説明

複数薬物の持続放出のための方法およびデバイス

本発明は、薬物送達デバイスおよび長期間にわたって複数の薬物を送達する方法に関する。そのような薬物送達デバイスは、薬物透過性ポリマー物質を含む2つまたはそれ以上の単位区分を有し、少なくとも1つの区分は薬剤学的に活性な物質を追有する。本発明は、哺乳類の雌の良性卵巣分泌障害を治療する方法、避妊法、ならびに女性の閉経期、閉経周辺期および閉経後に伴う症状を緩和する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年4月29日に受理された米国特許仮出願第60/466,318号、および2003年5月27日に受理された米国特許仮出願第60/473,579号の利益を享受する。上掲の出願の全体を参照として本明細書中に取り入れておく。
【0002】
発明の分野
本発明は、長期間にわたって複数の薬物を実質的に一定の比率で制御放出させるための薬物送達デバイスに関する。さらに特定すると、本発明は、避妊法、ホルモン置換療法、ならびに良性卵巣分泌障害などのような生殖に関する状態および疾患の治療法に関する。
【背景技術】
【0003】
製薬業界においては、徐放性製剤の開発が長年の目標である。徐放性システムにより、丸剤などの従来から使用されている薬物送達系に関連して生じる多くの問題点が解決される。例えば、従来から行われている薬物送達系では、薬物の投与を頻繁に行い、その結果、治療期間中の循環薬物レベルの変動が大きくなる。薬物濃度は、投与後には治療濃度に達するが、時には、最低治療濃度を超え、毒性域近くまで上昇する場合がある。比較的短時間で、代謝または排出により、治療には無効な濃度にまで薬物濃度が低下する。
【0004】
薬物の一定濃度を維持し、薬物濃度がピークと谷をなすことによる効率の悪さを回避することを目的として、経時変化することなく一定速度(いわゆるゼロ次放出)で送達システムから薬物を放出しなければならない。好ましくは、薬物の初期投与量は治療投与量であり、送達システムによって該濃度が維持される。現在使用されている徐放性薬物送達システムの例としては、貯蔵システム(レザーバーシステム:reservoir system)が挙げられ、チューブ、繊維、薄片またはマイクロスフェアから構成されている。これらのシステムにおいては、薬物貯蔵体は、速度制御膜で被覆されている。膜を通過する薬物拡散は律速段階であり、膜の透過性が変化しない限り、また、貯蔵体内の薬物濃度が一定である限り一定(ゼロ次)である。
【0005】
マトリックスシステムにおいては、薬物はマトリックスを介して分散し、薬物が溶解し、マトリックスを介して拡散するにつれて放出される。最初に、マトリックスの外側表面から薬物が放出されると、この層が枯渇し、さらに、デバイスの核内からさらに放出された薬物は、枯渇したマトリックスを介して拡散しなければならない。その結果、放出速度は遅くなり、従って、一定不変の放出を維持することは非常に困難である。別の型のデバイスとしては、ポリマーデバイスが挙げられ、これは、薬物の透過が可能なポリマー材料を含んでいる。多様なポリマー性材料から材料を選択することができるが、実際には、貯蔵体の放出決定外層として十分に機能を発揮するポリマー類はごく少数である。長期間にわたって2種またはそれ以上の活性物質を放出する徐放システムは、特定の用途、例えば、避妊およびホルモン置換療法の分野において非常に有用である。
【0006】
リング型の膣薬物送達デバイス(「膣リング(vaginal rings)」)は当該分野において既知である。そのようなデバイスは、通常、数週間〜数ヶ月の期間にわたり、比較的一定量の薬物を膣に送達することを意図したものである。一般的には、そのようなデバイスは、シリコーンエラストマー製であり、エラストマーを介する拡散によって放出される薬物を含む。膣リングは、閉経後の膣の状態を保つ、ならびに、避妊およびホルモン置換療法のためにステロイド類を送達することを目的として開発された。一般的に、女性は、利便性、プライバシー、長期間送達能および有効性などのいくつかの理由から、経口よりも膣リングを好む。膣リングは、使用者の煩わしさや注意を最小限に抑えて、薬物投与量を制御することができる。また、経口投与薬物が肝臓を通ることによって生じる初回通過効果も回避され、肝臓では、経口投与されるステロイドのうちのいくつかは、日々の投与量のうちのかなりの量が分解される。
【0007】
特許文献1(ナッシュ(Nash)ら)および特許文献2(ツィマーマン(Zimmermann)ら)は、二層膣リングを開示している。該リングは、薬物が入っていない内側の支持リング、薬物を含んだ中間層、および薬物が入っていない外層から構成されている。3つの層は全て、シリコーンエラストマー製であることが好ましい。しかしながら、現在は、一般的には、シリコーンエラストマーは安全ではないと考えられており、もはや材料の選択肢ではない。
【0008】
一種類の薬物を送達することに加え、長期間にわたって複数の薬物を同時に放出させるための膣リングが開発されている。例えば、特許文献3(ゴーゲン(Gougen))および特許文献4(ドロビッシュ(Drobish))は、別異の活性物質を含有する別異の貯蔵体を有する膣リングを開示しており、該貯蔵体はホルダーに納められている。特許文献5(ウォン(Wong)ら)も複数の貯蔵体を有するデバイスを開示しており、スペーサーを使用してチューブまたはコイルを区分けしており、各区分には、別異の活性物質のシリコーン溶液が充填されており、チューブの両端を連結することによってリングが形成される。特許文献6(グレーネウェゲン(Groenewegen)ら)は、2−コンパートメントデバイスを開示しており、ひとつのコンパートメントは核、薬物を入れた中間層および薬物が入っていない外層を有し、第二のコンパートメントは、薬物を入れた核および薬物が入っていない外層を有する。しかしながら、一般的には、これらの複数コンパートメントデバイスまたは複数貯蔵体デバイスにおいては、活性物質はチューブ壁を通って拡散し、従って、特に長期保存中には薬物相互作用が起こる。薬物間の相互作用により、少なくとも1種類の薬物の分解または不活化が生じることが多く、時間の経過と共に、予め設定していた薬物間の放出比率が変化する。
【0009】
特許文献7(ディニース(di Nijs))に記載されたデバイスは、複数コンパートメントデバイスに関連する拡散の問題点を克服することを意図したものである。ディニース(di Nijs)は、2−コンパートメント膣リングを開示しており、各コンパートメントは、別異の活性物質を充填した貯蔵体を有する。しかしながら、長時間にわたって拡散を防ぎ、多様な活性薬物間の放出比率を一定に維持することを目的として、薬物コンパートメントは、ガラス、金または銀などでつくられた不透過性不活性なストッパーで仕切られている。ストッパーは、貯蔵体間の活性物質の拡散を効果的に阻止するが、デバイスの構造は複雑で製造コストがかかる。
【0010】
特許文献8(グレーネウェゲン(Groenewegen)ら)に記載されたデバイスは、現行の送達システムにおける拡散の問題を克服し、また、複数の活性物質を膣内に送達するためのより簡易かつ安価なデバイスを提供することを意図している。該特許は、プロゲステロン様ステロイド化合物およびエストロゲン様ステロイド化合物を長期間にわたって一定比率で同時放出するためのリング型薬物送達システムを開示している。該薬物送達システムは、プロゲステロン様化合物およびエストロゲン様化合物の混合物を含む熱可塑性ポリマー核を有するコンパーメント、ならびに熱可塑性ポリマー表面を有する。しかしながら、その他の既知の膣デバイスと同様に、グレーネウェゲン(Groenewegen)らのデバイスは本質的な限界がある。一般的に、単位時間あたりの薬物放出は、ポリマー材料の外層(壁)内に存在する活性物質の溶解性、および壁内に存在する活性物質の拡散係数によって決まる。従って、貯蔵体の外層材料の選択により、貯蔵体内に含まれている活性物質の放出比率がほぼ決定する。不幸なことに、放出を決定する貯蔵体の外層として十分機能することができるポリマー類はごく少数である。特定の薬物または薬物の組み合わせに対して適切なポリマーを見つけることは困難である。さらに、貯蔵体材料は、外壁に活性物質を適切に供給することができるように、大量の活性物質を取り込めなくてはならない。これらの試みに沿うことは、不可能ではないにしても、非常に困難であり、各新規薬物または薬物の組合せに対して検討せねばならない。
【0011】
長期間にわたって2種類またはそれ以上の活性物質を実質的に互いに一定の比率で放出することができる膣内薬物送達デバイスは、特定の用途に対して非常に有用である。例えば、避妊およびホルモン置換療法の分野においては、プロゲステロン様活性を有する薬物およびエストロゲン様活性を有する薬物を、好ましくは実質的に一定の比率で同時投与することで用途が大きく広がる。
【0012】
避妊用および併用療法を利用した女性の生殖系疾患の治療用の薬物送達システムおよび方法が開発されている。例えば、特許文献9(クロウレイ(Crowley),Jr)は、避妊用にLHRH組成物を性ステロイドと組み合わせて連続的に送達するための送達システムを開示している。特許文献10(クロウレイ(Crowley),Jr)は、良性卵巣分泌障害治療用の同様の送達システムを開示している。
【0013】
本分野におけるこれらの飛躍的な進歩にもかかわらず、避妊用ならびに女性の生殖系の状態および疾患の治療用(例えば、良性卵巣分泌障害の治療および閉経後のホルモン置換療法など)の改良法が希求されている。特に、ホルモン置換ステロイド、ならびに/またはLHRHおよび/もしくはそれらのアナログ類(アゴニスト類および/またはアンタゴニスト類)を使用する方法であり、かつ、安全、生理的、および簡便な様式で投与することができる方法に対する要求度が高い。さらに、LHRHならびに性ステロイドもしくは性ステロイド調節物質を同時に放出するための改良型薬物送達システム、特に、長期間にわたって実質的に一定比率でLHRHおよびステロイド類を放出し、かつ、製造が容易で廉価なシステムが求められている。
【0014】
またさらに、長期間にわたる一定かつ確実な薬物または薬物の組合せの送達は、広範な用途において有用であり、例えば、AIDS/HIV、粥状動脈硬化症、各種の癌、心血管疾患、高血圧、妊娠中毒症、けいれん、退行性神経性障害(degenerative neurological disorders)、糖尿病、血液疾患、耽溺、ならびに肥満および摂食障害などの治療もしくは予防が挙げられる。不運なことに、いくつかの場合においては、満足のゆく放出、放出比率、あるいは放出期間が常に得られるとは限らないばかりか、現在市販されている膣内薬物送達デバイスは、全て、構造が比較的複雑であることから、製造コストがかさんでいる。従って、複数の薬物を制御放出するための改良型薬物送達デバイス、特に、長期間にわたって実質的に一定比率で薬物を放出し、また、容易かつ安価に製造できるデバイスが求められている。
【特許文献1】米国特許第4,292,965号明細書
【特許文献2】米国特許第4,822,616号明細書
【特許文献3】米国特許第3,995,633号明細書
【特許文献4】米国特許第3,995,634号明細書
【特許文献5】米国特許第4,237,885号明細書
【特許文献6】国際公開第97/02015号パンフレット
【特許文献7】米国特許第4,596,576号明細書
【特許文献8】米国特許第5,989,581号明細書
【特許文献9】米国特許第4,762,717号明細書
【特許文献10】米国特許第5,130,137号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、長期間にわたって複数の薬物を徐放させるための薬物送達デバイスを提供することである。さらに、本発明は、現在市販されているデバイスよりも低価格かつ容易に製造されるデバイスをも提供する。本発明の目的は、そのようなデバイスを用いて疾病、特に良性卵巣分泌障害を治療する方法を提供することでもある。本発明のさらなる目的は、避妊およびホルモン置換療法に対して使用する複数の薬物を投与することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第一の側面から見ると、本発明は、2つまたはそれ以上の単位区分を有する薬物送達デバイスに関する。各区分は、薬物透過性ポリマー物質を含み、少なくともひとつの区分は薬物透過性ポリマー物質および薬物を含む。2つまたはそれ以上の区分は、それぞれ薬物を含んでおり、好ましくは、各区分が別異の薬物を含んでいる。薬物透過性ポリマー物質は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのような熱可塑性ポリマーである。区分の少なくとも一端は、接着材料などを用いた結合法、または、同一もしくは別異の熱可塑性ポリマーを用いた区分末端のアニーリングによって別の単位区分の端に付着させる。薬物送達デバイスは、リング型、ウェハース型または坐薬にすることができ、膣リングとしての使用に適している。薬物送達デバイスの外径は40mm〜80mmであり、横断面の直径は2mm〜12mmである。送達される薬物は、ホルモン置換ステロイドまたは避妊薬であり、例えば、エストロゲン様化合物、プロゲステロン様化合物、ならびに/または、ゴナドトロピン放出ホルモンまたはそのペプチド性もしくは非ペプチド性アゴニストもしくはアンタゴニストアナログ類などが挙げられる。薬物は、インターフェロン、抗血管形成因子、成長因子、ホルモン類、酵素類、トランスフェラーゼ類、加水分解酵素類、リアーゼ類、イソメラーゼ類、プロテアーゼ類、リガーゼ類および酸化還元酵素類、酵素阻害剤類、ステロイド類、抗癌剤、抗生物質、成長ホルモン類、多糖類および抗体なども用いることができる。
【0017】
別の側面から見ると、本発明は、2種類またはそれ以上の薬物の放出を制御するための薬物送達システムに関する。薬物送達システムは、2つまたはそれ以上の単位区分を有しており、少なくとも2つの区分は薬物透過性ポリマー物質および薬物の混合物を含む。さらに、少なくとも2つの区分は別異の薬物を含んでおり、薬物透過性ポリマー物質は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのような熱可塑性ポリマーである。 送達される薬物は、ホルモン置換ステロイドまたは避妊薬であり、例えば、エストロゲン様化合物、プロゲステロン様化合物、ならびに/または、ゴナドトロピン放出ホルモンまたはそのペプチド性もしくは非ペプチド性アゴニスト類もしくはアンタゴニストアナログ類などが挙げられる。薬物は、インターフェロン、抗血管形成因子、成長因子、ホルモン類、酵素類、トランスフェラーゼ類、加水分解酵素類、リアーゼ類、イソメラーゼ類、プロテアーゼ類、リガーゼ類および酸化還元酵素類、酵素阻害剤類、ステロイド類、抗癌剤、抗生物質、成長ホルモン類、多糖類および抗体なども用いることができる。
【0018】
さらに別の側面から見ると、本発明は、哺乳類の雌に薬物を送達するための方法に関する。そのような方法は、2つまたはそれ以上の単位区分を有する薬物送達デバイスを調製することを含み、このとき、各区分は薬物透過性ポリマー物質を含み、さらに、少なくとも1つの区分は薬物透過性ポリマー物質と薬物との混合物を含む。次に、薬物送達デバイスを哺乳類の雌の膣管内に挿入し、哺乳類の雌に有効量の薬物を送達するのに十分な期間にわたって膣管内に保持させる。薬物透過性ポリマー物質は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのような熱可塑性ポリマーである。送達される薬物は、ホルモン置換ステロイドまたは避妊薬であり、例えば、エストロゲン様化合物、プロゲステロン様化合物、ならびに/または、ゴナドトロピン放出ホルモンまたはそのペプチドもしくは非ペプチドアゴニストもしくはアンタゴニストアナログ類などが挙げられる。薬物は、インターフェロン、抗血管形成因子、成長因子、ホルモン類、酵素類、トランスフェラーゼ類、加水分解酵素類、リアーゼ類、イソメラーゼ類、プロテアーゼ類、リガーゼ類および酸化還元酵素類、酵素阻害剤類、ステロイド類、抗癌剤、抗生物質、成長ホルモン類、多糖類および抗体なども用いることができる。さらにまた別の側面から見ると、本発明は、リング型薬物送達デバイスを調製する方法に関する。そのような方法は、まず始めに、薬物透過性ポリマー物質を第一の薬物と混合して第一のポリマー混合物を得、該第一のポリマー混合物を型取りして第一のリングを成形し、さらに、第一のリングを切断して2つもしくはそれ以上の第一の単位区分を形成する工程を含む。次に、第二の薬物透過性ポリマー物質および第二の薬物を用いて該方法を繰り返すことにより、第二の単位区分を形成する。第一および第二の薬物透過性ポリマー物質としては、同一または別異のものを用いることができる。次に、第一の区分の一端を第二の区分の一端と接合することによってリング型薬物送達デバイスを形成する。第一および第二の薬物透過性ポリマー物質は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのような熱可塑性ポリマーである。第三の薬物透過性ポリマー物質および第三の薬物を用いて上記の方法を繰り返すことにより、第三の単位区分を形成する。同方法によってさらに区分を形成することができる。区分の接合は、接着材料などを用いることにより、または、同一もしくは別異の熱可塑性ポリマーを用いた区分末端のアニーリングによって行うことができる。別の実施態様においては、リングの代わりに個別の区分を形成し、区分の末端を接合することによってリング型薬物送達デバイスを調製する。
【0019】
別の側面から見ると、本発明はリング型薬物送達デバイスを作成する調製に関する。そのような方法としては、第一の薬物透過性ポリマー物質と第一の薬物とを混合して第一のポリマー混合物を調製し、該第一のポリマー混合物を鋳型に注入して第一の単位区分を形成する工程を含む。次に、第二の薬物透過性ポリマー物質および第二の薬物について該方法を繰り返して第二の単位区分を形成し、従って、薬物送達デバイスが形成される。第一および第二の薬物透過性ポリマー物質としては、同一または別異のものを用いることができる。第一および第二の薬物透過性ポリマー物質としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのような熱可塑性ポリマーを用いることができる。第三の薬物透過性ポリマー物質および第三の薬物について上記の方法を繰り返すことによって第三の単位区分を形成することができる。同方法によってさらに追加の区分を形成することができる。
【0020】
また別の側面から見ると、本発明は、哺乳類の雌の良性卵巣分泌障害(例えば、多嚢胞性卵巣疾患(PCOD)など)を治療する方法に関する。そのような方法としては、少なくとも2つの区分を有する薬物送達デバイスを提供することを含み、このとき、第一の区分は、薬物透過性ポリマー物質、ならびに黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)またはそのアゴニスト性もしくはアンタゴニスト性アナログ類のうちのひとつ、またはGnRH受容体に結合する、もしくは次の作用メカニズムを阻止する低分子ミミックを含み、第二の区分は、薬物透過性ポリマー物質およびエストロゲン様ステロイドを含む。次に、哺乳類の雌の膣内に薬物送達デバイスを挿入し、治療有効量のLHRHおよび有効量のエストロゲン様ステロイドもしくはエストロゲン受容体調節物質を放出させる(LHRHによって誘導される去勢状態のような代謝的影響を避けるため)。薬物送達デバイスは、薬物透過性ポリマー物質およびプロゲステロン様ステロイドもしくはプロゲスチン受容体調節物質を含む第三の区分を追有し、該区分は、有効量のプロゲステロン様ステロイドを放出する。薬物透過性ポリマー物質としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのような熱可塑性ポリマーを用いることができる。薬物送達デバイスは、リング型、ウェハース型または坐薬にすることができるが、好ましくはリング型である。良性卵巣分泌障害は嚢胞性卵巣疾患である。良性卵巣分泌障害は、卵巣のアンドロゲン分泌過剰、卵巣のエストロゲン分泌過剰、莢膜細胞過形成症、男性型多毛症、機能不全性子宮出血、無月経または発情休止によって特徴付けられる。哺乳類の雌とはヒトの雌(女性)である。エストロゲン様ステロイドとしては、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、エストラジオールシピオネート、ジプロピオン酸エストラジオール、エストラジオールエナンテート、抱合ウマエストロゲン、エストリオール、エストロン、硫酸エストロン、エチニルエストラジオール、エストロフレート(estrofurate)、キネストロールまたはメストラノールを用いることができる。エストロゲン様ステロイドとしては、エストロゲン受容体選択的調節物質を用いることができ、そのようなものとしては例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、クロミフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、イドキシフェン(idoxifene)、トレミフェン(toremifene)、チボロン(tibolon)、ICI182,780、ICI164,384、ジエチルスチルベステロール、ゲニステイン(genistein)、ナホキシジン、モキセステロール(moxesterol)、19−ノル−プロゲステロン誘導体類もしくは19−ノル−テストステロン誘導体類などが挙げられる。プロゲステロン様ステロイドとしては、プロゲステロン、17−ヒドロキシプロゲステロン誘導体類、19−ノル−テストステロン誘導体類、19−ノル−プロゲステロン誘導体類、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、ノルゲスチメート、二酢酸エチノジオール、アリルエストレノール(allylestrenol)、リノエストレノール(lynoestrenol)、酢酸フインゲスタノール(fuingestanol asetate)、メドロゲストン、ノルゲストリエノン(norgestrienone)、ジメチデローム(dimethiderome)、エチステロン、シプロテロン、レボ−ノルゲストレル、dl−ノルゲストレル、酢酸シプロテロン、ゲストデン(gestodene)、デソゲストロール、ジドロゲステロン、二酢酸エチノジオール、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、植物プロゲスチン類もしくは動物由来のプロゲスチンまたはそれらの代謝誘導体類などのエストロゲン受容体選択的調節物質が挙げられる。プロゲステロン様ステロイドとしては、RU486、CDB2914、19−ノル−プロゲステロン誘導体、19−ノル−テストステロン誘導体、6−アリール−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン誘導体、5−アリール−1,2−ジヒドロ−5H−クロメノ[3,4−f]キノリン誘導体、5−アルキル−1,2−ジヒドロクロメノ[3,4−f]キノリン誘導体、または6−チオフェンヒドロキノリン誘導体などのプロゲスチン受容体選択的調節物質が挙げられる。
【0021】
さらに別の側面から見ると、本発明は、哺乳類の雌の妊娠を妨げることに関する。そのような方法は、次のような構造を有する薬物送達デバイスを提供することを含む:(1)薬物透過性ポリマー物質、ならびに黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)またはそのアゴニスト性もしくはアンタゴニスト性アナログ類のうちのひとつ、またはGnRH受容体に結合する、もしくは次の作用メカニズムを阻止する低分子ミミックを含む第一の区分、(2)薬物透過性ポリマー物質ならびにエストロゲン様ステロイドもしくはエストロゲン受容体選択的調節物質(SERM)を含む第二の区分、さらに(3)薬物透過性ポリマー物質ならびにプロゲステロン様ステロイドもしくはプロゲスチン受容体選択的調節物質(SPRM)。次に、哺乳類の膣に薬物送達デバイスを挿入し、治療有効量のLHRH、有効量のエストロゲン様ステロイドもしくはエストロゲン受容体選択的調節物質(SERM)、ならびに有効量のプロゲステロン様ステロイドもしくはSPRMを哺乳類の雌の体内に放出させる。薬物透過性ポリマー物質としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのような熱可塑性ポリマーを用いることができる。薬物送達デバイスは、リング型、ウェハース型または坐薬にすることができるが、好ましくはリング型である。
【0022】
またさらに別の側面からみると、本発明は、周期的排卵が起こっていない、および/または閉経周辺期の症状を呈している女性においてエストロゲンの分泌低下を治療する方法に関する。ひとつの実施態様においては、そのような方法は、次のような構造を有する薬物送達デバイスを提供することを含む:(1)薬物透過性ポリマー物質、ならびに黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)またはそのアゴニスト性もしくはアンタゴニスト性アナログ類のうちのひとつ、またはGnRH受容体に結合する、もしくは次の作用メカニズムを阻止する低分子ミミックを含む第一の区分、(2)薬物透過性ポリマー物質、ならびにエストロゲン様ステロイドもしくはエストロゲン受容体選択的調節物質(SERM)などのようなホルモン置換ステロイドを含む第二の区分、さらに(3)薬物透過性ポリマー物質ならびにプロゲステロン様ステロイドもしくはプロゲスチン受容体選択的調節物質(SPRM)を含む第三の区分。追加の実施態様としては、薬物送達デバイスは、第四の区分を有しており、薬物透過性ポリマー物質ならびにアンドロゲンもしくはアンドロゲン受容体選択的調節物質(SARM)を含む。次に、薬物送達デバイスを女性の膣に挿入し、有効量のLHRH、性ステロイド類および/または性ステロイド調節物質を放出させる。ホルモン置換ステロイドの中のエストロゲン構成成分としては、天然に存在するエストロゲンまたは合成エストロゲンなどのようなエストロゲン様ステロイドを用いることができる。エストロゲン様ステロイドとしては、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、エストラジオールシピオネート、ジプロピオン酸エストラジオール、エストラジオールエナンテート、抱合ウマエストロゲン、エストリオール、エストロン、硫酸エストロン、エチニルエストラジオール、エストロフレート(estrofurate)、キネストロールもしくはメストラノール、またはその他のエストロゲン様ステロイドなどが挙げられる。
【0023】
さらに別の側面から見ると、本発明は、周期的排卵が起こっていない、および/または閉経期の症状を呈している女性においてエストロゲンの分泌低下を治療する方法に関する。そのような方法としては、少なくとも2つの区分を有する薬物送達デバイスを提供することを含み、第一の区分には薬物透過性ポリマー物質、ならびにホルモン置換ステロイド(例えば、エストロゲン様ステロイドもしくはエストロゲン受容体選択的調節物質(SERM)を含み、第二の区分には、薬物透過性ポリマー物質およびプロゲステロン様ステロイドもしくはプロゲスチン受容体選択的調節物質(SPRM)を含む。最適実施態様においては、該薬物送達デバイスは第三の区分を追有しており、該区分にはアンドロゲンまたはアンドロゲン受容体選択的調節物質(SARM)を含む。次に、薬物送達デバイスを女性の膣に挿入し、有効量のホルモン置換ステロイドを放出させる。ホルモン置換ステロイドのうちのエストロゲン構成成分としては、上述したような天然に存在するエストロゲンもしくは合成エストロゲンなどのエストロゲン様ステロイドを用いることができる。
【0024】
さらなる側面においては、本発明は、閉経期、閉経周辺期、閉経後を迎え、エストロゲン治療を必要としている女性において、そのような時期に伴う症状および徴候を緩和するための方法に関する。そのような方法は、第一および第二の区分を有する薬物送達デバイスを提供することを含み、ここで、第一の区分は薬物透過性ポリマー物質およびエストロゲン様ステロイドを含有する。次に、薬物送達デバイスを女性の膣に挿入し、有効量のエストロゲン様ステロイドを放出させる。薬物透過性ポリマー物質としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのような熱可塑性ポリマーを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、薬物送達デバイス、哺乳類の雌に薬物を送達する方法、リング型薬物送達デバイスを調製する方法、良性卵巣分泌障害を治療する方法、避妊法、およびホルモン置換療法の方法に関する。
【0026】
薬物透過性ポリマー物質を含む薬物送達デバイスは、少なくとも2つの単位区分を有する。好ましくは、区分の端と端を結合させてリング型にする。少なくとも1つの区分は薬物透過性ポリマー物質と薬物との混合物を含有しており、このとき、薬物は区分内に実質的に均一に分散している。さらに本発明は、複数の薬物を制御放出するための薬物送達システムに関し、該システムは、長期間にわたって実質的に一定比率で薬物を放出する。哺乳類の雌に薬物または薬物の組合せを送達する方法は、2つまたはそれ以上の単位区分を有する薬物送達デバイスを調製する工程、哺乳類の雌の膣管内に該デバイスを挿入する工程、さらに、哺乳類の雌の体内に薬剤学的に有効量の薬物を送達するのに十分な期間にわたって該デバイスを膣管内に維持させる工程を含む。
【0027】
上述したように、薬物透過性ポリマー物質を含む薬物送達デバイスは、少なくとも2つの単位区分を有する。デバイスは、例えば、リング型、ウェハース型または坐薬などのような生理学的に許容される形に成形することができる。ひとつの実施態様においては、区分の末端と末端を結合してリング型にする。少なくともひとつの区分は薬物透過性ポリマー物質と薬物との混合物を含み、このとき、薬物は区分内に実質的に均一に分散している。該薬物送達デバイスは、その形態上の特徴から、長期間にわたって実質的に一定比率で複数の薬物を放出することができる。
【0028】
本発明に従う薬物送達デバイスは、容易に製造することができ、薬物もしくは薬物の組合せの放出を確実かつ予測通りに行うことができる。薬物を含有する液体の核または貯蔵体を有する既知の膣内薬物送達デバイスとは対照的に、本発明に従う方法において使用している固体熱可塑性デバイスは、破裂しにくく、従って、薬物を含有する液体の漏洩も起こりにくい。さらに、多層または複数コンパートメントから構成されている従来型のデバイスとは異なり、本明細書に記載しているデバイスは、従来から行われている押出し技術を利用して容易かつ安価に製造することができる。
【0029】
デバイスの製造に使用する熱可塑性ポリマーは、薬剤学的用途に適した任意の熱可塑性ポリマーまたはエラストマー材料であり、例えば、ポリシロキサン類、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸ビニルコポリマー類、セルロース、ポリスチレンのコポリマー類、ポリアクリレート類、ならびに、多様な種類のポリアミド類およびポリエステル類などが挙げられる。機械的および物理的特性(例えば、材料内への薬物の溶解性など)が優れていることから、エチレン−酢酸ビニルコポリマー類(EVA)が特に好ましい。EVA材料としては、市販されている任意のエチレン−酢酸ビニルコポリマー類を用いることができ、それらは例えば、Elvax(登録商標)、Evatane(登録商標)、Lupolen(登録商標)、Movriton(登録商標)、Ultrathene(登録商標)、およびVestypar(登録商標)という商品名で販売されている。
【0030】
本発明に従う方法において使用している膣内薬物送達デバイスは、必要に応じて任意の大きさにすることができる。ヒトに使用する場合には、リング型デバイスの外径は約40mm〜約80mmであり、好ましくは50mm〜60mmであり、横断面の直径は約1mm〜約12mmであり、好ましくは2〜6mmである。当業者であれば、「リング型」デバイスには、卵形、楕円などの比較的円形の任意の形が含まれることは自明である。
【0031】
本発明は、良性卵巣分泌障害の治療および哺乳類の雌の避妊の方法、さらに、周期的排卵の停止の症状を示す女性におけるエストロゲンの分泌低下の治療、ならびに女性の閉経期、閉経周辺期および閉経後に伴う症状および徴候の緩和法にも関する。そのような方法は、2つまたはそれ以上の単位区分を有する薬物送達デバイスの調製を含み、このとき、少なくともひとつの区分は薬物透過性ポリマー物質および薬物を含む。薬物の選択は特定の用途または治療すべき症状によって決まる。例えば、避妊用および良性卵巣分泌障害の治療用に対しては、使用する薬物は、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびエストロゲン様ステロイド、ならびに逐次服用するプロゲステロン/プロゲスチンであり;避妊用には、使用する薬物は、LHRH、エストロゲン様ステロイドおよびプロゲステロン様ステロイドであり;さらに、エストロゲン分泌低下に対しては、使用する薬物は、エストロゲン様ステロイドなどのホルモン置換ステロイドである。エストロゲン様ステロイドは、閉経に伴う症状および徴候の緩和用にも使用される。同様に、プロゲステロンは閉経に伴う症状および徴候の緩和用に使用することができる。次に、哺乳類の雌(ヒトの女性など)の膣内に薬物送達デバイスを挿入し、有効量の薬物を放出させる。薬物透過性ポリマー物質としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマー類などの熱可塑性ポリマーを用いることができる。薬物送達デバイスは、例えば、リング型、ウェハース型または坐薬などの形にすることができるが、好ましくはリング型である。
【0032】
以下の記述は、本発明の方法をどのように実施するのかを開示している。どのようにして膣用薬物送達デバイスを調製し、使用して、薬剤学的に有効量の薬物を哺乳類の雌の体内に送達するのかについても記載している。
【0033】
I.定義
利便性を計るため、請求の範囲、本明細書および実施例において使用している特定の語句および言葉遣いの意味について以下に記載しておく。
【0034】
本明細書において使用している「単位区分」または「区分」とは、実質的に均一な、または均質な組成物を含む固体材料を指す。特に、「区分」または「単位区分」という語は、核もしくは貯蔵体ならびに材料によって形成される内層および/もしくは外層(表皮、壁、膜、皮膜またはポリマー層など)を有する膣リングまたはそれらの構成部分を除いたものをさす。
【0035】
本明細書において使用している「円筒状単位区分」および「円筒状単位棒」とは、実質的に均一な、または均質な組成物を含む、固体円筒状材料または棒状材料を指す。特に、「区分」および「円筒状単位区分」という語は、核もしくは貯蔵体、ならびに材料によって形成される内層および/もしくは外層(表皮、壁、膜、皮膜またはポリマー層など)を有する膣リングまたはそれらの構成部分を除いたものをさす。
【0036】
本明細書において使用している「薬物透過性」とは、薬物が通過して拡散することができ、その結果、薬物が吸収されて哺乳類の体内で局所的および/または全身的効果を発揮するようなポリマー材料をさす。「非吸収性」という語は、治療を受ける哺乳類の雌の膣管内でポリマー材料が吸収されないことを意味する。「非侵食性」という語は、哺乳類の雌の膣管内でポリマー材料が侵食を起こさないことを意味する。「非分解性」とは、イン・ビボ(in vivo)において、ポリマー材料が分解または崩壊しないことを意味する。「適合性」とは、膣管内の環境に適合性であることを意味し、膣の内容物によってデバイスの引っ張り性または構造的集積性の崩壊が起こらない。同様に、膣管内の設置場所に存在する感受性の高い組織に有害な影響を与えない。これらの非毒性、薬物透過性特性を提供するのに適したポリマー材料には多様なものがあり、例えば、ポリシロキサン類、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸ビニルコポリマー類、セルロース、ポリスチレンのコポリマー類、ポリアクリレート類、ならびに、多様な種類のポリアミド類およびポリエステル類などが挙げられる。上掲のポリマー類を利用して多孔性または微孔性の形状を得ることができる。「熱可塑性ポリマー」とは、ポリマーに特徴的な温度範囲において、加熱によって軟化し、冷却によって硬化することができるポリマー材料をさし、軟化状態において、型抜きまたは押出しによってデバイス内に流し込んで成形することができる。
【0037】
本明細書において使用しているように、「結合手段」とは、2つの単位区分または円筒状単位棒の末端を互いに繋ぎ合わせる、または接続するための方法、メカニズム、材料または装置をさす。本明細書において使用している「接着材料」とは、不活性な接着剤、にかわ、または、区分の末端を結合させるのに十分な接着特性を有するその他の物質をさす。接着材料としては、例えば、医療用シリコーン接着剤などが挙げられる。
【0038】
本明細書において使用している「患者」および「哺乳類の雌」は、相互に読み替えることができ、ヒト、または医学的治療もしくは避妊剤の提供が所望されるその他の動物が挙げられる。
【0039】
「月経周期の卵胞期または黄体期をシミュレートする、または誘導する」とは、患者の体内の性ステロイドホルモン環境をシミュレートする、または誘導することを意味し、そのような患者の性ステロイドホルモン濃度に関して、正常な卵胞期または黄体期の内分泌環境を模倣するような濃度にする。
【0040】
本明細書において使用している「良性卵巣分泌障害」とは、卵巣の機能抑制が重要点である良性状態のうちの任意のものをさす。これらの状態は、卵巣の良性分泌障害が主症状であり、そのような障害としては、(a)多嚢胞性卵巣疾患およびアンドロゲン過剰性男性型多毛症、ならびに/または、(b)アンドロゲン類、エストロゲン類もしくはプロゲスチン類などの卵巣性ステロイド分泌過剰が挙げられる。良性卵巣分泌障害は、例えば、莢膜細胞過形成症、男性型多毛症、機能不全性子宮出血、無月経、発情休止または過少月経などによって特徴付けられる。
【0041】
アンドロゲン類、エストロゲン類またはプロゲスチン類などの卵巣性ホルモンの分泌「過剰」とは、正常な哺乳類の雌のアンドロゲン類、エストロゲン類またはプロゲスチン類などの血清濃度と比較したときに、患者のそれらの濃度が異常であるような量のアンドロゲン類、エストロゲン類またはプロゲスチン類を分泌することを意味する。故に、エストロゲン分泌「過剰」とは、正常な月経周期などの女性の生殖生理機能において現れる正常濃度には当てはまらない濃度のエストロゲンが卵巣から分泌されるような状態を包含することを意味する。プロゲスチン分泌「過剰」とは、例えば、正常な女性の正常な生理学的濃度に対して過量もしくは不適切な濃度になるような大量のプロゲスチンが卵巣から分泌される状態を包含することを意味する。さらに、アンドロゲン分泌「過剰」とは、正常な女性の生理的機能において現れる濃度を超えるような大量のアンドロゲンが卵巣から分泌される状態を包含することを意味する。
【0042】
本明細書において使用している「LHRH」および「LHRH組成物」とは、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ類、LHRHアゴニスト類およびLHRHアンタゴニストのアナログ類(天然のペプチドおよび/または非ペプチド)、ならびに/または、LHRH受容体に結合することができる、および/もしくはヒトなどの哺乳類においてゴナドトロピン欠乏性性機能低下症を引き起こす任意の化合物(ペプチドおよび/または非ペプチド)をさす。本発明において使用しているLHRHは、生理学的に活性であって、LHRH受容体に結合することができるペプチド類もしくは非ペプチドアナログ類、ならびに、ゴナドトロピン分泌阻害剤もしくはゴナドトロピン受容体効果阻止剤である。LHRHは、以下のような構造を有するデカペプチドである:
p−Glu−His−Trp−Ser−Tyr−Gly−Leu−Arg−Pro−Gly−NH2(配列番号1)
本明細書において使用しているように、「LHRHアゴニスト」および「LHRHアンタゴニスト」という語は、それぞれ、生理学的に活性であって、LHRHの生物学的活性を増強する、または阻害するようなペプチド類または非ペプチドアナログ類をさす。例えば、本発明に従う方法おいて有用なLHRHアゴニストとしては、Cystorelin(ヘキスト(Hoechst)社)、Gonadorelin(アイエルスト(Ayerst)社)、Zoladex.TM(ICI社)、Buserelin(ヘキスト(Hoechst)社)、Leuprolide(アボット(Abbott)社/タケダ(Takeda)社)、Decapeptyl(デバイオファーム(Debiopharm)社、イプセン(Ipsen)社/ビューフォー(Beaufour)社)、Nafarelin(シンテックス(Syntex)社)、Lutrelin(ワイエス(Wyeth)社)およびHistrelin(オルト(Ortho)社)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。LHRH、LHRHアナログ類、LHRHアゴニスト類およびLHRHアンタゴニスト類は当該分野においては既知であり、以下の特許を含む多数の特許に記載されている:米国特許第4,705,778号、第4,690,916号、第4,530,920号、第4,481,190号、第4,419,347号、第4,341,767号、第4,318,905号、第4,234,571号、第4,386,074号、第4,244,946号、第4,218,439号、第4,215,038号、第4,072,668号、第4,431,635号、第4,317,815号、第4,010,125号、第4,504,414号、第4,493,934号、第4,377,515号、第4,338,305号、第4,089,946号、第4,111,923号、第4,512,923号、4,008,209号および第4,010,149号。これらの全てを参照として本明細書中に取り入れておく、上掲の特許中に記載されているLHRH組成物は、本明細書に従う方法に使用することができる。
【0043】
本明細書において使用している「エストロゲン様ステロイド」および「エストロゲン」という語は、エストラジオールなどのようにエストロゲン様ホルモンの生物学的特性を発揮する天然または合成の物質と相互に入れ換えて使用することができる。本明細書において使用している「エストロゲン様ステロイド」および「エストロゲン」は「抱合エストロゲン類」をも包含しており、抱合エストロゲンとは、一般的には妊娠しているウマの尿から得たエストロゲン混合物のうち、天然に存在し、水溶性、抱合型化合物の無晶形調製物である(例えば、エストロン硫酸ナトリウムなど)。硫酸エステル類のナトリウム塩の混合物、またはエストロゲン様物質の硫酸抱合体のグルカノライドである「エステル化エストロゲン類」も含まれる。好ましいエストロゲン類の例としては次のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:吉草酸エストラジオール、安息香酸エストラジオール、17−β−エストラジオール、エストラジオールシピオネート、エストロン、エストロン硫酸ピペラジン、エストリオール、エチルエストラジオール、リン酸ポリエストラジオール、エストロン硫酸カリウム、ベンゼストロール、クロロトリアニセン、メタレンエストリル(methallenestril)、ジエネストロール、二リン酸ジエチルスチルベストロール、メストラノール、ジエチルスチルベステロール(DES)、キネストラノール、植物エストロゲン類、動物由来エストロゲン類(例えば、ウマエストロゲン類など)および動物由来エストロゲン類の代謝的誘導体類。細胞内に存在する既知のエストロゲン受容体、または、細胞外膜に結合しており、エストラジオールもしくはその他のエストロゲン様化合物を模倣するような生物学的効果を発揮するエストロゲン受容体に結合する、任意のステロイド化合物または非ステロイド化合物をも含む。
【0044】
本明細書において使用している「プロゲステロン様ステロイド」および「プロゲスチン」という語は、黄体ホルモンであるプロゲステロンによって引き起こされる生物学的変化のうちのいくつかもしくは全てを発揮するような天然または合成の物質と相互に入れ換えて使用することができる。例えば、プロゲスチンは子宮内膜の分泌の変化を誘導することができる。プロゲスチン類の例としては次のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:17−ヒドロキシプロゲステロン誘導体類、19−ノル−テストステロン誘導体類、19−ノル−プロゲステロン誘導体類、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチンドレル、ノルゲストレル、ノルゲスチメート、二酢酸エチノジオール、アリルエストレノール、リノエストレノール、酢酸フインゲスタノール、メドロゲストン、ノルゲストリエノン、ジメチデローム、エチステロン、シプロテロン、レボ−ノルゲストレル、dl−ノルゲストレル、酢酸シプロテロン、ゲストデン、デソゲストロール、ジドロゲステロン、二酢酸エチノジオール、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、植物プロゲスチン類、動物由来プロゲスチン類、および動物由来プロゲスチン類の代謝誘導体類など。これらの化合物は、細胞質もしくは膜に結合しているプロゲステロンに結合し、プロゲステロンもしくはプロゲスチン類の生物学的影響のうちの任意のものを模倣する任意のステロイド様または非ステロイド様化合物をも含む。
【0045】
本明細書において使用している「アンドロゲン類ステロイド」および「アンドロゲン」という語は、副男性性器(accessory male sex organs)の活性および/もしくは筋肉の発達を刺激し、ならびに/または男性性徴の発達を促すような天然または合成の物質と相互に入れ換えて使用することができる。適切なアンドロゲン類の例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:テストステロン、メチルテストステロン、フルオキシメステロン、テストステロンシピオネート、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、オキシメトロン、エチルエストレノール、オキサンドロロン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、デカン酸ナンドロロン、テストステロンブシレート(testosteron buccilate)、スタノゾロール、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone propionate)、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、ジヒドロテストステロン、植物アンドロゲン類、動物由来アンドロゲン類、および動物由来アンドロゲン類の代謝誘導体類。細胞質もしくは膜結合性アンドロゲン受容体に結合し、テストステロンもしくはその他のアンドロゲン様化合物を模倣する生物学的影響を及ぼすような、任意のステロイド様または非ステロイド様化合物をも含む。
【0046】
「エストロゲン受容体選択的調節物質(SERM)」とは、エストロゲンアナログであって、組織選択的効果を発揮する化合物である。そのような化合物は、エストロゲンアンタゴニストまたは部分的アゴニストとして作用することができる。好ましいSERM類の例としては、タモキシフェン、ラロキシフェン、クロミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、トレミフェン、チボロン、ICI 182,780、ICI 164,384、ジエチルスチルベステロール、ゲニステイン、ナホキシジン、モキセストロール、19−ノル−プロゲステロン誘導体類および19−ノル−テストステロン誘導体類などが挙げられる。
【0047】
「アンドロゲン受容体選択的調節物質(SARM)」とは、アンドロゲンアナログであって、組織選択的効果を発揮する化合物である。そのような化合物はアンドロゲンアンタゴニストまたは部分的アゴニストとして作用することができる。好ましいSARM類の例としては、酢酸シプロテロン、ヒドロキシフルタミド(hydroxyflutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、スピロノラクトン、4−(トリフルオロメチル)−2(1H)−ピロリジノ[3,2−g]キノリノン誘導体類、1,2−ジヒドロピリドノ[5,6−g]キノリン誘導体類およびピペリジノ[3,2−g]キノリノン誘導体類などが挙げられる。
【0048】
「プロゲスチン受容体選択的調節物質(SPRM)」とは、プロゲスチンアナログであって、組織選択的効果を発揮する化合物である。そのような化合物はプロゲスチンアンタゴニストまたは部分的アゴニストとして作用することができる。好ましいSPRM類の例としては、RU486、CDB2914、19−ノル−プロゲステロン誘導体類、19−ノル−テストステロン誘導体類、6−アリール−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン誘導体類、5−アリール−1,2−ジヒドロ−5H−クロメノ[3,4−f]キノリン誘導体類、5−アルキル−1,2−ジヒドロクロメノ[3,4−f]キノリン誘導体類および6−チオフェンヒドロキノリン誘導体類などが挙げられる。
【0049】
特に言及していない限り、本発明に従う方法において使用しているホルモンステロイド類(例えば、エストロゲン様ステロイド類、プロゲステロン様ステロイド類およびアンドロゲン様ステロイド類など)は、それぞれの性ステロイド類(天然および合成のもの、誘導体類およびそれらのアナログ類を含む)、ならびに、それぞれのホルモン受容体調節化合物(例えば、SERM類、SPRM類およびSARM類など)を含む。ホルモンステロイド類は当該分野において既知であり、例えば、レミントン著・薬剤学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(第16版、1980年)の925〜939ページに記載されている。
【0050】
「閉経後」の女性とは、ホルモン置換療法またはその他の薬物治療を行っていない状態で、無月経の期間が少なくとも12ヶ月続いている、または、血清中の卵胞刺激ホルモンの濃度が30mIU/ml以上である女性をさす。
【0051】
「閉経周辺期」の女性とは、ホルモン置換療法またはその他の薬物治療を行っていない状態で、月経と月経の間の期間が変化しており、エストロゲン減少に伴う症状(例えば、血管運動性のほてり、膣の乾燥および月経前の症状の悪化など)を有する女性をさす。ホルモン置換療法またはその他の薬物治療を行っていない状態で、無月経の期間が12ヶ月未満である女性も含む。
【0052】
本明細書において使用しているように、「薬物」という語は、ヒトなどの哺乳類において、局所的および/または全身性の効果を発揮するような、生理学的または薬理学的に活性な任意の物質をさす。
【0053】
本明細書において使用しているように、「薬理学的に有効な量」、「治療有効量」または単に「有効量」とは、意図している薬理学的、治療的または予防的結果を発現するのに効果的な薬物量をさす。例えば、ある疾病または疾患に関連する測定可能なパラメーターが少なくとも25%低下した場合に、施した臨床治療が有効であると考えるならば、その疾病または疾患の治療に対するある薬物の治療有効量は、そのようなパラメーターを少なくとも25%低下させるのに必要な量である。
【0054】
「制御放出」とは、本発明の目的に対しては、治療期間中の薬物の血液(例えば、血漿など)濃度が、治療域内ではあるが、毒性濃度以下に維持されるような速度における薬物放出と定義する。「制御放出」には、治療期間中に別異の速度で、または別異の時点で、複数の薬物を同時に投与することを含む。
【0055】
II.薬物送達デバイス
例示として、図1に本発明のひとつの実施態様を示す。この図に示されている薬物送達デバイスは、単に説明のために記載したものであり、本発明を制限するためのものではない。当業者であれば、治療を受ける特定の哺乳類に依存して、また、被治療者の状態および重篤度により、薬物送達デバイスは、多様な形状、大きさ、および容積に製造することができる。図1においては、薬物送達デバイス10は、ヒトの膣管内への挿入に適した形状、大きさの本体11を有する。薬物送達デバイス10は、拡散によって患者の膣管内に薬物を放出するポリマーから形成されている本体11を有する。図1に示す薬物送達デバイス10は、2つの円筒状単位区分12および13から構成されており、結合手段14によってそれぞれ接続されている。図1には円筒状単位区分を示しているが、当業者であれば、そのような区分は、多様な形状、大きさおよび容積に製造できることは自明である。2つの区分は、接合手段を用いずに直接融合させることもできる。そのような処方は、実施例9の多口鋳型に含まれる。図示したデバイスは2個の区分を有しているが、本発明に従う薬物送達デバイスは、3個、4個、5個、6個またはそれ以上の区分を有することができる。特定の用途のために必要な区分の数および大きさは、とりわけ、送達される投与薬物の種類、デバイス内の拡散および薬物相互作用防止用の偽区分の必要性に従って決まる。
【0056】
本発明に従う薬物送達デバイスは、薬物透過性ポリマー製材料で形成されている。好ましいポリマーとしては、例えば、オレフィンおよびビニル型ポリマー類、炭化水素型ポリマー類、縮合型ポリマー類、ゴム型ポリマー類、ならびに有機シリコーンポリマー類などが挙げられる。本発明の好ましい実施態様においては、ポリマーは、非吸収性熱可塑性ポリマーである。薬物送達デバイスの製造に使用することができるポリマー類としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:ポリ(エチレン−酢酸ビニル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、可塑化ポリ(塩化ビニル)、可塑化ナイロン、可塑化軟質ナイロン、可塑化ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(トリフルオロクロロエチレン)、ポリ(4,4’−イソプロピレン−炭酸ジフェニレン)、ポリ(エチレンビニルエステル類)、ポリ(ビニルクロリドジエチルフマレート)、ポリ(アクリル酸とメタクリル酸とのエステル類)、酢酸セルロース、アクリル酸セルロース類、部分加水分解ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(アミド類)、ポリ(ビニルカーボネート)、ポリウレタン、ポリ(オレフィン類)など。これらのポリマー類およびそれらの物理的特性については、当業者に既知であり、以下に開示されている手順に従って合成することができる:「ポリマー化学および技術百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Technology)」(インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers )社、ニューヨーク、1971年、第15巻、pp.508-530);「ポリマーズ(Polymers)」(1976年、第17巻、938-956);技術報告(Technical Bulletin)、SCR-159、1965年、シェル(Shell)社。ニューヨーク;およびそれらに引用されている参考文献、ならびに「一般的なポリマーに関するハンドブック(Handbook of Common Polymers)」(スコット(Scott)およびロフ(Roff)、CRCプレス(CRC Press)社、オハイオ州クリーブランド、1971年)。
【0057】
好ましい実施態様においては、熱可塑性プラスチックポリマーは、エチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーである。既知であり、市販されているEVAコポリマー類は、拡散による薬物の放出制御に特に有用である。非常に適したEVAポリマー類としては、例えば、アルドリッヒ・ケミカル( Aldrich Chemical )社によって製造されたEVA材料(カタログ番号34,050−2);Evatane(登録商標)(ICI社から販売されている28-150番、28-399番および28-400番、ならびに、アトケム(Atochem)社から販売されている28.420番、特に、28.25番および33.25番);デュポン・ド・ネモーアズ(Du Pont de Nemours)社から販売されているElvax(登録商標)の310番、250番、230番、220番および210番などが挙げられる。
【0058】
EVAを含む薬物送達デバイスによる薬物の放出は、材料中の酢酸ビニル含量によって大きく左右される。大きく見ると、本発明は、酢酸ビニル含量が約4〜80重量%であり、溶融指標(melt index)が約0.1〜1000g/10分であるようなEVAコポリマー類を使用することを意図している。溶融指標とは、標準温度、標準圧下において、標準円筒状開口部から押し出され得るポリマーのグラム数であり、従って、ポリマーの分子量と逆比の関係がある。好ましくは、EVAは、酢酸ビニル含量によってが約4〜50重量%であり、溶融指数が、約0.5〜250g/10分である。一般的には、薬物がポリマーを通過する速度は、中に含まれている薬物の分子量および溶解性、ならびにポリマー内の酢酸ビニル含量によって決まる。このことは、特定のEVAの選択は、送達される特定の薬物によって決まることを意味する。EVAの組成および特性を変化させることにより、デバイスの面積あたりの投与速度を制御することができる。従って、EVAコポリマーの特性を変化させることにより、同一面積のデバイスで薬物の投与量を変えることができる。EVAを含む薬物送達デバイスによる薬物の放出は、区分の表面積によっても制御される。例えば、薬物の放出速度を加速することを目的として、区分の長さおよび/または周りの長さを伸長する。
【0059】
コポリマー中の酢酸ビニル含量、ならびに溶融指数もしくは分子量を変化させることに加えて、酢酸基を選択的に加水分解してアルコールにすることによってコポリマーの特性を変えることができる。ポリマーの酢酸ビニル単位の一部をビニルアルコール単位に転換することにより、ポリマーはより親水性になり、比較的親水性の薬物の通過速度が増す。加水分解されてビニルアルコール単位になる酢酸ビニル単位の割合は、非常に広く設定できるが、一般的には、約20〜60%を転換させる。この部分加水分解は既知の方法であり、当該分野において既知の標準的な条件下で行うことができる。加水分解方法の例としては、米国特許第3,386,978号および第3,494,908号に記載されており、これらを参照として本明細書中に取り入れておく。
【0060】
薬物送達デバイスからの薬物の拡散速度は、孔径および厚さが既知の焼結ガラスフィルターを通ってひとつのチャンバーから別異のチャンバーに薬物が移動する速度を測定し、得られたデータから薬物移動速度を計算することによって、概数が求められる。この方法は当該分野において既知であり、例えば、Proc.Roy.Sci.London, シリーズA、148:1935;J.Pharm.Sci.(1966)55:1224-1229、およびそれらの中に引用されている参考文献中に記載されている。同一または同様の装置を使用することにより、薬物の拡散係数も実験的に求めることができる。拡散係数を求める方法については、「固体、液体および気体中における拡散(Diffusion in Solids,Liquids and Gases)」(W.ヨスト(Jost)編著、アカデミック・プレス(Academic Press)社、ニューヨーク、1960年)第9章pp.436-488に記載されている。好ましくは、送達される薬物は、分子量が50〜2000、より好ましくは200〜1300である。
【0061】
EVAコポリマー中の薬物の溶解度は、薬物の飽和溶液を用意し、コポリマー材料の一定の面積中に存在する薬物量を分析によって確認することにより、求めた。例えば、EVAコポリマー中の薬物の溶解性は、既知の温度(例えば、37℃など)において、薬物の飽和溶液または(薬物が37℃で液体であるならば)純粋な液体薬物を用いて、ポリマー材料と最初に平衡に達した時点で判断する。次に、薬物に適した溶媒を用いて飽和ポリマー材料から薬物を脱離させる。次に、紫外線吸収、可視分光光度計、屈折率、ポーラログラフィー、電気伝導度などの標準的な技術を用いて、得られた溶液を分析し、材料内の薬物の濃度または溶解度を計算する。
【0062】
ポリマー材料から薬物中の薬物の溶解度は、当該分野において既知の多様な技術によって求めることができる。溶解度の測定に用いられる一般的な方法としては、化学的分析、密度の測定、屈折率、電気伝導度などが挙げられる。溶解度を求めるための多様な方法の詳細については、衛生研究所のアメリカ合衆国公衆衛生局報告書第67号(U.S. Public Health Service Bulletin No.67 of the Hygene Laboratory);「科学技術百科事典(Encyclopedia of Science and Technology)」(マグロウ−ヒル(Mc Graw-Hill)社、1971年)12:542-556;および、「物理学事典(Encyclopediac Dictionary of Physics)」(ペルガモン・プレス(Pergamon Press)社、1962年)6:545-557などに記載されている。また、フィックの法則に従えば、薬物溶液速度は、ポリマー材料に接触している薬物の面積(cm2)に直接比例し、かつ、溶解した薬物が拡散通過しなければならない通路の長さに逆比例する(レミントン著・薬剤学(Remington Pharmaceutical Science)(マック出版社(Mac Publishing)、第14版、1970年)、pp.246-269を参照)。
【0063】
好ましい実施態様においては、本発明に従う薬物送達デバイスは「ゼロ次速度」薬物投与を行い、このとき、薬物が一定状態で放出されるため、体内組織における薬物の吸収および代謝の予測が可能になる。この方法においては、薬物の送達は、予想治療効果が所望される特定の体内臓器に「標的化」することができ、この場合、予想外の影響が起こりうる肝臓などの他臓器は回避する。従って、薬物もしくは薬物組成物の代謝的および治療的使用の効果が増強され、代謝的副作用の発生が軽減される。「ゼロ次速度」薬物投与は当該分野において既知である。標的部位において、薬理学的に活性な組成物を予測した量だけ時間制御放出するためのその他の方法も知られている。薬物の標的送達を行うための方法としては、例えば、リポソーム類、キャプシド類、キャプソイド類、ポリマーナノカプセル類およびポリマーマイクロカプセル類などのミセル構造の使用が挙げられる。リポソーム懸濁液(特定のウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する細胞を標的とするリポソーム類を含む)は、本発明の方法の実施に特に有用である。リポソーム処方は、当業者において既知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号、PCT公報WO 91/06309号、欧州特許公報EP-A-43075号に記載されており、本明細書に参考として取り入れておく。リポソームなどの疎水性が高い処方を使用する場合には、膣上皮を通過する薬物の吸収速度も増す。
【0064】
別の実施態様においては、ポリマーマトリックスは、内包されている薬物が所望する放出速度範囲で放出されるように、超音波エネルギーによって分解することができ、あるいは、非分解性ポリマーの場合には、キャビテーションの影響またはその他の物理的影響により、放出を促進する。本実施態様に適したポリマーのうちの代表的なものとしては、米国特許第4,657,543号(ランガー(Langer)ら、)に記載されている処方に従うポリアンヒドリド類が挙げられ、該特許を参照として本明細書中に取り入れておく。コポリマー内のモノマーは、規則的にまたはランダムに分布させることができる。アンヒドリド結合は、加水分解に対して非常に反応性が高いので、内包されている組成物が不均質に侵食されることを目的として、ポリマー骨格は疎水性にすることが好ましい。疎水性の制御は、例えば、連結骨格中の芳香族部位の濃度を制御する、または、コポリマー中のモノマー比率をモニターするなどにより、容易に行うことができる。特に好ましい骨格は、1−フェニラミン、トリプトファン、チロシンまたはグリシンなどの酸を含む。その他の適切なポリマー類としては、エチレン−酢酸ビニル、ポリ酪酸、ポリグルタミン酸、ポリカプロラクトン、酪酸/グリコール酸コポリマー類、ポリオルトエステル類、ポリアミド類などが挙げられる。非分解性ポリマーとしては、エチレン−酢酸ビニル、シリコーン、ヒドロゲル類(ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコールなど)などが挙げられる。
【0065】
本発明に従う薬物送達デバイスの製造に使用される、好ましい適合性、非吸収性、非毒性ポリマー材料(例えば、EVAコポリマー、有機ポリシロキサンまたはその他のゴム型弾性材料など)は、優れた放出特性を提供することに加え、哺乳類の雌の膣管内の挿入部位において、顕著な組織反応を引き起こさない。結果的に、本発明に従う薬物送達デバイスは、III〜VIに記載しているような広範な用途に有用である。
【0066】
本明細書に記載されているような従来から有用な薬物に関する投与単位量は、当該分野において既知である(例えば、レミントン著・薬剤学(Remington Pharmaceutical Science)、第IV部(マック出版社(Mac Publishing)(ペンシルバニア州イーストン)、第14版、1970年)などを参照)。薬物送達デバイス内に含まれる薬物量は、特定の薬物、所望する治療効果、およびデバイスが治療を施す時間によって変わる。本発明に従うデバイスは、多様な用途および適応症に対する治療のための投与方式の提供を意図していることから、デバイスに封入する薬物量の上限はない。同様に、下限は、薬物の活性およびデバイスから薬物が放出される時間によって決まる。従って、デバイスに封入される、またはデバイスから放出される薬物の治療有効量の範囲を定めることは実際的ではない。
【0067】
放出される薬物の相対量は、投与される薬物または所望される効果に対応して大きく変化させることができる。一般的に、薬物の量は、予め設定した所望される速度に従い、制御された時間にわたって放出される量であり、そのような速度は、ポリマーマトリックス内に存在する活性物質の初期濃度に応じて決まる。上述した第二の実施態様においては、速度は、ポリマーマトリックスが受ける超音波エネルギーのレベルによって決まる。このことは、活性物質の量は、標準的な単回投与よりも多いことを必然的に意味する。本発明の目的に適した割合としては、ポリマーマトリックス約99.99〜約50重量部に対して活性物質約0.01〜50重量部の範囲であり、好ましくは、薬物の場合には約10〜約30重量部を封入して最終的な系を100重量部にする。放出される組成物中のポリマーマトリックスは、従来から行われている任意の方法で混合することができ、そのような方法としては、例えば、粉末の構成成分を混合し、続いて、組成物が分解するより低く、ポリマーが所望する形態的特性を示すような温度において、熱成型などによって所望する形状に成形する。そのような方法については、本明細書の実施例中に詳細に記載している。
【0068】
本発明に従う方法において使用する薬物送達デバイスに用いられているポリマー混合物は、標準的な技術によって製造することができ、そのような製造においては、放出される薬物およびポリマーマトリックスを含む系を構造的に定めるための調合、混合または、それらと等価の手段などの工程を含む。例えば、本発明に従うデバイスを製造するためのひとつの適切な方法は、ポリマーおよび適切な溶媒を混合することによってキャスティング溶液を調製し、該キャスティング溶液に既知量の薬物を混合し、該溶液を鋳型に流し込み、(必要であれば減圧下で)鋳型を乾燥させ、ポリマーを沈殿させることにより、放出薬物が含まれているマトリックスを生成する。別の方法としては、粉末状のポリマーを粉末状の放出薬物と混合し、適切な温度および圧力下で鋳型に入れ、注入、圧縮または押出しによって所望する形状にする。2種類またはそれ以上の薬物を送達する場合には、上述の製造工程を各薬物に対して繰り返すことにより、各薬物に対して別異の成形ポリマー混合物が得られる。好ましくは、各々が別異の薬物を含んでいる各成形ポリマー混合物は、従来から行われている切断技術を用いて所望する長さの小片に切断し、従って、複数の均一な区分を得る。複数の薬物を同時送達するための薬物送達デバイスまたはシステムは、送達される各薬物に対して、成形ポリマー混合物の区分のうちの少なくとも1個を直接または間接的に連結することによって組み立てる。好ましくは、均一な区分を組み立てて厚さが約1mm〜約5mmのリング型にする。本発明に従う薬物送達デバイスは、別異の使用環境に薬物を送達することを目的として、多様な形状、大きさ、および形態に加工することができる。
【0069】
別の方法としては、2種類またはそれ以上の薬物を送達する場合には、薬物:ポリマーの各混合物は、2種類の薬物混合物が1個の固体単位を形成し、結合手段が不要になるように、適切な温度および圧力下で一緒に鋳型に入れ、注入、圧縮または押出しによって所望する形状にする。ひとつの実施態様においては、薬物混合物は、1個の入口(port)を有する鋳型に、好ましくは連続的に注入する。別の実施態様においては、以下の実施例8に例示しているように、複数の入口を有する鋳型に薬物混合物を同時または連続的に注入する。多口鋳型(multiple port mold)は当該分野において既知であり、市販されている。
【0070】
ひとつの実施態様においては、既に概説しているように、結合手段を用い、区分の末端を連結することにより、薬物送達デバイスを形成する。結合手段としては、材料または構造を接着させるためのものとして当該分野において既知である任意の方法、メカニズム、装置または材料を使用することができる。結合手段の例としては、溶媒接合、接着結合、熱融合、熱接合、加圧などが挙げられる。溶媒を使用する場合には、区分の末端を有機溶媒で湿らせることによって表面を粘性化し、さらに、表面どうしを接触させ、液体密結合によって結合・接着する。区分の末端は、少なくとも一方の末端に接着剤を塗布し、次に、接着剤を塗布した末端(または末端どうし)を接触させることにより、接着結合させてリング型の送達デバイスを形成することができる。上述の方法を行うためには、溶媒は有機溶媒を使用し、それらとしては例えば、塩化メチレン、二塩化エチレン、トリクロロベンゼン、ジオキサン、イソフォロン、テトラヒドロフラン、芳香環式および塩素化炭化水素、混合溶媒(例えば、二塩化エチレン:ジアセトンアルコール=50/50、アルコール/トルエン=40/60、アルコール/四塩化炭素=30/70など)などが挙げられる。適切な接着剤としては、天然の接着剤および合成接着剤が挙げられ、例えば、動物性、ニトロセルロース系、ポリアミド系、フェノール系、アミノ系、エポキシ系、イソシアナート系、アクリル系、シリコーン系、ポリマーの有機接着剤などが挙げられる。当該分野においては、接着剤(例えば、化学百科事典(The Encyclopedia of Chemistry)(第2版;G.L.クラーク(Clark)およびG.G.ハウレー(Hawley)編、ヴァンノストランド・レインホールド(VanNostrand Reinhold)社、オハイオ州シンシナティ、1966年)などを参照)、および溶媒(例えば、化学および技術百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(カーク−オスマー(Kirk-Othmer)編、第16巻、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers )社、ニューヨーク、1969年)などを参照)については既知である。
【0071】
薬物送達デバイスまたはシステムの区分の長さを選択することにより、必要とされている挙動を取らせる。区分の長さの比率は、送達される各薬物の所望する比率および投与量を含む、特定の治療用途によって決まる。区分の長さの比率は、30:1〜1:30であり、好ましくは15:1〜1:1である。薬物の拡散および相互作用を防ぐために偽区分が必要な場合には、偽区分の長さは、薬物が過度に混じり合うことを防ぐのに十分な長さである。偽区分の長さは、ポリマー物質の性質および薬物透過に対する阻害能によって決まる。薬物の混合は放出パターンを妨害することから、偽区分によって薬物の混合が完全に阻止されることが好ましい。しかしながら、薬物によっては、一般的には少量の混合は許容されており、薬物の血漿濃度が要求値の範囲内に収まる様式で薬物の放出に影響を与える。偽区分は、リング型構造を閉環させる、または完成させるためにも使用することができる。
【0072】
別の実施態様においては、薬物送達デバイスは、区分ではなく単位棒を調製し、次に、棒の末端を繋ぎ合わせ、複数の薬物を制御放出するための薬物送達デバイスを製造する。この実施態様においては、ポリマー材料をリング型ではなく、棒状の鋳型に入れることを除けば、基本的には、単位棒は区分に関する記載に従って調製する。膣リングの場合には、ポリマー物質は、棒を乾燥させ、曲げることによって最終的なリング型デバイスを形成する際に、十分に柔軟でなければならない。従って、リングを切断して区分にする工程を省略することができ、鋳型形成された棒は、所望投与量の薬物を送達するための特徴(例えば、長さ、直径など)を満たす。別の方法としては、ポリマー材料を鋳型に入れて過大円筒状棒を成形し、次に、所望する寸法の短い棒に切断する。区分に関する記載に従い、適切な大きさの棒の末端どうしを繋ぎ合わせ、リング型薬物送達デバイスを成形する。
【0073】
既に記載しているように、薬物送達デバイスは、必要とされる任意の大きさに製造することができる。しかしながら、ヒトに使用する場合には、外環の直径は一般的に40mm〜80mm、好ましくは45mm〜70mmであり、より好ましくは50mm〜60mmである。同様に、一般的に横断面の直径は0.5mm〜12mmであり、好ましくは0.5mm〜10mmであり、より好ましくは1mm〜8mmであり、さらに好ましくは1〜6mmであり、最も好ましくは1〜5mmである。
【0074】
III.投与
別の側面から見ると、本発明は、哺乳類の雌に薬物を送達するための方法に関する。該方法は、上述に従って薬物送達デバイスを調製することを含む。次に、処置される哺乳類の雌の膣管内に該デバイスを挿入するが、哺乳類の雌に有効量の薬物を送達するのに十分な時間にわたってその場所に保持される。本発明は、膣内薬物送達デバイスについて記載しているが、本発明は、哺乳類の雄に薬物を投与するためのデバイスの製造および使用についても包含している。この場合には哺乳類の雄への使用(例えば、皮下への埋込み、または直腸坐剤など)に適した形状および大きさのデバイスを製造する。雄用の薬物送達デバイスは、広範な用途に使用するため、ならびに、以下に記載したような多様な疾患および医学的状態、特に前立腺癌などのような男性特異的疾患の治療を行うために、任意の適切な活性物質を含む。粘膜投与のその他の経路としては、鼻粘膜、および口腔内粘膜などが挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、薬物、ならびに治療を要する疾患もしくは状態によって決まる。
【0075】
本発明に従う薬物送達デバイスは、その利便性、安全性および優れた放出特性により、広範な用途において有用であり、多様な症状および疾患の治療に用いることができる。デバイスの用途および治療用の例としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:避妊、ホルモン置換療法、多嚢胞性卵巣疾患、中毒、画像法、AIDS/HIV、免疫学、アルコール関連疾患、感染性疾患、アレルギー、白血病/リンパ腫、アルツハイマー病、肺癌、麻酔学、代謝性疾患、抗感染症剤、新生児学、抗炎症剤、神経性疾患、関節炎、神経筋肉疾患、喘息、核医学、粥状動脈硬化、肥満、摂食障害、骨疾患、整形外科、乳癌、結腸癌、前立腺癌、癌、寄生虫による疾患、心血管疾患、高血圧、妊娠中毒症、発作、周産期疾患、小児の健康、妊娠、予防医学、先天性疾患、判断分析、精神病、退行性神経疾患(degenerative neurological disorders)、肺疾患、痴呆、放射線学、皮膚科学、腎疾患、真性糖尿病、生殖、診断、リューマチ疾患、卒中、薬物の発見/スクリーニング、手術、内分泌疾患、移植、ENT、ワクチン、疫学、血管医学、眼疾患、創傷治癒、胎児および母胎医学、女性の健康、胃腸管疾患、遺伝子治療、遺伝子診断、尿生殖路疾患、老人医学、成長および発達、聴覚、血液学的疾患および肝胆汁性疾患など。
【0076】
本発明においては、身体の治療に使用され、また、ポリマーを通過して拡散することができ、膣管の内膜によって吸収されるような薬剤学的に活性な任意の物質が有用である。必須ではないが、好ましくは、薬物は、適切な政府組織もしくは団体によって安全かつ有効であるとみなされたものである。例えば、ヒトに使用する薬物は、FDAにより、21 C.F.R.330.5、331〜361、440〜460に列挙されたものであり、獣医学的に使用される薬物は、FDAにより、21C.F.R.500〜582に列挙されたものであり、参照として本明細書中に取り入れておく。これらの全ての薬物は、本発明に従う新規なポリマーネットワークに使用することができると考えられる。適切な活性物質(薬物)の例としては、次の様なものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:インターフェロン、抗血管形成因子、抗体、抗原、多糖類、成長因子、ホルモン類(インスリン、グルコゲン(glucogen)、副甲状腺および下垂体ホルモン類、カルシトニン、バソプレッシン、レニン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、コルチコトロピン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンおよび絨毛性ゴナドトロピン類など)、酵素類(ダイズトリプシン阻害因子、リゾチーム、カタラーゼ、腫瘍血管形成因子、軟骨因子、トランスフェラーゼ類、加水分解酵素、リサーゼ類(lysases)、イソメラーゼ類、プロテアーゼ類、リガーゼ類ならびに酸化還元酵素類(エステラーゼ類、ホスファターゼ類、グリシダーゼ類(glysicdases)およびペプチダーゼ類など)など)、酵素阻害剤類(ロイペプチン、アンチペイン(antipain)、クリモスタチン(chrymostatin)およびペプスタチンなど)、ならびに、薬物類(ステロイド類、抗癌剤類もしくは抗生物質類など)。「注射可能薬物に関するハンドブック(Handbook on Injectable Drugs)第6版」(ローレンスA.トリッセル(Lawrence A. Trissel)編、米国病院薬剤師会(American Society of Hospital Pharmacists)、メリーランド州ベゼスダ、1990年)に例示されているように、非経口投与に適した薬物は既知である(参考として本明細書中に取り入れておく)。
【0077】
薬剤学的に活性な物質としては、生物学的活性を有する任意の物質、例えば、タンパク質、ポリペプチド類、ポリヌクレオチド類、核タンパク質類、多糖類、糖タンパク質類、リポタンパク質類、ならびに、合成的および生物学的に造られたそれらのアナログ類なども含まれる。「タンパク質」という語は当業者に既知であり、本発明の目的に対してはペプチドも含む。タンパク質またはペプチドは、天然に存在する、もしくは合成され、生物学的に活性な任意のタンパク質またはペプチドである。
【0078】
タンパク質の例としては、抗体、酵素類、ステロイド類、成長ホルモンおよび成長ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモンならびにそのアゴニストおよびアンタゴニストのアナログ類、ソマトスタチンおよびそのアナログ類、ゴナドトロピン類(黄体形成ホルモンおよび卵胞刺激ホルモンなど)、ペプチドT、チロカルシトニン、副甲状腺ホルモン、グルカゴン、バソプレッシン、オキシトシン、アンギオテンシンIおよびII、ブラジキニン、カリジン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、インスリン、グルカゴン、さらに上掲の分子の多数のアナログ類および同種分子が挙げられる。薬剤学的物質は、次の物質から選択することができる:インシュリン;MMR(耳下腺炎、麻疹および風疹)ワクチン、腸チフスワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、単純へルペスウイルス、バクテリア毒素、コレラ毒素Bサブユニット、インフルエンザワクチンウイルス、百日咳ウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、カナリアポックスウイルス、ポリオワクチンウイルス、熱帯熱マラリア原虫、カルメット−ゲラン菌(BCG)、肺炎桿菌、HIVエンベロープ糖タンパク質およびサイトカイン類から選択される抗原;ならびに、ウシソマトトロピン(BSTとも称される)、エストロゲン類、アンドロゲン類、インスリン増殖因子(IGFとも称される)、インターロイキンI、インターロイキンIIおよびサイトカイン類から選択されるその他の物質。そのようなサイトカイン類としては、インターフェロン−β、インターフェロン−γおよびタフトシンの3種類がある。
【0079】
バクテリア毒素の例としては、破傷風菌、ジフテリア菌、シュードモナスA、結核菌などが挙げられる。HIVエンベロープ糖タンパク質の例としては、AIDSワクチン用のpg120およびgp160が挙げられる。抗潰瘍性H.sub.2受容体アンタゴニストの例としては、ラニチジン、シメチジンおよびファモチジンが挙げられ、また、その他の抗潰瘍薬としては、オンパラジド(omparazide)、セスプリド(cesupride)およびミソプロストールが挙げられる。抗糖尿病薬の例としてはグリジピドが挙げられる。インシュリンは糖尿病の制御に用いられる。
【0080】
本発明に従う薬物送達デバイスによって送達される薬物のさらなる例としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:プロクロルペラジンエジシレート、硫酸鉄、アミノカプロン酸、塩酸メカミラミン、塩酸プロカインアミド、硫酸アンフェタミン、塩酸メタンフェタミン、塩酸ベンツアンフェタミン、硫酸イソプロテレノール、塩酸フェンメトラジン、塩化ベタネコール、塩化メタコリン、塩酸ピロカルピン、硫酸アトロピン、臭化スコポラミン、ヨウ化イソプロパミド、塩化トリジヘキセチル、塩酸フェンホルミン、塩酸メチルフェニデート、テオフィリンコリナート、塩酸セファレキシン、ジフェニドール、塩酸メクリジン、マレイン酸プロクロルペラジン、フェノキシベンザミン、マレイン酸チエチルペラ、アニシンドン(anisindon)、ジフェナジオンエリトリチルテトラニトレート、ジゴキシン、イソフルロフェート、アセタゾラミド、メタゾラミド、ベンドロフルメチアジド、クロロプロマイド(chloropromaide)、トラザミド、酢酸クロルマジノン、フェナグリコドール、アロプリノール、アルミニウムアスピリン、メトトレキセート、アセチルスルフィソキサゾール、エリスロマイシン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチコステロン、酢酸コルチゾン、デキサメタゾンおよびその誘導体類(ベタメタゾン、トリアムシノロン、メチルテストステロン、17−S−エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3−メチルエステル、プレドニゾロン、17.変形−ヒドロキシプロゲステロンアセタート、19−ノル−プロゲステロン、ノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチエデロン、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノルエチノドレルなど)、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダク、インドプロフェン、ニトログリセリン、ジニトロイソソルビド、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アロプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロルプロマジン、メチルドパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック、乳酸第一鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンザミンン、ジルチアゼム、ミルリノン、カプロプリル、マンドール、カンベンツ(quanbenz)、ヒドロクロロチアジド、ラニチジン、フルルビプロフェン、フェヌフェン、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナク、メフェナミク、フルフェナミク、ジフイナール(difuinal)、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミル、ガロパミル、アムロジピン、ミオフラジン、リシノルプリル、エナラプリル、エナラプリラット、カプトプリル、ラミプリル、ファモチジン、ニザチジン、スクラフェート、エチンチジン、テトラトロール、ミノキシジル、クロロジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリンおよびイミプラミンなど。
【0081】
治療効果の持続およびその他の優れた特性を有する本発明の薬剤学的組成物への使用が特に適していると考えられる薬剤の例としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:イミジゾール類(imidizoles)(ミコナゾール、エコナゾール、テルコナゾール、サペルコナゾール、イトラコナゾール、メトロニダゾール、フルコナゾール、ケトコナゾールおよびクロトリマゾールなど)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびそのアナログ類、ノノキシノール−9、GnRHのアゴニストもしくはアンタゴニスト、天然もしくは合成のプロゲストリン(progestrin)(プロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンなどの17−ヒドロキシプロゲステロン誘導体類など)、19−ノルテストステロンアナログ類(ノルエチンドロンなど)、天然もしくは合成のエストロゲン類(抱合エストロゲン類、エストラジオール、エストロピペート(estropipate)およびエチニルエストラジオールなど)、ビホスホネート類(エチドロナート、アレンドロナート、チルドロナート、レセドロナート、クロドロナートおよびパミドロナートなど)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン類、炭酸脱水酵素阻害剤(フェルバメートおよびドルゾラミドなど)、マスト細胞安定剤(ゼスターバーグステロール−A(xesterbergsterol-A)、ロドキサミンおよびクロモリンなど)、プロスタグランジン阻害剤(ジクロフェナクおよびケトロラクなど)、ステロイド(プレドニゾロン、デキサメタゾン、フルロメチロン、リメキソロン(rimexolone)およびロテペドノール(lotepednol)など)、抗ヒスタミン剤(アンタゾリン、フェニラミンおよびヒスチミナーゼなど)、硝酸ピロカルピン、β−ブロッカー(レボブノロールおよびマレイン酸チモロールなど)、遮光薬、?瘡薬(サリチル酸、硫黄、レゾルシノール、一酢酸レゾルシノールおよび過酸化ベンゾイルなど)、ふけ防止薬(コールタール、ピリチオン亜鉛、サリチル酸、硫化セレンおよび硫黄など)、外皮用剤(入浴剤、皮膚軟化薬、水化剤、収斂薬、止痒薬、保護剤、ケラチン軟化剤およびヒドロコルチゾンなど)、ヒドロキノン、またはニコチンなど。
【0082】
本発明の組成物は、安全かつ有効量の薬剤学的に活性な物質を含む。本明細書において使用している「安全かつ有効」とは、治療を受ける症状が良い方向に顕著に変化する、または、薬剤学的効果が得られるのに十分な量であるが、重篤な副作用を回避し得る量を意味する。上述しているように、本明細書に従う組成物は、疾病もしくは身体的不調の原因または症状を治療する薬剤、ならびに、身体的魅力を増す、もしくは、疾患あるいは疾病の身体的発現を隠すための身体保護剤または化粧品を含むものと考えられる。
【0083】
本発明に従う調製品においては、従来から使用されており、薬剤学的に活性な物質の作用を干渉しないような任意の透過促進剤を使用することができる。「透過促進剤」とは、薬剤学的に活性な物質の取込みを増加させる任意の化合物である。本発明に従う薬物送達デバイスにおいて使用することができる透過促進剤の例としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:アルコール類、短鎖および長鎖アルコール類、ポリアルコール類、アミン類およびアミド類、尿素、アミノ酸およびそれらのエステル類、アミド類、アゾン(azone)もしくはピロリドンおよびそれらの誘導体類、テルペン類、脂肪酸類およびそれらのエステル類、大環状化合物、スルホキシド類、テンシド類(tensides)、ベンジルジメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、シネオール、コカミドプロピルベタイン(cocamidopropyl betain)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン(cocamidopropyl hydroxysultaine)、ドデシルピリジニウムクロリド、ドデカミン、ヘキサデシルトリメチルアンモニオプロパンスルフォネート、ミリスチン酸イソプロピル、リモネン、リノレン酸(OA)、リノレン酸(LA)、メントール、ラウリン酸メチル、メチルピロリドン、N−デシル−2−ピロリドン、NLS、ニコチンスルフェート、ノニル−1,3−ジオキソラン、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、オレイルベタイン、PP、ポリエチレングリコールドデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN20)、SLA、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム(SOS)、ソルビタンモノラウレート(S20)、TWEEN20、テトラカインおよびTriton-X 。透過促進剤のさらなる例は、サヤニ(Sayani)およびチェン(Chien)、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.,13:85-184(1996);カランデ(Karande)ら、Nature Biotechnology,22(2)192-197;プフィスター(Pfister)ら、Med.Device Technol.,1990 Nov-Dec,1(6):28-33;ミトラゴトリ(Mitragotri)、Pharm.Res.,2000 Nov,17(11):1354-9;およびハドグラフト(Hadgraft)、Int.J.Pharm.,1999 Jul.5,184(1):1-6、ならびに本明細書に引用している参考文献に記載されている。
【0084】
本発明に従う薬物送達デバイスは、1日から数ヶ月の期間にわたって膣内に保持され、女性患者の場合には、すぐに着脱できるように構築されている。該デバイスは、特徴的な形状と大きさを有しているので、ペッサリーのように子宮頸をふさぐことはない。追加の実施態様においては、局所的に有効な抗菌剤、例えば、ネオマイシン、ニスタチンおよびポリミキシンなどのような抗生物質などもポリマー材料と混合することができる。本発明に従う改良型デバイスは、複数の貯蔵体または層を有する膣内デバイスなどよりも多数の長所を有している。そのような長所としては、複数の薬物を制御・同時放出すること、長時間にわたって実質的に一定比率で薬物を放出すること、ならびに容易かつ安価に製造できることなどが挙げられる。薬物または薬物の組み合わせは、所望する局所および/または全身性効果を発揮するのに十分な量をデバイスに封入することができる。本発明に従う薬物送達デバイスは、現行のデバイスと比較して、より迅速に効果を発揮し、さらに、有効な生理学的効果が所望されている既定の時間中の血清濃度をより均一かつ一定にする。このことは、既知の膣内デバイスにおいて生じる変動と著しく対照的であり、そのような変動の例としては例えば、層状デバイスの大多数において生じる放出遅延、複数コンパートメントもしくは複数貯蔵体デバイスにおいて頻繁に観察される不安定で不正確な放出、ならびに、複数の薬物を投与するための薬物送達デバイスに起こりがちな、既定の放出比率からの変化などが挙げられる。
【0085】
IV.良性卵巣分泌障害の治療法
ひとつの実施態様においては、本発明は、薬物送達デバイスを用い、有効量のLHRH組成物(すなわち、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ類、LHRHアゴニスト類および/もしくはLHRHアンタゴニスト類、ならびに/または、LHRH受容体に結合することができるそれらの非ペプチドアナログ類)、有効量のエストロゲン様ステロイドおよび/もしくはその受容体調節物質、ならびに有効量のプロゲステロン様ステロイドおよび/もしくはその受容体調節物質を送達することにより、哺乳類の雌(患者)の良性卵巣分泌障害を治療する方法に関する。好ましくは、月経周期のうちの誘導性卵胞期、可能であれば月経の開始時期にデバイスを投与する。患者の良性卵巣分泌障害が無月経を特徴とする場合には、本発明の方法は、妊娠していないことを確認した後に、随時開始することができる。良性卵巣分泌障害の治療に対し、LHRH組成物の連続送達を性ステロイドの送達と組み合わせることについては、米国特許第5,130,137号(クロウレイ(Crowley),Jr.)に詳細に記載されており、本明細書中に参照として該特許全体を取り入れておく。
【0086】
さらに、卵巣が過量の性ステロイド類(すなわち、エストロゲン類、プロゲスチン類および/もしくはアンドロゲン類)を分泌するなどの多様な理由によって卵巣が機能不全に陥っているような異常を有し、その結果、月経周期が不規則になりがち、および/もしくは男性型多毛症を発現しているような患者も本発明の方法の対象である。本発明の方法は、多嚢胞性卵巣疾患、ならびに機能不全性子宮出血、無月経、および特にゴナドトロピン過剰性、ゴナドトロピン正常性、ゴナドトロピン過少性の無月経、ならびに卵胞莢膜増殖症によって特徴付けられる卵巣疾患の治療に特に有用である。
【0087】
良性卵巣分泌障害を治療するための本発明の方法は、患者の正常な性ホルモンパターンをシミュレートするような連続的ホルモン置換療法を行うことを特徴としており、このときの性ホルモンパターンは、正常な女性の排卵月経周期中に生じる性ステロイド分泌のレベルおよび/またはパターンに類似している。
【0088】
プロゲステロンおよびエストラジオールは当該分野において十分な特性付けが行われている。表1には、適切な特性を有し、ヒトに使用されている現行のエストラジオールおよびプロゲステロン製品を列記している。表1においては、以下の文献を参照した:(1)レヴィ(Levy)ら、Hum.Reprod.,1999 Mar,14(3):606-610;(2)ミルクイオ(Mircuioiu)ら、Eur.J.Drug Metab. Pharmacokinet.,1998 Jul-Sep,23(3):391-396;および(3)アーチャー(Archer)ら、Am. J.Obstet.Gynecol.,1995 Aug,173(2):471-477,結論477-478;これら全てを参考として本明細書中に取り入れておく。
【表1】

【0089】
良性卵巣分泌障害を治療するための本発明の方法は、2つまたはそれ以上の区分を有する薬物送達デバイスを提供することを含み、このとき、第一の区分は、薬物透過性ポリマー物質およびLHRHを含み、第二の区分は、エストロゲン様ステロイドまたはエストロゲン受容体選択的調節物質(SERM)の有効量を含む。次に、哺乳類の雌(女性など)の膣内に薬物送達デバイスを挿入し、有効量のホルモンを放出させる。薬物透過性ポリマー物質は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどの熱可塑性ポリマーである。薬物送達デバイスは、リング型、ウェハース型、または坐薬である。好ましい実施態様においては、薬物送達デバイスは、IIの所に記載したようなリング型デバイスである。
【0090】
本発明のこのような側面に従って使用することができるエストロゲン様ステロイド類には、天然のエストロゲン様ホルモンおよび同種のものがある。同種のものとしては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:エストラジオール、安息香酸エストラジオール、エストラジオールシピオネート、エストラジオールバレレート、エストロン、ピペラジン、硫酸エストロン、エチニルエストラジオール、ポリエストラジオールホスフェート、エストリオール、およびエストロンカリウムスルフェート。合成エストロゲン類も本発明に使用することができ、それらとしては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:ベンゼストロール、クロロトリアニセン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジホスフェートおよびメストラノール。本発明の好ましい実施態様においては、天然のエストロゲン様ホルモンを使用する。ウマエストロゲン類などのように、獣医学的使用に対して開発されたエストロゲン類、例えば、エクイレリニン、硫酸エクイレリニンおよびエステトロールなども含まれる。
【0091】
上述のエストロゲン様化合物に加えて、本発明のこのような側面において有用なエストロゲン様ステロイドとしては、エストロゲン受容体選択的調節物質(SERMs)が挙げられるが、これらは、組織選択的作用を有するエストロゲンアナログ類である。適切なSERMsとしては、タモキシフェン、ラロキシフェン、クロミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、トレミフェン、チボロン、ICI 182,780、ICI 164,384、ジエチルスチルベストロール、ゲニステイン、ナホキシジン、モキセストロール、19−ノル−プロゲステロン誘導体類および19−ノル−テストステロン誘導体類などが挙げられる。
【0092】
エストロゲン様ステロイドの一般的な投与量範囲は、本発明に従う方法に対して使用することを選択したエストロゲン様ステロイド、および、哺乳類の雌の患者によって決まる。例えば、エストラジオールを成人女性に使用する場合には、一般的な投与範囲は、エストラジオールの血清濃度が約20〜約200pg/mlになるような量である。好ましくは、エストラジオールの血清濃度は約50〜約150pg/mlであり、より好ましくは、約80〜約120pg/mlである。エストラジオールのこのような範囲と生理学的に等価であるような濃度範囲の合成エストロゲン類も、本発明の方法に従って使用することができる。
【0093】
血漿中のエストラジオールは、ELISAなどの当該分野において既知の多様な方法によって測定することができる。例えば、血漿中のエストラジオール濃度は、AxSYMイムノアッセイシステム(アボット(Abbott)社)を使用し、Estradiol reagent pack(アボット(Abbott)社、カタログ番号7A63-20)を用い、メーカーのプロトコールに従うことにより、微粒子酵素免疫アッセイ(MEIA)によって測定することができる。
【0094】
本明細書に記載されている本発明に従って使用することができるプロゲステロン様ステロイドとしては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:ジドロゲステロン、二酢酸エチノジオール、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、プロゲステロンおよび酢酸メゲストロールなど。
【0095】
獣医師が使用するプロゲステロン様ステロイドも本発明において使用することができ、そのようなものとしては、例えば、アセトキシプロゲステロン、酢酸クロルマジノン、酢酸デルマジノン、プロリゲステロン、酢酸メレンゲストロールおよび酢酸メゲストロールなどが挙げられる。
【0096】
本発明のこのような側面において有用なその他のプロゲステロン様ステロイドとしては、プロゲスチン受容体選択的調節物質(SPRM)が挙げられる。適切なSPRMの例としては、RU486、CDB2914、19−ノル−プロゲステロン誘導体類、19−ノル−テストステロン誘導体類、6−アリール−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン誘導体類、5−アリール−1,2−ジヒドロ−5H−クロメノ[3,4−f]キノリン誘導体類、5−アルキル−1,2−ジヒドロクロメノ[3,4−f]キノリン誘導体類、および6−チオフェンヒドロキノリン誘導体類などが挙げられる。
【0097】
プロゲステロン様ステロイドの一般的な投与量範囲は、本発明に従う方法に対して採用したプロゲステロン様ステロイド、および、哺乳類の雌の患者によって決まる。例えば、成人女性に使用する場合には、一般的な投与範囲は、プロゲステロンの血清濃度が約1〜約20ng/mlになるような量である。好ましくは、プロゲステロンの血清濃度は約1〜約15ng/mlであり、より好ましくは、約2〜約10ng/mlである。
【0098】
血漿中のプロゲステロンは、ELISAなどの当該分野において既知の多様な方法によって測定することができる。例えば、レヴィ(Levy)ら、Human Reproduction,14:606-610(1999)には、IMMULITE化学発光イムノアッセイ(ダイアグノスティックプロダクツ社(Diagonostic Products Corporation)、カリフォルニア州ロサンゼルス)によって血漿中のプロゲステロンを測定することができると記載されている。該文献を参考として本明細書中に取り入れておく。
【0099】
LHRH組成物の有効投与量を組み合わせて投与する場合には、投与量範囲は、使用する特定のLHRH組成物によって決まるが、下垂体膜のLHRH受容体上のLHRH組成物の作用によってLHおよびFSHの分泌を抑制する、ならびに/または、それに続く生体作用を阻止するのに十分な量である。当業者であれば、有効投与量範囲は化合物に特異的であり、患者の特徴(例えば、種、年齢および体重など)によって決まることは自明である。当業者であれば、LHRH組成物の有効投与量範囲は、不要な実験をすることなく、通常の試験によって決定することができる。さらに、LHRH組成物は、1種類のLHRH組成物、または2種類もしくはそれ以上のLHRH組成物を含む。一般的には、約0.01〜10mg/kg/日の量の活性LHRH組成物を投与することが望ましい。この範囲は、LHRHアンタゴニスト性アナログ類を投与するのか、LHRHアゴニスト性アナログ類を投与するのか、あるいは両者を組み合わせて投与するのかによって変動することは、当業者であれば理解できるはずである。
【0100】
血漿中のFSHおよびLHの濃度測定法は当該分野において既知である。例えば、FSHおよびLHの濃度は、ELISAによって測定することができる。レヴィ(Levy)らは、黄体形成ホルモンおよびFSHは、Enzyme test kit(ベーリンガー・マンハイム・イムノダイアグノスティックス(Boehringer Mannheim Immunodiagnostics)社、イギリス国サセックス)を用いて測定することができると記載している。
【0101】
当該分野において周知されているように、月経周期はヒトおよび霊長類に特徴的であり、その他の脊椎動物では生じない。その他の哺乳類は発情周期を有する。月経周期および発情周期は、視床下部、下垂体および卵巣のホルモン類の同様な相互作用によって制御されており、卵巣ホルモン類が生殖管に与える影響は類似している。一般的に、月経周期は、卵胞期と黄体期の二相に分けられる。卵胞期は月経の開始から排卵まで(ヒトでは約14日間)である。黄体期は排卵から次の月経の開始まで(ヒトでは約14日間)である。
【0102】
一般的に、発情周期は、発情期、発情後期、発情休止期および発情前期の四期に分けられる。通常、排卵は発情期に起こり、従って、大まかには、発情期および発情後期が黄体期に対応する。発情休止期および発情前期は、卵胞期にほぼ対応する。本発明は、発情周期を有する哺乳類にも応用できることは明らかであることから、本明細書においては、これらの期間を月経周期の「卵胞期」および「黄体期」と称する。発情周期を有する哺乳類に対する適切な投与量範囲は、当業者であれば、不要な実験をすることなく、通常の試験によって決定することができる。発情周期を有する哺乳類においては、発情行動を制御することも望まれる。当業者であれば、妊娠を阻止し、発情行動を抑制するための投与量範囲についても、通常の試験によって決定することができる。本方法は、例えば、雌の動物が嚢胞性卵巣疾患(COD)と診断され、特に、そのような嚢胞が、雌の性欲異常亢進、連続的発情、不規則な発情、分娩後の最初の発情、出産後の発情休止、発情後の発情休止、黄体の持続または精液注入後の発情休止などの特徴を示す場合には、本方法はそのような雌の動物の治療に特に有用である。
【0103】
本発明に従う方法は、ヒト、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、クマおよび家禽類に対して実施することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0104】
LHRH組成物は、多様な表面からの吸収が非常に良好である。従って、経口、皮下、筋肉内、静脈内、膣内、鼻内、経皮および耳からの投与の全てについて有効であることが証明されている。本発明の好ましい実施態様においては、送達システムの投与は膣経由で行う。膣上皮を介して約1〜10%またはそれ以上のLHRH組成物が吸収される。従って、LHRH組成物は、経膣吸収を可能にするようなマトリックスを用いた膣送達システムによって投与する。この膣送達システムは、エストロゲン様ステロイドの生理学的量である有効投与量を送達することもできる初のシステムである。本送達システムにより、ゴナドトロピン類の完全抑制、卵巣の生殖機能の排除、卵巣のステロイド合成の完全抑制が可能になり、さらに、LHRH投与中に生じるエストロゲン欠損による長期の副作用を抑えるのに十分な濃度のエストロゲンを生理学的に置換する効果もある。本膣送達デバイスは、月経周期の卵胞期中の月経開始時に投与することが好ましい。
【0105】
本発明の方法は、繁殖の誘導にも有用である。ヒツジなどのような繁殖期を有する動物は、多様な長さの卵胞期を誘導し、次に黄体期を誘導することにより、発情が誘導される。そのように発情を誘導することにより、より時節にかない、実験的に制御可能な繁殖を行うことができる。本発明の方法は、より高頻度、例えば、年に1回または2回以上の繁殖を誘導することもできる。
【0106】
V.哺乳類の避妊法
別の実施態様においては、本発明は、哺乳類において妊娠を妨害する方法に関する。そのような方法は、月経周期の卵胞期中の正常月経開始時に、有効量のLHRH組成物(すなわち、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ類、LHRHアゴニスト類および/もしくはLHRHアンタゴニスト類、ならびに/またはLHRH受容体に結合することができる非ペプチド性のそれらのアナログ類)ならびに有効量のエストロゲン様ステロイドおよび/もしくはエストロゲン受容体選択的調節物質(SERM)を投与することを含む。次に、月経周期の黄体期中に、有効量のLHRH組成物、有効量のエストロゲン様ステロイドおよび/もしくはSERM、ならびに有効量のプロゲステロン様ステロイドおよび/もしくはプロゲスチン受容体選択的調節物質(SPRM)を投与することを含む。黄体期に続き、LHRH組成物ならびに有効量のエストロゲン様ステロイドおよび/もしくはSERMを投与すると、一般的には月経が始まるはずである。避妊用に、LHRH組成物の連続送達を性ステロイドの送達と組み合わせることについては、米国特許第4,762,717号(クロウレイ(Crowley),Jr.)に詳細に記載されており、本明細書中に参考としてその全体を取り入れておく。
【0107】
本発明のこのような側面について有用なLHRH組成物(すなわち、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ類、LHRHアゴニスト類および/もしくはLHRHアンタゴニスト類、ならびに/またはLHRH受容体に結合することができる非ペプチド性のそれらのアナログ類)ならびにエストロゲン様ステロイドおよび/もしくはSERM、ならびにプロゲステロン様ステロイドもしくは非ステロイド性アナログ類および/もしくはSERMについては、上述している。
【0108】
エストロゲン様ステロイドおよびSERM類の一般的な投与量範囲は、本発明に従う方法に対して採用したエストロゲン様ステロイド化合物、および、哺乳類の雌の患者によって決まる。例えば、成人女性に使用する場合には、一般的な投与範囲は、エストラジオールの血清濃度が約50〜約140pg/mlになるような量である。好ましくは、エストラジオールの血清濃度は約20〜約150pg/mlであり、より好ましくは、約80〜約120pg/mlである。血清中のエストロゲン様ステロイドの濃度は、IVの記載に従って測定することができる。
【0109】
プロゲステロン様ステロイドおよびSPRM類の一般的な投与量範囲は、本発明に従う方法に対して採用したプロゲステロン様ステロイド、および、哺乳類の雌の患者によって決まる。例えば、成人女性に使用する場合には、一般的な投与範囲は、プロゲステロンの血清濃度が約1〜約20ng/mlになるような量である。好ましくは、プロゲステロンの血清濃度は約1〜約15ng/mlであり、より好ましくは、約2〜約10ng/mlである。血清中のプロゲステロン様ステロイドの濃度は、IVの記載に従って測定することができる。
【0110】
LHRH組成物の有効投与量の組み合わせ投与においては、投与量範囲は、使用する特定のLHRH組成物によって決まるが、下垂体膜受容体上のLHRH組成物の作用によってLHおよびFSHの分泌を抑制し、続いて生じる作用を阻止するのに十分な量である。当業者であれば、有効投与量範囲は化合物特異的であり、また、患者の年齢および体重などの特徴によって決まることは、了解済みであろう。当業者であれば、LHRH組成物の有効投与量範囲は、不要な実験をすることなく、通常の試験によって決定することができる。さらに、LHRH組成物は、1種類のLHRH組成物、または2種類もしくはそれ以上のLHRH組成物を含む。一般的には、活性LHRH組成物は、約0.01〜10mg/kg/日の量を投与することが適切である。当業者であれば、この範囲は、LHRHアンタゴニストアナログ類もしくはLHRHアゴニストアナログ類またはそれら2つの組み合わせ、のいずれを使用するのかによって異なることは理解できるはずである。血清中のLHおよびFSHの濃度は、IVの記載に従って測定することができる。
【0111】
当業者において知られているように、月経周期はヒトおよび霊長類に特徴的であり、その他の脊椎動物群では生じない。その他の哺乳類は発情周期を有する。月経周期および発情周期は、視床下部、下垂体および卵巣のホルモン類の同様な相互作用によって制御されており、卵巣ホルモン類が生殖管に与える影響は類似している。一般的に、月経周期は、卵胞期と黄体期の二相に分けられる。卵胞期は月経の開始から排卵まで(ヒトでは約14日間)である。黄体期は排卵から次の月経の開始まで(ヒトでは約14日間)である。
【0112】
一般的に、発情周期は、発情期、発情後期、発情休止期および発情前期の四期に分けられる。通常、排卵は発情期に起こり、従って、大まかには、発情期および発情後期が黄体期に対応する。発情休止期および発情前期は、卵胞期にほぼ対応する。本発明は、発情周期を有する哺乳類にも応用できることは明らかであることから、本明細書においては、これらの期間を月経周期の「卵胞期」および「黄体期」と称する。発情周期を有する哺乳類に対する適切な投与量範囲は、当業者であれば、不要な実験をすることなく、通常の試験によって決定することができる。発情周期を有する哺乳類においては、発情行動を制御することも望まれる。当業者であれば、妊娠を阻止し、発情行動を抑制するための投与量範囲についても、通常の試験によって決定することができる。
【0113】
本発明に従う方法は、ヒト、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、クマおよび家禽類に対して実施することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0114】
哺乳類の避妊を行うための本発明の方法は、2つまたはそれ以上の区分を有する薬物送達デバイスを投与することを含むが、このとき、第一の区分は薬物透過性ポリマー物質およびLHRHを含み、第二の区分は有効量のエストロゲン様ステロイドもしくはSERMを含む。次に、女性などの哺乳類の雌の膣内に該薬物送達デバイスを挿入し、有効量のホルモンを放出させる。薬物透過性ポリマー物質としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどの熱可塑性ポリマーを用いることができる。薬物送達デバイスは、リング型、ウェハース型または坐薬である。好ましい実施態様においては、薬物送達デバイスは、Vに記載しているようなリング型デバイスである。
【0115】
本発明のこのような側面に関するひとつの実施態様においては、上述したデバイスは、卵胞期(一般的にヒトでは14日間)にLHRH/エストロゲン様ステロイド送達システムを膣内に保持した後に取り出し、LHRH/エストロゲン様ステロイドの組み合わせ、ならびに生理学的に有効量のプロゲステロン様ステロイドもしくはSERMを含む第二の膣送達デバイスに入れ換える。この第二の送達システムは、月経周期(一般的にヒトでは14日間)の黄体期の間、正常月経が開始するまで膣内に保持しておく。この第二の送達システムは、雌に対して人工的な黄体期を創出する。
【0116】
第二の膣送達システムに続き、第一の膣送達システムを再投与することにより、月経が開始し、患者が妊娠していないことが確認される。さらに、第二の送達システムからプロゲステロン様ステロイドが投与されて月経が起こることにより、子宮内膜過形成を防ぐこともできる。
【0117】
本発明のこのような側面に関する別の実施態様においては、上述の2つの処方(LHRH/エストロゲン様ステロイド処方およびLHRH/エストロゲン様ステロイド/プロゲステロン様ステロイド処方)をひとつの薬物送達デバイスに組み合わせるが、これは、月経周期の全期間にわたって雌の膣内に挿入したままにしておくものである。本実施態様においては、薬物送達デバイスは、ホルモン処方毎に少なくともひとつの円筒状単位区分を有し、あるいは、別の様式としては、活性成分(すなわち、LHRH、性ステロイドまたは性ステロイド調節物質)毎に少なくともひとつの円筒状単位区分を有する。ポリマー材料の選択、およびポリマー材料のLHRH/性ステロイド/性ステロイド調節物質に対する比は、各ステロイド類および/もしくはステロイド処方が適切な放出速度を呈するように、各区分に対して予め設定しておく。放出特性に基づいてポリマー材料を選択し、また、ポリマー材料に対する薬物の比を調整することにより、本発明に従う方法は、月経周期の適切な期間において、LHRH、エストロゲン様ステロイドおよびプロゲステロン様ステロイドを予め設定した期間にわたって送達し、所望する避妊効果をもたらす。例えば、このような「組み合わせ」デバイスは、エストロゲン様化合物と組み合わせることにより、30日間にわたって連続的にLHRHならびに/またはそのアゴニスト類もしくはアンタゴニスト類を放出する。そのような治療を約2週間行った後、周期の残りの14日間は、デバイスは、プロゲステロンまたはプロゲステロン様ステロイドもしくは非ステロイド化合物を放出し、その濃度の低下に続いて月経血の出血が誘導されるが、これは、正常な雌の月経周期において起こるのと同様に、プロゲステロンによる支持が低下することによるものである。ひとつの実施態様においては、上述した2つの処方(LHRH/エストロゲン様ステロイド処方、およびLHRH/エストロゲン様ステロイド/プロゲステロン様ステロイド処方)は、表IIに示すような特徴を有する。
【表2】

【0118】
VI.ホルモン置換療法
別の側面から見ると、本発明は、閉経周辺期または閉経後の女性を治療する方法に関するが、未熟卵巣機能不全(premature ovarian failure)(例えば、外科的手術、放射線照射または化学療法などにより、卵巣の機能が失われてしまった若い女性など)を有する全ての年代の女性を治療の対象として含む。このような側面から見ると、本発明は、エストロゲンの分泌低下を治療するための方法、ならびに、閉経、閉経周辺期および閉経後の女性に現れる症状および徴候を緩和するための方法を提供する。ひとつの実施態様においては、そのような方法は、以下のVに記載しているような薬物送達デバイスを提供し、ここで、該デバイスは、薬物透過性ポリマー物質、ならびに、(i)アンドロゲンもしくはアンドロゲン受容体選択的調節物質(SARM)、(ii)エストロゲンもしくはエストロゲン受容体選択的調節物質(SERM)、および(iii)プロゲスチンもしくはプロゲスチン受容体選択的調節物質(SPRM)、あるいは、個々の患者の必要に応じた上記物質の任意の組み合わせを含む。薬物送達デバイスを女性の膣内に挿入し、有効量の性ステロイドまたは性ステロイド調節物質を女性の体内に放出させる。閉経周辺期または閉経後の女性の治療を目的として置換ホルモン類を連続的に送達することに関しては、2000年6月2日に受理された米国特許出願第09/585,935号(K.A.マーティン(Martin)ら)に詳細に記載されており、参照として全体を本明細書中に取り入れておく。
【0119】
別の実施態様においては、本発明に従う方法は、以下に記載しているような薬物送達デバイスを提供し、そのようなデバイスは、薬物透過性ポリマー物質、ならびに(i)SERMおよび(ii)アンドロゲンもしくはSARMを含む。該薬物送達デバイスは、(iii)プロゲスチンもしくはSPRMを追有する場合もある。薬物送達デバイスを女性の膣内に挿入し、そこで治療有効量の活性物質(SERM、アンドロゲンもしくはSARM、ならびに追加としてプロゲスチンもしくはSPRM)が放出され、そのことによって閉経期、閉経周辺期または閉経後に伴う症状および徴候が緩和される。
【0120】
別の変形においては、薬物送達デバイスは、(i)SERM、(ii)エストロゲン、ならびに(iii)アンドロゲンもしくはSARM、さらに追加として(iv)プロゲスチンもしくはSPRMを含む。薬物送達デバイスを女性の膣内に挿入し、そこで治療有効量の活性物質(SERM、エストロゲン、アンドロゲンもしくはSARM、ならびに追加としてプロゲスチンもしくはSPRM)が放出され、そのことによって閉経期、閉経周辺期または閉経後に伴う症状および徴候が緩和される。
【0121】
LHRHまたはそれらのペプチド性もしくは非ペプチド性アナログ類のうちのひとつを添加して、あるいはせずに本発明に従う方法を実施することにより、閉経後および閉経周辺期のすべての女性を事実上治療することができる。所望するならば、そのような女性は、本発明に従う方法によって治療を行う前に、ホルモン置換療法(例えば、米国医師会ガイドライン(American College of Physicians Guidelines)に記載されているような一般的な分類を用いる;このガイドラインを参考として本明細書中に取り入れておく)の必要性を確認することができる。本発明の使用は、多様な治療方式に対して可能であり、当該分野の通常の技術を有する医療従事者であれば、ホルモン不足の徴候および症状に対して女性患者をモニターすることにより、ならびに、所望に応じて投与量および/もしくは治療頻度を増減することにより、特定の女性患者に対して特定の治療方式を最適化することは容易である。
【0122】
本発明のこのような実施態様においては、アンドロゲンの一日あたりの投与量は0.01μg〜5mg/kg(例えば、1μg/kg〜5mg/kgなど)であり、エストロゲンの一日あたりの一般的な投与量は0.01μg/kg〜4mg/kg(例えば、0.2μg/kg〜100μg/kgなど)であり、プロゲスチンの一日あたりの一般的な投与量は0.02μg/kg〜200mg/kg(例えば、2μg/kg〜10mg/kgなど)である。SARMの一日あたりの一般的な投与量は、0.01μg/kg〜100mg/kg(例えば、1μg/kg〜4mg/kgなど)であり、SERMの一日あたりの一般的な投与量は、0.01μg/kg〜100mg/kg(例えば、1μg/kg〜2mg/kgなど)であり、また、SPRMの一日あたりの一般的な投与量は、0.01μg/kg〜100mg/kg(例えば、1μg/kg〜30mg/kgなど)である。一般的には、治療は数ヶ月から数年、または生涯にわたって行い、自然発生的な、または誘導発生した卵巣機能の不全に由来する徴候および症状の改善を図る。
【0123】
閉経周辺期の女性の治療に適した方法のひとつの例としては、13〜14日間にわたって(i)アンドロゲンもしくはSARM、(ii)エストロゲンもしくはSERM、ならびに(iii)プロゲスチンもしくはSPRMを含む薬物送達デバイスを投与し、続いて(i)エストロゲンもしくはSERM、ならびに(ii)アンドロゲンもしくはSARMを含む薬物送達デバイスを13〜14日間投与することを必要とする治療方式である。投与量は上記の量が適切である。本実施態様においては、薬物送達デバイスは最初の13〜14日の期間(卵胞期)後に取り出し、エストロゲンもしくはSERM、ならびにアンドロゲンもしくはSARMの組み合わせを含む第二の薬物送達デバイスと取り替える。別の方法としては、2種類の処方(アンドロゲン/SARM、エストロゲン/SERMおよびプロゲスチン/SPRM処方;ならびにエストロゲン/SERMおよびアンドロゲン/SARM処方)を組み合わせてひとつの薬物送達デバイスを調製するが、これは、避妊に関するIIIの所に記載しているように、月経周期の全期間にわたって雌の膣管内に保持させることを意図するものである。
【0124】
閉経期の女性の治療に適した方法のひとつの例としては、(i)アンドロゲンもしくはSARM、(ii)エストロゲンもしくはSERM、ならびに(iii)プロゲスチンもしくはSPRMを含む薬物送達デバイスを女性に投与することを必要とする治療方式である。投与量は上記の量が適切である。本実施態様においては、薬物送達デバイスは、少なくとも30日間、好ましくは数ヶ月(例えば、2〜4ヶ月)間、患者の膣管内に保持させることを意図したものである。
【0125】
別の実施態様においては、(i)SERM、(ii)アンドロゲンもしくはSARM、ならびに必要であれば(iii)プロゲスチンもしくはSPRMを含む薬物送達デバイスを用いて女性を治療する。一般的な治療方式においては、該デバイスは、少なくとも30日間女性の膣内に保持させておき、上記の投与量の活性物質を日々送達する。通常、治療は数ヶ月から数年、または生涯にわたって行い、自然発生的な、または誘導発生した卵巣機能の不全に由来する徴候および症状を改善する。
【0126】
別の方法としては、(i)SERM、(ii)エストロゲン、ならびに必要であれば(iii)プロゲスチンもしくはSPRMを含む薬物送達デバイスを用いて女性を治療することもできる。一般的な治療方式においては、このようなステロイド類の組み合わせは、上記の投与量で少なくとも30日間投与する。通常、治療は数ヶ月から数年、または生涯にわたって行い、自然発生的な、または誘導発生した卵巣機能の不全に由来する徴候および症状を改善する。
【0127】
さらに別の方法としては、(i)SERM、(ii)エストロゲン、(iii)アンドロゲンもしくはSARM、ならびに必要であれば(iv)プロゲスチンもしくはSPRMを含む薬物送達デバイスを用いて女性を治療することもできる。一般的な治療方式においては、このようなステロイド類の組み合わせは、上記の投与量で少なくとも30日間投与する。通常、治療は数ヶ月から数年、または生涯にわたって行い、自然発生的な、または誘導発生した卵巣機能の不全に由来する徴候および症状を改善する。
【0128】
置換ホルモン類の長期間送達に対しては、一般的にデバイスは、1〜48ヶ月、1〜36ヶ月、1〜24ヶ月、好ましくは1〜12ヶ月、最も好ましくは1〜6ヶ月の期間にわたって送達を行うのに十分な量の性ステロイド類または性ステロイド調節物質を含有している。
【0129】
当業者であれば、本明細書、図面および請求の範囲から、これらの実施例およびそれらと等価の他の事例については明らかであるように、以下の実施例は、本発明の例を示すものであり、如何なる意味においても、発明の範囲を制限するためのものと考えるべきではない。例えば、以下の実施例は、プロゲステロン、エストラジオールおよびLHRHもしくはゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の放出制御に関する本発明の実施を具体的に示したものである。本明細書に記載しているように、本発明は、広範な用途、ならびに多くの状態および疾患の治療に有用である。従って、当業者であれば、本発明に従う薬物送達デバイスは、適切な薬物もしくは薬物の組み合わせを含む任意の数の区分もしくは棒を有するように製造することができ、哺乳類の雄および雌の多様な症状を治療することができることは理解できるであろう。
【実施例】
【0130】
実施例1:プロゲステロン、エストラジオールおよびゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の制御放出を行うための膣リングの調製
図1に示すような膣内薬物送達デバイスは、アルドリッヒ・ケミカル( Aldrich Chemical )社製のポリ(エチル−コ−酢酸ビニル)(EVA)(カタログ番号34,050-2;ロット番号07322DR)を用いて調製した。630mg のプロゲステロン(シグマ( Sigma )社);カタログ番号P-3972)または2.8mgのエストラジオール(シグマ( Sigma )社);カタログ番号E-1072)は、別異のシンチレーションバイアルに入れた約5mlのジクロロメタン(フルカケミカル(Flka Chem.)社;カタログ番号66740;ロット番号404915/1 62800)にそれぞれ別々に溶解した。次に、プロゲステロン溶液には1400mgのEVAを、エストラジオール溶液には1800mgのEVAを加え、回転振とう機を用いてEVA/薬物組成物を混合することにより、ポリマー混合物を調製した。次に、溶媒としてエタノール(ファルマコ(Pharmaco)社;カタログ番号111 USP 200 CSGL;ロット番号M8241)を用い、ドライアイス中で、得られた混合物を溶液流延した。一晩かけて溶媒を留去し、乾燥EVA/薬物混合物を粉砕した。EVA/薬物粉末を射出成形ユニット(DSM、オランダ国ゲレーン)に入れた。射出機を約80℃に加熱した。溶融EVA/薬物組成物をステンレススチールの鋳型に押出し(鋳型は10℃)、外径が50mmおよび横断面の直径が4mmの1800mgのリングを成形した。
【0131】
同様に、GnRHアゴニスト(D−Trp6−Pro9−Net−GnRH)を含むポリマーリングを調製した。すなわち、約5mlの塩化メチレンに10mgのGnRHアゴニストおよび450mgのメチルセルロースを溶解し、1800mgのEVAを加えた。EVA/薬物混合物を乾燥させ、得られた粉末を射出成形ユニット(DSM、オランダ国ゲレーン)に入れた。射出機を約80℃に加熱した。溶融EVA/GnRH/セルロース組成物をステンレススチールの鋳型に押出すことにより(鋳型は10℃)、外径が50mmおよび横断面の直径が4mmの1800mgのリングを成形した。
【0132】
エストラジオール、プロゲステロンおよびGnRHを含むEVAリングは、適切な長さの単位円筒型区分、すなわち、各薬物の治療有効量を放出するのに十分量の薬物を含むような長さに無菌的にそれぞれ切断した。EVAと混合した薬物を鋳型に戻し、混ぜものをしていないEVAを鋳型に注入して小片を接合させる。必要であれば、EVAの第四の区分(偽区分)を用いてリング型構造を完成させることができる。
【0133】
本明細書に記載している膣リングは、各薬物について定めた投与量、すなわち、エストラジオールを100μg/日、プロゲステロンを6mg/日、およびGnRHを240μg/日、を21日間投与することを意図している。
【0134】
実施例2:アカゲザルの膣内へのGnRHの投与
Replens(登録商標)(コロンビア・ラボラトリーズ(Columbia Laboratories)社、ニュージャージー州リビングストン)の名称で市販されているヒドロゲルを用い、GnRHを含む組成物を調製した。GnRHを含む組成物は、10mgのGnRHを2gのReplensと混合することによって調製した。次に、2gのGnRH/Replens混合物を5匹のアカゲザルの膣管内に挿入し、9時間放置した。9時間の間、1時間おきに採血を行った。血液サンプルは遠心分離によって血餅から血清を分離し、RIAアッセイを行ってGnRHを測定した。GnRH濃度は、従来から行われているGnRHに対する二重抗体RIA法に基づいて求めた(このプロトコールを変形し、抗体を変えることにより、GnRHアゴニスト類もしくはGnRHアンタゴニスト類も測定することができる)。
【0135】
概説すると、標準および被験サンプルに抗GnRHを加え、室温で20〜24時間インキュベートした。I-125で標識したGnRHを21,000〜25,000CPM/100μl溶液に希釈し、各アッセイチューブおよび総計数チューブに加え、室温で20〜24時間インキュベートした。各チューブに、100μlのヒツジ抗ウサギガンマグロブリン(SARGG)および100μlの16%PEG(フィッシャー(Fisher)社、カタログ番号P156-500)を加え、4℃で1時間インキュベートした。2mlの蒸留水でサンプルを洗浄し、3000rpmで20分間遠心分離した。上清を傾斜し、ペレットについて、ガンマカウンター内で1分間計数を行った。図2は、3匹のサルのGnRHの血清濃度を時間の関数として示したものである。
【0136】
本実施例は、十分量のGnRH(分子量は約1,100)が霊長類の膣上皮に移行し、ホルモンの血清濃度が治療濃度に達することを示している。
【0137】
実施例3:EVAリングからのエストラジオール、プロゲステロン、GnRHの同時放出
実施例1の記載の従い、エストラジオール、プロゲステロン、GnRHを含む膣内薬物送達デバイスを調製した。回転振とう機(100RPM)上、37℃の放出媒質(PBS:EtOH=70:30、pH=6)中にエストラジオール、プロゲステロン、GnRHリングを入れた。一定時間に媒質を採取し、Aglient 1100 Series HPLC(アジレント(Agilent)社、カリフォルニア州フォレストシティ)を用いてHPLCによって測定した。エストラジオールおよびプロゲステロンは230nmのUVで検出し、GnRHは215nmで測定した。結果は、5点で作成した検量線と比較し、曲線下面積法に基づいて計算した。結果は、実験期間中に放出された量(μg)の累積放出率として表した。
【0138】
図3は、21日間にわたるエストラジオールおよびプロゲステロンのイン・ビトロ(in vitro)ゼロ次速度放出を示す。図4は、同期間中のGnRHのイン・ビトロ(in vitro)ゼロ次速度放出を示す。
【0139】
本実施例は、14日〜21日間にわたり、薬物相互作用もしくは干渉なしに、エストラジオール、プロゲステロンおよびGnRHが安定的にゼロ次放出することを示すものである。ン実施例は、本発明に従って作成された膣リングが、少なくとも21日間にわたり、適切な流速でGnRHを徐放し(すなわち、循環血中の血清濃度が3〜6ng/mlになるような送達速度)、卵巣の性ステロイド類の産生を完全に抑え、それによって排卵を完全に抑制できることも示している。さらに、該膣リングは、天然に分泌される卵巣ホルモン類(エストラジオールおよびプロゲステロン)の治療有効量を送達し、それらの正常濃度および放出パターンを回復させ、さらに、正常な月毎の月経を起こさせるのに十分な能力を有する。天然のエストラジオールは100μg/日の割合で投与されねばならず、一方、プロゲステロンは約45mg/日の割合で送達されねばならないことから、すなわち、エストラジオールの血清濃度は約100pg/ml、およびプロゲステロンの血清濃度は6,000μg/mlになるような割合である。
【0140】
実施例4:EVAマトリックスからのエストラジオールおよびプロゲステロンの放出動態
EVA/薬物混合物以外は上記の実施例1の記載に従い、エストラジオールおよびプロゲステロンを含むEVA混合物を調製したが、これらについては、射出成形または押出しによるリング形成を行わなかった。乾燥後、組成物(ディスク状)の放出速度について評価を行った。回転振とう機(100RPM)上、37℃において、100mlの放出媒質(PBS:EtOH=70:30)にエストラジオールおよびプロゲステロンを入れた。規定の時間に媒質を採取し、、Agilent 1100 Series HPLC(アジレント(Agilent)社、カリフォルニア州フォレストシティ)を用いてHPLCによって測定した。エストラジオールおよびプロゲステロンは230nmのUVで検出した。結果は、5点で作成した検量線と比較し、曲線下面積法に基づいて計算した。結果を図5に示す。
【0141】
図5に示しているように、乾燥EVA/薬物混合物は二相性放出動態を示し、21日間の総回収率は70%であった。
【0142】
実施例5:セルロース誘導体類が放出速度に与える影響
EVA/薬物混合物以外は上記の実施例1の記載に従い、エストラジオールおよびプロゲステロンを含むEVA混合物を調製したが、これらについては、射出成形または押出しによるリング形成を行わなかった。また、市販のセルロース誘導体Methocel(登録商標)(ダウ・ケミカルズ(Dow Chwmicals)社、ミシガン州ミッドランド)を混合物に添加し、セルロース誘導体が放出速度に与える影響を評価した。概説すると、エタノールを入れた2本の別異のバイアルに、エストラジオールおよびプロゲステロンをそれぞれ溶解し、低濃度(5重量%)および高濃度(25重量%)のMethocelを加えた。これらの溶液をEVAを含む塩化メチレン溶液にゆっくりと加えて乳化した。得られたエマルションは、鋳型に溶液流延し、ドライアイス上で冷却した。昇華後、溶媒を1cm×1cmのサンプルに切断して、シンチレーションバイアルに入れ、0.1Mのリン酸緩衝生理食塩水(pH=6.10)およびエタノールを70:30の割合で加えた。バイアルは、回転振とう機(100RPM)上の37℃のインキュベーターに入れた。緩衝液は、規定の時間に置換した。エストラジオールおよびプロゲステロンの放出量は、280nmまたは250nmにおいて、UV/VIS分光光度計を用いてそれぞれ測定した。次に、累積放出量を時間の関数としてプロットすることにより、放出速度を求めた。図6に示すように、Methocelを添加することにより、疑似ゼロ次放出が得られた。また、セルロース誘導体のプロゲステロンに対する比が高くなるほど、プロゲステロンの放出速度が速くなった。本実施例は、薬物送達デバイスからの薬物の放出速度は、セルロース誘導体などの賦形剤を使用することによって加速させることができることを示している。
【0143】
実施例6:EVAマトリックスからのエストラジオールおよびプロゲステロンの放出速度
EVA/薬物混合物以外は上記の実施例1の記載に従い、エストラジオールおよびプロゲステロンを含むEVA混合物を調製したが、これらについては、射出成形または押出しによるさらなる加工は行わなかった。また、EVA/薬物混合物を合わせ、片面にはエストラジオールを含み、もう一方の面にはプロゲステロンを含む二面ディスクを成形した。乾燥後、ディスクの放出速度を評価した。概説すると、回転振とう機(100RPM)上、37℃において、100mlの放出媒質(PBS:EtOH=70:30、pH=6)にエストラジオールおよびプロゲステロンを入れた。測定のため、規定の時間に媒質を100%回収し、新たに100mlの放出媒質を加えた。Agilent 1100 Series HPLC(アジレント(Agilent)社、カリフォルニア州フォレストシティ)を用いて媒質を測定した。エストラジオールおよびプロゲステロンは、230nmにおいてUV検出を行った。結果は、5点で作成した検量線と比較し、曲線下面積法に基づいて計算し、累積放出%として図7に示している。図7からわかるように、エストラジオールおよびプロゲステロンは、独立した二相性放出動態を示した。
【0144】
実施例7:アカゲザルへのGnRHの膣投与
GnRHおよびReplens(登録商標)(LDSコンシューマー・プロダクツ(LDS Consumer Products)社、アイオワ州セダーラピッズ)という名称で市販されているポリアクリル酸(ポリカルボフィル)系ヒドロゲルを含むポリマー混合物は、10mgのGnRHを2gのヒドロゲルと混合する(0.5%wt/wt;pH=7)ことによって調製した。5匹のアカゲザルの膣管内に、GnRH/ヒドロゲルの2gのアリコートを入れ、48時間放置した。規定の時間間隔で血液サンプルを採取し、GnRHおよびLHの濃度を測定した。
【0145】
概説すると、標準および被験サンプルに抗GnRHを加え、室温で20〜24時間インキュベートした。I-125で標識したGnRHを21,000〜25,000CPM/100μlに希釈し、各アッセイチューブおよび総計数チューブに加え、室温で20〜24時間インキュベートした。各チューブに、100μlのヒツジ抗ウサギガンマグロブリン(SARGG)および100μlの16%PEG(フィッシャー(Fisher)社、カタログ番号P156-500)を加え、4℃で1時間インキュベートした。2mlの蒸留水でサンプルを洗浄し、3000rpmで20分間遠心分離した。上清を傾斜し、ペレットについて、ガンマカウンター内で1分間計数した。結果は、GnRHおよびLHのng/mlで表した。図8は、サルのGnRHの血清濃度(平均濃度を□で表している)を時間の関数として表し、ならびに、対応する内因性の黄体形成ホルモン(LH)の血清濃度(平均濃度を◆で表している)を示している。
【0146】
本実施例は、GnRHが十分に経膣吸収され、血清中にng/ml量のGnRHを放出することを示すものである。予測していたように、外来性のGnRHの放出により、内因性のLH濃度が上昇し、従って、GnRHの生物学的活性が示された。
【0147】
実施例8:多連結リングの成形
図9に示すような膣内投与用の多連結薬物送達デバイスは、アルドリッヒ・ケミカル( Aldrich Chemical )社製のポリ(エチル−コ−酢酸ビニル)(EVA)(カタログ番号34,050-2;ロット番号07322DR)を用いて調製することができる。630mg のプロゲステロン(シグマ( Sigma )社);カタログ番号P-3972)および3.0mgのエストラジオール(シグマ( Sigma )社);カタログ番号E-1072)は、別異のシンチレーションバイアルに入れた約5mlのジクロロメタン(フルカケミカル(Fluka Chem.)社;カタログ番号66740;ロット番号404915/1 62800)にそれぞれ別々に溶解した。次に、プロゲステロン溶液には1000mgのEVAを、エストラジオール溶液には300mgのEVAを加え、回転振とう機を用いてEVA/薬物組成物を混合することにより、ポリマー混合物を調製した。同様に、GnRHアゴニスト(2.5mg(D−Trp6−Pro9−Net−GnRH))、110mgのメチルセルロースおよび50mgのEVAを含む混合物は、5mlの塩化メチレンに該混合物を溶解することによって調製した。
【0148】
溶媒としてエタノール(ファルマコ(Pharmaco)社、カタログ番号111 USP 200 CSGL;ロット番号M8241)を使用し、ドライアイス中、得られた混合物を別異に溶媒流延した。一晩かけて溶媒を留去し、乾燥EVA/薬物混合物を粉砕した。EVA/薬物粉末は、別異の射出成形ユニット(DMS社、オランダ国ゲレーン)に入れ、図9の多口鋳型に80℃で注入した。例えば、入口番号(portal NO.)1にはGnRHアゴニスト混合物(2.5mgのGnRHアゴニスト、110mgのメチルセルロースおよび50mgのEVA)を注入し、入口番号2にはエストラジオール混合物(3mgのエストラジオールおよび300mgのEVA)を注入し、入口番号3にはプロゲステロン混合物(630mgのプロゲステロンおよび1gのEVA)を注入し、入口番号4には500mgのEVA(EVAのみ)を注入することができる。
【0149】
実施例9:遅延放出リング
膣内デバイスの水和速度は、ポリマー内への水の浸潤速度を含む多数の因子によって決まる。水の浸潤速度は、ポリマー内の浸透圧によって調節することができる。浸透圧は、薬物調製時に塩類(NaCl、KClなど)を加えることによって調節することができる。
【0150】
エストラジオールおよびプロゲステロンは、本明細書の記載に従って調製することができる。さらに、塩類(300mmol)を追加した。これらの2つの薬物は、リングの2つの区分を成しており、28日間にわたって放出するよう設計されている(表III)。第三の区分には塩類を含まないプロゲステロンを組み込むことができる(表IV)。
【表3】

【表4】

【0151】
エストラジオールおよびGnRHアゴニストの区分に塩類を添加した結果、これらの薬物はすぐに再水和し、即座に放出が開始し、28日間持続した。しかしながら、プロゲステロンを含む区分は、14日経過後に放出を開始し、4日間持続した。従って、1個のリングを用いて1ヶ月間の受胎調節を行うことができ、その場合、初期の2週間はE2およびGnRHアゴニストのみがゼロ次放出し、次の14日間はE2、GnRHアゴニストおよびプロゲステロンがゼロ次放出する。
【0152】
本明細書中に引用している全ての特許、特許出願および出版物は、参考としてそれらの全体を取り入れておく。本発明は、好ましい実施態様について特に例示して記載したものであり、当業者であれば、請求の範囲によって規定される本発明の範ちゅうを越えることなく、形式および詳細について多様な変形が可能であることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】2つの区分(12および13)を有するリング型膣内薬物送達デバイスを示し、該区分は結合手段14で互いに接合されている。
【図2】ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)および市販のヒドロゲル(Replenz(登録商標))を含む組成物をアカゲザルの膣内に投与した後のGnRHの血清濃度(ng/ml )
【図3】EVAを基剤とする本発明に従う膣内送達デバイスからのエストラジオール(●)およびプロゲステロン(■)のイン・ビトロ(in vitro)ゼロ次放出動態
【図4】EVAを基剤とする本発明に従う膣内送達デバイスからの天然のGnRHのイン・ビトロ(in vitro)ゼロ次放出動態
【図5】EVAを基剤とする送達デバイスからのエストラジオール(●)およびプロゲステロン(■)のイン・ビトロ(in vitro)二相性放出動態
【図6】EVAを基剤とする送達デバイスからのプロゲステロンの放出速度に対してセルロース誘導体が及ぼす影響。高濃度のエトセル(ethocel)は◆、低濃度のエトセルは□で表している。
【図7】EVAを基剤とする1個の送達デバイスからのエストラジオール(●)およびプロゲステロン(■)の二相性放出速度
【図8】アカゲザルの膣内に投与したGnRHの薬物動態、および内因性の黄体形成ホルモン濃度(LH、◆)への影響
【図9】入口番号1(16)、入口番号2(17)、入口番号3(18)、入口番号4(19)を有するリング型多口鋳型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つまたはそれ以上の区分を有する薬物送達デバイスであって、各単位区分は薬物透過性ポリマー物質を含み、少なくとも1つの単位区分は薬物透過性ポリマー物質と薬物との混合物を含むことを特徴とする薬物送達デバイス。
【請求項2】
2つまたはそれ以上の単位区分が、それぞれ薬物を含むことを特徴とする請求項1記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項3記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記薬物送達デバイスが、リング型、ウェハース型または坐薬であることを特徴とする請求項1記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
単位区分の少なくとも一端が別の単位区分の一端に付着されており、薬物送達デバイスがリング型を成していることを特徴とする請求項1記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記デバイスが膣リングとしての使用に適していることを特徴とする請求項6記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
前記区分の末端が結合手段によって付着されていることを特徴とする請求項6記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
前記結合手段が接着材料であることを特徴とする請求項8記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
外径が40mm〜80mmであることを特徴とする請求項7記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
横断面の直径が0.5mm〜12mmであることを特徴とする請求項7記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
薬物がホルモン置換ステロイドであることを特徴とする請求項1記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
薬物が避妊剤であることを特徴とする請求項1記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
薬物は、インターフェロン、抗血管形成因子、成長因子、ホルモン類、酵素類、トランスフェラーゼ類、加水分解酵素類、リアーゼ類、イソメラーゼ類、プロテアーゼ類、リガーゼ類および酸化還元酵素類、酵素阻害剤類、ステロイド類、抗癌剤および抗生物質より成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
薬物は、成長ホルモン類、多糖類、抗原および抗体より成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の薬物送達デバイス。
【請求項16】
2種類またはそれ以上の薬物を制御放出するための薬物送達デバイスであって、2つまたはそれ以上の単位区分を有し、各単位区分は薬物透過性ポリマー物質と薬物との混合物を含むことを特徴とする薬物送達デバイス。
【請求項17】
少なくとも2つの区分が別異の薬物を含んでいることを特徴とする請求項16記載の薬物送達デバイス。
【請求項18】
薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項16記載の薬物送達デバイス。
【請求項19】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項18記載の薬物送達デバイス。
【請求項20】
薬物がホルモン置換ステロイドであることを特徴とする請求項16記載の薬物送達デバイス。
【請求項21】
薬物が避妊剤であることを特徴とする請求項16記載の薬物送達デバイス。
【請求項22】
薬物は、インターフェロン、抗血管形成因子、成長因子、ホルモン類、酵素類、トランスフェラーゼ類、加水分解酵素類、リアーゼ類、イソメラーゼ類、プロテアーゼ類、リガーゼ類および酸化還元酵素類、酵素阻害剤類、ステロイド類、抗癌剤および抗生物質より成る群から選択されることを特徴とする請求項16記載の薬物送達デバイス。
【請求項23】
薬物は、成長ホルモン類、多糖類、抗原および抗体より成る群から選択されることを特徴とする請求項16記載の薬物送達デバイス。
【請求項24】
哺乳類の雌に薬物を送達する方法であって、
(a)2つまたはそれ以上の単位区分を有する薬物送達デバイスを調製し、このとき、各単位区分は薬物透過性ポリマー物質を含み、少なくとも1つの単位区分は薬物透過性ポリマー物質と薬物との混合物を含み;
(b)工程(a)の薬物送達デバイスを哺乳類の雌の膣管に挿入し;さらに、
(c)哺乳類の雌に有効量の薬物を送達するのに十分な期間にわたって、該哺乳類の雌の膣管内に薬物送達デバイスを保持する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項25記載の方法。
【請求項27】
薬物がホルモン置換ステロイドであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項28】
薬物が避妊剤であることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項29】
薬物は、インターフェロン、抗血管形成因子、成長因子、ホルモン類、酵素類、トランスフェラーゼ類、加水分解酵素類、リアーゼ類、イソメラーゼ類、プロテアーゼ類、リガーゼ類および酸化還元酵素類、酵素阻害剤類、ステロイド類、抗癌剤および抗生物質より成る群から選択されることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項30】
薬物は、成長ホルモン類、多糖類、抗原および抗体より成る群から選択されることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項31】
リング型薬物送達デバイスを調製する方法であって、
(a)第一の薬物透過性ポリマー物質を第一の薬物と混合して第一のポリマー混合物を調製し;
(b)工程(a)の第一のポリマー混合物を鋳型に入れて第一のリングを形成し;
(c)工程(b)の第一のリングを切断して第一の単位区分を作成し;
(d)第二の薬物透過性ポリマー物質および第二の薬物について工程(a)〜(c)を繰り返して第二の単位区分を作成し;さらに、
(e)第一の単位区分の一端を第二の単位区分の一端と接続してリング型の薬物送達デバイスを調製する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
第三の薬物透過性ポリマー物質および第三の薬物について工程(d)をさらに繰り返して第三の単位区分を作成し、前記第一の単位区分、第二の単位区分および第三の単位区分を接続してリング型の薬物送達デバイスを調製することを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種類の追加の薬物透過性ポリマー物質および少なくとも1種類の追加の薬物について工程(d)をさらに繰り返してさらに2つまたはそれ以上の追加の単位区分を作成し、第一の単位区分、第二の単位区分、第三の単位区分、ならびに追加の単位区分を接続してリング型の薬物送達デバイスを調製することを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
第一および第二の薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
第一および第二の薬物透過性ポリマー物質が同一物質であることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項37】
接続工程は、接着材料を使用して行うことを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項38】
リング型薬物送達デバイスを調製する方法であって、
(a)第一の薬物透過性ポリマー物質を第一の薬物と混合して第一のポリマー混合物を調製し;
(b)工程(a)の第一のポリマー混合物を鋳型に入れて第一の単位区分を成形し;
(c)第二の薬物透過性ポリマー物質および第二の薬物について工程(a)および(b)を繰り返して第二の単位区分を作成し;さらに、
(d)第一の単位区分の一端を第二の単位区分の一端と接続させてリング型の薬物送達デバイスを調製する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
第三の薬物透過性ポリマー物質および第三の薬物について工程(c)をさらに繰り返して第三の単位区分を作成し、前記第一の単位区分、第二の単位区分および第三の単位区分を接続してリング型の薬物送達デバイスを成形することを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1種類の追加の薬物透過性ポリマー物質および1種類の追加の薬物について工程(c)をさらに繰り返してさらに少なくともひとつの追加の単位区分を作成し、前記第一の単位区分、第二の単位区分、第三の単位区分、ならびに追加の単位区分を接続してリング型の薬物送達デバイスを調製することを特徴とする請求項39記載の方法。
【請求項41】
第一および第二の薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項42】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項43】
第一および第二の薬物透過性ポリマー物質が同一物質であることを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項44】
接続工程は、接着材料を使用して行うことを特徴とする請求項38記載の方法。
【請求項45】
薬物送達デバイスを調製する方法であって、
(a)第一の薬物透過性ポリマー物質を第一の薬物と混合して第一のポリマー混合物を調製し;
(b)工程(a)の第一のポリマー混合物を鋳型に注入して第一の単位区分を作成し;さらに、
(c)第二の薬物透過性ポリマー物質および第二の薬物について工程(a)および(b)を繰り返して第二の単位区分を作成することによって薬物透過性デバイスを調製する
工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
第三の薬物透過性ポリマー物質および第三の薬物について工程(c)をさらに繰り返して第三の単位区分を作成してリング型の薬物送達デバイスを調製することを特徴とする請求項45記載の方法。
【請求項47】
少なくとも1種類の追加の薬物透過性ポリマー物質および1種類の追加の薬物について工程(c)をさらに繰り返してさらに少なくともひとつの追加の単位区分を作成してリング型の薬物送達デバイスを調製することを特徴とする請求項46記載の方法。
【請求項48】
第一および第二の薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項45記載の方法。
【請求項49】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項50】
第一および第二の薬物透過性ポリマー物質が同一物質であることを特徴とする請求項45記載の方法。
【請求項51】
哺乳類の雌の良性卵巣分泌障害を治療する方法であって、
(a)第一の区分および第二の区分を有する薬物送達デバイスを調製し、このとき、該第一の区分は薬物透過性ポリマー物質および黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)を含み、該第二の区分は薬物透過性ポリマー物質およびエストロゲン様ステロイドを含み;さらに、
(b)工程(a)の薬物送達デバイスを哺乳類の膣内に挿入し、該哺乳類の雌の体内に治療有効量のLHRHおよび有効量のエストロゲン様ステロイドを放出させる
ことを特徴とする方法。
【請求項52】
薬物送達デバイスが第三の区分を追有しており、ここで、該第三の区分は薬物透過性ポリマー物質およびプロゲステロン様ステロイドを含み、該薬物送達デバイスが有効量のプロゲステロン様ステロイドを放出することを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項53】
薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項54】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項53記載の方法。
【請求項55】
薬物送達デバイスが、リング型、ウェハース型または坐薬であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項56】
薬物送達デバイスがリング型であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項57】
前記良性卵巣分泌障害が多嚢胞性卵巣疾患であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項58】
前記良性卵巣分泌障害は、卵巣からのプロゲステロンの過剰分泌によって特徴付けられることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項59】
前記良性卵巣分泌障害は、卵巣からのエストロゲンの過剰分泌またはアンドロゲンの過剰分泌によって特徴付けられることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項60】
前記良性卵巣分泌障害は、莢膜細胞過形成症、男性型多毛症、機能不全性子宮出血、無月経または発情休止によって特徴付けられることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項61】
前記エストロゲン様ステロイドは、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、エストラジオールシピオネート、ジプロピオン酸エストラジオール、エストラジオールエナンテート、抱合ウマエストロゲン、エストリオール、エストロン、硫酸エストロン、エチニルエストラジオール、エストロフレート、キネストロールおよびメストラノールより成る群から選択されることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項62】
前記エストロゲン様ステロイドは、タモキシフェン、ラロキシフェン、クロミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、トレミフェン、チボロン、ICI 182,780、ICI 164,384、ジエチルスチルベステロール、ゲニステイン、ナホキシジン、モキセストロール、19−ノル−プロゲステロン誘導体類および19−ノル−テストステロン誘導体類から成るエストロゲン受容体選択的調節物質群から選択されることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項63】
前記プロゲステロン様ステロイドは、プロゲステロン、17−ヒドロキシプロゲステロン誘導体類、19−ノル−テストステロン誘導体類、19−ノル−プロゲステロン誘導体類、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、ノルゲスチメート、二酢酸エチノジオール、アリルエストレノール、リノエストレノール、酢酸フインゲスタノール、メドロゲストン、ノルゲストリエノン、ジメチデローム、エチステロン、シプロテロン、レボ−ノルゲストレル、dl−ノルゲストレル、酢酸シプロテロン、ゲストデン、デソゲストロール、ジドロゲステロン、二酢酸エチノジオール、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、植物プロゲスチン類および動物由来のプロゲスチン類、ならびにそれらの代謝誘導体類より成る群から選択されることを特徴とする請求項52記載の方法。
【請求項64】
前記プロゲステロン様ステロイドは、RU486、CDB2914、19−ノル−プロゲステロン誘導体類、19−ノル−テストステロン誘導体類、6−アリール−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン誘導体類、5−アリール−1,2−ジヒドロ−5H−クロメノ[3,4−f]キノリン誘導体類、5−アルキル−1,2−ジヒドロクロメノ[3,4−f]キノリン誘導体類、および6−チオフェンヒドロキノリン誘導体類から成るプロゲスチン受容体選択的調節物質群から選択されることを特徴とする請求項52記載の方法。
【請求項65】
哺乳類の雌がヒトの女性であることを特徴とする請求項51記載の方法。
【請求項66】
哺乳類の雌の繁殖率を高める方法であって、請求項51記載の方法に従って該哺乳類の雌の繁殖を誘導することを特徴とする方法。
【請求項67】
哺乳類の雌の避妊法であって、
(a)薬物透過性ポリマー物質および黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)を含む第一の区分、薬物透過性ポリマー物質およびエストロゲン様ステロイドを含む第二の区分、ならびに薬物透過性ポリマー物質およびプロゲステロン様ステロイドを含む第三の区分を有する薬物送達デバイスを調製し;さらに、
(b)該哺乳類の膣内に工程(a)の薬物送達デバイスを挿入し、有効量のLHRH、有効量のエストロゲン様ステロイド、および有効量のプロゲステロン様ステロイドを該哺乳類の雌の体内に放出させる
ことを特徴とする方法。
【請求項68】
薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項68記載の方法。
【請求項70】
薬物送達デバイスが、リング型、ウェハース型または坐薬であることを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項71】
薬物送達デバイスがリング型であることを特徴とする請求項67記載の方法。
【請求項72】
周期的排卵の停止の症状を呈している女性において、エストロゲンの分泌低下を治療する方法であって、
(a)第一および第二の区分を有する薬物送達デバイスであって、該第一の区分は薬物透過性ポリマー物質およびホルモン置換ステロイドを含み、該第二の区分は薬物透過性ポリマー物質およびプロゲステロン様ステロイドを含むものを調製し;さらに、
(b)工程(a)の薬物送達デバイスを該女性の膣内に挿入し、該女性の体内に有効量のホルモン置換ステロイドを放出させる
ことを特徴とする方法。
【請求項73】
ホルモン置換ステロイドがエストロゲン様ステロイドであることを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記エストロゲン様ステロイドは、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、エストラジオールシピオネート、ジプロピオン酸エストラジオール、エストラジオールエナンテート、抱合ウマエストロゲン、エストリオール、エストロン、硫酸エストロン、エチニルエストラジオール、エストロフレート、キネストロールおよびメストラノールより成る群から選択されることを特徴とする請求項73記載の方法。
【請求項75】
前記エストロゲン様ステロイドは、タモキシフェン、ラロキシフェン、クロミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、トレミフェン、チボロン、ICI 182,780、ICI 164,384、ジエチルスチルベステロール、ゲニステイン、ナホキシジン、モキセストロール、19−ノル−プロゲステロン誘導体類および19−ノル−テストステロン誘導体類から成るエストロゲン受容体調節物質群から選択されることを特徴とする請求項73記載の方法。
【請求項76】
薬物送達デバイスが第三の区分を追有し、該第三の区分は薬物透過性ポリマー物質ならびにアンドロゲンもしくはアンドロゲン受容体選択的調節物質(SARM)を含むことを特徴とする請求項72記載の方法。
【請求項77】
閉経期、閉経周辺期および閉経後を迎え、エストロゲン治療を必要としている女性に対して、そのような時期に伴う症状の緩和を図る方法であって、
(a)第一および第二の区分を有する薬物送達デバイスであって、該第一の区分には薬物透過性ポリマー物質およびエストロゲン様ステロイドを含むものを調製し;さらに、
(b)工程(a)の薬物送達デバイスを該女性の膣内に挿入し、該女性の体内に有効量のエストロゲン様ステロイドを放出させる
ことを特徴とする方法。
【請求項78】
エストロゲン様ステロイドは、天然に存在するエストロゲン、合成エストロゲンおよびエストロゲン受容体選択的調節物質より成る群から選択されることを特徴とする請求項77記載の方法。
【請求項79】
薬物透過性ポリマー物質が熱可塑性ポリマーであることを特徴とする請求項77記載の方法。
【請求項80】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン−酢酸ビニルコポリマーであることを特徴とする請求項78記載の方法。
【請求項81】
薬物送達デバイスが、リング型、ウェハース型または坐薬であることを特徴とする請求項77記載の方法。
【請求項82】
薬物送達デバイスがリング型であることを特徴とする請求項77記載の方法。
【請求項83】
閉経期、閉経周辺期および閉経後を迎え、エストロゲン治療を必要としている女性に対して、そのような時期に伴う症状の緩和を図る方法であって、
(a)第一および第二の区分を有する薬物送達デバイスであって、該第一の区分には薬物透過性ポリマー物質およびホルモン置換ステロイドを含むものを調製し;さらに、
(b)工程(a)の薬物送達デバイスを該女性の膣内に挿入し、該女性の体内に有効量のホルモン置換ステロイドを放出させる
ことを特徴とする方法。
【請求項84】
ホルモン置換ステロイドがエストロゲン様ステロイドであることを特徴とする請求項83記載の方法。
【請求項85】
エストロゲン様ステロイドは、天然に存在するエストロゲン、合成エストロゲンおよびエストロゲン受容体選択的調節物質より成る群から選択されることを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記エストロゲン様ステロイドは、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、エストラジオールシピオネート、ジプロピオン酸エストラジオール、エストラジオールエナンテート、抱合ウマエストロゲン、エストリオール、エストロン、硫酸エストロン、エチニルエストラジオール、エストロフレート、キネストロールおよびメストラノールより成る群から選択されることを特徴とする請求項84記載の方法。
【請求項87】
前記エストロゲン様ステロイドは、タモキシフェン、ラロキシフェン、クロミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、トレミフェン、チボロン、ICI 182,780、ICI 164,384、ジエチルスチルベステロール、ゲニステイン、ナホキシジン、モキセストロール、19−ノル−プロゲステロン誘導体類および19−ノル−テストステロン誘導体類から成るエストロゲン受容体調節物質群から選択されることを特徴とする請求項84記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−525461(P2007−525461A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513416(P2006−513416)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/013172
【国際公開番号】WO2004/096151
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(594061492)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (4)
【出願人】(303050540)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (3)
【Fターム(参考)】