説明

複数の活性薬物−樹脂抱合体

一方が他方を著しく置換することなく、いずれかの活性薬物の最初の有効性を阻害することなく、1つの樹脂粒子と抱合した同じイオン電荷の2種の異なる活性薬物を含む複合医薬製剤。また、複数の活性薬物−樹脂抱合体の製造方法、及び複数の活性薬物−樹脂抱合体からの薬学的に活性な薬物の組合せのin vivoにおける放出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物−樹脂抱合体(drug−resin conjugate)、これらを含む組成、及びこれらの組成の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂に結合した活性薬物を含む医薬組成物は、長年知られている。イオン交換樹脂は、イオン性、つまり帯電している化合物で、イオン性薬物に結合可能な結合部位を有する。結合される薬物が酸性又は塩基性かどうかによって、陽イオン又は陰イオンのいずれかの交換樹脂を使用することができる。塩基性薬物は、陽イオン交換樹脂に結合し、酸性薬物は、陰イオン交換樹脂に結合する。薬物とイオン交換樹脂粒子との抱合(conjugation)は、これら相互の静電吸引により、正反対に帯電している化学種間のイオン結合の結果生じる。イオン交換樹脂との活性薬物の抱合は、「薬物−樹脂複合体(drug−resin complex)」又は「薬物−樹脂抱合体」として知られている組成を形成する。
【0003】
イオン交換樹脂は、ポリマー骨格又はマトリックスからなる構造部分、及び薬物が結合するイオン活性基である置換可能な官能基部分、という2つの主要な部分を含む。この官能基は、酸性(スルホ基又はカルボン酸基)又は塩基性(通常、アミン)である場合がある。したがって、適切な電荷を有する薬物は、樹脂の官能基部位に結合する。ポリマー鎖は、一般的に、ジビニル又はポリビニル化合物などの架橋剤により架橋されている。多くの場合、架橋剤は、ジビニルベンゼンである。粒径及び架橋する量は、異なる樹脂によって異なる可能性がある。
【0004】
陽イオン交換樹脂は、負に帯電している、つまり陰イオン性の結合部位を有する。陰イオン性の結合部位は、置換可能な陽イオン基に結合する。陽イオン薬物は、正に帯電し、陽イオン基を置換する傾向があり、一般的に、イオン結合によって樹脂に結合するようになる。活性薬物は、樹脂のマトリックス内で結合する。塩基性薬物が基本的に陽イオン性であるので、陽イオン交換樹脂は、多くの場合、塩基性薬物との薬物−樹脂複合体を調製するために使用される。典型的な、薬物−樹脂複合体の形成へのアプローチは、陽イオン交換樹脂のナトリウム塩を、陽イオン薬物と反応させるか、又は塩基型の薬物を、酸性型の陽イオン交換樹脂と反応させるかである。
【0005】
陰イオン交換樹脂は、正に帯電している、つまり陽イオン性の結合部位を有する。陰イオン薬物は、負に帯電し、樹脂上に位置する陰イオン基を置換する傾向がある。酸性薬物が、一般に陰イオン性であるので、陰イオン交換樹脂は、酸性薬物のための薬物−樹脂複合体を調製するために頻繁に使用される。
【0006】
活性薬物をイオン交換樹脂と複合体にすることは、「ローディング(loading)」と呼ばれる。樹脂への薬物のローディングは、多くの技術によって達成される。例えば、必要量のローディングを得るために十分な時間、活性薬物が、樹脂と混合される単位で、活性薬物をローディングする。代わりに、薬物の溶液を、必要なローディングが完了するまで、樹脂のカラムを通してもよい。
【0007】
消化管では、薬物が放出されるために、逆のイオン交換反応が起こる。すなわち、患者の消化管に存在する多くのイオンは、樹脂の活性薬物に結合、交換及び置換し、そして薬物を放出する。コーティングされた抱合体では、薬物−樹脂複合体からの活性薬物の放出は、(1)コーティングを通した、ポリマーマトリックスへの消化管イオンの拡散のステップと、(2)樹脂複合体からの活性薬物の放出のステップと、(3)コーティングを通した、消化管への薬物の拡散ステップの、3つのステップからなる。
【0008】
薬物−樹脂複合体は、いくつかの理由で、純粋な形状の薬物に対して有利である。活性薬物を、樹脂と複合体にすることで、多くの場合、活性薬物単独と比較して、食味又は香りを改善する。さらに、多くの場合、活性薬物は、活性薬物の送達を高めるために、樹脂に抱合される。具体的には、活性薬物を樹脂と複合体にすることで、患者の消化器系における薬物の溶解速度に影響を与えることができる。活性薬物は、患者を刺激する、又は患者に有害な早い速度で溶解する可能性があるが、薬物−樹脂複合体の薬物では、多くの場合、活性薬物が単独で溶解するより緩徐に溶解する。活性薬物の急速な溶解は、特に、活性薬物が、長期間にわたって送達されると最も有効な場合、患者にとって問題となる可能性がある。放出制御による薬物の調製では、純粋な形状の薬物がもたらすより長い期間にわたって活性薬物の血漿濃度を有効に維持するという様式で、薬物を送達する。しかし、コーティングされていない薬物−樹脂複合体は、薬物放出をわずかに遅らすだけである(これは樹脂の粒径及び樹脂の架橋における相違によって制限される)。
【0009】
薬物−樹脂複合体からの活性薬物の持続的又は長期間放出は、薬物−樹脂複合体をコーティングすることによって更に制御することができる。投与後、薬物は、樹脂から長時間にわたり緩徐に放出され、したがって、患者に薬物を一定又はほぼ一定に送達することができる。さらに、イオン交換が、胃でなく、むしろ腸内で起こるように、腸溶コーティングでコーティングした薬物−樹脂複合体は、当技術分野で公知である。
【0010】
また、複数の樹脂に抱合された複数の活性薬物を含む製剤が知られている。そのような製剤では、各活性薬物がイオン性であり、イオン電荷が同一である。複数の活性薬物を含む医薬製剤は、「複合」製剤と呼ばれている。米国特許第4762709号で、Sheumakerは、2種のイオン性活性薬物を同一の樹脂粒子に抱合させることが、好ましくないことを教えた。Sheumakerは、第1の活性薬物と同じ電荷の第2の活性薬物が、同一のイオン交換樹脂と結合し、「前に結合した薬物と樹脂粒子上で交換することによって、製剤内の非結合薬物量の増加を引き起こすと共に、前の結合薬物の溶解プロファイル(例えば、溶液中の薬物量対時間)の変化を生じさせる原因となる」と「仮定している」。(カラム2、3〜9行目)。コーティングプソイドエフェドリン−樹脂複合体とチオールフェニラミンの製剤では、Sheumakerは、「プソイドエフェドリン[第1の樹脂結合活性薬物]単独で得られた結果と比較した、投薬後の1時間30分におけるプソイドエフェドリンの有効性のかなりの減少、及びその後の有効性のかなりの増加」について述べている。(カラム3、31〜35行目)。解決策として、Sheumakerは、活性薬物ごとに「各自」の樹脂に結合させて(カラム2、9〜10行目)、2種の活性薬物が同一の樹脂粒子に結合することを防ぐことを開示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、同一のイオン電荷を有する異なる2種の活性薬物を、一方が他方を著しく置換することなく、いずれかの活性薬物の最初の有効性を阻害することなく1つの樹脂粒子と抱合させるというように、複合医薬製剤を調製することができることを発見している。したがって、いずれの薬物も樹脂粒子上の別の薬物を置換することなく、1つの樹脂粒子に抱合された少なくとも2種の異なる薬物部分を含む薬物−樹脂抱合体を提供する。また、本発明は、複数の活性薬物−樹脂抱合体の製造方法、複数の活性薬物−樹脂抱合体からの薬学的に活性な薬物の組合せのin vivoにおける放出方法に向けられる。本発明のこれら、及び他の目的、態様及び特徴は、書面の明細書を参照することによって、より完全に理解及び認識されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
好ましい実施形態では、同じ電荷の2種のイオン性薬物を、同じ樹脂粒子に抱合させる。これらを、同時に、スラリーにし、樹脂粒子と抱合させるか、代わりに、第1に、スラリーにし、抱合させ、続いて他の薬物を抱合させるかのどちらでもよい。
【0013】
1つの好ましい実施形態では、1種の活性薬物を、樹脂と抱合させ、次に、この粒子を持続放出コーティングで、コーティングする。次に、得られたコーティング粒子をエネルギーの投入により、第2の活性薬物とスラリーにする。次に、得られた「2種の活性」粒子を、いずれかの任意選択の成分と共に、懸濁させる。次に、最終の懸濁生成物にエネルギーを適用する。
【0014】
樹脂
広範囲の陽イオン(塩基性薬物に対して)又は陰イオン(酸性薬物に対して)交換樹脂を、複数の活性薬物−樹脂複合体を形成させるために使用することができる。本発明の使用に適したイオン交換樹脂は、イオン性であるか、又は適切なpH条件下で、イオン化が可能な、共有結合した官能基を含む薬学的に不活性な有機又は無機のマトリックスを含む。樹脂の機能部分は、強酸性(例えば、スルホン酸、リン酸)、弱酸性(例えば、カルボン酸)、強塩基性(例えば、一級アミン)、又は弱塩基性(例えば、第四級アンモニウム)である場合がある。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、陽イオン性のスルホン酸塩ポリスチレクス(polistirex)イオン交換樹脂を、複数の塩基性活性薬物と抱合させる。そのような好ましい樹脂は、アンバーライトIRP−70である。
【0016】
規則的及び不規則な形状の粒子を、樹脂として使用することができる。規則的な形状の粒子は、球形、楕円形、円柱形などの幾何学的形状と実質的に一致する粒子である。不規則な形状の粒子は、無定形の粒子又はチャンネル若しくは他のゆがみを含む粒子などの、形状が規則的でない粒子である。
【0017】
使用される樹脂の粒径は、使用される送達系に応じて、少なくとも部分的に異なる。通常、イオン交換粒子の大きさは、約30ミクロンから約500ミクロンである。懸濁剤では、先の当業者は、40から150ミクロンの樹脂粒子を一般に使用している。錠剤では、より大きな粒子(例えば、約1,000ミクロンまで)を使用することができる。しかし、粒子は、最終的に非常に大きくなると効率が悪い(すなわち、樹脂に対する活性薬物の重量比が小さくなり過ぎている)。それは、樹脂粒子の重量単位あたりの利用可能な結合電荷が、粒子が大きくなるにつれて、小さくなり、より大きな電荷が、粒子の内部に埋もれるからである。言い換えれば、樹脂の交換容量は減少する。
【0018】
活性薬物
樹脂粒子に抱合されるものは、例えば、鎮咳去痰薬、鬱血除去薬、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、消化管鎮痙薬、中枢神経系障害の治療用薬物、抗不安薬、抗うつ薬、冠動脈拡張薬、抗不整脈薬、カルシウム拮抗薬、降圧薬、末梢血管拡張薬又は血管収縮薬、抗生物質、化学療法薬、抗結核薬、抗原虫薬、αアドレナリン作動薬及び遮断薬、βアドレナリン作動薬及び遮断薬、麻酔性及び非麻酔性鎮痛薬、食欲抑制薬、抗狭心症薬、抗喘息薬、抗コリン作用薬、抗真菌薬、抗炎症薬、鎮痙薬、抗潰瘍薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、カルシウムチャネル遮断薬、ドーパミン受容体作用薬及び拮抗薬、麻薬拮抗薬、プロテアーゼ阻害薬、呼吸刺激薬、レトロウイルスプロテアーゼ阻害薬、逆転写酵素阻害薬、鎮静薬並びに抗高血圧薬などの様々な障害の治療に適した薬学的に活性な薬物である。特定の薬物の例は、コデイン、チオールフェニラミン、プソイドエフェドリン、フェニルプロパノラミン、デキストロメトルファン及びプロプラノロールである。
【0019】
水などの半極性又は極性溶媒中にイオンの形態で存在する薬物は、本発明で使用するための潜在的な候補である。本発明で有用な薬物は、酸性、塩基性又は両性であってもよい。本発明で使用することができる酸性薬物の例は、デヒドロコール酸、ジフルニサル、エタクリン酸、フェノプロフェン、フロセミド、ゲムフィブロジル、イブプロフェン、ナプロキセン、フェニトイン、プロベネシド、スリンダク、テオフィリン、サリチル酸、アセチルサリチル酸を含むが、これらに限定されるものではない。本発明で使用することができる塩基性薬物の例は、アセトフェナジン、アミトリプチリン、アンフェタミン、ベンズトロピン、ビペリデン、ブロモジフェンヒドラミン、ブロムフェニルアミン、カルビノキサミン、クロペラスチン、クロルシクリジン、クロルフェニラミン、クロルフェノキサミン、クロルプロマジン、クレマスチン、クロミフェン、クロニジン、コデイン、シクリジン、シクロベンザプリン、シプロヘプタジン、デシプラミン、デキスブロンフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、デキストロアンフェタミン、デキストロメトルファン、ジサイクロミン、ジフェマニル、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、ドキシラミン、エルゴタミン、フルフェナジン、ハロペリドール、ヒドロコドン、ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシジン、ヒヨスチアミン、イミプラミン、レボプロポキシフェン、マプロチリン、メクリジン、メペンゾレート、メペリジン、メフェンテルミン、メソリダジン、メサドン、メチルエフェドリン、メトジラジン、メトスコポラミン、メチセルジド、メトプロロール、ノルトリプチリン、ノスカピン、ナイリンドリン、オルフェナドリン、パパベリン、ペンタゾシン、フェンジメトラジン、フェンテルミン、フェニルプロパノラミン、ピリラミン、トリペレナミン、トリプロリジン、プロマジン、プロポキシフェン、プロプラノロール、プソイドエフェドリン、ピリラミン、キニジン及びスコポラミンを含むが、これらに限定されるものではない。本発明で使用することができる両性薬物は、例えば、アミノカプロン酸、アミノサリチル酸、ヒドロモルフォン、イソクスルピン、レボルファン、メルファラン、モルヒネ、ナリジクス酸及びパラアミノサリチル酸を含む。
【0020】
本発明の医薬組成物は、活性薬物の投与量レベルで投与し、この投与量は、患者の年齢、体重及び容態などの要因によって変化する。異なる活性薬物を含む製剤を、個々の薬物の通常の1日投与量に従って投与する。
【0021】
活性薬物−樹脂複合体
イオン交換樹脂上へ活性薬物を吸着又は抱合させて活性薬物−樹脂複合体を形成することは、米国特許第2990332号(Keating)及び第4221778号(Raghunathan)で示す通り、周知である。そのような薬物−樹脂抱合体は、活性薬物を含む溶液中で、交換樹脂粒子をスラリーにすることによって調製する。樹脂粒子に対する活性薬物の理想的な重量比は、活性薬物の重量比に対する電荷、及び樹脂粒子の交換容量(例えば、樹脂粒子の大きさ、架橋)に応じて変わる。樹脂に対する薬物の比率を決定する際の他の因子は、反応条件及び最終的な剤形である。各活性薬物の分子あたり同じ電荷を使用して、より重量が大きい高分子量の活性薬物のほうが、低分子量の活性薬物より、多少多く特定の樹脂に結合する。
【0022】
樹脂上にローディングすることができる薬物の量は、一般的に薬物−樹脂粒子の約1から約90重量%の範囲となるが、15から50重量%が正常範囲である。
【0023】
本発明は、1つの樹脂粒子に結合する2種以上の活性薬物を含む。上記で特定されたいかなる活性薬物も、薬物−樹脂複合体に加える第2の(又は次の)活性薬物として利用することができる。しかし、第2の(又は次の)活性薬物は、樹脂にローディングした第1の活性薬物と同じ電荷のものでなければならない。活性薬物の互いに対するモル比は、目的の剤形、並びに物理的及び化学的特性に応じて変化するが、通常は、約1:1から約10:1まで変化してよい。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、コデイン及びクロルフェニラミンが、活性薬物であり、両方とも、塩基性であり、1つのスルホン酸塩ポリスチレクスイオン交換樹脂に抱合される。好ましくは、コデイン及びクロルフェニラミンが、約5:1から約8:1のモル比で提供される。1つの好ましい実施形態では、コデイン及びクロルフェニラミンの生成物は、40mgのコデイン塩基及び5.6mgのクロルフェニラミン塩基を含む。また、約1:1から約10:1のクロルフェニラミン対するコデインのモル比を使用することができる。これら2種の活性薬物は、分子量がかなり近いので、使用される重量比は、モル比とほぼ等しくなる。コデインに対するスルホン酸塩ポリスチレクス樹脂の好ましい重量比は約5:1であり;クロルフェニラミンに対するスルホン酸塩ポリスチレクス樹脂の好ましい重量比は約42:1である。コデインに対する複数の活性薬物−樹脂複合体(樹脂/コデイン/クロルフェニラミン)の好ましい重量比は、約6:1であり;クロルフェニラミンに対する複数の活性薬物−樹脂複合体(樹脂/コデイン/クロルフェニラミン)の好ましい重量比率は、約51:1である。
【0025】
第1の活性薬物(例えば、コデイン)がイオン交換樹脂上へローディングされたあと、樹脂のいくつの交換部位は、まだナトリウム又は水素イオンを含む。第2の活性薬物(例えば、クロルフェニラミン)を加えると、ナトリウム又は水素イオンを持つ交換部位に引き付けられて、第2の活性薬物はナトリウム又は水素イオンと交換される。しかし、いくつかのビヒクルでは、1種の活性薬物の最小量が、樹脂から分離し、懸濁液へ移動することがある。本発明の好ましい実施形態では、第1の活性薬物としてコデイン及び第2の活性薬物としてクロルフェニラミンでは、コデインの2〜3%がコデイン−樹脂複合体から分離し、懸濁液に移動する。この少量の分離は、様々な界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコール)の固有の特性によって引き起こされると信じられており、すなわち、分離は、「ビヒクル効果」により生じる。
【0026】
本発明の他の実施形態では、2種以上の酸性薬物を、いずれの酸性薬物も他の酸性薬物と交換されることなく、陰イオン交換樹脂上にローディングする。例えば、オメプラゾールを、第1に陰イオン交換樹脂と抱合する。そのような陰イオン交換樹脂粒子は、Duolite(登録商標)樹脂及びPurolite International Limitedの樹脂として市販されており、これらは共にコレスチラミン(合成陰イオン交換ポリマー)であって、第四級アンモニウム基が、ポリスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーに結合している。次に、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール又はレミノプラゾールを含む群から選択される他の酸性薬物を、複合体と共にスラリーにし、最終生成物を形成させる。
【0027】
含浸
粒子が配列を維持することができ、そのような粒子に対する拡散障壁コーティングの有効な処理を可能にするため、活性薬物−樹脂複合体に、溶媒和剤(solvating agent)を含浸させる。ポリエチレングリコール(親水性剤)は、好ましい溶媒和剤である。その他の含浸剤は、マンニトール、ラクトース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ソルビトール、ポリビニルピロリドン、カルボキシポリメチレン、キサンタンガム、アルギン酸プロピレングリコール及びこれらの溶媒和剤の様々な組合せを含む。
【0028】
拡散障壁コーティング
薬物−樹脂複合体からの活性薬物の放出制御は、活性薬物の濃度が臨界値を上回るならば、薬物−樹脂複合体に対する拡散障壁(溶解障壁)コーティングの処理を通して達成することができる。コーティング物質は、可塑剤、色素及びコーティングの特性を変更させる他の物質と一緒に、天然又は合成の塗膜形成剤でよい。通常は、コーティングの主要な成分は、非水溶性であり、水に対して浸透性である。また、コーティングは、イオン透過性であるべきである。好ましくは、水浸透性拡散障壁はセルロースエーテルであり、より好ましくは、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のセルロースポリマー及びその混合物からなる基から選択される。より好ましくは、拡散障壁は、エチルセルロースである。好ましい合成障壁は、メタクリル酸ポリマー及びコポリマーである。
【0029】
ポリマーの水性分散液中に可塑剤の有効量を包含させると、フィルムコーティングの物理的特性を更に向上させる。通常、コーティング溶液に含まれる可塑剤の量は、塗膜形成剤の濃度によって決まり、可塑剤は、塗膜形成剤の約1から50重量%が好ましい。そのような可塑剤は、例えば、植物性油脂、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、トリセチン又はプロピレングリコールでよく、植物性油脂が好ましい可塑剤である。
【0030】
活性薬物の所望の遊離プロファイルによって、コーティング重量及びコーティング厚を変更することができる。コーティング物質を、水溶液中の懸濁液又は有機溶媒溶液としてコーティングすることができる。複合体粒子上に連続コーティング(contiguous coating)をもたらす、すべてのコーティング法を使用することができる。一例として、Wurster構造を有する流動層コーティング装置が挙げられる。
【0031】
腸溶コーティング
複合体との分離から、又は胃内での分解から組成内の活性成分を守るために、障壁−コーティングされた初期薬物−樹脂複合体又は直接、初期薬物−樹脂複合体のいずれかに腸溶コーティングを適用することは当技術分野で公知である。腸溶コーティングは、一旦、剤形が小腸管内に入ると、活性成分を放出させる。腸溶コーティングに有効な物質は、一般的にpH3.5未満の低pH媒質で不溶性であるが、一般的に5.5を超える高pH媒質では可溶性でなければならない。
【0032】
一般に用いられる腸溶コーティングは、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース物質を含む。その他の非セルロース性ポリマーは、例えば、メタクリル酸とメチルメタクリレート又はエチルアクリレートのコポリマー、メタクリル酸、メタクリレート及びエチルアクリレート、並びにフタル酸ポリ酢酸ビニルのターポリマー、などが使用される。薬物−樹脂粒子に適用される腸溶コーティングの量及び種類、並びに腸溶コーティングの厚さを、薬物の放出を制御するために選択することができる。
【0033】
液体担体
複数の活性薬物−樹脂複合体を、水並びに所望により、追加的な溶媒増粘剤、保存剤、着色剤、香料、可溶化剤、分散剤及びその他の典型的な補助剤(これらすべてが薬学的に許容されていなければならず、当業者に公知である)を含む適切な液体溶媒に配合する。したがって、本発明による薬物−樹脂抱合体及び1種又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。また、本発明の薬物−樹脂抱合体を含む組成の治療有効量を投与することを含む、必要とする患者の治療法を提供する。
【0034】
典型的な担体は、単純水溶液、シロップ、分散液及び懸濁液、並びに水中油形などの水性エマルジョンを含む。本発明の好ましい担体は、十分な懸濁剤を含む水性ビヒクル中の医薬組成の懸濁液である。適切な懸濁剤は、Avicel RC−591、NF(FMCから入手可能な微結晶性のセルロース/カルボキシルメチルセルロースナトリウム混合物)、グアーガムなどを含む。水量は、変えてもよく、薬物−樹脂複合体及びその他の非活性成分の総重量及び容量によって決まる。
【0035】
また、典型的な液剤は、香味料などの水不溶性の成分の可溶化及び組成への取り込みを補助するために、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール溶液などの共溶媒を含めてもよい。
【0036】
本発明の懸濁液は、繰り返し開閉されるビン又はその他の多目的の容器に収容される。そのような使用中、微生物が懸濁液に近づき、汚染させる可能性がある。したがって、そのような微生物を死滅させるために、様々な殺菌剤を使用することは周知である。好ましくは、これらの薬剤は、メチルパラベン及びプロピルパラベンを含む。さらに、微生物の増殖を防ぐために、様々なキレート剤が使用される。1つの好ましい静菌剤は、エデト酸二ナトリウムである。殺菌性及び静菌性の化合物は、拡散障壁コーティングの透過性に影響する界面活性剤である。
【0037】
製造方法
複数の活性薬物−樹脂抱合体は、当技術分野で周知の器具を使用して製造することができる。製造方法は、樹脂、活性薬物及びコーティングの種類及び量によって異なる。上記のように、また以下の実施例1で示すように、同時又はいずれかの順序で連続して、スラリーにし、樹脂粒子と抱合させることができる。したがって、第1の活性薬物と第2の活性薬物をイオン交換樹脂粒子と同時にスラリーにし、好ましくは、続いて溶解障壁薬剤でコーティングすることを含む複数の活性薬物−樹脂抱合体の作製方法を提供する。イオン交換樹脂粒子と同時にスラリーにし、続いて溶解障壁によりコーティングすることによって調製した複数の薬物−樹脂抱合体を、例えば、55℃から65℃、好ましくは60℃で、4から10時間、好ましくは6時間加熱することによって、エネルギー投入を行うことが好ましい。
【0038】
また、イオン交換樹脂粒子と第1の活性薬物をスラリーにし、続いて得られた抱合体を第2の活性薬物とスラリーにすることを含む、複数の活性薬物−樹脂抱合体の製造方法を提供する。薬物−樹脂複合体を、第1の活性薬物と樹脂の抱合後、又は第2の活性薬物との更なる抱合後に、溶解障壁によりコーティングしてよい。一実施形態では、第1の活性薬物と抱合した樹脂をコーティングし、続いて第2の活性薬物と、好ましくは、エネルギーの第1の適用によって(例えば、55℃から65℃、好ましくは60℃で、18から30時間、好ましくは24時間加熱することによって)スラリーにする。次に、液体担体などの追加的な成分を、好ましくは撹拌しながら、及び/又は55℃から65℃、好ましくは60℃で、4から10時間、好ましくは6時間加熱して加えてもよい。
【0039】
以下の実施例2及び3で使用される1つの好ましい実施形態では、第1の活性薬物(リン酸コデイン)を、スルホン酸塩−ポリスチレクスイオン交換樹脂(例えば、アンバーライトIRP−70、洗浄ナトリウムサイクル(sodium cycle))と抱合させ、ポリエチレングリコールで処理し、処理した抱合体を、エチルセルロース及び植物性油脂の拡散障壁コーティングでコーティングする。より具体的には、リン酸コデインを水に溶解し;アンバーライトIRP−70を加え;水酸化ナトリウム、エデト酸二ナトリウム及びポリエチレングリコールの溶液を、コデイン−ポリスチレクス複合体と混合し、その結果、ポリエチレングリコール処理コデイン−ポリスチレクス抱合体を得て;ポリエチレングリコール処理コデイン−ポリスチレクス抱合体を5〜7%、好ましくは6%の最終湿度まで乾燥させ;次に、乾燥させたポリエチレングリコール処理コデイン−ポリスチレクス抱合体を、好ましくは20メッシュスクリーンでふるいにかける。Wurster構造を有する流動層コーティング装置を使用して、次に、ポリエチレングリコール処理コデイン−ポリスチレクス抱合体を、約12%のレベルで、エチルセルロース及び植物性油脂の溶液によりコーティングする。次に、コーティングした抱合体を、好ましくは40メッシュのスクリーンでふるいにかける。
【0040】
さらに、この好ましい実施形態では、コーティングしたコデイン−ポリスチレクス抱合体を、エネルギーの第1の適用によって、第2の活性薬物のマレイン酸クロルフェニラミンとスラリーにする。すなわち、ポリソルベート80、クエン酸、エデト酸二ナトリウム及びマレイン酸クロルフェニラミンを、溶液中で混合し;引き続いて、コーティングしたコデイン−ポリスチレクス生成物を、この溶液に加え、約55〜65℃、好ましくは60℃の温度を維持しながら、18〜30時間(好ましくは24時間)混合する。エネルギーのこの第1の適用により、拡散障壁コーティングの透過性を調節し、このことによって、第2の活性薬物が、拡散障壁コーティングを通して、コデイン−ポリスチレクス抱合体のマトリックスに移動することを可能にする。さらに、この加熱のステップにより提供されるエネルギーの投入は、各活性薬物に対する均一の予測可能な溶解又は放出プロファイル、及び各薬物に対するエージングに伴う一貫した放出プロファイルをもたらす。加熱によるエネルギーの投入に加えて、長時間、勢いよく撹拌することによって本システムへエネルギーを与え、このことによって、拡散障壁コーティングを通した第2の活性薬物のそのような移動を加速させることができる。さらに、熱(高エネルギー)及び撹拌(一般により低い形のエネルギー)の組合せも、拡散障壁コーティングを通した第2の活性薬物の移動を加速させるために利用される可能性がある。
【0041】
最後に、もしあれば、追加の成分を混合し、コデイン−クロルフェニラミン−ポリスチレクス生成物に、安定した薬物放出プロファイルを有する生成物を生産するために十分な量及び時間、エネルギーの第2の適用をする。本発明の好ましい実施形態では、個々のバッチ容器(batch vessel)で、ショ糖NFを水に溶解するまで混合し;ジプロピレングリコール、メチルパラベン、プロピルパラベン及びキサンタンガムを、バッチ容器に加え、均一になるまで混合し;次に、グリセリンを、55〜65℃、好ましくは60℃に加熱されているバッチ容器に加え;コデイン−クロルフェニラミン−ポリスチレクスを、バッチ容器に加え、本懸濁液に、約55〜65℃、好ましくは60℃で、約4〜10時間、好ましくは6時間熱を加え続ける。エネルギーのこの第2の適用により、拡散障壁コーティング内にクロルフェニラミン及びコデインを保持し、さらに殺菌性及び静菌性の薬剤を均一に分布させ、拡散障壁コーティングへのこれらの作用を減少させる、拡散障壁コーティングの最終の安定した状態を確立する。このことにより、25℃のエージングの状態で1〜34カ月にわたり1〜2%の変化という安定した生成物が生じる。
【0042】
本発明による使用のための1つの好ましい薬物部分は、ヒドロコドンである。本発明による使用のための他の好ましい薬物部分は、デキスクロルフェニラミンである。
【0043】
特定の実施形態では、ヒドロコドン及びデキスクロルフェニラミンが活性薬物であり、この両方とも、塩基性で、1つの樹脂、好ましくはスルホン酸塩−ポリスチレクスイオン交換樹脂に抱合する。好ましくは、ヒドロコドン及びデキスクロルフェニラミンが、約1:1から約5:1のモル比で提供される。1つの好ましい実施形態では、ヒドロコドン及びデキスクロルフェニラミン生成物は、重酒石酸ヒドロコドン10mg及びd−マレイン酸クロルフェニラミン4.0mgを含む。薬物−樹脂抱合体は、好ましくは、両方の薬物を同時にスラリーにすることによって調製する。好ましくは、2種の薬物を含むスラリーを、4.5から6.5のpH範囲、より好ましくは5.0から5.5のpH範囲、及び最も好ましくはpH5.2に緩衝する。溶解障壁によるコーティングを、最も好ましくはエネルギー投入を使用して実施し;55℃から65℃、好ましくは60℃で、4から10時間、好ましくは6時間加熱することが最も好ましい。さらにより好ましくは、コーティング/加熱ステップを、追加の担体及びその他の薬学的に許容される必要な成分の存在下で実施する。
【0044】
最も好ましい実施形態では、ヒドロコドン−デキスクロルフェニラミン−ポリスチレクス樹脂のスラリーは、少なくとも1種の溶解障壁コーティング剤、少なくとも1種の含浸剤及び1種若しくは複数の液体担体(上記参照)又はその他の薬学的に許容される成分を含み、pH5.2で緩衝する。加熱を、60℃で6時間実施し、良好な安定性プロファイルを示す懸濁益を生成する。
【0045】
また、ヒドロコドン−デキスクロルフェニラミン薬物−樹脂抱合体、及び1種又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。特に、そのような組成は、例えば、アレルギー又は風邪などの必要とする患者の治療に適する。
【0046】
本発明は、以下の実施例によって更に例証されるが、これらは制限することを意図するものではない。本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、これらに対して修飾及び変更を加えることができることが当業者によって理解される。
【実施例】
【0047】
(実施例1)コデイン/クロルフェニラミン調合物の溶解試験
3つの独立した工程によって生成されたコデイン/クロルフェニラミン樹脂抱合体の放出プロファイルについて試験し、1種の活性薬物が、別の活性薬物と交換されないことが実証された。具体的には、実験を以下のように実施した。(a)コデイン及びクロルフェニラミンを、同時に1つの樹脂粒子に抱合させ(ロット番号001);(b)コデインを、1つの樹脂粒子に第1に抱合させ、続いてクロルフェニラミンをコデイン−樹脂粒子に結合させ(ロット番号004);(c)クロルフェニラミンを、樹脂粒子に第1に抱合させ、次にコデインを、クロルフェニラミン−樹脂粒子に抱合させた(ロット番号007)。
【0048】
Sheumaker(米国特許第4762709号)は、ロット番号004を生産するための方法を使用して、クロルフェニラミンの一部が樹脂上のコデインと置換することを示唆するだろう。それは本発明には当てはまらない。具体的には、16.37%のコデイン(コデイン−クロルフェニラミン−樹脂の総重量の%として)を、1.94%のクロルフェニラミンと共に使用して、ロット番号004を調製する。得られたロット番号004の複数の薬物−樹脂生成物に関する分析的測定の結果により実証されたことは、16.6%のコデイン及び2.2%のクロルフェニラミンによって、本生成物を生成するために使用したすべてのコデインが、樹脂抱合体に取り込まれた(すなわち、本生成物を生産するために加えられたコデイン量が、最終生成物において「出現した」コデイン量と実質的に等しい)ことが確認されたことである。コデインによって占められた部位に対するクロルフェニラミンによる競合は認められなかった。
【0049】
ロット番号004に関する結果は、ロット番号001及び007で確認された。具体的には、加えた薬物比は、16.37%のコデイン及び1.94%のクロルフェニラミンであり、一方、分析的測定の結果は、16.00%のコデイン及び2.0%のクロルフェニラミンを示した。ロット番号007に関して、コデインの薬物比は、16.37%で、クロルフェニラミンでは1.94%であった一方、分析的測定の結果は、16.6%のコデイン及び2.10%のクロルフェニラミンを示した。
【0050】
(実施例2)コデイン/クロルフェニラミン調合物の生物学的利用率試験
in vivo試験を、上記の通りに調製したコデイン/クロルフェニラミン樹脂抱合体を使用して実施した。図1は、コデイン40mg及びクロルフェニラミン8mgを含む持続放出懸濁液(上記の方法にしたがって調製)10mlの一回量の平均クロルフェニラミン血漿中濃度対時間を示している。また、図1は、即時放出溶液5mlの連続した2回投与(6時間おき)(各投与量は、コデイン20mg及びクロルフェニラミン4mgを含む)の平均クロルフェニラミン血漿中濃度対時間を示している。この即時放出生成物は、クロルフェニラミン塩をポリエチレングリコール及び甘味料の水溶液で溶解することによって調製した。同量のクロルフェニラミンを、持続放出生成物及び即時放出生成物の両方に対してローディングした。いずれの種類の樹脂も即時放出調合物には加えず;持続放出生成物では、クロルフェニラミンのみ、樹脂に結合させた。
【0051】
時間に伴うクロルフェニラミン血漿中濃度は、二回量の即時放出生成物と比較して、持続放出生成物で同等の生物学的利用率を示し、このことは持続放出生成物を生成するために使用したすべてのクロルフェニラミンが、樹脂複合体に取り込まれたことを確認するものである。すなわち、本生成物を生成するために加えられたクロルフェニラミンの量は、患者においてすべて出現しているので、樹脂と間違いなく抱合している。
【0052】
本試験における平均コデイン血漿中濃度対時間を図2に示す。クロルフェニラミンと同様に、時間に伴うコデイン血漿中濃度は、二回量の即時放出生成物と比較して、持続放出生成物で同等の生物学的有効性を示し、このことは持続放出生成物を生成するために使用したすべてのコデインが、樹脂複合体に取り込まれたことを確認するものである。すなわち、本生成物を生成するために加えられたコデインの量は、患者においてすべて出現しているので、樹脂と間違いなく抱合している。
【0053】
(実施例3)
上記と同様のコデイン/クロルフェニラミン調合物を用いた、in vitroでの薬物放出データにより、第1の活性薬物(コデイン)及び第2の活性薬物(クロルフェニラミン)の、放出プロファイルが長時間にわたり一定である、均一の予測可能な溶解プロファイルが実証された。表I及びIIは、これらの結果を示している。
【表1】


【表2】

【0054】
表I及びIIで示す溶解試験は、塩酸、塩化ナトリウム及びドデシル硫酸ナトリウムの放出溶媒を用いて実施した。表Iに関して、コデインの薬物放出データは、例えば、初期検査時、1時間内で54%の溶解、3時間後で75%の溶解、6時間後で86%の溶解、及び12時間後で93%の溶解など、均一な予測可能な結果を示している。また、表IIに示すクロルフェニラミンの溶解プロファイルは、例えば、初期検査時、1時間後でクロルフェニラミンの42%の溶解、3時間後で65%の溶解、6時間後で78%の溶解、及び12時間後で88%の溶解など、均一で予測可能であった。
【0055】
さらに、表I及びIIは、1カ月半後、3カ月後、6カ月後及び9カ月後に、非常にわずかな変化が見られるものの、均一な予測可能な薬物放出データを示している。これらの結果は、25℃及び40℃の両方で示されている。したがって、本生成物のエージングに伴う放出プロファイルは一貫しており、このことは医薬品に関する様々な安定性の要求に応じた本発明の使用を可能にするものである。
【0056】
前述の解説において、ここに開示の概念から逸脱することなく、変更を行うことが可能なことは、当業者によって容易に理解されるであろう。そのような変更は、請求に、それらの言語によって明白に述べられるものを除いて、以下の請求に含まれるものと考慮されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】持続放出懸濁液10ml及び即時放出溶液5mlの一回量を、絶食条件で、6時間ごとに連続して2回投与したあとの、平均クロルフェニラミン血漿中濃度対時間経過の図である。
【図2】持続放出懸濁液10ml及び即時放出溶液5mlの一回量を、絶食条件で、6時間ごとに連続して2回投与したあとの、平均コデイン血漿中濃度対時間経過の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれの薬物も樹脂粒子上の別の薬物を置換することなく、1つの樹脂粒子に抱合された少なくとも2種の異なる薬物部分を含む、薬物−樹脂抱合体。
【請求項2】
互いに対する薬物部分のモル比が、約1:1から約10:1まで変化する、請求項1に記載の抱合体。
【請求項3】
いずれかの薬物部分の最初の利用を阻害しない、請求項1又は2に記載の抱合体。
【請求項4】
樹脂粒子が陽イオン交換樹脂粒子である、請求項1〜3までのいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項5】
樹脂粒子がスルホン酸塩−ポリスチレクス樹脂である、請求項4に記載の抱合体。
【請求項6】
樹脂粒子が陰イオン交換樹脂粒子である、請求項1〜3までのいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項7】
樹脂粒子が、第四級アンモニウム基を有するポリスチレン−ジビニルコポリマーである、請求項6に記載の抱合体。
【請求項8】
2種の薬物部分が同様に帯電している、請求項1〜7までのいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項9】
2種の薬物部分が、両方とも塩基性である、請求項1〜5までのいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項10】
2種の薬物部分が、コデイン及びクロルフェニラミンである、請求項9に記載の抱合体。
【請求項11】
コデイン及びクロルフェニラミンが、約5:1から約8:1のモル比で提供される、請求項10に記載の抱合体。
【請求項12】
2種の薬物部分が、ヒドロコドン及びデキスクロルフェニラミンである、請求項9に記載の抱合体。
【請求項13】
2種の薬物部分が両方とも酸性である、請求項1〜3、6及び7のいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項14】
2種の薬物部分が、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール及びレミノプラゾールからなる群から選択される、請求項13に記載の抱合体。
【請求項15】
溶解障壁によってコーティングされている、請求項1〜14までのいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項16】
溶解障壁コーティングがセルロースエーテルである、請求項15に記載の抱合体。
【請求項17】
セルロースエーテルが、エチルセルロース、メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項16に記載の抱合体。
【請求項18】
溶解障壁コーティングが合成物質である、請求項15に記載の抱合体。
【請求項19】
合成物質が、メタクリル酸ポリマー又はコポリマーである、請求項18に記載の抱合体。
【請求項20】
溶解障壁コーティングが可塑剤を含む、請求項15〜19までのいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項21】
腸溶コーティングを含む、請求項1〜20までのいずれか一項に記載の抱合体。
【請求項22】
第1の活性薬物と第2の活性薬物を、イオン交換樹脂粒子と同時にスラリーにすることを含む、複数の活性薬物−樹脂抱合体の製造方法。
【請求項23】
第1の活性薬物をイオン交換樹脂粒子とスラリーにし、続いて、得られた抱合体を第2の活性薬物とスラリーにすることを含む、複数の活性薬物−樹脂抱合体の製造方法。
【請求項24】
コーティングした第1の活性薬物−樹脂抱合体と第2の活性薬物を、エネルギーの第1の適用によってスラリーにすることを含む、複数の活性薬物−樹脂抱合体の製造方法。
【請求項25】
第2の活性薬物を、樹脂上の第1の活性薬物と交換することなく、第1の活性薬物−樹脂抱合体と複合体にする、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
適用した第1のエネルギーが、第1の加熱である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
第1の加熱が、55℃から65℃の温度で、18から30時間適用される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
第1の加熱が、55℃から65℃の温度で4から10時間適用される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の活性薬物−樹脂抱合体の懸濁液を調製するステップと、エネルギーの第2の適用を実施するステップとを更に含む、請求項24〜27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
適用した第2のエネルギーが、第2の加熱である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第2の加熱が、55℃から65℃の温度で更に4〜10時間適用される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
抱合体が、エージングに対して安定している、請求項22〜31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
コデインをイオン交換樹脂粒子とスラリーにすることと、次に、得られた薬物−樹脂抱合体粒子をコーティングによってコーティングすることと、続いて、得られたコーティング抱合体を加熱によってクロルフェニラミンとスラリーにすることを含む、コデイン及びクロルフェニラミン薬物−樹脂複合体を形成する方法。
【請求項34】
前記加熱を、約55℃から約65℃の温度で約18から約30時間実施する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記複数の活性薬物−樹脂抱合体の懸濁液を調製すること、及びエージングに対して安定を維持する薬物放出プロファイルを示す懸濁液を作製するのに十分な温度及び時間、得られた懸濁液を加熱すること、を更に含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記懸濁液の前記加熱を、約55℃から約65℃の温度で約4から約10時間実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1から21までのいずれか一項に記載の薬物−樹脂抱合体及び1種又は複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項38】
請求項37に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、必要とする患者の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−546835(P2008−546835A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519242(P2008−519242)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/022696
【国際公開番号】WO2007/001300
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(502358717)ユ セ ベ ソシエテ アノニム (13)
【Fターム(参考)】