説明

複数色模様食品の製造方法

【課題】 同一のモールド内に2色以上の流動状食品材料を用いて各種模様・形態の複数色模様食品を製造する方法を提供せんとする。
【解決手段】 2色以上の流動状食品材料を用い、流動状食品材料をモールドに注入して充填する際に、2以上注入した後で各隣接材料が衝突し、せめぎ合いにより、各種直線状の境界線ができることで複数色模様食品を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の流動状食品材料から複数色の一体模様食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
色違いの複数の粘性のある流動状食品素材を用いて、3つ以上の領域に色分けされた模様を有する食品を成形する方法と装置が以下の特許文献に開示されている。しかし、下記特許文献1の発明は図3に示すように、AとBに色分けされた食品素材供給装置71の各流動食品を各別に設けたノズル口から送り出されるものではなく、バルブ56,57の回転によりAとBそれぞれを第1〜第3流路群14を経て同一の流路15から送り出すものである。また、この発明は送出後においても、各色の流動食品をプレート内の流路中に送り、流出口20から層状にした食品素材を同時に流出するものである。
しかしながら、この発明は相当粘度の高い流動食品を前提にしたとしても各流路中や流路のコーナ部及び流出口において、隣接する食品素材相互が混合する(コーナ部などに渦が生じて)虞れがある。また、この発明の模様は送出口が1つであるために、そこから層状に重なるものに限定されている。
なお、チョコレートなど流動性の高い食品材料を2色に分けて吐出する機構を有する1個のノズルでは、通常下記特許文献2に示すように、吐出後の流動チョコレートは連続した不定形模様を生じてしまう。
【特許文献1】特開平10−234303号公報
【特許文献2】特開平9−23818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、モールド内へ吐出するノズル口までは、たとえ流動性が比較的粘度が低いものであっても流路を各色別に明確に分離しているので、流路中に混合することなく、各色の模様はモールドに対するノズルの吐出位置と吐出された流動状食品材料の水輪状の広がりを利用することにより、多様な各種模様食品の製造方法を提供せんとする。
【0004】
つまり、本発明の目的は、上記従来例とは別の技術原理、すなわち複数色の流動状食品材料を同一モールド内へ同時投入した場合、それぞれの色の材料が投入点からの輪状の広がりを呈するだけでなく、その広がりにより隣接して投入した流動状食品材料が互いの最短距離位置で衝突し、その後それぞれがせめぎ合うことで隣接する流動状食品材料が直線状の境界を形成していくことを見極めて、本発明の複数色模様食品の製造方法を提供せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複数色模様食品は上記目的のもとになされたものであり、その要旨は所定粘度の流動状食品材料を用いて各種模様食品を製造する方法であって、前記流動状食品材料が同一粘度の複数色を用いて各色毎に設けた同径のノズル口から直接仕切りのないモールドへ各色同量で同時注入するものであり、前記モールド内での複数の注入ポイントが出き上がりの食品模様になる設定位置とし、モールド内へ注入した流動状食品材料が次第に水輪状に広がっていくことで各隣接する流動状食品材料が同一の最短距離で衝突し、その後流動状であるために衝突場所から互いにせめぎ合うことで衝突点から両側に直線状の境界を形成しながら満ちていくことにより、全体として各種模様を一体形成し、その後自然もしくは温度調節により前記流動状食品材料を同化することにある。
【0006】
本発明は、せめぎ合いの原理を利用すれば予定した同一複数模様食品が何度でも再生できるというものではなく、特定の同一模様を複数色で作るには同径のノズル口から同量で同一粘度の流動状食品材料を同一モールド内の予定された特定位置へ各色を同時に注入し充填していく必要がある。モールド内へ注入した上記条件を備える流動状食品材料は、初め落下地点では流動状食品が富士山状になって後から後から充填され、その後モールド内では各落下地点から水輪状に広がっていくことで最短距離の隣同志が衝突し、そのまま充填を続けることで各隣接する流動状食品材料は同一材料の粘度で質量が同じことから互いにせめぎ合うことで衝突地点の両側に直線状の境界を形成しながらモールド内を満ちていくことで、全体として一定の特定模様が得られる。この後流動状食品材料から得られる複数模様食品の性状にもよるが、自然もしくは温度調節により固定する。
【0007】
本発明に応用できる流体から固体に変化する食品材料としては、チョコレート、チーズ、ゼリー、水ようかんなど比較的粘度の低い食品から選ばれる。
流動状食品材料がチョコレートの場合の粘度は500cp〜20,000cpの範囲、好ましくは1,000cp〜2,000cpのものである。
得られる複数色模様食品の外形は各種モールドの形態によるが、例えばモールドの底部を平面状にすれば製品としてはこの平面状の箇所が上面によるために上部フラットな模様となる。
底部を凹凸にすると、得られた食品は上部が凹凸の複雑模様となる。
モールドは、底部だけでなく製品の側部も形成するために、たとえば硬貨外周のギザギザ模様に似た模様を形成することもできる。
また、モールドの底部の一部もしくは全部には、菊花、紋章、商標などの凹凸模様を形成しておき、その上から上記各種実施形態の流動状食品材料を充填することで、より複雑で趣向のある複数色模様食品を製造する。
さらに、上記各種実施形態の流動食品材料をモールド内に充填した後、同一の流動体もしくは別の流動食品材料を充填することにより、出来上がった食品の底部全体を一定厚の別の流動食品材料層を設けることができた。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複数色模様食品は、同一モールド内で同一粘度の複数色を各色毎に設けた同径のノズル口よりモールド内へ各色同量で同時注入することにより、しかもモールド内の前記注入ポイントが出き上がりの食品模様となる設定位置とすることにより、同モールド内への一度の複数色の注入・充填により短時間で同一複数色模様食品ができる。なお、これらの構成は便宜上1個のモールド内に複数色模様食品を1つ作ることについて説明しているが、実際には1個のモールド内に複数個、例えば12個の穴を設けたモールドで実施するものであり、より多くの模様食品が同時に出き上がる。また、本発明ではモールド内に複数色の流動状食品材料を注入していき、それらが水輪状に広がっていって隣接したものが衝突するが、互いに同じ粘度を有しているために衝突したものは衝突箇所で入り乱れたり、片方だけに押し寄せられたりすることがなく、互いにせめぎ合うことで衝突点で輪状に広がっていた流動状食品は左右90度方向に境界が移動していくことにより、互いの境界線が直線状になってモールド内に満ちていくことにより、モールド内への注入数と注入位置とモールドの流動状食品材料が満たされる側部と底部の形状により、モールド上部である注入口を除いて、全体としての各種模様食品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、基本的には同一モールド内に注入された複数色の流動状食品材料を各別に水輪状に広げ、互いに隣接する流動状食品材料の広がりの輪が衝突し、衝突箇所から互いにせめぎ合いながら直線状に広がることにより一定模様の複数色模様食品が得られる。
【実施例1】
【0010】
図1から図5までは本発明である複数色模様食品のチョコレートとした場合の製造方法を説明するもので、図6乃至図11はこれら製造方法を用いて出来たモールド内の各種模様形状の例である。なお、この実施例では便宜上1モールド内に1個の複数色食品としてのチョコレートを作る例を説明するが、実際には1モールド内に2〜40個の複数色食品がモールド内への流動状食品材料の同時注入で得られる。
図1はモールド1の平面図であり、O,P,Q,及びRの4点は、各点の上部にあるノズル孔2からの流動状食品材料の注入位置を示すものであり、この注入位置はモールドが上方に固定されているノズル口との関係で決められた位置を示す印を便宜上記載したものであり、実際にはない。OとP,OとR,QとP,QとR間の距離を仮りに1(x)とするとそれぞれの中間地点までは1/2(x)となる。モールド内1の中心点から各コーナまでの4本の二点鎖線は同質量である流動状食品材料を同じ粘度で注入したときの境界線であり、これも実際にモールド内に印されたものではない。
【0011】
図2は、図1のO,P,Q,及びR点を中心として、図3に示すノズル口2(図2の中心横断面を示すためにノズル口は2個ある)からモールド1内に投下・注入した初期状態の平面図である。この場合、流動状チョコレートの落下点からの水輪状の広がり3は、落下速度より広がり速度の方が遅い(広がり速度はモールド1の底面5との間で抵抗が生じ、その抵抗が連続して起こる)ので水輪状3に広がる。
【0012】
図4は、上記水輪状に広がった流動状チョコレートが4つの隣接点で衝突した直後に衝突により隣接した流動状チョコレートが衝突方向とは90度方向を変えた矢印方向両側へ隣接したチョコレート同志がせめぎ合いながら直線状の境界線4で広がっていく状態を説明するものである。
【0013】
図5は、図4からさらに続けてノズル口2から注入される流動状チョコレートにより、せめぎ合いによる各隣接する流動状チョコレートがモールド1のコーナ部まで広がり、その後4ヶ所からの流動状チョコレートはモールド1の凹部を満たすまで注入される。
モールド1が流動状チョコレートで満たされると、充填工程は終了し、図示しないベルトコンベアにより、次工程の冷却工程に送られて固化し、製品としての2色模様チョコレートが得られる。
【0014】
図1から図5のようにして、仕上がったモールド1内の白色8とチョコレート色9の色模様チョコレートを図7(a)に示す。図7(b)は図7(a)のB−B断面図である。なお、図7(c)は図7(a)と(b)の製造工程前に、モールド1の底面5の一部に設けた凹部菊模様7内へチョコレート色のチョコレートを充填して装飾性を全体的に高めたものである。この図7(a)の上下はチョコレート色9で左右はホワイト(白色)チョコレート8でできている。
【実施例2】
【0015】
図6(a),(b)は、図7とは別模様を示すものであり、この模様は対角線上の境界線6を境目にしてチョコレート色9と白色8とで2分したものである。なお、図6(c)はモールド1の底部に凹部菊模様中にチョコレート色のチョコレートを充填し、その上から流動状のホワイトチョコレート8とチョコレート色のチョコレートを前記したように同時充填して全体を一体形状にしている。この場合、流動状のホワイトチョコレートと流動状のチョコレート色チョコレートとは境界線6と直角に交わる同距離の位置に注入して充填することで作れる。
【実施例3】
【0016】
図8(a),(b)は、さらに別の実施例であり、この場合には、流動状のホワイトチョコレート8とチョコレート色のチョコレート9は斜め方向に各2箇所を境界線10と直交して互いに等距離位置に保つ4つの注入点O,P,Q,Rを設定することで図のような模様が得られる。なお、図8(c)はモールド1の底部に図7(c)や図6(c)と同じ菊花の凹部7にチョコレート色のチョコレートを充填したものである。
【実施例4】
【0017】
図9のモールド孔は、上述のものとは違って無数の縦縞の凹凸12を内側壁に設けたもので、図1乃至図5の順序で2色模様のチョコレート8,9を境界線11でモールド内に仕上げたものである。また、モールド1の底部には波状の凹凸13を設けることで、モールド1から脱型したチョコレート表面に波状の凹凸ができるようにした。
【実施例5】
【0018】
図10は、図9のモールドの内側壁の凹凸12に代わって4葉のクローバ状の凹凸13をモールド1の側壁に設けたものであり、ホワイトチョコレート8とチョコレート色チョコレート9を境界線12でモールド1内に仕上げたものである。モールド1の底部には、出き上がったチョコレートの4つのクローバの境界線を他の箇所より低くするために、モールド側を高くした境界線14である。
【実施例6】
【0019】
図11は、図9(b)のモールド1を用いて、ホワイトチョコレート8とチョコレート色チョコレート9をモールド1の上部を少し空けて同時充填した後、その空けた箇所にさらに別のチョコレート色チョコレートをモールド1の上部全面に充填したものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明では、チョコレート、チーズ、ゼリー、水ようかんなど2色以上の流動状食品材料を用い、流動状食品材料をモールドに注入・充填する際に境界線がせめぎ合いにより形成されるものに利用する。したがって、流動性材料が水のような粘度の小さいものや、粘度が大きすぎるものでは、せめぎ合いは起こらない。そのために粘度は材質にもよるが 500cp〜20,000cpのものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に用いるモールドの底面に流動状食品材料を充填する説明図である。
【図2】図1のものを用いて、流動性食品材料を定位置に一部注入した状態の説明図である。
【図3】図2の中央横断面にノズルからの注入を示す説明図である。
【図4】図3からさらに流動状食品材料を注入していく状態の説明図である。
【図5】図4からさらに流動状食品材料を充填していく状態の説明図である。
【図6】(a)は2色の流動状食品材料を対角線を境界線として充填した状態の平面図である。(b)は(a)のA−A断面図である。(c)は(b)のモールド底部に凹部模様を設けて、この部分に前記(b)とは別の流動状食品材料を充填した断面図である。
【図7】(a)は図1乃至図5で出来上がったモールドの平面図である。(b)は(a)のB−B断面図である。(c)は(b)のモールド底部に凹部模様を設けてこの部分に前記(b)とは別の流動状食品材料を充填した断面図である。
【図8】(a)は図6や図7とは異なる模様・形態の平面図である。(b)は(a)のC−C断面図である。(c)は(b)の底部に凹部模様を設けて流動状食品材料を充填した断面図である。
【図9】(a)は図6,図7,図8とは別の模様・形態の平面図である。(b)は(a)のD−D断面図である。
【図10】(a)は図6,図7,図8,図9とは別の模様・形態の平面図である。(b)は(a)のE−E断面図である。
【図11】図9(b)の充填空白部に別の流動状食品材料を充填した断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 モールド
2 ノズル口
3 水輪状の広がり
4,6,10,11,12 境界線
7 モールド底部にある凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定粘度の流動状食品材料を用いて各種模様食品を製造する方法であって、
前記流動状食品材料が同一粘度の複数色を用いて各色毎に設けた同径のノズル口から直接仕切りのないモールドへ各色同量で同時注入するものであり、前記モールド内での複数の注入ポイントが出き上がりの食品模様になる設定位置とし、モールド内へ注入した流動状食品材料が次第に水輪状に広がっていくことで各隣接する流動状食品材料が同一の最短距離で衝突し、その後流動状であるために衝突場所から互いにせめぎ合うことで衝突点から両側に直線状の境界を形成しながら満ちていくことにより、全体として各種模様を一体形成し、その後自然もしくは温度調節により前記流動状食品材料を同化することを特徴とする複数色模様食品の製造方法。
【請求項2】
前記複数色模様食品が、チョコレート、チーズ、ゼリー、水ようかんから選ばれたものである請求項1に記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項3】
前記流動状食品材料が、500cp〜20,000cpの粘度を有する流動状チョコレートである請求項1に記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項4】
前記モールドの形態が、底部を平面状にした枡形である請求項1乃至3のいずれかに記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項5】
前記モールドの形態が、底部を凹凸にした枡形である請求項1乃至4のいずれかに記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項6】
前記モールドの形態が、側部も凹凸にした請求項1乃至5のいずれかに記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項7】
前記仕切りのないモールドの底部の一部もしくは全部に凹凸模様を形成しておき、その上から前記流動状食品材料を充填する工程を含む請求項1乃至6のいずれかに記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項8】
前記モールド内に流動状食品を充填した後に、その上から別の流動状食品材料を充填する工程を含む請求項1乃至7のいずれかに記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項9】
前記モールド内に予めシルク印刷をしておくことで、その後充填した流動状食品材料と一体模様とする請求項1乃至8のいずれかに記載の複数色模様食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−101744(P2006−101744A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291300(P2004−291300)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(390008671)芥川製菓株式会社 (5)
【Fターム(参考)】