説明

複数の脊椎分節拘束用の方法およびシステム

隣接する2つ以上の脊椎分節の屈曲を弾性的に制限するために、複数の棘突起を拘束する方法、装置、およびシステムは、少なくとも3つの隣接する椎体、または2つの隣接する椎体と仙骨とに係留構造を配置することによって棘突起を拘束する。これらの係留構造は、切れ目のない構造、例えば切れ目のないループの形態であってもよく、あるいは切れ目のある構造、例えば骨に固定するためのアンカー構造を少なくとも2つ有するループまたは細長い要素の形態であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して、医療の方法および装置に関する。特に、本発明は、背痛または他の背骨の状態を有する患者の脊椎の屈曲を制限する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性的な腰痛症の主な発生源は、椎間板内部障害としても公知の椎間板起因の痛みである。椎間板起因の痛みに苦しむ患者は、背中に局所化された痛みを示す以外は健康な若者であることが多い。椎間板起因の痛みは、通常、脊柱のL4−L5またはL5−S1接合部に位置する椎間板において発生する(図1)。痛みは、患者がその腰椎を曲げる(すなわち座るか、または前かがみになる)とひどくなり、腰椎を伸ばす(すなわち後に弓なりになる)と軽くなる傾向がある。椎間板起因の痛みは日常生活に支障を来すことが極めて多く、働く能力およびそれ以外の生活を楽しむ能力が劇的に損なわれる患者もある。
【0003】
椎間板起因の腰痛を有する患者が経験するこの痛みは、屈曲の不安定と考えることができ、他の状態で現れる屈曲の不安定に関係がある。これらの状態のうち最も一般的なものは、脊椎すべり症である。これは、脊椎分節の屈曲によって脊椎分節の異常並進が悪化する脊椎の状態である。したがって、本願明細書に記載の装置は、脊椎分節の屈曲の防止または制御が望まれる、脊椎分節の屈曲に伴うこのような脊椎疾患にも有用であるはずである。
【0004】
椎間板起因の慢性的痛みと診断された患者に対する治療の現在の選択肢は、極めて限られている。多くの患者は、理学療法、マッサージ、抗炎症薬、鎮痛薬、筋弛緩薬、および硬膜外ステロイド注射などの伝統的な治療方針に従っているが、一般に相当な痛みに苦しみ続けている。他の患者は、脊椎固定手術を受けることを選択するが、この手術は通常、椎間板の切除(椎間板の除去)と共に隣接する椎骨の癒合を必要とする。椎間板起因の痛みの場合は、通常、癒合は推奨されない。その理由は、元に戻すことができず、費用がかさみ、高疾病率を伴い、効果が疑わしいからである。ただし、その欠点にもかかわらず、椎間板起因の痛みに対して脊椎固定手術が一般的であり続ける理由は、実行可能な代替案がないからである。
【0005】
最近、椎間板起因の痛みに対する低侵襲的な、場合によってはより効果的な、治療が提案された。脊柱の伸延をほぼ妨げずに、脊柱の屈曲を抑制する脊椎インプラントが考案された。このインプラントは、一対以上の隣接する棘突起に掛け渡され、屈曲中に発生する棘突起間の開離を弾性的に制限する。このような装置およびその使用方法は、本願と発明者が共通の2005年9月29日付けの特許文献1に記載されている。
【0006】
図2に示すように、特許文献1の明細書に記載されているようなインプラント10は、一般に、一対の追従性(compliance)部材16によって接合された上側のストラップ部品12と下側のストラップ部品14とを備える。上側のストラップ12は、L4の棘突起SP4の上部に掛けられた状態で図示され、下側のストラップ14はL5の棘突起SP5の底部に掛けられて延在する状態で図示されている。一般に、追従性部材16はゴムブロック製バネなどの内部要素を含む。この内部要素は、屈曲中に棘突起SP4とSP5とが開離することに伴って、ストラップ12および14が「弾性的に」または「追従的に」引き離されるように、ストラップ12および14に取り付けられる。このような態様により、インプラントは、屈曲に抵抗する力をもたらす弾性張力をこれらの棘突起にもたらす。この力は、棘突起間が開離するほど大きくなる。通常、ストラップ自体は基本的に追従性はないので、弾性または追従性の度合いは追従性部材16によってのみ制御および提供される。
【0007】
図2に示すシステムは、重要な利点をいくつか提供するが、このシステムが目的とするところは、一対の隣接する椎体間の単一の脊椎分節のみの治療である。患者によっては、連続する2つ以上の脊椎分節の治療が望ましい場合もあるであろう。
【0008】
このような理由により、連続する2つ以上の脊椎分節の屈曲を制限するための改良された脊椎インプラント、インプラントシステム、およびこれらの使用方法を提供することが望ましいであろう。これらのインプラント、システム、および方法は、隣接する複数の脊椎の形状を拘束できる単一のインプラント構造を用いて、3つ以上の隣接する椎体の棘突起、または2つの隣接する椎体の棘突起と仙骨とを弾性的に結合できることが特に望ましいであろう。これらの目的の少なくとも一部は、以下に説明する本発明によって達成される。
【0009】
(背景技術の記述)
特許文献2については、上記において説明した。着目される他の特許および出願公開として以下が挙げられる。特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、Re.36,221、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32、特許文献33、特許文献34、特許文献35、特許文献36、特許文献37、特許文献38、特許文献39、特許文献40、特許文献41、特許文献42、特許文献43、特許文献44、特許文献45、特許文献46、特許文献47、特許文献48、特許文献49、特許文献50、特許文献51、特許文献52、特許文献53、特許文献54、特許文献55、特許文献56、特許文献57、特許文献58、特許文献59、特許文献60、特許文献61、特許文献62、特許文献63、特許文献64、特許文献65、および特許文献66。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/02161017号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0216017号明細書
【特許文献3】米国特許第4,966,600号明細書
【特許文献4】米国特許第5,011,494号明細書
【特許文献5】米国特許第5,092,866号明細書
【特許文献6】米国特許第5,116,340号明細書
【特許文献7】米国特許第5,282,863号明細書
【特許文献8】米国特許第5,395,374号明細書
【特許文献9】米国特許第5,415,658号明細書
【特許文献10】米国特許第5,415,661号明細書
【特許文献11】米国特許第5,449,361号明細書
【特許文献12】米国特許第5,456,722号明細書
【特許文献13】米国特許第5,462,542号明細書
【特許文献14】米国特許第5,496,318号明細書
【特許文献15】米国特許第5,540,698号明細書
【特許文献16】米国特許第5,609,634号明細書
【特許文献17】米国特許第5,645,599号明細書
【特許文献18】米国特許第5,725,582号明細書
【特許文献19】米国特許第5,902,305号明細書
【特許文献20】米国特許第5,928,232号明細書
【特許文献21】米国特許第5,935,133号明細書
【特許文献22】米国特許第5,964,769号明細書
【特許文献23】米国特許第5,989,256号明細書
【特許文献24】米国特許第6,053,921号明細書
【特許文献25】米国特許第6,312,431号明細書
【特許文献26】米国特許第6,364,883号明細書
【特許文献27】米国特許第6,378,289号明細書
【特許文献28】米国特許第6,391,030号明細書
【特許文献29】米国特許第6,468,309号明細書
【特許文献30】米国特許第6,436,099号明細書
【特許文献31】米国特許第6,451,019号明細書
【特許文献32】米国特許第6,582,433号明細書
【特許文献33】米国特許第6,605,091号明細書
【特許文献34】米国特許第6,626,944号明細書
【特許文献35】米国特許第6,629,975号明細書
【特許文献36】米国特許第6,652,527号明細書
【特許文献37】米国特許第6,652,585号明細書
【特許文献38】米国特許第6,656,185号明細書
【特許文献39】米国特許第6,669,729号明細書
【特許文献40】米国特許第6,682,533号明細書
【特許文献41】米国特許第6,689,140号明細書
【特許文献42】米国特許第6,712,819号明細書
【特許文献43】米国特許第6,689,168号明細書
【特許文献44】米国特許第6,695,852号明細書
【特許文献45】米国特許第6,716,245号明細書
【特許文献46】米国特許第6,761,720号明細書
【特許文献47】米国特許第6,835,205号明細書
【特許文献48】米国特許出願公開第2002/0151978号明細書
【特許文献49】米国特許出願公開第2004/0024458号明細書
【特許文献50】米国特許出願公開第2004/0106995号明細書
【特許文献51】米国特許出願公開第2004/0116927号明細書
【特許文献52】米国特許出願公開第2004/0117017号明細書
【特許文献53】米国特許出願公開第2004/0127989号明細書
【特許文献54】米国特許出願公開第2004/0172132号明細書
【特許文献55】米国特許出願公開第2005/0033435号明細書
【特許文献56】米国特許出願公開第2005/0049708号明細書
【特許文献57】米国特許出願公開第2006/0069447号明細書
【特許文献58】国際公開第01/28442号パンフレット
【特許文献59】国際公開第02/03882号パンフレット
【特許文献60】国際公開第02/051326号パンフレット
【特許文献61】国際公開第02/071960号パンフレット
【特許文献62】国際公開第03/045262号パンフレット
【特許文献63】国際公開第2004/052246号パンフレット
【特許文献64】国際公開第2004/073532号パンフレット
【特許文献65】欧州特許出願公開第EP0322334号明細書
【特許文献66】仏国特許出願公開第2681525号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、隣接する2つ以上の脊椎分節の屈曲を弾性的に制限するために複数の棘突起を拘束する脊椎インプラント、インプラントシステム、および方法を提供する。本願明細書で使用する熟語「脊椎分節」は、熟語「機能的脊柱単位(FSU:Functional Spinal Unit)」と同義であり、脊柱全体と同様の生体力学的特性を示す、脊柱の最小の生理学的運動単位を意味するものとする。脊椎分節すなわちFSUは、2つの隣接する椎骨と、その間の椎間板および全ての隣接する靭帯とで構成され、筋肉など他の結合組織は含まれない。このスリー−ジョイント複合体は「関節トライアッド」とも称される。FSUに対する別の用語は、脊椎運動分節である。これらの定義は、White AA、Panjabi MM.著(1990年)「脊柱の臨床バイオメカニクス(Clinical Biomechanics of the Spine)」、フィラデルフィア、JBリッピンコット社(JB Lippincott)から採用した。本願の方法は、少なくとも3つの隣接する椎体の棘突起、または2つの隣接する椎体の棘突起と仙骨と、に係留構造を掛け渡すステップを含み、この係留構造は、少なくとも2つの隣接しない棘突起、または1つの棘突起と隣接しない仙骨と、を弾性的に連結する。これらの棘突起、および場合によっては仙骨をさまざま方法で相互接続し、弾性的に結合することができる。
【0012】
第1の例示的パターンにおいて、係留構造は、中間の少なくとも1つの棘突起を結合せずに、上側の棘突起を下側の棘突起、または仙骨に弾性的に結合する。一代替パターンにおいて、係留構造は、上側の棘突起と下側の棘突起または仙骨に加え、中間の少なくとも1つの棘突起をも弾性的に結合する。これらの棘突起、場合によってはさらに仙骨を、単一の連続係留構造によって弾性的に結合することもでき、他の複数の実施態様においては2つ以上の連続係留構造によって弾性的に接続することもできる。連続係留構造が2つ以上の場合は、所望の弾性拘束特性をもたらすために、これらの係留構造をさらに相互接続、結合、またはリンクすることもできる。接続される棘突起は、一般に腰椎領域にあり、大抵は腰椎の下側にあり、より具体的にはL3、L4、L5、および仙骨にある。大抵の場合、屈曲を抑制するために、棘突起、および場合によっては仙骨が、弾性的に結合されるが、隣接する椎体間の空間は治療対象の脊椎分節の伸延を抑制する構造から自由である。
【0013】
本発明の別の一態様において、脊椎インプラントは、少なくとも2つの隣接しない棘突起を拘束するように適合される連続係留構造を備え、他の場合は仙骨上のアンカー位置と1つの隣接しない棘突起とを拘束するように構成されている連続係留構造を備える。この係留構造の少なくとも一部は、隣接する棘突起および/または仙骨の間の脊椎分節の屈曲によってもたらされる伸延力に応じて、伸延に対する弾性抵抗をもたらす。多くの場合、このインプラントは、埋め込まれたときに棘突起の対向する側に対称的に位置するように係留構造の一部として配置される少なくとも2つの追従性部材を含む。さらに他の複数の実施態様において、連続係留構造は、少なくとも4つの追従性部材を含む。一般に、これらの追従性部材は、係留構造の非追従性部品および/またはケーブル部品に結合されるので、インプラントの追従性または弾性の大半または全ては追従性部材によってもたらされる。例示的な追従性構造は、同時係属出願中の米国特許出願第2005/02161017A1号明細書に示されている。
【0014】
一部の実施態様において、連続係留構造は、複数の隣接しない棘突起に掛け渡しうるループを形成する、切れ目のない構造である。このような切れ目のない「ループ状」係留構造は、通常、摩擦および締り嵌めによって棘突起に保持されるが、場合によってはステープル止め、溶接、糊付け、縫合などによるさらなる取り付けが可能なように改造することもできる。他の複数の実施態様において、連続係留構造は切れ目のある構造であり、骨に直接取り付けられるように固着用に適合化された2つの端を有する。このような切れ目のある係留構造は、仙骨への固着に適している。
【0015】
本発明の第3の態様において、上で概説した脊椎インプラントを備えるシステムは、追加の連続係留構造を少なくとも1つさらに含む。追加の係留構造は、通常、2つの隣接または隣接しない棘突起または仙骨を束縛するように適合されている。追加の連続係留構造は、切れ目がなく両方の棘突起に掛け渡すことができる構造であっても、あるいは切れ目があり、骨に直接固着するように適合されている2つの端を有する構造であってもよい。追加の連続係留構造は、主係留構造と相互接続することもできるが、別個に形成されることが多い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、棘突起(SP:Spinous Process)と、椎間関節(FJ:Facet Joint)と、椎弓板(L:Lamina)と、横突起(TP:Transverse Process)と、仙骨(S:Sacrum)とを含む、脊柱の腰椎領域を示す概略図である。
【図2】図2は、米国特許出願公開第2005/0216017A1号明細書に記載されている種類の脊椎インプラントを示す。
【図3】図3は、本発明の原理により構成された、3つの隣接する棘突起に掛け渡されるように適合されている連続係留構造を示す。
【図4】図4は、図3に示す連続係留構造に似ているが、対称的に配置された4つの追従性構造をさらに含む連続係留構造を示す。
【図5】図5は、3つの隣接する棘突起に掛け渡されるようになっており、中間の棘突起に係合する中間ループセグメントをさらに含む、本発明の原理により構成された連続係留構造を示す。
【図6】図6は、図5に示す連続係留構造と似ているが、中間ループ構造が主係留構造に調節可能に取り付けられている連続係留構造を示す。
【図7】図7は、2つの中間ループ構造と6つの対称的に配置された追従性部材とを含み、4つの隣接する棘突起に掛け渡されるようになっている、本発明の原理により構成された連続係留構造を示す。
【図8】図8は、中間棘突起に隣接する複数のコネクタによって互いに接合されている2つのループセグメントを備える、本発明の原理により構成されたさらに別の連続係留構造を示す。
【図9】図9は、切れ目のある構造を有し、仙骨への固着用に適合化された2つの端を有する、本発明の原理により構成された連続係留構造を示す。
【図10】図10は、同時に使用しうる2つの連続係留構造を含む、本発明の原理により構成されたシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、2つ以上の棘突起、または少なくとも1つの棘突起と仙骨上のアンカー領域とを弾性的に拘束することによって、2つ以上の隣接する脊椎分節の屈曲を抑制する方法、装置、およびシステムを提供する。このような拘束は、少なくとも3つの棘突起、または一対の棘突起と仙骨(より具体的には、L4とL5との上の棘突起および仙骨上のアンカー領域)とにまたがる係留(tether)構造を用いて実現される。用いられる係留構造は、一般に、連続した係留構造の形態を取る。「連続」とは、係留構造が、1つ以上の棘突起間、場合によってはさらに仙骨上のアンカー位置との望ましい弾性結合をもたらすように構成または改造し得る、細長い構成要素、例えばストラップ、ケーブル、リボンなどを1つ以上備え得ることを意味する。あるいは、「連続」係留構造は、上記のようなストラップ、バンド、ケーブルなど複数の構成要素と共に、望ましい弾性結合を可能にする追従性構造を備えることもできる。後者の場合、ストラップなどは一般に追従性はなく、張力に応じた伸延が皆無か僅かであるので、所望レベルの弾性結合は追従性部材によってもたらされる。追従性細長部品と別個の追従性部材との組み合わせも可能である。
【0018】
連続係留構造は、切れ目のない構造でも、切れ目のある構造でもよい。「切れ目のない」連続係留構造は、一般に、一対の棘突起、一般には少なくとも1つの中間棘突起によって隔てられた一対の隣接しない棘突起に掛け渡しうるループ状に形成される。他方、「切れ目のある」連続係留構造は、骨、一般には仙骨上のアンカー領域に固着するためのアンカー構造を設けて、適合化された自由端を少なくとも2つ有する。
【0019】
次に図3を参照すると、L1−L3椎体上の棘突起SP1−SP3を束縛する、切れ目のない第1の例示的な係留構造20が示されている。係留構造20は、切れ目のないループ状に形成された単純なバンド、ストラップ、またはケーブルでもよく、L1とL2との間、およびL2とL3との間の脊椎分節の屈曲を制御された方法で抑制するための所望の弾性が、係留構造20の少なくとも一部によってもたらされる。エラストマー材料の使用や、そのままでは非弾性または非追従性の構造に例えばバネ状または弾性域を含めることによって弾性をもたらすこともできる。
【0020】
次に図4を参照すると、第2の例示的な切れ目のない係留構造24は、棘突起の「隆起」の対向する側に対称的に配置された別個の追従性構造26a−26dを備える以外は、係留構造20と同様である。係留構造24は椎体L2−L4上の棘突起SP2−SP4に配置された状態で図示されているが、係留構造20および24は、一般には腰椎領域の、連続する3つの棘突起であれば何れの棘突起にも配置できることを理解されるであろう。
【0021】
本発明による切れ目のない係留構造は、例えば図5−図8に示すように、相互接続された複数のループとして形成することもできる。複数のループは、通常、少なくとも3つ以上の隣接する棘突起を束縛する、または別の方法でこれらの棘突起に係合する、外側すなわち外周ループを含む。拘束対象の棘突起群の中の1つ、2つ、またはおそらく3つ以上の「中間」棘突起に係合する、またはこれらの棘突起を囲む、1つ以上の内側ループをさらに設けることもできる。
【0022】
例えば、図5において、切れ目のない係留構造30は、椎体L3−L5上のSP3−SP5として示されている3つの隣接する棘突起を囲む外側のループ32を含む。SP4およびSP5のみを囲む内側のループ34が設けられている。2つのループ32および34の上側部分はどちらも追従性部材36aおよび36bに接続されている。これらの追従性部材は、脊椎分節が屈曲されたときに各ループの上側部分にほぼ等しい弾性張力が加わるように構成しうる。あるいは、ループ32および34の上側セグメントにそれぞれ異なる弾性張力をもたらすように追従性部材36aおよび36bを構成することもできる。
【0023】
図6に示すように、切れ目のない係留構造40は、図5の係留構造30と同様に、外側のループ42(SP3−SP5を囲むように図示)と内側のループ44(SP4およびSP5のみを囲むように図示)とを備える。ただし、ループの上側部分46は、摺動取り付け部材48aおよび48bに取り付けられた状態で図示されている。摺動取り付け部材48aおよび48bは、SP4の上部に掛けられた上側のループ構造46の締め付けまたは「締め上げ」を可能にする。係留構造40は、対称的に配置された4つの追従性部材50a−50dと共に図示されているが、この係留構造は、調節可能に配置される上側ループ構造46を残したまま、追従性部材を2つまたは皆無にすることも可能であることを理解されるであろう。
【0024】
外側の1つのループと内側の2つのループとを含む、より複雑な、切れ目のない係留構造60が図7に示されている。外側のループが4つの隣接する棘突起(SP2−SP4)を束縛するように構成されている一方で、ループセグメント64によって画定される内側の第1のループはSP3に沿って延在し、内側の第2のループセグメント66はSP4に沿って延在する。6つの追従性部材68a−68fが棘突起の対向する側に対称的に設けられ、上側の第1のループセグメント64の両端は追従性部材68cおよび68dにそれぞれ接続され、第2のループセグメント66の両端は追従性部材68eおよび68fにそれぞれ接続されている。6つの追従性部材と2つの中間ループセグメントとの使用によって、各棘突起に対する張力をある程度別個に調整できることを理解されるであろう。ただし、これらの脊椎分節に加わる総合的な追従性および弾性力は、全ての追従性部材によってもたらされる弾性力の累積値に応じて決まる。
【0025】
より単純な構成を有する多重ループ係留構造70が図8に示されている。上側のループ72は、一対の隣接する棘突起(SP2およびSP3として図示)を束縛するようになっており、下側のループは、重複する一対の棘突起(SP3およびSP4として図示)を束縛するようになっている。この2つのループは、コネクタ部品76aおよび76bによって接合される。これらのコネクタ部品は、ループ64および66を共に保持する単純なクリップまたはクリンプでもよいが(ループが弾性または一部弾性であり、脊椎分節の屈曲を制御可能な場合)、あるいは下側のループ74に対して上側のループ72の制御された弾性移動をもたらす追従性部材にすることもできる。後者の場合、ループは非追従性であることが多い。
【0026】
本発明の連続係留構造は、切れ目のない構造を有するとは限らない。図9および図10に示すように、係留構造は、骨、一般にはループの下端を取り付けるための構造を通常有しない仙骨の表面に固着されるようになっている端を少なくとも2つ含む、切れ目のある構造を有することもできる。図9に示すように、切れ目のある、例示的な係留構造80は、追従性部材82aおよび82bを含むU字形のつなぎ綱すなわちバンド構造を備える。係留構造80の2つの端には、一対のアンカー構造84aおよび84bが設けられる。これらのアンカー構造は、図示のように仙骨Sの面に固着されるようになっている。この方法により、係留構造80は、SP4とSP5との間、およびSP5と仙骨との間の脊椎分節の弾性拘束を制御された方法でもたらすことができる。
【0027】
図10は、図4に関して上で概説した係留構造24と第2の係留構造90とを含むシステムを示す。第2の係留構造90は、単一の棘突起(SP5)の周囲にのみ延在し、仙骨Sに固着されるようになっている以外は、係留構造80と同様である。参照によりその開示内容全体を本願明細書に組み込んだものとする、2007年7月13日に提出された同時係属出願中の特許出願第11/827,980号明細書に記載されているように、取り付けはさまざま方法で行い得る。第2の係留構造の取り付けには、仙骨に埋設したジベルを用いてもよく、あるいは上関節窩ネジを用いてもよく、あるいはS1の上関節窩に形成された穴に配置されたトグルアンカー(T形タグ)を用いてもよく、あるいは後仙骨S1の孔に取り付けられたフックを用いてもよく、あるいは他の同様の方法を用いてもよい。図10に概略的に示されているように、係留構造24と係留構造90とを相互接続せずに配置させることもできる。ただし、多くの場合は、SP5の2つの側面にほぼ隣接する、これらの係留構造の交差箇所92a、92bにおいて両係留構造を相互接続することが望ましいであろう。この取り付けは、圧着構造(図示せず)を用いて行うことも、あるいは係留構造同士を別の方法で結束、溶接、または融着することによって行うこともできる。
【0028】
脊柱の腰椎領域において隣接する脊椎分節に対して、制御された弾性拘束をもたらすために、切れ目のない係留構造と切れ目のある係留構造との別の多くの組み合わせを提供できることを理解されるであろう。したがって、上記の各例は、以下の特許請求の範囲に示されている本発明の範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の隣接する脊椎分節の屈曲を弾性的に制限するために、棘突起を拘束する方法であって、
少なくとも3つの隣接する椎体の棘突起、または2つの隣接する椎体の棘突起と仙骨と、に係留構造を配置することであって、該構造が上側の棘突起と、下側の棘突起または仙骨とを弾性的に結合することを含む、方法。
【請求項2】
前記係留構造は、上側の棘突起と、下側の棘突起または仙骨とを弾性的に結合し、少なくとも1つの中間の棘突起を結合しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記係留構造は、上側の棘突起と、下側の棘突起または仙骨と、中間の少なくとも1つの棘突起とを弾性的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上側の棘突起と、中間の棘突起と、下側の棘突起または仙骨とが、単一の連続係留構造によって結合される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記上側の棘突起と、中間の棘突起と、下側の棘突起または仙骨とが、少なくとも2つの連続係留構造によって結合される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記椎体のうちの下側の椎体が、L4、L5、および前記仙骨から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記隣接する椎体間の空間が、伸延を抑制する構造から自由である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記係留構造は、1つ以上の追従性部材と直列に1つ以上のバンド要素を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記係留構造は、少なくとも2つの追従性部材を備え、該追従性部材を前記棘突起の対向する側に対称的に配置することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記係留構造は、少なくとも4つの追従性部材を備え、該追従性部材を前記棘突起の対向する側に対称的に配置することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの隣接しない棘突起、または仙骨上のアンカー位置と1つの隣接しない棘突起とを束縛するように適合される連続係留構造を備える脊椎インプラントであって、該隣接する棘突起間、または棘突起と隣接しない仙骨との間、の脊椎分節の屈曲によってもたらされる伸延力に応じて、該係留構造の少なくとも一部が伸延に対する弾性抵抗を提供する、脊椎インプラント。
【請求項12】
前記棘突起の対向する側に位置するように、対称的に配置された少なくとも2つの追従性部材をさらに備える、請求項11に記載の脊椎インプラント。
【請求項13】
前記棘突起の対向する側に位置するように、対称的に配置された少なくとも4つの追従性部材をさらに備える、請求項11に記載の脊椎インプラント。
【請求項14】
前記連続係留構造は、切れ目がなく前記複数の隣接しない棘突起上で輪になっている、請求項11に記載の脊椎インプラント。
【請求項15】
前記連続係留構造は、切れ目があり、かつ、2つの端を有し、各端は骨への取り付け用アンカーを有する、請求項11に記載の脊椎インプラント。
【請求項16】
請求項11に記載の脊椎インプラントと、2つの隣接する棘突起、または隣接しない棘突起または仙骨を束縛するように適合されている少なくとも1つの追加の連続係留構造とを備えるシステム。
【請求項17】
前記追加の連続係留構造は、切れ目がなく前記複数の隣接しない棘突起上で輪になっている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記追加の連続係留構造は、切れ目があり、かつ、2つの端を有し、各端は骨への取り付け用アンカーを有する、請求項16に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−506694(P2010−506694A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533535(P2009−533535)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/081822
【国際公開番号】WO2008/051802
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509108906)シンピライカ スパイン, インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】