説明

褥瘡の予防剤または治療剤

本発明によれば、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を含有する褥瘡の予防剤または治療剤、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を全重量に対し0.1〜15重量%含有する上記予防剤または治療剤、およびヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体のアシル基が、炭素数1〜24のアシル基である上記褥瘡の予防剤または治療剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、褥瘡の予防剤または治療剤に関する。
【背景技術】
褥瘡とは、体の接触面から受ける圧迫により組織の末梢血管が閉塞し、組織の壊死を引き起こす病態であり、その治癒には長期間を要する場合が多い。
よって、長期間、寝具上に寝ている状態にある老人や長期療養患者は、褥瘡(いわゆる床擦れ)が生じやすく、看護上の大きな問題となっている。また、褥瘡は、ヒト以外の動物にも発症する疾病であり、例えばウマの鞍ずれも褥瘡のひとつである。
褥瘡の治療剤としては、ブロイメラン(診療と新薬、1971年、第8巻、p.967)を含む軟膏、ブクラデシンナトリウム[Biological & Pharmaceutical Bulletin(バイオロジカル アンド ファーマシュティカル ブレチン)、1995年、第18巻、p.1539−1543]を含む軟膏等が用いられているが、いずれも出血、疼痛等の副作用が知られており、より安全な褥瘡の治療剤が求められている。
また、従来の褥瘡治療剤には褥瘡の発生を予防する効果はない。
ヒドロキシプロリンのN−アセチル誘導体を含む外用剤は、創傷の治療薬として欧州で用いられている。また、ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体は、セラミド合成促進作用(国際公開第02/6255号パンフレット)、保湿、老化抑制および肌質改善作用(特開2002−80321号公報)、およびコラーゲン合成促進作用(国際公開第00/51561号パンフレット)を有することが知られているが、褥瘡の予防および治療効果を有することは知られていない。
【発明の開示】
本発明の目的は、安全性の高い褥瘡の予防剤または治療剤を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(9)に関する。
(1) ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を含有する褥瘡の予防剤または治療剤。
(2) ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を全重量に対し0.1〜15重量%含有する上記(1)の褥瘡の予防剤または治療剤。
(3) ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体のアシル基が、炭素数1〜24のアシル基である上記(1)または(2)の褥瘡の予防剤または治療剤。
(4) 褥瘡の予防剤または治療剤の製造のためのヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の使用。
(5) 褥瘡の予防剤または治療剤が、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を全重量に対し0.1〜15重量%含有することを特徴とする上記(4)のヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の使用。
(6) ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体のアシル基が、炭素数1〜24のアシル基であることを特徴とする上記(4)または(5)のヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の使用。
(7) ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を含有する組成物を投与することによる褥瘡の予防方法または治療方法。
(8) 組成物が、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を全重量に対し0.1〜15重量%含有することを特徴とする上記(7)の褥瘡の予防方法または治療方法。
(9) ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体のアシル基が、炭素数1〜24のアシル基であることを特徴とする上記(7)または(8)の褥瘡の予防方法または治療方法。
本発明で用いられるヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体のアシル基としては、例えば炭素数1〜24の直鎖または分岐状のアシル基があげられ、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチル基、イソブチル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基等をあげることができ、好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブチル基、イソブチル基、より好ましくはアセチル基をあげることができる。
また、本発明で用いられるヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体としては、ヒドロキシプロリンの立体異性体のN−アシル化誘導体もあげることができる。ヒドロキシプロリンの立体異性体としては、シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリンおよびトランス−3−ヒドロキシ−D−プロリンをあげることができる。
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体の塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアミン付加塩およびアルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸の付加塩などをあげることができる。
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体は、公知の方法により調製することができる。例えば、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体は、直鎖または分岐状の炭素数1〜24の飽和または不飽和の脂肪酸を塩化チオニル、ホスゲン等のハロゲン化剤を用いてクロライド、ブロマイド等のハロゲン化物に変換した後、前述のヒドロキシプロリンと縮合させるか、または脂肪酸を酸無水物に変換した後、ヒドロキシプロリンと反応させることにより製造することができる。
脂肪酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸等の脂肪酸を単独もしくは組合せたものが用いられる。
酸ハロゲン化物を経由するヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体の製造方法を、以下に例示する。
脂肪酸を塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン等の溶媒中に分散し、これに1〜5倍当量のハロゲン化剤を添加して反応させ、脂肪酸ハライドを得る。次に、ヒドロキシプロリンを溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液を5〜70℃に保ちながら、上記の脂肪酸ハライドをヒドロキシプロリン対して0.3〜3.0倍当量加え、アシル化反応を行うことによりヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体を製造することができる。
アシル化反応に用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられ、これらは単独あるいは混合して用いてもよい。ヒドロキシプロリンを溶媒に溶解または分散する際、ヒドロキシプロリンに対して0.8〜2.0倍当量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ物質を必要に応じて溶媒に溶解または分散させてもよい。
ヒドロキシプロリンのN−アシル誘導体の塩を取得したいとき、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、遊離の形で得られる場合には、適当な溶媒に溶解または懸濁し、塩基を加えて塩を形成させればよい。
精製は、例えば結晶化、クロマトグラフィー等の通常の方法が用いられる。
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体としては、例えば、N−アセチル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−アセチル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−アセチル−シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−アセチル−シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−アセチル−トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−アセチル−トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−プロピオニル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−プロピオニル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−プロピオニル−シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−プロピオニル−シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−プロピオニルトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−プロピオニル−トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−プロピオニル−トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−プロピオニル−トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−ブチリル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−ブチリル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−ブチリル−シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−ブチリル−シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−ブチリル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−ブチリル−トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−ブチリル−トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−ブチリル−トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−イソブチリル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−イソブチリル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−イソブチリル−シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−イソブチリル−シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−イソブチリル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−イソブチリル−トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−イソブチリル−トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−イソブチリル−トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン等があげられる。
本発明の褥瘡の予防剤または治療剤は、シス/トランス−4−ヒドロキシ−L/D−プロリン、シス/トランス−3−ヒドロキシ−L/D−プロリンのN−アシル化誘導体およびその塩からなる群より選ばれるヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を、1種または2種類以上含んでいてもよい。
本発明の褥瘡の予防剤または治療剤は、医薬、飲食品、動物用飼料、食品添加物および飼料添加物等の組成物として用いることができ、好ましくは医薬として用いることができる。
本発明の褥瘡の予防剤または治療剤を医薬として使用する場合、有効成分であるヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を単独で投与することも可能であるが、通常は該有効成分を薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として投与するのが望ましい。
投与方法は、褥瘡の予防または治療するために最も効果的な方法を選択するのが望ましい。投与方法としては、塗布、皮下、筋肉内、静脈内、口腔内、気道内および直腸内等の非経口投与、並びに経口投与等があげられ、好ましくは非経口投与、より好ましくは塗布または皮下への投与があげられる。投与形態としては、軟膏、テープ剤、噴霧剤、注射剤、座剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤等があげられる。
本発明の予防剤または治療剤の非経口投与に適当な製剤としては、外用剤、注射剤および座剤等があげられ、より好ましくは外用剤があげられる。
外用剤の形態は、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩、および基剤を含み、かつ患部に適用できる形態である限りにおいて特に制限されないが、例えば、液剤、エアゾール剤、クリーム剤、ゲル剤(ジェリー剤)、粉剤、軟膏剤、パップ剤、リニメント剤があげられ、好ましくは、液剤、エアゾール剤、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、パップ剤等があげられる。
外用剤は、その形態に応じて、慣用の基剤、例えば、油性基剤または疎水性基剤、乳剤型基剤、親水性基剤または水溶性基剤、ゲル基剤などや、慣用の成分、例えば、界面活性剤、脂肪酸またはその誘導体、多価カルボン酸とアルコールとのエステル、高級アルコール、懸濁化剤や増粘剤、粉粒状無機物質、ゲル生成剤、水、アルコール、多価アルコール、アルカノールアミン、緩衝剤、噴射剤などを用いて調製できる。
油性基剤または疎水性基剤の成分としては、例えば、ワセリン、流動パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィンとポリエチレンとを含むプラスチベース、シリコーンオイル、トリグリセリド、スクアレン、ミツロウ、サラシミツロウ、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、鯨ロウなどのワックス、精製ラノリンなどがあげられる。乳剤型基剤の成分としては、例えば、ワセリン、ラノリンなどの油性基剤、高級アルコール、界面活性剤や乳化剤などがあげられる。乳化剤としては、非イオン性および陰イオン性の界面活性剤、コレステロール、高級アルコール、植物油由来の遊離脂肪酸などがあげられる。
親水性基剤または水溶性基剤の成分としては、飽和脂肪酸のグリセリンエステル[例えば、アデプスソリダス(Adeps solidus)など]などの親水性脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(例えば、マクロゴールなど)などの水溶性ポリマーなどがあげられる。
ゲル基剤の成分としては、例えば、コロイド分散したデンプン、トラガント、アルギン酸塩、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)などの有機性ハイドロゲル基剤、コロイド性粘土(例えば、ベントナイト、ビーガムなどのケイ酸塩類)を含む無機性ハイドロゲル基剤などがあげられる。
界面活性剤としては、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、トラガント、レシチン、コレステロールなどの天然乳化剤、石鹸、アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、モノオレイルポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノオレートなどのグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体(例えば、プルロニックなど)などのノニオン性界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などがあげられる。
脂肪酸またはその誘導体としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸またはその塩;カプリル酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸と一価の脂肪族アルコールとのエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸デシルなど);カプリル酸トリグリセリド、カプロン酸トリグリセリド、落花生油、ヒマシ油、カカオ油、水素添加油脂(例えば硬化ヒマシ油など)などのトリグリセリド、ペンタエリトリトール脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸エステルなどがあげられる。
多価カルボン酸とアルコールとのエステルとしては、アジピン酸、セバシン酸などの多価カルボン酸と一価の脂肪族アルコールとのエステル(例えば、アジピン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピルなど)などがあげられる。
高級アルコールとしては、例えば、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールなどがあげられる。
懸濁化剤や増粘剤としては、アラビアゴム、トラガント、プルラン、ローカストビンガム、ビンガム、ペクチン、キサンタンガム、グアガムなどの多糖類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマー、コロイダル微結晶セルロースなどがあげられる。
粉粒状無機物質としては、例えば、タルク、無水ケイ酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コロイダルシリカ、ベントナイトなどがあげられる。
ゲル生成剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはこれらの塩、架橋したポリビニルアルコールなどの高吸水性樹脂、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、キサンタンガム、グアガムなどがあげられる。
アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノールなどがあげられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−テトラメチレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどがあげられる。
アルカノールアミンとしては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがあげられる。
緩衝剤としては、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、リン酸塩、極性アミノ酸、水酸化ナトリウムなどをあげることができる。
噴射剤の成分としては、低沸点のフッ化炭化水素(例えばフロン22など)や脂肪族炭化水素(例えば、プロパン、ブタンなど)などがあげられる。
また、外用剤には、必要に応じて、他の添加剤、例えば、パラオキシ安息香酸エステル(例えば、パラオキシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸プロピルなど)などの保存剤、酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエンなど)などの安定化剤、着色剤、賦香剤などを添加してもよい。
外用剤が液剤である場合には、界面活性剤や乳化剤、必要に応じて高級脂肪酸エステル、高級アルコール、懸濁化剤や増粘剤、アルコール類、多価アルコール、保存剤などを用いてもよい。エアゾール剤には、前記液剤の成分とともに噴射剤が使用され、必要に応じて、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールなどの溶媒、高級脂肪酸エステル、界面活性剤などを使用できる。
ゲル剤は、ゲル生成剤を含んでおり、クリーム剤および軟膏剤の基剤としては、前記油性基剤または疎水性基剤、乳剤型基剤、親水性基剤または水溶性基剤、ゲル基剤が使用できる。
粉剤は、乳糖やデンプンなどの賦形剤や結合剤、崩壊剤その他の適当な添加剤を用いて製造することができる。
パップ剤の基剤成分は、例えば、特開平5−105630号公報などを参照でき、例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーなどのゴム成分、粘着付与剤、油成分、水溶性高分子や吸水性高分子、水、酸化防止剤などがあげられる。
リニメント剤には、脂肪油、石鹸、アラビアゴム、トラガントなどの油乳剤、アルコール石鹸などを使用でき、必要に応じて、グリセリン、カルメロースナトリウムなどを用いてもよい。
これらの製剤における前記基剤および前記成分は製剤の種類によって適宜選択され、またそれらの量も、剤形によって通常用いられる範囲内で適宜選択される。
外用剤は、剤形などに応じて、例えば、塗布、塗擦または散布などにより適用できる。外用剤の患部への適用量は、有効成分の含有量などに応じて選択でき、例えば、1日つき1cmの患部あたり、0.02〜100mg、好ましくは0.2〜20mg、とりわけ好ましくは2〜10mgを1日1〜3回程度の複数回、適用できる。投与期間は、特に限定はないが、通常1日間〜1年間、好ましくは1週間〜3ケ月間である。
上記製剤中に含有されるヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の含有量としては、上記製剤1g当たり1〜1000mg、好ましくは1〜500mg、より好ましくは1〜200mgである。
注射剤は、例えば塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製する。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製される。
経口投与に適当な製剤としては、錠剤、散剤、顆粒剤、乳剤、シロップ剤、カプセル剤等があげられる。例えば、経口剤の剤形が、錠剤、散剤、顆粒剤等の場合には、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して、製剤化することができる。
経口剤の剤形がシロップ剤等の液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類などを添加して、製剤化することができる。
上記注射剤または経口剤のヒトへの投与量は、投与形態、症状の程度、患者の年齢、体重等に応じて異なるが、通常、1日つきヒト成人の体重1kgあたり、0.02〜100mg、好ましくは0.2〜20mg、とりわけ好ましくは2〜10mgである。投与期間は、特に限定はないが、通常1日間〜1年間、好ましくは1週間〜3ケ月間である。
上記製剤中に含有されるヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の含有量としては、上記製剤1g当たり1〜1000mg、好ましくは1〜500mg、より好ましくは1〜150mgである。
なお、本発明において「褥瘡の予防」とは、日常的に本発明の褥瘡の予防剤を投与または摂取することで、褥瘡の(a)発症を完全に防ぐ、(b)発症率を低減させる、または(c)発症時の症状を抑制する、などの効果を及ぼすことをいう。
また、本発明の褥瘡の予防剤または治療剤は、ヒトだけでなく、ヒト以外の動物に対しても使用することができる。ヒト以外の動物としては、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどをあげることができる。
本発明の褥瘡の予防剤または治療剤の動物への投与量は、投与形態、投与動物の種類、該動物の年齢、体重等に応じて異なるが、通常、1日につき動物の体重1kgあたり、0.02〜100mg、好ましくは0.2〜20mg、とりわけ好ましくは2〜10mgである。投与期間は、特に限定はないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1週間〜3ケ月間である。
本発明の褥瘡の予防剤または治療剤を飲食品として用いる場合、飲食品中にヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を添加したものを、褥瘡の予防または治療用飲食品として用いることができる。
該飲食品は、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を添加する以外は一般的な飲食品の製造方法を用いることにより、加工製造することができる。
本発明の褥瘡の予防剤または治療剤を飲食品として用いる場合、その形態は、ジュース類、清涼飲料水、茶類、乳酸菌飲料、発酵乳、冷菓、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂乳等の乳製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉製品、蒲鉾、竹輪、さつま揚げ等の魚肉練り製品、だし巻き、卵豆腐等の卵製品、クッキー、ゼリー、チューインガム、キャンデー、スナック菓子等の菓子類、パン類、麺類、漬物類、燻製品、干物、佃煮、塩蔵品、スープ類、調味料等、いずれであってもよい。
また、飲食品としての形態は、例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等であってもよい。
また本発明の褥瘡の予防剤または治療剤は、褥瘡を予防剤または治療する効果を有する健康食品または機能性食品として用いることができる。
該飲食品は、例えば、飲料または錠剤の場合は、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩に、必要により他の成分、添加剤等を加えた後、適当量の水に溶解あるいは分散させるか、または錠剤化して調製することができる。また、例えばアメ、ドロップ、チョコレート、ゼリー、ビスケット、クッキー等の菓子類は、常法に従い、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩に、必要により他の成分、添加剤等、さらに必要により適当な担体、例えば小麦粉、米粉、澱粉、コーンスターチ、大豆等を加え、適宜の形態に賦形して調製することができる。
また、上記飲食品は、例えば流動層造粒、攪拌造粒、押し出し造粒、転動造粒、気流造粒、圧縮成形造粒、解砕造粒、噴霧造粒、噴射造粒等の造粒方法、パンコーティング、流動層コーティング、ドライコーティング等のコーティング方法、パフドライ、過剰水蒸気法、フォームマット方法、マイクロ波加熱方法等の膨化方法、押出造粒機やエキストルーダー等の押出方法等を用いて製造することもできる。
本発明の褥瘡の予防剤または治療剤を食品添加物として用いる場合、食品添加物は、上記で説明した経口剤と同様な方法により調製することができる。食品添加物は、通常、必要に応じて他の食品添加物を混合または溶解し、例えば粉末、顆粒、ペレット、錠剤、各種液剤の形態に加工製造される。
上記飲食品または食品添加物には、一般的に飲食品に用いられる食品添加物、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色料、漂白料、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
上記飲食品中へのヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩、或いは食品添加物の添加量は、飲食品の種類、当該飲食品の摂取により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩として、通常は0.1〜100重量%、好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.1〜15重量%含有するように添加される。
上記の飲食品の摂取量は、摂取形態、摂取者の年齢、体重等に応じて異なるが、通常成人に対し一日あたりヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩として、0.02〜100mg、好ましくは0.2〜20mg、特に好ましくは2〜10mgであり、1日に1回または数回に分けて摂取する。摂取期間は、特に限定はないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1週間〜3ケ月間である。
該飲食品を日常的に摂取することにより、褥瘡を予防することができる。
既に褥瘡が発症している場合は、該飲食品を日常的に摂取することにより、褥瘡の症状を緩和、治癒させる等、褥瘡を治療することができる。
本発明の褥瘡の予防剤または治療剤を動物用飼料として用いる場合、動物用飼料中にヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を添加したものを、褥瘡の予防または治療用の動物用飼料として用いることができる。該動物用飼料は、一般的な飼料の製造方法を用いることにより加工製造することができる。
該動物用飼料は、ヒト以外の動物に対して褥瘡の予防効果を有する飼料であればいずれでもよく、例えばイヌ、ネコ等のペット用飼料、ペットフード、ウシ、ウマ等の家畜用飼料等があげられる。
該動物用飼料は、褥瘡を予防剤または治療する効果を有する動物用健康補助食品として用いることができる。
飼料としては、穀物類、そうこう類、植物性油かす類、動物性飼料、その他の飼料、精製品、またはこれらの混合物等があげられる。
穀物類としては、例えばマイロ、小麦、大麦、えん麦、らい麦、玄米、そば、あわ、きび、ひえ、とうもろこし、大豆等があげられる。
そうこう類としては、例えば米ぬか、脱脂米ぬか、ふすま、末粉、小麦、胚芽、麦ぬか、ペレット、トウモロコシぬか、トウモロコシ胚芽等があげられる。
植物性油かす類としては、例えば大豆油かす、きな粉、亜麻仁油かす、綿実油かす、落花生油かす、サフラワー油かす、やし油かす、パーム油かす、胡麻油かす、ひまわり油かす、菜種油かす、カポック油かす、芥子油かす等があげられる。
動物性飼料としては、例えば北洋ミール、輸入ミール、ホールミール、沿岸ミール等の魚粉、フィッシュソルブル、肉粉、肉骨粉、血粉、分解毛、骨粉、家畜用処理副産物、フェザーミール、蚕よう、脱脂粉乳、カゼイン、乾燥ホエー等があげられる。
その他の飼料としては、アルファルファ、ヘイキューブ、アルファルファリーフミール、ニセアカシア粉末等の植物茎葉類、コーングルテン、ミール、コーングルテンフィード、コーンステープリカー等のトウモロコシ加工工業副産物、デンプン等のデンプン加工品、酵母、ビールかす、麦芽根、アルコールかす、しょう油かす等の発酵工業産物、柑橘加工かす、豆腐かす、コーヒーかす、ココアかす等の農産製造副産物、キャッサバ、そら豆、グアミール、海藻、オキアミ、スピルリナ、クロレラ、鉱物等があげられる。
精製品としては、カゼイン、アルブミン等のタンパク質、アミノ酸、スターチ、セルロース、蔗糖、グルコース等の糖質、ミネラル、ビタミン等があげられる。
上記動物用飼料は、例えば流動層造粒、攪拌造粒、押し出し造粒、転動造粒、気流造粒、圧縮成形造粒、解砕造粒、噴霧造粒、噴射造粒等の造粒方法、パンコーティング、流動層コーティング、ドライコーティング等のコーティング方法、パフドライ、過剰水蒸気法、フォームマット方法、マイクロ波加熱方法等の膨化方法、押出造粒機やエキストルーダー等の押出方法等を用いて製造することもできる。
飼料添加剤は、上記した経口剤と同様な方法により調製することができる。飼料添加剤は、通常、必要に応じて他の飼料添加物を混合または溶解し、例えば粉末、顆粒、ペレット、錠剤、各種液剤の形態に加工製造される。
動物用飼料に含有されるヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の含有量は、摂取形態、摂取動物の種類、該動物の年齢、体重等に応じて異なるが、通常、投与する動物の体重1kgあたり1日に、0.02〜100mg、好ましくは0.2〜20mg、とりわけ好ましくは2〜10mgの摂取量となるように添加される。
該動物用飼料は、1日に1回または数回に分けて摂取させる。また、本発明の飼料添加剤を、摂食動物を対象とした褥瘡の予防剤または治療用動物用経口剤として、上記飼料の摂取量および摂取期間と、それぞれ同じ投与量および投与期間で投与してもよい。
該動物用飼料を動物に日常的に投与することにより、褥瘡を予防することができる。
既に褥瘡が発症している場合は、該動物用飼料を日常的に投与することにより、褥瘡を治療することができる
【図面の簡単な説明】
第1図は、バルーン加圧装置を示す図である。
第2図は、基剤塗布部位の組織像を示す図である。図中の矢印の部位に皮筋の変性・壊死像が認められる。
第3図は、N−アセチルヒドロキシプロリン製剤塗布部位の組織像を示す図である。
第4図は、栄養不良ウサギ腰部における、基剤クリームまたはAHYPクリーム剤塗布部位における皮膚角質層の水分率の増減比を示す図である。図中、黒カラムは基剤クリーム、白抜きカラムはAHYPクリーム剤を塗布した試験区を表す。また縦軸は、クリーム塗布前の皮膚角質層の水分率に対する増加率(%)を表し、横軸はクリーム塗布開始からの経過日を表す。
本発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明の実施例を示す。
実施例1 ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体の褥瘡予防効果(1)
10重量%のN−アセチルヒドロキシプロリンを含むグリセリン製剤(以下,AHYP製剤という)とN−アセチルヒドロキシプロリンを含まないグリセリン製剤(対照製剤;以下、基剤という)を、常法に従って作製した。第1表にAHYP製剤および基剤の組成を示す。なお、第1表において適量とは、AHYP製剤またはグリセリン製剤のpHを5.99するために必要な水酸化ナトリウムの添加量をいい、残余とは、精製水以外の成分の総量に精製水を加えて、製剤として100重量%にするために必要な精製水の添加量をいう。

動物実験には、日本白色種雄性ヘルシーウサギ3匹(北山ラベス社より購入)を使用した。本実験に供した動物の体重は、3,200〜3,500gであった。
ウサギの腰背部皮膚を電気バリカン(DC5、清水電機工業社製)で剪毛し、除毛クリーム[ディベール(商標登録)、資生堂コスメニティー社製]を用いて除毛した。その後、約30cmの右腸骨翼上の皮膚にAHYP製剤0.2mlを1日2回、4日間連続塗布した。また、同一動物の左腸骨翼上の皮膚に基剤を同様に塗布した。これらの期間、塗布部位皮膚の発赤等について肉眼的に観察した。塗布終了翌日にバルーン加圧装置(第1図)を用いて、被験物質を塗布した皮膚に圧迫を24時間加えることにより、軽度褥瘡を生じさせた。除圧直後と除圧から24時間後に被検部位を肉眼的に観察し写真撮影した。除圧から24時間後に加圧部皮膚を切除し20%中性緩衝ホルマリン液(和光純薬社製)で固定した。
切除した加圧部皮膚をホルマリン液で5日間固定した後、短冊状に切り出し病理組織標本を作製した。なお、組織標本は組織科学研究所(東京都青梅市黒沢2丁目984−1)にて作製した。
加圧部皮膚の所見では、被験物質の塗布によって該皮膚には発赤等の皮膚刺激性は認められなかった。
バルーン除圧直後は、AHYP製剤あるいは基剤塗布のいずれにも軽度発赤が認められた。除圧から24時間後には、これらの発赤は消失していた。
基剤を塗布した部位について、組織学的検索を実施した結果、表皮の限局性傷害像とともに、皮筋の変性・壊死像が観察された(第2図)。一方、AHYP製剤塗布部位の組織学的検査では、表皮の傷害像が同様に認められたものの、皮筋の変性・壊死像は認められなかった(第3図)。すなわち、AHYP製剤を塗布した病巣では、基剤を塗布した対照病巣と比較し、傷害の程度が弱いことが確認された。
以上の結果から、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体には、褥瘡の予防効果があることがわかった。
実施例2 ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体の褥瘡予防効果(2)
皮膚の脆弱化をきたす要因の一つである栄養不良を誘導したウサギ(以下、栄養不良ウサギと称す)を用い、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体の褥瘡予防効果を調べた。
栄養不良ウサギは、体重が3,200〜3,500gの日本白色種雄性ヘルシーウサギ3匹を、餌を与えず水道水のみ自由に与え15日間飼育することで調製した。栄養不良ウサギの体重は、絶食前に比べ、約20%減少していた。また血液生化学的検査では、血清総タンパク量および血清アルブミン量とも、絶食前に比べ、それぞれ平均6.4g/dlが平均5.2g/dlに、および平均4.4g/dlが平均3.2g/dlに減少していた。
10重量%のN−アセチルヒドロキシプロリンを含むクリーム剤(以下、AHYPクリーム剤という)とN−アセチルヒドロキシプロリンを含まないクリーム(以下、基剤クリームという)を、常法に従って作製した。第2表にAHYPクリーム剤および基剤クリームの組成を示す。なお、第2表において適量とは、薬剤全量で100重量%にするために必要な精製水の添加量をいう。

栄養不良ウサギの腰背部皮膚除毛後、左腰部において、腸骨翼上に直径4cmの円を1部位確保し、40mgのAHYPクリーム剤を1日2回、ほぼ同一時刻で4日間連続塗布した。右腰部においては左腰部と同様の手順で基剤クリームを塗布した。保湿効果をみるために、1日に1度塗布部位の皮膚角質層の水分率をモイスチャーチェッカー(肌水分計MY−707S;株式会社スカラ製)で測定し、クリーム剤別に平均化して塗布前に対する水分率の増減の程度と日数による変化を記録した。また、実験開始後5日目に、実施例1記載の方法と同様にバルーン加圧装置を用いて、クリームを塗布した皮膚に圧迫を加え軽度褥瘡を作製した。その後加圧部皮膚を切除し、組織学的検索を実施した。
(1)保湿効果
ウサギ腰部における皮膚角質層の水分率の変化を第4図に示した。基剤クリーム塗布部位において、クリーム塗布後3日目に著しい増加率が認められたが、4日目では、減少がみられた。それに対し、AHYPクリーム剤塗布部位においては、クリーム剤塗布後2日目から9%前後の増加を認め、4日目まで維持された。
(2)組織学的検索
AHYPクリーム剤塗布部位では、基剤クリーム塗布部位と比較し、加圧部の表皮傷害の程度は軽度であった。
以上の結果から、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体は、褥瘡の病理モデルである栄養不良ウサギにおいても、褥瘡予防効果があることがわかった。
実施例3 ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体の褥瘡治療効果
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体の褥瘡治療効果を、褥瘡の一つである馬の鞍ずれを対象に測定した。
2.5重量%のN−アセチルヒドロキシプロリンを含有する軟膏剤を以下の方法により製作した。なお、第3表において残量とは、精製水以外の成分の総量に精製水を加えて、製剤として100重量%にするために必要な精製水の添加量をいう。

上記第3表のA欄に記載されている化合物を混合し、80℃に加熱して溶解した(以下、A層という)。これとは別に、第3表のB欄に記載されている化合物を混合し、80℃に加熱して溶解した(以下、B層という)。A層を撹拌しながらB層をゆっくり投入し、B層投入終了後5分間、中速撹拌を続けた。その後、低速撹拌しながら反応液を冷却し、該反応液の温度が35℃に達した段階で撹拌を止め、反応を終了した。
上記で作製した2.5重量%のN−アセチルヒドロキシプロリンを配合した軟膏剤を、鞍ずれにより患部に壊死を生じているサラブレット種7才馬の鞍ずれ部位に、3週間塗布した。
その結果、鞍ずれの患部面積が縮小し、患部に肉芽が生じ産毛が生えるまで壊死が治癒された。なお、アセチルヒドロキシプロリンを含有しない第3表記載の成分からなる軟膏剤を塗布した対象試験区においては、鞍ずれの治癒はみられなかった。
以上より、ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体が圧迫性の壊死の治療に有効であることが確認された。
実施例4 ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体含有錠剤
第4表記載の処方で常法により錠剤(1錠あたり200mg)を製造する。

実施例5 ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体含有散剤
第5表記載の処方で常法により散剤(1包あたり550mg)を製造する。

実施例6 ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体含有ハードカプセル剤
第6表記載の処方でハードカプセル剤(1カプセルあたり160mg)を製造する。

50mgのヒドロキシプロリンに乳糖60mgおよびコーンスターチ30mgを添加して混合し、これにヒドロキシプロピルセルロース20mgの水溶液を添加して練合する。次いで、押し出し造粒機を用いて、常法により顆粒を製造する。この顆粒をゼラチンハードカプセルに充填することにより、ハードカプセル剤を製造する。
実施例7 ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体含有ソフトカプセル剤
第7表記載の処方でソフトカプセル剤(1カプセルあたり170mg)を製造する。

大豆油120mgにヒドロキシプロリン50mgを添加して混合する。次いで、ロータリー・ダイズ式自動成型機を用いて、常法に従い、ソフトカプセルに充填することにより、ソフトカプセル剤を製造する。
実施例8 ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体含有清涼飲料水
第8表記載の配合により清涼飲料水(10本分)を製造する。

水にて1000mlとする。
実施例9 ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体含有クッキー
第9表の配合によりクッキー(30個分)を製造する。

【産業上の利用可能性】
本発明により、ヒドロキシプロリンのN−アセチル化誘導体またはその塩を含有する褥瘡の予防剤または治療剤が提供される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を含有する褥瘡の予防剤または治療剤。
【請求項2】
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を全重量に対し0.1〜15重量%含有する請求項1記載の褥瘡の予防剤または治療剤。
【請求項3】
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体のアシル基が、炭素数1〜24のアシル基である請求項1または2記載の褥瘡の予防剤または治療剤。
【請求項4】
褥瘡の予防剤または治療剤の製造のためのヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の使用。
【請求項5】
褥瘡の予防剤または治療剤が、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を全重量に対し0.1〜15重量%含有することを特徴とする請求項4記載のヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の使用。
【請求項6】
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体のアシル基が、炭素数1〜24のアシル基であることを特徴とする請求項4または5記載のヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩の使用。
【請求項7】
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を含有する組成物を投与することによる褥瘡の予防方法または治療方法。
【請求項8】
組成物が、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体またはその塩を全重量に対し0.1〜15重量%含有することを特徴とする請求項7記載の褥瘡の予防方法または治療方法。
【請求項9】
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体のアシル基が、炭素数1〜24のアシル基であることを特徴とする請求項7または8記載の褥瘡の予防方法または治療方法。

【国際公開番号】WO2004/028531
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【発行日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539591(P2004−539591)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012525
【国際出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】