説明

覆工方法

【課題】路幅が狭い場合であっても、道路を通行止めにすることなく覆工板を設置または覆工部材を撤去することのできる覆工方法を提供する。
【解決手段】受桁29の軸線に交差する方向を境界線として路面を第1路面1と第2路面3の2つの領域に2分割し、2分割したそれぞれの路面に覆工板31を設置する覆工方法であって、第1路面1側の地下に第2路面3側から受桁29を挿入して設置することが可能となる空洞部を形成する空洞部形成工程と、第1路面1を仮復旧する仮復旧工程と、第2路面3を開削して第2路面3側と第1路面1側に亘って受桁29を架設する受桁設置工程と、設置された受桁29における第2路面3側に覆工板31を設置する第2路面覆工板設置工程と、仮復旧した第1路面1を開削して空洞部を形成した部材を撤去する空洞部形成部材撤去工程と、空洞部形成部材を撤去した側の受桁29に覆工板32を設置する第1路面覆工板設置工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば路面下方にガス管等を新設し、または埋設したガス管の修復作業を行なうための覆工板を設置する方法、および設置された覆工部材を撤去して路面を復旧する方法に関する。
本明細書において、覆工方法というときには、覆工板を設置する方法と覆工板を含む覆工部材を撤去して路面を復旧する方法の両方を含む概念である。そして、覆工方法と表記したときには、これら両方を意味する場合、いずれか一方を意味する場合の両方がある。
【背景技術】
【0002】
道路等の地盤にガス管等を埋設したり、埋設されているガス管等を補修したりする場合、路盤を掘削して開削溝を形成して埋設や補修工事が行われる。このような工事は1日では完了せず数日にわたって継続されることが多い。このような場合、通常、昼間には工事を休止し、工事休止中には開削溝の開口部を覆工板で覆い、車等が通行できるようにしている(特許文献1における従来の技術参照)。
【特許文献1】特開2003−147712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような覆工板を設置する覆工方法においては、開削溝の短辺方向に覆工桁の端部を向けて設置するのが一般的である。
ガス管等は道路の路線方向に沿って埋設されているのが通常であり、開削溝は路線に沿うように掘削される。そうすると、開削溝は道路の幅方向が短辺で路線方向が長辺となる。前述したように、覆工桁は開削溝の短辺方向に向けて覆工桁を設置されるため、覆工桁は道路の幅方向に向けて設置されることになる。
【0004】
その場合、道路幅が広ければ覆工板の設置工程の途中において、開削溝の溝幅に相当する道路幅部分を通行止めとして、それ以外の部分で車の通行を確保すればよい。
しかしながら、道路幅が狭い場合には、開削溝の溝幅に相当する部分を通行止めにすると、それ以外の道路幅では車の通行を確保することができない場合が生ずる。そうすると、このような場合には、覆工板を設置する工事中には道路を一時的に通行止めにしなければならない。
そこで、道路幅が狭い場合であっても、道路を通行止めにすることなく覆工板を設置することのできる覆工方法の開発が望まれていた。
【0005】
なお、上記においては覆工板を設置する場合について説明したが、すでに覆工板が設置されており、ガス管等の設置または修復工事が終了し、覆工板を含む覆工部材を撤去して道路を復旧する場合においても、同様の問題がある。
つまり、道路幅が狭い場合であっても、道路を通行止めにすることなく覆工部材を撤去することのできる覆工方法の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、道路幅が狭い場合であっても、道路を通行止めにすることなく覆工板を設置または覆工部材を撤去することのできる覆工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態に係る覆工方法は、路面に覆工板を設置する覆工方法であって、前記路面を開削して受桁の一端が配置される部位に空洞部を形成する空洞部形成工程と、空洞部が形成された後に前記路面を仮復旧する工程と、前記受桁の他端が配置される側の路面を開削して前記受桁を前記空洞部に挿入するようにして設置する受桁設置工程とを備えていることを特徴とするものである。
空洞部を形成する前に受桁の一端部を支持する受桁受を設置するようにしてもよい。
【0008】
本発明の第2の形態に係る覆工方法は、受桁の軸線に交差する方向を境界線として路面を第1路面と第2路面の2つの領域に2分割し、この2分割したそれぞれの路面に覆工板を設置するものであって、前記第1路面側の地下に前記第2路面側から受桁を挿入して設置することが可能となる空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記第1路面を仮復旧する仮復旧工程と、前記第2路面を開削して該第2路面側と前記第1路面側に亘って受桁を架設する受桁設置工程と、設置された受桁における前記第2路面側に覆工板を設置する第2路面覆工板設置工程と、前記仮復旧した第1路面を開削して前記空洞部を形成した部材を撤去する空洞部形成部材撤去工程と、前記空洞部形成部材を撤去した側の受桁に覆工板を設置する第1路面覆工板設置工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
本明細書において、受桁の軸線に交差する方向を境界線とするとは、受桁の軸線と境界線とが直交する場合のみならず両者が直角以外の角度で交わる場合も含む。なお、境界線とは発明を説明するための便宜上の仮想線であって実際に何らかの物があるという意味ではない。また、第1路面側を掘削する際に境界線を越えて第2路面側に掘削範囲が跨ることや、逆に第2路面を掘削する際に境界線を越えて第1路面側に掘削範囲が跨ることを排除するものでもない。
【0010】
本発明の第3の形態に係る覆工方法は、第1または2の形態に係るものにおいて、空洞部形成工程で形成される空洞部は受桁挿入側の端部が閉塞しており、受桁設置工程は、空洞部における前記閉塞している端部を開放する工程と、開放した端面から受桁を挿入して受桁を設置する工程を含むことを特徴とするものである。
空洞部の端部が閉塞していることにより、仮復旧の際に空洞部に土砂が侵入するのを確実に防止できる。
なお、空洞部における閉塞している端部を開放する方法としては、特に限定されず、例えば空洞部を形成する部材が鋼製の部材の場合には酸素アーク切断措置によって切断するようにしてもよい。
【0011】
本発明の第4の形態に係る覆工方法は、第1〜第3の形態に係るものにおいて、空洞部は、下面が開口すると共に受桁挿入側の端部が開口可能な箱状部材であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第5の形態に係る覆工方法は、第1〜第4の形態に係るものにおいて、受桁設置工程において設置される受桁は、空洞部よりも長尺の第1受桁と、該第1受桁の端部に連結される第2受桁を備えてなり、前記受桁設置工程は、第1受桁を設置する第1受桁設置工程と、設置された前記第1受桁の端部に前記第2受桁を接合して受桁を形成する第2受桁設置工程を含むことを特徴とするものである。
第5の形態によれば、受桁設置の際の作業スペースを格段に小さくでき、故に狭隘な作業現場においても円滑な作業が可能となる。
【0013】
本発明の第6の形態に係る覆工方法は、第1〜第4の形態に係るものにおいて、受桁設置工程において設置される受桁は、長手方向の途中で屈曲可能に形成されており、前記受桁設置工程は、前記受桁を屈曲させた状態で空洞部に挿入して一端側を設置する工程と、前記受桁の屈曲を伸ばして他端を設置する工程を含むことを特徴とするものである。
このようにすれば、第1受桁と第2受桁を分離したもののように両者を接合する作業が不要となり、施工性に優れたものとなる。
受桁を屈曲可能に形成する態様としては、受桁を、第1受桁及び第2受桁の2本を回動可能に連結して形成し、屈曲を伸ばした状態で第1受桁及び第2受桁の端部が互いに係合して回動が止められるようにするものが考えられる。
【0014】
本発明の第7の形態に係る覆工方法は、覆工された路面から覆工部材を撤去するものであって、受桁の一端部を覆うように該受桁の一端部周囲に空洞部を形成して路面を仮復旧する仮復旧工程と、前記受桁の他端が配置されている路面側から引抜くようにして前記受桁を撤去する受桁撤去工程を備えていることを特徴とするものである。
なお、受桁の一端が受桁受に固定されている場合には、空洞部を形成する前に受桁受と受桁との固定を外すようにするのが好ましい。
【0015】
本発明の第8の形態に係る覆工方法は、受桁の軸線に交差する方向を境界線として路面を第1路面と第2路面の2つの領域に2分割し、この2分割したそれぞれの路面から覆工部材を撤去するものであって、前記第1路面側の覆工板を撤去する第1路面覆工板撤去工程と、受桁における前記第1路面側の端部を覆うように受桁の端部周囲に空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記空洞部を形成した第1路面を仮復旧する仮復旧工程と、前記第2路面の覆工板を外して該第2路面側と前記第1路面側に亘って設置された受桁を撤去する受桁撤去工程と、第2路面側を復旧する第2路面復旧工程と、第1路面側を開削して空洞部を形成していた空洞部形成部材を撤去する空洞部形成部材撤去工程と、第1路面を復旧する第1路面復旧工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第9の形態に係る覆工方法は、上記第7または8の形態に係るものにおいて、空洞部は、下面が開口すると共に一端面が開口した箱状部材であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第10の形態に係る覆工方法は、上記第4または第9に係るものにおいて、箱状部材は、軸方向に直交する断面が矩形状であり、上面にアスファルトコンクリートとの付着性を高める凹凸面が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第11の形態に係る覆工方法は、上記第4、9または10のいずれかのものにおいて、箱状部材の内面および/または外面にリブ材を備えたことを特徴とするものである。
箱状部材の内面および/または外面にリブ材を備えることにより、箱状部材を形成する部材の厚みを薄くして剛性を高めることができるので、箱状部材の重量を軽量化でき、それゆえ工事の施工性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、受桁と交差する境界線で道路を2分割し、2分割した一方の領域で通行可能帯を確保しながら覆工板の設置または覆工部材の撤去が可能となる。そして、2分割した一方の領域で通行可能帯を確保できるので、道路幅が狭い場合でも通行止めにすることなく工事が可能となり、その有用性は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る覆工方法は、受桁29の軸線に交差する方向を境界線として路面を第1路面1と第2路面3の2つの領域に2分割し、この2分割した第1路面1側または第2路面3側のいずれか一方は少なくとも通行可能な状態にしながら両方の路面に覆工板31を設置する覆工方法に関するものである。
図1〜図7は本実施の形態に係る覆工方法の説明図であり、覆工方法の進展する順に作業内容を図示したものである。
図1〜図7においては、道路を路線に直交する方向(紙面に直交する方向)から見た状態を示しており、道路の中央部に示すコーン7を境に作業帯と通行可能帯とに分かれており、車5が示される側が通行可能帯である。以下、図1〜図7に基づいて本実施の形態に係る覆工方法を説明する。
【0021】
図1に示すように、図中左側を作業帯、右側を通行可能帯とし、作業帯側の地盤に布掘りによって溝9を形成し、溝部をアースオーガ11によって先掘りして、掘削孔に鋼矢板13を振動式の杭打ち装置15によって打設する。
次に、図2に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を通行可能帯、図中右側を作業帯とする。そして、作業帯側に図1と同様にして鋼矢板13を打設する。
【0022】
次に、図3に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を作業帯、図中右側を通行可能帯とする。作業帯側の地盤を鋼矢板13の頭部を露出させるように溝状に掘削する。溝9の大きさは、例えば深さ1.1m、幅0.9m程度である。露出させた鋼矢板13の上端部にチャンネル材からなる第1受桁受17をボルト接合によって取り付ける。また、鋼矢板13の道路脇側を地均しして砕石を敷き詰めた上にH形鋼からなる第2受桁受19を設置する。第1受桁受17及び第2受桁受19の設置が完了すると、掘削した溝9を埋め戻して仮復旧する。
【0023】
次に、図4に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を通行可能帯、図中右側を作業帯とする。作業帯側において、図3と同様の作業によって第1受桁受17及び第2受桁受19を設置する。
次に、図5に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を作業帯、図中右側を通行可能帯とする。作業帯側を掘削して受桁挿入ボックス21を鋼矢板13に溶接によって仮固定する。
【0024】
図8、図9は受桁挿入ボックス21の説明図であり、図8が設置状態における斜視図、図9が下面を上に向けた状態の斜視図である。受桁挿入ボックス21は、下面が開放された直方体状の鉄製のボックスであり、上面にはチェッカープレート23が貼り付けられている。
また、両側面下部の四隅には外方に出っ張る脚部25が設けられている。この脚部25は受桁挿入ボックス21を設置したときに地面にめり込むのを防止するためのものである。
さらに、受桁挿入ボックス21の内面には複数のリブ材26が設けられており、受桁挿入ボックス21の剛性を高めている。このリブ材26を設けることにより、受桁挿入ボックス21を形成する鋼板の厚みを薄くでき、軽量化が実現されているので、作業効率が向上する。
なお、リブ材26を設ける箇所は受桁挿入ボックス21の内面、外面、あるいは両方のいずれでもよい。
【0025】
受桁挿入ボックス21は、図5に示すように、鋼矢板13を跨ぐように軸線を道路の幅方向に向けて、第1受桁受17及び第2受桁受19上に設置される。このとき、鋼矢板13の上端部が邪魔になるが、邪魔になる部分は酸素アーク切断装置によって切断する。
受桁挿入ボックス21が設置されると、作業帯側を埋め戻して仮復旧する。このとき、受桁挿入ボックス21の上面にはアスファルトコンクリートが打設されるが、受桁挿入ボックス21の上面にはチェッカープレート23が貼り付けられているので、アスファルトコンクリートの付着に優れ、アスファルトコンクリートがずれることがない。
【0026】
次に、図6に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を通行可能帯、図中右側を作業帯とする。作業帯側を掘削して受桁を設置するための空間を形成する。受桁設置空間を掘削する際、受桁挿入ボックス21における境界線側の端部(図中のコーン7下方に一する端部)を露出させ、端部を受桁挿入ボックの軸線に直交する方向に切断し、その端面を開口する。
次に、図6(a)に示すように、重機27を用いて受桁29を設置する。受桁29の設置は、受桁29の一端を通行可能帯側に設置している受桁挿入ボックス21に挿入し、他端側を作業帯側の第1受桁受17及び第2受桁受19に固定する。そして、図6(b)に示すように、作業帯側の受桁29上に覆工板31を設置する。
【0027】
次に、図7に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を作業帯、図中右側を通行可能帯とする。作業帯側において、仮復旧した路面を再び掘削して、受桁挿入ボックス21を撤去する。このとき受桁挿入ボックス21は下面が開口しているので、受桁挿入ボックス21を重機27で吊り上げるようにして撤去できる。受桁挿入ボックス21を撤去するとその位置には受桁29が配置されているので、受桁29を第1受桁受17及び第2受桁受19に固定する。そして、受桁29上に覆工板31を設置する。
以上のようにして、覆工板31の設置作業が終了する。
【0028】
覆工板31が設置されると、例えば夜間の工事において、図7に示すように、図中右側を通行可能帯、左側を作業帯として作業帯側に設置した覆工板31を取り外して溝内での工事、例えば地盤の掘削、ガス管の設置等の工事が可能である。
【0029】
以上のように、本実施の形態によれば、受桁29と交差する境界線で道路を2分割し、2分割した一方の領域で通行可能帯を確保しながら覆工板31の設置工事が可能となる。そして、2分割した一方の領域で通行可能帯を確保できるので、道路幅が狭い場合でも通行止めにすることなく工事が可能となり、その有用性は高い。
【0030】
なお、上記の実施の形態においては、空洞部を形成する部材として受桁挿入用ボックスを用いたので、その設置および撤去が極めて簡単にでき、作業性に優れている。
また、受桁挿入用ボックスは上面が平坦であるため仮復旧のときに路面の形成が容易であり、またチェッカープレート23を貼り付けているので、仮復旧のときのアスファルトコンクリートが付着しやすいという効果がある。
もっとも、受桁挿入用ボックスの形状は、矩形状のものに限られるものではなく、種々の形状のものを利用することができ、例えばコルゲートパイプを半割りにして利用することも可能である。
なお、受桁挿入用ボックスの一方の端部に着脱可能な蓋部を設けることにより、受桁挿入用ボックスの端部の開放を容易にできるようにしてもよい。
また、空洞部を形成する部材としては本実施の形態に示したようにボックス状の単一部材に限らず、例えば複数の部材を現場で組み合わせて空洞部を形成するようにしてもよい。
【0031】
上記の実施の形態においては、第1路面1と第2路面3の幅については特に説明していないが、第1路面1と第2路面3の幅を調整できる場合には、受桁挿入用ボックスを設置する第1路面1側の幅を第2路面3の幅よりも狭くすることにより、受桁29の挿入が容易になるので好ましい。
【0032】
[実施の形態2]
本実施の形態に係る覆工方法は、受桁29の軸線に交差する方向の境界線により路面を第1路面1と第2路面3の2つの領域に2分割し、この2分割した第1路面1側または第2路面3側のいずれか一方を通行可能な状態にしながら覆工部材を撤去する覆工方法に関するものである。
図10〜図14は本実施の形態に係る覆工方法の説明図であり、図10〜図14の順に工事が進行する様子を示している。
【0033】
なお、図10〜図14においては、図1〜図7と同様に、道路を路線に直交する方向から見た状態を示しており、道路の中央部に示すコーン7を境に作業帯と通行可能帯とに分かれており、車5が示される側が通行可能帯である。また、図10〜図14においては図1〜図7と同一部分には同一の符号が付してある。
以下、図10〜図14に基づいて本実施の形態に係る覆工方法を説明する。
【0034】
図10(a)は覆工板31の撤去前の状態を示しており、覆工板撤去前の状態においては、埋設されたガス管32を挟んで鋼矢板13が打設され、その上部には第1受桁受17及び第2受桁受19に受桁29が架設され、さらに受桁29上には覆工板31が設置されている。
まず、図10(a)に示すように、図中左側を作業帯、右側を通行可能帯とし、作業帯側の覆工板31を撤去する。覆工板31を撤去後、受桁29と第1受桁受17及び第2受桁受19との固定を外して受桁29と第1受桁受17及び第2受桁受19とを分離可能状態にする。この状態で、図10(b)に示すように、受桁29の端部を覆うように受桁引抜き撤去用ボックス33を設置する。受桁引抜き撤去用ボックス33は、図8、図9に示した受桁挿入ボックス21と略同一形状のもので、一端部が開口したものである。
受桁引抜き撤去用ボックス33は鋼矢板13の上部に固定し、受桁引抜き撤去用ボックス33の設置が完了すると、作業帯側を埋め戻して仮復旧する。
【0035】
次に、図11(a)に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を通行可能帯、図中右側を作業帯とする。作業帯側の覆工板31を撤去し、その後、受桁29と第1受桁受17及び第2受桁受19の固定を外し、受桁29を図11(a)の矢印に示す方向に引抜く。このとき、図中左側の通行帯側の受桁端部は受桁引抜き撤去用ボックス33の中に挿入された状態になっており、何らの障害なく引抜くことができる。受桁29の引き抜きが完了すると、図11(b)に示すように、作業帯側を埋め戻して復旧する。
【0036】
次に、図12(a)に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を作業帯、図中右側を通行可能帯とする。作業帯側の路面を開削して、受桁引抜き撤去用ボックス33を撤去する。そして、図12(b)に示すように、鋼矢板13と第2受桁受19が設置されている部位を布堀し、その後、鋼矢板13を振動式の杭抜き装置35で引抜く。
次に、図13に示すように、作業帯と通行可能帯を入れ替え、図中左側を通行可能帯、図中右側を作業帯とする。作業帯側の道路を開削して、図12(b)と同様に、鋼矢板13と第2受桁受19が設置されている部位を布堀し、その後、鋼矢板13を振動式の杭抜き装置35で引抜く。
その後、路面を仮復旧して両側を通行可能状態にして路面が安定するのを待つ。10日ほどして路面が安定すると、図14に示すように、路面を片面ずつ本復旧して工事を完了する。図14では、図中左側を通行可能帯、図中右側を作業帯とし、作業帯側をローラ36にて締め固めている様子を示している。
【0037】
以上のように、本実施の形態によれば、覆工板31を支持する受桁29と交差する境界線で道路を2分割し、2分割した一方の領域で通行可能帯を確保しながら覆工板31の撤去工事が可能となる。そして、2分割した一方の領域で通行可能帯を確保できるので、道路幅が狭い場合でも通行止めにすることなく工事が可能となり、その有用性は高い。
なお、本実施の形態で示した覆工板31の撤去工事は、実施の形態1で説明した工法によって設置された覆工板31の撤去の場合に限るものではなく、その他の工法で設置した覆工板31の撤去工事にも適用できることは言うまでもない。
【0038】
なお、上記の実施の形態2においては、空洞部を形成する部材として受桁引抜き撤去用ボックス33を用いたので、その設置および撤去が極めて簡単にでき、作業性に優れている。
また、本実施の形態の受桁引抜き撤去用ボックス33は上面が平坦であることから仮復旧時の路面形成が容易であり、またチェッカープレート23を貼り付けているのでアスファルトコンクリートが付着しやすいという効果がある。
もっとも、受桁引抜き撤去用ボックス33の形状は、矩形状のものに限られるものではなく、種々の形状のものを利用することができ、例えばコルゲートパイプを半割りにして利用することも可能である。
また、空洞部を形成する部材としては本実施の形態に示したようにボックス状の単一部材に限らず、例えば複数の部材を現場で組み合わせて空洞部を形成するようにしてもよい。
【0039】
[実施の形態3]
実施の形態1において図6で説明したように、受桁29を受桁挿入ボックス21に挿入する際には、受桁29をほぼ水平に近い斜めにして挿入する。その際に、受桁29の長さに相当する分の作業スペースが必要となる。しかしながら、工事現場によってはそのような作業スペースを確保できない場合もある。そこで、本実施の形態においては、そのような作業スペースが狭い現場においても、受桁設置を容易にできるようにしたものである。
【0040】
図15(a)(b)、図16(c)は本実施の形態における受桁設置工程の説明図である。この実施の形態における受桁29は、受桁挿入ボックス21よりも若干だけ長尺の第1受桁29aと、第1受桁29aの端部に連結される第2受桁29bを備えてなる。
本実施の形態における受桁設置工程は、掘削された受桁設置空間に第1受桁29aを吊り下し(図15(a)参照)、その一端側を受桁挿入ボックス21に挿入する(図15(b)参照)。
第1受桁29aを吊り下して挿入する際、第1受桁29aが短尺なため、実施の形態1において受桁29を受桁挿入ボックス21に挿入する時のように、受桁29を斜めにする必要がなく、作業が容易であると共に狭隘な作業現場においても容易に作業ができる。
【0041】
第1受桁29aを受桁挿入ボックス21に挿入して設置した状態では、図15bに示すように、第1受桁29aの他端が少しだけ受桁挿入ボックス21から突出した状態になる。
そこで、設置された第1受桁29aの端部に第2受桁29bを接合して受桁29を形成する。
第1受桁29aと第2受桁29bの接合は、図17に示すように、第1受桁29aと第2受桁29bの両端部に跨るように配置した接合プレート37をボルト接合することによって行う。
なお、受桁設置工程以外の各工程の作業は実施の形態1と同様である。
【0042】
このように、本実施の形態においては、受桁29を第1受桁29aと第2受桁29bに分離して設置するようにしたことにより、受桁設置の際の作業スペースを格段に小さくでき、故に狭隘な作業現場においても円滑な作業が可能となる。
【0043】
なお、上記の例では受桁29を第1受桁29aと第2受桁29bの分離した部材から構成し、これを後で接合するようにした。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、図18に示すように、第1受桁29aと第2受桁29bの端部を回動軸39によって回動可能に連結して受桁29を構成し、第2受桁29bを屈曲させた状態で第1受桁29aを受桁挿入ボックス21に挿入し、その後、図19に示すように、第2受桁29bの屈曲を伸ばすように第2受桁29bを回動させてほぼ真直ぐな受桁29にするようにしてもよい。
【0044】
第1受桁29a及び第2受桁29bをH型鋼で形成した場合における第1受桁29a及び第2受桁29bの連結部の構造を図20、図21に示す。図20は第1受桁29a及び第2受桁29bを分離した状態での端部の平面図、図21は第1受桁29a及び第2受桁29bを連結した状態の平面図である。
第1受桁29aの端部は、ウェブ40aはそのまま残し、フランジ部41aについては平面視でコ字状になるように両端を残して所定長さ矩形状に切除する。これによって、平面視で2つの矩形の突片43a、45aが形成されると共に露出したウェブ40aの両側に切り欠き部が形成される。
他方、第2受桁29bの端部は、第1受桁29aに形成された切り欠き部に対応する位置に突出する二条の突片43b、45bを残すようにフランジ部41bの端部及びウェブ40bを切除する。
【0045】
上記のように形成された第1受桁29a及び第2受桁29bの端部の連結は以下のようにする。
図21に示すように、第1受梁29aの突片43a、45aを第2受梁29bのフランジ部40bの下方に潜り込ませ、第2受梁29bの突片43b、45bを第1受梁29aのフランジ部40aの下方に潜り込ませるようにして両者を係合させ、その状態で両者を回動軸39で連結する。
このようにすれば、図19に示すように、受梁29を真直ぐにしたときに第1受桁29aと第2受桁29bのフランジ部同士が噛み合うために別途接合プレートを設けて接合する必要がない。
【0046】
以上のように、第1受梁29aと第2受梁29bを屈曲可能に連結することで、上述と同様に狭隘な作業現場での作業が可能になると共に、部材が一体になっているので、受桁設置作業における部材の吊り上げ等の作業が一回で済み、また接合作業も不要になるので作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1に係る覆工方法の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る覆工方法の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る覆工方法の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る覆工方法の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る覆工方法の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る覆工方法の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る覆工方法の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る覆工方法に用いる受桁挿入ボックスの説明図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る覆工方法に用いる受桁挿入ボックスの説明図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る覆工方法の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る覆工方法の説明図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る覆工方法の説明図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る覆工方法の説明図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る覆工方法の説明図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る覆工方法の説明図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る覆工方法の説明図である。
【図17】図16の破線の丸で囲んだ部分の拡大図である。
【図18】本発明の実施の形態3の他の態様の説明図である。
【図19】本発明の実施の形態3の他の態様の説明図である。
【図20】本発明の実施の形態3の他の態様の説明図である。
【図21】本発明の実施の形態3の他の態様の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 第1路面
3 第2路面
5 車
7 コーン
9 溝
11 アースオーガ
13 鋼矢板
15 杭打ち装置
17 第1受桁受
19 第2受桁受
21 受桁挿入ボックス
23 チェッカープレート
25 脚部
27 重機
29 受桁
31 覆工板
32 ガス管
33 受桁引抜き撤去用ボックス
35 杭抜き装置
36 ローラ
37 接合プレート
39 回動軸
40a、40b ウェブ
41a、41b フランジ部
43a、43b 突片
45a、45b 突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に覆工板を設置する覆工方法であって、
前記路面を開削して受桁の一端が配置される部位に空洞部を形成する空洞部形成工程と、空洞部が形成された後に前記路面を仮復旧する工程と、前記受桁の他端が配置される側の路面を開削して前記受桁を前記空洞部に挿入するようにして設置する受桁設置工程とを備えていることを特徴とする覆工方法。
【請求項2】
受桁の軸線に交差する方向を境界線として路面を第1路面と第2路面の2つの領域に2分割し、この2分割したそれぞれの路面に覆工板を設置する覆工方法であって、
前記第1路面側の地下に前記第2路面側から受桁を挿入して設置することが可能となる空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記第1路面を仮復旧する仮復旧工程と、前記第2路面を開削して該第2路面側と前記第1路面側に亘って受桁を架設する受桁設置工程と、設置された受桁における前記第2路面側に覆工板を設置する第2路面覆工板設置工程と、前記仮復旧した第1路面を開削して前記空洞部を形成した部材を撤去する空洞部形成部材撤去工程と、前記空洞部形成部材を撤去した側の受桁に覆工板を設置する第1路面覆工板設置工程とを備えたことを特徴とする覆工方法。
【請求項3】
空洞部形成工程で形成される空洞部は受桁挿入側の端部が閉塞しており、受桁設置工程は前記空洞部における端部を開放する工程と、開放した端面から受桁を挿入して受桁を設置する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の覆工方法。
【請求項4】
空洞部は、下面が開口すると共に受桁挿入側の端部が開口可能な箱状部材によって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の覆工方法。
【請求項5】
受桁設置工程において設置される受桁は、空洞部よりも長尺の第1受桁と、該第1受桁の端部に連結される第2受桁を備えてなり、前記受桁設置工程は、第1受桁を設置する第1受桁設置工程と、設置された前記第1受桁の端部に前記第2受桁を接合して受桁を形成する第2受桁設置工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の覆工方法。
【請求項6】
受桁設置工程において設置される受桁は、長手方向の途中で屈曲可能に形成されており、前記受桁設置工程は、前記受桁を屈曲させた状態で空洞部に挿入して一端側を設置する工程と、前記受桁の屈曲を伸ばして他端を設置する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の覆工方法。
【請求項7】
覆工された路面から覆工部材を撤去する覆工方法であって、受桁の一端部を覆うように該受桁の一端部周囲に空洞部を形成して路面を仮復旧する仮復旧工程と、前記受桁の他端が配置されている路面側から引抜くようにして前記受桁を撤去する受桁撤去工程を備えていることを特徴とする覆工方法。
【請求項8】
受桁の軸線に交差する方向を境界線として路面を第1路面と第2路面の2つの領域に2分割し、この2分割したそれぞれの路面から覆工部材を撤去する覆工方法であって、
前記第1路面側の覆工板を撤去する第1路面覆工板撤去工程と、受桁における前記第1路面側の端部を覆うように受桁の端部周囲に空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記空洞部を形成した第1路面を仮復旧する仮復旧工程と、前記第2路面の覆工板を外して該第2路面側と前記第1路面側に亘って設置された受桁を撤去する受桁撤去工程と、第2路面側を復旧する第2路面復旧工程と、第1路面側を開削して空洞部を形成していた空洞部形成部材を撤去する空洞部形成部材撤去工程と、第1路面を復旧する第1路面復旧工程とを備えたことを特徴とする覆工方法。
【請求項9】
空洞部は、下面が開口すると共に一端面が開口した箱状部材であることを特徴とする請求項7または8に記載の覆工方法。
【請求項10】
箱状部材は、軸方向に直交する断面が矩形状であり、上面にアスファルトコンクリートとの付着性を高める凹凸面が形成されていることを特徴とする請求項4または9に記載の覆工方法。
【請求項11】
箱状部材は、その内面および/または外面にリブ材を備えていることを特徴とする請求項4、9または10のいずれか一項に記載の覆工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−156021(P2009−156021A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293767(P2008−293767)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【Fターム(参考)】