説明

覆工切替式トンネル掘削機及び覆工切替方法

【課題】直打ちコンクリートによる覆工とセグメントによる覆工とを必要に応じて容易にかつ短期間で切り替えることができると共に掘削機本体の機長の短縮が図れる覆工切替式トンネル掘削機を提供する。
【解決手段】直打ちコンクリートCによる覆工とセグメントSによる覆工とを随時切り替えてトンネルを掘削することが可能な覆工切替式泥土圧シールド掘削機10において、妻型枠43をシールドジャッキ35のシリンダ先端より突出しない位置まで退避可能とすると共に、前記シールドジャッキの回転可能なピストンロッド先端に偏心して設けた大径部35cに、スプレッダ36をピストンロッド軸心と直交する方向へスライド自在に組み付け、当該スプレッダの中心が内型枠Mに対応する位置とセグメントSに対応する位置とに選択的に位置決め可能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル施工中に、近接構造物の存否や土,水圧の変化等掘削条件(環境)に応じて、直打ちコンクリートによる覆工とセグメントによる覆工とを随時切り替えてトンネルを掘削することが可能な覆工切替式トンネル掘削機及び覆工切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のトンネル掘削機として、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
これは、トンネルの直線部分は直打ち(現場打ち)コンクリートによる覆工を行い、(急)曲線部分はセグメントによる覆工を行うものである。詳説すると、先ず、セグメントによる覆工が可能なシールド掘進機のテールプレートの内側に取外し自在となるインナープレートを取り付け、このインナープレートを外型枠として当該インナープレートの内周に沿って所要数の内型枠を組み立て、インナープレートと内型枠との間に鉄筋を配筋した後コンクリートを打設し、直打ちコンクリートによる直線部分の覆工を行なう。次いで、直線部分から急曲線部分との分岐点に達した時、シールド掘進機のテールプレートよりインナープレートを切り離し、インナープレートに1乃至2リングの分岐セグメントを取り付け固定し、分岐セグメントを反力受けとしてシールド掘進機を前進させて分岐セグメントをインナープレートと共にテールプレートの外側に押し出し、続いてテールプレートの内側に通常セグメントを組み立ててセグメントによる急曲線部分の覆工を行なうのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−86317号公報
【特許文献2】特開2000−291378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されたようなトンネル掘削機にあっては、リング状で大型の妻型枠の取付け、取外しと、シールド掘進機の本体部分に相当する大型のインナープレートの組立て、分解(切り離し)が、覆工方法を切り替える度に行われるので、切替作業が大掛かりになり、短期間で切り替えることができないという問題点があった。
【0006】
また、妻型枠を推進ジャッキの反力受けとしてシールド掘進機を前進させる構成になっているため、妻型枠の形状及び構造が複雑で大型化するのでコストアップを招来するという問題点もあった。
【0007】
そこで、特許文献2で開示されているようなシールドジャッキ機構を応用して、スプレッダ(シールドジャッキシュー)をセグメントに対応する位置と妻型枠に対応する位置とに付け替えることが考えられるが、これにあっても重量物であるスプレッダ(シールドジャッキシュー)の付け替え作業が必要であり、そのための支持装置や作業足場が大掛かりになって、作業に多くの手間と時間がかかってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、直打ちコンクリートによる覆工とセグメントによる覆工とを必要に応じて容易にかつ短期間で切り替えることができると共に掘削機本体の機長の短縮が図れる覆工切替式トンネル掘削機及び覆工切替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するための本発明に係る覆工切替式トンネル掘削機は、
既設の内型枠又はセグメントに掘進反力をとって掘削機本体を前進させるための推進ジャッキを掘削機本体の周方向に複数本備えると共に、直打ちコンクリートによる覆工の際に用いる妻型枠を作業位置と退避位置とに進退可能に設け、直打ちコンクリートによる覆工とセグメントによる覆工とを随時切り替えてトンネルを掘削することが可能な覆工切替式トンネル掘削機において、
前記妻型枠を前記推進ジャッキのシリンダ先端より突出しない位置まで退避可能とすると共に、
前記推進ジャッキの回転可能なピストンロッド先端に偏心して設けた大径部に、スプレッダを前記ピストンロッド軸心と直交する方向へスライド自在に組み付け、当該スプレッダの中心が少なくとも前記内型枠に対応する位置とセグメントに対応する位置とに選択的に位置決め可能に設けたことを特徴とする。
【0010】
また、
前記スプレッダは、前記ピストンロッド軸心と直交する方向へスライドしてその中心が前記ピストンロッド軸心と一致した位置に位置決め可能になっていることを特徴とする。
【0011】
また、
前記大径部には、前記ピストンロッド軸心に前記スプレッダの中心を合わせるセンタ合わせ用鍔付きピンが植設されると共に複数個の位置セット用ねじ穴及びスプレッダ取付用ねじ穴が穿設される一方、
前記スプレッダは前記センタ合わせ用鍔付きピンが嵌合するスライド溝を有した取付部と該取付部にピン結合された当接部とからなり、前記取付部において、前記位置セット用ねじ穴に螺合するセットボルトによりスプレッダの中心が内型枠に対応する位置又はセグメントに対応する位置にそれぞれ位置決めされると共に、前記スプレッダ取付用ねじ穴に当該取付部に設けたボルト挿通孔を介して螺合するスプレッダ取付ボルトによりスプレッダの中心が内型枠に対応する位置又はセグメントに対応する位置にそれぞれ固定されることを特徴とする。
【0012】
また、
前記スプレッダは、前記取付部において、前記スライド溝に付設したストッパが前記センタ合わせ用鍔付きピンに係合することでスプレッダの中心がピストンロッド軸心と一致した位置に位置決めされることを特徴とする。
【0013】
斯かる目的を達成するための本発明に係る覆工切替方法は、
既設の内型枠又はセグメントに掘進反力をとって掘削機本体を前進させるための推進ジャッキを掘削機本体の周方向に複数本備えると共に、直打ちコンクリートによる覆工の際に用いる妻型枠を作業位置と退避位置とに進退可能に設け、直打ちコンクリートによる覆工とセグメントによる覆工とを随時切り替えてトンネルを掘削することが可能なトンネル掘削機を用いた覆工切替方法において、
前記妻型枠を前記推進ジャッキのシリンダ先端より突出しない位置まで退避させた状態下で、前記推進ジャッキの回転可能なピストンロッド先端に偏心して設けた大径部に対し、スプレッダを前記ピストンロッド軸心と直交する方向へスライドさせて、当該スプレッダの中心を少なくとも前記内型枠に対応する位置と前記セグメントに対応する位置とに選択的に位置決めして前記覆工を切り替えることを特徴とする。
【0014】
また、
前記スプレッダを前記ピストンロッド軸心と直交する方向へスライドさせて、当該スプレッダの中心をピストンロッド軸心と一致した位置に位置決めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る覆工切替式トンネル掘削機及び覆工切替方法によれば、妻型枠を退避させた状態下で、推進ジャッキのピストンロッド先端に対し、スプレッダをスライドさせて当該スプレッダの中心が内型枠に対応する位置とセグメントに対応する位置とに選択的に位置決めすることで、当該スプレッダを付け替えることなく、直打ちコンクリートによる覆工とセグメントによる覆工とを必要に応じて容易にかつ短期間で切り替えることができる。
【0016】
また、妻型枠を前記推進ジャッキのシリンダ先端より突出しない位置まで退避させられるので、推進ジャッキのピストンロンド縮限位置の後退によりスプレッダ後方の作業スペースの増大が図れ、その分掘削機本体における機長の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す泥土圧式シールド掘削機の要部拡大断面図である。
【図2】推進ジャッキのピストンロッド先端の説明図で、同図(a)は側面図、同図(b)は正面図、同図(c)は異なった作用状態の正面図である。
【図3】推進ジャッキの要部拡大平断面図である。
【図4A】推進ジャッキの説明図で、同図(a)はスプレッダの中心がセグメントに対応した位置にある状態の側断面図、同図(b)は同図(a)の正面図である。
【図4B】推進ジャッキの説明図で、同図(a)はスプレッダの中心が図4Aの状態からピストンロッド軸心と一致した位置に移動した状態の側断面図、同図(b)は同図(a)の正面図である。
【図4C】推進ジャッキの説明図で、同図(a)はピストンロッド先端が図4Bの状態から180度回転した状態の側断面図、同図(b)は同図(a)の正面図である。
【図4D】推進ジャッキの説明図で、同図(a)はスプレッダの中心が図4Cの状態から内型枠に対応した位置に移動した状態の側断面図、同図(b)は同図(a)の正面図である。
【図5】泥土圧式シールド掘削機の概略構成側断面図である。
【図6A】セグメントによる覆工→直打ちコンクリートによる覆工→セグメントによる覆工への切替工程図である。
【図6B】セグメントによる覆工→直打ちコンクリートによる覆工→セグメントによる覆工への切替工程図である。
【図6C】セグメントによる覆工→直打ちコンクリートによる覆工→セグメントによる覆工への切替工程図である。
【図6D】セグメントによる覆工→直打ちコンクリートによる覆工→セグメントによる覆工への切替工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る覆工切替式トンネル掘削機及び覆工切替方法を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す泥土圧式シールド掘削機の要部拡大断面図、図2は推進ジャッキのピストンロッド先端の説明図で、同図(a)は側面図、同図(b)は正面図、同図(c)は異なった作用状態の正面図、図3は推進ジャッキの要部拡大平断面図、図4Aは推進ジャッキの説明図で、同図(a)はスプレッダの中心がセグメントに対応した位置にある状態の側断面図、同図(b)は同図(a)の正面図、図4Bは推進ジャッキの説明図で、同図(a)はスプレッダの中心が図4Aの状態からピストンロッド軸心と一致した位置に移動した状態の側断面図、同図(b)は同図(a)の正面図、図4Cは推進ジャッキの説明図で、同図(a)はピストンロッド先端が図4Bの状態から180度回転した状態の側断面図、同図(b)は同図(a)の正面図、図4Dは推進ジャッキの説明図で、同図(a)はスプレッダの中心が図4Cの状態から内型枠に対応した位置に移動した状態の側断面図、同図(b)は同図(a)の正面図、図5は泥土圧式シールド掘削機の概略構成側断面図、図6A乃至図6Dはセグメントによる覆工→直打ちコンクリートによる覆工→セグメントによる覆工への切替工程図である。
【0020】
本実施例で説明する覆工切替式トンネル掘削機は、掘削土砂をチャンバに充満させ、チャンバ内を所定の圧力に維持しながら排土することで、切羽の安定化を図りながらトンネルを構築する泥土圧式シールド掘削機である。
【0021】
図5に示すように、泥土圧式シールド掘削機10の掘削機本体11は、ほぼ同径の円筒形状をなす前胴12と後胴13とが連結軸14によって左右に屈曲自在に連結され、両者の間に架設された複数本の中折れジャッキ15によって屈曲可能となっている。この前胴12の前部には回転リング16が回転自在に支持され、この回転リング16には連結ビーム17を介してカッタヘッド18が連結されている。
【0022】
このカッタヘッド18は、中心部から複数本のカッタスポーク19が放射状をなして配設され、各先端部が外周リング20によって連結されて構成されている。そして、カッタヘッド18の中心部にはフィッシュテールカッタ21が装着される一方、各カッタスポーク19の両側部には複数のカッタビット22がその長手方向に沿って装着され、所定のカッタスポーク19の先端部には余掘りを行うコピーカッタ23aとレスキュービット23bが出没自在に設けられている。
【0023】
また、回転リング16の後部にはリングギア24が固定される一方、掘削機本体11の前胴12には複数のカッタ旋回モータ25が装着されており、この各カッタ旋回モータ25の駆動ギア26がこのリングギア24にそれぞれ噛み合っている。従って、カッタ旋回モータ25を駆動して駆動ギア26を回転駆動すると、リングギア24、回転リング16、連結ビーム17を介してカッタヘッド18を回転することができる。
【0024】
また、前胴12の前部には、カッタヘッド18の後方に位置してバルクヘッド27が設けられ、カッタヘッド18とこのバルクヘッド27との間に掘削土砂を充満させるチャンバ28が形成されている。バルクヘッド27の前面側には複数本の固定式攪拌棒29が突設される一方、カッタヘッド18の後面側には複数本の旋回式攪拌棒30が突設されている。固定式攪拌棒29の一部にチャンバ28内の掘削土砂に対して加泥材を注入する図示しない加泥材注入口が設けられると共に、薬液(固結材)を注入する図示しない薬液注入管が設けられている。そして、掘削機本体11内には、掘削土砂を外部に搬出するためのスクリューコンベヤ33が配設されており、前部が下方に傾斜してバルクヘッド27を貫通してチャンバ28内に開口している。
【0025】
掘削機本体11の後胴13には、その内周面に沿ってリングガータ34が固定されており、このリングガータ34には複数本のシールドジャッキ(推進ジャッキ)35が後胴13の周方向に沿って装着されており、このシールドジャッキ35を後方に伸長して後述するスプレッダ36を既設の内型枠Mに押し付けることで、その反力により掘削機本体11が前進することができる。
【0026】
この内型枠Mは、複数個のものがトンネルの内壁面(地山Gの周壁)に所定の間隔を空けて周方向にリング状に組み付けられるものであり、この組付後に、地山Gの周壁と内型枠Mの外周面との空間(コンクリート打設空間E)に後述するコンクリート打設装置により直打ちでコンクリートが打設されることで、直打ちコンクリートによる覆工のトンネルが構築される。また、内型枠Mはトンネルの長手方向へ複数段に亙って組み付けられる。
【0027】
また、リングガータ34には旋回リング38がトンネル内壁面の周方向に沿って旋回自在に支持され、図示しない駆動モータにより駆動旋回可能となっており、この旋回リング38に内型枠M又は後述するセグメントSを組み立てるエレクタ39が設けられている。さらに、リングガータ34には左右一対の支柱40が固定され、この支柱40からは後方に向かってほぼ水平な架台41が延設されており、この架台41には内型枠M又は後述するセグメントSの組立てを補助する前後一対の形状保持装置42が掘削機本体11の前後方向に移動自在に装着されている。
【0028】
また、架台41の後端には図示しない複数台の搬送台車が連結され、これら搬送台車には後段の内型枠Mを脱型する内型枠脱型装置と、この内型枠脱型装置で脱型された内型枠Mをトンネル前方へ搬送するホイストと、コンクリート打設装置のパワーユニット等が搭載されている。
【0029】
更に、後胴(スキンプレート)13と内型枠Mとの間には同内型枠Mと地山Gの周壁との間にコンクリート打設空間Eを形成するリング状の妻型枠43が配設されると共に、その前方に位置して複数本の妻型枠ジャッキ44が周方向に沿って並設され、各々のヘッド基端部がリングガータ34を貫通して後胴13内周部の前後方向2箇所に盛り替えて連結可能になっている(図6B等参照)一方、各々のロッド先端部が前記妻型枠43に連結されている。そして、妻型枠43の外周面には図示しないゴム製のシール部材45が周方向に沿って装着される一方、妻型枠43の内周面には金属製のブラシシール46が周方向に沿って装着されている(図1等参照)。
【0030】
従って、この妻型枠ジャッキ44を伸縮することで、リング状の妻型枠43を前後(掘進方向)に移動することができ、このとき、シール部材45が後胴13の内周面に押圧すると共に、ブラシシール46が既設内型枠Mの外周面に押圧することで、掘削機本体11の内部への浸水を防止することができる。
【0031】
そして、この妻型枠43には掘進方向前方に向かってコンクリート打設管47が周方向に所定間隔離間して複数本挿通され、これらのコンクリート打設管47は、後述する塞止弁装置48の切り替えによりコンクリート打設配管(ホース:コンクリート打設ライン)49と連通可能になっている。これらのコンクリート打設配管49は前述した搬送台車上のパワーユニットを介してコンクリート供給源に連通される。
【0032】
従って、塞止弁装置48によりコンクリート打設管47とコンクリート打設配管49とが連通した状態下で、コンクリート供給源から送給された生コンクリートがコンクリート打設配管49、コンクリート打設管47を通って前述したコンクリート打設空間Eに打設される。この際、コンクリート打設空間Eには、各コンクリート打設管47より周方向に順番に打設されるようになっている。
【0033】
また、前記内型枠M、妻型枠43、コンクリート打設管47、コンクリート打設配管49及び塞止弁装置48等でコンクリート打設装置が構成される。
【0034】
そして、本実施例では、図1に示すように、セグメントSによる覆工時において、妻型枠43はシールドジャッキ35のシリンダ部35aの先端より突出しない位置まで退避可能になっている。即ち、妻型枠ジャッキ44のヘッド基端部が多層構造のリングガータ34の最深部まで貫通して後胴13内周部の前方連結部50aに連結される一方、妻型枠ジャッキ44のロッド先端部に連結された妻型枠43がリングガータ34の後部外周に形成した環状の格納部51にすっぽり収容されるようになっているのである。尚、図1中Sは通常のセグメントで、Saはエアーバックタイプパッキン(密封装置)52が装着された特殊セグメントである。
【0035】
また、前記シールドジャッキ35のピストンロッド部35bは回転可能にシリンダ部35aに収容されると共に、その先端の大径部35cはピストンロッド軸心と偏心されて形成されている。そして、図2に示すように、大径部35cの先端面には、ピストンロッド軸心(C1)上に位置してセンタ合わせ用鍔付きピン53が植設されると共に、このセンタ合わせ用鍔付きピン53の両側に位置して複数の位置セット用ねじ穴54とスプレッダ取付用ねじ穴55が穿設される。
【0036】
前記位置セット用ねじ穴54は、当該ねじ穴54に螺合されるセットボルト56(図3等参照)を用いて後述するスプレッダ36の中心をセグメントSに対応する位置(C2)又は内型枠Mに対応する位置(C3)にそれぞれ位置決めするもので、それぞれの位置に対応した二箇所に対をなして計4個設けられる。
【0037】
前記スプレッダ取付用ねじ穴55は、当該スプレッダ取付用ねじ穴に後述するスプレッダ36に設けたボルト挿通孔58(図3等参照)を介して螺合するスプレッダ取付ボルト57(図3等参照)によりスプレッダ36の中心がセグメントSに対応する位置(C2)又は内型枠Mに対応する位置(C3)にそれぞれ位置決め固定するもので、それぞれの位置で8本のスプレッダ取付ボルト57でスプレッダ36を取り付けるべく計12個設けられる。
【0038】
また、前記スプレッダ36は、図3に示すように、取付部36aと該取付部36aにピン60結合された当接部36bとからなり、取付部36aの座面に前述したセンタ合わせ用鍔付きピン53の鍔部53aが嵌合するスライド溝59がピストンロッド軸心(C1)と直交する方向に穿設されると共に、取付部36aの両側部に位置して前述したボルト挿通孔58が計8個穿設される。
【0039】
さらに、取付部36aの両側部には前述した位置セット用ねじ穴54に螺合したセットボルト56に係合する係合突部が形成される。さらにまた、前記スライド溝59にストッパ62が付設され、このストッパ62が前記センタ合わせ用鍔付きピン53(厳密には鍔部53a)に係合することでスプレッダ36の中心がピストンロッド軸心(C1)と一致した位置に位置決めされるようになっている。
【0040】
尚、図3中36dは当接部36bの当て面に貼設したライニング材であり、63はピストンロッド35b及び大径部35cを回転させる際の治具取付用穴で、64はピストンロッド35b及び大径部35cを回転させる際にスプレッダ36を固定しておくため適宜リブ36cに形成した吊りピース用穴である。
【0041】
従って、図4Aに示すように、スプレッダ36の中心をセグメントSに対応した位置(C2)に位置決めする際は、ピストンロッド35bの大径部35cがピストンロッド軸心(C1)から掘削機本体11の外周側に大きく張り出すように回転した状態(図2の(a),(b)の状態)下で、スプレッダ36の取付部36aを掘削機本体11の外周側にその係合突部61がセットボルト56に係合するまで大きくスライドさせた後、スプレッダ取付ボルト57で大径部35cに固定する。この際、前記セットボルト56はピストンロッド軸心(C1)から遠く離れた所定の位置セット用ねじ穴54に螺合されており、前記固定後に取り外される。
【0042】
そして、スプレッダ36の中心を前述したセグメントSに対応した位置(C2)から内型枠Mに対応した位置(C3)に切り替えて位置決めする際は、先ず、図4Bに示すように、スプレッダ36の取付部36aを掘削機本体11の内周側にそのストッパ62がセンタ合わせ用鍔付きピン53の鍔部53aに係合するまで大きくスライドさせて、スプレッダ36の中心をピストンロッド軸心(C1)と一致した位置に位置決めする。
【0043】
即ち、後工程で大径部35cのみ180度回転させる(これは、スプレッダ36の中心がセグメントに対応した位置(C2)のままで大径部35cをスプレッダ36と一緒に回転させると回転半径が大きくて他物と干渉するのでスプレッダ36と一緒には回転させられないことによる)ために、スプレッダ取付ボルト57が外されてフリーとなったスプレッダ36を一旦固定位置(吊り位置)であるピストンロッド軸心(C1)と一致した位置に位置決めしておくのである。
【0044】
次に、図4Cに示すように、吊りピース用穴64を利用してスプレッダ36を固定した状態下で、治具取付用穴63を利用してピストンロッド35bの大径部35cがピストンロッド軸心(C1)から掘削機本体11の内周側に大きく張り出すように回転させる。尚、この状態では、大径部35cとスプレッダ36はともに推進ジャッキ35のシリンダ部35aより掘削機本体11の内周側に位置されるので、妻型枠ジャッキ44の伸縮による妻型枠43の前進移動や退避移動に何ら支障はない。
【0045】
そして、図4Dに示すように、スプレッダ36の取付部36aを掘削機本体11の外周側にその係合突部61がセットボルト56に係合するまで所定の偏心量だけスライドさせた後、スプレッダ取付ボルト57で大径部35cに固定することで、スプレッダ36の中心を前述した内型枠Mに対応した位置(C3)に切り替えて位置決めすることができる。この際、前記セットボルト56はピストンロッド軸心(C1)から少し離れた所定の位置セット用ねじ穴54に螺合されており、前記固定後に取り外される。
【0046】
また、図1に示すように、後胴13の後部内周面に環状に形成された浅凹部65にはセグメントSによる覆工の際に用いられるテールパッキン66が取外し可能に埋設されると共に、直打ちコンクリートCによる覆工の際には、取り外されて、後胴13の内周面を面一に保持するための面一プレート67(図6B等参照)と交換可能になっている。
【0047】
このように構成されるため、図1に示すセグメントSによる覆工のトンネル施工下において、掘削条件(環境)の変化により、直打ちコンクリートCによる覆工が必要になった場合は、図6Aに示すように、最終セグメントを組み立てる段階でエアーバックタイプパッキン52を内蔵した特殊セグメントSaを1リング分組み立てる(図6Aの(a)参照)。
【0048】
次に、エアーバックタイプパッキン52を拡張させながら、シールドジャッキ35を伸長させてエアーバックタイプパッキン52が後胴13のテール端位置になるまで掘進し(図6Aの(b)参照)、この後、特殊セグメントSaを解体すると共に、浅凹部65からテールパッキン66を取り外す(図6Aの(c)参照)。
【0049】
次に、シールドジャッキ35を収縮させた後、スプレッダ36の中心がセグメントSに対応した位置(C2)にある図4Aの状態からスプレッダ36をスライドさせてスプレッダ36の中心がピストンロッド軸心(C1)と一致した位置にある図4Bの状態にし、次いで、大径部35cを180度回転させて図4Cの状態にする(図6Aの(d)参照)。
【0050】
次に、浅凹部65に面一プレート67を取り付け(図6Bの(e)参照)、この後、前方連結部50aに連結された妻型枠ジャッキ44を伸長させて妻型枠43の押出しを開始する(図6Bの(f)参照)。
【0051】
次に、スプレッダ36をスライドさせてスプレッダ36の中心が内型枠Mに対応した位置(C3)にある図4Dの状態にすると共に、妻型枠ジャッキ44を後方連結部50bに盛り替えた後、内型枠Mの組立を開始する(図6Bの(g)参照)。次いで、シールドジャッキ35を伸長させて内型枠Mを妻型枠43の前方まで移動させる(図6Bの(h)参照)。
【0052】
次に、シールドジャッキ35を収縮して例えば内型枠Mを2リング分組み立て(図6Cの(i)参照)、この後、エアーバックタイプパッキン52をさらに拡張して、シールジャッキ35の伸長に同期して妻型枠ジャッキ44を伸長させて妻型枠43よりコンクリート打設空間EにコンクリートCを打設する(図6Cの(j)参照)。
【0053】
以下、内型枠Mの組立と掘進とを交互に行うことにより、直打ちコンクリートCによる覆工のトンネル施工が実施される(図6Cの(k)参照)。
【0054】
この後、再び掘削条件(環境)の変化により、セグメントSによる覆工が必要になった場合は、シールドジャッキ35を伸長させて妻型枠43の先端面と、最終内型枠Mとその手前の内型枠Mとの接続位置とを合わせ(図6Cの(l)参照)、この後、シールドジャッキ35の収縮に同期して妻型枠ジャッキ44を1リング分収縮して最終内型枠Mを解体する(図6Dの(m)参照)。
【0055】
次に、スプレッダ36の中心が内型枠Mに対応した位置(C3)にある図4Dの状態からスプレッダ36をスライドさせてスプレッダ36の中心がピストンロッド軸心(C1)に一致した位置にある図4Cの状態にした後、妻型枠ジャッキ44を後方連結位置50bから前方連結位置50aに盛り替えると共に収縮して妻型枠43を環状の格納部51内に退避させ、次いで、浅凹部65から面一プレート67を取り外す(図6Dの(n)参照)。
【0056】
次に、スプレッダ36の中心がピストンロッド軸心(C1)に一致した位置にある図4Cの状態から大径部35cを180度回転させた図4Bの状態を経た後、スプレッダ36をスライドさせてスプレッダ36の中心がセグメントに対応した位置にある図4Aの状態にして、浅凹部65にテールパッキン66を取り付けると共にセグメントSを組み立てる(図6Dの(o)参照)。
【0057】
以下、セグメントSの組立と掘進とを交互に行うことによりセグメントSによる覆工のトンネル施工が実施される。(図6Dの(p)参照)。
【0058】
尚、再び、掘削条件(環境)の変化により、直打ちコンクリートCによる覆工が必要になった場合は、上述した工程の逆を行えば良いことが自明であるので、説明は省略する。
【0059】
このようにして本実施例によれば、妻型枠43を退避させた状態下で、シールドジャッキ35のピストンロッド先端に設けた大径部35cを180度回転させると共に、当該大径部35cに対し、スプレッダ36をスライドさせて当該スプレッダ36の中心が内型枠Mに対応する位置とセグメントSに対応する位置とに選択的に位置決めすることで、当該スプレッダ36を付け替えることなく、直打ちコンクリートCによる覆工とセグメントSによる覆工とを必要に応じて容易にかつ短期間で切り替えることができる。
【0060】
つまり、従来のように、リング状で大型の妻型枠43の取付け・取外し(解体・撤去)と掘削機本体11の後胴13に相当するような大型のインナープレートの組立て、分解(切り離し)を行わないで済むのである。
【0061】
また、環状の格納部51により、妻型枠43をシールドジャッキ35のシリンダ部35aの先端より突出しない位置まで退避させられるので、シールドジャッキ35におけるピストンロンド35bの縮限位置の後退により、スプレッダ36後方の作業スペースの増大が図れ、その分掘削機本体11における機長の短縮が図れる。依って、施工性の向上並びにコストダウンが図れる。
【0062】
また、上記実施例では、シールドジャッキ35におけるピストンロッド35bの大径部35cに対し、スプレッダ36をスライドさせてスプレッダ36の中心がセグメントSに対応した位置(C2)と内型枠Mに対応した位置(C3)とピストンロッド軸心(C1)に一致した位置の3位置に位置決め(固定)するようになっているが、掘削機本体11の径寸法によっては、スプレッダ36の中心が内型枠Mに対応した位置(C3)がピストンロッド軸心(C1)に一致した位置である場合もあり、このような場合は、スプレッダ36の中心がセグメントSに対応した位置(C2)と内型枠Mに対応した位置(C3)(即ち、ピストンロッド軸心(C1)に一致した位置)の2位置に位置決め(固定)することになる。
【0063】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る覆工切替式トンネル掘削機は、泥土圧式シールド掘削機に限らず、泥水式シールド掘削機、機械式シールド掘削機やトンネルボーリングマシーン(TBM)等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 泥土圧式シールド掘削機、11 掘削機本体、12 前胴、13 後胴、14 連結軸、15 中折れジャッキ、16 回転リング、17 連結ビーム、18 カッタヘッド、19 カッタスポーク、20 外周リング、21 フィッシュテールカッタ、22 カッタビット、23a コピーカッタ、23b レスキュービット、24 リングギア、25 カッタ旋回モータ、26 駆動ギア、27 バルクヘッド、28 チャンバ、29 固定式攪拌棒、30 旋回式攪拌棒、33 スクリューコンベア、34 リングガータ、35 シールドジャッキ、35a シリンダ部、35b ピストンロッド部、35c 先端大径部、36 スプレッダ、36a 取付部、36b 当接部、36c リブ、36d ライニング材、38 旋回リング、39 エレクタ、40 支柱、41 架台、42 形状保持装置、43 妻型枠、44 妻型枠ジャッキ、45 シール部材、46 ブラシシール、47 コンクリート打設管、48 塞止弁装置、49 コンクリート打設配管、50a 前方連結部、50b 後方連結部、51 環状の格納部、52 エアーバックタイプパッキン(密封装置)、53 センタ合わせ用鍔付きピン、53a 鍔部、54 位置セット用ねじ穴、55 スプレッダ取付用ねじ穴、56 セットボルト、57 スプレッダ取付ボルト、58 ボルト挿通孔、59 スライド溝、60 ピン、61 係合突部、62 ストッパ、63 治具取付用穴、64 吊りピース用穴、65 浅凹部、66 テールパッキン、67 面一プレート、C コンクリート、E コンクリート打設空間、G 地山、M 内型枠、S セグメント、Sa 特殊セグメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の内型枠又はセグメントに掘進反力をとって掘削機本体を前進させるための推進ジャッキを掘削機本体の周方向に複数本備えると共に、直打ちコンクリートによる覆工の際に用いる妻型枠を作業位置と退避位置とに進退可能に設け、直打ちコンクリートによる覆工とセグメントによる覆工とを随時切り替えてトンネルを掘削することが可能な覆工切替式トンネル掘削機において、
前記妻型枠を前記推進ジャッキのシリンダ先端より突出しない位置まで退避可能とすると共に、
前記推進ジャッキの回転可能なピストンロッド先端に偏心して設けた大径部に、スプレッダを前記ピストンロッド軸心と直交する方向へスライド自在に組み付け、当該スプレッダの中心が少なくとも前記内型枠に対応する位置とセグメントに対応する位置とに選択的に位置決め可能に設けたことを特徴とする覆工切替式トンネル掘削機。
【請求項2】
前記スプレッダは、前記ピストンロッド軸心と直交する方向へスライドしてその中心が前記ピストンロッド軸心と一致した位置に位置決め可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の覆工切替式トンネル掘削機。
【請求項3】
前記大径部には、前記ピストンロッド軸心に前記スプレッダの中心を合わせるセンタ合わせ用鍔付きピンが植設されると共に複数個の位置セット用ねじ穴及びスプレッダ取付用ねじ穴が穿設される一方、
前記スプレッダは前記センタ合わせ用鍔付きピンが嵌合するスライド溝を有した取付部と該取付部にピン結合された当接部とからなり、前記取付部において、前記位置セット用ねじ穴に螺合するセットボルトによりスプレッダの中心が内型枠に対応する位置又はセグメントに対応する位置にそれぞれ位置決めされると共に、前記スプレッダ取付用ねじ穴に当該取付部に設けたボルト挿通孔を介して螺合するスプレッダ取付ボルトによりスプレッダの中心が内型枠に対応する位置又はセグメントに対応する位置にそれぞれ固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の覆工切替式トンネル掘削機。
【請求項4】
前記スプレッダは、前記取付部において、前記スライド溝に付設したストッパが前記センタ合わせ用鍔付きピンに係合することでスプレッダの中心がピストンロッド軸心と一致した位置に位置決めされることを特徴とする請求項3に記載の覆工切替式トンネル掘削機。
【請求項5】
既設の内型枠又はセグメントに掘進反力をとって掘削機本体を前進させるための推進ジャッキを掘削機本体の周方向に複数本備えると共に、直打ちコンクリートによる覆工の際に用いる妻型枠を作業位置と退避位置とに進退可能に設け、直打ちコンクリートによる覆工とセグメントによる覆工とを随時切り替えてトンネルを掘削することが可能なトンネル掘削機を用いた覆工切替方法において、
前記妻型枠を前記推進ジャッキのシリンダ先端より突出しない位置まで退避させた状態下で、前記推進ジャッキの回転可能なピストンロッド先端に偏心して設けた大径部に対し、スプレッダを前記ピストンロッド軸心と直交する方向へスライドさせて、当該スプレッダの中心を少なくとも前記内型枠に対応する位置と前記セグメントに対応する位置とに選択的に位置決めして前記覆工を切り替えることを特徴とする覆工切替方法。
【請求項6】
前記スプレッダを前記ピストンロッド軸心と直交する方向へスライドさせて、当該スプレッダの中心をピストンロッド軸心と一致した位置に位置決めすることを特徴とする請求項5に記載の覆工切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【公開番号】特開2012−26209(P2012−26209A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167724(P2010−167724)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)
【出願人】(309036221)三菱重工メカトロシステムズ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】