説明

覆工コンクリート養生構造

【課題】 山岳トンネル内のアーチ状の二次覆工コンクリートを簡単な構造で確実かつ低コストで養生させることができる覆工コンクリート養生構造を提供する。
【解決手段】 山岳トンネル11内のアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aを養生材13で覆って該アーチ状の二次覆工コンクリート12を養生させるようにした覆工コンクリート養生構造10において、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aを、該アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aの曲率に応じた形状の表面13aを有した養生材としての複数の発砲スチロール材13で覆うと共に、該複数の発砲スチロール材13の各裏面13bを保持部材としてのアーチ状のエアチューブ14で保持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、山岳トンネル内の既打設でアーチ状の二次覆工コンクリート等を初期養生させる際に用いて好適な覆工コンクリート養生構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の覆工コンクリート養生構造として、図5に示すものがある。この覆工コンクリート養生構造は、図5に示すように、山岳トンネル内の既打設でアーチ状の二次覆工コンクリート1内の所定箇所を区切る両側のアーチ状のバルーン2,2と、この両側のバルーン2,2間を密閉する密閉用シート3と、これら二次覆工コンクリート1の内壁面1aと両側のバルーン2,2及び密閉用シート3との間で形成される空間に空気を送風する送風管4とを備えている。
【0003】
そして、二次覆工コンクリート1の内壁面1aと両側のバルーン2,2及び密閉用シート3との間に空気層を作ることによってその内部を保温し、二次覆工コンクリート1を初期養生させるようになっている。
【特許文献1】特開2001−123794号公報
【特許文献2】特開平11−62489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の覆工コンクリート養生構造では、密閉用シート3をアーチ状に保持するために、アーチ形の風船等から成る両側のバルーン2,2の他に、図示しない鋼製等の架台が必要不可欠となり、その分、設備が大掛かりになるうえに、密閉用シート3の自重も大きくなり、全体の構造が複雑になると共に、コスト高になった。
【0005】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、アーチ状の覆工コンクリートを簡単な構造で確実かつ低コストで養生させることができる覆工コンクリート養生構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、アーチ状の覆工コンクリートの内周面を養生材で覆って該アーチ状の覆工コンクリートを養生させるようにした覆工コンクリート養生構造において、前記アーチ状の覆工コンクリートの内周面を、該アーチ状の覆工コンクリートの内周面の曲率に応じた形状の表面を有した複数の養生材で覆うと共に、該複数の養生材の各裏面をアーチ状の保持材で保持自在にしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、前記複数の養生材を略矩形板状にそれぞれ形成し、この略矩形板状の各養生材の周囲に係止凸部と係止凹部をそれぞれ形成して、これら係止凸部と係止凹部を介して相隣接する養生材同士を係止自在にしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、前記複数の養生材の各裏面の中央に前記アーチ状の保持材を係合する係合凹部をそれぞれ形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、前記複数の養生材として発砲スチロール材を用いたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、前記アーチ状の保持材としてエアチューブを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、アーチ状の覆工コンクリートの内周面を、該アーチ状の覆工コンクリートの内周面の曲率に応じた形状の表面を有した複数の養生材で覆うと共に、該複数の養生材の各裏面をアーチ状の保持材で保持自在にしたことにより、アーチ状の覆工コンクリートを簡単な構造で確実かつ低コストで養生させることができる。これにより、打設した後の覆工コンクリート面の保湿効果及び断熱、保温効果を高めることができ、ひび割れのない高品質な覆工コンクリートを構築することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、複数の養生材を略矩形板状にそれぞれ形成し、この略矩形板状の各養生材の周囲に係止凸部と係止凹部をそれぞれ形成して、これら係止凸部と係止凹部を介して相隣接する養生材同士を係止自在にしたことにより、相隣接する養生材同士の繋ぎ部分の隙間を簡単かつ確実に遮蔽することができ、外気を確実かつ有効に遮断することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、複数の養生材の各裏面の中央にアーチ状の保持材を係合する係合凹部をそれぞれ形成したことにより、複数の養生材の各裏面の中央の係合凹部にアーチ状の保持材を確実に係合させることできると共に、複数の養生材の各表面をアーチ状の覆工コンクリートの内周面に密着、或いは、微小の空気層を介して確実に当接させることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、複数の養生材として発砲スチロール材を用いたことにより、アーチ状の覆工コンクリートの内周面の曲率に応じた形状に各発砲スチロール材の表面を簡単かつ確実に加工することができ、また、発砲スチロール材は軽量なため、アーチ状の覆工コンクリートの内周面に沿って周方向の全周に亘って発砲スチロール材を簡単かつ確実に建て込むことができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、アーチ状の保持材としてエアチューブを用いたことにより、このアーチ状のエアチューブにてアーチ状の覆工コンクリートの内周面に複数の養生材を均等に押し付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態の覆工コンクリート養生構造を示す断面図、図2は同養生構造に用いられる養生材を建て込む前の状態を示す斜視図、図3は同養生材を建て込んだ状態を示す斜視図、図4(a)〜図4(c)は同養生構造ができるまでの手順を示す断面図である。
【0018】
図1,図4に示すように、覆工コンクリート養生構造10は、例えば、山岳トンネル11内の既打設でアーチ状の二次覆工コンクリート(覆工コンクリート)12の内壁面(内周面)12aを複数の発砲スチロール材(養生材)13で覆って該アーチ状の二次覆工コンクリート12を養生させるものである。即ち、既打設でアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aは、該アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aの曲率に応じた形状の表面13aを有した複数の発砲スチロール材13で覆われており、また、この複数の発砲スチロール材13の各裏面13bはゴム製でアーチ状のエアチューブ(保持材)14で保持されるようになっている。
【0019】
図2,図3に示すように、各発砲スチロール材13は略矩形板状にそれぞれ形成してあり、その裏面13bの中央にはアーチ状のエアチューブ14を係合する係合凹部13cを形成してある。また、各発砲スチロール材13の上部と左側部には繋ぎ部としての係止凸部13dを形成してあると共に、各発砲スチロール材13の右側部と下部には繋ぎ部としての係止凹部13eを形成してある。これら係止凸部13dと係止凹部13eを介して相隣接する発砲スチロール材13,13同士が係止されるようになっている。尚、発砲スチロール材13の幅(S)は例えば200cm、高さ(H)は例えば70cm、厚さ(T)は例えば10cm、にそれぞれ形成してあるが、高さ(H)は異なるサイズのものが予め用意されている。
【0020】
次に、図4(a)〜図4(c)に沿って上記した構成の覆工コンクリート養生構造10ができるまでの手順を説明する。
【0021】
まず、図4(a)に示すように、山岳トンネル11内の地盤上の両側にエアチューブ14の両端を固定し、該エアチューブ14内に空気を注入して膨らませる。そして、山岳トンネル11内の既打設でアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに沿うようにエアチューブ14を立てる。この際に、エアチューブ14内には空気を完全に入れることなく、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aとエアチューブ14との間に発砲スチロール材13を建て込む空間を作っておく。
【0022】
次に、図4(b)に示すように、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aとエアチューブ14との間に発砲スチロール材13を挿入してアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに沿って周方向に発砲スチロール材13を建て込んで行く。この際に、略矩形板状の各発砲スチロール材13の周囲に形成された係止凸部13dと係止凹部13eを介して相隣接する発砲スチロール材13同士を係止させる。また、各発砲スチロール材13の各裏面13bの中央の係合凹部13cにアーチ状のエアチューブ14を係合させる。
【0023】
そして、図4(c)に示すように、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに沿って周方向の全周に亘って発砲スチロール材13を建て込んだ後に、エアチューブ14内には空気を完全に入れて、この空気が十分に注入されたアーチ状のエアチューブ14でアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに複数の発砲スチロール材13を均等に押し付けることにより、図1及び図4(c)に示す覆工コンクリート養生構造10が完成する。
【0024】
この覆工コンクリート養生構造10では、図1に示すように、発砲スチロール材13がアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに密着、もしくは微小の空気層を有して保持されることで、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aから逸脱する水分を封じ込むことができる。これにより、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aの付近の湿度は高く、湿潤な状態に保たれ、保湿効果が高められる。
【0025】
また、発砲スチロール材13がアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに密着、もしくは微小の空気層を有して保持されることで、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aから放熱される硬化熱を封じ込むことができる。これにより、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内外の温度差を少なくすることができ、断熱、保温効果を高めることができる。
【0026】
以上実施形態の覆工コンクリート養生構造10によれば、山岳トンネル11内の既打設でアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aを、該アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aの曲率に応じた形状の表面13aを有した複数の発砲スチロール材13で覆うと共に、該複数の発砲スチロール材13の各裏面13bをアーチ状のエアチューブ14で保持するようにしたことにより、アーチ状の二次覆工コンクリート12を簡単な構造で確実かつ低コストで養生させることができる。これにより、打設した後の二次覆工コンクリート12の内壁面12aの保湿効果及び断熱、保温効果を高めることができ、ひび割れのない高品質な二次覆工コンクリート12を構築することができる。
【0027】
また、複数の発砲スチロール材13を略矩形板状にそれぞれ形成し、この略矩形板状の各発砲スチロール材13の周囲に係止凸部13dと係止凹部13eをそれぞれ形成して、これら係止凸部13dと係止凹部13eを介して相隣接する発砲スチロール材13同士を係止するようにしたことにより、相隣接する発砲スチロール材13同士の繋ぎ部分の隙間を簡単かつ確実に遮蔽することができ、外気を確実かつ有効に遮断することができる。
【0028】
さらに、複数の発砲スチロール材13の各裏面13bの中央にアーチ状のエアチューブ14を係合する係合凹部13cをそれぞれ形成したことにより、複数の発砲スチロール材13の各裏面13bの中央の係合凹部13cにアーチ状のエアチューブ14を確実に係合させることできると共に、複数の発砲スチロール材13の各表面13aをアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに密着、或いは、微小の空気層を介して確実に当接させることができる。
【0029】
さらに、複数の養生材として発砲スチロール材13を用いたことにより、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aの曲率に応じた形状に各発砲スチロール材13の表面13aを簡単かつ確実に加工することができる。また、発砲スチロール材13は軽量なため、アーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに沿って周方向の全周に亘って発砲スチロール材13を簡単かつ確実に建て込むことができる。さらに、アーチ状の保持材としてエアチューブ14を用いたことにより、このアーチ状のエアチューブ14にてアーチ状の二次覆工コンクリート12の内壁面12aに複数の発砲スチロール材13を均等に押し付けることができる。
【0030】
尚、前記実施形態によれば、山岳トンネル内の既打設でアーチ状の二次覆工コンクリートを初期養生する場合について説明したが、養生対象は山岳トンネル内の既打設の二次覆工コンクリートに限られず、例えば、アーチカルバート等の他のアーチ状の二次覆工コンクリートに前記実施形態を適用しても良い。また、養生材として発砲スチロール材を用いたが、他の軽量な断熱材等を用いても良い。さらに、保持材としてエアチューブを用いたが、アール加工した鋼製山形鋼や復元力のあるグラスファイバーや塩化ビニルパイプ等を用いても良い。この塩化ビニルパイプを用いた場合には、軽量かつ安価で経済性の面で有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態の覆工コンクリート養生構造を示す断面図である。
【図2】上記養生構造に用いられる養生材を建て込む前の状態を示す斜視図である。
【図3】上記養生材を建て込んだ状態を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は上記養生構造ができるまでの手順を示す断面図である。
【図5】従来の覆工コンクリート養生構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10 覆工コンクリート養生構造
12 既打設でアーチ状の二次覆工コンクリート(覆工コンクリート)
12a 内壁面(内周面)
13 発砲スチロール材(養生材)
13a 表面
13b 裏面
13c 係合凹部
13d 係止凸部
13e 係止凹部
14 アーチ状のエアチューブ(保持材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ状の覆工コンクリートの内周面を養生材で覆って該アーチ状の覆工コンクリートを養生させるようにした覆工コンクリート養生構造において、
前記アーチ状の覆工コンクリートの内周面を、該アーチ状の覆工コンクリートの内周面の曲率に応じた形状の表面を有した複数の養生材で覆うと共に、該複数の養生材の各裏面をアーチ状の保持材で保持自在にしたことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【請求項2】
請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、
前記複数の養生材を略矩形板状にそれぞれ形成し、この略矩形板状の各養生材の周囲に係止凸部と係止凹部をそれぞれ形成して、これら係止凸部と係止凹部を介して相隣接する養生材同士を係止自在にしたことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【請求項3】
請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、
前記複数の養生材の各裏面の中央に前記アーチ状の保持材を係合する係合凹部をそれぞれ形成したことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【請求項4】
請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、
前記複数の養生材として発砲スチロール材を用いたことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【請求項5】
請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、
前記アーチ状の保持材としてエアチューブを用いたことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ状の覆工コンクリートの内周面を養生材で覆って該アーチ状の覆工コンクリートを養生させるようにした覆工コンクリート養生構造において、
前記アーチ状の覆工コンクリートの内周面を、該アーチ状の覆工コンクリートの内周面の曲率に応じた形状の表面を有した複数の養生材で覆うと共に、該複数の養生材の各裏面をアーチ状の保持材で保持自在にしたことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【請求項2】
請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、
前記複数の養生材を略矩形板状にそれぞれ形成し、この略矩形板状の各養生材の周囲に係止凸部と係止凹部をそれぞれ形成して、これら係止凸部と係止凹部を介して相隣接する養生材同士を係止自在にしたことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【請求項3】
請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、
前記複数の養生材の各裏面の中央に前記アーチ状の保持材を係合する係合凹部をそれぞれ形成したことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【請求項4】
請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、
前記複数の養生材として発スチロール材を用いたことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。
【請求項5】
請求項1記載の覆工コンクリート養生構造であって、
前記アーチ状の保持材としてエアチューブを用いたことを特徴とする覆工コンクリート養生構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−328869(P2006−328869A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156303(P2005−156303)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000236610)不動建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】