説明

複数の補聴器間における会話グループ構築システムおよび方法

【構成】異なるユーザによって使用される複数の補聴器(1,2,3,4,5)の間に会話グループを構築するシステムであって,上記システムは,無線通信に適合する複数の補聴器(1,2,3,4,5),通信ネットワーク内において利用可能な補聴器(1,2,3,4,5)を検出する手段,上記会話グループに参入する補聴器(1,2,3,4,5)を選択する手段,上記会話グループに参加している補聴器(1,2,3,4,5)と相互通信するように構成された共有無線通信ユニット(10)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,複数の補聴器間において会話グループを構築するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの状況において,少人数のグループは騒々しい環境で対話することが強いられる。大きな部屋に複数の人が集まって,組になりまたは小グループで会話するパーティーや会議において,このような状況は生じる。また,異なる複数のテーブルを囲んで人が集まる食堂やカフェテリアにおいてもこの状況は生じることがある。また,テレビを鑑賞している人がいたり,世間話をしている人がいたり,テーブルを囲んで座ってトランプなどをしている人がいる高齢者福祉施設内の娯楽室においても,この状況は生じることがある。
【0003】
このような状況において,外部騒音が問題になることがあり,上述のような組または小グループの各人は,特に,自分たちの間の会話からの音を大きくしつつ(enhancing),邪魔なあらゆる外部雑音を好適に抑制する(suppressing)ことに,特に関心を持つ。
【0004】
このような背景に基づいて,この発明は,上述の問題などを解決するシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0005】
この発明の第1の態様によると,この目的は,異なるユーザによって使用される複数の補聴器の間に会話グループを構築するシステムによって達成され,上記システムは,無線通信に適応する複数の補聴器,上記会話グループに参加可能な補聴器を検出する手段,上記会話グループへ参入する補聴器を選択する手段(means for selecting hearing aids for inclusion into said conversation group),上記会話グループに参加している補聴器と相互通信する(補聴器へのおよび補聴器からの送信に適応する)(transmitting to and from the hearing aids participating in said conversation group)ように構成された共有無線通信ユニット(a shared wireless communication unit)を備えている。
【0006】
これによって,会話グループに参加している補聴器によってピックアップされるあらゆる音は,空気中を通って全行程(the full distance)を伝搬するのではなく,直接に,他の参加者へ無線送信される。したがって,あらゆる発話者の音声は,たとえば最大で1〜2メートル空気中を伝搬してから,他の補聴器のマイクロフォンによってピックアップされるのではなく,発話者の口元から約15センチメートルだけ離れて配置されている発話者自身の補聴器によってピックアップされて,会話グループに参加している他の補聴器に無線送信される。これによって,ピックアップされる前の音声の減衰,さらには邪魔な雑音の影響が大幅に低減され,発話の了解度が向上する。
【0007】
この発明の第1の態様の好ましい実施形態では,会話グループに参加している少なくとも一つの補聴器は,一方において上記補聴器と通信し,かつ他方において上記共有通信ユニットと通信するリレー装置(a relay device)を含む。これは,補聴器内のバッテリからの電力供給が抑制されるメリットがある。リレー装置までは短距離送信であればよいので,送信電力さらには補聴器内のトランスミッタの電力消費を最小限にする(be kept at a minimum)ことができる。リレー装置は一般に補聴器より大きく,より大きなバッテリ容量を備えることができ,その結果,上記共有通信ユニットへのさらに強力な送信(more powerful transmission)を実現することができる。
【0008】
他の好ましい実施形態では,上記リレー装置は,上記会話グループに参加可能な上記補聴器(複数)を表示する手段,および上記補聴器のうち上記会話グループへ参入する少なくとも一つ補聴器を手動選択する手段を含む。これによって,ユーザは,会話グループに参入する参加者を容易に識別しかつ選択でき,おそらくさらに重要なことであろうが,望まれない参加者(undesired participants)を排除することができる。
【0009】
これに代わる実施形態において,上記システムは,他の補聴器までの距離(範囲)(range)を検出して,上記距離検出に基づいて自動的に上記会話グループに参加する補聴器を選択する手段を含む。この代替の構成は,ユーザ自身の補聴器の会話グループ機能(the conversation group facility)についての操作方法を習得する必要がない,という利点をユーザに提供できる。
【0010】
この発明の第1の態様によるさらに他の好ましい実施形態では,上記リレー装置は,補聴器を操作する遠隔制御部(リモート・コントロール)(a remote control)に組込まれる。この補聴器のユーザは通常は遠隔制御部を携行するので,この構成にメリットがある。必要に応じてリレー装置を容易に利用することができる。さらに,遠隔制御部は,一般に補聴器それ自体と比較して,共有通信ユニットへの送信を行う十分なバッテリ容量を実現できるサイズを有する。
【0011】
さらに他の好ましい実施形態では,上記共有無線通信ユニットは,無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)のルータである。無線ローカル・エリア・ネットワークは,特に構築が容易で,かつ比較的安価であるので,幅広い支持を獲得している。したがって,複数の補聴器ユーザの間で会話グループを構築することが便利になることがよくある場所の所有者にとって,必要な基盤設備を容易に構築できる利点がある。これによって特定の専用基地局は不要になる。
【0012】
この発明の第1の態様のさらに他の好ましい実施形態において,上記ローカル・エリア・ネットワークに接続されたすべての補聴器が,選択のために上記リレー装置上に表示可能とされる。これによって,ユーザは,他の参加者を自由に選択することができ,建物内の他の部屋など,かなり離れたところにいる人物であっても,その人物と連絡をとることができるようになる。
【0013】
この発明のさらに他の好ましい実施形態では,上記システムは,上記無線ローカル・エリア・ネットワークに接続された補聴器の記録を登録および保持する(registering and keeping a record of hearing aids)ように構成された制御ユニットを含む。上記ルータに接続された標準的なコンピュータ上において,アプリケーション・ソフトウェアを利用して制御ユニットを実装する(implemented)ことができ,標準的なルータにおいては何らの変更も加える必要がないという点で,有利である。さらに,各補聴器システムに対して明瞭な識別情報を割当てるタスクを,補聴器またはリレー装置内において実行するのに代えて,この制御ユニットを利用して実行することができる。
【0014】
さらに,上記制御ユニットは,上記ローカル・エリア・ネットワーク上に構築された会話グループおよびその参加者を追跡する(keeping track)ように構成されるのが好ましい。現在存在している会話グループ(existing conversation groups)が,補聴器システムのリレー装置上においてグループとして表示可能になるので,識別がさらに簡単になる。逆に,現在存在している会話グループまたはその参加者を,表示しないようにしてもよい。これによって,他の補聴器は会話グループを見られなくなるので,他の補聴器は,許可された場合,たとえば上記会話グループに既に参加している人物によって選択された場合にのみ,参加できるようになる。
【0015】
この発明の第1の態様のさらに他の好ましい実施形態によると,上記リレー装置は,少なくとも一つの内蔵マイクロフォン,好ましくは指向性マイクロフォンを備えている。これによって,補聴器ユーザは,自分のリレー装置を自分の正面に置き,かつユーザ自身へ向けて,補聴器の内蔵マイクロフォンではなく指向性マイクロフォンに上記ユーザの発話をピックアップさせることができる。しかしながら,より重要なことは,補聴器を使用していない人物であっても会話グループに参加できることである。たとえば,他の参加者の一人からリレー装置を単に借りて自分の前に配置すると,他の補聴器ユーザはリレー装置を介してその人物の話を聞くことができる。
【0016】
また,この発明の目的は,この発明の第2の態様によっても達成され,この第2の態様では,異なるユーザによって使用される複数の補聴器を含む会話グループを構築して,通信ネットワークを介して上記会話グループ内において通信する方法が提供される。この方法は,無線通信に適応する複数の補聴器を設け(提供し)(providing),上記通信ネットワーク内において利用可能な補聴器を検出する手段を設け,上記会話グループに参入する補聴器を選択する手段を設け,共有無線通信ユニットを設けて,上記無線通信ユニットを介して上記会話グループに参加している補聴器へのまたは補聴器からの通信信号を送信する。
【0017】
次に,この発明を,概略図を参照して,非限定的な例示的実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係る複数の補聴器が,無線ローカル・エリア・ネットワークを利用して,2つの会話グループを形成している状態を模式的に示す。
【図2】この発明に係る補聴器およびリレー装置を含む複数の補聴器システムが,直接通信を利用して,2つの会話グループを形成している状態を模式的に示す。
【図3】図2において使用される補聴器システムを模式的に示す。
【実施例】
【0019】
図1および図2の両方において,複数台の補聴器HA1,HA2,HA3,HA4およびHA5が,それぞれ符号1,2,3,4,5が付されて示されている。概略的にのみ示す補聴器1,2,3,4,5は,片耳用補聴器(single hearing aids)であっても両耳用システム(binaural systems)であってもよい。
【0020】
まず,図1を参照して,補聴器1,2,3,4,5は,それぞれ通信リンク31,32,33,34,35を用いて,ローカル・エリア・ネットワーク6のルータ10のような共有通信ユニット(a shared communication unit)と無線通信することが示されている。ローカル・エリア・ネットワークへの無線接続は,好ましくは,IEEE802.11a/b/gのうちのいずれかの規格に基づくものであるが,たとえば,ブルートゥースなど,ローカル・エリア・ネットワークへの他の無線アクセス方式を想定することもできる。
【0021】
IEEE802.11a/b/g規格に基づく無線ローカル・エリア・ネットワーク(Wireless Local Area Networks),すなわちWLANは,個人宅および公共の場において幅広く利用されており,このような無線ローカル・エリア・ネットワークを提供するルータは,市場において低価格で容易に入手することができる。
【0022】
さらに,図1には,2つの会話グループが構築されていることが破線によって示されている。一方の会話グループは,補聴器1および2を含み,これらは無線ローカル・エリア・ネットワーク6を介して互いに通信する。他の一つの全体に独立した会話グループは補聴器3,4,5を含み,これらの補聴器は同じ無線ローカル・エリア・ネットワーク6を介して互いに通信する。
【0023】
同様のシステムが図2に示されている。図2において,それぞれに符号11,12,13,14,15が付された個別のリレー装置RC1,RC2,RC3,RC4およびRC5が各補聴器1,2,3,4,5にそれぞれ関連付けられており,これによって,この発明による補聴器システムが対応する数だけ形成されている。概略的にのみ示す補聴器1,2,3,4,5は,片耳用補聴器であっても,2つの補聴器が1つの単一のリレー装置11,12,13,14,15を共有する両耳用システムであってもよい。図面において,図示する補聴器システムの数は5個であり,説明のためには十分であるが,実際には任意の個数であってよい。各補聴器1,2,3,4,5と,そのそれぞれについてのリレー装置11,12,13,14,15との間の通信は,独立した無線送信(individualized wireless transmission)21,22,23,24,25を介して行われる。無線送信21,22,23,24,25は双方向であり,かつ低電力で動作し,短距離の範囲のみを提供する。通常,この距離(範囲)は1〜2メートルよりも短く,たとえば,ユーザが向き合って対話している相手の人物の対応する補聴器システムなど,同一周波数において送信する近い範囲の補聴器システムとの間で他の無線通信21,22,23,24,25を妨害しない。通常,人が他の人を物理的に近寄らせる程度には当然に限界があり,この単純な空間的分離(simple spatial separation)を利用して,他の送信を妨害する可能性が少ない低電力によって,各伝送を行うことが好ましいが,当業者であれば,無線送信が互いに妨害し合うことを回避する他の手段も存在することは理解しよう。このような例としては,割当てられたタイムスロットの通信において伝送を行う時間的分離,異なる割当て周波数によって伝送を行う周波数分離,またはこれら両方の組合わせがある。低出力リレー・システムの一例が,国際公開WO−A−2006/074655に記載されている。このシステムでは,リレー装置は,コンピュータと双方向で通信する遠隔制御部(remote control)であり,上記コンピュータから補聴器に音声を送ることができる。
【0024】
図2には,個別の通信リンク31,32,33,34,35を利用して,リレー装置11,12,13,14,15がローカル・エリア・ネットワーク6のルータ10と無線通信することがさらに示されている。ローカル・エリア・ネットワークとの無線接続は,IEEE802.11a/b/g規格のうちの一つに基づくのが好ましいが,ローカル・エリア・ネットワークとの他の無線アクセス方式を想定することもできる。
【0025】
また,図2には,2つの会話グループが構築されていることが破線によって示されている。一方の会話グループは各補聴器1および2のリレー装置11および12を備え,このリレー装置11,12が無線ローカル・エリア・ネットワーク6を介して互いに通信する。他方の全体で独立した会話グループは,補聴器3,4,5のリレー装置13,14,15を備え,このリレー装置13,14,15も同じ無線ローカル・エリア・ネットワーク6を介して互いに通信する。
【0026】
図2による実施形態は,現在のところ,図1に示すものよりも好ましい最良の態様であり,以下の説明は,特に他の指示がない限り図2に基づいて行うことにする。簡単化のために,以下,補聴器1に基づく補聴器システムのみを参照する。特に明記しない限り,以下の説明は,補聴器2,3,4または5を含む他の補聴器システムにも同様に適用されることは,当業者であれば理解しよう。
【0027】
この発明による補聴器システムが,図1のWLAN6などの無線ローカル・エリア・ネットワークの範囲内に存在する場合,このことが,補聴器システム,具体的にはリレー装置11によって,検知される。ユーザがネットワークに接続することができるローカル・エリア・ネットワークの存在は,自己のリレー装置11のディスプレイ上においてユーザに提示される。複数のローカル・エリア・ネットワークが同時に存在する場合,ユーザは,その中から適切なものを選択することができる。たとえば,家と会社のように,いくつかの特定の無線ローカル・エリア・ネットワークの間をユーザが頻繁に移動する場合は,自動的かつ優先的な接続を設けてもよい。すなわち,ユーザが自分の家のローカル・エリア・ネットワークの範囲内にいるとき,ユーザは,ユーザ自身のローカル・エリア・ネットワークと,たとえば近隣のローカル・エリア・ネットワークとの間の選択を行う必要なしに,ユーザ自身のローカル・エリア・ネットワークと自動的に接続される。
【0028】
ローカル・エリア・ネットワークに接続されると,その特定のローカル・エリア・ネットワーク上の他のユーザの存在を示す情報が,ローカル・エリア・ネットワークのルータ10を通じて検出され,リレー装置11のディスプレイ7上においてユーザに提示される。これにより,ユーザは,無線ローカル・エリア・ネットワーク上で無線通信可能な他の補聴器システムに関する概要を,把握することができる。好ましくは,リレー装置11は,ユーザの名前など,補聴器システムの分かり易い識別情報を設定することができ,これにより他のユーザが上記ユーザを容易に識別できる。これに代えて,コンピュータなどの制御ユニット8が,補聴器システムのユニークな識別子に対応する分かり易い名前を保存しておき,現在利用できる,または無線ローカル・エリア・ネットワークにログオンしている潜在的参加者を,追跡することができる。この任意選択の構成は図1にも示されている。制御ユニット8とローカル・エリア・ネットワーク6の無線ルータ10との間の接続は無線である必要はなく,ケーブル接続9を用いるものであってよい。図3に示すリレー装置11は,特に,スフェンド(Svend),クヌド(Knud)およびヴァルデマール(Valdemar)という人物に属する3つの他の補聴器システムを識別している。これらの人物が,会話グループの参加者として選択可能な人物である。この選択は,ディスプレイ7のメニュー・システムと組合わせて押しボタン71,72,73,74,75を用いて,ユーザがメニューを操作することによって行うことができる。この選択の実行方法の詳細は当業者が十分に把握している範囲内であって,この発明の一部を構成するものではない。したがって,当業者であれば,英数字キーパッドや,指でタッチするスクリーンを利用して,タイプ入力を行ったり,メニューを操作したりできることは理解しよう。さらに,この発明の焦点は,会話グループの構築であるが,ディスプレイ7上に他の項目を表示すること,特に,補助マイクロフォン・ユニットやオーディオ・ストリーミング装置など,無線ローカル・エリア・ネットワーク上の他の関連装置を表示することを排除するものではないことも,当業者であれば理解しよう。
【0029】
補聴器1自体が中央通信ユニットとの無線通信に適応している場合,たとえば図2に示したようなリレー装置を介してではなくて,図1のような無線ローカル・エリア・ネットワークとの直接接続に適応する場合,無線ローカル・エリア・ネットワーク上の他の補聴器の存在について,ユーザへの音響信号送信(acoustic signalling)を利用することができる。遠隔制御部自体が無線ローカル・エリア・ネットワークとの通信に適応していない場合であっても,ディスプレイを持つ遠隔制御部を利用することもできる。
【0030】
会話グループの構築は,相互の合意に基づいて,互いの補聴器システムを選択する2人以上のパーティによって簡単に達成することができる。これに代わる構成として,所望の参加者のリレー装置のディスプレイ上にリクエストを提示して,所望の参加者の選択をうながすこともでき,この場合には,所望の参加者が会話グループに参加する前に,リクエストが確認されなければならない。
【0031】
リレー装置11のディスプレイ7上に,特定のローカル・エリア・ネットワーク6上の他のすべてのユーザを提示するのではなく,補聴器システムのすぐ近くに存在する他の補聴器システムのみを表示すると,多くの状況において有利となる。これは,たとえば,高齢者福祉施設内の状況に当てはまり,そこでは,多数の補聴器ユーザは,ユーザの自室に一人でいるか,または娯楽室に他のユーザと共にいるかに関わらず,同一の無線ローカル・エリア・ネットワーク6を共有することが多い。ここで,娯楽室にいない,または娯楽室の向こう側で会話している他のユーザが,会話の相手として興味を示し,ひいては会話グループに参加することに興味を持つとは考えにくい。
【0032】
この状況において,リレー装置11は,会話グループに加わることができる参加者として,他の補聴器システムおよびその識別情報を検出する近接検出器(a proximity detector)を包含してもよい。この情報は,無線接続31を介して制御ユニット8に送信され,これによって制御ユニット8は可能性のある会話グループ参加者を追跡することができる。制御ユニット8は,好ましくはルータ10に接続された標準コンピュータ(a standard computer)であって,無線ローカル・エリア・ネットワーク6に接続された補聴器システム1,2,3,4,5を登録および追跡するアプリケーション・ソフトウェアを動作させる標準コンピュータであるとよい。ルータ10と制御ユニット8との間の接続は無線である必要はなくケーブル接続9であってもよい。また,制御ユニット8は,無線ローカル・エリア・ネットワーク6上に構築された複数の会話グループおよびその参加者を追跡するように構成されてもよい。
【0033】
これを達成する好ましい一つの方法は,リレー装置11内に,他の補聴器2および対応するリレー装置12の間で送信される信号強度および個別コードを検出する手段を組込むことである。無線ローカル・エリア・ネットワーク6上の存在とともに,これを検出することによって,ユーザのリレー装置11のディスプレイ7上において上記ユーザに提示される利用可能な参加者の数が削減される。これに代えて,リレー装置11は,トランスポンダに適合されてもよく(could be fitted with a transponder),または個別の検出周波数を利用してもよい。
【0034】
近接検出の利用は,補聴器システムに近接して存在する他の補聴器システムと共に会話グループを自動的に構築する可能性をもたらす。すなわち,2つ以上の補聴器システムが近接して存在する場合に,個々のユーザの介入がなくても,会話グループを自動的に構築することができる。この場合,ユーザは,補聴器1の会話グループ機能を操作する方法を習得する必要がなく,上述の構成はユーザにとって有利であるが,いくつかの欠点があり,好ましさの程度が若干劣る。このような欠点の一つはプライバシーの喪失であり,この場合,通り過ぎる補聴器ユーザが,プライベートであるにもかかわらずに会話を聞きとれるという,拡張された可能性を得ることになる。また,多数の補聴器システムが互いに近接している場合,たとえば,人が行列している場合やカクテル・パーティーに参加している場合に,望ましくない形で会話グループが拡大することになる。すなわち,会話グループのあらゆる参加者は,会話グループ内にさらに他の補聴器システムを包含し,ひいては,さらなる参加者を受入れることになり,あまりに多くの参加者が存在するため,対話を改善するという点において無意味な大きさにまで,会話グループが拡張されてしまう。
【0035】
リレー装置11は,一つ以上のマイクロフォン76,たとえば,指向性マイクロフォンも含むのが好ましい。これによって,補聴器の内蔵マイクロフォンのみに頼らずに,対話を改善することができる。すなわち,補聴器ユーザが,自分のリレー装置11を手前に配置して発話している人物に向ければ,ユーザおよび会話グループの他の参加者は,発話している人物が補聴器ユーザではない場合であっても,その人物の発話をよりよく聞き取ることができる。他の補聴器ユーザのために,ユーザは,マイクロフォン76を持つリレー装置11を自分の前に配置して,自分自身の方に向けてもよい。所有している補聴器の内蔵マイクロフォンではなく,リレー装置11の指向性マイクロフォンを利用することによって,ユーザの声の良好な音響受信,すなわち,指向性によって外乱騒音が低減された音響受信を実現することができる。これらの任意選択の構成には,もちろん,リレー装置11が,対応する補聴器1からあまり遠くへ離れていない場合に限られるという制限がある。上述したように,補聴器を使用しない人物がリレー装置11を借用した場合に,貸し手が他の参加者からの通信を受取れなくなるような状況が生じうるからである。
【0036】
当然に,音は,補聴器の通常のマイクロフォンでもピックアップすることができる。しかしながら,補聴器1が,外耳道内すなわち補聴器1のイヤプラグと鼓膜との間の空洞内において音をピックアップする追加のマイクロフォンを含むタイプである場合は,非常に騒々しい環境においては,この追加のマイクロフォンを利用することができる。この場合,補聴器ユーザの発話は,特に,補聴器のイヤプラグによって周囲騒音から遮断される外耳道内においてピックアップされ,リレー装置11を介して会話グループの他の参加者に送信される。複数のマイクロフォンを組合わせることもできる。外耳道内で音を拾うマイクロフォンの配設に関するさらなる説明については,国際公開WO−A1−00/28783,WO−A1−00/28784,米国特許第4548082号を参照されたい。
【0037】
この発明は,元来,補聴器ユーザの間に会話グループを構築して,ユーザ相互の意思伝達を改善するためになされたものであるが,会話グループ内に他の装置を設けることを排除するものではない。したがって,無線ローカル・エリア・ネットワークとの通信を実現できるマイクロフォン・ユニットが,会話グループ内に包含されてもよい。これによって,たとえば,会議における講演者は,従来のFMシステムではなく,会議室の無線ローカル・エリア・ネットワーク6を利用して,補聴器ユーザに演説できるようになる。また,聴覚障害を持つ子供がいる個人宅において,両親は,無線ローカル・エリア・ネットワークとの通信を行えるこのようなマイクロフォン・ユニットを利用して,家庭内で,上記無線ローカル・エリア・ネットワークを介して子供との意思伝達を行うことができる。このようなマイクロフォン・ユニットは,好ましくは,会話グループに参加する補聴器システムの表示および/または選択を行う手段も含む。同様に,上記手段では,既に説明したように,この発明に係る補聴器システムのリレー装置11のディスプレイ7上に選択可能な参加者として表示される。
【0038】
無線ローカル・エリア・ネットワーク6がインターネットにもさらに接続される場合に,補聴器システムを利用して,インターネットを経由せずに,他の遠隔装置との接触を確立することも可能である。したがって,たとえば,無線ローカル・エリア・ネットワークに接続された遠隔装置11またはコンピュータに適切なプロトコルが実装されている場合,補聴器1は,IP電話のヘッドセットとして利用されてもよい。このようなプロトコルを実装する方法は当業者に知られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるユーザによって使用される複数の補聴器の間に会話グループを構築するシステムであって,
無線通信に適合する複数の補聴器,
上記会話グループに参加可能な補聴器を検出する手段,
上記会話グループへ参入する補聴器を選択する手段,
上記会話グループに参加している補聴器と相互通信するように構成された共有無線通信ユニットを備えている,システム。
【請求項2】
上記会話グループに参加している少なくとも一つの補聴器は,一方で補聴器と通信し,他方で上記共有通信ユニットと通信するリレー装置を備えている,請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記リレー装置は,上記会話グループへ参加可能な上記補聴器を表示する手段,および上記補聴器のうち,上記会話グループに参加する少なくとも一つの補聴器を手動で選択する手段を備えている,請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
上記システムは,他の補聴器までの距離を検出して,上記会話グループ内に参入する上記補聴器を自動的に選択する手段を備えている,請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
上記リレー装置は,補聴器を操作する遠隔制御部内に組込まれる,請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
上記共有無線通信ユニットは,無線ローカル・エリア・ネットワークのルータである,請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
上記ローカル・エリア・ネットワークに接続されたすべての補聴器は,選択のために上記リレー装置上に表示可能である,請求項3に従属する場合の請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
上記システムは,上記無線ローカル・エリア・ネットワークに接続された補聴器の記録を登録および保持するように構成された制御ユニットを備えている,請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
上記制御ユニットは,上記ローカル・エリア・ネットワーク上に構築された会話グループおよびその参加者を追跡するようにさらに構成されている,請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
上記リレー装置は,少なくとも一つの内蔵マイクロフォンを備えている,請求項2から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
異なるユーザによって使用される複数の補聴器を含む会話グループを構築し,上記会話グループ内において通信ネットワークを介して通信する方法であって,
無線通信に適合する複数の補聴器を設け,
上記通信ネットワークへ参加可能な補聴器を検出する手段を設け,
上記会話グループへ参入する補聴器を選択する手段を設け,
共有無線通信ユニットを設けて,上記共有無線通信ユニットを介して,上記会話グループに参加している補聴器の間で相互に通信信号を送信する,方法。
【請求項12】
上記会話グループに参加している少なくとも一つの補聴器は,一方で上記補聴器と通信し,他方で上記共有通信ユニットと通信するリレー装置を利用する,請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記通信ネットワーク内において利用可能な上記補聴器が上記リレー装置上に表示され,上記会話グループへの参入のために,上記補聴器のうちの少なくとも一つが手動で選択される,請求項12に記載の方法。
【請求項14】
他の補聴器までの距離を検出し,上記距離検出に基づいて,上記他の補聴器が上記会話グループへの参入のために自動的に選択される,請求項11に記載の方法。
【請求項15】
上記共有無線通信ユニットとして,無線ローカル・エリア・ネットワークのルータが利用される,請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
制御ユニットを利用して,上記無線ローカル・エリア・ネットワークに接続された補聴器の記録を登録および保持する,請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記制御ユニットはさらに,上記ローカル・エリア・ネットワーク上に構築された会話グループおよびその参加者を追跡するために利用される,請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも一つの内蔵マイクロフォンを備えたリレー装置を利用して音声をピックアップする,請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−511333(P2010−511333A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538590(P2009−538590)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/DK2007/050070
【国際公開番号】WO2008/151623
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(500011045)ヴェーデクス・アクティーセルスカプ (99)
【Fターム(参考)】