説明

覆工コンクリート、覆工コンクリート形成方法及びトンネル覆工装置

【課題】覆工コンクリートにおけるトンネル延長方向に沿って発生するひび割れを集中させることができる覆工コンクリート及びその形成方法などを提供する。
【解決手段】トンネル空洞部2の内壁面3に形成される覆工コンクリート1において、トンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地50を備えた。また、ひび割れ誘発目地50が覆工コンクリート1の天端部60aに設けられた。また、ひび割れ誘発目地50と交差するように設けられた鉄筋を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工コンクリートにおけるトンネル延長方向に沿って発生するひび割れを集中させることができる覆工コンクリートなどに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド工法により形成されるトンネルにおいてセグメントの内壁面に形成される覆工コンクリートの内壁面にひび割れ誘発目地を形成することが知られている。このひび割れ誘発目地は、覆工コンクリートの内壁面の円周に沿って円形を描くように形成される(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−310099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のひび割れ誘発目地は、覆工コンクリートの内壁面の円周に沿って円形を描くように形成されるので、覆工コンクリートの周方向に沿って発生するひび割れをひび割れ誘発目地に集中させることができるが、覆工コンクリートにおけるトンネル延長方向に沿って発生するひび割れを集中させることはできないという問題点があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、覆工コンクリートにおけるトンネル延長方向に沿って発生するひび割れを集中させることができる覆工コンクリート及びその形成方法などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る覆工コンクリートによれば、トンネル空洞部の内壁面に形成される覆工コンクリートにおいて、トンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地を備えたので、覆工コンクリートのひび割れ誘発目地がトンネル延長方向に沿って発生するひび割れを集中させることができる。
ひび割れ誘発目地が覆工コンクリートの天端部に設けられたので、ひび割れの発生しやすい覆工コンクリートの天端部においてひび割れを集中させることができる。
ひび割れ誘発目地と交差するように設けられた鉄筋を備えたので、ひび割れ誘発目地に集中したひび割れにより分離したコンクリート部分同士のずれを鉄筋で防止できる。
ひび割れ誘発目地が覆工コンクリートにおけるトンネル空洞部の断面径方向の外側に位置する外面に設けられ、覆工コンクリートにおけるトンネル空洞部の断面径方向の内側に位置する内面において上記ひび割れ誘発目地と対向する部位にコンクリート落下防止材を備えたので、ひび割れ誘発目地に集中したひび割れによるコンクリート片の剥離落下をコンクリート落下防止材により防止できる。
本発明に係る覆工コンクリート形成方法によれば、トンネル空洞部の内壁面と対向するように設置されトンネル空洞部の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となる外面を有したセントルの当該外面に、トンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材を設け、当該セントルの外面とトンネル空洞部の内壁面との間の空間により形成されたコンクリート打設空間内にコンクリートを打設することによりトンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートを形成したので、トンネル延長方向に沿って発生するひび割れを集中させる覆工コンクリートを形成できる。
本発明に係る覆工コンクリート形成方法によれば、トンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となるセントルの外面と対向するトンネル空洞部の内壁面に設けられた支保工にトンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材を設け、セントルの外面とトンネル空洞部の内壁面との間の空間により形成されたコンクリート打設空間内にコンクリートを打設することによりトンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートを形成したので、トンネル延長方向に沿って発生するひび割れを集中させる覆工コンクリートを形成できる。
本発明に係るトンネル覆工装置によれば、トンネル空洞部の内壁面と対向するように設置されトンネル空洞部の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となる外面を有したセントルを備え、当該セントルの外面に、トンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材を備えたので、トンネル延長方向に沿って発生するひび割れを集中させる覆工コンクリートを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートの拡大断面図(形態1)。
【図2】ひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートの斜視図(形態1)。
【図3】トンネル空洞部内部に設置されたトンネル覆工装置を示す断面図(形態1)。
【図4】トンネル空洞部内部に設置されたトンネル覆工装置を示す斜視図(形態2)。
【図5】ひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートの拡大断面図(形態2)。
【図6】ひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートの拡大断面図(形態3)。
【図7】ひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートの拡大断面図(形態3)。
【図8】ひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートの拡大断面図(形態4)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1による覆工コンクリート1は、山岳トンネルにおいて、トンネル空洞部2の内壁面3に形成される。そして、覆工コンクリート1は、図2に示すように、トンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地50を備える。ここで、トンネル空洞部2の内壁面3とは、例えば、図外の掘削装置によって地山15を掘削して形成された掘削孔の内壁面、あるいは、当該掘削孔の内壁面に支保工及び防水加工を行った後の内壁面のことを言う。支保工30は、例えば、圧縮空気を用いて掘削孔の内壁面に吹付けた吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保材31などを用いた支保工のことを言う。
【0008】
トンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地50を備えた覆工コンクリート1は、トンネル覆工装置14により形成される。
トンネル覆工装置14は、図3に示すように、トンネル空洞部2を走行可能に構成された架構部4と、セントル5と、セントル支持部6と、ひび割れ誘発目地形成材51とを備える。
【0009】
架構部4は下端に車輪11を備え、この車輪11がトンネル空洞部2の延長方向に沿ってトンネル空洞部2の地面12に設置されたレール13上に滑走可能に設けられたことで、架構部4は図外の駆動手段又は牽引手段によってトンネル空洞部2内をトンネル空洞部2の延長方向に沿って往復移動可能である。
【0010】
セントル5は、上述したトンネル空洞部2の内壁面3と対向するように設置されて当該内壁面3に覆工コンクリート1を形成するための型枠である。セントル5は、鋼板により形成され、トンネル空洞部2の延長方向に沿った方向の長さが例えば10.5mに形成され、トンネル空洞部2の延長方向と直交する断面形状がアーチ形状に形成される。セントル5は、トンネル空洞部2の断面径方向の外側に位置して覆工コンクリート1を形成するための型枠面となる外面9と、トンネル空洞部2の断面径方向の内側に位置する内面10とを有する。トンネル空洞部2の内壁面3とセントル5の外面9(型枠面)との間に形成される空間によりコンクリート打設空間21が形成される。セントル5は、1枚の鋼板により形成されたり、あるいは、図3に示すように複数枚の鋼板により形成される。
【0011】
セントル5は、複数の窓孔22を備える(図4参照)。窓孔22は、セントル5の内面10と外面9とに跨って貫通する貫通孔23により形成される。窓孔22は図外のヒンジにより開閉する開閉蓋24で開閉可能に構成される。当該開閉蓋24を開け、図外のコンクリート圧送管でセントル5の内側からコンクリート打設空間21にコンクリートを打設することで、トンネル空洞部2の内壁面3に覆工コンクリート1が形成される。
【0012】
セントル支持部6は、トンネル空洞部2の内壁面3に沿って対向するようにセントル5を支持するものであり、セントル5が複数枚の鋼板で形成されている場合には、図3に示すように鋼板をトンネル空洞部2の径方向に移動可能に支持するジャッキなどにより形成され、セントルが1枚の鋼板で形成されている場合には、当該鋼板を支持する図外の支持棒などにより形成される。セントル支持部6は、一端部25が架構部4に固定され、他端部26がセントル5の内面10に固定される。よって、トンネル覆工装置14は、セントル5がセントル支持部6を介して架構部4に支持されて、架構部4がトンネル空洞部2内を往復移動することで、セントル5がトンネル空洞部2内をトンネル空洞部2の延長方向に沿って往復移動可能となるように構成される。
【0013】
ひび割れ誘発目地形成材51は、型枠面となるセントル5の外面9と対向するトンネル空洞部2の内壁面3に設けられた支保工30にトンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するように設けられる。この場合の支保工30は、例えば、図外の掘削装置によって地山15を掘削して形成された掘削孔の内壁面3にコンクリートが吹付けられて形成された吹付けコンクリート層とトンネル空洞部2の内側から吹付けコンクリート層及び地山に孔を開けて当該孔内に打ち込まれたロックボルトとで構成された支保工である。当該支保工30に、例えば断面V字状に形成された長尺なひび割れ誘発目地形成材51を取り付ける。この場合、V字の両端部52;52を支保工30に取り付ける。また、複数の鋼製支保材31をトンネル空洞部2の延長方向に沿って所定間隔を隔てて配置する支保工30においては、鋼製支保材31の内面32と吹付けコンクリート層の内面とが面一になるようにした後に、複数の鋼製支保材31の内面32にひび割れ誘発目地形成材51を取り付ければよい。ひび割れ誘発目地形成材51は、例えば、厚さ数ミリの鋼板製のものを用いる。
【0014】
上述した支保工30にトンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材51を設けておき、これら支保工30及びひび割れ誘発目地形成材51の表面に防水シート55を取り付けて防水加工を施し、この防水加工を行った後のトンネル空洞部2の内壁面3とセントル5の外面9との間の空間により形成されたコンクリート打設空間21内にコンクリートを打設することにより、トンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地50を外面56(覆工コンクリート1においてトンネル空洞部2の断面径方向の外側に位置する面)に備えた覆工コンクリート1を形成できる。
【0015】
ひび割れ誘発目地51は、少なくとも、覆工コンクリート1の天端部60aにおける外面56に設ける。
【0016】
実施形態1の覆工コンクリート1によれば、覆工コンクリート1におけるトンネル延長方向に沿って発生するひび割れをひび割れ誘発目地50に集中させることができる。
また、ひび割れ誘発目地50を天端部60aに備えた覆工コンクリート1としたので、ひび割れの発生しやすい覆工コンクリート1の天端部60aにおいてひび割れ誘発目地50にひび割れを集中させることができる。
【0017】
実施形態2
図4に示すように、上記セントル5の外面9に、トンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材51を備えたトンネル覆工装置14を用いて覆工コンクリート1を形成してもよい。
即ち、セントル5の外面9に、トンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材51を設け、上述した防水加工を行った後のトンネル空洞部2の内壁面3とセントル5の外面9との間の空間により形成されたコンクリート打設空間21内にコンクリートを打設することにより、図5に示すように、トンネル空洞部2の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地50を内面57(覆工コンクリート1においてトンネル空洞部2の断面径方向の内側に位置する面)に備えた覆工コンクリート1を形成できる。ひび割れ誘発目地50は、少なくとも、覆工コンクリート1の天端部60bにおける内面57に設ける。
実施形態2の覆工コンクリート1によれば、覆工コンクリート1におけるトンネル延長方向に沿って発生するひび割れをひび割れ誘発目地50に集中させることができる。
また、ひび割れ誘発目地50を天端部60bに備えた覆工コンクリート1としたので、ひび割れの発生しやすい覆工コンクリート1の天端部60bにおいてひび割れ誘発目地50にひび割れを集中させることができる。
【0018】
実施形態3
図6;図7に示すように、ひび割れ誘発目地50と交差するように設けられた鉄筋65を備えた覆工コンクリート1とする。この覆工コンクリート1は、実施形態1又は実施形態2で説明したトンネル覆工装置14、施工方法により形成できる。鉄筋65は、例えば、セントル5に仮止めしたり、図外の吊り金具で鋼製支保工31に吊り下げればよい。
実施形態3の覆工コンクリート1によれば、ひび割れ誘発目地50に集中したひび割れ61で分離したコンクリート部分62;62同士のずれを鉄筋65で防止できる。
【0019】
実施形態4
図8に示すように、ひび割れ誘発目地50が覆工コンクリート1におけるトンネル空洞部2の断面径方向の外側に位置する外面56に設けられ、覆工コンクリート1におけるトンネル空洞部2の断面径方向の内側に位置する内面57において上記ひび割れ誘発目地50と対向する部位にコンクリート落下防止材70を備えた覆工コンクリート1とする。
コンクリート落下防止材70は、覆工コンクリート1の内面57においてトンネル延長方向に沿って延長し、ひび割れ誘発目地50と平行に設けられた溝71内に嵌め込まれて接着剤などにより溝内に固定される合成樹脂製、ゴム製などの長尺材により形成される。
この覆工コンクリート1は、実施形態1で説明したトンネル覆工装置14、施工方法により形成できる。また、コンクリート落下防止材70が嵌め込まれる溝71は、セントル5の外面9にトンネル空洞部2の延長方向に沿って延長する図外の溝形成材を設けておいて形成してもよいし、セントル5で覆工コンクリート1を施工した後、覆工コンクリート1の内面を図外の切削機械で切削して形成してもよい。
実施形態4によれば、ひび割れ誘発目地50に集中したひび割れ61によるコンクリート片の剥離落下をコンクリート落下防止材70により防止できる。
【0020】
尚、本発明の覆工コンクリート1及び形成方法などは、シールド工法により形成されるトンネルにおいてセグメントの内壁面に形成される覆工コンクリートにも適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 覆工コンクリート、2 トンネル空洞部、3 内壁面、5 セントル、
9 セントルの外面、14 トンネル覆工装置、21 コンクリート打設空間、
30 支保工、50 ひび割れ誘発目地、51 ひび割れ誘発目地形成材、
56 覆工コンクリートの外面、60a,60b 天端部、65 鉄筋、
70 コンクリート落下防止材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル空洞部の内壁面に形成される覆工コンクリートにおいて、トンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地を備えたことを特徴とする覆工コンクリート。
【請求項2】
ひび割れ誘発目地が覆工コンクリートの天端部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリート。
【請求項3】
ひび割れ誘発目地と交差するように設けられた鉄筋を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の覆工コンクリート。
【請求項4】
ひび割れ誘発目地が覆工コンクリートにおけるトンネル空洞部の断面径方向の外側に位置する外面に設けられ、覆工コンクリートにおけるトンネル空洞部の断面径方向の内側に位置する内面において前記ひび割れ誘発目地と対向する部位にコンクリート落下防止材を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の覆工コンクリート。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の覆工コンクリートを形成するための覆工コンクリート形成方法であって、トンネル空洞部の内壁面と対向するように設置されトンネル空洞部の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となる外面を有したセントルの当該外面に、トンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材を設け、当該セントルの外面とトンネル空洞部の内壁面との間の空間により形成されたコンクリート打設空間内にコンクリートを打設することによりトンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートを形成したことを特徴とする覆工コンクリート形成方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の覆工コンクリートを形成するための覆工コンクリート形成方法であって、トンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となるセントルの外面と対向するトンネル空洞部の内壁面に設けられた支保工にトンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材を設け、セントルの外面とトンネル空洞部の内壁面との間の空間により形成されたコンクリート打設空間内にコンクリートを打設することによりトンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地を備えた覆工コンクリートを形成したことを特徴とする覆工コンクリート形成方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の覆工コンクリートを形成するためのトンネル覆工装置であって、トンネル空洞部の内壁面と対向するように設置されトンネル空洞部の断面径方向の外側に位置してトンネルの覆工コンクリートを形成するための型枠面となる外面を有したセントルを備え、当該セントルの外面に、トンネル空洞部の延長方向に沿って延長するひび割れ誘発目地形成材を備えたことを特徴とするトンネル覆工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−84909(P2011−84909A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237591(P2009−237591)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】