説明

複素環化合物、発光素子、発光装置、電子機器及び照明装置

【課題】発光素子において、発光層の発光物質を分散させるホスト材料として用いることのできる新規複素環化合物を提供する。また、駆動電圧が低く、電流効率が高い発光素子を提供する。
【解決手段】ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とが、アリーレン基を介して結合した化合物を含む発光素子を提供する。また、この発光素子を用いた発光装置、電子機器、及び照明装置を提供する。この発光素子は下記一般式(G1)で表される構造を有する複素環化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環化合物、発光素子、発光装置、電子機器及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光物質を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
そして、これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、面状の発光を容易に得ることができる。よって、面状の発光を利用した大面積の素子を形成することができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
そのエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光物質が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大別できる。発光物質に有機化合物を用い、一対の電極間に当該有機化合物を含む層を設けた有機EL素子の場合、発光素子に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、注入した電子及び正孔が発光性の有機化合物を励起状態に至らしめ、励起された発光性の有機化合物から発光を得るものである。
【0006】
有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態(S)からの発光が蛍光、三重項励起状態(T)からの発光が燐光と呼ばれている。また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、S:T=1:3であると考えられている。
【0007】
一重項励起状態のエネルギーを発光に変換する化合物(以下、蛍光性化合物と称す)では室温において、三重項励起状態からの発光(燐光)は観測されず、一重項励起状態からの発光(蛍光)のみが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた発光素子における内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、S:T=1:3であることを根拠に25%とされている。
【0008】
一方、三重項励起状態のエネルギーを発光に変換する化合物(以下、燐光性化合物と称す)を用いれば、三重項励起状態からの発光(燐光)が観測される。また、燐光性化合物は項間交差(一重項励起状態から三重項励起状態へ移ること)が起こりやすいため、内部量子効率は100%まで理論上は可能となる。つまり、蛍光性化合物に比べて4倍の発光効率が可能となる。このような理由から、高効率な発光素子を実現するために、燐光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。
【0009】
上述した燐光性化合物を用いて発光素子の発光層を形成する場合、燐光性化合物の濃度消光や三重項−三重項消滅による消光を抑制するために、他の化合物からなるマトリクス中に該燐光性化合物が分散するようにして形成することが多い。このとき、マトリクスとなる化合物はホスト材料、燐光性化合物のようにマトリクス中に分散される化合物はゲスト材料と呼ばれる。
【0010】
燐光性化合物をゲスト材料とする場合、ホスト材料に必要とされる性質は、該燐光性化合物よりも大きな三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)を有することである。
【0011】
また、一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)は三重項励起エネルギーよりも大きいため、大きな三重項励起エネルギーを有する物質は大きな一重項励起エネルギーをも有する。したがって、上述したような大きな三重項励起エネルギーを有する物質は、蛍光性化合物を発光物質として用いた発光素子においても有益である。
【0012】
燐光性化合物をゲスト材料とする場合のホスト材料として、多様な化合物の研究がなされている。例えば、トリフェニレン環を有する化合物、またはジベンゾ[f,h]キノキサリン環を有する化合物の研究がなされている(例えば、特許文献1〜特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2010−535806号公報
【特許文献2】特開2007−189001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1または特許文献2において報告されているように、燐光性化合物のホスト材料の開発は進んではきてはいるものの、発光効率、信頼性、発光特性、合成効率、またはコストといった面で改善の余地が残されており、より優れた燐光性化合物のホスト材料の開発が望まれている。
【0015】
上記課題に鑑み、本発明の一態様は、発光素子において、発光層の発光物質を分散させるホスト材料として用いることのできる新規複素環化合物を提供することを目的とする。特に、燐光性化合物を発光物質に用いる場合のホスト材料として好適に用いることのできる新規複素環化合物を提供することを目的とする。
【0016】
本発明の一態様は、駆動電圧が低く、電流効率が高い発光素子を提供することを目的とする。また、本発明の一態様は、この発光素子を用いることにより、消費電力の低減された発光装置、電子機器、及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とが、アリーレン基を介して結合した化合物である。
【0018】
本発明の一態様の化合物は、ジベンゾ[f,h]キノリン環に加えて正孔輸送骨格を有するため、正孔を受け取ることが容易となる。したがって、本発明の一態様の化合物を発光層のホスト材料に用いることで、電子と正孔の再結合を発光層内で容易に行うことができる。また、上記化合物は、ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とが、アリーレン基を介して結合しているため、直接結合する場合に比べてバンドギャップの低下及び三重項励起エネルギーの低下を防ぐことができ、その化合物を発光素子に用いることで、電流効率が高い素子を実現できる。
【0019】
正孔輸送骨格としては、π過剰系ヘテロ芳香環が好ましい。π過剰系ヘテロ芳香環としては、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、又はジベンゾチオフェン環が好ましい。アリーレン基としては、置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニルジイル基のいずれかが好ましい。
【0020】
ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とが、アリーレン基を介して結合した化合物としては、下記に表される構造を有する複素環化合物が挙げられる。
【0021】
本発明の一態様は、下記一般式(G0)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0022】
【化1】

【0023】
一般式(G0)中、Aは、置換または無置換のカルバゾリル基、置換または無置換のジベンゾチオフェニル基、置換または無置換のジベンゾフラニル基、のいずれかを表し、Eは、置換または無置換のジベンゾ[f,h]キノリン環を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、アリーレン基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0024】
本発明の一態様は、下記一般式(G1)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0025】
【化2】

【0026】
一般式(G1)中、Aは、置換または無置換のカルバゾリル基、置換または無置換のジベンゾチオフェニル基、置換または無置換のジベンゾフラニル基、のいずれかを表し、R11〜R20は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基のいずれかを表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、アリーレン基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0027】
本発明の一態様は、下記一般式(G2−1)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0028】
【化3】

【0029】
一般式(G2−1)中、Zは、酸素または硫黄を表し、R11〜R20、及びR21〜R27は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、アリーレン基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0030】
本発明の一態様は、下記一般式(G2−2)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0031】
【化4】

【0032】
一般式(G2−2)中、R11〜R20、及びR31〜R38は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、アリーレン基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0033】
一般式(G2−1)及び一般式(G2−2)において、Arは置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニルジイル基のいずれかであることが好ましい。特にArは、置換または無置換のフェニレン基であることが好ましい。さらにArは置換または無置換のm−フェニレン基であることが、高い三重項励起エネルギー準位を有する上で好ましい。
【0034】
本発明の一態様は、下記一般式(G3−1)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0035】
【化5】

【0036】
一般式(G3−1)中、Zは、酸素または硫黄を表し、R11〜R20、R21〜R27、及びR41〜R44は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表す。
【0037】
本発明の一態様は、下記一般式(G3−2)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0038】
【化6】

【0039】
一般式(G3−2)中、R11〜R20、R31〜R38、及びR41〜R44は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表す。
【0040】
また、本発明の一態様は、一対の電極間に上記の複素環化合物を有する発光素子である。特に、上記の複素環化合物を発光層に含むことが好ましい。
【0041】
また、上記発光素子を用いた発光装置、電子機器、及び照明装置も本発明の範疇に含めるものとする。なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、光源を含む。また、パネルにコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0042】
本発明の一態様は、発光素子において、発光層の発光物質を分散させるホスト材料として用いることのできる新規複素環化合物を提供できる。本発明の一態様は、駆動電圧が低く、電流効率が高い発光素子を提供できる。本発明の一態様は、この発光素子を用いることにより、消費電力の低減された発光装置、電子機器、及び照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の一態様の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図4】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図5】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図6】本発明の一態様の発光装置を説明する図。
【図7】本発明の一態様の電子機器を説明する図。
【図8】本発明の一態様の照明装置及び発光装置を説明する図。
【図9】2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリンのH NMRチャートを示す図。
【図10】2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリンのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図11】2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリンの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図12】実施例の発光素子を説明する図。
【図13】発光素子1、及び比較発光素子2の電流密度−輝度特性を示す図。
【図14】発光素子1、及び比較発光素子2の電圧−輝度特性を示す図。
【図15】発光素子1、及び比較発光素子2の輝度−電流効率特性を示す図。
【図16】発光素子1、及び比較発光素子2の電圧−電流特性を示す図。
【図17】発光素子3の電流密度−輝度特性を示す図。
【図18】発光素子3の電圧−輝度特性を示す図。
【図19】発光素子3の輝度−電流効率特性を示す図。
【図20】発光素子3の電圧−電流特性を示す図。
【図21】2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリンのH NMRチャートを示す図。
【図22】2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリンのトルエン溶液の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図23】2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリンの薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図。
【図24】発光素子4、及び比較発光素子5の電流密度−輝度特性を示す図。
【図25】発光素子4、及び比較発光素子5の電圧−輝度特性を示す図。
【図26】発光素子4、及び比較発光素子5の輝度−電流効率特性を示す図。
【図27】発光素子4、及び比較発光素子5の電圧−電流特性を示す図。
【図28】発光素子4、及び比較発光素子5の信頼性試験結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0045】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の複素環化合物について説明する。
【0046】
本発明の一態様は、一般式(G0)で表される複素環化合物である。
【0047】
【化7】

【0048】
一般式(G0)中、Aは、置換または無置換のカルバゾリル基、置換または無置換のジベンゾチオフェニル基、置換または無置換のジベンゾフラニル基、のいずれかを表し、Eは、置換または無置換のジベンゾ[f,h]キノリン環を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、アリーレン基は置換基を有していてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。なお、本明細書中で示すアリール基及びアリーレン基の炭素数は、主骨格の環を形成する炭素数を示しており、それに結合する置換基の炭素数を含むものではない。
【0049】
本発明の一態様は、一般式(G1)で表される複素環化合物である。
【0050】
【化8】

【0051】
一般式(G1)中、Aは、置換または無置換のカルバゾリル基、置換または無置換のジベンゾチオフェニル基、置換または無置換のジベンゾフラニル基、のいずれかを表し、R11〜R20は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基のいずれかを表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、アリーレン基は置換基を有していてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0052】
本発明の一態様は、下記一般式(G2−1)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0053】
【化9】

【0054】
一般式(G2−1)中、Zは、酸素または硫黄を表し、R11〜R20、及びR21〜R27は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、アリーレン基は置換基を有していてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0055】
本発明の一態様は、下記一般式(G2−2)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0056】
【化10】

【0057】
一般式(G2−2)中、R11〜R20、及びR31〜R38は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、アリーレン基は置換基を有していてもよく、置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0058】
一般式(G2−1)及び一般式(G2−2)において、Arは置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニルジイル基のいずれかであることが好ましい。特にArは、置換または無置換のフェニレン基であることが好ましい。さらにArは、置換または無置換のm−フェニレン基であることが、高い三重項励起エネルギー準位を有する上で好ましい。
【0059】
本発明の一態様は、下記一般式(G3−1)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0060】
【化11】

【0061】
一般式(G3−1)中、Zは、酸素または硫黄を表し、R11〜R20、R21〜R27、及びR41〜R44は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表す。
【0062】
本発明の一態様は、下記一般式(G3−2)で表される構造を有する複素環化合物である。
【0063】
【化12】

【0064】
一般式(G3−2)中、R11〜R20、R31〜R38、及びR41〜R44は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表す。
【0065】
一般式(G0)、(G1)、(G2−1)、及び(G2−2)中におけるArの具体的な構造としては、例えば、構造式(1−1)〜構造式(1−15)に示す置換基が挙げられる。
【0066】
【化13】

【0067】
一般式(G1)、(G2−1)、(G2−2)、(G3−1)及び(G3−2)中におけるR11〜R20、R21〜R27、R31〜R38、及びR41〜R44の具体的な構造としては、例えば、構造式(2−1)〜構造式(2−23)に示す置換基が挙げられる。
【0068】
【化14】

【0069】
一般式(G1)に示される複素環化合物の具体例としては、構造式(100)〜構造式(154)、構造式(200)〜構造式(254)、及び構造式(300)〜構造式(354)に示される複素環化合物を挙げることができる。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0070】
【化15】

【0071】
【化16】

【0072】
【化17】

【0073】
【化18】

【0074】
【化19】

【0075】
【化20】

【0076】
【化21】

【0077】
【化22】

【0078】
【化23】

【0079】
【化24】

【0080】
【化25】

【0081】
【化26】

【0082】
【化27】

【0083】
【化28】

【0084】
【化29】

【0085】
【化30】

【0086】
【化31】

【0087】
【化32】

【0088】
【化33】

【0089】
【化34】

【0090】
【化35】

【0091】
本発明の一態様の複素環化合物の合成方法としては種々の反応を適用することができる。例えば、以下に示す合成反応を行うことによって、一般式(G1)で表される本発明の一態様の複素環化合物を合成することができる。なお、本発明の一態様である複素環化合物の合成方法は、以下の合成方法に限定されない。
【0092】
≪一般式(G1)で表される複素環化合物の合成方法1≫
はじめに合成スキーム(A−1)を以下に示す。
【0093】
【化36】

【0094】
本発明の一態様の複素環化合物(G1)は、合成スキーム(A−1)のようにして合成することができる。すなわち、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体のハロゲン化物(化合物1)と、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、又はジベンゾチオフェン誘導体の、有機ボロン化合物又はボロン酸(化合物2)を、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせることで、本実施の形態で示す複素環化合物(G1)を得ることができる。
【0095】
合成スキーム(A−1)において、Aはカルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基を表し、R11〜R20は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜13のアリール基を表す。R50およびR51は水素、炭素数1〜6のアルキル基のいずれかを表す。合成スキーム(A−1)においてR50とR51は互いに結合して環を形成していてもよい。また、Xはハロゲンを表す。
【0096】
合成スキーム(A−1)において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド等が挙げられるが、用いることができるパラジウム触媒はこれらに限られるものでは無い。
【0097】
合成スキーム(A−1)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。用いることができるパラジウム触媒の配位子はこれらに限られるものでは無い。
【0098】
合成スキーム(A−1)において、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられるが、用いることができる塩基はこれらに限られるものでは無い。
【0099】
合成スキーム(A−1)において、用いることができる溶媒としては、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。ただし、用いることができる溶媒はこれらに限られるものでは無い。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒がより好ましい。
【0100】
合成スキーム(A−1)に示す鈴木・宮浦カップリング反応において、化合物2で示される有機ホウ素化合物、又はボロン酸以外にも、有機アルミニウムや、有機ジルコニウム、有機亜鉛、有機スズ化合物等を用いるクロスカップリング反応を用いてもよい。しかし、これらに限定されるものではない。
【0101】
また、合成スキーム(A−1)に示す鈴木・宮浦カップリング反応において、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体の有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、又はジベンゾチオフェン誘導体のハロゲン化物、又はトリフラート置換体を、鈴木・宮浦反応によりカップリングしてもよい。
【0102】
以上によって、本実施の形態の複素環化合物を合成することができる。
【0103】
≪一般式(G1)で表される複素環化合物の合成方法2≫
以下では、一般式(G1)で表される複素環化合物の別の合成方法について説明する。はじめに、Aのホウ素化合物を原料に用いる場合の、合成スキーム(B−1)を以下に示す。
【0104】
【化37】

【0105】
合成スキーム(B−1)に示すように、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体のハロゲン化物(化合物3)と、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、またはジベンゾチオフェン誘導体の有機ボロン化合物、またはボロン酸(化合物4)を、鈴木・宮浦反応によりカップリングさせることで、本実施の形態で示す複素環化合物(G1)を得ることができる。
【0106】
合成スキーム(B−1)において、Aはカルバゾリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基を表し、R11〜R20は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜13のアリール基を表す。Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、該アリーレン基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。R52およびR53は水素、炭素数1〜6のアルキル基のいずれかを表す。合成スキーム(B−1)においてR52とR53は互いに結合して環を形成していてもよい。また、Xはハロゲン、又はトリフラート基を表し、ハロゲンとしては、ヨウ素と臭素がより好ましい。
【0107】
合成スキーム(B−1)において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド等が挙げられるが、用いることができるパラジウム触媒はこれらに限られるものでは無い。
【0108】
合成スキーム(B−1)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルト−トリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。用いることができるパラジウム触媒の配位子はこれらに限られるものでは無い。
【0109】
合成スキーム(B−1)において、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が挙げられるが、用いることができる塩基はこれらに限られるものでは無い。
【0110】
合成スキーム(B−1)において、用いることができる溶媒としては、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。ただし、用いることができる溶媒はこれらに限られるものでは無い。また、トルエンと水、又はトルエンとエタノールと水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒がより好ましい。
【0111】
合成スキーム(B−1)に示す鈴木・宮浦カップリング反応において、化合物4で示される有機ホウ素化合物、又はボロン酸以外にも、有機アルミニウムや、有機ジルコニウム、有機亜鉛、有機スズ化合物等を用いるクロスカップリング反応を用いてもよい。しかし、これらに限定されるものではない。また、このカップリングにおいて、ハロゲン以外にもトリフラート基等を用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0112】
また、合成スキーム(B−1)に示す鈴木・宮浦カップリング反応において、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体の有機ホウ素化合物、又はボロン酸と、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、又はジベンゾチオフェン誘導体のハロゲン化物、又はトリフラート置換体を、鈴木・宮浦反応によりカップリングしてもよい。
【0113】
合成スキーム(B−1)において、AがN−カルバゾリル誘導体の場合のみ、下記合成スキーム(B−2)に従って合成することで、一般式(G2−2)に示す複素環化合物を得ることができる。
【0114】
【化38】

【0115】
合成スキーム(B−2)に示すように、ジベンゾ[f,h]キノリン誘導体のハロゲン化物(化合物3)と、9H−カルバゾール誘導体(化合物5)を、塩基存在下で金属触媒、金属、または金属化合物によりカップリングさせることにより、本実施の形態で示す複素環化合物(G2−2)を得ることができる。
【0116】
合成スキーム(B−2)において、R11〜R20は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜13のアリール基を表す。Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、該アリーレン基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。R31〜R38は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜13のアリール基を表す。また、Xはハロゲン、又はトリフラート基を表し、ハロゲンとしては、ヨウ素と臭素がより好ましい。
【0117】
合成スキーム(B−2)において、ハートウィック・ブッフバルト反応を行う場合、用いることができるパラジウム触媒としては、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等が挙げられる。
【0118】
合成スキーム(B−2)において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(tert−ブチル)ホスフィンや、トリ(n−ヘキシル)ホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。
【0119】
合成スキーム(B−2)において、用いることができる塩基としては、ナトリウム tert−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0120】
また、合成スキーム(B−2)において、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0121】
また、ハートウィック・ブッフバルト反応以外にも、ウルマン反応などを用いても良く、これらに限定されるものではない。
【0122】
以上によって、本実施の形態の複素環化合物を合成することができる。
【0123】
本実施の形態の複素環化合物は、広いエネルギーギャップを有するため、発光素子において、発光層の発光物質を分散させるホスト材料に用いることで、高い電流効率を得ることができる。特に、燐光性化合物を分散させるホスト材料として好適である。また、本実施の形態の複素環化合物は、電子輸送性の高い物質であるため、発光素子における電子輸送層の材料として好適に用いることができる。本実施の形態の複素環化合物を用いることにより、低駆動電圧、及び高電流効率の発光素子を実現することができる。さらに、この発光素子を用いることで、消費電力の低減された発光装置、電子機器及び照明装置を得ることができる。
【0124】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の化合物を発光層に用いた発光素子について図1を用いて説明する。
【0125】
本発明の一態様は、ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とが、アリーレン基を介して結合した化合物である。
【0126】
上記の化合物は、ジベンゾ[f,h]キノリン環に加えて正孔輸送骨格を有するため、正孔を受け取ることが容易となる。また、上記の化合物は、ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とが、アリーレン基を介して結合しているため、直接結合する場合に比べてバンドギャップの低下及び三重項励起エネルギーの低下を防ぐことができ、発光素子に用いることで、電流効率が高い素子を実現できる。
【0127】
これらのことから、上述の化合物は発光素子や有機トランジスタなどの有機デバイスの材料として好適に用いることができる。
【0128】
正孔輸送骨格としては、π過剰系ヘテロ芳香環が好ましい。π過剰系ヘテロ芳香環としては、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、又はジベンゾチオフェン環が好ましい。アリーレン基としては、置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニルジイル基のいずれかが好ましい。
【0129】
本実施の形態では、上述の化合物の一例である、実施の形態1で構造式(101)に示した、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリン(略称:2mDBTPDBQu−II)を含む発光素子について図1を用いて説明する。
【0130】
本実施の形態の発光素子は、一対の電極間に少なくとも発光層を有するEL層を挟持して形成される。EL層は発光層の他に複数の層を有してもよい。当該複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリアの再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層を組み合わせて積層されたものである。本明細書では、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質からなる層をキャリアの注入、輸送などの機能を有する、機能層ともよぶ。機能層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などを用いることができる。
【0131】
図1(A)に示す本実施の形態の発光素子において、第1の電極101及び第2の電極103の一対の電極間に発光層113を有するEL層102が設けられている。EL層102は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。図1(A)における発光素子は、基板100上に、第1の電極101と、第1の電極101の上に順に積層した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115と、さらにその上に設けられた第2の電極103から構成されている。なお、本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
【0132】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル等からなる)、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0133】
第1の電極101としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0134】
但し、EL層102のうち、第1の電極101に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合には、第1の電極101に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、アルミニウムを含む合金(例えば、Al−Si)等も用いることもできる。
【0135】
第1の電極101上に形成されるEL層102は、少なくとも発光層113を有しており、またEL層102の一部には、本発明の一態様である複素環化合物を含んで形成される。EL層102の一部には公知の物質を用いることもでき、低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層102を形成する物質には、有機化合物のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
【0136】
また、EL層102は、発光層113の他、図1(A)に示すように正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115などを適宜組み合わせて積層することにより形成される。
【0137】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0138】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0139】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0140】
また、正孔注入層111として、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体によって有機化合物に正孔が発生するため、正孔注入性及び正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物は、発生した正孔の輸送に優れた材料(正孔輸送性の高い物質)であることが好ましい。
【0141】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0142】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB又はα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0143】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0144】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0145】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0146】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層111に用いてもよい。
【0147】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0148】
また、正孔輸送層112には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いてもよい。
【0149】
なお、正孔輸送層112には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0150】
発光層113は、発光物質を含む層である。なお、本実施の形態では、実施の形態1に示した、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリン(略称:2mDBTPDBQu−II)を発光層に用いる場合について説明する。2mDBTPDBQu−II(略称)は、発光物質(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成の発光層において、ホスト材料として用いることができる。2mDBTPDBQu−II(略称)に発光物質であるゲスト材料を分散させた構成とすることで、ゲスト材料からの発光を得ることができる。このように、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とがアリーレン基を介して結合した化合物は、発光層におけるホスト材料として用いることが有用である。
【0151】
また、発光物質(ゲスト材料)を分散させるための物質(ホスト材料)は複数種用いることができる。よって、発光層は、2mDBTPDBQu−II(略称)以外に、第2のホスト材料を含んでいてもよい。
【0152】
発光物質としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。発光層113に用いることができる蛍光性物質としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0153】
また、発光層113に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト}イリジウム(III)(略称:Ir(dmmoppr)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−iPr)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0154】
また、発光物質として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0155】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0156】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層115には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0157】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性及び電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0158】
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0159】
第2の電極103は、第2の電極103が陰極として機能する際は仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素、すなわちリチウムやセシウム等のアルカリ金属、及びカルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム、及びこれらを含む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム、イッテルビウム等の希土類金属及びこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。
【0160】
但し、EL層102のうち、第2の電極103に接して形成される層が、上述する有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず、アルミニウム、銀、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いることができる。
【0161】
なお、第2の電極103を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0162】
上述した発光素子は、第1の電極101と第2の電極103との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101又は第2の電極103のいずれか一方又は両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101又は第2の電極103のいずれか一方、又は両方が可視光に対する透光性を有する電極となる。
【0163】
なお、第1の電極101と第2の電極103との間に設けられる層の構成は、上記のものに限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光を防ぐように、第1の電極101及び第2の電極103から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成であれば上記以外のものでもよい。
【0164】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質、又は正孔ブロック材料等から成る層を、2mDBTPDBQu−II(略称)をホスト材料として含む発光層と自由に組み合わせて構成すればよい。
【0165】
なお、2mDBTPDBQu−II(略称)は、電子輸送性の高い物質であるため、電子輸送層に2mDBTPDBQu−II(略称)を用いることもできる。すなわち、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とがアリーレン基を介して結合した化合物は、電子輸送層に用いることができる。
【0166】
また、発光層(特に発光層のホスト材料)および電子輸送層の双方に、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とがアリーレン基を介して結合した化合物を適用することで、極めて低い駆動電圧が実現できる。
【0167】
図1(B)に示す発光素子は、基板100上において、第1の電極101及び第2の電極103の一対の電極間に、EL層102が設けられている。EL層102は、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有している。図1(B)における発光素子は、基板100上に、陰極として機能する第2の電極103と、第2の電極103上に順に積層した電子注入層115、電子輸送層114、発光層113、正孔輸送層112、正孔注入層111と、さらにその上に設けられた陽極として機能する第1の電極101から構成されている。
【0168】
以下、具体的な発光素子の形成方法を示す。
【0169】
本実施の形態の発光素子は一対の電極間にEL層が挟持される構造となっている。EL層は少なくとも発光層を有し、発光層は、2mDBTPDBQu−II(略称)をホスト材料として用いて形成される。また、EL層には、発光層の他に機能層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など)を含んでもよい。電極(第1の電極及び第2の電極)、発光層、及び機能層は液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法、印刷法などの湿式法を用いて形成してもよく、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの乾式法を用いて形成してもよい。湿式法を用いれば、大気圧下で形成することができるため、簡易な装置及び工程で形成することができ、工程が簡略化し、生産性が向上するという効果がある。一方乾式法は、材料を溶解させる必要がないために溶液に難溶の材料も用いることができ、材料の選択の幅が広い。
【0170】
発光素子を構成する薄膜のすべての形成を湿式法で行ってもよい。この場合、湿式法で必要な設備のみで発光素子を作製することができる。また、発光層を形成するまでの積層を湿式法で行い、発光層上に積層する機能層や第1の電極などを乾式法により形成してもよい。さらに、発光層を形成する前の第2の電極や機能層を乾式法により形成し、発光層、及び発光層上に積層する機能層や第1の電極を湿式法によって形成してもよい。もちろん、本実施の形態はこれに限定されず、用いる材料や必要とされる膜厚、界面状態によって適宜湿式法と乾式法を選択し、組み合わせて発光素子を作製することができる。
【0171】
本実施の形態においては、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に発光素子を作製している。一基板上にこのような発光素子を複数作製することで、パッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTと電気的に接続された電極上に発光素子を作製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型及びP型のTFTからなるものでもよいし、若しくはN型又はP型のいずれか一方からのみなるものであってもよい。
【0172】
以上のように、実施の形態1に記載の2mDBTPDBQu−II(略称)を用いて発光素子を作製することができる。本発明の一態様の、ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とが、アリーレン基を介して結合した化合物を発光素子に用いることで、駆動電圧が低く、電流効率が高い発光素子を得ることができる。
【0173】
また、このようにして得られた本発明の一態様の発光素子を用いた発光装置(画像表示デバイス)は低消費電力を実現できる。
【0174】
なお、本実施の形態で示した発光素子を用いて、パッシブマトリクス型の発光装置や、薄膜トランジスタ(TFT)によって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製することができる。
【0175】
本実施の形態は、他の実施の形態や以下の実施例と適宜組み合わせて用いることができる。
【0176】
(実施の形態3)
本実施の形態は複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、タンデム型素子、または積層型素子という)の態様について、図2を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に複数の発光ユニットを有する発光素子である。
【0177】
図2(A)において、第1の電極301と第2の電極303との間には、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312が積層されている。本実施の形態において、第1の電極301は陽極として機能する電極であり、第2の電極303は陰極として機能する電極である。なお、第1の電極301と第2の電極303は実施の形態2と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。また、第1の発光ユニット311と、第2の発光ユニット312は、その構成として、実施の形態2と同様なものを適用してもよいし、いずれかが異なる構成であってもよい。
【0178】
また、第1の発光ユニット311と第2の発光ユニット312の間には、電荷発生層313が設けられている。電荷発生層313は、第1の電極301と第2の電極303に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極301に第2の電極303よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層313から第1の発光ユニット311に電子が注入され、第2の発光ユニット312に正孔が注入される。
【0179】
なお、電荷発生層313は、光の取り出し効率の点から、可視光に対する透光性を有することが好ましい。また、電荷発生層313は、第1の電極301や第2の電極303よりも低い導電率であっても機能する。
【0180】
電荷発生層313は、正孔輸送性の高い有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを含む構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物と電子供与体(ドナー)とを含む構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていてもよい。
【0181】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、本発明の一態様の複素環化合物の他、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0182】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0183】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq、BeBq、BAlqなど、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、Zn(BOX)、Zn(BTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0184】
また、電子供与体としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、又は元素周期表における第2、13族に属する金属及びその酸化物、炭酸塩などを用いることができる。具体的には、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、インジウム、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0185】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層313を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0186】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、図2(B)に示すように、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子も適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度で発光する長寿命素子を実現できる。
【0187】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子において、第1の発光ユニットの発光色と第2の発光ユニットの発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つの発光ユニットを有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1の発光ユニットの発光色が赤色であり、第2の発光ユニットの発光色が緑色であり、第3の発光ユニットの発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0188】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態や以下の実施例と適宜組み合わせることが可能である。
【0189】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様として、ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とがアリーレン基を介して結合した化合物をホスト材料として用い、他の2種類以上の有機化合物を発光層に用いた発光素子について説明する。
【0190】
本実施の形態に示す発光素子は、図3に示すように一対の電極(第1の電極201、及び第2の電極202)間にEL層203を有する構造である。なお、EL層203には、少なくとも発光層204を有し、その他、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層などが含まれていてもよい。なお、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層には、それぞれ、実施の形態2、及び実施の形態3に示した正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115、及び電荷発生層313と同様の物質を用いることができる。
【0191】
なお、本実施の形態において、第1の電極201は、陽極として機能する電極であり、第2の電極202は陰極として機能する電極である。なお、第1の電極201および第2の電極202は、実施の形態2に示した第1の電極101、及び第2の電極103と同様な構成を用いることができる。
【0192】
また、本実施の形態に示す発光層204には、燐光性化合物205、第1の有機化合物206、および第2の有機化合物207が含まれている。なお、燐光性化合物205は、発光層204におけるゲスト材料である。また、第1の有機化合物206、および第2の有機化合物207のうち発光層204に含まれる割合の多い方を発光層204におけるホスト材料とする。本実施の形態においては、第1の有機化合物206、または第2の有機化合物207として、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とがアリーレン基を介して結合した化合物を用いることができる。
【0193】
発光層204において、上記ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制し、発光素子の発光効率を高くすることができる。
【0194】
なお、第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207のそれぞれの三重項励起エネルギーの準位(T1準位)は、燐光性化合物205のT1準位よりも高いことが好ましい。第1の有機化合物206(または第2の有機化合物207)のT1準位が燐光性化合物205のT1準位よりも低いと、発光に寄与する燐光性化合物205の三重項励起エネルギーを第1の有機化合物206(または第2の有機化合物207)が消光(クエンチ)してしまい、発光効率の低下を招くためである。
【0195】
ここで、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動効率を高めるため、分子間のエネルギー移動機構として知られているフェルスター機構(双極子−双極子相互作用)およびデクスター機構(電子交換相互作用)を考慮した上で、ホスト材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)とゲスト材料の吸収スペクトル(より詳細には、最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯におけるスペクトル)との重なりが大きくなることが好ましい。しかしながら通常、ホスト材料の蛍光スペクトルを、ゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ねることは困難である。なぜならば、そのようにしてしまうと、ホスト材料の燐光スペクトルは蛍光スペクトルよりも長波長(低エネルギー)側に位置するため、ホスト材料のT1準位が燐光性化合物のT1準位を下回ってしまい、上述したクエンチの問題が生じてしまうからである。一方、クエンチの問題を回避するため、ホスト材料のT1準位が燐光性化合物のT1準位を上回るように設計すると、今度はホスト材料の蛍光スペクトルが短波長(高エネルギー)側にシフトするため、その蛍光スペクトルはゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ならなくなる。したがって、ホスト材料の蛍光スペクトルをゲスト材料の最も長波長(低エネルギー)側の吸収帯における吸収スペクトルと重ね、ホスト材料の一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に高めることは、通常困難である。
【0196】
そこで本実施の形態においては、第1の有機化合物206、および第2の有機化合物207は、励起錯体(エキサイプレックスとも言う)を形成する組み合わせであることが好ましい。この場合、発光層204におけるキャリア(電子及びホール)の再結合の際に第1の有機化合物206と第2の有機化合物207は、励起錯体を形成する。これにより、発光層204において、第1の有機化合物206の蛍光スペクトルおよび第2の有機化合物207の蛍光スペクトルは、より長波長側に位置する励起錯体の発光スペクトルに変換される。そして、励起錯体の発光スペクトルとゲスト材料の吸収スペクトルとの重なりが大きくなるように、第1の有機化合物206と第2の有機化合物207を選択すれば、一重項励起状態からのエネルギー移動を最大限に高めることができる。なお、三重項励起状態に関しても、ホスト材料ではなく励起錯体からのエネルギー移動が生じると考えられる。
【0197】
燐光性化合物205としては、燐光性有機金属イリジウム錯体等を用いることができる。また、第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207としては、励起錯体を生じる組み合わせであればよいが、電子を受け取りやすい化合物(電子トラップ性化合物)と、ホールを受け取りやすい化合物(正孔トラップ性化合物)とを組み合わせることが好ましい。
【0198】
電子を受け取りやすい化合物として、本発明の一態様である、ジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とがアリーレン基を介して結合した化合物を用いることができる。
【0199】
ホールを受け取りやすい化合物としては、例えば、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’−TNATA)、2,7−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N,N’−ビス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(略称:PCA2B)、N−(9,9−ジメチル−2−ジフェニルアミノ−9H−フルオレン−7−イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、N,N’,N’’−トリフェニル−N,N’,N’’−トリス(9−フェニルカルバゾール−3−イル)ベンゼン−1,3,5−トリアミン(略称:PCA3B)、2−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:PCASF)、2−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPASF)、N,N’−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニル−9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジアミン(略称:YGA2F)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−N−[9,9−ジメチル−2−{N’−フェニル−N’−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)}アミノ−9H−フルオレン−7−イル]フェニルアミン(略称:DFLADFL)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3−[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、3,6−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)が挙げられる。
【0200】
上述した第1の有機化合物206及び第2の有機化合物207は、これらに限定されることなく、励起錯体を形成できる組み合わせであり、励起錯体の発光スペクトルが、燐光性化合物205の吸収スペクトルと重なり、励起錯体の発光スペクトルのピークが、燐光性化合物205の吸収スペクトルのピークよりも長波長であればよい。
【0201】
なお、電子を受け取りやすい化合物とホールを受け取りやすい化合物で第1の有機化合物206と第2の有機化合物207を構成する場合、その混合比によってキャリアバランスを制御することができる。具体的には、第1の有機化合物206:第2の有機化合物207=1:9〜9:1の範囲が好ましい。
【0202】
本実施の形態で示した発光素子は、励起錯体の発光スペクトルと燐光性化合物の吸収スペクトルとの重なりを利用したエネルギー移動により、エネルギー移動効率を高めることができるため、外部量子効率の高い発光素子を実現することができる。
【0203】
なお、本発明に含まれる別の構成として、ゲスト材料である燐光性化合物205と、他の2種類の有機化合物として、正孔トラップ性のホスト分子、および電子トラップ性のホスト分子を用いて発光層204を形成し、2種類のホスト分子中に存在するゲスト分子に正孔と電子を導いて、ゲスト分子を励起状態とする現象(すなわち、Guest Coupled with Complementary Hosts:GCCH)が得られるように発光層204を形成する構成も可能である。
【0204】
このとき、正孔トラップ性のホスト分子、および電子トラップ性のホスト分子としては、それぞれ、上述した正孔を受け取りやすい化合物、および電子を受け取りやすい化合物を用いることができる。
【0205】
なお、本実施の形態で示した発光素子は、発光素子の構造の一例であるが、本発明の一態様である発光装置には、他の実施の形態で示す別の構造の発光素子を適用することもできる。また、上記発光素子を備えた発光装置の構成としては、パッシブマトリクス型の発光装置やアクティブマトリクス型の発光装置の他、別の実施の形態で説明する上記とは別の構造を有する発光素子を備えたマイクロキャビティー構造の発光装置などを作製することができ、これらは、いずれも本発明に含まれるものとする。
【0206】
なお、アクティブマトリクス型の発光装置の場合において、TFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型や逆スタガ型のTFTを適宜用いることができる。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、N型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方のみからなるものであってもよい。さらに、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜、その他、酸化物半導体膜等を用いることができる。
【0207】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態や以下の実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0208】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とがアリーレン基を介して結合した化合物を用いた発光装置について図4を用いて説明する。
【0209】
本実施の形態に示す発光装置は、一対の電極間での光の共振効果を利用した微小光共振器(マイクロキャビティー)構造を有しており、図4に示す様に一対の電極(反射電極451及び半透過・半反射電極452)間に少なくともEL層455を有する構造である発光素子を複数、有している。また、EL層455は、少なくとも発光領域となる第1の発光層454B、第2の発光層454G、及び第3の発光層454Rを有し、その他、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層などが含まれていてもよい。なお、第1の発光層454B、第2の発光層454G、及び第3の発光層454Rの少なくとも一つの層には、本発明の一態様であるジベンゾ[f,h]キノリン環と正孔輸送骨格とがアリーレン基を介して結合した化合物が含まれている。
【0210】
本実施の形態では、図4に示すように構造の異なる発光素子(第1の発光素子450R、第2の発光素子450G、第3の発光素子450B)を有した発光装置について説明する。
【0211】
第1の発光素子450Rは、反射電極451上に第1の透明導電層453aと、EL層455と、半透過・半反射電極452と、が順次積層された構造を有する。また、第2の発光素子450Gは、反射電極451上に第2の透明導電層453bと、EL層455と、半透過・半反射電極452と、が順次積層された構造を有する。また、第3の発光素子450Bは、反射電極451上にEL層455と、半透過・半反射電極452と、が順次積層された構造を有する。
【0212】
なお、上記発光素子(第1の発光素子450R、第2の発光素子450G、及び第3の発光素子450B)において、反射電極451、EL層455、半透過・半反射電極452は共通である。
【0213】
また、EL層455は、第1の発光層454Bと、第2の発光層454Gと、第3の発光層454Rと、を含んだ構造である。なお、第1の発光層454Bは、420nm以上480nm以下の波長領域にピークをもつ光(λ)を発光し、第2の発光層454Gは、500nm以上550nm以下の波長領域にピークを持つ光(λ)を発光し、第3の発光層454Rは、600nm以上760nm以下の波長領域にピークを持つ光(λ)を発光する。これにより、いずれの発光素子(第1の発光素子450R、第2の発光素子450G、第3の発光素子450B)でも、第1の発光層454B、第2の発光層454G、および第3の発光層454Rからの発光が重ね合わされた、すなわち可視光領域に渡るブロードな発光スペクトルを有する光を発光させることができる。なお、上記より、波長の長さは、λ<λ<λとなる関係であるとする。
【0214】
本実施の形態に示す各発光素子は、それぞれ反射電極451と半透過・半反射電極452との間にEL層455を挟んでなる構造を有しており、EL層455に含まれる各発光層から全方向に射出される発光は、微小光共振器(マイクロキャビティー)としての機能を有する反射電極451と半透過・半反射電極452とによって共振される。なお、反射電極451は、反射性を有する導電性材料により形成され、その膜に対する可視光の反射率が40%〜100%、好ましくは70%〜100%であり、かつその抵抗率が1×10−2Ω×cm以下の膜であるとする。また、半透過・半反射電極452は、反射性を有する導電性材料と光透過性を有する導電性材料とにより形成され、その膜に対する可視光の反射率が20%〜80%、好ましくは40%〜70%であり、かつその抵抗率が1×10−2Ω×cm以下の膜であるとする。
【0215】
また、本実施の形態では、各発光素子で、第1の発光素子450Rと第2の発光素子450Gにそれぞれ設けられた透明導電層(第1の透明導電層453a、第2の透明導電層453b)の厚みを変えることにより、発光素子毎に反射電極451と半透過・半反射電極452の間の光学的距離を変えている。つまり、各発光素子の各発光層から発光するブロードな発光スペクトルを有する光は、反射電極451と半透過・半反射電極452との間において、共振する波長の光を強め、共振しない波長の光を減衰させることができるため、素子毎に反射電極451と半透過・半反射電極452の間の光学的距離を変えることにより、異なる波長の光を取り出すことができる。
【0216】
なお、光学的距離(光路長ともいう)とは、実際の距離に屈折率をかけたものであり、本実施の形態においては、実膜厚にn(屈折率)をかけたものを表している。すなわち、「光学的距離=実膜厚×n」である。
【0217】
また、第1の発光素子450Rでは、反射電極451から半透過・半反射電極452までの光学的距離をmλ/2(ただし、mは1以上の自然数)、第2の発光素子450Gでは、反射電極451から半透過・半反射電極452までの光学的距離をmλ/2(ただし、mは1以上の自然数)、第3の発光素子450Bでは、反射電極451から半透過・半反射電極452までの光学的距離をmλ/2(ただし、mは1以上の自然数)としている。
【0218】
以上より、第1の発光素子450Rからは、主としてEL層455に含まれる第3の発光層454Rで発光した光(λ)が取り出され、第2の発光素子450Gからは、主としてEL層455に含まれる第2の発光層454Gで発光した光(λ)が取り出され、第3の発光素子450Bからは、主としてEL層455に含まれる第1の発光層454Bで発光した光(λ)が取り出される。なお、各発光素子から取り出される光は、半透過・半反射電極452側からそれぞれ射出される。
【0219】
また、上記構成において、反射電極451から半透過・半反射電極452までの光学的距離は、厳密には反射電極451における反射領域から半透過・半反射電極452における反射領域までの距離である。しかし、反射電極451や半透過・半反射電極452における反射領域の位置を厳密に決定することは困難であるため、反射電極451と半透過・半反射電極452の任意の位置を反射領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0220】
次に、第1の発光素子450Rにおいて、第3の発光層454Rからの発光のうち、反射電極451によって反射されて戻ってきた光(第1の反射光)は、第3の発光層454Rから半透過・半反射電極452に直接入射する光(第1の入射光)と干渉を起こすため、反射電極451と第3の発光層454Rの光学的距離を(2n−1)λ/4(ただし、nは1以上の自然数)に調節する。光学的距離を調節することにより、第1の反射光と第1の入射光との位相を合わせ、第3の発光層454Rからの発光を増幅させることができる。
【0221】
なお、反射電極451と第3の発光層454Rとの光学的距離とは、厳密には反射電極451における反射領域と第3の発光層454Rにおける発光領域との光学的距離ということができる。しかし、反射電極451における反射領域や第3の発光層454Rにおける発光領域の位置を厳密に決定することは困難であるため、反射電極451と第3の発光層454Rの任意の位置を、それぞれ反射領域、発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0222】
次に、第2の発光素子450Gにおいて、第2の発光層454Gからの発光のうち、反射電極451によって反射されて戻ってきた光(第2の反射光)は、第2の発光層454Gから半透過・半反射電極452に直接入射する光(第2の入射光)と干渉を起こすため、反射電極451と第2の発光層454Gの光学的距離を(2n−1)λ/4(ただし、nは1以上の自然数)に調節する。光学的距離を調節することにより、第2の反射光と第2の入射光との位相を合わせ、第2の発光層454Gからの発光を増幅させることができる。
【0223】
なお、反射電極451と第2の発光層454Gとの光学的距離とは、厳密には反射電極451における反射領域と第2の発光層454Gにおける発光領域との光学的距離ということができる。しかし、反射電極451における反射領域や第2の発光層454Gにおける発光領域の位置を厳密に決定することは困難であるため、反射電極451と第2の発光層454Gの任意の位置を、それぞれ反射領域、発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0224】
次に、第3の発光素子450Bにおいて、第1の発光層454Bからの発光のうち、反射電極451によって反射されて戻ってきた光(第3の反射光)は、第1の発光層454Bから半透過・半反射電極452に直接入射する光(第3の入射光)と干渉を起こすため、反射電極451と第1の発光層454Bの光学的距離を(2n−1)λ/4(ただし、nは1以上の自然数)に調節する。光学的距離を調節することにより、第3の反射光と第3の入射光との位相を合わせ、第1の発光層454Bからの発光を増幅させることができる。
【0225】
なお、反射電極451と第1の発光層454Bとの光学的距離とは、厳密には反射電極451における反射領域と第1の発光層454Bにおける発光領域との光学的距離ということができる。しかし、反射電極451における反射領域や第1の発光層454Bにおける発光領域の位置を厳密に決定することは困難であるため、反射電極451と第1の発光層454Bの任意の位置を、それぞれ反射領域、発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0226】
なお、上記構成において、いずれの発光素子もEL層に複数の発光層を有する構造を有しているが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、実施の形態3で説明したタンデム型(積層型)発光素子の構成と組み合わせて、一つの発光素子に電荷発生層を挟んで複数のEL層を設け、それぞれのEL層に単数または複数の発光層を形成する構成としてもよい。
【0227】
本実施の形態で示した発光装置は、マイクロキャビティー構造を有しており、同じEL層を有していても発光素子毎に異なる波長の光を取り出すことができるためRGBの塗り分けが不要となる。従って、高精細化を実現することが容易であるなどの理由からフルカラー化を実現する上で有利である。また、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。この構成は、3色以上の画素を用いたカラーディスプレイ(画像表示装置)に適用する場合に、特に有用であるが、照明などの用途に用いてもよい。
【0228】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態や以下の実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0229】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の、発光素子を有する発光装置について図5を用いて説明する。なお、図5(A)は、発光装置を示す上面図、図5(B)は図5(A)をA−B及びC−Dで切断した断面図である。
【0230】
図5(A)において、点線で示された401は駆動回路部(ソース側駆動回路)、402は画素部、403は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、404は封止基板、405はシール材であり、シール材405で囲まれた内側は、空間になっている。
【0231】
なお、引き回し配線408はソース側駆動回路401及びゲート側駆動回路403に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)409からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCまたはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0232】
次に、断面構造について図5(B)を用いて説明する。素子基板410上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路401と、画素部402中の一つの画素が示されている。
【0233】
なお、ソース側駆動回路401はnチャネル型TFT423とpチャネル型TFT424とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路またはNMOS回路で形成してもよい。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0234】
また、画素部402はスイッチング用TFT411と、電流制御用TFT412とそのドレインに電気的に接続された第1の電極413とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0235】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物414の上端部又は下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物414の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物414の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物414として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型の感光性樹脂、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0236】
第1の電極413上には、発光層416、及び第2の電極417がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極413に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、又は珪素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれる。
【0237】
また、発光層416は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法などの液滴吐出法、印刷法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。発光層416は、実施の形態1で示した複素環化合物を含んでいる。また、発光層416を構成する他の材料としては、低分子材料、オリゴマー、デンドリマー、又は高分子材料であってもよい。
【0238】
さらに、発光層416上に形成され、陰極として機能する第2の電極417に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、又はこれらの合金や化合物、Mg−Ag、Mg−In、Al−Li等)を用いることが好ましい。なお、発光層416で生じた光が第2の電極417を透過させる場合には、第2の電極417として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化亜鉛等)との積層を用いるのがよい。
【0239】
さらにシール材405で封止基板404を素子基板410と貼り合わせることにより、素子基板410、封止基板404、及びシール材405で囲まれた空間407に発光素子418が備えられた構造になっている。なお、空間407には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材405で充填される場合もある。
【0240】
なお、シール材405にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板404に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル又はアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0241】
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を有するアクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0242】
また、本発明の一様態の発光素子は、上述したアクティブマトリクス型の発光装置のみならずパッシブマトリクス型の発光装置に用いることもできる。図6に本発明の一様態の発光素子を用いたパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図及び断面図を示す。なお、図6(A)は、発光装置を示す斜視図、図6(B)は図6(A)をX−Yで切断した断面図である。
【0243】
図6において、基板501上の第1の電極502と第2の電極503との間にはEL層504が設けられている。第1の電極502の端部は絶縁層505で覆われている。そして、絶縁層505上には隔壁層506が設けられている。隔壁層506の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。つまり、隔壁層506の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接する辺)の方が上辺(絶縁層505の面方向と同様の方向を向き、絶縁層505と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層506を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことができる。
【0244】
以上により、本発明の一態様の発光素子を有するパッシブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0245】
なお、本実施の形態で示した発光装置(アクティブマトリクス型、パッシブマトリクス型)は、いずれも本発明の一態様の発光素子を用いて形成されることから、消費電力の低い発光装置を得ることができる。
【0246】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態や以下の実施例と適宜組み合わせることが可能である。
【0247】
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態に示す本発明の一態様の発光装置を含む電子機器について説明する。電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機又は電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的には、Digital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図7に示す。
【0248】
図7(A)は本発明の一態様に係るテレビ装置であり、筐体611、支持台612、表示部613、スピーカー部614、ビデオ入力端子615等を含む。このテレビ装置において、表示部613には、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い電流効率が得られるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、消費電力の低減されたテレビ装置を得ることができる。
【0249】
図7(B)は本発明の一態様に係るコンピュータであり、本体621、筐体622、表示部623、キーボード624、外部接続ポート625、ポインティングデバイス626等を含む。このコンピュータにおいて、表示部623には、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い電流効率が得られるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、消費電力の低減されたコンピュータを得ることができる。
【0250】
図7(C)は本発明の一態様に係る携帯電話であり、本体631、筐体632、表示部633、音声入力部634、音声出力部635、操作キー636、外部接続ポート637、アンテナ638等を含む。この携帯電話において、表示部633には、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い電流効率が得られるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、消費電力の低減された携帯電話を得ることができる。
【0251】
図7(D)は本発明の一態様に係るカメラであり、本体641、表示部642、筐体643、外部接続ポート644、リモコン受信部645、受像部646、バッテリー647、音声入力部648、操作キー649、接眼部650等を含む。このカメラにおいて、表示部642には、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い電流効率が得られるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、消費電力の低減されたカメラを得ることができる。
【0252】
以上の様に、本発明の一態様の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明の一態様の発光装置を用いることにより、消費電力の低減された電子機器を得ることができる。
【0253】
また、本発明の一態様の発光装置は、照明装置として用いることもできる。図8(A)は、本発明の一態様の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図8(A)に示した液晶表示装置は、筐体701、液晶層702、バックライト703、筐体704を有し、液晶層702は、ドライバIC705と接続されている。また、バックライト703は、本発明の一態様の発光装置が用いられおり、端子706により、電流が供給されている。
【0254】
このように本発明の一態様の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、低消費電力のバックライトが得られる。また、本発明の一態様の発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化も可能である。従って、低消費電力であり、大面積化された液晶表示装置を得ることができる。
【0255】
次に、図8(B)は、本発明の一態様の発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例である。図8(B)に示す電気スタンドは、筐体801と、光源802を有し、光源802として、本発明の一態様の発光装置が用いられている。低駆動電圧で、高い電流効率が得られるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、低消費電力の電気スタンドを得ることが可能となる。
【0256】
次に、図8(C)は、本発明の一態様の発光装置を、室内の照明装置901として用いた例である。本発明の一態様の発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、本発明の一態様の発光装置は、低駆動電圧で、高い電流効率が得られるため、本発明の一態様の発光装置を適用することで、低消費電力の照明装置を得ることが可能となる。このように、本発明の一態様の発光装置を、室内の照明装置901として用いた部屋に、図7(A)で説明したような、本発明の一態様のテレビ装置902を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。
【0257】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態や以下の実施例と適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0258】
本実施例では、下記構造式(101)に示される2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリン(略称:2mDBTPDBQu−II)の合成方法について説明する。
【0259】
【化39】

【0260】
≪2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリン(略称:2mDBTPDBQu−II)の合成≫
2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリン(略称:2mDBTPDBQu−II)の合成スキームを(C−1)に示す。
【0261】
【化40】

【0262】
100mL三口フラスコに2−クロロジベンゾ〔f、h〕キノリン0.46g(1.7mmol)、3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニルボロン酸0.62g(2.0mmol)、トルエン20mL、エタノール2mL、2Mの炭酸カリウム水溶液2mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌することで脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)65mg(56μmol)を加え、窒素気流下、80℃で7時間攪拌した。所定時間経過後、この混合物に水を加え、水層をトルエンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた混合物を自然濾過し、濾液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)で精製し、固体を得た。得られた固体を高速液体カラムクロマトグラフィーにより精製した。高速液体カラムクロマトグラフィーはクロロホルムを展開溶媒に用いることにより行った。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。得られた固体のメタノール懸濁液に超音波を照射し、固体を吸引濾過により回収したところ、目的物の白色粉末を収量0.68g、収率79%で得た。
【0263】
得られた2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ〔f、h〕キノリンの白色粉末0.66gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力2.7Pa、アルゴン流量5.0mL/minの条件で、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ〔f、h〕キノリンを280℃で14時間加熱して行った。昇華精製後、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ〔f、h〕キノリンの白色固体を0.60g、回収率90%で得た。
【0264】
核磁気共鳴法(H NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリン(略称:2mDBTPDBQu−II)であることを確認した。
【0265】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.48−7.51(m、2H)、7.61−7.89(m、9H)、8.16(d、J=8.4Hz、1H)、8.22−8.25(m、2H)、8.44(d、J=7.8Hz、1H)、8.60−8.72(m、3H)、8.79(s、1H)、8.97(d、J=8.7Hz、1H)、9.57−9.60(m、1H)。
【0266】
また、H NMRチャートを図9に示す。なお、図9(B)は、図9(A)における7.0ppm〜10.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0267】
また、2mDBTPDBQu−II(略称)のトルエン溶液の吸収スペクトルを図10(A)に、発光スペクトルを図10(B)にそれぞれ示す。また、2mDBTPDBQu−II(略称)の薄膜の吸収スペクトルを図11(A)に、発光スペクトルを図11(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルに関して、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示し、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図10及び図11において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では、282、320、及び358nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは、362nm、及び380、402nm(励起波長327nm)であった。また、薄膜の場合では250、264、325、344nm、及び364nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは395nm(励起波長365nm)であった。
【実施例2】
【0268】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子(発光素子1、及び発光素子3)、並びに比較用の発光素子(比較発光素子2)について、図12を用いて説明する。本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0269】
【化41】

【0270】
【化42】

【0271】
以下に、本実施例の発光素子1、比較発光素子2、及び発光素子3の作製方法を示す。
【0272】
(発光素子1)
まず、基板1100上に、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ化合物(ITO−SiO、以下ITSOと略記する。)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、用いたターゲットの組成比は、In:SnO:SiO=85:10:5[重量%]とした。また、第1の電極1101の膜厚は、110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極1101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
【0273】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0274】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0275】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)と酸化モリブデンを共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、40nmとし、BPAFLP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=BPAFLP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0276】
次に、正孔注入層1111上に、BPAFLP(略称)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0277】
さらに、実施例1にて合成した2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリン(略称:2mDBTPDBQu−II)と、4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)と、ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)(dpm)])と、を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、2mDBTPDBQu−II(略称)、PCBNBB(略称)、及び[Ir(mppr−Me)(dpm)](略称)の重量比は、0.8:0.2:0.05(=2mDBTPDBQu−II:PCBNBB:[Ir(mppr−Me)(dpm)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0278】
さらに、発光層1113上に2mDBTPDBQu−II(略称)を膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0279】
その後、第1の電子輸送層1114a上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0280】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0281】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。
【0282】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0283】
(比較発光素子2)
発光素子1における発光層1113に対応する比較発光素子2における発光層1113を、4−[3−(トリフェニレン−2−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp−II)と、4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)と、ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)(dpm)])と、を共蒸着することで形成した。ここで、mDBTPTp−II(略称)、PCBNBB(略称)、及び[Ir(mppr−Me)(dpm)](略称)の重量比は、0.8:0.2:0.05(=mDBTPTp−II:PCBNBB:[Ir(mppr−Me)(dpm)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0284】
さらに、発光素子1における第1の電子輸送層1114aに対応する比較発光素子2における第1の電子輸送層1114aを、mDBTPTp−II(略称)を膜厚10nmとなるように成膜することで形成した。発光層1113、及び第1の電子輸送層1114a以外は発光素子1と同様に作製した。
【0285】
(発光素子3)
発光素子1における発光層1113に対応する比較発光素子3における発光層1113を、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノリン(略称:2mDBTPDBQu−II)と、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)と、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])と、を共蒸着することで形成した。ここで、2mDBTPDBQu−II(略称)、PCBA1BP(略称)、及び[Ir(ppy)](略称)の重量比は、0.8:0.2:0.06(=2mDBTPDBQu−II:PCBA1BP:[Ir(ppy)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は30nmとした。
【0286】
発光素子3については、発光層1113以外の構成は、発光素子1と同様に作製した。
【0287】
以上により得られた発光素子1、比較発光素子2、及び発光素子3の素子構造を表1に示す。
【0288】
【表1】

【0289】
発光素子1、比較発光素子2、及び発光素子3を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時に80℃にて1時間熱処理)を行った。その後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0290】
発光素子1、及び比較発光素子2の電流密度−輝度特性を図13に示す。図13において、横軸は電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子1、及び比較発光素子2の電圧−輝度特性を図14に示す。図14において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子1、及び比較発光素子2の輝度−電流効率特性を図15に示す。図15において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子1、及び比較発光素子2の電圧−電流特性を図16に示す。図16において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流(mA)を表す。
【0291】
また、発光素子3の電流密度−輝度特性を図17に示す。図17において、横軸は電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子3の電圧−輝度特性を図18に示す。図18において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子3の輝度−電流効率特性を図19に示す。図19において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子3の電圧−電流特性を図20に示す。図20において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流(mA)を表す。
【0292】
また、各発光素子における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表2に示す。
【0293】
【表2】

【0294】
表2に示す通り、輝度1020cd/mの発光素子1のCIE色度座標は、(x,y)=(0.54,0.46)であった。また、輝度930cd/mの比較発光素子2のCIE色度座標は、(x,y)=(0.53,0.46)であった。また、輝度950cd/mの発光素子3のCIE色度座標は、(x,y)=(0.34,0.61)であった。
【0295】
また、表2から、輝度1020cd/mの発光素子1の電流効率は64cd/Aであり、輝度930cd/mの比較発光素子2の電流効率は50cd/Aであり、輝度950cd/mの発光素子3の電流効率は52cd/Aであった。また、輝度1020cd/mの発光素子1の外部量子効率は24%であり、輝度930cd/mの比較発光素子2の外部量子効率は19%であり、輝度950cd/mの発光素子3の外部量子効率は15%であった。
【0296】
図14、図15、及び図16から、本発明の一形態である発光素子1と、比較発光素子2と、を比較した際に、電圧−輝度特性、輝度−電流効率特性、及び電圧−電流特性に差が生じた。発光素子1は、比較発光素子2よりも駆動電圧が低く、高い電流効率を有することがわかる。発光層のホスト材料に用いた化合物の構造の違いは、発光素子1は、ジベンゾ[f,h]キノリン骨格を有するが、比較発光素子2は、トリフェニレン骨格を有する点である。したがって、本発明の一態様の複素環化合物のように、ジベンゾ[f,h]キノリン骨格を有する化合物は、電圧−輝度特性、輝度−電流効率特性、及び電圧−電流特性に対して高い効果があることが確認された。
【0297】
また、表2から発光素子1は、比較発光素子2よりも電流効率、外部量子効率が高いことがわかる。したがって、本発明の一態様の複素環化合物のように、ジベンゾ[f,h]キノリン骨格を有する化合物は、高い電流効率、及び高い外部量子効率の実現に効果があることが確認された。
【0298】
(参考例1)
上記実施例2で用いた4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)の合成方法について具体的に説明する。BPAFLPの構造を以下に示す。
【0299】
【化43】

【0300】
≪ステップ1:9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンの合成法≫
100mL三口フラスコにて、マグネシウム1.2g(50mmol)を、減圧下で30分加熱撹拌し、マグネシウムを活性化させた。これを室温に冷ましてフラスコ内を窒素雰囲気にした後、ジブロモエタン数滴を加えて発泡、発熱するのを確認した。ここにジエチルエーテル10mL中に溶かした2−ブロモビフェニルを12g(50mmol)ゆっくり滴下した後、2.5時間加熱還流撹拌してグリニヤール試薬とした。
【0301】
4−ブロモベンゾフェノン10g(40mmol)と、ジエチルエーテル100mLを500mL三口フラスコに入れた。ここに先に合成したグリニヤール試薬をゆっくり滴下した後、9時間加熱還流撹拌した。
【0302】
反応後、この混合液をろ過して濾物を得た。得られた濾物を酢酸エチル150mLに溶かし、ここに塩酸を加えて2時間撹拌した。この液体の有機層の部分を水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液を濾過し、得られた濾液を濃縮し粘性の高い油状の物質を得た。
【0303】
500mLなすフラスコに、この粘性の高い油状物質と、氷酢酸50mLと、塩酸1.0mLとを入れ、窒素雰囲気下、130℃で1.5時間加熱撹拌し、反応させた。
【0304】
反応後、この反応混合液を濾過して濾物を得た。得られた濾物を水、水酸化ナトリウム水、水、メタノールの順で洗浄したのち乾燥させ、目的物の白色粉末を収量11g、収率69%で得た。また、上記合成法の反応スキームを下記(D−1)に示す。
【0305】
【化44】

【0306】
≪ステップ2:4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)の合成法≫
100mL三口フラスコへ、9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレン3.2g(8.0mmol)、4−フェニル−ジフェニルアミン2.0g(8.0mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド1.0g(10mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)23mg(0.04mmol)を加え、フラスコ内の雰囲気を窒素置換した。この混合物へ、脱水キシレン20mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気した後、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10wt%ヘキサン溶液)0.2mL(0.1mmol)を加えた。この混合物を、窒素雰囲気下、110℃で2時間加熱撹拌し、反応させた。
【0307】
反応後、この反応混合液にトルエン200mLを加え、この懸濁液をフロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通して濾過した。得られた濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:ヘキサン=1:4)による精製を行った。得られたフラクションを濃縮し、アセトンとメタノールを加えて超音波をかけたのち、再結晶したところ、目的物の白色粉末を収量4.1g、収率92%で得た。また、上記合成法の反応スキームを下記(D−2)に示す。
【0308】
【化45】

【0309】
シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)でのRf値(展開溶媒 酢酸エチル:ヘキサン=1:10)は、目的物は0.41、9−(4−ブロモフェニル)−9−フェニルフルオレンは0.51、4−フェニル−ジフェニルアミンは0.27だった。
【0310】
上記ステップ2で得られた化合物を核磁気共鳴法(H NMR)により測定した。以下に測定データを示す。測定結果から、フルオレン誘導体であるBPAFLP(略称)が得られたことがわかった。
【0311】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=6.63−7.02(m,3H)、7.06−7.11(m,6H)、7.19−7.45(m,18H)、7.53−7.55(m,2H)、7.75(d,J=6.9,2H)。
【0312】
(参考例2)
上記実施例2で用いた4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)の合成方法について具体的に説明する。PCBA1BPの構造を以下に示す。
【0313】
【化46】

【0314】
≪ステップ1:4−ブロモジフェニルアミンの合成≫
ステップ1における4−ブロモジフェニルアミンの合成スキームを下記(E−1)に示す。
【0315】
【化47】

【0316】
ジフェニルアミン51g(0.3mol)を1L三角フラスコ中にて酢酸エチル700mLに溶かした後、ここにN−ブロモこはく酸イミド(略称;NBS)54g(0.3mol)を加えた。約300時間後、この混合液を水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この混合液を濾過して濾液を濃縮して回収した。濃い茶色で油状の目的物を得た。収量は70g、収率は94%であった。
【0317】
≪ステップ2−1:3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾールの合成≫
ステップ2−1における3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾールの合成スキームを下記(E−2−1)に示す。
【0318】
【化48】

【0319】
1L三角フラスコ中にて、9−フェニル−9H−カルバゾール24g(100mmol)、N−ブロモこはく酸イミド18g(100mmol)、トルエン450mL、酢酸エチル200mLを、室温にて45時間撹拌した。この懸濁液を、水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液を濾過し、得られた濾液を濃縮、乾燥させた。粘性の高い油状の目的物の収量は32g、収率は99%であった。
【0320】
≪ステップ2−2:9−フェニル−9H−カルバゾール−3−ボロン酸の合成≫
ステップ2−2における9−フェニル−9H−カルバゾール−3−ボロン酸の合成スキームを下記(E−2−2)に示す。
【0321】
【化49】

【0322】
500mL三口フラスコ中にて、3−ブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾール29g(90mmol)、テトラヒドロフラン(略称;THF)200mLを、−78℃にて撹拌し溶液とした後、ここにn−ブチルリチウム(1.57mol/Lヘキサン溶液)110mL(69mmol)を滴下し、同温度で2時間攪拌した。さらに、ここにホウ酸トリメチル13mL(140mmol)を加え、室温にて24時間撹拌した。
【0323】
反応終了後、ここに1.0mol/L塩酸200mLを加え、室温で1時間撹拌した。これを水、水酸化ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて水分を取り除いた。この懸濁液を濾過し、得られた濾液を濃縮し、クロロホルムとヘキサンを加えて超音波をかけた後、再結晶を行った。目的物である白色粉末の収量は21g、収率は80%であった。
【0324】
≪ステップ3:4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)ジフェニルアミン(略称:PCBA)の合成≫
ステップ3における4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)ジフェニルアミン(略称:PCBA)の合成スキームを下記(E−3)に示す。
【0325】
【化50】

【0326】
4−ブロモジフェニルアミン6.5g(26mmol)、9−フェニル−9H−カルバゾール−3−ボロン酸7.5g(26mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン400mg(1.3mmol)を500mL三口フラスコへ入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物へトルエン100mL、エタノール50mL、炭酸カリウム水溶液(0.2mol/L)14mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気し、脱気後、酢酸パラジウム(II)67mg(30mmol)を加えた。
【0327】
この混合物を100℃10時間還流した。還流後、この混合物の水層をトルエンで抽出し、抽出溶液と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにより有機層の水分を取り除いた後、この混合物を自然濾過し、得られた濾液を濃縮したところ、淡褐色の油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒ヘキサン:トルエン=4:6)により精製し、精製後に得られた白色固体をジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶し、目的物である白色固体を得た。なお、収量は4.9g、収率は45%であった。
【0328】
≪ステップ4:4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)の合成≫
ステップ4における4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)の合成スキームを下記(E−4)に示す。
【0329】
【化51】

【0330】
4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)ジフェニルアミン2.0g(4.9mmol)、4−ブロモビフェニル1.1g(4.9mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド2.0g(20mmol)を100mL三口フラスコへ入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物へ、トルエン50mL、トリ(tert−ブチル)ホスフィン(10wt%ヘキサン溶液)0.30mLを加えた。
【0331】
この混合物を、減圧下で攪拌しながら脱気し、脱気後、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.10gを加えた。次に、この混合物を、80℃で5時間加熱撹拌し、反応させた。反応後、反応混合物にトルエンを加え、この懸濁液をセライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、アルミナ、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過し、濾液を得た。得られた濾液を飽和炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。乾燥後、この混合物を吸引濾過し、硫酸マグネシウムを除去して濾液を得た。
【0332】
得られた濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィーはまずトルエン:ヘキサン=1:9の混合溶媒を展開溶媒として用い、ついでトルエン:ヘキサン=3:7の混合溶媒を展開溶媒として用いることにより行った。得られたフラクションを濃縮して得た固体をクロロホルムとヘキサンの混合溶媒により再結晶したところ、白色粉末状固体の収量は2.3g、収率は84%であった。
【0333】
得られた白色固体1.2gの昇華精製をトレインサブリメーション法により行った。昇華精製は7.0Paの減圧下、アルゴンの流量を3mL/minとして280℃で20時間行った。収量は1.1g、収率は89%であった。
【0334】
上記ステップ4で得られた化合物を核磁気共鳴法(H NMR)により測定した。以下に測定データを示す。測定結果から、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)が得られたことがわかった。
【0335】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(DMSO−d,300MHz):δ(ppm)=7.05−7.20(m,7H)、7.28−7.78(m,21H)、8.34(d,J=7.8Hz,1H)、8.57(s,1H)。
【実施例3】
【0336】
本実施例では、下記構造式(109)に示される2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリン(略称:2mDBTBPDBQu−II)の合成方法について説明する。
【0337】
【化52】

【0338】
≪2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリン(略称:2mDBTBPDBQu−II)の合成≫
2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリン(略称:2mDBTBPDBQu−II)の合成スキームを(F−1)に示す。
【0339】
【化53】

【0340】
50mL三口フラスコに2−(3−ブロモフェニル)ジベンゾ〔f、h〕キノリン0.56g(1.5mmol)、3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニルボロン酸0.46g(1.5mmol)、トリ(オルトトリル)ホスフィン58mg(0.19mmol)、トルエン15mL、エタノール1.5mL、2Mの炭酸カリウム水溶液1.5mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌することで脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に、酢酸パラジウム(II)17mg(77μmol)を加え、窒素気流下、80℃で9時間攪拌した。所定時間経過後、この混合物に水とトルエンを加え、固体を吸引濾過により回収した。得られた固体のトルエン溶液をアルミナ、セライトを通して吸引ろ過し、得られたろ液を濃縮して黄色固体を得た。得られた固体のメタノール懸濁液に超音波を照射し、固体を吸引濾過により回収したところ、目的物の白色粉末を収量0.52g、収率63%で得た。
【0341】
得られた2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリンの白色粉末0.53gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力3.2Pa、アルゴン流量5.0mL/minの条件で、2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリンを280℃で15時間加熱して行った。昇華精製後2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリンの白色粉末を0.43g、回収率80%で得た。
【0342】
核磁気共鳴法(H NMR)によって、この化合物が目的物である2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリン(略称:2mDBTBPDBQu−II)であることを確認した。
【0343】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.43−7.51(m、2H)、7.60−7.85(m、12H)、8.13(d、J=8.7Hz、1H)、8.18−8.23(m、3H)、8.35(d、J=7.8Hz、1H)、8.59−8.71(m、4H)、8.94(d、J=8.7Hz、1H)、9.58(dd、J=1.5Hz、8.4Hz、1H)。
【0344】
また、H NMRチャートを図21に示す。なお、図21(B)は、図21(A)における7.0ppm〜10.0ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
【0345】
また、2mDBTBPDBQu−II(略称)のトルエン溶液の吸収スペクトルを図22(A)に、発光スペクトルを図22(B)にそれぞれ示す。また、2mDBTBPDBQu−II(略称)の薄膜の吸収スペクトルを図23(A)に、発光スペクトルを図23(B)にそれぞれ示す。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製して測定を行った。吸収スペクトルに関して、溶液については石英セルにトルエンのみを入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示し、薄膜については石英基板の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを示した。図22及び図23において横軸は波長(nm)、縦軸は強度(任意単位)を表す。トルエン溶液の場合では、281、319、及び358nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは、362、380、及び399nm(励起波長339nm)であった。また、薄膜の場合では253、321、及び364nm付近に吸収ピークが見られ、発光波長のピークは395nm(励起波長365nm)であった。
【実施例4】
【0346】
本実施例では、実施例2に示した発光素子と異なる、本発明の一態様の発光素子(発光素子4)、及び比較用の発光素子(比較発光素子5)について、図12を用いて説明する。本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0347】
【化54】

【0348】
【化55】

【0349】
以下に、本実施例の発光素子4、及び比較発光素子5の作製方法を示す。
【0350】
(発光素子4)
まず、基板1100上に、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ化合物(ITO−SiO、以下ITSOと略記する。)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、用いたターゲットの組成比は、In:SnO:SiO=85:10:5[重量%]とした。また、第1の電極1101の膜厚は、110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極1101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
【0351】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0352】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0353】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、1,3,5−トリ(ジベンゾチオフェン−4−イル)−ベンゼン(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデンを共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、40nmとし、DBT3P−II(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=DBT3P−II:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0354】
次に、正孔注入層1111上に、BPAFLP(略称)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0355】
さらに、実施例3にて合成した2−{3−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾ[f、h]キノリン(略称:2mDBTBPDBQu−II)と、4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)と、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])と、を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、2mDBTBPDBQu−II(略称)、PCBNBB(略称)、及び[Ir(tBuppm)(acac)](略称)の重量比は、0.8:0.2:0.05(=2mDBTBPDBQu−II:PCBNBB:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0356】
さらに、発光層1113上に2mDBTBPDBQu−II(略称)を膜厚10nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0357】
その後、第1の電子輸送層1114a上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0358】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0359】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子4を作製した。
【0360】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0361】
(比較発光素子5)
発光素子4における発光層1113に対応する比較発光素子5における発光層1113を、4−[3−(トリフェニレン−2−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp−II)と、4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)と、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])と、を共蒸着することで形成した。ここで、mDBTPTp−II(略称)、PCBNBB(略称)、及び[Ir(tBuppm)(acac)](略称)の重量比は、0.8:0.2:0.05(=mDBTPTp−II:PCBNBB:[Ir(tBuppm)(acac)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0362】
さらに、発光素子4における第1の電子輸送層1114aに対応する比較発光素子5における第1の電子輸送層1114aを、mDBTPTp−II(略称)を膜厚10nmとなるように成膜することで形成した。なお、比較発光素子5については、発光層1113、及び第1の電子輸送層1114a以外は、発光素子4と同様に作製した。
【0363】
以上により得られた発光素子4、及び比較発光素子5の素子構造を表3に示す。
【0364】
【表3】

【0365】
発光素子4、及び比較発光素子5を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周辺に塗布し、封止時に80℃にて1時間熱処理)を行った。その後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0366】
発光素子4、及び比較発光素子5の電流密度−輝度特性を図24に示す。図24において、横軸は電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子4、及び比較発光素子5の電圧−輝度特性を図25に示す。図25において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子4、及び比較発光素子5の輝度−電流効率特性を図26に示す。図26において、横軸は輝度(cd/m)、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。また、発光素子4、及び比較発光素子5の電圧−電流特性を図27に示す。図27において、横軸は電圧(V)を、縦軸は電流(mA)を表す。
【0367】
また、各発光素子における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表4に示す。
【0368】
【表4】

【0369】
表4に示す通り、輝度1009cd/mの発光素子4のCIE色度座標は、(x,y)=(0.42,0.57)であった。また、輝度836cd/mの比較発光素子5のCIE色度座標は、(x,y)=(0.41,0.58)であった。
【0370】
また、表4から、輝度1009cd/cmの発光素子4の電流効率は82cd/Aであり、輝度836cd/cmの比較発光素子5の電流効率は77cd/Aであった。また、輝度1009cd/cmの発光素子4の外部量子効率は23%であり、輝度836cd/cmの比較発光素子5の外部量子効率は22%であった。
【0371】
図25、図26、及び図27から、本発明の一形態である発光素子4と、比較発光素子5と、を比較した際に、電圧−輝度特性、輝度−電流効率特性、及び電圧−電流特性に差が生じた。発光素子4は、比較発光素子5よりも駆動電圧が低く、高い電流効率を有することがわかる。発光層のホスト材料に用いた化合物の構造の違いは、発光素子4は、ジベンゾ[f,h]キノリン骨格を有するが、比較発光素子5は、トリフェニレン骨格を有する点である。したがって、本発明の一態様の複素環化合物のように、ジベンゾ[f,h]キノリン骨格を有する化合物は、電圧−輝度特性、輝度−電流効率特性、及び電圧−電流特性に対して高い効果があることが確認された。
【0372】
また、表4から発光素子4は、比較発光素子5よりも電流効率、外部量子効率が高いことがわかる。したがって、本発明の一態様の複素環化合物のように、ジベンゾ[f,h]キノリン骨格を有する化合物は、高い電流効率、及び高い外部量子効率の実現に効果があることが確認された。
【0373】
次に、上記発光素子4、及び比較発光素子5について、信頼性試験の評価を行った。信頼性試験の結果を図28に示す。
【0374】
図28において、信頼性試験の測定方法は、初期輝度を5000cd/mに設定し、電流密度一定の条件で発光素子4、及び比較発光素子5を駆動した。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を表す。図28から、発光素子4の規格化輝度が70%以下まで劣化する駆動時間は約678時間となり、比較発光素子5の規格化輝度が70%以下まで劣化する駆動時間は約291時間となった。
【0375】
図28より、本発明の一態様の発光素子4は、比較発光素子5と比べ、長寿命な発光素子であることが確認された。
【0376】
以上の結果から、本発明の一態様の複素環化合物である2mDBTBPDBQu−II(略称)を発光層として用いた発光素子4は、高効率、低駆動電圧、低消費電力、及び長寿命な発光素子であることがわかった。
【符号の説明】
【0377】
100 基板
101 第1の電極
102 EL層
103 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
201 第1の電極
202 第2の電極
203 EL層
204 発光層
205 燐光性化合物
206 第1の有機化合物
207 第2の有機化合物
301 第1の電極
303 第2の電極
311 第1の発光ユニット
312 第2の発光ユニット
313 電荷発生層
401 ソース側駆動回路
402 画素部
403 ゲート側駆動回路
404 封止基板
405 シール材
407 空間
408 配線
410 素子基板
411 スイッチング用TFT
412 電流制御用TFT
413 第1の電極
414 絶縁物
416 発光層
417 第2の電極
418 発光素子
423 nチャネル型TFT
424 pチャネル型TFT
450B 発光素子
450G 発光素子
450R 発光素子
451 反射電極
452 半透過・半反射電極
453a 透明導電層
453b 透明導電層
454B 発光層
454G 発光層
454R 発光層
455 EL層
501 基板
502 第1の電極
503 第2の電極
504 EL層
505 絶縁層
506 隔壁層
611 筐体
612 支持台
613 表示部
614 スピーカー部
615 ビデオ入力端子
621 本体
622 筐体
623 表示部
624 キーボード
625 外部接続ポート
626 ポインティングデバイス
631 本体
632 筐体
633 表示部
634 音声入力部
635 音声出力部
636 操作キー
637 外部接続ポート
638 アンテナ
641 本体
642 表示部
643 筐体
644 外部接続ポート
645 リモコン受信部
646 受像部
647 バッテリー
648 音声入力部
649 操作キー
650 接眼部
701 筐体
702 液晶層
703 バックライト
704 筐体
705 ドライバIC
706 端子
801 筐体
802 光源
901 照明装置
902 テレビ装置
1100 基板
1101 第1の電極
1103 第2の電極
1111 正孔注入層
1112 正孔輸送層
1113 発光層
1114a 第1の電子輸送層
1114b 第2の電子輸送層
1115 電子注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G0)で表される構造を有する複素環化合物。
【化1】

(式中、Aは、置換または無置換のカルバゾリル基、置換または無置換のジベンゾチオフェニル基、置換または無置換のジベンゾフラニル基、のいずれかを表し、Eは、置換または無置換のジベンゾ[f,h]キノリン環を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、前記置換基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
一般式(G1)で表される構造を有する複素環化合物。
【化2】

(式中、Aは、置換または無置換のカルバゾリル基、置換または無置換のジベンゾチオフェニル基、置換または無置換のジベンゾフラニル基、のいずれかを表し、R11〜R20は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基のいずれかを表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、前記置換基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項3】
一般式(G2−1)で表される構造を有する複素環化合物。
【化3】

(式中、Zは、酸素または硫黄を表し、R11〜R20、及びR21〜R27は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、前記置換基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項4】
一般式(G2−2)で表される構造を有する複素環化合物。
【化4】

(式中、R11〜R20、及びR31〜R38は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表し、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、前記置換基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項5】
請求項3に記載の前記Arまたは請求項4に記載の前記Arが、置換または無置換のフェニレン基、置換または無置換のビフェニルジイル基のいずれかである複素環化合物。
【請求項6】
請求項3に記載の前記Arまたは請求項4に記載の前記Arが、置換または無置換のフェニレン基である複素環化合物。
【請求項7】
請求項3に記載の前記Arまたは請求項4に記載の前記Arが、置換または無置換のm−フェニレン基である複素環化合物。
【請求項8】
一般式(G3−1)で表される構造を有する複素環化合物。
【化5】

(式中、Zは、酸素または硫黄を表し、R11〜R20、R21〜R27、及びR41〜R44は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表す。)
【請求項9】
一般式(G3−2)で表される構造を有する複素環化合物。
【化6】

(式中、R11〜R20、R31〜R38、及びR41〜R44は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数6〜13の置換または無置換のアリール基を表す。)
【請求項10】
一対の電極間に、
請求項1乃至請求項9のいずれか一に記載の複素環化合物を有する発光素子。
【請求項11】
一対の電極間に発光層を有し、
前記発光層は請求項1乃至請求項9のいずれか一に記載の複素環化合物を有する発光素子。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の発光素子を有する発光装置。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載の発光素子を有する電子機器。
【請求項14】
請求項10または請求項11に記載の発光素子を有する照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−35825(P2013−35825A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151310(P2012−151310)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】