覆工コンクリートの養生方法、セントル台車および養生システム
【課題】工期を短縮でき、ひび割れの発生を防止できる覆工コンクリートの養生方法等を提供する。
【解決手段】セントル型枠15の前部、後部にそれぞれ前方防風シート21a、後方防風シート21bを有するセントル台車11と、養生パネル27の後部に断熱シート29を有する断熱養生台車23とを含む養生システム2を用いる。セントル型枠15には断熱層が設けられ、トンネル3の区間nから前方の区間n+1へのセントル台車11の移動時には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面を囲んで、また、区間n−1から前方の区間nへの断熱養生台車23の移動時には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面を囲んで、覆工コンクリート7nの養生をそれぞれ行なう。
【解決手段】セントル型枠15の前部、後部にそれぞれ前方防風シート21a、後方防風シート21bを有するセントル台車11と、養生パネル27の後部に断熱シート29を有する断熱養生台車23とを含む養生システム2を用いる。セントル型枠15には断熱層が設けられ、トンネル3の区間nから前方の区間n+1へのセントル台車11の移動時には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面を囲んで、また、区間n−1から前方の区間nへの断熱養生台車23の移動時には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面を囲んで、覆工コンクリート7nの養生をそれぞれ行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工コンクリートの養生方法、セントル台車および養生システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する際には、地山の掘削後、内周面に吹付けコンクリートを施工し、型枠を設けて吹付けコンクリートの表面に覆工コンクリートを打設する。その後、覆工コンクリートの養生を行う。
【0003】
覆工コンクリートの養生としては、例えば、セントル台車等による移動式型枠を用いてコンクリートの打設を行った後、移動式型枠に後続する養生装置を用いて養生する場合(例えば、特許文献1参照)や、セントル台車に設けた型枠を用いて、コンクリートの打設および養生を行なう場合(例えば、特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−231517号公報
【特許文献2】特開2007−169982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、移動式型枠に後続する養生装置により養生を行なう場合、打設し型枠を取り外した直後の覆工コンクリート表面が温度の低いトンネル内の外気に触れることになり、コンクリート表面温度が急速に低下し、ひび割れが発生する可能性がある。コンクリートの養生は、その表面温度を高く保ち、かつ温度変化を緩やかなものとすることで促進され、ひび割れを確実に防止し養生後のコンクリートが高品質なものとなる。
一方で、コンクリートの打設に用いた移動式型枠を用いて養生を行う場合、十分な期間、養生区間にセントル台車を存置する必要があるため、工期が長くなる問題点があった。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、工期を短縮でき、ひび割れの発生を防止できる覆工コンクリートの養生方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートとを有するセントル台車を用い、トンネルの長軸方向における区間nに配置された前記セントル台車の前記セントル型枠を型枠位置にセットして前記区間nでトンネルの覆工コンクリートを打設する工程(a)と、前記型枠位置にセットされた前記セントル型枠を用いて前記区間nの覆工コンクリートを養生する工程(b)と、前記区間nの前方の区間n+1に前記セントル台車を移動する工程(c)と、を具備し、前記工程(c)では、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで前記区間nの覆工コンクリートを養生することを特徴とする覆工コンクリートの養生方法である。
【0008】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側には、断熱層が形成されることが望ましい。断熱層は、例えば、エアキャップ、発泡ウレタン材等の断熱材を用いて形成される。
【0009】
第1の発明では、必要に応じて、第2の移動架台と、前記第2の移動架台に支持された養生パネルと、前記養生パネルの後部に設けられた第3のシートとを有する養生台車が更に用いられる。この場合、前記工程(c)の後に、前記区間nの後方の区間n−1から前記区間nに前記養生台車を移動する工程(d)と、前記区間nに配置された前記養生台車の前記養生パネルを養生位置にセットして前記区間nの覆工コンクリートを養生する工程(e)と、を更に含み、前記工程(d)では、前記第1のシート、前記第3のシート、前記養生パネルを少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで前記区間nの覆工コンクリートを養生する。
【0010】
第1の発明では、必要に応じて、前記第1のシートを支持し、前記トンネルの長軸方向に伸縮するシート台車が更に用いられる。この場合、前記工程(c)で、前記シート台車を伸展する。
【0011】
第1の発明では、覆工コンクリートの養生初期では打設に用いたセントル型枠を用いて養生を行なうとともに、区間nから前方の区間n+1にセントル台車を移動する際、少なくとも、セントル型枠の後部に設けられた第1のシート、区間nの前端部またはその前方でトンネルの内空をトンネル内周面とセントル型枠との間で隔てる第2のシート、および脱型したセントル型枠により区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで、区間nの覆工コンクリートの養生状態を維持する。セントル台車の移動中にも、第1のシート等を用いて覆工コンクリートを囲んでトンネル内の空気と隔離するので、低い温度の外気に触れることがなく、養生状態が維持される。従って、区間nにおけるセントル台車の存置期間を短縮し、工期を短縮することができる。また、セントル型枠には断熱層を設けることにより、養生中のコンクリートの表面温度を高く保つとともにその温度変化が小さくなり、より確実にひび割れの発生が防止され、コンクリートの品質をより高めることができる。また、セントル台車の移動後、セントル台車に後続する養生台車の養生パネルにより区間nの覆工コンクリートの養生を行なうことで、セントル台車を用いて区間n+1での覆工コンクリートの打設等を行なう間にも区間nの覆工コンクリートの養生を行なうことができるので、確実な養生を可能としつつ工期が短縮される。養生台車の移動時には、区間nの覆工コンクリートは、少なくとも、第1のシート、養生パネルの後方に設けられた第3のシート、養生パネルにより表面を囲んで養生状態が維持される。また、上記のシート台車を用いることで、セントル台車、または養生台車の移動時のシートの伸縮がスムーズになる。
【0012】
第2の発明は、第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートと、を有するセントル台車であって、前記セントル型枠を型枠位置にセットしトンネルの長軸方向における区間nで打設したトンネルの覆工コンクリートの養生を前記型枠位置にセットされたセントル型枠を用いて行うとともに、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行なうことを特徴とするセントル台車である。
【0013】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側には、断熱層が形成されることが望ましい。
【0014】
第2の発明のセントル台車を用いれば、覆工コンクリートの養生初期では打設に用いたセントル型枠を用いて養生を行なうとともに、区間nから前方の区間n+1にセントル台車を移動する際、少なくとも、セントル型枠の後部に設けられた第1のシート、区間nの前端部またはその前方でトンネルの内空をトンネル内周面とセントル型枠との間で隔てる第2のシート、および脱型したセントル型枠により区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで、区間nの覆工コンクリートの養生状態を維持する。セントル台車の移動中にも、第1のシート等を用いて覆工コンクリートを囲んでトンネル内の空気と隔離するので、低い温度の外気に触れることがなく、養生状態が維持される。従って、区間nにおけるセントル台車の存置期間を短縮し、工期を短縮することができる。また、セントル型枠には断熱層を設けることにより、養生中のコンクリートの表面温度を高く保つとともにその温度変化が小さくなり、より確実にひび割れの発生が防止され、コンクリートの品質をより高めることができる。
【0015】
第3の発明は、第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートと、を有するセントル台車と、第2の移動架台と、前記第2の移動架台に支持された養生パネルと、前記養生パネルの後部に設けられた第3のシートと、を有する養生台車と、を含む養生システムであって、前記セントル型枠を型枠位置にセットしトンネルの長軸方向における区間nで打設したトンネルの覆工コンクリートの養生を前記型枠位置にセットされたセントル型枠を用いて行うとともに、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行ない、前記セントル台車が前記区間n+1に移動した後、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記区間nの後方の区間n−1から前記区間nに移動して前記区間nに配置された前記養生台車の前記養生パネルを養生位置にセットして行うとともに、前記区間n−1から前記区間nに前記養生台車が移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記第3のシート、前記養生パネルを少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行なうことを特徴とする養生システムである。
【0016】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側には、断熱層が形成されることが望ましい。
【0017】
第3の発明の養生システムは、必要に応じて、前記第1のシートを支持し、前記トンネルの長軸方向に伸縮するシート台車を更に含む。この場合、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記シート台車を伸展する。
【0018】
第3の発明の養生システムを用いれば、覆工コンクリートの養生初期では打設に用いたセントル型枠を用いて養生を行なうとともに、区間nから前方の区間n+1にセントル台車を移動する際、少なくとも、セントル型枠の後部に設けられた第1のシート、区間nの前端部またはその前方でトンネルの内空をトンネル内周面とセントル型枠との間で隔てる第2のシート、および脱型したセントル型枠により区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで、区間nの覆工コンクリートの養生状態を維持する。セントル台車の移動中にも、第1のシート等を用いて覆工コンクリートを囲んでトンネル内の空気と隔離するので、低い温度の外気に触れることがなく、養生状態が維持される。また、セントル台車の移動後、セントル台車に後続する養生台車の養生パネルにより区間nの覆工コンクリートの養生を行なうことで、セントル台車を用いて区間n+1での覆工コンクリートの打設等を行なう間にも区間nの覆工コンクリートの養生を行なうことができるので、確実な養生を可能としつつ工期が短縮される。養生台車の移動時には、区間nの覆工コンクリートは、少なくとも、第1のシート、養生パネルの後方に設けられた第3のシート、養生パネルにより表面を囲んで養生状態が維持される。また、セントル型枠に断熱層を設けることにより、養生中のコンクリートの表面温度を高く保つとともにその温度変化が小さくなり、より確実にひび割れの発生が防止され、コンクリートの品質をより高めることができる。また、上記のシート台車を用いることで、セントル台車、または養生台車の移動時のシートの伸縮がスムーズになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、工期を短縮でき、ひび割れの発生を防止できる覆工コンクリートの養生方法、セントル台車および養生システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】養生システム2の概要を示す図
【図2】覆工コンクリート7nを打設する工程を示す図
【図3】セントル型枠15により覆工コンクリート7nを養生する工程を示す図
【図4】セントル型枠15を脱型する工程を示す図
【図5】セントル台車11を移動する工程を示す図
【図6】養生パネル27を脱型する工程を示す図
【図7】断熱養生台車23を移動する工程を示す図
【図8】養生パネル27により覆工コンクリート7nを養生する工程を示す図
【図9】セントル型枠15の例を示す図
【図10】覆工コンクリートの養生開始後の経過時間と温度およびひび割れ指数との関係を示す図
【図11】養生システム77の概要を示す図
【図12】シート台車69を伸展させつつ、セントル台車11aを区間n+1に移動する工程を示す図
【図13】断熱養生台車23を区間nに移動する工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、養生システム2の概要を示す図である。図1の(a)図は、養生システム2のトンネル長軸方向の断面図、図1の(b)図は、養生システム2のトンネル周方向の断面図である。図1の(a)図は、図1の(b)図に示す矢印B−Bによる断面図である。図1の(b)図は、図1の(a)図に示す矢印A−Aによる断面図である。
【0022】
図1に示すように、養生システム2は、セントル台車11、断熱養生台車23を含む。セントル台車11、断熱養生台車23は、トンネル3の内空に設置され、トンネル3のインバートコンクリート9上を走行する。
【0023】
セントル台車11は、第1の移動架台13、セントル型枠15、前方防風シート21a、後方防風シート21b等で構成される。
【0024】
セントル型枠15は、移動架台13に支持される。セントル型枠15は、トンネル3の覆工コンクリート7の内周面に対応する形状である。セントル型枠15は、覆工コンクリート7の打設および養生に用いられる。セントル型枠15は、移動架台13のジャッキ(図示せず)等により、型枠位置(養生位置)と脱型位置とに移動可能である。セントル型枠15は、トンネル内空からトンネル内周面に向かう方向において外側に位置する型枠板より内側に、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性を有する断熱層が形成される。断熱層により養生時の覆工コンクリート7の表面温度を高く保つとともにその温度変化を小さくし、ひび割れを確実に防いでコンクリートの品質を高めることが可能である。
【0025】
図9は、セントル型枠15の例を示す図である。図9の(a)〜(d)図は、セントル型枠15のトンネル周方向の断面図の一部を示す。図9に示すように、セントル型枠15は、トンネル内周面に対応する形状の外側の型枠板43と内側の内側板44との間に、セントル前後方向の部材であるH型鋼47が配置される。
【0026】
断熱層は型枠板43より内側に配置されるが、その態様は種々考えられる。
例えば、図9の(a)図に示す例では、型枠板43とH型鋼47のフランジとの間に、断熱材45が設けられる。断熱材45は、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性を有するエアキャップ、発泡ウレタン等の部材であり、セントル型枠15に断熱層を形成する。
図9の(b)図に示す例では、H型鋼47のフランジと内側板44との間に、断熱材45が設けられる。
図9の(c)図に示す例では、型枠板43と内側板44との間で、隣接するH型鋼47同士の間に、断熱材45が設けられる。
この他、H型鋼47のトンネル周方向の断面形状に沿って断熱材45を配置するなどしてもよい。
【0027】
また、上記の断熱層にかえて、型枠板43より内側の部分を加熱してもよい。これによっても、養生時の覆工コンクリート7の表面温度を高く保つとともにその温度変化を小さくすることができ、断熱層を設けた場合と同様の効果が得られる。
図9の(d)図は、型枠板43の内側を加熱する例である。図9の(d)図に示すセントル型枠15dでは、型枠板43と内側板44との間に、セントル前後方向部材であるH型鋼47dが配置される。H型鋼47dは、ウェブに孔53を有する。セントル型枠15d内の空間はH型鋼47dの孔53等により連通しており、覆工コンクリート7の養生時には外部のポンプ55等から高温の気体等を送り込むことにより、セントル型枠15dの内部が加熱される。セントル型枠15dの内部等に温度測定器などを設けつつ、型枠内部の温度に応じて送り込む気体等の温度を変化させることにより、内部空間の温度制御を行うことが可能である。
【0028】
図1によるセントル台車11の説明に戻る。セントル型枠15の後部には、第1のシートである後方防風シート21bが設けられる。セントル型枠15の前部には、第2のシートである前方防風シート21aが設けられる。
【0029】
前方防風シート21aは、一方の端部が、セントル型枠15の前部、例えばセントル型枠15の前端部17に取り付けられる。後方防風シート21bは、一方の端部が、セントル型枠15の後部、例えばセントル型枠15の後端部19に取り付けられる。前方防風シート21a、後方防風シート21bは、例えば折り畳み、引き伸ばし可能な蛇腹状など、伸縮可能に構成される、トンネル3やセントル型枠15等の周方向の形状に応じたアーチ状のシート材である。伸縮を妨げない限りにおいて、シート材に適当な強度を与えるため、針金、ワイヤなどによる補強材を設けてもよい。また、前方防風シート21a、後方防風シート21bは、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性、気密性を有する素材、構造を適宜用いることができる。
【0030】
断熱養生台車23は、第2の移動架台25、養生パネル27、断熱シート29等で構成される。
【0031】
養生パネル27は、移動架台25に支持される。養生パネル27は、トンネル3の覆工コンクリート7の内周面に対応する形状である。養生パネル27は覆工コンクリート7の養生に用いられ、このために適当な断熱性を有する。養生パネル27は、移動架台25のジャッキ28により、養生位置と脱型位置とに移動可能である。
【0032】
断熱シート29は、養生パネル27の後部に設けられた第3のシートであり、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性、気密性を有する素材、構造が適宜用いられる。断熱シート29は、一方の端部が、養生パネル27の後部、例えば養生パネル27の後端部35に取り付けられる。
【0033】
トンネル3は、地山1を掘削し、内周面に吹付コンクリート5を、底部にインバートコンクリート9を施工した後、覆工コンクリート7を区間毎に順次打設・養生して構築される。以下に、養生システム2を用いた、トンネル3の覆工コンクリート7の打設・養生方法について説明する。
【0034】
図1は、トンネル3の長軸方向における区間nの覆工コンクリート7nの打設準備をする工程を示す。図1に示す工程では、セントル台車11を区間nの内空に配置する。そして、区間nで覆工コンクリートを打設する位置に鉄筋を組み立てる。
【0035】
図1に示す工程では、断熱養生台車23は、トンネル3の長軸方向において区間nに対して掘削方向の後方(図において右側)に位置する区間n−1に配置される。断熱養生台車23は、養生パネル27を養生位置にセットして、打設済の区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)を断熱養生している。
【0036】
次に、区間nにおいて覆工コンクリートを打設する。この際、セントル型枠15を型枠位置にセットするため、セントル型枠15をトンネル内空からトンネル内周面に向かう方向(図1に示す矢印C)に移動させる。
【0037】
図2は、区間nの覆工コンクリート7nを打設する工程を示す図である。図2は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図を示す。図2に示す工程では、区間nの覆工コンクリート7nの打設位置の前端部の前方に妻部型枠33を設置し、吹付コンクリート5とセントル型枠15との間に覆工コンクリート7nを打設する。
【0038】
図3は、セントル型枠15により覆工コンクリート7nを養生する工程を示す図である。図3は、セントル型枠15付近の拡大断面図である。図3に示す工程では、セントル型枠15を型枠位置(養生位置)にセットした状態で覆工コンクリート7nを所定期間(例えば3日間)養生する。また、前方防風シート21aの(セントル型枠15に取り付けられていない)他方の端部37aを覆工コンクリート7nの前端部41に取り付け、後方防風シート21bの(セントル型枠15に取り付けられていない)他方の端部37bを養生パネル27の前端部39に取り付ける。
【0039】
次に、セントル台車11を、トンネル3の長軸方向において区間nに対して掘削方向の前方(図において左側)に位置する区間n+1に移動する。セントル台車11の移動の際には、まずセントル型枠15を脱型する。この際、セントル型枠15を脱型位置にセットするため、セントル型枠15をトンネル内周面からトンネル内空に向かう方向(図3に示す矢印D)に移動させる。
【0040】
図4は、セントル型枠15の脱型を示す図である。図4の(a)図は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図、図4の(b)図は、セントル型枠15付近の拡大断面図である。伸縮可能に構成されるシート材である前方防風シート21a、後方防風シート21bは、端部37a、端部37bがそれぞれ覆工コンクリート7nの前端部41、養生パネル27の前端部39に取り付けられているため、セントル型枠15の脱型に伴い伸展する。即ち、前方防風シート21aは、区間nの前端部でトンネル3の内空をトンネル内周面(覆工コンクリート7n)とセントル型枠15との間で隔てる。図に示すように、セントル型枠15の脱型時には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。
【0041】
次に、セントル台車11をトンネル3の前方の区間n+1に向けて(図4の矢印Eで示す方向)移動させ、トンネル3の区間n+1の内空にセントル台車11を配置する。
【0042】
図5は、セントル台車11の移動を示す図である。図5は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。セントル台車11の移動時でも、伸縮可能に構成されるシート材である前方防風シート21a、後方防風シート21bは、セントル台車11の移動に伴って伸展する。即ち、前方防風シート21aは、区間nの前端部またはその前方でトンネル3の内空をトンネル内周面(覆工コンクリート7n)とセントル型枠15との間で隔てる。図に示すように、セントル台車11の移動時にも、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面(内周面)を囲んで、覆工コンクリート7nを養生する。妻部型枠33は、区間n+1で覆工コンクリートを打設するまでの、適切な時期に撤去する。
【0043】
なお、図2から図5に示す工程において、区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)は、図1に示す工程に引き続き、断熱養生台車23の養生パネル27により断熱養生される。
【0044】
次に、断熱養生台車23を区間nに移動する。断熱養生台車23の移動の際には、まず養生パネル27の脱型を行なう。この際、養生パネル27を脱型位置にセットするため、養生パネル27をトンネル内周面からトンネル内空に向かう方向(図5に示す矢印F)に移動させる。
【0045】
図6は、養生パネル27の脱型を示す図である。図6は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。養生パネル27の脱型に際しては、断熱シート29の(養生パネル27に取り付けられない)他方の端部を区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)の後端部あるいはその後方に密着させる、あるいは取り付ける。これにより、養生パネル27の脱型時、断熱シート29を用いて養生パネル27と覆工コンクリート7との間を塞ぐ。このための断熱シート29は既知のもの、例えば気体により膨張し覆工コンクリート7と密着するバルーンシートなどを用いることも可能であるし、前方防風シート21aのような伸縮可能なシート材の両端部を養生パネル27と覆工コンクリート7に取り付けて用いるものであってもよい。図に示すように、養生パネル27の脱型時には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。なお、この際、さらに後方防風シート21bを区間nの覆工コンクリート7nの前端部に取り付けるなどすれば、養生パネル27の脱型時あるいは後述する断熱養生台車25の区間nへの移動時において、後方防風シート21b、断熱シート29、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)を囲み、覆工コンクリート7nを養生することも可能である。
【0046】
次に、断熱養生台車23を区間nに向けて(図6の矢印Gで示す方向)に移動させ、トンネル3の区間nの内空に断熱養生台車23を配置する。
【0047】
図7は、断熱養生台車23の移動を示す図である。図7は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。断熱養生台車23の移動時には、伸縮可能に構成されるシート材である後方防風シート21bは、端部37bが養生パネル27の前端部39に取り付けられているため、断熱養生台車23の移動に伴って縮んでゆく。前述の断熱シート29は、断熱養生台車23の移動中も、覆工コンクリート7(n−1)と養生パネル27の間を塞いでいる。従って、断熱養生台車23の移動時にも、前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。
【0048】
図4−7に示すセントル台車11と断熱養生台車23の移動の工程は例えば3時間程度で行なわれ、この間上記のように前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面を囲んで養生し、あるいは前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面を囲んで養生する。当該囲まれた空間はトンネル3内の他の空間と隔離され、温度の低いトンネル3内の空気が流入することがほぼ無く、養生状態が維持される。
【0049】
トンネル3の区間nに断熱養生台車23を配置した後、養生パネル27をトンネル内空からトンネル内周面に向けて(図7の矢印Hで示す方向)移動させ、養生パネル27を区間nの覆工コンクリート7nに対する養生位置にセットし、養生パネル27により区間nの覆工コンクリート7nに対する養生を所定期間(例えばセントル台車11と断熱養生台車23の移動を含め4日間)行なう。
【0050】
図8は、養生パネル27により覆工コンクリート7nを養生する工程を示す図である。図8は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。図8に示す工程では、断熱シート29の上記他方の端部を、区間nの覆工コンクリート7nの後端部あるいはその後方から取り外す。
【0051】
図8に示す工程では、さらに、区間n+1での覆工コンクリート打設の準備として、前方防風シート21aの端部37aを覆工コンクリート7nの前端部41から取り外し、後方防風シート21bの端部37bを養生パネル27の前端部39から取り外す。
【0052】
図1から図8に示す各工程を繰り返すことにより、トンネル3の全長の覆工コンクリート7が打設・養生される。
【0053】
図10は、ある区間の覆工コンクリートのセントル型枠による養生開始後の経過時間と覆工コンクリートの表面温度およびひび割れ指数との関係を示す模式的な図である。図10は、断熱材なしのセントル型枠のみで7日間覆工コンクリートの養生を行なった場合と、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を上記の方法で用いて7日間(セントル型枠15による養生3日間+セントル台車11と断熱養生台車23の移動時(3時間)の養生および養生パネル27による養生4日間)覆工コンクリートの養生を行なった場合における、温度およびひび割れ指数の推移のシミュレーション結果を模式的に示す。
【0054】
図10の(a)図は、養生開始後の経過時間と温度との関係を示す。実線57は、断熱材なしのセントル型枠を用いた場合の推移を、点線59は、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合の推移を模式的に示す。
図10の(b)図は、養生開始後の経過時間とひび割れ指数との関係を示す。ひび割れ指数については社団法人土木学会のコンクリート標準示方書等に示されており詳細な説明は省略するが、ひび割れ指数が大きいほどひび割れしにくいことを表す。実線65は、断熱材なしのセントル型枠を用いた場合の推移を、点線67は、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合の推移を模式的に示す。
【0055】
図10の(a)図に示すように、養生中の覆工コンクリートの表面温度は断熱材なしのセントル型枠を用いた場合(実線57)より、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合(点線59)の方が大きくなる。また、その温度変化は、断熱材なしのセントル型枠を用いた場合(実線57)の温度変化61より、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合(点線59)の温度変化63の方が小さくなる。これは、養生システム2がセントル型枠15に断熱層を有していること、およびセントル台車11や断熱養生台車23の移動時にもこの養生状態が維持されていることによる。
この温度の推移に伴い、図10の(b)図に示すように、ひび割れ指数は、断熱材なしのセントル型枠を用いた場合(実線65)より、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合(点線67)の方が高く保たれ、ひび割れしにくい結果となる。養生時の覆工コンクリートの表面温度が高く保たれるとともに、その温度変化が小さいためである。
【0056】
第1の実施の形態では、移動架台13に支持されたセントル型枠15、セントル型枠15の前部に設けられた前方防風シート21aおよびセントル型枠15の後部に設けられた後方防風シート21bを有するセントル台車11と、移動架台25に支持された養生パネル27、養生パネル27の後部に設けられた断熱シート29を有する断熱養生台車23とを含む養生システム2を用いる。断熱層を設けたセントル型枠15、および養生パネル27により覆工コンクリート7の断熱養生を行なうとともに、セントル型枠15を脱型し、区間nから前方の区間n+1にセントル台車11を移動する際には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面が囲まれ、覆工コンクリート7nの養生が行なわれる。また、養生パネル27を脱型し、区間n−1から前方の区間nに断熱養生台車23を移動する際には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面が囲まれ、覆工コンクリート7nの養生が行なわれる。
【0057】
第1の実施の形態によれば、セントル台車11や断熱養生台車23の移動を行なう際に覆工コンクリート7が少なくとも前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15に囲まれ、あるいは、少なくとも前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27に囲まれる。当該囲まれた空間はトンネル3内の他の空間と隔離され、温度の低いトンネル3内の空気が流入することがほぼ無く、養生状態が維持される。セントル台車11や断熱養生台車23を移動しつつ上記のような養生状態を維持することができるので、トンネル3の工期を短縮することができる。
【0058】
また、断熱層を有するセントル型枠15を用いることにより、セントル型枠15による養生時、さらにはセントル台車11の移動時にも覆工コンクリート7の表面温度が高く保たれるとともに、温度変化が小さくひび割れしにくい条件で覆工コンクリート7を養生することができる。そのため、覆工コンクリート7のひび割れの発生をより確実に防止でき、覆工コンクリート7の品質を高めることができる。断熱層は必要に応じて設けられる。前述したように、断熱層にかえてセントル型枠15の型枠板43より内側を加熱してもよい。
【0059】
なお、前方防風シート21aや後方防風シート21b、あるいは断熱シート29は、セントル台車11や断熱養生台車23の移動時に区間nの覆工コンクリート7nを囲むことができるように設ければよく、この限りにおいてこれらの取り付け位置等は第1の実施の形態に示したものに限られることはない。但し、第1の実施形態のように取り付け、取り外し等を行なうことはその容易さの点で有利である。
【0060】
例えば第1の実施の形態では、セントル台車11と断熱養生台車23とを含む養生システム2を用い、区間nから前方の区間n+1にセントル台車11を移動する際に、後方防風シート21bの端部37bを養生パネル27の前端部39に取り付けたが、後方防風シート21bの端部37bを覆工コンクリート7nの後端部あるいはその後方の覆工コンクリート7に取り付けてもよい。
【0061】
この場合にも、区間nから前方の区間n+1にセントル台車11を移動する際に、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15により区間nの覆工コンクリート7nの表面を囲んで覆工コンクリート7nの養生を行なうことができ、第1の実施の形態と同様にセントル台車11の移動時にも養生状態が維持され、トンネル3の工期を短縮できる。この場合、断熱養生台車23をセントル台車11と独立に移動させることもできる。あるいは断熱養生台車23を省略し、セントル台車11のみで覆工コンクリート7の打設および養生を行うことも可能である。
また、セントル台車11と、断熱養生台車23以外の養生装置とを含む養生システムにより覆工コンクリート7の打設および養生を行うことも可能である。
【0062】
次に、第2の実施の形態について説明する。図11は、養生システム77の概要を示す図である。図11は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。
【0063】
図11に示すように、養生システム77は、セントル台車11a、シート台車69、断熱養生台車23を含む。セントル台車11a、シート台車69、断熱養生台車23は、トンネル3の内空に設置され、トンネル3のインバートコンクリート上を走行する。なお、第1の実施形態で説明したものと略同様の機能構成を有する要素については明細書等で同じ番号を付し、その説明を一部省略する。
【0064】
セントル台車11aは、第1の実施の形態のセントル台車11とほぼ同様の構成であるが、前方防風シート21aおよび後方防風シート21b(図1等)が設けられない。代わりに、セントル台車11aでは、セントル型枠15の後部に、第1のシートである後方防風シート71bが設けられる。また、第4のシートである断熱シート71cが、セントル型枠15の前部(前端部)に設けられる。なお、第2のシートである前方防風シート71aは、区間nの前端部でトンネル3の内空をトンネル内周面(覆工コンクリート7n)とセントル型枠15との間で隔てている。
【0065】
前方防風シート71aは、例えば、一方の端部が、区間nの前端部でトンネル3(覆工コンクリート7n)の内周に沿って設置され、気体により膨張しセントル型枠15と密着するバルーンシートなどを用いることができる。
後方防風シート71bは、一方の端部が、セントル型枠15の後部、例えばセントル型枠15の後端部19に取り付けられる。後方防風シート71bは、後述するシート台車69で支持され、トンネル長軸方向に伸縮可能に構成される。
断熱シート71cは、断熱シート29と同様、例えば気体により膨張し覆工コンクリートと密着するバルーンシートなどを用いることも可能であるし、伸縮可能なシート材の両端部を養生パネル27と覆工コンクリート7あるいはその前方の吹き付けコンクリート5に取り付けて用いるものであってもよい。
また、前方防風シート71a、後方防風シート71b、断熱シート71cは、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性、気密性を有する素材、構造を適宜用いることができる。
【0066】
図12は、シート台車69を伸展した状態を示す図である。図12は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。図11、図12に示すように、シート台車69は、セントル台車11の後方に配置される。
【0067】
シート台車69は、複数の支持架台79、伸縮部81等で構成される。支持架台79は、トンネル3の覆工コンクリート7の内周面に対応する形状である。複数の支持架台79は、トンネル長軸方向に並べて配置される。セントル型枠15の後部に設けられた後方防風シート71bは、後部が断熱養生台車23の養生パネル27に取り付けられるとともに、内側面73が複数の支持架台79によって支持される。支持架台79に対応する位置では、後方防風シート71bがトンネル3の内周面(覆工コンクリート7)に接する。トンネル長軸方向に隣り合う支持架台79は伸縮部81で連結される。シート台車69は、伸縮部81によって支持架台79同士の間隔を調整することにより、トンネル長軸方向に伸縮可能である。
【0068】
断熱養生台車23は、シート台車69の後方に配置される。断熱養生台車23は、第1の実施の形態と同様の構成である。
【0069】
上述したように、トンネル3は、地山1を掘削し、内周面に吹付コンクリート5を、底部にインバートコンクリートを施工した後、覆工コンクリート7を区間毎に順次打設・養生して構築される。以下に、養生システム77を用いた、トンネル3の覆工コンクリート7の打設・養生方法について説明する。
【0070】
区間nの覆工コンクリート7nを打設する際には、第1の実施形態と同様、図1、あるいは図11に示すように、セントル台車11aを区間nの内空に配置する。そして、区間nで覆工コンクリートを打設する位置に鉄筋を組み立てる。図11では、シート台車69および断熱養生台車23は、トンネル3の長軸方向において区間nに対して掘削方向の後方(図において右側)に位置する区間n−1に配置されており、後方防風シート71bと養生パネル27による区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)の断熱養生が行なわれている。
【0071】
次に、第1の実施形態と同様、セントル型枠15を型枠位置にセットし、区間nの覆工コンクリート7nの打設位置の前端部の前方に妻部型枠33を設置し、吹付コンクリート5とセントル型枠15との間に覆工コンクリート7nを打設する。そして、セントル型枠15を型枠位置(養生位置)にセットした状態で覆工コンクリート7nを所定期間(例えば3日間)養生した後、セントル型枠15をトンネル内周面からトンネル内空に向かう方向(図11に示す矢印I)に移動させる。この状態が図11である。後方防風シート71bは、セントル型枠15の脱型に伴い伸展する。また、前方防風シート71aが、区間nの前端部でトンネル3の内空をトンネル内周面(覆工コンクリート7n)とセントル型枠15との間で隔てる。なお、図11では断熱シート71cも区間nの前端部またはその前方でトンネル3の内空をトンネル内周面とセントル型枠15との間で隔てるように配置されている。
【0072】
図11に示すように、セントル型枠15の脱型時には、前方防風シート71a、後方防風シート71b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、密封空間75で覆工コンクリート7nが養生される。
【0073】
図12は、シート台車69を伸展しつつセントル台車11aを移動させる工程を示す。図12に示す工程では、セントル台車11aをトンネル3の前方の区間n+1に向けて(図12の矢印Jで示す方向)移動させる。また、セントル台車11aの移動に伴い、シート台車69をトンネル長軸方向に伸展させる。後方防風シート71bは、シート台車69の伸展に伴って、支持架台79に支持された状態でトンネル長軸方向に伸展する。シート台車69の前端部は区間nの前端部に達し、このとき後方防風シート71bが区間nの前端部でトンネル3の内空(覆工コンクリート7n)に接する。なお、前方防風シート71aはそのまま、区間nの前端部でトンネル3の内空をトンネル内周面とセントル型枠15との間で隔てている。
【0074】
図12に示すように、セントル台車11aの移動時にも、前方防風シート71a、後方防風シート71b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面(内周面)を囲んで、密封空間75で区間nの覆工コンクリート7nを養生する。覆工コンクリート7nの打設に用いた妻部型枠33は、区間n+1で覆工コンクリートを打設するまでの適切な時期に撤去する。前方防風シート71aも、区間n+1で覆工コンクリートを打設するまでの適当な時期に撤去する。図12では、区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)が、後方防風シート71bおよび断熱養生台車23の養生パネル27により断熱養生されている。なお、上記の前方防風シート71aは区間nの前方に配置されていてもよく、この場合は、区間nの前端部の前方でトンネル3の内空をトンネル内周面(吹き付けコンクリート5)とセントル型枠15との間で隔てることになる。
【0075】
図13は、セントル台車11aを区間n+1まで移動させた後、断熱養生台車23を区間nに移動する工程を示す図である。図13は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。図13に示す工程では、まず養生パネル27の脱型を行なう。この際、養生パネル27を脱型位置にセットするため、養生パネル27をトンネル内周面からトンネル内空に向かう方向(図13に示す矢印M)に移動させる。
【0076】
養生パネル27の脱型に際しては、断熱シート29の(養生パネル27に取り付けられない)他方の端部を区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)の後端部あるいはその後方に密着させる、あるいは取り付ける。これにより、養生パネル27の脱型時、断熱シート29を用いて養生パネル27と覆工コンクリート7との間を塞ぐ。図に示すように、養生パネル27の脱型時には、後方防風シート71bを少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。
【0077】
次に、断熱養生台車23を区間nに向けて(図13の矢印Lで示す方向)に移動させ、トンネル3の区間nの内空に断熱養生台車23を配置する。また、断熱養生台車23の移動に伴い、シート台車69は矢印Lで示す方向に縮まる。支持架台79に支持された後方防風シート71bは、シート台車69の縮みに伴って縮んでゆき、その後部が区間nの後端部より前方に至るが、前述の断熱シート29は、断熱養生台車23の移動中、覆工コンクリート7(n−1)と養生パネル27の間を塞いでいる。従って、断熱養生台車23の移動時には、後方防風シート71b、断熱シート29、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。
【0078】
トンネル3の区間nに断熱養生台車23を配置した後、図7と同様、養生パネル27をトンネル内空からトンネル内周面に向けて移動させ、養生パネル27を区間nの覆工コンクリート7nに対する養生位置にセットし、養生パネル27と後方防風シート71bにより区間nの覆工コンクリート7nに対する養生を所定期間行なう。
【0079】
上述した工程を繰り返すことにより、トンネル3の全長の覆工コンクリート7が打設・養生される。
【0080】
第2の実施の形態では、移動架台13に支持されたセントル型枠15、セントル型枠15の後部に設けられた後方防風シート71bを有するセントル台車11aと、移動架台25に支持された養生パネル27、養生パネル27の後部に設けられた断熱シート29を有する断熱養生台車23と、後方防風シート71bを支持するシート台車69等を含む養生システム77を用いる。断熱層を設けたセントル型枠15、および養生パネル27等により覆工コンクリート7の断熱養生を行なうとともに、セントル型枠15を脱型し、区間nから前方の区間n+1にセントル台車11aを移動する際には、トンネル3の内空に設けられた前方防風シート71a、後方防風シート71b、セントル型枠15を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面が囲まれ、覆工コンクリート7nの養生が行なわれる。また、養生パネル27を脱型し、区間n−1から前方の区間nに断熱養生台車23を移動する際には、後方防風シート71b、断熱シート29、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面が囲まれ、覆工コンクリート7nの養生が行なわれる。
【0081】
第2の実施の形態によれば、セントル台車11aの移動を行なう際に区間nの覆工コンクリート7nが少なくとも前方防風シート71a、後方防風シート71b、セントル型枠15に囲まれ、断熱養生台車23の移動を行う際には、少なくとも後方防風シート71b、断熱シート29、養生パネル27に囲まれる。当該囲まれた空間はトンネル3内の他の空間と隔離され、温度の低いトンネル3内の空気が流入することがほぼ無く、養生状態が維持される。セントル台車11aや断熱養生台車23を移動しつつ上記のような養生状態を維持することができるので、トンネル3の工期を短縮することができる。
【0082】
また、第1の実施の形態と同様に、断熱層を有するセントル型枠15等を必要に応じて用いることにより、セントル型枠15による養生時、さらにはセントル台車11aの移動時にも覆工コンクリート7の表面温度が高く保たれるとともに、温度変化が小さくひび割れしにくい条件で覆工コンクリート7を養生することができる。そのため、覆工コンクリート7のひび割れの発生をより確実に防止でき、覆工コンクリート7の品質を高めることができる。
さらに、シート台車69を用いることで、セントル台車11a、または断熱養生台車23の移動時の後方防風シート71bの伸縮がスムーズになる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる覆工コンクリートの養生方法等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0084】
2………養生システム
3………トンネル
5………吹付コンクリート
7………覆工コンクリート
11………セントル台車
13、25………移動架台
15、15d………セントル型枠
17、39、41………前端部
19、35………後端部
21a、71a………前方防風シート
21b、71b………後方防風シート
23………断熱養生台車
27………養生パネル
29、71c………断熱シート
37a、37b………端部
45………断熱材
69………シート台車
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆工コンクリートの養生方法、セントル台車および養生システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する際には、地山の掘削後、内周面に吹付けコンクリートを施工し、型枠を設けて吹付けコンクリートの表面に覆工コンクリートを打設する。その後、覆工コンクリートの養生を行う。
【0003】
覆工コンクリートの養生としては、例えば、セントル台車等による移動式型枠を用いてコンクリートの打設を行った後、移動式型枠に後続する養生装置を用いて養生する場合(例えば、特許文献1参照)や、セントル台車に設けた型枠を用いて、コンクリートの打設および養生を行なう場合(例えば、特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−231517号公報
【特許文献2】特開2007−169982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、移動式型枠に後続する養生装置により養生を行なう場合、打設し型枠を取り外した直後の覆工コンクリート表面が温度の低いトンネル内の外気に触れることになり、コンクリート表面温度が急速に低下し、ひび割れが発生する可能性がある。コンクリートの養生は、その表面温度を高く保ち、かつ温度変化を緩やかなものとすることで促進され、ひび割れを確実に防止し養生後のコンクリートが高品質なものとなる。
一方で、コンクリートの打設に用いた移動式型枠を用いて養生を行う場合、十分な期間、養生区間にセントル台車を存置する必要があるため、工期が長くなる問題点があった。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、工期を短縮でき、ひび割れの発生を防止できる覆工コンクリートの養生方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートとを有するセントル台車を用い、トンネルの長軸方向における区間nに配置された前記セントル台車の前記セントル型枠を型枠位置にセットして前記区間nでトンネルの覆工コンクリートを打設する工程(a)と、前記型枠位置にセットされた前記セントル型枠を用いて前記区間nの覆工コンクリートを養生する工程(b)と、前記区間nの前方の区間n+1に前記セントル台車を移動する工程(c)と、を具備し、前記工程(c)では、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで前記区間nの覆工コンクリートを養生することを特徴とする覆工コンクリートの養生方法である。
【0008】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側には、断熱層が形成されることが望ましい。断熱層は、例えば、エアキャップ、発泡ウレタン材等の断熱材を用いて形成される。
【0009】
第1の発明では、必要に応じて、第2の移動架台と、前記第2の移動架台に支持された養生パネルと、前記養生パネルの後部に設けられた第3のシートとを有する養生台車が更に用いられる。この場合、前記工程(c)の後に、前記区間nの後方の区間n−1から前記区間nに前記養生台車を移動する工程(d)と、前記区間nに配置された前記養生台車の前記養生パネルを養生位置にセットして前記区間nの覆工コンクリートを養生する工程(e)と、を更に含み、前記工程(d)では、前記第1のシート、前記第3のシート、前記養生パネルを少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで前記区間nの覆工コンクリートを養生する。
【0010】
第1の発明では、必要に応じて、前記第1のシートを支持し、前記トンネルの長軸方向に伸縮するシート台車が更に用いられる。この場合、前記工程(c)で、前記シート台車を伸展する。
【0011】
第1の発明では、覆工コンクリートの養生初期では打設に用いたセントル型枠を用いて養生を行なうとともに、区間nから前方の区間n+1にセントル台車を移動する際、少なくとも、セントル型枠の後部に設けられた第1のシート、区間nの前端部またはその前方でトンネルの内空をトンネル内周面とセントル型枠との間で隔てる第2のシート、および脱型したセントル型枠により区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで、区間nの覆工コンクリートの養生状態を維持する。セントル台車の移動中にも、第1のシート等を用いて覆工コンクリートを囲んでトンネル内の空気と隔離するので、低い温度の外気に触れることがなく、養生状態が維持される。従って、区間nにおけるセントル台車の存置期間を短縮し、工期を短縮することができる。また、セントル型枠には断熱層を設けることにより、養生中のコンクリートの表面温度を高く保つとともにその温度変化が小さくなり、より確実にひび割れの発生が防止され、コンクリートの品質をより高めることができる。また、セントル台車の移動後、セントル台車に後続する養生台車の養生パネルにより区間nの覆工コンクリートの養生を行なうことで、セントル台車を用いて区間n+1での覆工コンクリートの打設等を行なう間にも区間nの覆工コンクリートの養生を行なうことができるので、確実な養生を可能としつつ工期が短縮される。養生台車の移動時には、区間nの覆工コンクリートは、少なくとも、第1のシート、養生パネルの後方に設けられた第3のシート、養生パネルにより表面を囲んで養生状態が維持される。また、上記のシート台車を用いることで、セントル台車、または養生台車の移動時のシートの伸縮がスムーズになる。
【0012】
第2の発明は、第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートと、を有するセントル台車であって、前記セントル型枠を型枠位置にセットしトンネルの長軸方向における区間nで打設したトンネルの覆工コンクリートの養生を前記型枠位置にセットされたセントル型枠を用いて行うとともに、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行なうことを特徴とするセントル台車である。
【0013】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側には、断熱層が形成されることが望ましい。
【0014】
第2の発明のセントル台車を用いれば、覆工コンクリートの養生初期では打設に用いたセントル型枠を用いて養生を行なうとともに、区間nから前方の区間n+1にセントル台車を移動する際、少なくとも、セントル型枠の後部に設けられた第1のシート、区間nの前端部またはその前方でトンネルの内空をトンネル内周面とセントル型枠との間で隔てる第2のシート、および脱型したセントル型枠により区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで、区間nの覆工コンクリートの養生状態を維持する。セントル台車の移動中にも、第1のシート等を用いて覆工コンクリートを囲んでトンネル内の空気と隔離するので、低い温度の外気に触れることがなく、養生状態が維持される。従って、区間nにおけるセントル台車の存置期間を短縮し、工期を短縮することができる。また、セントル型枠には断熱層を設けることにより、養生中のコンクリートの表面温度を高く保つとともにその温度変化が小さくなり、より確実にひび割れの発生が防止され、コンクリートの品質をより高めることができる。
【0015】
第3の発明は、第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートと、を有するセントル台車と、第2の移動架台と、前記第2の移動架台に支持された養生パネルと、前記養生パネルの後部に設けられた第3のシートと、を有する養生台車と、を含む養生システムであって、前記セントル型枠を型枠位置にセットしトンネルの長軸方向における区間nで打設したトンネルの覆工コンクリートの養生を前記型枠位置にセットされたセントル型枠を用いて行うとともに、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行ない、前記セントル台車が前記区間n+1に移動した後、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記区間nの後方の区間n−1から前記区間nに移動して前記区間nに配置された前記養生台車の前記養生パネルを養生位置にセットして行うとともに、前記区間n−1から前記区間nに前記養生台車が移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記第3のシート、前記養生パネルを少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行なうことを特徴とする養生システムである。
【0016】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側には、断熱層が形成されることが望ましい。
【0017】
第3の発明の養生システムは、必要に応じて、前記第1のシートを支持し、前記トンネルの長軸方向に伸縮するシート台車を更に含む。この場合、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記シート台車を伸展する。
【0018】
第3の発明の養生システムを用いれば、覆工コンクリートの養生初期では打設に用いたセントル型枠を用いて養生を行なうとともに、区間nから前方の区間n+1にセントル台車を移動する際、少なくとも、セントル型枠の後部に設けられた第1のシート、区間nの前端部またはその前方でトンネルの内空をトンネル内周面とセントル型枠との間で隔てる第2のシート、および脱型したセントル型枠により区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで、区間nの覆工コンクリートの養生状態を維持する。セントル台車の移動中にも、第1のシート等を用いて覆工コンクリートを囲んでトンネル内の空気と隔離するので、低い温度の外気に触れることがなく、養生状態が維持される。また、セントル台車の移動後、セントル台車に後続する養生台車の養生パネルにより区間nの覆工コンクリートの養生を行なうことで、セントル台車を用いて区間n+1での覆工コンクリートの打設等を行なう間にも区間nの覆工コンクリートの養生を行なうことができるので、確実な養生を可能としつつ工期が短縮される。養生台車の移動時には、区間nの覆工コンクリートは、少なくとも、第1のシート、養生パネルの後方に設けられた第3のシート、養生パネルにより表面を囲んで養生状態が維持される。また、セントル型枠に断熱層を設けることにより、養生中のコンクリートの表面温度を高く保つとともにその温度変化が小さくなり、より確実にひび割れの発生が防止され、コンクリートの品質をより高めることができる。また、上記のシート台車を用いることで、セントル台車、または養生台車の移動時のシートの伸縮がスムーズになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、工期を短縮でき、ひび割れの発生を防止できる覆工コンクリートの養生方法、セントル台車および養生システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】養生システム2の概要を示す図
【図2】覆工コンクリート7nを打設する工程を示す図
【図3】セントル型枠15により覆工コンクリート7nを養生する工程を示す図
【図4】セントル型枠15を脱型する工程を示す図
【図5】セントル台車11を移動する工程を示す図
【図6】養生パネル27を脱型する工程を示す図
【図7】断熱養生台車23を移動する工程を示す図
【図8】養生パネル27により覆工コンクリート7nを養生する工程を示す図
【図9】セントル型枠15の例を示す図
【図10】覆工コンクリートの養生開始後の経過時間と温度およびひび割れ指数との関係を示す図
【図11】養生システム77の概要を示す図
【図12】シート台車69を伸展させつつ、セントル台車11aを区間n+1に移動する工程を示す図
【図13】断熱養生台車23を区間nに移動する工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、養生システム2の概要を示す図である。図1の(a)図は、養生システム2のトンネル長軸方向の断面図、図1の(b)図は、養生システム2のトンネル周方向の断面図である。図1の(a)図は、図1の(b)図に示す矢印B−Bによる断面図である。図1の(b)図は、図1の(a)図に示す矢印A−Aによる断面図である。
【0022】
図1に示すように、養生システム2は、セントル台車11、断熱養生台車23を含む。セントル台車11、断熱養生台車23は、トンネル3の内空に設置され、トンネル3のインバートコンクリート9上を走行する。
【0023】
セントル台車11は、第1の移動架台13、セントル型枠15、前方防風シート21a、後方防風シート21b等で構成される。
【0024】
セントル型枠15は、移動架台13に支持される。セントル型枠15は、トンネル3の覆工コンクリート7の内周面に対応する形状である。セントル型枠15は、覆工コンクリート7の打設および養生に用いられる。セントル型枠15は、移動架台13のジャッキ(図示せず)等により、型枠位置(養生位置)と脱型位置とに移動可能である。セントル型枠15は、トンネル内空からトンネル内周面に向かう方向において外側に位置する型枠板より内側に、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性を有する断熱層が形成される。断熱層により養生時の覆工コンクリート7の表面温度を高く保つとともにその温度変化を小さくし、ひび割れを確実に防いでコンクリートの品質を高めることが可能である。
【0025】
図9は、セントル型枠15の例を示す図である。図9の(a)〜(d)図は、セントル型枠15のトンネル周方向の断面図の一部を示す。図9に示すように、セントル型枠15は、トンネル内周面に対応する形状の外側の型枠板43と内側の内側板44との間に、セントル前後方向の部材であるH型鋼47が配置される。
【0026】
断熱層は型枠板43より内側に配置されるが、その態様は種々考えられる。
例えば、図9の(a)図に示す例では、型枠板43とH型鋼47のフランジとの間に、断熱材45が設けられる。断熱材45は、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性を有するエアキャップ、発泡ウレタン等の部材であり、セントル型枠15に断熱層を形成する。
図9の(b)図に示す例では、H型鋼47のフランジと内側板44との間に、断熱材45が設けられる。
図9の(c)図に示す例では、型枠板43と内側板44との間で、隣接するH型鋼47同士の間に、断熱材45が設けられる。
この他、H型鋼47のトンネル周方向の断面形状に沿って断熱材45を配置するなどしてもよい。
【0027】
また、上記の断熱層にかえて、型枠板43より内側の部分を加熱してもよい。これによっても、養生時の覆工コンクリート7の表面温度を高く保つとともにその温度変化を小さくすることができ、断熱層を設けた場合と同様の効果が得られる。
図9の(d)図は、型枠板43の内側を加熱する例である。図9の(d)図に示すセントル型枠15dでは、型枠板43と内側板44との間に、セントル前後方向部材であるH型鋼47dが配置される。H型鋼47dは、ウェブに孔53を有する。セントル型枠15d内の空間はH型鋼47dの孔53等により連通しており、覆工コンクリート7の養生時には外部のポンプ55等から高温の気体等を送り込むことにより、セントル型枠15dの内部が加熱される。セントル型枠15dの内部等に温度測定器などを設けつつ、型枠内部の温度に応じて送り込む気体等の温度を変化させることにより、内部空間の温度制御を行うことが可能である。
【0028】
図1によるセントル台車11の説明に戻る。セントル型枠15の後部には、第1のシートである後方防風シート21bが設けられる。セントル型枠15の前部には、第2のシートである前方防風シート21aが設けられる。
【0029】
前方防風シート21aは、一方の端部が、セントル型枠15の前部、例えばセントル型枠15の前端部17に取り付けられる。後方防風シート21bは、一方の端部が、セントル型枠15の後部、例えばセントル型枠15の後端部19に取り付けられる。前方防風シート21a、後方防風シート21bは、例えば折り畳み、引き伸ばし可能な蛇腹状など、伸縮可能に構成される、トンネル3やセントル型枠15等の周方向の形状に応じたアーチ状のシート材である。伸縮を妨げない限りにおいて、シート材に適当な強度を与えるため、針金、ワイヤなどによる補強材を設けてもよい。また、前方防風シート21a、後方防風シート21bは、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性、気密性を有する素材、構造を適宜用いることができる。
【0030】
断熱養生台車23は、第2の移動架台25、養生パネル27、断熱シート29等で構成される。
【0031】
養生パネル27は、移動架台25に支持される。養生パネル27は、トンネル3の覆工コンクリート7の内周面に対応する形状である。養生パネル27は覆工コンクリート7の養生に用いられ、このために適当な断熱性を有する。養生パネル27は、移動架台25のジャッキ28により、養生位置と脱型位置とに移動可能である。
【0032】
断熱シート29は、養生パネル27の後部に設けられた第3のシートであり、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性、気密性を有する素材、構造が適宜用いられる。断熱シート29は、一方の端部が、養生パネル27の後部、例えば養生パネル27の後端部35に取り付けられる。
【0033】
トンネル3は、地山1を掘削し、内周面に吹付コンクリート5を、底部にインバートコンクリート9を施工した後、覆工コンクリート7を区間毎に順次打設・養生して構築される。以下に、養生システム2を用いた、トンネル3の覆工コンクリート7の打設・養生方法について説明する。
【0034】
図1は、トンネル3の長軸方向における区間nの覆工コンクリート7nの打設準備をする工程を示す。図1に示す工程では、セントル台車11を区間nの内空に配置する。そして、区間nで覆工コンクリートを打設する位置に鉄筋を組み立てる。
【0035】
図1に示す工程では、断熱養生台車23は、トンネル3の長軸方向において区間nに対して掘削方向の後方(図において右側)に位置する区間n−1に配置される。断熱養生台車23は、養生パネル27を養生位置にセットして、打設済の区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)を断熱養生している。
【0036】
次に、区間nにおいて覆工コンクリートを打設する。この際、セントル型枠15を型枠位置にセットするため、セントル型枠15をトンネル内空からトンネル内周面に向かう方向(図1に示す矢印C)に移動させる。
【0037】
図2は、区間nの覆工コンクリート7nを打設する工程を示す図である。図2は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図を示す。図2に示す工程では、区間nの覆工コンクリート7nの打設位置の前端部の前方に妻部型枠33を設置し、吹付コンクリート5とセントル型枠15との間に覆工コンクリート7nを打設する。
【0038】
図3は、セントル型枠15により覆工コンクリート7nを養生する工程を示す図である。図3は、セントル型枠15付近の拡大断面図である。図3に示す工程では、セントル型枠15を型枠位置(養生位置)にセットした状態で覆工コンクリート7nを所定期間(例えば3日間)養生する。また、前方防風シート21aの(セントル型枠15に取り付けられていない)他方の端部37aを覆工コンクリート7nの前端部41に取り付け、後方防風シート21bの(セントル型枠15に取り付けられていない)他方の端部37bを養生パネル27の前端部39に取り付ける。
【0039】
次に、セントル台車11を、トンネル3の長軸方向において区間nに対して掘削方向の前方(図において左側)に位置する区間n+1に移動する。セントル台車11の移動の際には、まずセントル型枠15を脱型する。この際、セントル型枠15を脱型位置にセットするため、セントル型枠15をトンネル内周面からトンネル内空に向かう方向(図3に示す矢印D)に移動させる。
【0040】
図4は、セントル型枠15の脱型を示す図である。図4の(a)図は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図、図4の(b)図は、セントル型枠15付近の拡大断面図である。伸縮可能に構成されるシート材である前方防風シート21a、後方防風シート21bは、端部37a、端部37bがそれぞれ覆工コンクリート7nの前端部41、養生パネル27の前端部39に取り付けられているため、セントル型枠15の脱型に伴い伸展する。即ち、前方防風シート21aは、区間nの前端部でトンネル3の内空をトンネル内周面(覆工コンクリート7n)とセントル型枠15との間で隔てる。図に示すように、セントル型枠15の脱型時には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。
【0041】
次に、セントル台車11をトンネル3の前方の区間n+1に向けて(図4の矢印Eで示す方向)移動させ、トンネル3の区間n+1の内空にセントル台車11を配置する。
【0042】
図5は、セントル台車11の移動を示す図である。図5は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。セントル台車11の移動時でも、伸縮可能に構成されるシート材である前方防風シート21a、後方防風シート21bは、セントル台車11の移動に伴って伸展する。即ち、前方防風シート21aは、区間nの前端部またはその前方でトンネル3の内空をトンネル内周面(覆工コンクリート7n)とセントル型枠15との間で隔てる。図に示すように、セントル台車11の移動時にも、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面(内周面)を囲んで、覆工コンクリート7nを養生する。妻部型枠33は、区間n+1で覆工コンクリートを打設するまでの、適切な時期に撤去する。
【0043】
なお、図2から図5に示す工程において、区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)は、図1に示す工程に引き続き、断熱養生台車23の養生パネル27により断熱養生される。
【0044】
次に、断熱養生台車23を区間nに移動する。断熱養生台車23の移動の際には、まず養生パネル27の脱型を行なう。この際、養生パネル27を脱型位置にセットするため、養生パネル27をトンネル内周面からトンネル内空に向かう方向(図5に示す矢印F)に移動させる。
【0045】
図6は、養生パネル27の脱型を示す図である。図6は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。養生パネル27の脱型に際しては、断熱シート29の(養生パネル27に取り付けられない)他方の端部を区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)の後端部あるいはその後方に密着させる、あるいは取り付ける。これにより、養生パネル27の脱型時、断熱シート29を用いて養生パネル27と覆工コンクリート7との間を塞ぐ。このための断熱シート29は既知のもの、例えば気体により膨張し覆工コンクリート7と密着するバルーンシートなどを用いることも可能であるし、前方防風シート21aのような伸縮可能なシート材の両端部を養生パネル27と覆工コンクリート7に取り付けて用いるものであってもよい。図に示すように、養生パネル27の脱型時には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。なお、この際、さらに後方防風シート21bを区間nの覆工コンクリート7nの前端部に取り付けるなどすれば、養生パネル27の脱型時あるいは後述する断熱養生台車25の区間nへの移動時において、後方防風シート21b、断熱シート29、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)を囲み、覆工コンクリート7nを養生することも可能である。
【0046】
次に、断熱養生台車23を区間nに向けて(図6の矢印Gで示す方向)に移動させ、トンネル3の区間nの内空に断熱養生台車23を配置する。
【0047】
図7は、断熱養生台車23の移動を示す図である。図7は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。断熱養生台車23の移動時には、伸縮可能に構成されるシート材である後方防風シート21bは、端部37bが養生パネル27の前端部39に取り付けられているため、断熱養生台車23の移動に伴って縮んでゆく。前述の断熱シート29は、断熱養生台車23の移動中も、覆工コンクリート7(n−1)と養生パネル27の間を塞いでいる。従って、断熱養生台車23の移動時にも、前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。
【0048】
図4−7に示すセントル台車11と断熱養生台車23の移動の工程は例えば3時間程度で行なわれ、この間上記のように前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面を囲んで養生し、あるいは前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面を囲んで養生する。当該囲まれた空間はトンネル3内の他の空間と隔離され、温度の低いトンネル3内の空気が流入することがほぼ無く、養生状態が維持される。
【0049】
トンネル3の区間nに断熱養生台車23を配置した後、養生パネル27をトンネル内空からトンネル内周面に向けて(図7の矢印Hで示す方向)移動させ、養生パネル27を区間nの覆工コンクリート7nに対する養生位置にセットし、養生パネル27により区間nの覆工コンクリート7nに対する養生を所定期間(例えばセントル台車11と断熱養生台車23の移動を含め4日間)行なう。
【0050】
図8は、養生パネル27により覆工コンクリート7nを養生する工程を示す図である。図8は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。図8に示す工程では、断熱シート29の上記他方の端部を、区間nの覆工コンクリート7nの後端部あるいはその後方から取り外す。
【0051】
図8に示す工程では、さらに、区間n+1での覆工コンクリート打設の準備として、前方防風シート21aの端部37aを覆工コンクリート7nの前端部41から取り外し、後方防風シート21bの端部37bを養生パネル27の前端部39から取り外す。
【0052】
図1から図8に示す各工程を繰り返すことにより、トンネル3の全長の覆工コンクリート7が打設・養生される。
【0053】
図10は、ある区間の覆工コンクリートのセントル型枠による養生開始後の経過時間と覆工コンクリートの表面温度およびひび割れ指数との関係を示す模式的な図である。図10は、断熱材なしのセントル型枠のみで7日間覆工コンクリートの養生を行なった場合と、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を上記の方法で用いて7日間(セントル型枠15による養生3日間+セントル台車11と断熱養生台車23の移動時(3時間)の養生および養生パネル27による養生4日間)覆工コンクリートの養生を行なった場合における、温度およびひび割れ指数の推移のシミュレーション結果を模式的に示す。
【0054】
図10の(a)図は、養生開始後の経過時間と温度との関係を示す。実線57は、断熱材なしのセントル型枠を用いた場合の推移を、点線59は、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合の推移を模式的に示す。
図10の(b)図は、養生開始後の経過時間とひび割れ指数との関係を示す。ひび割れ指数については社団法人土木学会のコンクリート標準示方書等に示されており詳細な説明は省略するが、ひび割れ指数が大きいほどひび割れしにくいことを表す。実線65は、断熱材なしのセントル型枠を用いた場合の推移を、点線67は、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合の推移を模式的に示す。
【0055】
図10の(a)図に示すように、養生中の覆工コンクリートの表面温度は断熱材なしのセントル型枠を用いた場合(実線57)より、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合(点線59)の方が大きくなる。また、その温度変化は、断熱材なしのセントル型枠を用いた場合(実線57)の温度変化61より、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合(点線59)の温度変化63の方が小さくなる。これは、養生システム2がセントル型枠15に断熱層を有していること、およびセントル台車11や断熱養生台車23の移動時にもこの養生状態が維持されていることによる。
この温度の推移に伴い、図10の(b)図に示すように、ひび割れ指数は、断熱材なしのセントル型枠を用いた場合(実線65)より、断熱層を有するセントル型枠15を含む養生システム2を用いた場合(点線67)の方が高く保たれ、ひび割れしにくい結果となる。養生時の覆工コンクリートの表面温度が高く保たれるとともに、その温度変化が小さいためである。
【0056】
第1の実施の形態では、移動架台13に支持されたセントル型枠15、セントル型枠15の前部に設けられた前方防風シート21aおよびセントル型枠15の後部に設けられた後方防風シート21bを有するセントル台車11と、移動架台25に支持された養生パネル27、養生パネル27の後部に設けられた断熱シート29を有する断熱養生台車23とを含む養生システム2を用いる。断熱層を設けたセントル型枠15、および養生パネル27により覆工コンクリート7の断熱養生を行なうとともに、セントル型枠15を脱型し、区間nから前方の区間n+1にセントル台車11を移動する際には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面が囲まれ、覆工コンクリート7nの養生が行なわれる。また、養生パネル27を脱型し、区間n−1から前方の区間nに断熱養生台車23を移動する際には、前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面が囲まれ、覆工コンクリート7nの養生が行なわれる。
【0057】
第1の実施の形態によれば、セントル台車11や断熱養生台車23の移動を行なう際に覆工コンクリート7が少なくとも前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15に囲まれ、あるいは、少なくとも前方防風シート21a、後方防風シート21b、断熱シート29、セントル型枠15、養生パネル27に囲まれる。当該囲まれた空間はトンネル3内の他の空間と隔離され、温度の低いトンネル3内の空気が流入することがほぼ無く、養生状態が維持される。セントル台車11や断熱養生台車23を移動しつつ上記のような養生状態を維持することができるので、トンネル3の工期を短縮することができる。
【0058】
また、断熱層を有するセントル型枠15を用いることにより、セントル型枠15による養生時、さらにはセントル台車11の移動時にも覆工コンクリート7の表面温度が高く保たれるとともに、温度変化が小さくひび割れしにくい条件で覆工コンクリート7を養生することができる。そのため、覆工コンクリート7のひび割れの発生をより確実に防止でき、覆工コンクリート7の品質を高めることができる。断熱層は必要に応じて設けられる。前述したように、断熱層にかえてセントル型枠15の型枠板43より内側を加熱してもよい。
【0059】
なお、前方防風シート21aや後方防風シート21b、あるいは断熱シート29は、セントル台車11や断熱養生台車23の移動時に区間nの覆工コンクリート7nを囲むことができるように設ければよく、この限りにおいてこれらの取り付け位置等は第1の実施の形態に示したものに限られることはない。但し、第1の実施形態のように取り付け、取り外し等を行なうことはその容易さの点で有利である。
【0060】
例えば第1の実施の形態では、セントル台車11と断熱養生台車23とを含む養生システム2を用い、区間nから前方の区間n+1にセントル台車11を移動する際に、後方防風シート21bの端部37bを養生パネル27の前端部39に取り付けたが、後方防風シート21bの端部37bを覆工コンクリート7nの後端部あるいはその後方の覆工コンクリート7に取り付けてもよい。
【0061】
この場合にも、区間nから前方の区間n+1にセントル台車11を移動する際に、前方防風シート21a、後方防風シート21b、セントル型枠15により区間nの覆工コンクリート7nの表面を囲んで覆工コンクリート7nの養生を行なうことができ、第1の実施の形態と同様にセントル台車11の移動時にも養生状態が維持され、トンネル3の工期を短縮できる。この場合、断熱養生台車23をセントル台車11と独立に移動させることもできる。あるいは断熱養生台車23を省略し、セントル台車11のみで覆工コンクリート7の打設および養生を行うことも可能である。
また、セントル台車11と、断熱養生台車23以外の養生装置とを含む養生システムにより覆工コンクリート7の打設および養生を行うことも可能である。
【0062】
次に、第2の実施の形態について説明する。図11は、養生システム77の概要を示す図である。図11は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。
【0063】
図11に示すように、養生システム77は、セントル台車11a、シート台車69、断熱養生台車23を含む。セントル台車11a、シート台車69、断熱養生台車23は、トンネル3の内空に設置され、トンネル3のインバートコンクリート上を走行する。なお、第1の実施形態で説明したものと略同様の機能構成を有する要素については明細書等で同じ番号を付し、その説明を一部省略する。
【0064】
セントル台車11aは、第1の実施の形態のセントル台車11とほぼ同様の構成であるが、前方防風シート21aおよび後方防風シート21b(図1等)が設けられない。代わりに、セントル台車11aでは、セントル型枠15の後部に、第1のシートである後方防風シート71bが設けられる。また、第4のシートである断熱シート71cが、セントル型枠15の前部(前端部)に設けられる。なお、第2のシートである前方防風シート71aは、区間nの前端部でトンネル3の内空をトンネル内周面(覆工コンクリート7n)とセントル型枠15との間で隔てている。
【0065】
前方防風シート71aは、例えば、一方の端部が、区間nの前端部でトンネル3(覆工コンクリート7n)の内周に沿って設置され、気体により膨張しセントル型枠15と密着するバルーンシートなどを用いることができる。
後方防風シート71bは、一方の端部が、セントル型枠15の後部、例えばセントル型枠15の後端部19に取り付けられる。後方防風シート71bは、後述するシート台車69で支持され、トンネル長軸方向に伸縮可能に構成される。
断熱シート71cは、断熱シート29と同様、例えば気体により膨張し覆工コンクリートと密着するバルーンシートなどを用いることも可能であるし、伸縮可能なシート材の両端部を養生パネル27と覆工コンクリート7あるいはその前方の吹き付けコンクリート5に取り付けて用いるものであってもよい。
また、前方防風シート71a、後方防風シート71b、断熱シート71cは、コンクリート養生の目的に応じて適当な断熱性、気密性を有する素材、構造を適宜用いることができる。
【0066】
図12は、シート台車69を伸展した状態を示す図である。図12は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。図11、図12に示すように、シート台車69は、セントル台車11の後方に配置される。
【0067】
シート台車69は、複数の支持架台79、伸縮部81等で構成される。支持架台79は、トンネル3の覆工コンクリート7の内周面に対応する形状である。複数の支持架台79は、トンネル長軸方向に並べて配置される。セントル型枠15の後部に設けられた後方防風シート71bは、後部が断熱養生台車23の養生パネル27に取り付けられるとともに、内側面73が複数の支持架台79によって支持される。支持架台79に対応する位置では、後方防風シート71bがトンネル3の内周面(覆工コンクリート7)に接する。トンネル長軸方向に隣り合う支持架台79は伸縮部81で連結される。シート台車69は、伸縮部81によって支持架台79同士の間隔を調整することにより、トンネル長軸方向に伸縮可能である。
【0068】
断熱養生台車23は、シート台車69の後方に配置される。断熱養生台車23は、第1の実施の形態と同様の構成である。
【0069】
上述したように、トンネル3は、地山1を掘削し、内周面に吹付コンクリート5を、底部にインバートコンクリートを施工した後、覆工コンクリート7を区間毎に順次打設・養生して構築される。以下に、養生システム77を用いた、トンネル3の覆工コンクリート7の打設・養生方法について説明する。
【0070】
区間nの覆工コンクリート7nを打設する際には、第1の実施形態と同様、図1、あるいは図11に示すように、セントル台車11aを区間nの内空に配置する。そして、区間nで覆工コンクリートを打設する位置に鉄筋を組み立てる。図11では、シート台車69および断熱養生台車23は、トンネル3の長軸方向において区間nに対して掘削方向の後方(図において右側)に位置する区間n−1に配置されており、後方防風シート71bと養生パネル27による区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)の断熱養生が行なわれている。
【0071】
次に、第1の実施形態と同様、セントル型枠15を型枠位置にセットし、区間nの覆工コンクリート7nの打設位置の前端部の前方に妻部型枠33を設置し、吹付コンクリート5とセントル型枠15との間に覆工コンクリート7nを打設する。そして、セントル型枠15を型枠位置(養生位置)にセットした状態で覆工コンクリート7nを所定期間(例えば3日間)養生した後、セントル型枠15をトンネル内周面からトンネル内空に向かう方向(図11に示す矢印I)に移動させる。この状態が図11である。後方防風シート71bは、セントル型枠15の脱型に伴い伸展する。また、前方防風シート71aが、区間nの前端部でトンネル3の内空をトンネル内周面(覆工コンクリート7n)とセントル型枠15との間で隔てる。なお、図11では断熱シート71cも区間nの前端部またはその前方でトンネル3の内空をトンネル内周面とセントル型枠15との間で隔てるように配置されている。
【0072】
図11に示すように、セントル型枠15の脱型時には、前方防風シート71a、後方防風シート71b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、密封空間75で覆工コンクリート7nが養生される。
【0073】
図12は、シート台車69を伸展しつつセントル台車11aを移動させる工程を示す。図12に示す工程では、セントル台車11aをトンネル3の前方の区間n+1に向けて(図12の矢印Jで示す方向)移動させる。また、セントル台車11aの移動に伴い、シート台車69をトンネル長軸方向に伸展させる。後方防風シート71bは、シート台車69の伸展に伴って、支持架台79に支持された状態でトンネル長軸方向に伸展する。シート台車69の前端部は区間nの前端部に達し、このとき後方防風シート71bが区間nの前端部でトンネル3の内空(覆工コンクリート7n)に接する。なお、前方防風シート71aはそのまま、区間nの前端部でトンネル3の内空をトンネル内周面とセントル型枠15との間で隔てている。
【0074】
図12に示すように、セントル台車11aの移動時にも、前方防風シート71a、後方防風シート71b、セントル型枠15を少なくとも用いて覆工コンクリート7nの表面(内周面)を囲んで、密封空間75で区間nの覆工コンクリート7nを養生する。覆工コンクリート7nの打設に用いた妻部型枠33は、区間n+1で覆工コンクリートを打設するまでの適切な時期に撤去する。前方防風シート71aも、区間n+1で覆工コンクリートを打設するまでの適当な時期に撤去する。図12では、区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)が、後方防風シート71bおよび断熱養生台車23の養生パネル27により断熱養生されている。なお、上記の前方防風シート71aは区間nの前方に配置されていてもよく、この場合は、区間nの前端部の前方でトンネル3の内空をトンネル内周面(吹き付けコンクリート5)とセントル型枠15との間で隔てることになる。
【0075】
図13は、セントル台車11aを区間n+1まで移動させた後、断熱養生台車23を区間nに移動する工程を示す図である。図13は、トンネル3の上半部のトンネル長軸方向の断面図である。図13に示す工程では、まず養生パネル27の脱型を行なう。この際、養生パネル27を脱型位置にセットするため、養生パネル27をトンネル内周面からトンネル内空に向かう方向(図13に示す矢印M)に移動させる。
【0076】
養生パネル27の脱型に際しては、断熱シート29の(養生パネル27に取り付けられない)他方の端部を区間n−1の覆工コンクリート7(n−1)の後端部あるいはその後方に密着させる、あるいは取り付ける。これにより、養生パネル27の脱型時、断熱シート29を用いて養生パネル27と覆工コンクリート7との間を塞ぐ。図に示すように、養生パネル27の脱型時には、後方防風シート71bを少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。
【0077】
次に、断熱養生台車23を区間nに向けて(図13の矢印Lで示す方向)に移動させ、トンネル3の区間nの内空に断熱養生台車23を配置する。また、断熱養生台車23の移動に伴い、シート台車69は矢印Lで示す方向に縮まる。支持架台79に支持された後方防風シート71bは、シート台車69の縮みに伴って縮んでゆき、その後部が区間nの後端部より前方に至るが、前述の断熱シート29は、断熱養生台車23の移動中、覆工コンクリート7(n−1)と養生パネル27の間を塞いでいる。従って、断熱養生台車23の移動時には、後方防風シート71b、断熱シート29、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面(内周面)が囲まれ、覆工コンクリート7nが養生される。
【0078】
トンネル3の区間nに断熱養生台車23を配置した後、図7と同様、養生パネル27をトンネル内空からトンネル内周面に向けて移動させ、養生パネル27を区間nの覆工コンクリート7nに対する養生位置にセットし、養生パネル27と後方防風シート71bにより区間nの覆工コンクリート7nに対する養生を所定期間行なう。
【0079】
上述した工程を繰り返すことにより、トンネル3の全長の覆工コンクリート7が打設・養生される。
【0080】
第2の実施の形態では、移動架台13に支持されたセントル型枠15、セントル型枠15の後部に設けられた後方防風シート71bを有するセントル台車11aと、移動架台25に支持された養生パネル27、養生パネル27の後部に設けられた断熱シート29を有する断熱養生台車23と、後方防風シート71bを支持するシート台車69等を含む養生システム77を用いる。断熱層を設けたセントル型枠15、および養生パネル27等により覆工コンクリート7の断熱養生を行なうとともに、セントル型枠15を脱型し、区間nから前方の区間n+1にセントル台車11aを移動する際には、トンネル3の内空に設けられた前方防風シート71a、後方防風シート71b、セントル型枠15を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面が囲まれ、覆工コンクリート7nの養生が行なわれる。また、養生パネル27を脱型し、区間n−1から前方の区間nに断熱養生台車23を移動する際には、後方防風シート71b、断熱シート29、養生パネル27を少なくとも用いて区間nの覆工コンクリート7nの表面が囲まれ、覆工コンクリート7nの養生が行なわれる。
【0081】
第2の実施の形態によれば、セントル台車11aの移動を行なう際に区間nの覆工コンクリート7nが少なくとも前方防風シート71a、後方防風シート71b、セントル型枠15に囲まれ、断熱養生台車23の移動を行う際には、少なくとも後方防風シート71b、断熱シート29、養生パネル27に囲まれる。当該囲まれた空間はトンネル3内の他の空間と隔離され、温度の低いトンネル3内の空気が流入することがほぼ無く、養生状態が維持される。セントル台車11aや断熱養生台車23を移動しつつ上記のような養生状態を維持することができるので、トンネル3の工期を短縮することができる。
【0082】
また、第1の実施の形態と同様に、断熱層を有するセントル型枠15等を必要に応じて用いることにより、セントル型枠15による養生時、さらにはセントル台車11aの移動時にも覆工コンクリート7の表面温度が高く保たれるとともに、温度変化が小さくひび割れしにくい条件で覆工コンクリート7を養生することができる。そのため、覆工コンクリート7のひび割れの発生をより確実に防止でき、覆工コンクリート7の品質を高めることができる。
さらに、シート台車69を用いることで、セントル台車11a、または断熱養生台車23の移動時の後方防風シート71bの伸縮がスムーズになる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる覆工コンクリートの養生方法等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0084】
2………養生システム
3………トンネル
5………吹付コンクリート
7………覆工コンクリート
11………セントル台車
13、25………移動架台
15、15d………セントル型枠
17、39、41………前端部
19、35………後端部
21a、71a………前方防風シート
21b、71b………後方防風シート
23………断熱養生台車
27………養生パネル
29、71c………断熱シート
37a、37b………端部
45………断熱材
69………シート台車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートとを有するセントル台車を用い、
トンネルの長軸方向における区間nに配置された前記セントル台車の前記セントル型枠を型枠位置にセットして前記区間nでトンネルの覆工コンクリートを打設する工程(a)と、
前記型枠位置にセットされた前記セントル型枠を用いて前記区間nの覆工コンクリートを養生する工程(b)と、
前記区間nの前方の区間n+1に前記セントル台車を移動する工程(c)と、
を具備し、
前記工程(c)では、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで前記区間nの覆工コンクリートを養生することを特徴とする覆工コンクリートの養生方法。
【請求項2】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側に断熱層が形成されることを特徴とする請求項1記載の覆工コンクリートの養生方法。
【請求項3】
第2の移動架台と、前記第2の移動架台に支持された養生パネルと、前記養生パネルの後部に設けられた第3のシートとを有する養生台車を更に用い、
前記工程(c)の後に、前記区間nの後方の区間n−1から前記区間nに前記養生台車を移動する工程(d)と、
前記区間nに配置された前記養生台車の前記養生パネルを養生位置にセットして前記区間nの覆工コンクリートを養生する工程(e)と、
を更に含み、
前記工程(d)では、前記第1のシート、前記第3のシート、前記養生パネルを少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで前記区間nの覆工コンクリートを養生することを特徴とする請求項1または請求項2記載の覆工コンクリートの養生方法。
【請求項4】
前記第1のシートを支持し、前記トンネルの長軸方向に伸縮するシート台車を更に用い、
前記工程(c)で、前記シート台車を伸展することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の覆工コンクリートの養生方法。
【請求項5】
第1の移動架台と、
前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、
前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートと、
を有するセントル台車であって、
前記セントル型枠を型枠位置にセットしトンネルの長軸方向における区間nで打設したトンネルの覆工コンクリートの養生を前記型枠位置にセットされたセントル型枠を用いて行うとともに、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行なうことを特徴とするセントル台車。
【請求項6】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側に断熱層が形成されることを特徴とする請求項5記載のセントル台車。
【請求項7】
第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートと、を有するセントル台車と、
第2の移動架台と、前記第2の移動架台に支持された養生パネルと、前記養生パネルの後部に設けられた第3のシートと、を有する養生台車と、
を含む養生システムであって、
前記セントル型枠を型枠位置にセットしトンネルの長軸方向における区間nで打設したトンネルの覆工コンクリートの養生を前記型枠位置にセットされたセントル型枠を用いて行うとともに、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行ない、
前記セントル台車が前記区間n+1に移動した後、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記区間nの後方の区間n−1から前記区間nに移動して前記区間nに配置された前記養生台車の前記養生パネルを養生位置にセットして行うとともに、前記区間n−1から前記区間nに前記養生台車が移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記第3のシート、前記養生パネルを少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行なうことを特徴とする養生システム。
【請求項8】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側に断熱層が形成されることを特徴とする請求項7記載の養生システム。
【請求項9】
前記第1のシートを支持し、前記トンネルの長軸方向に伸縮するシート台車を更に含み、
前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記シート台車を伸展することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の養生システム。
【請求項1】
第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートとを有するセントル台車を用い、
トンネルの長軸方向における区間nに配置された前記セントル台車の前記セントル型枠を型枠位置にセットして前記区間nでトンネルの覆工コンクリートを打設する工程(a)と、
前記型枠位置にセットされた前記セントル型枠を用いて前記区間nの覆工コンクリートを養生する工程(b)と、
前記区間nの前方の区間n+1に前記セントル台車を移動する工程(c)と、
を具備し、
前記工程(c)では、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで前記区間nの覆工コンクリートを養生することを特徴とする覆工コンクリートの養生方法。
【請求項2】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側に断熱層が形成されることを特徴とする請求項1記載の覆工コンクリートの養生方法。
【請求項3】
第2の移動架台と、前記第2の移動架台に支持された養生パネルと、前記養生パネルの後部に設けられた第3のシートとを有する養生台車を更に用い、
前記工程(c)の後に、前記区間nの後方の区間n−1から前記区間nに前記養生台車を移動する工程(d)と、
前記区間nに配置された前記養生台車の前記養生パネルを養生位置にセットして前記区間nの覆工コンクリートを養生する工程(e)と、
を更に含み、
前記工程(d)では、前記第1のシート、前記第3のシート、前記養生パネルを少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで前記区間nの覆工コンクリートを養生することを特徴とする請求項1または請求項2記載の覆工コンクリートの養生方法。
【請求項4】
前記第1のシートを支持し、前記トンネルの長軸方向に伸縮するシート台車を更に用い、
前記工程(c)で、前記シート台車を伸展することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の覆工コンクリートの養生方法。
【請求項5】
第1の移動架台と、
前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、
前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートと、
を有するセントル台車であって、
前記セントル型枠を型枠位置にセットしトンネルの長軸方向における区間nで打設したトンネルの覆工コンクリートの養生を前記型枠位置にセットされたセントル型枠を用いて行うとともに、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行なうことを特徴とするセントル台車。
【請求項6】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側に断熱層が形成されることを特徴とする請求項5記載のセントル台車。
【請求項7】
第1の移動架台と、前記第1の移動架台に支持されたセントル型枠と、前記セントル型枠の後部に設けられた第1のシートと、を有するセントル台車と、
第2の移動架台と、前記第2の移動架台に支持された養生パネルと、前記養生パネルの後部に設けられた第3のシートと、を有する養生台車と、
を含む養生システムであって、
前記セントル型枠を型枠位置にセットしトンネルの長軸方向における区間nで打設したトンネルの覆工コンクリートの養生を前記型枠位置にセットされたセントル型枠を用いて行うとともに、前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記区間nの前端部またはその前方で前記トンネルの内空をトンネル内周面と前記セントル型枠との間で隔てる第2のシート、前記セントル型枠を少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行ない、
前記セントル台車が前記区間n+1に移動した後、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記区間nの後方の区間n−1から前記区間nに移動して前記区間nに配置された前記養生台車の前記養生パネルを養生位置にセットして行うとともに、前記区間n−1から前記区間nに前記養生台車が移動する際、前記区間nの覆工コンクリートの養生を、前記第1のシート、前記第3のシート、前記養生パネルを少なくとも用いて前記区間nの覆工コンクリートの表面を囲んで行なうことを特徴とする養生システム。
【請求項8】
前記セントル型枠の外側に設けられた型枠板より内側に断熱層が形成されることを特徴とする請求項7記載の養生システム。
【請求項9】
前記第1のシートを支持し、前記トンネルの長軸方向に伸縮するシート台車を更に含み、
前記セントル台車が前記区間nの前方の区間n+1に移動する際、前記シート台車を伸展することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の養生システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−172353(P2012−172353A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34133(P2011−34133)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
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