覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法
【課題】覆工コンクリート表面を湿潤に保ちながら、養生温度を所望の温度に調整しうる覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法を提供する。
【解決手段】本発明の覆工コンクリート養生装置100は、覆工コンクリート表面1aに沿って該表面1aから所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜13と、覆工コンクリート表面1aと隔壁膜13とにより形成される湿潤養生空間16に霧状の水分を供給する水分供給手段20と、隔壁膜13の内周に沿って該隔壁膜13から所定距離離間するように設けられる断熱性シート15と、隔壁膜13と断熱性シート15とにより形成される温調養生空間17に、温調された空気を送風する送風手段21と、を備える。
【解決手段】本発明の覆工コンクリート養生装置100は、覆工コンクリート表面1aに沿って該表面1aから所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜13と、覆工コンクリート表面1aと隔壁膜13とにより形成される湿潤養生空間16に霧状の水分を供給する水分供給手段20と、隔壁膜13の内周に沿って該隔壁膜13から所定距離離間するように設けられる断熱性シート15と、隔壁膜13と断熱性シート15とにより形成される温調養生空間17に、温調された空気を送風する送風手段21と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートを養生する覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
覆工コンクリートなどのコンクリートは、打設後、セメントの水和反応に伴う発熱によってコンクリート温度が上昇し、その後放熱によって徐々に外気温程度まで冷却されることにより、コンクリートの内部と表面との温度差に起因するひび割れや、コンクリートの収縮により地盤等から受ける拘束によるひび割れが発生することがある。また、コンクリートが十分に硬化していない状態で、水和反応に伴う水分の蒸発によりコンクリート表面が乾燥すると、コンクリート表面にひび割れが発生することがある。したがって、コンクリート種類や、トンネル坑内の温度、湿度、コンクリート打設時の初期温度等の種々の条件を考慮した上で、コンクリート表面からの水分の蒸発を防ぐとともに、コンクリート内部の温度上昇を抑制する養生が必要になる。
【0003】
従来、トンネル内に打設された覆工コンクリートの養生温度を保持する覆工コンクリート養生装置として、断熱性シートと覆工コンクリート表面とを隔壁により閉塞して形成した断熱空間を設け、前記断熱空間に空気を充填することにより覆工コンクリートの養生温度を調整する覆工コンクリート養生設備がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、トンネル内の覆工コンクリートの養生温度を制御する覆工コンクリート養生装置として、遮水シートと覆工コンクリート表面とにより形成された養生空間に、霧状の水を噴霧して湿潤状態を保持することにより、覆工コンクリートを養生する覆工コンクリート養生設備が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291690号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】トンネルと地下、452号、vol39、No.4、2008年4月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の覆工コンクリート養生設備では、送風した空気により断熱空間を設けて覆工コンクリートの養生温度を調整できるものの、たとえば、温暖な季節や地域のような過酷な条件下では、断熱空間の温度を所望する温度に維持することは困難であった。
【0008】
また、非特許文献1に記載の覆工コンクリート養生設備では、噴霧水を温度調整し、養生空間内の湿度を制御できるものの、覆工コンクリート表面に直接水滴をつけないためには、噴霧量をある水量以下とする必要があった。このため、上記同様、過酷な条件下では、養生空間の温度を所望する温度に維持することは困難であった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、覆工コンクリート表面を濡らすことなく湿潤状態を保つとともに、過酷な条件下においても養生温度を所望の温度に調整しうる覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の覆工コンクリート養生装置は、トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートの養生装置であって、前記覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜と、前記覆工コンクリート表面と前記隔壁膜とにより形成される湿潤養生空間に霧状の水分を供給する水分供給手段と、前記隔壁膜の内周に沿って該隔壁膜と所定距離離間するように設けられる断熱性シートと、前記隔壁膜と前記断熱性シートとにより形成される温調養生空間内に、温調された空気を送風する送風手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記覆工コンクリートを打設する覆工セントル内にも温調された空気を送風して、脱枠前の覆工コンクリートの温度を調整する手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記隔壁膜と前記断熱性シートとを固定する複数の膜結合手段を備えることを保つことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記送風手段は、前記温調養生空間の下半部に設けられる送風口と前記温調養生空間の最上部付近に設けられる排気口と、温度調整された空気を送風する送風機とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記隔壁膜の表面には、凸部、フィンまたは植毛が設けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記湿潤養生空間および前記温調養生空間を、覆工コンクリートを打設したトンネルの上半部と下半部とにそれぞれ分割する断熱性の隔壁を備え、上半部の第1湿潤養生空間と下半部の第2湿潤養生空間、および上半部の第1温調養生空間と下半部の第2温調養生空間との養生条件を変更しうることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記に記載の覆工コンクリート養生装置を1以上含む覆工コンクリート養生システムであって、覆工コンクリート打設からの経過時間に応じて、各覆工コンクリート養生装置の湿潤養生空間および温調養生空間の養生条件を変更して前記覆工コンクリートの養生を行うことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の覆工コンクリート養生方法は、トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートの養生方法であって、前記覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜と覆工コンクリート表面とにより形成される湿潤養生空間に、霧状の水分を供給して前記覆工コンクリートを養生する湿潤養生ステップと、前記隔壁膜に沿って該隔壁膜から所定距離離間するように設けられる断熱性シートと前記隔壁膜とにより形成される温調養生空間に、温調された空気を送風して前記湿潤養生空間の温度を調整する温調養生ステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の覆工コンクリート養生方法は、上記発明において、前記温調養生ステップは、前記温調養生空間の下半部から温調された空気を供給し、前記温調養生空間の最上部付近から空気を排出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法は、覆工コンクリートの表面を含む湿潤養生空間に霧状の水分を供給するとともに、温調養生空間に温調した空気を送風することにより、前記温調養生空間のみならず前記湿潤養生空間の温度を調整することができるため、覆工コンクリート表面を濡らすことなく、覆工コンクリート表面の湿潤を保ちながら養生温度を制御して覆工コンクリートのひび割れを防止することができる。また、本発明に係る覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法は、覆工コンクリート打込み中、および打込み完了から脱枠までの型枠箇所に温調した空気を送風することにより、打込み中から脱枠までの間においても覆工コンクリートの温度を調整することができるため、コンクリートの水和反応に伴う温度上昇を効果的に抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図2】図2は、図1の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのA−A断面図である。
【図3】図3は、図1の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのB−B部分断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネルの横断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図6】図6は、図5の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのC−C部分断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態3に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネルの横断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図9】図9は、図8の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのD−D部分断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態4に係る覆工コンクリート養生システムを示すトンネルの縦断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態4の変形例1に係る覆工コンクリート養生システムを示すトンネルの縦断面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態4の変形例2に係る覆工コンクリート養生システムを示すトンネルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る覆工コンクリート養生装置を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1〜図3は本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置100を示す概略図である。ここで、図1は、覆工コンクリート養生装置100を示すトンネル10要部の縦断面図(トンネル掘削方向である軸方向に沿う断面)を示しており、図2は、図1の覆工コンクリート養生装置100を含むトンネルのA−A断面図(トンネル掘削方向である軸方向に直交する断面)を示しており、図3は、図1の覆工コンクリート養生装置100を含むトンネルのB−B部分断面図を示している。
【0023】
覆工コンクリート1は、図1に示すように掘削したトンネル10の内壁面10aに吹付コンクリート11を吹き付けてロックボルト(図示せず)を打ち込むことによってトンネル10の内壁面10aの崩落などを防いだ後、吹付コンクリート11の内壁面に防水シート(図示せず)を張り、吹付コンクリート11との間に防水シートを介在する形態で覆工セントルを用いて打設される。覆工セントル12は、吹付コンクリート11(防水シート)との間に覆工コンクリート1を打設するための空隙をおいて門型に形成した型枠を有している。この型枠には、前記空隙にコンクリートを流し込むための孔(図示せず)が形成してある。そして、覆工セントルは、型枠の内側から前記孔を介して吹付コンクリート11(防水シート)との間の空隙にコンクリートを流し込むことによって覆工コンクリート1を打設する。覆工セントル12は、覆工コンクリート1を打設した後、所定時間(例えば1日〜2日)の養生期間をおいて外される。
【0024】
覆工セントルを外した後、本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置100を設置し、覆工コンクリート1の養生を行うが、覆工セントル箇所においても覆工養生装置100による温度の調整が開始されている。
【0025】
覆工コンクリート養生装置100は、覆工コンクリート1の表面1aに沿って設けられる防水性の隔壁膜13と、隔壁膜13に沿って設けられる断熱性シート15と、断熱性シート15を支持する台車19と、覆工コンクリート表面1aと隔壁膜13とにより形成される湿潤養生空間16に霧状の水分を供給する水分供給手段20と、隔壁膜13と断熱性シート15とにより形成される温調養生空間17に温調した空気を送風する送風手段21とを備える。
【0026】
図1〜図3に示すように、覆工コンクリート1の表面1a側を覆う態様で当該覆工コンクリート1の表面1aから所定距離H1離間させて、防水性の隔壁膜13を設け、当該隔壁膜13の両端部を覆工コンクリート表面1aにアーチ状に設けた断熱性の隔壁14で密閉して湿潤養生空間16を設ける。隔壁膜13は、通風による霧状の水粒子(粒径10〜100μm)の排出を防止できる防水性の材料であればよく、通気性のない膜状シートが適している。また、隔壁膜13は、熱伝達性能が高いものが好ましく、単位面積当たりの表面積を増大させる凸部、フィンまたは植毛を付すことが好ましい。
【0027】
また、隔壁膜13に沿って所定距離H2離間させて、断熱性シート15を設ける。当該断熱性シート15の両端部についても、覆工コンクリート表面1aにアーチ状に設けた断熱性の隔壁14で略密閉して温調養生空間17を設ける。断熱性シート15は、例えば発泡ウレタンにアルミフィルムを積層したシートが好適に使用されるが、断熱性を有する膜状シートであればよい。なお、湿潤養生空間16および温調養生空間17の密閉性を保つために隔壁14を設けることが望ましいが、隔壁14を設けることなく、隔壁膜13と断熱性シート15の両端部を溶着、または接着して密閉性を保持してもよい。
【0028】
水分供給手段20は、ノズル20aと、水分供給口20bと、水貯留タンク20cとを有し、水貯留タンク20c内で所定温度に調整された水を、図示しない配管および送液ポンプにより水分供給口20bまで送液後、ノズル20aにより霧状の水分を湿潤養生空間16に供給する。水分供給手段20により湿潤養生空間16に供給される水分量は、覆工コンクリート表面1aに水が付着しない程度、即ち、湿潤養生空間16内の湿度が100%未満となるようにするのが好ましい。水分量が多いほど、コンクリート表面1aを湿潤に保ち、コンクリートの水和反応を促進させるが、水分量が多すぎると、付着した水の気化熱でコンクリート表面のみが急冷され表面ひび割れを発生させたり、水が付着した跡が残存し美観を損ねるためである。
【0029】
水供給口20bは、断熱性シート15に接して設けられ、ノズル20aを支持する。ノズル20aは、隔壁膜13および断熱性シート15を貫通して設置され、ノズル20a先端部から湿潤養生空間16内に霧状の水分を供給する。隔壁膜13および断熱性シート15のノズル20a貫通口を介し、湿潤養生空間16内の霧状水分、および温調養生空間17内の空気が漏れでないよう、隔壁膜13および断熱性シート15とノズル20aとの接触部はシールド処理される。あるいは、水供給口20bは、後述する台車19の周枠19aに固定するよう設置してもよい。
【0030】
送風手段21は、送風口21aと、排気口21bと、送風する空気の温度調整可能な送風機21cとを有し、送風機21cにより所定温度に調整された空気を、図示しない配管により送風口21aまで送風することにより温調養生空間17に送風する。実施の形態1にかかる送風手段21の送風口21aは、図2に示すように、温調養生空間17の下半部に設けられ、送風口21aから温調養生空間17に供給された冷風は、隔壁膜13を介して湿潤養生空間16の空気と熱交換しながら上昇し、温調養生空間17の最上部付近に設けられる排気口21bから排出される。送風口21aから供給された冷風と湿潤養生空間16とが熱交換することにより、湿潤養生空間16の温度を所望の温度まで低減し、覆工コンクリート1の温度上昇を抑制することが可能となる。覆工コンクリート1は、インバート側の拘束が強く、覆工脚部でひび割れ指数が下がる傾向にあるため、温調養生空間17の下層部に送風口21aを設けることにより、効果的に覆工コンクリート1の冷却を行うことができる。なお、湿潤養生空間16内の温度制御は、送風する空気の温度、風量等により行う。
【0031】
また、送風手段21は、覆工コンクリート1を打設する覆工セントル内に温調した空気を送風する覆工セントル送風ライン(図示しない)を有していてもよい。送風手段21は、覆工セントル送風ラインと温調養生空間17とに温調した空気の送風を切り替える弁を有し、該弁の切替えにより、打込みから脱枠までの期間、打設された覆工コンクリート1を、型枠を介して冷却することもできる。あるいは、覆工コンクリート養生装置100は、脱枠前の覆工コンクリート1の温度調整用に、送風手段21とは別の送風手段を有していてもよい。なお、送風手段より覆工セントル内に温調した空気を送風する場合には、温調した空気の拡散を防止して効果的に覆工コンクリート1を冷却するために、覆工セントルの型枠箇所を断熱シートで囲い込むことが好ましい。
【0032】
隔壁膜13、隔壁14および断熱性シート15は、覆工コンクリート1の表面1aに沿うように台車19によって支持される。台車19は、周枠19a、柱19b、梁19c、筋交い19fおよび車輪19dからなる。周枠19aは、図2に示すように覆工コンクリート1の表面1aに沿うように門型に形成してある。柱19b、梁19cおよび筋交い19fは、周枠19aを保持する。車輪19dは、柱19bの先端に設けられ、トンネル軸方向に沿って延設されるレール19eに沿って車輪19dを回転させて、台車19をトンネル10内で移動させる。
【0033】
図1および図2に示すように、台車19は、周枠19aおよび梁19cにより、湿潤養生空間16および温調養生空間17が覆工コンクリート1と同様のアーチ型形状を保つように、断熱性シート15を支持する。
【0034】
膜結合糸18は、隔壁膜13と断熱性シート15とを溶着、または接着により結合する。膜結合糸18は、断熱性シート15と同様の材料、または隔壁膜13と同様の材料で構成され、複数の膜結合糸18により隔壁膜13と断熱性シート15とを所定間隔(H2)で固定することにより、送風手段21により温調養生空間17に空気が送風された場合でも、温調養生空間17は所定のアーチ型形状を保持することが出来る。また、台車により断熱性シート15を支持し、かつ膜結合糸18により温調養生空間17のアーチ型形状を保持することにより、湿潤養生空間16についても所定のアーチ型形状が保持できる。膜結合糸18は、送風手段21により送風された空気の圧力に耐えられる構造であればよく、送風された空気の流れを阻害しない構造とすることが好ましい。
【0035】
隔壁14は、周枠19aのアーチ形状に沿って設けてあり、内部に空気が充填される袋状に形成される。隔壁14は、その内部に空気を充填することで断熱性を有している。この隔壁14は、トンネル掘削方向であるトンネル軸方向に沿って対をなして配置される。隔壁膜13および断熱性シート15は、対をなす隔壁14の間に設けられる。台車19の周りに、膜結合糸18により固定された隔壁膜13および断熱性シート15を被せ、周枠19aに取り付けた隔壁14に空気を充填する。その後、送風手段21により温調養生空間17に温調された空気を供給し、水分供給手段20により湿潤養生空間16に霧状の水分を供給することにより、覆工コンクリート1の表面1aの湿潤を保ちながら、温調養生空間17および湿潤養生空間16の温度を制御して、覆工コンクリート1の養生を行うことが出来る。
【0036】
このように、覆工コンクリート1の表面1aの湿潤を保持する湿潤養生空間16、および湿潤養生空間16の養生温度を調整する温調養生空間17を設けることにより、温暖な地域、季節等過酷な条件下においても、覆工コンクリート1の湿潤・養生温度を保つことが可能となり、覆工コンクリート1のひび割れを防止することができる。
【0037】
なお、実施の形態1の水分供給手段20は、水貯留タンク20c内の水を所定温度に制御しているが、温調養生空間17に送風手段21により温調下空気を送風して湿潤養生空間16内の温度、すなわち湿潤養生空間16に供給された霧状の水分の温度を調整することができるので、水貯留タンク20cを設けることなく、水道管等の水供給手段から水分供給口20bまで直接送液し、ノズル20aにより霧状の水分を湿潤養生空間16に供給しても湿潤養生空間16の温度制御を行うことも可能である。
【0038】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる覆工コンクリート養生装置は、湿潤養生空間の温度を調整する温調養生空間が、トンネルの下半部に形成される点で実施の形態1の覆工コンクリート養生装置と異なる。
【0039】
以下、図4〜6を参照して、実施の形態2にかかる覆工コンクリート養生装置200について詳細に説明する。なお、図4〜6において、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付している。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置200を示すトンネル10の横断面図である。図5は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置200を示すトンネル10要部の縦断面図である。図6は、図5の覆工コンクリート養生装置200を含むトンネル10のC−C部分断面図である。
【0041】
覆工コンクリート養生装置200は、トンネル10の下半部に隔壁膜13に沿って設けられる断熱性シート15Aを有し、台車19Aは、上半部の隔壁膜13および下半部の断熱性シート15Aを支持し、送風手段21は、隔壁膜13と断熱性シート15Aとにより形成される温調養生空間17Aに温調した空気を送風する。
【0042】
断熱性シート15Aは、トンネル10の下半部(脚部)のみに、隔壁膜13に沿って設けられる。ここで、トンネル10の下半部(脚部)とは、図5に示すスプリングラインSの下側である。断熱性シート15Aの水平方向端部は、温調養生空間17Aを形成するために隔壁膜13に溶着、または接着される。トンネル10の下半部(脚部)に温調養生空間17Aを形成することにより、湿潤養生空間16の下半部の温度を低下させてトンネル10の下半部(脚部)の覆工コンクリート1の温度上昇を抑制できるため、水和反応後、温度低下により硬化収縮した覆工コンクリート1が、インバートで拘束されることに起因するひび割れを効果的に防止できる。
【0043】
温調養生空間17Aには、送風機21cにより所定温度に調整された空気が送風口21aを介して供給され、排気口21bから排気される。送風口21aおよび排気口21bは、温調養生空間17A内全体に気流が生じるように、温調養生空間17Aのトンネル軸方向端部にそれぞれ設けられる(図6参照)。送風口21aおよび排気口21の位置を温調養生空間17Aの端部に設けることにより、効果的に湿潤養生空間16の温度制御が可能となる。
【0044】
台車19Aは、トンネル下半部に設けられる断熱性シート15Aを周枠19aおよび梁19cにより支持するとともに、トンネル上半部(天端部)に設けられる隔壁膜13を周枠19a’および梁19c’により支持する。周枠19a’および梁19c’は、隔壁膜13が、覆工コンクリート1の表面1aから所定距離H1離間させて支持するように、周枠19aおよび梁19cよりトンネル10方向に形成される。
【0045】
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる覆工コンクリート養生装置は、湿潤養生空間および温調養生空間がトンネル上半部とトンネル下半部とにそれぞれ分離されている点で、実施の形態1の覆工コンクリート養生装置と異なる。
【0046】
図7は、本発明の実施の形態3に係る覆工コンクリート養生装置300を示すトンネル10の横断面図である。図8は、本発明の実施の形態3に係る覆工コンクリート養生装置300を示すトンネル10要部の縦断面図である。図9は、図8の覆工コンクリート養生装置300を含むトンネル10のD−D部分断面図である。なお、図7〜9において、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付している。
【0047】
覆工コンクリート養生装置300は、湿潤養生空間および温調養生空間を、トンネル上半部とトンネル下半部とにそれぞれ分離する隔壁14bを有する。隔壁14bは、図7および図8に示すように、トンネル10を上半部と下半部とに分割するスプリングラインSの位置に設けられる。隔壁14bは、隔壁14と同様に、内部に空気が充填される袋状に形成され、隔壁14bに空気を充填することにより、湿潤養生空間を上半湿潤養生空間16Bと下半湿潤養生空間16Cとに、温調養生空間を上半温調養生空間17Bと下半温調養生空間17Cとにそれぞれ分割する。
【0048】
覆工コンクリート養生装置300は、上半湿潤養生空間16Bに霧状の水分を供給する水分供給手段20Bと、下半湿潤養生空間16Cに霧状の水分を供給する水分供給手段20Cとを備える。水分供給手段20Bは、水貯留タンク20c−1内で所定温度に調整された水を、図示しない配管および送液ポンプにより水分供給口20bまで送液後、ノズル20aにより上半湿潤養生空間16Bに霧状の水分を供給する。水分供給手段20Cは、水貯留タンク20c−2内で所定温度に調整された水を、図示しない配管および送液ポンプにより水分供給口20bまで送液後、ノズル20aにより下半湿潤養生空間16Cに霧状の水分を供給する。各湿潤養生空間に供給する水を貯留する水貯留タンクを個別に設けることにより、各湿潤養生空間に供給する水温を個別に管理することができるため、養生条件をより精密に管理することが可能となる。しかしながら、各湿潤養生空間の温度は、供給される水の温度より後述する各温調養生空間の温度に依存するため、1の水分供給手段により各湿潤養生空間に水を供給することも可能である。
【0049】
また、覆工コンクリート養生装置300は、上半温調養生空間17Bに温調された空気を供給する送風手段21Bと、下半温調養生空間17Cに温調された空気を供給する送風手段21Cとを備える。送風手段21Bは、送風機21c−1により所定温度に調整された空気を、図示しない配管により送風口21a−1まで送風し、送風口21a−1を介して上半温調養生空間17Bに送風し、排気口21b−1から排出する。実施の形態3にかかる送風手段21Bの送風口21a−1は、図7に示すように、上半温調養生空間17BのスプリングラインS近傍に設けられ、送風口21a−1から上半温調養生空間17Bに供給された冷風は、隔壁膜13を介して上半湿潤温調空間16Bと熱交換しながら上昇し、上半温調養生空間17Bの最上部付近に設けられる排気口21b−1から排出される。送風手段21Cは、送風機21c−2により所定温度に調整された空気を、図示しない配管により送風口21a−2まで送風し、送風口21a−2を介して温調養生空間下半17Cに送風し、排気口21b−2から排出する。送風口21a−2および排気口21b−2は、下半温調養生空間17C内全体に気流が生じるように、下半温調養生空間17Cのトンネル軸方向端部にそれぞれ設けられる(図9参照)。
【0050】
湿潤養生空間を上半湿潤養生空間16Bと下半湿潤養生空間16Cとに、温調養生空間を上半温調養生空間17Bと下半温調養生空間17Cとにそれぞれ分割する実施の形態3にかかる覆工コンクリート養生装置300は、トンネル10の上半部の覆工コンクリート1と、下半部の覆工コンクリート1の養生条件を精密に管理することが出来る。覆工コンクリート1において、上半部で生じるひび割れと下判部で生じるひび割れの原因は異なる場合があり、上半部では主にトンネル10の坑内温度が低い場合にトンネル軸方向にひび割れが生じることがあり、下半部では主に硬化したコンクリートの収縮が外部拘束されることによりトンネル軸方向と直行する方向にひび割れが生じる。かかる場合に、覆工コンクリート1の上半部と下半部とを、外部環境を考慮して異なる条件で養生することにより、効果的に覆工コンクリート1のひび割れを防止することが可能となる。
【0051】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、本発明の覆工コンクリート養生装置を1台以上使用する覆工コンクリート養生システムである。
【0052】
トンネル10の掘削や、覆工コンクリートの打設等は連続的に行われており、トンネル10の掘削、覆工コンクリートの打設、その後の覆工コンクリートの養生は同程度の時間に行うことが望ましい。しかしながら、覆工コンクリートの養生を、トンネル10の掘削や覆工コンクリートの打設に要する時間と同程度の時間、かつ同程度のスパンで行った場合、地域、季節等の外部環境要因により所望する強度の発現が得られないおそれがある。本実施の形態4にかかる覆工コンクリート養生システムは、本発明の覆工コンクリート養生装置を1台または2台以上使用して覆工コンクリートを養生することにより、コンクリートの種類や地域、季節等の外部環境要因に影響されることなく、所望する程度まで強度発現させるとともに、ひび割れ等の発生を防止する。
【0053】
図10を参照して、本発明の実施の形態4にかかる覆工コンクリート養生システム500を説明する。図10は、本発明の実施の形態4に係る覆工コンクリート養生システム500を示すトンネル10の縦断面図である。
【0054】
覆工コンクリート養生システム500は、図10に示すように覆工セントル12によって覆工コンクリート1を打設した長さ(トンネル掘削方向である軸方向の長さ)を基準とし、覆工セントル12の型枠長さ分を1スパンとして、トンネル10軸方向の長さが1スパン分の長さと等しい覆工コンクリート養生装置100(図1〜3参照)を3台連続して構成している。覆工コンクリート養生システム500は、覆工セントル12による覆工コンクリート1の打設工程後の、覆工コンクリート1の冷却養生を行う覆工コンクリート養生装置100−1と、冷却養生後に第1の保温養生を行う覆工コンクリート養生装置100−2と、第2の保温養生を行う覆工コンクリート養生装置100−3とからなる。第1保温養生と第2保温養生の養生条件は、同じでも異なっていてもよい。覆工コンクリート養生システム500は、覆工セントル12の型枠長さ分に対応した覆工コンクリート養生装置100を連続して構成することにより、覆工コンクリート1の打設からの経過時間に応じて、覆工コンクリート養生装置100−1、100−2および100−3の湿潤養生空間および温調養生空間の養生条件を適宜変更して、覆工コンクリート1の養生を行うことができる。これにより、コンクリートの種類や、季節、地域等の外部要因に影響されることなく、所望する程度まで強度発現が可能になるとともに、覆工コンクリート1のひび割れも防止することが可能となる。
【0055】
覆工コンクリート1のひび割れが最も多く発生するのは夏季であり、覆工セントル12から覆工コンクリート1が打込まれる段階から、いかに覆工コンクリート1の内部温度を抑制できるかがひび割れ防止のポイントとなる。打込み中から始まる冷却養生工程において、本発明に係る覆工コンクリート養生装置100を使用すれば、効果的に覆工コンクリート1の内部温度の上昇を抑制でき、その後の保温養生において、バルーンタイプの養生装置や、ミストタイプの養生装置を使用しても、コンクリートの強度発現を図りながら、ひび割れ防止が可能となる。
【0056】
実施の形態4の覆工コンクリート養生システム500は、覆工コンクリート養生装置100を3台連続して構成しているが、コンクリートの種類等や外部環境条件に応じて、覆工コンクリート養生装置100を2台連続して、冷却養生と保温養生を行ってもよい。また、4台以上連続した構成として、冷却養生と保温養生、例えば、第1冷却養生、第1保温養生、第2保温養生、第2冷却養生として、各養生条件を適宜変更して覆工コンクリート1の養生を行ってもよい。
【0057】
また、実施の形態4の変形例1として、覆工コンクリート養生装置200(図4〜6参照)を3台連続して構成する覆工コンクリート養生システム500Aが例示される(図11参照)。覆工コンクリート養生システム500Aは、覆工コンクリート養生システム500と同様に、覆工コンクリート1の打設からの経過時間に応じて、覆工コンクリート養生装置200−1、200−2および200−3の湿潤養生空間および温調養生空間の養生条件を適宜変更して、覆工コンクリート1の養生を行うことができる。これによりコンクリートの種類や、季節、地域等の外部要因に影響されることなく、所望する強度発現が可能になるとともに、覆工コンクリート1のひび割れも防止することが可能となる。
【0058】
さらに、実施の形態4の変形例2として、実施の形態1にかかる覆工コンクリート養生装置100に、覆工コンクリート1の養生装置として一般的に使用される覆工コンクリート養生装置を適用してもよい。たとえば、図12に示す覆工コンクリート養生システム500Bのように、一般的に使用される覆工コンクリート養生装置400−1および400−2を使用してもよい。覆工コンクリート養生装置400−1および400−2に代表される一般的に使用される覆工コンクリート養生装置としては、覆工コンクリート表面に密着させたバルーンに空気を送風して覆工コンクリート表面の湿潤を図りながら養生を行うバルーン式養生装置や、超音波装置または噴霧ノズルにより水分を供給して覆工コンクリート表面の湿潤を図りながら養生を行う養生装置が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法は、トンネルに打設された覆工コンクリートの養生に有用であり、特に、コンクリート打設後早期に脱枠された覆工コンクリートの養生において、所望する程度まで強度発現させるのに適している。
【符号の説明】
【0060】
1 覆工コンクリート
1a 表面
10 トンネル
10a 内壁面
11 吹付コンクリート
12 覆工セントル
13 隔壁膜
14、14b 隔壁
15、15A 断熱性シート
16 湿潤養生空間
17、17A 温調養生空間
18 膜結合糸
19 台車
19a、19a’ 周枠
19b 柱
19c、19c’ 梁
19d 車輪
19e レール
19f 筋交い
20 水分供給手段
21 送風手段
100、200、300 覆工コンクリート養生装置
500 覆工コンクリート養生システム
S スプリングライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートを養生する覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
覆工コンクリートなどのコンクリートは、打設後、セメントの水和反応に伴う発熱によってコンクリート温度が上昇し、その後放熱によって徐々に外気温程度まで冷却されることにより、コンクリートの内部と表面との温度差に起因するひび割れや、コンクリートの収縮により地盤等から受ける拘束によるひび割れが発生することがある。また、コンクリートが十分に硬化していない状態で、水和反応に伴う水分の蒸発によりコンクリート表面が乾燥すると、コンクリート表面にひび割れが発生することがある。したがって、コンクリート種類や、トンネル坑内の温度、湿度、コンクリート打設時の初期温度等の種々の条件を考慮した上で、コンクリート表面からの水分の蒸発を防ぐとともに、コンクリート内部の温度上昇を抑制する養生が必要になる。
【0003】
従来、トンネル内に打設された覆工コンクリートの養生温度を保持する覆工コンクリート養生装置として、断熱性シートと覆工コンクリート表面とを隔壁により閉塞して形成した断熱空間を設け、前記断熱空間に空気を充填することにより覆工コンクリートの養生温度を調整する覆工コンクリート養生設備がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、トンネル内の覆工コンクリートの養生温度を制御する覆工コンクリート養生装置として、遮水シートと覆工コンクリート表面とにより形成された養生空間に、霧状の水を噴霧して湿潤状態を保持することにより、覆工コンクリートを養生する覆工コンクリート養生設備が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−291690号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】トンネルと地下、452号、vol39、No.4、2008年4月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の覆工コンクリート養生設備では、送風した空気により断熱空間を設けて覆工コンクリートの養生温度を調整できるものの、たとえば、温暖な季節や地域のような過酷な条件下では、断熱空間の温度を所望する温度に維持することは困難であった。
【0008】
また、非特許文献1に記載の覆工コンクリート養生設備では、噴霧水を温度調整し、養生空間内の湿度を制御できるものの、覆工コンクリート表面に直接水滴をつけないためには、噴霧量をある水量以下とする必要があった。このため、上記同様、過酷な条件下では、養生空間の温度を所望する温度に維持することは困難であった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、覆工コンクリート表面を濡らすことなく湿潤状態を保つとともに、過酷な条件下においても養生温度を所望の温度に調整しうる覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の覆工コンクリート養生装置は、トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートの養生装置であって、前記覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜と、前記覆工コンクリート表面と前記隔壁膜とにより形成される湿潤養生空間に霧状の水分を供給する水分供給手段と、前記隔壁膜の内周に沿って該隔壁膜と所定距離離間するように設けられる断熱性シートと、前記隔壁膜と前記断熱性シートとにより形成される温調養生空間内に、温調された空気を送風する送風手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記覆工コンクリートを打設する覆工セントル内にも温調された空気を送風して、脱枠前の覆工コンクリートの温度を調整する手段を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記隔壁膜と前記断熱性シートとを固定する複数の膜結合手段を備えることを保つことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記送風手段は、前記温調養生空間の下半部に設けられる送風口と前記温調養生空間の最上部付近に設けられる排気口と、温度調整された空気を送風する送風機とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記隔壁膜の表面には、凸部、フィンまたは植毛が設けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の覆工コンクリート養生装置は、上記発明において、前記湿潤養生空間および前記温調養生空間を、覆工コンクリートを打設したトンネルの上半部と下半部とにそれぞれ分割する断熱性の隔壁を備え、上半部の第1湿潤養生空間と下半部の第2湿潤養生空間、および上半部の第1温調養生空間と下半部の第2温調養生空間との養生条件を変更しうることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記に記載の覆工コンクリート養生装置を1以上含む覆工コンクリート養生システムであって、覆工コンクリート打設からの経過時間に応じて、各覆工コンクリート養生装置の湿潤養生空間および温調養生空間の養生条件を変更して前記覆工コンクリートの養生を行うことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の覆工コンクリート養生方法は、トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートの養生方法であって、前記覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜と覆工コンクリート表面とにより形成される湿潤養生空間に、霧状の水分を供給して前記覆工コンクリートを養生する湿潤養生ステップと、前記隔壁膜に沿って該隔壁膜から所定距離離間するように設けられる断熱性シートと前記隔壁膜とにより形成される温調養生空間に、温調された空気を送風して前記湿潤養生空間の温度を調整する温調養生ステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の覆工コンクリート養生方法は、上記発明において、前記温調養生ステップは、前記温調養生空間の下半部から温調された空気を供給し、前記温調養生空間の最上部付近から空気を排出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法は、覆工コンクリートの表面を含む湿潤養生空間に霧状の水分を供給するとともに、温調養生空間に温調した空気を送風することにより、前記温調養生空間のみならず前記湿潤養生空間の温度を調整することができるため、覆工コンクリート表面を濡らすことなく、覆工コンクリート表面の湿潤を保ちながら養生温度を制御して覆工コンクリートのひび割れを防止することができる。また、本発明に係る覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法は、覆工コンクリート打込み中、および打込み完了から脱枠までの型枠箇所に温調した空気を送風することにより、打込み中から脱枠までの間においても覆工コンクリートの温度を調整することができるため、コンクリートの水和反応に伴う温度上昇を効果的に抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図2】図2は、図1の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのA−A断面図である。
【図3】図3は、図1の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのB−B部分断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネルの横断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図6】図6は、図5の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのC−C部分断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態3に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネルの横断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置を示すトンネル要部の縦断面図である。
【図9】図9は、図8の覆工コンクリート養生装置を含むトンネルのD−D部分断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態4に係る覆工コンクリート養生システムを示すトンネルの縦断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態4の変形例1に係る覆工コンクリート養生システムを示すトンネルの縦断面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態4の変形例2に係る覆工コンクリート養生システムを示すトンネルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る覆工コンクリート養生装置を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1〜図3は本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置100を示す概略図である。ここで、図1は、覆工コンクリート養生装置100を示すトンネル10要部の縦断面図(トンネル掘削方向である軸方向に沿う断面)を示しており、図2は、図1の覆工コンクリート養生装置100を含むトンネルのA−A断面図(トンネル掘削方向である軸方向に直交する断面)を示しており、図3は、図1の覆工コンクリート養生装置100を含むトンネルのB−B部分断面図を示している。
【0023】
覆工コンクリート1は、図1に示すように掘削したトンネル10の内壁面10aに吹付コンクリート11を吹き付けてロックボルト(図示せず)を打ち込むことによってトンネル10の内壁面10aの崩落などを防いだ後、吹付コンクリート11の内壁面に防水シート(図示せず)を張り、吹付コンクリート11との間に防水シートを介在する形態で覆工セントルを用いて打設される。覆工セントル12は、吹付コンクリート11(防水シート)との間に覆工コンクリート1を打設するための空隙をおいて門型に形成した型枠を有している。この型枠には、前記空隙にコンクリートを流し込むための孔(図示せず)が形成してある。そして、覆工セントルは、型枠の内側から前記孔を介して吹付コンクリート11(防水シート)との間の空隙にコンクリートを流し込むことによって覆工コンクリート1を打設する。覆工セントル12は、覆工コンクリート1を打設した後、所定時間(例えば1日〜2日)の養生期間をおいて外される。
【0024】
覆工セントルを外した後、本発明の実施の形態1に係る覆工コンクリート養生装置100を設置し、覆工コンクリート1の養生を行うが、覆工セントル箇所においても覆工養生装置100による温度の調整が開始されている。
【0025】
覆工コンクリート養生装置100は、覆工コンクリート1の表面1aに沿って設けられる防水性の隔壁膜13と、隔壁膜13に沿って設けられる断熱性シート15と、断熱性シート15を支持する台車19と、覆工コンクリート表面1aと隔壁膜13とにより形成される湿潤養生空間16に霧状の水分を供給する水分供給手段20と、隔壁膜13と断熱性シート15とにより形成される温調養生空間17に温調した空気を送風する送風手段21とを備える。
【0026】
図1〜図3に示すように、覆工コンクリート1の表面1a側を覆う態様で当該覆工コンクリート1の表面1aから所定距離H1離間させて、防水性の隔壁膜13を設け、当該隔壁膜13の両端部を覆工コンクリート表面1aにアーチ状に設けた断熱性の隔壁14で密閉して湿潤養生空間16を設ける。隔壁膜13は、通風による霧状の水粒子(粒径10〜100μm)の排出を防止できる防水性の材料であればよく、通気性のない膜状シートが適している。また、隔壁膜13は、熱伝達性能が高いものが好ましく、単位面積当たりの表面積を増大させる凸部、フィンまたは植毛を付すことが好ましい。
【0027】
また、隔壁膜13に沿って所定距離H2離間させて、断熱性シート15を設ける。当該断熱性シート15の両端部についても、覆工コンクリート表面1aにアーチ状に設けた断熱性の隔壁14で略密閉して温調養生空間17を設ける。断熱性シート15は、例えば発泡ウレタンにアルミフィルムを積層したシートが好適に使用されるが、断熱性を有する膜状シートであればよい。なお、湿潤養生空間16および温調養生空間17の密閉性を保つために隔壁14を設けることが望ましいが、隔壁14を設けることなく、隔壁膜13と断熱性シート15の両端部を溶着、または接着して密閉性を保持してもよい。
【0028】
水分供給手段20は、ノズル20aと、水分供給口20bと、水貯留タンク20cとを有し、水貯留タンク20c内で所定温度に調整された水を、図示しない配管および送液ポンプにより水分供給口20bまで送液後、ノズル20aにより霧状の水分を湿潤養生空間16に供給する。水分供給手段20により湿潤養生空間16に供給される水分量は、覆工コンクリート表面1aに水が付着しない程度、即ち、湿潤養生空間16内の湿度が100%未満となるようにするのが好ましい。水分量が多いほど、コンクリート表面1aを湿潤に保ち、コンクリートの水和反応を促進させるが、水分量が多すぎると、付着した水の気化熱でコンクリート表面のみが急冷され表面ひび割れを発生させたり、水が付着した跡が残存し美観を損ねるためである。
【0029】
水供給口20bは、断熱性シート15に接して設けられ、ノズル20aを支持する。ノズル20aは、隔壁膜13および断熱性シート15を貫通して設置され、ノズル20a先端部から湿潤養生空間16内に霧状の水分を供給する。隔壁膜13および断熱性シート15のノズル20a貫通口を介し、湿潤養生空間16内の霧状水分、および温調養生空間17内の空気が漏れでないよう、隔壁膜13および断熱性シート15とノズル20aとの接触部はシールド処理される。あるいは、水供給口20bは、後述する台車19の周枠19aに固定するよう設置してもよい。
【0030】
送風手段21は、送風口21aと、排気口21bと、送風する空気の温度調整可能な送風機21cとを有し、送風機21cにより所定温度に調整された空気を、図示しない配管により送風口21aまで送風することにより温調養生空間17に送風する。実施の形態1にかかる送風手段21の送風口21aは、図2に示すように、温調養生空間17の下半部に設けられ、送風口21aから温調養生空間17に供給された冷風は、隔壁膜13を介して湿潤養生空間16の空気と熱交換しながら上昇し、温調養生空間17の最上部付近に設けられる排気口21bから排出される。送風口21aから供給された冷風と湿潤養生空間16とが熱交換することにより、湿潤養生空間16の温度を所望の温度まで低減し、覆工コンクリート1の温度上昇を抑制することが可能となる。覆工コンクリート1は、インバート側の拘束が強く、覆工脚部でひび割れ指数が下がる傾向にあるため、温調養生空間17の下層部に送風口21aを設けることにより、効果的に覆工コンクリート1の冷却を行うことができる。なお、湿潤養生空間16内の温度制御は、送風する空気の温度、風量等により行う。
【0031】
また、送風手段21は、覆工コンクリート1を打設する覆工セントル内に温調した空気を送風する覆工セントル送風ライン(図示しない)を有していてもよい。送風手段21は、覆工セントル送風ラインと温調養生空間17とに温調した空気の送風を切り替える弁を有し、該弁の切替えにより、打込みから脱枠までの期間、打設された覆工コンクリート1を、型枠を介して冷却することもできる。あるいは、覆工コンクリート養生装置100は、脱枠前の覆工コンクリート1の温度調整用に、送風手段21とは別の送風手段を有していてもよい。なお、送風手段より覆工セントル内に温調した空気を送風する場合には、温調した空気の拡散を防止して効果的に覆工コンクリート1を冷却するために、覆工セントルの型枠箇所を断熱シートで囲い込むことが好ましい。
【0032】
隔壁膜13、隔壁14および断熱性シート15は、覆工コンクリート1の表面1aに沿うように台車19によって支持される。台車19は、周枠19a、柱19b、梁19c、筋交い19fおよび車輪19dからなる。周枠19aは、図2に示すように覆工コンクリート1の表面1aに沿うように門型に形成してある。柱19b、梁19cおよび筋交い19fは、周枠19aを保持する。車輪19dは、柱19bの先端に設けられ、トンネル軸方向に沿って延設されるレール19eに沿って車輪19dを回転させて、台車19をトンネル10内で移動させる。
【0033】
図1および図2に示すように、台車19は、周枠19aおよび梁19cにより、湿潤養生空間16および温調養生空間17が覆工コンクリート1と同様のアーチ型形状を保つように、断熱性シート15を支持する。
【0034】
膜結合糸18は、隔壁膜13と断熱性シート15とを溶着、または接着により結合する。膜結合糸18は、断熱性シート15と同様の材料、または隔壁膜13と同様の材料で構成され、複数の膜結合糸18により隔壁膜13と断熱性シート15とを所定間隔(H2)で固定することにより、送風手段21により温調養生空間17に空気が送風された場合でも、温調養生空間17は所定のアーチ型形状を保持することが出来る。また、台車により断熱性シート15を支持し、かつ膜結合糸18により温調養生空間17のアーチ型形状を保持することにより、湿潤養生空間16についても所定のアーチ型形状が保持できる。膜結合糸18は、送風手段21により送風された空気の圧力に耐えられる構造であればよく、送風された空気の流れを阻害しない構造とすることが好ましい。
【0035】
隔壁14は、周枠19aのアーチ形状に沿って設けてあり、内部に空気が充填される袋状に形成される。隔壁14は、その内部に空気を充填することで断熱性を有している。この隔壁14は、トンネル掘削方向であるトンネル軸方向に沿って対をなして配置される。隔壁膜13および断熱性シート15は、対をなす隔壁14の間に設けられる。台車19の周りに、膜結合糸18により固定された隔壁膜13および断熱性シート15を被せ、周枠19aに取り付けた隔壁14に空気を充填する。その後、送風手段21により温調養生空間17に温調された空気を供給し、水分供給手段20により湿潤養生空間16に霧状の水分を供給することにより、覆工コンクリート1の表面1aの湿潤を保ちながら、温調養生空間17および湿潤養生空間16の温度を制御して、覆工コンクリート1の養生を行うことが出来る。
【0036】
このように、覆工コンクリート1の表面1aの湿潤を保持する湿潤養生空間16、および湿潤養生空間16の養生温度を調整する温調養生空間17を設けることにより、温暖な地域、季節等過酷な条件下においても、覆工コンクリート1の湿潤・養生温度を保つことが可能となり、覆工コンクリート1のひび割れを防止することができる。
【0037】
なお、実施の形態1の水分供給手段20は、水貯留タンク20c内の水を所定温度に制御しているが、温調養生空間17に送風手段21により温調下空気を送風して湿潤養生空間16内の温度、すなわち湿潤養生空間16に供給された霧状の水分の温度を調整することができるので、水貯留タンク20cを設けることなく、水道管等の水供給手段から水分供給口20bまで直接送液し、ノズル20aにより霧状の水分を湿潤養生空間16に供給しても湿潤養生空間16の温度制御を行うことも可能である。
【0038】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる覆工コンクリート養生装置は、湿潤養生空間の温度を調整する温調養生空間が、トンネルの下半部に形成される点で実施の形態1の覆工コンクリート養生装置と異なる。
【0039】
以下、図4〜6を参照して、実施の形態2にかかる覆工コンクリート養生装置200について詳細に説明する。なお、図4〜6において、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付している。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置200を示すトンネル10の横断面図である。図5は、本発明の実施の形態2に係る覆工コンクリート養生装置200を示すトンネル10要部の縦断面図である。図6は、図5の覆工コンクリート養生装置200を含むトンネル10のC−C部分断面図である。
【0041】
覆工コンクリート養生装置200は、トンネル10の下半部に隔壁膜13に沿って設けられる断熱性シート15Aを有し、台車19Aは、上半部の隔壁膜13および下半部の断熱性シート15Aを支持し、送風手段21は、隔壁膜13と断熱性シート15Aとにより形成される温調養生空間17Aに温調した空気を送風する。
【0042】
断熱性シート15Aは、トンネル10の下半部(脚部)のみに、隔壁膜13に沿って設けられる。ここで、トンネル10の下半部(脚部)とは、図5に示すスプリングラインSの下側である。断熱性シート15Aの水平方向端部は、温調養生空間17Aを形成するために隔壁膜13に溶着、または接着される。トンネル10の下半部(脚部)に温調養生空間17Aを形成することにより、湿潤養生空間16の下半部の温度を低下させてトンネル10の下半部(脚部)の覆工コンクリート1の温度上昇を抑制できるため、水和反応後、温度低下により硬化収縮した覆工コンクリート1が、インバートで拘束されることに起因するひび割れを効果的に防止できる。
【0043】
温調養生空間17Aには、送風機21cにより所定温度に調整された空気が送風口21aを介して供給され、排気口21bから排気される。送風口21aおよび排気口21bは、温調養生空間17A内全体に気流が生じるように、温調養生空間17Aのトンネル軸方向端部にそれぞれ設けられる(図6参照)。送風口21aおよび排気口21の位置を温調養生空間17Aの端部に設けることにより、効果的に湿潤養生空間16の温度制御が可能となる。
【0044】
台車19Aは、トンネル下半部に設けられる断熱性シート15Aを周枠19aおよび梁19cにより支持するとともに、トンネル上半部(天端部)に設けられる隔壁膜13を周枠19a’および梁19c’により支持する。周枠19a’および梁19c’は、隔壁膜13が、覆工コンクリート1の表面1aから所定距離H1離間させて支持するように、周枠19aおよび梁19cよりトンネル10方向に形成される。
【0045】
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる覆工コンクリート養生装置は、湿潤養生空間および温調養生空間がトンネル上半部とトンネル下半部とにそれぞれ分離されている点で、実施の形態1の覆工コンクリート養生装置と異なる。
【0046】
図7は、本発明の実施の形態3に係る覆工コンクリート養生装置300を示すトンネル10の横断面図である。図8は、本発明の実施の形態3に係る覆工コンクリート養生装置300を示すトンネル10要部の縦断面図である。図9は、図8の覆工コンクリート養生装置300を含むトンネル10のD−D部分断面図である。なお、図7〜9において、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付している。
【0047】
覆工コンクリート養生装置300は、湿潤養生空間および温調養生空間を、トンネル上半部とトンネル下半部とにそれぞれ分離する隔壁14bを有する。隔壁14bは、図7および図8に示すように、トンネル10を上半部と下半部とに分割するスプリングラインSの位置に設けられる。隔壁14bは、隔壁14と同様に、内部に空気が充填される袋状に形成され、隔壁14bに空気を充填することにより、湿潤養生空間を上半湿潤養生空間16Bと下半湿潤養生空間16Cとに、温調養生空間を上半温調養生空間17Bと下半温調養生空間17Cとにそれぞれ分割する。
【0048】
覆工コンクリート養生装置300は、上半湿潤養生空間16Bに霧状の水分を供給する水分供給手段20Bと、下半湿潤養生空間16Cに霧状の水分を供給する水分供給手段20Cとを備える。水分供給手段20Bは、水貯留タンク20c−1内で所定温度に調整された水を、図示しない配管および送液ポンプにより水分供給口20bまで送液後、ノズル20aにより上半湿潤養生空間16Bに霧状の水分を供給する。水分供給手段20Cは、水貯留タンク20c−2内で所定温度に調整された水を、図示しない配管および送液ポンプにより水分供給口20bまで送液後、ノズル20aにより下半湿潤養生空間16Cに霧状の水分を供給する。各湿潤養生空間に供給する水を貯留する水貯留タンクを個別に設けることにより、各湿潤養生空間に供給する水温を個別に管理することができるため、養生条件をより精密に管理することが可能となる。しかしながら、各湿潤養生空間の温度は、供給される水の温度より後述する各温調養生空間の温度に依存するため、1の水分供給手段により各湿潤養生空間に水を供給することも可能である。
【0049】
また、覆工コンクリート養生装置300は、上半温調養生空間17Bに温調された空気を供給する送風手段21Bと、下半温調養生空間17Cに温調された空気を供給する送風手段21Cとを備える。送風手段21Bは、送風機21c−1により所定温度に調整された空気を、図示しない配管により送風口21a−1まで送風し、送風口21a−1を介して上半温調養生空間17Bに送風し、排気口21b−1から排出する。実施の形態3にかかる送風手段21Bの送風口21a−1は、図7に示すように、上半温調養生空間17BのスプリングラインS近傍に設けられ、送風口21a−1から上半温調養生空間17Bに供給された冷風は、隔壁膜13を介して上半湿潤温調空間16Bと熱交換しながら上昇し、上半温調養生空間17Bの最上部付近に設けられる排気口21b−1から排出される。送風手段21Cは、送風機21c−2により所定温度に調整された空気を、図示しない配管により送風口21a−2まで送風し、送風口21a−2を介して温調養生空間下半17Cに送風し、排気口21b−2から排出する。送風口21a−2および排気口21b−2は、下半温調養生空間17C内全体に気流が生じるように、下半温調養生空間17Cのトンネル軸方向端部にそれぞれ設けられる(図9参照)。
【0050】
湿潤養生空間を上半湿潤養生空間16Bと下半湿潤養生空間16Cとに、温調養生空間を上半温調養生空間17Bと下半温調養生空間17Cとにそれぞれ分割する実施の形態3にかかる覆工コンクリート養生装置300は、トンネル10の上半部の覆工コンクリート1と、下半部の覆工コンクリート1の養生条件を精密に管理することが出来る。覆工コンクリート1において、上半部で生じるひび割れと下判部で生じるひび割れの原因は異なる場合があり、上半部では主にトンネル10の坑内温度が低い場合にトンネル軸方向にひび割れが生じることがあり、下半部では主に硬化したコンクリートの収縮が外部拘束されることによりトンネル軸方向と直行する方向にひび割れが生じる。かかる場合に、覆工コンクリート1の上半部と下半部とを、外部環境を考慮して異なる条件で養生することにより、効果的に覆工コンクリート1のひび割れを防止することが可能となる。
【0051】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、本発明の覆工コンクリート養生装置を1台以上使用する覆工コンクリート養生システムである。
【0052】
トンネル10の掘削や、覆工コンクリートの打設等は連続的に行われており、トンネル10の掘削、覆工コンクリートの打設、その後の覆工コンクリートの養生は同程度の時間に行うことが望ましい。しかしながら、覆工コンクリートの養生を、トンネル10の掘削や覆工コンクリートの打設に要する時間と同程度の時間、かつ同程度のスパンで行った場合、地域、季節等の外部環境要因により所望する強度の発現が得られないおそれがある。本実施の形態4にかかる覆工コンクリート養生システムは、本発明の覆工コンクリート養生装置を1台または2台以上使用して覆工コンクリートを養生することにより、コンクリートの種類や地域、季節等の外部環境要因に影響されることなく、所望する程度まで強度発現させるとともに、ひび割れ等の発生を防止する。
【0053】
図10を参照して、本発明の実施の形態4にかかる覆工コンクリート養生システム500を説明する。図10は、本発明の実施の形態4に係る覆工コンクリート養生システム500を示すトンネル10の縦断面図である。
【0054】
覆工コンクリート養生システム500は、図10に示すように覆工セントル12によって覆工コンクリート1を打設した長さ(トンネル掘削方向である軸方向の長さ)を基準とし、覆工セントル12の型枠長さ分を1スパンとして、トンネル10軸方向の長さが1スパン分の長さと等しい覆工コンクリート養生装置100(図1〜3参照)を3台連続して構成している。覆工コンクリート養生システム500は、覆工セントル12による覆工コンクリート1の打設工程後の、覆工コンクリート1の冷却養生を行う覆工コンクリート養生装置100−1と、冷却養生後に第1の保温養生を行う覆工コンクリート養生装置100−2と、第2の保温養生を行う覆工コンクリート養生装置100−3とからなる。第1保温養生と第2保温養生の養生条件は、同じでも異なっていてもよい。覆工コンクリート養生システム500は、覆工セントル12の型枠長さ分に対応した覆工コンクリート養生装置100を連続して構成することにより、覆工コンクリート1の打設からの経過時間に応じて、覆工コンクリート養生装置100−1、100−2および100−3の湿潤養生空間および温調養生空間の養生条件を適宜変更して、覆工コンクリート1の養生を行うことができる。これにより、コンクリートの種類や、季節、地域等の外部要因に影響されることなく、所望する程度まで強度発現が可能になるとともに、覆工コンクリート1のひび割れも防止することが可能となる。
【0055】
覆工コンクリート1のひび割れが最も多く発生するのは夏季であり、覆工セントル12から覆工コンクリート1が打込まれる段階から、いかに覆工コンクリート1の内部温度を抑制できるかがひび割れ防止のポイントとなる。打込み中から始まる冷却養生工程において、本発明に係る覆工コンクリート養生装置100を使用すれば、効果的に覆工コンクリート1の内部温度の上昇を抑制でき、その後の保温養生において、バルーンタイプの養生装置や、ミストタイプの養生装置を使用しても、コンクリートの強度発現を図りながら、ひび割れ防止が可能となる。
【0056】
実施の形態4の覆工コンクリート養生システム500は、覆工コンクリート養生装置100を3台連続して構成しているが、コンクリートの種類等や外部環境条件に応じて、覆工コンクリート養生装置100を2台連続して、冷却養生と保温養生を行ってもよい。また、4台以上連続した構成として、冷却養生と保温養生、例えば、第1冷却養生、第1保温養生、第2保温養生、第2冷却養生として、各養生条件を適宜変更して覆工コンクリート1の養生を行ってもよい。
【0057】
また、実施の形態4の変形例1として、覆工コンクリート養生装置200(図4〜6参照)を3台連続して構成する覆工コンクリート養生システム500Aが例示される(図11参照)。覆工コンクリート養生システム500Aは、覆工コンクリート養生システム500と同様に、覆工コンクリート1の打設からの経過時間に応じて、覆工コンクリート養生装置200−1、200−2および200−3の湿潤養生空間および温調養生空間の養生条件を適宜変更して、覆工コンクリート1の養生を行うことができる。これによりコンクリートの種類や、季節、地域等の外部要因に影響されることなく、所望する強度発現が可能になるとともに、覆工コンクリート1のひび割れも防止することが可能となる。
【0058】
さらに、実施の形態4の変形例2として、実施の形態1にかかる覆工コンクリート養生装置100に、覆工コンクリート1の養生装置として一般的に使用される覆工コンクリート養生装置を適用してもよい。たとえば、図12に示す覆工コンクリート養生システム500Bのように、一般的に使用される覆工コンクリート養生装置400−1および400−2を使用してもよい。覆工コンクリート養生装置400−1および400−2に代表される一般的に使用される覆工コンクリート養生装置としては、覆工コンクリート表面に密着させたバルーンに空気を送風して覆工コンクリート表面の湿潤を図りながら養生を行うバルーン式養生装置や、超音波装置または噴霧ノズルにより水分を供給して覆工コンクリート表面の湿潤を図りながら養生を行う養生装置が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の覆工コンクリート養生装置、覆工コンクリート養生システムおよび覆工コンクリート養生方法は、トンネルに打設された覆工コンクリートの養生に有用であり、特に、コンクリート打設後早期に脱枠された覆工コンクリートの養生において、所望する程度まで強度発現させるのに適している。
【符号の説明】
【0060】
1 覆工コンクリート
1a 表面
10 トンネル
10a 内壁面
11 吹付コンクリート
12 覆工セントル
13 隔壁膜
14、14b 隔壁
15、15A 断熱性シート
16 湿潤養生空間
17、17A 温調養生空間
18 膜結合糸
19 台車
19a、19a’ 周枠
19b 柱
19c、19c’ 梁
19d 車輪
19e レール
19f 筋交い
20 水分供給手段
21 送風手段
100、200、300 覆工コンクリート養生装置
500 覆工コンクリート養生システム
S スプリングライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートの養生装置であって、
前記覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜と、
前記覆工コンクリート表面と前記隔壁膜とにより形成される湿潤養生空間に霧状の水分を供給する水分供給手段と、
前記隔壁膜の内周に沿って該隔壁膜と所定距離離間するように設けられる断熱性シートと、
前記隔壁膜と前記断熱性シートとにより形成される温調養生空間内に、温調された空気を送風する送風手段と、
を備えることを特徴とする覆工コンクリート養生装置。
【請求項2】
前記覆工コンクリートを打設する覆工セントル内にも温調された空気を送風して、脱枠前の覆工コンクリートの温度を調整する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項3】
前記隔壁膜と前記断熱性シートとを固定する複数の膜結合手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項4】
前記送風手段は、前記温調養生空間の下半部に設けられる送風口と前記温調養生空間の最上部付近に設けられる排気口と、温度調整された空気を送風する送風機とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項5】
前記隔壁膜の表面には、凸部、フィンまたは植毛が設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項6】
前記湿潤養生空間および前記温調養生空間を、覆工コンクリートを打設したトンネルの上半部と下半部とにそれぞれ分割する断熱性の隔壁を備え、
上半部の第1湿潤養生空間と下半部の第2湿潤養生空間、および上半部の第1温調養生空間と下半部の第2温調養生空間との養生条件を変更しうることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の覆工コンクリート養生装置を1以上含む覆工コンクリート養生システムであって、
覆工コンクリート打設からの経過時間に応じて、各覆工コンクリート養生装置の湿潤養生空間および温調養生空間の養生条件を変更して前記覆工コンクリートの養生を行うことを特徴とする覆工コンクリート養生システム。
【請求項8】
トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートの養生方法であって、
前記覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜と覆工コンクリート表面とにより形成される湿潤養生空間に、霧状の水分を供給して前記覆工コンクリートを養生する湿潤養生ステップと、
前記隔壁膜に沿って該隔壁膜から所定距離離間するように設けられる断熱性シートと前記隔壁膜とにより形成される温調養生空間に、温調された空気を送風して前記湿潤養生空間の温度を調整する温調養生ステップと、
を含むことを特徴とする覆工コンクリート養生方法。
【請求項9】
前記温調養生ステップは、前記温調養生空間の下半部から温調された空気を供給し、前記温調養生空間の最上部付近から空気を排出させることを特徴とする請求項8に記載の覆工コンクリート養生方法。
【請求項1】
トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートの養生装置であって、
前記覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜と、
前記覆工コンクリート表面と前記隔壁膜とにより形成される湿潤養生空間に霧状の水分を供給する水分供給手段と、
前記隔壁膜の内周に沿って該隔壁膜と所定距離離間するように設けられる断熱性シートと、
前記隔壁膜と前記断熱性シートとにより形成される温調養生空間内に、温調された空気を送風する送風手段と、
を備えることを特徴とする覆工コンクリート養生装置。
【請求項2】
前記覆工コンクリートを打設する覆工セントル内にも温調された空気を送風して、脱枠前の覆工コンクリートの温度を調整する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項3】
前記隔壁膜と前記断熱性シートとを固定する複数の膜結合手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項4】
前記送風手段は、前記温調養生空間の下半部に設けられる送風口と前記温調養生空間の最上部付近に設けられる排気口と、温度調整された空気を送風する送風機とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項5】
前記隔壁膜の表面には、凸部、フィンまたは植毛が設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項6】
前記湿潤養生空間および前記温調養生空間を、覆工コンクリートを打設したトンネルの上半部と下半部とにそれぞれ分割する断熱性の隔壁を備え、
上半部の第1湿潤養生空間と下半部の第2湿潤養生空間、および上半部の第1温調養生空間と下半部の第2温調養生空間との養生条件を変更しうることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の覆工コンクリート養生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の覆工コンクリート養生装置を1以上含む覆工コンクリート養生システムであって、
覆工コンクリート打設からの経過時間に応じて、各覆工コンクリート養生装置の湿潤養生空間および温調養生空間の養生条件を変更して前記覆工コンクリートの養生を行うことを特徴とする覆工コンクリート養生システム。
【請求項8】
トンネル内壁面に打設された覆工コンクリートの養生方法であって、
前記覆工コンクリートの表面に沿って該表面から所定距離離間するように設けられる防水性の隔壁膜と覆工コンクリート表面とにより形成される湿潤養生空間に、霧状の水分を供給して前記覆工コンクリートを養生する湿潤養生ステップと、
前記隔壁膜に沿って該隔壁膜から所定距離離間するように設けられる断熱性シートと前記隔壁膜とにより形成される温調養生空間に、温調された空気を送風して前記湿潤養生空間の温度を調整する温調養生ステップと、
を含むことを特徴とする覆工コンクリート養生方法。
【請求項9】
前記温調養生ステップは、前記温調養生空間の下半部から温調された空気を供給し、前記温調養生空間の最上部付近から空気を排出させることを特徴とする請求項8に記載の覆工コンクリート養生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−252267(P2011−252267A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124564(P2010−124564)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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