説明

褐炭の乾燥方法および乾燥システム

【課題】褐炭の自然発熱性を利用して外部から熱エネルギを供給することなく褐炭の乾燥を行う褐炭の乾燥システムを提供する。
【解決手段】乾燥対象である褐炭1が投入される容器2と、容器2内に投入された褐炭1を攪拌する攪拌手段4と、容器2内に空気を供給する供給管路8と、容器2内から排出される排気ガスの湿度を計測する湿度計測器16と、湿度計測器16が計測した湿度が所定値になるまで攪拌手段4または供給管路8を介して少なくとも攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つを制御する制御手段17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は褐炭の乾燥方法および乾燥システムに関し、特に褐炭の自然発熱を利用してその乾燥を行う場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
褐炭は多量の水分を含んでいるため、そのままの状態でボイラの燃料として利用できる程度の粒径にまで粉砕して燃焼させたとしても、ボイラ火炉内で燃焼する燃焼ガスの水分による熱損失(潜熱)が増加し、プラント全体の熱効率が低下してしまうという問題がある。このため、褐炭は含水量が約20質量%を超える亜瀝青炭とともに低品位炭として分類されている。
【0003】
一方、褐炭は、高品位炭とされる瀝青炭と同等の埋蔵量をもち、低硫黄分のものが多く安価であるため、資源の有効利用の観点からも、これを乾燥させることにより発電プラントの燃料として利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示する発電プランは、燃料となる低品位炭を効率的に乾燥させることによって、プラント全体の熱効率を向上させることを目的とするもので、ボイラの燃料として利用できる程度の粒径にまで粉砕した低品位炭を乾燥システムで乾燥させている。ここで、乾燥システムは当該発電プラントの排熱を利用して暖めた空気を熱源としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−223572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記特許文献1に開示されるように、従来技術に係る低品位炭の乾燥には乾燥のための熱エネルギを別途供給する必要があった。したがって、かかる熱エネルギが無駄に消費されることになり、さらなる改善の余地がある。一方、褐炭の場合には、空気中の
酸素との化学反応により自然発熱する性質がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑み、褐炭の自然発熱性を利用して外部から熱エネルギを供給することなく褐炭の乾燥を行う褐炭の乾燥方法および乾燥システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、乾燥対象である褐炭を投入した容器内で前記褐炭を攪拌しつつ空気を供給して前記褐炭を自然発熱させ、前記容器内から排出される排気ガスの湿度が所定値になるまで前記自然発熱に伴う熱により前記褐炭を乾燥させることを特徴とする褐炭の乾燥方法にある。
【0008】
本態様によれば、褐炭を投入して乾燥させる容器から排出される排気ガスの湿度を手掛りとして褐炭をその自然発熱の熱を利用して良好に乾燥させることができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、乾燥対象である褐炭を投入した容器内で前記褐炭を攪拌しつつ空気を供給して前記褐炭を自然発熱させるとともに、前記自然発熱に伴う前記容器内から排出される排気ガスの温度を計測し、少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした前記排気ガスの温度と前記褐炭の乾燥の程度との関係を表す乾燥特性に基づき前記排気ガスが所定の温度になるまで昇温させて前記褐炭を乾燥させることを特徴とする褐炭の乾燥方法にある。
【0010】
本態様によれば、褐炭を投入して乾燥させる容器から排出される排気ガスの温度を手掛りとして褐炭をその自然発熱の熱を利用して良好に乾燥させることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、乾燥対象である褐炭を投入した容器内で前記褐炭を攪拌しつつ空気を供給して前記褐炭を自然発熱させるとともに、前記自然発熱に伴う前記容器内から排出される排気ガス中の特定のガスの濃度を計測し、少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした前記特定のガスの濃度と前記褐炭の乾燥の程度との関係を表す乾燥特性に基づき前記特定のガスが所定の濃度になるまで昇温させて前記褐炭を乾燥させることを特徴とする褐炭の乾燥方法にある。
【0012】
本態様によれば、褐炭を投入して乾燥させる容器から排出される排気ガス中の特定のガスの濃度を手掛りとして褐炭をその自然発熱の熱を利用して良好に乾燥させることができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様の何れか一つに記載する褐炭の乾燥方法において、前記所定の湿度、温度または濃度になった時点で前記容器内から乾燥した褐炭を排出するとともに、新たな褐炭を供給することを特徴とする褐炭の乾燥方法にある。
【0014】
本態様によれば、褐炭の乾燥処理を連続的に行うことができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、乾燥対象である褐炭が投入される容器と、前記容器内に投入された褐炭を攪拌する攪拌手段と、前記容器内に空気を供給する空気供給手段と、前記容器内から排出される排気ガスの湿度を計測する湿度計測手段と、前記湿度計測手段が計測した湿度が所定値になるまで前記攪拌手段または前記空気の供給系を介して少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つを制御する制御手段とを有することを特徴とする褐炭の乾燥システムにある。
【0016】
本態様によれば、褐炭を投入して乾燥させる容器から排出される排気ガスの湿度を手掛りとして攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度等の制御により褐炭をその自然発熱の熱を利用して良好に乾燥させることができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、乾燥対象である褐炭が投入される容器と、前記容器内に投入された褐炭を攪拌する攪拌手段と、前記容器内に空気を供給する空気供給手段と、前記容器内から排出される排気ガスの温度を計測する温度計測手段と、少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした前記排気ガスの温度と前記褐炭の乾燥の程度との関係を表す乾燥特性に基づき前記排気ガスの温度が所定値になるまで前記攪拌手段または前記空気の供給系を介して少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または空気の温度の何れか一つを制御する制御手段とを有することを特徴とする褐炭の乾燥システムにある。
【0018】
本態様によれば、褐炭を投入して乾燥させる容器から排出される排気ガスの温度を手掛りとして攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度等の制御により褐炭をその自然発熱の熱を利用して良好に乾燥させることができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、乾燥対象である褐炭が投入される容器と、前記容器内に投入された褐炭を攪拌する攪拌手段と、前記容器内に空気を供給する空気供給手段と、前記容器内から排出される排気ガス中の特定のガスの濃度を計測する濃度計測手段と、少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした前記特定のガスの濃度と前記褐炭の乾燥の程度との関係を表す乾燥特性に基づき前記特定のガスの濃度が所定値になるまで前記攪拌手段または前記空気の供給系を介して少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または空気の温度の何れか一つを制御する制御手段とを有することを特徴とする褐炭の乾燥システムにある。
【0020】
本態様によれば、褐炭を投入して乾燥させる容器から排出される排気ガス中の特定のガスの濃度を手掛りとして攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度等の制御により褐炭をその自然発熱の熱を利用して良好に乾燥させることができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第5〜第7の態様の何れか一つに記載する褐炭の乾燥システムにおいて、前記容器内の褐炭を加熱する加熱手段を有することを特徴とする褐炭の乾燥システムにある。
【0022】
本態様によれば、自然発熱のトリガーを提供して所望の発熱を円滑に開始させることができる。同時に、褐炭の自然発熱により発生した容器内の熱が外部に逃げるのを防止して所定の乾燥処理を効率よく行わせることができる。
【0023】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載する褐炭の乾燥システムにおいて、前記加熱手段はヒートポンプの加熱部で形成するとともに、前記ヒートポンプの冷熱部は前記空気供給手段と前記容器との間の空気供給系に配設されて前記容器に供給される空気を冷却して除湿するように構成したことを特徴とする褐炭の乾燥システムにある。
【0024】
本態様によれば、上記第8の態様の作用・効果に加え、湿度が低下した乾燥空気を容器内に供給することができるので、その分効率的な褐炭の乾燥に寄与させることができる。
【0025】
本発明の第10の態様は、第9の態様に記載する褐炭の乾燥システムにおいて、前記加熱部を前記冷熱部と前記容器との間の前記空気供給系にも配設したことを特徴とする褐炭の乾燥システムにある。
【0026】
本態様によれば、上記第8の態様の作用・効果に加え、湿度が低下した乾燥空気をさらに加熱して容器内に供給することができるので、さらに効率的な褐炭の乾燥に寄与させることができる。
【0027】
本発明の第11の態様によれば、第5〜第10の態様の何れか一つに記載する褐炭の乾燥システムにおいて、前記容器から排出された排ガスと前記空気供給系を介して前記容器内に供給される空気との間で熱交換させるための熱交換器を前記空気供給系に配設したことを特徴とする褐炭の乾燥システムにある。
【0028】
本態様によれば、容器内で褐炭の自然発熱により発生した熱を吸収した排気ガスが有する熱エネルギを熱交換を介して供給空気に与えることができる。この結果、供給空気が加熱され、効率的な褐炭の乾燥に寄与させることができる。
【0029】
本発明の第12の態様によれば、第5〜第11の態様の何れか一つに記載する褐炭の乾燥システムにおいて、前記容器内へ窒素を供給する窒素供給手段を、さらに有することを特徴とする褐炭の乾燥システムにある。
【0030】
本態様によれば、容器内に窒素を供給することで褐炭の酸化反応を抑制することができる。この結果、褐炭の発火、燃焼を未然に防止して、安全かつ良好な所定の乾燥処理を行わせることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、褐炭を投入した容器内で前記褐炭を攪拌しつつ空気を供給して前記褐炭を自然発熱させ、前記容器内から排出される排気ガス中の湿度、排気ガスの温度または排気ガス中の特定のガスの濃度である物理量を計測し、各物理量に基づき褐炭の乾燥の程度を特定することができる。この結果、褐炭と酸素との化学反応により発生する自然発熱の熱を利用して別途熱エネルギを供給することなく良好に褐炭の乾燥を行なわせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る褐炭の乾燥システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る褐炭の乾燥システムを示すブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る褐炭の乾燥システムを示すブロック図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る褐炭の乾燥システムを示すブロック図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る褐炭の乾燥システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0034】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態を示すブロック線図である。同図に示すように、褐炭1を乾燥するための容器2は、本形態の場合、図中垂直方向の軸を有する筒状の部材で密閉空間を形成してなる。かかる容器2にはその底部にメッシュ状の底板2Aが設けてあり、底板2A上に載置された褐炭1が攪拌装置4により攪拌される。攪拌装置4は容器2の中心軸に沿う垂直な回転軸4Aと、回転軸4Aの途中から水平方向に突出させて設けた複数のブレード4Bとを有しており、モータ3を駆動源として回転軸4Aが回転されることによりブレード4Bで褐炭1を攪拌するようになっている。褐炭1は褐炭供給手段5を介して容器2内にその上部から投入されるようになっている。一方、所定の乾燥処理を終えた褐炭1は乾燥褐炭排出手段6を介して容器2の下部から排出されるようになっている。
【0035】
空気供給手段7は褐炭1と酸化反応を起こさせるための空気を供給管路8および底板2Aを介して容器2内の褐炭1に吹き込むようになっている。この空気供給手段7はコンプレッサやブロア等で好適に形成することができる。供給管路8には窒素供給手段9も接続されており、場合によっては容器2内の褐炭1に窒素ガスを吹き込むことができるように構成してある。窒素ガスを吹き込むのは、褐炭1の酸化反応を強制的に停止させる場合であるが、この点に関しては後に詳述する。ここで、流量調整弁10、11は空気供給手段7および窒素供給手段9に対応させて容器2内に至る管路の途中に配設してあり、通常は流量調整弁10が開状態となり、供給管路8を介した空気が容器2内に供給される。一方、所定の緊急時には流量調整弁11が開状態となり、供給管路8を介した窒素が容器2内に供給される。
【0036】
ここで、容器2内には、攪拌されている褐炭1と空気との酸化反応によりを褐炭1が自然発熱するように供給量および温度等を調整した空気が供給される。褐炭1と反応して加熱された空気は、褐炭1と空気との酸化反応で生成されるガスとともに排気ガスとして排気管路12を介して外部に排出される。
【0037】
加熱手段13は容器2の外周面を取り囲むように配設されており、容器2内の褐炭1を加熱するようになっている。かかる加熱手段13は褐炭1の自然発熱を円滑に開始させるトリガーとして機能させると同時に、自然発熱により発生した容器2内の熱が外部に逃げるのを防止する断熱部として機能させるためのものである。すなわち、自然発熱反応は容器2内の褐炭1の温度を環境温度(室温)よりも若干高くすることにより、より容易に生起される。そこで、本形態では、加熱手段13による加熱で容器2内の褐炭1の温度を環境温度よりも若干高温にすることで自然発熱による温度上昇の立ち上がりを円滑に行わせるとともに、一旦自然発熱反応が開始された後は自然発熱により発生した熱が褐炭1の乾燥に使用されることなく無駄に環境に放出されるのを防止している。ただ、加熱手段13は、原理的には必ずしも必要ではない。加熱手段13により加熱しない場合でも容器2内に供給する空気量や空気温度等を調整することで充分自然発熱反応を生起させることはできるからである。
【0038】
一方、本形態の如く加熱手段13を設けた場合には、褐炭1の自然発熱反応のトリガーを提供して所望の発熱を円滑に開始させることができると同時に、褐炭1の自然発熱反応により発生した容器2内の熱が外部に逃げるのを防止して所定の乾燥処理を効率よく行わせることができるという効果はある。なお、加熱手段13は例えば電気ヒータ等で好適に形成し得る。
【0039】
温度計測器14は容器2内で攪拌されつつ空気が供給されることにより発熱している褐炭1の温度を計測するもので、容器2内の褐炭1の温度を代表するような位置の温度を計測するように設置してある。温度計測器14は熱電対温度計で好適に形成し得る。また、計測したデータは制御手段17に送出される。
【0040】
温度計測器15、湿度計測器16は排気管路12を流通する排気ガスの温度、湿度を計測する。計測した温度、湿度のデータは制御手段17に送出される。
【0041】
制御手段17は次の各制御を行う。
1) 湿度計測器16が計測する湿度のデータに基づき褐炭1の乾燥処理の終了時点を判定する。すなわち、排気管路12を流通する排気ガスの湿度が所定の閾値を超えて低下した時点で自然発熱による褐炭1の所定の乾燥処理が終了したと判断し、必要な所定の制御を行う。例えば、乾燥褐炭排出手段6を制御して乾燥処理が終了した容器2内の褐炭1を排出させるとともに、褐炭供給手段5を介して乾燥対象となる褐炭1を容器2内に供給するように制御する。ここで、褐炭1の供給・排出は容器2内に投入された一定量の褐炭1の乾燥処理が終了する毎に行うバッチ処理でも良いし、乾燥がより進行する下部の褐炭1を順次排出しつつ上部から新しい褐炭1を供給する連続処理でも良い。
【0042】
2) 温度計測器15が計測する温度のデータに基づき褐炭1の乾燥処理の終了時点を判定する。この場合には、所定のパラメータを利用して排気ガスの温度と褐炭1の乾燥の程度との相関関係である乾燥特性のデータを予め制御手段17に記憶させておく必要がある。すなわち、少なくとも攪拌手段4による褐炭1の攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした排気ガスの温度と褐炭1の乾燥の程度との関係を予め検出しておく。かくして、排気ガスが所定の温度になるまで褐炭1を昇温させることにより所定の乾燥処理を行うことができる。このように、排気ガスの温度の管理によっても褐炭1の乾燥状態を把握することはできるが、例えば褐炭1の種類毎等、所定の条件毎に予め前述の如き褐炭の乾燥特性を用意する必要があるため、排気ガスの湿度を管理する場合に較べ手間がかかる。このため、あくまで補助的な乾燥特定手段としての意義を有するに止まる。
【0043】
3) モータ3の駆動を制御して攪拌装置4の攪拌速度を制御する。
【0044】
4) 流量調整弁10の開度を調整し、供給管路8を介して容器2内に吹き込む供給空気の量を制御する。このとき、流量調整弁11は閉状態となるように制御する。
【0045】
5) 温度計測器14が検出する容器2内の温度が所定値を超えた場合、流量調整弁11を開き、供給管路8を介して容器2内に窒素を吹き込むことで自然発熱を強制停止させる。この場合の容器2内の温度の所定値は褐炭1がその酸化反応により自然発熱を超えて発火、燃焼へと進行するのを未然に防止し得る温度を設定しておく。このとき、流量調整弁10は閉状態となるように制御する。
【0046】
かかる本形態によれば、褐炭1を投入した容器2内で褐炭1を攪拌しつつ空気を供給しているので、褐炭1は空気中の酸素との化学反応により自然発熱する。かかる自然発熱による熱により褐炭1の乾燥が進む。ここで、容器2内から排出される排気ガス中の湿度を計測しているので、この湿度を介して褐炭1の乾燥の程度を把握することができる。この結果、褐炭1と酸素との化学反応により発生する自然発熱の熱を利用して別途熱エネルギを供給することなく良好に褐炭1の所定の乾燥を行なわせることができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
図2は本発明の第2の実施の形態を示すブロック線図である。同図中、図1と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。同図に示すように、排気管路12にはガス濃度計測器21も配設されている。ガス濃度計測器21は排気管路12を流通する排気ガス中の特定のガスの濃度を計測してそのデータを制御手段27に送出する。ここで、特定のガスとしては褐炭1と空気との化学反応により生成され、褐炭1の乾燥の程度の進行とともに濃度が増大するCOやCOが好適である。ただ、この場合も所定のパラメータを利用して排気ガス中の特定のガスの濃度と褐炭1の乾燥の程度との相関関係である乾燥特性のデータを予め制御手段27に記憶させておく必要がある。すなわち、少なくとも攪拌手段4による褐炭1の攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした排気ガスの温度と褐炭1の乾燥の程度との関係を予め検出しておく。かくして、排気ガス中の特定のガスの濃度が所定の濃度になるまで褐炭1を昇温させることにより所定の乾燥処理を行うことができる。このように、排気ガス中の特定のガスの濃度の管理によっても褐炭1の乾燥状態を把握することはできるが、排気ガスの温度を管理する場合と同様に、予め褐炭1の乾燥特性を用意する必要があるため、排気ガスの湿度を管理する場合に較べ手間がかかる。このため、あくまで補助的な乾燥特定手段としての意義を有するに止まる。
【0048】
<第3の実施の形態>
図3は本発明の第3の実施の形態を示すブロック線図である。同図中、図1と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。同図に示すように、本形態は、図1に示す実施の形態にバイパス管路31およびG/G熱交換32を追加したものである。バイパス管路31は排気管路12から分岐されてG/G熱交換32に至り、再度排気管路12に戻る排気ガスの流路を形成している。ここで、G/G熱交換32は供給管路12に配設してある。したがって、容器2内で自然発熱している褐炭に加熱されて温度が上昇している排気ガスの熱エネルギをG/G熱交換32で供給空気との間の熱交換により回収することができる。この結果、容器2内に吹き込まれる供給空気の温度を上昇させることができ、その分褐炭1の乾燥処理を促進させることができる。
【0049】
なお、本形態では排気ガスの一部をバイパス管路31に流通させるようにしたが、排気ガスの全部をG/G熱交換32で熱交換させるように構成しても構わない。
【0050】
<第4の実施の形態>
図4は本発明の第4の実施の形態を示すブロック線図である。同図中、図1と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。同図に示すように、本形態は、図1に示す実施の形態における加熱手段13をヒートポンプ41で置換したものである。すなわち、加熱部41Bのタンクは容器2の周囲を取り囲むように形成されており、その内部には水やオイル等の熱媒が充填してある。かかる熱媒はヒートポンプ本体41Aから供給される加熱媒体で加熱される。一方、ヒートポンプ41の冷熱部41Cは供給管路8の途中に介在させてあり、供給管路8を介して容器2内に吹き込まれる供給空気の除湿を行うように構成してある。すなわち、前記供給空気がヒートポンプ本体41Aから供給される冷却媒体と冷熱部41Cのタンク内で熱交換することにより冷却・除湿される。除湿の結果生成されるドレインはタンク外に排出するようになっている。
【0051】
かかる本形態によれば、加熱部41Bに図1の加熱手段13と同様の機能を持たせることができるばかりでなく、冷熱部41Cで供給空気の除湿を行うことができるので、その分容器2内には、乾燥空気を吹き込むことができる。これにより効率的な褐炭1の乾燥に寄与させることができる。
【0052】
<第5の実施の形態>
図5は本発明の第5の実施の形態を示すブロック線図である。同図中、図1および図4と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。同図に示すように、本形態は、図4に示す実施の形態におけるヒートポンプ41の構造を変更したものである。すなわち、本形態に係るヒートポンプ51の加熱部51Bにはヒートポンプ本体41Aから供給される加熱媒体が容器2内の褐炭1を加熱するだけでなく、供給管路8において冷熱部41Cの下流側に配設されている熱交換器52の熱源として機能するように構成してある。すなわち、ヒートポンプ本体41Aから供給される加熱媒体は加熱部51Bのみならず熱交換器52との間も循環するようになっている。
【0053】
かかる本形態によれば、冷熱部41Cで除湿されることにより乾燥はされるが、温度が低下する供給空気を熱交換器52においてヒートポンプ本体41Aから供給される加熱媒体と熱交換させることで加熱することができ、第4の実施の形態の場合よりもより高温の乾燥空気を容器2内に吹き込むことが可能になる。この結果、さらに効率的な褐炭1の乾燥に寄与させることができる。
【0054】
なお、上記各実施の形態では容器2が縦置き型で、攪拌装置4が垂直軸回りに回転するものとしたがこれに限るものではない。容器を横置き型とし、攪拌装置が水平軸回りに回転するように構成しても良い。この場合には、褐炭は水平方向の一方側から容器内に供給するとともに他方側から排出させる。また、空気は、排出側から供給側に流れるように供給する。
【0055】
また、第3の実施の形態に示すバイパス管路31およびG/G熱交換器32を第2、第4、第5の実施の形態と組み合わせることも可能であり、組み合わせた場合には、第3の実施の形態と同様の作用・効果も得ることができる。同様に第2の実施の形態と、第4、第5の実施の形態と組み合わせることもでき、組み合わせた場合には、第4、第5の実施の形態と同様の作用・効果も得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は褐炭を燃料として利用する、例えば火力発電を行う産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 褐炭
2 容器
4 攪拌装置
5 褐炭供給手段
6 乾燥褐炭排出手段
7 空気供給手段
8 供給管路
9 窒素供給手段
12 排気管路
13 加熱手段
14,15 温度計測器
16 湿度計測器
17,27,37,47,57 制御手段
21 ガス濃度計測器
31 バイパス管路
32 G/G熱交換器
41 ヒートポンプ
41A ヒートポンプ本体
41B,51B 加熱部
41C 冷熱部
52 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥対象である褐炭を投入した容器内で前記褐炭を攪拌しつつ空気を供給して前記褐炭を自然発熱させ、前記容器内から排出される排気ガスの湿度が所定値になるまで前記自然発熱に伴う熱により前記褐炭を乾燥させることを特徴とする褐炭の乾燥方法。
【請求項2】
乾燥対象である褐炭を投入した容器内で前記褐炭を攪拌しつつ空気を供給して前記褐炭を自然発熱させるとともに、前記自然発熱に伴う前記容器内から排出される排気ガスの温度を計測し、少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした前記排気ガスの温度と前記褐炭の乾燥の程度との関係を表す乾燥特性に基づき前記排気ガスが所定の温度になるまで昇温させて前記褐炭を乾燥させることを特徴とする褐炭の乾燥方法。
【請求項3】
乾燥対象である褐炭を投入した容器内で前記褐炭を攪拌しつつ空気を供給して前記褐炭を自然発熱させるとともに、前記自然発熱に伴う前記容器内から排出される排気ガス中の特定のガスの濃度を計測し、少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした前記特定のガスの濃度と前記褐炭の乾燥の程度との関係を表す乾燥特性に基づき前記特定のガスが所定の濃度になるまで昇温させて前記褐炭を乾燥させることを特徴とする褐炭の乾燥方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一つに記載する褐炭の乾燥方法において、
前記所定の湿度、温度または濃度になった時点で前記容器内から乾燥した褐炭を排出するとともに、新たな褐炭を供給することを特徴とする褐炭の乾燥方法。
【請求項5】
乾燥対象である褐炭が投入される容器と、
前記容器内に投入された褐炭を攪拌する攪拌手段と、
前記容器内に空気を供給する空気供給手段と、
前記容器内から排出される排気ガスの湿度を計測する湿度計測手段と、
前記湿度計測手段が計測した湿度が所定値になるまで前記攪拌手段または前記空気の供給系を介して少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つを制御する制御手段とを有することを特徴とする褐炭の乾燥システム。
【請求項6】
乾燥対象である褐炭が投入される容器と、
前記容器内に投入された褐炭を攪拌する攪拌手段と、
前記容器内に空気を供給する空気供給手段と、
前記容器内から排出される排気ガスの温度を計測する温度計測手段と、
少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした前記排気ガスの温度と前記褐炭の乾燥の程度との関係を表す乾燥特性に基づき前記排気ガスの温度が所定値になるまで前記攪拌手段または前記空気の供給系を介して少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または空気の温度の何れか一つを制御する制御手段とを有することを特徴とする褐炭の乾燥システム。
【請求項7】
乾燥対象である褐炭が投入される容器と、
前記容器内に投入された褐炭を攪拌する攪拌手段と、
前記容器内に空気を供給する空気供給手段と、
前記容器内から排出される排気ガス中の特定のガスの濃度を計測する濃度計測手段と、
少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または供給空気の温度の何れか一つをパラメータとした前記特定のガスの濃度と前記褐炭の乾燥の程度との関係を表す乾燥特性に基づき前記特定のガスの濃度が所定値になるまで前記攪拌手段または前記空気の供給系を介して少なくとも前記攪拌速度、空気供給量または空気の温度の何れか一つを制御する制御手段とを有することを特徴とする褐炭の乾燥システム。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか一つに記載する褐炭の乾燥システムにおいて、
前記容器内の褐炭を加熱する加熱手段を有することを特徴とする褐炭の乾燥システム。
【請求項9】
請求項8に記載する褐炭の乾燥システムにおいて、
前記加熱手段はヒートポンプの加熱部で形成するとともに、前記ヒートポンプの冷熱部は前記空気供給手段と前記容器との間の空気供給系に配設されて前記容器に供給される空気を冷却して除湿するように構成したことを特徴とする褐炭の乾燥システム。
【請求項10】
請求項9に記載する褐炭の乾燥システムにおいて、
前記加熱部を前記冷熱部と前記容器との間の前記空気供給系にも配設したことを特徴とする褐炭の乾燥システム。
【請求項11】
請求項5〜請求項10の何れか一つに記載する褐炭の乾燥システムにおいて、
前記容器から排出された排ガスと前記空気供給系を介して前記容器内に供給される空気との間で熱交換させるための熱交換器を前記空気供給系に配設したことを特徴とする褐炭の乾燥システム。
【請求項12】
請求項5〜請求項11の何れか一つに記載する褐炭の乾燥システムにおいて、
前記容器内へ窒素を供給する窒素供給手段を、さらに有することを特徴とする褐炭の乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145281(P2012−145281A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4384(P2011−4384)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000173809)一般財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】