説明

複数の化学薬品を送給する空気処理ディスペンサ

空気処理薬品を散布する装置が説明されている。この装置は、加熱されると散布される第1揮発性空気処理薬品を支持する第1基体と、加熱されると散布される第2揮発性空気処理薬品を支持する第2基体とを有する。これらの基体は、互いに対して積み重ねるように配置され、これらの間には、選択的に浸透性膜が設けられる。また、薬品の使用と連携した使い切り合図指示ユニットがあってもよい。これらの第1基体、第2基体、及び指示ユニットは、合わせて1つの交換可能なカートリッジ・ユニットであってよく、第2基体は、指示ユニットを収容する多孔質リングの形態であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学薬品を含浸させた又は化学薬品でコーティングした少なくとも1つの基体を加熱することにより複数の揮発性空気処理薬品を散布すると共に、空気処理薬品の使い切り時を示す指示器を含み得る、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、基体(特に、多孔質基体)が、空気処理薬品(例えば、害虫防除活性成分、芳香剤、及び脱臭剤)のキャリアとして用いられてきた。例えば、米国特許第5,111,477号、第5,647,052号、第6,551,560号、及び第6,663,838号を参照されたい。「害虫防除活性成分」には、殺虫剤、防虫剤又は害虫誘引剤、害虫成長阻害剤、並びに、害虫及び害虫と同様に防除されるその他の節足動物の行動又は発育に作用するその他の材料が含まれる。上記特許、並びに、本明細書中で言及するその他全ての特許、特許出願、特許出願公開、及びその他の文献の開示内容は、参照により、詳しく説明されたかのように本明細書中に組み込まれる。基体を加熱すると、揮発性空気処理薬品がこの基体から散布される。熱源は、一般的には電熱器であるが、燃料の燃焼を用いてもよい。
【0003】
十分な使用により、薬品は最終的には使い果たされる。このような薬品の使い果たし期間は、一般的には、装置の残りの部分(特に、電熱要素、並びに、これに付随するハウジング及び電気コネクタ)の耐用寿命よりもはるかに短い。従って、薬品リザーバ詰め替え用ユニットを交換することのできる様々な装置が設計されてきた。一般的には、2006年2月3日に出願された米国特許出願第11/346,697号、2006年2月22日に出願された米国特許出願第11/359,090号、及び2006年4月20日に出願された米国特許出願第11/379,495号を参照されたい。これらの特許出願の開示内容は、参照により、詳しく説明されたかのように本明細書中に組み込まれる。このような装置によって、空気に散布される薬品を保持するサブアセンブリ及び/又は使い切り合図指示器を交換することができ、これにより、加熱サブアセンブリを交換する必要がなくなる。
【0004】
このような装置によって、当該分野の技術は著しく進歩した。しかしながら、これらの装置は、主に、1種類の空気処理薬品が1つのディスペンサ(散布器)から散布されると共に使い切り合図薬品がもう1つ別のディスペンサから揮発されるという状況に合わせて、設計されている。例えば、望ましい殺虫剤又は防虫剤が、最適な香りを備えていないこともある。ゆえに、空気に芳香剤も送給することにより、同時に殺虫剤のにおいを隠す又は改善することが望ましいかもしれない。しかしながら、第1の殺虫剤の送給を制御する構造は、望ましい芳香剤に対しては最適化されていないこともあるし、芳香剤とこの芳香剤と一緒に散布する使い切り合図薬品とを混合することによって、使い切り合図薬品と第1活性成分の使用との連携が悪くなることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,111,477号明細書
【特許文献2】米国特許第5,647,052号明細書
【特許文献3】米国特許第6,551,560号明細書
【特許文献4】米国特許第6,663,838号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、(第1活性成分及び使い切り合図薬品とは別の)第2の薬品をより効率的な方法で散布することのできる、改善された空気処理装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明は、空気処理薬品散布システムを提供する。このシステムは、加熱されると散布され得る第1揮発性空気処理薬品を支持する第1基体と、加熱されると散布され得る第2揮発性空気処理薬品を支持する第2基体とを有する。第2基体は、第1基体に隣接して積み重ねられた多孔質構造(例えば、多孔質リング)の形態をしている。この第2基体は、揮発性空気処理薬品を揮発させる熱源に関し、第1基体のすぐ横或いは上に位置している場合、第1基体に隣接して「積み重ね」られていると理解されるべきである。第1基体及び第2基体は、これらの基体間において活性成分が早まって移行するのを防ぐ密封層(単なる例として、無孔質膜、基体の一方又は両方に付与したコーティング、或いは、基体の表面構造を密封するように変化させたものであり得る)によって、互いに隔てられていてもよいし、第1基体が第1揮発性空気処理薬品を散布しているときに、第1基体からの熱が、第2基体を通して伝導することによって或いは(例えば、指示ユニットに達する)開口部若しくはその他の通路を介して第2基体を通過することができるように、互いに対して配置されていてもよい。
【0008】
好適な形態において、前記多孔質構造は、多孔質ポリエチレンからできており、環状チャネルとこの環状チャネルの半径方向内側の錐台形キャビティとを有するリング形本体を備える。この錐台形キャビティは、第2基体の外面まで延出する軸方向通路につながっていてもよい。
【0009】
いくつかの形態では、前記第1揮発性空気処理薬品及び前記第2揮発性空気処理薬品とは別の揮発性指示薬品を保持する指示ユニットもあり、この指示ユニットは、前記第2基体のキャビティに収容されるのが好ましい。前記第1基体、前記第2基体、及びこの指示ユニットは全て、1つの交換可能なカートリッジ詰め替え用ユニットの部品として取り付けられる。
【0010】
前記第1空気処理薬品は、砂と樹脂結合剤からできた基体を含浸する害虫防除活性成分(例えば、トランスフルトリン)であり得ると共に、前記第2空気処理薬品は、ポリエチレンの第2基体を含浸する芳香剤(例えば、リモネン)であり得る。或いは、前記第2基体には、共力剤(例えば、ピペロニル・ブトキシド)が含浸されてもよい。
【0011】
これらの構造は、加熱器と共に用いられるように設計されている。前記第1基体は、加熱器と前記第2基体との間に挟まれるように、加熱器に近接して配置され得る。
【0012】
前記指示ユニットは、揮発性薬品のうちの少なくとも1つ(好ましくは、第1基体を含浸する揮発物)の使い切り程度と連携される。この指示ユニットは、指示薬品を収容する透明な材料を含み得る。揮発性ゲルが(揮発すると)浸透性膜を通って無くなることにより、使い切り指示器としての機能が果たされる。或いは、第2基体が、第1空気処理薬品及び第2空気処理薬品の一方又は両方の揮発と連携して外観が経時変化する染料又はその他の材料で直接的に処理されてもよく、これにより、第1揮発性空気処理薬品及び第2揮発性空気処理薬品の一方又は両方の消耗と関連され得る視覚的合図がもたらされる。
【0013】
本発明のシステムは、2種類の揮発性空気処理薬品が(保管前に混合されると)長期保管に不適合な場合、特に重要である。この不適合な理由は、2種類の薬品が互いに不利に反応するから、或いは、それぞれの最適な保管環境が同じでないから、或いは、これらの薬品が混合されると保管寿命が短くなるからであり得る。また、これらの薬品は、揮発特性が非常に異なるため、混合バッチから揮発されると散布の連携が難しい、という場合にも、本発明のシステムは望ましいかもしれない。
【0014】
本発明の上記及びその他の利点は、以下の説明から明白であろう。以下の説明では、添付の図面を参照するが、これらの図面は、本発明の一部を構成すると共に、考えられる本発明の好適な実施形態を限定目的ではなく例示目的で示す。このような実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を表すわけではないので、本発明の範囲を解釈するには、本願の特許請求の範囲を参照するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の空気処理装置の好適な一実施形態の斜視図であって、詰め替え用カートリッジが装置のハウジングからわずかに分解されて示されている。
【図2】図1の詰め替え用カートリッジの分解斜視図である。
【図3】図1の実施形態の断面斜視図であって、プラグ・プロングのほぼ中心線に沿って取り出されて示されている。
【図4】図1の多孔質リング基体の頂面図である。
【図5】図4の線5−5に沿って取り出された断面図である。
【図6】カートリッジ・ユニットのもう1つ別の実施形態の断面図である。
【図7】図6のカートリッジ・ユニットの分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず図1〜図3を参照すると、空気処理薬品散布装置10の第1の好適な実施形態が示されている。この装置10は、後端部16に電気プロング14を有すると共に反対の前端部20に詰め替え用カートリッジ・ユニット18を有するハウジング12を備える。電気プロング14は、加熱器22に電気的に接続されている。テーブル形の好適な加熱器22の一実施形態が、2006年2月22日に出願された米国特許出願第11/359,090号に更に詳しく開示されている。
【0017】
この装置は、垂直な壁にある電気ソケットに差し込むのが最も好ましい。ゆえに、本特許出願における方向を示す語は、このような据え付けタイプを想定して用いられている。しかしながら、水平面又はその他の面にある適切な電気ソケットを用いて、電力を供給してもよい。従って、「前」、「後」、「上」、「下」、及び「側」のような語は、装置が据え付けタイプに用いられる場合と同様に解釈されるべきである。
【0018】
これらの図に示されているプロング14の形状は、単なる例にすぎない。このようなタイプの円柱形プロングは、いくつかの国の電源につなぐのに適している。一方、他の国では、(当技術分野ではよく知られているように、)ブレード形プロング、又は、ブレード形、円柱形、及びその他の形状をしたプロング要素を組み合わせたものを用いて、利用可能な電源につなぐ。
【0019】
次に、カートリッジ・ユニット18を見ると、カートリッジ・ハウジング24と、加熱されると散布され得る第1揮発性空気処理薬品を支持する第1基体26と、膜28と、加熱されると散布され得る第2揮発性空気処理薬品を支持する第2基体30と、基体留め32と、前記第1揮発性空気処理薬品又は前記第2揮発性空気処理薬品とは別の揮発性指示薬品を保持する指示ユニット34と、この指示ユニット34から取り外し可能な剥離式蓋36とがある。
【0020】
カートリッジ・ハウジング24はクリップ38を備え、これらのクリップ38が凹部40において装置のハウジング12に対し容易に着脱することによって、カートリッジ・ユニット18は前記揮発性薬品が使い果たされたときに容易に交換可能となる。柱部42は、第1基体26と、カートリッジ・ユニット18のその他いくつかの要素とを制限する。
【0021】
第1基体26は、片側が加熱器22と接触する錐台形突出部44であり、反対側が平面46である、サンド・コア・プラグ(sand core plug)であり得る。この基体26には、加熱されると散布され得る揮発性の空気処理薬品が含浸される。この基体26は、空気処理薬品を完全に含浸させる代わりに、部分的にのみ含浸させてもよいし、この空気処理薬品でコーティングするだけでもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0022】
この基体26は、揮発性空気処理薬品を吸収し、加熱状態において基本的に安定性を保ち、加熱状態において前記空気処理薬品を放出することのできる材料であれば、いずれの材料から作られていてもよい。適切な基体26の例としては、結合剤(例えば、ノボラック樹脂、ウレタン樹脂、架橋ポリエチレンのような高度に架橋された熱可塑性樹脂)を含む多孔質の砂が挙げられるが、これに限定されない。特に好適な砂の基体は、米国特許出願公開第2005/0284952号に記載されたサンド・ウィック(sand wicks)と同様の方法で作ることができる。他の基体としては、セルロース、ガラス繊維ろ紙、合成紙材料、セラミック材料、織物(textiles)、フェルトタイプの材料、織布(wovens)及び不織布(nonwovens)、結合又は焼結合成物質、天然高分子粉末などが挙げられる。
【0023】
膜28は、第1基体26と第2基体30との間におけるあらゆる材料の移動を遮る障壁をもたらす材料(例えば、ポリエチレン・テレフタレート)であり得る。ともかく、この膜28は、加熱器22の作動中に基体26及び30が同時に加熱され得るように、これらの基体26及び30間において熱が効率的に伝導するようにする。実際には、この膜28は、これらの基体26及び30間における材料の移動を抑える密封層をもたらす。上記のように、この密封層は、エポキシ塗料、又は、このような材料の移動を防ぐために基体26若しくは30の表面に付与され得るその他あらゆる材料を、吹き付けた若しくはその他の方法で付与した層であってもよいし、どちらかの基体の表面を、密封するのに十分なだけ溶かした若しくはその他の方法で変化させたものであってもよい。
【0024】
図2、図4、及び図5から明らかなように、第2基体30は、錐台形をしており頂部が指示ユニット34を受容する窪み48を有する、多孔質リングの形態を成している。窪み48は、この多孔質リング内に深く延出し、軸方向通路の形態をした開口部50を底部に有するのが好ましい。これにより、指示ユニット34は、サンド・コア基体26の平面46に対してまだなお直接的に露出しているため、基体26が熱くなると、より効率的に加熱される。これは、基体30の断熱効果を低くすることによる。
【0025】
基体留め32の下方延出タブ52が、基体30の下方開口環状チャネル54に挿入される。第2基体30は、第1基体26に関して上述したような、揮発性空気処理薬品を吸収し、加熱状態において基本的に安定性を保ち、加熱状態において前記空気処理薬品を放出することのできる材料であれば、いずれの材料からできていてもよい。第1基体26と同様に、第2基体30には、揮発性の空気処理薬品が含浸される。この基体30は、空気処理薬品を完全に含浸させる代わりに、部分的にのみ含浸させてもよいし、この空気処理薬品でコーティングするだけでもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0026】
基体留め32は、ランド58を備えたタブ56を含み、これらのランド58は、カートリッジ・ハウジング24の下面60に対しバネを効かせる(spring)ことによって、第1基体26、膜28、及び第2基体30をカートリッジ・ハウジング24にしっかりと保持する。
【0027】
第1基体26は、殺虫剤である第1揮発性空気処理薬品を含み、第2基体30は、芳香剤である第2揮発性空気処理薬品を含むのが好ましい。しかしながら、これらの第1揮発性空気処理薬品及び/又は第2揮発性空気処理薬品には、害虫防除活性成分、芳香剤、脱臭剤、又はその他のタイプの化学薬品が含まれ得る。第1揮発性空気処理薬品及び/又は第2揮発性空気処理薬品が害虫防除活性成分である場合には、有機リン殺虫剤、リピドアミド殺虫剤、天然忌避剤(例えば、シトロネラ油、天然ピレトリン、及び除虫菊エキス)、並びに、合成ピレスロイドが好ましい。適切な合成ピレスロイドとしては、アクリナトリン、D−アレスリンのようなアレスリン、ピナミン(Pynamin)(登録商標)、ベンフルトリン、ビフェントリン、ピナミン・フォルテ(Pynamin Forte)(登録商標)のようなビオアレスリン、S−ビオアレスリン、エスビオスリン、エスバイオール、ビスオレスメトリン、シクロプロトリン、シフルトリン、β−シフルトリン、シハロトリン、λ−シハロトリン、シペルメトリン、α−シペルメトリン、β−シペルメトリン、シフェノトリン、デルタメトリン、エムペントリン、エスフェンバレレート、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、タウフルバリネート、カデトリン、ペルメトリン、フェノトリン、エトック(Etoc)(登録商標)のようなプラレトリン、レスメトリン、テフルトリン、テトラメトリン、トラロメトリン、又は、トランスフルトリンがある。また、その他の揮発性殺虫剤(例えば、米国特許第4,439,415号に記載のもの)を用いてもよい。
【0028】
特に好適な形態では、この揮発性殺虫剤は、トランスフルトリン、メトフルトリン、バポスリン、ペルメトリン、プラレトリン、テフルトリン、及びエスビオスリンから成る群から選択される。トランスフルトリンが最も好適な殺虫剤である。
【0029】
これらの空気処理薬品を保持するのに選択可能な溶剤としては、ISOPAR(商標)C、ISOPAR(商標)E、ISOPAR(商標)L、ヘプタン、メタノール、アセトン、エタノール、イソプロピル・アルコール、ドデセン、及びテトラヒドロフランが挙げられるが、これらに限定されない。ISOPAR(商標)C、ISOPAR(商標)E、及びISOPAR(商標)Lは、様々な鎖長の炭化水素溶剤であると共に、エクソン化学社(Exxon Chemical Company)から入手可能であり、特に好適である。
【0030】
しかし、蚊を防除するためのトランスフルトリンは、溶剤を使用せずに付与するのが好ましい。トランスフルトリンは、約60℃まで加熱して、多孔質基体(例えば、砂の基体)に付与することができる。
【0031】
第1揮発性空気処理薬品及び/又は第2揮発性空気処理薬品には、選択的に害虫防除特性も備えていてよい多種多様な揮発性芳香剤が含まれ得る。或いは、脱臭機能をもたらす芳香剤(例えば、何らかのテルペン)を選択してもよい。例えば、様々な天然香料及び人工香料を用いてもよい。これらの香料の例としては、動物性及び植物性の天然香料、並びに、人工香料(例えば、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、テルペン類、及びエステル類)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
揮発性空気処理薬品が消毒剤である場合、好適な消毒剤としては、グリコール類、トリメチレン、及びジプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。また、使用する基体26及び30並びに環境に適合する有機酸を用いてもよい。
【0033】
指示ユニット34は、第1揮発性空気処理薬品又は第2揮発性空気処理薬品とは別の揮発性指示薬品を保持し、2006年2月3日に出願された米国特許出願第11/346,697号によって説明されたようなものであり得る。空気処理薬品の散布は、指示ユニット34に付随する指示薬品の散布から生じる視覚的合図によって示される。
【0034】
例えば、剥離式蓋36は、指示ユニット34から取り外し可能であり、(この蓋が取り外されると、指示薬品が透過性膜を通って拡散し得るように、)指示薬品を被覆している透過性膜62が環境に露出される。この剥離式蓋36は、掴み易くするためのタブ部64を有する。この蓋が取り外されると、加熱によって揮発性指示薬品が環境へ出て行くため、指示動作が開始される。
【0035】
指示薬品は、加熱されたら加熱されているという視覚的合図をもたらす材料であれば、いずれの材料であってもよい。好適な形態では、この指示薬品は、液体、或いは、ゲル又はその他の半固体材料である。また、その他流体ベースの化合物を用いてもよい。
【0036】
特に好適な揮発性指示薬品として、米国特許第6,790,670号(これは、参照により、詳しく説明されたかのように本明細書中に組み込まれる)に記載のグアイアズレン染色材料がある。この米国特許第6,790,670号には、このような染料の揮発速度を(例えば、特に遅延剤及び溶剤を用いて)より正確に制御する様々な方法が説明されている、ということにも留意されたい。
【0037】
当然のことながら、この好適な指示システムとは別の、(参照により、詳しく説明されたかのように本明細書中に組み込まれる、米国特許第6,031,967号に教示されているような、)多種多様な材料が、加熱されると或いは別の方法で気化されると、ユニットから外へゆっくりと広がっていく、ということが分かっている。このような材料は、第2基体30に付随する別個の構造内に保持されていても、或いは、第2基体に直接的に付与されていたとしても、この材料が無くなるのを消費者が見て分かるようにすれば、視覚的な使い切り合図としての機能を果たすことができる。このような材料が第2基体30に直接的に付与される場合、窪み48が不要であり得ることは明白であろう。
【0038】
加熱要素は、電気プロング14をコンセント(図示せず)に差し込むことによって作動するのが好ましい。ハウジング12は、その上側及び下側に一連の細長い通気穴66を有する。これらの通気穴66によって、環境から空気が入り、この空気は、基体26から及び少なくとも部分的に基体30から散布された空気処理薬品と共に、ハウジングの上側にある通気穴を通過する。基体26の突出部44は、その周囲を空気が周回できるような余地を周囲に備えた状態で加熱器に密接して配置されるのが好ましい、ということに留意されたい。また、加熱器22からの熱も、カートリッジ・ユニット18の他の面に当たりながら、装置10の様々な開口部を通過することができる。
【0039】
指示ユニット34は、カートリッジ・ユニット18から取り外し可能であるため、基体26及び30とは別に交換することができる。或いは、この指示ユニット34は、カートリッジ・ユニットの残りの部分と一緒に交換されてもよい。
【0040】
また、この指示ユニット34は、指示薬品に加えてもう1つ別の空気処理薬品を収容してもよい。この別の揮発性空気処理薬品は、カップ形くぼみ68において指示薬品と合わされ得る。
【0041】
指示薬品が加熱(及び環境に散布)されると、視覚的合図によって、薬品が無くなっていく(又はある時点で完全に無くなった)ことが見て分かる。消費者は、これを見ると、使い終わりが近いことが分かり、その後、基体26及び/又は30を基本的に使い切ったことが分かる。この「使い切り合図」によって、使用度を示すか或いは使い終わりを示すことが意図される。
【0042】
指示揮発物が着色されている場合、視覚的合図の一部は色の変化であってもよい。更に、指示揮発物には、加熱されると変色する熱変色性染料(例えば、ヨウ化銅水銀)を加えてもよい。好適な形態では、この熱変色性染料は、加熱されると第1の色から第2の色へ変化し、その後冷却されると第1の色へ戻ることによって、視覚的なオフ/オン/オフ合図をもたらす。
【0043】
図6及び図7の実施形態は、別のカートリッジ・ユニット70を示している。このカートリッジ・ユニット70は、多くの点でカートリッジ・ユニット18と類似しており、カートリッジ・ユニット18の代わりに装置10と共に用いることができる。このカートリッジ・ユニット70は、カートリッジ・ハウジング72と、加熱されると散布され得る第1揮発性空気処理薬品を支持する第1基体74と、膜76と、加熱されると散布され得る第2揮発性空気処理薬品を支持する第2基体78と、基体留め80と、前記第1揮発性空気処理薬品又は前記第2揮発性空気処理薬品とは別の揮発性指示薬品を保持する指示ユニット82と、この指示ユニット82から取り外し可能な剥離式蓋84とを備える。カートリッジ・ユニット70の機能及びその他の特性は、カートリッジ・ユニット18と類似しており、薬品も同様であって、いくつかの要素(例えば、指示ユニット82のくぼみ86)に応じたわずかな違いだけがある。
【0044】
本発明の好適な実施形態について上述してきたが、当然のことながら、本発明は様々な他の実施形態に適用することができる。例えば、基体を保持する取り外し可能なカートリッジ上に指示くぼみを直接的に取り付けることは重要でない。この点に関し、基体は、加熱装置上に別個に配置されてもよいし、様々な形状寸法で構成されてもよい。
【0045】
従って、本発明の原理は、具体的に本明細書中に述べた且つ/又は図面に示したものとは別の様々な他の方法で利用することができる。本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、更に別の変更を加えてもよい。従って、本発明の全範囲を理解するには、(これらの好適な実施形態だけでなく、)特許請求の範囲を見直すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
複数の揮発性空気処理薬品を散布する複数の基体、及び/又は視覚的な使い切り合図性能を備えた、空気処理装置が開示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されると散布され得る第1揮発性空気処理薬品を支持する第1基体と、
加熱されると散布され得る第2揮発性空気処理薬品を支持する第2基体と、
を備え、
前記第2基体が、前記第1基体に隣接して積み重ねられた多孔質構造の形態をしている、
空気処理薬品散布システム。
【請求項2】
前記多孔質構造が、多孔質リングである、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項3】
前記第1基体と前記第2基体が、一方の基体から他方の基体へ揮発物が移動するのを抑えるのに十分な密封層によって隔てられている、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項4】
前記第1基体が前記第1揮発性空気処理薬品を散布しているときに、前記第1基体からの熱が前記第2基体を貫通する通路を通過することができるように、前記第1基体及び前記第2基体が互いに対して配置されている、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項5】
前記多孔質構造が、ポリエチレンから成る、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項6】
前記多孔質構造が、環状チャネルと前記環状チャネルの半径方向内側の錐台形キャビティとを有するリング形本体を備える、請求項2に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項7】
前記錐台形キャビティが、前記第2基体の外面まで延出する軸方向通路につながっている、請求項6に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項8】
前記第1基体及び前記第2基体に対して積み重ねられ、前記第1揮発性空気処理薬品及び前記第2揮発性空気処理薬品とは別の揮発性指示薬品を保持する指示ユニットを更に備える、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項9】
前記指示ユニットが、前記第2基体のキャビティに収容されている、請求項8に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項10】
前記第1基体、前記第2基体、及び前記指示ユニットが全て、1つの交換可能なカートリッジ詰め替え用ユニットの部品として取り付けられている、請求項9に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項11】
前記第2基体が、前記第1空気処理薬品及び前記第2空気処理薬品の一方又は両方の揮発と連携して外観が経時変化する材料で直接的に処理される、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項12】
前記第1揮発性空気処理薬品が害虫防除活性成分であり、前記第2揮発性空気処理薬品が芳香剤である、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項13】
前記第1揮発性空気処理薬品が害虫防除活性成分であり、前記第2揮発性空気処理薬品が前記害虫防除活性成分の共力剤である、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。
【請求項14】
加熱要素を更に備え、前記第1基体が、前記加熱要素と前記第2基体との間に挟まれるように前記加熱要素に近接して配置されている、請求項1に記載の空気処理薬品散布システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−521289(P2010−521289A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553616(P2009−553616)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/003287
【国際公開番号】WO2008/112256
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(500106743)エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド (168)