説明

複重層糸及びその製造方法

【課題】 形態が安定し品位に優れた織編物を得ることができると同時に、被覆性に優れ、織編物の風合い向上にも寄与しうる複重層糸と、該複重層糸を安定に製造できる方法とを提供する。
【解決手段】 断面が芯鞘型の二層構造をなし、芯部、鞘部共に短繊維群からなり、芯部短繊維群の撚方向と逆方向に鞘部短繊維群が捲回している複重層糸であって、鞘部短繊維群の撚係数Ksが1.30〜1.80であると共に、該Ksと芯部短繊維群の撚係数Kcとの差の絶対値が0.80以下である複重層糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複重層糸及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの化学繊維・合成繊維が生産され天然繊維と共にそれぞれの繊維特性を生かして種々の分野に使用されている。しかしながら、各繊維の特性はある特定の用途では満足されるものの、他の用途においてはその特性が逆に欠点となることがしばしばある。このために、これらの各繊維を必要に応じて交織あるいは混紡し、特性の短所を補完して所望の用途に供するようにしている。
【0003】
2種の短繊維群を紡績工程の最終工程である精紡工程において、紡出、加撚して得られる複重層糸がその代表例として広く知られている。例えば、古くからの複重層糸として、芯部がポリエステル短繊維、鞘部が綿からなる複重層糸がある(例えば、特許文献1参照)。この複重層糸を用いてなる織編物は、綿織編物と同様の風合いを有すると共にアイロンセット性、形態安定性などを有しており、ユニフォーム衣料に好適に使用することができる。
【0004】
複重層糸は、原料の異なる2種の繊維の一方を芯部に、他方を鞘部に配したものに止まらず、原料は同一であるが異なる特性の繊維を芯部、鞘部に配したものもある。例えば、特許文献2には、単糸繊度の異なる2種のポリエステル短繊維の一方を芯部に、他方を鞘部に配した複重層糸が開示されており、この複重層糸を用いれば、張腰感と共にソフト感に優れる織編物が得られる。
【特許文献1】特公昭56−11775号公報
【特許文献2】特許第2976790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紡績糸は、加撚によって糸形態を維持しているため、一般にトルクを有している。トルクとは、解撚方向に発生するねじりモーメントのことであり、一般にトルクが強いと織編物の形態や品位に悪影響を及ぼす。具体的には、形態における悪影響として、カーリング、斜行など、品位における悪影響として、経縞、緯段、綾転がりなどがあげられる。
【0006】
上記の製法によって得られる複重層糸は、芯部及び鞘部をそれぞれ構成する短繊維同士が同一でないという点以外は、構造上、単一原料からなる一般の紡績糸と共通している。そのため、当該複重層糸も一般の紡績糸と同様にトルクを有している。
【0007】
紡績糸のトルクを低減するには、上撚と下撚とでトルクが相殺されるように交撚糸にするのが一般的な手段である。しかしながら、交撚糸にすることで糸が太くなり、目の込んだしなやかな風合いを有する織編物を得難い傾向にある。
【0008】
その一方で、トルクを実質的に有しない無撚紡績糸が知られている。無撚紡績糸は、非水溶性繊維からなる紡績糸と、水溶性繊維糸条とを紡績糸の撚方向と逆方向に交撚して得た交撚糸を用いて生機を得、しかる後に水溶性繊維糸条を溶解除去して得ることができる。しかしながら、かかる交撚糸がトルクを有しているため、それからなる生機も上記と同様の問題が発生する。そして、かかる問題は、その後水溶性繊維糸条を溶解除去して無撚紡績糸を作製しても解決できないのが実情である。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決し、形態が安定し品位に優れた織編物を得ることができると同時に、被覆性に優れ、織編物の風合い向上にも寄与しうる複重層糸と、該複重層糸を安定に製造できる方法とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討の結果、芯部、鞘部共に短繊維群からなる複重層糸にあって、各繊維群の撚方向及び撚係数を特定のものとすれば、各繊維群のトルクが相殺し合い、その結果、複重層糸のトルクが劇的に低減することを見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち、第一の発明は、断面が芯鞘型の二層構造をなし、芯部、鞘部共に短繊維群からなり、芯部短繊維群の撚方向と逆方向に鞘部短繊維群が捲回している複重層糸であって、鞘部短繊維群の撚係数Ksが1.30〜1.80であると共に、該Ksと芯部短繊維群の撚係数Kcとの差の絶対値が0.80以下であることを特徴とする複重層糸を要旨とするものである。
【0012】
また、第二の発明は、紡績糸と短繊維束とをリング精紡機のフロントローラーへ同時に供給して複重層糸を製造する方法であって、セカンドローラーとフロントローラーとの間のドラフト比(D)を0.960<D<1.000に設定して前記短繊維束をフロントローラーへ供給しつつ、撚係数が2.50〜4.00の紡績糸を同じフロントローラーへ供給し、両者を重ね合わせた後、前記紡績糸と逆方向に撚係数2.30〜3.00の範囲で加撚することを特徴とする複重層糸の製造方法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複重層糸は、トルクが小さいため織編物の形態を安定させると共に品位を向上させることができる。また、本発明の複重層糸は、被覆性に優れており、織編物にイラツキ感、杢感などの欠点も生じさせ難い。さらに、本発明の複重層糸を用いて柔軟性に富む織編物を得ることができる。
【0014】
そして、本発明の製造方法によれば、トルクが小さく被覆性に優れた複重層糸を安定して得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の複重層糸は、断面が芯鞘型の二層構造をなし、芯部、鞘部共に短繊維群からなるものである。ここでいう「短繊維」とは、連続繊維でない短い繊維(ステープル)を指す。
【0017】
かかる短繊維としては、例えば、綿、羊毛、麻、竹などの天然繊維、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリルなどの合成繊維、ビスコースレーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維などの再生繊維、ジアセテート、トリアセテートなどの半合成繊維があげられ、本発明では、これらを単独又は混合して用いるが、中でも、綿、溶剤紡糸セルロース繊維、羊毛を用いることが好ましい。短繊維の単糸繊度、繊維長はどのようなものであっても特に限定されるものではないが、綿、溶剤紡糸セルロース繊維の場合は、単糸繊度として0.6〜4.2dtexが、繊維長として10〜50mmが好ましく、羊毛の場合は、短繊維の平均直径として15〜30μmが、繊維長として64〜102mmが好ましい。
【0018】
本発明において、芯部及び鞘部に配すべき短繊維としては、同一であっても異なっていてもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。具体的に、双方の短繊維を異なるものにする場合としては、原料の異なる繊維を使用すること、原料は同じであるが異なる特性を有する繊維を使用することなどがあげられる。
【0019】
また、本発明の複重層糸においては、芯部短繊維群の撚方向と逆方向に鞘部短繊維群が捲回している必要がある。鞘部の捲回方向を芯部と同方向にすると、各繊維群同士のトルクを相殺できなくなる。
【0020】
各短繊維群の質量比率としては、特に限定されるものでなく、用途に応じて適宜設定すればよい。
【0021】
さらに、本発明の複重層糸における鞘部短繊維群の撚係数Ksとしては、1.30〜1.80であることが必要である。撚係数Ksが1.30未満であると、結束力が不十分となり、精紡時又は製織編時に鞘部繊維群の切断や風綿を大量発生させる傾向にある。一方、1.80を超えると、柔軟性に富む織編物が得難くなる。
【0022】
なお、撚係数とは、糸の太さと撚数とを関連付けながら撚りの強弱を表す数値であり、鞘部短繊維群の撚係数Ksは、下記式(1)によって算出される。
【0023】
【数1】

【0024】
また、本発明の複重層糸において、鞘部短繊維群の撚係数Ksと芯部短繊維群の撚係数Kcとの差の絶対値としては、0.80以下である必要がある。これにより芯部短繊維群と鞘部短繊維群とにおけるトルクが相殺し合い、結果として複重層糸のトルクが大幅に低減する。
【0025】
トルクの強弱は、一般に撚係数に依ることが大きいが、短繊維の原料、形状、単糸繊度、繊維長、熱履歴などにも依る。本発明者らが見出したところによれば、理由は定かでないが、各短繊維群の撚係数の差が上記の特定範囲内にあれば、撚係数以外の要件がどのようなものであれ複重層糸のトルクを低減させることができる。
【0026】
なお、芯部短繊維群の撚係数Kcは、下記式(2)によって算出される。
【0027】
【数2】

【0028】
本発明の複重層糸は、基本的に単糸で用いるのが好ましいが、必要に応じて双糸にしてもよい。
【0029】
ここで、本発明の複重層糸の外観について説明する。本発明の複重層糸と、カバーリング機を用いて得られるシングルカバードヤーン、芯鞘構造を有する複合粗糸を精紡して得られる複重層糸、2本の粗糸を同時に精紡して得られる複重層糸といった従来公知の糸とを比較すると前者(本発明の複重層糸)と後者(従来公知の糸)とは、芯鞘型の二層構造をなしている点で共通しているが、その構造的特徴は、明確に相違する。つまり、前者においては、鞘部短繊維群中の短繊維がばらけたような状態、すなわち、芯部短繊維群の周囲に短繊維があたかも1本ずつ均一に積み重なるかのように鞘部短繊維群が巻きついているのに対し、後者は何れも、鞘部短繊維群自体の加撚が強く、短繊維同士が収束している。つまり、前者は、芯部短繊維群の内、糸表面に露出する部分が非常に少ないのに対し、後者は何れも芯部短繊維群へ螺旋状に捲回している鞘部の隙間から芯部短繊維群が露出しているのである。
【0030】
このように本発明の複重層糸と上記従来公知の糸とは、外観が全く異なる。
【0031】
本発明の複重層糸は、被覆性に優れており、外観としては、芯部に配された短繊維だけからなる紡績糸と酷似している。本発明の複重層糸を用いた織編物は、染色してもイラツキ感、杢感などの欠点が生じ難い。この織編物の用途は、多岐に渡り、具体例として、肌着、ベビー服、婦人服、スポーツウエア、カジュアルウエア、作業服、事務服、学生服、業務用エプロン、寝装具などがあげられる。
【0032】
次に、本発明の複重層糸の製造方法について説明する。
【0033】
本発明の複重層糸の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記す)においては、まず、公知法により得られる紡績糸と粗糸とを用意する。これらの内、紡績糸は、複重層糸の芯部を形成するためのものである。この紡績糸は、当然のことながら加撚されており、撚係数としては、2.50〜4.00であることが好ましい。
【0034】
一方、粗糸は、鞘部を形成するためのものである。
【0035】
用意された2糸の内、まず、粗糸を精紡機に導入して短繊維束となす。次いで、セカンドローラーとフロントローラーとの間のドラフト比を特定範囲としながら当該短繊維束をフロントローラーへ供給し、それと同時に、上記の紡績糸を同じフロントローラーへ供給し、両者を重ね合わせる。そして、前記紡績糸と逆方向に加撚することで本発明の複重層糸を得ることができる。なお、「短繊維束」とは、複数の短繊維がほぼ一定の方向を向いて並び、帯状となった集合体を指す。
【0036】
本発明の製造方法を、図面を用いてさらに具体的に説明する。
【0037】
図1は、本発明の製造方法の一実施態様を示す概略説明図である。
【0038】
図1に示すリング精紡機に供給された粗糸1は、バックローラー2、2′、エプロン3、3′及びセカンドローラー4、4′を介してドラフトされ、短繊維束8となる。そして、短繊維束8を、弛緩した状態でフロントローラー5、5′に供給するため、セカンドローラーとフロントローラーとの間のドラフト比(D)を0.960<D<1.000に設定するのが好ましい。これにより、短繊維束の糸道が左右に振られるのと同時に該短繊維束が開繊される。そうすると、紡績糸の周囲に短繊維があたかも1本づつ均一に積み重なるかのような態様で巻きつき、複重層糸の被覆性が飛躍的に向上する。
【0039】
ここで、セカンドローラーとフロントローラーとの間のドラフト比(D)は、所謂機械ドラフトを指し、下記式(3)により算出される。
【0040】
【数3】

【0041】
ドラフト比が0.960以下であると、短繊維束の糸道が左右に大きく振れすぎて芯部の被覆に斑が発生したり、場合によっては、紡績糸と短繊維束とを重ね合わせることができなくなる。一方、1.000以上であると、短繊維束が弛緩せずに突っ張った状態となるため、紡績糸と短繊維束との絡みつきが促進されない傾向にある。なお、紡績糸と短繊維束との絡みつき度合いを考慮し、ドラフト比の上限は、0.990とするのが好ましい。
【0042】
一方、紡績糸6は、プレスローラー7、7′を介してフロントローラー5、5′へ供給される。紡績糸6の給糸張力としては、特に限定されず、糸道を形成しうる程度であればよい。ただし、張力をあまり低く設定してしまうと、芯部と鞘部とが逆転したり交撚状となったりする場合があるので好ましくない。一方、高すぎると糸切れする場合がある。
【0043】
その後、フロントローラー5、5′において、内側に紡績糸6が、外側に短繊維束8が配されるように両者を重ね合わせる。紡績糸6と短繊維束8とを重ね合わせるにあたり、特別なものは必要なく、短繊維束8が弛緩した状態であるのに対し、紡績糸6が突っ張った状態であるため、必然的に芯部に紡績糸6が、鞘部に短繊維束8が配されるのである。
【0044】
紡績糸6と短繊維束8とを重ね合わせた後は、スネルワイヤーガイド9を通過させ、スピンドル11とリングトラベラ10とにより加撚して本発明の複重層糸12を得る。ただし、この加撚は、撚方向として紡績糸6と逆方向に行わなければならない。同方向に行ってしまうと芯部及び鞘部の両短繊維群の撚方向が同一となり、複重層糸のトルクが増大することになる。この加撚としては、下記(4)式よって算出される撚係数αが2.30〜3.00であることが好ましい。
【0045】
【数4】

【0046】
なお、上式(4)において、撚数Tは、紡績糸6と短繊維束8とを撚り合わせる際の撚数、すなわち上撚数に相当するため、実質的にTsに等しい。また、太さNは、実質的にSsとScとの合計(N=1/(1/Ss+1/Sc))に等しい。
【0047】
得られた複重層糸は、通常精紡管糸として巻き取られるため、仕上工程に投入しチーズにすることが好ましい。
【実施例】
【0048】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例、比較例における複重層糸の特性については、下記の方法により評価した。
(1)平均単糸引張強さ、平均伸び率
JIS L1095 9.5.1に基付いて、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分にて単糸引張強さ及び伸び率を測定した。試験回数は60回とし、平均値を平均単糸引張強さ及び平均伸び率とした。
(2)最低5本張力
上記(1)で測定した単糸引張強さの内、最低値から5本までの平均値を最低5本張力とした。
【0049】
(実施例1)
粗糸1として、単糸繊度1.15dtexの綿短繊維からなる綿粗糸160gr/30ydを図1に示すリング精紡機に供給し、粗糸1をバックローラー2、2′エプロン3、3′及びセカンドローラー4、4′を介して、50.4倍にドラフトして短繊維束8とした後、該短繊維束8を弛緩した状態でフロントローラー5、5′に供給した。セカンドローラー4、4′の表面速度は15.95m/分であり、フロントローラー5、5′の表面速度は、セカンドローラー4、4′とフロントローラー5、5′との間のドラフト比が0.980となるように、15.63m/分に設定した。
【0050】
一方、紡績糸6として、単糸繊度1.15dtexの綿短繊維からなり、撚方向がS方向で撚係数が3.60の綿紡績糸40番手を、プレスローラー7、7′を介してフロントローラー5、5′に供給した。そして、該フロントローラーにおいて紡績糸6と短繊維束8とを重ね合わせた後、スピンドル回転数8000rpmにて、撚方向Z方向、撚数13.0回/2.54cm(撚係数2.55)で加撚し、26番手(英式綿番手)の本発明の複重層糸12を得た。
【0051】
なお、この複重層糸における芯部、鞘部の短繊維群の質量比率は、芯部/鞘部=65/35であった。
【0052】
(比較例1)
スピンドル回転数を8000rpmに替えて6150rpmとすることにより、紡績糸と短繊維束とを重ね合わせた後の加撚における撚数を13.0回/2.54cmに替えて10.0回/2.54cm(撚係数1.96)とした以外は、実施例1と同様に行い、複重層糸を得た。
【0053】
(比較例2)
スピンドル回転数を8000rpmに替えて11700rpmとすることにより、紡績糸と短繊維束とを重ね合わせた後の加撚における撚数を13.0回/2.54cmに替えて19.0回/2.54cm(撚係数3.73)とした以外は、実施例1と同様に行い、複重層糸を得た。
【0054】
(比較例3)
紡績糸の撚係数を3.6に替えて4.5とした以外は、実施例1と同様に行い、複重層糸を得た。
【0055】
以上の実施例、比較例で得られた複重層糸の強伸度特性及び撚糸特性を下記表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
さらに、針密度28本/2.54cmの筒編機を使用し、上記実施例、比較例で得られた各複重層糸を用いて編地をそれぞれ作製し、沸騰水で30分間リラックスした後、直接染料を含有する浴で染色した。そして、得られた染色編地を官能検査することで、各複重層糸の被覆性と、複重層糸が編地に与える風合い上並びに品位上の影響とを評価した。
【0058】
その結果、実施例1では、編地の風合いが柔軟性に富んでおり、かつ編地表面にイラツキ感、カーリング、斜行、緯段などの欠点が認められず、当該複重層糸は、被覆性に優れると共に編地の風合い、品位に好影響を与えうるものであった。
【0059】
これに対し、比較例1では、複重層糸の被覆性は良好であるものの、鞘部短繊維群の撚係数Ksが低すぎたため、複重層糸の引張強さが低下した。そのため、編み立て時に糸切れが発生し、効率よく編成することができなかった。また、撚係数KsとKcとの差が大きく、編地表面に斜行が認められた。比較例2でも複重層糸の被覆性は良好であった。しかしながら、複重層糸における撚係数Ksが高すぎたため、編地の風合いが柔軟性に欠けたものとなり、さらに、撚係数KsとKcとの差があまりに大きすぎたため、編地表面に斜行、カーリングが認められた。比較例3でも複重層糸の被覆性は良好であった。しかしながら、撚係数KsとKcとの差が大きく、編地表面に斜行が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の複重層糸の製造方法の一実施態様を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 粗糸
2、2′ バックローラー
3、3′ エプロン
4、4′ セカンドローラー
5、5′ フロントローラー
6 紡績糸
7、7′ プレスローラー
8 短繊維束
9 スネルワイヤーガイド
10 リングトラベラ
11 スピンドル
12 複重層糸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が芯鞘型の二層構造をなし、芯部、鞘部共に短繊維群からなり、芯部短繊維群の撚方向と逆方向に鞘部短繊維群が捲回している複重層糸であって、鞘部短繊維群の撚係数Ksが1.30〜1.80であると共に、該Ksと芯部短繊維群の撚係数Kcとの差の絶対値が0.80以下であることを特徴とする複重層糸。
【請求項2】
紡績糸と短繊維束とをリング精紡機のフロントローラーへ同時に供給して複重層糸を製造する方法であって、セカンドローラーとフロントローラーとの間のドラフト比(D)を0.960<D<1.000に設定して前記短繊維束をフロントローラーへ供給しつつ、撚係数が2.50〜4.00の紡績糸を同じフロントローラーへ供給し、両者を重ね合わせた後、前記紡績糸と逆方向に撚係数2.30〜3.00の範囲で加撚することを特徴とする複重層糸の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−57056(P2008−57056A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232086(P2006−232086)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(599089332)ユニチカテキスタイル株式会社 (53)
【Fターム(参考)】