説明

複素環化合物、発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置

【課題】発光素子において、発光層の発光物質を分散させるホスト材料として用いることのできる新規複素環化合物を提供する。
【解決手段】一般式(G1)で表される複素環化合物を提供する。R〜R10は、いずれか一が一般式(G1−1)で表される置換基を表し、他のいずれか一が一般式(G1−2)で表される置換基を表し、その他はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。また、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環化合物、発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光物質を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。よって、大面積の素子を容易に形成することができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
そのエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光物質が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大別できる。発光物質に有機化合物を用い、一対の電極間に当該有機化合物を含む層を設けた有機EL素子の場合、発光素子に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、注入した電子及び正孔が発光性の有機化合物を励起状態に至らしめ、励起された発光性の有機化合物から発光を得るものである。
【0006】
有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態(S)からの発光が蛍光、三重項励起状態(T)からの発光が燐光と呼ばれている。また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、S:T=1:3であると考えられている。
【0007】
一重項励起状態を発光に変換する化合物(以下、蛍光性化合物と称す)では室温において、三重項励起状態からの発光(燐光)は観測されず、一重項励起状態からの発光(蛍光)のみが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた発光素子における内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、S:T=1:3であることを根拠に25%とされている。
【0008】
一方、三重項励起状態を発光に変換する化合物(以下、燐光性化合物と称す)を用いれば、三重項励起状態からの発光(燐光)が観測される。また、燐光性化合物は項間交差(一重項励起状態から三重項励起状態へ移ること)が起こりやすいため、内部量子効率は100%まで理論上は可能となる。つまり、蛍光性化合物より高い発光効率が実現可能となる。このような理由から、高効率な発光素子を実現するために、燐光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。
【0009】
上述した燐光性化合物を用いて発光素子の発光層を形成する場合、燐光性化合物の濃度消光や三重項−三重項消滅による消光を抑制するために、他の化合物からなるマトリクス中に該燐光性化合物が分散するようにして形成することが多い。この時、マトリクスとなる化合物はホスト材料、燐光性化合物のようにマトリクス中に分散される化合物はゲスト材料と呼ばれる。
【0010】
燐光性化合物をゲスト材料とする場合、ホスト材料に必要とされる性質は、該燐光性化合物よりも大きな三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)を有することである。
【0011】
また、一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)は三重項励起エネルギーよりも大きいため、大きな三重項励起エネルギーを有する物質は大きな一重項励起エネルギーをも有する。したがって、上述したような大きな三重項励起エネルギーを有する物質は、蛍光性化合物を発光物質(ゲスト材料)として用いた発光素子においても有益である。
【0012】
燐光性化合物をゲスト材料とする場合のホスト材料の一例として、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環を有する化合物の研究がなされている(例えば、特許文献1〜2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第03/058667号
【特許文献2】特開2007−189001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記ジベンゾ[f,h]キノキサリン環を有する化合物は、平面的な構造を有しているため、結晶化しやすい。結晶化しやすい化合物を用いた発光素子は寿命が短い。しかし、立体的に嵩高い構造の化合物とするために、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環に他の骨格を直接結合させると、共役系が広がり、三重項励起エネルギーの低下を引き起こす場合がある。
【0015】
また、低消費電力で信頼性の高い発光装置、電子機器、及び照明装置を実現するために、駆動電圧が低い発光素子、発光効率の高い発光素子、又は長寿命の発光素子が求められている。
【0016】
よって、本発明の一態様は、発光素子において、発光層の発光物質を分散させるホスト材料として用いることのできる新規複素環化合物を提供することを目的とする。特に、燐光性化合物を発光物質に用いる場合のホスト材料として好適に用いることのできる新規複素環化合物を提供することを目的とする。
【0017】
本発明の一態様は、駆動電圧が低い発光素子を提供することを目的とする。また、本発明の一態様は、発光効率が高い発光素子を提供することを目的とする。また、本発明の一態様は、長寿命な発光素子を提供することを目的とする。本発明の一態様は、この発光素子を用いることにより、消費電力の低減された発光装置、電子機器、及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様は、2つのキャリア輸送骨格が、それぞれアリーレン基を介してジベンゾ[f,h]キノキサリン環と結合した化合物である。また、本発明の一態様は、2つのキャリア輸送骨格が、それぞれアリーレン基を介してジベンゾ[f,h]キノキサリン環と結合した化合物を用いた発光素子である。
【0019】
該キャリア輸送骨格としては、π電子過剰系ヘテロ芳香環が挙げられる。該π電子過剰系ヘテロ芳香環としては、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、又はジベンゾチオフェン環が挙げられる。
【0020】
キノキサリン骨格を有する化合物は、電子輸送性が高く、発光素子に用いることで駆動電圧の低い素子を実現できる。本発明の一態様の化合物は、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環と、さらに2つのキャリア輸送骨格を有するため、キャリアを受け取ることが容易となる。したがって、該化合物を発光層のホスト材料に用いることで、電子と正孔の再結合が確実に発光層内で行われ、発光素子の寿命の低下を抑制することができ、長寿命な素子を実現できる。
【0021】
その上、該化合物は、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環とキャリア輸送骨格とが、フェニレン基やビフェニルジイル基など六員環で構成されるアリーレン基を介して結合しているため、直接結合する場合に比べて共役が広がりにくい。このことより、HOMO準位(最高被占分子軌道準位)とLUMO準位(最低空分子軌道準位)間のバンドギャップの狭幅化、三重項励起エネルギーの準位(T1準位)や一重項励起エネルギーの準位(S1準位)の低下を防ぐことができる。よって、発光層の発光物質を分散させるホスト材料として好適に用いることができる。特に、燐光性化合物を発光物質に用いる場合のホスト材料として好適に用いることができる。また、発光素子に用いることで、発光効率が高い素子を実現できる。
【0022】
また、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環とキャリア輸送骨格とが、アリーレン基を介して結合していることから、立体的な構造をとりやすいため、膜が結晶化しにくく、スタッキングによるT1準位やS1準位の低下を抑制することができる。このことからも、HOMO準位とLUMO準位間のバンドギャップの狭幅化、T1準位やS1準位の低下を防ぐことができる。そのため、発光素子に用いることで発光効率が高い素子を実現できる。
【0023】
本発明の一態様は、下記一般式(G1)で表される複素環化合物である。
【0024】
【化1】

【0025】
一般式(G1)中、R〜R10は、いずれか一が一般式(G1−1)で表される置換基を表し、他のいずれか一が一般式(G1−2)で表される置換基を表し、その他はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。また、一般式(G1−1)中のα及び一般式(G1−2)中のαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0026】
また、本発明の一態様では、α及びαにおいて、フェニレン基又はビフェニルジイル基が置換基を有する場合、該置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を有する。さらに、該フェニル基、該ビフェニル基、該カルバゾリル基、該ジベンゾチオフェニル基、又は該ジベンゾフラニル基が置換基を有する場合、該置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はビフェニル基を有する。
【0027】
また、本発明の一態様では、A及びAにおいて、カルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、又はジベンゾフラニル基が置換基を有する場合、該置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はビフェニル基を有する。
【0028】
また、本発明の一態様では、R〜R10のいずれかが、フェニル基、又はビフェニル基を表す場合、該フェニル基又は該ビフェニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基を有していても良い。
【0029】
本発明の一態様は、下記一般式(G2−1)で表される複素環化合物である。
【0030】
【化2】

【0031】
一般式(G2−1)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表し、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0032】
また、一般式(G2−1)中、R11〜R18のいずれかが、フェニル基又はビフェニル基を表す場合、該フェニル基又は該ビフェニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基を有していても良い。
【0033】
本発明の一態様は、下記一般式(G2−2)で表される複素環化合物である。
【0034】
【化3】

【0035】
一般式(G2−2)中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表し、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0036】
また、一般式(G2−2)中、R21〜R28のいずれかが、フェニル基又はビフェニル基を表す場合、該フェニル基又は該ビフェニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基を有していても良い。
【0037】
一般式(G1−1)中のα、一般式(G1−2)中のα、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のα及びαは、それぞれ独立に、一般式(α−1)又は一般式(α−2)で表されることが好ましい。
【0038】
【化4】

【0039】
一般式(α−1)中のR31〜R34及び一般式(α−2)中のR41〜R48は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0040】
また、一般式(α−1)中のR31〜R34及び一般式(α−2)中のR41〜R48のいずれかが、フェニル基、ビフェニル基、カルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、又はジベンゾフラニル基を表す場合、該フェニル基、該ビフェニル基、該カルバゾリル基、該ジベンゾチオフェニル基、又は該ジベンゾフラニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はビフェニル基を有していても良い。
【0041】
一般式(G1−1)中のA、一般式(G1−2)中のA、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のA及びAは、それぞれ独立に、一般式(1−1)乃至一般式(1−3)のいずれか一で表されることが好ましい。
【0042】
【化5】

【0043】
一般式(1−1)中のR51〜R57、一般式(1−2)中のR61〜R67、及び一般式(1−3)中のR71〜R78は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0044】
また、一般式(1−1)中のR51〜R57、一般式(1−2)中のR61〜R67、及び一般式(1−3)中のR71〜R78のいずれかが、フェニル基又はビフェニル基を表す場合、該フェニル基又は該ビフェニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基を有していても良い。
【0045】
特に、一般式(G1−1)中のA、一般式(G1−2)中のA、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のA及びAは、一般式(1−1)で表されることが好ましい。
【0046】
【化6】

【0047】
一般式(1−1)中、R51〜R57は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0048】
特に、一般式(G1−1)中のA、一般式(G1−2)中のA、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のA及びAは、一般式(1−2)で表されることが好ましい。
【0049】
【化7】

【0050】
一般式(1−2)中、R61〜R67は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0051】
特に、一般式(G1−1)中のA、一般式(G1−2)中のA、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のA及びAは、一般式(1−3)で表されることが好ましい。
【0052】
【化8】

【0053】
一般式(1−3)中、R71〜R78は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0054】
また、本発明の一態様は、上記複素環化合物を含む発光素子である。特に、陽極及び陰極間に発光層を有する発光素子において、該発光層が、発光物質と、本発明の一態様の複素環化合物とを含む構成が好ましい。
【0055】
また、陽極及び陰極間に発光層を有する発光素子において、該発光層が、発光物質と、電子輸送性化合物と、正孔輸送性化合物と、を含み、該電子輸送性化合物は、本発明の一態様の複素環化合物であり、該正孔輸送性化合物は、該電子輸送性化合物よりも正孔輸送性が高く、カルバゾール骨格、トリアリールアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、又はジベンゾフラン骨格を有することが好ましい。
【0056】
さらに、このとき、発光層の陽極側に接する層が、該発光層に含まれる正孔輸送性化合物を含むことが好ましい。
【0057】
また、上記発光素子において、発光層の陰極側に接する層が、本発明の一態様の複素環化合物を含むことが好ましい。
【0058】
また、本発明の一態様は、上記発光素子を発光部に備える発光装置である。また、本発明の一態様は、該発光装置を表示部に備える電子機器である。また、本発明の一態様は、該発光装置を発光部に備える照明装置である。
【0059】
本発明の一態様の複素環化合物を用いた発光素子は、駆動電圧が低い、発光効率が高い、又は長寿命であるため、消費電力の低い発光装置を実現することができる。同様に、本発明の一態様を適用することで、消費電力の低い電子機器及び照明装置を実現することができる。
【0060】
なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子を用いた画像表示デバイスを含む。また、発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルム、TAB(Tape Automated Bonding)テープ、もしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。さらに、照明器具等に用いられる発光装置も含むものとする。
【発明の効果】
【0061】
本発明の一態様は、発光素子において、発光層の発光物質を分散させるホスト材料として用いることのできる新規複素環化合物を提供できる。本発明の一態様は、駆動電圧が低い発光素子を提供できる。また、本発明の一態様は、発光効率が高い発光素子を提供できる。また、本発明の一態様は、長寿命な発光素子を提供できる。本発明の一態様は、該発光素子を用いることにより、消費電力の低減された発光装置、電子機器、及び照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図4】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図5】本発明の一態様の電子機器を説明する図。
【図6】本発明の一態様の液晶表示装置を説明する図。
【図7】本発明の一態様の照明装置を説明する図。
【図8】本発明の一態様の照明装置を説明する図。
【図9】本発明の一態様の電子機器を説明する図。
【図10】6,11−ビス[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:6,11mDBTPDBq−II)のH NMRチャートを示す図。
【図11】6,11mDBTPDBq−IIのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図12】6,11mDBTPDBq−IIの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図13】実施例の発光素子を説明する図。
【図14】実施例2の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図15】実施例2の発光素子の電圧−電流特性を示す図。
【図16】実施例2の発光素子の輝度−色度座標特性を示す図。
【図17】実施例2の発光素子の輝度−パワー効率特性を示す図。
【図18】実施例2の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図19】実施例2の発光素子の信頼性試験の結果を示す図。
【図20】6,11−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6,11mCzP2DBq)のH NMRチャートを示す図。
【図21】6,11mCzP2DBqのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図22】6,11mCzP2DBqの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図23】7,10−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7,10mCzP2DBq)のH NMRチャートを示す図。
【図24】7,10mCzP2DBqのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図25】7,10mCzP2DBqの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図26】実施例5の発光素子の輝度−電流効率特性を示す図。
【図27】実施例5の発光素子の輝度−色度座標特性を示す図。
【図28】実施例5の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図29】実施例6の発光素子の輝度−色度座標特性を示す図。
【図30】実施例6の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図31】6,11mCzP2DBqのLC/MS分析の結果を示す図。
【図32】7,10mCzP2DBqのLC/MS分析の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0064】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の複素環化合物について説明する。
【0065】
本発明の一態様は、一般式(G1)で表される複素環化合物である。
【0066】
【化9】

【0067】
一般式(G1)中、R〜R10は、いずれか一が一般式(G1−1)で表される置換基を表し、他のいずれか一が一般式(G1−2)で表される置換基を表し、その他はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。また、一般式(G1−1)中のα及び一般式(G1−2)中のαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0068】
また、一般式(G1−1)中のα及び一般式(G1−2)中のαにおいて、フェニレン基又はビフェニルジイル基が置換基を有する場合、該置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を有する。さらに、該フェニル基、該ビフェニル基、該カルバゾリル基、該ジベンゾチオフェニル基、又は該ジベンゾフラニル基が置換基を有する場合、該置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はビフェニル基を有する。
【0069】
また、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAにおいて、カルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、又はジベンゾフラニル基が置換基を有する場合、該置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はビフェニル基を有する。
【0070】
また、一般式(G1)中のR〜R10のいずれかが、フェニル基、又はビフェニル基を表す場合、該フェニル基又は該ビフェニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基を有していても良い。
【0071】
一般式(G1)で表される複素環化合物において、特に、下記一般式(G2−1)及び一般式(G2−2)で表される複素環化合物は、合成が容易であるため、好ましい。
【0072】
すなわち、本発明の一態様は、一般式(G2−1)で表される複素環化合物である。一般式(G2−1)で表される複素環化合物のように、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環の7位及び10位に置換基(具体的には、7位又は10位の一方に、上述の一般式(G1−1)で表される置換基、他方に、上述の一般式(G1−2)で表される置換基)が結合していると、立体的になるため、アモルファス性がより向上し、好ましい。
【0073】
【化10】

【0074】
一般式(G2−1)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表し、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0075】
また、一般式(G2−1)中、R11〜R18のいずれかが、フェニル基又はビフェニル基を表す場合、該フェニル基又は該ビフェニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基を有していても良い。
【0076】
また、本発明の一態様は、一般式(G2−2)で表される複素環化合物である。
【0077】
【化11】

【0078】
一般式(G2−2)中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表し、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0079】
また、一般式(G2−2)中、R21〜R28のいずれかが、フェニル基又はビフェニル基を表す場合、該フェニル基又は該ビフェニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基を有していても良い。
【0080】
一般式(G1−1)中のα、一般式(G1−2)中のα、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のα及びαにおいて、ベンゼン骨格がパラ置換の場合、キャリア輸送性が向上し、好ましい。
【0081】
また、一般式(G1−1)中のα、一般式(G1−2)中のα、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のα及びαにおいて、ベンゼン骨格がメタ置換の場合、ベンゼン骨格で連結された置換基(ジベンゾ[f,h]キノキサリン環とキャリア輸送骨格)同士で共役が広がりづらく、高いT1準位、高いS1準位、又は広いHOMO準位とLUMO準位間のバンドギャップを有するため、好ましい。
【0082】
よって、一般式(G1−1)中のα、一般式(G1−2)中のα、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のα及びαは、それぞれ独立に、一般式(α−1)又は一般式(α−2)で表されることが好ましい。
【0083】
【化12】

【0084】
一般式(α−1)中のR31〜R34及び一般式(α−2)中のR41〜R48は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0085】
また、一般式(α−1)中のR31〜R34及び一般式(α−2)中のR41〜R48のいずれかが、フェニル基、ビフェニル基、カルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、又はジベンゾフラニル基を表す場合、該フェニル基、該ビフェニル基、該カルバゾリル基、該ジベンゾチオフェニル基、又は該ジベンゾフラニル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はビフェニル基を有していても良い。
【0086】
一般式(G1−1)中のA、一般式(G1−2)中のA、並びに、一般式(G2−1)中及び一般式(G2−2)中のA及びAは、それぞれ独立に、一般式(1−1)乃至一般式(1−3)のいずれか一で表されることが好ましい。
【0087】
【化13】

【0088】
一般式(1−1)乃至一般式(1−3)中、R51〜R57、R61〜R67、及びR71〜R78は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0089】
一般式(1−1)乃至一般式(1−3)のように、A又はAが、ジベンゾチオフェン骨格の4位、ジベンゾフラン骨格の4位、又はカルバゾール骨格の9位を介してα又はαと結合している場合、他の置換位置を介して結合するよりも共役が広がりづらく、好ましい。またこれら置換位置の構成を適用すると、本発明の一態様の複素環化合物の合成が容易であり、好ましい。特に一般式(1−1)又は一般式(1−2)の構成を適用した本発明の一態様の複素環化合物は電気化学的に安定であり、好ましい。特に一般式(1−3)の構成を適用した本発明の一態様の複素環化合物はホール輸送性が良好であり、好ましい。
【0090】
特に、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAが、同一の構造であると、合成が容易なため、好ましい。したがって、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAが、下記一般式(1−1)で表されることが好ましい。
【0091】
また、一般式(G2−1)及び一般式(G2−2)において、A及びAが、同一の構造であると、合成が容易なため、好ましい。したがって、一般式(G2−1)及び一般式(G2−2)において、A及びAが、下記一般式(1−1)で表されることが好ましい。
【0092】
【化14】

【0093】
一般式(1−1)中、R51〜R57は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0094】
又は、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAが、一般式(1−2)で表されることが好ましい。また、一般式(G2−1)及び一般式(G2−2)において、A及びAが、一般式(1−2)で表されることが好ましい。
【0095】
【化15】

【0096】
一般式(1−2)中、R61〜R67は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0097】
又は、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAが、一般式(1−3)で表されることが好ましい。また、一般式(G2−1)及び一般式(G2−2)において、A及びAが、一般式(1−3)で表されることが好ましい。
【0098】
【化16】

【0099】
一般式(1−3)中、R71〜R78は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0100】
上記に挙げた各一般式において、R〜R18、R21〜R28、R51〜R57、R61〜R67、及びR71〜R78は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。R〜R18、R21〜R28、R51〜R57、R61〜R67、及びR71〜R78の具体的な構造としては、例えば、構造式(2−1)〜構造式(2−17)に示す置換基が挙げられる。
【0101】
【化17】

【0102】
上記に挙げた各一般式において、R31〜R34及びR41〜R48は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。R31〜R34及びR41〜R48の具体的な構造としては、例えば、構造式(2−1)〜構造式(2−20)に示す置換基が挙げられる。
【0103】
【化18】

【0104】
上記に挙げた各一般式において、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表す。該フェニレン基及び該ビフェニルジイル基は、置換基として、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を有していても良い。
【0105】
α及びαに含まれるフェニレン基が全て、メタ置換である本発明の一態様の複素環化合物は高いT1準位を有するため、好ましい。α及びαに含まれるフェニレン基が全て、パラ置換である本発明の一態様の複素環化合物は、発光素子に用いることで、駆動電圧の低い素子を実現できるため、好ましい。
【0106】
α及びαの具体的な構造の一例を、構造式(3−1)〜構造式(3−9)に示す。
【0107】
【化19】

【0108】
一般式(G1)に示される複素環化合物の具体例としては、構造式(100)〜構造式(116)、構造式(120)〜構造式(123)、構造式(130)〜構造式(143)、及び構造式(150)〜構造式(153)に示される複素環化合物を挙げることができる。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0109】
【化20】

【0110】
【化21】

【0111】
【化22】

【0112】
【化23】

【0113】
【化24】

【0114】
【化25】

【0115】
【化26】

【0116】
【化27】

【0117】
本発明の一態様の複素環化合物の合成方法としては種々の反応を適用することができる。例えば、以下に示す合成反応を行うことによって、一般式(G1)で表される本発明の一態様の複素環化合物を合成することができる。なお、本発明の一態様である複素環化合物の合成方法は、以下の合成方法に限定されない。
【0118】
≪一般式(G1)で表される複素環化合物の合成方法1≫
合成スキーム(A−1)に示すように、ハロゲン化ジベンゾキノキサリン化合物(a1)とアリールホウ素化合物(a2)と、アリールホウ素化合物(a3)とをカップリングさせることで、上記一般式(G1)で表される複素環化合物を合成することができる。合成スキーム(A−1)を以下に示す。
【0119】
【化28】

【0120】
合成スキーム(A−1)において、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。B及びBは、それぞれ独立に、ボロン酸又はジアルコキシボランを表す。
【0121】
合成スキーム(A−1)において、R81〜R90は、いずれか一が下記一般式(a1−1)で表される置換基を表し、他のいずれか一が下記一般式(a1−2)で表される置換基を表し、その他はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0122】
合成スキーム(A−1)において、R〜R10は、いずれか一が下記一般式(G1−1)で表される置換基を表し、他のいずれか一が下記一般式(G1−2)で表される置換基を表し、その他はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0123】
【化29】

【0124】
一般式(a1−1)中のX及び一般式(a1−2)中のXは、それぞれ独立に、塩素、臭素又はヨウ素を表す。X及びXは、反応性の高さから、好ましくは臭素、より好ましくはヨウ素を表す。一般式(G1−1)中のα及び一般式(G1−2)中のαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0125】
なお、合成スキーム(A−1)において、αはXが結合していた部位に、αはXが結合していた部位にそれぞれ結合する。
【0126】
なお、合成スキーム(A−1)のカップリング反応は様々な反応条件があるが、その一例として、塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0127】
合成スキーム(A−1)において、鈴木・宮浦反応を用いる場合について示す。
【0128】
金属触媒としてはパラジウム触媒を用いることができ、パラジウム触媒としてはパラジウム錯体とその配位子の混合物を用いることができる。また、パラジウム錯体としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド等が挙げられる。また、配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。
【0129】
また、塩基として用いることができる物質としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0130】
また、当該反応は溶液中で行うことが好ましく、用いる事ができる溶媒としては、アセトニトリルと水の混合溶媒、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶媒と水の混合溶媒、トルエンやキシレンとエタノール等のアルコール類と水の3種混合溶媒、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)等の有機極性溶媒と水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒等が挙げられる。
【0131】
ただし、用いることができる触媒、塩基、溶媒はこれらに限られるものでは無い。
【0132】
また、合成スキーム(A−1)において、アリールホウ素化合物(a2)の代わりに、アリールアルミニウム、アリールジルコニウム、アリール亜鉛、又はアリールスズ等を用いても良い。また、反応は窒素やアルゴンなど不活性雰囲気下で行うことが好ましい。また、電磁波を用いて加熱しても良い。
【0133】
特に、α及びαが同じ、かつA及びAが同じ場合、上記合成スキーム(A−1)は、純度や収率良く、上記一般式(G1)で表される複素環化合物を合成できるため、望ましい合成法である。つまり、α及びαが同じ、かつA及びAが同じ場合は、化合物(a1)に化合物(a2)と化合物(a3)のいずれかを二等量加えて反応させることができるため、簡便である。
【0134】
上記ハロゲン化ジベンゾキノキサリン化合物(a1)において、X及びXの位置は、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環の6,11位又は7,10位が好ましい。この位置でのハロゲン化物は合成しやすく、好ましい。
【0135】
以上によって、本実施の形態の複素環化合物を合成することができる。
【0136】
≪一般式(G1)で表される複素環化合物の合成方法2≫
以下では、一般式(G1)で表される複素環化合物の別の合成方法について説明する。合成スキーム(B−1)に示すように、ハロゲン化ジベンゾキノキサリン化合物(a4)とアリールホウ素化合物(a2)とをカップリングさせることで、上記一般式(G1)で表される複素環化合物を合成することができる。合成スキーム(B−1)を以下に示す。
【0137】
【化30】

【0138】
合成スキーム(B−1)において、αは、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、Aは、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。Bは、ボロン酸又はジアルコキシボランを表す。
【0139】
合成スキーム(B−1)において、R91〜R100は、いずれか一が下記一般式(a4−1)で表される置換基を表し、他のいずれか一が下記一般式(a4−2)で表される置換基を表し、その他はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0140】
合成スキーム(B−1)において、R〜R10は、いずれか一が下記一般式(G1−1)で表される置換基を表し、他のいずれか一が下記一般式(G1−2)で表される置換基を表し、その他はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。
【0141】
【化31】

【0142】
一般式(a4−1)において、Xは、塩素、臭素又はヨウ素を表す。Xは、反応性の高さから、好ましくは臭素、より好ましくはヨウ素を表す。一般式(G1−1)中、αは、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、Aは、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。一般式(a4−2)及び一般式(G1−2)中、αは、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、Aは、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。
【0143】
なお、合成スキーム(B−1)において、αはXが結合していた部位に結合する。
【0144】
なお、合成スキーム(B−1)のカップリング反応は様々な反応条件があるが、その一例として、塩基存在下にて金属触媒を用いた合成方法を適用することができる。
【0145】
合成スキーム(B−1)において、鈴木・宮浦反応を用いることができる。詳細においては上記合成スキーム(A−1)を参照できるので、省略する。
【0146】
このようにαとαとが異なる、及び/又は、AとAとが異なる場合、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環に対して一つずつ置換基を導入する合成スキーム(B−1)は、純度や収率良く本発明の一態様の複素環化合物を合成できるため、望ましい合成法である。
【0147】
以上によって、本実施の形態の複素環化合物を合成することができる。
【0148】
本実施の形態の複素環化合物は、広いバンドギャップを有するため、発光素子において、発光層の発光物質を分散させるホスト材料に用いることで、高い発光効率を得ることができる。特に、燐光性化合物を分散させるホスト材料として好適である。また、本実施の形態の複素環化合物は、電子輸送性の高い物質であるため、発光素子における電子輸送層の材料として好適に用いることができる。本実施の形態の複素環化合物を用いることにより、駆動電圧の低い発光素子を実現することができる。また、発光効率の高い発光素子を実現することができる。また、長寿命の発光素子を実現することができる。さらに、この発光素子を用いることで、消費電力の低減された発光装置、電子機器及び照明装置を得ることができる。
【0149】
また、本実施の形態の複素環化合物は、有機薄膜太陽電池に用いることができる。具体的には、本発明の一態様の複素環化合物はキャリア輸送性を有するため、キャリア輸送層やキャリア注入層に用いることができる。また、本発明の一態様の複素環化合物は光励起するため、発電層に用いることができる。
【0150】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様として、実施の形態1で説明した複素環化合物を用いた発光素子について図1を用いて説明する。本実施の形態では、該複素環化合物を発光層に用いた発光素子について説明する。
【0151】
本実施の形態の発光素子は、一対の電極間に少なくとも発光層を有するEL層を挟持して形成される。EL層は発光層の他に複数の層を有してもよい。当該複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリアの再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組み合わせて積層されたものである。本明細書では、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層をキャリアの注入、輸送などの機能を有する、機能層ともよぶ。機能層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などを用いることができる。
【0152】
図1(A)に示す本実施の形態の発光素子において、第1の電極101及び第2の電極103の一対の電極間に発光層113を有するEL層102が設けられている。EL層102は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。図1(A)における発光素子は、基板100上に、第1の電極101と、第1の電極101の上に順に積層した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115と、さらにその上に設けられた第2の電極103から構成されている。なお、本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
【0153】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル等からなる)、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子の支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0154】
第1の電極101としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛の膜は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)の膜は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0155】
但し、EL層102のうち、第1の電極101に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合には、第1の電極101に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、アルミニウムを含む合金(例えば、Al−Si)等も用いることもできる。
【0156】
第1の電極101上に形成されるEL層102は、少なくとも発光層113を有しており、またEL層102の一部には、本発明の一態様である複素環化合物を含んで形成される。EL層102の一部には公知の物質を用いることもでき、低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層102は、有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
【0157】
また、EL層102は、発光層113の他、図1に示すように正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115などを適宜組み合わせて積層することにより形成される。
【0158】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0159】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0160】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0161】
また、正孔注入層111として、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体によって有機化合物に正孔が発生するため、正孔注入性及び正孔輸送性に優れている。
【0162】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0163】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB又はα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0164】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0165】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0166】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0167】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層111に用いてもよい。
【0168】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、カルバゾール骨格、トリアリールアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、又はジベンゾフラン骨格を有する物質を用いることができる。具体的には、例えば、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0169】
また、正孔輸送層112には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。
【0170】
なお、正孔輸送層112には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0171】
発光層113は、発光物質を含む層である。本実施の形態では、実施の形態1に示した複素環化合物を発光層に含む。
【0172】
本発明の一態様の複素環化合物は、発光性の有機化合物であるため、発光物質として用いることができる。
【0173】
また、発光物質(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成の発光層において、該複素環化合物をホスト材料として用いることができる。該複素環化合物に発光物質であるゲスト材料を分散させた構成とすることで、ゲスト材料からの発光を得ることができる。このように、本発明の一態様の複素環化合物は、発光層におけるホスト材料として用いることが有用である。
【0174】
また、発光物質(ゲスト材料)を分散させるための物質(ホスト材料)は複数種用いることができる。
【0175】
また、発光層は、本発明の一態様の複素環化合物及びゲスト材料だけでなく、その他の材料を含んでいても良い。
【0176】
発光物質としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。発光層113に用いることができる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0177】
また、発光層113に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pbi)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)])などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(dpo)(acac)])、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(p−PF−ph)(acac)])、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bt)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdppr−Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmmoppr)(acac)])などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−iPr)(acac)])などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(btp)(acac)])、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)(Phen)])、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)(Phen)])、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)(Phen)])等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0178】
なお、本発明の一態様の複素環化合物は、ジベンゾ[f,h]キノキサリン骨格がLUMO準位に対して支配的な骨格であると考えられる。また、該化合物は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によれば、少なくとも−2.8eV以下、具体的には−2.9eV以下の深いLUMO準位を有する。例えば、実施例1より、CV測定から求めた6,11mDBTPDBq−IIのLUMO準位は、−2.90eVである。一方、上述した[Ir(mppr−Me)(acac)]、[Ir(mppr−iPr)(acac)]、[Ir(tppr)(acac)]、[Ir(tppr)(dpm)]のようなピラジン骨格を有する燐光性化合物も、ほぼ同等の深いLUMO準位を有している。したがって、本発明の一態様の複素環化合物をホスト材料とし、ピラジン骨格を有する燐光性化合物をゲスト材料とする発光層の構成は、発光層内での電子のトラップを極力抑制することができ、極めて低い電圧で発光素子を駆動できる。
【0179】
なお、ホスト材料は、ゲスト材料(発光物質)よりも深いHOMO準位、かつ、浅いLUMO準位を有するのが好ましい。そのような構成であると、ホスト材料に注入されたキャリアをゲスト材料に効率よく移動しやすい。本発明の一態様の複素環化合物は、比較的深い(値が小さい)HOMO準位を有する。そのためホスト材料として好ましい。したがって、ゲスト材料のHOMO準位は−6.0eV以上−5.0eV以下であることが好ましい。なお、ゲスト材料のLUMO準位は−3.5eV以上−2.5eV以下であることが好ましい。
【0180】
また、発光物質として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0181】
本実施の形態に示す発光層113の別態様について説明する。発光層113は、燐光性化合物、第1の有機化合物、及び第2の有機化合物を含む構成とすることができる。燐光性化合物は、発光層113におけるゲスト材料(発光物質)である。また、第1の有機化合物及び第2の有機化合物のうち、発光層113に含まれる割合の多い方を発光層113におけるホスト材料とする。第1の有機化合物又は第2の有機化合物として、本発明の一態様の複素環化合物を用いることができる。
【0182】
発光層113において、上記ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、ゲスト材料の濃度消光を抑制し、発光素子の発光効率を高くすることができる。
【0183】
なお、第1の有機化合物及び第2の有機化合物のそれぞれのT1準位は、燐光性化合物のT1準位よりも高いことが好ましい。第1の有機化合物(又は第2の有機化合物)のT1準位が燐光性化合物のT1準位よりも低いと、発光に寄与する燐光性化合物の三重項励起エネルギーを第1の有機化合物(又は第2の有機化合物)が消光(クエンチ)してしまい、発光効率の低下を招くためである。
【0184】
燐光性化合物としては、燐光性有機金属イリジウム錯体等を用いることができる。また、第1の有機化合物及び第2の有機化合物としては、電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性化合物)と、ホールを受け取りやすい化合物(正孔輸送性化合物)とを組み合わせることが好ましい。
【0185】
電子輸送性化合物として、本発明の一態様の複素環化合物を用いることができる。
【0186】
正孔輸送性化合物としては、電子輸送性化合物として用いる本発明の一態様の複素環化合物よりも正孔輸送性が高い化合物を用いる。例えば、先に挙げた正孔輸送層112に用いることができる化合物を適用することができる。例えば、カルバゾール骨格、トリアリールアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、又はジベンゾフラン骨格を有する物質を用いることができる。ただし、これら化合物は、用いる燐光性化合物よりもT1準位が高いものを選ぶ。また、正孔輸送性化合物のHOMO準位と燐光性化合物のHOMO準位との差が0.2eV以内であると、燐光性化合物がホールを強くトラップしないため、発光領域が広がり、好ましい。具体的には、例えば、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、PCzPCN1、4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’−TNATA)、2,7−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N,N’−ビス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(略称:PCA2B)、N−(9,9−ジメチル−2−N’,N’−ジフェニルアミノ−9H−フルオレン−7−イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、N,N’,N’’−トリフェニル−N,N’,N’’−トリス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)ベンゼン−1,3,5−トリアミン(略称:PCA3B)、2−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:PCASF)、2−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPASF)、N,N’−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニル−9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジアミン(略称:YGA2F)、TPD、DPAB、N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−N−{9,9−ジメチル−2−[N’−フェニル−N’−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)アミノ]−9H−フルオレン−7−イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、PCzPCA1、3−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、DNTPD、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、PCzPCA2が挙げられる。
【0187】
なお、電子を受け取りやすい化合物とホールを受け取りやすい化合物で第1の有機化合物と第2の有機化合物を構成する場合、その混合比によってキャリアバランスを制御することができる。具体的には、第1の有機化合物:第2の有機化合物=1:9〜9:1の範囲が好ましい。
【0188】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0189】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質、あるいは陰極からの電子注入を促進する物質を含む層である。電子注入層115には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、酸化リチウム等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0190】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性及び電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0191】
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0192】
第2の電極103は、第2の電極103が陰極として機能する際は仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素、すなわちリチウムやセシウム等のアルカリ金属、及びカルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム、及びこれらを含む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム、イッテルビウム等の希土類金属及びこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。
【0193】
但し、EL層102のうち、第2の電極103に接して形成される層が、上述した有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず、アルミニウム、銀、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いることができる。
【0194】
なお、第2の電極103を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0195】
上述した発光素子は、第1の電極101と第2の電極103との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101又は第2の電極103のいずれか一方又は両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101又は第2の電極103のいずれか一方、又は両方が可視光に対する透光性を有する電極となる。
【0196】
なお、第1の電極101と第2の電極103との間に設けられる層の構成は、上記のものに限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、第1の電極101及び第2の電極103から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成であれば上記以外のものでもよい。
【0197】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質、又は正孔ブロック材料等から成る層を、本発明の一態様の複素環化合物をホスト材料として含む発光層と自由に組み合わせて構成すればよい。
【0198】
なお、本発明の一態様の複素環化合物は、電子輸送性の高い物質であるため、電子輸送層に用いることができる。
【0199】
また、発光層(特に発光層のホスト材料)及び電子輸送層の双方に、本発明の一態様の複素環化合物を適用することで、LUMO準位が近い材料が接するため、電子輸送層から発光層への電子の注入が良好となる。そのため、極めて低い駆動電圧が実現できる。
【0200】
図1(B)に示す発光素子は、基板100上において、第1の電極101及び第2の電極103の一対の電極間に、EL層102が設けられている。EL層102は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。図1(B)における発光素子は、基板100上に、陰極として機能する第2の電極103と、第2の電極103上に順に積層した電子注入層115、電子輸送層114、発光層113、正孔輸送層112、正孔注入層111と、さらにその上に設けられた陽極として機能する第1の電極101から構成されている。
【0201】
以下、具体的な発光素子の形成方法を示す。
【0202】
本実施の形態の発光素子は一対の電極間にEL層が挟持される構造となっている。EL層は少なくとも発光層を有し、発光層は、本発明の一態様の複素環化合物をホスト材料として用いて形成される。また、EL層には、発光層の他に機能層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など)を含んでもよい。電極(第1の電極及び第2の電極)、発光層、及び機能層は液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法、印刷法などの湿式法を用いて形成してもよく、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの乾式法を用いて形成してもよい。湿式法を用いれば、大気圧下で形成することができるため、簡易な装置及び工程で形成することができ、工程が簡略化し、生産性が向上するという効果がある。一方乾式法は、材料を溶解させる必要がないために溶液に難溶の材料も用いることができ、材料の選択の幅が広い。
【0203】
発光素子を構成する薄膜のすべての形成を湿式法で行ってもよい。この場合、湿式法で必要な設備のみで発光素子を作製することができる。また、発光層を形成するまでの積層を湿式法で行い、発光層上に積層する機能層や第2の電極などを乾式法により形成してもよい。さらに、発光層を形成する前の第1の電極や機能層を乾式法により形成し、発光層、及び発光層上に積層する機能層や第2の電極を湿式法によって形成してもよい。もちろん、本実施の形態はこれに限定されず、用いる材料や必要とされる膜厚、界面状態によって適宜湿式法と乾式法を選択し、組み合わせて発光素子を作製することができる。
【0204】
本実施の形態においては、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に発光素子を作製している。一基板上にこのような発光素子を複数作製することで、パッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTと電気的に接続された電極上に発光素子を作製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型及びP型のTFTからなるものでもよいし、若しくはN型又はP型のいずれか一方からのみなるものであってもよい。
【0205】
以上のように、本発明の一態様の複素環化合物を用いて発光素子を作製することができる。本発明の一態様の複素環化合物を発光素子に用いることで、駆動電圧が低い発光素子を得ることができる。また、発光効率が高い発光素子を得ることができる。また、長寿命な発光素子を得ることができる。
【0206】
また、このようにして得られた本発明の一態様の発光素子を用いた発光装置(画像表示デバイス)は低消費電力を実現できる。
【0207】
なお、本実施の形態で示した発光素子を用いて、パッシブマトリクス型の発光装置や、薄膜トランジスタ(TFT)によって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製することができる。
【0208】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0209】
(実施の形態3)
本実施の形態は複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子という)の態様について、図2を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に複数の発光ユニットを有する発光素子である。
【0210】
図2(A)において、第1の電極301と第2の電極303との間には、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312が積層されている。本実施の形態において、第1の電極301は陽極として機能する電極であり、第2の電極303は陰極として機能する電極である。第1の電極301と第2の電極303は実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312は同じ構成であっても異なる構成であっても良い。また、第1の発光ユニット311と、第2の発光ユニット312は、その構成として、実施の形態2と同様なものを適用しても良いし、いずれかが異なる構成であっても良い。
【0211】
また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312の間には、電荷発生層313が設けられている。電荷発生層313は、第1の電極301と第2の電極303に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極301に第2の電極303よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層313から第1の発光ユニット311に電子が注入され、第2の発光ユニット312に正孔が注入される。
【0212】
なお、電荷発生層313は、光の取り出し効率の点から、可視光に対する透光性を有することが好ましい。また、電荷発生層313は、第1の電極301や第2の電極303よりも低い導電率であっても機能する。
【0213】
電荷発生層313は、正孔輸送性の高い有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを含む構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物と電子供与体(ドナー)とを含む構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0214】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、本発明の一態様の複素環化合物の他、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0215】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0216】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq、BeBq、BAlqなど、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、Zn(BOX)、Zn(BTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0217】
また、電子供与体としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、又は元素周期表における第13族に属する金属及びその酸化物、炭酸塩などを用いることができる。具体的には、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、インジウム、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0218】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層313を形成することにより、発光ユニットが積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0219】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、図2(B)に示すように、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子も適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度で発光する長寿命素子を実現できる。
【0220】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子において、第1の発光ユニットの発光色と第2の発光ユニットの発光色を補色の関係になるようにすることで、白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つの発光ユニットを有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1の発光ユニットの発光色が赤色であり、第2の発光ユニットの発光色が緑色であり、第3の発光ユニットの発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0221】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0222】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の、発光素子を有する発光装置について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA−B及びC−Dで切断した断面図である。
【0223】
本実施の形態の発光装置は、駆動回路部であるソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403と、画素部402と、封止基板404と、シール材405と、FPC(フレキシブルプリントサーキット)409と、素子基板410と、を有する。シール材405で囲まれた内側は、空間になっている。
【0224】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPC又はPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0225】
図3(A)に示す素子基板410上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、図3(B)では、駆動回路部であるソース側駆動回路401と、画素部402中の一つの画素が示されている。
【0226】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、TFTで形成される種々のCMOS回路、PMOS回路又はNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、素子基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を素子基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0227】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性樹脂膜を用いることにより形成する。
【0228】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物414の上端部又は下端部に曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0229】
第1の電極413上には、発光層416、及び第2の電極417がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極413に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、又は珪素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれる。
【0230】
また、発光層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法などの液滴吐出法、印刷法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。発光層416は、実施の形態1で示した複素環化合物を含んでいる。また、発光層416を構成する他の材料としては、低分子材料、オリゴマー、デンドリマー、又は高分子材料であっても良い。
【0231】
さらに、発光層416上に形成され、陰極として機能する第2の電極417に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、又はこれらの合金や化合物、Mg−Ag、Mg−In、Al−Li等)を用いることが好ましい。なお、発光層416で生じた光が第2の電極417を透過させる場合には、第2の電極417として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化亜鉛等)との積層を用いるのが良い。
【0232】
さらにシール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより、素子基板410、封止基板404、及びシール材405で囲まれた空間407に発光素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される場合もある。
【0233】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、シール材405の材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル又はアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0234】
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0235】
また、本発明の発光素子は、上述したアクティブマトリクス型の発光装置のみならずパッシブマトリクス型の発光装置に用いることもできる。図4に本発明の発光素子を用いたパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図及び断面図を示す。なお、図4(A)は、発光装置を示す斜視図、図4(B)は図4(A)をX−Yで切断した断面図である。
【0236】
図4において、基板501上の第1の電極502と第2の電極503との間にはEL層504が設けられている。第1の電極502の端部は絶縁層505で覆われている。そして、絶縁層505上には隔壁層506が設けられている。隔壁層506の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。つまり、隔壁層506の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接する辺)の方が上辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層506を設けることで、クロストーク等に起因した発光素子の不良を防ぐことができる。
【0237】
以上により、本発明の一態様の発光素子を有するパッシブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0238】
なお、本実施の形態で示した発光装置(アクティブマトリクス型、パッシブマトリクス型)は、いずれも本発明の一態様の発光素子を用いて形成されることから、消費電力の低い発光装置を得ることができる。
【0239】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0240】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態4に示す本発明の一態様の発光装置をその一部に含む電子機器及び照明装置について、図5乃至図9を用いて説明する。
【0241】
電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機又は電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的には、Digital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。
【0242】
図5(A)は本発明の一態様に係るテレビ装置であり、筐体611、支持台612、表示部613、スピーカー部614、ビデオ入力端子615等を含む。このテレビ装置において、表示部613には、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い発光効率が得られ、長寿命であるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、信頼性が高く、消費電力の低減されたテレビ装置を得ることができる。
【0243】
図5(B)は本発明の一態様に係るコンピュータであり、本体621、筐体622、表示部623、キーボード624、外部接続ポート625、ポインティングデバイス626等を含む。このコンピュータにおいて、表示部623には、本発明の発光装置を適用することができる。本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い発光効率が得られ、長寿命であるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、信頼性が高く、消費電力の低減されたコンピュータを得ることができる。
【0244】
図5(C)は本発明の一態様に係る携帯電話であり、本体631、筐体632、表示部633、音声入力部634、音声出力部635、操作キー636、外部接続ポート637、アンテナ638等を含む。この携帯電話において、表示部633には、本発明の発光装置を適用することができる。本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い発光効率が得られ、長寿命であるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、信頼性が高く、消費電力の低減された携帯電話を得ることができる。
【0245】
図5(D)は本発明の一態様に係るカメラであり、本体641、表示部642、筐体643、外部接続ポート644、リモコン受信部645、受像部646、バッテリー647、音声入力部648、操作キー649、接眼部650等を含む。このカメラにおいて、表示部642には、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い発光効率が得られ、長寿命であるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、信頼性が高く、消費電力の低減されたカメラを得ることができる。
【0246】
以上の様に、本発明の一態様の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明の一態様の発光装置を用いることにより、信頼性が高く、消費電力の低減された電子機器を得ることができる。
【0247】
また、本発明の一態様の発光装置は、照明装置として用いることもできる。図6は、本発明の一態様の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図6に示した液晶表示装置は、筐体701、液晶層702、バックライト703、筐体704を有し、液晶層702は、ドライバIC705と接続されている。また、バックライト703は、本発明の一態様の発光装置が用いられおり、端子706により、電流が供給されている。
【0248】
このように本発明の一態様の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、低消費電力のバックライトが得られる。また、本発明の一態様の発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化も可能である。従って、低消費電力であり、大面積化された液晶表示装置を得ることができる。
【0249】
図7は、本発明の一態様の発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例である。図7に示す電気スタンドは、筐体801と、光源802を有し、光源802として、本発明の一態様の発光装置が用いられている。低駆動電圧で、高い発光効率が得られ、長寿命であるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、信頼性が高く、低消費電力の電気スタンドを得ることが可能となる。
【0250】
図8は、本発明の一態様の発光装置を、室内の照明装置901として用いた例である。本発明の一態様の発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い発光効率が得られ、長寿命であるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、信頼性が高く、低消費電力の照明装置を得ることが可能となる。このように、本発明の一態様の発光装置を、室内の照明装置901として用いた部屋に、図5(A)で説明したような、本発明の一態様のテレビ装置902を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。
【0251】
図9(A)(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。図9(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0252】
表示部9631aや表示部9631bに、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。
【0253】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9037にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、残りの半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面にキーボードボタンを表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
【0254】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタンを表示することができる。
【0255】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
【0256】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロセンサ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0257】
また、図9(A)では表示部9631aと表示部9631bの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方の表示部のサイズと他方の表示部のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0258】
図9(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する。なお、図9(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示している。
【0259】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0260】
また、この他にも図9(A)(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0261】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の一面又は二面に設けることで、効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なお、バッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0262】
また、図9(B)に示す充放電制御回路9634の構成及び動作について、図9(C)にブロック図を示し説明する。図9(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至スイッチSW3が、図9(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0263】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0264】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力電送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0265】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0266】
<合成例1>
本実施例では、下記構造式(100)に示される6,11−ビス[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:6,11mDBTPDBq−II)の合成方法について説明する。
【0267】
【化32】

【0268】
≪6,11mDBTPDBq−IIの合成≫
6,11mDBTPDBq−IIの合成スキームを(C−1)に示す。
【0269】
【化33】

【0270】
100mL三口フラスコに6,11−ジブロモジベンゾ[f、h]キノキサリン0.6g(2.0mmol)、3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニルボロン酸1.3g(4.2mmol)、トルエン30mL、エタノール3mL、2Mの炭酸カリウム水溶液3mLを加えた。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)46mg(0.4mmol)を加えた。この混合物を窒素気流下、80℃で15時間撹拌した。反応後、系内に析出した固体を吸引濾過により濾液と濾物を得た。
【0271】
得られた濾物に水を加えて超音波を照射し、固体を吸引濾過にて濾取した。得られた固体にエタノールを加えて超音波を照射し、吸引濾過にて濾取した。得られた固体をトルエンに溶かし、アルミナ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通して吸引濾過し、得られた濾液を濃縮して固体を得た(固体A)。
【0272】
また、最初の吸引濾過で得た濾液の水層から有機物をトルエンで抽出し、得られた抽出溶液と上記濾液の有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を吸着させた。得られた混合物を自然濾過し、濾液を濃縮して固体を得た(固体B)。
【0273】
得られた固体(固体A+固体B)を合わせてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはトルエンとヘキサンの混合溶媒(トルエン:ヘキサン=1:20)を用いた。得られたフラクションを濃縮し、白色固体を収量1.5g、収率75%で得た。
【0274】
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)でのRf値(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=1:10)は、目的物は0.20、6,11−ジブロモジベンゾ[f、h]キノキサリンは0.55だった。
【0275】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6,11−ビス[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:6,11mDBTPDBq−II)であることを確認した。
【0276】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=7.48−7.51(m,4H),7.62−7.73(m,6H),7.80−7.88(m,4H),7.98(d,J=9.3Hz,2H),8.18−8.26(m,8H),8.78(d,J=8.7Hz,2H),8.93(d,J=3.9Hz,2H),9.60(d,J=1.8Hz,2H)。
【0277】
また、H NMRチャートを図10に示す。なお、図10(B)は、図10(A)における6.00ppm〜10.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0278】
また、6,11mDBTPDBq−IIのトルエン溶液の吸収スペクトルを図11(A)に、発光スペクトルを図11(B)にそれぞれ示す。また、6,11mDBTPDBq−IIの薄膜の吸収スペクトルを図12(A)に、発光スペクトルを図12(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルに関して、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示し、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図11及び図12において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では364nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは、414nm(励起波長364nm)であった。また、薄膜の場合では366nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは440nm(励起波長367nm)であった。
【0279】
また、6,11mDBTPDBq−IIの薄膜の電子物性を評価した(測定機器:理研計器社製、AC−2)。なお、薄膜の電子物性の測定は以下のように行った。
【0280】
HOMO準位は、大気中にて光電子分光法(理研計器社製、AC−2)で測定したイオン化ポテンシャルを、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位は、薄膜の吸収スペクトルのデータを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから吸収端を求め、その吸収端を光学的エネルギーギャップとしてHOMO準位に加算することにより得た。
【0281】
薄膜の電子物性の測定結果より、HOMO準位は、−5.93eV、LUMO準位は、−2.83eV、及びバンドギャップ(Bg)は、3.10eVであった。
【0282】
以上の結果より、6,11mDBTPDBq−IIは、比較的深いHOMO準位と、比較的浅いLUMO準位と、比較的広いBgとを有していることが確認された。
【0283】
また、6,11mDBTPDBq−IIについて、溶液の電気化学的特性及び電子物性を評価した。
【0284】
なお、測定方法としては、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600A又は600C)を用いた。
【0285】
HOMO準位は−6.22eVであることがわかった。よって、HOMO準位がこの値に近い材料に、ホールを効率良く注入できることがわかった。また、HOMO準位が深い(値が小さい)ため、それより浅い(値が大きい)材料にホールを効率良く注入できることがわかった。
【0286】
LUMO準位は−2.90eVであることがわかった。よって、LUMO準位が、この値に近い材料に電子が効率良く注入できることがわかった。また、LUMO準位が浅い(値が大きい)ため、それより深い(値が小さい)材料に電子が効率良く注入できることがわかった。また、100サイクル後でも還元ピークの強度がほぼ同じであった。このことから、還元状態と中性状態との間の酸化還元の繰り返しに良好な耐性を示すことがわかった。
【0287】
なお、上記サイクリックボルタンメトリ(CV)測定の測定法に関しては以下の通りである。
【0288】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705−6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)((株)東京化成製カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一した。
【0289】
(参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーの算出)
まず、本実施例で用いる参照電極(Ag/Ag電極)の真空準位に対するポテンシャルエネルギー(eV)を算出した。つまり、Ag/Ag電極のフェルミ準位を算出した。メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位は、標準水素電極に対して+0.610[V vs. SHE]であることが知られている(参考文献;Christian R.Goldsmith et al., J.Am.Chem.Soc., Vol.124, No.1,83−96, 2002)。
【0290】
一方、本実施例で用いる参照電極を用いて、メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位を求めたところ、+0.11[V vs.Ag/Ag]であった。したがって、本実施例で用いる参照電極のポテンシャルエネルギーは、標準水素電極に対して0.50[eV]低くなっていることがわかった。
【0291】
ここで、標準水素電極の真空準位からのポテンシャルエネルギーは−4.44eVであることが知られている(参考文献;大西敏博・小山珠美著、高分子EL材料(共立出版)、p.64−67)。以上のことから、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.44−0.50=−4.94[eV]であると算出できた。
【0292】
本実施例の化合物の酸化反応特性の測定は、参照電極に対する作用電極の電位を約0.2Vから約1.5Vまで走査した後、約1.5Vから約0.2Vまで走査して行った。
【0293】
続いて、目的物のCV測定からのHOMO準位の算出について詳述する。酸化反応測定における酸化ピーク電位Epa[V]と、還元ピーク電位Epc[V]を算出した。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位)は(Epa+Epc)/2[V]と算出できる。このことは、本実施例の化合物が半波電位の値[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示しており、このエネルギーはHOMO準位に相当する。
【0294】
本実施例の化合物の還元反応特性の測定は、参照電極に対する作用電極の電位を約−1.2Vから約−2.2Vまで走査した後、約−2.2Vから約−1.2Vまで走査して行った。
【0295】
続いて、目的物のCV測定からのLUMO準位の算出について詳述する。還元反応測定における還元ピーク電位Epc[V]と、酸化ピーク電位Epa[V]を算出した。したがって、半波電位(EpaとEpcの中間の電位)は(Epa+Epc)/2[V]と算出できる。このことは、本実施例の化合物が半波電位の値[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより還元されることを示しており、このエネルギーはLUMO準位に相当する。
【実施例2】
【0296】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について図13を用いて説明する。本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。なお、既に示した材料については省略する。
【0297】
【化34】

【0298】
以下に、本実施例の発光素子1及び発光素子2の作製方法を示す。
【0299】
(発光素子1)
まず、ガラス基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極1101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
【0300】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0301】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0302】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4,4’,4’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、40nmとし、DBT3P−IIと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=DBT3P−II:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0303】
次に、正孔注入層1111上に、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0304】
さらに、実施例1にて合成した6,11−ビス[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:6,11mDBTPDBq−II)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)及び(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、6,11mDBTPDBq−II、PCBA1BP及び[Ir(dppm)(acac)]の重量比は、0.8:0.2:0.05(=6,11mDBTPDBq−II:PCBA1BP:[Ir(dppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0305】
さらに、発光層1113上に6,11mDBTPDBq−IIを膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0306】
その後、第1の電子輸送層1114a上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0307】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0308】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。
【0309】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0310】
(発光素子2)
発光素子2の発光層1113は、6,11mDBTPDBq−II、PCBA1BP及び(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])を共蒸着することで形成した。ここで、6,11mDBTPDBq−II、PCBA1BP及び[Ir(mppm)(acac)]の重量比は、0.7:0.3:0.05(=6,11mDBTPDBq−II:PCBA1BP:[Ir(mppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。発光層1113以外は発光素子1と同様に作製した。
【0311】
以上により得られた発光素子1及び発光素子2の素子構造を表1に示す。
【0312】
【表1】

【0313】
発光素子1及び発光素子2を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0314】
発光素子1及び発光素子2の輝度−電流効率特性を図14に示す。図14において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、電圧−電流特性を図15に示す。図15において、横軸は電圧(V)、縦軸は電流(mA)を表す。また、輝度−色度座標特性を図16に示す。図16において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は色度座標(x座標、又はy座標)を示す。また、輝度−パワー効率特性を図17に示す。図17において、横軸は、輝度(cd/m)を、縦軸は、パワー効率(lm/W)を表す。また、各発光素子における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表2に示す。
【0315】
【表2】

【0316】
また、発光素子1及び発光素子2に0.1mAの電流を流した際の発光スペクトルを、図18に示す。図18において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。図18及び表2に示す通り、1100cd/mの輝度の時の発光素子1のCIE色度座標は(x,y)=(0.57,0.43)であった。1000cd/mの輝度の時の発光素子2のCIE色度座標は(x,y)=(0.43,0.56)であった。発光素子1は、[Ir(dppm)(acac)]に由来する発光が得られたことがわかった。また、発光素子2は、[Ir(mppm)(acac)]に由来する発光が得られたことがわかった。このことから、本発明の一態様の複素環化合物である6,11mDBTPDBq−IIは、黄色燐光材料を発光させることができる高いT1準位を有することがわかった。このことから、黄色〜赤色の燐光発光材料のホスト材料として用いることができることがわかった。
【0317】
図15及び表2から、発光素子1及び発光素子2は、どちらも駆動電圧が低いことがわかった。発光素子1及び発光素子2では、発光層のホスト材料と第1の電子輸送層の材料に、本発明の一態様の複素環化合物である6,11mDBTPDBq−IIを用いた。よって、駆動電圧の低い素子を実現することができる。
【0318】
また、図14、図17及び表2から、発光素子1及び発光素子2は、どちらも電流効率、外部量子効率及びパワー効率が高いことがわかった。6,11mDBTPDBq−IIは、2つのジベンゾチオフェン環が、それぞれメタフェニレン基を介して、ジベンゾ[f、h]キノキサリン環と結合している複素環化合物である。よって、発光効率の高い素子を実現することができる。
【0319】
また、図16から、発光素子1及び発光素子2は、低輝度から高輝度まで、色変化がほとんど見られなかった。このことから、発光素子1及び発光素子2は、キャリアバランスの良好な素子であると言える。
【0320】
次に、発光素子1及び発光素子2の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図19に示す。図19において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。信頼性試験は、室温で行い、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で本実施例の発光素子を駆動した。図19から、発光素子1の990時間後の輝度は初期輝度の76%を保ち、発光素子2の110時間後の輝度は初期輝度の80%を保っていた。この信頼性試験の結果から、発光素子1及び発光素子2は、長寿命であることが明らかとなった。
【0321】
以上示したように、実施例1で作製した6,11mDBTPDBq−IIを発光層のホスト材料及び電子輸送層の材料として用いることにより、駆動電圧が低く、発光効率が高く、長寿命である発光素子を作製することができた。
【実施例3】
【0322】
<合成例2>
本実施例では、下記構造式(102)に示される6,11−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6,11mCzP2DBq)の合成方法について説明する。
【0323】
【化35】

【0324】
≪6,11mCzP2DBqの合成≫
6,11mCzP2DBqの合成スキームを(D−1)に示す。
【0325】
【化36】

【0326】
100mL三口フラスコに6,11−ジブロモジベンゾ[f,h]キノキサリン1.1g(2.8mmol)、3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニルボロン酸1.7g(5.9mmol)、トルエン56mL、エタノール6mL、2Mの炭酸カリウム水溶液4mLを加えた。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)64mg(0.06mmol)を加えた。この混合物を窒素気流下、80℃で8時間撹拌した。反応後、析出した固体を濾別し、白色固体を得た。得られた固体のトルエン溶液をアルミナ、セライトを通して吸引濾過し、得られた濾液を濃縮して白色固体を得た。得られた固体を、トルエンを用いて再結晶し、白色固体を得た。この白色固体を超音波を照射しながらエタノールで洗浄し、固体を吸引濾過にて濾取したところ、粉末を収量1.1g、収率55%で得た。
【0327】
得られた粉末0.84gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力4.2Pa、アルゴン流量5.0mL/minの条件で、粉末を365℃で加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を収量0.84g、収率76%で得た。
【0328】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である6,11−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6,11mCzP2DBq)であることを確認した。
【0329】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,500MHz):δ(ppm)=7.32(t,J=6.9Hz,4H),7.45(t,J=7.2Hz,4H),7.53(d,J=8.1Hz,4H),7.64(d,J=8.0Hz,2H),7.78(t,J=7.8Hz,2H),8.01(d,J=7.5Hz,2H),8.09(s,2H),8.13(dd,J=8.6,2.3Hz,2H),8.19(d,7.5Hz,4H),8.76(d,J=8.6Hz,2H),8.92(s,2H),9.56(d,2.3Hz,2H)。
【0330】
また、H NMRチャートを図20に示す。なお、図20(B)は、図20(A)における7.00ppm〜10.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0331】
また、6,11mCzP2DBqのトルエン溶液の吸収スペクトルを図21(A)に、発光スペクトルを図21(B)にそれぞれ示す。また、6,11mCzP2DBqの薄膜の吸収スペクトルを図22(A)に、発光スペクトルを図22(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定方法は、実施例1と同様である。図21及び図22において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では315nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは、411nm(励起波長315nm)であった。また、薄膜の場合では367nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは434nm(励起波長369nm)であった。
【0332】
また、6,11mCzP2DBqの薄膜の電子物性を評価した(測定機器:理研計器社製、AC−2)。なお、薄膜の電子物性の測定は実施例1と同様の方法で測定した。
【0333】
薄膜の電子物性の測定結果より、HOMO準位は、−5.93eV、LUMO準位は、−2.80eV、及びバンドギャップ(Bg)は、3.13eVであった。
【0334】
以上の結果より、6,11mCzP2DBqは、比較的深いHOMO準位と、比較的浅いLUMO準位と、比較的広いBgとを有していることが確認された。
【0335】
また、6,11mCzP2DBqについて、溶液の電気化学的特性及び電子物性を評価した。
【0336】
なお、測定方法としては、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600A又は600C)を用いた。
【0337】
HOMO準位は−5.88eVであることがわかった。よって、HOMO準位がこの値に近い材料に、ホールを効率良く注入できることがわかった。また、HOMO準位が深い(値が小さい)ため、それより浅い(値が大きい)材料にホールを効率良く注入できることがわかった。
【0338】
LUMO準位は−2.91eVであることがわかった。よって、LUMO準位が、この値に近い材料に電子が効率良く注入できることがわかった。また、LUMO準位が浅い(値が大きい)ため、それより深い(値が小さい)材料に電子が効率良く注入できることがわかった。また、100サイクル後でも還元ピークの強度がほぼ同じであった。このことから、還元状態と中性状態との間の酸化還元の繰り返しに良好な耐性を示すことがわかった。
【0339】
上記サイクリックボルタンメトリ(CV)測定の測定法は実施例1と同様であるが、本実施例の化合物の酸化反応特性の測定は、参照電極に対する作用電極の電位を約0.05Vから約1.05Vまで走査した後、約1.05Vから約0.05Vまで走査して行った。また、本実施例の化合物の還元反応特性の測定は、参照電極に対する作用電極の電位を約−1.4Vから約−2.2Vまで走査した後、約−2.2Vから約−1.4Vまで走査して行った。
【0340】
以上の結果より、本発明の一態様の複素環化合物である6,11mCzP2DBqは、正孔及び電子のいずれも輸送するバイポーラ性の化合物であることが示唆される。
【0341】
また、本実施例で得られた6,11mCzP2DBqを液体クロマトグラフ質量分析(Liquid Chromatography Mass Spectrometry(略称:LC/MS分析))によって質量(MS)分析した。
【0342】
LC/MS分析は、ウォーターズ社製Acquity UPLC及びウォーターズ社製Xevo G2 Tof MSを用いて行った。MS分析では、エレクトロスプレーイオン化法(ElectroSpray Ionization(略称:ESI))によるイオン化を行った。この時のキャピラリー電圧は3.0kV、サンプルコーン電圧は30Vとし、検出はポジティブモードで行った。以上の条件でイオン化された成分を衝突室(コリジョンセル)内でアルゴンガスと衝突させてプロダクトイオンに解離させた。アルゴンを衝突させる際のエネルギー(コリジョンエネルギー)は70eVとした。なお、測定する質量範囲はm/z=100〜1200とした。測定結果を図31に示す。
【0343】
図31の結果から、6,11mCzP2DBqは、水素イオンの有無や同位体の存在に起因し、主としてm/z=547付近、m/z=531付近、m/z=519付近、m/z=471付近、m/z=380付近、m/z=306付近、m/z=254付近、m/z=242付近、m/z=230付近、m/z=166付近にそれぞれ複数のプロダクトイオンが検出されることがわかった。なお、図31に示す結果は、6,11mCzP2DBqに由来する特徴的な結果を示すものであるから、混合物中に含まれる6,11mCzP2DBqを同定する上での重要なデータであるといえる。
【0344】
なお、m/z=166付近のプロダクトイオンは、カルバゾリル基と推定され、m/z=242付近のプロダクトイオンは、フェニレン基とカルバゾリル基が結合した状態のイオンと推定され、それぞれ、カルバゾリル基を有する本発明の一態様の複素環化合物の特徴の一つである。なお、m/z=547付近、m/z=380付近のプロダクトイオンは、6,11mCzP2DBqからカルバゾリル基が一つ又は二つ離脱した状態のイオンと推定でき、6,11mCzP2DBqがカルバゾリル基を2つ有することが推定できる。また、m/z=471付近のプロダクトイオンは、6,11mCzP2DBqからフェニル基とカルバゾリル基が1つずつ離脱した状態のイオン、m/z=306付近のプロダクトイオンは、カルバゾリル基がさらに1つ離脱した状態のイオンと推定される。
【0345】
また、m/z=230付近のプロダクトイオンは、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環のようなジアザトリフェニレニル基由来と推定され、本発明の一態様である複素環化合物6,11mCzP2DBqが、ジベンゾ[f,h]キノキサリン環を含んでいることを示唆するものである。
【実施例4】
【0346】
<合成例3>
本実施例では、下記構造式(132)に示される7,10−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7,10mCzP2DBq)の合成方法について説明する。
【0347】
【化37】

【0348】
≪7,10mCzP2DBqの合成≫
7,10mCzP2DBqの合成スキームを(E−1)に示す。
【0349】
【化38】

【0350】
100mL三口フラスコに7,10−ジブロモジベンゾ[f,h]キノキサリン0.94g(2.4mmol)、3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニルボロン酸1.5g(5.2mmol)、トルエン56mL、エタノール6mL、2Mの炭酸カリウム水溶液4mLを加えた。この混合物を、減圧下で撹拌することで脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)64mg(0.06mmol)を加えた。この混合物を窒素気流下、80℃で8時間撹拌した。反応後、析出した固体を濾別し、白色固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解し、このトルエン溶液をアルミナ、セライトを通して吸引濾過し、得られた濾液を濃縮して白色固体を得た。得られた固体を、トルエンを用いて再結晶し、白色固体を得た。この白色固体を超音波照射下エタノールで洗浄し、固体を吸引濾過にて濾取したところ、粉末を収量0.75g、収率44%で得た。
【0351】
得られた粉末0.75gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力4.2Pa、アルゴン流量5.0mL/minの条件で、粉末を330℃で加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を収量0.54g、収率72%で得た。
【0352】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である7,10−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7,10mCzP2DBq)であることを確認した。
【0353】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,500MHz):δ(ppm)=7.23−7.29(m,4H),7.42(t,J=7.5Hz,4H),7.54(d,J=8.0Hz,4H),7.66(d,J=8.6Hz,2H),7.79(t,J=8.1Hz,2H),7.93(d,J=7.5Hz,2H),8.03−8.07(m,4H),8.18(d,J=7.5Hz,4H),8.94−8.95(m,4H),9.35(d,J=8.1Hz,2H)。
【0354】
また、H NMRチャートを図23に示す。なお、図23(B)は、図23(A)における6.00ppm〜10.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0355】
また、7,10mCzP2DBqのトルエン溶液の吸収スペクトルを図24(A)に、発光スペクトルを図24(B)にそれぞれ示す。また、7,10mCzP2DBqの薄膜の吸収スペクトルを図25(A)に、発光スペクトルを図25(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定方法は実施例1と同様である。図24及び図25において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では369nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは、379nm(励起波長369nm)であった。また、薄膜の場合では378nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは432nm(励起波長342nm)であった。
【0356】
また、7,10mCzP2DBqの薄膜の電子物性を評価した(測定機器:理研計器社製、AC−2)。なお、薄膜の電子物性の測定は実施例1と同様の方法で測定した。
【0357】
薄膜の電子物性の測定結果より、HOMO準位は、−5.93eV、LUMO準位は、−2.82eV、及びバンドギャップ(Bg)は、3.11eVであった。
【0358】
以上の結果より、7,10mCzP2DBqは、比較的深いHOMO準位と、比較的浅いLUMO準位と、比較的広いBgとを有していることが確認された。
【0359】
また、7,10mCzP2DBqについて、溶液の電気化学的特性及び電子物性を評価した。
【0360】
なお、測定方法としては、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600A又は600C)を用いた。
【0361】
HOMO準位は−5.86eVであることがわかった。よって、HOMO準位がこの値に近い材料に、ホールを効率良く注入できることがわかった。また、HOMO準位が深い(値が小さい)ため、それより浅い(値が大きい)材料にホールを効率良く注入できることがわかった。
【0362】
LUMO準位は−2.91eVであることがわかった。よって、LUMO準位が、この値に近い材料に電子が効率良く注入できることがわかった。また、LUMO準位が浅い(値が大きい)ため、それより深い(値が小さい)材料に電子が効率良く注入できることがわかった。また、100サイクル後でも還元ピークの強度がほぼ同じであった。このことから、還元状態と中性状態との間の酸化還元の繰り返しに良好な耐性を示すことがわかった。
【0363】
上記サイクリックボルタンメトリ(CV)測定の測定法は実施例1と同様であるが、本実施例の化合物の酸化反応特性の測定は、参照電極に対する作用電極の電位を約−0.12Vから約1.05Vまで走査した後、約1.05Vから約−0.12Vまで走査して行った。また、本実施例の化合物の還元反応特性の測定は、参照電極に対する作用電極の電位を約−1.3Vから約−2.1Vまで走査した後、約−2.1Vから約−1.3Vまで走査して行った。
【0364】
以上の結果より、本発明の一態様の複素環化合物である7,10mCzP2DBqは、正孔及び電子のいずれも輸送するバイポーラ性の化合物であることが示唆される。
【0365】
また、本実施例で得られた7,10mCzP2DBqをLC/MS分析によって分析した。LC/MS分析の測定方法、測定条件等は、実施例3と同様である。測定結果を図32に示す。
【0366】
図32の結果から、7,10mCzP2DBqは、水素イオンの有無や同位体の存在に起因し、主としてm/z=547付近、m/z=531付近、m/z=519付近、m/z=471付近、m/z=380付近、m/z=305付近、m/z=254付近、m/z=241付近、m/z=166付近にそれぞれ複数のプロダクトイオンが検出されることがわかった。なお、図32に示す結果は、7,10mCzP2DBqに由来する特徴的な結果を示すものであるから、混合物中に含まれる7,10mCzP2DBqを同定する上での重要なデータであるといえる。
【0367】
なお、m/z=166付近のプロダクトイオンは、カルバゾリル基と推定され、m/z=241付近のプロダクトイオンは、フェニレン基とカルバゾリル基が結合した状態のカチオンと推定され、それぞれ、カルバゾリル基を有する本発明の一態様の複素環化合物の特徴の一つである。
なお、m/z=547付近、m/z=380付近のプロダクトイオンは、7,10mCzP2DBqからカルバゾリル基が一つ又は二つ離脱した状態のイオンと推定でき、7,10mCzP2DBqがカルバゾリル基を2つ有することが推定できる。また、m/z=471付近のプロダクトイオンは、7,10mCzP2DBqからフェニル基とカルバゾリル基が1つずつ離脱した状態のイオン、m/z=305付近のプロダクトイオンは、カルバゾリル基がさらに1つ離脱した状態のイオンと推定される。
【実施例5】
【0368】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について図13を用いて説明する。本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。なお、既に示した材料については省略する。
【0369】
【化39】

【0370】
以下に、本実施例の発光素子3乃至発光素子6の作製方法を示す。
【0371】
(発光素子3)
発光素子3の発光層1113は、実施例3にて合成した6,11mCzP2DBq、PCBA1BP及び(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])を共蒸着することで形成した。ここでは、6,11mCzP2DBq、PCBA1BP及び[Ir(tBuppm)(acac)]の重量比が、0.7:0.3:0.05(=6,11mCzP2DBq:PCBA1BP:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節して成膜した厚さ15nmの層と、該重量比が、0.8:0.2:0.05(=6,11mCzP2DBq:PCBA1BP:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節して成膜した厚さ25nmの層とを積層した。
【0372】
発光素子3の第1の電子輸送層1114aは、6,11mCzP2DBqを膜厚10nmとなるように成膜して形成した。発光層1113及び第1の電子輸送層1114a以外は発光素子1と同様に作製した。
【0373】
(発光素子4)
発光素子4の発光層1113は、実施例4にて合成した7,10mCzP2DBq、PCBA1BP及び[Ir(tBuppm)(acac)]を共蒸着することで形成した。ここでは、7,10mCzP2DBq、PCBA1BP及び[Ir(tBuppm)(acac)]の重量比が、0.7:0.3:0.05(=7,10mCzP2DBq:PCBA1BP:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節して成膜した厚さ15nmの層と、該重量比が、0.8:0.2:0.05(=7,10mCzP2DBq:PCBA1BP:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節して成膜した厚さ25nmの層とを積層した。
【0374】
発光素子4の第1の電子輸送層1114aは、7,10mCzP2DBqを膜厚10nmとなるように成膜して形成した。発光層1113及び第1の電子輸送層1114a以外は発光素子1と同様に作製した。
【0375】
(発光素子5)
発光素子5の発光層1113は、6,11mCzP2DBq及び[Ir(tBuppm)(acac)]を共蒸着することで形成した。ここでは、6,11mCzP2DBq及び[Ir(tBuppm)(acac)]の重量比が、1:0.05(=6,11mCzP2DBq:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0376】
発光素子5の第1の電子輸送層1114aは、6,11mCzP2DBqを膜厚10nmとなるように成膜して形成した。発光層1113及び第1の電子輸送層1114a以外は発光素子1と同様に作製した。
【0377】
(発光素子6)
発光素子6の発光層1113は、7,10mCzP2DBq及び[Ir(tBuppm)(acac)]を共蒸着することで形成した。ここでは、7,10mCzP2DBq及び[Ir(tBuppm)(acac)]の重量比が、1:0.05(=7,10mCzP2DBq:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0378】
発光素子6の第1の電子輸送層1114aは、7,10mCzP2DBqを膜厚10nmとなるように成膜して形成した。発光層1113及び第1の電子輸送層1114a以外は発光素子1と同様に作製した。
【0379】
以上により得られた発光素子3乃至発光素子6の素子構造を表3に示す。
【0380】
【表3】

【0381】
発光素子3乃至発光素子6を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0382】
発光素子3乃至発光素子6の輝度−電流効率特性を図26に示す。図26において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、輝度−色度座標特性を図27に示す。図27において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は色度座標(x座標、又はy座標)を示す。また、各発光素子における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表4に示す。
【0383】
【表4】

【0384】
また、発光素子3乃至発光素子6に0.1mAの電流を流した際の発光スペクトルを、図28に示す。図28において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。図28及び表4に示す通り、820cd/mの輝度の時の発光素子3のCIE色度座標は(x,y)=(0.43,0.56)であった。1100cd/mの輝度の時の発光素子4のCIE色度座標は(x,y)=(0.43,0.56)であった。900cd/mの輝度の時の発光素子5のCIE色度座標は(x,y)=(0.43,0.55)であった。1100cd/mの輝度の時の発光素子6のCIE色度座標は(x,y)=(0.43,0.56)であった。発光素子3乃至発光素子6は、[Ir(tBuppm)(acac)]に由来する発光が得られたことがわかった。このことから、本発明の一態様の複素環化合物である6,11mCzP2DBq及び7,10mCzP2DBqは、それぞれ、緑色燐光材料を発光させることができる高いT1準位を有することがわかった。このことから、緑色〜赤色の燐光発光材料のホスト材料として用いることができることがわかった。
【0385】
図26及び表4から、発光素子3乃至発光素子6は、電流効率及び外部量子効率が高く、特に、発光素子3及び発光素子4は、発光素子5及び発光素子6に比べて電流効率及び外部量子効率が高いことがわかった。6,11mCzP2DBq及び7,10mCzP2DBqは、2つのカルバゾール環が、それぞれメタフェニレン基を介して、ジベンゾ[f、h]キノキサリン環と結合している複素環化合物である。よって、発光効率の高い素子を実現することができる。また、発光素子3及び発光素子4では、PCBA1BPを発光層に含む。PCBA1BPは、アミン骨格を有し、正孔移動度が高い材料である。したがって、発光素子3及び発光素子4では、発光層でのキャリア移動がより効率良く行われ、発光素子5及び発光素子6よりも高い発光効率が得られたと考えられる。
【0386】
また、図27から、発光素子3乃至発光素子6は、低輝度から高輝度まで、色変化がほとんど見られなかった。このことから、発光素子3乃至発光素子6は、キャリアバランスの良好な素子であると言える。
【0387】
以上示したように、実施例3、4で作製した6,11mCzP2DBq及び7,10mCzP2DBqを発光層のホスト材料及び電子輸送層の材料として用いることにより、発光効率が高い発光素子を作製することができた。
【実施例6】
【0388】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子について図13を用いて説明する。本実施例で用いた材料は、先の実施例で示した材料であるため、化学式については省略する。
【0389】
以下に、本実施例の発光素子7及び発光素子8の作製方法を示す。
【0390】
(発光素子7)
発光素子7の発光層1113は、実施例3にて合成した6,11mCzP2DBq、PCBA1BP及び[Ir(dppm)(acac)])を共蒸着することで形成した。ここでは、6,11mCzP2DBq、PCBA1BP及び[Ir(dppm)(acac)]の重量比が、0.8:0.2:0.05(=6,11mCzP2DBq:PCBA1BP:[Ir(dppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0391】
発光素子7の第1の電子輸送層1114aは、6,11mCzP2DBqを膜厚10nmとなるように成膜して形成した。発光層1113及び第1の電子輸送層1114a以外は発光素子1と同様に作製した。
【0392】
(発光素子8)
発光素子8の発光層1113は、実施例4にて合成した7,10mCzP2DBq、PCBA1BP及び[Ir(dppm)(acac)])を共蒸着することで形成した。ここでは、7,10mCzP2DBq、PCBA1BP及び[Ir(dppm)(acac)]の重量比が、0.8:0.2:0.05(=7,10mCzP2DBq:PCBA1BP:[Ir(dppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0393】
発光素子8の第1の電子輸送層1114aは、7,10mCzP2DBqを膜厚10nmとなるように成膜して形成した。発光層1113及び第1の電子輸送層1114a以外は発光素子1と同様に作製した。
【0394】
以上により得られた発光素子7及び発光素子8の素子構造を表5に示す。
【0395】
【表5】

【0396】
発光素子7及び発光素子8を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0397】
発光素子7及び発光素子8の輝度−色度座標特性を図29に示す。図29において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は色度座標(x座標、又はy座標)を示す。また、各発光素子における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表6に示す。
【0398】
【表6】

【0399】
また、発光素子7及び発光素子8に0.1mAの電流を流した際の発光スペクトルを、図30に示す。図30において、横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。図30及び表6に示す通り、900cd/mの輝度の時の発光素子7のCIE色度座標は(x,y)=(0.56,0.44)であった。1100cd/mの輝度の時の発光素子8のCIE色度座標は(x,y)=(0.54,0.45)であった。発光素子7及び発光素子8は、[Ir(dppm)(acac)]に由来する発光が得られたことがわかった。
【0400】
表6から、発光素子7及び発光素子8は、駆動電圧が低く、電流効率及び外部量子効率が高いことがわかった。また、図29から、発光素子7及び発光素子8は、低輝度から高輝度まで、色変化がほとんど見られなかった。このことから、発光素子7及び発光素子8は、キャリアバランスの良好な素子であると言える。
【0401】
以上示したように、実施例3、4で作製した6,11mCzP2DBq及び7,10mCzP2DBqを発光層のホスト材料及び電子輸送層の材料として用いることにより、駆動電圧が低く、発光効率が高い発光素子を作製することができた。
【0402】
(参考例1)
上記実施例2等で用いた(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])の合成方法について具体的に説明する。[Ir(dppm)(acac)]の構造を以下に示す。
【0403】
【化40】

【0404】
<ステップ1;4,6−ジフェニルピリミジン(略称:Hdppm)の合成>
まず、4,6−ジクロロピリミジン5.02g、フェニルボロン酸8.29g、炭酸ナトリウム7.19g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(略称:Pd(PPhCl)0.29g、水20mL、アセトニトリル20mLを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。ここで更にフェニルボロン酸2.08g、炭酸ナトリウム1.79g、Pd(PPhCl0.070g、水5mL、アセトニトリル5mLをフラスコに入れ、再度マイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。その後この溶液に水を加え、ジクロロメタンにて有機層を抽出した。得られた抽出液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。濾液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ピリミジン誘導体Hdppmを得た(黄白色粉末、収率38%)。なお、マイクロ波の照射は、マイクロ波合成装置(CEM社製 Discover)を用いた。以下にステップ1の合成スキーム(a−1)を示す。
【0405】
【化41】

【0406】
<ステップ2;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)](略称:[Ir(dppm)Cl])の合成>
次に、2−エトキシエタノール15mL、水5mL、上記ステップ1で得たHdppm1.10g、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)0.69gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射し、反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣をエタノールで洗浄し、複核錯体[Ir(dppm)Cl]を得た(赤褐色粉末、収率88%)。以下にステップ2の合成スキーム(a−2)を示す。
【0407】
【化42】

【0408】
<ステップ3;(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])の合成>
さらに、2−エトキシエタノール40mL、上記ステップ2で得た[Ir(dppm)Cl]1.44g、アセチルアセトン0.30g、炭酸ナトリウム1.07gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 120W)を60分間照射し、反応させた。溶媒を留去し、得られた残渣をジクロロメタンに溶解して濾過し、不溶物を除去した。得られた濾液を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。濾液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル=50:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。その後、ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶することにより、目的物である橙色粉末を得た(収率32%)。以下にステップ3の合成スキーム(a−3)を示す。
【0409】
【化43】

【0410】
上記ステップ3で得られた橙色粉末の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、本合成例において、[Ir(dppm)(acac)]が得られたことがわかった。
【0411】
H NMR.δ(CDCl):1.83(s,6H),5.29(s,1H),6.48(d,2H),6.80(t,2H),6.90(t,2H),7.55−7.63(m,6H),7.77(d,2H),8.17(s,2H),8.24(d,4H),9.17(s,2H).
【0412】
(参考例2)
上記実施例2で用いた(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])の合成方法について具体的に説明する。[Ir(mppm)(acac)]の構造を以下に示す。
【0413】
【化44】

【0414】
<ステップ1;4−メチル−6−フェニルピリミジン(略称:Hmppm)の合成>
まず、4−クロロ−6−メチルピリミジン4.90g、フェニルボロン酸4.80g、炭酸ナトリウム4.03g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(略称:Pd(PPhCl)0.16g、水20mL、アセトニトリル10mLを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部をアルゴン置換した。この反応容器にマイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。ここでさらにフェニルボロン酸2.28g、炭酸ナトリウム2.02g、Pd(PPhCl0.082g、水5mL、アセトニトリル10mLをフラスコに入れ、再度マイクロ波(2.45GHz 100W)を60分間照射することで加熱した。その後この溶液に水を加え、ジクロロメタンにて抽出した。得られた抽出液を飽和炭酸ナトリウム水溶液、水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。この濾液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル=9:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的のピリミジン誘導体Hmppmを得た(橙色油状物、収率46%)。なお、マイクロ波の照射はマイクロ波合成装置(CEM社製 Discover)を用いた。以下にステップ1の合成スキーム(b−1)を示す。
【0415】
【化45】

【0416】
<ステップ2;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)](略称:[Ir(mppm)Cl])の合成>
次に、2−エトキシエタノール15mL、水5mL、上記ステップ1で得たHmppm1.51g、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)1.26gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射し、反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣をエタノールで洗浄し、濾過することにより複核錯体[Ir(mppm)Cl]を得た(暗緑色粉末、収率77%)。以下にステップ2の合成スキーム(b−2)を示す。
【0417】
【化46】

【0418】
<ステップ3;(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])の合成>
さらに、2−エトキシエタノール40mL、上記ステップ2で得た複核錯体[Ir(mppm)Cl]1.84g、アセチルアセトン0.48g、炭酸ナトリウム1.73gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、ナスフラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 120W)を60分間照射し、反応させた。溶媒を留去し、得られた残渣をジクロロメタンに溶解して濾過し、不溶物を除去した。得られた濾液を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。この濾液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル=4:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。その後、ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶することにより、目的物を黄色粉末として得た(収率22%)。以下にステップ3の合成スキーム(b−3)を示す。
【0419】
【化47】

【0420】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、本合成例において、[Ir(mppm)(acac)]が得られたことがわかった。
【0421】
H NMR.δ(CDCl):1.78(s,6H),2.81(s,6H),5.24(s,1H),6.37(d,2H),6.77(t,2H),6.85(t,2H),7.61−7.63(m,4H),8.97(s,2H).
【0422】
(参考例3)
上記実施例5で用いた(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])の合成方法について具体的に説明する。[Ir(tBuppm)(acac)]の構造を以下に示す。
【0423】
【化48】

【0424】
<ステップ1;4−tert−ブチル−6−フェニルピリミジン(略称:HtBuppm)の合成>
まず、4,4−ジメチル−1−フェニルペンタン−1,3−ジオン22.5gとホルムアミド50gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、内部を窒素置換した。この反応容器を加熱することで反応溶液を5時間還流させた。その後、この溶液を水酸化ナトリウム水溶液に注ぎ、ジクロロメタンにて有機層を抽出した。得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させた。乾燥した後の溶液を濾過した。この溶液の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ヘキサン:酢酸エチル=10:1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ピリミジン誘導体HtBuppmを得た(無色油状物、収率14%)。ステップ1の合成スキームを下記(c−1)に示す。
【0425】
【化49】

【0426】
<ステップ2;ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)](略称:[Ir(tBuppm)Cl])の合成>
次に、2−エトキシエタノール15mLと水5mL、上記ステップ1で得たHtBuppm1.49g、塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)1.04gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 100W)を1時間照射し、反応させた。溶媒を留去した後、得られた残渣をエタノールで吸引濾過、洗浄し、複核錯体[Ir(tBuppm)Cl]を得た(黄緑色粉末、収率73%)。ステップ2の合成スキームを下記(c−2)に示す。
【0427】
【化50】

【0428】
<ステップ3;(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)]の合成>
さらに、2−エトキシエタノール40mL、上記ステップ2で得た複核錯体[Ir(tBuppm)Cl] 1.61g、アセチルアセトン0.36g、炭酸ナトリウム1.27gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 120W)を60分間照射し、反応させた。溶媒を留去し、得られた残渣をエタノールで吸引濾過し、水、エタノールで洗浄した。この固体をジクロロメタンに溶解させ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、セライトの順で積層した濾過補助剤を通して濾過した。溶媒を留去して得られた固体をジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶することにより、目的物を黄色粉末として得た(収率68%)。ステップ3の合成スキームを下記(c−3)に示す。
【0429】
【化51】

【0430】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、本合成例において、[Ir(tBuppm)(acac)]が得られたことがわかった。
【0431】
H NMR.δ(CDCl):1.50(s,18H),1.79(s,6H),5.26(s,1H),6.33(d,2H),6.77(t,2H),6.85(t,2H),7.70(d,2H),7.76(s,2H),9.02(s,2H).
【符号の説明】
【0432】
100 基板
101 第1の電極
102 EL層
103 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
301 第1の電極
303 第2の電極
311 第1の発光ユニット
312 第2の発光ユニット
313 電荷発生層
401 ソース側駆動回路
402 画素部
403 ゲート側駆動回路
404 封止基板
405 シール材
407 空間
408 配線
410 素子基板
411 スイッチング用TFT
412 電流制御用TFT
413 第1の電極
414 絶縁物
416 発光層
417 第2の電極
418 発光素子
423 nチャネル型TFT
424 pチャネル型TFT
501 基板
502 第1の電極
503 第2の電極
504 EL層
505 絶縁層
506 隔壁層
611 筐体
612 支持台
613 表示部
614 スピーカー部
615 ビデオ入力端子
621 本体
622 筐体
623 表示部
624 キーボード
625 外部接続ポート
626 ポインティングデバイス
631 本体
632 筐体
633 表示部
634 音声入力部
635 音声出力部
636 操作キー
637 外部接続ポート
638 アンテナ
641 本体
642 表示部
643 筐体
644 外部接続ポート
645 リモコン受信部
646 受像部
647 バッテリー
648 音声入力部
649 操作キー
650 接眼部
701 筐体
702 液晶層
703 バックライト
704 筐体
705 ドライバIC
706 端子
801 筐体
802 光源
901 照明装置
902 テレビ装置
1100 基板
1101 第1の電極
1103 第2の電極
1111 正孔注入層
1112 正孔輸送層
1113 発光層
1114a 第1の電子輸送層
1114b 第2の電子輸送層
1115 電子注入層
9033 留め具
9034 スイッチ
9035 電源スイッチ
9036 スイッチ
9037 操作キー
9038 操作スイッチ
9630 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a 領域
9632b 領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 DCDCコンバータ
9637 コンバータ
9639 ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G1)で表される複素環化合物。
【化1】


(一般式(G1)中、R〜R10は、いずれか一が一般式(G1−1)で表される置換基を表し、他のいずれか一が一般式(G1−2)で表される置換基を表し、その他はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。また、一般式(G1−1)中のα及び一般式(G1−2)中のαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、一般式(G1−1)中のA及び一般式(G1−2)中のAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。)
【請求項2】
一般式(G2−1)で表される複素環化合物。
【化2】


(式中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表し、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。)
【請求項3】
一般式(G2−2)で表される複素環化合物。
【化3】


(式中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表し、α及びαは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のフェニレン基、又は置換もしくは無置換のビフェニルジイル基を表し、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。)
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記α及び前記αが、それぞれ独立に、一般式(α−1)又は一般式(α−2)で表される複素環化合物。
【化4】


(一般式(α−1)中のR31〜R34及び一般式(α−2)中のR41〜R48は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基、又は置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基を表す。)
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記A及び前記Aが、それぞれ独立に、一般式(1−1)乃至一般式(1−3)のいずれか一で表される複素環化合物。
【化5】


(一般式(1−1)中のR51〜R57、一般式(1−2)中のR61〜R67、及び一般式(1−3)中のR71〜R78は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。)
【請求項6】
請求項5において、
前記A及び前記Aが、一般式(1−1)で表される複素環化合物。
【化6】


(式中、R51〜R57は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。)
【請求項7】
請求項5において、
前記A及び前記Aが、一般式(1−2)で表される複素環化合物。
【化7】


(式中、R61〜R67は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。)
【請求項8】
請求項5において、
前記A及び前記Aが、一般式(1−3)で表される複素環化合物。
【化8】


(式中、R71〜R78は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基を表す。)
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の複素環化合物を含む発光素子。
【請求項10】
陽極及び陰極間に発光層を有し、
前記発光層が、発光物質と、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の複素環化合物と、を含む発光素子。
【請求項11】
陽極及び陰極間に発光層を有し、
前記発光層が、発光物質と、電子輸送性化合物と、正孔輸送性化合物と、を含み、
前記電子輸送性化合物は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の複素環化合物であり、
前記正孔輸送性化合物は、前記電子輸送性化合物よりも正孔輸送性が高く、カルバゾール骨格、トリアリールアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、又はジベンゾフラン骨格を有する発光素子。
【請求項12】
請求項11において、
前記発光層の前記陽極側に接する層が、前記正孔輸送性化合物を含む発光素子。
【請求項13】
請求項10乃至請求項12のいずれか一項において、
前記発光層の前記陰極側に接する層が、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の複素環化合物を含む発光素子。
【請求項14】
請求項9乃至請求項13のいずれか一項に記載の発光素子を発光部に備える発光装置。
【請求項15】
請求項14に記載の発光装置を表示部に備える電子機器。
【請求項16】
請求項14に記載の発光装置を発光部に備える照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2013−63963(P2013−63963A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186839(P2012−186839)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】