複素環式芳香族カルボン酸を生成するための方法
複素環式芳香族カルボン酸の生成のための方法であって、触媒の存在下で、前記カルボン酸の前駆体を酸化剤と接触させる工程であって、かかる接触が、超臨界条件または超臨界点に近い近超臨界条件下の水を含む水性溶媒中にある前記前駆体および酸化剤を用いて行われる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン酸などの複素環式芳香族カルボン酸の生成のための、アルキル複素環式芳香族化合物、特に窒素含有複素環式芳香族化合物の選択的な部分酸化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルピリジンから得られたピリジンカルボン酸が、製薬産業における重要な中間体である。特に、ビタミンB3の前駆体として使用される3−ピリジンカルボン酸またはニコチン酸が、大規模に製造されている。2つの基本的な方法が、ピリジンカルボン酸の合成のために用いられる。1つの方法は、ピリジンカルボニトリルから得られたピリジンカルボキサミドの加水分解に基き、他方は、空気、硝酸、二酸化セレンなどによるアルキルピリジンの酸化である。メチルピリジンのアンモ酸化が、ピリジンカルボニトリルを形成し、これは、その後、ピリジンカルボキサミドによってピリジンカルボン酸に加水分解される。3−ピリジンカルボン酸が、5−エチル−2−メチルピリジンの硝酸酸化によって商業的に製造されている。
【0003】
アルキル複素環式芳香族化合物のカルボン酸への選択的な酸化は、対応する炭素環式化合物より著しく困難であることが知られている。アルキル複素環式芳香族化合物のカルボン酸への酸化のために必要な滞留時間は、当量の炭素環式アルキル芳香族化合物より著しく長い。たとえば、(特許文献1)(日産化学(Nissan Chemical International))が、必要な反応時間が3時間である、コバルトマンガンセリウムブロミド(Cobalt Manganese Cerium Bromide)触媒を使用する酢酸中の酸化による、3−メチルピリジンからのニコチン酸の生成のための方法を開示した。p−キシレンのテレフタル酸への酸化についての同様の研究が、40分以下の必要な滞留時間を与える(特許文献2)。
【0004】
従来の方法は、長い滞留時間を必要とし、著しい量の望ましくない副生成物を生成する。副生成物は、アルデヒド中間体などの、目的とするカルボン酸の部分酸化中間体を含む。たとえば、3−ピリジンカルボン酸(3−PyA)を生成するための3−メチルピリジン(3−Mpy)の酸化は、著しいレベルの3−ピリジンカルボキシアルデヒド(3−PyAl)をもたらすことがある。さらに、生成物の脱カルボキシル化が、非置換複素環式芳香族化合物自体を生じさせることがあり、これは、3−メチルピリジンの酸化におけるピリジンである。
【0005】
(特許文献3)(ダイセル化学工業株式会社(Daicel Chemical Industries Ltd))が、酢酸中の酸化のための促進剤としてN−ヒドロキシフタルイミドを使用する、酢酸中の3−メチルピリジンからのニコチン酸の生成のための方法を開示した。しかし、この方法は、長い滞留時間を必要とし、経済的に実行不可能であり、というのは、それは、加えられた促進剤から、かなりの量のフタルイミド不純物およびフタレート不純物を生成するからである。
【0006】
(特許文献4)(ロンザAG(Lonza AG))に記載された3−メチルピリジンのニコチン酸への酸化のための商業的気相法には、いくつかの欠点がある。反応が発熱であるので、それを気相中で行うことは熱移動制限を生じさせ、それは、エネルギーを反応から取出すことができる効率を低減する。また、反応が固定床不均質触媒の上で行われるので、反応は、流体媒体全体にわたってではなく、触媒の表面のみにおいて行われ得る。
【0007】
複素環式芳香族カルボン酸、特に反応時間および副生成物形成が低減される複素環式芳香族カルボン酸の生成のための向上された方法を提供する必要が残る。
【0008】
比較的高価であり、環境規制によって、回収およびリサイクルを必要とすることがある酢酸などの有機溶媒のかなりの量の使用を回避することも望ましいであろう。酢酸の使用におけるさらなる問題は、それが、特定の条件下で空気または酸素と混合されると可燃性であることである。有機溶媒の使用におけるさらなる問題は、酸化剤がそれへの低可溶性を有し得ることである。たとえば、二酸素が酸化剤として使用される場合、二酸素は主として反応媒体中に別々の気泡として存在し、少量の二酸素のみが溶媒に溶解する。前駆体と二酸素との間の反応が、二酸素が気泡からバルク液体中に拡散することから生じる程度に、反応速度は、二酸素の溶媒への低可溶性によって制限される。
【0009】
複素環式芳香族カルボン酸を、超臨界水中の前駆体の酸化によって合成することができることが現在見出されている。
【0010】
(非特許文献1)が、とりわけ、酸化剤として分子酸素を使用する亜臨界水の反応媒体中のアルキル芳香族化合物からの芳香族カルボン酸の合成のためのバッチ法を記載する。水の誘電率は、それがその臨界点(374℃および220.9bara)に近づくにつれて、約80C2/Nm2の室温値から5C2/Nm2の値に大幅に減少し、それが有機分子を可溶化するのを可能にする。結果として、次に、水は、たとえば、トルエンなどの炭化水素が、超臨界条件または近超臨界条件下で水と完全に混和性である程度に、有機溶媒のように挙動する。たとえば、テレフタル酸が、事実上約200℃未満の水に不溶性である。二酸素が、また、亜臨界水および超臨界水に高度に可溶性である。
【0011】
(特許文献5)は、超臨界条件または超臨界点に近い近超臨界条件下で水性溶媒中のカルボン酸の1つまたは複数の前駆体を酸化する工程を含む、テレフタル酸またはイソフタル酸などの芳香族カルボン酸の生成のための連続法を開示する。
【0012】
【特許文献1】特開平7−233150号公報
【特許文献2】米国特許第3354202号明細書
【特許文献3】特開2002−226404号公報
【特許文献4】DE−19822788号明細書
【特許文献5】国際公開第02/06201号パンフレット
【非特許文献1】ホリデー・アール・エル(Holliday R.L.)ら(ジャーナル・オブ・スーパークリティカル・フルイズ(J.Supercritical Fluids)12、1998、255−260)
【非特許文献2】リン(Lin)、スミス(Smith)ら(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ケミカル・キネティクス(International Journal of Chemical Kinetics)、Vol23、1991、p971)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、高収率および高選択性における、低減された反応時間での、溶媒として有機材料を使用する必要のない、複素環式芳香族カルボン酸の生成のための代替の向上された方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、反応物および生成物の実質的にすべてが反応の間共通相中に維持される、複素環式芳香族カルボン酸の生成のための代替の向上された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、複素環式芳香族カルボン酸の生成のための方法であって、触媒の存在下で、前記カルボン酸の前駆体を酸化剤と接触させる工程であって、かかる接触が、超臨界条件または超臨界点に近い近超臨界条件下の水を含む水性溶媒中にある前記前駆体および酸化剤を用いて行われる工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0015】
本発明の方法は、短い滞留時間を伴い、かつ生成物形成の高収率および良好な選択性を示す点で有利である。さらに、超臨界または近超臨界条件下で水を使用することによって、主溶媒として酢酸などの脂肪族カルボン酸を使用することなく、所望の複素環式芳香族カルボン酸を生成することができる。
【0016】
生成された複素環式芳香族カルボン酸の実質的にすべてが、反応の間溶液中に維持され、その後、カルボン酸は反応媒体から回収される。
【0017】
好ましくは、方法は、問題の成分が分子レベルで混合された実質的に1つの均質な流体相を形成する反応物および溶媒で行われる。これは、二酸素が反応媒体中に別々の気泡として存在する既存の方法と対照的である。前駆体と二酸素との間の反応が、二酸素が気泡からバルク液体中に拡散することから生じる程度に、従来の方法の反応速度は、二酸素の有機溶媒への可溶性によって制限され、これは高くない。溶媒としての、超臨界または近超臨界条件下での水の使用は、反応速度論を変え、というのは、超臨界点に近づき、それを超えると、水中の二酸素の濃度が著しく増加するからである。さらに、反応速度論は、水溶媒が超臨界または近超臨界条件下であるとき優勢である高温によって、さらに向上される。高温、高濃度、および均質性の組合せは、前駆体をカルボン酸に変換するための反応が、従来の方法で用いられる滞留時間と比較して、非常に急速に生じることができることを意味する。
【0018】
これらの条件下で、アルデヒド中間体などの中間体不純物が、容易に所望のカルボン酸に酸化される。さらに、前駆体と酸化剤との間の自触媒破壊反応、および触媒の消費が最小にされる。
【0019】
好ましくは、前記接触は、前駆体、酸化剤、および水性溶媒が、反応ゾーン内で実質的に1つの均質な相を構成するように行われ、前記前駆体の少なくとも一部の、前記酸化剤との接触は、前記触媒の、前記酸化剤の少なくとも一部との接触と同時に起こる。
【0020】
好ましくは、前記接触は連続流反応器内で行われる。代替実施形態において、方法を、バッチタイプ反応器内でバッチ反応として行うことができる。
【0021】
方法を用いて、好ましくは窒素および酸素から選択され、好ましくは窒素である、1、2、または3のヘテロ原子、好ましくは1または2のヘテロ原子、より好ましくは1のヘテロ原子を含有する複素環式芳香族カルボン酸を調製することができる。好ましくは、複素環式芳香族カルボン酸は、5または6員環系、好ましくは6員環系を含む。好ましくは、複素環式芳香族カルボン酸は、単環式または二環式、好ましくは単環式である。方法は、特に、窒素含有複素環式芳香族化合物、特に1、2、または3の窒素原子を含むもの、および特に6員環を含むものの生成に適用できる。好ましい実施形態において、複素環式芳香族カルボン酸は、ピリジン環またはピリミジン環、好ましくはピリジン環を含む。好ましい実施形態において、複素環式芳香族カルボン酸はニコチン酸である。
【0022】
適切な前駆体は、アルキル置換複素環式芳香族化合物、特にメチル置換複素環式芳香族化合物である。好ましい実施形態において、前駆体は、アルキルピリジンまたはアルキルピリミジン、好ましくはアルキルピリジン、好ましくはメチルピリジン、好ましくは3−メチルピリジンである。本明細書で説明される方法において、好ましくは、所望のカルボン酸の1つの前駆体のみが使用される。しかし、あるいは、所望のカルボン酸の1つを超える前駆体を使用することができる。アルキル置換基以外に、複素環式前駆体は、任意に、1つまたは複数の他の置換基、たとえば、ヒドロキシ基、ニトレート基、およびハライド基を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の方法において、プロセスの圧力および温度は、超臨界または近超臨界条件を確実にするように選択される。したがって、動作温度が、典型的には、300から480℃、より好ましくは330から450℃、典型的には約340から370℃の下限から約370から約420℃の上限の範囲内である。動作圧力が、典型的には、約40から350bara、好ましくは60から300bara、より好ましくは200から280baraの範囲内である。
【0024】
本明細書で使用されるように、「近超臨界条件」は、反応物および溶媒が実質的に1つの均質な相を構成することを意味し、実際に、これは、水の臨界温度より低い条件下で達成することができる。一実施形態において、「近超臨界条件」という用語は、溶媒が、220.9baraにおける水の臨界温度より100℃以上低い、好ましくは50℃以上低い、より好ましくは35℃以上低い、特に20℃以上低い温度であることを意味する。
【0025】
本明細書で使用されるように、「連続流反応器」は、バッチタイプ反応器と対照的に、同時に連続的に、反応物が導入され混合され、生成物が取出される反応器を意味する。たとえば、反応器は、管形流れ反応器(乱流または層流を伴う)であることができるが、ここに規定される本発明のさまざまな態様は、この特定のタイプの連続流反応器に限定されない。連続流反応器内の滞留時間は、反応器体積を動作条件における反応物の体積流量で割ったものと定義する。
【0026】
本明細書で使用されるように、「カルボン酸前駆体」または「前駆体」は、選択的な酸化条件の存在下で大きな収率(majority yield)で特定のカルボン酸に酸化することができる有機化合物、好ましくは炭化水素を意味する。ピリジンカルボン酸前駆体の例が、メチルピリジンであり、たとえば、ニコチン酸前駆体が3−メチルピリジンである。対応して、メチルピリミジンを使用して、ピリミジン(pryimidine)カルボン酸を生成することができる。
【0027】
本明細書で使用されるように、カルボン酸の生成への言及は、その無水物の生成への言及を含む。当業者には明らかであるように、本発明の方法がカルボン酸を生成するかそれらの無水物を生成するかは、反応における条件、および/または生成物を単離または分離するために用いられる条件による。
【0028】
好ましくは、本発明の方法において、反応において生成された複素環式芳香族カルボン酸の実質的にすべて、いずれにしても98重量%以上が、反応の間溶液中に維持され、溶液が酸化反応ゾーンを出て、冷却を経るまで、沈殿し始めない。
【0029】
反応のための滞留時間は、分解生成物の著しい生成を伴わない、前駆体の所望の複素環式芳香族カルボン酸への変換の達成と適合させることができる。反応ゾーン内の反応媒体の滞留時間は、一般に10分以下、通常2分以下程度、好ましくは1分以下、より好ましくは30秒以下である。
【0030】
好ましい実施形態において、目的とするカルボン酸のための選択性は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%であり、選択性は、パーセンテージとして表現された、目的とする酸の重量収率を、目的とする酸および部分酸化アルデヒド不純物、および分解生成物を除く他の反応生成物の組合された重量収率で割ったものである。
【0031】
好ましい実施形態において、目的とするカルボン酸の収率は、前駆体の重量の、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%である。
【0032】
本発明の方法を行うのに適した反応器システムは、一般に、以下で説明されるように構成することができる。次の説明は、連続流反応器の好ましい実施形態に関連する。しかし、上で示されたように、本発明はそのような構成に限定されず、次の説明は例示のためにすぎない。
【0033】
直列のまたは並列の、1つを超える反応ゾーンがあることができる。たとえば、並列の多数の反応ゾーンが使用される場合、反応物および溶媒は、反応ゾーンの通過のために別個の流れを形成することができ、望ましい場合、そのような多数の反応ゾーンからの生成物流を合流させて、1つの生成物流を形成することができる。1つを超える反応ゾーンが使用される場合、温度などの条件は、各反応器内で同じまたは異なることができる。各反応器は断熱的にまたは等温的に動作させることができる。等温または制御された温度上昇を熱交換によって維持して、反応が反応器を通って進むとき所定の温度プロファイルを規定することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、反応の熱は、たとえば、技術の開示を参照により本明細書に援用する(特許文献5)に記載されているような、当業者に知られている従来の技術に従って、熱受容流体での熱交換によって、反応から除去される。好都合に、熱受容流体は水を含む。
【0035】
本発明の方法における酸化剤は、好ましくは、分子酸素、たとえば空気または酸素富化空気であるが、好ましくは、その主成分として酸素を含有するガス、より好ましくは純酸素、または液体に溶解した酸素を含む。空気の使用は、本発明の範囲から除かれないが、好まれず、というのは、空気の高窒素含有量のせいで、大きい圧縮コストが生じ、オフガス取扱い設備が、大量のオフガスに対処する必要があるからである。一方、純酸素または酸素富化ガスは、より小さいコンプレッサおよびより小さいオフガス処理設備の使用を可能にする。本発明の方法における酸化剤としての二酸素の使用が、特に有利であり、というのは、それは、超臨界または近超臨界条件下で水に高度に可溶性であるからである。したがって、特定の点において、酸素/水システムは1つの均質な相になる。
【0036】
分子酸素の代わりに、酸化剤は、1分子あたり1つまたは複数の酸素原子を含有する化合物、たとえば室温における液相化合物から得られた原子酸素を含むことができる。1つのそのような化合物は、たとえば、米国特許公報(非特許文献2)に記載されているように、反応または分解によって酸素源として作用する過酸化水素である。
【0037】
本発明の方法は酸化触媒の存在下で行われる。触媒は、溶媒と、複素環式芳香族カルボン酸前駆体とを含む反応媒体に可溶性であることができるか、あるいは、不均質な触媒を使用することができる。触媒は、均質であろうと不均質であろうと、典型的には、1つまたは複数の重金属化合物、たとえばコバルト化合物および/またはマンガン化合物、好ましくはマンガン化合物だけを含み、任意に、酸化促進剤を含むことができる。たとえば、触媒は、脂肪族カルボン酸溶媒中の芳香族カルボン酸(テレフタル酸など)を生成するために液相酸化反応において使用された形態、たとえば、コバルトおよび/またはマンガンの、臭化物、ブロモアルカノエート(bromoalkanoates)、またはアルカノエート(alkanoates)(通常、Cl〜C4アルカノエート、たとえば酢酸塩など)のいずれかをとることができる。バナジウム、クロム、鉄、モリブデン、セリウムなどのランタニド、ジルコニウム、ハフニウム、および/またはニッケルなどの他の重金属の化合物を、コバルトおよび/またはマンガンの代わりに使用することができる。有利に、触媒系は臭化マンガン(MnBr2)を含む。使用される場合、酸化促進剤は、元素臭素、イオン臭化物(たとえば、HBr、NaBr、KBr、NH4Br)および/または有機臭化物(たとえば、ブロモベンゼン、ベンジル−ブロミド、モノ−およびジ−ブロモ酢酸、ブロモアセチルブロミド、テトラブロモエタン、エチレン−ジ−ブロミドなど)の形態であることができる。あるいは、酸化促進剤は、メチルエチルケトンなどのケトン、またはアセトアルデヒドなどのアルデヒドを含むことができる。
【0038】
触媒が不均質な形態である場合、それは、連続的に流れる反応媒体と触媒との間の接触を確実にするように、反応ゾーン内に適切に配置することができる。この場合、触媒は、流れ断面を過度に狭くすることなく、かかる接触を確実にするように、反応ゾーン内に適切に支持および/または拘束することができる。たとえば、反応媒体が不均質な触媒の上に流れるように、不均質な触媒を、反応ゾーン内に位置決めされた静的エレメント(たとえば、オープンワーク構造を形成するエレメント)上にコーティングするか、それらに他の態様で付与するか、それらの中に包含することができる。そのような静的エレメントは、さらに、反応物が反応ゾーンを通過するとき反応物の混合を向上させるのに役立つことができる。あるいは、触媒は、移動ペレット、粒子、微粉化形態、金属スポンジ形態などの形態であることができ、必要な場合、触媒を反応ゾーンに制限するために手段が提供され、それにより、動作中、触媒ペレットなどは、反応ゾーンを通って流れる反応媒体中に懸濁または浸漬されるようになる。これらの方法のいずれにおける不均質な触媒の使用も、触媒作用効果を明確なゾーンに制限することができるという利点を与え、それにより、いったん反応媒体がゾーンを横断してしまうと、さらなる酸化は、低減された速度で行われるか、著しく抑制することができる。
【0039】
酸化反応は、反応物を加熱し加圧し、次いで、加熱され加圧された反応物を反応ゾーン内で一緒にすることによって、開始される。これはいくつかの方法で行うことができ、超臨界または近超臨界条件の達成前または後、反応物の一方または両方が水性溶媒と混合され、そのような混合は、反応ゾーン内で一緒にされるまで、反応物を互いに単離して維持するように行われる。
【0040】
本発明のバッチ法において、水、前駆体、および触媒溶液が、反応温度および圧力に加熱される前、オートクレーブ内で混合される。酸化剤を、任意に、反応条件下で混合物に加えることができるか、それを、バッチ反応器オートクレーブをシールし加熱する前、加えることができる。所望の反応時間後、反応オートクレーブは冷却され、生成物は排出される。次に、抽出、濃縮、および再結晶などの任意の適切な生成物回収システムを用いて、複素環式芳香族カルボン酸生成物を回収することができる。
【0041】
本発明の連続法において、反応器システムは、好ましくは、酸化剤と、前駆体の少なくとも一部、および好ましくは実質的にすべてとの間の接触が、触媒と、酸化剤の少なくとも一部、および好ましくは実質的にすべてとの間の接触と、反応器システム内の同じ点で行われるように構成される。
【0042】
第1の実施形態において、超臨界または近超臨界状態を確実にするように水性溶媒が加熱され加圧された後、酸化剤は水性溶媒と混合され、水性溶媒と混合する前、酸化剤の適切な加圧、および望ましい場合加熱を伴う。前駆体が、加圧され、望ましい場合加熱される。均質な触媒を使用するプロセスの場合、触媒成分は、加圧され、望ましい場合加熱される。次に、前駆体、触媒、および酸化剤/溶媒混合物は、同時に接触される。不均質な触媒を使用するプロセスの場合、前駆体が、触媒の存在下で酸化剤/溶媒混合物と接触される。
【0043】
本発明の第2の実施形態において、超臨界または近超臨界状態を確実にするように水性溶媒が加熱され加圧された後、前駆体が水性溶媒と混合され、水性溶媒と混合する前、前駆体の適切な加圧、および望ましい場合加熱を伴う。1つの構成において、均質な触媒成分が、加圧および任意の加熱後、前駆体の水性溶媒との接触と同時に、水性溶媒と接触される。代替構成において、本明細書で説明されるように、不均質な触媒が使用され、反応ゾーンに制限される。超臨界または近超臨界状態を確実にするように水性溶媒が加熱され加圧された後、酸化剤は、加圧、および望ましい場合加熱後、水性溶媒と混合される。均質な触媒を使用するプロセスの場合、次に、酸化剤/水性溶媒混合物は、前駆体と、触媒と、水性溶媒とを含む混合物と接触される。不均質な触媒を使用するプロセスの場合、酸化剤/水性溶媒混合物は、反応ゾーン内で、すなわち、不均質な触媒の存在下で、前駆体と、水性溶媒とを含む混合物と接触される。
【0044】
さまざまな流れの接触を、デバイスへの別個のフィードとして行うことができ、フィードは合流されて1つの均質な流体相を形成し、したがって、酸化剤および前駆体を反応させる。フィードが合流されるデバイスは、たとえば、別個のフィードが、連続流反応器を形成する1つの流れ通路、またはいくつかの場合、2つ以上の連続流反応器を形成する多数の流れ通路内で合流されることを可能にする、Y、T、X、または他の構成を有することができる。フィードが合流される1つまたは複数の流れ通路は、内部の動的または静的混合エレメントを有するまたは有さない管形構成のセクションを含むことができる。
【0045】
好ましい実施形態において、たとえば、酸化剤の水性溶媒への溶解、および1つの相の形成を促進するために、急速な混合および均質性を確実にするために、インラインミキサまたは静的ミキサが有利に使用される。
【0046】
酸化剤フィードおよび前駆体フィードを1つの位置で一緒にすることができるか、一方のフィードまたは両方のフィードの少なくとも一部が、漸進的に、たとえば、反応器を通る流れの方向に対して多数の注入点を介して導入されるように、接触を2つ以上の段階で行うことができる。たとえば、一方のフィードを連続流通路に沿って通過させることができ、連続流通路に、他方のフィードが、連続流通路の長さ方向に隔置された多数の点で導入され、それにより、反応は漸進的に行われる。連続流通路に沿って通過されたフィードは、水性溶媒を含むことができ、多数の位置で導入されたフィードも同様である。
【0047】
同様に、触媒、特に均質な触媒の添加を、漸進的に、たとえば、反応器を通る流れの方向に対して多数の注入点を介して行うことができる。
【0048】
一実施形態において、酸化剤は2つ以上の位置で反応に導入される。そのような位置は、好都合に、酸化剤が、初期位置、および前記初期位置の下流の少なくとも1つのさらなる位置で反応に導入されるように、酸化ゾーンを通る溶媒および反応物のバルク流に対して位置決めされる。
【0049】
連続流反応器を横断した後、反応混合物は、複素環式芳香族カルボン酸の溶液を含む。溶液は、また、触媒(使用される場合)、および、比較的小量の、中間体(たとえばアルデヒド)、脱カルボキシル化生成物、および分解生成物などの副生成物、およびいかなる未使用の反応物を含有することができる。
【0050】
ここで、本発明を、添付の図面を参照して、あくまで例として、さらに説明する。
【0051】
図1Aを参照すると、水が加熱された後、二酸素が、加圧後、水と混合され、混合物は、加圧され、任意に、プレヒータ1内でさらに加熱されて、超臨界状態を達成する。前駆体および触媒は、加圧後、反応器2の初めにまたは直前、O2/水流に加えられ、混合物は反応器を通過される。反応器を出ると、流れは、冷却され、背圧調整器3において減圧される。生成物は、冷却水の流れで外に運ばれる。対応する図1Bにおいて、触媒は、反応器内に不均質な触媒としてすでに存在する。
【0052】
図2Aおよび図2Bを参照すると、水が加圧され任意に加熱された後、前駆体および触媒は、加圧後、水に加えられ、任意に、プレヒータ1A内でさらに加熱されて、超臨界状態を達成する。二酸素ガスは、加圧後、超臨界状態における水と混合され、任意に、プレヒータ1内でさらに加熱される。図2Aにおいて、2つの流れは、反応器2の初めにまたは直前、混合され、混合物は反応器を通過される。図2Bにおいて、O2/水流は、多数の注入点で漸進的に反応器に加えられる。反応器を出ると、流れは、冷却され、背圧調整器3において減圧される。生成物は、冷却水の流れで外に運ばれる。対応する図2Cおよび図2Dにおいて、触媒は、反応器内に不均質な触媒としてすでに存在する。
【0053】
図3を参照すると、水、前駆体、および二酸素ガスを含む原料成分が、動作圧力に加圧され、それぞれの源10、12、および14から、プレヒータ16を通して、連続的に供給され、成分は、300℃から480℃、より好ましくは330℃から450℃、典型的には約340℃から370℃の下限くらいから約370℃から約420℃の上限の温度に加熱され、圧力および温度は、超臨界または近超臨界条件を確実にするために選択される。原料成分を予熱するために用いられる熱の一部を、その後の前駆体と酸化剤との間の反応の間生じた発熱から得ることができる。他の源からの熱が、たとえば、高圧流の形態であることができ、および/または、加熱を、水流の直接焼成加熱によって行うことができる。反応の熱を、任意の適切な態様で、たとえば、反応後の流体と水などの適切な熱受容流体との間の熱交換によって、回収することができる。たとえば、熱受容流体を、反応ゾーンを通過する反応物および溶媒と向流におよび/または並流に熱交換関係で流れるように配列することができる。反応ゾーンを横断する際にそれに沿って熱受容流体が流れる1つまたは複数の通路は、反応ゾーンの外部にあることができ、および/または、反応ゾーンを通って内部に延在することができる。そのような内部に延在する流れ通路は、たとえば、反応ゾーンを通る反応物/溶媒の流れの一般的な方向と略平行に、および/またはこれの横断方向に延在することができる。たとえば、熱受容流体は、反応器の内部内に配置された1つまたは複数のコイルチューブの通過によって、反応ゾーンを横断することができる。反応のエンタルピーを用いて、タービンなどの適切なパワー回収システムによって、パワーを回収することができ、たとえば、熱受容流体、たとえば水を用いて、高圧飽和流を、たとえば300℃/100bara程度の温度および圧力に上昇させることができ、これを、外部熱によって過熱し、高効率凝縮蒸気タービンに供給して、パワーを回収することができる。このように、反応器を最適温度に維持することができ、効果的なエネルギー効率を達成することができる。代替方法において、動作中反応器を横切る温度上昇を抑制するために、反応器を断熱条件下で動作させることができ、反応ゾーンを通る水流の適切に高い速度を用いることができる。望ましい場合、両方の方法の組合せ、すなわち、反応ゾーンを通る適切な水流量と合された、熱受容流体による反応のエンタルピーの回収を用いることができる。
【0054】
原料成分の加熱後、酸素が水と混合され、これは、予熱および加圧の結果として、超臨界または近超臨界条件下になり、したがって、原料を可溶化することができる。図3に示された実施形態において、酸素および水がプレミキサ18A内で混合される。前駆体が、また、プレミキサ18B内で水と混合される。当然、前駆体を、また、プレヒータ16に入る前、別個に水と予混合することができる。
【0055】
プレミキサ(または、各反応物および水の予混合が企てられる場合、複数のプレミキサ)は、それぞれ、図4A、図4B、図4C、図4D、および図5に示されているように、Yピース構成、Lピース構成、もしくはTピース構成、ダブルT構成、または静的ミキサなどのさまざまな形態をとることができる。図4Aから図4Dおよび図5において、参照符号Aは、プレミキサへの予熱水供給を示し、Bは反応物(前駆体または酸素)を示し、Pは結果として生じる混合流を示す。図4DのダブルT構成において、2つの混合流が発生されるP1およびP2。これらは、別個の連続流反応器を通過させるか、1つの流れに組合せ、次に、1つの連続流反応器を通過させることができる。当業者に知られているように、Xピース構成も使用することができる。
【0056】
反応ゾーンへの導入前、一方または両方の反応物を水と予混合する代わりに、反応物および水を、反応ゾーンに別個に導入し、何らかの形態の混合機構(たとえば静的ミキサ)を用いて、反応ゾーン内で混合することができ、それによって、成分の実質的にすべての混合が反応ゾーン内で行われることが理解されるであろう。
【0057】
均質な触媒が反応において使用されるべきである場合、触媒は、反応器に入る直前、または反応器の初めに(すなわち、図1Aに示されているように)、前駆体が予混合酸素/水流に加えられるのと同時に、源19から予混合酸素/水流に、溶液として加えられる。
【0058】
予熱および予混合後、原料成分は反応ゾーン20内で組合されて、反応物が一緒にされた1つの均質な流体相を形成する。反応ゾーン20は、高変換効率および低中間体アルデヒド含有量で、前駆体のカルボン酸への変換を確実にするように、組合された反応物の流量と関連して、適切な反応時間を提供する、たとえばある長さのパイプなどの管形栓流反応器の形態の簡単なミキサ機構からなることができる。
【0059】
反応が不均質な触媒系の存在下で行われる場合(すなわち、図1Bに示されているように)、触媒系は、流れ方向に対して長さ方向に分配することができ、かつ反応ゾーンと同延であることができ、それにより、いったん、超臨界または近超臨界流体が、触媒系によって占められたパイプのセクションを越えて進むと、反応の速度は著しく低下して、分解生成物の生成を抑制する。
【0060】
反応物を、反応器20の上流で「一回で」組合せることができる。あるいは、反応器の長さに沿って多数の点で、一方の反応物を、他方の反応物を含有する流れに注入することによって、それらを漸進的に組合せることができる。多注入機構を実現する1つの方法が、図6の連続流反応器に示されており、反応器はパイプPによって構成される。予混合酸素/水流が予混合前駆体/水流に加えられる実施形態(図2Dに示されているように)において、予混合前駆体/超臨界または近超臨界水流Wが、パイプPの上流端部に供給される。均質な触媒が使用されるプロセスの場合、水流Wは、また、触媒を含有し、不均質な触媒を使用するプロセスにおいて、触媒はパイプPの内側に存在する。流れは反応器パイプPを通過し、パイプPの長さに沿って間隔をおいて隔置された一連の位置で、超臨界または近超臨界水に溶解した予熱され圧縮された酸素が、注入通路AからEを介して供給されて、超臨界または近超臨界水溶液中に所望の複素環式芳香族カルボン酸を含む生成物流Sを生成する。このように、前駆体のカルボン酸への完全な酸化を行うために必要な酸素は、酸化を制御し、かつ、前駆体、カルボン酸生成物、またはカルボン酸中間体の副反応および可能な燃焼を最小にする目的で、漸進的に注入される。
【0061】
ここで再び図3を参照すると、所望の程度までの反応後、超臨界または近超臨界流体は、熱交換器22を通過され、熱交換器22を通して、熱交換流体が閉ループ24によって循環され、それにより、熱を、プレヒータ16内での使用のために回収することができる。
【0062】
次に、冷却された溶液は生成物回収セクション26に供給され、カルボン酸は溶液から回収される。当業者に知られている、生成物回収の任意の適切な方法を用いることができる。
【実施例】
【0063】
実験作業を、MnBr2触媒での、超臨界水中の前駆体の連続酸化によって、実験室規模で行った。比較的希薄な溶液(<5%有機w/w)を使用することによって、発熱を最小にした。システムの基本的な構成は、図1Aに記載された通りである。これらの実験室規模実験に使用されるシステムのより詳細な図が、図7に示されている。
【0064】
過酸化水素(100体積)を、2%溶液などの適切な濃度に希釈し、ポンプに供給し、5℃以下に冷却した。次に、過酸化水素を、アルミニウムブロック内にキャストされた1/4インチO.D.ステンレス鋼チューブの5mコイルからなるプレヒータ152内で加熱した。酸化剤および水の適切な混合を、プレヒータ152内の比較的長いコイルを使用することによって行った。次に、酸化剤/水流体をクロスピース154を通過させ、それを、自体のポンプから供給された、前駆体、およびMnBr2触媒の溶液と接触させた。
【0065】
他の成分が、図7において、次のように標記される:162A〜E:バルブ;163A〜B:圧力解放バルブ;164A〜E:逆止バルブ;165A〜F:圧力トランスデューサ;T:熱電対(プレヒータ152のアルミニウムヒータブロックが熱電対を含む、図示せず)。プレヒータはNWA GmbHから得られ;ポンプは、ギルソン(Gilson)302、305、306、および303であり、;背圧調整器はテスコム(Tescom)(モデル26−1722−24−090)から得られた。
【0066】
最大腐食が、酸化剤、前駆体、および触媒溶液が出会うクロスピース154の領域内で、特に、高温勾配が臭化物イオンと一致する入来未加熱触媒供給パイプにおいて、生じる。ハステロイC276(またはチタン)を、触媒供給パイプの最終セクション、および、約100℃の温度勾配が約5cmの長さにわたって生じる、使用される場合NaOH溶液の添加のためのミキサセクションの前の、反応器の下流のために使用し、316Lステンレス鋼を他の構成要素のために使用した。腐食破損しがちなパイプワークすべてが、ポリカーボネートシールドの内側で保護される。
【0067】
各ラン前、装置を、冷たいとき流体静力学的に圧力テストし、次に、純18Mohm水の流れ(5〜10ml 分)で加熱した。いったん動作温度に達すると、過酸化水素供給、ならびに前駆体およびMnBr2のためのポンプを開始した。典型的には、実験を4から5時間行った。生成物を、通常、15または30分の順次期間の間集め、分析した。純度を、主としてHPLCによって確認した。固体生成物の収率を、溶液中の異なった生成物のモル濃度を、反応器に供給された原料のモル濃度で割ったものとして計算した。
【0068】
(実施例1)
過酸化水素100体積を使用して、過酸化物56mlおよびナノピュア水(nanopure water)(18.3メグオームの抵抗)760mlを使用して、希薄ストック溶液を調製した。臭化マンガンをナノピュア水にBrの5000ppm w/wの濃度に溶解することによって、希薄触媒ストック溶液を調製した。3−メチルピリジンを別個に希釈しないで保持した。水酸化ナトリウム(0.5M)のストック溶液を調製して、反応器の下流に、しかし、背圧調整器の前に供給した。
【0069】
脱イオン水だけを、プレヒータ、混合ピース、反応器、苛性ミキサ(caustic mixer)、冷却器、および背圧調整器を通して、反応器を通る最終滞留時間を10秒に制御する速度で、ポンピングした。滞留時間は、混合ピース、すなわち、反応物を混合して反応を開始するための第1のものと、水酸化ナトリウムの添加で反応を急冷するための第2のものとの間の管形反応器、パイプワーク、および取付具の体積を、体積流量で割ったものと定義した。体積流量は、国際蒸気表(International Steam Tables)に、および米国国立標準技術研究所(U.S.National Institute of Standards and Technology)によって発表されるように、混合条件における水の物理的特性に基いた。
【0070】
背圧調整器を、反応器圧力を220バールに制御するように設定した。ヒータを、混合ピースを380℃に、反応器を374℃に制御するように設定した。
【0071】
反応物の各々を混合ピースに別個にポンピングした。メチルピリジンを0.50%w/wの濃度で反応器に供給し、酸素を、3−メチルピリジンのニコチン酸への酸化のために必要な化学量論速度をわずかに上回る速度で供給し、触媒溶液を混合ピースに供給して、反応器内で1640ppm Brの濃度を生じさせた。
【0072】
安定した設定点条件に達した後、サンプルを15分の間隔にわたって集め、その後分析した。この実験を1.5時間行った。結果は、約30%の変換におけるニコチン酸(約95%)のための良好な選択性を示す。いくらかの3−ピリジンカルボキシアルデヒドを1〜2%の収率で検出した。未反応の前駆体は、反応媒体中で安定しており、反応の終わりに回収する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】上の第1の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図1Aは、均質な触媒の使用を示す。
【図1B】上の第1の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図1Bは、不均質な触媒の使用を示す。
【図2A】上の第2の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図2Aは、均質な触媒の使用を示す。
【図2B】上の第2の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図2Bは、均質な触媒の使用を示す。図2Bにおいて、酸化剤は、反応ゾーンに沿って多数の注入点で漸進的に導入される。
【図2C】上の第2の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図2Cは、不均質な触媒の使用を示す。
【図2D】上の第2の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図2Dは、不均質な触媒の使用を示す。図2Dにおいて、酸化剤は、反応ゾーンに沿って多数の注入点で漸進的に導入される。
【図3】前駆体が酸素および水の予混合流に加えられる構成(すなわち、図1Aまたは図1Bに示されたプロセスに従った構成)をより詳細に示す概略フローシートである。
【図4A】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるさまざまなプレミキサ構成を示す。
【図4B】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるさまざまなプレミキサ構成を示す。
【図4C】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるさまざまなプレミキサ構成を示す。
【図4D】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるさまざまなプレミキサ構成を示す。
【図5】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるプレミキサ構成を示す。
【図6】酸化剤の多段注入を示す概略図である。
【図7】実施例と関連して説明される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチン酸などの複素環式芳香族カルボン酸の生成のための、アルキル複素環式芳香族化合物、特に窒素含有複素環式芳香族化合物の選択的な部分酸化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルピリジンから得られたピリジンカルボン酸が、製薬産業における重要な中間体である。特に、ビタミンB3の前駆体として使用される3−ピリジンカルボン酸またはニコチン酸が、大規模に製造されている。2つの基本的な方法が、ピリジンカルボン酸の合成のために用いられる。1つの方法は、ピリジンカルボニトリルから得られたピリジンカルボキサミドの加水分解に基き、他方は、空気、硝酸、二酸化セレンなどによるアルキルピリジンの酸化である。メチルピリジンのアンモ酸化が、ピリジンカルボニトリルを形成し、これは、その後、ピリジンカルボキサミドによってピリジンカルボン酸に加水分解される。3−ピリジンカルボン酸が、5−エチル−2−メチルピリジンの硝酸酸化によって商業的に製造されている。
【0003】
アルキル複素環式芳香族化合物のカルボン酸への選択的な酸化は、対応する炭素環式化合物より著しく困難であることが知られている。アルキル複素環式芳香族化合物のカルボン酸への酸化のために必要な滞留時間は、当量の炭素環式アルキル芳香族化合物より著しく長い。たとえば、(特許文献1)(日産化学(Nissan Chemical International))が、必要な反応時間が3時間である、コバルトマンガンセリウムブロミド(Cobalt Manganese Cerium Bromide)触媒を使用する酢酸中の酸化による、3−メチルピリジンからのニコチン酸の生成のための方法を開示した。p−キシレンのテレフタル酸への酸化についての同様の研究が、40分以下の必要な滞留時間を与える(特許文献2)。
【0004】
従来の方法は、長い滞留時間を必要とし、著しい量の望ましくない副生成物を生成する。副生成物は、アルデヒド中間体などの、目的とするカルボン酸の部分酸化中間体を含む。たとえば、3−ピリジンカルボン酸(3−PyA)を生成するための3−メチルピリジン(3−Mpy)の酸化は、著しいレベルの3−ピリジンカルボキシアルデヒド(3−PyAl)をもたらすことがある。さらに、生成物の脱カルボキシル化が、非置換複素環式芳香族化合物自体を生じさせることがあり、これは、3−メチルピリジンの酸化におけるピリジンである。
【0005】
(特許文献3)(ダイセル化学工業株式会社(Daicel Chemical Industries Ltd))が、酢酸中の酸化のための促進剤としてN−ヒドロキシフタルイミドを使用する、酢酸中の3−メチルピリジンからのニコチン酸の生成のための方法を開示した。しかし、この方法は、長い滞留時間を必要とし、経済的に実行不可能であり、というのは、それは、加えられた促進剤から、かなりの量のフタルイミド不純物およびフタレート不純物を生成するからである。
【0006】
(特許文献4)(ロンザAG(Lonza AG))に記載された3−メチルピリジンのニコチン酸への酸化のための商業的気相法には、いくつかの欠点がある。反応が発熱であるので、それを気相中で行うことは熱移動制限を生じさせ、それは、エネルギーを反応から取出すことができる効率を低減する。また、反応が固定床不均質触媒の上で行われるので、反応は、流体媒体全体にわたってではなく、触媒の表面のみにおいて行われ得る。
【0007】
複素環式芳香族カルボン酸、特に反応時間および副生成物形成が低減される複素環式芳香族カルボン酸の生成のための向上された方法を提供する必要が残る。
【0008】
比較的高価であり、環境規制によって、回収およびリサイクルを必要とすることがある酢酸などの有機溶媒のかなりの量の使用を回避することも望ましいであろう。酢酸の使用におけるさらなる問題は、それが、特定の条件下で空気または酸素と混合されると可燃性であることである。有機溶媒の使用におけるさらなる問題は、酸化剤がそれへの低可溶性を有し得ることである。たとえば、二酸素が酸化剤として使用される場合、二酸素は主として反応媒体中に別々の気泡として存在し、少量の二酸素のみが溶媒に溶解する。前駆体と二酸素との間の反応が、二酸素が気泡からバルク液体中に拡散することから生じる程度に、反応速度は、二酸素の溶媒への低可溶性によって制限される。
【0009】
複素環式芳香族カルボン酸を、超臨界水中の前駆体の酸化によって合成することができることが現在見出されている。
【0010】
(非特許文献1)が、とりわけ、酸化剤として分子酸素を使用する亜臨界水の反応媒体中のアルキル芳香族化合物からの芳香族カルボン酸の合成のためのバッチ法を記載する。水の誘電率は、それがその臨界点(374℃および220.9bara)に近づくにつれて、約80C2/Nm2の室温値から5C2/Nm2の値に大幅に減少し、それが有機分子を可溶化するのを可能にする。結果として、次に、水は、たとえば、トルエンなどの炭化水素が、超臨界条件または近超臨界条件下で水と完全に混和性である程度に、有機溶媒のように挙動する。たとえば、テレフタル酸が、事実上約200℃未満の水に不溶性である。二酸素が、また、亜臨界水および超臨界水に高度に可溶性である。
【0011】
(特許文献5)は、超臨界条件または超臨界点に近い近超臨界条件下で水性溶媒中のカルボン酸の1つまたは複数の前駆体を酸化する工程を含む、テレフタル酸またはイソフタル酸などの芳香族カルボン酸の生成のための連続法を開示する。
【0012】
【特許文献1】特開平7−233150号公報
【特許文献2】米国特許第3354202号明細書
【特許文献3】特開2002−226404号公報
【特許文献4】DE−19822788号明細書
【特許文献5】国際公開第02/06201号パンフレット
【非特許文献1】ホリデー・アール・エル(Holliday R.L.)ら(ジャーナル・オブ・スーパークリティカル・フルイズ(J.Supercritical Fluids)12、1998、255−260)
【非特許文献2】リン(Lin)、スミス(Smith)ら(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ケミカル・キネティクス(International Journal of Chemical Kinetics)、Vol23、1991、p971)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、高収率および高選択性における、低減された反応時間での、溶媒として有機材料を使用する必要のない、複素環式芳香族カルボン酸の生成のための代替の向上された方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、反応物および生成物の実質的にすべてが反応の間共通相中に維持される、複素環式芳香族カルボン酸の生成のための代替の向上された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、複素環式芳香族カルボン酸の生成のための方法であって、触媒の存在下で、前記カルボン酸の前駆体を酸化剤と接触させる工程であって、かかる接触が、超臨界条件または超臨界点に近い近超臨界条件下の水を含む水性溶媒中にある前記前駆体および酸化剤を用いて行われる工程を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0015】
本発明の方法は、短い滞留時間を伴い、かつ生成物形成の高収率および良好な選択性を示す点で有利である。さらに、超臨界または近超臨界条件下で水を使用することによって、主溶媒として酢酸などの脂肪族カルボン酸を使用することなく、所望の複素環式芳香族カルボン酸を生成することができる。
【0016】
生成された複素環式芳香族カルボン酸の実質的にすべてが、反応の間溶液中に維持され、その後、カルボン酸は反応媒体から回収される。
【0017】
好ましくは、方法は、問題の成分が分子レベルで混合された実質的に1つの均質な流体相を形成する反応物および溶媒で行われる。これは、二酸素が反応媒体中に別々の気泡として存在する既存の方法と対照的である。前駆体と二酸素との間の反応が、二酸素が気泡からバルク液体中に拡散することから生じる程度に、従来の方法の反応速度は、二酸素の有機溶媒への可溶性によって制限され、これは高くない。溶媒としての、超臨界または近超臨界条件下での水の使用は、反応速度論を変え、というのは、超臨界点に近づき、それを超えると、水中の二酸素の濃度が著しく増加するからである。さらに、反応速度論は、水溶媒が超臨界または近超臨界条件下であるとき優勢である高温によって、さらに向上される。高温、高濃度、および均質性の組合せは、前駆体をカルボン酸に変換するための反応が、従来の方法で用いられる滞留時間と比較して、非常に急速に生じることができることを意味する。
【0018】
これらの条件下で、アルデヒド中間体などの中間体不純物が、容易に所望のカルボン酸に酸化される。さらに、前駆体と酸化剤との間の自触媒破壊反応、および触媒の消費が最小にされる。
【0019】
好ましくは、前記接触は、前駆体、酸化剤、および水性溶媒が、反応ゾーン内で実質的に1つの均質な相を構成するように行われ、前記前駆体の少なくとも一部の、前記酸化剤との接触は、前記触媒の、前記酸化剤の少なくとも一部との接触と同時に起こる。
【0020】
好ましくは、前記接触は連続流反応器内で行われる。代替実施形態において、方法を、バッチタイプ反応器内でバッチ反応として行うことができる。
【0021】
方法を用いて、好ましくは窒素および酸素から選択され、好ましくは窒素である、1、2、または3のヘテロ原子、好ましくは1または2のヘテロ原子、より好ましくは1のヘテロ原子を含有する複素環式芳香族カルボン酸を調製することができる。好ましくは、複素環式芳香族カルボン酸は、5または6員環系、好ましくは6員環系を含む。好ましくは、複素環式芳香族カルボン酸は、単環式または二環式、好ましくは単環式である。方法は、特に、窒素含有複素環式芳香族化合物、特に1、2、または3の窒素原子を含むもの、および特に6員環を含むものの生成に適用できる。好ましい実施形態において、複素環式芳香族カルボン酸は、ピリジン環またはピリミジン環、好ましくはピリジン環を含む。好ましい実施形態において、複素環式芳香族カルボン酸はニコチン酸である。
【0022】
適切な前駆体は、アルキル置換複素環式芳香族化合物、特にメチル置換複素環式芳香族化合物である。好ましい実施形態において、前駆体は、アルキルピリジンまたはアルキルピリミジン、好ましくはアルキルピリジン、好ましくはメチルピリジン、好ましくは3−メチルピリジンである。本明細書で説明される方法において、好ましくは、所望のカルボン酸の1つの前駆体のみが使用される。しかし、あるいは、所望のカルボン酸の1つを超える前駆体を使用することができる。アルキル置換基以外に、複素環式前駆体は、任意に、1つまたは複数の他の置換基、たとえば、ヒドロキシ基、ニトレート基、およびハライド基を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の方法において、プロセスの圧力および温度は、超臨界または近超臨界条件を確実にするように選択される。したがって、動作温度が、典型的には、300から480℃、より好ましくは330から450℃、典型的には約340から370℃の下限から約370から約420℃の上限の範囲内である。動作圧力が、典型的には、約40から350bara、好ましくは60から300bara、より好ましくは200から280baraの範囲内である。
【0024】
本明細書で使用されるように、「近超臨界条件」は、反応物および溶媒が実質的に1つの均質な相を構成することを意味し、実際に、これは、水の臨界温度より低い条件下で達成することができる。一実施形態において、「近超臨界条件」という用語は、溶媒が、220.9baraにおける水の臨界温度より100℃以上低い、好ましくは50℃以上低い、より好ましくは35℃以上低い、特に20℃以上低い温度であることを意味する。
【0025】
本明細書で使用されるように、「連続流反応器」は、バッチタイプ反応器と対照的に、同時に連続的に、反応物が導入され混合され、生成物が取出される反応器を意味する。たとえば、反応器は、管形流れ反応器(乱流または層流を伴う)であることができるが、ここに規定される本発明のさまざまな態様は、この特定のタイプの連続流反応器に限定されない。連続流反応器内の滞留時間は、反応器体積を動作条件における反応物の体積流量で割ったものと定義する。
【0026】
本明細書で使用されるように、「カルボン酸前駆体」または「前駆体」は、選択的な酸化条件の存在下で大きな収率(majority yield)で特定のカルボン酸に酸化することができる有機化合物、好ましくは炭化水素を意味する。ピリジンカルボン酸前駆体の例が、メチルピリジンであり、たとえば、ニコチン酸前駆体が3−メチルピリジンである。対応して、メチルピリミジンを使用して、ピリミジン(pryimidine)カルボン酸を生成することができる。
【0027】
本明細書で使用されるように、カルボン酸の生成への言及は、その無水物の生成への言及を含む。当業者には明らかであるように、本発明の方法がカルボン酸を生成するかそれらの無水物を生成するかは、反応における条件、および/または生成物を単離または分離するために用いられる条件による。
【0028】
好ましくは、本発明の方法において、反応において生成された複素環式芳香族カルボン酸の実質的にすべて、いずれにしても98重量%以上が、反応の間溶液中に維持され、溶液が酸化反応ゾーンを出て、冷却を経るまで、沈殿し始めない。
【0029】
反応のための滞留時間は、分解生成物の著しい生成を伴わない、前駆体の所望の複素環式芳香族カルボン酸への変換の達成と適合させることができる。反応ゾーン内の反応媒体の滞留時間は、一般に10分以下、通常2分以下程度、好ましくは1分以下、より好ましくは30秒以下である。
【0030】
好ましい実施形態において、目的とするカルボン酸のための選択性は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%であり、選択性は、パーセンテージとして表現された、目的とする酸の重量収率を、目的とする酸および部分酸化アルデヒド不純物、および分解生成物を除く他の反応生成物の組合された重量収率で割ったものである。
【0031】
好ましい実施形態において、目的とするカルボン酸の収率は、前駆体の重量の、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%である。
【0032】
本発明の方法を行うのに適した反応器システムは、一般に、以下で説明されるように構成することができる。次の説明は、連続流反応器の好ましい実施形態に関連する。しかし、上で示されたように、本発明はそのような構成に限定されず、次の説明は例示のためにすぎない。
【0033】
直列のまたは並列の、1つを超える反応ゾーンがあることができる。たとえば、並列の多数の反応ゾーンが使用される場合、反応物および溶媒は、反応ゾーンの通過のために別個の流れを形成することができ、望ましい場合、そのような多数の反応ゾーンからの生成物流を合流させて、1つの生成物流を形成することができる。1つを超える反応ゾーンが使用される場合、温度などの条件は、各反応器内で同じまたは異なることができる。各反応器は断熱的にまたは等温的に動作させることができる。等温または制御された温度上昇を熱交換によって維持して、反応が反応器を通って進むとき所定の温度プロファイルを規定することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、反応の熱は、たとえば、技術の開示を参照により本明細書に援用する(特許文献5)に記載されているような、当業者に知られている従来の技術に従って、熱受容流体での熱交換によって、反応から除去される。好都合に、熱受容流体は水を含む。
【0035】
本発明の方法における酸化剤は、好ましくは、分子酸素、たとえば空気または酸素富化空気であるが、好ましくは、その主成分として酸素を含有するガス、より好ましくは純酸素、または液体に溶解した酸素を含む。空気の使用は、本発明の範囲から除かれないが、好まれず、というのは、空気の高窒素含有量のせいで、大きい圧縮コストが生じ、オフガス取扱い設備が、大量のオフガスに対処する必要があるからである。一方、純酸素または酸素富化ガスは、より小さいコンプレッサおよびより小さいオフガス処理設備の使用を可能にする。本発明の方法における酸化剤としての二酸素の使用が、特に有利であり、というのは、それは、超臨界または近超臨界条件下で水に高度に可溶性であるからである。したがって、特定の点において、酸素/水システムは1つの均質な相になる。
【0036】
分子酸素の代わりに、酸化剤は、1分子あたり1つまたは複数の酸素原子を含有する化合物、たとえば室温における液相化合物から得られた原子酸素を含むことができる。1つのそのような化合物は、たとえば、米国特許公報(非特許文献2)に記載されているように、反応または分解によって酸素源として作用する過酸化水素である。
【0037】
本発明の方法は酸化触媒の存在下で行われる。触媒は、溶媒と、複素環式芳香族カルボン酸前駆体とを含む反応媒体に可溶性であることができるか、あるいは、不均質な触媒を使用することができる。触媒は、均質であろうと不均質であろうと、典型的には、1つまたは複数の重金属化合物、たとえばコバルト化合物および/またはマンガン化合物、好ましくはマンガン化合物だけを含み、任意に、酸化促進剤を含むことができる。たとえば、触媒は、脂肪族カルボン酸溶媒中の芳香族カルボン酸(テレフタル酸など)を生成するために液相酸化反応において使用された形態、たとえば、コバルトおよび/またはマンガンの、臭化物、ブロモアルカノエート(bromoalkanoates)、またはアルカノエート(alkanoates)(通常、Cl〜C4アルカノエート、たとえば酢酸塩など)のいずれかをとることができる。バナジウム、クロム、鉄、モリブデン、セリウムなどのランタニド、ジルコニウム、ハフニウム、および/またはニッケルなどの他の重金属の化合物を、コバルトおよび/またはマンガンの代わりに使用することができる。有利に、触媒系は臭化マンガン(MnBr2)を含む。使用される場合、酸化促進剤は、元素臭素、イオン臭化物(たとえば、HBr、NaBr、KBr、NH4Br)および/または有機臭化物(たとえば、ブロモベンゼン、ベンジル−ブロミド、モノ−およびジ−ブロモ酢酸、ブロモアセチルブロミド、テトラブロモエタン、エチレン−ジ−ブロミドなど)の形態であることができる。あるいは、酸化促進剤は、メチルエチルケトンなどのケトン、またはアセトアルデヒドなどのアルデヒドを含むことができる。
【0038】
触媒が不均質な形態である場合、それは、連続的に流れる反応媒体と触媒との間の接触を確実にするように、反応ゾーン内に適切に配置することができる。この場合、触媒は、流れ断面を過度に狭くすることなく、かかる接触を確実にするように、反応ゾーン内に適切に支持および/または拘束することができる。たとえば、反応媒体が不均質な触媒の上に流れるように、不均質な触媒を、反応ゾーン内に位置決めされた静的エレメント(たとえば、オープンワーク構造を形成するエレメント)上にコーティングするか、それらに他の態様で付与するか、それらの中に包含することができる。そのような静的エレメントは、さらに、反応物が反応ゾーンを通過するとき反応物の混合を向上させるのに役立つことができる。あるいは、触媒は、移動ペレット、粒子、微粉化形態、金属スポンジ形態などの形態であることができ、必要な場合、触媒を反応ゾーンに制限するために手段が提供され、それにより、動作中、触媒ペレットなどは、反応ゾーンを通って流れる反応媒体中に懸濁または浸漬されるようになる。これらの方法のいずれにおける不均質な触媒の使用も、触媒作用効果を明確なゾーンに制限することができるという利点を与え、それにより、いったん反応媒体がゾーンを横断してしまうと、さらなる酸化は、低減された速度で行われるか、著しく抑制することができる。
【0039】
酸化反応は、反応物を加熱し加圧し、次いで、加熱され加圧された反応物を反応ゾーン内で一緒にすることによって、開始される。これはいくつかの方法で行うことができ、超臨界または近超臨界条件の達成前または後、反応物の一方または両方が水性溶媒と混合され、そのような混合は、反応ゾーン内で一緒にされるまで、反応物を互いに単離して維持するように行われる。
【0040】
本発明のバッチ法において、水、前駆体、および触媒溶液が、反応温度および圧力に加熱される前、オートクレーブ内で混合される。酸化剤を、任意に、反応条件下で混合物に加えることができるか、それを、バッチ反応器オートクレーブをシールし加熱する前、加えることができる。所望の反応時間後、反応オートクレーブは冷却され、生成物は排出される。次に、抽出、濃縮、および再結晶などの任意の適切な生成物回収システムを用いて、複素環式芳香族カルボン酸生成物を回収することができる。
【0041】
本発明の連続法において、反応器システムは、好ましくは、酸化剤と、前駆体の少なくとも一部、および好ましくは実質的にすべてとの間の接触が、触媒と、酸化剤の少なくとも一部、および好ましくは実質的にすべてとの間の接触と、反応器システム内の同じ点で行われるように構成される。
【0042】
第1の実施形態において、超臨界または近超臨界状態を確実にするように水性溶媒が加熱され加圧された後、酸化剤は水性溶媒と混合され、水性溶媒と混合する前、酸化剤の適切な加圧、および望ましい場合加熱を伴う。前駆体が、加圧され、望ましい場合加熱される。均質な触媒を使用するプロセスの場合、触媒成分は、加圧され、望ましい場合加熱される。次に、前駆体、触媒、および酸化剤/溶媒混合物は、同時に接触される。不均質な触媒を使用するプロセスの場合、前駆体が、触媒の存在下で酸化剤/溶媒混合物と接触される。
【0043】
本発明の第2の実施形態において、超臨界または近超臨界状態を確実にするように水性溶媒が加熱され加圧された後、前駆体が水性溶媒と混合され、水性溶媒と混合する前、前駆体の適切な加圧、および望ましい場合加熱を伴う。1つの構成において、均質な触媒成分が、加圧および任意の加熱後、前駆体の水性溶媒との接触と同時に、水性溶媒と接触される。代替構成において、本明細書で説明されるように、不均質な触媒が使用され、反応ゾーンに制限される。超臨界または近超臨界状態を確実にするように水性溶媒が加熱され加圧された後、酸化剤は、加圧、および望ましい場合加熱後、水性溶媒と混合される。均質な触媒を使用するプロセスの場合、次に、酸化剤/水性溶媒混合物は、前駆体と、触媒と、水性溶媒とを含む混合物と接触される。不均質な触媒を使用するプロセスの場合、酸化剤/水性溶媒混合物は、反応ゾーン内で、すなわち、不均質な触媒の存在下で、前駆体と、水性溶媒とを含む混合物と接触される。
【0044】
さまざまな流れの接触を、デバイスへの別個のフィードとして行うことができ、フィードは合流されて1つの均質な流体相を形成し、したがって、酸化剤および前駆体を反応させる。フィードが合流されるデバイスは、たとえば、別個のフィードが、連続流反応器を形成する1つの流れ通路、またはいくつかの場合、2つ以上の連続流反応器を形成する多数の流れ通路内で合流されることを可能にする、Y、T、X、または他の構成を有することができる。フィードが合流される1つまたは複数の流れ通路は、内部の動的または静的混合エレメントを有するまたは有さない管形構成のセクションを含むことができる。
【0045】
好ましい実施形態において、たとえば、酸化剤の水性溶媒への溶解、および1つの相の形成を促進するために、急速な混合および均質性を確実にするために、インラインミキサまたは静的ミキサが有利に使用される。
【0046】
酸化剤フィードおよび前駆体フィードを1つの位置で一緒にすることができるか、一方のフィードまたは両方のフィードの少なくとも一部が、漸進的に、たとえば、反応器を通る流れの方向に対して多数の注入点を介して導入されるように、接触を2つ以上の段階で行うことができる。たとえば、一方のフィードを連続流通路に沿って通過させることができ、連続流通路に、他方のフィードが、連続流通路の長さ方向に隔置された多数の点で導入され、それにより、反応は漸進的に行われる。連続流通路に沿って通過されたフィードは、水性溶媒を含むことができ、多数の位置で導入されたフィードも同様である。
【0047】
同様に、触媒、特に均質な触媒の添加を、漸進的に、たとえば、反応器を通る流れの方向に対して多数の注入点を介して行うことができる。
【0048】
一実施形態において、酸化剤は2つ以上の位置で反応に導入される。そのような位置は、好都合に、酸化剤が、初期位置、および前記初期位置の下流の少なくとも1つのさらなる位置で反応に導入されるように、酸化ゾーンを通る溶媒および反応物のバルク流に対して位置決めされる。
【0049】
連続流反応器を横断した後、反応混合物は、複素環式芳香族カルボン酸の溶液を含む。溶液は、また、触媒(使用される場合)、および、比較的小量の、中間体(たとえばアルデヒド)、脱カルボキシル化生成物、および分解生成物などの副生成物、およびいかなる未使用の反応物を含有することができる。
【0050】
ここで、本発明を、添付の図面を参照して、あくまで例として、さらに説明する。
【0051】
図1Aを参照すると、水が加熱された後、二酸素が、加圧後、水と混合され、混合物は、加圧され、任意に、プレヒータ1内でさらに加熱されて、超臨界状態を達成する。前駆体および触媒は、加圧後、反応器2の初めにまたは直前、O2/水流に加えられ、混合物は反応器を通過される。反応器を出ると、流れは、冷却され、背圧調整器3において減圧される。生成物は、冷却水の流れで外に運ばれる。対応する図1Bにおいて、触媒は、反応器内に不均質な触媒としてすでに存在する。
【0052】
図2Aおよび図2Bを参照すると、水が加圧され任意に加熱された後、前駆体および触媒は、加圧後、水に加えられ、任意に、プレヒータ1A内でさらに加熱されて、超臨界状態を達成する。二酸素ガスは、加圧後、超臨界状態における水と混合され、任意に、プレヒータ1内でさらに加熱される。図2Aにおいて、2つの流れは、反応器2の初めにまたは直前、混合され、混合物は反応器を通過される。図2Bにおいて、O2/水流は、多数の注入点で漸進的に反応器に加えられる。反応器を出ると、流れは、冷却され、背圧調整器3において減圧される。生成物は、冷却水の流れで外に運ばれる。対応する図2Cおよび図2Dにおいて、触媒は、反応器内に不均質な触媒としてすでに存在する。
【0053】
図3を参照すると、水、前駆体、および二酸素ガスを含む原料成分が、動作圧力に加圧され、それぞれの源10、12、および14から、プレヒータ16を通して、連続的に供給され、成分は、300℃から480℃、より好ましくは330℃から450℃、典型的には約340℃から370℃の下限くらいから約370℃から約420℃の上限の温度に加熱され、圧力および温度は、超臨界または近超臨界条件を確実にするために選択される。原料成分を予熱するために用いられる熱の一部を、その後の前駆体と酸化剤との間の反応の間生じた発熱から得ることができる。他の源からの熱が、たとえば、高圧流の形態であることができ、および/または、加熱を、水流の直接焼成加熱によって行うことができる。反応の熱を、任意の適切な態様で、たとえば、反応後の流体と水などの適切な熱受容流体との間の熱交換によって、回収することができる。たとえば、熱受容流体を、反応ゾーンを通過する反応物および溶媒と向流におよび/または並流に熱交換関係で流れるように配列することができる。反応ゾーンを横断する際にそれに沿って熱受容流体が流れる1つまたは複数の通路は、反応ゾーンの外部にあることができ、および/または、反応ゾーンを通って内部に延在することができる。そのような内部に延在する流れ通路は、たとえば、反応ゾーンを通る反応物/溶媒の流れの一般的な方向と略平行に、および/またはこれの横断方向に延在することができる。たとえば、熱受容流体は、反応器の内部内に配置された1つまたは複数のコイルチューブの通過によって、反応ゾーンを横断することができる。反応のエンタルピーを用いて、タービンなどの適切なパワー回収システムによって、パワーを回収することができ、たとえば、熱受容流体、たとえば水を用いて、高圧飽和流を、たとえば300℃/100bara程度の温度および圧力に上昇させることができ、これを、外部熱によって過熱し、高効率凝縮蒸気タービンに供給して、パワーを回収することができる。このように、反応器を最適温度に維持することができ、効果的なエネルギー効率を達成することができる。代替方法において、動作中反応器を横切る温度上昇を抑制するために、反応器を断熱条件下で動作させることができ、反応ゾーンを通る水流の適切に高い速度を用いることができる。望ましい場合、両方の方法の組合せ、すなわち、反応ゾーンを通る適切な水流量と合された、熱受容流体による反応のエンタルピーの回収を用いることができる。
【0054】
原料成分の加熱後、酸素が水と混合され、これは、予熱および加圧の結果として、超臨界または近超臨界条件下になり、したがって、原料を可溶化することができる。図3に示された実施形態において、酸素および水がプレミキサ18A内で混合される。前駆体が、また、プレミキサ18B内で水と混合される。当然、前駆体を、また、プレヒータ16に入る前、別個に水と予混合することができる。
【0055】
プレミキサ(または、各反応物および水の予混合が企てられる場合、複数のプレミキサ)は、それぞれ、図4A、図4B、図4C、図4D、および図5に示されているように、Yピース構成、Lピース構成、もしくはTピース構成、ダブルT構成、または静的ミキサなどのさまざまな形態をとることができる。図4Aから図4Dおよび図5において、参照符号Aは、プレミキサへの予熱水供給を示し、Bは反応物(前駆体または酸素)を示し、Pは結果として生じる混合流を示す。図4DのダブルT構成において、2つの混合流が発生されるP1およびP2。これらは、別個の連続流反応器を通過させるか、1つの流れに組合せ、次に、1つの連続流反応器を通過させることができる。当業者に知られているように、Xピース構成も使用することができる。
【0056】
反応ゾーンへの導入前、一方または両方の反応物を水と予混合する代わりに、反応物および水を、反応ゾーンに別個に導入し、何らかの形態の混合機構(たとえば静的ミキサ)を用いて、反応ゾーン内で混合することができ、それによって、成分の実質的にすべての混合が反応ゾーン内で行われることが理解されるであろう。
【0057】
均質な触媒が反応において使用されるべきである場合、触媒は、反応器に入る直前、または反応器の初めに(すなわち、図1Aに示されているように)、前駆体が予混合酸素/水流に加えられるのと同時に、源19から予混合酸素/水流に、溶液として加えられる。
【0058】
予熱および予混合後、原料成分は反応ゾーン20内で組合されて、反応物が一緒にされた1つの均質な流体相を形成する。反応ゾーン20は、高変換効率および低中間体アルデヒド含有量で、前駆体のカルボン酸への変換を確実にするように、組合された反応物の流量と関連して、適切な反応時間を提供する、たとえばある長さのパイプなどの管形栓流反応器の形態の簡単なミキサ機構からなることができる。
【0059】
反応が不均質な触媒系の存在下で行われる場合(すなわち、図1Bに示されているように)、触媒系は、流れ方向に対して長さ方向に分配することができ、かつ反応ゾーンと同延であることができ、それにより、いったん、超臨界または近超臨界流体が、触媒系によって占められたパイプのセクションを越えて進むと、反応の速度は著しく低下して、分解生成物の生成を抑制する。
【0060】
反応物を、反応器20の上流で「一回で」組合せることができる。あるいは、反応器の長さに沿って多数の点で、一方の反応物を、他方の反応物を含有する流れに注入することによって、それらを漸進的に組合せることができる。多注入機構を実現する1つの方法が、図6の連続流反応器に示されており、反応器はパイプPによって構成される。予混合酸素/水流が予混合前駆体/水流に加えられる実施形態(図2Dに示されているように)において、予混合前駆体/超臨界または近超臨界水流Wが、パイプPの上流端部に供給される。均質な触媒が使用されるプロセスの場合、水流Wは、また、触媒を含有し、不均質な触媒を使用するプロセスにおいて、触媒はパイプPの内側に存在する。流れは反応器パイプPを通過し、パイプPの長さに沿って間隔をおいて隔置された一連の位置で、超臨界または近超臨界水に溶解した予熱され圧縮された酸素が、注入通路AからEを介して供給されて、超臨界または近超臨界水溶液中に所望の複素環式芳香族カルボン酸を含む生成物流Sを生成する。このように、前駆体のカルボン酸への完全な酸化を行うために必要な酸素は、酸化を制御し、かつ、前駆体、カルボン酸生成物、またはカルボン酸中間体の副反応および可能な燃焼を最小にする目的で、漸進的に注入される。
【0061】
ここで再び図3を参照すると、所望の程度までの反応後、超臨界または近超臨界流体は、熱交換器22を通過され、熱交換器22を通して、熱交換流体が閉ループ24によって循環され、それにより、熱を、プレヒータ16内での使用のために回収することができる。
【0062】
次に、冷却された溶液は生成物回収セクション26に供給され、カルボン酸は溶液から回収される。当業者に知られている、生成物回収の任意の適切な方法を用いることができる。
【実施例】
【0063】
実験作業を、MnBr2触媒での、超臨界水中の前駆体の連続酸化によって、実験室規模で行った。比較的希薄な溶液(<5%有機w/w)を使用することによって、発熱を最小にした。システムの基本的な構成は、図1Aに記載された通りである。これらの実験室規模実験に使用されるシステムのより詳細な図が、図7に示されている。
【0064】
過酸化水素(100体積)を、2%溶液などの適切な濃度に希釈し、ポンプに供給し、5℃以下に冷却した。次に、過酸化水素を、アルミニウムブロック内にキャストされた1/4インチO.D.ステンレス鋼チューブの5mコイルからなるプレヒータ152内で加熱した。酸化剤および水の適切な混合を、プレヒータ152内の比較的長いコイルを使用することによって行った。次に、酸化剤/水流体をクロスピース154を通過させ、それを、自体のポンプから供給された、前駆体、およびMnBr2触媒の溶液と接触させた。
【0065】
他の成分が、図7において、次のように標記される:162A〜E:バルブ;163A〜B:圧力解放バルブ;164A〜E:逆止バルブ;165A〜F:圧力トランスデューサ;T:熱電対(プレヒータ152のアルミニウムヒータブロックが熱電対を含む、図示せず)。プレヒータはNWA GmbHから得られ;ポンプは、ギルソン(Gilson)302、305、306、および303であり、;背圧調整器はテスコム(Tescom)(モデル26−1722−24−090)から得られた。
【0066】
最大腐食が、酸化剤、前駆体、および触媒溶液が出会うクロスピース154の領域内で、特に、高温勾配が臭化物イオンと一致する入来未加熱触媒供給パイプにおいて、生じる。ハステロイC276(またはチタン)を、触媒供給パイプの最終セクション、および、約100℃の温度勾配が約5cmの長さにわたって生じる、使用される場合NaOH溶液の添加のためのミキサセクションの前の、反応器の下流のために使用し、316Lステンレス鋼を他の構成要素のために使用した。腐食破損しがちなパイプワークすべてが、ポリカーボネートシールドの内側で保護される。
【0067】
各ラン前、装置を、冷たいとき流体静力学的に圧力テストし、次に、純18Mohm水の流れ(5〜10ml 分)で加熱した。いったん動作温度に達すると、過酸化水素供給、ならびに前駆体およびMnBr2のためのポンプを開始した。典型的には、実験を4から5時間行った。生成物を、通常、15または30分の順次期間の間集め、分析した。純度を、主としてHPLCによって確認した。固体生成物の収率を、溶液中の異なった生成物のモル濃度を、反応器に供給された原料のモル濃度で割ったものとして計算した。
【0068】
(実施例1)
過酸化水素100体積を使用して、過酸化物56mlおよびナノピュア水(nanopure water)(18.3メグオームの抵抗)760mlを使用して、希薄ストック溶液を調製した。臭化マンガンをナノピュア水にBrの5000ppm w/wの濃度に溶解することによって、希薄触媒ストック溶液を調製した。3−メチルピリジンを別個に希釈しないで保持した。水酸化ナトリウム(0.5M)のストック溶液を調製して、反応器の下流に、しかし、背圧調整器の前に供給した。
【0069】
脱イオン水だけを、プレヒータ、混合ピース、反応器、苛性ミキサ(caustic mixer)、冷却器、および背圧調整器を通して、反応器を通る最終滞留時間を10秒に制御する速度で、ポンピングした。滞留時間は、混合ピース、すなわち、反応物を混合して反応を開始するための第1のものと、水酸化ナトリウムの添加で反応を急冷するための第2のものとの間の管形反応器、パイプワーク、および取付具の体積を、体積流量で割ったものと定義した。体積流量は、国際蒸気表(International Steam Tables)に、および米国国立標準技術研究所(U.S.National Institute of Standards and Technology)によって発表されるように、混合条件における水の物理的特性に基いた。
【0070】
背圧調整器を、反応器圧力を220バールに制御するように設定した。ヒータを、混合ピースを380℃に、反応器を374℃に制御するように設定した。
【0071】
反応物の各々を混合ピースに別個にポンピングした。メチルピリジンを0.50%w/wの濃度で反応器に供給し、酸素を、3−メチルピリジンのニコチン酸への酸化のために必要な化学量論速度をわずかに上回る速度で供給し、触媒溶液を混合ピースに供給して、反応器内で1640ppm Brの濃度を生じさせた。
【0072】
安定した設定点条件に達した後、サンプルを15分の間隔にわたって集め、その後分析した。この実験を1.5時間行った。結果は、約30%の変換におけるニコチン酸(約95%)のための良好な選択性を示す。いくらかの3−ピリジンカルボキシアルデヒドを1〜2%の収率で検出した。未反応の前駆体は、反応媒体中で安定しており、反応の終わりに回収する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】上の第1の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図1Aは、均質な触媒の使用を示す。
【図1B】上の第1の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図1Bは、不均質な触媒の使用を示す。
【図2A】上の第2の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図2Aは、均質な触媒の使用を示す。
【図2B】上の第2の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図2Bは、均質な触媒の使用を示す。図2Bにおいて、酸化剤は、反応ゾーンに沿って多数の注入点で漸進的に導入される。
【図2C】上の第2の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図2Cは、不均質な触媒の使用を示す。
【図2D】上の第2の実施形態について説明された基本的な構成を示す概略フローシートであり、図2Dは、不均質な触媒の使用を示す。図2Dにおいて、酸化剤は、反応ゾーンに沿って多数の注入点で漸進的に導入される。
【図3】前駆体が酸素および水の予混合流に加えられる構成(すなわち、図1Aまたは図1Bに示されたプロセスに従った構成)をより詳細に示す概略フローシートである。
【図4A】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるさまざまなプレミキサ構成を示す。
【図4B】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるさまざまなプレミキサ構成を示す。
【図4C】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるさまざまなプレミキサ構成を示す。
【図4D】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるさまざまなプレミキサ構成を示す。
【図5】反応物の少なくとも1つの、水性溶媒との混合を行うために使用することができるプレミキサ構成を示す。
【図6】酸化剤の多段注入を示す概略図である。
【図7】実施例と関連して説明される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素環式芳香族カルボン酸の生成のための方法であって、触媒の存在下で、前記カルボン酸の前駆体を酸化剤と接触させる工程であって、かかる接触が、超臨界条件または超臨界点に近い近超臨界条件下の水を含む水性溶媒中にある前記前駆体および前記酸化剤を用いて行われる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接触が連続流反応器内で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前駆体の接触が反応ゾーン内で行われ、滞留時間が2分未満であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生成された前記複素環式芳香族カルボン酸の実質的にすべてが、前記反応の間溶液中に維持されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複素環式芳香族カルボン酸が窒素含有複素環式芳香族化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複素環式芳香族カルボン酸が6員環を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複素環式芳香族カルボン酸がピリジン環を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複素環式芳香族カルボン酸がニコチン酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複素環式芳香族カルボン酸のための前駆体がアルキルピリジンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複素環式芳香族カルボン酸のための前駆体が3−メチルピリジンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項1】
複素環式芳香族カルボン酸の生成のための方法であって、触媒の存在下で、前記カルボン酸の前駆体を酸化剤と接触させる工程であって、かかる接触が、超臨界条件または超臨界点に近い近超臨界条件下の水を含む水性溶媒中にある前記前駆体および前記酸化剤を用いて行われる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接触が連続流反応器内で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前駆体の接触が反応ゾーン内で行われ、滞留時間が2分未満であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生成された前記複素環式芳香族カルボン酸の実質的にすべてが、前記反応の間溶液中に維持されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複素環式芳香族カルボン酸が窒素含有複素環式芳香族化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複素環式芳香族カルボン酸が6員環を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複素環式芳香族カルボン酸がピリジン環を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複素環式芳香族カルボン酸がニコチン酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複素環式芳香族カルボン酸のための前駆体がアルキルピリジンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複素環式芳香族カルボン酸のための前駆体が3−メチルピリジンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2008−514696(P2008−514696A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534551(P2007−534551)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032392
【国際公開番号】WO2006/041457
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032392
【国際公開番号】WO2006/041457
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]