説明

複数の分離した発光層を有する有機発光装置

複数の分離した発光層(420、430、440)を有する有機発光装置が提供される。各発光層は励起子形成領域を画定してよく、励起子形成が発光領域全体を横切って起こることを可能にする。各発光層のエネルギー準位を隣接する発光層と並べることによって、各層の励起子形成が改善される。複数の励起子形成領域を備える複数の発光層を含む装置は、内部量子効率が最大100%であることを含む、改善された性能を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、米国エネルギー省による契約第DEFC26−04NT42272の下で米国政府の援助の下で行なわれた。政府は本発明に一定の権利を有している。
【0002】
共同研究協約
請求の範囲に記載されている発明は、大学−企業共同研究契約に基づき、一つ以上の以下の団体によって、それらを代表して、及び/又はそれらに関連してなされた:プリンストン大学、南カリフォルニア大学、ミシガン大学、及びユニバーサルディスプレイコーポレーション。前記契約は、請求の範囲に記載されている発明がなされた日及びそれ以前に有効であったもので、請求の範囲に記載されている発明は前記協約の範囲内で行なわれた活動の結果としてなされた。
【0003】
本発明は有機発光装置に関する。より詳細には、本発明は複数の発光層及び複数の励起子形成領域を有する有機発光装置に関する。
【背景技術】
【0004】
有機材料を使用するオプトエレクトロニック装置は、幾つかの理由でますます強く望まれつつある。そのような装置を作製するのに使用される多くの材料が比較的安価であり、したがって有機オプトエレクトロニック装置は無機装置に対してコスト的に有利である可能性を有する。加えて、その可とう性等有機材料に固有の性質によって、可とう性基板上での作製等、特別な用途に対してよく適するものとなる。有機オプトエレクトロニック装置の例としては、有機発光素子(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検知器が挙げられる。OLEDに関して、有機材料は従来の材料に対して性能上の有利な点を有し得る。例えば、有機発光層が光を放出する波長は一般的に適切なドーパントによって容易に調節され得る。
【0005】
用語「有機」は有機オプトエレクトロニック装置を作製するために使用され得るポリマー材料、並びに低分子有機材料を含む。「低分子」はポリマーではない任意の有機材料を示し、及び「低分子」は実際には非常に大きくてよい。低分子は、ある状況では繰り返し単位を含んでよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いても、その分子は「低分子」として分類される。低分子は、例えばポリマー主鎖のペンダント基として、または主鎖の一部としてポリマー内部に組み込まれてもよい。低分子は、デンドリマーのコア部分として使われてもよく、前記デンドリマーはコア部分に接して構築された一連の化学的殻からなる。デンドリマーのコア部分は蛍光またはリン光低分子発光体であってよい。デンドリマーは「低分子」であってよく、OLEDの分野で現在使用されている全てのデンドリマーは低分子であると考えられる。一般的に、高分子は化学式を有し分子どうしが異なる分子量を持つのに対して、低分子は明確な化学式を有し単一の分子量を持つ。ここで、「有機」はヒドロカルビルリガンド及びヘテロ原子で置換されたヒドロカルビルリガンドの金属錯体を含む。
【0006】
OLEDは装置を横切って電圧が印加されるとき発光する有機薄膜を使用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライティング等の用途において使用するための、ますます興味ある技術になっている。幾つかのOLED材料及び構成は、参照によって全体がここに組み込まれる、米国特許第5,844,363号明細書、米国特許第6,303,238号明細書、及び米国特許第5,707,745号明細書に記載される。
【0007】
OLED装置は一般的に(常にではないが)少なくとも一つの電極を通って発光するよう意図され、一つ以上の透明電極が有機オプトエレクトロニック装置において使用されてよい。例えば、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明電極材料が底部電極として使用されてよい。その全体が参照によって組み込まれる、米国特許第5,703,436号明細書、及び米国特許第5,707,745号明細書に開示されるような、透明上部電極が使用されてもよい。底部電極を通ってのみ発光することが意図された装置に関して、上部電極が透明である必要はなく、高い導電性を有する厚く反射性の金属層から構成されてよい。同様に、上部電極を通ってのみ発光することが意図された装置に関して、底部電極は不透明及び/又は反射性であってよい。電極が透明である必要がないとき、厚い層を用いてよりよい導電性を提供してよく、及び反射性の電極を用いて、透明電極に向かって光を反射して戻すことによって、他方の電極を通って放出される光の量を増大し得る。完全に透明な装置が作製されてもよく、双方の電極が透明である。側部発光OLEDが作製されてもよく、そのような装置において一つ又は双方の電極は不透明又は反射性であってよい。
【0008】
ここで「上部」は基板から最も離れたことを意味し、一方で「底部」は基板に最も近いことを意味する。例えば、二つの電極を有する装置に関して、底部電極は基板に最も近い電極であり、一般的には作製される第1の電極である。底部電極は二つの表面を有し、底部表面は基板に最も近く、上部表面は基板から離れている。第1の層が第2の層の「上に配置される」と記載される場合、第1の層は基板から離れて配置される。第1の層が第2の層に「物理的に接触している」と明記されない限り、第1の層と第2の層との間に他の層があってよい。例えば、たとえ間に様々な有機層が存在したとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載されてよい。
【0009】
ここで、当業者には一般的に理解されるように、第1の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、もしも第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位に近い場合、第2のHOMO又はLUMOエネルギー準位と比較して「大きい」か、又は「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、高いHOMOエネルギー準位は小さな絶対値を有するIPに相当する(負のより小さなIP)。同様に、高いLUMOエネルギー準位は、小さな絶対値(負のより小さなEA)を有する電子親和力(EA)に相当する。真空準位が上部にある従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位と比較して、そのような図の上部近くに現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第5,703,436号明細書
【特許文献5】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献6】米国特許第6,310,360号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2002−0034656号明細書
【特許文献8】米国特許出願第2002−0182441号明細書
【特許文献9】米国特許出願第2003−0072964号明細書
【特許文献10】国際公開第02/074015号
【特許文献11】米国特許出願公開第2003−0230980号明細書
【特許文献12】米国特許第6,548,956B2号明細書
【特許文献13】米国特許第6,576,134B2号明細書
【特許文献14】米国特許第6,097,147号明細書
【特許文献15】米国特許第5,247,190号明細書
【特許文献16】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献17】米国特許第6,091,195号明細書
【特許文献18】米国特許第5,834,893号明細書
【特許文献19】米国特許第6,013,982号明細書
【特許文献20】米国特許第6,087,196号明細書
【特許文献21】米国特許第6,337,102号明細書
【特許文献22】米国特許第6,294,398号明細書
【特許文献23】米国特許第6,468,819号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Nature、vol.395、151−154、1998
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,vol.75、No.1,4−6(1999)
【非特許文献3】J.Appl.Phys.,90,5048(2001)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般的に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置された、及び、アノード及びカソードに電気的に接続された少なくとも一つの有機層を含む。電流が印加されたとき、アノードは有機層内部に正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔及び電子は各々反対に帯電された電極に向かって移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在するとき、励起されたエネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。光は励起子が光放射機構を経由して緩和するとき放射される。ある特定の場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化され得る。熱緩和等の非放射機構が起きる場合があるが、一般的には望ましくないと考えられる。
【0013】
初期のOLEDは、例えばその全体が参照によって組み込まれる米国特許第4,769,292号明細書に開示されるように、その一重項状態から発光する(「蛍光」)発光分子を使用していた。蛍光発光は、一般的に10ナノ秒未満の時間枠で起こる。
【0014】
さらに最近では、三重項状態から発光する(「りん光」)発光材料を有するOLEDが実現されてきた。Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、vol.395、151−154、1998;(「Baldo−I」)、及びBaldoら、「Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.,vol.75、No.1,4−6(1999)(Baldo−II)は、その全体が参照によって組み込まれる。遷移がスピン状態の変化を必要とし、量子力学はそのような遷移が好まれないことを示すので、りん光は「禁制」遷移とみなされてよい。その結果、りん光は少なくとも10ナノ秒を超える、典型的には100ナノ秒よりも長い時間枠で一般的に起こる。もしもりん光の自然放射時間が非常に長い場合、三重項は無放射メカニズムによって崩壊し、発光しない可能性がある。有機りん光も、非常に低い温度において非共有電子対を有するヘテロ原子を含む分子内で観察されることが多い。2,2’−ビピリジンはそのような分子である。無放射崩壊メカニズムは典型的には温度依存であり、液体窒素温度においてりん光を示す有機材料は典型的には室温でりん光を示さない。しかし、Baldoによって示されたように、この問題は室温でりん光を示すりん光化合物を選択することによって対処され得る。代表的な発光層は、米国特許第6,303,238号明細書、米国特許第6,310,360号明細書、米国特許出願第2002−0034656号明細書、米国特許出願第2002−0182441号明細書、米国特許出願第2003−0072964号明細書、及び国際公開第02/074015号に開示されるような、ドープされたか又はドープされていないりん光有機金属材料を含む。
【0015】
一般的には、OLEDの励起子は約3:1の比で生成される(すなわち、約75%の三重項及び25%の一重項)と考えられる。その全体が参照によって組み込まれる、Adachiら、「Nearly 100% Internal Phosphorescent Efficiency In An Organic Light Emitting Device」、J.Appl.Phys.,90,5048(2001)を参照されたい。多くの場合、一重項励起子は「項間交差」を経由してそれらのエネルギーを三重項励起状態に容易に移動する一方で、三重項励起子はそれらのエネルギーを一重項励起状態に容易に移動し得ない。その結果、100%の内部量子効率はりん光OLEDにおいて理論的に可能である。蛍光装置において、三重項励起子のエネルギーは一般的に装置を加熱する無放射崩壊プロセスへと失われ、内部量子効率を大きく低下させる。三重項励起状態から発光するりん光材料を使用するOLEDは、例えばその全体が参照によって組み込まれる米国特許第6,303,238号明細書に開示される。
【0016】
りん光においては、三重項励起状態から、そこから発光性の崩壊が起こる中間の非三重項状態への遷移がまず起こり得る。例えば、ランタニド元素に配位される有機分子はランタニド金属上に局在化された励起状態からりん光を発することが多い。しかしながら、そのような材料は三重項励起状態から直接りん光を発せず、その代わりに、ランタニド金属イオン上に集まった原子励起状態から発光する。ユーロピウムジケトネート錯体はこの種の化学種の一つの群を説明する。
【0017】
三重項からのりん光は、好ましくは結合を通じて、有機分子を原子数が大きな原子に近接するよう制限することによって蛍光よりも強められ得る。この現象(重原子効果と呼ばれる)は、スピン−軌道相互作用として知られるメカニズムによって起こる。そのようなりん光遷移は、例えばトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)等の有機金属分子の励起された金属配位子電荷移動遷移(MLCT)状態から観察され得る。
【0018】
ここで用語「三重項エネルギー」は所定の材料のりん光スペクトルにおいて認識できる最高エネルギーの特徴に対応するエネルギーを示す。最高エネルギーの特徴は、りん光スペクトルにおいて最高強度を有するピークである必要はなく、例えば、そのようなピークの高いエネルギーの側の明確な肩部の局所的な最大値であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】独立した電子輸送層、正孔輸送層、及び発光層、並びに他の層を有する有機発光装置を示す。
【図2】独立した電子輸送層を持たないインバーテッド有機発光装置を示す。
【図3】三つの独立した発光層を有する有機発光装置を示す。
【図4】三つのEMLを有する装置に関する概略的なエネルギー準位図を示す。
【図5A】三つの発光層を有する白色有機発光装置を示す。
【図5B】別個の装置に構成された図5Aに説明される装置の発光層を示す。
【図5C】別個の装置に構成された図5Aに説明される装置の発光層を示す。
【図5D】別個の装置に構成された図5Aに説明される装置の発光層を示す。
【図6】三つの発光層を有する有機発光装置の効率を示す。
【図7A】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図7B】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置の効率を示す。
【図7C】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図7D】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置の効率を示す。
【図7E】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図7F】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置の効率を示す。
【図7G】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図8A】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図8B】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置の効率を示す。
【図9A】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図9B】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置の効率を示す。
【図10A】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図10B】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置の効率を示す。
【図11A】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図11B】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置の効率を示す。
【図12】様々な電流密度における三つの発光層の白色発光OLEDのスペクトルを示す。
【図13】電流密度の関数としてプロットされた、図12に示されるスペクトルにおける赤色、緑色、及び青色発光の寄与の読み取られた比を示す。
【図14】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置のスペクトルを示す。
【図15】三つの発光層を有する装置の特徴を組み込んだ有機発光装置の効率を示す。
【図16】最適化された三つの発光層を有するOLEDの概略的な図を示す。
【図17】三つの発光層を有する白色OLEDの電流密度の関数としての前方視EQE及びPEを示す。
【図18】様々な電流密度における三つの発光層を有する白色OLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は有機発光装置100を示す。図は必然的に原寸どおりに描かれていない。装置100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、及びカソード160を含んでよい。カソード160は第1の導電層162及び第2の導電層164を有する複合カソードである。装置100は記載された層を順次堆積することによって作製されてよい。
【0021】
基板110は所定の構造上の性質を提供する任意の適切な基板であってよい。基板110は柔軟であってよく、又は剛直であってよい。基板110は透明、半透明、又は不透明であってよい。プラスチック及びガラスは好ましい剛直な基板材料の例である。プラスチック及び金属ホイルは好ましい柔軟な基板材料の例である。基板110は回路作製を容易にするために半導体材料であってよい。例えば、基板110はその上に回路が作製されるシリコンウェハであってよく、その後のOLEDの基板上への堆積を制御することを可能にする。他の基板が使用されてよい。材料及び基板110の厚みは所定の構造及び光学的性質を得るように選択されてよい。
【0022】
アノード115は正孔を有機層に輸送するのに十分な導電性を有する任意の適切なアノードであってよい。アノード115の材料は好ましくは約4eVよりも高い仕事関数を有する(「高仕事関数材料」)。好ましいアノード材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、及び酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AlZnO)等の導電性金属酸化物、及び金属を含む。アノード115(及び基板110)は、底部発光装置を形成するため十分に透明であってよい。好ましい透明基板とアノードとの組み合わせは、商業的に入手可能である、ガラス又はプラスチック(基板)上に堆積されたITO(アノード)である。柔軟かつ透明な基板とアノードとの組み合わせは、米国特許第5,844,363号明細書及び米国特許第6,602,540B2号明細書に開示され、その全体が参照によって組み込まれる。アノード115は不透明及び/又は反射性であってよい。反射性アノード115は一部の上部発光装置に関して好ましく、装置上部から放射される光の量を増加し得る。材料及びアノード115の厚みは所定の導電性及び光学的性質を得るように選択されてよい。アノード115が透明であるとき、特別な材料に関する厚みの範囲は所定の導電性を提供するのに十分な厚みであり、所定の透明度を提供するのに十分な薄さであってよい。他のアノード材料及び構造が使用されてよい。
【0023】
正孔輸送層125は正孔を輸送することができる材料を含んでよい。正孔輸送層130は真性(ドープされていない)、又はドープされてよい。ドーピングは導電性を増大するため用いられてよい。α−NPD及びTPDは真性の正孔輸送層の例である。pドープされた正孔輸送層の例は、全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許出願公開第2003−0230980号明細書に開示されるように、モル比50:1でF−TCNQでドープされたm−MTDATAである。他の正孔輸送層が使用されてよい。
【0024】
発光層135はアノード115とカソード160との間を電流が通過するとき光を放射することができる有機材料を含んでよい。好ましくは、発光層135は、蛍光性放射材料が使用されてもよいが、燐光性の放射材料を含む。燐光性材料は、そのような材料に関連する高い発光効率のため、好ましい。発光層135は、電子、正孔、及び/又は励起子を捕獲し発光機構を経由して放射性材料から励起子が緩和する放射性材料でドープされた、電子及び/又は正孔を輸送することができるホスト材料も含んでよい。発光層135は輸送性及び放射性を兼ね備える単一の材料を含んでよい。放射性材料がドーパント又は主な成分のどちらであっても、発光層135は放射性材料の放射を調節するドーパント等の他の材料を含んでよい。発光層135は所定のスペクトルの光を、組み合わせて、放射することができる複数の放射性材料を含んでよい。燐光性発光材料の例としてIr(ppy)が挙げられる。蛍光発光材料の例として、DCM及びDMQAが挙げられる。ホスト材料の例としてAlq、CBP、及びmCPが挙げられる。放射性材料及びホスト材料の例はThompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示され、その全体が参照によって組み込まれる。放射性材料は様々な方法で発光層135に含まれてよい。例えば、放射性低分子はポリマーに組み込まれてよい。これは、幾つかの方法で:個別に及び異なる分子種のどちらかとして低分子をポリマー内部にドーピングすることによって;又はコポリマーを形成するように低分子をポリマー主鎖内部に組み込むことによって;又は低分子をポリマーにペンダント基として低分子を結合することによって;実行されてよい。他の発光層材料及び構造が使用されてよい。例えば、低分子放射性材料はデンドリマーのコアとして存在してよい。
【0025】
電子輸送層145は電子を輸送することができる材料を含んでよい。電子輸送層145は真性(非ドープ)又はドープされてよい。ドーピングは導電性を増大するために使用されてよい。Alqは真性電子輸送層の一例である。n−ドープされた電子輸送層の例は、その全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許出願公開第2003−02309890号明細書に開示されるように、モル比1:1でLiドープされたBPhenである。他の電子輸送層が使用されてよい。
【0026】
電子輸送層の電荷キャリア成分は、電子がカソードから電子輸送層のLUMO(最低空分子軌道)エネルギー準位内部に効率的に注入され得るように選択され得る。「電荷キャリア成分」は実際電子を輸送するLUMOエネルギー準位に関与する材料である。この成分はベース材料であってよく、またドーパントであってよい。有機材料のLUMOエネルギー準位はその材料の電子親和性によって一般的に特徴付けられてよく、カソードの相対的な電子注入効率はカソード材料の仕事関数の観点から一般的に特徴付けられてよい。これは、電子輸送層及び隣接するカソードの好ましい性質がETLの電荷キャリア成分の電子親和性及びカソード材料の仕事関数の観点から特定され得ることを意味する。特に、高い電子注入効率を実現するために、カソード材料の仕事関数は、好ましくは電子輸送層の電荷キャリア成分の電子親和力を約0.75eV超えて、より好ましくは約0.5eV超えずに、大きいことはない。電子がその内部に注入される任意の層に対して同様の考えを適用する。
【0027】
カソード160は従来技術で知られる任意の適切な材料又は材料の組み合わせであってよく、カソード160が電子を伝達して装置100の有機層内部にそれらを注入することができるようにする。カソード160は透明又は不透明であってよく、反射性であってよい。金属及び金属酸化物は適切なカソード材料の例である。カソード160は単一の層であってよく、又は複合構造を有してよい。図1は金属薄膜層162及びより厚みがある導電性金属酸化物層164を有する複合カソード160を示す。複合カソード中で厚い層164として好ましい材料はITO、IZO、及び当技術分野で知られる他の材料を含む。その全体が参照によって組み込まれる米国特許第5,703,436号明細書、米国特許第5,707,745号明細書、米国特許第6,548,956B2号明細書、及び米国特許第6,576,134B2号明細書は、上部を覆う透明な、導電性の、スパッタ蒸着されたITO層を備えるMg:Ag等の金属の薄膜層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示する。下部に位置する有機層と接触しているカソード160の部分は、それが単一層カソード160、複合カソードの金属薄膜層162、又は特定の他の部分のどれであろうと、好ましくは約4eVよりも低い仕事関数を有する材料(「低仕事関数材料」)で作られる。他のカソード材料及び構造が使用されてよい。
【0028】
発光層を離れる電荷キャリア(電子又は正孔)及び/又は励起子の数を低減するために阻止層が使用されてよい。電子阻止層130が発光層135と正孔輸送層125との間に配置されてよく、電子が正孔輸送層125の方向に発光層135を離れることを阻止する。同様に、正孔阻止層140が発光層135と電子輸送層145との間に配置されてよく、正孔が電子輸送層145の方向に発光層135を離れることを阻止する。阻止層は励起子が発光層から拡散により出て行くことを阻止するためにも使用されてよい。阻止層の理論及び使用は、その全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許第6,097,147号明細書、及び米国特許出願公開第2003−02309890号明細書に詳細に記載される。
【0029】
ここで、当業者には理解されるであろうが、用語「阻止層」は、層が電荷キャリア及び/又は励起子を必ず完全に阻止することを示すのではなく、層が装置を通過する電荷キャリア及び/又は励起子の移動を十分に阻害するバリアを提供することを意味する。装置内にそのような阻止層が存在することは、阻止層を持たない同様の装置と比較して実質的に高い効率をもたらすだろう。同様に、阻止層は放射をOLEDの所定の領域に制限するために使用されてよい。
【0030】
一般的に、注入層は電極又は有機層等の一つの層からの隣接する有機層内部への電荷キャリアの注入を改良し得る材料からなる。注入層は電荷輸送機能を果たしてもよい。装置100において、正孔注入層120はアノード115から正孔輸送層125内部への正孔注入を改良する任意の層であってよい。CuPcはITOアノード115、及び他のアノードから正孔注入層として使用され得る材料の一例である。装置100において、電子注入層150は電子輸送層145内部への電子注入を改良する任意の層であってよい。LiF/Alは、隣接する層からの電子輸送層内部への電子注入層として使用され得る材料の一例である。他の材料、又は材料の組み合わせが注入層として使用されてよい。特定の装置の構成に依存して、注入層が装置100において示されるものとは異なる位置に配置されてよい。注入層の更なる例は、全体が参照によって組み込まれるLuらの米国特許出願第09/931,948号明細書に提供される。正孔注入層は、例えばPEDOT:PSS等、スピンコートされたポリマー等溶液が堆積された材料を含んでよく、又は例えばCuPc又はMTDATA等気相蒸着された低分子材料であってよい。
【0031】
正孔注入層(HIL)は、アノードから正孔注入材料内部への効率のよい正孔注入を提供できるように、アノード表面を平滑にし、又は濡らしてよい。正孔注入層はここに記載された相対的なイオン化ポテンシャル(IP)エネルギーによって規定されるような、HILの一つの側面に隣接するアノード層及びHILの他方の側面上の正孔輸送層に好ましく適合するHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位を有する電荷キャリア成分を有してもよい。「電荷キャリア成分」は実際に正孔を輸送するHOMOエネルギー準位に寄与する材料である。この成分はHILのベース材料であってよく、又はドーパントであってよい。ドープされたHILの使用によって、ドーパントがその電気的性質に関して選択され、ホストが濡れ性、柔軟性、靭性等そのモルフォロジー的性質に関して選択されることが可能になる。HIL材料に関して好ましい性質は、正孔がアノードからHIL材料内部に効率的に注入され得るようなものである。特に、HILの電荷キャリア成分は好ましくはアノード材料のIPと比較して約0.7eVを超えずに大きいIPを有する。さらに好ましくは、電荷キャリア成分はアノード材料と比較して約0.5eVを超えずに大きいIPを有する。同様な考察をその内部に正孔が注入される任意の層に適用する。HIL材料は、そのようなHIL材料が従来の正孔輸送材料の正孔伝達性よりも実質的に低い正孔伝達性を有してよいという点で、OLEDの正孔輸送層内で典型的に使用される従来の正孔輸送材料とさらに相違する。本発明のHILの厚みは、アノード層表面の平滑化又は濡れを助けるため十分に厚くてよい。例えば、10nm程度に小さいHIL厚みは非常に平滑なアノード表面に関して許容できるだろう。しかしながら、アノード表面は非常に粗い傾向があるので、場合によっては最大50nmのHILの厚みが望ましいだろう。
【0032】
その後の作製プロセスの間、下部に存在する層を保護するため保護層が使用されてよい。例えば、金属又は金属酸化物上部電極を作製するのに使用される方法は有機層に損傷を与える可能性があり、そのような損傷を低減又は排除するために保護層が使用されてよい。装置100において、カソード160を作製する間保護層155が下部に存在する有機層への損傷を低減し得る。好ましくは、保護層はそれが輸送するキャリアタイプ(装置100においては電子)に関して高いキャリア移動度を有して、装置100の動作電圧を有意に増大させないようにする。CuPc、BCP、及び様々な金属フタロシアニンは保護層に使用され得る材料の例である。他の材料又は材料の組み合わせが使用されてよい。保護層155の厚みは、好ましくは、有機保護層160が堆積された後に起こる作製プロセスに起因する、下部に存在する層への損傷が小さいか、又は損傷を与えないように十分に厚く、さらに装置100の動作電圧を有意に増大しないようあまり厚くない。保護層155はその導電性を高めるためにドープされてよい。例えば、CuPc又はBCP保護層160はLiでドープされてよい。保護層のより詳細な説明は、その全体が参照によって組み込まれるLuらの米国特許出願第09/931,948号明細書に見出されるだろう。
【0033】
図2はインバーテッドOLED200を示す。この装置は、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。装置200は記載された層を順次堆積することによって作製されてよい。最も一般的なOLED構成がアノード上に配置されたカソードを有し、装置200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、装置200は「インバーテッド」OLEDと呼ばれてよい。装置100に関して記載されたものと同じ材料が装置200の対応する層において使用されてよい。図2は装置100の構造から如何に幾つかの層が省略され得るか一つの例を提供する。
【0034】
図1及び2において説明された単純な層構造は非制限的な例示によって提供され、本発明の実施形態が様々な他の構造と関連して使用されてよいことは理解される。記述される特定の材料及び構造は全くの例示であり、他の材料及び構造が使用されてよい。機能的OLEDが、設計、性能、及びコスト因子に基づき、様々な方法で記述された様々な層を組み合わせることによって実現され得る、又は層は完全に省略され得る。明確に記載されていない他の層が含まれてもよい。明確に記載されていない他の材料が使用されてよい。ここに提供される例の多くが単一の材料を含むとして様々な層を記述するが、ホストとドーパントの混合物又はより一般的には混合物等、材料の組み合わせが使用されてよいことは理解される。同様に、層は様々な副層を有してよい。ここで様々な層に与えられる名前は厳密な制限を意図していない。例えば、装置200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、かつ発光層220内部に正孔を注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記載されてよい。一つの実施形態において、OLEDはカソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するとして記載されてよい。この有機層は単一の層を含んでよく、又は例えば図1及び図2に関して記載されたような様々な有機材料の複数層をさらに含んでよい。
【0035】
その全体が参照によって組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号明細書に開示されるようなポリマー材料からなるOLED(PLED)等、明確に記載されていない構造及び材料が使用されてもよい。さらなる例示の目的で、単一の有機層を有するOLEDが使用されてよい。例えばその全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号明細書に記載されるようにOLEDは積層されてよい。OLED構造は図1及び2に説明される単純な層構造から逸脱してよい。例えば、その全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許第6,091,195号明細書に記載されるようなメサ構造、及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号明細書に記載されるようなピット構造等、基板はアウトカップリングを改良するため角度を有する反射性表面を含んでよい。
【0036】
特に記載されない限り、様々な実施形態の任意の層は任意の適切な方法によって堆積されてよい。有機層に関して、好ましい方法はその全体が参照によって組み込まれる米国特許第6,013,982号明細書及び米国特許第6,087,196号明細書に記載されるような熱蒸発、インクジェット、その全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号明細書に記載されるような有機気相蒸着(OVPD)、及びその全体が参照によって組み込まれる米国特許出願第10/233,470号明細書に記載されるような有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法はスピンコーティング及び他の溶液ベース工程を含む。溶液ベース工程は、好ましくは窒素又は不活性雰囲気で実行される。他の層に関して、好ましい方法は熱蒸発を含む。好ましいパターニング法はマスクを通した堆積、その全体が参照によって組み込まれる米国特許第6,294,398号明細書及び米国特許第6,468,819号明細書に記載されるような冷溶接、及びインクジェット及びOVJP等の堆積法の幾つかと関連するパターニングを含む。他の方法が使用されてもよい。堆積される材料はそれが特定の堆積方法に影響を及ぼさないようにするために修飾されてよい。例えば、分岐又は非分岐の、及び好ましくは少なくとも三つの炭素を含む、アルキル基及びアリール基等の置換基が溶液処理され易くするために低分子内で使用されてよい。20又はそれ以上の炭素を有する置換基が使用されてよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称材料は再結晶の傾向が低いため、非対称構造を有する材料は対称な構造を有するものより良好な溶液処理性を有し得る。デンドリマー置換基は低分子が溶液処理を受け易くするために使用されてよい。
【0037】
本発明の実施形態により作製された装置は、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、テレビ、看板、内部又は外部照明及び/又は信号のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザプリンター、電話、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダ、マイクロディスプレイ、車両、大面積壁、劇場又はスタジアムスクリーン、又は標識を含む幅広い消費者製品に組み込まれてよい。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む様々な制御機構が本発明により作製された装置を制御するのに使用されてよい。多くの装置が人間に快適である温度範囲、18℃から30℃等、及びより好ましくは室温(20〜25℃)、における使用を意図される。
【0038】
白色有機発光素子(WOLED)は、ディスプレイのバックライト及び室内照明用途等の使用に関して興味深いものであるだろう。最近の結果では、電力効率及び寿命の観点から、今や白熱電球を超えるりん光WOLEDが示されてきており、あるものは低い演色評価数(CRI≦75)を有するが、一方であるものは魅力的な光源に対して要求される高輝度においてかなりの効率のロールオフを示す。従来のりん光OLEDにおいて、励起子形成領域は隣接するキャリア輸送層の一つ又は両方に隣接する発光層(EML)内に位置する。これはEMLにおける励起子の「蓄積(pile−up)」をもたらす可能性があり、これは三重項・三重項消滅を強める原因となる可能性がある。
【0039】
複数の発光層を有する装置が提供される。図3は、カソード340とアノード/基板310との間に配置される三つの発光層301、302、303を有する例示的装置を示す。装置は前述のように注入層、阻止層、及び輸送層等の他の層320、330を含んでよく、順次示されたように層を堆積することによって作製されてよい。好ましくは、各発光層301、302、303は様々なスペクトルの光を発光するように適合される。有機発光層の組み合わされた発光は白色光を生成するために効率よく可視スペクトルに広がることが好ましいであろう。例えば、三つの発光層301、302、303は各々赤色光、緑色光、及び青色光を放出してよい。見たときには、装置からの複合発光は白色を示すだろう。前述のように、各発光層はホスト材料及びドーパントを含んでよい。各発光層に関するホスト材料は同じか、又は相違してよい。任意の組合せのドーパントが使用されてよい。好ましくは、各発光層のドーパントは少なくとも一つの他のドーパントと比較してスペクトルが異なる光を放射し、より好ましくは各ドーパントが異なるスペクトルの光を放出する。
【0040】
三つの発光層(EML)を有する装置において、異なる(小から大)HOMO−LUMOギャップを有する三つの二極性の材料が三つのEMLのホストとして使用されてよい。もしも白色発光装置が望まれる場合、層は赤色、緑色、及び青色のドーパントで各々ドープされてよい。他のドーパントの組合せが使用されてよい。任意の適切なドーパントが使用されてよいが、りん光ドーパントが好ましいであろう。これらの三つの双極性層は、従来の装置構造においては一つの界面であった代わりに、複数の領域における励起子の生成をもたらし得る。この励起子生成領域の増大は、励起子消滅効果を抑制又は低減するであろうし、全ての励起子生成領域において生成された励起子がりん光を通じて放射を起こすように崩壊する機会を増やすことを可能にするであろう。これは、たとえ単色OLEDと比較したとしても、この装置に著しく高い効率をもたらすであろう。
【0041】
複数EML装置において使用される材料は、隣接する材料のエネルギー準位に並んだエネルギー準位を有するように選択され得る。ここで、もしもエネルギー準位及びHOMO又はLUMOが互いに約15kT、より好ましくは約10−15kT、さらに好ましくは約5−10kTの範囲内である場合、HOMO又はLUMOエネルギー準位は隣接する材料のエネルギー準位に「並んで」いる。その結果、室温において、エネルギー準位は、それらが互いに約0.4eV、より好ましくは約0.25−0.4eV、さらに好ましくは約0.1−0.25eVの範囲内であるとき、並んでいる。ホスト材料のエネルギー準位(HOMO又はLUMO)が隣接するドーパント及び/又はホストの対応するHOMO又はLUMOのエネルギー準位に並んでいるとき、各層及び/又は各界面内部の励起子生成は増大してよく、従来装置において起こるものと比較してより効率的な励起子生成及び発光を提供する。隣接する発光層のホスト及びドーパント材料のエネルギー準位が並んでいるとき、さらなる電荷キャリアが隣接する層からドーパント分子に直接移動し得る。
【0042】
図4は三つのEMLを有する装置に関する例示的なエネルギー準位ダイアグラムを示し、ここで各々の発光層は励起子生成領域を規定する。三つの発光層420、430、440は外側の層410と450との間に配置されてよい。これらの層は上述のように電極、電荷注入層、及び/又は電荷輸送層であってよい。例えば、層410はアノード又は正孔を注入する他の層であってよく、層450はカソード又は電子を注入する他の層であってよい。図4は、真空エネルギー準位401に対する各発光層ホスト(実線)及び対応するドーパント(点線)のエネルギー準位を示す。そのようなダイアグラムにおいて、電子はカソード450からアノード410へと各層のLUMO準位を横切って移動すると記載され、より低いLUMOから高いLUMOへの移動が好ましい。その結果、注入層450から第3の発光層440へと移動する電子は典型的に発光層ホスト材料のLUMOへと移動するだろう。しかしながら、もしもホストのLUMOとドーパントのLUMOがどちらも注入層450のLUMOと並ぶ場合には、ある電子はホスト及びドーパント各々のエネルギー準位に移動するだろう。同様に、もしも第2の発光層430のホスト及びドーパントの双方のLUMOエネルギー準位が発光層440のホストのLUMO準位に並ぶ場合には、ある電子は第2層430のホスト及びドーパントのLUMO準位の各々に移動するだろう。その結果、単一発光層の従来の分析に基づき予測されるであろうものよりも、さらに多くの電子が各層のドーパント分子上に局在化され得る。電子は隣接するドーパント及びホストのエネルギー準位に移動することができるので、層の界面における電荷の蓄積を低減し得る。
【0043】
図4の例示的なエネルギー準位ダイアグラムにおいて、正孔は典型的にはアノード410からカソード450へと層のHOMO準位を横切って移動するように記述されるだろう。より高いエネルギー準位から低い準位への移動が好ましい。しかしながら、もしもホストのHOMOエネルギー準位が隣接する準位のドーパントのHOMOエネルギー準位と並んでいる場合、一部の正孔はドーパント分子へと移動し得る。例えば、正孔は第1の発光層420のHOMO準位から第2の発光層430のホスト及びドーパントのHOMOエネルギー準位の両方に移動してよい。
【0044】
電子及び正孔が同じ分子(典型的にはドーパント分子)上に局在化するとき、それらは励起子を形成する。図4に記載されるものと同じ構造は電荷キャリアが各発光層の正孔及びドーパントのエネルギー準位の両方に局在化することを促し、各発光層ドーパントの励起子生成は、たとえ単一の発光層が複数のドーパントを有していたとしても、他の単層装置に関して予期されるであろうものと比較して多いだろう。その結果、複数の励起子生成領域を有する複数の発光層を有する装置は全ての潜在的な励起子を形成させ及びドーパント分子上に局在化することを可能にし、これにより装置の効率を大きく改善することができる。ここで記載されるように、前述のように構成された複数の発光層を有する装置は最大100%の内部量子効率を有し得る。
【0045】
ある場合には、特定のエネルギー準位に関してある層から他の層への電荷キャリア移動を低減又は防ぐことが好ましいであろう。例えば、図4に記載される構造において、正孔を他の発光層に配置するであろうさらなる可能な移動が存在しないので、第3の発光層440は正孔にとって励起子を形成する「最後のチャンス」である。この状況において、発光層440のホストエネルギー準位に関してその前の発光層430のホストHOMOと並ばないことが好ましいであろう。これはホストHOMOへの正孔移動を防ぎ、又は阻害し、ドーパントHOMOへの移動を増大又は促進し得る。より多くの正孔がドーパントに移動することを「強制」されたとき、励起子生成の機会は増大され、装置の効率は改善される。
【0046】
例示的な三つのEMLの白色OLED(WOLED)が図5Aに示される。装置は、図5B−Dに示されるように、三つの単色装置の組み合わせ及び発展として記述されてよく、以下の構造及び特性を備える。
【0047】
【表1】

【0048】
青色装置(図5D)において、MCPは電子阻止層(EBL)として働き、EML中のホスト材料UGH2と比較して小さなHOMO−LUMOギャップを有する。MCPのHOMOとEML中の青色ドーパントFIr6との組合せはドーパントへの効率的な正孔注入(HIL)をもたらし、これは効率を高める手助けをし、及び駆動電圧を下げることができる。TCTAは緑色装置においてこれら二つの局面で同様に機能する。特に、単色装置は全て10%未満の最大外部量子効率(EQE)を有する。
【0049】
三つのEMLを有するWOLEDにおいて、MCP及びTCTA層は各々Ir(ppy)及びPQIrでドープされる。その結果、これらの層は各々長波長放射に関してはEMLとして、及びその右側の隣接する短波長EMLにはEBL/HILとして機能する。
【0050】
バイポーラホスト材料を介してマルチEMLシステムに入る電子及び正孔は減速され、従来の単一EML装置において予測されるように界面の高いバリアにおいて高度に積層するよりはむしろ3ドープEMLにおいて再結合すると思われる。拡大された励起子生成領域は、励起子の局所的な密度の低減に起因して、励起子消滅効果を抑制することができ、その結果さらに高いEQE16.6%、及びPE32 lm/Wをもたらす。500cd/mにおいて、EQEは12.3%、及びPEは15.5 lm/Wである。効率に関する結果は図6に示される。特に、3−EML WOLEDのEQEは、上述の単色OLEDよりも高い。このことは、複数の励起子生成領域WOLEDにおいて励起子がよりよく使用されることを裏付ける。
【0051】
3−EML WOLEDにおける励起子生成領域についてさらに理解するために、一連の装置(シリーズA)は以下の構造を用いて作製された:NPD37nm/TCTA8nm/1%Ir(ppy):MCP4nm/MCPxnm/22%FIr6:UGH2 20nm/BCP40nm、ここでxは7から20nmまで変わる。観察されたスペクトル、効率、及び構造は以下に示される。印加された電流密度はスペクトルのプロットにおいて対応する参照番号を示す。
【0052】
【表2】

【0053】
x=7、11、及び20のときの装置のスペクトルは特定の電流密度(J)において同じであることが観察され、Ir(ppy)発光はJに応じて増加することがわかった。図7は、1mA/cm及び100mA/cmにおけるこれら三つの装置のスペクトルを示す。
【0054】
【表3】

【0055】
これらの三つの装置は約(6.5±0.6)%の同じ量子効率を有する。
【0056】
図8Aは、1mA/cm、10mA/cm、及び100mA/cm(各々810、820、830)の電流密度に対するx=4nmの装置のスペクトルを示す;図8Bは同じ装置に関する効率を示す。x=4nmの装置はより強いIr(ppy)発光を示し、より大きなEQE 9.8%を示したが、一方で増加するJに対する傾向は上記三つの装置と反対であり、すなわち大きな電流密度において相対的に小さなIr(ppy)発光であった。これらのデータは、以下のことを示す:a)x≧7nmの装置からのIr(ppy)発光はMCP/UGH2界面において形成される励起子の移動に起因するものではなく、他の理由でスペーサの厚みが増加するに従って発光が減少するのであろうこと;b)TCTA/MCP界面において形成される僅かな励起子、及びMCP/UGH2界面において起こる大量の励起子形成は、MCPとUGH2との間の正孔に関する大きなエネルギーバリア、及びTCTAとMCPとの間には電子に対するバリアが存在しないことに起因すること;c)励起子の形成はMCP中で7nmを越えて移動した後減少すること;d)Ir(ppy)の発光が増加することは、Jが大きいとき、TCTA/MCP界面において形成が開始される励起子の割合が増加していることを示すこと;e)x=4nmの装置からのIr(ppy)の発光が非常に強いのは、主にMCP/UGH2界面において形成される励起子の移動に起因すること;f)より多くの正孔がMCP HOMOエネルギー準位からFIr6 HOMO準位へと注入されるとき、Ir(ppy)の発光の傾向が逆であることは、励起子形成領域がJの増加に応じてFIr6:UGH2領域内部により深く拡大することを示すこと。
【0057】
他の一連の装置(シリーズB)も、以下の構造を用いて同様に作製された:NPD 37nm/TCTA 4nm/PQIr:TCTA 4nm/(領域B)/22%FIr6:UGH2 20nm/BCP 40nm。電流密度0.3mA/cm(910)、0.5mA/cm(920)、1.0mA/cm(930)、10mA/cm(940)、30mA/cm(950)、及び100mA/cm(960)における、(領域B)=MCP 11nm(EQE 14.0%)を有する装置のスペクトルが図9Aに示される。図9Bに示されるように、装置はEQE6.3%及びPE7.5 lm/Wを示した。弱いPQIr発光及びJの増加に対するその増加傾向は、x≧7nmである上記シリーズAの装置と一致する。
【0058】
図10Aは、電流密度が1mA/cm(1010)、10mA/cm(1020)、50mA/cm(1030)、及び100mA/cm(1040)における(領域B)=MCP 7nm/1%Ir(ppy):MCP 4nm(EQE6.3%)である装置のスペクトルを示す;図10Bは対応する効率を示す。強いIr(ppy)発光及びJの増加に伴う相対的なIr(ppy)発光の減少傾向及び相対的なPQIr発光の増加傾向は、さらに、a)励起子形成はMCP/UGH2界面において主に起こり、励起子形成領域はJが増加するときFIr6:UGH2領域内部に深く拡大すること、及びb)大きなJにおいて、増加する分の励起子は、このエネルギーバリアにおいて多くの正孔が「蓄積」するので、TCTA/MCP界面において形成されるであろうこと、を示す。
【0059】
図11Aは、電流密度が1mA/cm(1110)、10mA/cm(1120)、及び100mA/cm(1130)における(領域B)=1%Ir(ppy):MCP 11nm(EQE=15.0%)である装置のスペクトルを示す;図11Bは同じ装置に関する電流密度の関数としての効率を示す。Jが増加すると、PQIr発光は非常に強くなり、相対的なPQIr発光及び相対的なIr(ppy)発光は弱くなる。したがって、PQIr発光は主に、MCP/UGH2界面から11nmを超えて移動することができる、Ir(ppy)三重項からのエネルギー移動に起因すると考えられる。
【0060】
図12は、電流密度が0.3mA/cm(1210)、0.5mA/cm(1220)、1.0mA/cm(1230)、3.0mA/cm(1240)、10mA/cm(1250)、30mA/cm(1260)、及び100mA/cm(1270)における、三つのEMLを有するWOLEDのスペクトルを示す。電流密度が1から100mA/cmへと増加するとき、CIE座標は(0.340、0.387)から(0.370、0.403)へと変化し、CRI値は81のままである。ここで記述されるように、三つのEMLを有する装置の最適化は、望ましいCIE座標(0.33±0.05、0.33±0.05)の範囲内、及びCRI値少なくとも80、より好ましくは少なくとも90を提供し得ると考えられる。図12のスペクトルにおける赤色、緑色、及び青色発光の寄与の読み取られた比は図13において電流密度の関数としてプロットされる。初期の青色発光は電流密度に従い強くなり、このことは励起子形成領域がFIr6:UGH2層内部にさらに拡大するという観察結果と一致する。大きな電流密度において、相対的な青色発光は減少し、相対的な赤色発光は増加する。これも、大きな電流密度において励起子の増加分がTCTA/MCP界面において形成されるという観察結果と一致する。さらに、EMLとHBLとの間の界面がそのような界面において励起子を形成するOLED内の長期間安定性に対して典型的には重要な問題である可能性があるので、この構造の装置安定性は増加するだろう。
【0061】
ここで記載される三つのEML(赤/緑/青)を有するWOLED構造体は、通常のホスト、及びそれ故単一の励起子形成領域を用いる従来の装置(ホストから三つ全てのドーパントへの効率的なエネルギー移動を得ることにおいてその特有の困難さを有する)とは異なる。同様に、以前に示された3−EML蛍光性WOLEDは、一重項拡散距離が短いことに起因して、そのような場合における励起子はEMLを横切って複数の領域において形成される可能性があるが、制限された装置効率を有する。最終的に、拡大されたEMLは非常に高い励起子密度の領域の形成を妨げ、それによってクエンチングを低減することによって効率を高める。
【0062】
ここで記述された材料及び構造はOLED以外の装置においても用途を有し得る。例えば、有機太陽電池及び有機光検知器等の他のオプトエレクトロニック装置がこれらの材料及び構造を使用してよい。より一般的には、有機トランジスタ等の有機装置がこれらの材料及び構造を使用してよい。
【0063】
材料の定義:
CBP 4,4’−N,N−ジカルバゾール−ビフェニル
m−MTDATA 4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン
Alq 8−トリス−ヒドロキシキノリンアルミニウム
Bphen 4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
n−Bphen n−ドープBPhen(リチウムでドープされた)
−TCNQ テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン
p−MTDATA p−ドープm−MTDATA(F−TCNQでドープされた)
Ir(ppy) トリス(2−フェニルピリジン)−イリジウム
Ir(ppz) トリス(1−フェニルピラゾロト,N,C(2’)イリジウム(III))
BCP 2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
TAZ 3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール
CuPc 銅フタロシアニン
ITO 酸化インジウムスズ
NPD N,N’−ジフェニル−N−N’−ジ(1−ナフチル)−ベンジジン
TPD N,N’−ジフェニル−N−N’−ジ(3−トリル)−ベンジジン
BAlq アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)4−フェニルフェノレート
mCP 1,3−N,N−ジカルバゾール−ベンゼン
DCM 4−(ジシアノエチレン)−6−(4−ジメチルアミノスチリル−2−メチル)−4H−ピラン
DMOA N,N’−ジメチルキナクリドン
PEDOT:PSS ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸塩(PSS)の水性懸濁液
hfac ヘキサフルオロアセチルアセトン
1,5−COD 1,5−シクロオクタジエン
VTES ビニルトリエチルシラン
BTMSA ビス(トリメチルシリル)アセチレン
Ru(acac) トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム(III)
60 カーボン60(「バックミンスターフラーレン」)
【0064】
実験:
本発明の特定の典型的な実施形態が、そのような実施形態が如何にしてなされ得るかを含んでここに説明される。特定の方法、材料、条件、プロセスパラメータ、装置等は必ずしも本発明の範囲を制限しないことは理解される。
【0065】
複数のEMLを有するOLEDは、高減圧下(10−7Torr)で、他で公表された手順を用いて清浄な、厚み150nmの、〜20Ω/sqの酸化インジウムスズ(ITO)層で予めコーティングされたガラス基板上への有機層の熱蒸着によって調製された。まず、正孔輸送層(HTL)としての4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(NPD)の厚み40nmのフィルムが、その後複数部分のEMLが堆積され、その後40nmの厚みを有する2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)層、又は20nmの厚みを有する4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BPhen)層のどちらかである電子輸送層(ETL)によって、その後第2の厚み20nmの1:1モル比でLiと混合されたBPhen層で覆われた。最後に、0.8nm厚みのLiF及び60nm厚みのAl層カソードが円形の直径1.0mmの開口部の配列を備えるシャドーマスクを通じて堆積された。電流密度(J)−電圧(V)及び輝度測定値は、通常の手順に従って半導体パラメータ分析器及び較正されたSiフォトダイオードを使用して得られた。
【0066】
Ir(III)ビス(2−フェニルキノリル−N、C2’)アセチルアセトナート(PQIr)、トリス(フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、及びビス(4’,6’−ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート(FIr6)がR,G,及びB発光に関するりん光ドーパントとして各々使用された。各々のドーパントに対してホスト材料を最適化及び特徴付けするために、三つの単色性装置が以下の構造で作製された:NPD(40nm)/正孔注入層(HIL)(10nm)/EML(20nm)/BCP(40nm)、ここでHIL/EMLの組合せは、赤色発光に関してトリス(フェニルピラゾール)イリジウム(Ir(ppz))/8重量%PQIr:4,4’,4”−トリス−(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(TCTA)、緑色発光に関してTCTA/10重量%Ir(ppy):N,N’−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン(mCP)、及び青色発光に関してmCP/8重量%FIr6:p−ビス−(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)である。図14は、三つの装置の概略的なエネルギー準位図を示す。最高被占分子軌道(HOMO)及び最低空分子軌道(LUMO)エネルギーが文献から引用されている。これらの単色装置は、図15に示すように、(7.4±0.5)%から(10.8±0.6)%の間の前方視外部量子効率(EQE)のピークを示し、これはこれらのドーパントに基づくりん光OLEDにおいて典型的である。
【0067】
3−EML WOLEDにおいて、三つのホストはTCTA/mCP/UGH2の順で、HOMO準位の段階的な進行、TCTA(5.7eV)から、mCP(5.9eV)へ、UGH2(7.2eV)へ、を形成するように配置された。正孔に関するエネルギーバリアは、TCTA/mCP界面におけるものと比較してmCP/UGH2界面において大きく、前者の界面においてより大きな励起子密度をもたらす。正孔の蓄積を低減するために、FIr6はUGH2に20重量%ドープされ、ドーパント上部への直接の電荷注入を促進した。3−EML WOLEDの白色バランス及び効率はドーピングの準位及び赤及び緑のEMLの厚みを調整することによって最適化された。最適化された構造は、図16に示されるように、NPD(40nm)/4重量%PQIr:TCTA(5nm)/2重量%Ir(ppy):mCP(8nm)/20重量%FIr6:UGH2(20nm)/ETL(40nm)である。ここで、ETLは20nmの厚みのBPhen層、その後の第2の20nmの厚みのLiが1:1モル比で混合されたBPhen層からなり、駆動電圧を低減し、その結果出力効率(PE)を高める。
【0068】
3−EML WOLEDの電流密度の関数としての前方視EQE及びPEが図17に示される。前方視EQEのピークは、J=12μA/cmにおいてηext=(15.3±0.8)%であり、PEのピークはJ=1.3μA/cmにおいてη=(38±2)lm/Wである。特に、EQEは同じ材料の組合せを用いて作製された最適化された単色装置と比較して著しく高い。これは、三つのEMLを有するWOLED内部の複数の領域において励起子の形成が起こる強力な証拠を提供する。
【0069】
照明される空間内部に発光を向けさせるために効率的なランプ固定冶具を使用することができるので、対応する全効率ピークはηext,t=(26±1)%及びηp,t=(64±3)lm/Wである。J=10mA/cmにおける電圧はVJ10=5.0Vである。ηextがそのピークの半分に減少する電流密度は、J0=(60±6)mA/cmであるか、または以前に報告されたりん光WOLEDのものと比較して3倍大きい。さらに、輝度が増加するとき、WOLEDは500cd/mにおいてηext,t=(23±1)%及びηp,t=(38±2)lm/W、1000cd/mにおいてηext,t=(22±1)%及びηp,t=(34±2)lm/Wを示す。
【0070】
厚み40nmのBCP層からなるETLで作製された第2の装置は、増加した駆動電圧に起因してηp,tが(54±3)lm/Wに低減されたが、より高いピークηext,t=(28±1)%を示した。それにもかかわらず、OLEDの光取り出し効率(output coupling efficiency)20%に関して、ほぼ単一の内部量子効率(83±7)%が得られた。したがって、100%に近い及びそれを含む内部量子効率がここに記述される技術及び構成を用いて実現可能であると考えられる。
【0071】
図18は、様々な電流密度に対するエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。CIE(Commission ,internationale d’Eclairage)座標及びCRI値は、各々J=1mA/cmにおいて(0.37、0.41)及び81、J=100mA/cmにおいて(0.35、0.38)及び79である。3−EML WOLEDのスペクトルは、Jの増加に従ってIr(ppy)及びPQIr発光に対してFIr6の強度が増加する傾向を示し、正孔の増加分はFIr6上部に直接注入される。これにより、励起子形成領域はEMLのFIr6:UGH2領域内部にさらに移動する。
【0072】
3−EML WOLEDの外部量子効率は同じドーパントを使用する単色装置のものと比較して高いと考えられる。なぜなら、a)単色装置の正孔注入層(HIL)/EML界面において生成される励起子の多くがHIL側に拡散し、最終的に無放射で、又はドープされていないHIL分子上での効率が低い発光チャンネルを通じて崩壊する;及びb)単色装置内のHTL/HIL界面における正孔に対するエネルギーバリアがドープされたEMLから離れた励起子形成をもたらし、発光領域内部への拡散を妨げる。3−EML WOLEDの効率は、正孔輸送に対する一連のエネルギーバリアを形成するホストのHOMO準位の段階的進行に主に起因して、以前報告された高いCRIを有する全てりん光性ドープされたWOLEDと比較して高い。これは、複数の領域において、励起子の配分が形成されることを可能にする。最終的に、各EMLにおけるホストは、隣接するEML内のドーパントのHOMO(又はLUMO)に並んだそのHOMO(又はLUMO)エネルギーを有する。例えば、mCPのHOMO(5.9eV)はFIr6のHOMO(6.1eV)と並び、TCTA(5.7eV)はIr(ppy)(5.4eV)と、一方でUGH2のLUMO(2.8eV)はIr(ppy)のLUMO(2.6eV)と並ぶ。これは、隣接するEML内のドーパント分子のHOMO(LUMO)内部への正孔(電子)の共鳴注入を促進する。その結果得られるドーパントカチオン(アニオン)はホストから電子(正孔)を捕獲して励起子を形成し、励起子形成領域がさらに広がり、たとえ輝度が高くても高い効率を有する。
【0073】
WOLEDはここで述べたように三つの別個のりん光発光層から構成され、広いEMLを横切って複数の領域内に励起子形成の配分を示してよい。ドーパント−ホスト材料及びEML内でのそれらの堆積の順序の選択により、内部照明用途において要求される高輝度における高い効率がもたらされる。3−EML WOLEDは、n−型ドープETLを使用するとき、ηext,t=(26±1)%及びηp,t=(64±3)lm/Wを有する。全EQEは、ドープされていないBCP層によってETLが置き換えられるとき、さらにηext,t=(28±1)%に高められた。WOLEDは、従来の商業的に入手可能なドーパントを用いて実現されたほぼ単一の内部量子効率を有する。
【0074】
ここで記載される様々な実施形態は例示のみを目的とし、本発明の範囲の制限を意図しないことは理解される。例えば、ここで記述された多くの材料及び構造体は、本発明の精神から逸脱することなく他の材料及び構造体で置換され得る。本発明がなぜ働くかに関する様々な理論が制限を意図していないことは理解される。例えば、電荷移動に関する理論は制限を意図しない。
【0075】
本発明は特別な例示及び好ましい実施形態に関して記述される一方で、本発明がこれらの例示及び実施形態に制限されないことは理解される。したがって、クレームに記載された本願発明は、当業者には明らかであるように、ここで記述された特別な例及び好ましい実施形態からの変更を含む。
【符号の説明】
【0076】
100 有機発光装置
110 基板
115 アノード
120 正孔注入層
125 正孔輸送層
130 電子阻止層
135 発光層
140 正孔阻止層
145 電子輸送層
150 電子注入層
155 保護層
160 カソード
162 第1の導電層
164 第2の導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードとカソードとの間に配置された積層された発光領域と、を含み、
前記積層された発光領域は、
第1の有機発光層と、
第2の有機発光層と、
第3の有機発光層と、を含み、
前記第1の有機発光層は、前記第2の発光層及び第3の発光層のうち少なくとも一つと異なる発光ピークを有し、
前記有機発光層の各々は励起子形成領域を規定する、装置。
【請求項2】
前記第1の有機発光層が第1のホスト及び第1のドーパントを含み、
前記第2の有機発光層が第2のホスト及び第2のドーパントを含み、
前記第3の有機発光層が第3のホスト及び第3のドーパントを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各ホストのHOMOが隣接するドーパントのHOMOと並ぶ、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも一つのホストのHOMOが隣接するドーパントのHOMOの5kT−10kTの範囲内である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
各ホストのHOMOが隣接するドーパントのHOMOの5kT−10kTの範囲内である、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
各ホストのLUMOが隣接するドーパントのLUMOと並ぶ、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも一つのホストのLUMOが隣接するドーパントのHOMOの5kT−10kTの範囲内である、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
各ホストのLUMOが隣接するドーパントのHOMOの5kT−10kTの範囲内である、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
第2のホストのHOMOが第1のホストのHOMOと第1のドーパントのHOMOとの間にあり、
第2のホストのHOMOが第1のホストのHOMOと並び、及び第1のドーパントのHOMOと並ぶ、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
第2のホストのLUMOが第1のホストのLUMOと第1のドーパントのLUMOとの間にあり、
第2のホストのLUMOが第1のホストのLUMOと並び、及び第1のドーパントのLUMOと並ぶ、請求項2に記載の装置。
【請求項11】
各々の発光層に関して、ホストのHOMOが各々の隣接する発光層のホストのHOMOと並び、及び各々の隣接する発光層のドーパントのHOMOと並ぶ、請求項2に記載の装置。
【請求項12】
各々の発光層に関して、ホストのLUMOが各々の隣接する発光層のホストのLUMOと並び、及び各々の隣接する発光層のドーパントのLUMOと並ぶ、請求項2に記載の装置。
【請求項13】
少なくとも一つのドーパントがりん光ドーパントである、請求項2に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも一つのドーパントが蛍光ドーパントである、請求項2に記載の装置。
【請求項15】
有機発光層の組み合わされた発光が十分に可視スペクトルに広がり白色光を生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記白色光のCRIが約80以上である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記白色光のCRE座標が(0.33±0.05、0.33±0.05)の範囲内である、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
少なくとも一つの有機発光層が非ポリマー材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
少なくとも一つの有機発光層がポリマーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
第1のスペクトルを有する光を放射するように適合された第1のホストと第1のドーパントとを含む第1の有機発光層と、
第2のスペクトルを有する光を放射するように適合された第2のホストと第2のドーパントとを含み、前記第2のホストが第1のホストのLUMOと第1のドーパントのLUMOとの間に、かつそれらと並んだLUMOを有する第2の有機発光層と、
第3のスペクトルを有する光を放射するように適合された第3のホストと第3のドーパントとを含み、前記第3のホストが第2のホストのLUMOと第2のドーパントのLUMOとの間に、かつそれらと並んだLUMOを有する第3の有機発光層と、を含む有機オプトエレクトロニック装置。
【請求項21】
発光層の組み合わされた発光が十分に可視スペクトルに広がり白色光を生成する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第2のホストが第1のホストのHOMOと第1のドーパントのHOMOとの間に、かつそれらと並んだHOMOを有し、
前記第3のホストが第2のホストのHOMOと第2のドーパントのHOMOとの間に、かつそれらと並んだHOMOを有する、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
基板を準備する段階と、
前記基板上に第1の電極を堆積する段階と、
前記第1の電極の上に第1のドープされた有機発光層を堆積する段階と、
前記第1の発光層の上に第2のドープされた有機発光層を堆積する段階と、
前記第2の発光層の上に第3のドープされた有機発光層を堆積する段階と、
前記第3の発光層の上に第2の電極を堆積する段階と、を含み、
前記発光層の各々は別個の励起子形成領域を規定する、オプトエレクトロニック装置の製造方法。
【請求項24】
発光層の組み合わされた発光が十分に可視スペクトルに広がり白色光を生成する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
各々の発光層が隣接する発光層のドーパントの対応するエネルギー準位と並ぶエネルギー準位を有するホスト材料を含む、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−518405(P2011−518405A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536029(P2010−536029)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/079055
【国際公開番号】WO2009/070382
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(509119061)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン (14)
【Fターム(参考)】