説明

複数成分の組み合わせを用いる加齢性黄斑変性の処置

本発明は、加齢性黄斑変性(AMD)に関する現行の処置レジメンを増強するための方法に関する。本発明の方法は、加齢性黄斑変性(AMD)組成物を抗酸化剤組成物とともに眼内送達することを包含する。あるいは、本発明の方法は、加齢性黄斑変性(AMD)に関する他の処置方法と組み合わせた、毎日の眼用ビタミン消費レジメンを包含する。本出願は、黄斑変性を処置するための方法を提供する。この方法は、治療上有効な量の酢酸アネコルタブを、毎日の眼用ビタミンレジメンと組み合わせて投与する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年6月20日に出願されたU.S.S.N.60/480,054からの優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、眼用ビタミンおよび黄斑変性の分野に関する。より具体的には、本発明は、現行の黄斑変性処置を、毎日の眼用ビタミン消費レジメンを用いて、または抗酸化剤組成物を眼内に注射することによって、増強する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の説明)
加齢性黄斑変性(AMD)は、65歳を超える人々における、視力の不可逆的な喪失の主な原因である。AMDが発症すると、眼の後方にある光感受性の光受容体細胞、光受容体細胞の下にあって光受容体細胞を代謝的に支持する色素上皮細胞、およびこれらの細胞が提供する鮮明な中心視力が、次第に喪失される。年齢は、AMDの発症に対する主要な危険因子である:AMDが発症する確率は、55歳以降で3倍になる。喫煙、薄い虹彩の色、性別(女性の方が危険が高い)、肥満症、およびUV放射線への繰り返しの曝露もまた、AMDの危険性を増加させる。
【0004】
栄養剤は、薬剤市場の成長中の局面である。AMD(浸出型)のような疾患については、補助的な抗酸化剤および亜鉛での介入が、この疾患のいくつかの段階の進行を遅くすることが示された。加齢性眼疾患研究(AREDS,NIH)は、AMDの進行した段階に対する、抗酸化剤と他の成分との毎日の経口補充を用いる、明白な臨床的利点を示した。この研究において使用される処方箋(現在、「AREDS処方箋」と称される)は、一般に、ビタミンA、ビタミンC、およびビタミンE、ならびに鉱物である亜鉛および銅を含有する。現行の考えは、ゼアキサンチンおよび/またはルテインのような化合物での補充が、網膜に対する青色光の光保護を回復させること、および光受容において(特に、高輝度において)発生するフリーラジカルからの光酸化的損傷を減少させることによって、神経保護効果を与えるということである。
【0005】
Ocuvite(登録商標)、PreserCisionTMおよびICaps(登録商標)のような、AREDS研究の知見を売り込む製品は、ビタミンA、ビタミンC、およびビタミンE、ならびに鉱物である亜鉛および銅を含有する処方物を与える。他の眼用ビタミン処方物は、ルテインおよびゼアキサンチン、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、セレン、およびマンガンまたは植物由来の抗酸化剤(例えば、ローズマリーにおいて見出されるカルノシン酸(carnosic acid)およびカルノゾル(carnosol)、果実および植物において代表的には見出される他のポリフェノール類およびポリフェノール性バイオフラボノイド)、または必須脂肪酸(DHA(ドコサヘキサエン酸)など)(これは、光受容体膜を構成し、そしてAREDS成分に加えて抗酸化剤の特性を保有する)、あるいはこれらの何らかの組み合わせを含有し得る。前提は、経口補充が、罹患した眼または年配の眼において消耗されたことが既知であるこれらの化合物を正常な生理学的レベルに回復させ、これによって、眼の重要な領域(網膜、および特に、黄斑)における神経保護効果を与えるかまたは再生することである。不運なことに、経口投与は、単独では、消耗した眼の栄養分レベルを回復するためには遅い手段であり、全身輸送および膜内外移動に大いに依存する。
【0006】
眼用ビタミン由来の抗酸化剤および/またはAMDについての他の処置にの、より信頼性がありかつより均一な利点は、栄養補充という代替の手段によって、達成され得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、治療上有効な量の酢酸アネコルタブを、毎日の眼用ビタミンレジメン、または連続的に投与される眼用ビタミンレジメンと組み合わせて投与することによって、黄斑変性を処置するための方法を提供することによって、先行技術の上記欠点および他の欠点を克服する。本発明の好ましい局面において、この酢酸アネコルタブは、眼内カニューレ(例えば、米国特許第6,413,245号に開示されるカニューレ)を介して投与されるか、または眼内に挿入されるデポー剤(例えば、米国特許第6,416,777号;同第6,413,540号に記載されるデポー剤)内に配置される。
【0008】
本発明は、治療上有効な量の酢酸アネコルタブと、少なくとも1種の抗酸化剤を含む治療上有効な量の抗酸化剤組成物とを投与することによって、黄斑変性を処置するための方法をさらに提供する。一般に、両方の組成物は、眼内カニューレによって投与され、薬物と抗酸化剤との両方のための「自然な」デポー剤を生じる(溶解またはバイオアベイラビリティを制御するための任意の必要な方法を伴う)。これらの2つの組成物は、同時に投与され得るか、または酢酸アネコルタブが上記カニューレを介して注射され得、次いで、この酢酸アネコルタブが患者の眼内に位置した後に、抗酸化剤組成物が、このカニューレを介して注射され得る。あるいは、この抗酸化剤組成物は、酢酸アネコルタブの注射の直前に、眼に注射され得る。酢酸アネコルタブ組成物および抗酸化剤組成物が、デポー剤(例えば、米国特許第6,416,777号;同第6,413,540号に記載されるようなデポー剤)内に配置され得ることが、さらに企図される。
【0009】
好ましい実施形態において、上記抗酸化剤組成物は、ビタミンC、ビタミンE、β−カロテン、ならびに酸化亜鉛および酸化銅を含む。特に好ましい実施形態において、この抗酸化剤組成物は、眼用ビタミンのためのAREDS処方を含有する。例えば、抗酸化剤の重量比は、例えば、限定されないが、AREDS処方箋によって提供されるような、約48.054%のビタミンC、約42.526%のビタミンE、約1.850%のβ−カロテン、約7.400%の亜鉛(代表的に、酸化亜鉛として)、および約0.170%の銅(酸化第二銅として)を含み得る。他の好ましい実施形態において、上記抗酸化剤組成物は、上記成分および以下の成分の1種以上のうちの、いずれか1種または全てを含んでもよく、全く含まなくてもよい:マンガン、クロム、ルテイン、ゼアキサンチン(ICaps(登録商標)L&Zにおいてのような)、葉酸、ローズマリーもしくはその抗酸化剤、または他の植物由来の抗酸化剤(ポリフェノール性バイオフラボノイドが挙げられる)、DHAもしくは他の必須脂肪酸、あるいはさらなるビタミンB。
【0010】
本発明はまた、移植されたデポー剤またはレザバから出る速度を制御する送達方法を包含し、この方法は、局所濃度が非毒性であること、および上記抗酸化剤の送達の持続時間が、移植された酢酸アネコルタブの持続時間に相関することを確実にする。
【0011】
別の局面において、本発明の方法は、薬学的処置または外科的処置と組み合わせた、毎日の眼用ビタミン消費レジメンを包含する。この薬学的処置または外科的処置は、当該分野において記載されるような任意の処置(例えば、本明細書中に記載される処置であるが、これらに限定されない)であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
AMDを処置するための多くの方法が、現在記載されている。このような方法としては、ほんの少数を挙げれば、キナーゼインヒビターを投与すること(例えば、米国特許第6,559,173号;同第6,548,503号);VEGFインヒビターを投与すること(例えば、米国特許第6,114,320号;同第6,426,335号;同第6,448,277号);メタロプロテアーゼインヒビターを投与すること(米国特許第6,569,855号;同第6,566,381号);インテグリンアンタゴニストを投与すること(例えば、米国特許第6,531,494号;同第6,386,174号);酢酸アネコルタブを投与すること(米国特許第6,297,228号;同第5,770,592号;同第5,679,666号);光力学療法(AsraniおよびZeimer,Br J Ophthalmol,79(8):776−770、1995年8月;Asraniら、Invest Ophthalmol.Vis Sci,38(13);2702−2710,1997年12月;Husainら、Ophthalmology,104(8):242−1250,1997年8月;Linら、Curr Eye Res,13(7):513−522、1994年7月);および湿潤性AMDを処置するための経瞳孔治療(Archives of Ophthalmology and Acta Ophthalmologica Scandinavica)が挙げられる。
【0013】
本発明は、黄斑変性の処置のための他の公知の治療を、抗酸化剤の投与と、別の治療と組み合わせた毎日の眼用ビタミンレジメンを介するか、あるいは抗酸化剤の局所送達(眼への注射(硝子体内注射、テノン嚢下注射、結膜下注射、眼周囲注射、眼球後注射、強膜近傍注射)を介してか、または眼内遅延放出デバイスもしくは眼内移植物を介して)によってかのいずれかで、組み合わせる手段を提供する。上に列挙された治療、および黄斑変性を処置するための他の記載された方法が、本明細書中に記載される併用療法において、使用され得る。
【0014】
AREDS研究(種々の段階のAMD患者約4700人における、10年間の、11施設共同の二重盲検臨床試験)は、補充(毎日500[最低限452]mgのビタミンC、400IUのビタミンE、15[実際の最低限17.4]mgのβ−カロテン、80[実際の最低限69.6]mgの酸化亜鉛、および毎日2[実際の最低限1.6]mgの酸化第二銅の経口服用)により、進行型AMDを発症することについて高リスクの群(カテゴリー3および4)において、進行型AMDへの進行が約28%減少し(新生血管形成、出血、中枢地図状萎縮などの処置によって測定した場合)、視力の喪失(視力の15文字(15−letter)の低下として規定される)が約21%減少することを見出した。本発明は、疾患を処置する現行の侵襲性の方法を、眼用ビタミン補充と組み合わせることによって、AMDに対する現行の処置の効果を増強する手段を提供する。あるいは、本発明は、抗酸化剤「カクテル」を現行の処置と同時投与することによって、AMDを処置するための方法を提供する。この抗酸化剤は、眼に薬学的組成物を投与する前に投与されても、この薬学的組成物と同時に投与されても、徐放性微小カプセル化ビーズレット内で投与されてもよい。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的組成物」とは、治療上有効な量の化合物を薬学的ビヒクル中に含有しており、注射の型(硝子体内注射、テノン嚢下注射、結膜下注射、眼周囲注射、眼球後注射、強膜近傍注射)のための特別なカニューレを用いる眼への注射によって、あるいは眼内遅延放出デバイスまたは眼内移植物もしくは眼周囲移植物を介して、AMD患者の眼に直接投与するために適切な、組成物をいう。本発明の好ましい局面において、この薬学的組成物において使用される化合物は、酢酸アネコルタブであり得る。
【0016】
抗酸化剤「カクテル」の各構成成分の投薬量は、正常な眼(一般に、網膜または黄斑の領域)において各成分について見出される、正常な生理学的レベルに達するか、またはこのレベルに近付くべきである。抗酸化剤の微小カプセル化は、よりよい徐放を提供し得、そして注射部位における細胞毒性を防止し得る。
【0017】
他の実施形態において、本発明は、薬学的調製物を用いるAMDの処置の有効性を、このような処置に毎日の眼用ビタミンレジメンを補充することによって増強する、手段を提供する。この実施形態によれば、AMD患者は、毎日の眼用ビタミン補充レジメンを、薬学的調製物での処置を受ける前のある時点で開始し得、そしてこの毎日のビタミン使用を、この処置の経過の間中、無期限に続け得る。事前の使用は、過剰なフリーラジカルの発生の確率が高いプロセス(PDTなど)について、特に推奨される。あるいは、この患者は、毎日の眼用ビタミン補充レジメンを、薬学的調製物での処置の開始と同時にか、または同日に開始し得る。しかし、毎日の眼用ビタミン補充レジメンは、患者が薬学的調製物での処置を開始した後の任意の時点で開始し、そしてこの処置の経過の間中無期限に継続する場合に、有効であると考えられる。
【0018】
本明細書中に開示されそして特許請求される組成物および/または方法の全ては、本開示を考慮して、過度の実験を行うことなく作製および実施され得る。本発明の組成物および方法は、好ましい実施形態を考慮して記載されているが、これらの組成物および/または方法、ならびに本明細書中に記載される方法の工程もしくは工程の順序に対して、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、変化形が適用され得ることが、当業者に明らかである。より具体的には、化学的におよび構造的に関連する特定の薬剤が、類似の結果を達成するために、本明細書中に記載される薬剤の代わりに使用され得ることが、明らかである。当業者に明らかな、このような置換および改変の全ては、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると考えられる。
【0019】
(参考文献)
以下の参考文献は、本明細書中に記載されるものに対する例示的な手順の補遺または他の細部の補遺を提供する程度まで、本明細書中に参考として特に援用される。
【0020】
米国特許
【0021】
【表1】

他の刊行物
【0022】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄斑変性を処置するための方法であって、該方法は、
治療上有効な量の酢酸アネコルタブを、毎日の眼用ビタミンレジメンと組み合わせて投与する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記酢酸アネコルタブを、眼内カニューレを介して投与する、方法。
【請求項3】
黄斑変性を処置するための方法であって、該方法は、
治療上有効な量の酢酸アネコルタブと、少なくとも1種の抗酸化剤を含む治療上有効な量の抗酸化剤組成物とを投与する工程
を包含し、該投与は、眼内カニューレによる、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記酢酸アネコルタブ、前記抗酸化剤組成物、またはその両方のいずれかを、送達を維持することが可能な移植物によって投与し、該移植物は、眼移植物、眼周囲移植物、強膜近傍移植物などである、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記抗酸化剤組成物は、ビタミンC、ビタミンE、β−カロテン、および酸化亜鉛を含む、方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であって、前記投与は、同時投与である、方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、前記酢酸アネコルタブを最初に投与し、前記抗酸化剤組成物を2番目に投与する、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、前記抗酸化剤組成物は、約48%のビタミンC、約42.5%のビタミンE、約1.9%のβ−カロテン、約7.4%の亜鉛、および約0.2%の銅という量と等価である比率の抗酸化剤からなる混合物を含む、方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法であって、前記抗酸化剤は、葉酸、ローズマリーもしくはその抗酸化剤、またはポリフェノール性バイオフラボノイドが挙げられる他の植物由来の抗酸化剤、DHAもしくは他の必須脂肪酸、あるいはさらなるビタミンBを含む、混合物を含む、方法。
【請求項10】
請求項3に記載の方法であって、前記抗酸化剤組成物は、ゼアキサンチンを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記抗酸化剤組成物は、ルテインをさらに含む、方法。
【請求項12】
黄斑変性を処置するための方法であって、該方法は、
薬学的処置または外科的処置と組み合わせた、毎日の眼用ビタミン消費レジメン
を包含する、方法。

【公表番号】特表2007−521274(P2007−521274A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517422(P2006−517422)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/019577
【国際公開番号】WO2004/112796
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】