を行うローカルネットワークにおいてエネルギーの無駄をなくし、コスト削減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)複数の需要家と複数の分散電源とを構成要素とするローカルネットワークにより構成される電力ネットワークシステムであって、
前記複数の需要家及び外部系統が接続する第一の共有線と、前記複数の需要家及び前記複数の分散電源が接続する第二の共有線とを有することを特徴とする電力ネットワークシステム。
(2)前記第二の共有線に接続する蓄電設備を構成要素として有することを特徴とする(1)記載の電力ネットワークシステム。
(3)前記複数の需要家に対して前記第一の共有線及び前記第二の共有線からいずれも交流電力が供給されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電力ネットワークシステム
(4)前記複数の需要家に対して前記第一の共有線では前記外部系統から交流電力が供給され、前記第二の共有線では前記分散電源から直流電力が供給されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電力ネットワークシステム。
(5)前記第一の共有線がAC/DC変換器を介して前記第二の共有線に接続することを特徴とする(4)に記載の電力ネットワークシステム。
(6)前記構成要素を制御する管理サーバを備えたことを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか1に記載の電力ネットワークシステム。
(7)前記複数の分散電源による発電量と、前記複数の需要家による直流電力の消費量とを比較して、前記AC/DC変換器を制御する管理サーバを備えたことを特徴とする(5)に記載の電力ネットワークシステム。
(8)前記需要家の数が100以上であることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれか1に記載の電力ネットワークシステム
(9)(1)乃至(8)のいずれか1に記載の電力ネットワークシステムにおける電力料金管理方法であって、
前記各需要家において前記第一の共有線を介して使用した電力、及び前記第二の共有線を介して使用した電力に対して各々に課金することを特徴とする電力料金管理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分散電源による電力供給を行うローカルネットワークにおいてエネルギーの無駄をなくし、コスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る電力ネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態に係る電力ネットワークシステムの構成を示す図である。
【図3】共有線を用いた従来方式の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態に係る電力ネットワークシステムの構成を示す。図1に示すように、第1の実施形態に係る電力ネットワークシステムでは、太陽光発電、風力発電、燃料電池などの複数の分散電源1が第二の共有線20に接続されており、分散電源1で発電した電力をDC/AC変換して複数の需要家6に供給するローカルネットワークを形成する。分散電源1は需要家6に設置されているもの、共有スペースに設置されているものなど様々であるが、いずれも特定の需要家6に配電するのではなく、第二の共有線20を通じて接続されているすべての需要家6に供給される。
【0016】
また、外部系統につながる外部系統配線7が、第一の共有線4を介して各需要家6に接続する。第二の共有線20は、第一の共有線4が各需要家6へと分岐する各配線4aに接続しており、これら接続部8で電力を計測すれば、各需要家6で使用する外部系統からの電力、第二の共有線20からの電力の各々が明瞭である。したがって、従来方式のように、実施する際の課金方法が曖昧になることがない。
【0017】
この接続部8では、第二の共有線20からの供給電力が各需要家6での消費量を下回ると予想されるときのみ、外部系統からの電力を使用する仕組みを設けておく。
【0018】
このように複数の分散電源1を接続することにより、電力供給によるバラツキが減少する。また、複数の需要家6と接続することにより、消費量の変動も小さくなる。この共有のメリットによって、無駄が少なく電力を使用することができ、そのことによって、エネルギーコストを削減できる。さらに、太陽光発電はある一定台数以上を一括購入することによって、安価に購入することもできる。
【0019】
第二の共有線20に、二次電池などの蓄電機能を有する蓄電設備9を接続することによって、余剰電力を蓄電することができる。ローカルネットワークには複数の分散電源1及び複数の需要家6が接続され、発電量及び消費量の変動が小さく、蓄電設備9の容量を少なくすることがきる。
【0020】
各分散電源1、各需要家6、各蓄電設備9は情報ネットワーク21を介して管理サーバ100により制御される。管理サーバ100は、発電量計測部101、消費量計測部102、蓄電量計測部103を備え、各分散電源1による発電量、各需要家6による消費量、各蓄電設備9による蓄電量を逐次、計測する。そして、管理サーバ100の制御部104は、分散電源1による発電量の合計と需要家6による消費量の合計とを比較して、発電量>消費量の場合は蓄電、発電量<消費量の場合は外部系統から購入という制御を行う。
【0021】
需要家6の数が100以上であると、各需要家6のバラツキが打ち消し合い、全体の消費量の変動幅は最小と最大が3倍以下となり、エネルギーの無駄が少なくなる。また、前述のように蓄電設備9の容量を一需要家に1台配置する場合の1/3以下で十分となり、設備費を削減することにもつながる。
【0022】
太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを利用した分散電源1を設置する範囲が1km2よりも広い面積であると、発電の時間による変動を少なくできる。1km以上離れた場所に設置した二つの太陽光発電では、雲による太陽光の遮りに時間差生じ、遮りによる発電量の負のピークが打ち消し合い、合計の発電電力量でのバラツキが少なくなる。一方、1km以上離れた場所に設置した二つの風力発電では、風力、風向きが異なり互いのピークが打ち消し合い合計の発電電力量でのバラツキが少なくなる。
【0023】
(第2の実施形態)
図2に、第2の実施形態に係る電力ネットワークシステムの構成を示す。なお、第1の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、以下では、第1の実施形態との相違を中心に説明する。
【0024】
第1の実施形態では、分散電源1で発電した電力をDC/AC変換して複数の需要家6に供給するが、第2の実施形態では、分散電源1で発電した電力を直流で複数の需要家6に供給する。すなわち、各需要家6は、第一の共有線4を交流用配線として、第二の共有線20を直流用配線としてそれぞれを分けて電力消費することになる。
【0025】
また、第一の共有線4が配線12及びAC/DC変換器13を介して第二の共有線20に接続する。これにより、外部系統から交流電力を第一の共有線4を介して導入し、AC/DC変換器13によって直流電力に変換して第二の共有線20に供給することができる。
【0026】
各分散電源1、各需要家6、各蓄電設備9、AC/DC変換器13は情報ネットワーク21を介して管理サーバ200により制御される。管理サーバ200は、発電量計測部201、消費量計測部202、蓄電量計測部203を備え、分散電源1による発電量、需要家6による消費量、蓄電設備9による蓄電量を逐次、計測する。また、AC/DC変換機13は、配線12を通ってAC/DC変換される電力量を計測、積算する機能を具備している。該AC/DC変換機に前記の機能を具備しない場合は、配線12上の適当な点で、AC/DC変換される電力量を計測、積算する装置を配置してもよい。これら、AC/DC変換された電力量、及びその積算値は、情報ネットワーク21を介して管理サーバ200によって管理される。この場合に、消費量は直流、交流それぞれについて逐次、計測することになる。そして、管理サーバ200の制御部204は、分散電源1による発電量の合計と各需要家6による直流消費量の合計とを比較して、発電量>直流消費量の場合は蓄電、発電量<直流消費量の場合は外部系統から交流電力を第一の共有線4を介して導入し、AC/DC変換器13によって直流電力に変換して第二の共有線20に供給するという制御を行う。
【0027】
第2の実施形態では、分散電源1による発電を直流のまま送電し、使用するので、直流変換する必要が無く、交流を使用する場合に比べ、送電ロス、変換ロスは減り、また、変化するための設備費が低減することになる。
【0028】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態に係る電量ネットワークシステムにおける電力料金課金方法について説明する。各需要家6において、第一の共有線4を介して使用した電力量のデータ及び第二の共有線20を介して使用した電力量のデータを各々独立に蓄積し、各々の使用電力量に対して独立に課金する。
【0029】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第2の実施形態に係る電量ネットワークシステムにおける電力料金課金方法について説明する。各需要家6において、第一の共有線4を介して使用した電力量のデータ及び第二の共有線20を介して使用した電力量のデータを各々独立に蓄積し、更に、第一の共有線4からAC/DC変換器13を介して第二の共有線20に供給した電力量のデータも蓄積する。そして、第二の共有線20を介して使用した電力量のうち、外部系統から供給された電力量は、適当な数式によって各需要家の使用した電力量として割り当て、課金する。
【0030】
例えば、ある一定期間の第二の共有線20での全需要家6の全供給電力量をQ2、第一の共有線4からAC/DC変換器13を介して第二の共有線20に供給した電力量をQ12、需要家aが第二の共有線20を通して使用した電力量をQaとする。このとき、需要家aが使用した第二の共有線20からの電力量のうち、
Qa×Q12/Q2
の電力量を系統電力料金として、また、
Qa×(Q2−Q12)/Q2
の電力量を第二の共有線20の電力料金として課金する。
【0031】
以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 分散電源
4 第一の共有線
6 需要家
7 外部系統配線
8 接続部
9 蓄電設備
12 配線
13 AC/DC変換器
20 第二の共有線
100、200 管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家と複数の分散電源とを構成要素とするローカルネットワークにより構成される電力ネットワークシステムであって、
前記複数の需要家及び外部系統が接続する第一の共有線と、前記複数の需要家及び前記複数の分散電源が接続する第二の共有線とを有することを特徴とする電力ネットワークシステム。
【請求項2】
前記第二の共有線に接続する蓄電設備を構成要素として有することを特徴とする請求項1に記載の電力ネットワークシステム。
【請求項3】
前記複数の需要家に対して前記第一の共有線及び前記第二の共有線からいずれも交流電力が供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力ネットワークシステム。
【請求項4】
前記複数の需要家に対して前記第一の共有線では前記外部系統から交流電力が供給され、前記第二の共有線では前記分散電源から直流電力が供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力ネットワークシステム。
【請求項5】
前記第一の共有線がAC/DC変換器を介して前記第二の共有線に接続することを特徴とする請求項4に記載の電力ネットワークシステム。
【請求項6】
前記構成要素を制御する管理サーバを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電力ネットワークシステム。
【請求項7】
前記複数の分散電源による発電量と、前記複数の需要家による直流電力の消費量とを比較して、前記AC/DC変換器を制御する管理サーバを備えたことを特徴とする請求項5に記載の電力ネットワークシステム。
【請求項8】
前記需要家の数が100以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電力ネットワークシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電力ネットワークシステムにおける電力料金管理方法であって、
前記各需要家において前記第一の共有線を介して使用した電力、及び前記第二の共有線を介して使用した電力に対して各々に課金することを特徴とする電力料金管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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