説明

複数チップ配列分注装置

【課題】コンパクトで、軽量でかつ簡単な構造をもつ複数チップ配列分注装置を提供すること。
【解決手段】複数のノズルが配列されたノズルヘッドと、ノズルを介して気体の吸引吐出を行なう吸引吐出機構と、容器群とノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記分注チップに対して相対的に接離可能となるように設けた複数個の磁石を有する磁力機器とを有するととともに、前記磁力機器の前記容器群に対する移動は、上下方向の移動を除き前記ノズルヘッドの移動に連動し、前記磁力機器の前記容器群に対する上下方向の移動は、前記ノズルヘッドまたは前記磁力機器の上下方向に沿った位置座標に応じて前記ノズルヘッドの上下方向の移動に連動しまたは連動させないように制御する連動制御機構を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1列状または行列状に配列された複数のノズルを有し、該ノズルに装着することで分注チップを複数配列した複数チップ配列分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、分注チップによって処理が行われるべき対象となる液体は、カートリッジ容器に1列状に配列され、またはマイクロプレートにマトリクス状(行列状)に配列された複数のウェルに収容して処理が行われるようになった。そのために、分注チップ自体をもマイクロプレートやカートリッジ容器に対応して行列状にまたは1列状(1行状)に複数配列して一括して効率的に分注処理を行なう傾向にある。
【0003】
その場合、複数のノズルに装着される複数の各分注チップに対し磁石を接離可能となるようにノズルヘッドに取り付けて各分注チップ内に磁場を及ぼしかつ除去させるものがあった(文献1,2)。
【0004】
これはマイクロプレートに合わせて分注チップを集積化して配列すると、各分注チップの周辺に磁石を設けかつ移動するためのスペースが小さくなるので、磁石を設けかつ移動することを各分注チップの行間隔または列間隔を利用して行なうことができるように、磁力手段として櫛歯状の部材に列間隔または行間隔に磁石を配置し、行間隔または列間隔を、列方向および行方向に沿って抜き差しすることで磁力を各分注チップ内に及ぼしかつ除去するようにした磁力手段を設けたものである。
【0005】
この場合には、分注チップの配列する個数が増加すると前記櫛歯状部材を抜き差しするための磁石の移動距離、したがって櫛歯状部材の長さが長くなり、磁力手段をZ軸方向に移動可能なノズルヘッドに取り付ける場合には、ノズルヘッドの規模が大きくなると共に、分注チップに対する磁場を及ぼす位置が固定されるために、ノズルヘッドに装着される磁性分離用の分注チップの形状や大きさが限られることになり、また、チップラックに収容された分注チップに対して、ノズルヘッドを下降させてノズルを嵌合させることで、分注チップを装着する自動的な装着が困難となるおそれがあり、液体処理自体についても種々の制限が課せられるおそれがあった。
【0006】
一方、それらを避けるために、Z軸方向に移動可能となるようにノズルヘッドを支持するがそれ自身Z軸への移動不能な支持体に磁力手段を設ける場合には、磁力を及ぼす高さが常に固定されることになり、分注チップ内に磁力を及ぼしながら磁性体粒子を移送させる場合には水平移動に限られるおそれがあった。
【0007】
さらに、複数の分注チップを配列した分注装置においては、複数の分注チップを複数のノズルに装着して用いる。装着は、ステージ上に配列して収容した複数の分注チップに前記ノズルヘッドを下降させてノズルに分注チップを嵌合させることで行うことになる。しかし、分注チップの個数が増加する場合には、ノズルの外周面と分注チップの装着部分の内壁との間の摩擦力により、ノズルヘッドに加えるべき必要な圧入力が急激に増大すると共に、ノズルに用いたOリングの破壊が生ずるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO99/47267号公報
【特許文献2】国際公開WO2008/026670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は以上の問題点を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、複数の分注チップを配列した分注装置において、コンパクトで、軽量かつ簡単な構造をもつ複数チップ配列分注装置を提供することである。
【0010】
第2の目的は、磁性分離を可能とする分注チップの形状、大きさまたは種類の選択の幅を広げるとともに、種々の処理内容を実現することができる汎用性の高い複数チップ配列分注装置を提供することである。
【0011】
第3の目的は、複数の分注チップのノズルに対する装着を円滑に行なうことができる複数チップ配列分注装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、複数のノズルが配列されたノズルヘッドと、前記ノズルを介して気体の吸引吐出を行なう吸引吐出機構と、容器群と前記ノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記分注チップに対して相対的に接離可能となるように設けた複数個の磁石を有する磁力機器とを有するととともに、前記磁力機器の前記容器群に対する移動は、上下方向の移動を除き前記ノズルヘッドの移動に連動し、前記磁力機器の前記容器群に対する上下方向の移動は、前記ノズルヘッドまたは前記磁力機器の上下方向に沿った位置座標に応じて前記ノズルヘッドの上下方向の移動に連動しまたは連動させないように制御する連動制御機構を有する複数チップ配列分注装置である。
【0013】
ここで、「容器群」としては、1列状に複数のウェルが配列されたカートリッジ状容器、または所定個数のウェルが所定の行間隔および列間隔で行列状に配列されたマイクロプレートを含む。マイクロプレートとしては、例えば、12行×8列の96ウェルのマイクロプレート、24行×16列の384ウェルのマイクロプレート、48行×32列の1536ウェルのマイクロプレートがあり、その標準規格行間隔(=標準規格列間隔)は、各々、9mm、4.5mm、2.25mmである。マイクロプレートの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリビニール、アクリル等の樹脂である。
【0014】
「ノズル」とは、流体の吸引吐出がなされる部分であって、流体には、気体および液体を含む。ノズルは、プランジャを有するシリンダ、または蛇腹や弾性体の変形により、流体を吸引吐出する機構と連通した流路である。また、ノズルには、装着用ノズルに装着した分注チップ等の流路も含める。また、各ノズルには、ノズル内の圧力変化を検知する圧力センサを設けるのが好ましい。
【0015】
「前記磁力機器の前記容器群に対する移動は、上下方向の移動を除き前記ノズルヘッドの移動に連動させ、前記磁力機器の上下方向の移動は、前記ノズルヘッドまたは前記磁力機器の上下方向に沿った位置座標に応じて前記ノズルヘッドの上下方向の移動に連動しまたは連動させないように制御する」ことによって、ノズルヘッドにとって磁力機器が必要な場合と、ノズルヘッドにとって磁力機器の存在がノズルヘッドの動作を妨害する可能性がある場合を分けて、前者の場合は連動させ、後者の場合には連動させないように制御することで、磁力機器の存在によるノズルヘッドの機能または動作の制限を緩和することができる。
【0016】
第2の発明は、前記連動制御機構は、前記ノズルヘッドが所定連動領域内の高さ位置にある場合には、前記磁力機器の前記容器群に対する上下方向の移動は前記ノズルヘッドの上下方向の移動に連動し、前記ノズルヘッドが前記所定連動領域よりも下側の所定非連動領域にある場合には前記ノズルヘッドの前記容器群に対する上下方向の移動に対して連動しないように制御する複数チップ配列分注装置である。
【0017】
なお、前記所定連動領域を前記所定非連動領域よりも下側に設けたのは以下の理由からである。
【0018】
「所定連動領域」は、例えば、ノズルヘッドが容器群に対し水平方向の移動を行なうことができる領域であって、磁力機器はノズルヘッドと連動して移動する領域であり、一般的には、ノズルヘッドに装着した分注チップの下端が前記容器群の各ウェルの上方の位置にある領域である。一方、「所定非連動領域」は、例えば、ノズルヘッドの分注チップの細管部の先端がウェル内に挿入された状態で、かつ細管部の適当な位置に前記磁力機器の磁石が接離可能に設けることが可能な領域、および前記ノズルヘッドの各ノズルを下降させて、該ノズルと嵌合可能なように容器群に設けたチップ収容部やチップラックに収容した各分注チップの装着用開口部に嵌合させることができる領域を含む。なお、この領域では、前記磁力機器は、前記容器群に対して不動な状態に置くのが好ましい。
【0019】
第3の発明は、前記移動機構によって水平方向に移動可能な水平移動体をさらに有するとともに、前記ノズルヘッドは該水平移動体に対し上下方向に移動可能に支持され、前記磁力機器は所定範囲で前記ノズルヘッドとは独立に前記水平移動体に対して上下方向に移動可能に支持されるとともに、前記連動制御機構は、前記磁力機器と連動して前記水平移動体に対して上下方向に移動可能に設けられ前記ノズルヘッドの上下方向の移動に応じて該ノズルヘッドが前記連動領域にある場合には該ノズルヘッドと係合し、前記ノズルヘッドが非連動領域にある場合には前記ノズルヘッドと係合しないノズルヘッド係合機構を有する複数チップ配列分注装置である。
【0020】
第4の発明は、前記ノズルヘッド係合機構は、前記ノズルヘッドに設けられた係合部と、該係合部が上下方向の所定範囲で摺動し、所定位置で係合する案内用部材とを有する複数チップ配列分注装置である。
【0021】
ここで、「係合部」とは、例えば、車輪、ローラ、突起であり、前記「案内用部材」とは、例えば、溝、長孔、レール等である。「所定位置」とは、例えば、前記所定範囲の上端である。
【0022】
第5の発明は、複数のノズルが配列されたノズルヘッドと、前記ノズルを介して気体の吸引吐出を行なう吸引吐出機構と、容器群と前記ノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記分注チップに対して相対的に接離可能となるように設けた複数個の磁石を有する磁力機器とを有するととともに、前記磁力機器の前記磁石は、前記分注チップの近傍を通り、各分注チップと交差しない曲線に沿って回転移動によって各ノズルに対し接離可能となるように設けられた複数チップ配列分注装置である。
【0023】
前記曲線は、好ましくは前記ノズルの周辺においてその水平面へ投影された場合は直線を示し列方向または行方向に沿ったものであって、例えば、円弧である。直線とは無限遠から無限遠まで延びる線であるが、「沿って接近しまたは離間することができる」のはその直線の一部の線分においてである。「該ノズルと曲線の交差」には、曲線もしくはその延長部分が、該ノズルと交差し、または該ノズルを貫通し、該ノズルに突き当たり、または該ノズルと衝突する場合を含む。「ノズル近傍」とは、ノズル内に有効な磁場を及ぼすことができる程度の近さであって、ノズルに接する場合も含む。曲線の本数は、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズル数よりも小さいことが好ましい。より好ましくは、前記ノズルの(行数+1)または(列数+1)以下である。
【0024】
「接離可能」とは、対象に対して接近しおよび離間することが可能であることを意味する。「接近」は、言い換えれば、前記ノズル近傍位置に達することである。「接離可能」とするためには、前記磁力手段を前記ノズルヘッドと異なる場所に設けて、前記移動手段を用いて磁力手段を前記ノズルに対して接近させ、離間させる場合、または、磁力手段を前記ノズルヘッドに設けて、前記移動手段とは別個に設けた接近離間手段によって行う場合、さらには、前記磁力手段を、前記移動手段の一部と、該移動手段とは異なる手段との両者を用いてノズルに対して接近させまたは離間させる場合がある。これによって、行数および列数が各々3以上、すなわち、3行以上×3列以上の行列状にノズルが配列する場合には、磁石の磁場が及ばない程度に離れた磁石の退避距離をノズル間の間隔として確保することなく、磁石が通過可能な空隙をノズル間に確保する程度に密集して集積することができることになる。なお、この磁力手段は、一般的に、ウェルが行列状に配列されたマイクロプレートと、複数のノズルが行列状に配列された1または2以上のノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記マイクロプレートとノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動手段とを有するマイクロプレート処理装置にも適用することができる。「対象」は、前記ノズルまたはノズルの軸線であり、ノズルの軸線はノズルの軸に沿って伸びる直線をいう。「磁石」には、永久磁石または電磁石を含む。
【0025】
第6の発明は、前記複数のノズルは行列状に配列され、前記容器群は、複数のウェルが行列状に配列されたマイクロプレートであり、前記ノズルヘッドのノズルに装着された全分注チップの先端は、前記マイクロプレートの一部または全部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられ、前記磁力機器は、前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2の分注チップ行または分注チップ列と隣接可能であって各々列方向または行方向に沿って配列された1または2以上の前記曲線に沿って形成された櫛歯部材と、前記分注チップに対して回転可能に設けられ1または2以上の前記櫛歯部材を連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各分注チップに対応する位置において前記各櫛歯部材に設けた前記磁石とを有する複数チップ配列分注装置である。
【0026】
ここで、「行列状」とは、列方向および行方向の2方向に沿って要素、例えば、ウェルまたはノズル等が所定の行間隔および列間隔で各々所定の行数個および列数個配列された構造をいい、前記行数および列数は各々2以上であるが、好ましくは、行数および列数は各々3以上である。なお、前記列方向および行方向は、通常直交しているが必ずしもこれに限定されず斜交していてもよい。また、各隣接する行または列間で、例えば、列間隔の半分または行間隔の半分の距離だけ配列をずらせて要素が互い違いとなるようにして、最密状に配列するような場合も含む。「行間隔」とは、行列状に配列された1の要素の中心またはその要素が設けられた行の中心線と、列方向に隣接する要素の中心またはその要素が設けられた行の中心線との間の列方向の距離であり、「列間隔」とは、マトリクス状配列された1の要素の中心またはその要素が設けられた列の中心線と、行方向に隣接する要素の中心またはその要素が設けられた列の中心線との間の行方向の距離をいう。
【0027】
ここで、「マイクロプレートの一部」の場合としては、12行×8列(=96ウェル)のマイクロプレートの場合には、例えば、2行×8列、3行×8列、4行×8列のノズルを配列したノズルヘッドの場合がある。
【0028】
第7の発明は、前記水平移動体の下側には、前記ノズルヘッドの上昇下降に応じて前記分注チップの先端からの液垂れを防止するための液垂れ防止板を前記分注チップの下側に進退可能に設けた複数チップ配列分注装置である。
【0029】
第8の発明は、複数のノズルが配列されたノズルヘッドと、前記ノズルを介して気体の吸引吐出を行なう吸引吐出機構と、容器群と前記ノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップとを有するとともに、前記ノズルヘッドは、前記ノズルの先端部の外側面に沿って設けた可撓性部材と、該ノズルの外側面であって前記可撓性部材の上側を囲みかつ摺動可能に設けたノズル摺動部と、前記ノズル摺動部または前記ノズルを相互に所定距離上下方向に移動させて前記可撓性部材を押圧可能な押圧部とをさらに有し、
押圧前の前記可撓性部材の最大外径は前記分注チップの装着用開口部に挿入可能な大きさであり、押圧後は前記可撓性部材の最大外径が、押圧前よりも増加して前記装着用開口部の内壁に密着可能な複数チップ配列分注装置である。
【0030】
ここで、前記「可撓性部材」としては、例えば、後述する円筒状の可撓性チューブ、やOリングがあり、ノズル本体の先端から抜け落ちないようにノズル本体の先端のフランジの軸方向の上側に設けられている。なお、前記押圧部によって押圧された前記可撓性部材は前記内壁に密着するので、前記押圧部による下方向の移動によって、前記ノズル本体が下方に移動しない。「所定距離」とは、前記可撓性部材が前記内壁に密着可能となる程度の距離であり、例えば、全長数センチから10数センチの分注チップに対して1mmから5mm程度である。なお、前記押圧部により押圧状態を維持するためには、該押圧部の保持機構を有することになる。「前記ノズル摺動部または前記ノズルを相互に所定距離上下方向に移動させる」のであるから、前押圧部は、前記ノズル摺動部を移動させる場合と、ノズルを移動させる場合の両方がある。
【0031】
第9の発明は、前記可撓性部材は、円筒状の可撓性チューブであって、前記押圧部の押圧により湾曲する複数チップ配列分注装置である。
なお、可撓性部材としては、例えば、シリコーンが好ましい。
【0032】
第10の発明は、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記分注チップに対して相対的に接離可能となるように設けた複数個の磁石を有する磁力機器とを有するとともに、前記磁力機器の前記容器群に対する移動は、上下方向の移動を除き前記ノズルヘッドの移動に連動し、前記磁力機器の前記容器群に対する上下方向の移動は、前記ノズルヘッドまたは前記磁力機器の上下方向に沿った位置座標に応じて前記ノズルヘッドの上下方向の移動に連動しまたは連動させないように制御する連動制御機構を有する複数チップ配列分注装置である。
【0033】
第11の発明は、前記磁力機器の前記磁石は、前記分注チップの近傍を通り、各分注チップと交差しない曲線に沿って各ノズルに対して回転移動によって接離可能となるように設けられた複数チップ配列分注装置である。
【0034】
第12の発明は、前記複数のノズルは行列状に配列され、前記容器群は、複数のウェルが行列状に配列されたマイクロプレートであり、前記ノズルヘッドのノズルに装着された全分注チップの先端は、前記マイクロプレートの一部または全部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられ、前記磁力機器は、前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2の分注チップ行または分注チップ列と隣接可能であって各々列方向または行方向に沿って配列された1または2以上の前記曲線に沿って形成された櫛歯部材と、前記分注チップに対して回転可能に設けられ1または2以上の前記櫛歯部材を連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各分注チップに対応する位置において前記各櫛歯部材に設けた前記磁石とを有する複数チップ配列分注装置である。
【発明の効果】
【0035】
第1の発明によれば、複数の分注チップに対して磁力を及ぼしかつ除去することができるような磁力機器が設けられた分注装置において、ノズルが配列されたノズルヘッドの移動と磁力機器を連動させるが、ノズルヘッドの上下方向の移動に対しては、ノズルヘッドのまたは磁力機器の上下方向に沿った位置座標に応じて、磁力機器とノズルヘッドとの間の連動の有無を制御可能としているので、ノズルヘッド独自の処理については磁力機器が巨大化することによるノズルヘッドへの影響を除去するとともに、ノズルヘッドと磁力機器とが連動すべき処理については連動させるようにできるので状況に応じた最適な処理を行なうことができる。
【0036】
第2の発明によると、ノズルヘッドが所定非連動領域にある場合には磁力機器と連動しないことによって、ノズルヘッドに対して磁力機器の磁場を及ぼす位置が固定されずに、分注チップの形状や大きさに合わせて最適な位置に磁場を及ぼすように設定することができる。また、分注チップをノズルに装着させるような場合についても、磁力機器とノズルヘッドとの連動を解除することによって処理を円滑に行なうことができる。
【0037】
第3の発明、第4の発明によると、連動制御機構をモータを新たに設けることなく簡単な機構的な構造によってノズルヘッドと磁力機器との間の連動の制御を行うことができるので、装置構造を簡単化し、運用コストを抑えることができる。。
【0038】
第5の発明によれば、前記分注チップの近傍を通り、各分注チップと交差しない曲線に沿って各ノズルに対して回転移動によって相対的に接離可能に設けているので、前記磁石の移動距離を短縮し交差する場合に比較して磁力機器の全体的な大きさを削減することができる。
【0039】
第6の発明によれば、行列状に配列された分注チップに対して、曲線に沿って形成された櫛歯部材に複数の磁石を配列し、回転移動することによって一斉に磁場を及ぼしかつ除去するようにしているので、移動可能性をもつ磁力機器およびノズルヘッドをコンパクトかつ軽量に形成することができる。したがって、移動が容易であって、全体として装置規模を軽量化かつ縮小することができる。
【0040】
第7の発明によれば、ノズルヘッドの上昇下降に応じて、液垂れ防止板を進退可能に設けているので、ノズルヘッドが水平方向に移動する場合、すなわち、ノズルヘッドが所定連動領域の場合には、分注チップの下側に液垂れ防止板を進出させて液垂れを防止し、ノズルヘッドが所定非連動領域の場合には、分注チップが液の吸引および吐出、または分注チップの装着を行う場合には、液垂れ防止板を退避させるようにして、種々の処理を可能にする。
【0041】
第8の発明によれば、前記分注チップの装着用開口部内にノズルを挿入させた後に、該ノズルに設けた可撓性部材をノズル摺動部を介して押圧して分注チップの装着用開口部の内壁に密着させるようにしている。したがって、挿入の際に、可撓性部材を摩擦力等を超える圧入力を加える必要がなく、円滑に装着することができるとともに、該可撓性部材を挿入の際に破壊することがなく、ノズルの耐久性を高めることができ、装置寿命を伸ばすことになる。また、分注チップの装着に、強圧を必要としないので、装置の軽量化およびコンパクト化を図ることができる。したがって、装置の製造費用を削減することができる。
【0042】
第9の発明によれば、前記可撓性チューブを湾曲させることで前記分注チップの装着用開口部の内壁に密着させることができるので、圧入力を低減し、気密性を高めることができる。該チューブをシリコーンで形成することによって、よりスムーズに挿入することができて、可撓性チューブの破壊を防止することができる。
【0043】
第10の発明によれば、前述した効果の他、複数の分注チップがあるにも拘らず、分注チップの装着の際の圧入力を削減して装着を円滑化し、また、装着による気密性を高めることができるとともに、装置寿命を伸ばすことができるとともに、大きな磁力機器をノズルヘッドに設けた場合でも、分注処理を円滑化することができる。さらに、ノズルの装着に強圧を必要としないので、装置を軽量化し全体として装置規模を縮小し、装置の製造を容易化することができる。
【0044】
第11の発明によれば、複数の分注チップが配列された分注装置をコンパクトに形成することができるとともに、装着を容易に行なうことができるので使用勝手が高い。
【0045】
第12の発明によれば、行列状に配列された分注チップに対して、曲線に沿って形成した櫛歯部材に複数の磁石を配列することによって回転移動によって一斉に磁場を及ぼしかつ除去するようにしているので、移動可能性をもつ磁力機器およびノズルヘッドをコンパクトに形成することができる。したがって、移動が容易であって、全体として装置規模を軽量化かつ縮小することができる。さらに、ノズルの装着に強圧を必要としないので、さらに一層装置を軽量化し、全体として、一層装置規模を縮小し、装置の製造を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る複数チップ配列分注装置の全体斜視図である。
【図2】図1に示した分注装置のノズルヘッドを含む主要部の斜視図である。
【図3】磁石の接近状態を示す図2の一部を切除して示す拡大斜視図である。
【図4】磁石の離間状態を示す図2の一部を切除して示す拡大斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るノズルヘッドを含む主要部の分解斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るノズルヘッドを含む主要部の動作を示す側面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るノズルを示す断面図である。
【図8】分注チップ装着前の本発明の第1の実施の形態に係るノズルを含む斜視図である。
【図9】分注チップ装着後の本発明の第1の実施の形態に係るノズルを含む斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
続いて、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態に係る複数チップ配列分注装置について説明する。
【0048】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る複数チップ配列分注装置10の全体を示す斜視図である。該複数チップ配列分注装置10はノズルヘッド12と、容器群18M、18A,18B,18C,18Dが設けられたステージ14と、前記容器群18M,18A-Dまたはステージ14と前記ノズルヘッド12との間を相対的に移動可能とする移動機構とを有する。前記移動機構は、X軸移動機構16xと、Y軸移動機構16yと、X軸およびY軸に沿った水平方向に沿って移動可能な水平移動体16上に設けられて前記ノズルヘッド12をZ軸に沿って移動させるZ軸移動機構16zとを有する。
【0049】
前記ノズルヘッド12は、8列×3行に配列された24本のノズル70(図5参照)と、その下側で装着用開口部において着脱可能に装着された分注チップ20と、該ノズルと連通するシリンダが24本収容されたノズルヘッド基部32と、前記シリンダ内を摺動するピストンが先端に設けられたピストンロッド33(図2参照)と結合して該ピストンロッドを上下方向に駆動する駆動板31と、該駆動板31と螺合しモータ28により回転駆動されるボール螺子30と、前記駆動板31を案内する案内棒35とを有する。ここで、シリンダを内蔵したノズルヘッド基部32、ボール螺子30、モータ28等は、前記ノズルヘッド12に設けられた吸引吐出機構34に相当する。
【0050】
前記水平移動体16には、前記ノズルヘッド基部32と螺合して前記ノズルヘッド12を前記容器群またはステージ14に対してZ軸方向に沿って移動可能とするボール螺子24と、前記ノズルヘッド12のZ軸方向の移動を案内する2本の案内柱26と、該ボール螺子24を回転駆動するモータ21と、これらのものが取り付けられるととともに前記移動機構16xの水平移動支持体15に吊り下げられてステージ14上をX軸方向およびY軸移動機構16yによるY軸方向、したがって水平方向に移動可能に支持される枠体23とを有する。
【0051】
なお、符号36は、X軸移動機構16xに属し、前記水平移動体16を前記水平移動支持体15上をX軸方向に駆動するものである。また、前記ボール螺子24、案内柱26およびモータ21は、Z軸移動機構16zに相当する。
【0052】
前記水平移動体16には、前記Z軸移動機構16zによる移動とは独立して、磁力機器22が前記案内柱26に沿ってZ軸方向に移動可能に設けられている。
該磁力機器22は、前記ノズルヘッド12に設けられた各ノズル70に装着された複数の分注チップ20の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記分注チップ20に対して接離可能となるように設けられた複数個(この例では24個)の磁石40を有する。
【0053】
図2は、図1に示した水平移動体16の一部、ノズルヘッド12および磁力機器22を含む複数チップ配列分注装置10の主要部を拡大して示したものである。
【0054】
ノズルヘッド12には、ノズル70が8列(Y軸方向に沿って)×3行(X軸方向に沿って)の行列状に配列されるとともに内部に各ノズル70と連通する24本のシリンダが内蔵されたノズルヘッド基部32と、該各ノズル70に装着されて、8列×3行の行列状に配列された全24本の分注チップ20と、前記ノズルヘッド基部32に内蔵された各シリンダと連通し前記ピストンロッド33が貫通する24個の孔が設けられた天板29と、該天板29の縁に軸支されたローラ60とを有している。
【0055】
前記水平移動体16は、前記枠体23と、該枠体23に取り付けられた裏板56と、該枠体23と連結した底板53の下側に設けられ、前記ノズルヘッド12のノズル70に装着した分注チップ20の下側に液垂れ防止板51を進退可能に支持する液垂れ防止板支持レール54と、前記磁力機器22をその下側で支持して、Z軸移動機構16zの前記ボール螺子24とは接触せずに貫通する貫通孔25が設けられ前記案内柱26に案内されてZ軸方向に移動可能に設けられた磁力機器支持板48と、前記案内柱26を囲むように前記底板53に設けられて前記磁力機器支持板48に空けられた該案内柱26が貫通する孔よりも大きな外径をもち該磁力機器支持板48をその下限位置で停止させる停止用管52とを有している。
【0056】
前記磁力機器支持板48には、前記ノズルヘッド12に設けられた係合部としての前記ローラ60が挿入されて該ローラ60を、前記Z軸移動機構による移動とは独立であってZ軸方向の所定範囲の相対的な移動のみに規制するように、Z軸方向に沿った長孔58aが穿設された案内用部材58の下端で取り付けられる。ここで、「所定範囲」とは、長孔58aの長手方向の長さの範囲である。
【0057】
前記磁力機器22は、前記磁力機器支持板48に固定して取り付けられ、磁力を及ぼす際には24本の装着された分注チップ20群を囲むように設けられた多角形状の2枚の側板42と、該2枚の側板42を連結する連結棒49、連結板46、および連結枠64(図5等参照)と、該側板42に取り付けられた磁石回転用モータ44とを有する。
【0058】
さらに該磁力機器22は、前記列方向(または行方向)に沿って伸び2の分注チップ列(または分注チップ行)と隣接可能であって各々列方向(または行方向)に沿って1列おきに配列された複数個(この例では4個)の円弧状に沿って形成された櫛歯部材38と、該分注チップ20の細管部20aに対して前記磁石回転用モータ44によって回転軸43と連結されて回転駆動され複数個(この例では4個)の櫛歯部材38を連結した支持部材66(図3等参照)と、隣接する2の前記ノズル列(またはノズル行)に属する各分注チップ20の細管部20aに対応する位置において前記各櫛歯部材38に設けた磁石40とを有する。すなわち、前記磁石40は、各櫛歯部材38に、複数個(この例では3個)ずつ行間隔(または列間隔)で配列されていることになる。
【0059】
ここで、前記側板42の裏側には、磁石40が前記各分注チップ20から離れていることを検知する磁石離間センサ62と、前記櫛歯部材38の回転を所定の中心角の範囲に限定するために前記支持部材66と係合して櫛歯部材の回転を阻止する2個のストッパ47とが設けられている。なお、図2は、前記磁石40が各分注チップ20の細管部20aに接近している状態を示す。
【0060】
図3は、図2において、前記磁力機器22の2枚の前記側板42、連結棒49、連結板46、および案内用部材58を除去し、前記液垂れ防止板支持レール54を切除して示す拡大斜視図である。符号51は液垂れ防止板であり、ノズルヘッド12の上昇下降に連動するリンク機構27によって自動的に進退可能である。
【0061】
図3は、図2と同様に、前記磁力機器22の円弧状櫛歯部材38に設けられた各磁石40が前記分注チップ20の各細管部20aに接近して前記各細管部20a内部に磁力を及ぼす状態を示すものである。ここで符号66は、4個の前記櫛歯部材38を連結した支持部材を示すものである。
【0062】
分注チップ20は、先端に口部20cが設けられた細管部20a、前記細管部20aと連通し前記ノズル70が装着する装着用開口部20dを有する太管部20bとを有し、前記磁石40は、前記細管部20aに磁力を及ぼしかつ除去することが可能である。
【0063】
符号51は液垂れ防止板であって、24本の前記分注チップ20群の下方に進出して前記ノズルヘッド12の移動の際に前記分注チップ20の先端に設けた口部20cからの液垂れを防止し、前記マイクロプレート等の容器群に対して液体を吸引吐出する際には、前記分注チップ20の下方から退出するように、前記リンク機構27を用いて、前記ノズルヘッド12の上昇および下降に応じて自動的に機構的に制御するものである。
【0064】
図4は、図3と同様に、図2において、前記磁力機器22の2枚の前記側板42、連結棒49、連結板46、および案内用部材58を除去し、前記液垂れ防止板支持レール54を切り欠いて示す拡大斜視図である。
【0065】
図4は、図3と異なり、前記磁力機器22の円弧状櫛歯部材38を前記モータ44により回転して各磁石40を前記分注チップ20の各細管部20aから離間させて細管部20a内部から磁力を除去した状態を示す。符号50は前記モータ44の回転軸43と前記支持部材66との連結部を示す。
【0066】
図5は、前記磁力機器22およびノズルヘッドの分解斜視図である。
前記磁力機器支持板48は、前記水平移動体16に対してZ軸方向に移動可能に設けられており、該磁力機器支持板48には、前記磁力機器22と、前記案内用部材58が固定して設けられており、該案内用部材58に設けた長孔58aには、前記ノズルヘッド12の基部32に設けられた前記係合部としてのローラ60が摺動可能に設けられている。図5に示す前記ノズルヘッド12のZ座標よりも大きなZ座標を持つ位置では、前記磁力機器支持板48、したがって前記磁力機器22は、前記ノズルヘッド12と連動することになる。すなわち、図5で示した前記ローラ60の位置より高い位置は、連動領域であり、前記ノズルヘッド12がそれ未満のZ座標位置で、前記長孔58aの下端までは、前記ノズルヘッド12の移動に前記磁力機器22は連動せず、非連動領域ということになる。
【0067】
図6は、第1の実施の形態例に係る複数チップ配列分注装置10のノズルヘッド12および水平移動体16の側面図を示す。
【0068】
図6(a)は、前記ノズルヘッド12のノズル70を下降させて24本の分注チップ20を前記ノズル70に装着した場合を示すものであり、前記ノズルヘッド12のローラ60は前記案内用部材58の長孔58aの下端、すなわち、該ノズルヘッド12の最下端位置を示すものである。この位置で、前記ローラ60は係止して更なる下降は不可能になる。
【0069】
図6(b)は前記ノズルヘッド12をZ軸に沿って上昇させた後、Y軸方向に移動させてマイクロプレート18Mの8列×12行に配列された96個のウェルの内、8列×3行分のウェルに前記分注チップ20の細管部20aの口部20cを一斉に下降かつ挿入して、液体の吸引および吐出を一斉に行なう場合を示している。この分注チップ20の形状および長さを用いた場合には、前記ノズルヘッド12の前記ローラ60は前記案内用部材58の長孔58aの中央辺りに位置することになる。
【0070】
図6(c)では、前記ノズルヘッド12をさらに、Z軸方向に沿って上昇させて、前記案内用部材58に穿設した長孔58aの上端よりやや低い位置に到達した状態を示す。この位置は、分注チップ20の細管部20aの長さに依存して定められる磁力を及ぼす領域である。この位置で、前記磁力機器22の前記円弧状に湾曲した櫛歯部材38を回転させて前記各細管部20aに接近させることで該細管部20aに磁力を及ぼしまたは除去する。磁力機器22によって前記細管部20a内に磁力を及ぼすことができるZ軸方向に沿った領域は、前記分注チップ20の細管部20aの長さや形状にも依存する。この図6(a),図6(b)、図6(c)の前記ノズルヘッド12のZ軸に沿った位置は、磁力機器22とノズルヘッド12とが連動しない非連動領域に相当する。
【0071】
図6(d)では、前記ノズルヘッド12をさらに、Z軸方向に沿って上昇させた状態であって、前記ノズルヘッド12の前記ローラ60は、前記案内用部材58に空けた長孔58aの上端に位置し、前記ローラ60は前記長孔58aと係合し、更なるノズルヘッド12の上昇によって前記磁力機器支持板48は該ローラ60に吊り下げられることになる。したがって、前記磁力機器22は、前記ノズルヘッド12の上下方向の移動に連動することになる。この図6(d)の前記ノズルヘッド12のZ軸に沿った位置は、磁力機器22とノズルヘッド12とが連動する連動領域に相当する。
【0072】
なお、前記液垂れ防止板51は、図6(a),(b),(c)においては、前記リンク機構27によって前記ノズルヘッド12の24個の分注チップ20群の下側の領域から退避された位置にあり、図6(d)では、前記リンク機構27によって前記ノズルヘッド12の24個の分注チップ20群の下側の領域に進出した位置にあり、前記各分注チップ20からの液垂れを防止することができることになる。
【0073】
図7は、本発明の実施の形態に係る2個のノズル70を示す断面図である。
この例では、該ノズル70は全体としては24個が、8列×3行の行列状に前記基部32の内部に設けられた基板32aに取り付けられている。
【0074】
図7(a)、図7(b)に示すように、該ノズル70は、内部を気体が通過可能なノズル本体72と、該ノズル本体72の先端部の外側面を囲むように設けた可撓性部材であるシリコーンで形成された可撓性チューブ78とを有する。さらに、該ノズル本体72の外側面であって前記可撓性チューブ78の上側を囲みかつ摺動可能に設けたノズル摺動部74と、前記移動機構16x、16y、16zの移動とは独立に、複数の前記ノズル摺動部74を前記ノズル70に対して所定距離上下方向に摺動させて前記可撓性チューブ78を押圧可能な押圧部80とをノズルヘッド12に設ける。
【0075】
前記押圧部80は、図示しないモータ、カム機構、リンク機構と連結して上下方向に移動可能とし、前記ノズル摺動部74と前記ノズル本体72との間に設けた圧縮ばね76によって、上方向の原点に復帰させる。または、圧縮ばね76を用いずに、モータを用いて前記ノズル摺動部74を上下方向に移動させる機構を設ける。
【0076】
図7(a)は、前記ノズル摺動部74が原点にある状態を示し、前記可撓性チューブ78は伸張した状態を表す。この状態において、前記分注チップの装着用開口部内に前記ノズル70のノズル本体72の先端部を挿入させる。すると、可撓性チューブ78は分注チップの装着用開口部の内壁と接触して、摩擦力を生ずることなく、前記ノズル本体72の先端部を前記分注チップの装着用開口部内に円滑に挿入させることができる。
【0077】
図7(b)は、前記ノズル摺動部74を前記押圧部80によって、前記ノズル摺動部74を所定距離下方向に移動させて押圧した状態を示し、前記可撓性チューブ78は湾曲した状態を表す。この状態において、前記可撓性チューブ78の外側面が前記分注チップの装着用開口部の内壁に密着することになる。
【0078】
図8は、分注チップ120に本実施の形態に係るノズル70を装着する前で前記可撓性チューブ78が湾曲していない状態を示す。図9は、分注チップ120を装着した後、前記押圧部80を下方向に移動させて可撓性チューブ78を膨らませて分注チップの装着用開口部120dの内壁に密着させた状態を示す。
【0079】
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解するために具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、行列状として8列×12行のマイクロプレートについてのみ説明したが、これに限られるものではなく、種々の規格を持つマイクロプレートに対応することができる。また、ノズルの配列についても8列×3行についてのみ説明したがこれに限られるものでもない。なお、「行」と「列」とは便宜的なものであって、取り替えて適用することができる。
【0080】
押圧部は、ノズル摺動部のみを移動させる場合について説明したが、この場合に限られず、ノズル本体を移動させる場合もある。可撓性部材としては、可撓性チューブについてのみ説明したが、Oリングを用いることもできる。連動制御機構についても、1例を挙げたものであって、係合部、係合部の取り付け位置、案内用部材についてもこれらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る複数チップ配列分注装置は、種々の溶液の処理が要求される分野、例えば、工業分野、食品、農産、水産加工等の農業分野、製薬分野、衛生、保険、免疫、疾病、遺伝等を扱う医療分野、化学若しくは生物学等の分野等、あらゆる分野に関係するものである。本発明は、特に、多数の対象に対して、並行して多数の試薬や物質を用いた一連の処理を所定の順序で連続的に実行する場合に有効である。
【符号の説明】
【0082】
10 複数チップ配列分注装置
12 ノズルヘッド
14 ステージ
16 水平移動体
16x、16y、16z X軸、Y軸、Z軸移動機構
18M、18A−18D 容器群
20,120 分注チップ
22 磁力機器
24 ボール螺子
32 ノズルヘッド基部
38 櫛歯部材
40 磁石
51 液垂れ防止板
58 案内用部材
60 ローラ(係合部)
70 ノズル
78 可撓性チューブ(可撓性部材)
80 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが配列されたノズルヘッドと、前記ノズルを介して気体の吸引吐出を行なう吸引吐出機構と、容器群と前記ノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記分注チップに対して相対的に接離可能となるように設けた複数個の磁石を有する磁力機器とを有するととともに、
前記磁力機器の前記容器群に対する移動は、上下方向の移動を除き前記ノズルヘッドの移動に連動し、前記磁力機器の前記容器群に対する上下方向の移動は、前記ノズルヘッドまたは前記磁力機器の上下方向に沿った位置座標に応じて前記ノズルヘッドの上下方向の移動に連動しまたは連動させないように制御する連動制御機構を有する複数チップ配列分注装置。
【請求項2】
前記連動制御機構は、前記ノズルヘッドが所定連動領域内の高さ位置にある場合には、前記磁力機器の前記容器群に対する上下方向の移動は前記ノズルヘッドの前記容器群に対する上下方向の移動に連動し、前記ノズルヘッドが前記所定連動領域よりも下側の所定非連動領域にある場合には前記ノズルヘッドの前記容器群に対する上下方向の移動に対して連動しないように制御する請求項1に記載の複数チップ配列分注装置。
【請求項3】
前記移動機構によって水平方向に移動可能な水平移動体をさらに有するとともに、前記ノズルヘッドは該水平移動体に対し上下方向に移動可能に支持され、前記磁力機器は所定範囲で前記ノズルヘッドとは独立に前記水平移動体に対して上下方向に移動可能に支持されるとともに、前記連動制御機構は、前記磁力機器と連動して前記水平移動体に対して上下方向に移動可能に設けられ前記ノズルヘッドの上下方向の移動に応じて該ノズルヘッドが前記連動領域にある場合には該ノズルヘッドと係合し、前記ノズルヘッドが前記非連動領域にある場合には前記ノズルヘッドと係合しないノズルヘッド係合機構を有する請求項2に記載の複数チップ配列分注装置。
【請求項4】
前記ノズルヘッド係合機構は、前記ノズルヘッドに設けられた係合部と、該係合部が上下方向の所定範囲で摺動し、所定位置で係合する案内用部材とを有する請求項3に記載の複数チップ配列分注装置。
【請求項5】
複数のノズルが配列されたノズルヘッドと、前記ノズルを介して気体の吸引吐出を行なう吸引吐出機構と、容器群と前記ノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記分注チップに対して相対的に接離可能となるように設けた複数個の磁石を有する磁力機器とを有するととともに、
前記磁力機器の前記磁石は、前記分注チップの近傍を通り、各分注チップと交差しない曲線に沿って回転移動によって各ノズルに対し接離可能となるように設けられた複数チップ配列分注装置。
【請求項6】
前記複数のノズルは行列状に配列され、前記容器群は、複数のウェルが行列状に配列されたマイクロプレートであり、前記ノズルヘッドのノズルに装着された全分注チップの先端は、前記マイクロプレートの一部または全部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられ、
前記磁力機器は、前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2の分注チップ行または分注チップ列と隣接可能であって各々列方向または行方向に沿って配列された1または2以上の前記曲線に沿って形成された櫛歯部材と、前記分注チップに対して回転可能に設けられ1または2以上の前記櫛歯部材を連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各分注チップに対応する位置において前記各櫛歯部材に設けた前記磁石とを有する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の複数チップ配列分注装置。
【請求項7】
前記水平移動体の下側には、前記ノズルヘッドの上昇下降に応じて前記分注チップの先端からの液垂れを防止するための液垂れ防止板を前記分注チップの下側に進退可能に設けた請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の複数チップ配列分注装置。
【請求項8】
複数のノズルが配列されたノズルヘッドと、前記ノズルを介して気体の吸引吐出を行なう吸引吐出機構と、容器群と前記ノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップとを有するとともに、
前記ノズルヘッドは、前記ノズルの先端部の外側面に沿って設けた可撓性部材と、該ノズルの外側面であって前記可撓性部材の上側を囲みかつ摺動可能に設けたノズル摺動部と、前記ノズル摺動部または前記ノズルを相互に所定距離上下方向に摺動させて前記可撓性部材を押圧可能な押圧部とをさらに有し、
押圧前の前記可撓性部材の最大外径は前記分注チップの装着用開口部に挿入可能な大きさであり、押圧後の前記可撓性部材の最大外径が、押圧前よりも増加して前記装着用開口部の内壁に密着可能な複数チップ配列分注装置。
【請求項9】
前記可撓性部材は、円筒状の可撓性チューブであって、前記押圧部の押圧により湾曲する請求項8に記載の複数チップ配列分注装置。
【請求項10】
前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルに装着された複数の分注チップの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように前記分注チップに対して相対的に接離可能となるように設けた複数個の磁石を有する磁力機器とを有するとともに、前記磁力機器の前記容器群に対する移動は、上下方向の移動を除き前記ノズルヘッドの移動に連動し、前記磁力機器の前記容器群に対する上下方向の移動は、前記ノズルヘッドまたは前記磁力機器の上下方向に沿った位置座標に応じて前記ノズルヘッドの上下方向の移動に連動しまたは連動させないように制御する連動制御機構を有する請求項8または請求項9に記載の複数チップ配列分注装置。
【請求項11】
前記磁力機器の前記磁石は、前記分注チップの近傍を通り、各分注チップと交差しない曲線に沿って各ノズルに対し回転移動によって接離可能となるように設けられた請求項8ないし請求項10のいずれかに記載の複数チップ配列分注装置。
【請求項12】
前記複数のノズルは行列状に配列され、前記容器群は、複数のウェルが行列状に配列されたマイクロプレートであり、前記ノズルヘッドのノズルに装着された全分注チップの先端は、前記マイクロプレートの一部または全部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられ、
前記磁力機器は、前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2の分注チップ行または分注チップ列と隣接可能であって各々列方向または行方向に沿って配列された1または2以上の前記曲線に沿って形成された櫛歯部材と、前記分注チップに対して回転可能に設けられ1または2以上の前記櫛歯部材を連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各分注チップに対応する位置において前記各櫛歯部材に設けた前記磁石とを有する請求項8乃至請求項11のいずれかに記載の複数チップ配列分注装置。

【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68491(P2013−68491A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206657(P2011−206657)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】