説明

複数の化合物を足場構造にカップリングさせるための組成物および方法

複数の化合物を足場構造にカップリングさせる組成物および方法が提供される。少なくとも1個の末端アルキン部分と少なくとも1個のアジド部分との反応を触媒する組成物および方法がさらに提供され、ここで、一方の部分は化合物に結合しており、他方の部分は足場構造に結合しており、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援の明言
本発明は、国立衛生研究所から助成金番号EB00432およびN01−CO−27181の政府支援を受けて成された。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願への相互参照
本願は、2005年7月14日に出願された米国仮出願番号60/699,985、および、速達郵便番号EV670672044USでにより2006年7月13日に出願された「複数の化合物を足場構造(scaffold)にカップリングさせるための組成物および方法」と題する米国出願の優先権を主張し、これらの全開示を出典明示により本明細書の一部とする。
【0003】
分野
本発明は、複数の化合物を足場構造にカップリングさせるための組成物および方法に関する。本発明は、さらに、少なくとも1個の末端アルキン部分と少なくとも1個のアジド部分との間の反応を触媒するための組成物および方法を提供し、そこでは、一方の部分が化合物に結合しており、他方の部分が足場構造に結合しており、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成する。
【背景技術】
【0004】
背景
直鎖状ポリマーおよびデンドリマーをベースとする炭水化物誘導体の多価クラスター形成は、炭水化物をベースとする細胞の過程の研究において有効な手段であり、治療剤の開発において有用な戦略であることが明らかになった。Spaltenstein and Whitesides, J. Am. Chem. Soc. 113: 686, 1991; Gordon et al., Nature 392: 30, 1998; Griffith et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 1608, 2003; Owen et al., Org. Lett. 4: 2293, 2002; Gestwicki et al., Chem. Biol. 9: 163, 2002; Gestwicki and Kiessling, Nature 415: 81, 2002; Cairo et al., J. Am. Chem. Soc. 124: 1615, 2002; Nagasaki et al., Biomacromolecules 2: 1067, 2001; Woller et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 8820, 2003; Woller and Cloninger, Org. Lett. 4: 7, 2002; Thoma et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41: 3195, 2002; Roy et al., J. Am. Chem. Soc. 123: 1809, 2001; Ortega-Caballero et al., J. Org. Chem. 66: 7786, 2001; Zanini and Roy, J. Org. Chem. 63: 3486, 1998; Page and Roy, Bioconj. Chem. 8: 714, 1997; Page et al., Chem. Commun., 1913, 1996; Roy et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1869, 1993; Bader et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 20: 91, 1981; Matrosovich, FEBS Lett. 252: 1, 1989; Kamitakahara et al., Angew. Chem. Int. Ed. 37: 1524, 1998。炭水化物の濃いクラスターは、末端官能化グリコポリマーをタンパク質などの生体適合性の足場構造に整列させることにより形成できる。そのようなポリマーは、シアノキシル(cyanoxyl)に媒介されるフリーラジカル重合(アミン、カルボン酸、ヒドラジドまたはビオチン部分を有する開始剤を用い、続いて、ビオチン−アビジン結合によりタンパク質を結合させる)、および、原子移動ラジカル重合(ATRP;N−ヒドロキシスクシンアミドまたはピリジルジスルフィド末端基を含有する側鎖PEGまたはポリ(HEMA)ポリマー、リゾチームおよびBSAへのタンパク質の結合を伴う)により、最近調製された。Hou et al., Bioconj. Chem. 15: 954, 2004; Sun et al., J. Am. Chem. Soc. 124: 7258, 2002; Bontempo et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 15372, 2004; Lecolley et al., Chem. Commun., 2026, 2004。
【0005】
分子を生物学的構造に結合させることによる生物学的結合(bioconjugation)の方法は、"Bioconjugate Techniques" by Greg T. Hermanson, Academic Press, 1996, ISBN 0-12-342336-8 で概説された。生体結合のさらなる方法は、「天然化学連結(native chemical ligation)」を利用する。天然化学連結(NCL)のために、2個の完全に保護されていない合成ペプチドフラグメントを、通常(天然)のペプチド結合を連結部位で形成させて、中性水性条件下で化学的に連結させる。NCL反応は、ペプチドまたはタンパク質鎖上にN−末端システインを必要とし、それ故にその応用において限定される。Gentle et al., Bioconjugate Chem. 15: 658-663, 2004; Muir, Synlett 6: 733-740, 2001。
【0006】
生体結合は、溶媒としての水と適合し得る最も活性かつ選択的な有機反応を必要とする。最大の可能な範囲の反応パートナーおよびより高い反応速度選択性を可能にするために、上記の方法の改良が必要である。有機アジドは、それらの生物学的分子に対して不活性である性質およびそれらのホスフィン−エステルとのシュタウディンガー連結およびアルキンとの1,3−双極性環化付加反応への参与のために、幅広い適用を達成した。Lemieux and Bertozzi, TIBTECH 16: 506, 1998; Saxon et al., Org. Lett. 2: 2141, 2000; Saxon and Bertozzi, Science 287: 2007, 2000; Kiick et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 99: 19, 2002; Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3192, 2003; Speers et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 4686, 2003; Link and Tirrell, J. Am. Chem. Soc. 125: 11164, 2003; Link et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 10598, 2004。後者の過程は、希釈条件下での生体結合適用の必要性から、並はずれて速く、多用途であり得る。金属触媒を必要とせず、もっと遅いが、生体結合に使用されてきたアジド−アルキン反応の変形物がある。これは、アルキンをより反応性にすることにより行い、従ってそのような分子に限定される。Prescher and Bertozzi, J. Am. Chem. Soc. 126: 15046, 2004。それは、小さいデンドリマー型多価炭水化物集合の創成を含む、幅広い様々な他の応用にも使用されてきた。Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3192, 2003; Lewis et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 9152, 2004; Gupta et al., unpublished results; Calvo-Flores et al., Org. Lett., 2: 2499, 2000; Perez-Balderas et al., Org. Lett., 5: 1951, 2003; Bodine et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 1638, 2004。原子移動ラジカル重合(ATRP)も、複数の炭水化物基を有するポリマー鎖の創成に使用できる。Cu(I)錯体は、ATRPおよびアジド−アルキン環化付加(AAC)反応の両方を触媒するので、それらの組合せは理にかなう。Matyjaszewski et al., Macromolecules 31: 5967, 1998; Xia et al., Macromolecules 31: 5958, 1998; Matyjaszewski et al., Macromolecules 34: 430, 2001; Rostovtsev et al., Angew. Chem. Int. Ed., 41: 2596, 2002; Tornoe et al., J. Org. Chem., 67: 3057, 2002。
【0007】
ウイルスは、機能的構造の多価的提示のために、興味をそそる足場構造である。化学をベースとする研究には、ウイルスケージ中またはその周辺の無機物質、表面上でのウイルスの組織化、および、有機化合物のウイルスコートタンパク質への化学的結合が含まれた。Klem et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 10806, 2003; Douglas et al., Adv. Mater. 14: 415, 2002; Douglas and Young, Nature 393: 152, 1998; Shenton et al., Adv. Mater. 11: 253, 1999; Douglas and Young, Adv. Mater. 11: 679, 1999; Whaley et al., Nature 405: 665, 2000; Lee et al., Science 296: 892, 2002; Mao et al., Science 303: 213, 2004; Wang et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41: 459, 2002; Wang et al., Chem. Biol. 9: 805, 2002; Wang et al., Chem. Biol. 9: 813, 2002; Wang et al., Bioconj. Chem. 14: 38, 2003; Meunier et al., Chem. Biol. 11: 319, 2004; Gillitzer et al., Chem. Commun., 2390, 2002; Flenniken et al., Nano Lett. 3: 1573, 2003; Hooker et al., J. Am. Chem. Soc. 2004: 3718, 2004; Wu et al., Bioconj. Chem. 6: 587, 1995。この領域の研究は、化学的構成要素としてのウイルス粒子の広範な探索を含み、原型としてササゲモザイクウイルス(CPMV)に焦点を当てた。この植物ウイルスは、大量に作成および精製でき、原子に近い解像度まで構造的に特徴解析され、疎水および親水分子の両方と適合する様々な条件に対して安定であり、遺伝子レベルで操作して所望の位置に突然変異を導入できる。1つの目標は、キャプシドタンパク質に機能的分子を結合させることによりウイルス粒子に新しい機能を与え、それにより診断および治療的適用を有する新しい種を生成させることである。単一の炭水化物化合物のCPMV残基への結合は、多価レクチン結合特性を有するデンドリマー様ディスプレイをもたらす。Raja et al., ChemBioChem 4: 1348, 2003。CPMVは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)で誘導体化され、コートタンパク質集合体の外表面に、良好に制御されるポリマーの負荷量をもたらした。Raja et al., Biomacromolecules 4: 472, 2003。得られる結合体は、物理的特性の変化および免疫原性の低下を示し、これは、PEG化アデノウイルスベクターに関する過去の報告と合致する。Fisher et al., Polym. Prepr. (Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem.) 41, 1012, 2000; O'Riordan et al., Hum. Gene Ther. 10: 1349, 1999; Marlow et al., Proc. Int. Symp. Controlled Release Bioact. Mater. 26: 555, 1999。ウイルス粒子への共有結合的結合を作る必要性は、生体結合のひとつの例示的適用である。タンパク質への共有結合形成は、タンパク質上の複数の保護されていない基および通常の低い濃度により困難になる。当分野には、結合の効率を高め、各ウイルス粒子に結合できる機能的分子の数を増やすために、より有効な結合過程に対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0008】
要約
複数の化合物を足場構造にカップリングさせる組成物および方法が提供される。足場構造は、生物学的または非生物学的表面であり得る。足場構造には、例えば、固体表面、タンパク質、ガラスビーズまたはポリマービーズが含まれる。足場構造には、さらに、ウイルスおよび他の大型集合体を含む、タンパク質または核タンパク質ナノ粒子が含まれる。足場構造には、さらに、例えば、ウイルスナノ粒子上のタンパク質が含まれる。足場構造にカップリングさせる化合物には、例えば、低分子、金属錯体、ポリマー、炭水化物、タンパク質またはポリヌクレオチドが含まれる。Cu(I)に触媒される原子移動ラジカル重合(ATRP)およびアジド−アルキン環化付加反応のための組成物および方法は、協同して、末端官能化化合物、例えば、グリコポリマー、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは金属錯体の合成、および、それらの足場構造、例えば、適切に修飾されたウイルスタンパク質の足場構造への結合に、多用途の方法を提供する。細胞表面レクチンへの多価的結合を目的として、ATRPによるアジドで終結するグリコポリマーの構築、フルオロフォアによるそれらの末端標識化、および、後続のこれらの化合物のウイルス粒子への高収率での結合のための、さらなる組成物および方法が提供される。複数の化合物を足場構造に共有結合的にカップリングさせる組成物および方法は、効率と選択性の増加を伴って、幅広い生物学的および非生物学的表面へのカップリング反応を提供する。
【0009】
化合物を足場構造にカップリングさせる方法が提供され、これは、化合物上の少なくとも1個の末端アルキン部分と足場構造上の少なくとも1個のアジド部分との反応を触媒し、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させ、触媒作用は、金属イオンの配位子の存在下で金属イオンを添加することによりもたらされ、足場構造は、複数の化合物の分子が足場構造とカップリングできるように、複数のそのようなアジド部分を有することを含む。ある態様では、配位子は、単座、二座または多座のものである。さらなる態様では、金属は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuまたはHgである。
【0010】
さらなる態様では、金属は、不均一な銅、金属銅、酸化銅または銅塩である。この方法は、さらに、Cu(I)の添加により反応を触媒することを提供する。この方法は、さらに、Cu(II)をCu(I)にその場で還元するための還元剤の存在下でCu(II)を添加することにより反応を触媒することを提供する。この方法は、さらに、Cu(0)をCu(I)にその場で酸化するための酸化剤の存在下でCu(0)を添加することにより反応を触媒することを提供する。
【0011】
足場構造は、生物学的または非生物学的表面であり得る。ある態様では、足場構造は、固体表面、タンパク質、タンパク質凝集体、または、核タンパク質である。足場構造には、さらに、ウイルス、ウイルス性ナノ粒子、ヴォールト(vault)タンパク質、デンドリマーまたは他の大型集合体を含むタンパク質ナノ粒子または核タンパク質ナノ粒子が含まれる。詳細な態様では、ウイルスまたはウイルス性ナノ粒子は、ササゲモザイクウイルスナノ粒子である。足場構造は、タンパク質凝集体、例えば、キーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風毒素であり得る。
【0012】
足場構造は、非生物学的表面、例えば、粒子、ガラスビーズ、金属ナノ粒子、金粒子、ポリマービーズ、膜、電極、または、繊維をベースとする物質、ゼオライト、粘土もしくは細孔性ガラス(controlled-pore glass)などの多孔性物質であり得る。粒子は、常磁性粒子、半導体ナノ粒子または量子ドットであり得る。
【0013】
さらなる態様では、化合物は、低分子、金属錯体、ポリマー、炭水化物、タンパク質またはポリヌクレオチドである。詳細な態様では、化合物は、トランスフェリン、RGD含有ポリペプチド、炭疽毒素の感染防御抗原、ポリエチレングリコールまたは葉酸である。
【0014】
この方法は、さらに、足場構造毎に多数の化合物分子をカップリングさせることを提供する。この方法は、さらに、ウイルス性ナノ粒子毎に多数の化合物分子をカップリングさせることを提供する。さらなる詳細な態様では、この方法は、ウイルス性ナノ粒子毎に100個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることを提供する。さらなる詳細な態様では、この方法は、ウイルス性ナノ粒子毎に150個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることを提供する。さらなる詳細な態様では、この方法は、ウイルス性ナノ粒子毎に200個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることを提供する。
【0015】
化合物を足場構造にカップリングさせる方法が提供され、これは、化合物上の少なくとも1個のアジド部分と足場構造上の少なくとも1個の末端アルキン部分との反応を触媒し、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させ、触媒作用は、金属イオンの配位子の存在下で金属イオンを添加することによりもたらされ、足場構造は、複数の化合物の分子が足場構造とカップリングできるように、複数のそのような末端アルキン部分を有することを含む。ある態様では、配位子は、単座、二座または多座のものである。さらなる態様では、金属は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuまたはHgである。
【0016】
さらなる態様では、金属は、不均一な銅、金属銅、酸化銅または銅塩である。この方法は、さらに、Cu(I)の添加により反応を触媒することを提供する。この方法は、さらに、Cu(II)をCu(I)にその場で還元するための還元剤の存在下でCu(II)を添加することにより反応を触媒することを提供する。この方法は、さらに、Cu(0)をCu(I)にその場で酸化するための酸化剤の存在下でCu(0)を添加することにより反応を触媒することを提供する。
【0017】
ある態様では、足場構造は、固体表面、タンパク質、ガラスビーズまたはポリマービーズである。さらなる態様では、足場構造はウイルス性ナノ粒子である。詳細な態様では、ウイルス性ナノ粒子は、ササゲモザイクウイルスナノ粒子である。さらなる態様では、化合物は、低分子、金属錯体、ポリマー、炭水化物、タンパク質またはポリヌクレオチドである。詳細な態様では、化合物は、トランスフェリン、RGD含有ポリペプチド、炭疽毒素の感染防御抗原、ポリエチレングリコールまたは葉酸である。
【0018】
この方法は、さらに、足場構造毎に多数の化合物分子をカップリングさせることを提供する。この方法は、さらに、ウイルス性ナノ粒子毎に多数の化合物分子をカップリングさせることを提供する。さらなる詳細な態様では、この方法は、ウイルス性ナノ粒子毎に100個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることを提供する。さらなる詳細な態様では、この方法は、ウイルス性ナノ粒子毎に150個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることを提供する。さらなる詳細な態様では、この方法は、ウイルス性ナノ粒子毎に200個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることを提供する。
【0019】
第1の反応物上の少なくとも1個の末端アルキン部分と第2の反応物上の少なくとも1個のアジド部分との反応を触媒し、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させ、触媒作用は、金属イオンの配位子の存在下で金属を添加することによりもたらされ、第1の反応物は、複数の第2の反応物が第1の反応物とカップリングできるように、複数の末端アルキン部分を有するか、または、第2の反応物は、複数の第1の反応物が第2の反応物とカップリングできるように、複数のアジド部分を有することを含む方法が提供される。ある態様では、配位子は、単座、二座または多座のものである。さらなる態様では、金属は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuまたはHgである。
【0020】
さらなる態様では、金属は、不均一な銅、金属銅、酸化銅または銅塩である。この方法は、さらに、Cu(I)の添加により反応を触媒することを提供する。この方法は、さらに、Cu(II)をCu(I)にその場で還元するための還元剤の存在下でCu(II)を添加することにより反応を触媒することを提供する。この方法は、さらに、Cu(0)をCu(I)にその場で酸化するための酸化剤の存在下でCu(0)を添加することにより反応を触媒することを提供する。
【0021】
ある態様では、第1の反応物は、第2の反応物をカップリングさせるための複数の末端アルキン部分を有する足場構造であり、第2の反応物は、1個またはそれ以上のアジド部分を有する化合物である。
【0022】
他の態様では、第2の反応物は、第1の反応物をカップリングさせるための複数のアジド部分を有する足場構造であり、第1の反応物は、1個またはそれ以上の末端アルキン部分を有する化合物である。
【0023】
図面の簡単な説明
図1は、グリコポリマーおよびウイルス−ポリマー結合体の合成を示す。
図2は、(A)野生型CPMVおよびグリコポリマー結合体9のサイズ排除FPLC(Superose 6)。(B)野生型CPMVおよびウイルス−ポリマー結合体9のコンカナバリン−A Sepharose カラムでのFPLC。(C)9(レーン1)およびWT−CPMV(レーン2)のSDS−PAGE。(D)ネガティブ染色した9のTEMおよび9で囲まれたWT−CPMV粒子の拡大TEM像を示す。
図3は、ポリマーで被覆された表面の構築が、重合、末端標識化および結合段階のCu触媒作用により便利になることを示す。
図4は、con−Aおよび9の混合物の凝集の時間経過を示す。
図5は、CPMVへのCuAAC結合に使用される基質を示す。
図6は、標準的N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル化学を使用して、表面に露出したリジン残基においてアルキンまたはアジドで標識化されたウイルスキャプシドを示す。
図7は、染料積載量の反応物質濃度への依存を示す。
【0024】
図8は、CPMV−(13)90およびCPMV−(5)110のSDS−PAGEを示す。
図9は、(A)野生型CPMVおよびCPMV−(14)のサイズ除去FPLC。(B)野生型CPMV、TfnおよびCPMV−(14)の、SimplyBlue(商標)で染色したゲル。(C)ネガティブ染色した野生型CPMVのTEM。(D)CPMV−(14)のネガティブ染色したTEMを示す。
図10は、CPMV−5のサイズ排除FPLCのトレースを示す。
図11は、リン酸緩衝塩水中のガレクチン−4およびCPMV−8bの混合物について、490nmでモニターした凝集の時間経過を示す。
図12は、野生型CPMVおよびCPMV−13のサイズ排除FPLCを示す。
図13は、CPMVまたはヒトTfnに対するポリクローナル抗体を使用する、CPMV−14のウエスタンブロットを示す。
図14は、配位子の例、例えば、二座配位子を示す。
【0025】
詳細な説明
複数の化合物を足場構造にカップリングさせる組成物および方法が提供される。足場構造は、生物学的または非生物学的表面であり得る。足場構造は、例えば、固体表面、タンパク質、ガラスビーズまたはポリマービーズであり得る。足場構造には、さらに、例えば、ウイルス性ナノ粒子上のタンパク質が含まれる。足場構造にカップリングする化合物は、例えば、低分子、金属錯体、ポリマー、炭水化物、タンパク質またはポリヌクレオチドであり得る。金属に触媒される原子移動ラジカル重合(ATRP)およびアジド−アルキン環化付加反応のための組成物および方法がさらに提供され、これらは、協同して、末端官能化化合物、例えば、グリコポリマー、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは金属錯体の合成、および、それらの足場構造、例えば、適切に修飾されたウイルスタンパク質の足場構造への結合のための多用途の方法を提供する。金属は、例えば、金属イオンの配位子の存在下のCu(0)、Cu(I)またはCu(II)であり得る。複数の化合物を足場構造に共有結合的にカップリングさせる組成物および方法は、効率と選択性の増加を伴って、幅広い生物学的および非生物学的表面へのカップリング反応を提供する。
【0026】
タンパク質への共有結合形成は、それらの複数の保護されていない官能基および通常の低い濃度により困難になる。水溶性スルホン化バソフェナントロリン配位子2は、生物学的に意味のある分子のササゲモザイクウイルス(CPMV)ナノ粒子への化学選択的結合のための、高効率のCu(I)に媒介されるアジド−アルキン環化付加(CuAAC)反応を促進するために使用できる。連結される基質には、複合糖類、ペプチド、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、および、鉄担持タンパク質のトランスフェリン(Tfn)が含まれ、常套の配位子トリス(トリアゾリル)アミン(1)を使用するアジド−アルキンカップリングに以前は抵抗性であった場合でさえ、連結が成功する。4−6当量の基質の使用は、60−85%の収率で分子60−115個/ビリオンの積載量を達成するのに十分であった。それは酸素に敏感であるが、Cu−配位子・2システムの確実に効率的な性能は、それを要求の厳しい生体結合適用に有用な手段にする。
【化1】

【0027】
少なくとも1個の末端アルキン部分と少なくとも1個のアジド部分との反応を触媒する組成物および方法が提供され、ここで、一方の部分は化合物に結合しており、他方の部分は足場構造に結合しており、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させる。化合物を足場構造にカップリングさせる方法が提供され、これは、化合物に結合した少なくとも1個の末端アルキン部分と、足場構造に結合した少なくとも1個のアジド部分との反応を触媒し、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させ、配位子の存在下で金属イオンを添加することにより触媒作用をもたらし、複数の化合物分子が足場構造とカップリングできるように、アジド部分を有する複数の部位を足場構造上に提供することを含む。さらなる実施態様は、化合物を足場構造にカップリングさせる方法を提供し、これは、足場構造に結合した少なくとも1個の末端アルキン部分と、化合物に結合した少なくとも1個のアジド部分との連結反応を触媒し、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させ、配位子の存在下で金属イオンを添加することにより触媒作用をもたらし、複数の化合物分子が足場構造とカップリングできるように、末端アルキン部分を有する複数の部位を足場構造上に提供することを含む。
【0028】
本発明は、特定の方法、反応物質、化合物、組成物または生物学的システムに限定されず、これらは当然変更できることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明するためだけのものであり、限定的であることを意図しないことも理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、「ある(a)」「ある(an)」および「この(the)」などで示される単数的表現には、内容が明確にそうではないと示さない限り、複数の指示物が含まれる。従って、例えば、「細胞」への言及には、2個またはそれ以上の細胞の組合せが含まれる、などということである。
【0029】
量、時間的な期間などの測定可能な値に言及する場合に本明細書で使用するとき、「約」は、特定された値から、±20%または±10%、より好ましくは±5%、より一層好ましくは±1%、そしてさらにより好ましくは±0.1%の変動を、そのような変動は開示される方法の実施に適当であるので、包含することを意味する。
【0030】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価のいかなる方法および物質も本発明の試験の実施に使用できるが、好ましい物質および方法を本明細書に記載する。本発明の説明および特許請求において、以下の用語を使用する。
【0031】
「複数の部位」は、足場構造分子毎に2個またはそれ以上の化合物を結合できる、足場構造分子上の2個またはそれ以上の部位を表す。足場構造および化合物の性質に依存して、100個またはそれ以上、200個またはそれ以上、または、300個またはそれ以上の化合物分子を足場構造分子毎に結合させることができる。ある態様では、足場構造分子は、ウイルス性ナノ粒子、例えばCPMVナノ粒子のタンパク質である。
【0032】
「末端アルキン部分」は、1個の炭素に結合した水素を有するアセチレン結合(炭素−炭素三重結合)、例えば、R−C≡C−Hを表し、ここで、Rは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、グリコポリマー、発色団の染料、グリカンまたは脂質を含むがこれらに限定されない化合物である。
【0033】
「アジド部分」は、N≡N−N−の部分を表す。アジド部分は、一般構造N≡N−N−Rを有する化合物に結合でき、ここで、Rは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、グリコポリマー、発色団の染料、グリカンまたは脂質を含むがこれらに限定されない化合物である。
【0034】
本発明は、活発な重合過程のためにアジドを含有する開始剤を使用し、続いて唯一のアジド末端基のクリック化学的生成を行う、化合物、例えば、グリコポリマー、ポリエチレングリコール、発色団の染料、葉酸、グリカン、脂質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質またはトランスフェリンの末端官能化のための効率的な戦略を提供する。銅に触媒される環化付加反応は、カップリング剤、化合物分子および足場構造分子を効率的に使用して、そのようなポリマーの官能化ウイルスコートタンパク質への非常に効率的なカップリングをもたらす。本発明のある実施態様では、単一の活性化された鎖の末端を有する十分に定義された側鎖ネオグリコポリマーは、「バイオ直交(bioorthogonal)」様式で、タンパク質または生体ナノ粒子に効率的に化学的に結合できる。生体分子のバイオ直交的標識化は、生体分子の機能および細胞の運命を研究するために重要な手段である、独特のインビボ標識を提供する。細胞の溶解は多くの人為的結果を導入するので、注目は、生きている細胞における生体分子の標識化に徐々に集まっている。この方法は、さらに、連結反応に使用される標識の性質において高い多様性を提供する。
【0035】
ある実施態様では、化合物を足場構造にカップリングさせる方法は、金属イオンを配位子の存在下で添加することにより、末端アルキン部分を有する第1の反応物と、アジド部分を有する第2の反応物との反応を触媒し、トリアゾール部分を有する生成物を形成させることを含む。金属イオンには、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuまたはHgが含まれるが、これらに限定されない。詳細な実施態様では、金属には、Mn、Fe、Co、Cu、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、W、Re、Os、Ir、PtまたはAuが含まれるが、これらに限定されない。例えば、PCT国際出願WO2003/101972参照。
【0036】
さらなる詳細な実施態様では、金属は、不均一な銅、金属銅、酸化銅または銅塩である。
銅(I)塩、例えば、Cu(I)、CuOTf・Cおよび[Cu(NCCH]PFは、還元剤の非存在下で直接使用することもできる。これらの反応は、通常、共溶媒としてのアセトニトリルおよび1当量の窒素塩基(例えば、2,6−ルチジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたはピリジン)を必要とする。しかしながら、望まれない副生成物、主にジアセチレン類、ビス−トリアゾール類および5−ヒドロキシトリアゾール類の形成がしばしば観察された。Cu(I)錯体と二酸素の反応の最近の要約には、Schindler, Eur. J. Inorg. Chem. 2311-2326, 2000 and Blackman and Tolman in Structure and Bonding, B. Meunier, Ed., Springer-Verlag, Berlin, Heidelberg, 97: 179-211, 2000 参照。Cu(I)種の直接使用に伴うこの厄介事は、2,6−ルチジンを使用すると最小化され、酸素の排除は、さらに生成物の純度と収率を改善した。
【0037】
ある実施態様では、連結反応は、Cu(I)の添加により触媒できる。Cu(I)塩を直接使用するならば、還元剤は必要ないが、アセトニトリルまたは他の上記の配位子の1種を溶媒として使用でき(Cu(I)のCu(II)への急速な酸化を防止するため)、1当量のアミンを添加して反応を加速できる。この場合、より良好な収率および生成物の純度のために、酸素を排除すべきである。従って、アスコルビン酸塩または任意の他の還元操作が、還元しない操作よりもしばしば好ましい。還元剤の使用は、操作的に単純であり、トリアゾール生成物を優れた収率および高い純度でもたらす。トリエチルアミンまたは2,6−ルチジンなどのアミンのアセトニトリル系への添加は、反応性の問題を解決する−生成物は、約8時間後に定量的収率で形成される。
【0038】
さらなる実施態様では、Cu(II)をCu(I)にその場で還元するための還元剤の存在下でCu(II)を添加することにより、連結反応を触媒できる。Cu(II)塩、例えば、CuSO・5HOは、Cu(I)塩よりも安価で、しばしばより純粋であり得る。この反応で有用な還元剤には、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、キノン、ヒドロキノン、ビタミンK1、グルタチオン、システイン、Fe2+、Co2+および電位の適用が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Davies, Polyhedron 11: 285-321 1992, and Creutz, Inorg. Chem. 20: 4449, 1981 参照。さらなる例では、Cu(I)触媒または他の金属触媒の酸化状態を維持するために、金属を還元剤として用いることができる。金属性還元剤には、Cu、Al、Be、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、NiおよびZnが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、触媒の酸化状態を維持するために、電位の適用を用いることができる。
【0039】
さらなる実施態様では、連結反応は、Cu(0)をCu(I)にその場で酸化するための酸化剤の存在下でCu(0)を添加することにより触媒できる。金属製容器も、連結反応を触媒する触媒種の供給源として使用できる。例えば、銅容器、Cu(0)は、連結反応を触媒するのに用いることができる。必要なイオンを供給するために、反応溶液は、容器の銅表面と物理的接触を成さなければならない。あるいは、反応は、非金属製容器中で行うことができ、そして、触媒金属イオンは、反応溶液を、銅線、銅屑または他の構造と接触させることにより供給される。これらの反応には、完了まで進行するのにより長い時間がかかり得るが、この実験操作は介在する段階の数を減らす。
【0040】
ある実施態様では、化合物を足場構造にカップリングさせる方法は、金属イオンの配位子の存在下で金属イオンを添加することにより、末端アルキン部分を有する第1の反応物と、アジド部分を有する第2の反応物との反応を触媒し、トリアゾール部分を有する生成物を形成させることを含む。金属イオンは、そのような金属イオンを溶媒内に可溶化するために、そのような金属イオンの酸化を阻害するために、そして、全体または部分的に、反応の触媒の間にそのような金属イオンから解離させるために、配位子に配位させる。配位子は、例えば、単座配位子、二座(キレート化)配位子、または、多座配位子であり得る。単座配位子は、金属原子に1対(「単」)の電子を供与するルイス塩基を表す。単座配位子は、イオン(通常陰イオン)または中性分子のいずれかであり得る。単座配位子には、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、水(HO)、アンモニア(NH)、水酸化物イオン(OH)、一酸化炭素(CO)、シアン化物(CN)、または、チオシアン酸塩イオン(CN−S)が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
二座配位子またはキレート化配位子は、金属原子に2対の電子を供与するルイス塩基を表す。二座配位子には、エチレンジアミン、アセチルアセトナトイオン、フェナントロリン、スルホン化バソフェナントロリンまたはシュウ酸イオンが含まれるが、これらに限定されない。二座またはキレート化配位子のさらなる例を、図14に示す。
【0042】
配位子には、アセトニトリル、シアン化物、ニトリル、イソニトリル、水、第一級、第二級もしくは第三級アミン、窒素を有する複素環、カルボン酸塩、ハロゲン化物、アルコールおよび硫化チオール、ホスフィンおよび亜リン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。詳細な実施態様では、ハロゲン化物は塩化物であり、1−5Mの濃度で使用できる。ニトリル、イソニトリル、第一級、第二級または第三級アミン、窒素を有する複素環、カルボン酸塩、ハロゲン化物、アルコール、チオール、硫化物、ホスフィンおよび亜リン酸塩から選択される1個またはそれ以上の官能基を含む多価配位子も用いることができる。
【0043】
本明細書で提供される連結反応は、化合物を足場構造にカップリングさせる方法において有用である。この方法は、1個またはそれ以上の末端アルキン部分と、1個またはそれ以上のアジド部分との連結反応を触媒し、トリアゾール部分を有する生成物を形成させ、その連結反応は、配位子の存在下での金属イオンの添加により触媒され、足場構造は1個またはそれ以上の化合物にカップリングするための多価の部位を有することを提供する。ある態様では、1個またはそれ以上の末端アルキン部分は化合物に結合しており、1個またはそれ以上のアジド部分は足場構造に結合している。さらなる態様では、1個またはそれ以上の末端アルキン部分は足場構造に結合しており、1個またはそれ以上のアジド部分は、化合物に結合している。詳細な態様では、足場構造は、ウイルス性ナノ粒子上のタンパク質、例えば、ササゲモザイクウイルスのナノ粒子であり得る。
【実施例】
【0044】
例示的実施態様
実施例1
ウイルス性ナノ粒子上に多価的に表示される炭水化物
多価的に表示される炭水化物と標的細胞との間の結合相互作用の強度および選択性は、恐らく、配列した糖の数および可撓性に依存する。本発明のある態様では、ビリオンを、炭水化物基で可能な限り密に被覆することができる。ウイルスの被覆度を高めることは、反応性ポリマー末端基が、ポリマー合成および/または生成に適合し、要求の厳しい後続のウイルスコートタンパク質への連結−低濃度で存在する2個の大型分子の結合−を達成するに十分なほど反応性であることを必要とする。
【0045】
側鎖ネオグリコポリマー3を、アジド含有開始剤1を使用して、メタクリルオキシエチルグルコシド(2)の原子移動ラジカル重合(ATRP)により調製した(図1)。Gaynor et al., Macromolecules 31: 5951, 1998; Narain and Armes, Macromolecules 36: 4675, 2003。ポリマー中のアジド鎖末端の存在を、比色分析試験および赤外スペクトルにおける2100cm−1での特徴的なピークの存在により確認した。Punna and Finn, Synlett, 99, 2004。GPC分析は、その物質の純粋な性質および平均分子量(Mn)13,000、多分散性1.3を確証し、これは、使用した開始剤:モノマー比および水中のアクリレートのATRPの予測と合致した。Narain and Armes, Macromolecules 36, 4675, 2003; Matyjaszewski, Chem. Eur. J. 5: 3095, 1999; Coessens and Matyjaszewski, J. Macromol. Sci.-Pure Appl. Chem. A36: 667, 1999; Li et al., J. Polym. Sci. A: Polym. Chem. 38: 4519, 2000。
【0046】
アジドで終結するポリマー3を、フルオレセインジアルキン4との反応により、アルキンで終結する形態5にした。図1。過剰の染料を濾過により除去し、ポリマー生成物をサイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex G-15)によりさらに生成した。アジドのアルキン末端基への完全な変換は、ネガティブ比色分析試験の観察、および、アジドIR共鳴(対応するアルキン共鳴はあまり強くなく、従って見えない)の消滅により確認した。かくして設置された発色団は、後の操作の分光学的レポーターとして役立つ。少ない副生成物として2分子の3および1個の4の反応から形成される二量体のポリマーは、生体結合に参与できないので、5から分離しなかった。
【0047】
ササゲモザイクウイルス(CPMV)を、コートタンパク質のリジン側鎖にアジド基を設置するために、N−ヒドロキシスクシンイミド6(NHS)で誘導体化した。図1。NHSエステルはキャプシドの外表面のリジン残渣をアシル化し、積載量は、全体的濃度、pHおよび反応時間により制御されると以前に確立された。Wang et al., Chem. Biol. 9: 805, 2002。この場合、約240個の溶媒が接近可能なリジン側鎖の実質的な部分の誘導体化をもたらす条件を用いた(図1でm=約150)。次いで、得られるアジド標識化ウイルス(7)を、20当量のポリマー−アルキン5と、銅(I)トリフレートおよびスルホン化バソフェナントロリン配位子8の存在下、不活性雰囲気下で縮合し、結合していないポリマーを除去するスクロース−グラジエント沈降による精製の後、グリコポリマー−ウイルス結合体9を優れた収率で産生した。Lewis et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 9152, 2004。較正した染料の吸光度により、共有結合したポリマー鎖の数は、粒子1個につき125±12個であると見出され、これは、560万Daのビリオンへの約160万ダルトンの質量の付加を表す。この操作(その一般的適用は他の箇所で説明する)は、同様の結果を達成するためにアジドに対して100当量の5を必要とした以前のCu(I)−に媒介される方法よりも遙かに効率的である。Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3192, 2003。
【0048】
実施例2
CPMVタンパク質サブユニットのグリコポリマーによる共有結合的標識化
大部分のCPMVタンパク質サブユニットのグリコポリマーによる共有結合的標識化は、変性ゲル電気泳動により確認した(図2C)。粒子集合体の無傷の性質およびそのより大きいサイズは、サイズ排除FPLC(図2A)並びに透過型電子顕微法(TEM、図2D)により立証した。TEM像は、ウイルス結合体がより丸い形であり、ウラニルアセテート染色で異なって見え、直径で野生型粒子よりも12−15%大きいことを明らかにした。9の流体力学的半径および分子量は、マルチアングル動的光散乱(DLS)により、劇的に大きいことが同様に見出された:野生型CPMVの13.4±1.3nmおよび6.1±0.3x10Daと比較して、30.3±3.4nmおよび1.4±0.4x10Da。半径および分子量の値が両方とも予測より実質的に大きいことは、これらの独特なポリマー−ウイルスハイブリッド種の光散乱データの較正および解釈の不確実性を反映している。
【0049】
グリコシル化された粒子は、固定化形態のグルコース結合タンパク質コンカナバリンA(図2B)および溶液中の四量体conAの両方と、強く相互作用した。後者の過程は、大型凝集体の形成をもたらし、その速度を490nmでの光散乱によりモニターした。9 0.7mg/mL(ビリオン中、約0.1μM)およびconA0.3mg/mLの濃度で、大型かつ多価の粒子による効率的なネットワーク形成に予測される通り、数秒で凝集が起こった。実施例4および5参照。
【0050】
図2は、(A)野生型CPMVおよびグリコポリマー結合体9のサイズ排除FPLC(Superose 6)を示す。解離した粒子に由来するタンパク質は、ここで観察されるピークよりも長い保持時間で現れ、A260/A280比は、両サンプルについて、無傷のRNA含有キャプシドに特徴的なものである。10mLはカラムの空隙容量であるので、9のより迅速な溶出は、粒子サイズの実質的な増加を示すものである。495nmでの染料の吸光度は、9にのみ現れる。(B)野生型CPMVおよびウイルス−ポリマー結合体9の、コンカナバリン−A Sepharose カラムでのFPLC。溶出バッファーは、0.15M NaCl、0.1mM Ca2+および0.1mM Mn2+を含む20mM Tris−HCl、pH7.4(溶液A)および1Mグルコース(溶液B)の表示したグラジエント混合物であった。(C)9(レーン1)およびWT−CPMV(レーン2)のSDS−PAGE。右(明るい背景)は、クーマシーブルー染色後に可視化したゲルである;タンパク質−グリコポリマー結合に予測される通り、タンパク質のほぼ全てが遅く溶出する形態に変換されていることに留意されたい。左(暗い背景)は、染色前に紫外線で照射したゲルである(レーン2は発光を示さず、省略する)。矢印は、小型(S)および大型(L)サブユニットに由来するバンドの中心を示す;それらの幅が広い性質は、ポリマーの多分散性およびタンパク質サブユニット1個につき1個より多いポリマーが結合している可能性に由来する。(D)(左)9のネガティブ染色TEM。(右)9に囲まれたWT−CPMV粒子の拡大TEM像。
【0051】
本発明は、生体の重合過程のためにアジドを含有する開始剤を使用し、続いて唯一のアジド末端基のクリック化学的生成を行う、グリコポリマーの末端官能化の効率的な戦略を立証した。発色団のジアルキンを用いるアジド−アルキン環化付加は、ポリマーを単一の染料分子で標識し、さらなる操作の便利なモニタリングを可能にするのに役立った。銅に触媒される環化付加反応は、かかるポリマーの官能化ウイルスコートタンパク質への非常に効率的なカップリングを提供する。この方法は、活性化エステルによるリジンのアミン基のアシル化およびシステインのチオールの2−チオピリジルジスルフィドとの反応などの、過去にタンパク質へのポリマーの結合に使用された生体結合操作よりも優れた性能を有する。我々の知る限り、これは、単一の活性化された鎖の末端を有する十分に定義された側鎖ネオグリコポリマーが、タンパク質または生体ナノ粒子にこのような「バイオ直交」様式で化学的に結合した初めてのものである。
【0052】
9などの粒子は、標準的赤血球凝集アッセイにおいて、レクチンに対して並はずれて高い結合親和性を有する。ATRP/AAC方法論は、癌細胞で過剰発現される炭水化物受容体を標的とする幅広いグリコポリマー−CPMV結合体を合成するのに使用されようとしている。
【0053】
実施例3
ウイルス粒子足場構造上のフルオロフォアで標識されたグリコポリマー鎖
ポリマーで被覆された表面の構築は、重合、末端標識化および結合段階のCu(I)触媒作用により、便利に行われる。ここで記載する例は、ウイルス粒子足場構造上のフルオロフォアで標識されたグリコポリマー鎖である。図3参照。
【0054】
実施例4
化学的反応物質によるCPMVの修飾の一般操作
最終溶媒混合物がバッファー80%およびDMSO20%からなるように、有機反応物質をウイルスの溶液に導入した。断りのない限り、「バッファー」は、0.1Mリン酸塩pH7.0を表す。大量の誘導体化ウイルス(>1mg)の精製は、0−40%スクロースグラジエント上での超遠心、回収されたウイルスのペレット化、および、得られる物質のバッファー中での溶媒和により実施した。誘導体化されたウイルスの質量回収率は、典型的には60−80%であった;全てのそのようなサンプルは、分析的サイズ排除FPLCにより測定される通り、>95%の無傷の粒子で構成された。ウイルス濃度は、260nmでの吸光度により測定した;0.10mg/mLのウイルスは、0.80の標準的吸光度をもたらす。較正された消衰係数70,000を適用して495nmの吸光度を測定することにより、フルオレセイン濃度を得た。各データポイントは、3回の独立した平行反応から得られた値の平均である;積載値(ウイルスに結合した単位の数)は、実験誤差±10%である。CPMVビリオンの平均分子量は、5.6x10である。
【0055】
実施例5
合成
図1のグリコポリマーおよびウイルス−ポリマー結合体の合成。実施例1ないし5で言及する化合物は、図1中にある。
【0056】
2−[2−(2−アジドエトキシ)エトキシ]エタノール:水(50mL)中の2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール(5.00g、29.7mmol)、アジ化ナトリウム(9.6g、150mmol)および少量のヨウ化カリウムの混合物を、80℃で24時間撹拌した。反応混合物をエーテルで抽出し、有機溶液を塩水で洗浄し、次いで無水NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、生成物を真空で乾燥し、無色油状物を得た。1H NMR (CDCl3, δ) 3.3-3.8 (m, 10H), 2.4 (m, 2H); ESI-MS m/z = 198.1 (M+Na); IR (KBr, cm-1) 2100。
【0057】
2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸2−[2−(2−アジドエトキシ)エトキシ]エチルエステル(1):THF(20mL)中の2−ブロモイソブチリルブロミド(2.9g、12.6mmol)およびトリエチルアミン(1.3g、12.8mmol)の溶液を、3口丸底フラスコ中で0℃に冷却した。THF(20mL)中の2−[2−(2−アジドエトキシ)エトキシ]エタノール(2.0g、11.4mmol)の溶液を、撹拌しながら滴下して添加した。次いで、反応混合物を室温で4時間撹拌し、濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。粗生成物を冷却(氷浴)5%(NaCO)水溶液に添加し、得られる混合物を酢酸エチル(3x100mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水(NaSO)で乾燥させ、蒸発させ、1を黄色油状物として得た。1H NMR (CDCl3, δ) 4.2 (t, 2H), 3.4-3.8 (m, 8H), 3.2, (m, 2H), 1.9 (s, 6H), ESI-MS m/z = 346 (M+Na); IR (KBr, cm-1) 2100。
【0058】
ポリ(メタクリルオキシエチルグルコシド)(3)。メタクリルオキシエチルグルコシド(2.48g、8.5mmol)、2,2'−ビピリジン(0.0882g、0.56mmol)および1(0.091g、0.28mmol)を、シュレンクフラスコ中で3:2メタノール/水(20mL)に溶解した。混合物に窒素を15分間激しく通気し、CuBr(0.0405g、0.282mmol)を添加した。混合物を窒素の陽圧下に室温で終夜維持した。反応混合物を空気に曝し、重合を停止させた。メタノールを減圧下で除去し、水10mLを反応混合物に添加した。市販の銅結合樹脂 Cuprisorb(商標)を使用して過剰の銅を除去し、得られる溶液を酢酸エチル(3x15mL)で洗浄し、未反応の開始剤およびビピリジンを除去した。得られる水性ポリマー溶液を終夜凍結乾燥し、白色の薄片状粉末を得た。改変ニンヒドリン試験およびIRスペクトルにおけるアジドピーク(2100cm−1)の存在により、アジドの存在を確認した。Punna and Finn, Synlett 1: 99-100, 2004。1H NMR (D2O, δ) 3.0-4.2 (m, 10H), 1.9 (m, 3 H), 0.7-1.1, (m, 2H)。ポリエチレングリコールおよびポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)較正サンプルを水中の標準条件下で使用して、GPCを実施した:M=13,000、M=10,000、多分散性=1.30。
【0059】
5−(3,5−ビス−プロプ−2−イニルオキシ−ベンゾイルアミノ)−2−(6−ヒドロキシ−3−オキソ−9,9a−ジヒドロ−3H−キサンテン−9−イル)−安息香酸(4)。乾燥THF(30mL)中のフルオレセインアミン(1.53g、4.4mmol)および重炭酸ナトリウム(0.8g、9.5mmol)の混合物を氷浴中で冷却し、N下で15分間撹拌した。乾燥THF(40mL)中の3,5−ビス−プロプ−2−イニルオキシ−ベンゾイルクロリド(1.2g、4.84mmol)を滴下して添加し、混合物を終夜室温で撹拌した。固体の重炭酸塩を濾過により除去し、溶媒を蒸発させ、4を橙色固体として得、それをカラムクロマトグラフィーにより精製した(シリカゲル、溶離剤95:5EtOAc:MeOH)。1H NMR (CD3OD, δ) 8.4 (s, 1H), 8.2 (d, 2H), 7.3 (m, 3H), 6.8-7 (m, 3H), 6.6-6.8 (m, 4H), 4.8 (d, 4H ) (s, 6 H), 3.1 (t, 2H). ESI-MS m/z = 560.1 (MH+); UV-VIS (0.1 M リン酸塩, pH 7) λmax 494 nm, ε = 64,000。ここで使用される反応条件は、便利であるが、より高速の環化付加をもたらすために、Cu(I)の配位子の使用により調節し得ることに留意されたい。Lewis et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 9152-9153, 2004。
【0060】
ポリマー5。THF(2mL)中の4(120mg、0.214mmol)の溶液を、HO(2mL)中の3(107mg、0.0082mmol)の溶液に添加し、続いてt−BuOH2mLを添加した。アスコルビン酸ナトリウム(13mg、0.065mmol)を添加し、続いて硫酸銅(8mg、0.032mmol)を添加した。反応混合物に蓋をし(他の手段で酸素から保護されることなく)、48時間室温で撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、水(10mL)を添加し、過剰の4の殆どを酢酸エチルでの抽出により除去した。水相を蒸発により濃縮し、残っている残渣の4を、Sephadex G-15 のカラムクロマトグラフィーにより水で溶出して除去した。アジドのアルキン末端基への完全な変換を、改変ニンヒドリン試験およびIRスペクトルのアジドピーク(2100cm−)の消失により確認した。1H NMR (D2O, δ) 3.0-4.2 (m, 10H), 1.9 (3 H), 0.7-1.1, (2H);芳香族性末端基のシグナルは、容易には観察されなかった。Punna and Finn, Synlett 1: 99-100, 2004。
【0061】
5−(3−アジドプロピルアミノ)−5−オキソペンタン酸NHSエステル6。乾燥CHCl(25mL)中の5−(3−アジドプロピルアミノ)−5−オキソペンタン酸(410mg、1.9mmol)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(242mg、2.1mmol)の混合物に、固体の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC、404mg、2.1mmol)を窒素下で添加した。反応を12時間室温で進行させた。次いで、それを水(3x20mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、溶媒を減圧下で蒸発させ、白色固体(417mg、70%)を得た。1H NMR (CDCl3, δ) 6.2 (幅広い, NH),3.3-3.4 (m, 4H), 2.9 (s, 4H), 2.7 (t, 2H), 2.3 (t, 3H), 2.1 (m, 2H), 1.8 (m, 2H).
【0062】
ウイルスアジド結合体7。野生型CPMV(24mg、タンパク質非対称単位で0.25μmol)を、6(28.2mg、90μmol)と共に、20%DMSOを含有するバッファー6mL中、室温で12時間インキュベートした。同様の反応について以前に記載された通り、生成物を、スクロースグラジエント沈降、超遠心によるペレット化、および、0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)中での再懸濁により単離した。Wang et al., Chem. Biol. 9: 805-811, 2002。
【0063】
ウイルス結合体9。ウイルス−アジド7(4mg、ウイルスキャプシドで7.1x10−4μmol;アジドで約0.11μmol)を、5(140mg、約10.7μmol)と共に、DMF(200μL)およびトリスバッファー(pH8、0.1M、1800μL)の混合物中、TCEP(4mM)、スルホン化バソフェナントロリン配位子8(4mM)および硫酸銅(2mM)の存在下、24時間4℃でインキュベートした。スクロースグラジエント沈降、超遠心によるペレット化、および、0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)中での再懸濁の操作を2回続けることにより、生成物を精製した。これらの物質は、サイズ排除FPLCにより、過剰の5を含まないと示された。
【0064】
配位子10−様々な生体結合適用に本来推奨および使用される添加物−の使用は、本件のような要求の厳しい定量的な状況では、あまり効率的な反応をもたらさなかった。Chan et al., Org. Lett. 6: 2853-2855, 2004; Link and Tirrell, J. Am. Chem. Soc. 125: 11164-11165, 2003; Link et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 10598-10602, 2004。例えば、スルホン化バソフェナントロリン8ではなく10を最適に使用することは、下記の通り、同様の結果を達成するために5倍量の5の同時使用を要する。ウイルス−アジド7(4mg、ウイルスキャプシドで7.1x10−μmol;アジドで約0.11μmol)を、5(140mg、約10.7μmol)と共に、DMF(200μL)およびトリスバッファー(pH8、0.1M、1800μL)の混合物中、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(4mM)、配位子10(4mM)および硫酸銅(2mM)の存在下、24時間4℃でインキュベートした。スクロースグラジエント沈降、超遠心によるペレット化、および、0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)中での再懸濁の連続操作を2回続けることにより、生成物9を精製した。同じ積載量が、しかし、僅かに低い全体的なウイルスの回収レベルが観察された。
【化2】

【0065】
conAによる9の凝集速度を、便利に490nmでモニターした。ここで、正二十面体の糖タンパク質集合体またはcon−Aのどちらの吸光度も観察されなかった(図4)。図4は、0.1mM Ca2+およびMn2+を含むPBSバッファー中のcon−A(0.32mg/mL)および9(0.7mg/mL)の混合物(con−A四量体のウイルス粒子に対するモル比26:1、70秒の時点で混合)について、490nmでモニターした凝集の時間経過を示す。
【0066】
実施例6
実験材料
CPMVへのCu(I)に媒介されるアジド−アルキン環化付加(CuAAC)結合のための、使用する基質および反応スキームを、図5および6に示す。実施例6ないし13で言及される化合物は、図5および6中にある。
【0067】
材料。フルオレセイン−PEG−NHS−3400を、Nektar (Huntsville, AL)から得た。バソフェナントロリン配位子2は、GFSから購入した。ヒトホロ−トランスフェリン(98%)は、Sigma から供給された。樹脂Fmoc−Phe−Wang(0.77mmol/g、100−200メッシュ)およびFmoc−Lys(Boc)−Wang(0.12mmol/g、100−200メッシュ)、並びに他のFmoc−保護アミノ酸は、Chem-Impex International から購入した。化合物5、6および[Cu(MeCN)](OTf)は、既に記載した通りに製造した;7aおよび8aは、the Consortium for Functional Glycomics at The Scripps Research Institute により提供された。Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3192-3193, 2003; Kubas, Inorg. Synth. 19: 90-92, 1979。CPMV−アルキンおよび−アジド結合体3および4は、以前に記載された通り、酸担持リンカーの精製NHSエステルを使用して製造した。Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3192-3193, 2003。Fmoc−L−プロパルギルグリシンは、CSPS (San Diego, CA)から購入した。断りのない限り、全ての他の化学的反応物質は、商業的供給者から入手し、受け取ったまま使用した。図5および6。
【0068】
装置。空気に敏感な操作は、Vacuum Atmospheres glovebox 中、窒素下で実施した。分取HPLCは、Dynamax/Rainin Preppy SD-1 装置、Vydac タンパク質およびペプチド逆相カラムで実施し、グラジエント溶媒混合物(溶媒A=HO/0.1%TFA;溶媒B=CHCN/0.1%TFA)で溶出する。The Scripps Research Institute の the Mass Spectrometry Facility により、MALDI−TOF分析を実施した。FPLC分析は、Superose-6 サイズ排除カラムを備えた AKTA Explorer (Amersham Pharmacia Biotech) で実施した。TEM用サンプルは、サンプルのアリコート20μLを100−メッシュ炭素被覆銅格子に沈着させ、続いて2%ウラニルアセテート20μLで染色することにより得た。Philips CM100 電子顕微鏡を使用して、像を得た。
【0069】
CPMVのNHSエステルによる修飾。最終混合物が20%DMSOを含有するように、CPMV溶液に反応物質を導入した。断りのない限り、使用したバッファーは、0.1Mリン酸塩、pH7.0であった。誘導体化されたウイルス(>1mg)の精製は、10−40%スクロースグラジエントでの超遠心、回収されたウイルスのペレット化、および、得られた物質のトリスバッファー(0.1M、pH8)中での溶解により実施した。誘導体化されたウイルスの質量回収率は、典型的には60−80%であった;全てのそのようなサンプルは、分析的サイズ排除FPLCにより測定して、>95%の無傷の粒子で構成されていた。ウイルス濃度は、260nmの吸光度により測定した;0.10mg/mLのウイルスは、0.80の標準的吸光度を与える。495nmの吸光度を、消衰係数70,000M−1cm−1を適用して測定することにより、フルオレセイン濃度を得た。各データポイントは、3回の独立した平行反応から得られた値の平均である;積載値(ウイルスに結合した基質分子の数)は、実験誤差±10%であった。CPMVビリオンの平均分子量は、5.6x10g/moleである。
【0070】
化合物7bおよび8b。HO(1mL)中の7a(10mg、12.4μmol)の溶液に、THF(1mL)中の9(70mg、0.125mmol)を添加した。t−BuOH(1mL)を添加し、続いてアスコルビン酸ナトリウム(0.5M、HO中、72μL、36μmol)およびCuSO(0.5M、HO中、24μL、12μmol)を添加した。反応混合物を密閉バイアル中で48時間室温で撹拌し、続いて揮発性溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、HO5mLを添加した。過剰の9は、主としてEtOAcによる抽出により除去した。TLC(R=0.6、8:3:3:2EtOAc/MeOH/AcOH/HO中)並びにFT−IR分光法を使用するアジドピーク(2100cm−1)の消失により、反応をモニターした。水相を蒸発により濃縮し、残渣9をカラムクロマトグラフィーにより除去し(Sephadex G-15、95:5HO/BuOH)、集めた分画を凍結乾燥すると、黄色固体(11mg、収率65%)を得た。MALDI-TOF: [M+H]+ = 1361, [M+Na]+ = 1383, [M+K]+ =1399。化合物8bは、同じ方法を使用して、8aから収率55%で合成した。MALDI-TOF: [M+Na]+ = 1472, [M+K]+ =1488。
【0071】
化合物9。乾燥THF(30mL)中のフルオレセインアミン(1.57g、4.54mmol)および重炭酸ナトリウム(1.57g、1.87mmol)の混合物を、氷浴中で冷却し、N下で15分間撹拌した。乾燥THF(30mL)中の3,5−ビス−プロプ−2−イニルオキシ−ベンゾイルクロリド(1.15g、4.99mmol)を滴下して添加し、混合物を終夜室温で撹拌した。固体の重炭酸塩を濾過により除去し、溶媒を蒸発させ、4を橙色固体として得、それを、カラムクロマトグラフィーにより精製した(シリカゲル、95:5EtOAc:MeOH)。1H NMR (CD3OD, δ) 8.4 (s, 1H), 8.2 (d, 2H), 7.3 (m, 3H), 6.8-7 (m, 3H), 6.6-6.8 (m, 4H), 4.8 (d, 4H ) (s, 6 H), 3.1 (t, 2H). ESI-MS m/z = 560.1 (MH+); UV-vis (0.1 M リン酸塩、pH 7) λmax 494 nm, ε = 64,000。
【0072】
ペプチド10および11。0.2mmolのFmoc−Phe−Wang樹脂を使用して、固相Fmocペプチド合成の標準的技法により化合物10を製造した。Fmoc−L−プロパルギルグリシンのカップリングは、他で報告された通りに実施した。Punna et al., Angew. Chem. Int. Ed. 44: 2005、印刷中。フルオレセインのペプチド鎖のN末端への結合は、5(6)−カルボキシフルオレセイン(414mg、1.1mmol)およびHBTU(417mg、1.1mmol)を含有するDMF/iPrNEt(2:1v/v)溶液を排出した樹脂に添加することにより達成した。混合物を終夜撹拌し、樹脂から切り離した後、逆相HPLCにより精製した。MALDI-TOF: [M+H]+ = 1579。0.1 mmol Fmoc-Lys(Boc)-Wang 樹脂を使用する同様の方法でペプチド11を得た。MALDI-TOF: [M+H]+= 1571, [M+Na]+ = 1593。
【0073】
ポリマー12。3−アジド−1−プロピルアミン(0.66M、334μL、0.22mmol)のトルエン溶液を、乾燥CHCl(5mL)中のフルオレセイン−PEG−NHS−3400(150mg、0.044mmol)の溶液に添加した。反応を終夜撹拌し、続いて減圧下で溶媒を除去した。HO(10mL)を添加し、溶液をEtOAcで抽出し、過剰のアジド化合物を除去した。水性溶液を凍結乾燥し、黄色粉末を得た(135mg、収率90%)。
【0074】
ポリマー13。乾燥CHCl(5mL)中のフルオレセイン−PEG−NHS−3400(150mg、0.044mmol)の溶液に、プロパルギルアミン(12.1mg、0.22mmol)を添加した。反応を終夜撹拌し、12について記載した通りに後処理した。化合物13を黄色粉末として単離した(135mg、収率90%)。
【0075】
トランスフェリン−アルキン結合体14。リン酸バッファー(0.1M、pH7、2mL)中のヒトホロ−トランスフェリン(50mg、0.625μmol)に、DMSO(500μL)中のN−(N−(プロプ−2−イニル)ヘキサンアミジル)マレイミド(3.9mg、9.1μmol)を添加し、反応を終夜室温でインキュベートした。G-15 Sephadex カラムを通して精製し、続いて透析および凍結乾燥し、14を桃色粉末として得た(30mg)。
【0076】
CuAAC反応によるCPMVの修飾。CPMV結合体3または4(2mg/mL溶液として1mg)を、相補的なアジドまたはアルキン化合物(表1に示す濃度)と、2(3mM)および[Cu(MeCN)](OTf)(1mM)を含有するトリスバッファー(0.1M、pH8、0.5mL)中で、二酸素を厳密に排除しながら、12時間室温でインキュベートした。CPMV−12、CPMV−13およびCPMV−14結合体を、上記の通りにスクロースグラジエントおよびペレット化により精製した。他で記載された通りに、全ての他のCPMV結合体を、Bio-Gel(登録商標) P-100 を満たした Bio-Spin(登録商標)使い捨てクロマトグラフィーカラムを使用して、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。Wang et al., Chem. Biol. 9: 805-811, 2002。
【0077】
実施例7
反応条件の最適化
スルホン化バソフェナントロリン2は、蛍光クエンチング触媒アッセイにおいて非常に効率的な配位子であり、適切に誘導体化されたCPMV粒子への化合物のカップリングのために、さらに2を調査することを我々に促した。Lewis et al., J. Am. Chem. Soc. 126: 9152-9153, 2004。標準的N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル化学を使用して、ウイルスキャプシドをアルキン(3)またはアジド(4)により表面に露出しているリジン残基で標識した(図6)。Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3192-3193, 2003。当初の実験は、生体結合の成功がUV−vis分光法を用いて容易にモニターできるので、官能化フルオレセイン染料を使用して実施した。従って、フルオレセイン誘導体5および6(図5)を各々3および4と、トリスバッファー(pH8)中のCu・2の存在下、不活性雰囲気下で縮合し、CPMV−染料結合体を良好な積載量で濃度依存的に得た。Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3192-3193, 2003。全ての場合で、反応収率(低分子を除くタンパク質精製の後に回収されるウイルスのパーセント)および純度(無傷のウイルス粒子対解離したウイルスタンパク質)は高かった。かくして、>85%のタンパク質が各場合で回収され、サイズ排除FPLCは、ビリオンの>95%が無傷の粒子であることを示した。詳細については支持情報を参照。紫外線下で可視化されたSDS−PAGE分析は、CPMVの小型および大型サブユニットに対応する2つの染料で標識されたバンドを明らかにし、ウイルスの両方のサブユニットが化学的に修飾されてことを示す。Cu(I)の非存在下では結合は見られず、染料のウイルスへの非特異的吸着を排除する。リン酸バッファーの使用は反応の有効性を低減させるが、HEPESバッファーは、トリスと少なくとも同等またはそれ以上に良好であることにも留意すべきである。
【0078】
実施例8
染料積載量の反応物質濃度への依存
観察された積載量(ビリオン毎の染料結合)の基質濃度に対する依存を、図7に示す。2mg/mLの4(ウイルス粒子中、0.36μM)を、4上のアジド基に関して5倍のモル過剰に相当する200μMの6で処理すると、CPMV粒子は完全に標識されると見出された(〜110個の染料/粒子)。3+5で同様の結果が得られた。対照的に、配位子1をそれ以外は同一の条件で使用することは、そのような染料積載量を達成するために、5mM濃度の6(250当量)を必要とした。さらに、Cu・1に媒介される反対の「方向性」の反応(3+5)は、4+6より有意に悪かった。図5および6参照。
【0079】
図7は、染料積載量の反応物質濃度に対する依存を示す。使用する条件:2mg/mL3または4、相補的フルオレセイン誘導体5または6、1mM[Cu(MeCN)](OTf)、3mM2、トリス−HClバッファー(pH8)、室温、14時間。
【0080】
[Cu(MeCN)](OTf)、[Cu(MeCN)](PF)またはCuBrをCu供給源として使用して、各配位子に同じ結果が得られた。最適な銅濃度は、1mMであると判明した;より低い濃度は、有意にカップリング効率を低下させた。配位子−対−金属比も重要である。2対Cuの3:1の比が、最良の結果を与えた;より低い比は、ウイルスキャプシドの有意な分解をもたらし、一方、より大きい配位子の過剰は、反応を低速化させ、不十分な標識化をもたらした。Cu・2に媒介されるAAC過程の効率は、それにより、標準的NHSおよびマレイミドのリジンおよびシステイン側鎖とのカップリング反応のものを各々遙かに上回る。例えば、10倍過剰のフルオレセインNHSエステルをCPMVに同様の条件下で添加することは、約20個の染料が各キャプシドに結合することをもたらし、スルフヒドリル基の局所的環境に依存して、フルオレセインマレイミドが10個ないし25個の染料分子で表面システイン残渣を有するCPMV突然変異に沈着する。Wang et al., Chem. Biol. 9: 805-811, 2002; Strable and Finn, Unpublished work。アジドおよびアルキンをCPMVに結合させるのに使用するリンカーは、これらの基を粒子の天然および突然変異型のリジンまたはシステイン側鎖よりも接近可能にし得るが、多数の表面ペプチド残渣の溶媒露出が高い性質を考慮すると、差異は小さいと思われる。
【0081】
実施例9
CPMV−炭水化物結合体の製造
かくして最適反応条件が確立されたので、生物学的に意味のある基質をCPMVキャプシドに結合させた(図5;表1)。炭水化物7aは、乳癌細胞の早期マーカーであるタンパク質ガレクチン−4に結合する。Blixt et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101: 17033-17038, 2004; Huflejt and Leffler, Glycoconj. J. 20: 247-255, 2004。そのアジド誘導体が8aであるシアリルルイスXは、癌細胞で過剰発現され、炎症においても役割を果たす。Ohyama et al., EMBO J. 18: 1516-1525, 1999。これらの2種の化合物のウイルス粒子表面への結合は、薬物の標的化に、そして、炭水化物エピトープに対する抗体生成の特定できない目標のために、有用であり得る。Seitz, ChemBioChem 1: 214-246, 2000。これらの非蛍光化合物の結合の容易な定量を可能にするために、アジドをフルオレセインジアルキン反応物質9とのCuAAC反応に付し、染料−アルキン誘導体7bおよび8bを提供する。次いで、Cu・2システムを使用して、7bおよび8bを、連続的に、ビリオン毎に115個および105個の積載量でウイルス−アジド4に移植した。2上のアジド基毎に4当量のみの7bまたは8bが、ウイルス濃度1−2mg/mLでこのレベルの積載量に達する必要があった。多価的に表示された7の完全性および炭水化物活性の保持は、CPMV−(7b)115を二量体ガレクチン−4に添加した際のゲルの形成により立証した。詳細については、支持情報を参照。7aおよび8aを粒子3と共に同様の条件下で使用することは、同様に、ガレクチン−4の溶液を効率的にクロスリンクする能力を備えた無傷の誘導体化ビリオンを高収率でもたらした。これらの場合では、我々は広範囲の研究により基質の性質はCuAAC反応の効率に殆ど影響がないことを確立したので、フルオレセインタグを欠く低分子の積載量は、それらの蛍光の対応物と殆ど同じであった。
【0082】
CuAAC連結による複雑な保護されていない糖のタンパク質へのこのたやすい結合は、標準的生体結合反応のために炭水化物上の二官能性リンカーを用いる現存する方法に対する有意な進歩を意味する。典型的には、スクアレート(squarate)およびマレイミド−ヒドラジドまたはマレイミド−NHSエステルリンカーがこの目的で用いれられ、糖を適切に官能化するのにさらなる合成段階が必要とされ、乏しい全体的カップリング収率をもたらす。Seitz, ChemBioChem 1: 214-246, 2000; et al., Carb. Res. 313: 15-20, 1998; Hossany et al., Bioorg. Med. Chem. 12: 3743-3754, 2004; Allen et al., Chem. Eur. J. 6: 1366-1375, 2000。対照的に、アジドは、合成の早期に炭水化物足場構造に容易に組み込むことができ、後続の合成段階を妨害しない。
【0083】
表1.CPMV(2mg/mL;3についてアルキンで47μM、4についてアジドで43μM)への、様々な基質を用いるアジド−アルキン環化付加
【表1】

(a)測定せず
【0084】
実施例10
ペプチドのCPMVへの結合
CPMVキャプシド構造の選択された領域へのペプチドループの遺伝学的導入は十分に確立されているが、そのようなキメラの生成は、サイズ、位置および配列に関する制約を受ける。Taylor et al., Biol. Chem. 280: 387-392, 1999; Taylor et al., J. Mol. Recog. 13: 71-82, 2000; Chatterji et al., Intervirology 45: 362-370, 2002。環状および直鎖状ペプチドの、幅広く多様な生化学、分子認識および薬物開発における標的に対する多大な重要性を考慮すると、天然および非天然オリゴペプチドを多価足場構造に結合させる確固とした方法は、興味深いものである。これに関して、CuAAC反応の長所を立証するために、カルボン酸またはアミン側鎖官能基を含有し、従って標準的ペプチドカップリング方法で導入されるには保護/脱保護の戦略を必要とするペプチドを選択した。今日まで、機能的ペプチドによる全長タンパク質の装飾は、天然化学連結またはマレイミド−システイン反応を用いて支配的に達成されてきた。Dawson et al., Science 266: 776-779, 1994; Dawson and Kent, Ann. Rev. Biochem. 69: 923-960, 2000。これらの戦略は、両方ともタンパク質中に接近可能なシステイン残渣の存在を、前者はN末端に、必要とする。Dibowski and Schmidtchen, Angew. Chem., Int. Ed. 37: 476-478, 1998。
【0085】
2種の機能的ペプチドを用いてCu・2システムを試験した。10のアルギニン−グリシン−アスパラギン酸塩(RGD)配列を、多くの癌細胞で過剰発現される細胞外マトリックス受容体であるαインテグリンに結合するアデノウイルス血清型から誘導する。Nemerow and Stewart, Microbiol. Mol. Biol. Rev. 63: 725-734, 1999。11のアミノ酸配列は、浮腫因子(EF)および致死因子(LF)に結合し、これらの毒素を細胞に侵入させる部分である、炭疽毒素の感染防御抗原(PA)の一部に由来する。Mogridge et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 99: 7045-7048, 2002; Cunningham et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 99: 7049-7053, 2002; Bradley et al., Nature 414: 225-229, 2001。6倍過剰のみの基質および標準的なCu・2条件を使用して、ペプチド10は成功裏に4に結合し、ウイルス粒子毎に60個のペプチドの積載量を伴った。重要なことに、5mMまでの基質の存在下で配位子1を用いたとき、ペプチドの結合は観察されなかった。11の結合は、ペプチド115個/ビリオンの積載量をもたらし、UV照射によるSDS−PAGE分析は、CPMVの小型および大型サブユニットの両方がPAペプチドで修飾されたことを示した(データは開示しない)。アルキン基の合成ペプチドへの容易な導入は、Cu・2−に媒介されるAAC反応がペプチドの生体分子足場構造への結合のための一般的戦略として役立つことを可能にする。Punna et al., Angew. Chem. Int. Ed. 44: 2005 印刷中。
【0086】
実施例11
ウイルス−ポリマー構築物の調製
CPMVは、以前に、NHSエステル誘導体を使用して、ポリ(エチレンオキシド)(PEG)で誘導体化され、外側のコートタンパク質集合体上に、良好に制御されたポリマーの積載量をもたらした。Raja et al., Biomacromolecules 4, 472-476, 2003。野生型CPMVと比較して、PEG化粒子は、変更された物理的特性およびマウスでの低減された免疫原性反応を示した。PEGで活性化されたエステルとのリジンの反応性は、ビリオン1個につき最大30個のPEG分子の結合への到達しか可能にしなかった。過去のこの値の積載量を高める試みは、反応が起こる前にウイルス粒子が沈降するような高い濃度のPEG反応物質を必要とした。しかしながら、Cu・2触媒の活性の増強は、今や、我々がこの以前の結果を改善することを可能にした。従って、フルオレセイン末端官能化PEG反応物質12および13は、ウイルス粒子が安定である容易に利用可能な濃度を使用して、それらの相補的CPMVのアルキンおよびアジド足場構造にカップリングし、ビリオン1個につき60および90個のPEG鎖の積載量を各々もたらす(表1)。得られる粒子は、再度、スクロースグラジエント沈降で密度が低く、サイズ排除FPLCにより示される通り、より大きい。詳細については、支持情報を参照されたい。図8は、UV照射およびタンパク質染色により可視化されたCPMV−(13)90およびCPMV−(5)110の変性ゲルを示す。両方の場合で、予想通り、CPMVコートタンパク質の大型(L)および小型(S)サブユニットの両方が標識された。PEG結合体CPMV−13は、各サブユニットに2個のより高い分子量のバンドを生じさせ、これらは、ポリマーによるサブユニットの単一および二重の標識に相当する。この結合体のタンパク質染色は、低い割合の非修飾サブユニットの存在も明らかにした。
【0087】
図8は、CPMV−(13)90(レーン1)およびCPMV−(5)110(レーン2)のSDS−PAGEを示す。右(明るい背景)には、SimplyBlue(商標)染色後の可視化したゲルを示す;2つの余分なバンドは、1個または2個のPEG−3400部分による修飾から生じる各サブユニットに対応する。左(暗い背景)にあるのは、タンパク質染色に先立ちUV光で照射したゲルである。PEG−3400はフルオレセインで標識されているので、修飾されたサブユニットのみがレーン1で可視である。レーン2に現れている2個の小型−サブユニットのバンドは、インビボの不完全なC−末端ペプチド切断から生じ、本実験とは無関係である。Taylor et al., Virology 255: 129-137, 1999。
【0088】
実施例12
トランスフェリンタンパク質の結合
Cu・2が効率的にAAC反応を促進する能力の最後の例として、大型タンパク質のCPMVの外表面へのカップリングを実施した。脊椎動物の鉄担持タンパク質であるトランスフェリン(Tfn)の受容体は、様々な癌細胞で過剰発現される。従って、リポソームおよび酸化鉄ナノ粒子などの足場構造上のTfnの多価集合体が、癌細胞標的化のために調製された。Hogemann-Savellano et al., Neoplasia 5: 495-506, 2003; Ryschich et al., Eur. J. Cancer 40: 1418-1422, 2004; Derycke et al., J. Nat. Cancer Inst. 96: 1620-1630, 2004。Tfnの複数のコピーをCPMV上に表示することは、同様に、受容体担持細胞に強く選択的に結合する粒子をもたらし得る。
【0089】
80kDaの二葉の糖タンパク質であるヒトホロ−トランスフェリンを、高濃度(20mg/mL)で、15当量のマレイミド−アルキンリンカーと共に、pH7でインキュベートし、1個またはそれ以上の利用可能なシステイン(および恐らく、より少ない程度で、リジン)残基で成された結合により、アルキンで誘導体化されたタンパク質14を得る。アルキンのTfnへの好結果の結合を、CuAAC条件下での14のフルオレセイン誘導体5との反応により確認した。SDS−PAGEによる分析は、Tfnの全てが少なくとも1個のフルオレセイン分子で共有結合的に標識されたことを裏付けた(データは開示しない)。
【0090】
次いで、CPMV−Tfn結合体CPMV−(14)を、Cu・2を使用する4の14との反応により調製した。FPLC、SDS−PAGE、TEM(図9)およびウエスタン免疫ブロットによる生成物の調査は、有意な数のTfn分子が粒子上に配列していることを示した。詳細については、支持情報を参照されたい。重要なことに、ウイルス−タンパク質結合体は、個々の粒子として単離され、1個以上のアルキンを担持するTfn種が多価CPMVアジドにカップリングする場合に予想され得る凝集の証拠はなかった。ネガティブ染色による電子顕微鏡観察では、個々のCPMV−(14)粒子は、野生型CPMVより直径で約16nm大きく、野生型ビリオンの滑らかな六角形と対比して、明確なコブ状の外見を示した。これらの観察は、Tfn分子が共有結合により、CPMV表面上に均一に結合したことを裏付ける。予備的測定は、結合したTfn分子が標的受容体との結合において活性であることを示す。
【0091】
タンパク質(22kDまで)のCPMVへの結合にチオール−マレイミド化学を用いる最近の報告は、ウイルスの非対称単位に関して、50倍過剰のタンパク質の使用を必要とし、同様に、所望の結合体を後にクロマトグラフィー的に精製することを必要とした。Chatterji et al., Bioconj. Chem. 15: 807-813, 2004。我々は、NHSエステル−リジン並びにチオール−求電子反応物質の反応について、多くの同様の結果を得た。対照的に、タンパク質の結合は、CuAAC反応により、天然化学連結(NCL)のものに匹敵する効率で達成された。Dawson et al., Science 266: 776-779, 1994; Dawson and Kent, Ann. Rev. Biochem. 69: 923-960, 2000。ここで、6倍過剰のTfnが必要なだけであり、用いた比較的少量のTfnは、スクロースグラジエントおよびペレット化による簡単な精製を可能にした。NCL反応は、典型的にはほぼ等モル比のカップリング剤を用いて実行されるが、チオエステルおよびN−末端システインの反応パートナーの濃度は、典型的には、本発明で使用するCPMVアジドおよびアルキンよりもかなり高い(0.1−1mM)。Dawson et al., J. Am. Chem. Soc. 119: 4325-4329, 1997; Xu et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 96: 388-393, 1999; Offer et al., J. Am. Chem. Soc. 124: 4642-4646, 2002; Bang and Kent, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 102: 5014-5019, 2005。従って、Cu・2−に媒介されるAACのプロトコールは、適切に官能化されたタンパク質のカップリングの優れた代替法である。Bausinger et al., ChemBioChem 6: 625-628, 2005。
【0092】
本発明の実施態様は、化学選択的連結に単純な銅(I)塩およびスルホン化バソフェナントロリン(2)を使用する、非常に効率的なアジド−アルキン環化付加のプロトコールを提供する。この触媒系は、複雑な炭水化物、ペプチド、ポリマーおよびタンパク質の生体高分子への結合を、過去に確立された方法で可能なものよりも遙かに優れた収率および基質積載量で可能にする。Cu・2に媒介されるAAC法の利点には、適度に過剰の所望のカップリングパートナーの使用および簡単な精製が含まれる。銅イオンがペプチドおよびポリヌクレオチドの加水分解的切断を加速する不都合な傾向は、金属中心への接近を制限するのに十分な配位子の使用により十分に制御される。改良されたCuAAC反応は、高価であるか、または少量でしか入手できない基質を加えることを望むものに、そして、アジドまたはアルキンが生合成的方法により導入される生物学的分子に、特に有利であり得る。33この系の唯一の欠点は、反応を不活性雰囲気下で実施するという要件である;この問題を解決するように設計された配位子は、現在開発中である。
【0093】
図9は、(A)野生型CPMVおよびCPMV−(14)のサイズ排除FPLCを示す。解離した粒子由来のタンパク質は、ここで観察されるピークより長い保持時間で現れ、A260/A280比は、両サンプルについて、無傷のRNA含有キャプシドに特徴的なものである。CPMV−(14)のより迅速な溶出は、10mLはほぼカラムの空隙容量であるので、粒子の実質的なサイズの増加を示す。(B)野生型CPMV(42および24kDaのサブユニット)(レーン1)、Tfn(80kDa)(レーン2)およびCPMV−(14)(レーン3)の、SimplyBlue(商標)で染色したゲル(4−12%ビス−トリス)。Tfnと結合したCPMVサブユニットに対応する、レーン3における約102および122kDaの2つの強いバンドの出現に留意されたい。(C)野生型CPMVのネガティブ染色TEM。(D)CPMV−(14)のネガティブ染色TEM。粒子の自動測定は、野生型について30±1nm、CPMV−(14)について46±5nmの平均直径を示した。
【0094】
実施例13
CPMV結合体の特徴解析
全てのCPMV結合体を、分析的サイズ排除FPLCにより特徴解析した。図10に示す代表的なトレースは、CPMV−5のものである;他の結合体は、特記しない限り、本質的に同一のクロマトグラムを示す。CPMVに共有結合したフルオレセインを示す、496nmでモニターされたトレースに留意されたい。基質の積載量は、496nmの吸光度の値を使用して算出した。全ての結合体のSDS−PAGE分析も実施した。図10は、CPMV−5のサイズ排除FPLCのトレースを示す。3つの異なる波長でトレースをモニターした。特記しない限り、図8(レーン2)に示すものと本質的に同一であるゲルが、全てのサンプルについて得られた。粒子直径の測定にEMANプログラムを使用した(www.software-ncmi.bcm.tmc.edu/ncmi/homes/stevel/EMAN/doc)。
【0095】
CPMV−8b。8bのCPMVへの結合を、CPMV−8bの二量体ガレクチン−4との凝集速度を490nmでモニターすることによりさらに確認した。ここで、正十二面体のCPMV−8bまたはガレクチン−4の吸光は観察されない(図11)。ゲル形成は、1.0mg/mLのウイルス濃度で迅速であった。図11は、リン酸緩衝塩水中のガレクチン−4(300μg/mL、50μL)およびCPMV−8b(1.0mg/mL、77μL)の混合物について、490nmでモニターした凝集の時間経過を示す。
【0096】
CPMV−13。CPMV−13の分析的サイズ排除FPLCを、図12に示す。野生型CPMVと比べてより迅速なCPMV−PEGの溶出は、実質的な粒子サイズの増加を示す。図12は、野生型CPMVおよびCPMV−13のサイズ排除FPLCを示す。解離した粒子に由来するタンパク質は、観察されたピークより長い保持時間で現れるであろう。両サンプルは、無傷のRNA含有キャプシドに特徴的なA260/A280比を示す。カラムの空隙容量は10mLである。
【0097】
CPMV−14。CPMVおよびヒトTfnの両方に対する抗体を使用する、結合体CPMV−14のウエスタンブロットは、高分子量のバンドが両抗体と反応することを示し、TfnによるCPMVの修飾を示している(図13)。図13は、CPMVまたはヒトTfnに対するポリクローナル抗体を使用するCPMV−14のウエスタンブロットを示す。4−12%ビス−トリスゲルで変性させたタンパク質を、PVDF膜に移し、5%ミルクでブロックした。次いで、膜をCPMV(the Manchester laboratory により産生されたもの、1:2000希釈)またはヒトTfn(ヤギ、Sigma;1:2000希釈)に対する抗体とインキュベートした。続いて、製造業者の推奨する希釈で使用するヤギ−抗−ウサギ(抗−CPMV用)またはウサギ−抗−ヤギ(抗−Tfn用)のHRP結合体とインキュベートし、続いてTMB膜ペルオキシダーゼ基質によりタンパク質のバンドを可視化した。サンプルは、以下の通りである:4(レーン1、5);14(レーン2、6);分子量マーカー(レーン3、7);CPMV−(14)(レーン4、8)。
【0098】
実施例14
ルテニウム触媒の存在下のアルキン−アジドカップリング方法
ルテニウムに触媒されるアルキン−アジドカップリングの基本的方法は、下記に示す通りである。例えば、J. Am. Chem. Soc., 127: 15998-15999, 2005 参照。
【化3】

【0099】
アルキンアジド触媒の注目に値する特徴は、ルテニウムに触媒される反応が、内部のアルキン(RおよびRが両方ともHではない)を許容し、一方銅に触媒される反応は、RまたはRがHであることを必要とすることである。最も活性であるルテニウム触媒は、銅の反応と反対の位置化学をもたらす:R=Hであるとき、銅は生成物Bを作るが、Ruは生成物Aを作る。
【0100】
当技術の現在の理解では、多くの他の種類のアルキンよりも速く反応する、1などのプロパルギルの基質が好ましい。
【化4】

【0101】
上記のルテニウム触媒の構造は、アルキンアジド環化付加反応において活性を有すると示された。ルテニウム触媒の変形物および他のルテニウム含有構造は、足場構造への化合物のカップリングの方法のために、アルキンアジド環化付加反応において触媒として働くと見込まれる。
【0102】
本明細書で引用する全ての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が特定的かつ個別に全目的で出典明示により本明細書の一部とすると示されているかのように、全目的で出典明示により全体を本明細書の一部とする。
【0103】
上述の発明は、ある程度詳細に、明確な理解のために例示および実施例により説明したが、当業者には、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱せずにある種の変更および改変を行い得ることが容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、グリコポリマーおよびウイルス−ポリマー結合体の合成を示す。
【図2】図2は、(A)野生型CPMVおよびグリコポリマー結合体9のサイズ排除FPLC(Superose 6)。(B)野生型CPMVおよびウイルス−ポリマー結合体9のコンカナバリン−A Sepharose カラムでのFPLC。(C)9(レーン1)およびWT−CPMV(レーン2)のSDS−PAGE。(D)ネガティブ染色した9のTEMおよび9で囲まれたWT−CPMV粒子の拡大TEM像を示す。
【図3】図3は、ポリマーで被覆された表面の構築が、重合、末端標識化および結合段階のCu触媒作用により便利になることを示す。
【図4】図4は、con−Aおよび9の混合物の凝集の時間経過を示す。
【図5】図5は、CPMVへのCuAAC結合に使用される基質を示す。
【図6】図6は、標準的N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル化学を使用して、表面に露出したリジン残基においてアルキンまたはアジドで標識化されたウイルスキャプシドを示す。
【図7】図7は、染料積載量の反応物質濃度への依存を示す。
【図8】図8は、CPMV−(13)90およびCPMV−(5)110のSDS−PAGEを示す。
【図9】図9は、(A)野生型CPMVおよびCPMV−(14)のサイズ除去FPLC。(B)野生型CPMV、TfnおよびCPMV−(14)の、SimplyBlue(商標)で染色したゲル。(C)ネガティブ染色した野生型CPMVのTEM。(D)CPMV−(14)のネガティブ染色したTEMを示す。
【図10】図10は、CPMV−5のサイズ排除FPLCのトレースを示す。
【図11】図11は、リン酸緩衝塩水中のガレクチン−4およびCPMV−8bの混合物について、490nmでモニターした凝集の時間経過を示す。
【図12】図12は、野生型CPMVおよびCPMV−13のサイズ排除FPLCを示す。
【図13】図13は、CPMVまたはヒトTfnに対するポリクローナル抗体を使用する、CPMV−14のウエスタンブロットを示す。
【図14】図14は、配位子の例、例えば、二座配位子を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物を足場構造にカップリングさせる方法であって、
化合物上の少なくとも1個の末端アルキン部分と、足場構造上の少なくとも1個のアジド部分との反応を触媒し、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させること、
触媒作用は、金属イオンの配位子の存在下に該金属イオンを添加することによりもたらされること、および、
足場構造は、複数の化合物分子が足場構造とカップリングできるように、複数のそのようなアジド部分を有すること、
を含む方法。
【請求項2】
配位子が、単座、二座または多座のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuまたはHgである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属が、Mn、Fe、Co、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、W、Re、Os、Ir、PtまたはAuである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属が、不均一な銅、金属銅、酸化銅または銅塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
Cu(I)の添加により反応を触媒することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Cu(II)をCu(I)にその場で還元するための還元剤の存在下でCu(II)を添加することにより反応を触媒することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Cu(0)をCu(I)にその場で酸化するための酸化剤の存在下でCu(0)を添加することにより反応を触媒することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ルテニウムの添加により反応を触媒することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
足場構造が、固体表面、タンパク質、核タンパク質、タンパク質凝集体、タンパク質ナノ粒子、核タンパク質ナノ粒子、ヴォールト(vault)タンパク質またはデンドリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質ナノ粒子または核タンパク質ナノ粒子が、ウイルスまたはウイルス性ナノ粒子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
足場構造が、常磁性粒子、半導体ナノ粒子、量子ドット、金属ナノ粒子、ガラスビーズ、ポリマービーズ、多孔性表面、膜、電極、多孔性物質、多孔性の繊維をベースとする物質、ゼオライト、粘土または細孔性ガラス(controlled-pore glass)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
足場構造毎に多数の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ウイルス性ナノ粒子毎に多数の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ウイルス性ナノ粒子毎に100個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ウイルス性ナノ粒子毎に150個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ウイルス性ナノ粒子毎に200個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ウイルス性ナノ粒子がササゲモザイクウイルスナノ粒子である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
化合物が、低分子、金属錯体、ポリマー、炭水化物、タンパク質またはポリヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
化合物が、トランスフェリン、RGD含有ポリペプチド、炭疽毒素の感染防御抗原、ポリエチレングリコールまたは葉酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
化合物を足場構造にカップリングさせる方法であって、
化合物上の少なくとも1個のアジド部分と、足場構造上の少なくとも1個の末端アルキン部分との反応を触媒し、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させること、
触媒作用は、金属イオンの配位子の存在下に金属イオンを添加することによりもたらされること、および、
足場構造は、複数の化合物分子が足場構造とカップリングできるように、複数のそのような末端アルキン部分を有すること、
を含む方法。
【請求項22】
配位子が、単座、二座または多座のものである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
金属が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuまたはHgである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
金属が、Mn、Fe、Co、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、W、Re、Os、Ir、PtまたはAuである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
金属が、不均一な銅、金属銅、酸化銅または銅塩である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
Cu(I)の添加により反応を触媒することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
Cu(II)をCu(I)にその場で還元するための還元剤の存在下でCu(II)を添加することにより反応を触媒することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
Cu(0)をCu(I)にその場で酸化するための酸化剤の存在下でCu(0)を添加することにより反応を触媒することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
ルテニウムの添加により反応を触媒することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
足場構造が、固体表面、タンパク質、核タンパク質、タンパク質凝集体、タンパク質ナノ粒子、核タンパク質ナノ粒子、ヴォールトタンパク質またはデンドリマーである、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
タンパク質ナノ粒子または核タンパク質ナノ粒子が、ウイルスまたはウイルス性ナノ粒子である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
足場構造が、常磁性粒子、半導体ナノ粒子、量子ドット、金属ナノ粒子、ガラスビーズ、ポリマービーズ、多孔性表面、膜、電極、多孔性物質、多孔性の繊維をベースとする物質、ゼオライト、粘土または細孔性ガラスである、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
足場構造毎に多数の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
ウイルス性ナノ粒子毎に多数の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
ウイルス性ナノ粒子毎に100個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ウイルス性ナノ粒子毎に150個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
ウイルス性ナノ粒子毎に200個またはそれ以上の化合物分子をカップリングさせることをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
ウイルス性ナノ粒子がササゲモザイクウイルスナノ粒子である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
化合物が、低分子、金属錯体、ポリマー、炭水化物、タンパク質またはポリヌクレオチドである、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
化合物が、トランスフェリン、RGD含有ポリペプチド、炭疽毒素の感染防御抗原、ポリエチレングリコールまたは葉酸である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第1の反応物上の少なくとも1個の末端アルキン部分と第2の反応物上の少なくとも1個のアジド部分との反応を触媒し、それにより少なくとも1個のトリアゾールを形成させること、
触媒作用は、金属イオンの配位子の存在下で金属を添加することによりもたらされること、
第1の反応物は、複数の第2の反応物が第1の反応物とカップリングできるように、複数の末端アルキン部分を有するか、または、第2の反応物は、複数の第1の反応物が第2の反応物とカップリングできるように、複数のアジド部分を有すること、
を含む方法。
【請求項42】
配位子が、単座、二座または多座のものである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
金属が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、AuまたはHgである、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
金属が、Mn、Fe、Co、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、W、Re、Os、Ir、PtまたはAuである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
金属が、不均一な銅、金属銅、酸化銅または銅塩である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
Cu(I)の添加により反応を触媒することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
Cu(II)をCu(I)にその場で還元するための還元剤の存在下でCu(II)を添加することにより反応を触媒することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
Cu(0)をCu(I)にその場で酸化するための酸化剤の存在下でCu(0)を添加することにより反応を触媒することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
ルテニウムの添加により反応を触媒することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
第1の反応物が、第2の反応物をカップリングさせるための複数の末端アルキン部分を有する足場構造である、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
第2の反応物が、1個またはそれ以上のアジド部分を有する化合物である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
第2の反応物が、第1の反応物をカップリングさせるための複数のアジド部分を有する足場構造である、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
第1の反応物が、1個またはそれ以上の末端アルキン部分を有する化合物である、請求項52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−501717(P2009−501717A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521631(P2008−521631)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/027310
【国際公開番号】WO2007/011696
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(593052785)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (91)
【Fターム(参考)】