説明

複素環式化合物、ならびに電子素子および光電子素子におけるそれらの使用

本発明は、電子素子、光電子素子またはエレクトロルミネセント素子における電荷移動材料、遮断材料または光拡散材料としての複素環式化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、複素環式化合物、ならびに電子素子、光電子素子およびエレクトロルミネセント素子(例えば、有機発光ダイオード(OLED)、電界効果トランジスタ、光検出器および有機太陽電池素子(OPV))におけるそれらの使用に関する。上記使用は、電荷移動材料、光散乱材料および/または遮断材料、好ましくは正孔伝導物または電子遮断物としての使用である。
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は、材料の特性を利用しており、ここで当該特性は、電圧の印加によって適切な電荷キャリアが形成されているときにそれらが光を発する特性である。これらの電荷キャリアの再結合が励起状態を形成し、励起状態に続いて、発光によって基底状態になる。OLEDは、それらが、それらの非常に小型の設計および低電力消費のために平坦なディスプレイ、および携帯機器に適用されるディスプレイの製造に好適なので、陰極線管および液晶ディスプレイにとっての興味深い代替物である。上記携帯機器は、例えば携帯電話機、ノートブック、PDAなどである。
【0003】
有機発光ダイオードの効率を向上させるために、有機発光ダイオードは、実際の発光層に加えて電荷移動層をしばしば有しており、これらの移動層は、負の電荷キャリアおよび正の電荷キャリアの発光層への移動を担っている。これらの電荷移動層は、移動させる電荷キャリアの種類に応じて、正孔伝導物および電子伝導物に分けられる。
【0004】
有機発光ダイオード(OLED)は、一般的に、有機材料の種々の層、電圧の印加によって光を発するように作製され得るエレクトロルミネセント物質を含んでいる少なくとも1つの層(発光層)からなる(Tang、米国特許第4,769,292号)。高効率のOLEDについては、例えば米国特許第7,074,500号に記載されている。
【0005】
有機太陽電池素子は、従来技術(例えば、米国特許出願公開第2009/217980号および米国特許出願公開第2009/235971号)に基づいて公知である。有機太陽電池素子は、基板上に層状の重なりを備えており、当該層状の重なりが、2つの電極(陽極および陰極)の間に配置されている少なくとも1つの有機光吸収層を有している。少なくとも1つの電極は、太陽電池素子が機能すべき波長範囲、典型的に可視範囲および近赤外範囲にある吸収層の強い吸収帯において透過性である必要がある。
【0006】
太陽電池素子の吸収層はドナー−アクセプタのヘテロ接合によって形成され得る。このヘテロ接合は、ドナーおよびアクセプタが隣接している層(必要に応じて中間層を介して)に形成されている浅い接合であり得る。また、ヘテロ接合は、ドナーおよびアクセプタが同じ層に混合されているような容量ヘテロ接合を形成し得る。
【0007】
また、太陽電池素子は、少なくとも2つの吸収層がpn接合によって電気的に接続されているように、積層され得る(再結合ユニットまたは接続ユニットとしても知られている)。そのようなpn接合は、例えば米国特許出願公開第2009/045728号および欧州特許第2045843号に基づいて公知である。
【0008】
また、太陽電池素子は、透明であることが必須な有機正孔半導体層および有機電子半導体層を好ましく有している。これらは、光学的な最適化のために使用されているが、吸収に対して寄与していない。さらに、これらの移動層のすべては好ましくドープされている。
【0009】
ドープされているOLEDおよび太陽電池素子、その他にタンデム型の太陽電池素子が、例えばWalzer et al., Chem. Rev. 2007, 107, pages 1233-1271に基づいて公知である。
【0010】
有機素子は少なくとも1つの有機半導体層を含んでいる素子である。有機半導体層は、他の有機分子または他の有機重合体のなかでもいわゆる“小分子”を含んでおり、単層または他の有機材料(例えば、米国特許出願公開第2005/0110009号に記載されている)もしくは無機分子との混合物のいずれかとしての上記小分子は、半導体特性または金属様の特性を有している。
【0011】
無機半導体素子および/または無機半導体層の高い割合によって構成されている半導体素子は、同時に1つ以上の有機半導体層もしくは有機半導体材料またはいわゆる有機−無機混成成分を含んでいる。また、本発明に照らして、これらの有機−無機混成成分は有機成分として理解されるべきである。
【0012】
素子(例えば、有機発光ダイオード)は、特に白色光を発するための一実施形態において、照明および表示の分野における用途にとって大きな将来性を有している。この数年において、明らかな改良が、達成されている効率および素子の寿命についてこの分野において達成されている。今日、安定な白色のOLEDの電力効率は10〜50lm/Wの範囲であり、10000時間を超える寿命が実現され得る。しかし、一般的な照明の用途の分野において広く着想されている商品化のために、特に電力効率についてさらなる改良が必要とされる。それは、白色光を発する高効率な技術(例えば蛍光灯)に関する今日の市場は、例えば最大で100lm/Wの効率が中心となっているからである。
【0013】
典型的な有機発光ダイオードは、発せられる光の約25%のみが素子から放射されるという欠点を有している。光の約50%は、2つの電極の間にある有機層の構成における内部モードとして残る。さらなる20%は、基板における全反射に起因して基板において損失される。この理由は、光が光学媒体におけるOLED内において約1.6〜1.8の屈折率を有して生成されることである。この光がより低い屈折率を有して光学媒体(例えば、OLED積層物内の他の層、OLEDが形成されている基板または電極の1つ)に衝突する場合に、入射の角度がある値を超えると、結果として全反射が生じる。
【0014】
また、照明技術における白色光の利用のために、安価に製造工程に組み込まれ得る好適な出力方法を採用することが必要である。照明用途のための1cmのOLEDの面積は、その用途が経済的に合理的である場合にわずか数セントの費用になり得ることが今日において想定されている。しかし、またこれは、特に安価な方法のみが光の出力を増大させるためのすべてにおいて使用され得ることを意味する。いわゆる小分子に基づくOLEDは、そのすべてが熱的に個々に蒸着される2〜20層から典型的になる。熱的に堆積されるさらなる単一の層の補助を用いて出力を大きく向上させることが現在において可能であれば、いずれは、条件が出力方法のコストについて満たされる。
【0015】
また、発光素子としてのOLEDの用途のために、大面積におよぶ素子を設計する必要がある。例えば、OLEDが1000cd/mの輝度において動作される場合、結果として、数平方メートルの範囲の面積が、例えば事務室を照明するために必要になる。
【0016】
〔当該技術の一般的な状態〕
当該技術の状態によれば、ベンジジン誘導体(例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ジ−(N−カルバゾリル)−ジフェニル(CBP)およびN,N’−ジ−(アルファ−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(アルファ−NPD))は、正孔導電材料および/または電子遮断材料としてこれまで使用されているが、それらは、それらの化合物のガラス転移温度(TPD:T=65℃)に実質的に依存する熱安定性を欠いている。
【0017】
より低い熱安定性は、長時間にわたる熱ストレスのもとに電子素子または光電子素子がその効率を失っていくような、層状の構成の崩壊または異なる層からの異なる分子の混入を生じ得る。
【0018】
多環式の芳香族の構造を有している材料(例えば、アントラセン、ペンタセン、テトラセン、フタロシアニン)およびフラーレン C60といった構造は、有機材料にとっての高い電荷キャリア移動度のために、素子に使用されている。例えば、薄膜電界効果トランジスタ(OTFT)は本明細書において述べられ得る。
【0019】
従来の方法(例えば真空蒸着)を介して、有機材料および/または重合体材料の複数の層を有しているそのような素子が製造され得る。また、上記層の相対的に高い結晶化度は高い電荷キャリア移動度を部分的に生じる。しかし、これらの分子の層は、層の結晶化という欠点を有しており、したがって素子を不安定にさせ得る。より大きな分子(例えば、ゼクシチオフェン)は、重大な分解を起こすことなく、首尾よく蒸着され得ない。
【0020】
フラーレン(主にここではC60)は、大きなn型の電荷キャリア移動度を有しており、OTFTにおける活性半導体層としても使用されている。しかし、C60は酸素の混入を非常に生じ易く、例えば、素子は非常なコストを費やして封入される必要がある。
【0021】
上述の有機材料に加えて、室温または高温において効率的なOTFTを、例えば通常の製造方法によってそれらから、製造するために十分な電荷キャリア移動度を有している有機材料はほとんどない。OTFTの効率的な製造のための他の方法は、複雑さが非常に少なく、また改良(例えば、表面の誘電体の変更、材料の誘電体の変更、電荷キャリア注入層)を必要としている。
【0022】
高い電荷キャリア移動度は、OLEDもしくはOPVにおける空間電荷効果に起因する損失の最小化と、またデジタル回路もしくはアナログ回路および発振回路(発振器)の有用な振動数の増加とのために所望されている。安定なドーパントを用いて高い導電性を示す新たな材料が基本的に所望されている。
【0023】
空間電荷効果に起因する有機素子における電力損失を最小化する方法は、ドーパント層の使用である。ドーピングは、層の導電性を増大させ、したがって低い電荷キャリア移動度の問題を回避する。
【0024】
有機半導体は、無機半導体(シリコン半導体)を用いた場合と同様にドーピングによってそれらの電気特性(特にそれらの導電率)について変更され得ることが知られている。マトリクス材料に電荷キャリアを生じさせることによって、初期の非常に低い伝導性の向上および半導体のフェルミ準位の変更が、使用されるドーパントの種類に依存して達成される。ここでは、ドーピングは、抵抗損が低減され、接触層と有機層との間の電荷キャリアの向上した転移が達成されるような、電荷移動層の導電性の増加を導く。ドーピングは、ドーパントから近傍のマトリクス分子への電荷移動(n型ドーピング、電子の伝導性が向上)、および/またはマトリクス分子から近傍のドーパントへの電子の移動(p型ドーピング、正孔の伝導性が向上)によって特徴付けられる。電荷移動は、完全であり得るか、または不完全であり得、例えばFT−IR測定からの振動帯の観察によって決定され得る。
【0025】
薄膜試料の導電性は、導体材料(例えば、金、またはインジウム−スズの酸化物)製の接点が基板に当てられる、いわゆる二点法を用いて測定され得る。つぎに、試験される薄膜は、上記接点が薄膜によって覆われるように、大面積にわたって基板に当てられる。そのときに流れている電流が、接点に電圧を印加した後に測定される。接点の形状および試料の層厚に基づいて、薄膜材料の導電性が、それらによって決定される抵抗から得られる。
【0026】
ドープされている層を有している素子の動作温度において、ドープされている層の導電性はドープされていない層の導電性を超えているはずである。そのようにするために、ドープされている層の導電性は、室温において高くある(特に1×10−8S/cmであるが、好ましくは10−6S/cm〜10−5S/cmの範囲にある)べきである。ドープされていない層は、1×10−8S/cm未満、通常は1×10−10S/cm未満の導電性を有している。
【0027】
熱安定性は、工程において層(ドープされている層またはドープされていない層)を加熱することおよび静止時間後における導電率を測定することによって、同じ方法および/または同じ構造を用いて決定され得る。層が所望の半導体特性を失うことなく耐え得る最高の温度は、導電性の崩壊の直前におけるそのときの温度である。例えば、上述のように並行している2つの電極を有している基板上にあるドープされている層は、各上昇のあとの10秒間の待機のあとに1℃ずつ上昇させて加熱され得る。それから導電性が測定される。導電性は、温度とともに変化し、特定の温度を超えると突如として低下する。したがって、熱安定性は導電性が突如として低下しない温度を示す。
【0028】
これらの方法において、マトリクス材料が十分に高い純度を有していることを確かめることが重要である。
【0029】
関連する種々の材料の特性は、最低空軌道(略称:LUMO、同義語:電子親和力)および最高被占軌道(略称:HOMO、同義語:イオン化ポテンシャル)のエネルギー層を介して説明され得る。
【0030】
イオン化ポテンシャル(IP)を決定する1つの方法は、紫外光電子分光法(UPS)である。一般的にイオン化ポテンシャルは固相について決定されるが、気相についてもイオン化ポテンシャルを測定可能である。2つの値は、固相効果(例えば、光イオン化過程に生じる正孔の分極エネルギー)に起因して異なる(N. Sato et al., J. Chem. Soc. Faraday Trans. 2, 77, 1621 (1981))。分極エネルギーの典型的な値は約1eVであるが、より大きな偏りを生じ得る。
【0031】
イオン化ポテンシャルは、光電子の高い運動エネルギー(すなわち最も弱い結合を有している光電子のエネルギー)の範囲における光電子放出スペクトルの開始に基づいている。
【0032】
関連する方法(つまり逆光電子分光法(IPES))が電子親和性(EA)を決定するために使用され得る。しかし、この方法は非常に汎用性が低い。また代替的に、固相のエネルギー準位が酸化電位(Eox)および還元電位(Ered)の電気化学的測定によって決定され得る。シトボルタメトリー(CV)は好適な方法である。電気化学的な酸化から固相のイオン化ポテンシャルを導出する経験的な方法は、文献(例えば、B.W. Andrade et al., Org.Electron. 6, 11 (2005); J. Amer. Chem. Soc. 127, (2005), 7227)に記載されている。
【0033】
還元電位を電子親和性に変換する非経験的な公式が知られている。これは、電子親和性の決定における困難さが原因である。したがって、簡単な公式がしばしば使用される:IP=4.8eV+e・Eox(対フェロセン/フェロセニウム)および/またはE=4.8eV+e・Ered(対フェロセン/フェロセニウム)(B.W. Andrade, Org. Electron. 6, 11 (2005)およびそれにおける参考文献25〜28を参照すればよい)。他の基準電極または酸化還元対が電気化学的ポテンシャルを参照する場合のための、変換方法が知られている(A.J. Bard, L.R. Faulkner, "Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications," Wiley, 2nd edition, 2000を参照すればよい)。溶媒に影響することに関する情報は、N.G. Connelly et al., Chem. Rev. 96, 877 (1996)に見られ得る。
【0034】
イオン化エネルギーおよび/または電子親和性という用語との同義語として用語“HOMOのエネルギー”E(HOMO)および/または“LUMOのエネルギー”E(LUMO)を使用することは、慣例的ではあるが、実際には正確ではない(クープマンの定理)。イオン化ポテンシャルおよび電子親和性は、より高い値が放出されている電子または付加されている電子のより強い結合を意味するものであることが、指し示されるべきである。分子軌道(HOMO、LUMO)の段階は反対方向に分布している。したがって、概算において、IP=−E(HOMO)およびEA=−E(LUMO)が有効である。
【0035】
国際公開第2007/118799号には、有機半導体としてキノイドヘテロアセン材料が記載されている。日本国特許公開2002−124384号公報には、12−ジアザペンタタンおよびそれらの誘導体が記載されている。また、ジアザペンタタンは、米国特許出願公開第2003/099865号に開示されている。
【0036】
米国特許第6,242,155号は、第4級アミン官能基を有している非対称性の電荷移動材料が使用されている有機発光ダイオードに関する。これらの第4級アミン官能基は、互いに結合されていないが、また互いに直接的にか、または飽和もしくは不飽和の架橋を介して連結され得る、ビフェニルのコアおよびさらなる2つのフェニル基から構成されている。飽和および/または不飽和のC2架橋はそのような連結として提案されているが、付加的な任意の置換を有していてはならない。
【0037】
当該技術の状態において、従来の電子素子、光電子素子およびエレクトロルミネセント素子に使用されている正孔伝導化合物および/または電子遮断化合物の熱安定性、電荷キャリア移動度および大気における安定性の欠如は、これらの化合物の使用を制限している技術的な欠点を代表している。
【0038】
したがって、本発明の目的の1つは、当該技術の状態の欠点を克服し、改良された電子素子、光電子素子およびエレクトロルミネセント素子をもたらす材料、特に正孔伝導化合物、光散乱化合物および/または電子遮断化合物を提供することである。また同時に、これらの化合物は上記素子のより高い効率を可能にする。
【0039】
本発明の他の目的は、0V〜1.2Vの間(対フェロセン/フェロセニウム)、好ましくは0.2V〜1.3Vの間(対フェロセン/フェロセニウム)、より好ましくは0.4V〜1Vの間(対フェロセン/フェロセニウム)の酸化電位を有している材料を提供することである。酸化電位に関する特定の電位の範囲は、0.5V〜0.8Vの間(対フェロセン/フェロセニウム)である。これらの範囲は、OLEDの他の活性な有機移動層、放射層、および有機太陽電池素子における吸収層の中および外に正孔を移動させるための素子の他の層に対するエネルギー的な適合を確保するために好ましい。
【0040】
この目的は、請求項1に係る複素環式化合物を用いることによって達成される。当該複素環式化合物は、電子素子、光電子素子およびエレクトロルミネセント素子における、例えば従属請求項に係る有機半導体材料である。好ましい実施形態は下位の請求項から得られる。
【0041】
本発明の複素環式化合物は、電荷移動材料、特に有機発光ダイオードまたは太陽電池素子における正孔輸送層、および付加的もしくは同時に(光)散乱層として使用されることが、特に好ましい。
【0042】
基板上に積層されている層構成を有している有機発光素子、特に有機発光ダイオードは、特許性がない。基板上に積層されている層構成は、光学的に透明な基底電極、被覆電極、以下の層構成を有している。当該層構成は、上記基底電極と被覆電極との間にある、それらとの電気的接続を有している少なくとも1つの有機発光層、および上記基板と接して当該基板と基底電極との間にある、自己結晶化する有機材料からなる光散乱有機層によって形成されている。
【0043】
本発明に鑑みて、“ドーパント”という用語は、酸化還元ドーパントとしても知られている電気的なドーパントであり、本発明に記載されている特性を有していると理解される。
【0044】
本発明の複素環式化合物は、電子素子、光電子素子およびエレクトロルミネセント素子における電荷移動材料、光散乱材料および/または遮断材料として首尾よく使用され得る。それらは、非常に高い電荷キャリア移動度および大気中における良好な安定性を有している。また、上記化合物が非常に安価に製造され得ることが強調されるべきである。必要とされる合成は、まれに3段階の合成変換を含んでおり、通常はより少ない。反応の収率は良好または非常に良好である。使用される開始物質は安価な市販の化学物質である。
【0045】
上記複素環式化合物は、以下の式A〜E:
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
(ここで、XおよびYは互いに異なっているが、その他の点では独立して、酸素、硫黄、セレンおよびテルル選択され;nは、1、2、3、4、5または6であり;式AにおいてR〜Rは独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環、OR’から選択され、ここで、R’は独立して、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環、ならびにNR’’およびSR’’から選択され、R’’は独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環から選択され;式BにおいてR〜Rは独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環、縮環されている複素環、OR’、SR’およびNR’から選択され、ここで、R’は独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環から選択され;式C〜EにおいてR1〜9は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環、縮環されている複素環、OR’、SR’およびNR’から選択され、ここで、R’は独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環から選択される)を有している化合物である。
【0052】
使用されている場合、“アルキル”という用語は、分枝鎖状または直鎖状の様式に配列され得る10以下の炭素原子を有しているアルキル基を好ましく意味する。
【0053】
例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチルおよびイソアミルが挙げられる。
【0054】
使用されている場合に、“アリール”という用語は、6〜20の炭素原子を有しているアリール基、特に好ましくはフェニル、ナフチル、ビフェニルまたはアントラセニルを好ましく意味する。また、アリール基は、例えば1、2または3つの置換体を用いて、置換され得る。置換体は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜4−アルキル、C1〜4−アルコキシ、C1〜4−アルキルチオ、フェニル、ベンジル、フェノキシまたはフェニルチオから好ましく選択される。
【0055】
使用されている場合に、“ヘテロアリール”という用語は、炭素環式の芳香族環系を好ましく意味し、当該炭素環式の芳香族環系は、例えばONSまたはSeから選択される1つ以上、好ましくは2〜4つの異種原子を有し得る5〜8つの原子の環の大きさを有している。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チエニル、キノリル、インドリルまたはチアゾリルが挙げられる。ヘテロアリール基は任意に置換され得る。
【0056】
縮環されている(芳香族の)炭素環としては、例えばフェニルまたはナフチルが挙げられる。
【0057】
縮環されている(芳香族の)複素環としては、例えばピリジル、フリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チエニル、キノリル、インドリルまたはチアゾリルが挙げられる。
【0058】
本明細書において所望される化合物およびそれらの誘導体は、電子素子の正孔移動材料(MTH)および/または光散乱層として好ましく使用される。電子素子は、有機太陽電池素子、有機発光ダイオード、有機薄膜トランジスタ、ダイオード、光ダイオードまたは他のものであり得る。また、素子は、受動素子(例えば、導電経路、電流ヒューズ、アンテナおよび抵抗)であり得る。他の半導体層におけるHTMの使用が可能であり、本明細書に記載の素子に限定されないことが明らかである。
【0059】
本発明の複素環式化合物は、少なくとも1つの本発明の正孔移動層が透明電極より反射電極の近傍にあるように、太陽電池素子における少なくとも1つの正孔移動層に使用されることが、特に好ましい。
【0060】
ドープされているHTM層は、種々の素子に使用され得、所望の導電性が実現されるとすぐに、材料の選択において大きな自由度がある。また、多くの場合にドープされていない層だけでなく、特別な層のために、特別なエネルギー準位が真性の光活性層における電荷キャリアの注入−整列−取出しの場合のように必要とされる。光電子素子において、電荷キャリア移動の役割を果たす層は、必須に光吸収性であってはならない。
【0061】
本明細書に記載の化合物およびそれらの誘導体は、材料の層、または当該層に対する機能的な特性を追加する他の材料との混合物(例えばHTMとの混合物)として、個々に使用され得る。
【0062】
新規な材料はp型ドーパントを用いて好ましくドーピングされる。好ましいp型ドーパントは、例えば米国特許出願第10/792133号、米国特許出願第61/107,826号および米国特許出願第11/047972号から知られている。ドーパントは有機型または無機型であり得る。またドーパントは前駆体から形成され得る。ドーパントは好ましくは有機アクセプタであり、結果としてそれらはより容易な処理性および高い安定性(特に拡散に対するより高い熱安定性)を有している。100g/mol〜2000g/mol、より好ましくは200g/mol〜1000g/mol、より好ましくは300g/mol〜1000g/molの分子量を有しているドーパントが好ましい。ドーピングのモル濃度は、1:1000(アクセプタ分子:マトリクス分子)〜1:2、好ましくは1:100〜1:5、より好ましくは1:100〜1:10である。また、個々の場合において、1:2より高い濃度においてドーピング分子が使用されるドーピング率は、例えば特に高い伝導性が必要とされるときに、考慮され得る。有機電極が例えば国際出願第PCT/EP07/00208号に記載のように製造されるときに、特に高い伝導性が使用される。
【0063】
本発明の材料およびそれらの誘導体は、OLED、およびドープされている層としての正孔輸送層に好ましく使用される。また、ドープされていない層は中間層として使用され得ることが規定されている。また、本発明の材料(特にジオキサ−ジチア−ペンタセン誘導体)は、電子遮断物、励起子遮断物、または同時に励起子遮断物と電子遮断物との両方として好ましく使用される。
【0064】
本発明の材料(特にジオキサ−ジチア−ペンタセン誘導体)は、有機太陽電池素子、ドープされている正孔輸送層に好ましく使用される。また、有機太陽電池素子は、電子遮断物、正孔遮断物または励起子遮断物としてドープされていない層を有し得る。当業者は、有機太陽電池素子に通じている(欧州特許第1861886号および欧州特許第1859494号を参照すればよい)。
【0065】
また、本発明の材料は、必要に応じてpn接合の一部として使用され得る。特に、層配列.../発行層/.../本発明の材料を含んでいるn型ドープされている層/.../陰極(OLED用)および/または.../吸収層/...n型ドープされているETL/本発明の材料を含んでいるp型ドープされている層/.../陽極(OPV用)。また、少なくとも1つの中間層は、n型ドープされているETLと本発明の材料を含んでいるp型ドープされている層との間に必要に応じて備えられ得る。
【0066】
また、複素環式化合物(好ましくは式AもしくはBの化合物(ここでR1〜6=H)または同じものの異性体の混合物が選択される)は、有機光散乱層において結晶化形態として存在していることが、特に好ましい。
【0067】
式DおよびEに係る化合物はより低い結晶化度を有している。したがってこれらの材料は安定な化合物を製造するために特に安定である。
【0068】
式A、BおよびCに係る化合物、主に式AおよびBに係る化合物は、より高い結晶化度を有している。これらの化合物を有している素子はより低い安定性を有していると予想される。意外にも、本発明の層は、さらなる任意の処理(例えば熱処理)を必要とせずに、結晶層をすでに形成していることが見出されている。したがってこれらの結晶層は安定である。
【0069】
また、高い電荷キャリア移動度のために、材料は有機薄膜トランジスタにおける活性層として好ましく使用される。また、活性層はドープされている領域を含み得るが、例えば注入層は実質的にドープされていない。当業者は有機薄膜トランジスタおよびそれらの製造に通じている(例えば米国特許出願公開第2006/202196号を参照すればよい)。
【0070】
また、本発明の材料およびそれらの誘導体は、可視波長の範囲において低い吸収を有している(通常は大きなHOMO−LUMOギャップ(バンドギャップ)を有している場合である)ことが好ましい。少なくとも1eVのバンドギャップが好適であり、少なくとも1.5eVのバンドギャップが好ましく、少なくとも2eVのバンドギャップがより好ましい。ドープされているか、またはドープされていない透明な半導体層は、これらの層における吸収がそれらの効率を低下させるので、光電子素子における光学的に不活性な層に使用される。また、ドープされているか、またはドープされていない透明な半導体層は、いわゆる透明電極を製造するために完全または実質的に透明な構成要素に使用される。透明なOLEDは、例えば米国特許出願公開第2006/0033115号および米国特許出願公開第2006/0284170号に説明されている。
【0071】
本発明によれば、特に好ましい実施形態において、底面発光型の電子素子、光電子素子またはエレクトロルミネセント素子が提供される。この素子は、基板に基づく層構造を有している。当該層構造は、基板上に配置されている基底電極、および基底電極の光が放射される被覆電極、ならびに基底電極と被覆電極との間に配置されている少なくとも1つの有機発光層を含んでいる。そのような素子の本発明の構造を用いて、素子が安価に製造され得、大量生産プロセスにとって好適なように、向上した光の出力が得られる。素子の本発明の好ましい構造によれば、基板により近接して配置される電極は基底電極と呼ばれる。
【0072】
光散乱有機層は単一の分子構造を有している単一の材料から形成されていることが特に好ましい。
【0073】
また、積層の配置におけるすべての有機層は、有機材料を気化させることによる真空における熱蒸発によって形成されることが好ましい。例えば、VTE法(真空熱蒸着)またはスパッタリング法が好適な方法である。
【0074】
また、光散乱有機層の材料は自己結晶化する有機材料から形成されていることが好ましい。光散乱有機層は約60℃未満の範囲における結晶化温度を有している有機材料を含んでいることが好ましい。このようにして、基板の温度が従来のVTE法において通常は20〜60℃であるので、有機材料は他の加熱工程なしで基板上に対する蒸着において自己結晶化し得る。
【0075】
他の好ましい実施形態において、光散乱有機層は、約200℃未満の範囲における結晶化温度を有している有機材料を含んでいる。このようにして、有機材料は加熱工程を用いて結晶化され得る。
【0076】
さらに、光散乱有機層は少なくとも約85℃のガラス転移温度を有している材料を含んでいることが好ましい。85℃の下限は、完成した素子が約65℃〜85℃までの熱安定性を最終的に有しているべきであることから得られる。
【0077】
光散乱有機層は10nm〜100μmの厚さを好ましく有している。100nm〜100μmの層厚が特に好ましい。しかし、個々の場合に、散乱要素の構造は100nmより小さい層厚を有してさえ製造され得る。この場合、光散乱有機層の表面粗さはこれらの以下の層に対して表面粗さを与える。光散乱有機層が異なる屈折率および/または異なる誘電率を有している2つの異なる材料によって形成されている界面を有している場合、結果としてこの屈折率の傾きに対する光の散乱がある。そのような界面は、例えば有機層および(以下の)金属層によって、形成され得る。好適な金属としては、特にアルミニウム、銀、マグネシウム、バリウム、カルシウムおよびモリブデンが挙げられる。非常に小さい層厚(例えば10nm〜50nm)は大きな表面粗さを生成し得る。これは、成長の特別な挙動、特に材料の結晶構造を形成する傾向によるものである。被覆電極はやや白い外観を形成していることが特に有利である。任意の波長の光が電極によって明らかに十分に散乱される。基底電極は、スパッタリングによって付与され得るTCO(透明な導電性の酸化物)、特にITO(インジウム−スズの酸化物)であり得る。被覆電極は光反射性の電極(例えば金属電極)であることが好ましい。一実施形態において基板はガラスである。他の実施形態において、基板は約1.4〜1.8の範囲における光学的な屈折率を有している。
【0078】
光散乱有機層の形成前に1つ以上の層が基底電極の上に形成される場合が、しばしば好適である。このようにして、基底電極と被覆電極との間における短絡の形成が効率的に抑制される。基底電極の上にある1つ以上の層は、<5nmのRMSという低い表面粗さを好ましく有しているか、および/または非晶質の材料から好ましく形成されている。基底電極から離れて対向している光散乱有機層を素子の機能層の側に形成することが特に好適である。この機能層は例えば光吸収層または発光層である。
【0079】
光散乱有機層の使用によって、光の出力の向上だけでなく、発光の角度依存性が改善される。そうするために、白色光のスペクトルがいくつかの色の成分、典型的に少なくとも青、緑および赤の光を含んでいることを知っていなければならない。種々の波長にとっての放射特性が異なるので、異なる色は異なる視角において観察される。これは、有機層の散乱特性によって大幅に低減される。
【0080】
本明細書において考慮されるべき要因は、散乱が生じる結晶子の粒界が十分に大きいことである。
【0081】
したがって、光散乱有機層の結晶子は平均して500nmより大きいことが好ましい。
【0082】
当業者は標準的なOLEDの典型的な構造に通じており、当該構造は以下の通りである:
1.担体、基板(例えばガラス)、
2.正孔を注入する電極(アノード=陽極)、好ましくは透明である(例えば、インジウム−スズの酸化物(ITO))、
3.正孔注入層(例えば、CuPc(銅フタロシアニン)または星型の誘導体)、
4.正孔移動層(例えば、TPD(トリフェニルジアニンおよび誘導体))、
5.発光層からの励起子の拡散および発光層からの電荷キャリアの漏洩を防止するための正孔側における遮断層(例えば、アルファ−NPB(ビス−ナフチル−フェニル−ビフェニル))、
6.発光をもたらす発光層または複数の層の系(例えば、追加のエミッタ(例えば、燐光性のトリプレットエミッタ、イリジウム トリス−フェニルピリジン、Ir(ppy)3)、またはエミッタ分子(例えば、蛍光性のシングレットエミッタ、クマリン)と混合されているAlq3(トリス−キノリナート−アルミニウム)を有している、CBP(カルバゾール誘導体))、
7.発光層からの励起子の拡散および発光層からの電荷キャリアの漏洩を防止するための電子側における遮断層(例えば、BCP(バソキュプロイン))、
8.電子移動層(例えば、Alq3(トリス−キノリナート−アルミニウム))、
9.電子注入層(例えば、無機フッ化リチウム(LiF))、
10.電子を注入する電極(カソード=陰極)、通常はより低い仕事関数を有している金属(例えば、アルミニウム)。
【0083】
当然、複数の層は省かれ得るか、単一の層(または材料)が複数の性質を担い得る(例えば、層3および4、層4および5、層3〜5は組み合わせられ得るか、および/または層7および8、層8および9、層7〜9が組み合わせられ得る)。さらなる可能性によって、層9に由来する物質を層8に混合することなどが可能になる。
【0084】
反射性の電極および有機層は、真空蒸着によって基板上に標準的に堆積される。また電極はスパッタリングされ得る。また、有機層は、例えばスピンコーティングおよびインクジェットプリンティングによって、溶媒から調製され得る。
【0085】
この構造は、OLEDの非反転の(基板上に陽極がある)基板放出型(底面発光)の構造を説明している。基板を避けて放射するOLEDを説明するための種々の概念がある(DE102 15 210.1における参考文献を参照すればよい)が、これらのすべての概念は、基板側にある電極(非反転の場合における陽極)が反射性(透明OLEDにとっては透明)であり、被覆電極が(半)透明に設計されているという事実を一般的に有している。これは、電力パラメータに関する損失と関連している。
【0086】
層の配列が反転している(陰極が基板上にある)場合、反転のOLEDについて説明する(DE101 35 513.0)。繰り返すが、電力の損失は特別な処置が施されない限り、予想され得る。
【0087】
OLEDまたは太陽電池素子の有機層の構成は、上下に配置されている複数の有機層を典型的に含んでいる。有機層の構成内において、1つ以上のpn接合は、積層されているOLEDについて知られているように設けられ得る(欧州特許出願公開第1478025号を参照すればよい)。ここで、そのようなpn接合は、互いに直接に接触して形成されているp型ドープされている正孔移動層およびn型ドープされている電子移動層を用いて一実施形態において形成されている。そのようなpn接合は、電位が印加されているときに2つの層の間の境界領域において電荷が好ましく生成される電荷生成構造である。
【0088】
また、太陽電池素子または光センサにおいて、pn接合は、積層されているヘテロ接合を接続するために、したがってこの構成によって生成される電位を加えるために使用される(米国特許出願公開第2006/027834号)。上記接合は、物理的な機序がおそらく同じではないものの、積層されている無機のヘテロ接合の太陽電池素子におけるトンネル接合と同じ機能を有している。
【0089】
また、上記接合は、電極に対する向上した注入(太陽電池素子の場合には取出し)を得るために使用される(欧州特許第1808910号)。
【0090】
有機電子素子におけるエネルギー特性を向上させるために、国際公開第2005/109542号の文献には、pn接合は、n型の有機半導体層の半導体材料が陽極として形成されている電極と接するように、n型の有機半導体材料の層およびp型の有機半導体材料の層を用いて形成されていることが提案されている。このようにして、p型の有機半導体材料の層に対する、正孔の形態である電荷キャリアの向上した注入が実現されている。
【0091】
pn接合を安定化させるために、他の材料の層が中間層として使用される。そのような安定化されているpn接合は、例えば米国特許出願公開第2006/040132号に記載されており、ここで、金属が中間層として使用されている。金属層を有しているOLEDは、金属原子の拡散のためにより短い寿命を有している。
【0092】
本発明の材料を用いれば、安定な中間層および/またはドープされている中間層が、安定な有機半導体素子を製造するために、pn接合の間に設けられ得る。
【0093】
そのようなpn接合は、p型およびn型の材料の両方がドープされている場合に、非常に効率的に機能することが知られている(欧州特許第1804308号および欧州特許第1804309号)。
【0094】
また、安定(主に熱安定)かつ効率的なpn接合を提供するための材料および材料の組合せを製造することが可能である。
【0095】
また、OLEDにおいて、pn接合は電荷生成層または接続ユニットとして知られている。また、太陽電池素子において、pn接合は再結合層として知られている。
【0096】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照する例示的な実施形態の、以下の詳細な説明から導かれる。
【0097】
図1は、当該技術の状態に係るOLEDの模式的な断面図を示しており、
図2は、当該技術の状態に係る太陽電池素子の模式的な断面図を示しており、
図3は、非反転の実施形態における上面放射型のOLEDの模式的な断面図を示しており、
図4は、反転されている実施形態における上面放射型のOLEDの模式的な断面図を示しており、
図5は、非反転の実施形態における底面放射型のOLEDの模式的な断面図を示しており、
図6は、反転されている実施形態における底面放射型のOLEDの模式的な断面図を示しており、
図7は、エミッタ層を有している上面放射型のOLEDの模式的な断面図を示しており、
図8は、同時に散乱層である正孔移動層を有している有機太陽電池素子の模式的な断面図を示している。
【0098】
〔比較の実施例1:当該技術の状態に係る太陽電池素子〕
以下の層構造を有している太陽電池素子(実質的に図2にしたがう)が、ガラス基板上に作製された:
90nmの層厚を有しているITOの陽極;
40nmの層厚を有している、亜鉛フタロシアニン:C60 D−A−ボリュームのヘテロ接合(1:2の濃度);
2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリル(3mol%)を用いてドープされている、70nmの層厚を有している正孔移動層(HTL)としての4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリル(3mol%)を用いてドープされている、接触改善層としての5nmの亜鉛フタロシアニン;
陰極としての60nmのAu。
【0099】
〔実施例2:本発明に係る太陽電池素子〕
以下の層構造を有している太陽電池素子(実質的に図8にしたがう)が、ガラス基板上に作製された:
90nmの層厚を有しているITOの陽極;
40nmの層厚を有している、亜鉛フタロシアニン:C60 D−A−ボリュームのヘテロ接合(1:2の濃度);
2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリル(3mol%)を用いてドープされている、10nmの層厚を有している正孔移動層(HTL)としての4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリル(3mol%)を用いてドープされている、60nmの層厚を有している正孔移動層および光散乱層としてのジチアジオキサペンタセン;
2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリル(3mol%)を用いてドープされている、接触改善層としての5nmの亜鉛フタロシアニン;
陰極としての60nmのAu。
【0100】
2つの太陽電池素子は、それらの層厚に関して最適化されなかった。本発明の太陽電池素子の光起電力の特性において有意な向上が認められた。本発明の実施例2に係る太陽電池素子は、比較の実施例1に基づく基準の太陽電池素子と比べて、49%を超えて(相対的に)高いFF(充填比)、78.5%のより高い短絡電流、およびより良好な飽和状態を有していた。
【0101】
散乱光の放射条件における測定によって、実施例2に係る太陽電池素子は非常に良好な効率を有していることが示された。模擬実験による調査によって、比較の実施例1に基づく太陽電池素子の層厚は、垂直方向の入射率を用いて白色光について最適化されることが示されている。それに対して、実施例2に基づく太陽電池素子は、光散乱層のためにより少ない空洞を有しており、垂直方向の入射をなくして良好な性能を有している。
【0102】
実施例2は、化合物AまたはBを用いて繰り返され(ここで、R1〜6=H、n=2)、繰り返し説明するが、この太陽電池素子は比較の実施例1に基づく太陽電池素子よりも良好な結果を有していた。
【0103】
〔比較の実施例3:薄いHTLを有しているOLED〕
以下の層構造を有しているOLEDが、ガラス基板上に作製された:
陰極としての90nmのITO;
1mol%のテトラキス(1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジナート)ジタングステン(II)を用いてドープされている、30nmの電子移動層としての2,4,7,9−テトラフェニル−1,10−フェナントロリン;
ドープされていない10nmの中間層としての2,4,7,9−テトラフェニル−1,10−フェナントロリン;
市販の赤色染料(10質量%)を用いてドープされている20nmの赤色発光体層:20nmの厚さのルブレンの発光体層(また、DCJTB(4−(ジシアノメチレン)−2−tert−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチル−ジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン)が赤色発光体のドーパントとして使用され得る);
EBLとしての10nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
2mol%の2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリルを用いてドープされている、正孔移動層としてのXnmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
陰極としての200nmのアルミニウム
(ここで、X=40、100、150、200、300、400、500および800nm)。
【0104】
〔実施例4:1つの層が同時にTHLおよび光散乱層である、光散乱層を有しているOLED〕
8つのOLEDが実施例3にしたがって作製された(実質的に図6にしたがう)。ここで、HTLが2mol%の2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリルを用いてドープされているジチアジオキサペンタセンの層によって置き換えられた。
【0105】
8つの異なるHTLの層厚が調べられ、ジチアジオキサペンタセンを有しており、100nm以上の層厚を有しているOLEDは、比較の実施例よりも高い効率を有していることが見出された。
【0106】
〔実施例5〕
実施例4は、化合物AまたはBを用いて繰り返された(ここで、R1〜6=H、n=2)。繰り返し説明するが、比較の実施例と比べて向上が認められた。
【0107】
〔実施例6〕
実施例4および比較の実施例3が上面放射型の設計について繰り返された(実質的に図3にしたがう)。ここで、X=150nm、陽極を100nmのAgから構成し、陰極を100nmのITOから構成した。
【0108】
HTLとしてジチアジオキサペンタセンを用いてドープされているOLEDは、比較の実施例と比べて高い効率を有していた。
【0109】
〔比較の実施例7:白色光を放射するOLED〕
以下の層構造を有しているOLEDがガラス基板上に作製された:
陽極としての100nmのAg;
n型ドープされている電子移動層:Csを用いてドープされている30nmのBPhen;
電子側における中間層:10nmのバソフェナントロリン(BPhen);
青色発光層:20nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
イリジウム(III)ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)(RE076、ADS)を用いてドープされている、橙色−赤色発光層:10nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
正孔側における中間層:10nmのN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD);
p型ドープされている正孔移動層:テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)を用いてドープされている、150nmの4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(Starburst TDATA);
陰極としての20nmのAg;
陰極の導電性を向上させるための80nmのITO。
【0110】
空洞の強い効果が、放射される色の高い角度依存のために、比較の実施例において明らかに認められた。
【0111】
〔実施例8:白色光を放射するOLED〕
実施例7にしたがってOLEDが作製されたが、p型ドープされているジチアジオキサペンタセンをHTLとして用いた(実質的に図3にしたがう)。ジチアジオキサペンタセンを有しているOLEDにおいて、効率および角度依存が大きく低減した。
【0112】
〔実施例9:光散乱層を有している、上面放射型のOLED〕
以下の層構造を有している上面放射型のOLEDがガラス基板上に作製された:
陽極としての100nmのAg;
2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリル(3mol%)を用いてドープされている、正孔移動層(HTL)としての4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
10nmの層厚を有している4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
3mol%の黄色のエミッタ(Eastman Kodakが提供しているYD3)を用いてドープされている、5nmの層厚の4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル;
5mol%のEK9を用いてドープされている、25nmの青色発光層 BH121(いずれもEastman Kodakが提供している);
10nmの4−(ナフタレン−1−イル)−2,7,9−トリフェニルピリド[3,2−h]キナゾリン;
4,4’,5,5’−テトラキス(3,5−ジメチルシクロヘキシル)−1,1’,2,2’3,3’−ヘキサメチル−2,2’3,3’−テトラヒドロ−1H,1’H−2,2’−ビスイミダゾール(10mol%)を用いてドープされている、ETLとしての4−(ナフタレン−1−イル)−2,7,9−トリフェニルピリド[3,2−h]キナゾリン;
陰極としての18nmのAg;
陰極の導電性を向上させるための80nmのITO;
1035nmの厚さの被覆層。
【0113】
【表1】

【0114】
d HTLはnm単位の層厚であり、Peff(lm/W)は1000ニット単位の効率であり、EQEは1000ニット単位の外部量子効率であり、Δccは、0°(表面に対して直交)から80°までの範囲の角度において測定された色座標d(色座標)から得られる角度の偏差である。使用された層厚は最適化された値である。
【0115】
実施例9は、化合物AまたはBを用いて首尾よく繰り返され、ここでR1〜6=H、n=2。
【0116】
図1は、当該技術の状態に係るOLEDを示している。上面放射型のOLEDが実施例に使用されたが、結果はまた、底面放射型のOLEDに適用され得る。OLEDは基板を含んでおり、当該基板上において、有機半導体層が2つの電極の間に使用されている。示されている上記基板は、基板10上にある反射性の陽極11、陽極11上にある発光層12、発光層12上にある正孔移動層(HTL)13、および透過性の陰極14を有している。しかし、この構造はまた反転され(基板上には陰極があり)得ない。
【0117】
図1は生成された光のすべてが外部に放射されるのではないことを示している。光の生成は黒い丸の領域によって表されている。浅い角度(基板に対して)生成される光は、内部モードを介して通され、おそらく吸収される。したがって、生成される光の約1/4のみが素子から放射され得る。
【0118】
図2は、当該技術の状態に係る有機太陽電池素子を示している。その構造は、透明電極21、反射電極23、および光を吸収する少なくとも1つの有機半導体層22を典型的に含んでおり、この有機半導体層22は上記電極の間に位置している。この構造は、透明基板20に対して従来どおり適用されているが、他の変形(例えば、透明な被覆電極および必ずしも透明ではない電極)も可能である。
【0119】
図2にしたがう太陽電池素子において、光は基板20および底部の電極21を通して伝達される。光は有機層によって最終的に吸収される(光線26)。光が吸収されない場合、当該光は反射される。光線24を用いて説明されているように、入射光が浅い角度を有している場合、入射光は、吸収されるまで内部の全反射によって反射され得る。光線25を用いて説明されているように、入射光が高い角度を有している場合、入射光は吸収され得ず、再び外部に出射され得、したがって損失が生じる。
【0120】
図3は、反転されている(陰極が基板上にある)設計における上面放射型のOLEDを示している。反射性の陰極31が基板30上に形成されている。発光層32およびHTL33は陽極31および透明な陰極34の間に形成されている。HTL33は光を散乱させる性質を有している。
【0121】
図3は、浅い角度において放射される光線35が、どのようにしてHTL層33を介して散乱され、したがってどのようにして出射されるのかを示している。散乱成分(36)は層33に内在している。光線37および光線38は、散乱ありまたはなしにおいて出射され得る。さらなる光はOLEDの効率を向上させる。
【0122】
図4は、非反転型の(陽極が基板上にある)形態における上面放射型のOLEDを示している。反射性の陽極41は基板40上に形成されている。発光層43およびHTL42は陽極41および透明な陰極44の間に形成されている。HTL42は光を散乱させる性質を有している。
【0123】
図4は、浅い角度において放射される光線46が、どのようにしてHTL層42によって散乱され、したがってどのようにして出射されるのかを示している。光散乱成分45は層42に内在している。光線47および光線48は散乱ありまたはなしにおいて出射され得る。さらなる光はOLEDの効率を向上させる。
【0124】
図4の実施形態は、反転構造を有している上面放射型のOLEDにおいて、直接光(47、48)が図3に見られるように(37、38)散乱されないので、図3の実施形態より好ましい。それでもなお、両方の実施形態は、放射される光の色の角度依存が低減されるという利点を有している。
【0125】
図5は、非反転の実施形態における底面放射型のOLED(陽極が基板上にある)を示している。透明な陽極は透明基板50上に形成されている。発光層53およびHTL52は透明な陽極51および反射性の陰極54の間に形成されている。HTL52は光を散乱させる性質を有している。
【0126】
図5は、浅い角度において放射される光線58および光線56が、どのようにしてHTL層52によって散乱され、したがってどのようにして出射されるのかを示している。散乱成分55は層52に内在している。光線57は散乱ありまたはなしにおいて出射され得る。さらなる光はOLEDの効率を向上させる。
【0127】
図6は、反転の実施形態における底面放射型のOLED(陰極が基板上にある)を示している。透明な陰極61が透明基板60上に形成されている。発光層62およびHTL63は透明な陰極61および反射性の陽極64の間に形成されている。HTL63は光を散乱させる性質を有している。
【0128】
図6は、浅い角度において放射される光線68および光線66が、HTL63によってどのようにして散乱され、したがってどのように出射されるのかを示している。散乱成分(65)は層63に内在している。光線67は散乱なしにおいて出射され得る。さらなる光はOLEDの効率を向上させる。
【0129】
図6の実施形態は、反転構造を有している底面放射型のOLEDにおいて直接光67が図5に見られるように(57)散乱されないので、図5の実施形態より好ましい。しかし、両方の実施形態は、放射される光の色の角度依存が低減されるという利点を有している。
【0130】
図7は、基板70上にある反射性の基底電極71および透明な被覆電極73の間に発光層73を有している上面放射型のOLEDを示している。当該OLEDは被服電極73上(電極の間ではない)に散乱層74を含んでいる。
【0131】
図7は、浅い角度において放射される光線77および光線75が、散乱層74によってどのようにして散乱され、したがってどのようにして出射されるのかを示している。散乱成分(74)は層74に内在している。光線76は散乱なしにおいて出射され得る。さらなる光はOLEDの効率を向上させる。
【0132】
図8は、同時に散乱層である正孔移動層83を有している、有機太陽電池素子を示している。当該太陽電池素子は、透明基板80上にある透明な陰極81および反射性の陽極の間に、有機吸収層82(典型的にヘテロ接合または容量ヘテロ接合)およびHTL83を含んでいる。
【0133】
図8は、直接的に吸収されない入射光86、85がHTL83によってどのようにして散乱されるのかを示している。入射光87は、直接的に吸収され得るか、または反射性の陽極84によって反射され得る。HTLおよび散乱層は、高角度において衝突する光が内部モードに変換される可能性を高め、吸収の可能性および効率を結果的に向上させる。
【0134】
有機層の構成は少なくとも1つの発光層を含んでいる必要がある。OLEDにとって典型的な層構成は欧州特許第1705727号および欧州特許1804309号に記載されている。また、OLEDは米国特許第号7074500号および米国特許出願公開第2006/250076号に記載されているようなp−i−n型の層構成を有し得る。p−i−n型のOLEDに使用されるn型およびp型のドーパントは、例えば、米国特許第6908783号、米国特許出願公開第2008/265216号、国際公開第07107306号、欧州特許1672714号に説明されている。
【0135】
〔合成例1〕
5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセン
カリウムt−ブトキシド(2.78g、24.8mmol)を保護ガス雰囲気において30mLの無水ジメチルホルムアミドに懸濁させた。懸濁物を0℃まで冷却し、2−メルカプトフェノール(1.95g、15.5mmol)を30mLの無水ジメチルホルムアミドに滴下して穏やかに加えた。冷却槽から取出した後に、反応混合物を30分間以上にわたって、粘性の淡黄色の溶液が形成されるまで攪拌した。1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン(0.93g、6.20mmol)を加え、混合物を還流させながら2日間にわたって加熱した。次に、ジメチルホルムアミドを真空条件において除去し、残余物を30mLのクロロホルムに溶解させた。有機層を、15mLの水を用いて洗浄し、それから硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。溶媒を真空条件において除去し、残余物をクロロホルム/メタノールから再結晶化させ、白色の固体として1.10g(50%、3.4mmol、融点:223℃)を単離した。
【0136】
〔合成例2〕
5,9,16−トリオキサ−7,14,18−トリチアヘプタセン
(第1ステップ:テトラブロモフェノキサチインの合成)
10gのフェノキサリン(49.9mmol)を250mLのトリフルオロ酢酸に懸濁させ、23.0mLの臭素(71.7g、449mmol、9当量)と慎重に混合した。混合物を室温において3日間にわたって攪拌し、GCMS(移動層としてのTHF)の基準について調べた。反応の終了後に、赤褐色の反応混合物を、完全に脱色されるまで飽和NaSO溶液と混合した。沈殿した固体を、吸引を用いてろ過し、NaSO溶液、水および最後にメタノールを用いて洗浄し、それから乾燥させた。淡褐色の固体をトルエンから再結晶化させ、純粋な白色の固体の形態における18.0gの産物(GCMSの98%の純度)を生じる。
【0137】
(第2ステップ:テトラブロモフェノキサチインの反応)
0.61gの2−メルカプトフェノール(4.8mmol、2.5当量)をアルゴン雰囲気下において12mLのDMFに溶解させ、12mLのDMFにおける1.34gの炭酸カリウム(9.7mmol、10当量)の懸濁物を滴下して加えた。混合物を30分間にわたって攪拌し、それから1.00gのテトラブロモフェノキサチイン(1.9mmol)を加えた。それから、混合物を少なくとも4日間にわたって還流しながら加熱した(HPLC−MS C18による反応制御)。反応の終了後に、DMFを減圧条件下において除去し、残余物を100mLのクロロホルムに溶解させ、水、1規定の重炭酸ナトリウム溶液、およびふたたび水(それぞれ50mL)とともに攪拌した。不溶性の残余の固体をろ過し、有機層を乾燥させ、濃縮した。不溶性の固体(4.2g)を還流しながら2リットルのトルエンに溶解させ、約250mLまで濃縮した。母液は純粋な白色の沈殿結晶(HPLCにしたがって95%)の形態における3.0gの産物を生じた。有機層は、トルエンからの2回の再結晶化によって黄色の固体として1.0gの産物(HPLCにしたがって95%、融点:268℃)をさらに生じた。
【0138】
〔合成例3〕
3,10−ジメトキシ−5,12−ジオキサ−7,14−ジチアペンタセン
(第1ステップ:6−ヒドロキシ−1,3−ベンゾキサンチオール−2−オン(チオキソレン)のメチル化)
6.50g(38.7mmol)の6−ヒドロキシ−1,3−ベンゾキサンチオール−2−オンを130mLのDMFに溶解させ、4.27g(30.9mmol、0.8当量)の炭酸カリウムと混合した。3.10mL(7.09g、50.3mmol、1.3当量)のヨウ化メチルを反応混合物に対して慎重に滴下して加えた。反応物を一晩にわたって攪拌し、氷冷した水に注ぎ、それからクロロホルムを用いて抽出した。固体の残余物をメタノールに溶解させ、攪拌し、ろ過した。乾燥させた白色の純粋な固体(GCMS純度100%、M=182)を、4.60g(65%の理論値)の収率において得た。
【0139】
(第2ステップ:複素環の開裂)
4.50g(24.8mmol)の6−メトキシ1,3−ベンゾキサチオール−2−オンを56mLのメタノールに懸濁し、4.40g(66.4mmol)の85%の水酸化カリウムと混合した。水酸化カリウムは17mLのメタノールおよび11mLの水にあらかじめ溶解されている。黄色を呈している懸濁物を溶解させ、約10分間にわたって攪拌した(TLC制御)。反応の終了後に、1規定の塩酸を用いて反応混合物をpH1まで慎重に酸性化し、メタノールを減圧条件下において除去し、酢酸エチルを用いて2回にわたって残余物を抽出した。有機層を混合し、水、飽和塩化ナトリウム溶液を用いて2回にわたってそれぞれを洗浄し、水を用いてふたたびそれぞれを洗浄した。硫酸ナトリウムを用いた乾燥、および減圧条件下における溶媒の除去の後に、3.55g(92%)の5−メトキシ−2−メルカプトフェノールを淡黄色の液体として得た。未加工の産物(GCMS100%、M=156)をさらなる精製なしに使用した。
【0140】
(第3ステップ:1,2,4,5−テトラフルオロベンゼンを用いた反応)
0.72gの(6.40mmol)の無水のカリウムtert−ブトキシドを10mLの無水DMFに懸濁した。氷冷しながら、10mLの無水DMFにおける0.50g(3.2mmol)の5−メトキシ−2−メルカプトフェノールを、この懸濁物に対して慎重に加えた。混合物を30分間にわたってRTにおいて攪拌し、それから0.14mL(0.19g、1.3mmol)のテトラフロオロベンゼンと混合した。反応混合物を100℃において3日間にわたって攪拌した。次に、クロロホルムおよび水を用いて反応混合物を抽出した。硫酸ナトリウムを用いて有機層を乾燥させ、濃縮した。1.66gの未加工の産物を淡黄色の固体(GCMS:79%、M=382)として得た。産物をクロロホルムから再結晶化させ、それから母液はメタノールを用いてふたたび沈殿を受け、620mgの白色の純粋な産物(GCMS:100%)を生じた。500mgから230mg(理論値の57%に対応する)が昇華した。融点:230℃。
【0141】
〔導電性の測定〕
使用されたすべての材料は、勾配昇華によってさらに精製された。
【0142】
5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセンを10mol%の2−(6−ジシアノ−メチレン−1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロ−6H−ナフタレン−2−イリデン)−マロノニトリルとともに共蒸着させた。ドープされている50nmの層の導電性は1.9×10−5S/cmと測定された。10mol%の2,2’,2’’−(シクロプロパン−1,2,3−トリイリデン)トリス(2−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−アセトニトリル)をともなう混合層として、5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセンを、最終の層が50nmの厚さであるように直ちに蒸着させた。測定された導電性は3×10−7S/cmであった。10mol%の2−(6−ジシアノメチレン−1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロ−6H−2−イリデン)−マロノニトリルとともに、5,9,16−トリオキサ−7,14,18−トリチアヘプタセンの、ドープされている50nmの厚さの層を共蒸着させた。測定された導電性は1.1×10−3S/cmであった。3,10−ジメトキシ−5,12−ジオキサ−7,14−ジチアペンタセンを、これまでの例に見られる同じドーパントの10mol%とともに共蒸着させた(厚さ50nm)。測定された導電性は1.2×10−5S/cmであった。特に良好な特性(例えば、これらの例に限定されない電力効率および熱安定性)が以下のp型ドーパントを用いたp型ドーピングによって達成された:2,2’−(パーフルオロナフタレン−2,6−ジイリデン)ジマロノニトリル;2,2’−(2,5−ジブロモ−3,6−ジフルオロシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジイリデン)ジマロノニトリル;2,2’,2’’−(シクロプロパン−1,2,3−トリイリデン)トリス(2−(2,6−ジクロル−3,5−ジフルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)アセトニトリル;2,2’,2’’−(シクロプロパン−1,2,3−トリイリデン)トリス(2−(4−シアノパーフルオロフェニル)−アセトニトリル)。すべての測定は室温において実施された。導電性の測定は、保護ガス雰囲気または密閉された試料の真空条件において、測定値における非常に小さい偏差または偏差なしにおいて、実施された。
【0143】
〔合成例4〕
6,6’−ビス(5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセン)
5.30gの2−メルカプトフェノール(42.0mmol、5当量)をアルゴン雰囲気において100mLのDMFに溶解させ、100mLのDMFにおける11.6gの炭酸カリウム(84.0mmol、10当量)の懸濁物に滴下して加えた。混合物を30分間にわたって攪拌し、それから2.50gの4,4−H−オクタフルオロビフェニル(8.5mmol)を加えた。それから、混合物を6日間にわたって還流しながら加熱した(HPLC−MS C18による反応制御)。4日目に、さらに4当量のメルカプトフェノールを加えた。反応の終了後に、DMFを減圧条件において除去し、残余物を100mLのジクロロホルムに溶解させ、水、1規定の重炭酸ナトリウム溶液とともに攪拌し、水とともに1回にわたってふたたび攪拌した(それぞれ50mL)。有機層を乾燥させ、濃縮した。固体の残余物をクロロホルムおよびメタノールから沈殿させ、イソプロパノールから再結晶化させた。
【0144】
〔合成例5〕
N,N,N’,N’−テトラフェニル−5,12−ジオキサ−7,14−ジチアペンタセン−6,13−ジアミン
(第1ステップ:ヘキサフルオロベンゼンのビスアミン化)
ヘキサンを用いて洗浄した水素化ナトリウム(2.80g、118mmol)をアルゴン雰囲気において無水ジメチルホルムアミド(200mL)に懸濁させた。ジメチルホルムアミド(200mL)におけるジフェニルアミン(20.0g、118mmol)の溶液を懸濁物に滴下して加え、水素(!)を生成させた。懸濁物を30分間にわたって攪拌し、それからシリンジを介してヘキサフルオロベンゼン(10.0g、54.0mmol、6.2mL)を加えた。反応混合物を一晩にわたって100℃において攪拌した。次に、ロータリーエバポレータにおいて溶媒を除去した。残余物をクロロホルムに溶解させ、水を用いて繰返し洗浄した。MgSOに通して有機層を乾燥させ、ろ過し、濃縮した。固体の残余物をメタノール(2×25mL)において抽出し、吸入を用いて純粋な白色の固体としての産物(GC−MS100%)をろ過した。収量:20.9g。
【0145】
(第2ステップ:2−メルカプトフェノールを用いた芳香族置換)
カリウムt−ブトキシド(1.62g、14.5mmol)を、アルゴン雰囲気下において無水ジメチルホルムアミド(30mL)に懸濁させた。氷冷しながら、無水ジメチルホルムアミド(30mL)における2−メルカプトフェノール(0.91g、7.20mmol)の溶液を穏やかに滴下して加えた。冷却槽を取り外し、淡黄色の懸濁物が形成されるまで(およそ30分間)、反応混合物を攪拌した。1,4−ビス(ジフェニルアミン)テトラフルオロベンゼンを実質的に加え、反応混合物を還流しながら3時間にわたって加熱した(TLC制御)。ロータリーエバポレータにおいて溶媒を除去し、残余物を、クロロホルムに溶解させ、水を用いて繰返し抽出した。有機層をMgSOに通して乾燥させ、ろ過し、濃縮した。水性層を塩化カルシウムと混合した。粗製産物をクロロホルム/メタノールから沈殿させ、淡黄色の固体の形態において1.28g(67%の理論値)を生じる。HPLC−MS(ピリジンで測定)は純度95%を示した。融点314℃。
【0146】
追加の化合物にとっての合成経路:
三角形状態の誘導体:5,11,17−トリオキサ−6,12,18−トリチア−トリナフチレン
この化学物質を2段階において合成した。Cu−(I)によって媒介される反応においてフェノールと反応させられてトリエーテルを形成し得る、市販の1,3,5−トリブロモベンゼンをここにおける開始物質として使用し得る。同じ反応についてvan Koten(G. van Koten et al., Tetrahedron Letters, 48 (2007), 7366-7370)によって説明されている。
【0147】
類似の三塩化アルミニウムを媒介した反応において、単純なフェノキサチエンの合成(Eric E. Boros et al., J. Heterocyclic Chem., 35, 699-706, 1998)にしたがって硫黄を導入し得る。
【0148】
第1ステップにおいて官能化されているフェノールを用いることによって、標的化合物の外周はそれに応じて修飾され得る。
【0149】
直鎖状の誘導体:5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセンの親物質における6位および13位の修飾
異種原子のドナー特性に基づいて、6位および13位を、オルト−リチウム化という意味において種々の方法において修飾し得る。他の種類の修飾がN,N,N’,N’−テトラフェニル−5,12−ジオキサ−7,14−ジチアペンタセン−6,13−ジアミンの合成例について証明された。
【0150】
直鎖状の誘導体5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセンの親物質における周囲の1位、2位、3位もしくは4位および/または8位、9位、10位もしくは11位の修飾
モノまたはポリハロ置換されているフェノール(市販されている)は、それらが第1ステップにおいてアリールまたはヘテロアリールの誘導体に転化され得るので、ここで使用され得る。また、他のステップにおいてメルカプト基は、それから硫黄原子を用いたフェノール基に対するオルト−金属化によって導入され得る。位置異性体はここで分離され得る。
【0151】
官能化されているこれらのメルカプトフェノールは、類似の反応において上述の親物質に転化され得る。
【0152】
明細書および特許請求の範囲に開示されている特徴点は、種々の実施形態における本発明の実施にとって、単独にか、または任意の組合せにおいて必須であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】当該技術の状態に係るOLEDの模式的な断面図である。
【図2】当該技術の状態に係る太陽電池素子の模式的な断面図である。
【図3】非反転の実施形態における上面放射型のOLEDの模式的な断面図である。
【図4】反転されている実施形態における上面放射型のOLEDの模式的な断面図である。
【図5】非反転の実施形態における底面放射型のOLEDの模式的な断面図である。
【図6】反転されている実施形態における底面放射型のOLEDの模式的な断面図である。
【図7】エミッタ層を有している上面放射型のOLEDの模式的な断面図である。
【図8】同時に散乱層である正孔移動層を有している有機太陽電池素子の模式的な断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子、光電子素子またはエレクトロルミネセント素子における電荷移動材料、光散乱材料および/または遮断材料としての複素環式化合物の使用であって、
上記複素環式化合物が以下の式A〜E:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(ここで、互いに異なるXおよびYは独立して別に、酸素、硫黄、セレンおよびテルルから選択され;nは1、2、3、4、5または6であり;R〜Rは独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環、縮環されている複素環、OR’、SR’およびNR’から選択され、ここでR’は独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環から選択される)
を有している、使用。
【請求項2】
ドープされている正孔伝導物、ドープされていない正孔伝導物、ドープされていない励起子遮断物、またはドープされていない電子遮断物としての、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
以下の式A〜E:
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

(ここで、互いに異なるXおよびYは互いに独立して別に、酸素、硫黄、セレンおよびテルルから選択され;nは、1、2、3、4、5または6であり;式AにおいてR〜Rは独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環、縮環されている複素環、OR’から選択され、ここでR’は独立して、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環、ならびにNR’’およびSR’’から選択され、ここでR’’は独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環から選択され;式BについてR〜Rは独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環、縮環されている複素環、OR’、SR’およびNR’から選択され、ここでR’は独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環から選択され;式C〜EについてR〜Rは独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環、縮環されている複素環、OR’、SR’およびNR’から選択され、ここでR’は独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、縮環されている炭素環および縮環されている複素環から選択される)
に基づく、複素環式化合物。
【請求項4】
n=1であることを特徴とする、請求項3に記載の複素環式化合物。
【請求項5】
XおよびYが酸素および硫黄から選択されることを特徴とする、請求項3または4に記載の複素環式化合物。
【請求項6】
5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセン−6,13−ジアミン、3,10−ジメトキシ−5,12−ジオキサ−7,14−ジチアペンタセン、5,9,16−トリオキサ−7,14,18−トリチアペンタセン、6,6’−ビス(5,12−ジオキサ−7,14−ジチア−ペンタセン)および5,11,17−トリオキサ−6,12,18−トリチア−トリナフチレンから選択されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の複素環式化合物。
【請求項7】
好ましくは少なくとも1つのドーパントを用いてドープされている、電荷移動層、光散乱層および/または遮断層を備えており、上記電荷移動層、光散乱層および/または遮断層は請求項3〜6のいずれか1項に記載の複素環式化合物を含んでいる、有機半導体材料。
【請求項8】
電気的に活性な領域を有している電子素子、光電子素子またはエレクトロルミネセント素子であって、機能的かつ電気的に活性な上記領域が請求項3〜6の複素環式化合物を少なくとも1つ含んでいることを特徴とする、素子。
【請求項9】
上記複素環式化合物が、結晶化されている形態として有機光散乱層に存在しており、好ましくは式AまたはBの化合物(ここでR1〜6=H)またはこれらの異性体の混合物が選択されることを特徴とする、請求項8に記載の素子。
【請求項10】
形成されている上記光散乱有機層が重合体を含んでいないことを特徴とする、請求項9に記載の素子。
【請求項11】
上記光散乱有機層が発光有機層の光の屈折率以上の光の屈折率を有していることを特徴とする、請求項9または10に記載の素子。
【請求項12】
上記光散乱有機層は、約1.5から約2.2、好ましくは1.4から1.8の範囲における光の屈折率を有していることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の素子。
【請求項13】
上記光散乱有機層における結晶子は平均して>500mmのサイズを有していることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の素子。
【請求項14】
有機発光ダイオード、電界効果トランジスタ、光検出器または有機太陽電池素子の形態における、請求項9〜13のいずれか1項に記載の電子素子、光電子素子またはエレクトロルミネセント素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−512140(P2012−512140A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539896(P2011−539896)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001744
【国際公開番号】WO2010/075836
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(503180100)ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフト (47)
【Fターム(参考)】