説明

複素環式プロテインキナーゼインヒビターおよびその使用

本明細書中において、プロテインキナーゼインヒビターとして有用である式Iの化合物


またはその薬学的に受容可能な塩が、説明される。ここで、環B、Z、Z、U、p、Q、R、R、R、およびRは、本明細書中において定義される。これらの化合物およびそれらの薬学的に受容可能な組成物は、種々の障害を処置するかまたはそれらの障害の重篤度を軽減するために有用である。これらの障害としては、発作、炎症性障害、全身性エリテマトーデスもしくは乾癬のような自己免疫疾患、癌のような増殖性障害、および臓器移植に関連した状態が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2003年12月2日に出願された米国仮出願番号60/526,309の優先権を主張し、この全内容は、本明細書中において参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医薬品化学の分野であり、そしてプロテインキナーゼインヒビターであるピリミジン化合物、そのような化合物を含有する組成物、および使用方法に関する。本化合物は、癌の処置、神経学的障害、自己免疫障害、およびプロテインキナーゼインヒビターによって軽減される他の疾患に対して有用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
標的の疾患に関連する、酵素および他の生体分子の構造についてより理解されることによって、近年、新規の治療因子についての探索が大いに支援されている。広範な研究の対象であった酵素のうちで一つの重要なクラスは、プロテインキナーゼである。
【0004】
プロテインキナーゼは、細胞内の種々のシグナル伝達プロセスの制御を担う、構造的に関連した酵素の大きなファミリーを構成する。プロテインキナーゼは、それらの構造および触媒機能が保存されているために、共通の先祖遺伝子から進化したものと考えられている。殆ど全てのキナーゼは、類似性のある250〜300個のアミノ酸の触媒ドメインを含む。これらのキナーゼは、それらがリン酸化する基質(例えば、プロテイン−チロシン、プロテイン−セリン/スレオニン、脂質など)によってファミリーに分類され得る。これら各々のキナーゼファミリーに概ね対応する、配列モチーフが同定されている。
【0005】
一般に、プロテインキナーゼは、ヌクレオシド三リン酸から、シグナル伝達経路に関与するタンパク質受容体へのホスホリル転移をもたらすことによって、細胞内シグナル伝達を媒介する。これらのリン酸化事象は、標的のタンパク質の生物学的機能を、調節または制御し得る、分子的なオン/オフスイッチとして作用する。これらのリン酸化事象は、最終的に、種々の細胞外の刺激および他の刺激に応答して誘発される。そのような刺激の例としては、環境ストレスシグナルおよび化学ストレスシグナル(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線照射、細菌性内毒素、およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子α(TNF−α))、および増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージ−コロニー−刺激因子(GM−CSF)、および線維芽細胞増殖因子(FGF))が挙げられる。細胞外刺激は、細胞増殖、移動、分化、ホルモンの分泌、転写因子の活性化、筋収縮、解糖、タンパク質合成の制御、および細胞周期の制御に関連した一つ以上の細胞応答に作用し得る。
【0006】
多くの疾患が、プロテインキナーゼ媒介性の事象によって誘発される、異常な細胞応答と関連する。これらの疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝疾患、神経学的疾患および自律神経疾患、癌、心臓血管疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病ならびにホルモン関連疾患が挙げられる。したがって、治療因子として有効性のある、プロテインキナーゼのインヒビターを見つけるために、医薬品化学において、相当な努力がなされている。しかしながら、プロテインキナーゼに関連する多数の状態に対して、現在利用可能な選択肢がないことを考慮すると、タンパク質のこれらの標的を阻害する新規の治療因子に関して、依然として多いに必要性が存在する。
【0007】
哺乳類細胞は、マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼファミリーのメンバーによって媒介された、シグナル伝達カスケードを活性化することによって、細胞外刺激に応答し、これらのMAPキナーゼファミリーのメンバーとしては、細胞外シグナル調節化キナーゼ(ERK)、p38 MAPキナーゼおよびc−Jun N−末端キナーゼ(JNK)が挙げられる。MAPキナーゼ(MAPK)は、増殖因子、サイトカイン、紫外線照射、およびストレス誘発因子を包含する種々のシグナルによって活性化される。MAPKは、セリン/スレオニンキナーゼであり、そしてそれらの活性化は、活性化ループ中のThr−X−Thyセグメントにおける、セリンおよびスレオニンの2重のリン酸化によって生じる。MAPKは、特定の遺伝子群の発現を順番に調節する転写因子を包含する、種々の基質をリン酸化する。このようにしてMAPKは、これらの刺激に対する特定の応答を媒介する。
【0008】
ERK2は、Thr183とThy185との両方が、上流のMAPキナーゼキナーゼであるMEK1によってリン酸化される場合に、最大の活性を得る、広範に分布するプロテインキナーゼである。活性化状態で、ERK2は、多くの調節タンパク質をリン酸化する。これらの調節タンパク質としては、プロテインキナーゼRsk90およびプロテインキナーゼMAPKAP2ならびに転写因子(例えば、ATF2、Elk−1、c−Fos、およびc−Myc)が挙げられる。ERK2はまた、Ras/Raf依存性経路の下流標的であり、これらの潜在的な癌タンパク質からのシグナルを伝える。ERK2が、胸部癌細胞の負の増殖制御について、役割を担うと示され、そして、ヒト胸部癌におけるERK2の過剰発現が、報告されている。活性化されたERK2はまた、エンドセリンで刺激された気道の平滑筋細胞の増殖に関連しているので、このことは喘息におけるこのキナーゼに対する役割を示唆する。
【0009】
レセプタチロシンキナーゼ(例えば、EGFRおよびErbB2)の過剰発現、ならびにRas GTPaseタンパク質またはB−Raf変異体における変異の活性化は、ヒトの癌における、主要な誘因である。これら遺伝子改変は、臨床的な予後が悪いこと相関があり、これら遺伝子改変によって、ヒトの腫瘍の広範なパネルにおける、Raf−1/2/3−MEK1/2−ERK1/2シグナル伝達カスケードの活性化を生じる。活性化されたERK(すなわち、ERK1 および/または ERK2)は、増殖の制御、分化の制御、足場非依存性の細胞生存の制御、および脈管形成の制御と関係付けられる、中心的なシグナル伝達分子であり、悪性腫瘍の形成および増殖について重要な多くのプロセスに寄与する。ERK1/2インヒビターが、プロアポトーシス効果(proapoptotic effect)、増殖抑制効果、転移抑制効果、および脈管形成抑制効果を包含する、多面的発現活性を働かせるので、このインヒビターが、ヒトの腫瘍の非常に広範なパネルに対する、治療法上の機会を提供することを、これらのデータは示す。
【0010】
選択された癌の腫瘍形成挙動における、ERK MAPK経路の構成性の活性化を示す、増加している大量の証拠が存在する。Rasの活性型変異は、全て癌のうち約30%において示され、膵臓癌(90%)および結腸癌(50%)のようないくつかは、特に高い突然変異率(ref)を与える。Ras変異はまた、9〜15%の黒色腫において同定されるが、構成性の活性化を与える体細胞のB−Rafミスセンス変異は、より頻繁に存在し、60〜66%の悪性黒色腫において見出される。Rasの活性型変異、Rafの活性型変異およびMEKの活性型変異は、インビトロにおいて線維芽細胞を、腫瘍発生性に形質転換し得、そして、腫瘍抑制遺伝子(例えば、p16INK4A)の欠失を伴うと、Ras変異またはRaf変異は、インビボにおいて、自発的な腫瘍の成長を引き起こし得る。ERK活性が増加することは、これらのモデルにおいて明らかにされており、しかも、このERK活性はまた、適切なヒトの腫瘍において広範に報告されている。黒色腫において、B−Raf変異またはN−Ras変異、あるいはオートクライン増殖因子の活性化のいずれかから生じる、高基底ERK活性が、十分に実証されている。それゆえ、この高基底ERK活性は、急速な腫瘍増殖、細胞生存の増加およびアポトーシスに対する耐性と関係付けられる。さらに、ERK活性は、黒色腫の転移挙動の原因となる、主要な推進力と考えられる。この転移挙動は、細胞外マトリックスを分解するプロテアーゼと、浸潤促進性のインテグリンとの両方の、発現の増加と同様に、メラノサイト増殖を制御するケラチノサイトの相互作用を通常媒介する、接着分子であるE−カドヘリンのダウンレギュレーションと、大いに関係付けられる。これらのデータ全体によって、ERKが、現在処置し得ない疾患である黒色腫の処置のための、有望な治療標的として、示される。
【0011】
グリコゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)は、別個の遺伝子によって各々がコードされる、αアイソフォームおよびβアイソフォームから構成される、セリン/スレオニンプロテインキナーゼである。GSK−3は、種々の疾患に関連しており、この疾患としては、糖尿病、アルツハイマー病、CNS障害(例えば、躁うつ性障害および神経変性疾患)、および心筋細胞肥大が挙げられる。これらの疾患は、GSK−3が役割を担っている、細胞の特定のシグナル伝達系に関する、異常な働きと関係付けられる。
【0012】
GSK−3は、多数の調節タンパク質を、リン酸化し、そしてこれら多数の活性を調節するということが、見出されている。これらとしては、グリコゲン合成のために必要な律速酵素であるグリコゲンシンターゼ、微小管結合タンパク質タウ(Tau;τ)、遺伝子転写因子β−カテニン、翻訳開始因子e1F−2Bならびに、ATPシトレート リアーゼ、アキシン(axin)、熱ショック因子−1、c−Jun、c−myc、c−myb、CREB、およびCEPBαが挙げられる。これらの多様な標的によって、GSK−3は、細胞の代謝、細胞の増殖、細胞の分化、および発生に関する多くの局面に関与している。
【0013】
II型糖尿病の処置に直接関連性のある、GSK−3によって媒介される経路において、インスリンによって誘発されるシグナル伝達が、細胞のグルコース摂取およびグリコゲン合成を導く。GSK−3は、この経路における、インスリンによって誘発されるシグナル伝達についての、負の調節因子である。通常、このインスリンの存在が、GSK−3媒介性のリン酸化の阻害、およびグリコゲンシンターゼの不活性化の阻害を引き起こす。このGSK−3の阻害が、グリコゲン合成およびグルコース摂取の増加を導く。しかしながら、このインスリン応答が、糖尿病の患者において、損なわれる場合、比較的高いインスリンの血中濃度の存在にもかかわらず、グリコゲン合成およびグルコース摂取は、増加しない。このことは、心臓血管疾患、腎不全および失明を最終的に結果として生じ得る、急性効果および慢性効果がある、異常に高いグルコースの血中濃度を引き起こす。そのような患者において、インスリンによって誘発される、通常のGSK−3の阻害は、生じない。GSK−3が、II型糖尿病を有する患者において過剰発現されることもまた、報告されている。したがって、治療力があるGSK−3のインヒビターは、インスリンに対する応答障害を患っている、糖尿病患者を処置するために有用である。
【0014】
アポトーシスは、虚血性脳損傷に関する、病態生理に関連している。最近の出版物は、GSK−3βの活性化が、アポトーシス機構に関係し得るということを示している。中大脳動脈閉塞(MCAO)によって誘発される、虚血性発作についてのラットモデルの研究は、GSK−3β発現の増加が、虚血の後で存在するということを示した。線維芽細胞増殖因子(FGF)は、ラットにおける永続的な中大脳動脈閉塞(MCO)の後、虚血性脳損傷を減少させた。実際、ラットにおける虚血モデルにおいて証明された、このFGFの神経保護効果は、PI−3キナーゼ/AKT−依存性のGSK−3βの不活化によって媒介され得る。このように、脳虚血性事象後にGSK−3βを阻害することが、虚血性脳損傷を回復させ得る。
【0015】
GSK−3はまた、心筋梗塞、頭部損傷、および精神医学的疾患に関連する。リチウムおよびバルプロ酸によるGSK3の阻害は、軸索損傷後の軸索再生(axonal remodeling)およびシナプス結合の変化を誘発させるということが、示されている。
【0016】
GSK−3の活性はまた、アルツハイマー病と関係する。この疾患は、周知のβ−アミロイドペプチドの存在および細胞内の神経原線維変化の形成の存在によって、特徴づけられる。この神経原線維変化は、タウが、異常な部位でリン酸化される、過剰にリン酸化されたタウタンパク質を含有する。GSK−3は、細胞モデルおよび動物モデルにおいて、タウの異常な部位をリン酸化するということが、示されている。さらに、GSK−3の阻害は、細胞中のタウの過剰なリン酸化を防ぐということが、示されている。GSK3を過剰発現しているトランスジェニックマウスにおいて、タウの過剰なリン酸化および異常なニューロン形態のかなりの増加が、観察された。活性型GSK3が、神経原線維変化を形成する前のニューロン(pretangled neuron)の細胞質中に蓄積し、そしてこのことが、アルツハイマー病である患者の脳において、神経原線維変化を引き起こし得る。したがって、GSK−3の阻害が、この神経原線維変化の生成を、遅れさせたり、停止させたりし、このようにして、この阻害は、アルツハイマー病を処置し、またはこの病の重篤度を軽減する。
【0017】
GSK−3が、アルツハイマー病において担っている役割に関する証拠は、インビトロおよびインビボにおいて示されている。プレセニリン−1およびキネシン−1もまた、GSK−3の基質であり、しかも、これらは、GSK−3が、アルツハイマー病において担っている役割に関する別の機構と関連する。GSK3βは、キンセシン−I(kinsesin−I)軽鎖をリン酸化し、そしてこのことが、膜結合性の細胞小器官から、キネシン−1を放出し、速い順行性軸索輸送の低下を引き起こすということが、見出された。プレセニリン−1におけるこの変異が、GSK−3の活性の脱調節(deregulate)、および増大をなし得、それでこのことが結果として、ニューロンにおける軸索輸送を低下させることを、著者らは示唆する。影響を受けたニューロンおいて、結果として起こるこの軸索輸送の低下は最終的に、神経変性を引き起こす。
【0018】
GSK−3はまた、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と関係する。GSK−3の活性はまた、脊髄損傷および末梢神経損傷と関係がある。リチウムおよびバルプロ酸によるGSK3の阻害は、軸索損傷後の軸索再生(axonal remodeling)、ならびにシナプス結合の変化を誘発し得るということが、示されている。
【0019】
GSK−3の別の基質は、β−カテニンであり、これはGSK−3によるリン酸化後、分解される。β−カテニンの減少レベルは、統合失調症患者において報告されており、また神経細胞死の増加に関係した他の疾患と関連している。さらに、β−カテニンおよびTcf−4は、血管平滑筋細胞のアポトーシスを阻害することおよび増殖を促進することにより血管のリモデリングにおいて二つの役割を担う。したがって、GSK−3は、脈管形成障害と関連づけられる。
【0020】
GSK−3とハンティングトン病の間の関連は示されている。インビトロのHDモデルにおいて、ポリ(Q)凝集体と細胞死の両方を減少させることが示される、熱ショック転写因子−1および熱ショックタンパクHSP70の活性化を、GSK3の過剰発現は減少させた。
【0021】
GSK−3は、FGF−2のレベルに影響を与え、そしてこれらのレセプターは、ラット脳を再ミエリン化する脳細胞集塊培養物(brain aggregate culture)の再ミエリン化の間に増加される。またFGF−2は、再ミエリン化においてFGFの関与を意味する、希突起膠細胞による突起の生長を誘導することが見いだされ、そしてFGF−2遺伝子治療は、実験的なアレルギー性脳脊髄炎(EAE)マウスの再生を改善することを示したことが見いだされた。
【0022】
Wnt/β−カテニンシグナル伝達は、毛包の形態形成および分化において主要な役割を担うことが示されるので、GSK−3はまた、毛の成長と関連づけられている。皮膚において、Wntシグナル伝達のインヒビターの本質的な過剰発現を有するマウスは、毛包が発達しないことが見いだされた。Wntシグナルは、毛包の初期の発達に必要とされ、そしてGSK3は、β−カテニンを阻害することにより、本質的にWnt経路を調節する。一過性のWntシグナルは、上皮の毛包前駆体において、β−カテニンおよびTCF調節遺伝子の転写を活性化することにより、新たな毛の成長周期の開始のために重要な初期の刺激を提供する。
【0023】
GSK−3の活性は、精子の運動性と関連づけられるので、GSK−3の阻害は男性の避妊薬として有用である。精子のGSK3活性における低下は、ウシおよびサルの精巣上体における精子の運動性の発達と関連づけられることが示された。さらに、GSK3のチロシンおよびセリン/スレオニンのリン酸化は、雄牛において運動能力のない精子に比べて運動能力のある精子のほうが高い。この効果はまた、ヒトの精子を用いて証明された。
【0024】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、β−シートが豊富なアミノ末端ローブおよび大部分がα−ヘリカルである大きなカルボキシル末端のローブからなるセリン/スレオニンプロテインキナーゼである。このCDKは、すべてのプロテインキナーゼにより共有される11のサブドメインを示し、そして33〜44kDの分子量におよぶ。CDK1、CKD2、CDK4およびCDK6を含むこのキナーゼのファミリーは、完全に活性であるために、CDK2 Thr160に対応する残基でのリン酸化を必要とする。
【0025】
各CDK複合体は、調節サイクリンサブユニット(例えば、サイクリンA、サイクリンB1、サイクリンB2、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3およびサイクリンE)および触媒キナーゼサブユニット(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5およびCDK6)から形成される。各異なるキナーゼ/サイクリン対は、G1期、S期、G2期およびM期として知られる細胞周期の異なる特定の時期を調節するのに作用する。
【0026】
このCDKは、細胞増殖障害、特に癌において関与している。細胞増殖は、細胞分裂周期の直接的または間接的な機能低下の結果であり、そしてこのCDKは、この周期のさまざまな時期の調節において重要な役割を果たす。例えば、サイクリンD1の過剰発現は、一般に乳房、結腸、肝細胞癌および神経膠種を含む多くのヒトの癌と関連づけられる。このCDK2/サイクリンE複合体は細胞周期の初期のG1期からS期の進行において鍵となる役割を担い、サイクリンEの過剰発現は、さまざまな固形癌と関連づけられている。そのため、サイクリンD1、Eまたはこれらと関連したCDKのインヒビターは、癌治療のための有用な標的である。
【0027】
CDK、特にCDK2はまた、アポトーシスおよびT細胞の発達において役割を担う。CDK2は、胸腺細胞のアポトーシスの鍵となる調節因子として同定されている。CDK2キナーゼ活性の刺激は、胸腺細胞において、特定の刺激に応じるアポトーシスの進行と関連づけられる。CDK2キナーゼの活性の阻害は、このアポトーシスを遮断し、胸腺細胞の防御となる。
【0028】
細胞周期およびアポトーシスを調節することに加えて、このCDKは、転写の過程に直接的に関係する。非常に多くのウイルスがこれらの複製過程のためにCDKを必要とする。CDKインヒビターがウイルスの複製を抑制する例には、ヒトサイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスおよび水痘−帯状疱疹ウイルスが挙げられる。
【0029】
CDKの阻害はまた、アルツハイマー病のような神経変性障害の処置に有用である。アルツハイマー病に関連する対らせんフィラメント(Paired Helical Filament(PHF))の発生は、CDK5/p25によるタウタンパクの高リン酸化により引き起こされる。
【0030】
PIM−1は、マウスの白血病ウイルスにより活性化される癌原遺伝子である(モロニーマウス白血病ウイルスのプロウイルス組み込み部位 Provirus Integration site for Moloney murine leukemia virus)。この癌原遺伝子の発現は、253アミノ酸残基からなるキナーゼドメインを含む、313残基の非膜貫通型セリン/スレオニンキナーゼを産生する。2つのアイソフォーム(p44およびp33)が選択的転写開始を通じて知られている。2つのPIM−1相同体が表されてきた。PIM−2およびPIM−3は、アミノ酸レベルでPim−1とそれぞれ58%および69%の同一性である。PIM−1は、造血中、肝臓および脾臓に高発現し、そして発現はGM−CSF、G−SCF、IL−3、IF−αおよびIL−6のようなサイトカインにより誘導される。
【0031】
別の関心のあるキナーゼファミリーは、Ras関係性の低分子量GTPアーゼRhoの効果器であると考えられる、Rho関連性のコイルドコイル形成タンパクセリン/スレオニンキナーゼ(ROCK)である。このROCKファミリーは、p160ROCK(ROCK−1)およびROKα/Rho−キナーゼ/ROCK−II、プロテインキナーゼPKNならびにシトロンおよびシトロンキナーゼが挙げられる。このROCKキナーゼファミリーは、Rho誘導性のアクチン張線維および病巣の癒着の形成ならびにミオシンホスファターゼのダウンレギュレーションのため、様々な刺激による大動脈平滑筋の収縮、大動脈平滑筋細胞のトロンビン誘導性反応、心筋細胞の肥大、気管支平滑筋の収縮、平滑筋の収縮、ならびに非筋細胞の細胞骨格の再構築、容量調節性の陰イオンチャネルの活性化、神経突起の退縮、好中球の走化性、創傷治癒、腫瘍の浸潤および細胞の形質転換を含むさまざまな機能に関係することが示されてきた。それゆえ、ROCKキナーゼのインヒビターの開発は、ROCKキナーゼ経路により媒介される障害の治療のための治療物質として有用である。
【0032】
このヤーヌス(Janus)キナーゼ(JAK)は、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2からなるチロシンキナーゼファミリーである。このJAKは、サイトカインのシグナル伝達において重要な役割を担う。JAKキナーゼファミリーの下流の基質は、シグナルトランスデューサーおよび転写活性化(signal transducer and activator of transcription)(STAT)タンパクを含む。JAK/STATシグナル伝達は、アレルギー、喘息、移植の拒絶反応のような自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症および白血病やリンパ腫のような固形および血液性の悪性疾患のような多くの異常な免疫応答の媒介において関与している。このJAK/STAT経路における薬学的介入は、概説されている。
【0033】
JAK1、JAK2およびTYK2は、遍在的に発現される一方で、JAK3は主に造血細胞で発現される。JAK3は、もっぱら共通のサイトカインレセプターのγ鎖(γ)に結合し、そしてIL−2、IL−4、IL−7、IL−9およびIL−15により活性化される。IL−4およびIL−9により誘導されるマウス肥満細胞の増殖および生存は、実際に、JAK−3シグナル伝達およびγ−シグナル伝達に依存することが示されている。
【0034】
感作した肥満細胞の高親和性イムノグロブリン(Ig)Eレセプターのクロスリンクは、多くの血管作用性サイトカインを含む炎症誘発性メディエーターの放出を導き、急性アレルギーまたは即時型(I型)過敏反応を生じる。インビトロおよびインビボでのIgEレセプター媒介性の肥満細胞の応答において、JAK3の重要な役割が確立されてきた。加えて、JAK3の阻害による、アナフィラキシーを含む肥満細胞の活性化により媒介されるI型過敏反応の防御もまた報告されてきた。JAK3インヒビターを用いて肥満細胞を標的とすることは、インビトロでの肥満細胞の脱顆粒を調節し、インビボでのIgEレセプター/抗体媒介性のアナフィラキシー反応を防いだ。
【0035】
ある近年の研究は、免疫抑制および同種移植片の受容のための成功したJAK3の標的化を記載した。この研究は、ウィスターファース(Wistar Furth)レシピエントにおける、バッファローの心臓の同種移植片の、JAK3のインヒビターの投与の際の用量依存的な生存を証明し、これは対宿主性移植片病において好ましくない免疫応答を調節する可能性を示している。
【0036】
IL−4媒介性のSTATのリン酸化は、慢性関節リウマチ(RA)の初期および後期に含まれるメカニズムとして関連づけられてきた。RA滑膜および滑液における炎症誘導性のサイトカインのアップレギュレーションは、この疾患の特徴である。IL−4媒介性のIL−4/STAT経路の活性化は、ヤーヌスキナーゼ(JAK1およびJAK3)により媒介され、そしてIL−4関連性のJAKキナーゼは、RA滑膜で発現されることが証明された。
【0037】
家族性の筋萎縮性側索硬化症(FALS)は、ALS患者の約10%が冒されている致命的な神経変性障害である。このFALSマウスの生存率は、JAK3特異的インヒビターでの処置において増加した。このことは、JAK3がFALSにおいて役割を担うことを裏づけた。
【0038】
転写のシグナルトランスデューサーおよびアクチベーター(STAT)タンパクは、とりわけJAKファミリーキナーゼにより活性化される。近年の研究の結果は、白血病の処置のための、特異的インヒビターでJAKファミリーキナーゼを標的とすることによるJAK/STATシグナル伝達経路への介入の可能性を示唆した。JAK3特異的化合物は、JAK3発現細胞株DAUDI、RAMOS、LC1;19、NALM−6、MOLT−3およびHL−60のクローン原性の成長を阻害することが示された。
【0039】
動物モデルにおいて、TEL/JAK2融合タンパクは、骨髄増殖性の障害を誘導し、そして造血細胞株においてTEL/JAK2の導入は、STAT1、STAT3、STAT5の活性化およびサイトカイン依存性の成長を生じた。
【0040】
JAK3およびTYK2の阻害は、STAT3のチロシンリン酸化を排除し、そして菌状息肉腫の細胞増殖、つまり皮膚のT細胞リンパ腫の一形態を阻害した。これらの結果は、JAKファミリーキナーゼを、菌状息肉腫に存在する本質的に活性化したJAK/STAT経路に関係づけた。同様に、STAT3、STAT5、JAK1およびJAK2は、LCKの過剰発現により初めに特徴づけられたマウスのT細胞リンパ腫において、本質的に活性化されることが証明され、従ってさらに異常な細胞増殖におけるJAK/STAT経路を意味している。加えて、IL−6媒介性のSTAT3の活性化は、JAKのインヒビターにより遮断され、骨髄腫細胞のアポトーシスへの感作を導いた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
プロテインキナーゼの生物学的重要性の結果として、治療上効果的なプロテインキナーゼインヒビターに現在の関心がある。それゆえ、プロテインキナーゼの活性化と関連するさまざまな疾患または状態の処置において有用である、プロテインキナーゼインヒビターを開発する大きな必要性がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0042】
(発明の要旨)
現在、本発明の化合物およびそれらの組成物は、プロテインキナーゼのインヒビターとして効果的であると、見出されている。特定の実施形態において、本発明の化合物は、ERK2のインヒビター、GSK3のインヒビター、ROCKのインヒビター、JAK3のインヒビター、および/またはCDKのインヒビターである。これらの化合物は、一般式I
【0043】
【化5】

または、その薬学的に受容可能な塩を有し、ここで環B、Z、Z、U、p、Q、R、R、RおよびRは、以下のように定義される。
【0044】
これらの化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、種々の障害を処置するため、またはこの障害の重篤度を軽減するために有用であり、そしてこの種々の障害としては、発作、アルツハイマー病、免疫欠乏障害、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患、炎症性障害、癌のような増殖性障害および臓器移植に関連した状態が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(発明の説明)
(1.本発明の化合物の一般的な説明)
本発明は、式Iの化合物:
【0046】
【化6】

またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。ここで:
環Bが、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和の3〜7員環であり;
が、窒素またはCRであり;
が、R、ハロゲン、CN、NO、OR,SR、N(R)、C(O)R、もしくはCORから選択され、または:
とU−Rが、一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有する、飽和したか、部分的に不飽和であるか、または完全に不飽和の、必要に応じて置換された5〜7員環を形成し;
が、窒素またはC−T(m)であり;
TおよびQが各々に、飽和したか、または不飽和のC1−6アルキリデン鎖から独立して選択され、ここで:
前記鎖のうちの2個までのメチレン単位が、−C(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)NRNR−、−CO−、−OC(O)−、−NRCO−、−O−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRNR−、−NRC(O)−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−SONR−、または−NRSO−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
mが、0または1であり;
Rの各々が、水素もしくは必要に応じて置換されたC1−6脂肪族基から独立して選択され、または:
同じ窒素上にある2個のRが、前記窒素と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環またはヘテロアリール環を形成し;
が、CN、ハロゲン、N(R)、OR、R、またはArから選択され;
Arの各々は、必要に応じて置換された環であり、前記必要に応じて置換された環が、6〜10員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜10員のヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する3〜10員のヘテロシクリル環から選択され;
が、CN、R、Ar、−(CHCH(R)R、または−(CHCH(R)CH(Rから選択され;
yの各々が、独立して0〜6であり;
Uは、原子価結合、−O−、−S−、−N(R)−、またはC1−6アルキリデン鎖から選択され、ここでUのうち2個までのメチレン単位が、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(R)SO−、−SON(R)−、−N(R)−、−CO−、−CO−、−N(R)CO−、−N(R)C(O)O−、−N(R)CON(R)−、−N(R)SON(R)、−N(R)N(R)−、−C(O)N(R)−、または−OC(O)N(R)−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
が、(CHCH(Rまたは(CHCH(R)CH(Rから選択され;
yが、0〜6であり;
が、オキソ、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され;
pが、0〜4であり;
が、R、(CHOR、(CHN(R)、または(CHSRから選択され;
wが、0〜4であり;そして、
の各々が、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、Ar、(CHOR、COR、(CHN(R)、N(Ar)(R)、(CHSR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、またはSON(R)から独立して選択される。
【0047】
(2.化合物および定義)
本明細書において用いられる場合、以下の定義は、そうでないと示されない限り、適用される。「必要に応じて置換された」の句は、「置換されたまたは置換されていない」の句と、互いに交換可能に用いられる。そうでないと示されない限り、必要に応じて置換された基は、基の置換可能な各位置で、置換基を有し得、そしてそれぞれの置換は、他の置換と無関係である。
【0048】
本明細書において用いられる場合、「脂肪族」または「脂肪族基」との用語は、完全に飽和したか、もしくは一つ以上の不飽和単位を含む、直鎖もしくは分枝のC〜C12炭化水素鎖、または完全に飽和したか、もしくは一つ以上の不飽和の単位を含むが、芳香族ではなく(本明細書において「炭素環」もしくは「シクロアルキル」とも称する)、その分子の残りに対する1つの結合点を有する、単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素を意味する。ここで、前記二環式の環系における、いかなる個々の環も、3〜7員を有する。例えば、適切な脂肪族基としては、直鎖または分枝のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびそれらのハイブリッド(hybrid)(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「アルキル」、「アルコキシ」、「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」および「アルコキシカルボニル」との用語は、単独で、またはより大きな部分の一部として用いられ、1〜12個の炭素原子を含む、直鎖と分枝鎖の両方を包含する。「アルケニル」および「アルキニル」との用語は、単独で、またはより大きな部分の一部として用いられ、2〜12個の炭素原子を含む、直鎖と分枝鎖の両方を包含する。
【0050】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」との用語は、個々の場合に応じて、一つ以上のハロゲン原子で置換した、アルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。前記の「ハロゲン」との用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0051】
「ヘテロ原子」との用語は、窒素、酸素、または硫黄を意味し、そして窒素および硫黄の任意の酸化体、ならびに任意の塩基性窒素の第4級形を含む。また、「窒素」との用語は、複素環に属する置換可能な窒素を含む。例えば、酸素、硫黄、または窒素から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和したか、または部分的に不飽和の環において、前記の窒素は、N(例えば、3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル中など)、NH(例えば、ピロリジニル中など)、またはNR(例えば、N−置換ピロリジニル中など)であり得る。
【0052】
「アリール」との用語は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるような、より大きな部分の一部分として用いられ、全部で5〜14環員を有する、単環式の環系、二環式の環系、および三環式の環系をいう。ここで、この系における少なくとも一つの環が、芳香族であり、そしてこの系における環の各々が、3〜7環員を含む。「アリール」との用語は、「アリール環」の用語と互いに交換可能に用いられ得る。
【0053】
本明細書において用いられる場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環式」との用語は、一つ以上の環員が、ヘテロ原子である、5〜14環員を有する、非芳香族の、単環式の環系、二環式の環系、または三環式の環系を意味する。ここで、この系における環の各々は、3〜7環員を含む。
【0054】
「ヘテロアリール」との用語は、単独で、または「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」におけるより大きな部分の一部分として用いられ、合計で5〜14環員を有する、単環式の環系、二環式の環系および三環式の環系をいう。ここでこの系における少なくとも一つの環が、芳香族であり、この系における少なくとも一つの環が、一つ以上のヘテロ原子を含み、そしてこの系における、各々の環が、3〜7環員を含む。「ヘテロアリール」との用語は、「ヘテロアリール環」または「ヘテロ芳香族」との用語と互いに交換可能に用いられ得る。
【0055】
アリール基(例えば、アラルキル基、アラルコキシ基、アリールオキシアルキル基などが挙げられる)またはヘテロアリール基(例えば、ヘテロアラルキル基およびヘテロアリールアルコキシ基などが挙げられる)は、一つ以上の置換基を含み得る。アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、またはヘテロアラルキル基の不飽和炭素原子における適切な置換基は、ハロゲン、−R、−OR、−SR、1,2−メチレン−ジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、保護されたOH(例えば、アシルオキシなど)、フェニル(Ph)、Rで置換されたPh、−O(Ph)、Rで置換されたO−(Ph)、−CH(Ph)、Rで置換された−CH(Ph)、−CHCH(Ph)、Rで置換された−CHCH(Ph)、−NO、−CN、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−NRNRC(O)R、−NRNRC(O)N(R、−NRNRCO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−CO、−C(O)R、−C(O)N(R、−OC(O)N(R、−S(O)、−SON(R、−S(O)R、−NRSON(R、−NRSO、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または、−(CHNHC(O)Rから選択される。ここでRの各々が、水素、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、非置換5〜6員のヘテロアリール環、非置換5〜6員の複素環、フェニル(Ph)、−O(Ph)、または−CH(Ph)−CH(Ph)から独立して選択される。Rの脂肪族基における置換基は、NH,NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O−(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族から選択される。
【0056】
脂肪族基または非芳香族複素環は、一つ以上の置換基を含み得る。脂肪族基または非芳香族複素環の飽和炭素における適切な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記に列挙されたものから選択され、そしてさらに以下から選択される:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=N−、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、または=NR。ここで、Rの各々は、水素または必要に応じて置換されたC1−6脂肪族から独立して選択される。Rの脂肪族基における置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O−(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族から選択される。
【0057】
非芳香族複素環に属する窒素における置換基は、−R,−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、またはNRSOから選択される。ここで、Rは、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、必要に応じて置換されたフェニル(Ph)、必要に応じて置換された−O(Ph)、必要に応じて置換された−CH(Ph)、必要に応じて置換された−CHCH(Ph)、5〜6員の非置換ヘテロアリール環、または5〜6員の非置換複素環である。Rの脂肪族基またはフェニル環における置換基は、NH,NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O−(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族から選択される。
【0058】
「アルキリデン鎖」との用語は、完全に飽和であり得るかもしくは一つ以上の不飽和の単位を有し、かつその分子の残りに対する2つの結合点を有する、直鎖または分枝の炭素鎖をいう。
【0059】
本発明の化合物は、化学的に実施可能な化合物であって、しかも安定な化合物に限定される。したがって、上に記載された化合物における、置換基または可変部分の組み合わせは、そのような組み合わせが、安定な化合物または化学的に実施可能な化合物を生じる場合のみ、さしつかえない。安定な化合物または化学的に実施可能な化合物は、湿気も、他の化学的に反応性の条件もなしで、少なくとも1週間、40℃以下の温度に保たれた場合に、化学的な構造を、実質的に変化させない化合物である。
【0060】
そうでないと言明されない限り、本明細書において示される構造はまた、その構造の全ての立体化学的な形(すなわち、各不斉中心についての、R配置およびS配置)を含むことを意味する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体ならびにエナンチオ混合物およびジアステレオマー混合物は、本発明の範囲内である。そうでないと言明されない限り、本明細書において示される構造はまた、一つ以上の同位体濃縮された原子の存在のみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素もしくは三重水素による水素の置き換えを除いてか、または13C−もしくは14C−が濃縮された炭素による炭素の置き換えを除いて、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0061】
本発明の化合物は、他の互変異性体として存在し得る。そうでないと示されない限り、どちらか一方の互変異性体の説明は、他方を含むと意味される。
【0062】
(3.例示的な化合物の説明)
本発明の一つの局面は、式Iの化合物に関連し、ここで、(T)は、存在する場合、水素、N(R)、ハロゲン、OH、3〜6員のカルボシクリル基、または必要に応じて置換された基から選択される。この必要に応じて置換された基は、C1−6脂肪族、6員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜6員のヘテロアリール環から選択される。Rが、必要に応じて置換された、フェニル基または脂肪族基である場合、フェニル基または脂肪族基における好ましい置換基は、R、ハロ、ニトロ、アルコキシ、およびアミノである。そのような(T)基の例としては、クロロ、フルオロ、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロヘキシル、CHOCH、CHOH、NH、NHCH、NHAc、NHC(O)NHCH、およびCHNHCHが挙げられる。
【0063】
別の実施形態によると、本発明は、式Iの化合物に関連し、ここでRは、水素、R、必要に応じて置換された3〜7員のカルボシクリル基、または必要に応じて置換された基から選択される。この必要に応じて置換された基は、窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜6員の複素環、または5〜6員のアリール環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール環から選択される。そのような基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、シクロプロピル、シクロヘキシル、4−ヒドロキシシクロヘキシル、フェニル、ベンジル、イソオキサゾリル、テトラヒドロフラニル、Et、Me、イソプロピル、CHシクロプロピル、イソオキサゾール−3−イル、ピリジル、およびイソプロピルが挙げられる。Rが、必要に応じて置換されたフェニルである場合、フェニル環における置換基としては、ハロゲン、R、OR、N(R、CO、およびSO(Rが挙げられる。そのような置換基の例としては、フルオロ、NH、Cl、Br、OCHフェニル、モルホリン−4−イル、COMe、OMe、ハロアルキル(例えば、CF)、Oベンジル、Oフェニル、OCF、OH、SONH、およびメチレンジオキシが挙げられる。Rが、−(CHCH(Rである場合、そのような基の例としては、−CH(CH)CHOH、−CHピリジル、−CH(CHOH)フェニル、−CH(CHOH)エチル、−CH(CHOH)、−CH(CHOH)イソプロピル、および−CH(CHOH)CHシクロプロピルが挙げられる。
【0064】
式IのU基としては、原子価結合、−CH−、−O−、−NR−、−NHC(O)−、および−NHCO−が挙げられる。
【0065】
一つの実施形態によると、式IのこのU基は、−NR−である。
【0066】
別の実施形態によると、式IのこのU基は、原子価結合である。
【0067】
さらに、本発明の別の実施形態は、Uが−O−である、式Iの化合物に関連する。
【0068】
式IのQ基としては、C1−4アルキリデン鎖が挙げられ、ここで1個または2個のQのメチレン単位が、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、−SO−、−SONH−、−NHC(O)−、−NHC(O)O−、または−NHSO−によって独立して置き換えられる。
【0069】
一つの実施形態によると、式Iの前記Q基が、−C(O)−、−SO−、−C(O)NH−、または−SONH−である。
【0070】
別の実施形態は、Qが、−C(O)−または−C(O)NH−である、式Iの化合物に関連する。
【0071】
さらに、本発明の別の実施形態は、Qが、NHC(O)である、式Iの化合物に関連する。
【0072】
別の実施形態によると、式IのRが、(CHCH(Rである場合、各々のR基は、必要に応じて置換されたC1−4脂肪族、C5−6シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜9員のヘテロアリール環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の複素環から独立して選択される。そのようなR基としては、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、モルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、イミダゾリル、フラン−2−イル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドルフラン−2−イル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、−CHOH、−(CHOHおよびイソプロピルから独立して選択される基が挙げられる。ここで、各々の基は、必要に応じて置換される。そのようなRにおける置換基としては、ハロゲン、R、NO、OR、またはSRが挙げられる。そのような置換基の例としては、クロロ、フルオロ、メチル、エチル、イソプロピル、OCH、−OH,SCH、ピリジル、ピペリジニル、および必要に応じて置換されたフェニルが挙げられる。
【0073】
さらに別の実施形態によると、式IのRが、(CHCH(Rである場合、R基は、−OR、−COR、−(CHN(R)、またはN(Ar)(R)から選択される。ここで、各々のR基は、水素、または必要に応じて置換されたC1−4脂肪族基から独立して選択される。Arは、C5−6シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜9員のヘテロアリール環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する5〜6員の複素環から選択される。Rにおける置換基としては、OR、−SR、フェニル、−O(Ph)、−CH(Ph)、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−CO、−C(O)R、または、−C(O)N(Rが挙げられる。ここで、各々のRは、水素、C1−4脂肪族基、非置換5〜6員のヘテロアリール環、あるいは窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する複素環、フェニル(Ph)、−O(Ph)、または−CH(Ph)−CH(Ph)から独立して選択される。Rの脂肪族基における置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O−(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族が挙げられる。
【0074】
本発明の別の局面は、式Iの化合物に関する。ここでRが、−(CHCH(R)CH(Rであって、R基が、RまたはOR(例えば、OHもしくはCHOHなど)であって、Rが、上記のとおりである。式Iの−(CHCH(R)CH(Rのような基は、−CH(OH)CH(OH)フェニルおよび−CH(Me)CH(OH)フェニルである。他の−QR基としては、下の表2に列挙された基が挙げられる。
【0075】
本発明は、式Iの化合物に関連し、ここで、環Aが、ピリジニル、ピリミジニル、またはトリアジニルである。したがって、本発明は、以下の式の化合物I−a、I−b、I−c、およびI−d:
【0076】
【化7】

に関する。
【0077】
一つの実施形態によると、本発明は、環Bが、1〜2個の窒素を有する飽和の3〜7員環である、式Iの化合物に関連する。
【0078】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、1〜2個の酸素を有する飽和の4〜7員環である、式Iの化合物に関連する。
【0079】
さらに、本発明の別の実施形態は、環Bが、1個の酸素および1個の窒素を有する飽和の5〜6員環である、式Iの化合物に関連する。
【0080】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、0個のヘテロ原子を有する飽和の3〜7員環である、式Iの化合物に関連する。
【0081】
本発明の別の局面は、環Bが、下の表1に記載された環B部分から選択される、式Iの化合物に関連する。
【0082】
表1.環Bの部分
【0083】
【化8】

【0084】
【化9】

ここで、上記の表1に記載された各環Bの部分は、QRおよび(Rで置換される。
【0085】
本発明によって意図される他の実施形態は、上に記載された任意の環Bの部分が、式I−a、I−b、I−c、およびI−dに記載された任意の環Aの部分と結合される、式Iに関連する。
【0086】
一つの実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1において記載されるような環iiである、式Iの化合物に関連する。
【0087】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環viiiである、式Iの化合物に関連する。
【0088】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環xxviiである、式Iの化合物に関連する。
【0089】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環xxxiである、式Iの化合物に関連する。
【0090】
本発明の別の実施形態は、式IIの化合物:
【0091】
【化10】

またはその薬学的に受容可能な塩に関連する。ここで:
環Bが、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和の4〜7員環であり;
が、窒素またはCRであり;
が、R、ハロゲン、CN、NO、OR、SR、N(R)、C(O)R、もしくはCORから選択され、または:
とU−Rが、一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有する、飽和したか、部分的に不飽和であるか、または完全に不飽和の、必要に応じて置換された5〜7員環を形成し;
が、窒素またはC−T(m)であり;
Tが、飽和したか、または不飽和のC1−6アルキリデン鎖から選択され、ここで:
前記鎖のうちの2個までのメチレン単位が、−C(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)NRNR−、−CO−、−OC(O)−、−NRCO−、−O−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRNR−、−NRC(O)−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−SONR−、または−NRSO−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
mが、0または1であり;
Rの各々が、水素もしくは必要に応じて置換されたC1−6脂肪族基から独立して選択され、または:
同じ窒素上にある2個のRが、前記窒素と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環もしくはヘテロアリール環を形成し;
が、R、またはArから選択され;
Arの各々は、必要に応じて置換された環であり、前記必要に応じて置換された環が、6〜10員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜10員のヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する3〜10員のヘテロシクリル環から選択され;
が、CN、R、Ar、−(CHCH(R)R、または−(CHCH(R)CH(Rから選択され;
yの各々が、独立して0〜6であり;
Uは、原子価結合、−O−、−S−、−N(R)−、もしくはC1−6アルキリデン鎖から選択され、ここでUのうち2個までのメチレン単位が、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(R)SO−、−SON(R)−、−N(R)−、−CO−、−CO−、−N(R)CO−、−N(R)C(O)O−、−N(R)CON(R)−、−N(R)SON(R)、−N(R)N(R)−、−C(O)N(R)−、または−OC(O)N(R)−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
yが、0〜6であり;
が、オキソ、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され;
pが、0〜4であり;
が、R、(CHOR、(CHN(R)、または(CHSRから選択され;
wが、0〜4であり;そして、
の各々が、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、Ar、(CHOR、COR、(CHN(R)、N(Ar)(R)、(CHSR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、またはSON(R)から独立して選択される。
【0092】
本発明は、環Aが、ピリジニル、ピリミジニル、またはトリアジニルである、式IIの化合物に関連する。したがって、本発明は、以下の式II−a、II−b、II−c、およびII−dの化合物:
【0093】
【化11】

に関連する。
【0094】
一つの実施形態によると、本発明は、環Bが、1〜2個の窒素を有する飽和の4〜7員環である、式IIの化合物に関連する。
【0095】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、1〜2個の酸素を有する飽和の4〜7員環である、式IIの化合物に関連する。
【0096】
さらに、本発明の別の実施形態は、環Bが、1個の酸素および1個の窒素を有する飽和の5〜6員環である、式IIの化合物に関連する。
【0097】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、0個のヘテロ原子を有する飽和の4〜7員環である、式IIの化合物に関連する。
【0098】
本発明の別の局面によると、本発明は、環Bが、上の表1において記載されるような環B部分から選択される、式IIの化合物に関連する。
【0099】
一つの実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1において記載されるような環iiである、式IIの化合物に関連する。
【0100】
本発明の別の局面によると、本発明は、環Bが、上の表1において記載されるような環viiiである、式IIの化合物に関連する。
【0101】
本発明の別の局面によると、本発明は、環Bが、上の表1において記載されるような環xxviiである、式IIの化合物に関連する。
【0102】
本発明の別の局面によると、本発明は、環Bが、上の表1において記載されるような環xxxiである、式IIの化合物に関連する。
【0103】
本発明の別の局面によると、本発明は、式IIIの化合物:
【0104】
【化12】

またはその薬学的に受容可能な塩に関連する。ここで:
環Bが、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和の4〜7員環であり;
が、窒素またはCRであり;
が、R、ハロゲン、CN、NO、OR、SR、N(R)、C(O)R、もしくはCORから選択され、または:
とU−Rが、一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有する、飽和したか、部分的に不飽和であるか、または完全に不飽和の、必要に応じて置換された5〜7員環を形成し;
が、窒素またはC−T(m)であり;
Tが、飽和したか、または不飽和のC1−6アルキリデン鎖から独立して選択され、ここで:
前記鎖のうちの2個までのメチレン単位が、−C(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)NRNR−、−CO−、−OC(O)−、−NRCO−、−O−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRNR−、−NRC(O)−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−SONR−、または−NRSO−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
mが、0または1であり;
Rの各々が、水素もしくは必要に応じて置換されたC1−6脂肪族基から独立して選択され、または:
同じ窒素上にある2個のRが、前記窒素と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環もしくはヘテロアリール環を形成し;
が、R、またはArから選択され;
Arの各々は、必要に応じて置換された環であり、前記必要に応じて置換された環が、6〜10員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜10員のヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する3〜10員のヘテロシクリル環から選択され;
が、CN、R、Ar、−(CHCH(R)R、または−(CHCH(R)CH(Rから選択され;
yの各々が、独立して0〜6であり;
Uは、原子価結合、−O−、−S−、−N(R)−、もしくはC1−6アルキリデン鎖から選択され、ここでUのうち2個までのメチレン単位が、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(R)SO−、−SON(R)−、−N(R)−、−CO−、−CO−、−N(R)CO−、−N(R)C(O)O−、−N(R)CON(R)−、−N(R)SON(R)、−N(R)N(R)−、−C(O)N(R)−、または−OC(O)N(R)−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
yが、0〜6であり;
が、オキソ、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され;
pが、0〜4であり;
が、R、(CHOR、(CHN(R)、または(CHSRから選択され;
wが、0〜4であり;そして、
の各々が、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、Ar、(CHOR、COR、(CHN(R)、N(Ar)(R)、(CHSR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、またはSON(R)から独立して選択される。
【0105】
本発明は、環Aが、ピリジニル、ピリミジニル、またはトリアジニルである、式IIIの化合物に関連する。したがって、本発明は、以下の式III−a、III−b、III−c、およびIII−dの化合物:
【0106】
【化13】

に関連する。
【0107】
一つの実施形態によると、本発明は、環Bが、1〜2個の窒素を有する飽和の4〜7員環である、式IIIの化合物に関連する。
【0108】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、1〜2個の酸素を有する、飽和の4〜7員環である、式IIIの化合物に関連する。
【0109】
さらに、本発明の別の実施形態は、環Bが、1個の酸素および1個の窒素を有する飽和の5〜6員環である、式IIIの化合物に関連する。
【0110】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、0個のヘテロ原子を有する飽和の4〜7員環である、式IIIの化合物に関連する。
【0111】
本発明の別の局面は、環Bが、上の表1に記載される環Bの部分から選択される、式IIIの化合物に関連する。
【0112】
一つの実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環iiである、式IIIの化合物に関連する。
【0113】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環viiiである、式IIIの化合物に関連する。
【0114】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環xxviiである、式IIIの化合物に関連する。
【0115】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環xxxiである、式IIIの化合物に関連する。
【0116】
本発明の別の実施形態は、式IVの化合物:
【0117】
【化14】

またはその薬学的に受容可能な塩に関連する。ここで:
環Bが、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和の4〜7員環であり;
が、窒素またはCRであり;
が、R、ハロゲン、CN、NO、OR、SR、N(R)、C(O)R、もしくはCORであるか、または:
とU−Rが、一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有する、飽和したか、部分的に不飽和であるか、または完全に不飽和の、必要に応じて置換された5〜7員環を形成し;
が、窒素またはC−T(m)であり;
Qが、NRC(O)、C(O)NR、NRSO、またはSONRであり;
Tが、飽和したか、または不飽和のC1−6アルキリデン鎖であり、ここで:
前記鎖のうちの2個までのメチレン単位が、−C(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)NRNR−、−CO−、−OC(O)−、−NRCO−、−O−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRNR−、−NRC(O)−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−SONR−、または−NRSO−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
mが、0または1であり;
Rの各々が、水素または必要に応じて置換されたC1−6脂肪族基から独立して選択され、もしくは:
同じ窒素上にある2個のRが、前記窒素と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環もしくはヘテロアリール環を形成し;
が、R、またはArから選択され;
Arの各々は、必要に応じて置換された環であり、前記必要に応じて置換された環が、6〜10員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜10員のヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する3〜10員のヘテロシクリル環から選択され;
が、CN、R、Ar、−(CHCH(R)R、または−(CHCH(R)CH(Rから選択され;
yの各々が、独立して0〜6であり;
Uは、原子価結合、−O−、−S−、−N(R)−、もしくはC1−6アルキリデン鎖から選択され、ここでUのうち2個までのメチレン単位が、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(R)SO−、−SON(R)−、−N(R)−、−CO−、−CO−、−N(R)CO−、−N(R)C(O)O−、−N(R)CON(R)−、−N(R)SON(R)、−N(R)N(R)−、−C(O)N(R)−、または−OC(O)N(R)−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
yが、0〜6であり;
が、オキソ、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され;
pが、0〜4であり;
が、R、(CHOR、(CHN(R)、または(CHSRから選択され;
wが、0〜4であり;そして、
の各々が、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、Ar、(CHOR、COR、(CHN(R)、N(Ar)(R)、(CHSR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、またはSON(R)から独立して選択される。
【0118】
本発明は、環Aが、ピリジニル、ピリミジニル、またはトリアジニルである、式IVの化合物に関連する。したがって、本発明は、以下の式IV−a、IV−b、IV−c、およびIV−dの化合物:
【0119】
【化15】

に関連する。
【0120】
一つの実施形態によると、本発明は、環Bが、1〜2個の窒素を有する飽和の4〜7員環である、式IVの化合物に関連する。
【0121】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、1〜2個の酸素を有する飽和の4〜7員環である、式IVの化合物に関連する。
【0122】
さらに、本発明の別の実施形態は、環Bが、1個の酸素および1個の窒素を有する、飽和の5〜6員環である、式IVの化合物に関連する。
【0123】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、0個のヘテロ原子を有する飽和の4〜7員環である、式IVの化合物に関連する。
【0124】
本発明の別の局面は、環Bが、上の表1に記載される環Bの部分から選択される、式IVの化合物に関連する。
【0125】
一つの実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環iiである、式IVの化合物に関連する。
【0126】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環viiiである、式IVの化合物に関連する。
【0127】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環xxviiである、式IVの化合物に関連する。
【0128】
別の実施形態によると、本発明は、環Bが、上の表1に記載されるような環xxxiである、式IVの化合物に関連する。
【0129】
式Iの化合物の典型的な構造が、下の表2において記載されている。
【0130】
表2.式Iの典型的な化合物
【0131】
【化16】

【0132】
【化17】

(4.本発明の化合物を提供する一般的な方法)
一般的なスキームI、II、およびIIIならびに下記の合成例によって例証されるように、本発明の化合物は、一般的に、類似の化合物について当業者に公知の方法によって、調製され得る。
【0133】
【化18】

上記のスキームIは、環Bが環xviのピペラジニルである、本発明の化合物を調製するための一般方法を示す。このヨードの出発物質1は、Pd(OAc)および1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンの存在下、カルボキシル基が保護されたピペリジン−4−カルボン酸で処理され、化合物3を生成する。当業者は、種々のカルボキシル保護基が使用され得、そして前記保護基の除去方法が、実際に使用される保護基に依存するということを、認識している。そのようなカルボキシル保護基は、当該分野において周知であり、「Protective Groups in Organic Synthesis」Third Ed.Greene,T.W.and Wuts,P.G.,Eds.,John Wiley&Sons,New York:1999によって説明される保護基を含み、その内容の全体が、本明細書により参考として援用される。
【0134】
化合物3のカルボキシル保護基が、除去され、そして得られるカルボン酸は、式R−NHのアミンと結合され、式4の中間体を生成する。当業者は、種々の化合物が、脱保護された化合物3のカルボン酸部分に、結合され得、Qが上記のアミドに加えて他の基から選択される、本発明の化合物を生成するということを、認識している。例えば、前記カルボン酸は、式R−OHのアルコールと結合され得、Qが−C(O)O−である、本発明の化合物を生成する。あるいは、前記カルボン酸は、当該分野において公知である塩素化試薬(例えば、塩化オキサリルまたはPCl)で処理され、塩化アシル誘導体を生成し得る。当業者は、この塩化アシル誘導体が、Qが−C(O)−である化合物を含む、本発明の種々の化合物を、調製するため使用され得ることを、認識している。
【0135】
それから、化合物4のフルオロ基は、式R−UHの化合物によって置換され、環Bがピペラジニル環xviである、本発明の化合物を生成する。当業者は、本発明の数多くの化合物が、上記の一般的な方法を用いて調製されることを、認識している。
【0136】
【化19】

上記のスキームIIは、環Bが環xxのピペラジニルである、本発明の化合物を調製するための一般的な方法を示す。アミノ保護されたピペラジニルの出発物質6は、トリホスゲンで処理され、それから式R−NHのアミンで処理され、中間体7を生成する。当業者は、種々のアミン保護基が使用され得、そして前記保護基の除去方法が、実際に使用される保護基に依存するということを、認識している。そのようなアミン保護基は、当該分野において周知であり、そして「Protective Groups in Organic Synthesis」Third Ed.Greene,T.W.and Wunts,P.G.,Eds.,John Wiley&Sons,New York:1999によって説明される保護基を含む。
【0137】
化合物7のアミン保護基は、除去され、そして得られる化合物は、ジクロロ化合物8で処理され、モノクロロ化合物9を生成する。化合物9のクロロ部分は、式R−NHのアミンで置換され、化合物10を生成する。当業者は、本発明の多数の化合物が、上記の一般的な方法を使用して調製されることを、認識している。
【0138】
【化20】

上記のスキームIIIは、環Bが、環xxviiのアゼチジニルである、本発明の化合物を調製するための一般的な方法を示す。ジクロロの出発物質11は、アゼチジン−3−カルボン酸で処理され、化合物13を生成する。それから化合物13は、スキームIおよびIIに関して上に記載される方法ならびに当業者に公知である方法によって、本発明の化合物を調製するために使用される。当業者は、本発明の多数の化合物が、上記の一般的な方法を用いて調製されるということを、認識している。
【0139】
(5.用途、処方および投与)
(薬学的に受容可能な組成物)
本明細書中に記載される化合物および組成物は、一般的に1つ以上の酵素のプロテインキナーゼ活性の阻害に有用である。キナーゼの構造、機能および疾患または疾患の徴候におけるこれらの役割に関するさらなる情報は、Protein Kinase Resource website(http://kinases.sdsc.edu/html/index.shtml)で入手可能である。
【0140】
本明細書中に記載される化合物および組成物により阻害され、そして本明細書中に記載される方法が有用に対抗するキナーゼの例としては、限定されないが、ERK1、ERK2、GSK3、ROCK、JAK1、JAK2,JAK3、CDK1、CDK2および/またはCDK5ならびにこれらキナーゼのすべてのサブタイプが挙げられる。本発明の化合物および組成物はそれゆえまた、前記のキナーゼを1つ以上含む疾患および疾患の徴候の処置に特に適している。
【0141】
1つの特定の実施形態において、本発明の化合物および組成物は、ERK2、GSK3、ROCK、JAK3および/またはCDK2の1つ以上のインヒビターであり、そして従って、これらの化合物および組成物は、特にERK2、GSK3、ROCK、JAK3および/またはCDK2と関連する疾患や疾患の徴候を処置するかまたはそれらの重篤度を軽減するのに有用である。
【0142】
本発明においてERK2、GSK3、ROCK、JAK3および/またはCDK2のインヒビターとして利用される化合物の活性は、インビトロ、インビボまたは細胞株においてアッセイされ得る。インビトロアッセイとしては、活性化したERK2、GSK3、ROCK、JAK3および/またはCDK2のリン酸化活性またはATPase活性のいずれかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。代わりのインビトロアッセイは、ERK2、GSK3、ROCK、JAK3および/またはCDK2に結合するインヒビターの能力を定量する。インヒビターの結合は、結合前のインヒビターを放射能標識すること、インヒビター/ERK2複合体、インヒビター/GSK3複合体、インヒビター/ROCK複合体、インヒビター/JAK3複合体またはインヒビター/CDK2複合体を単離することおよび結合した放射標識の量を決定することにより測定され得る。あるいは、インヒビターの結合は、新しいインヒビターを既知の放射リガンドと結合したERK2キナーゼ、GSK3キナーゼ、ROCKキナーゼ、JAK3キナーゼおよび/またはCDK2キナーゼとインキュベートする競合実験を行うことにより決定され得る。ERK2キナーゼ、GSK3キナーゼ、ROCKキナーゼ、JAK3キナーゼおよび/またはCDK2キナーゼのインヒビターとして、本発明に利用される化合物をアッセイするための詳細な条件は、以下の実施例に明記される。
【0143】
別の実施形態によると、本発明は、本発明の化合物または薬学的に受容可能なその誘導体、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバンドまたはビヒクルを含有する組成物を提供する。本発明の組成物における化合物の量は、生物学的サンプルまたは患者においてプロテインキナーゼ、特にERK2キナーゼ、GSK3キナーゼ、ROCKキナーゼ、JAK3キナーゼおよび/またはCDK2キナーゼを検出可能に阻害するのに有効であるような量である。好ましくは、本発明の組成物は、そのような組成物を必要とする患者への投与のために処方される。最も好ましくは、本発明のこの組成物は、患者への経口投与のために処方される。
【0144】
本明細書中に用いられる場合、用語「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物を意味し、そして最も好ましくはヒトを意味する。
【0145】
用語「薬学的に受容可能なキャリア、アジュバンドまたはビヒクル」は、一緒に処方される化合物の薬理学的活性を壊さない無毒性のキャリア、アジュバンドまたはビヒクルを称する。本発明の組成物に用いられる得る薬学的に受容可能なキャリア、アジュバンドまたはビヒクルとしては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリドの混合物、水、塩または硫酸プロタミンのような電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛の塩、コロイド状のシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースを基礎にした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0146】
本明細書中に用いられる場合、用語「検出可能に阻害する」は、該組成物およびERK2キナーゼ、GSK3キナーゼ、ROCKキナーゼ、JAK3キナーゼおよび/またはCDK2キナーゼを含むサンプルと、該組成物の非存在下においてERK2キナーゼ、GSK3キナーゼ、ROCKキナーゼ、JAK3キナーゼおよび/またはCDK2キナーゼを含む等価のサンプルとの間で測定できる、ERK2活性、GSK3活性、ROCK活性、JAK3活性および/またはCDK2活性の変化を意味する。
【0147】
「薬学的に受容可能な誘導体」は、レシピエントへの投与の際に、本発明の化合物あるいは阻害的な活性代謝産物またはその残存物を直接的あるいは間接的のいずれかで提供することができる、本発明の化合物の無毒性の塩、エステル、エステルの塩または他の誘導体のいずれかを意味する。
【0148】
本明細書中に用いられる場合、用語「阻害的な活性代謝産物またはその残存物」は、代謝産物またはその残存物がまた、ERK2、GSK3、ROCK、JAK3および/またはCDK2のインヒビターであることを意味する。
【0149】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基から誘導される本発明の化合物の塩が挙げられる。適した酸塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンフルスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パームエート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラートおよびウンデカン酸塩が挙げられる。シュウ酸のような他の酸は、これら自体は薬学的に受容可能ではないが、本発明の化合物およびこれらの薬学的に受容可能な酸付加塩を得るための中間体として有用な塩の調製に用いられ得る。
【0150】
適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アンモニウム塩、およびN+(C1〜4アルキル)4塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中に開示する化合物の、塩基性窒素を含むいずれかの基の4級化を構想する。水溶性または脂溶性あるいは分散性の産生物はそのような4級化により得られ得る。
【0151】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸に、経鼻的に、頬に、膣に、あるいは移植したリザーバーを介して投与され得る。本明細書中に用いられる場合、用語「非経口的」としては、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、硬膜下腔内、肝臓内、病変内および頭蓋内への注射または注入方法が挙げられる。好ましくは、この組成物は、経口的に、腹腔内に、または静脈内に投与される。本発明の組成物の滅菌注射可能形態は、水性のまたは油性の懸濁剤であり得る。これらの懸濁剤は、適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて当該分野で公知の技術により処方され得る。この滅菌注射可能製剤はまた、無毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液として)、滅菌注射可能溶液または懸濁剤であり得る。用いられ得る受容可能なビヒクルおよび溶媒のなかには、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌の固定油は、溶媒または懸濁化媒質として従来的に用いられる。
【0152】
この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、刺激の少ないいずれかの固定油が用いられ得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油、特にこれらのポリオキシルエチル化バージョンのような、天然の薬学的に受容可能な油と同様に、注射可能物の調製において有用である。これら油の溶液または懸濁液はまた、乳剤および懸濁剤を含む薬学的に受容可能な投与形態の処方において一般に用いられるカルボキシメチルセルロースまたは同じような分散剤のような、長鎖アルコール希釈剤または長鎖アルコール分散剤を含有し得る。一般に薬学的に受容可能な固体、液体または他の投与形態の製品において一般に用いられるTween、Spanおよび他の乳化物質またはバイオアベイラビリティ増強剤のような、他の一般に用いられる界面活性剤はまた、処方の目的のために用いられ得る。
【0153】
薬学的に受容可能な本発明の組成物は、限定はされないが、カプセル、錠剤、水溶性懸濁剤または溶液を含む経口的に受容可能ないずれかの投与形態で、経口的に投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般に用いられるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤はまた、代表的に加えられる。カプセルの形態において経口投与のために有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥したコーンスターチが挙げられる。水性の懸濁剤が経口使用に必要とされるとき、この活性成分は、乳化物質および懸濁化物質と混合される。必要に応じて、ある甘味料、香料または着色料はまた、加えられる。
【0154】
あるいは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、直腸投与のために坐剤の形態で投与され得る。これらは、室温で固体であるが直腸温で液体であるので直腸で溶解して薬物を放出する、適した非刺激性の賦形剤と薬剤を混合することにより調製され得る。そのような材料には、カカオ脂、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0155】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、特に治療標的が、目、皮膚または腸管下部の疾患を含む、局所適用により直ちに影響を受ける領域や臓器を含むとき、局所的に投与され得る。適した局所処方物は、これら各領域または臓器のために容易に調製される。
【0156】
腸管下部への局所適用は、直腸の坐剤処方(上記を参照せよ)または適した浣腸処方において実施され得る。局所的経皮パッチはまた、用いられ得る。
【0157】
局所適用のために、薬学的に受容可能な組成物は、1つ以上のキャリアに懸濁または溶解される活性成分を含む適した軟膏に処方され得る。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、限定されないが、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられる。あるいは、薬学的に受容可能な組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアに懸濁または溶解される活性成分を含む適したローションまたはクリームに処方され得る。適したキャリアとしては、限定されないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0158】
眼への使用のために、薬学的に受容可能な組成物は、ベンジルアルコニウム塩化物のような保存剤のあるかないかのいずれかで、等張性のpHを調整した滅菌生理食塩水中に微粉末化した懸濁剤として処方され得るか、または好ましくは等張性のpHを調整した滅菌生理食塩水中に溶液として処方され得る。あるいは、眼への使用のために、薬学的に受容可能な組成物は、ワセリンのような軟膏として処方され得る。
【0159】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、鼻のエアロゾルまたは吸入により投与され得る。そのような組成物は、薬学的処方の分野において周知の技術により調製され、そしてベンジルアルコールまたは他の適した保存剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または他の従来の溶解剤または分散剤を用いて、生理食塩水中に溶液として調製され得る。
【0160】
最も好ましくは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口投与のために処方される。
【0161】
単回投与の形態において組成物を生産するためにキャリア原料と混合し得る本発明の化合物の量は、処置される受容者、特定の投与様式に依存して変化する。好ましくは、この組成物は、1日体重1kgあたり0.01〜100mgの間のこのインヒビターの投与量が、これら組成物を受ける患者に投与され得るように処方されるはずである。
【0162】
いずれかの特定の患者のための特別な投与量および処置規制は、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、身体の健康、性、食事、投与時間、排泄速度、薬物の併用ならびに処置している内科医の判断および処置されている特定の疾患の重症度を含む、様々な要因に依存していることが理解されるはずである。組成物における本発明の化合物の量はまた、組成物における特定の化合物に依存する。
【0163】
(化合物および薬学的に受容可能な組成物の用途)
1つの実施形態によると、本発明は、生物学的サンプルを本発明の化合物または該化合物からなる組成物と接触させる工程を含む、該生物学的サンプルにおいてプロテインキナーゼ活性を阻害する方法に関連する。
【0164】
別の実施形態によると、本発明は、生物学的サンプルを本発明の化合物または該化合物からなる組成物と接触させる工程を含む、該生物学的サンプルにおいてERK2キナーゼ活性、GSK3キナーゼ活性、ROCKキナーゼ活性、JAK3キナーゼ活性および/またはCDK2キナーゼ活性を阻害する方法に関連する。
【0165】
本明細書中に用いられる場合、用語「生物学的サンプル」は、限定されないが、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られる生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、便、精液、涙または他の体液またはその抽出物を包含する。
【0166】
生物学的サンプルにおける、プロテインキナーゼ活性またはERK2キナーゼ活性、GSK3キナーゼ活性、ROCKキナーゼ活性、JAK3キナーゼ活性および/またはCDK2キナーゼ活性から選択されるプロテインキナーゼ活性の阻害は、当業者に公知である様々な目的のために有用である。そのような目的の例としては、限定されないが、輸血、臓器移植、生物学的標本の保存および生物学的アッセイが挙げられる。
【0167】
本発明の別の実施形態は、本発明の化合物または該化合物からなる組成物を患者に投与する工程を含む、該患者においてプロテインキナーゼ活性を阻害する方法に関連する。
【0168】
別の実施形態によると、本発明は、本発明の化合物または該化合物からなる組成物を患者に投与する工程を含む、該患者においてERK2キナーゼ活性、GSK3キナーゼ活性、ROCKキナーゼ活性、JAK3キナーゼ活性および/またはCDK2キナーゼ活性を阻害する方法に関連する。
【0169】
別の実施形態によると、本発明は、本発明による組成物を患者に投与する工程を含む患者においてERK2媒介性の疾患または状態を処置するまたはこれらの疾患または状態の重篤度を軽減するための方法を提供する。
【0170】
本明細書中に用いられる場合、用語「ERK媒介性の疾患」または「ERK媒介性の状態」は、ERKが役割を担うことが既知であるいずれかの疾患または他の有害な状態を意味する。従って、本発明の別の実施形態は、ERKが役割を担うことが既知である1つ以上の疾患を処置するまたはこれら疾患の重篤度を軽減することに関連する。特に、本発明は、癌、脳卒中、糖尿病、肝腫、心臓肥大を含む心臓血管疾患、アルツハイマー病、嚢胞性の線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、乾癬、喘息を含むアレルギー性疾患、炎症、神経性障害およびホルモン関連性の疾患から選択される疾患または状態を処置するまたはこれらの疾患または状態の重篤度を軽減する方法に関連し、ここで該方法は、本発明による組成物を、その必要のある患者に投与することを含む。
【0171】
別の実施形態によると、本発明は、乳房、卵巣、頚部、前立腺、精巣、尿生殖器の管、食道、喉頭、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、胃、皮膚、角化棘細胞腫、肺、類表皮癌、大細胞癌、小細胞癌、肺性腺癌、骨、結腸、腺腫、膵臓、腺癌、甲状腺、濾胞状癌、未分化の癌、乳頭状癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝癌および胆汁排泄、腎臓癌、骨髄性の障害、リンパ性の障害、ホジキン病、毛様細胞、口腔前庭および咽頭(口)、唇、舌、口、咽頭、小腸、結腸−直腸、大腸、直腸、脳および中枢神経系、および白血病から選択される癌を処置する方法に関連する。
【0172】
別の実施形態は、黒色腫、乳房癌、結腸癌または膵臓癌を処置する必要のある患者において黒色腫、乳房癌、結腸癌または膵臓癌を処置する方法に関連する。
【0173】
本明細書中に用いられる場合、用語「GSK3媒介性の疾患」または「GSK3媒介性の状態」は、GSK3が役割を担うことが既知であるいずれかの疾患または他の有害な状態を意味する。従って、本発明の別の実施形態は、GSK3が役割を担うことが既知である1つ以上の疾患を処置するまたはこれら疾患の重篤度を軽減することに関連する。特に、本発明は、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、精神性障害、糖尿病、脈管形成障害、タウオパチー(tauopothy)、神経学的障害または神経変性障害、脊髄損傷、緑内障、禿頭症または心臓血管疾患から選択される疾患または状態を処置するまたはこれらの疾患または状態の重篤度を軽減する方法に関連し、ここで該方法は、本発明による組成物を、その必要のある患者に投与することを含む。
【0174】
別の実施形態によると、本発明は、アレルギー、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、エイズ関連性の痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリク病)、多発性硬化症(MS)、頭部外傷による損傷、統合失調症、不安、双極性障害、タウオパチー、脊髄損傷または末梢神経損傷、心筋梗塞、心筋細胞肥大、緑内障、注意欠陥障害(ADD)、うつ病、睡眠障害、再灌流/虚血、脳卒中、血管形成障害または禿頭症から選択される疾患または状態を処置するまたはこれらの疾患または状態の重篤度を軽減するための方法に関連し、ここで該方法は、本発明の化合物またはその組成物を、その必要のある患者に投与することを含む。
【0175】
好ましい実施形態によると、本発明のこの方法は、脳卒中を処置するまたは脳卒中の重篤度を軽減することに関連する。
【0176】
別の好ましい実施形態によると、本発明のこの方法は、神経変性障害または神経学的障害を処置するまたはこれらの障害の重篤度を軽減することに関連する。
【0177】
本発明の別の局面は、本発明の化合物またはその組成物を男性患者に投与することを含む、該患者において精子の運動性を低下させる方法に関連する。
【0178】
本明細書中に用いられる場合、用語「ROCK媒介性の状態」または「ROCK媒介性の疾患」は、ROCKが役割を担うことが既知であるいずれかの疾患または他の有害な状態を意味する。用語「ROCK媒介性の状態」または「ROCK媒介性の疾患」はまた、ROCKインヒビターによる処置により緩和される疾患または状態を意味する。従って、本発明の別の実施形態は、ROCKが役割を担うことが既知である1つ以上の疾患を処置するまたはこれらの疾患の重篤度を軽減することに関連する。特に、本発明は、高血圧、狭心症、脳血管の収縮、喘息、末梢循環障害、早産、癌、動脈硬化症、痙攣、網膜症、炎症性障害、自己免疫疾患、エイズおよび骨粗鬆症から選択される疾患または状態を処置するまたはこれら疾患または状態の重篤度を軽減する方法に関連し、ここで該方法は、本発明による組成物を、その必要のある患者に投与することを含む。
【0179】
別の実施形態によると、本発明は、本発明による組成物を患者に投与する工程を含む、該患者においてJAK媒介性の疾患または状態を処置するまたはこれらの疾患または状態の重篤度を軽減する方法を提供する。
【0180】
本明細書中に用いられる場合、用語「JAK媒介性の疾患」は、JAKファミリーキナーゼが役割を担うことが既知であるいずれかの疾患または他の有害な状態を意味する。従って、本発明の別の実施形態は、JAKが役割を担うことが既知である1つ以上の疾患を処置するまたはそれらの疾患の重篤度を軽減することに関連する。特に、本発明は、アレルギー性反応またはI型過敏性反応のような免疫応答、喘息、移植拒絶のような自己免疫疾患、対宿主性移植片病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)のような神経変性障害および白血病やリンパ腫のような固形および血液性の悪性疾患から選択される疾患または状態を処置するまたはこれら疾患または状態の重篤度を軽減する方法に関連し、ここで該方法は、本発明による組成物を、その必要のある患者に投与することを含む。
【0181】
本発明の化合物はまた、CDK2キナーゼのインヒビターとして有用である。従って、これら化合物は、CDK2媒介性の疾患または状態を処置するまたはこれらの疾患または状態の重篤度を軽減するために有用である。
【0182】
本明細書中に用いられる場合、用語「CDK2媒介性の疾患」は、CDK2が役割を担うことが既知であるいずれかの疾患または他の有害な状態を意味する。従って、これら化合物は、CDK2キナーゼの活性により影響されることが公知である疾患または状態を処置するために有用である。そのような疾患または状態には、ウイルス性感染、神経変性障害および胸腺細胞のアポトーシスと関連する障害が挙げられる。そのような疾患または状態はまた、細胞周期、特にG期からS期への進行の脱調節から生じる増殖障害を含む。
【0183】
別の実施形態によると、本発明は、本発明の化合物または薬学的に受容可能なその組成物でCDK2を阻害することにより癌細胞の増殖期への移行を遮断する工程を含む癌を処置するまたはその癌の重篤度を軽減する方法に関連する。
【0184】
治療される特定の状態または疾患によって、その状態を処置するために普通に投与されるさらなる治療薬剤はまた、本発明の組成物において存在し得る。本明細書中に用いられる場合、ある特定の疾患または状態を処置するために普通に投与されるさらなる治療薬剤は、「処置されている疾患または状態にふさわしい」ことが公知である。
【0185】
例えば、化学療法薬剤または他の抗増殖薬剤は、増殖疾患または癌を治療するための本発明の化合物と混合され得る。公知の化学療法薬剤の例としては、限定されないが、グリベックTM、アドリアマイシン、デキサメタゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、トポテカン、タキソール、インターフェロンおよび白金誘導体が挙げられる。
【0186】
本発明のインヒビターがまた、混合され得る薬剤の他の例としては、限定されないが、:アリセプト(登録商標)およびエクセロン(Excelon)(登録商標)のようなアルツハイマー病のための治療薬;L−ドパ/カルビドパ、エンタカポン(entacapone)、ロピニロール(ropinrole)、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキシフェニジル、およびアマンタジンのようなパーキンソン病のための治療薬;βインターフェロン(例えば、アボネックス(Avonex)(登録商標)およびレビフ(Rebif)(登録商標))、コパキソン(Copaxone)(登録商標)およびミトキサントロンのような多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤;アルブテロールおよびシングレア(登録商標)のような喘息のための治療薬;ジプレキサ、リスパダール、セロクエルおよびハロペリドールのような統合失調症を処置するための薬剤;コルチコステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミドおよびスルファサラジンのような抗炎症薬剤;シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリンおよびスルファサラジンのような免疫調節性薬剤および免疫抑制性薬剤;アセチルコリンエステラーゼインヒビター、MAOインヒビター、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャネルブロッカー、リルゾール(riluzole)および抗パーキンソン薬剤のような神経栄養因子;βブロッカー、ACEインヒビター、利尿薬、硝酸塩、カルシウムチャネルブロッカーおよびスタチンのような心臓血管疾患を処置するための薬剤;コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロンおよび抗ウイルス薬のような肝臓疾患を治療するための薬剤;コルチコステロイド、抗白血病薬剤および成長因子のような血液障害を治療するための薬剤;およびγグロブリンのような免疫欠損障害を処置するための薬剤が挙げられる。
【0187】
これらさらなる薬剤は、多剤投与の投薬計画の一部として、化合物含有組成物と別々に投与され得る。あるいは、これら薬剤は、本発明の化合物と一緒に単一組成物に混合される単回投与形態の一部であり得る。多剤投与の投薬計画の一部として投与されると、2つの活性薬剤は、同時に、連続的にまたは互いにある時間内、普通は互いに5時間以内に投与され得る。
【0188】
単回投与形態を生産するためにキャリア材料と混合され得る化合物とさらなる治療薬剤との両方の量は(上記に記載されるように、さらなる治療薬剤を含む組成物)、処置される受容者および特定の投与様式に依存して変化する。好ましくは、本発明の組成物は、1日体重1kgあたり0.01〜100mgの間の式Iの化合物の投与量が投与され得るように処方されるはずである。
【0189】
さらなる治療薬剤を含む組成物において、そのさらなる治療薬剤および本発明の化合物は、相乗的に作用し得る。それゆえそのような組成物中のさらなる治療薬剤の量は、その治療薬剤のみを利用する単剤療法において必要とされる量よりも少ない。そのような組成物において、1日体重1kgあたり0.01〜100μgの間のさらなる治療薬剤の投与量が投与され得る。
【0190】
本発明の組成物におけるさらなる治療薬剤の量は、その治療薬剤を唯一の活性薬剤として含む組成物において通常投与される量以下である。好ましくは、現在開示される組成物におけるさらなる治療薬剤の量は、その薬剤を唯一の治療上の活性薬剤として含む組成物において通常存在する量の約50%から100%の範囲である。
【0191】
本発明の化合物またはその薬学的な組成物はまた、人工器官、人工弁、血管移植片、ステントおよびカテーテルのような移植可能な医療装デバイスをコーティングするための組成物に混ぜられ得る。例えば、血管ステントは、再狭窄(損傷後の管壁の再狭小化)を克服するために用いられている。しかしながら、ステントまたは他の移植可能な装デバイスを用いる患者は、血餅の形成または血小板の活性化の危険がある。これらの望まれない効果は、このデバイスを、キナーゼインヒビターを含む薬学的に受容可能な組成物であらかじめコーティングすることにより予防され得るかまたは軽減され得る。適したコーティングおよびコーティングした移植可能なデバイスの一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;米国特許第5,886,026号;および米国特許第5,304,121号に記載される。このコーティング物は、代表的にヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニルおよびその混合物のような生体親和性の重合体素材である。このコーティング物は、組成物に放出制御特性を与えるために必要に応じてさらにフルオロシリコーン、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、リン脂質またはその組み合わせの適したトップコートにより覆われ得る。本発明の化合物で覆われる移植可能なデバイスは、本発明の別の実施形態である。
【0192】
本明細書中に記載される発明がさらに完全に理解され得るために、以下の実施例が明記される。これらの実施例は、例証となる目的のためだけであり、そしていずれの方法においても本発明を限定するものと解釈されないことが理解されるはずである。
【実施例】
【0193】
(合成例)
本明細書において用いられる場合、「R」との用語は、分での保持時間を示す。そうでないと示されない限り、この保持時間は、以下のHPLCの方法を使用して、特定の化合物に関して得られる:
カラム:YMC ODS AQ、3×150mm、C18、5mm
勾配:90% 水/10% CHCN、0.1%TFAから、0% 水/100% CHCN、0.1%TFAまで、8分間にわたって
波長:214nm
流速:1mL/分。
【0194】
そうでないと示されない限り、各々のH NMRを、500MHzで、CDCl中において得た。
【0195】
(実施例1)
1−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)−アゼチジン−3−カルボン酸:水(1mL)およびエタノール(0.3mL)中の、アゼチジン−3−カルボン酸(56mg、0.55mmol、1当量)の懸濁溶液に、2,4,6−トリクロロピリミジン(101mg、0.55mmol、1当量)を加えた。得られた混合物を、99℃で1時間、加熱還流した。反応混合物を、冷却し、そして沈殿した固体を、濾過によって単離し、表題の化合物(66mg、49%)を得た。LC/MS:R=2.1分;ES+247.9、ES−246.0。
【0196】
(実施例2)
1−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)−アゼチジン−3−カルボン酸[1−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]−アミド:1−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)−アゼチジン−3−カルボン酸(66mg、0.27mmol、1当量)を、EDCI(103mg、0.53mmol、2当量)、HOBt(18mg、0.13mmol、0.5当量)および(S)−(+)−3−クロロフェニルグリシノール(67.4mg、0.32mmol、1.2当量)と共に、DMF(1mL)中に溶解した。それから、トリエチルアミン(121mg、0.32mmol、1.2当量)を、添加し、この得られた混合物を、室温で1時間攪拌し、それから90℃で10分間温めた。この粗反応混合物を、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄し、そしてこの有機画分を、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた粗油を、HPLC Gilson(アセトニトリル/水/0.1%TFA)によって精製し、白色の固体(44mg、41%)として標題の化合物を得た。HPLC R=5.528分。
【0197】
(実施例3)
1−(5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチルアミノ)−ピリミジン−4−イル)−アゼチジン−3−カルボン酸[1−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]−アミド(I−9):1−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)−アゼチジン−3−カルボン酸[1−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル]−アミド(16mg、0.04mmol、1当量)を、1−ブタノール(1mL)中に溶解した。それから、(S)−2−アミノプロパノール(0.02mL、0.2mmol、5当量)を、添加し、得られた混合物に、マイクロ波を照射した(185℃、1200秒、高吸収)。得られた粗混合物を、初めに、HPLC Gilson(アセトニトリル/水/0.1%TFA)によって、精製し、次にシリカゲルでの分取用TLC(DCM/MeOHが、95:5から90:10)によって精製した。標題の化合物を、白色の固体(3.9mg、21%)として単離した。LC/MS:R=2.0分;ES+454.0、ES−452.2。
【0198】
【化21−1】

(実施例4)
2−フルオロ−5−メチル−4−(4−エトキシカルボニル−ピペリジニル)ピリジン:酢酸パラジウム(0.04mmol、10mg)を、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(18mg、0.04mmol)と一緒に、DMF(0.5mL)中で10分間攪拌した。DMF(1.5mL)中の、2−フルオロ−4−ヨード−5−メチル−ピリジン(0.42mmol、100mg)、エチル−1−ピペリジンカルボン酸エステル(0.5mmol、0.08mL)および炭酸セシウム(275mg、2当量)の混合物を、添加し、激しく攪拌し、マイクロ波中において160℃で10分間加熱した。この得られた黒色の混合物を、シリカゲルカラムに注ぎ入れ、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン 勾配)によって精製し、黄色の油として61mgの標題の化合物(54%)を得た。R=6.70分;MS FIA 267.1(M+1)。
【0199】
(実施例5)
2’−フルオロ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−[1,4’]ビピリジニル−4−カルボン酸[1−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド:2−フルオロ−5−メチル−4−(4−エトキシカルボニル−ピペリジニル)ピリジン(60mg、0.23mmol)を、THF(2mL)、水(1mL)、水酸化リチウム(50mg、10当量)と共に攪拌した。この混合物を、周囲温度で18時間攪拌し、それから酢酸エチルで希釈し、硫酸水素化カリウム(5%水溶液)で洗浄した。この有機層を、MgSOによって乾燥し、減圧下で濃縮し、酸の中間体を与える。R=4.43分およびMS FIA ES+239.1。この酸を、(S)−(+)−クロロ−フェニルグリシノールHCl塩(47mg、0.23mmol)、1−3(ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(48mg、0.25mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.2mL)と塩化メチレン中で混合し、この混合物を、一晩攪拌した。この反応混合物を、減圧下で濃縮し、この残渣を、分取HPLC(Gilson:カラム=CombiHTSB−C189 5μM 21.2mm×100mm、溶離液=0.1%TFA MeCN/HO 勾配)によって精製し、白色の固体(10mg)として標題の化合物を得た。R=4.28分;MS FIA 392.1(M+1);H NMRは、構造と一致する。
【0200】
(実施例6)
2’−(2−ヒドロキシ−1−メチル−エチルアミノ)−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−[1,4’]ビピリジニル−4−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド(I−3):2’−フルオロ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−[1,4’]ビピリジニル−4−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド化合物(10mg、0.026mmol)を、(S)−2−アミノ−プロパノール(0.2mL)と、DMSO中で混合し、油浴中において、160℃で18時間、加熱した。粗混合物を、分取用TLCプレート(1mmシリカ)上にピペットで分注し、その化合物を酢酸エチルで溶出した。最も活性なUVバンドを持つ部分の単離によって、無色の油として2.6mgの標題の生成物を得た。R=4.40分、LCMS 447.3(M=1)、
【0201】
【化21−2】

(実施例7)
4−[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルカルバモイル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル:トリホスゲン(264mg、0.89mmol)を、塩化メチレン(20mL)中に溶解し、この混合物を、窒素雰囲気下、−78℃に冷却した。攪拌しながら冷たいこの溶液に、CHCl中の、t−ブトキシカルボニル−ピペラジン(500mg、2.4mmol)とジイソプロピルエチルアミン(2mL)との混合物を、30分間に亘って滴下した。添加が完了したら、CHCl(5mL)中の(S)−(+)−3−クロロフェニルグリシノール(500mg、2.4mmol)とDIEA(2mL)との混合物を、添加した。この反応物を、周囲温度に温め、減圧下、濃縮した。得られた残渣を、分取HPLC(Gilson:カラム=CombiHT SB−C189 5μM 21.2mm×100mm、溶離液=0.1%TFA MeCN/HO 勾配)によって精製し、黄色の油(134mg)、R=6.72分として望みの化合物を得た。
【0202】
(実施例8)
1−(2,5−ジクロロ−ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド:4−[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルカルバモイル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを、塩化メチレン中、10%のトリフルオロ酢酸を用い、周囲温度で一晩攪拌することによって、脱保護した。この反応物を、減圧下、濃縮し、得られたTFA塩を、DMF(1mL)およびDIEA(0.25mL)中に、溶解した。この混合物を、80℃で18時間、2,4,5−トリクロロピリミジン(52mg、0.28mmol)と共に加熱した。分取HPLC(Gilson:カラム=CombiHT SB−C189 5μM 21.2mm×100mm、溶離液=0.1%TFA MeCN/HO 勾配)による精製により、黄色の油(47mg)、R=5.97分として標題の化合物を得た;MS FIA 429.9(M+1)。
【0203】
(実施例9)
1−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノ−ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド(I−2):1−(2,5−ジクロロ−ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド(60mg、0.14mmol)化合物を、無水エタノール(1mL)およびイソプロピルアミン(0.2mL)中に溶解した。この混合物を、密閉したTeflon(登録商標)の反応容器中において、70℃で一晩加熱した。得られた混合物を、濾過し、分取HPLC(Gilson:カラム=CombiHT SB−C189 5μM 21.2mm×100mm、溶離液=0.1%TFA MeCN/HO 勾配)によって精製した。分取用TLC(1mm シリカ;溶離液 酢酸エチル)によるさらなる精製によって、無色の油(19.5mg)、R=4.82分として、標題の化合物を得た;LCMS 453.1(M+1);
【0204】
【化21−3】

(実施例10)
1−[5−クロロ−2−(1−ヒドロキシメチル−プロピルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ピペリジン−4−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド(I−1):1−(2,5−ジクロロ−ピリミジン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸[1−(3−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド(20mg、0.05mmol)を、無水エタノール(1mL)中に溶解し、それから(S)−2−アミノ−ブタノール(0.1mL)を添加した。この混合物を、密閉したTeflon(登録商標)の反応容器中において、80℃で一晩加熱した。得られた混合物を、分取用TLC(1mm シリカ;溶離液 酢酸エチル)によって精製し、無色の油(4mg)として標題の化合物を得た。R=4.42分;LC/MS 483.0(M+1);
【0205】
【化21−4】

(実施例11)
1−(5−クロロ−2−イソプロピルアミノ−ピリミジン−4−イル)−アゼチジン−3−カルボン酸[1−(4−クロロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチル]−アミド(I−12):(M+1)454;(M−1)452.2;
【0206】
【化21−5】

(実施例12)
CDK−2阻害アッセイ
化合物を、標準結合酵素アッセイを用いてCDK−2を阻害するこれらの能力について以下の方法でスクリーニングした(Foxら(1998)Protein Sci 7,2249)。
【0207】
0.1M HEPES 7.5、10mM MgCl、1mM DTT、25mM NaCl、2.5mM ホスホエノールピルビン酸塩、300mM NADH、30mg/mlピルビン酸キナーゼ、10mg/ml乳酸デヒドロゲナーゼ、100mM ATPおよび100μMペプチド(American Peptide,Sunnyvale,CA)を含んでいるアッセイストック緩衝溶液を、最終濃度30μMになるまで本発明の化合物のDMSO溶液に加えた。この結果として生じる混合物を、30℃で10分間インキュベートした。
【0208】
この反応を、このアッセイにおいて最終濃度25nMを与えるCDK−2/Cyclin Aのストック溶液10μLの添加により開始した。この反応速度を、BioRad Ultramarkプレートリーダー(Hercules,CA)を用いて、30℃、5分にわたる読取時間で340nmでの吸光度をモニタリングすることにより得た。このK値を、阻害濃度の作用として速度のデータから決定した。
【0209】
本発明の化合物は、CDK2を阻害することが見いだされた。
【0210】
(実施例13)
JAL阻害アッセイ
化合物のJAKの阻害を、G.R.Brownら、Bioorg.Med.Chem.Lett.2000,vol.10,pp575−579に記載される方法で、以下の方法をもってアッセイした。あらかじめ4℃で、ポリ(Poly)(Glu、Ala、Tyr)6:3:1でコートし、それからリン酸緩衝化生理食塩水0.05%およびTween(PBST)で洗浄したMaxisorbプレート中に、2μM ATP、5mM MgClおよびDMSO中の化合物溶液を加えた。この反応を、JAK酵素で開始し、このプレートを30℃で60分間インキュベートした。このプレートをそれから、PBSTで洗浄し、100μL HRP−結合体化4G10抗体を加え、そしてこのプレートを30℃で90分間インキュベートした。このプレートを再度PBSTで洗浄し、100μL TMB溶液を加え、そしてこのプレートを30℃でさらに30分間インキュベートした。硫酸(1Mを100μL)を加えて反応を停止させ、そしてこのプレートを、IC50値を決定する分析のために450nmで読み取り、光学密度を得る。本発明の化合物は、JAK3を阻害することが示された。
【0211】
(実施例14)
ERK2阻害アッセイ
化合物を、分光光度的な結合酵素アッセイによりERK2の阻害についてアッセイした(Foxら Protein Sci.1998,7,2249)。このアッセイにおいて、活性化した一定濃度(10nM)のERK2を、DMSO(2.5%)中でさまざまな濃度の本発明の化合物と30℃、10分間、10mM MgCl、2.5mM ホスホエノールピルビン酸、200μM NADH、150μg/mlピルビン酸キナーゼ、50μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼおよび200μMアークチド(erktide)ペプチドを含んでいる0.1M HEPES緩衝液(pH7.5)中でインキュベートした。この反応を、65μM ATPの添加により開始した。この340nMでの吸光度の減少の速度をモニターした。このK値を、阻害濃度の関数として速度データから決定した。
【0212】
本発明の化合物は、ERK2を阻害することが見いだされた。
【0213】
(実施例15)
ERK2阻害:細胞増殖アッセイ
化合物を、細胞増殖アッセイによりERK2の阻害についてアッセイし得る。このアッセイにおいて、完全培地を、RPMI 1640培地(JRH Biosciences)に10%ウシ胎児血清およびペニシリン/ストレプトマイシン溶液を添加することにより調製する。大腸癌細胞(HT−29細胞系)を、10,000細胞/ウェル/150μLの播種密度で96ウェルプレートの各84ウェルに添加する。この細胞を、37℃、2時間インキュベーションによりプレートに接着させる。試験化合物の溶液を、完全培地中で以下の濃度:20μM、6.7μM、2.2μM、0.74μM、0.25μMおよび0.08μMを得るために、系列希釈により調製する。試験化合物の溶液(50μL)を72個の各細胞含有ウェルに加える。この12個の残りの細胞含有ウェルに、最大増殖を測定するために完全培地(200μL)のみを加え、コントロール群をつくる。バックグラウンドを測定するために、この残りの12個の空のウェルに完全培地を加えビヒクルコントロール群をつくる。このプレートを37℃で3日間インキュベートする。H−チミジン(1mCi/mL,New England Nuclear,Boston,MA)のストック溶液をRPMI培地中で20μCi/mLに希釈し、それからこの溶液20μLを各ウェルに加える。このプレートをさらに37℃、8時間インキュベートし、それから採取し、そして液体シンチレーションカウンターを用いてH−チミジンの取り込みを分析する。
【0214】
(実施例16)
ERK1阻害アッセイ
化合物を、分光光度的な結合酵素アッセイによりERK1の阻害についてアッセイする(Foxら(1998)Protein Sci 7,2249)。このアッセイにおいて、活性化した一定濃度(20nM)のERK1を、DMSO(2.0%)中でさまざまな濃度の化合物と30℃、10分間、10mM MgCl、2.5mMホスホエノールピルビン酸、200μM NADH、30μg/mlピルビン酸キナーゼ、10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼおよび150μMアークチドペプチドを含んでいる0.1M HEPES緩衝液(pH7.6)中でインキュベートする。この反応を、140μM ATP(20μL)の添加により開始する。この340nMでの吸光度の減少の速度をモニターする。このK値を、阻害濃度の関数として速度データから評価する。
【0215】
(実施例17)
GSK−3阻害アッセイ
本発明の化合物を、標準結合酵素システム(Foxら、Protein Sci.1998,7,2249)を用いてGSK−3β(AA 1−420)活性を阻害するこれらの能力についてスクリーニングした。反応を、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、300μM NADH、1mM DTTおよび1.5%DMSOを含んでいる溶液中で行った。このアッセイにおいて最終基質濃度は、20μM ATP(Sigma Chemicals,St Louis,MO)および300μMペプチド(American Peptide,Sunnyvale,CA)であった。反応を、30℃、20nM GSK−3βで行った。結合酵素システムのこの化合物の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルビン酸、300μM NADH、30μg/mlピルビン酸キナーゼおよび10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0216】
アッセイストック緩衝溶液を、ATPおよび本発明の試験化合物を除いて上記に列挙するすべての試薬を含めて調製した。このアッセイストック緩衝溶液(175μl)を、96ウェルプレート中で、30℃、10分間、0.002μM〜30μMにわたる最終濃度で本発明の試験化合物5μlとインキュベートした。代表的に、12点の滴定を、本発明の試験化合物のDMSOでの系列希釈物を(10mMの化合物のストックから)調製することにより、娘プレート中で行った。この反応を、20μlのATP(最終濃度20μM)の添加により開始した。反応速度を、30℃で10分にわたりMolecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale,CA)を用いて得た。このK値を阻害濃度の関数として速度データから決定した。
【0217】
本発明の化合物は、GSK3を阻害することが見いだされた。
【0218】
(実施例18)
ROCK阻害アッセイ
本発明の化合物を、標準結合酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.1998,7,2249)を用いてROCKを阻害するこれらの能力についてスクリーニングした。反応を、100mM HEPES(pH7.5)、10mMMgCl、25mM NaCl、1mM DTTおよび1.5%DMSO中で行った。このアッセイの最終基質濃度は、13μM ATP(Sigma chemicals)および200μMペプチド(American Peptide,Sunnyvale,CA)であった。アッセイを、30℃、200nM ROCKで行った。結合酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルビン酸、400μM NADH、30μg/mlピルビン酸キナーゼおよび10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0219】
ROCK、DTTおよび本発明の関心のある試験化合物を除いて上記に列挙するすべての試薬を含む、アッセイストック緩衝溶液を調製した。56μlの試験反応物を384ウェルプレートに配置し、続いて本発明の試験化合物を含んでいる1μlの2mM DMSOストックを添加した(最終濃度30μM)。このプレートを30℃で約10分間プレインキュベートし、そしてこの反応を10μlの酵素(最終濃度100nM)の添加により開始した。反応速度を、BioRed Ultramarkプレートリーダー(Hercules,CA)を用いて、30℃で5分間の読取時間にわたって得た。DMSOを含んでいるが化合物を含んでいない標準ウェルに対して、50%より大きい阻害を示している本発明の化合物を滴定し、そして同じプロトコールを用いてIC50値を決定した。
【0220】
本発明の化合物は、ROCKの阻害剤であることが見いだされた。
【0221】
本発明の多くの実施形態を提示してきたが、基本的な構成は、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために変更され得るということが明白である。そのため、本発明の範囲は、実施例として提示された特定の実施形態よりもむしろ添付の特許請求の範囲により規定されることと理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
環Bが、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和の3〜7員環であり;
が、窒素またはCRであり;
が、R、ハロゲン、CN、NO、OR、SR、N(R)、C(O)R、もしくはCORから選択され、または:
とU−Rが、一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜2個のヘテロ原子を有する、飽和したか、部分的に不飽和であるか、または完全に不飽和の、必要に応じて置換された5〜7員環を形成し;
が、窒素またはC−T(m)であり;
TおよびQが各々に、飽和したか、または不飽和のC1−6アルキリデン鎖から独立して選択され、ここで:
該鎖のうちの2個までのメチレン単位が、−C(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)NRNR−、−CO−、−OC(O)−、−NRCO−、−O−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRNR−、−NRC(O)−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−SONR−、または−NRSO−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
mが、0または1であり;
Rの各々が、水素または必要に応じて置換されたC1−6脂肪族基から独立して選択され、もしくは:
同じ窒素上にある2個のRが、該窒素と一緒になって、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環もしくはヘテロアリール環を形成し;
が、CN、ハロゲン、N(R)、OR、R、またはArから選択され;
Arの各々は、必要に応じて置換された環であり、該必要に応じて置換された環が、6〜10員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜10員のヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する3〜10員のヘテロシクリル環から選択され;
が、CN、R、Ar、−(CHCH(R)R、または−(CHCH(R)CH(Rから選択され;
yの各々が、独立して0〜6であり;
Uは、原子価結合、−O−、−S−、−N(R)−、もしくはC1−6アルキリデン鎖から選択され、ここでUのうち2個までのメチレン単位が、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(R)SO−、−SON(R)−、−N(R)−、−CO−、−CO−、−N(R)CO−、−N(R)C(O)O−、−N(R)CON(R)−、−N(R)SON(R)、−N(R)N(R)−、−C(O)N(R)−、または−OC(O)N(R)−によって、必要に応じて、独立して置き換えられ;
が、(CHCH(Rまたは(CHCH(R)CH(Rから選択され;
yが、0〜6であり;
が、オキソ、R、F、Cl、N(R)、OR、SR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、SON(R)、N(R)O、ON(R)、またはN(R)N(R)から選択され;
pが、0〜4であり;
が、R、(CHOR、(CHN(R)、または(CHSRから選択され;
wが、0〜4であり;そして、
の各々が、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、Ar、(CHOR、COR、(CHN(R)、N(Ar)(R)、(CHSR、NRC(O)R、NRC(O)N(R)、C(O)N(R)、SOR、NRSOR、C(O)R、CN、またはSON(R)から独立して選択される、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、前記環Bが、1〜2個の窒素を有する、飽和の3〜7員環である、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、前記環Bが、1〜2個の酸素を有する、飽和の4〜7員環である、化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、前記環Bが、1個の酸素および1個の窒素を有する、飽和の5〜6員環である、化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、前記環Bが、0個のヘテロ原子を有する、飽和の3〜7員環である、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、前記環Bが、以下:
【化2】

から選択され、そして各環Bの部分が、QRおよび(Rで置換される、化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、ここで;
(T)が、水素、N(R)、ハロゲン、OH、3〜6員のカルボシクリル基、あるいは必要に応じて置換された基から選択され、該必要に応じて置換された基は、C1−6脂肪族、6員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜6員のヘテロアリール環から選択され;
が、水素、R、必要に応じて置換された3〜7員のカルボシクリル基、または必要に応じて置換された基から選択され、該必要に応じて置換された基は、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、3〜6員の複素環、または5〜6員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、ヘテロアリール環から選択され;
Uが、原子価結合、−CH−、−O−、−NR−、−NHC(O)−、または−NHCO−から選択され;
Qは、C1−4アルキリデン鎖であって、ここで、Qのうち1個または2個のメチレン単位が、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、−SO−、−SONH−、−NHC(O)−、−NHC(O)O−、または−NHSO−によって、独立して置き換えられ;
が、−(CHCH(Rであり;そして、
基の各々が、必要に応じて置換されたC1−4脂肪族、C5−6シクロアルキル環、フェニル環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する、5〜9員のヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する、5〜6員の複素環から独立して選択される、
化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、ここで:
(T)は、水素、N(R)、ハロゲン、OH、3〜6員のカルボシクリル基、または必要に応じて置換された基から選択され、該必要に応じて置換された基が、C1−6脂肪族、6員のアリール環または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜6員のヘテロアリール環から選択され;
が、−(CHCH(Rであり;
Uが、原子価結合、−CH−、−O−、−NR−、−NHC(O)−、または−NHCO−から選択され;
Qは、C1−4アルキリデン鎖であって、ここで、Qのうち1個または2個のメチレン単位が、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、−SO−、−SONH−、−NHC(O)−、−NHC(O)O−、または−NHSO−によって、独立して置き換えられ;
が、−(CHCH(Rであり;そして、
基の各々が、必要に応じて置換されたC1−4脂肪族、C5−6シクロアルキル環、フェニル環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する、5〜9員のヘテロアリール環、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される1〜2個のヘテロ原子を有する、5〜6員の複素環から独立して選択される、化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、ここで:
(T)は、水素、N(R)、ハロゲン、OH、3〜6員のカルボシクリル基、または必要に応じて置換された基から選択され、該必要に応じて置換された基が、C1−6脂肪族、6員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜6員のヘテロアリール環から選択され;
が、水素、R、必要に応じて置換された3〜7員のカルボシクリル基、あるいは必要に応じて置換された基から選択され、該必要に応じて置換された基は、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、3〜6員の複素環、または5〜6員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、ヘテロアリール環から選択され;
Uが、原子価結合、−CH−、−O−、−NR−、−NHC(O)−、または−NHCO−から選択され;
Qは、C1−4アルキリデン鎖であって、ここでQのうち1個または2個のメチレン単位が、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、−SO−、−SONH−、−NHC(O)−、−NHC(O)O−、または−NHSO−によって、独立して置き換えられ;
が、−(CHCH(Rであり;そして、
基の各々が、−OR、−COR−、−(CHN(R)、またはN(Ar)(R)から独立して選択される、化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物であって、ここで:
(T)は、水素、N(R)、ハロゲン、OH、3〜6員のカルボシクリル基、または必要に応じて置換された基から選択され、該必要に応じて置換された基が、C1−6脂肪族、6員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、5〜6員のヘテロアリール環から選択され;
が、−(CHCH(Rであり;
Uが、原子価結合、−CH−、−O−、−NR−、−NHC(O)−、または−NHCO−から選択され;
Qが、C1−4アルキリデン鎖であって、ここでQのうち1個または2個のメチレン単位が、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)NH−、−OC(O)NH−、−SO−、−SONH−、−NHC(O)−、−NHC(O)O−、または−NHSO−によって、独立して置き換えられ;
が、−(CHCH(Rであり;そして、
基の各々が、−OR、−COR−、−(CHN(R)、またはN(Ar)(R)から独立して選択される、化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物であって、該化合物が、以下の化合物
【化3】

【化4】

から選択される、化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物、および薬学的に受容可能なキャリア、薬学的に受容可能なアジュバント、または薬学的に受容可能なビヒクルを含有する、組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物であって、治療因子をさらに含有し、該治療因子が、増殖抑制因子、抗炎症因子、免疫調節因子、神経栄養因子、心臓血管疾患を処置するための因子、肝臓疾患を処置するための因子、抗ウイルス因子、血液疾患を処置するための因子、糖尿病を処置するための因子、または免疫不全障害を処置するための因子から選択される、組成物。
【請求項14】
生物学的サンプルにおいて、プロテインキナーゼの活性を阻害する方法であって、該生物学的試料を、
a)請求項1に記載の化合物;または
b)請求項12に記載の組成物
と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項15】
患者において、プロテインキナーゼの活性を阻害する方法であって、該患者に、請求項12に記載の組成物を、投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
炎症性疾患、自己免疫疾患、骨破壊性疾患、増殖性疾患、感染症、神経変性疾患、アレルギー、または発作における再灌流/虚血、心臓発作、脈管形成の疾患、器官低酸素症、脈管の過形成、心肥大、トロンビン誘導性の血小板凝集、もしくは炎症誘発性サイトカイン関連状態を処置するか、または該疾患および状態の重篤度を軽減する方法であって、その必要性のある患者に、請求項12に記載の組成物を、投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、該方法は、炎症性疾患を処置するためか、または該疾患の重篤性を軽減するために使用され、該炎症性疾患が、急性膵炎、慢性膵炎、喘息、アレルギー、または成人呼吸促進症候群から選択される、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、該方法は、自己免疫疾患を処置するためか、または該疾患の重篤度を軽減するために使用され、該自己免疫疾患が、糸状体腎炎、慢性関節リュウマチ、全身エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、活動性慢性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、もしくは対宿主性移植片病から選択される、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、該方法は、増殖性疾患を処置するためか、または該疾患の重篤度を軽減するために使用され、該増殖性疾患が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポジ肉腫、もしくは多発性骨髄腫から選択される、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、該方法は、神経変性疾患を処置するためか、または該疾患の重篤度を軽減するために使用され、該神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンティングトン病、脳虚血、または外傷、発作、グルタミン酸神経毒性、もしくは低酸素症によって引き起こされる神経変性疾患から選択される、方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法であって、該方法が、発作もしくは心筋虚血における再灌流/虚血、腎虚血、心臓発作、器官低酸素症、もしくはトロンビン誘導性血小板凝集を処置するためか、または該疾患および状態の重篤度を軽減するために使用される、方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、該方法が、T細胞の活性化、もしくは異常な免疫応答と関連した状態を処置するためか、または該状態の重篤度を軽減するために使用される、方法。
【請求項23】
請求項16に記載の方法であって、該方法が、脈管形成の障害を処置するためか、または該障害の重篤度を軽減するために使用され、該障害が、固形癌、眼新脈管形成、もしくは乳児血管腫(infantile haemangiomas)から選択される、方法。
【請求項24】
請求項16に記載の方法であって、該方法が、自己免疫疾患、アレルギー、慢性関節リウマチ、もしくは白血病を処置するためか、または該疾患もしくは状態の重篤度を軽減するために使用される、方法。
【請求項25】
請求項16に記載の方法であって、該方法が、アレルギー性反応、I型過敏症反応、喘息、移植片拒絶、対宿主性移植片病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)、白血病、もしくはリンパ腫を処置するためか、または該疾患もしくは状態の重篤性を軽減するために使用される、方法。
【請求項26】
請求項16に記載の方法であって、増殖抑制因子、抗炎症因子、免疫調節因子、神経栄養因子、心臓血管疾患を処置するための因子、肝臓疾患を処置するための因子、抗ウイルス因子、血液障害を処置するための因子、糖尿病を処置するための因子、免疫不全障害を処置するための因子から選択される、さらなる治療因子を、前記患者に投与するさらなる工程を包含し、ここで:
該さらなる治療因子が、処置される該疾患に対して適切であり;そして、
該さらなる治療因子が、前記組成物と共に単回の投薬量形態として投与されるか、または多数回投薬量形態の一部分として前記組成物とは別個に投与される、方法。
【請求項27】
黒色腫、白血病、リンパ腫、神経芽細胞腫、または結腸癌、胸部癌、胃癌、卵巣癌、頚部癌、肺癌、中枢神経系(CNS)癌、腎臓癌、前立腺癌、膀胱癌、もしくは膵臓癌から選択される癌を処置するか、または該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する必要性がある患者において、該疾患もしくは状態を処置するかまたは該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する方法であって、請求項12に記載の組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、該方法が、黒色腫、または胸部癌、結腸癌、もしくは膵臓癌から選択される癌を処置するためか、または該疾患もしくは状態の重篤度を軽減するために使用される、方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、該方法が、前立腺癌、卵巣癌、もしくは膵臓癌から選択される癌を処置するためか、または該癌の重篤度を軽減するために使用される、方法。
【請求項30】
自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、精神医学障害、糖尿病、脈管形成疾患、タウオポシー、神経学的障害、神経変性障害、脊髄損傷、緑内障、禿頭症、もしくは心臓血管疾患を処置するか、または該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する必要性がある患者において、該疾患もしくは状態を処置するかまたは該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する方法であって、請求項12に記載の組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記疾患、前記障害または前記状態が、アレルギー、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病、AIDS関連性痴呆、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー ゲーリグ病)、多発性硬化症(MS)、頭部外傷に起因する損傷、精神分裂病、不安、双極性障害、タウオポシー、脊髄損傷、末梢神経損傷、心筋梗塞、心筋細胞肥大、緑内障、注意欠陥障害(ADD)、うつ病、睡眠障害、再灌流/虚血、発作、脈管形成障害、また禿頭症から選択される、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記疾患、前記障害、または前記
状態が、発作である、方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であって、前記疾患、前記障害、または前記状態が、アルツハイマー病である、方法。
【請求項34】
請求項30に記載の方法であって、前記障害が、神経学的障害、または神経変性障害である、方法。
【請求項35】
男性患者における、精子運動性を減少させる方法であって、請求項12に記載の組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項36】
喘息もしくは鼻炎を処置するか、または該喘息もしくは鼻炎の重篤度を軽減する必要性がある患者において、該疾患もしくは状態を処置するかまたは該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する方法であって、該方法が、請求項12に記載の組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項37】
糖尿病を処置するか、または該糖尿病の重篤度を軽減する必要性がある患者において、該疾患もしくは状態を処置するかまたは該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する方法であって、該方法が、請求項12に記載の組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項38】
高血圧、狭心症、動脈硬化、もしくは網膜症を処置するか、または該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する必要性がある患者において、該疾患もしくは状態を処置するかまたは該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する方法であって、該方法が、請求項12に記載の組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項39】
癌を処置するか、または該癌の重篤度を軽減する必要性がある患者において、該疾患もしくは状態を処置するかまたは該疾患もしくは状態の重篤度を軽減する方法であって、
a)請求項1に記載の化合物;または
b)請求項12に記載の組成物
を使って、CDK2を阻害することによって、該癌細胞が、増殖期へ移行することを遮断する工程を包含する、方法。
【請求項40】
グリコゲン合成を増加させる必要性がある患者において、該合成を増加させる方法であって、該方法が、治療上効果的な量の請求項12に記載される組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項41】
グルコースの血中濃度を下げる必要性がある患者において、該血中濃度を下げる方法であって、該方法が、治療上効果的な量の請求項12に記載される組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項42】
過剰にリン酸化されたタウタンパク質の生産を阻害する必要性がある患者において、該タウタンパク質の生産を阻害する方法であって、該方法が、治療上効果的な量の請求項12に記載される組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項43】
β−カテニンのリン酸化を阻害する必要性がある患者において、該リン酸化を阻害する方法であって、該方法が、治療上効果的な量の請求項12に記載される組成物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2007−513172(P2007−513172A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542759(P2006−542759)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040422
【国際公開番号】WO2005/068468
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】