説明

複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプ

【課題】複数本の発光管を有し、一の発光管から封入物質がリークしても外球内の構造物の汚染が比較的少ないセラミックメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】セラミック・メタルハライドランプ(10)は、選択的に1本の発光管が点灯する複数本の発光管(4-1, 4-2)と、各発光管を夫々取り囲む円筒形の内管(17A-1, 17A-2)と、発光管及び内管を収納する外球(2)とを備え、内管が、内管と外球との間で連通する流通経路(17Ah)を備え、流通経路が、一の発光管から封入物質がリークした際に、封入物質が、発光管を取り囲む内管から外球内に拡散するのを減少させ、且つ外球内に拡散した封入物質が他の発光管を取り囲む内管内に流入するのを減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプに関する。更に具体的には、本発明は、複数本の発光管を有し、一の発光管からガスがリークしても他の発光管等の外球内の構造物の汚染を減少させることのできるセラミックメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ及びセラミックメタルハライドランプのような高輝度放電ランプ(HIDランプ:High Intensity Discharge Lamp)は、電極間の放電を利用して発光する。このため、白熱電球と比べて、光束が大きく大規模な空間の照明に適し、エネルギー効率が良いといった種々の特徴を備えている。
【0003】
従って、道路、店舗、工場、ホール、スポーツ施設等の照明、テレビや映画のロケーション照明、自動車や鉄道車両の前照灯として、一般に広く使用されている。
【0004】
HIDランプにおいて、発光物質として金属ハロゲン化物を採用したメタルハライドランプは、青白い光線を放つ水銀ランプに比較して白色光(自然光)に近く優れた演色性と、また高い発光効率といった長所を有している。
【0005】
メタルハライドランプの発光管として、従来は石英製発光管が使用されていた。最近では、透光性セラミックス製発光管(この材質は透光性の多結晶アルミナ PCA)が使用されている。透光性セラミックス製発光管は、石英製発光管に比較して、格段に長寿命化が図れ、例えば、1本で約2万4000時間の寿命が確保できる(長寿命)。更に、石英は、発光管内に封入した金属ハロゲン化物と反応し易いが、セラミックスはこれと反応せず、且つ耐熱性が良好である、といった長所を有している。このため、発光管内の封入物として、種々の金属ハロゲン化物を使用できる利点がある。
【0006】
メタルハライドランプにおいて、透光性セラミックス製発光管を使用している場合は、特に、「セラミックメタルハライドランプ」と呼ばれ、水銀ランプだけで無く石英製発光管のメタルハライドランプと比較しても高効率で、例えば120 lm/W(ルーメン/ワット)以上の明るさを達成できるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06-124690「高圧放電ランプ」(公開日:1994年05月06日)
【特許文献2】特開平07-065790「メタルハライドランプ」(公開日:1995年03月10日)
【特許文献3】特開平07-073854「メタルハライドランプ」(公開日:1995年03月17日) 特許文献1では、円筒状の光透過性被覆体の開口端部を2つのセラミックホルダーによってランプ支持体に固定している技術が開示されている。特許文献2では、透光性筒体の両開口端を閉塞して発光管をその両端部で指示する1対のプレートが開示されている。特許文献3では、透光性筒の両端開口部にはそれぞれ金属製の蓋が設けられる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、それらの特許文献には、発光管の破裂エネルギーを開放し、一部吸収して阻止する開放内管の開口率を調整した部材、又は配光内管の流路を長くする部材は開示されていない。
【0009】
一般に、ランプに対しては、更なる長寿命化の要請がある。例えば、最近広く使用され始めたLEDランプの寿命は、公称4万時間と言われている。
【0010】
本発明者等は、LEDランプに対し発光効率は勝っているものの寿命が劣っているセラミックメタルハライドランプに関して、LEDランプの寿命に対抗できるように、複数本の発光管を用いて長寿命化を達成する研究・開発を行っている。セラミックメタルハライドランプにおいて、例えば、2本の発光管を使用して点灯し易い方が選択的に点灯するランプにすると、1本の発光管の寿命を2万4,000時間として、理論上、2本の発光管では4万8,000時間の長寿命化が期待できる。3本以上の発光管の場合も、同様に比例的に長寿命化が期待できる。
【0011】
複数本の発光管を用いてランプの長寿命化を実現するためには、点灯中の一の発光管の寿命終了時点において、他の発光管が、(例えば、2〜3分後に)正常に点灯することが必要となる。
【0012】
しかし、セラミックメタルハライドランプは、元々、発光管の寿命末期に発光管の内部ガスがリークしたり、更には、発光管が破裂したりする、という固有の不良モードを有している。即ち、セラミックメタルハライドランプでは、演色性向上のため発光管内を従来のHIDランプよりも高温にしており、点灯時の発光管内の圧力がより高く、水銀ランプや高圧ナトリウムランプなど他の一般照明用HIDランプに比較して、発光管の破裂のおそれが高くなる傾向にある。また、ガスがリークした時にグロー放電を防ぐため、外球内及び内管内にガスを封入する必要がある。
【0013】
本発明者等は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプによる長寿命化の研究・開発を通じて、一の発光管の寿命末期から他の発光管の点灯に移る際に、これら固有の不良モードに起因して、新たな問題を引き起こすことを発見した。即ち、一の発光管からガスがリークしたり発光管が破裂したりした場合、発光管内部の発光及び放電媒体が飛散して外球内部の他の構造物を汚染する場合があることを発見した。構造物の汚染が顕著な場合、例え、他の発光管が正常に点灯しても、照度は劣化し、製品として使用を継続することが出来ない場合がある。
【0014】
また、内管を密閉型とした場合、容積の小さな内管内にガスを封入しているため、点灯中の温度上昇に伴って内管内の圧力が上昇しているときに発光管が破裂すると、発光管自体の破裂衝撃に加え、内管部材も外球内に飛び散ることになるため、外球まで破損してしまう危険性がある。
【0015】
なお、従来の1本の発光管のセラミックメタルハライドランプでは、発光管の破裂により外球内部の構造物が汚染しても、その時点でランプ自体の寿命が終了しているので、問題とならない。従って、この問題は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、新たに発生した問題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明は、複数本の発光管を有し、一の発光管のガスがリークしたり又は発光管が破裂したりしても外球内の構造物の汚染が比較的少ないセラミックメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、一の発光管が破裂した場合に、その破裂時の衝撃を増加させないセラミックメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【0018】
そこで、本発明に係るセラミックメタルハライドランプは、選択的に1本の発光管が点灯する複数本の発光管と、各発光管を夫々取り囲む円筒形の内管と、前記発光管及び前記内管を収納する外球とを備え、前記内管が、該内管と前記外球との間で連通する流通経路を備え、該流通経路が、一の前記発光管から封入物質がリークした際に、該封入物質が、該発光管を取り囲む前記内管から前記外球内に拡散するのを減少させ、且つ該外球内に拡散した該封入物質が他の発光管を取り囲む前記内管内に流入するのを減少させることを特徴とする。
【0019】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記内管は、一端が開放され他端に前記発光管の一方のリード線を挿通させる小孔を有する第1内管と、一端が開放され他端に前記発光管の他方のリード線を挿通させる小孔を有する第2内管とを有し、第2内管が第1内管内に挿入されており、前記小孔によって前記流通経路が構成されるようにしてもよい。
【0020】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記内管は、一端が封止部材によって封止され、他端が細く絞られていて前記発光管の一方のリード線を挿通させる小孔が形成されており、前記小孔によって前記流通経路が構成されるようにしてもよい。
【0021】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記内管は、一端が密封され、他端が細く絞られていて前記発光管の一方のリード線を挿通させる小孔が形成されており、前記小孔によって前記流通経路が構成されるようにしてもよい。
【0022】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記内管は、両端が密封され、側面に小孔が形成されており、前記小孔によって前記流通経路が構成されるようにしてもよい。
【0023】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記内管は、一端が密封されていて前記発光管の両端リード線が取り付けられ、他端に小孔が形成されており、前記小孔によって前記流通経路が構成されるようにしてもよい。
【0024】
また、そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記内管は、一方又は両方の端部の開口を塞ぐ部材を有し、該部材は、前記発光管の一部が貫通する小孔を有し、前記小孔によって前記流通経路が構成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数本の発光管を有し、一の発光管のガスがリークしたり又は発光管が破裂したりしても外球内の構造物の汚染が比較的少ないセラミックメタルハライドランプを提供することが出来る。
【0026】
また、本発明によれば、一の発光管が破裂した場合に、その破裂時の衝撃を増加させないセラミックメタルハライドランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、従来のセラミックメタルハライドランプの構造を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの構造を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図3A】図3Aは、図2に示すセラミックメタルハライドランプの内管の製造方法を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに続くセラミックメタルハライドランプの内管の製造工程を説明するための図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプに用いることのできる5つの異なる形態の発光管の単体を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの構造を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は端部の開口を塞ぐ金属製部材である。
【図6】図6は、第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプに採用される改良型内管の構造を説明するための簡略化した拡大斜視図である。
【図7】図7は、メタルハライドランプの回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプの実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0029】
以下では、本実施形態の理解を容易にするため、先ず、従来の1本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプの構造について説明する。
【0030】
次に、第1実施形態及び第2実施形態に係る複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプについて、従来のセラミックメタルハライドランプとの相違を明らかにしながら、夫々詳細に説明する。なお、本発明は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプを対象とするものであるが、ランプの構成を簡単にして分かり易くするため、2本の発光管の場合を代表例として説明する。この場合、「一方のランプ」は、点灯中であり且つ寿命末期にあるランプであり、「他方のランプ」は一方のランプの寿命終了後に点灯するランプとする。3本以上の発光管の場合は、2本の発光管の場合と同様の技術的手段により、本発明を実現できることを承知されたい。
【0031】
最後に、これら実施形態に係る複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプを点灯させる回路及び複数個の発光管を選択的させる点灯の構造について、簡単に説明する。
【0032】
図1は、従来のセラミックメタルハライドランプ100の構造を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。図に示すように、ランプ100は、外球(「外管」,「管球」又は「外管バルブ」とも言う。)2の内部に、発光部となる1個の発光管4を内封した二重構造となっている。外球2の端部には、E形(ねじ込み形)の口金6が接合されている。発光管4は、金属の線材や板を組み合わせた構造物に内管を取り付けたマウント8により、所定の位置に支持され、給電される。
【0033】
これらの各要素について説明する。
【0034】
発光部となる発光管4は、中央の太管部4a及び両端の細管部4b,4cの形状をもつ透光性セラミックス製の容器である。1対のリード線5,7が、これら細管部4b,4cを夫々通して太管部4aの領域まで延びて、1対のタングステン(W)製の主電極(図示せず。)を形成している。
【0035】
発光管4の容器内には、発光及び放電媒体として、所定量の水銀と、金属ハロゲン化物と、希ガスとして所定圧力のアルゴン(Ar)ガスが封入されている(封入物質という)。希ガスとして、アルゴン(Ar)ガス以外に、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の他の希ガスや、それらの混合ガスでもよい。金属ハロゲン化物としては、よう素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)等のハロゲンと、ナトリウム(Na)、ツリウム(Tm)、セシウム(Cs)、ディスプロシウム(Dy)等の少なくとも一種の発光金属とが封入され、発光効率、演色性や色温度等の特性の向上が図られている。
【0036】
マウント8は、一対の導入線が気密封着されたステム管14と、一方の導入線に接続された、モリブデン(Mo),ステンレス(SUS),ニッケルメッキ鉄線等の線材や略長四角形状の枠状に成形した丸棒体から成る支柱16と、発光管4の周囲を囲むように配設された透明石英ガラス管からなる内管18とを主要部品として構成されている。
【0037】
外球2は、例えば、ホウケイ酸ガラス等の透光性の硬質ガラスからなる。透明型と拡散型(不透明)がある。外球2は、最大口径の中央部2a、図で見て下部側の閉塞されたトップ部2b、及び上部側のネック部2cを有するBT形をなしている。
【0038】
ネック部2cには、ステム管14のフレア部が封止された封止部が有る(図示せず。)。封止後、ステム管14に設けられた排気管(図示せず。)を通じて外球2内は排気され、アルゴン(Ar)等の不活性ガスや窒素(N2 )ガス等が封入され、或いは真空にした気密雰囲気となっている。
【0039】
この封止部を覆ってねじ込み形口金6が耐熱性の接着剤を用いて接合され、或いはモールドにより形成された螺旋状のねじ溝に口金6が螺合されて、取付けられる。
【0040】
図1に示すセラミックメタルハライドランプ100は、口金6をソケット(図示せず。)に装着して、電源から所定の点灯回路装置(図示せず。)を介して通電され、主電極間の放電により安定した点灯が持続する。
【0041】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ10の構造を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。図1の従来のセラミックメタルハライドランプ100と比較すると、第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ10は、(1)発光管が2本有る点、(2)各発光管を半密閉型の内管17A−1及び17A−2で囲んでいる点で相違する。本出願書類では、従来の開放内管(スリーブやシュラウドなどとも呼ばれる)に改良を加えた内管を、全て、「改良型内管」と称する。
【0042】
図2に示すように、2本の発光管4−1,4−2は、マウント8により支持され、それぞれ、半密閉型内管17A−1,17A−2によって囲まれている。2つの半密閉型内管17A−1,17A−2は同一の構造であるため、代表的に、半密閉型内管17A−1について説明する。
【0043】
半密閉型内管17A−1は、石英管17A−1iが石英管17A−1oの内部に挿入された構造になっている。そのため、石英管17A−1iの外径は石英管17A−1oの内径より小さい。両者の肉厚は、同じでもよく、変えてもよい。
【0044】
また、石英管17A−1oの一方の端部は、管の直径と同じままで開放されており、他方の端部は、細く絞られていて、先端には、発光管4−1のリード線7が挿通された小孔17hが形成されている。同様に、石英管17A−1iの一方の端部は、管の直径と同じままで開放されており、他方の端部は、細く絞られていて、先端には、発光管4−1のリード線5が挿通された小孔17hが形成されている。石英管17A−1iの開放された端部は、石英管17A−1oの細く絞られた端部の内壁に当接している。
【0045】
小孔17hでは、挿通されたリード線5,7との間にすき間が存在するため、その小孔は石英管内部と外球管との間で気体が通過できるようにそれらの間を連通する。
【0046】
また、図2では省略しているが、図3B(g)に示す通り、小孔17hを貫通したリード線5,7には、ストッパーとして金属のプレートが溶接されていて、石英管17A−1iと石英管17A−1oとが互いに抜けないようにされている。
【0047】
図3A及び図3Bは、半密閉型内管17A−1の製造方法の一例を説明するための簡略化した図である。この製造方法では、図3A(a)から図3A(d)までの工程において、内部に挿入される石英管17A−1i及び外側を覆う石英管17A−1oの両方を2つずつ製造し、次に、図3B(f)から図3B(g)の工程において、それらを組み合わせて、2組の半密閉型内管17A−1を製造する。
【0048】
まず、石英管17A−1iを2つ製造する工程を説明する。図3A(a)に示すように、所定の外径及び内径を有する石英管を所定の長さにカットした石英管17を用意する。次に、図3A(b)に示すようにバーナーでその石英管17の中央部を炙り、図3A(c)に示すように、その中央部を細く絞る。図3A(d)に示すように、その細くなった部分でカットすると、各石英管17iに直径2mm程度の小孔17hが形成される。このように、その小孔はドリル等で開ける必要はない。
【0049】
次に、上記と同様な工程により、石英管17oを2つ製造する。石英管17oと石英管17iとは、石英管17iの外径が石英管17oの内径より小さいという点で異なるだけで、製造工程は同一である。
【0050】
上記の製造工程の図3A(a)から図3A(d)までで、石英管17i及び石英管17oを2つずつ製造した後、図3B(e)に示すように、発光管4−1に他の金属部材を溶接してマウントを組み立てる。この工程では、それを2組組み立てる。
【0051】
次に、図3B(f)に示すように、1つの発光管4−1の両側に、1組の石英管17i及び17oの開放端部を対向させて配置して、発光管4−1を石英管17i内に挿入するとともに、石英管17iを石英管17o内に挿入するようにして、半密閉型内管17A−1を組み立てる。その際に、発光管4−1の両側のリード線5,7を、それぞれ、石英管17i及び石英管17oの小孔17から外側に貫通させる。
【0052】
次に、図3B(g)に示すように、小孔17hを貫通したリード線5,7にストッパーとして金属のプレートsを溶接して、石英管17iと石英管17oとが抜けないようにする。
【0053】
その後、図3B(f)及び図3B(g)の工程に沿って、残りの一組の発光管4−1、石英管17i及び石英管17oを用いて、他の半密閉型内管17A−1を製造する。
【0054】
上記の製造工程では、半密閉型内管17A−1を製造するにあたり、直径の異なる2種類の石英管を1本ずつ製造し、それを利用して、2組の半密閉型内管17A−1を順に製造する方法を説明したが、それに限定されるものではなく、2種類の石英管を多数用意して多数の石英管の組を製造した後に、多数の発光管と組み合わせて多数の半密閉型内管17A−1を組み立てる工程を並行に行うようにしてもよい。
【0055】
上記のような半密閉型内管17Aでは、発光管4−1を囲む部分において石英管17i及び17oが二重に重ねられているため、強度が高い。
【0056】
また、上記のような半密閉型内管17Aでは、石英管17i及び17oの両端は細く絞られていて小孔17hが形成されているだけなので、たとえ内部の発光管4−1の細管部がクラック等でリークしたとしても、その半密閉型内管17Aからはガスがリークしにくく、そのため、他の半密閉型内管17Aを汚染する可能性が低い。
【0057】
また、一つの半密閉型内管17Aからガスがリークしたとしても、他の半密閉型内管17Aの石英管17i及び17oの両端は細く絞られていて小孔17hが形成されているだけなので、その小孔から汚染物質が侵入し難いため、その内管の内側が汚染される可能性も低い。
【0058】
さらに、石英管17i及び17oの小孔17hには、リード線5,7が貫通しているが、そのリード線5,7と小孔17hとの間には隙間があり、内管と外球との間で気体が通過する流通経路が形成されていて、内管内と外球内とが連通して同じ圧力になっているため、たとえ、発光管が破裂したとしても、その破裂時の衝撃が増加することはない。
【0059】
図4は、上記の半密閉型内管17Aとは異なる他の形態の内管17Bから17Eまでを説明するための図である。それらのすべての内管には、流通経路となる小孔が形成されていて、内管内の圧力と内管外の圧力(外球内の圧力)とが同じ圧力になるようになっている。上記の半密閉型内管17Aに代えてそれらに示す内管を2つずつ用いることができる。
【0060】
図4(A)は、上記の石英管17o内に石英管17iを挿入して組み合わせた半密閉型内管17Aであり、両端に小孔17Ahが形成されている。
【0061】
図4(B)は、一端が細く絞られて先端に小孔17Bhが形成され、他端がプラグ17Bpによって閉栓されて密閉された内管17Bを示す。小孔17Bhからはリード線7が貫通しており、小孔17Bhとリード線7との間の隙間によって流通経路が形成されている。
【0062】
図4(C)は、一端が細く絞られて先端に小孔17Chが形成され、他端がシール17Csによって密封された封止構造の内管17Cを示す。小孔17Chからはリード線7が貫通しており、小孔17Chとリード線7との間の隙間によって流通経路が形成されている。
【0063】
図4(D)は、両端がシール17Dsによって密閉された内管17Dを示す。その内管の側面には小孔17Dhが形成されている。その小孔17Dhは流通経路として機能して、内管内の圧力と外側の圧力とを同じにしている。
【0064】
図4(E)は、一端のシール17Esによって封止された2ピンタイプの内管17Eを示す。その内管の他端の先端には、小孔17Ehが形成されている。その小孔17Ehは流通経路として機能して、内管内の圧力と外側の圧力とを同じにしている。
【0065】
また、上記図4(A)〜(E)の半密閉型内管は、密閉型内管より製造が安価である。例えば、図4(D)及び(E)を用いて密閉内管を作成する場合、図4(D)の小孔17Dh及び図4(E)の小孔17Ehからガスを排気して真空にし、その後所定圧のガスを導入し小孔を塞ぐ工程などが必要となるが、半密閉型内管の場合、それらの工程が不要となり、安価に製造できる。
【0066】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ12の構造を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は開放端を覆う円板状部材32を示す平面拡大図である。
【0067】
図1の従来のセラミックメタルハライドランプ100と比較すると、第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ12は、(1)発光管が2本有る点、(2)開放内管の両側の開放端を覆う円板状部材32を有する改良型開放内管18Aを採用した点、で相違する。
【0068】
図5に示すように、2本の発光管4−1,4−2が、改良型開放内管18A−1,18A−2に夫々取り囲まれて、マウント8により支持されている。この2本の発光管4−1,4−2は、始動・駆動回路に対して電気的に並列に接続されている。各改良型開放内管18A−1,18A−2は、その両端の開口を塞ぐように、金属製の円板状部材32を有している。ただし、円板状部材32は両端の開口ではなく、一端の開口のみを塞ぐように用いてもよい。
【0069】
発光管が2本有ることにより、セラミックメタルハライドランプ12の長寿命化が実現できる。例えば、1本の発光管の寿命を2万4000時間として、理論上、2本の発光管では4万8000時間の長寿命化が期待できる。
【0070】
次に、図5(C)は、改良型開放内管18Aを軸線方向に沿って見た拡大図である。図6は、セラミックメタルハライドランプ12の一つの改良型開放内管18Aを簡略化して示す拡大斜視図である。改良型開放内管18Aは、その両端の開口部にそれぞれ円板状部材32を有する。各円板状部材32は、中央に、発光管4−1,4−2のそれぞれの両端の細管部4−1b,4−1c及び4−2b,4−2cが貫通する小孔36を有する。小孔36は気体の流通経路として機能するもので、図6に示すように、細管部4b,4cが挿通されたときに隙間が形成される。
【0071】
円板状部材32は、マウント6の支柱に支持されていてもよく、或いは開放内管18A−1,18A−2の開口端部に取り付けられていてもよい。更に、開放内管18A−1,18A−2の両方の開口部に有ってもよく、或いは任意の片方の開口部に有ってもよい。
【0072】
本発明者等の複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプによる長寿命化の研究・開発の実験において、一方の発光管4−1を強制的にリークさせた場合、その内部ガスの充填部材が拡散し発光及び放電媒体が浮遊している状態で数分後(2〜3分後)に他方の発光管4−2が点灯すると、十数秒後にはそれを取り囲む他方の開放内管18A−2の内壁面に発光及び放電媒体が集中的に沈着して、内部壁面が顕著に白濁することを発見した。
【0073】
従って、本発明者等は、一方の発光管4−1がリークしても、円板状部材32により、(1)それを取り巻く一方の開放内管18A−1にあっては、内部ガスの発光及び放電媒体の封入物質が外部に拡散する量を減少させ、(2)反対に、他方の開放内管18A−2にあっては、一方の発光管4−1からの封入物質の流入を減少させる、構造を有する「改良型開放内管」を考案した。
【0074】
第2実施形態の円板状部材32を有する改良型開放内管18Aを備えることにより、一方の発光管4−1がリークしたり又は破裂した際には、その改良型開放内管18Aから拡散する封入物質の量を減少させることが出来る。同時に、他方の改良型開放内管18Aは、一方の発光管4−1からの封入物質の流入を減少させることが出来る。こうして、上述した、他方の開放内管の内部壁面の白濁発生を防止している。
【0075】
また、発光管4−1又は4−2が破裂した場合には、小孔36を介して改良型開放内管18Aの内部と外球内とが同一の圧力を有しているため、その破裂時の衝撃が増加することはない。
【0076】
上記の実施形態においては、円板状部材32の中央に流通経路として小孔36を形成したが、それ以外の部分に、他の小孔を形成してもよい。
【0077】
[ランプの回路構成]
第1及び第2の実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの回路は、従来使用されていたセラミックメタルハライドランプの回路と同じである。
【0078】
図7は、メタルハライドランプの回路を説明する図である。商用交流電源(100/200 V, 50/60Hz)24に接続された安定器26からセラミックメタルハライドランプ10,12に対して給電される。安定器26は、チョークコイル27及びイグナイター(始動回路)28を有している。ランプ内の発光管4−1,4−2は、電源側に対して電気的に並列に接続されている。
【0079】
図に示すように、セラミックメタルハライドランプは、ランプ自体に始動回路は無く、安定器26からのパルスにより、点灯し易い状態の1個の発光管が点灯する。即ち、従来のセラミックメタルハライドランプの回路のソケットに対して、本実施形態のセラミックメタルハライドランプを取り付けることが出来る。従って、本実施形態のセラミックメタルハライドランプは、器具、安定器の組合せによっては既存設備を変更することなく、使用することが出来る。
【0080】
[変形例等]
以上、本実施形態に係る外球保護構造を備えたセラミックメタルハライドランプについて説明したが、これらは例示であって、本発明の範囲を制限するものではない。当業者が、本実施形態に対して容易になしえる追加・削除・変更・改良等は、本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【符号の説明】
【0081】
2:外球,外管,外管バルブ、 2a:中央部、 2b:トップ部、 2c:ネック部 、4,4−1,4−2:発光管、 4a:太管部、 4b,4c:細管部、 5,7: リード線、 6:口金、 8:マウント、 10,12:セラミックメタルハライドラ ンプ、 14:ステム管、 16:支柱、 18A,18A−1,18A−2:改良型 開放内管、 20:始動回路、 22,22−1,22−2,22−3,22−4:開 放型内管、 24,24−1,24−2:金属線ワイヤ、 32:円板状部材、 36 :中央の孔、 10,12:セラミックメタルハライドランプ、 100:セラミック メタルハライドランプ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックメタルハライドランプにおいて、
選択的に1本の発光管が点灯する複数本の発光管と、
各発光管を夫々取り囲む円筒形の内管と、
前記発光管及び前記内管を収納する外球とを備え、
前記内管が、該内管と前記外球との間で連通する流通経路を備え、
該流通経路が、一の前記発光管から封入物質がリークした際に、該封入物質が、該発光管を取り囲む前記内管から前記外球内に拡散するのを減少させ、且つ該外球内に拡散した該封入物質が他の発光管を取り囲む前記内管内に流入するのを減少させる、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記内管は、一端が開放され他端に前記発光管の一方のリード線を挿通させる小孔を有する第1内管と、一端が開放され他端に前記発光管の他方のリード線を挿通させる小孔を有する第2内管とを有し、第2内管が第1内管内に挿入されており、
前記小孔によって前記流通経路が構成される、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項3】
請求項1に記載のセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記内管は、一端が封止部材によって封止され、他端が細く絞られていて前記発光管の一方のリード線を挿通させる小孔が形成されており、
前記小孔によって前記流通経路が構成される、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項4】
請求項1に記載のセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記内管は、一端が密封され、他端が細く絞られていて前記発光管の一方のリード線を挿通させる小孔が形成されており、
前記小孔によって前記流通経路が構成される、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項5】
請求項1に記載のセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記内管は、両端が密封され、側面に小孔が形成されており、
前記小孔によって前記流通経路が構成される、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項6】
請求項1に記載のセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記内管は、一端が密封されていて前記発光管の両端リード線が取り付けられ、他端に小孔が形成されており、
前記小孔によって前記流通経路が構成される、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項7】
請求項1に記載のセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記内管は、一方又は両方の端部の開口を塞ぐ部材を有し、
該部材は、前記発光管の一部が貫通する小孔を有し、
前記小孔によって前記流通経路が構成される、セラミックメタルハライドランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−38665(P2012−38665A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179749(P2010−179749)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【特許番号】特許第4853580号(P4853580)
【特許公報発行日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】