説明

西ナイルウイルスを検出するためのオリゴヌクレオチドおよび方法

本発明は、西ナイルウイルスの検出法、および本発明の方法に有用な西ナイルウイルスのコンセンサス配列に由来するオリゴヌクレオチド試薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、西ナイルウイルスの検出するための方法および試薬に関する。より詳細には本発明は、西ナイルウイルスを検出する核酸に基づく方法およびそのような方法に有用な核酸試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
西ナイルウイルスは、約11キロベースの1本鎖の陽極性のRNAゲノムを含有する球状の、エンベロープを持つウイルスである。西ナイルウイルスのサブタイプは、エンベロープ(EまたはENV)タンパク質中の抗原性の変化により、およびアミノ酸154−156でのN−グリコシル化部位(Asn−Tyr−Ser)の存在により識別することができる(非特許文献1)。西ナイルウイルスは分類学的にフラビウイルス科(Flavivirdae)、フラビウイルス属(genus Flavivirus)のファミリーに分類される。このウイルスは1937年にウガンダの西ナイル地方に住む熱のあるヒトから初めて単離された。
【0003】
西ナイルウイルスは増幅する宿主として役立つカおよび渡り鳥を介してヒトおよび家畜に伝播することができる。西ナイルウイルスの感染は、ウイルスが地方病性である場合は一般に世界の各地で無症状性であるが、感染したヒトは微熱、発疹、悪心、頭痛、失見当および背中の疼痛を受け得る。西ナイルウイルスの感染に由来するさらに重篤な合併症には、肝炎、膵炎、脳炎、心筋炎、髄膜炎、神経感染および死を含む。
【0004】
西ナイルウイルスは地理的にはアフリカ、中東、西および中央アジア、インド、オーストラリア(クンジン ウイルス)およびヨーロッパに分布している。最初に記録された流行病は1950年代の始めにイスラエルで起こった。さらに最近では、西ナイルウイルスにより引き起こされたヒト脳炎の大発生がルーマニアおよびロシアで記録された。西ナイルウイルスは最近、米国北東部に伝わり、1999年にはニューヨーク市および周辺地域で7名のヒトの死亡を引き起こした。比較的大量の鳥、特にカラスおよびウマも死亡した。続いて2000年にはカおよび鳥からの西ナイルウイルスの回収により、ウイルスが米国北東部で樹立されたことが確認された(非特許文献2)。
【0005】
西ナイルウイルスが確認された州では、カの幼虫および成虫の防除、マッピング、噴霧および増殖場所の除去を介して西ナイルウイルスの伝播の防止が試みられた。これらの努力にもかかわらず、西ナイルウイルスはその伝播様式から脅威である。現在、西ナイルウイルスの感染に関するワクチンまたは他の既知の処置はない。したがって西ナイルウイルスの感染を診断するために、まだ対応されていない試薬および方法の必要性が存在する。
【0006】
米国において、2002年の西ナイルウイルスの流行中に、23名の人がウイルスに感染したドナーから血液成分を受けた後に西ナイルウイルスに感染したことが報告された(非特許文献3)。その結果、感染した血液を確認するために血液または血漿のような血液成分を用いて使用することができる西ナイルウイルス感染を診断する試薬および試験の必要性も存在する。
【0007】
PCRに基づくアッセイを使用した西ナイルウイルスの検出が報告された。2003年2月27日に公開された特許文献1は、アガロースゲルにより分析される495塩基対のPCR産物を生産する二重増幅アッセイで、PCRに基づき西ナイルウイルスを検出する方法を開示する(英語による要約から)。
【0008】
パスツール アンド キムロン獣医学研究所(Pasteur and Kimron Veterinary Institute)に割り当てられた2002年10月17日に公開された特許文献2は、IS−98−ST1として知られている西ナイルウイルスの神経侵襲性および神経毒性株、そのゲノムに由来する核酸分子および西ナイルウイルスの検出法を開示する。
【0009】
非特許文献4は、西ナイルウイルスのゲノムの921塩基部分を増幅するためのプライマーを開示する。非特許文献5は、西ナイルウイルスを検出するためのPCRアッセイを開示し、ここでプライマーはエンベロープ(ENV)および3’非コード領域から選択された。非特許文献6は西ナイルウイルスを検出するためのPCRアッセイを開示し、ここでプライマーはE遺伝子から選択された。非特許文献7は、西ナイルウイルスを検出するためのPCRアッセイを開示し、ここでプライマーはNS(非構造タンパク質5)およびENV遺伝子から選択された。非特許文献7は、西ナイルウイルスの検出に関するPCRアッセイを開示し、ここでプライマーがNS(非構造タンパク質5)およびENV遺伝子から選択された。
【特許文献1】ロシア国特許出願第RU2199589号明細書
【特許文献2】国際公開第02/081511号パンフレット
【非特許文献1】Jia,Lancet.354:1971−2,1999
【非特許文献2】Anderson et al.Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 98(23):12885−12889,2001
【非特許文献3】Morbidity and Mortality Weekly Report,52(32);769−772,2003
【非特許文献4】Anderson et al.,Science 286:2331−2333,1999
【非特許文献5】Lanciotti et al.,J.Clin.Microbiol.38(11):4066−4071
【非特許文献6】Briese,T.et al.,Emerging Infectious Disease 8(5)2002年5月
【非特許文献7】Huang et al.,Emerging Infectious Disease 8(12)2002年12月
【発明の開示】
【0010】
発明の要約
本発明は、西ナイルウイルスを検出するための方法およびオリゴヌクレオチド試薬を提供する。
【0011】
本発明は
(a)R−N−R、ここで
Nは
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドであり;
はNの5’末端に共有結合した図1(配列番号1)に示す西ナイルウイルスコンセンサス配列中におけるNの5’末端の直ぐ上流の該コンセンサス配列の0〜20個の連続した塩基のオリゴヌクレオチド配列であるが、ただしNが該コンセンサス配列に相補的である時、Rは該コンセンサス配列の相補鎖から選択され;そして
はNの3’末端に共有結合した該コンセンサス配列中におけるNの3’末端の直ぐ下流の該コンセンサス配列の0〜20個の連続した塩基のオリゴヌクレオチド配列であるが、ただしNが該コンセンサス配列に相補的である時、Rは該コンセンサス配列の相補鎖から選択され;
(b)(a)で規定するNの単離されたフラグメント、ここで該フラグメントは10〜19塩基長であり;
(c)R−X−R、ここでXは(a)で規定するNの少なくとも10個の連続した塩基であり、そしてRおよびRは(a)で規定する通りであり、ここでRが存在する時、Rは存在せず、そしてXはXの5’末端の塩基がNの5’末端の塩基と同じとなるように選択され;そしてRが存在する時、Rは存在せず、そしてXはXの3’末端の塩基がNの3’末端の塩基と同じとなるように選択され;
(d)(a)、(b)または(c)のオリゴヌクレオチドと少なくとも80%の配列同一性を有する単離されたオリゴヌクレオチド;または
(e)(a)、(b)、(c)または(d)の完全長相補鎖である単離されたオリゴヌクレオチド、
を含んでなる単離されたオリゴヌクレオチドを提供する。
【0015】
好ましくは本発明のオリゴヌクレオチドは
【0016】
【表3】

【0017】
【表4】

【0018】
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドを含んでなるか、またはからなる。
【0019】
より好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドは
【0020】
【表5】

【0021】
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドを含んでなる。
【0022】
最も好ましくは、本発明は
【0023】
【表6】

【0024】
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチドを提供する。
【0025】
別の好適な態様では、本発明は
【0026】
【表7】

【0027】
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドを含んでなるか、またはからなるオリゴヌクレオチドを提供する。
【0028】
より好ましくは、オリゴヌクレオチドは
【0029】
【表8】

【0030】
を含んでなる。
【0031】
本発明のオリゴヌクレオチドは、検出可能な標識をさらに含んでなることができる。
【0032】
好ましくは、検出可能な標識は5’末端に結合した蛍光分子を含んでなる。さらに好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドは3’末端に消去剤(quencher)分子をさらに含んでなる。
【0033】
本発明の別の観点は、
【0034】
【表9】

【0035】
【表10】

【0036】
【表11】

【0037】
からなる群から選択される単離されたオリゴヌクレオチド配列の対を提供する。
【0038】
より好ましくは、単離されたオリゴヌクレオチド配列の対は
【0039】
【表12】

【0040】
からなる群から選択される。
【0041】
最も好ましくは単離されたオリゴヌクレオチドの対は、
【0042】
【表13】

【0043】
である。
【0044】
本発明のさらなる観点は、
【0045】
【表14】

【0046】
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドの組を提供する。
【0047】
さらに好ましくは、組は
【0048】
【表15】

【0049】
である。
【0050】
本発明はさらに試験サンプル中の西ナイルウイルスの検出法を提供し、この方法は該試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸を増幅させ;そして増幅した核酸を検出する工程を含んでなり、ここで増幅した核酸の検出は該試験サンプル中の西ナイルウイルスの存在を示し、該増幅工程または該検出工程、または両工程は本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを用いて行われる。好ましくは、本発明の方法は上記1対のオリゴヌクレオチドを用いて行われる。より好ましくは本発明の方法は上記の組のオリゴヌクレオチドを用いて行われる。最も好ましくは本発明は
【0051】
【表16】

【0052】
のオリゴヌクレオチド組を用いて行われる。
【0053】
本発明は試験サンプル中の西ナイルウイルスの他の検出法を提供し、この方法は本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを、試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸とハイブリダイズさせ;そして本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと西ナイルウイルスの核酸とのハイブリダイゼーションを検出する工程を含んでなる。
【0054】
本発明の好適な態様では、試験サンプルがヒト血漿を含んでなる。
【0055】
また本発明は、核酸配列を検出するためのプライマーを同定する方法を提供し、この方法は、
(a)少なくとも1000塩基長の核酸配列を準備し;
(b)該核酸配列を、該配列の1つの末端から始まる約500塩基長の非重複セグメントに分割し;そして
(f)少なくとも1つのセグメントおよび/またはその相補鎖の配列から、各々約15〜25塩基長のフォワードおよびリバースプライマーを選択し、ここでフォワードおよびリバースプライマーは重複配列を持たず、そして約50〜200塩基を有するアンプリコンを生成するように選択される。
【0056】
また本発明は上記の方法により同定したプライマーにも拡大する。
【0057】
本発明のさらに別の観点は、図1(配列番号1)に示す配列の約15から約75個の連続した塩基を含んでなる単離されたオリゴヌクレオチドまたはその相補鎖を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは北米またはイスラエル以外からの西ナイルウイルスの単離物よりも、北米またはイスラエルの西ナイルウイルスの単離物に由来する核酸に大きな親和性で結合する。好ましくはオリゴヌクレオチドは図1(配列番号1)に示す西ナイルウイルスのコンセンサス配列の約15から約50個の連続した塩基またはその相補鎖を含んでなる。より好ましくはオリゴヌクレオチドは図1(配列番号1)に示す西ナイルウイルスのコンセンサス配列の約15から約25個の連続した塩基またはその相補鎖を含んでなる。本発明のさらに別の観点は、米国またはイスラエル以外の西ナイルウイルス単離物よりも北米またはイスラエルの西ナイルウイルス単離物に由来する核酸に大きな親和性で結合する上記のオリゴヌクレオチドを提供する。
【0058】
本発明のさらに別の観点は、本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含んでなる試験キットを提供する。
【0059】
本発明のこれらのおよび他の観点は、添付する特許請求の範囲および以下の詳細な説明でさらに完全に説明される。
発明の詳細な説明
米国では西ナイルウイルス感染の発生が増えている。西ナイルウイルスでは滅多に死なないが、ウイルスに感染した150人に約1人は脳炎または髄膜炎の死亡例を発症する可能性がある。現在、西ナイルウイルス感染を処置または防止する手立てはない。早期の検出が感染を診断し、そして症状を処置するために重要である。献血された血液中の西ナイルウイルスの検出は、汚染された血液および血液誘導体から生じる感染の防止に重要である。
【0060】
本発明は西ナイルウイルスを検出するための方法およびオリゴヌクレオチド試薬を提供する。本発明の方法およびオリゴヌクレオチドは、血漿中の西ナイルウイルスの検出に特に有用である。
【0061】
本発明はR−N−Rを含んでなる単離されたオリゴヌクレオチドを提供し、ここでNは
【0062】
【表17】

【0063】
【表18】

【0064】
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドであり;
はNの5’末端に図1(配列番号1)に示す西ナイルウイルスコンセンサス配列中で共有結合したNの5’末端の直ぐ上流のコンセンサス配列の0〜20個の連続した塩基のオリゴヌクレオチド配列であるが、ただしNが該コンセンサス配列に相補的である時、Rは該コンセンサス配列の相補鎖から選択され;そしてRはNの3’末端に該コンセンサス配列中で共有結合したNの3’末端の直ぐ下流のコンセンサス配列の0〜20個の連続した塩基のオリゴヌクレオチド配列であるが、ただしNが該コンセンサス配列に相補的である時、Rは該コンセンサス配列の相補鎖から選択される。
【0065】
オリゴヌクレオチドは、図1のコンセンサス配列にNを配置し、そしてNの最初の塩基から5’方向の上流に連続させ、そしてNの最初の塩基に隣接する0〜20個の塩基を選択し、かつ/またはNの最後の塩基から3’方向の下流に連続させ、そしてNの最後の塩基に隣接する0〜20個の連続する塩基を選択することにより選択される。Nがコンセンサス配列に相補的である場合、RおよびRはコンセンサス配列の相補鎖から同じ様式で選択される。好ましくはRおよびRは独立して0〜15個の連続した塩基長であり、より好ましくは0〜10個の連続した塩基長であり、最も好ましくは0〜5個の連続した塩基長である。
【0066】
また本発明は本明細書に定義するNの単離されたフラグメントを提供し、ここでフラグメントは10〜19塩基長、好ましくは15〜19塩基長である。
【0067】
さらに本発明はR−X−Rを含んでなる単離されたヌクレオチドを提供し、ここでXは本明細書で定義するNの少なくとも10個の連続した塩基であり、そしてRおよびRは本明細書に定義する意味を有し、ここでRが存在する時、Rは存在せず、そしてXはXの5’末端の塩基がNの5’末端の塩基と同じとなるように選択され;そしてRが存在する時、Rは存在せず、そしてXはXの3’末端の塩基がNの3’末端の塩基と同じとなるように選択される。オリゴヌクレオチドはNを図1に示すコンセンサス配列中に配置し、そして5’末端から始まる少なくとも10個の連続した塩基を選択し、そして3’末端に向けて下流に少なくとも10個の連続した塩基を続けることにより選択され得る。あるいはオリゴヌクレオチドはNを図1に示すコンセンサス配列中に配置し、そして3’末端から始まる少なくとも10個の連続した塩基を選択し、そして5’末端に向けて上流に少なくとも10個の連続した塩基を続けることにより選択され得る。XがNの5’末端から選択される時、Rは存在せず、そしてRはNの最初の塩基から5’方向に上流に連続し、そしてNの最初の塩基に隣接する0〜20個の塩基を選択することにより選択される。XがNの3’末端から選択される時、Rは存在せず、そしてRはNの最後の塩基から3’方向に下流に連続し、そしてNの最後の塩基に隣接する0〜20個の連続した塩基を選択することにより選択される。好ましくはRおよびRは独立して0〜15個の連続した塩基長であり、より好ましくは0〜10個の連続した塩基長であり、最も好ましくは0〜5個の連続した塩基長である。Nがコンセンサス配列に相補的である場合、RおよびRはコンセンサス配列の相補鎖から同じ様式で選択される。
【0068】
また提供するのは、式R−N−Rを有するオリゴヌクレオチド(ここでR、NおよびRは本明細書に規定する意味を有する)、本明細書に定義するNのフラグメント、または式R−X−Rを有するオリゴヌクレオチド(ここでR、XおよびRは本明細書に規定する意味を有する)と少なくとも80%の配列同一性を有する単離されたオリゴヌクレオチドである。配列同一性の割合は配列をマニュアルで並べ、そして両配列中の同じ塩基の数を算出することにより、または数学的計算法を使用して決定することができる。そのような数学的計算法は、Myers and Miller(1988)CABIOS 4:11−17の計算法;Smith et al.,(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所的な相同性の計算法;Needleman and Wunsch(1970) J.Mol.Biol.48:443−453の相同性アライメント計算法;Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.87:2444−2448の類似性調査法;Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877のように修飾されたKarlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264の計算法である。これらの数学的計算法のコンピューターによる実行は、配列を比較するために利用して配列の同一性を決定することができる。そのような実施には限定するわけではないが:PC/GeneプログラムのCLUSTAL(インテリジェネティックス(Intelligenetics)から入手可能、マウンテンビュー、カリフォルニア州);ALIGNプログラム(バージョン2.0)およびウィスコンシン ジェネティックス ソフトウェア パッケージ(Wisconsin Genetics Software Package)、バージョン8のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTA(ジェネティックス コンピューター グループ(Genetics Computer Group:GCG)、575サイエンス ドライブ(Science Drive)から入手可能、マジソン、ウィスコンシン州、米国)がある。これらのプログラムを使用したアライメントは、デフォルトパラメーターを使用して行うことができる。好ましくはオリゴヌクレオチドは式R−N−Rのオリゴヌクレオチド(ここでR、NおよびRは本明細書に定義する意味を有する)、本明細書で定義するNのフラグメントまたは式R−X−Rを有するオリゴヌクレオチド(ここでR、XおよびRは本明細書に定義する意味を有する)と85、90または95%の配列同一性を有する。
【0069】
本発明はさらにオリゴヌクレオチドの完全長相補鎖である単離されたオリゴヌクレオチドを提供する。
【0070】
用語「単離された」オリゴヌクレオチドは、その自然な環境以外の条件下で見いだされるオリゴヌクレオチドを指す。好適な状態ではオリゴヌクレオチドは、通常、その自然に存在する環境中で見られるようなオリゴヌクレオチドに付随するか、または相互反応する他の染色体および染色体外DNAおよびRNAのような他の核酸配列を実質的に含まない。また用語「単離された」オリゴヌクレオチドは、組換えオリゴヌクレオチドおよび化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを包含する。
【0071】
本発明の別の観点は、ウイルスを含有すると思われるサンプル中の西ナイルウイルスの検出法を提供し、この方法はそのようなウイルスを含有すると思われるサンプル中の西ナイルウイルスの核酸を増幅させ;そして増幅した核酸を検出する工程を含んでなり、ここで増幅した核酸の検出がサンプル中の西ナイルウイルスの存在を示し、この方法は西ナイルウイルスの核酸を増幅または検出するために本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを使用する。
【0072】
本発明のさらなる観点は、サンプル中の西ナイルウイルスの検出法を提供し、この方法は本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを、西ナイルウイルスの核酸とハイブリダイズさせ、そして少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと西ナイルウイルスの核酸とのハイブリダイゼーションを検出する工程を含んでなる。
【0073】
西ナイルウイルスはRNAゲノムウイルスであり、そしてアッセイ形式によっては増幅前にRNAをDNAに変換させる必要がある。RNAのDNAへの変換は逆転写酵素を使用して行うことができる。
【0074】
増幅工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法のような任意の種類の核酸鋳型に基づく方法を使用して行うことができる。
【0075】
PCR技法は熱的な鎖の分離に続いて熱的な解離に依存する。この工程中、鎖あたり少なくとも1つのプライマー、循環装置、高い反応温度および特異的な熱安定性酵素が使用される(米国特許第4,683,195号および同第4,883,202明細書)。あるいはDNAを一定温度で増幅することも可能である(増幅に基づく核酸配列(Nucleic Acids Sequence Based Amplification:NASBA)Kievits,T.,et al.,J.Virol Methods,1991;35,273−386;およびMalek,L.T.、米国特許第5,130,238号明細書;T7 RNAポリメラーゼが媒介する増幅(T7 RNA polymerase−mediated amplification:TMA)(Giachetti C,et al.,J.Clin.Microbiol 2002 Jul;40(7);2408−19;または鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification:SDA),Walker,G.T.and Schram,J.L.、欧州特許出願公開第0 500 224 A2号明細書;Walker,G.T.et al.,Nuc.Acids Res.,1992;20,1691−1696)。
【0076】
好ましくは増幅はPCRおよびコンセンサス配列またはその相補鎖から選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーまたはその相補鎖を使用して行う。プライマーは好ましくは15〜30ヌクレオチド長、より好ましくは15〜25塩基長、最も好ましくは約20ヌクレオチド長である。好ましくは少なくとも1つのプライマーは、
【0077】
【表19】

【0078】
【表20】

【0079】
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドである。
【0080】
より好ましくは増幅はプライマーとして本発明のオリゴヌクレオチドの対を用いて行われ、プライマーの対は
【0081】
【表21】

【0082】
【表22】

【0083】
【表23】

【0084】
からなる群から選択される。
【0085】
最も好ましくは、増幅は
【0086】
【表24】

【0087】
からなる群から選択される単離されたオリゴヌクレオチドの対を使用して行われる。
【0088】
西ナイルウイルスの核酸を増幅するために特に好適な単離されたオリゴヌクレオチドの対は
【0089】
【表25】

【0090】
である。
【0091】
増幅した核酸は、当該技術分野で周知な種々の検出技法を使用して検出することができる。例えば増幅産物は、エチジウムブロミド染色および紫外線(UV)光への暴露による、または確認のための増幅産物の配列分析による、またオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションによる視覚化を用いた電気泳動を行うことによりアガロースゲルを使用して検出することができる。
【0092】
好ましくは増幅した核酸は、西ナイルウイルスのコンセンサス配列またはその相補鎖に由来するオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションにより検出される。プローブ配列は好ましくは10〜50ヌクレオチド長、より好ましくは15〜40ヌクレオチド長、最も好ましくは25〜35ヌクレオチド長であり、そして1対のプライマーにより増幅される配列から選択される。場合によりプローブは検出可能な標識で標識することができる。
【0093】
好適なプローブは
【0094】
【表26】

【0095】
からなる群から選択される単離されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0096】
より好ましくはオリゴヌクレオチドプローブは
【0097】
【表27】

【0098】
である。
【0099】
好ましくはオリゴヌクレオチドプローブは検出可能な標識で標識される。検出可能な標識は、例えば放射性同位体、フルオロフォア、化学発光団、酵素、コロイド粒子および蛍光微粒子のような検出することができる特性または特徴を有する任意の分子または部分であることができる。
【0100】
プローブ配列は、増幅産物を検出するための種々の方法論を使用して採用することができる。一般にすべてのそのような方法は、プローブが増幅産物の鎖にハイブリダイズして増幅産物/プローブハイブリッドを形成する工程を採用する。次いでハイブリッドは、プライマー、プローブまたはプライマーおよびプローブの両方の標識を使用して検出することができる。増幅産物を検出するための均一な検出台の例には、標的配列の存在でシグナルを発するプローブに付けられたFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)標識の使用を含む。米国特許第5,210,015号;同第5,804,375号;同第5,487,792号;および同第6,214,979号明細書(各々、引用により本明細書に編入する)に記載されている“TaqMan”アッセイ、および米国特許第5,925,517号明細書(引用により本明細書に編入する)に記載されているモレキュラービーコン(Molecular Beacon)アッセイは、核酸配列を検出するために使用することができる技術の例である。“TaqMan”アッセイ形式を用いて、増幅反応産物はそれらが形成された時、または所謂「リアルタイム」様式で検出することができる。その結果、増幅産物/プローブハイブリッドは、反応混合物が増幅条件下にある間に形成され、そして検出される。
【0101】
好ましくはPCRプローブは、5’末端がフルオロフォアで標識され、そして3’末端が消去剤分子で標識されているTaqMan(商標)プローブである。TaqMan(商標)プローブと使用するために適切なフルオロフォアおよび消去剤は、米国特許第5,210,015号、同第5,804,375号、同第5,487,792号および同第6,214,979号明細書および国際公開第01/86001号パンフレット(バイオサーチ テクロノジーズ:Biosearch Technologies)に開示されている。好適な消去剤は、国際公開第01/86001号パンフレットに開示されているブラック ホール 消去剤(Black Hole Quenchers)である。
【0102】
本発明の好適な態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは西ナイルウイルスのRNAをDNAに逆転写した後にPCRにより試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸を増幅するために使用する。増幅した核酸は、5’末端を5−カルボキシフルオレセイン(FAM)で標識し、そして3’末端を国際公開第01/86001号パンフレットに開示されているブラック ホール 消去剤で標識した二重標識“TaqMan”プローブを使用して検出される。蛍光は蛍光計を使用して検出される。
【0103】
本発明の方法は、好ましくは
【0104】
【表28】

【0105】
からなる群から選択される1組のオリゴヌクレオチドを使用して行われる。
【0106】
より好ましくは、本発明の方法は以下の
【0107】
【表29】

【0108】
オリゴヌクレオチドの組のいずれかを使用して行われる。
【0109】
前記の各オリゴヌクレオチド組において、第1および第3のオリゴヌクレオチドはプライマーとして使用され、そして中央のオリゴヌクレオチドは増幅した核酸を検出するためのプローブとして使用される。プローブは場合により検出可能な標識で標識される。
【0110】
また本発明のオリゴヌクレオチドは、核酸の増幅には基づかない当該技術分野で知られいる方法および技法を使用して、西ナイルウイルスを検出するためにも使用することができる。
【0111】
核酸のハイブリダイゼーションは、当該技術分野で知られている技法および条件を使用して行うことができる。特異的なハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションを使用するアッセイの種類に依存する。ハイブリダイゼーション技法および条件は、例えばTijssen(1993)生化学および分子生物学における研究技法−−核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes)、第I部、第2章(エルセビア(Elsevier)出版、ニューヨーク);およびAusubel et al.編集(1995) 分子生物学における最新のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、第2章(グリーネ出版およびウィリーインターサイエンス(Greene Publishing and Wiley−Interscience)、ニューヨーク)およびSambrook et al.(1989)モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)(第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、プレインビュー、ニューヨーク州)に見いだすことができる。
【0112】
核酸のハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件下で行うことができる。「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブがその標的配列に他の配列よりも大きい検出可能度でハイブリダイズする条件を意図する(例えばバックグラウンドよりも少なくとも2倍より高い)。ストリンジェント条件は配列依存的であり、そして異なる状況では異なるだろう。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブに100%相補的な標的配列を同定することができる。あるいはストリンジェンシー条件は、より低い程度の類似性が検出されるように、配列中に幾つかの誤対合を可能とするように調整することができる。
【0113】
典型的には、ストリンジェント条件は塩濃度が約1.5MのNaイオン未満、典型的にはpH7.0〜8.3で約0.01〜1.0MのNaイオン濃度であり(または他の塩)、そして温度が短いプローブに関して(10〜50ヌクレオチド)少なくとも約30℃であり、そして長いプローブに関して(例えば50ヌクレオチドより長い)少なくとも約60℃の条件である。ストリンジェント条件はホルムアルデヒドのような不安定化剤を添加して達成することもできる。低ストリンジェンシー条件の例には、37℃で30〜35%のホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のバッファー溶液を用いたハイブリダイゼーション、および50〜55℃で1x〜2xSSC(20xSSC=3.0MのNaCl/0.3Mのクエン酸三ナトリウム)中での洗浄を含む。中程度のストリンジェンシー条件の例には、37℃で40〜45%のホルムアミド、1.0MのNaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、および55〜60℃で0.5x〜1xSSC中での洗浄を含む。高ストリンジェンシー条件の例には、37℃で50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、および60〜65℃で0.1xSSC中での洗浄を含む。ハイブリダイゼーションの期間は一般に約24時間未満であり、通常、アッセイ形式に依存して約4〜約12時間未満である。
【0114】
本発明のオリゴヌクレオチドは意図する使用およびアッセイ形式に依存してプライマーまたはプローブとして使用することができることに注目すべきである。例えば1つのアッセイでプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、別のアッセイでプローブとして使用することができる。オリゴヌクレオチドのプライマー対およびプライマー/プローブ組へのグループ分けは、本発明の特定の好適な態様を反映する。しかし異なる好適なプライマー対から選択されたフォワードおよびリバースプライマーからなる他のプライマー対の使用が具体的に企図される。
【0115】
本明細書で使用する用語「試験サンプル」は、西ナイルウイルスおよび/または西ナイルウイルスの核酸の存在について試験するために設計された任意のものであることを意味する。試験サンプルは、例えば血液、血漿、細胞培養物、組織およびカのサンプルのような任意の生物起源であるか、またはそれらに由来することができる。試験サンプルは供給源から得られた時に直接使用することができ、または前処理してサンプルの特徴を修飾した後に使用することができる。このように試験サンプルは例えば血液から血漿を調製し、細胞またはウイルス粒子を破壊し、固体材料から液体を調製し、粘稠な流体を希釈し、液体を濾過し、液体を蒸発させ、液体を濃縮し、妨害成分を不活性化し、試薬を加え、そして核酸を精製することにより、使用前に前処理することができる。
【0116】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当該技術分野で知られており、そしてSambrook et al.,モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、米国(1989)のようなマニュアルに開示されている標準的な分子生物学技術、または従来のヌクレオチドホスホラミダイト化学および市販されている合成装置を用いて作成することができる。本発明のオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAであることができる。また本発明は本発明のオリゴヌクレオチドおよびそれらの相補鎖のRNA均等物も対象とする。
【0117】
本発明の別の観点は、核酸配列を検出するためのプライマーを同定する方法を提供し、この方法は(a)少なくとも1000塩基長の核酸配列を準備し;(b)該核酸配列を、配列の1つの末端から始まる約500塩基長の非重複セグメントに分割し;そして(c)少なくとも1つのセグメントおよび/またはその相補鎖の配列から、各々約15〜25塩基長のフォワードおよびリバースプライマーを選択し、ここでフォワードおよびリバースプライマーは重複配列を持たず、そして約50〜200塩基を有するアルプリコンを生成するように選択される。
【0118】
本発明の方法は、ウイルスのような生物の全ゲノムを含め、少なくとも約1,000塩基長の核酸配列を検出するためのプライマーを同定するために使用することができる。既知の遺伝子の一部、または配列中の他の位置をプライマーを同定するために使用した従来の方法とは異なり、本発明の方法はオープンリーディングフレームまたは配列中の他の目印とは無関係に全配列を系統的に網羅する。この方法は天然またはコンセンサス配列を含む任意の種類の配列を用いて使用することができる。核酸配列を約500塩基長の非重複セグメントに分割する。500にならない配列に関しては、そのセグメントの長さは付加塩基を考慮して調整することができるか、または短いセグメントとして末端に付加的塩基を使用することができる。1もしくは複数のプライマーの組を少なくとも1つのセグメントおよび/またはその相補鎖から、好ましくは3Primer3PCRプライマーデザインソフトウェア(ホワイトヘッド インスティチュート フォ バイオメディカルリサーチ(Whitehead Institute for Biomedical Research)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)のようなプライマーデザインソフトウェアを使用して選択する。好ましくは1もしくは複数のプライマーの組が各セグメントについて選択される。プライマーの設計は一般に、プライマー長、融解温度(T)、特異性、相補的プライマー配列、G/C含量、ポリピリミジン(T、C)またはポリプリン(A、G)ストレッチ、およびプライマーが使用されるアッセイ形式および条件のような因子を考慮する。プライマー組は、同じアッセイ形式および条件を使用して選択されたセグメントを増幅するそれらの能力について試験することができる。
【0119】
西ナイルウイルスに関して、8種の完全長のUS WNV単離物から最高の配列転換を示す図1のコンセンサス配列の10944bp領域を、PCR増幅プライマー設計に選択した。この相同的領域は、系統的に約500bpの区分に破壊され、そして各区分中に1対の増幅プライマーが、Primer3PCRプライマーデザインソフトウェア(ホワイトヘッド インスティチュート フォ バイオメディカルリサーチ、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を使用して選択された。Primer3を使用したプライマー設計のためのデフォルト設定は、100〜150bpのアンプリコンについて至適化され、55〜60℃の範囲のプライマーT(融解温度)、およびG/C含量は、二重標識蛍光プローブに基づくアッセイ(“TaqMan”アッセイ)について至適化された。
【0120】
本発明の別の観点は、試験サンプル中に西ナイルウイルスを検出する方法を提供し、この方法は、該試験サンプル中で西ナイルウイルスの核酸を増幅させ;そして増幅した核酸を検出する工程を含んでなり、ここで増幅した核酸の検出は該試験サンプル中の西ナイルウイルスの存在を示し、そしてこの方法は西ナイルウイルスの核酸を増幅または検出するために、上で検討した方法に従い同定される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを使用する。
【0121】
図1に示す西ナイルウイルスのコンセンサス配列をプライマーおよびプローブの選択に使用することは、北米またはイスラエル以外の西ナイルウイルス感染よりも、北米およびイスラエルの西ナイルウイルス単離物に高い配列相同性を有するオリゴヌクレオチドの同定をもたらした。
【0122】
このように本発明の別の観点は、コンセンサス配列の約15から約75個の連続した塩基またはその相補鎖、より好ましくは約15から約60個の連続した塩基、もっとも好ましくはコンセンサス配列の約15から約30個の連続した塩基またはその相補鎖を含んでなる単離されたオリゴヌクレオチドを提供し、ここでオリゴヌクレオチドは北米またはイスラエル以外からの西ナイルウイルス単離物よりも、北米またはイスラエルからの西ナイルウイルス単離物に由来する核酸に大きな親和性で結合する。
【0123】
Lanciotti et al.,Virology,298:96−105,2002は、米国、ヨーロッパおよび中東から単離された西ナイルウイルス株の系統発生的分析を開示する。Lanciotti et al.により構築された系統発生樹は、西ナイルウイルスの2つの遺伝的系統の存在を明らかにした。系統1の西ナイルウイルスは、米国北東部、ヨーロッパ、イスラエル、アフリカ、インド、ロシアおよびオーストラリアから単離された。系統2の西ナイルウイルスは、サハラ以南のアフリカおよびマダカスカルでのみ単離された。系統1のウイルスはさらに3種の単系クレード副分割された。米国およびイスラエルで生じたすべての単離物は互いに緊密に関連することが分かり、そしてUS/イスラエルクレードと言う同じクレードに置かれた。Lanciotti et al.による系統発生分析に、および図1のコンセンサス配列の構築のために出願人に使用された米国の単離物に関する寄託番号は、実施例1にある。イスラエルのコウノトリ(stork)からの単離物の寄託番号は、GeneBank寄託番号AY033389である。Lanciotti et al.は、米国およびイスラエルからの単離物が99%より高いヌクレオチド配列の同一性およびアミノ酸の同一性を有することを見いだした。世界のこれ以外の地域から生じた単離物は、より低いヌクレオチド配列同一性を有する(米国およびイスラエルの単離物とは96.5%未満、しかし多くの場合でアミノ酸配列の同一性は99%より高かった)。
【0124】
さらに本発明は本発明の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含んでなる試験キットを提供する。しばしば試験キットは、本明細書に開示するプライマー対のような1もしくは複数のオリゴヌクレオチド対、または本明細書に開示する1もしくは複数のオリゴヌクレオチド組を含む。アッセイキットは、さらに4種のデオキシヌクレオチドホスフェート(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、および有効量の核酸重合酵素を含んでなることができる。重合剤として有用な多数の酵素が当該技術分野では知られている。これらには限定するわけではないが大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI、クレノーフラグメント、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ、逆転写酵素およびサーマス アクアティカス(Thermus aquaticus)のような好熱性細菌に由来するポリメラーゼを含む。後者のポリメラーゼはそれらの高い温度安定性について知られており、そして例えばTaq DNAポリメラーゼIを含む。リボヌクレアーゼHのような他の酵素を、鋳型DNAを再生するためにキットに含むことができる。キットの他の任意選択のさらなる成分には、例えばプローブおよび/またはプライマーを標識するために使用する手段(フルオロホア、消去剤、色原体等のような)、および逆転写、PCRまたはハイブリダイゼーション反応用の適切なバッファーを含む。また通常、キットは方法を行うための使用説明書も含む。
【実施例】
【0125】
実施例1
西ナイルウイルス(WNV)の配列分析:コンセンサス配列
WNVは、約11kbの1本鎖の陽極性RNAゲノムである。GenBankの調査は、米国で確認された単離物から8種のほぼ完全長のWNVゲノム配列の同定をもたらした(GenBank寄託番号:AF196835、AF260967、AF202541、AF206518、AF404753、AG404754、AF404755およびAF404756)。配列のアライメントおよび比較は、Vector Nti Suite7.0(インフォマックス(InforMax)、フレデリック、メリーランド州、米国)を使用して行い、そしてコンセンサス配列はこれら8種の配列の分析に由来した(全WNVコンセンサス配列は図1に列挙する)。現在知られているWNVの米国の単離物は、ヌクレオチドレベルで高い相同性を有し、ほとんどが米国におけるウイルスの最近の「創始者効果」感染の結果らしい。米国の株に対してヨーロッパおよび他のさらに祖先の単離物に関するWNV配列比較は、ヌクレオチドレベルで一層高い多様性を明らかにする。
実施例2
2.1 PCR増幅プライマーの設計:
WNVコンセンサス配列から、8種の完全長の米国WNV単離物に由来する最高に配列が保存された10944bp領域を、PCR増幅プライマーの設計に選択した。この相同性領域を系統的に500bp区画に破壊し、そして各区分中に1対の増幅プライマーがPrimer3PCRプライマーデザインソフトウェア(ホワイトヘッド インスティチュート フォ バイオメディカルリサーチ、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を使用して選択された。Primer3を使用したプライマー設計のためのデフォルト設定は、100〜150bpのアンプリコンについて至適化され、55〜60℃の範囲のプライマーT(融解温度)、およびG/C含量は、二重標識蛍光プローブに基づくアッセイ(“TaqMan”アッセイ)について至適化された(アプライドバイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア州)。
【0126】
WNV増幅用に同定されたプライマー配列は、化学的に合成した。個別の増幅プライマー対の各々は、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR;Brilliant(商標)Plus Single Step QRT−PCRシステム、ストラタジーン(Stratagene)、ラジョラ、カリフォルニア州、米国)を使用して、WNV RNAを増幅する能力についてアッセイした。反応は各31個のWNV増幅プライマー対を、鋳型無しの負のPCR対照と一緒に使用して設定した。RT−PCR反応を完了した後、全50μlの反応容量の5μlを4−20%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に使用して、RT−PCRが成功したかどうかを決定した。予想されるサイズのPCRアンプリコンが、行った31反応の28で観察された。
【0127】
アンプリコンを生成しなかったプライマーを除いたプライマーを表1に示す。
【0128】
【表30】

【0129】
【表31】

【0130】
2.2 WNVの蛍光に基づくPCR検出のためのプローブ設計:
WNVゲノムのコンセンサス配列内で同定された28個の陽性PCR増幅プライマー対の中の6組を、溶液中で低濃度のWNV標的を増幅する能力に基づき、核酸の蛍光検出の開発で考慮するために選択した(表2)。このために、これら6個のWNVアンプリコンの配列は、PrimerQuestsmソフトウェア(インテグレイティッドDNAテクノロジーズ(Integrated DNA Technologies)、コーラルヴィル、アイオワ州、米国)を使用して評価して、WNVアンプリコン内でハイブリダイズする最適な蛍光プローブを同定した。ソフトウェアを行うためのデフォルト設定は、最適なプローブサイズ=30nt;最適なプローブTm=70℃;そして最適なプローブGC%=50であった。プローブの配置は増幅プライマーの最大20ヌクレオチドの3’内となるように優先順位をつけ、そして両鎖を分析して、6個の各WNVアンプリコン内で確認できる1つの最適プライマーを同定した。選択したプローブを表2に示す。
【0131】
5’末端に5−カルボキシフルオレセイン(FAM)を、そして3’末端にブラック ホール 消去剤(Bhqencher;バイオサーチテクノロジーズ(BioSerch Technologies)、ノバト、カリフォルニア州、米国)を含有する蛍光WNVプローブを合成した。6種の各増幅プライマー対/蛍光プローブの組み合わせは(これを表2に示す)、RT−PCR(Brilliant(商標)Plus Single Step QRT−PCRシステム、ストラタジーン、ラジョラ、カリフォルニア州、米国)により、正常ヒト血漿(NHP)中で希釈した標的濃度のWNVの検出について試験した。標的は1:20、1:100、1:200、1:1,000,1:2000および1:10,000に希釈した。6種すべての増幅プライマー対/蛍光プローブの組み合わせは、ヒト血漿中のWNVを検出することができた。
【0132】
【表32】

【0133】
実施例3
3.1 ヒト血漿からWNV核酸単離の至適化:
核酸の単離は、イソチオシアン酸グアニジン溶解/アルコール沈殿法(AmpliScreen(商標)Multiprep Specimen Processing Procedure、ロッシュ ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)、バーゼル、スイス)を使用して既知濃度のWNV RNAでスパイクした正常ヒト血漿で行った。ポリアクリルアミド担体をRNAのイソプロパノール沈殿前に加えた。単離毎に1mL容量の血漿を使用し、そして沈殿した核酸を全容量200μLの溶出バッファーに懸濁した。全単離容量の25%(50μL)を各RT−PCR反応に使用した。
3.2 ヒト血漿からWNVを検出するためのRT−PCR条件の至適化:
販売元の推薦からわずかに修飾したBrilliant(商標)Plus Single Step QRT−PCRシステム(ストラタジーン、ラジョラ、カリフォルニア州、米国)を、核酸の増幅に使用した。ウシ血清アルブミン(BSA)をRT−PCR反応に加えた。リアル−タイムPCRをABI7900HT DNA Detection System(アプライドバイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア州)で行った。使用したRT−PCR熱循環条件は、45℃で30分間;95℃で8分間;次いで95℃で15秒間と55℃で1分間との間を交互に60サイクルであった。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】西ナイルウイルスのコンセンサス配列を示す(配列番号1)。コンセンサス配列は、Vector Nti Suite7.0(インフォマックス、フレデリック、メリーランド州、米国)を使用して、米国で確認された単離物に由来する8種のほぼ完全長の西ナイルウイルスゲノム(GenBank寄託番号:AF196835、AF260967、AF202541、AF206518、AF404753、AG404754、AF404755およびAF404756)の配列アライメントおよび比較に由来した。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)R−N−R、ここで
Nは
【表1】

【表2】

からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドであり;
はNの5’末端に共有結合した図1(配列番号1)に示す西ナイルウイルスコンセンサス配列中におけるNの5’末端の直ぐ上流の該コンセンサス配列の0〜20個の連続した塩基のオリゴヌクレオチド配列であるが、ただしNが該コンセンサス配列に相補的である時、Rは該コンセンサス配列の相補鎖から選択され;そして
はNの3’末端に共有結合した該コンセンサス中におけるNの3’末端の直ぐ下流の該コンセンサス配列の0〜20個の連続した塩基のオリゴヌクレオチド配列であるが、ただしNが該コンセンサス配列に相補的である時、Rは該コンセンサス配列の相補鎖から選択され;
(b)(a)で規定するNの単離されたフラグメント、ここで該フラグメントは10〜19塩基長であり;
(c)R−X−R、ここでXは(a)で規定するNの少なくとも10個の連続した塩基であり、そしてRおよびRは(a)で規定する通りであり、ここでRが存在する時、Rは存在せず、そしてXはXの5’末端の塩基がNの5’末端の塩基と同じとなるように選択され;そしてRが存在する時、Rは存在せず、そしてXはXの3’末端の塩基がNの3’末端の塩基と同じとなるように選択され;
(d)(a)、(b)または(c)のオリゴヌクレオチドと少なくとも80%の配列同一性を有する単離されたオリゴヌクレオチド;または
(e)(a)、(b)、(c)または(d)の完全長相補鎖である単離されたオリゴヌクレオチド、
を含んでなる単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
上記オリゴヌクレオチドが
【表3】

【表4】

からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドを含んでなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
上記オリゴヌクレオチドが
【表5】

【表6】

からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドからなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
上記オリゴヌクレオチドが
【表7】

からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドを含んでなる、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
上記オリゴヌクレオチドが
【表8】

からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドを含んでなる、請求項4に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
上記オリゴヌクレオチドが
【表9】

からなる群から選択されるオリゴヌクレオチドを含んでなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
上記オリゴヌクレオチドが
【表10】

を含んでなる請求項6に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
上記オリゴヌクレオチドが検出可能な標識をさらに含んでなる請求項6に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
上記検出可能な標識が5’末端に結合した蛍光分子である請求項8に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
3’末端に消去剤分子をさらに含んでなる請求項9に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
【表11】

【表12】

【表13】

からなる群から選択される一対の単離されたオリゴヌクレオチド配列。
【請求項12】
上記対が
【表14】

からなる群から選択される、請求項11に記載の一対の単離されたオリゴヌクレオチド配列。
【請求項13】
上記対が
【表15】

である請求項11に記載の一対の単離されたオリゴヌクレオチド配列。
【請求項14】
上記対が
【表16】

である請求項11に記載の一対の単離されたオリゴヌクレオチド配列。
【請求項15】
【表17】

からなる群から選択される1組のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
上記組が
【表18】

【請求項17】
上記組が
【表19】

である請求項15に記載の組。
【請求項18】
試験サンプル中の西ナイルウイルスの検出法であって:
該試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸を増幅させ;そして
増幅した核酸を検出する工程を含んでなり、ここで増幅した核酸の検出が該試験サンプル中の西ナイルウイルスの存在を示し、該方法が西ナイルウイルスの核酸を増幅または検出するために請求項1に記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを使用する上記方法。
【請求項19】
試験サンプル中の西ナイルウイルスの検出法であって:
試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸を、請求項2に記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを使用して増幅させ;そして
増幅した核酸を検出する工程を含んでなり、ここで増幅した核酸の検出が該試験サンプル中の西ナイルウイルスの存在を示す上記方法。
【請求項20】
試験サンプル中の西ナイルウイルスの検出法であって:
該試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸を増幅させ;そして
請求項6に記載したオリゴヌクレオチドを使用して増幅した核酸を検出する工程を含んでなり、ここで増幅した核酸の検出が該試験サンプル中の西ナイルウイルスの存在を示す上記方法。
【請求項21】
試験サンプル中の西ナイルウイルスの検出法であって:
そのようなウイルスを含有する該試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸を、請求項11に記載の一対のオリゴヌクレオチドを使用して増幅させ;そして
増幅した核酸を検出する工程を含んでなり、ここで増幅した核酸の検出が該試験サンプル中の西ナイルウイルスの存在を示す上記方法。
【請求項22】
試験サンプル中の西ナイルウイルスの検出法であって:
該試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸を増幅させ;そして
増幅した核酸を検出する工程を含んでなり、ここで増幅した核酸の検出が該試験サンプル中の西ナイルウイルスの存在を示し、該増幅工程および該検出工程が請求項15に記載の1組を用いて行われる上記方法。
【請求項23】
上記増幅工程および上記検出工程が、
【表20】

のオリゴヌクレオチド組を用いて行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記増幅および上記検出工程が、
【表21】

のオリゴヌクレオチド組を用いて行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
試験サンプル中の西ナイルウイルスの検出法であって、
請求項1に記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを、試験サンプル中の西ナイルウイルスの核酸とハイブリダイズさせ;そして
請求項1に記載の該少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと西ナイルウイルス核酸とのハイブリダイゼーションを検出する、
工程を含んでなる上記方法。
【請求項26】
上記試験サンプルがヒト血漿を含んでなる、請求項18ないし25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
核酸配列を検出するためのプライマーを同定する方法であって、
(d)少なくとも1000塩基長の核酸配列を準備し;
(e)該核酸配列を、該配列の1つの末端から始まる約500塩基長の非重複セグメントに分割し;そして
(f)各セグメントおよび/またはその相補鎖の配列から、各々約15〜25塩基長のフォワードおよびリバースプライマーを選択し、ここでフォワードおよびリバースプライマーは重複配列を持たず、そして約50〜200塩基を有するアンプリコンを生成するように選択される、上記方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法を使用して同定したプライマー。
【請求項29】
図1(配列番号1)に示す配列の約15から約75個の連続した塩基またはその相補鎖を含んでなる単離されたオリゴヌクレオチドであって、該オリゴヌクレオチドが北米またはイスラエル以外からの西ナイルウイルスの単離物よりも、北米またはイスラエルからの西ナイルウイルスの単離物に由来する核酸に大きな親和性で結合する、上記の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
上記オリゴヌクレオチドが、図1(配列番号1)に示す西ナイルウイルスのコンセンサス配列の約15から約50個の連続した塩基またはその相補鎖を含んでなる、請求項29に記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項31】
上記オリゴヌクレオチドが、図1(配列番号1)に示す西ナイルウイルスのコンセンサス配列の約15から約25個の連続した塩基またはその相補鎖を含んでなる請求項29に記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項32】
上記オリゴヌクレオチドが米国またはイスラエル以外からの西ナイルウイルス単離物よりも北米またはイスラエルの西ナイルウイルス単離物に由来する核酸に大きな親和性で結合する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項33】
請求項1に記載の少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含んでなるキット。

【公表番号】特表2007−521022(P2007−521022A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539823(P2006−539823)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037558
【国際公開番号】WO2005/047522
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】