説明

複数の平坦なエレメントを有するスライドファスナー

【課題】スライドファスナーが提供される。
【解決手段】一対の第1及び第2ストリンガーの各々は、テープと、当該テープの長手エッジに取り付けられている結合エレメントの列を備える。前記結合エレメントの各々は、前記テープの上側に第1の非接続部を備え、前記テープの下側に第2の接続部を備える。前記第2の接続部は、頭部と本体部を備える。前記頭部は対向する結合エレメントの頭部に係合可能である。前記本体部は前記テープに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドファスナーに関する。より詳細には、簡素化された接続機構を有し、それによって、締結あるいは結合エレメントがスライドファスナーの前面において係合しているように見えず、以って、対向する締結エレメントをよく当接させながらも、閉位置におけるスライドファスナーの柔軟性を改善する、スライドファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
ファッション業界や家具業界に対して新たなデザインを提供するという常に存在する要請と共に、特定の衣服又は物品のスライド又はジップファスナーの性質は、完成品の全体の見栄えに大きな影響を及ぼす。
【0003】
しかしながら、また、スライドファスナーは、魅力的な外観を有すると同時に、機能的な役割も有しており、しばしば、衣服又は家具の要所となる。
【0004】
スライドファスナーに関連する問題は、異物を受けとってしまうという、スライドファスナーの閉じ機構を形成する結合又は締結エレメントあるいは務歯の内在的な性質である。もし異物が検査されずに残ってしまうと、異物が存在することで、スライドファスナーの長さに沿ったスライダーの動きを妨害することにより、閉じ機構が破損するかもしれない。また、異物を除去することで、結合エレメントあるいは務歯を破損して、ファスナーが閉まらなくなってしまうかもしれない。
【0005】
さらには、多くのスライドファスナーにおいて、とりわけ、結合エレメントとして金属製の務歯が用いられる場合、結合又は締結エレメントは、でこぼこのエッジを備えている場合があり、例えば、衣服の一部がスライドファスナーに巻き込まれると、衣服をスライドファスナーから外すためにスライドファスナーが閉じられてまた開けられるにつれて、スライドファスナーの操作の態様が、衣服を破損してしまうかもしれない。
【0006】
このため、結合エレメントにでこぼこのエッジを有さず、外観が魅力的であり、現存するスライドファスナーに比べて効率的な閉じ性能も有する閉じ機構を備えるスライドファスナーを提供する必要がある。
【0007】
従来のスライドファスナーには、通常、一対のファスナーテープが設けられている。一対のファスナーテープには、ファスナーテープの一方に取り付けられたスライダーをファスナーテープが通り抜けて、そのようにすることでスライドファスナーが閉じる、あるいは開くときに協働して互いに噛み合う個々の結合エレメントの列が取り付けられている。
【0008】
しかしながら、結合エレメントの相互嵌合は、スライドファスナーの目に見える外観に、限定的な影響を及ぼす。つまり、スライドファスナーをしっかりと締めるために必要な結合エレメントの相互結合の要請によって、スライドファスナーの外観のデザインが厳しく制限されてきた。
【0009】
また、ファスナーの前側及び後側においてユーザーの目に見える結合エレメントの相互結合は、閉位置や、対向するファスナーテープの個々のファスナーエレメントの間の分離状態におけるスライドファスナーの柔軟性を制限してきた。
【0010】
例えば、特許文献1には、2つのファスナーテープを備えるファスナーが記載されている。この2つのファスナーテープの対向する内側長手エッジに所定の間隔で取り付けられた個々の磁性エレメントが、対向するファスナーテープに取り付けられた2つの嵌め合い磁性エレメントの間で嵌入するように構成され、引き付けられている。この発明は、見栄えの悪いスライドファスナー閉じ具の問題を解決し、魅力的で滑らかなファスナーを提供する一方で、ファスナーの力は、ファスナーテープに採用される磁石の力、即ち、サイズによって限定されている。
【0011】
特許文献2には、個々の連結エレメントの2つの対向する列を備えるジッパーが開示されている。連結エレメントの各々は、例えば、商標、ロゴあるいはエンブレムといった、そのデザインやフラグメントを持っている。特許文献2は、その前面が、背面とは異なるデザインを有する締結エレメントを詳述しているが、ジッパーを備えるファスナーテープの対向する両側の個々の結合エレメントの間の相互嵌合は弱められており、以って、弱いスライドファスナーやジッパーとなる。
【0012】
加えて、スライドファスナーの前面における締結エレメントの精巧な性質は、閉位置にあるときのスライドファスナーを過度に曲げるとファスナーエレメントの閉じを阻害するかもしれないことを意味する。そして、結局、全体として柔軟性が低いジッパーとなる。
【0013】
特許文献3には、各々が合成樹脂製の単体で形成されているファスナーエレメントが一定の間隔で一対のファスナーテープの対向する側縁に沿って取り付けられているファスナーチェーンが開示されている。各々のファスナーエレメントは互いに異なる前面部と背面部を備える。ファスナーエレメントの両面は複雑に製造されており、より良い触感や外観を有するファスナーチェーンを提供するが、複雑なデザインによって、ファスナーが高額になり、製造を困難にする。
【0014】
最後に、特許文献4は、ファスナーエレメントが、ファスナーテープに取り付けられた基部と、首部と、首部から連続する係合頭部からなる本体エレメントを備える、スライドファスナーが開示されている。同様に、エレメントが分離したときに表面ストリンガーを曲げさせて、エレメントが硬化状態で係合したときにファスナーチェーンが曲がることを防止する強化手段が、本体エレメントにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7,320,158号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/101974号パンフレット
【特許文献3】米国特許第7,353,570号明細書
【特許文献4】米国特許第7,337,509号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、スライドファスナーの前面の結合エレメントの相互嵌合が弱まって、結合エレメントが前面においてより密接に当接するという先行技術のジッパーに関連する課題を克服する。その結果、閉じた結合エレメント間のギャップが減少し、スライドファスナーに光沢のある滑らかな且つ魅力的な外観を提供する。
【0017】
驚くことに、本発明の発明者は、ここに記載されたスライドファスナーの裏の結合エレメントの相互嵌合が、結合エレメントが閉位置にあるときに、十分に丈夫且つ有効なスライドファスナーを提供することも発見した。つまり、閉じ機構の強度は、結合エレメントの形状の変更に伴って損なわれることがない。
【0018】
加えて、本発明は、スライドファスナーの背後でのみ係合あるいは相互接続し、このため、スライドファスナーに取り付けられるどんな材料もほとんど、あるいは全く損傷せず、スライドファスナーの中で留められている密接に当接している結合エレメントで光沢のある外観を有するスライドファスナーを提供し、また、優れた強度と、スライドファスナーの長さに沿ったより良い柔軟性を備えるスライドファスナーも提供する。
【0019】
加えて、本出願は、スライドファスナーが過酷な気象条件にさらされる衣服又はアイテムに用いられることを可能にする防水性を提供し、防水性による結合エレメントへの影響はほとんどない。
【0020】
本発明は、布地の室内装飾品の業界に対して改善されたスライドファスナーとしての特殊な適用を見出すが、これに限定はされない。
【0021】
従って、本発明は、上記に説明された課題を対処しようとし、現代のスライドファスナーの強度と、現代のデザインの審美的要求を満たすことができる改良されたスライドファスナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様によれば、スライドファスナーであって、テープと、当該テープの長手エッジに取り付けられている結合エレメントの列を各々備える一対の第1及び第2ストリンガーを備え、結合エレメントの各々は、テープの上側に第1の非接続部を備え、テープの下側に第2の接続部を備え、第1の非接続部は、正方形又は長方形であり、第2の接続部は、頭部と本体部を備え、頭部は、対向する結合エレメントの頭部と係合可能であり、本体部は、テープに固定される、スライドファスナーが提供される。
スライドファスナーは、結合エレメントが通り抜ける通路をその間に画成しているフランジを有するスライダーであって、結合エレメントの列に沿って摺動するように構成されているスライダーを更に備えてもよい。
【0023】
第2の接続部は、第1の非接触部よりも長く、第2の接続部の頭部が第1の非接続部を超えて延びていてもよい。
【0024】
対向するテープの隣接する結合エレメントの第2の接続部が互いに接続するとき、第1の非接続部は当接してもよい。
【0025】
加えて、結合エレメントの第2の接続部は、頭領域を有し、当該頭領域は、閉位置において対向する結合エレメントの頭領域に略当接してもよい。
【0026】
本発明によるスライドファスナーの結合エレメントの第1の非接続部は、略正方形であり、あるいは略長方形であってよい。本発明によるスライドファスナーの結合エレメントの第2の接続部は、略キノコ形、又は略矢印形であってよい。結合エレメントの第2の接続部が矢印形であるとき、結合エレメントは平滑であることが好ましい。
【0027】
第1の非接続部は、平坦な上面を有してもよい。
【0028】
第1の非接続部は、頭部が対向する結合エレメントの頭部と係合した時、結合エレメントの前後方向に対向する前面を有してもよい。
【0029】
本発明の好ましい態様は、結合エレメントが可塑性材料からなるか、あるいは鉄からなることである。
【0030】
加えて、本発明のスライドファスナーは、テープの少なくとも一の面に設けられる高分子材料のコーティングを包含する。
【0031】
この高分子材料は、本発明のストリンガーに防水性を提供してもよい。
【0032】
高分子材料は、熱可塑性材料及び熱可塑性エラストマの少なくとも一方を包含してもよく、好ましくは、テープの少なくとも一の面に沿って連続的に延びる。
【0033】
高分子材料は、テープの面の上に押出成形されることによってスライドファスナーに塗布されてもよく、あるいは、高分子材料は、テープの面の上に積層されてもよい。
【0034】
高分子材料が、ポリウレタンを包含することが好ましい。
加えて、高分子材料の層は、プリントパターンをさらに包含してもよい。
熱可塑性材料が、スライドファスナーのテープの上に、結合エレメントに略当接する防水層を形成することも好ましい。
【0035】
さらに、テープは、疎水性材料からなる糸からなってもよく、及び/又は、テープは、疎水性材料で処理された布でできていてもよく、以って、使用時におけるスライドファスナーの防水性を改善する。
【0036】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様によるスライドファスナーの、衣服、家具又は道具(equipment)への適用が提供される。
【0037】
発明のさらなる態様及び好ましい特徴は、以下の記載及び添付の請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施例によるスライドファスナーの第1(前)面の、閉位置における斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例による図1に示されたスライドファスナーの第2(背)面の、閉位置における斜視図である。
【図3】本発明の第2実施例によるスライドファスナーの第1(前)面の、閉位置における部分拡大斜視図である。
【図4】本発明の第2実施例による図3に示されたスライドファスナーの第2(背)面の、閉位置における部分拡大斜視図である。
【図5】第2実施例による図3に示されたスライドファスナーの、閉位置における部分断面斜視図である。
【図6】本発明によるスライドファスナーに用いられた代替結合エレメントの斜視図である。
【図7】本発明による図6に示された代替結合エレメントの第2部分の平面図である。
【図8】図2に示されたスライドファスナーの第2(背)面の部分断面斜視図である。
【図9】本発明によるスライドファスナーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付の図面を参照して、実施形態によって発明をさらに説明する。
【0040】
図1を参照すると、本発明の第1実施形態によるスライドファスナーが示される。図1において(スライドファスナーのスライダーは明瞭化のため省略されている)略閉位置のスライドファスナーを示す。
【0041】
図1のスライドファスナー10は、第1ストリンガー2及び第2ストリンガー3を備える。ストリンガー2,3は、テープ5a,5bからなり、テープ5a,5bは、テープ5a,5bの上面と下面から突出し、結合エレメント7が取り付けられるコード(不図示)を有する。スライダー(不図示)は、好ましくは、ユーザーがスライドファスナー10のエレメント7に沿ってスライダーを動かすための引き手を備える。
【0042】
本発明によると、テープ5a,5bは、耐水層、あるいは、例えば、ポリウレタンフィルムのような撥水材料がコーティング又は積層された布層をさらに備えてもよい。図1及び図2にこのようなコーティング層50が示される。代替的に、あるいは追加的に、布テープは疎水性の糸からなってもよく、あるいは、テープは、疎水処理又は疎水調整で処理されたものであってもよい。
【0043】
図1に示されたスライドファスナー10の実施形態において、結合エレメント7は、可塑性材料からなり、ダイカスト射出成形によって準備されたものである。結合エレメント7は、伝統的な手段によって、コードに沿って取り付けられる。しかしながら、代替結合エレメントが用いられ得ることは当然であり、例えば、鉄製の結合エレメントが用いられ得る。
【0044】
ストリンガー2,3の一端において、スライドファスナー10は、保持箱(不図示)と挿入ピン(不図示)を備えてもよい。この保持箱及び挿入ピンの配置は、それぞれのテープ5a,5bに取り付けられており、このため、ストリンガー2,3が分離可能に互いに結合できる。
【0045】
スライダーは、好ましくは、ストリンガー2又は3の一方の結合エレメント7に取り付けられて、保持箱と解除端(不図示)との間のスライダーの移動を許容する。スライドファスナー10の第1及び第2ストリンガー2,3は、分離可能であってもよい。
【0046】
図面に示されたように、本発明のスライドファスナーの重要な特徴は、結合エレメントの特性にあり、またこのため、スライドファスナーの閉じ機構にある。
【0047】
結合エレメントのデザインは、略滑らかで、且つ『しっかり閉まった』あるいは『ぴったり閉まった』結合エレメントの要求される状況において、スライドファスナーを用いることを可能にする。
【0048】
図1に示された実施形態において、各々の結合エレメント7は、結合エレメント7の上下方向の上側に第1部分8を備え、下側に第2部分11を備える。第1部分8が第1の非接続部である。第1(上側)部分8は、平坦な上面8aを有する略長方形あるいは正方形の形状である。具体的には、第1部分8の上面8aは、テープの上面側から見て略正方形の形状である。第1部分8の上面8aは、テープ5a,5bの上面に対して水平な面であり、テープ5a,5bの長手方向に隣り合う結合エレメント7の上面8aと本質的に同じ水平面内に位置している。さらに、第1部分8は、図8、図9に示すように、上面8aの周縁から下方に向けて延び、結合エレメント7の前後方向に対向する前面8bと後面8c、左右方向に対向する側面8d,8eを有する。なお、結合エレメント7の前後方向とはテープの長手方向と直交する方向であり、結合エレメント7の左右方向とはテープの長手方向と平行な方向である。前面8bは、テープ5a,5bの長手縁よりもテープの外側に位置し、結合し合う結合エレメントの前面と対向している。後面8cは、前面8bとは反対側で、テープ5a,5bの長手縁よりもテープの内側に位置している。左右の側面8d,8eは、テープ5a,5bの長手方向に隣り合う結合エレメントの第1部分の側面と対向している。各側面8d,8eは、結合エレメント7の前後方向に向けて互いに平行に延びている。このため、第1部分8では、結合エレメント7の左右方向の幅が、結合エレメント7の前後方向において一定となっている。結合エレメント7は、テープ5a,5bの対向する長手縁に沿って固定される。図1に見られるように、結合エレメント7は、対向するテープ5a,5bの結合エレメント7同士が結合した時、テープの長手方向に互いにずれるように配列される。結合エレメント7の形状は、スライドファスナー10が閉位置にあるときに『ぴったり閉まる』ようにする。具体的には、各結合エレメント7の第1部分8の左右の側面8d,8eがテープの長手方向に直交するテープ幅方向に平行な面であり、隣り合う結合エレメント7の左右の側面8d,8e同士が僅かなギャップを空けて対向する状態にある。また、各結合エレメント7の上側部分8の前面8bがテープ5a,5bの長手方向に平行な面であり、対向する結合エレメント7が結合した時、結合エレメント7の前面8b同士が僅かなギャップを空けて対向する状態となる。このため、第1テープ5aの個々の結合エレメント7及び第2テープ5bの個々の結合エレメント7の間のギャップは、スライドファスナー10が閉められたとき非常に小さい。
【0049】
従って、スライドファスナー10は、滑らかな『ブロック舗装』型の外観を有しており、見ても触れても審美的に良好である。
【0050】
加えて、結合エレメント7の閉じた外観と滑らかな特性における結合エレメント7の密接に集まった配列は、スライドファスナー10が固定される材料が、結合エレメント7の間で簡単に引っ掛からないようにする。加えて、スライドファスナー10に材料が偶然引っ掛かった場合、結合エレメント7は、この材料をほとんど、あるいは全く損傷しない。
【0051】
図2において、図1のスライドファスナー10の裏側の、閉位置における斜視図が示されている。図2において、結合エレメント7は、やはり閉じ配列で示されている。
【0052】
スライドファスナー10の下側から、対向する結合エレメントの相互嵌合を見ることができる。
【0053】
各々の結合エレメントの第2部分11は、頭領域12、本体領域16、及び首領域14を備えた第2の接続部である。頭領域12は、結合エレメントの左右方向に突出し、結合し合う結合エレメントの頭領域と係合することができる。本体領域16は、テープ5a,5bの下面に接し、第1部分8との間でコードを挟んでテープ5a,5bに固定されている。首領域14は、頭領域12と本体領域16の間に配置され、結合エレメント7の左右方向の肉厚が頭領域12及び本体領域16よりも薄く、括れた形状となっている。また、図9に示すように、頭領域12は、第1部分を越えて延びている。具体的には、頭領域12は、第1部分の前面8bよりも結合エレメント7の前方に向けて突出している。第2部分は、結合エレメント7の前後方向において、頭領域の実質的なサイズに等しい量だけ、第1部分よりも長いのである。
【0054】
各々のテープ5a,5bの隣接する結合エレメント7の間には、カップ領域20がある。カップ領域20は、隣り合う結合エレメント7の首領域14間に設けられた隙間である。スライドファスナー10が閉位置にあるとき、第1テープ5aの結合エレメント7の頭領域12が、第2テープ5bの隣接する結合エレメント7によって形成されるカップ領域20に嵌入する。
【0055】
また、結合エレメント7の密接に集まった配列が、結合エレメント7がしっかりと保持されるようにしていることが、図2から見てとれる。実際、スライドファスナー10が閉じられているときにスライダー経路の方向に直交して結合エレメントを引っ張ろうとしても、対向する結合エレメント7の頭領域12が互いに当接して、スライドファスナー10が容易に開くことを防止する。
【0056】
図3において、本発明の第2実施形態によるスライドファスナーの部分拡大斜視図が示されている。スライドファスナーはやはり、一対の対向するテープ5a,5bを備える一対のストリンガーを備える。結合エレメント17は、テープ5a,5bの長手縁に沿って取り付けられている。結合エレメント17は、従来の手段によって、テープ5a,5bの内側縁のコード22a,22bに沿って、それぞれ固定されている。
【0057】
図3の結合エレメント17は、図1の結合エレメント7と同じ方法で配列されている。つまり、結合エレメント17は、スライドファスナーが閉位置にあるとき、密接に集まって、対向するテープ5a,5bの長さ方向において互いにずれている。しかしながら、図3において、結合エレメント17の第1部分18は、平坦な上面18aを有する略長方形あるいは正方形の形状である。具体的には、第1部分18の上面18aは、テープの上面側から見て略長方形の形状である。
【0058】
図4は図3のスライドファスナーの下側の位置を示す。図4に見られる結合エレメント17は、第1部分18の下側に第2部分30を有する。第2部分30は、頭部31と、首部35と、本体部33を備える。頭部31は、結合エレメントの左右方向に突出し、結合し合う結合エレメントの頭部と係合することができる。本体部33は、テープ5a,5bの下面に接し、第1部分18との間でコード22a,22bを挟んでテープ5a,5bに固定されている。首部35は、頭部31と本体部33の間に配置され、結合エレメント17の左右方向の肉厚が頭部31及び本体部33よりも薄く、括れた形状となっている。
【0059】
本体部33は、結合エレメント17の前後方向に長い形状であり、対向するテープ5a,5bの結合エレメント17の頭部31は、各々のテープ5a,5bの隣接する結合エレメント17によって形成されたカップ領域40の間に嵌入する。カップ領域40は、隣り合う結合エレメント17の首部35間に設けられた隙間である。
【0060】
図5において、スライドファスナーが閉位置にあるときの結合エレメント17の略平坦な本質が明らかである。
【0061】
図6、図7において、本発明によるスライドファスナー用の、鉄からなる代替結合エレメントが、より詳細に検討される。
【0062】
図6において、本発明によるスライドファスナーのテープに取り付けられる前の結合エレメント170が示される。図6において、結合エレメントは、第1部分60及び第2相互接続部分62を備えていることがわかる。第1部分60は、平坦な上面60aを有した略長方形あるいは正方形の形状である。具体的には、第1部分60の上面60aは、テープの上面側から見て略長方形である。前述したように、第2相互接続部分62は、テープに固定される本体部64と、括れた首部68を介して接続された頭部66を備える。頭部66は、平滑な矢印形頭部の形状である。図6、図7から見てとれるように、第2相互接続部分62の頭部66は、第2相互接続部分62の頭部66に略等しい量だけ第1部分60の前面60bを超えて前方へ向けて延びる。このため、スライドファスナーが閉位置にあり、個々の結合エレメント170の頭部66が対向するテープの隣接する結合エレメント170によって形成されるカップ部分あるいは領域の間に嵌入するとき、相互係合する第2部分62は、第1部分60が互いに接近して集まった配置で接続する。好ましくは、第1部分60が互いに密接に当接するように、密接して集まった配置で接続する。
【0063】
加えて、頭部66は、引っ込んだ縁80,82を備える。引っ込んだ縁80,82は、首部68へ向けて頭部66の左右方向の厚みを次第に減少させるように傾斜している。隣接する結合エレメント170の第2相互接続部分62が、引っ込んだ縁80,82に相互嵌合するとき、隣接する結合エレメント170の頭部、ひいては、対向するテープの引っ込んだ縁80,82に互いに連結する。頭部66は、第1部分60を越えて延びている。具体的には、頭部66は、第1部分60の前面8bよりも結合エレメント170の前方に向けて突出している。即ち、第2部分62は、結合エレメント170の前後方向において、頭部66の実質的なサイズに等しい量だけ、第1部分60よりも長いのである。頭部の実質的なサイズとは、結合エレメント170の前後方向において、頭部66の前端67から引っ込んだ縁80,82に至るまでの長さである。
【0064】
驚くことに、結合エレメント170が、第1部分60と第2部分62を備え、また、閉じたスライドファスナーにおいて相互嵌合するのが結合エレメント170の第2部分62だけであるのに、スライドファスナーが閉位置にあるときに結合エレメント170の取り付け強度が驚くほど強いことを、発明者は発見した。これは、閉じたスライドファスナーにおいて各々の結合エレメント170の半分しか有効に相互嵌合状態で係合していないという点で、驚くべきことである。それにもかかわらず、閉位置あるいは固定位置にあるとき、結合エレメントの相互嵌合を分離することが驚くほど困難であることが分かった。さらに、スライドファスナーが閉位置にあるとき、係合した結合エレメント170は、閉じたスライドファスナーがその縦の長さに沿って曲げられたときでも結合エレメント170が容易に分離しないように、スライドファスナーが優れた柔軟性を有するようにもすることが分かった。
【0065】
図8において、図2に示されたスライドファスナー10の裏側の部分断面斜視図が示されている。図8において、結合エレメント7の頭部12が、対向するテープの隣接する結合エレメント7の間のカップ領域20に配置されていることが分かる。同様に、図9において、本発明によるスライドファスナーの断面図が示される。図9において、スライドファスナーが閉位置にあるときに、各々の結合エレメント7の第2相互接続部分11が、スライドファスナーの対向する側の結合エレメント7の第1非接続部8の間のギャップをどのように埋めるかを見ることができる。このとき、対向する結合エレメント7の第1非接続部8の前面8b同士が僅かなギャップを空けて接近した状態にある。
【0066】
前述したように、本発明によると、射出成形によって準備された可塑性材料からなる結合エレメントで製造されるのみならず、鉄製の締結エレメントでも製造され得る、多用途性を有する滑らかで魅力的なスライドファスナーを製造できる。
【0067】
本発明のスライドファスナーのさらなる特徴は、略平坦な結合エレメントの前面部分のしっかり閉まった配置によって、スライドファスナーが、防水性を要求される状況や、滑らかで審美的に良好なスライドファスナーだけでなく、少なくともある程度防水のスライドファスナーを用いることが望ましい状況における適用に適していることである。このような適用は、特にアウトドアレジャー用衣服に適しているが、それに限定されない。
【0068】
この目的を達成するために、可塑性材料製あるいは鉄製の結合エレメントが取り付けられたスライドファスナーのテープは、結合エレメントがテープに取り付けられる前に処理される。
【0069】
例えば、テープは、結合エレメントを射出成形するあるいは圧着する前に、結合エレメントが防水フィルムあるいは防水層を適所にしっかりと固定するように、防水フィルムあるいは防水層で処理されてもよい。あるいは、防水フィルムや防水層は、結合エレメントに当接するように、若しくは結合エレメントに実際には当接しなくともテープをカバーするように、貼り付けられてもよい。この場合、防水フィルムや防水層は、結合エレメントの取り付けの後に、貼り付けられてもよい。防水層や防水フィルムは、好ましくは、例えば、ポリウレタンなどの高分子材料からなり、例えば、積層によって貼り付けられる。
【0070】
加えて、防水層や防水フィルムは、スライドファスナー、あるいはスライドファスナーが取り付けられる衣服や物品のデザインを良くするためにパターン印刷されてもよい。
【0071】
あるいは、テープは、疎水性材料で処理されてもよく、又は、通常のポリエステルの代わりに、テープを編むあるいは織る糸が、疎水性材料からなっていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドファスナーであって、
テープと、当該テープの長手エッジに取り付けられている結合エレメントの列を各々備える一対の第1及び第2ストリンガーを備え、
前記結合エレメントの各々は、前記テープの上側に第1の非接続部を備え、前記テープの下側に第2の接続部を備え、
前記第1の非接続部は、正方形又は長方形であり、
前記第2の接続部は、頭部と本体部を備え、
前記頭部は、対向する結合エレメントの頭部と係合可能であり、
前記本体部は、前記テープに固定される。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドファスナーであって、
前記第2の接続部は、前記第1の非接続部よりも長く、第2の接続部の頭部が第1の非接続部を越えて延びている。
【請求項3】
請求項1に記載のスライドファスナーであって、
前記結合エレメントの前記第1の非接続部は、略正方形である。
【請求項4】
請求項1に記載のスライドファスナーであって、
前記結合エレメントの前記第1の非接続部は、略長方形である。
【請求項5】
請求項1に記載のスライドファスナーであって、
前記第1の非接続部は、平坦な上面を有する。
【請求項6】
請求項1に記載のスライドファスナーであって、
前記第1の非接続部は、前記頭部が前記対向する結合エレメントの前記頭部と係合した時、前記結合エレメントの前後方向に対向する前面を有する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−526581(P2012−526581A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510368(P2012−510368)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001618
【国際公開番号】WO2011/023956
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】